シナリオ

饗宴

#√ウォーゾーン #√EDEN

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 #√ウォーゾーン
 #√EDEN

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 晴れ渡る青空の下、雑踏に包まれた大都会。
 高層ビルの立ち並ぶメインストリートは、今日も普段と変わらぬ活気に満ちていた。
 年末が近い時期もあって、繁華街の空気はいっそう賑々しい。絶えず車の行きかう中、人々の喧噪もまた絶える事はなく。

 そんな日常が終焉を迎えたのは、まさに一瞬だった。
 空間に突如生じた複数の亀裂。その中から次々と現れたのは少女型の兵器たち。
 頭上にU.F.O.型マシンを従える彼女たちは、機械兵団『シュライク』。√ウォーゾーンの簒奪者だ。
『目標地点に到達』『システム起動。作戦開始』
 突如として現れた侵略者に恐怖の叫びが街を包む中、機械的な声で合図を交わし合ったシュライク達は一斉に動き出す。全ては彼女たちの勢力に欠かせぬ資源――インビジブルと、資源たる生命体を得る為に。

 ここは最も平和で、豊富なインビジブルに満ちた世界。
 そして、それが故に他世界からの侵略に曝される楽園。
 名を――√EDEN。

●星詠みは語る
「やあ皆、初めまして。早速だけど、簒奪者の撃退に力を貸してくれないか?」
 集合した√能力者達を前に一礼すると、黒髪の少女は真剣な表情で告げた。
 ジル・メリス(戦線工兵の少女・h01252)と名乗った彼女は、星詠みの√能力者としてゾディアック・サインを得ることで、未来の事件を知ることが出来る。今から語るのも、その一つだ。
「事件の起こる場所は√EDEN、敵は√ウォーゾーンの戦闘機械群だ」
 数多ある√の中で、√EDENは最も多くのインビジブルを有する世界。
 それ故に他世界の簒奪者にとっては格好の狩場であり、今回事件を起こすウォーゾーンの勢力もその例に洩れない。√能力者である簒奪者に一般人は抗う術を持たない為、このままでは街中で一方的な虐殺が起こるだろう。
「その悲劇を防げるのは、同じ√能力者――つまり君達だけだ。奴ら機械兵団の侵攻を、どうか阻止して欲しい!」

 現場となる街に出現するのは、『シュライク』と呼ばれる戦闘機械群だ。
 生命体の誘拐を任務とする彼女たちは、U.F.O.型マシンや腕部クロー、腰部の槍を武装に攻撃を仕掛けて来る。数は多いが単体の戦闘能力は高くない為、√能力者であれば苦戦する事は無い。
「問題は、シュライク達を倒した後だ。知っての通り、星詠みで予知を得られるのは敵も同じ……つまり最初の戦いに勝利すれば、敵勢力は更なる戦力を投入して来る。ここから先の未来は、私も明確には予知できない」
 現時点で判明しているのは、能力者の戦い次第で敵の戦力が変化することだ。
 通常のペースでシュライクを撃破した場合は、更なる集団敵――いわゆる量産型の大群が送り込まれる。逆に撃破のペースが想定以上に速かった場合、能力者を脅威と見做した敵指揮官『ドクトル・ランページ』が出現する可能性がある。
「どちらの未来が現実になるか現時点では分からない。それを決めるのは、これから現場に向かう皆の戦い方次第だ」

 そうして敵勢力を撃退すれば、街には再び平穏が戻って来る。
 侵略の記憶は忘却され、いつもと変わらぬ日常が始まることだろう。もし気が向けば、守った街で羽を伸ばす事も出来るとジルは言った。
「この街ではね。毎年クリスマスシーズンになると、飲食店という飲食店で『食べ放題』が楽しめるんだ……!」
 例えば焼肉なら、脂たっぷりの牛カルビや分厚い牛タン、新鮮なホルモン等々。
 例えば中華なら、小籠包等の点心から、餃子や拉麺、麻婆豆腐等の町中華まで。
 例えばスイーツなら、チョコレートや季節の苺を贅沢に使ったケーキやタルトを。
 無論、ジャンルは上の三つに留まらない。食べ放題であれば、洋食でもイタリアンでも鮨でも制限は無い。お腹一杯になるまで食べるも、心行くまで食べるも、すべて能力者の望み次第――そう言って、ジルは話を締め括った。

「ウォーゾーンの尖兵が現れるまで、あまり時間は無い。皆、どうか気をつけて!」
 かくしてジルに見送られ、能力者たちは戦場へ向かって行く。
 行先は、√EDENの大都会。惨劇の使者たる戦闘機械群を迎え撃つ熾烈な戦いが、今、幕を開けようとしていた。

マスターより

坂本ピエロギ
 マスターの坂本ピエロギです。宜しくお願い致します。
 本シナリオの舞台は√EDEN。√ウォーゾーンより侵攻する戦闘機械群を撃退する依頼となります。

●第1章👾『シュライク』
 街中の広場に出現した集団敵を撃破します。
 敵の目的は一般人のアブダクション(誘拐)です。撃破に時間を要した場合、大規模な被害が発生してしまうでしょう。

 敵を迅速に撃破する程、大成功の確率が上昇。
 第1章のクリア条件を達成した時点で​🔴の数が🔵を超えていた場合、人的被害が発生します。

●第2章(分岐あり)
・Aルート👿『ドクトル・ランページ』
 戦闘機械群の派閥が一つ、『レリギオス・ランページ』の首魁です。
 第1章で街中の被害を軽度~無傷に抑えられた際に出現します。
・Bルート👾『???』
 詳細不明。第1章で街中に相応の被害が出た場合に出現します。

●第3章🏠『食べ放題に行こう』
 時刻は夕方~夜。
 作戦が無事成功した場合、簒奪者の脅威が去った街で、平和な時間を過ごす事が出来ます。
 POW/SPD/WIZは参考程度に。
 食べ放題のひと時を、ぜひ心行くまでお楽しみ下さい。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしています。
27

第1章 集団戦 『シュライク』


POW シュライクインペイラー
【腰の後ろから鋭く伸びる金属槍】による高命中率の近接攻撃を行う。攻撃後に「片目・片腕・片脚・腹部・背中・皮膚」のうち一部位を破壊すれば、即座に再行動できる。
SPD UFOクロー
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【金属爪】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【光学迷彩】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
WIZ グラビティビーム
【重力】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【超重力】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【重力操作】による戦闘力強化を与える。
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

澄月・澪
誘拐……!? 相手が√能力者じゃなくても、そんな悪いことは見逃せない……!
広場に乗り込み√能力を使用、魔剣執行者に変身し、戦闘を仕掛ける

変身のおかげで3倍になったスピードで広場を駆けながら、魔剣「オブリビオン」でシュライクたちを切り裂き、素早く撃破していく。
女の子みたいな見た目なのに、そんなひどいことを……!

超重力の弾丸を√能力により向上した移動速度で回避し、超重力でこちらが動きづらくなっても敵の通常攻撃を見切り、魔剣「オブリビオン」で武器受けして防御。
ジャンプして、超重力の勢いも乗せて叩き斬るように剣を振り下ろす近接攻撃「魔剣執行・断罪」で切り裂く。

誘拐なんて、させない……!

 平和な白昼の都会に、武装した機械兵団が次々と侵攻を開始する。
 U.F.O.型マシンで武装した少女型の機械群『シュライク』――資源に転用する一般人を誘拐せんとする敵を阻止すべく、能力者たちは急ぎ撃破に動き出した。

「いた……! √ウォーゾーンの戦闘機械群……!」
 異変に逃げ惑う人々をかき分けながら、澄月・澪(楽園の魔剣使い・h00262)は広場に現れた敵群の姿に息を呑んだ。
 全身を機械部品で構成した、異形の機械兵たち。それが今、ここ√EDENの人々を獲物に牙を剥こうとしている――その光景は幾多の言葉よりも雄弁に、澪の闘争心に激しい火を灯した。
「悪いことは見逃せない……! 急いで止めなくちゃ!」
 たとえ小学生でも、心は一角の戦士のそれ。
 瞬時に覚悟を完了し、澪は駆け足で広場に乗り込んだ。

「魔剣執行。因果を断て、忘却の魔剣『オブリビオン』!」
 高らかに響く澪の声が、戦闘開始を告げる。
 同時、逃げ惑う一般人を襲わんとシュライク達の頭部で蠢くU.F.O.型マシンが、次々に動きを止めた。
 それを為したのは、澪が浴びせる強烈なプレッシャーだ。魔剣執行『オブリビオン』で魔剣執行者に変身した彼女は、瞬時に敵群へと疾駆。能力の名に冠する魔剣を手に戦いの火蓋を叩き切る。
『緊急事態。敵性存在の襲撃――』
「遅いっ!!」
 連絡を許さず、魔剣の一閃がシュライクを斬り捨てる。
 有無を言わさぬ澪の速攻は、勢いをそのままに戦闘機械群へ牙を剥いた。

 一般人に被害が出る前に、速攻で敵を撃破する――。
 今回のシュライク排除で特に重要とされる“速さ”を、澪の行使する√能力は理想的な形で満たしていたと言えよう。
「そこっ!」
 変身を果たした澪が誇る疾駆の速度は、常人の3倍。速度と体重を込めて得物の魔剣を振るう度、その刃はシュライクの機体を容易く突き破り、屑鉄へと変えていく。力を解放した彼女の前に、半端な装甲などは一切無意味だ。
『グラビティビーム、発動』
「……っ! 女の子みたいな見た目なのに、ひどいことを……!」
 同胞たちが討たれて尚、敵の動きには些かの動揺も見て取れず。
 発射してくる重力弾の着弾地点を瞬時に離脱しながら、澪の顔が悲しみに歪んだ。

 一気呵成の攻撃で、シュライク達は頭数を着実に減らし始めていた。
 一般人の被害がゼロであることを確認し、尚も魔剣を振るう澪に容赦の心は一切ない。
この世界に生きる家族、友人、そして日常を守る――それこそが戦う理由なのだから。
「誘拐なんて、させない……!」
 重力弾の生み出す重力を振り切って、跳躍。そうして眼下に捉えたシュライクめがけ、魔剣を構えながら澪は思う。
 この戦いの未来も、きっと自分は忘れる事が出来ない。
 ならば。せめてそれが、幸せと喜びに満ちたものであるように。

「誰も、死なせない……っ!」
 魔剣執行・断罪の一閃が、上段より振り下ろされる。
 真っ直ぐな刃の軌跡は澪の決意を帯びて、標的を一撃で葬り去るのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

西織・初
アドリブなど歓迎

【心情】
一般人を攫おうとするなんて許して置けない。
まずはお前たちからだ。水の弾丸に貫かれてしまえ。

【行動】
仲間と積極的に連携していく。
正体を隠して一般人の通りすがりと見せかけてから愛用のギターを弾いて√能力を発動。
できれば先制攻撃をしたい。
演奏することで呼び寄せた水の弾丸を敵の周囲に降らせるようにする。
俺が重力で動けなくなっても一度発動したら水の弾丸は攻撃し続けてくれるはずだ。
空中移動で避けられるなら避けたいけれど無理そうなら無理でいい。
人を助けるために全力を尽くそう。
必要なら臨機応変に対処する。

 広場は、更なる混沌に包まれつつあった。
 √ウォーゾーンより現れたシュライク達。√EDENの資源収奪に現れた機械群は、しかし駆け付けた能力者の猛攻で次々撃破されていく。

『資源収集率、0%』『損害率37%。現在も拡大中です』
 じわりと増える犠牲に焦る事もなく、シュライクは尚も淡々と作戦を続行していた。
 出鼻こそ挫かれたが、広場の一般人はまだ残っている。果たして彼女たちの前方には、ぽつんと立つ一人の少年がいた。
 周囲の騒ぎに流される事なく、悠然と楽器を担いで佇む少年。そんな彼の周囲を、数機のシュライクがたちまち取り囲む。
『標的を捕捉。収集を開始――』
「そうか。俺を狙ってくれたか」
 シュライクの言葉を遮って、少年は太々しさを感じる声で呟く。
 その様子に違和感を覚えるよりも早く、少年のギターが激しい旋律を奏で始めた。

「音に呼ばれた水の弾丸よ、降り注げ」

 『属性音:涙雨』。
 それが、少年――西織・初(戦場に響く歌声・h00515)の行使する√能力であった。
 自らを囮に誘き出し、演奏で召喚するは水の礫。異変を察知したシュライクが身構えるよりも早く礫は弾丸に変じ、機関銃の如き勢いで機械群へと降り注ぐ。
『……!!』
「まずはお前達からだ。水の弾丸に貫かれてしまえ」
 それは正に、完璧な形での奇襲であった。
 水弾の掃射を浴びたシュライクは防御の猶予すら与えられず、次々に全身をハチの巣にされて撃破されていく。その只中、更なる攻撃の予兆を告げるように、初のギターは一層もの悲しい旋律を広場に響かせていく。

 機先を制する形で始まった初の襲撃は、それからも敵を圧倒し続けた。
 ひとたび水弾の嵐に捉われて、撃破を免れたシュライクは一機もいない。一般人が避難する動線を巧みに敵から守りながら、ギターの旋律は止むことを知らなかった。
『損害、更に拡大中』『排除を優先。重力弾を発射する』
「さあ、ここは危ない。早く逃げな」
 無人の場所へ駆けながら敵の重力弾を誘導し、初は周囲の様子に目を向ける。
 一般人の被害は未だ無く、自分の周囲にはシュライクのみ。見ようによっては孤立したと取れなくも無い光景だが、生憎と初には当てはまらない。
 実際、彼は解放感さえ覚えていた――ようやくこれで、全力で戦えると。

「~♪ ~♪♪」
 刹那、ギターの演奏に乗って、初の歌声が一層高らかに木霊する。
 彼に憑いたセイレーンの力は恐るべき凶器になり得るもの。故に人前で歌う事には躊躇を覚える初であるが、今ばかりは躊躇など要らない。
「一般人を攫おうなど、許して置けない。さあ聞け……俺の歌声を」
 表情を一切変えぬまま、全力で奏でるギターの旋律に、敵を葬る暗い情念が混じる。
 敵の重力弾と銃撃戦を演じる中、水の弾丸は尚も衰えを知らず。シュライク達を一機、また一機と着実に撃破していくのだった――。
🔵​🔵​🔴​ 成功

八海・雨月
アドリブ、連携歓迎

追加の敵はどっちが来る方が得なのかしらぁ。
…まぁ、良いわぁ。どのみち手を抜く気も無いし全力で叩き潰すだけよねぇ。
自分を狩る側だと思ってるお馬鹿さん達に身の程を教えてあげるわぁ。

ほら来たわよぉ。誰か一緒に来るならタイミング合わせてあげるけどぉ。
にしても随分ヘンテコな形をしてるのねぇ、機械だし可食部は無さそうで残念だわぁ。
大槍「変性殻槍」を手にシュライク達に突撃、『戦闘錬金術』行くわよぉ。
槍の穂先を内部の配線を切断することを意識した鋸歯状に変形させて貫き、内部から錬金毒で腐蝕させるわぁ。
ガンガン突っ込んで行くわよぉ、人間の被害が出るならわたし達が痛い目見た方がマシなんだからぁ。

「あらあら大変。今頃、辺りの交通誘導は一苦労ねぇ」
 八海・雨月(とこしえは・h00257)が足を踏み入れた広場では、尚も熾烈な戦闘が繰り広げられていた。
 周囲の建物は幾らか破壊の爪痕があるが、一般人の被害は未だ発生していない。この分ならば序盤戦の被害は軽微で済みそうだと思いながら、雨月の心は早くも次なる戦いの敵に向きつつある。
「追加の敵はどっちが来る方が得かしらぁ。……まぁ、良いわぁ」
 金色の瞳に獰猛な光を宿しつつ、雨月は前方のシュライク達を凝視する。
 どの道手を抜く気などは無く、全力で叩き潰すのが彼女の方針だ。自分達が狩る側だと思っているような連中には、きっちり身の程を教えてやらねばなるまい。

「さあ行くわよぉ」
 構えた大槍の『変性殻槍』が、雨月の霊力で変容を遂げ始めた。
 鋸歯状に変化した穂先は、敵の内部構造を破壊することに特化したもの。そうして変容の完了と同時、雨月はシュライクの集団目がけて一直線に突撃していく。
『新たな襲撃を確認』『迎撃を開始します』
「遅いわねぇ。欠伸が出るわぁ」
 シュライク達が身構えるより刹那早く、雨月の攻撃は標的を捉えていた。
 大槍を構えた女性が突っ込む――そう書けば素っ気ないが、雨月は身の丈2mを超える巨躯である。そんな彼女が繰り出す一気呵成の突撃を止められる者など、そうはいない。破城槌めいた突進は敵の一団に激突し、たちまち破壊の嵐をまき散らし始めた。

 最初にシュライクを見た時、雨月が感じたのは「変な形だ」というものであった。
 加えて、可食部が無さそうな金属製ボディは、それに一層拍車をかける。もしかすると内部は別かもしれない――そんな淡い期待を完全に裏切る光景を、彼女は今目の当たりにしていた。
『ダメージ……甚、大……』
「あらぁ? やっぱり可食部は無さそうねぇ?」
 発動した『戦闘錬金術』で変形させた変性殻槍でシュライクの一機を穿ち、雨月が残念そうに眉を寄せる。鋸歯状の穂先で機体を貫き、試しに内部を毒で腐食させても、彼女の嗅覚が拾うのは金属の爛れる匂いだけだ。
 これは、さっさと片付けるに限る――そう判断した雨月は早くも一機を葬ると、更なる猛攻で敵を蹴散らしていった。

 戦いは熾烈なものとなった。
 変性殻槍を得物に攻撃を浴びせんとする雨月を、対するシュライクも金属爪の先制攻撃で簡単には寄せ付けない。
『UFOクロー、発動』
「まだよぉ。人間の被害が出るなら、わたし達が痛い目見た方がマシなんだからぁ」
 一方の雨月も敵の爪を浴びながら、変性殻槍の猛攻は尚も止まらない。
 それは正に、敵を喰らいつくまで戦いを止めない捕食者の如く。未だ残るシュライクの群れを前に、雨月の大槍は一層荒れ狂いながら敵を葬り続けるのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ドミナス・ドミネート
一般人の大量拉致!如何にも悪の組織な連中ね!
私以外の悪の組織は全員邪魔してあげるわ!

他の√能力者たちのお陰で未探範囲は狭まっているわ
その範囲に到着し次第
√能力を使い半径10m以内にまばらに蜂戦闘員10人を配置
範囲はまだ狭いけどステルス機能と触覚高度センサーで索敵はばっちりよ
見つけたら暗号通信で連絡させ急行

蜂戦闘員たちと連携し
拉致を防ぎつつ敵を倒していくわ
毒は効かないけどまあいいわ!
怪人細胞で腕に装備している接近専用の大針で突き刺して破壊するわ
重力操作には重力が効かない死霊で対処するわ

終わって浚われそうな人たちを逃がしたら少し頭を抑える
ええ、とっとと逃げなさい
浚われる事なんてない方がいいんだから

 戦闘機械群『シュライク』の襲撃から数分後。
 駆け付けた能力者たちの迅速な行動が奏功し、敵第一波との戦闘は早々に収束の兆しを見せ始めていた。
 一般人は殆どが避難を完了し、数名程を残すのみだ。対する機械群は着実に数を減らし続け、劣勢は誰の目にも明白。そうして変わりつつある戦いの潮目を、悪の女王怪人たる能力者は決して見逃がさない――!

「一般人の大量拉致! 如何にも悪の組織な連中ね!」
 騒乱が続く広場の只中、少女の声が高らかに響く。
 彼女の名はドミナス・ドミネート(リストリクト団首領代理・h02576)。護霊を首領に抱く『リストリクト団』首領代理にして、現状ただ一人の構成員だ。
 ドミナスにとって、悪の組織と見做した敵は全て妨害すべき対象であり、広場で暴れるシュライク共も例外ではない。不届きな敵を成敗すべく、彼女は『蜂戦闘員召喚』を発動すると広場の索敵を開始する。
「私の可愛い働き蜂達よ、おいで! 仕事の時間よ!」
 命令を下すと同時、現れたのは10名を数える蜂戦闘員たち。情報収集に優れる配下を未探範囲へ送り込み、彼女はシュライクの排除に動き出す。

 敵発見の報告が届いたのは、それから間もなくの事だった。
 戦闘員が送る暗号通信を元に急行すると、果たして其処に居たのは一般人男性達を誘拐せんとするシュライクの一団だ。
「い、嫌だぁっ!」「助けてくれ!」
『生体資源発見。確保します』
「働き蜂達、私に続きなさい!」
 言うが早いか、ドミナスは敵集団へ疾駆。装備した大針の刺突を肉薄と同時に放つ。
 突如の襲撃を受けたシュライクたちは、標的を直ちにドミナスに切り替えると、重力の弾丸を撃ち返して来た。

『妨害を確認。排除します』
「生憎だけど、排除されるのはそっちよ!」
 そうして始まったのは、熾烈な死闘である。
 大針の刺突でシュライクを誘導し、弾丸の攻撃範囲から一般人を逸らすドミナス。間を置かず、敵に降り注ぐのは戦闘員たちの放つレイピアの猛攻だ。
「受けなさい。これが『リストリクト団』の力よ!」
『ダメージレベル……限、界……』
 戦闘員を従え、大針を得物に戦うドミナスの姿は、まさに女王そのもの。彼女と、彼女率いる戦闘員の猛攻にシュライク達は一機、また一機と撃破され、全滅にさしたる時間は要さなかった。

「あなた達、動ける?」
 程なく敵を排除すると、ドミナスは一般人を振り返る。
 襲われていた二人の男性は、いずれも無事だ。怪我らしい怪我も無く、自力での避難も問題は無い。
「た、助かりました……」「有難うございます!」
「ええ、とっとと逃げなさい……」
 そうして避難していく一般人の背中を見送って、ドミナスはふと頭を抑える。
 あれでもう、彼らが捕われる事は無い。事件が終われば、きっと待っているのは普段の日常だ。
(「そう。浚われる事なんて、無い方がいいんだから」)
 少女の口から紡がれる、小さな小さな声。
 それは未だ続く騒乱にかき消され、戦場へと溶けていった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

カツヨリ・サンダン
(アドリブなど歓迎!)
……やはり好かぬ。

数があれば。逃げ場がなければ。よいというものではない。数だけ量産した機械群など……魂籠もらぬ弾丸と同じこと。

なれば。拙者がひとつ残らず討ち果たし、否定して見せよう。
”No soul, No bullet!“

数が多い。
人質確報に動き出そうとするものから、エレメンタルバレット『裏緋蜂弾』を撃ち込んでゆこう。
バレットの爆発で、まとめて動き出すやつを同時に攻撃しつつ、恐怖で足が竦む市民など残っていれば士気高揚の付与で撤退をサポート。もちろん士気高揚は他の参戦している味方にもかけていく。

「嗚呼、嗚呼……聞くに堪えん。何と虚ろな音だ」
 戦場となった広場に木霊する、シュライク達が放つ重力弾の銃撃音。
 街中に破壊をまき散らす弾丸の響きに、カツヨリ・サンダン(”No soul, No bullet"・h02403)の顔は嫌悪の色に染まっていた。未だサイバネ化していない右目と両耳で捉えるのは、抗戦を続けるシュライクの一団である。
『被害拡大中。被害拡大中』『戦闘を続行します』
「……やはり好かぬ」
 能力者たちの仕掛ける猛攻で、着々と頭数を減らし続けるシュライクたち。
 もはや全滅は目前となって尚、その動きに変化は皆無だ。恐怖、怯え――そうした生物らしい挙動の一切伺えぬ姿にカツヨリは確信する。彼女達が自身の抹殺対象“魂籠もらぬ弾丸”であると。

 量産型の機械兵団による、頭数に任せた侵略。
 眼の前で繰り広げられるその光景は、彼にとって存在してはならないものだ。
「なれば。拙者がひとつ残らず討ち果たし、否定して見せよう」
 見澄ました先、カツヨリの義眼がシュライクの一団を捉える。同時、彼女達が向かう先で悲鳴を上げる一般人の姿を確認し――その瞬間、彼の標的は決まった。

 ――No soul, No bullet!

 戦場に、魂の叫びが木霊する。
 それは銃士たるカツヨリの精霊銃が、魔弾の装填を終えた事を告げる証であった。
 標的は、一般人を狙うシュライクたち。尚も執拗に市民の誘拐を試みる機械群を照準に収め、カツヨリはエレメンタルバレット『裏緋蜂弾』を発動。燃えるように鮮やかな緋色の魔弾を、敵の横合いから叩き込む。
「かつての神殺しの栄光よ、ここに!」
 咆哮にも似た銃声が、死闘の開始を告げる。
 カツヨリの放つ銃弾はシュライクの進路を塞ぐ地点に着弾すると、次々に爆発。緋色の爆発で巻き込んだ敵を粉砕していった。

『敵性存在の襲撃を確認』『至急、応戦します』
「無駄だ。魂無き弾丸共よ、全て滅ぶべし!」
 カツヨリは尚も熾烈な銃撃で、弾丸の爆発をシュライクに見舞い続ける。
 敵が繰り出す金属爪の攻撃も、彼の猛攻を止めるには至らない。いかに体を傷つけようとも、彼の闘志は微塵も揺らぐ事は無く。止む事の無い裏緋蜂弾の連射と爆発は、やがて逃げ遅れた人々にも勇気の心を齎した。
「早く逃げろ。ここは拙者が引き受ける」
「……有難うございます!」
 心を奮い立たせて逃げていく一般人の背中を護りながら、カツヨリの視線は標的であるシュライクから片時も離れない。あの者共を葬り、人々を守る為――彼が魂を込めて引く銃は尚も止まず、戦場の機械群に死を齎していった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

若命・モユル
一般人を誘拐…なんだか嫌な予感がするなあ
まさかオイラみたいに機械の体にされるとか…

そんなの許しちゃおけないよ、フレイムフォームに変身して戦うよ!
シャクネツブレードで敵を倒しつつ周囲に被害が出ていないか定期的に確認
敵の光学迷彩には、一度攻撃してきた敵だからすぐ近くにいることを予想し武器を横になぎ払うように斬りつけてやりたい
…ほら、ここにいた!

仲間がいるなら連携なんかもとっておきたいね
お互いの射程を補いあったりとかできるかな

オイラはまだ近場の敵しか倒すことができないから、範囲攻撃とかで支援してもらえると嬉しいな

アドリブ絡み歓迎

 能力者たちの戦いによって、シュライクの群れは早くも鎮圧されつつあった。
 迅速な行動の成果は、人的被害ゼロ名という形で明確に表れている。戦いの帰趨は既に明白、遠からず能力者たちは最初の目標を達成するだろう。
 後は、僅かに残るシュライク達を一体残らず撃破するのみ。かくして戦場に駆け付けた若命・モユル(改造人間のジェム・アクセプター・h02683)は、序盤戦の最後を締め括る戦いに臨もうとしていた。

「一般人を誘拐……なんだか嫌な予感がするなあ」
 収まることの無い胸騒ぎを覚えつつ、モユルは眉を寄せた。
 平和な日常を失い、機械の身体に改造される――そうして失うものがどれ程大きいか、考える度に彼の胸は哀しみに締め付けられる。
 誘拐された人々の末路は不明だが、幸せな未来が待っていない事は確かだろう。である以上、この騒ぎを見過ごす選択肢は、モユルには存在しない。
『一般生命体の探索を続行。発見次第、確保に移ります』
(「いた……!」)
 広場に残るシュライクの一団を早々に発見すると、彼は『フレイムフォーム』を発動。炎の重装強化フォームに変身を遂げる。

「――ジェム、セットオン! 変身っ!」
 変身によってモユルが得たのは、並の人間を遥かに凌ぐ力と守り。
 そして、標的を切り裂く一振りの武器――シャクネツブレードだ。
 一介の能力者として√能力を発動した彼は、燃え盛る闘争心に突き動かされるように、一気にシュライクの一団へ疾駆していく。
「待てっ! 誘拐なんて、させないぞ!」
 決意を秘めて振るうブレードが、たちまちシュライクたちを切り裂いていく。
 その猛攻は正に炎の如く、真面な回避を敵に許さない。一体、二体と敵を撃破していく中、最後のシュライクを狙い定めるモユル。だが次の瞬間、敵は跳躍と共に金属爪を叩きつけ、その姿を周囲に溶け込ませ始めた。
『光学迷彩モード、起動します』
「……っ!」
 敵の抵抗に、モユルはシャクネツブレードを力強く握りしめる。
 爪のダメージは軽微、周囲に敵影は無い。即ち――今対峙している相手が最後の敵だ。

 そこからのモユルの動きは迅速だった。
 例え光学迷彩で姿を消そうとも、存在自体まで消すことは出来ない。
 ならばどうする? そう、当たるまで攻撃すれば良い。元より近距離はモユルの得意とする間合い、一撃でも与えれば勝負はついたも同然だ。そして、
「……ほら、ここにいた!」
 全力で薙ぎ払う一閃は、シュライクの胴を外す事無く捉え。
 金属製のボディを切り裂かれた敵は、そのまま全身を炎に包まれ爆散するのだった。

 そうしてシュライクを殲滅すれば、後には無人の広場だけが残される。
 一般人の被害は無く、状況は能力者達にとって理想的だ。後は第二波で現れる敵を撃破すれば、この戦いは勝利で終わるだろう。
 果たして現れるのは敵指揮官の『ドクトル・ランページ』か、それとも……。
 広場の中央に生じた亀裂より、今、新たな敵が現れる――!
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 ボス戦 『『ドクトル・ランページ』』


POW ドクトル・リッパー
【装甲と一体化した斬撃兵器】を用いて「自身が構造を熟知している物品」の制作or解体を行うと、必要時間が「レベル分の1」になる。
SPD マテリアル・キラー
【物質崩壊光線】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【打撃】に対する抵抗力を10分の1にする。
WIZ ドクトル・テイル
【長大な尻尾状の部位】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

 最初に亀裂から届いたのは、声であった。

『侮り難い力だ。シュライク達が、こうも容易く全滅するとは』
 若い少女のそれを思わせる声質と、それには似合わぬ威圧感を秘めた響き。
 次いで亀裂から現れた簒奪者は只一機。
 竜の鱗にも似た装甲と、何より威厳を帯びた空気は、その敵がシュライクを遥かに凌ぐ戦闘力の持ち主である事を雄弁に物語る。そうして息を呑む能力者達を前に、その簒奪者は堂々と告げた。

『私はドクトル・ランページ。この状況を成した者達の力、学ぶに値すると判断した』
 √ウォーゾーンの巨大派閥が一つ『レリギオス・ランページ』の領袖――それが彼女の正体だ。
 敵地ど真ん中である√EDENに踏み込んでなお、微塵も失われていない自信は、そのまま能力に対する自負の表れであろうか。そうして彼女は流れるような動きで戦闘態勢を取ると、戦場の能力者たちを睥睨しながら言う。

『私達は強くならねばならぬ。故に、謹んで学ばせていただく』
 謙虚な口調とは裏腹に、秘められたのは力への飽くなき渇望。
 無論、侵略の力を与える気など、能力者には毛頭ない。
 強さを求め現れた指揮官『ドクトル・ランページ』。√ウォーゾーンの強敵と能力者、両者の雌雄を決する戦いが今、幕を開けようとしていた。
ドミナス・ドミネート
ドクトルにあの謙虚に力を求める姿勢!
さては研究者系悪の女幹部ね、しかも人気出そうな!
そこまでの相手が出てきたならこの私が倒すに相応しいというものね!

相手の斬撃をビルや建物を遮蔽や壁にしようとするけど一瞬で解体される!
成程、構造を知ってる物は壁にしても無駄って訳ね!
なら別世界の護霊は構造もわからないわよね!

さっき壁にした建物に貼っておいた護霊符
解体した欠片に残っているそれを基点に√能力発動!
護霊符がある、相手の近距離地点にパープル様を降霊し召喚!
さあパープル様の貴重な融合よ、謹んで受けなさい!
パープル様が触手で敵に絡み付き体を包み込んで融合し行動力低下
倒せない場合動けない間に私が攻撃するわ!

 シュライクの撃破に伴い、姿を現したのは指揮官『ドクトル・ランページ』であった。
 自勢力拡大の為、脅威と認識した能力者の実力を戦闘を介して学習すること――それが彼女の目的だ。
 配下を蹴散らしたのも束の間、現れたのは組織の領袖。
 自身の置かれたそんな状況に、ドミナス・ドミネート(リストリクト団首領代理・h02576)は密かな高揚を覚えつつ、決意を新たに戦いに臨む。

「ドクトルという名前、そしてあの謙虚に力を求める姿勢……! これは強敵ね!」
 対峙するドクトルを前に、目を輝かせてドミナスは言う。
 見澄ました先に立つ敵指揮官の姿は、その全てがドミナスの眼を惹きつけた。少女型のボディ、戦闘的なフォルム、圧倒的な“悪の幹部”的な空気。恐らくは研究者系の幹部に違いないと推測を巡らせる。
「そこまでの相手なら、この私が倒すに相応しいというものね。覚悟なさい!」
『初めの相手は貴君か。良かろう』
 対するドクトルもまた、そんなドミナスを敵と認めたらしい。
 全身の装甲を展開し、瞬時に戦闘準備を完了。戦闘機械群の指揮官と首領代理、両者の戦いはこうして幕を開けた。

 戦いは、開幕直後から熾烈なものとなった。
 ドミナスが護霊符を得物に放つ攻撃を、ドクトルは装甲と一体化した斬撃兵器で捌く。人の四肢とは異なる攻撃の軌跡は変幻自在、どこからでも牙を剥いた。
 全てに対応する事は不可能と判断し、ドミナスが広場脇の自動車に身を隠す。だが、
『壁代わりか。無駄だ』
「……っ、一瞬で!?」
 そんな努力を嘲笑うように、斬撃は尚も止まらない。
 たちまち分解され、跡形も無く散らばる自動車。パズルのピースめいて転がった部品を無造作に踏みつけて、ドクトルが勝利を確信したようにゆっくり距離を詰めて来る。未だ無傷の彼女を前に、ドミナスは静かに呟いた。
「この程度の構造はお見通しって訳かしらね。――なら、これはどう?」
『なに……!?』
 刹那である。身構えるより早く、ドミナスの能力は瞬時にドクトルへ牙を剥いた。

「さあ、御力をお振い下さいパープル様!」
 異変が生じたのは、ドクトルの足下であった。
 彼女が踏みしめる自動車のドア、その陰から紫色の触手が幾本も幾本も飛び出し、標的たるドクトルを瞬時に捉える。
『……っ! 何だ、これは……!』
 紫色のクラゲに似たそれは、ドミナスの護霊「リストリクト・パープル」だ。発動した『パープル様顕現!』で顕現した護霊は瞬時にドクトルと融合、その行動力を瞬時に奪い去っていく。
「パープル様の貴重な融合よ、謹んで受けなさい!」
 逃走を装ったのも、自動車を盾にしたのも、全てはこの一瞬の為。
 触手で捕え、護霊で呑み込み、行動を阻んだドクトルめがけ、ドミナスの死霊が必殺の一撃を見舞う。

「さあ――ひれ伏し、許しを乞いなさい!」
『ぐ、うっ……!』
 女王の一声と共に、ドクトルの精神が鮮やかに抉られる。
 その一撃は侮れぬ威力を以て、確かな傷を指揮官に刻むのであった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

茶治・レモン
敵が何者であれ、僕たちが引くことはありません
戦うことが怖くても、痛くても
亡くすことが方がずっとイヤです
ですがそんな戦いすら、あなた方は学びの機会と捉えるのですね
心底、心底嫌気がさします
早くこの√からお帰り下さい

愛用の玉手を刀剣を変えて、攻撃の届く範囲へ
先制攻撃を頂きたい
この刀剣が纏っているのは、魔力の塊
かするだけでもジワジワと蝕まれ
最後には過剰な魔力に苛まれる
しかしそれを手放すことすら、あなたは惜しくなるはずです

どうぞ、喰らいに来て下さい
一手一手、丁寧に
殺意を込めてお相手致します

 √ウォーゾーンより現れた、戦闘機械群の指揮官。
 それを前に、茶治・レモン(魔女代行・h00071)が瞳に宿す琥珀色の輝きは、常よりも心なしか冷たく見えた。

「……敵が何者であれ、僕達が引くことはありません」
 対峙するドクトルを前にそう告げるレモンの声は、硬い。
 学徒動員兵の彼にとって、故郷の日常は常に死と隣り合わせ。戦いは怖く、そして痛いもので、好きだなどとは口が裂けても言えない。にも関わらず彼が戦場に赴いた理由は、人々の“死”が何よりも嫌だから。
「だと言うのに……」
 だと言うのに、あの指揮官は。
 レモンが生を受けた√を地獄に変えた機械兵団、その指揮官の一機は、戦いを“学び”の機会だと捉えている。それが、彼には何より許し難い。

「心底、心底嫌気がさします。早くこの√からお帰り下さい」
『貴君の意思は理解した。それを望むなら、実力で排除してみるがいい』
 アーミーナイフ『玉手』を抜き放って告げるレモンに、ドクトルが返す言葉はあくまで淡々としたもの。
 埋めようの無い価値観の隔絶をそこに感じながら、レモンは『魔導式刀剣技巧』を発動すると、己が魔力で玉手を魔導式刀剣に変えた。
「例え蘇るとしても、僕達は。――今日この場で、一度は貴女を殺せる」
 自分と同じく死しても蘇る相手にそう告げて、レモンは戦いの火蓋を叩き切る。
 人々を脅かす簒奪者への殺意を秘めた、一人の能力者として。

 戦闘は、レモンの先攻で幕を開けた。
 振るう玉手が神速の速度でドクトルを襲う。義手で繰り出す斬撃は重く、速く、そして何よりも正確だ。狙いすました刃は敵の全身にたちまち無数の傷を刻み、そして、
『……攻撃は、それで終わりか。では私も反撃と行かせて貰おう』
「――!」
 同時、ドクトルの発射する光線が、レモンの全身を捉えた。
 打撃の抵抗力を低下させた肉体へ、続け様に連打が叩き込まれる。鉄拳が僅かに触れただけで全身に走る激痛を堪えながら、レモンは尚も倒れる事無く。殺意を秘めた瞳で敵を睨み、尚も斬撃を浴びせ続ける。

 異変が起きたのは、それから間もなくの事だった。
 ドクトルの浴びせる嵐の如き猛攻が、急激に乱れ始める。己の身に生じた異変に、彼女は未だ理解が追い付かない様子だ。
『……? これ、は……』
「効いてきたようですね」
 混乱するドクトルへ、レモンは淡々と告げる。
 玉手に纏わせた魔力は、僅かでも流れ込めば強烈な中毒を齎すもの。例え機械製の体であろうとも、例外にはなり得ないと。
「最後には過剰な魔力に苛まれ、しかし手放すことすら惜しくなる。そういう力です」 
『成程……良い学習を得た……』
「ではどうぞ、喰らいに来て下さい。一手一手、丁寧に。殺意を込めてお相手致します」
 そう告げながら、斬撃は容赦なく続く。
 かつて√ウォーゾーンより√EDENへと迷い込んだ少年兵、茶治・レモン。
 罪なき人々の命を狙う簒奪者に勝利するまで、彼の戦いは終わらない――!
🔵​🔵​🔴​ 成功

深雪・モルゲンシュテルン
ドクトル・ランページ。練度の向上が目的なら、レリギオス間での抗争をどうぞ
√EDENは未だ多くの可能性を残した世界です
√ウォーゾーンと同じ不毛の戦場になんてさせません

≪対WZマルチライフル≫からビームバルカンの[弾幕]を放ち敵を牽制
私自身に目を向けさせた上で、広場の木陰やベンチやオブジェの後ろに隠していた≪神経接続型浮遊砲台≫を遠隔制御します
意識外から『神経接続型凍結砲<氷界>』を命中させ装甲を凍結
動きの鈍化や構造の脆化が発生すれば、連携攻撃で一気に決着を付ける好機を呼び込めます
光線を受けた時は、尻尾の打撃を受けないように離れて影響を抑えましょう

彼女は、闘争の果てに何を求めているのでしょうか……

「ドクトル・ランページ。練度の向上が目的なら、レリギオス間での抗争をどうぞ」
 戦場となった広場に、氷を思わせる冷たい声が響く。
 声の主は、一人の少女であった。歳は十代前半、中学生くらいか。だが、そんな彼女が普通の市民でない事は、一目見れば理解できる。
 雪のように白い肌、透き通った銀の髪。何より、少女の身には不釣り合いに過ぎる無骨なライフルを始めとする武装。彼女こそが√ウォーゾーン出身の電脳化義体サイボーグ、深雪・モルゲンシュテルン(明星、白く燃えて・h02863)であった。

「√EDENは未だ多くの可能性を残した世界です。此処を不毛の戦場になんてさせません」
『ふむ、価値観の相違だな。生憎だが、其方の要求を呑む理由は無い』
 深雪の言葉に返るのは、ドクトルの無機質な声である。
 相次ぐ戦闘でダメージを重ねて尚、その戦意が揺らいだ様子は絶無だ。脅威と見做した能力者との戦い――そこに彼女は、レリギオス間での抗争では得られない何かを見出しているのかもしれない。
 とは言え、√EDENがそれに付き合う義理など絶無だ。深雪は『対WZマルチライフル』をバルカン形態に変形させ、戦闘の開始を宣告する。
「攻撃目標、ドクトル・ランページ。排除を開始します」

 戦場を、バルカン砲の光弾が席巻する。
 連射力に優れる弾幕は、並の装甲ならば瞬時に粉砕する威力を誇る。雨霰と表現するに相応しいビームが降り注ぐ中、しかしドクトルは未だ冷静さを失っていない。
『防戦に回れば不利は必然か。ならば攻めさせて頂く!』
 そうしてドクトルが照射する光線は、浴びた対象の打撃抵抗力を激減させる√能力だ。標的の深雪が被弾すると同時、ドクトルは瞬時に加速。接近戦闘に持ち込むべく、距離を詰めにかかる。
 もはや相手に抵抗の術は無い。後は渾身の一撃を叩き込めば全て終わる――そんな思惑は、しかし深雪の紡ぐ言葉で裏切られた。

「<氷界>コネクション確立。射線上に僚機なし。凍結グレネードを使用します」

 刹那、戦場を重々しい響きが包む。
 音の源は、突如として広場の木陰から現れた『神経接続型浮遊砲台』だ。深雪の思考で遠隔操作された砲台が、砲口で標的を捉える。弾幕に誘われ、無防備に晒されたドクトルの背中目掛けて。
『……!? しまっ――』
「……発射」
 轟音を響かせ、凍結グレネード弾が標的へ直撃する。
 超低温の氷に蝕まれ、体を脆化させていくドクトル。それを見た深雪は続く仲間たちへ合図を送った。

「ダメージ蓄積は順調。好機と判断します」
 戦況は着々と有利に傾きつつある。この戦いに勝利すれば、街は一時の平穏を取り戻すだろう。そして、ドクトルもまた遠からず蘇生を果たし、新たな戦いに己が身を投じるのだろう。
(「彼女は、闘争の果てに何を求めているのでしょうか……」)
 いつか答えの明かされる日を想いながら、深雪は人類勢力として進み続ける。
 その先に待つ世界が、たとえ楽園ではないとしても。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

八海・雨月
アドリブ、連携歓迎

釣り上げたのは親玉みたいねぇ…。
同じ相手ばかりで飽きて来た所だったしちょうど良いわぁ。
それにねぇ…目的は違っても力を求めてるのはこっちもなのよぉ。
あなたをわたし達の糧にさせて貰うわぁ。

それじゃガンガン行くわよぉ。
両腕の人化の術を解除、「鋏角」にしてランページに突撃して『嗚呼、浅く遠き海よ』よぉ。
鋏角で挟み込んでその装甲を引っぺがすなり削るなりして、外しても周囲に水を張って動きを阻害しようじゃないのぉ。
斬撃兵器は見るからに鋭いわねぇ。反応出来そうな分はしっかり鋏角で受け止めるようにするわぁ。
可愛い成りして憎ったらしい強さねぇ…でもここはわたし達の縄張り、好き勝手させないわぁ。
カツヨリ・サンダン
銃の命は《弾》、そして《魂》。
いくら解析したところで、それが無ければ届く事などない……
といえど。銃を解析・分解されれば多少は戦いにくくもなろうな。
とはいえ、だ。尻尾の範囲攻撃がある以上は、距離を取って戦わねばならぬ。

で、あれば。直前まで格納しておき、撃つ時だけ即座に構えることで対策となる……
そう、クイックドロウの出番であろうな。
撃ち込む弾はもちろん、エレメンタルバレット『裏緋蜂弾』。
他の味方の能力を向上させ、敵に学ぶ機会を与えず一気に押し込むとしよう!

最悪、この技であれば。学ばれても被害は少ないはず。
士気向上する『仲間』というのは、学習などで増えるモノではない故な。

 √EDENに現れた戦闘機械群との戦いは、いよいよ佳境を迎えようとしていた。
 能力者の攻勢は一層激しく、指揮官のドクトル・ランページを追い詰めていく。対するドクトルも己が目的の為、一歩も退く気は無い様子だ。
『この力、敵ながら流石と言うべきか……だが、まだまだ』
 其処に在るのは力への渇望と、貪欲な“学び”の姿勢。
 そんな彼女に、一方の能力者達も攻撃を緩める事は無く。八海・雨月(とこしえは・h00257)とカツヨリ・サンダン(”No soul, No bullet"・h02403)の二人は、更なる攻勢を以てドクトルの撃破に動き出す。

「釣り上げたのは親玉みたいねぇ……。同じ相手ばかりで飽きてたし、丁度良いわぁ」
 対峙するドクトルを前に、喜色を湛えた顔で雨月は告げた。
 たとえ目的は違おうとも、力を求めているのは此方も同じ。
 どちらが喰らう側か、示して見せよう――そう告げるように『嗚呼、浅く遠き海よ』の発動で人化術を限定解除すると、雨月の両腕が異形の『鋏角』に姿を変えた。切断に特化した鋸歯状の歯は、獣妖たる彼女の一部である。
「あなたをわたし達の糧にさせて貰うわぁ。残さず頂くから安心してねぇ?」
『√EDENの能力者とは、かくも多様なものか。……猶の事、退く訳には行かん』
 ガチガチと鋏角を鳴らして笑う雨月に、斬撃兵器を展開して対峙するドクトル。互いに譲れぬ理由を胸に、両者は戦いに臨もうとしていた。

「成程、あれが敵の指揮官か」
 同じ頃、遠間からドクトルを狙いながら、そう呟いたのはカツヨリだ。
 弾にして魂。銃の命が何かと問われれば、彼はそう答えるだろう。銃士であるカツヨリにとって、銃とは単なるモノではない。故にこそ、魂なき戦闘機械が幾ら解析しようとも届く事などない――そう彼は確信している。
「といえど。実際に解析・分解されれば、多少は戦い難くもなろうな」
 標的であるドクトルを見据えたまま、カツヨリはそう呟いた。
 この決戦に臨むにあたり彼が己に課しているのは、情報を敵に極力渡さない事。そして仲間の支援に徹する事だ。
 得物の銃は格納し、攻撃時以外は使用せず。魂なき戦闘機械に学習の機会など与えない決意を胸に、銃士の青年は雨月に合図を送る。
「援護は引き受けた。行こう」
「感謝するわぁ。――じゃ、ガンガン行くわよぉ」

 そうして始まったのは、能力者達の猛攻だった。
 鋏角を得物に、雨月がドクトル目掛け突撃。斬撃兵器を相手に接近戦を演じる中、遠方からはカツヨリが攻撃の機を窺う。
 無駄撃ちはせず、一秒でも隙を晒せば瞬時に射撃を行える体勢だ。対するドクトルも、それを察知してかカツヨリへの警戒を怠らない。
『徒手空拳……ではないな。武装を隠しているか』
「――ああ、そうだ」
 最低限の肯定を返すと同時、カツヨリの手には精霊銃が収まっていた。
 目にも留まらぬ早業で装備したそれに、魔弾となって宿る精霊の力。
 同時、発動した『裏緋蜂弾』の射撃が静寂を破り、援護射撃を開始していく。

「……捉えた」
 カツヨリの弾丸がドクトルの周囲に着弾し、緋属性の爆発をまき散らす。
 木霊する断続的な衝撃音。射撃と爆炎が戦場を席巻する中、肌を焼くような猛烈な熱が立ち込め始めた。
「解析も分析も御免被る。懐で戦う義理はない」
『成程、それ故の銃撃か。だが――』
 爆炎の只中からドクトルの冷静な声が響いた刹那、一条のビームが煙を切り裂いた。
 光を浴びた途端、カツヨリのサイバネ義肢が軋みを上げる。次いで余波を浴びた広場の舗装が砂のように崩れ始めるのを見て、カツヨリは敵の武装に舌を巻く。
「……やれやれ、厄介な事だ」
 とは言え、この程度で恐れをなす魂など、端から持ち合わせは無い。
 戦いの勝敗を決するのは、武器の性能とは別の次元にある――それを今から、あの敵に教えてやるのだ。

「かつての神殺しの栄光よ、ここに!」

 高らかな宣告が、猛攻の合図となる。
 雨月の攻撃に合わせ、一斉に炸裂を始める緋色の弾丸。しかしドクトルは、その攻撃を前に失望を隠せない様子だ。
『物量頼みの力押しか。もう少し有意義な攻撃を期待していたが』
「そう見えるか。……やはり、所詮は魂なき機械だな」
『なに……?』
 カツヨリが告げた刹那、微かな空気の異変をドクトルは感じ取る。
 果たして、その源はすぐに判明した。緋属性の爆発に士気を鼓舞された雨月の巨躯が、夥しい熱気を放っているのだ。
「ふふっ。あぁ……力が漲って来るわぁ……!」
「そう、弾とは魂。単なる兵器には成し得ぬものだ」
『――!!』
 驚愕の表情を浮かべるドクトルを前に、カツヨリが拳を突き上げる。
 能力者の魂を込めた一撃を、今こそあの戦闘機械に叩き込む時だと――!

「よし、押し込むぞ」
「ええ。負ける気がしないわぁ」
 同時、雨月がドクトルの懐めがけ飛び込んだ。阿吽の呼吸でカツヨリが放つ援護射撃の牽制は極めて巧みで、回避も防御も許さない。そうして抵抗の術を奪われたドクトルへ、雨月の一撃が牙を剥いた。
「装甲ごと引っぺがしてあげるわぁ!」
 強靭な鋏角が唸りを上げて、ドクトルの脇腹に食らいつく。
 その一撃に捕われたが最後、どれほど藻掻こうとも逃れる術はない。斬撃兵器もろとも甲高い金属音を立ててひしゃげる機体の軋みは、さながらドクトルの悲鳴にも似て戦場に木霊する。

『ぐっ、ぁ……!』
 渾身の力を振り絞り、鋏角を逃れたドクトルの深手は、もはや一目瞭然だった。
 装甲は歪み、脇腹からは火花が迸り、正に状態は満身創痍。それで尚も戦い続ける執念は、腐っても一角の指揮官である所以か。
『√EDENの能力者……やはり底知れない力だ……』
「憎ったらしいしぶとさねぇ……でもここはわたし達の縄張り。好き勝手させないわぁ」
「そういう事だ。魂無き機械よ、ここで討たせて貰う」
 そんなドクトルを前に、雨月とカツヨリは堂々と告げる。
 只の機械には持ち得ぬ、心と魂。その二つを、能力者達は見事示して見せたのだ。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

澄月・澪
それなら、この世界の……√EDENの人たちを傷つけることを、私たちは許さないってことも、勉強して帰ってもらうっ……!

引き続き魔剣「オブリビオン」を抜いて魔剣執行者として戦うよ。
辺りを薙ぎ払う攻撃、これじゃ近づけない……!
うぅん、やって……みせる!
√能力を使用して自分の移動速度をまた3倍に。ダッシュで近づき、相手の尻尾の一撃目を見切り回避、二撃目が振るわれる前にこっちの射程内まで接近して、魔剣「オブリビオン」による斬撃を直撃させる。
それで体勢を崩せられれば、二撃目を撃ち込むのがどっちが早いかの勝負に持ち込めるはず。
届……けっ……!

うー……勉強したいなら転校でもすればいいのに……
西織・初
アドリブなど歓迎

【心情】
俺の力を学んでもどうしようもないだろう
ここは俺たちの世界だ。弱かろうが何だろうが領域侵犯者はおかえり願う

【行動】
POWで判定
仲間とは積極的に連携する

能力を使い敵に向けて攻撃
ドクトルランページを指定し最大震度の攻撃を行う
指定した対象にしか聞こえない音だから精一杯響かせてやろう
騒音と震動で敵の行動を邪魔できたらいいんだがそれは本当にできればでいい

敵からの攻撃は念動力で近くにある高度のある物体を動かして盾にしたり空中移動を行なって回避したい

必要なら臨機応変に対処する

 長きに渡る戦いを経て、ドクトル・ランページは満身創痍の状態にあった。
 装甲は歪み、剥がれ、全身に走るのは激戦を物語る夥しい傷。そんな状況下にあって、しかし彼女が倒れる気配は未だ無い。強さを求める戦いぶりは機械とは思えない程に執念深く、そして貪欲だ。
『無為の敗北は許されぬ。最後の一秒まで学ばせて頂く……!』
 そんな彼女を前に、能力者は戦いの終幕に向けて動き出す。
 平和に満ちた世界、√EDEN。その地に現れし侵略者を、今こそ撃破する為に。

「学ぶ……か。俺の力を学んでも、どうしようもないだろう」
 対峙するドクトルを前に、西織・初(戦場に響く歌声・h00515)は淡々と言った。
 人を狂わす歌を響かせるセイレーンに憑かれた彼は、その気になれば歌うだけで相手を傷つけ、死に至らしめる力を持っている。
 別世界に迷い込んで得たこの力で、自分が、親しい人が、どれほど不幸になったか――忌まわしい過去を振り払うように、初は唇を噛み締めた。
「……まあ、いいさ。戦いを躊躇う理由も無い」
 そう言って初は、愛用のギターを爪弾いた。
 一日も手入れを欠かさぬ彼の楽器にして、戦いとなれば頼もしい武器。使い慣れた相棒を手に、彼は共に戦う仲間へ視線を送る。

「俺が使うのは、こいつだ。援護メインで行くが、いいか?」
「うん。私は接近戦で行くつもりだったし、助かるよっ!」
 ギターを奏でる初に、頷きを返すのは澄月・澪(楽園の魔剣執行者・h00262)だ。
 シュライクとの戦闘から引き続き、彼女は魔剣『オブリビオン』を携えて戦いに臨む。流れるような銀髪と、12歳の小柄な身の丈に届く禍々しい剣――それが、魔剣執行者たる彼女の姿であった。
 初に背中を任せ、前列に立つ澪。
 そうして準備を終えた能力者達を前に、ドクトルもまた戦闘態勢を取って告げる。
『次の相手は二人か。良いだろう、全力で学ばせて頂こう』
「それなら、もうひとつ勉強して帰ってもらうっ……!」
 傷だらけのドクトルに、澪は凛とした声で告げた。
 目の前の敵が、能力者の何を学んでいるのかは分からない。そんな彼女へ、どうしても教えたい事が澪にはあった。
「この世界の……√EDENの人達を傷つける存在を、私達は絶対に許さないってことを!」
 執行者たる澪の意思を受けて、魔剣が眩い煌きを放つ。
 かくして能力者とドクトル――敵対する両者の、最後の決戦が幕を開けた。

 魔剣を構えた澪が、ドクトル目掛けて疾駆する。
 肉薄を果たし、接近戦に持ち込み、連続攻撃で撃破――それが彼女の狙いだ。しかし、窮地に追いやられたドクトルは、尻尾状の兵装を用いて巧みに周囲を薙ぎ払い、澪の接近を許さない。
(「凄い攻撃……これじゃ近づけない……!」)
 俊速を維持して隙を伺いながら、澪の心には微かな焦りが生じていた。
 尻尾のリーチは想像以上に広く、加えて二度の連撃を浴びせて来る。魔剣を叩き込もうにも、果たして接近自体が叶うかどうか。被弾を覚悟しての肉薄という選択肢が、ほんの一瞬頭をよぎった、しかし次の瞬間であった。
「……連携、いけるか?」
 ギターを爪弾きながら、初が澪に視線を向ける。
 攻撃の隙は自分が作る、止めを刺せるか――そんな問いに、気づけば澪は頷きを返していた。
「やって……みせる!」
「任せたぞ」
 ギターの旋律が、勇壮な音色を帯びて戦場に響く。
 それを合図に、澪は全力で駆け出した。

 二人の能力者と死闘を演じながら、ドクトルの動きには微かな焦りが滲んでいた。
 積極的な攻撃を仕掛ける澪とは対照的に、初は未だ攻撃を行っておらず、対処の方法を決めあぐねているのだ。
 間合いの遠さからして、遠距離系の攻撃である事は間違いない。であれば、用いるのは弾丸か砲弾か、それとも別の何かか――。
『……構いはしない。何が来ようと、防いで見せよう!』
「そうか。なら、やってみろ」
 そしてドクトルと初、両者の視線が交錯した次の刹那。
 奏でるギターの旋律は最高潮に達し――初の『共鳴震』は発動された。

「響き轟け!」

 果たして次の瞬間、生じた変化は劇的であった。
 戦場を駆ける澪の視界で、何の前触れも無くドクトルの全身が突如、激しく振動する。任意の標的にのみ届く“歌声”で震度の衝撃を与える、それが初の√能力だ。
『……!! ……こ、これは――!!』
(「最高レベル、震度7のプレゼントだ。遠慮なく受け取れ」)
 震度7。一般人であれば自力での行動が不可能となる規模の絶大な力を叩きつけられ、ドクトルの動きが刹那、乱れる。
 そして――初が作り出した絶好の一瞬を、澪は逃がさない。

「この速さなら……!」

 発動するは『魔剣執行・疾風』。解放した√の力で、澪は風となった。
 視認すら困難な速度で戦場を駆け、跳躍。
 得物の魔剣を振り被って、踏み込んだ勢いを乗せて、そして、家族と友人と日常を守る決意を込めて。魔剣執行者たる少女の斬撃は今、最後の一撃をドクトル・ランページへと叩き込む。
「届けえぇぇぇぇっ!!」
 一閃。横薙ぎの斬撃が尻尾を断ち切り。
 二閃。大上段から振り下ろす刃が、ドクトルを脳天から両断し。
『……見事、だ』
 その一言を最後に爆散の炎が迸り、戦場には塵一つ残る事は無く。
 それが、√ウォーゾーンより現れた簒奪者『ドクトル・ランページ』との戦いの決着を告げる瞬間であった。

 そうして全ての死闘が終われば、広場には静寂が訪れた。
 遠からず戦いは人々の記憶から消え去り、この地には一時の平和が戻るだろう。
「終わったな。お疲れ様」
「こっちこそ。援護ありがとう!」
 共に戦った初と奮闘を称え合い、澪はふと、消え去ったドクトルの存在を思う。
「うー……勉強したいなら転校でもすればいいのに……」
 いつか彼女も、他者を害さず学ぶ事が出来る日が来るだろうか。
 その答えを知る者は誰もいない。しかし、この戦いの勝利で、惨劇の未来が防がれた事だけは確かな事実であった。

 師走の午後、天気は快晴。
 √EDENの街中に、再び日常が舞い戻る――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 日常 『食べ放題に行こう』


POW お腹いっぱいになるまで存分に食べる
SPD コスパのいい食べ方を実践する
WIZ 心行くまで好物を食べまくる
√EDEN 普通5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 侵略者との戦いに勝利してから程なく、都会には普段と変わらぬ日常が戻り始めた。
 敵は全滅し、人的被害はゼロ。
 大成功の戦果を掴み取り、能力者達もそれぞれの帰る場所に戻っていく。

 ……と、そんな折。
 能力者達は、街中で暫し足を止めた。
 日常を取り戻した街の店々から、何とも食欲を誘う匂いが漂って来るのだ。

 焼肉屋と思しき店からは、脂をたっぷり含んだ牛カルビの香りがする。
 更に鼻を利かせれば牛タンやロース、更には炊きたての御飯の匂いもかぎ取れた。

 中華料理店から漂うのは、もちろん中華料理の匂いである。
 ラーメンや餃子といったお馴染みのそれだけではない。芳醇な豆板醤と大蒜を利かせた麻婆豆腐の香りを含んだ湯気は、ほんの少し吸っただけでも胃袋が抗議の悲鳴を上げそうなほどだ。

 また別の店からは、チキンライスと卵、バターの濃厚な芳香が漂って来る。
 これは恐らく、洋食屋のオムライスだろう。後を追って、ビーフカレーやカキフライ、更にはカツレツの匂いもする。

 焼肉、中華、そして洋食にスイーツ、等々。
 他にも数多くの料理店を始めとする店々が、通りには軒を並べていた。
 そこで能力者たちは思い出す。星詠みの言っていた『食べ放題』の四文字を。

 ――少し、寄って行こうかな。

 侵略者が去った今、食べ放題で憩いのひと時を過ごすのも悪くない。
 戦いを終えた能力者は暫し羽を伸ばそうと、各々が気になる店へ足を踏み入れた。
ドミナス・ドミネート
※連携・アドリブ歓迎

今回もエネルギーを大分使ったわね
せっかくだし補給もかねてぱーっと食べるとしましょう

という訳で仕事をしてくれたし蜂戦闘員を再度召喚
さっきより増えてるけどまあ良しとするわ!
私含めて全員人間に擬態してスイーツ店で食べ放題しましょう
部下の仕事を労ってこそ上司たる女幹部というものよ!
集まりが不自然でないよう、全員同年代くらいの女性の姿ね

私は蜂蜜系のスイーツを主に食べるわ
やっぱり女王蜂怪人だから蜂蜜が一番口に合うのよね
チョコレートも好きだからそっちも食べるけど

しかし食べ放題にしたとはいえ退職金代わりにプラグマからくすねてきた資金もそろそろ危ないわね……ここでアルバイトしようかしら

 簒奪者を退け、平穏の戻った都会の一角。
 空腹に誘われたドミナス・ドミネート(リストリクト団首領代理・h02576)が、部下の蜂型戦闘員達を連れて一軒の店のドアを潜る。
 戦いで消耗した体と胃袋を、食べ放題で癒す為に――。

「ふふふ……ふっふっふ……!」
 入店から程なく、大皿に鎮座する“それ”を前に、ドミナスの口から笑いが零れた。
 立ち込めるバターの芳香と、小麦粉の焼けた香しい匂い。トッピングのチョコアイス。そして硝子のピッチャーには黄金色に煌く蜂蜜。それら全てが、女王蜂怪人の脳髄を歓喜で満たす。
「良いわね、美味しそう……!」
 そんな彼女が対面する大皿に鎮座するのは、焼き立てのパンケーキだ。
 タイプはプレーン、分厚い三段重ねのチョコアイス添え。約束された美味を前に、女王の喉がゴクリと鳴った。

「届いたわね。じゃ、食べましょう!」
 同席する戦闘員達を見回し、ドミナスはそう告げる。
 部下を労うのは女幹部の仕事の一環、出来る上司はアフターケアも万全なのだ。人間の女子グループに全員で擬態した事もあってか、周囲の人々が彼女達に違和感を覚える事は既にない。
 ここから先は、皆で楽しむ時。
 胸を弾ませ、一同はナイフとフォークを手に取った。

 蜂蜜とバターで輝くパンケーキの表面に、銀色のナイフがスッと埋まる。
 分厚く詰まった生地、その断面から立ち上る白い湯気に絡むのは、溶けたバターと蜂蜜の蠱惑的な香り。フォークで取った一切れはズッシリと重く、最高の味わいを予感させるものだ。
「……いただきます」
 ぱくり。
 そうして頬張った口の中を、芳醇な蜂蜜の甘味が満たす。それはバターの芳香と共に、ドミナスの全身を悦びで満たした。詰まった生地は噛み締める程に甘い。一枚一枚が丁寧に焼かれた事が分かる最高のパンケーキだった。

「最高……! チョコも頂くわ!」
 歓喜に声を振るわせ、次に頬張ったのはチョコアイスだ。
 甘く濃厚なカカオの風味が熱々のパンケーキと絡み、トロリと混ざる。冷たさと熱さが口の中を巡り、蜂蜜とチョコの芳香が鼻孔を抜け――至福の心地に、ドミナスは暫し言葉を忘れる。
「……くふ……!」
 それは、熱く甘い歓喜のひと時。
 美味なるパンケーキ三段重ね、それを平らげるのに彼女が長い時間を要する事はなく。空になった皿を前に紅茶で一息つき、ドミナスは追加の注文を頼むのであった。

 そうして次の一皿を待つ間、女王は今後の事に思いを巡らせる。
(「そろそろ資金繰りも考えないとね。ここでバイトでもしようかしら」)
 現状、団の予算は決して潤沢と言えない。活動の資金調達――これもまた、上に立つ者の悩みの種であろう。
 とはいえ、今はその悩みも忘れよう。首領代理は体が資本、食べる時に食べておくのも大事な仕事の一つなのだから。
「来たようね。さ、食べるわよ!」
 新たなパンケーキと一戦交えんと、ドミナスの声が弾む。
 女王と部下達、甘い食べ放題の時間は、まだ始まったばかりだ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

澄月・澪
そっか、クリスマスのお祭りやってるんだった。
えへへ、それじゃあご馳走になろうかな。

変身を解き、黒髪、黒目の普段の姿で街を見て回るね。
うー……美味しそうな店がたくさん。
けど全部食べるのなんて無理だし、どこか決めないと……よし、決めた!

中華のお店に入ろう。
おすすめの主菜を一品と、小籠包を頂きます。
辛さは控えめでお願いします!
うー……ピリ辛、けど美味しい……!
小籠包も美味しい……お土産……は、食べ放題だと無理だよね。うー……また来ます!

皆楽しそう。
……うん、頑張って良かった。
レリギオス・ランページは諦めてないだろうけど……皆のために、負けずに頑張ろう。

 年末の喧騒が、街を包んでいる。
 すっかり日常を取り戻した通りの一角を、能力者の少女――澄月・澪(楽園の魔剣執行者・h00262)は一人歩いていた。
「そっか、お祭りやってるんだった。えへへ、それじゃあご馳走になろうかな」
 食欲を誘う香りに足を止め、澪はふわりと微笑んだ。
 通りの店々に絶える事の無い賑わいは、戻った日常を改めて実感させる。折角だし素敵な一時を過ごそうと、澪は辺りを見て回り始めた。変身を解いた今の彼女は普通の小学生そのもので、違和感の眼が向く事は無い。

「うー……どのお店も美味しそう。迷うなあ……あっ」
 空腹を抱えて歩くこと暫し、ふと澪の鼻が芳しい香りを拾う。
 生姜や大蒜、更には脂が乗った豚肉の蒸された匂い。人間の食欲へダイレクトに訴えて来る源へと目を向ければ、そこに在ったのは中華料理の店だ。
「よしっ。ここにする!」
 決意を宿した声で、店のドアを潜る。澄月・澪、食べ放題タイムの始まりであった。

 濛々たる湯気が卓を満たす。その源は蒸籠の小籠包と、熱々の麻婆豆腐だ。
 ただし、後者は通常のそれとは少々違う。辛さ控えめという澪の要望に沿って出て来たそれは、さしずめ白い麻婆豆腐と言うべき一皿だった。
「美味しそう……!」
 目の痛くなる赤色は一切無く、漂うのは豚肉の馥郁たる香り。背脂で丁寧に炒められた挽肉が、象牙色の豆腐と共にテラテラと輝く。その艶めかしい光に魅入られて、気づけば澪はレンゲを取っていた。

「いただきます。はむっ……」
 掬った一匙を、熱々の御飯と一緒に頬張る。
 背脂の力強い旨味に乗って、挽肉からは噛み締める度に濃密な肉汁が迸った。柔らかな豆腐が齎す食感のアクセントは実に絶妙で、隠し味で加わった微かな唐辛子は、小学生の澪に丁度良い塩梅の刺激である。
「うー……ピリ辛、けど美味しい……!」
 額の汗を拭いつつ、澪の目は小籠包へと向いた。
 レンゲに乗せた一粒は、ちょうど激熱から熱々に移りつつある。火傷せずに食べるには良い頃合いだ。スープで満ちたそれを、期待と共に口へ運ぶ。

「あ、ふっ……」
 白い湯気に乗って、澪の小さな口から喜びの悲鳴が洩れた。
 スープの旨味とコクがたっぷりの豚肉と絡み、彼女の手は止まることを知らない。熱々はそのまま頬張り、激熱はレンゲで冷ましつつ頂いて。やがて皿と蒸籠は、湯気が消える前に残らず空となった。
「ふうっ、美味しい……!」
 そうして満足の息を吐くと、ふと澪は窓から外を見遣る。
 通りを行きかう人々は、誰も彼もが笑顔を浮かべていた。その眺めに、澪の顔にも自然と笑みが浮かぶ。
「……うん、頑張って良かった」
 今回の戦いで、ウォーゾーンの簒奪者が諦めることは無いだろう。
 だが、それでも。この日常を護る為に、自分は負けずに頑張ろう――澪は改めて、己の胸にそう誓う。

「ごちそう様でした。また来ます!」
 命を懸けて戦い、守った平和。
 街の喧噪に包まれながら、少女は√EDENの日常へ戻っていった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

八海・雨月
アドリブ、他者様との絡み歓迎

食べ放題ねぇ。良いじゃないのぉ…。
折角だし貰えるものは貰っておきましょうかぁ。
どうせならご褒美のひとつでもあるほうが良いものねぇ。

焼肉屋行くわよぉ。普段あんまり食べられない牛肉メインでねぇ。
と言っても種類にこだわりは無いしわたしは大喰らいだから片っ端から焼いて行くわぁ。
焼いて喰って焼いて喰って、その間は無言だけどぉ…。
美味く無いのかって?何言ってんの最高よぉ?美味くて喋るのが勿体ないだけよぉ。

それと食べ放題以外で持ち帰りが出来る店があるか探したいわねぇ。
此処に来られていない仲間がいるのよぉ。星詠みの子にお土産を持って帰りたいわぁ。
あの子もご褒美を得るべきだものぉ。

 頭をぶつけないよう注意して、店のドアを潜った先。
 其処に立ち込める濃密な“肉”の匂いに、八海・雨月(とこしえは・h00257)の金色の瞳が、獰猛な光に輝いた。
「あら。あらあらぁ。良いじゃないのぉ……」
 訪れた先は、焼肉屋。捕食者たる能力者の食事が、いま幕を開ける――。

 二人分のテーブルを占領するように並ぶ、幾つもの大皿。
 そこに山と盛られているのは、どれも上物の牛肉ばかりだ。細かい部位に拘らず、食欲の赴くままに注文した結果である。
「折角だし、貰えるご褒美は貰っておきたいわよねぇ」
 大喰らいを自認する雨月だが、牛肉は普段あまり食べられる物ではない。
 いわば今回の食べ放題は、片っ端から焼いて喰らうまたとない好機だ。心行くまで――そう、心行くまで喰らうとしよう。
「焼いて喰う。……ふふっ、シンプルでいいわねぇ?」
 服を汚さないよう紙エプロンを着けて、いざ準備は万端。
 良く熱された焼き網に、雨月は肉を次々投入していった。

 肉食獣が獲物を仕留めた時、最初に食べるのは殆どが臓物と言われる。
 中でも特に好まれるのは、栄養豊富な肝臓――即ちレバーだ。動物でこそないが捕食者という点では同様の雨月も、そこは同じであるらしい。
(「……くんくん」)
 大盛りのレバーは新鮮で、断面の角は綺麗に立っている。仄かに漂う甘い香りに、雨月の本能は大いに刺激され、たちまち焼き網は上物のレバーで埋め尽くされた。やがて満遍なく火が通ると、それらを片っ端から平らげていく。
「……はぐっ」
 豊富な栄養を含んだ肝臓を、雨月は大口で噛み締める。
 ものの1分も経たぬうち、大皿のレバーを残らず平らげると、胃袋に火が付いた彼女は次なる獲物――赤身のヒレへと目を向けた。

 美味しい料理と全力で取り組む時、人はしばしば沈黙する。
 茹でたての蟹をほぐすのに集中している時などは、その代表例だろう。味わう事に極限まで集中した者は、時として自然と“そう”なるのだ。今の雨月にとっては、肉を喰らうという行為が正にそれであった。
「……ふっ……」
 弱火でじっくり焼いた赤身肉を、黙々と噛み締める雨月。
 筋繊維の一本、細胞の一つまで己が血肉に変えるように、彼女の喰らうペースは衰える事を全く知らないのだった。

 美味なるヒレを平らげた後も、食欲は留まることは無い。程よくサシの入ったランプ、脂たっぷりのカルビ、肉繊維の集まった分厚いハラミ、等々……その全てを食い尽くし、空となった大皿の山を前に雨月はふっと吐息を一つ。ナプキンで口元を拭う。
「……ふぅ、こんなものかしらぁ。あんまりがっつくのも悪いものねぇ?」
 そうして会計を終えた雨月は外へ出ると、ふらりと街の散策に繰り出した。次の店は、持ち帰りが出来る所がいい。さて、何処にしたものか――。
「ふふっ。お土産、何がいいかしらねぇ?」
 食べ放題のひと時を心行くまで満喫し。
 弾む足取りと共に、雨月は雑踏の海へと潜っていく。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

若命・モユル
ボス戦には出遅れたけど、オイラも食べ放題行っていいのかな?
焼き肉かぁ、ひさしぶりに食べたいな…
まずはカルビとごはんを!

なつかしいなぁ、焼き肉とか家族で行ったぶりだよ…
兄ちゃんとお肉の奪い合いしたりとか
親に高いの頼むなとか言われたり…
たまに連れてってもらって嬉しかったんだ

でも一人で焼き肉ってのもちょっとさみしいなあ…
ほかに焼き肉食べる人いるかな?

なんだか家族のことを思い出すと、なんか焼き肉がしょっぱく感じるよ…
もう会えないかもしれないとおもうと…
あ、次は味噌ホルモン追加で!

こうなりゃやけ食いだ、人工臓器が満腹になるまで食べてやるっ!
デザートにアイスとかも頼もうかな


アドリブ絡み歓迎

 湯気を立てる、艶々の白飯。その隣には、熱々の大盛りカルビ。
 焼肉では鉄板とも言えるそれ、御飯とカルビの組み合わせを前に、若命・モユル(改造人間のジェム・アクセプター・h02683)の目が感動に輝く。

「わぁぁ……! 久しぶりの焼き肉、オイラ来てよかった……!」
 テーブルに鎮座するご馳走を前に、モユルは生唾をゴクリと飲み込んだ。
 育ち盛りの少年にとって牛肉、それも焼きたての大盛りカルビともなれば、殆ど宝物と同義である。
 無論それは、モユルにとっても例外ではない。大皿に山と盛られたカルビは濃密な脂を纏って輝き、食べられる時を今か今かと待っているようだ。さっそく少年は茶碗を手に、熱々の肉に箸を向ける。
「美味そう! いっただきまーす!!」

 大きなカルビを一切れ、甘辛のタレに漬ける。
 分厚い肉が帯びるのは、食欲を誘う大蒜の香り。辛抱たまらんと空腹を訴える本能を、モユルは宥める。このままでも十分に美味なカルビだが――彼の手元には最高の相棒たる白飯があるのだ。
「よし、一緒に食べるぞ……!」
 キラキラと輝く白飯を、モユルは恭しい手つきでカルビに包む。
 そして――彼はそれを口へと運び、ひと思いに噛み締めた。迸る脂と肉汁に、洩れるは歓喜の溜息のみである。
「……ああ、美味しいなぁ……!」
 硬めに炊かれた白米は、タレの絡んだ肉に素晴らしく馴染んだ。やはり鉄板と呼ばれる組み合わせ、大当たりだ――再び零れそうになる悲鳴を押し殺して、モユルは黙々と箸を動かし続けた。

 戦いを終えた若い少年とあれば、その食欲も底なしである。
 果たして大盛りのカルビは、ご飯ともども瞬時に平らげられた。そうして温かいお茶で暫しの休憩を挟みつつ、モユルの脳裏にはふと昔の日々が浮かぶ。
「焼肉、なつかしいなぁ。家族で行ったの、何時ぶりだっけ……」
 肉を奪い合った兄。高いものを頼むなと小言を言って来た親。
 煩くて賑やかで、心温まる思い出。それを共に過ごした家族とは、しかし――彼は遠く離れてしまった。
「はは……なんだか、お茶がしょっぱいなぁ」
 そうして暫しの沈黙を挟むと、モユルは眦を拭った。
 簒奪者達は、今も√EDENを襲い続けている。彼らとの戦いに勝利する為にも、食える時に食っておかねばならない。戦士の本能とでも言うべきそれを、この少年は若くして既に体得しているのだ。

「よし、食べるぞー! 味噌ホルモン追加で!」
 そうしてモユルは、吹っ切れたように頼んでは喰らい続けた。
 牛ホルモンの味噌漬けが、ジュウジュウと音を立てて焼けていく。おろし大蒜と味噌の暴力的な香りを、モユルは大盛り御飯で迎え撃つ。味噌ホルモンと御飯――これもまた、カルビと同じく鉄板の組み合わせの一つだ。
「やけ食いだ、人工臓器が満腹になるまで食べてやるっ! おっと、デザートのアイスも忘れちゃダメだな!」
 焼いて、喰らって、パワーを付けて。
 若き能力者が繰り広げる焼肉の宴は、まだまだ終わりそうにない――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

カツヨリ・サンダン
絡み歓迎
アレンジ・アドリブ歓迎

焼肉だ。焼肉を食おう。こういう時には焼肉と決まっている。
ホルモンも悪くないが、カルビ、なにより牛タンだ。
食べ放題といったな?であれば、遠慮の必要もない。
酒はほどほどにとどめ、三日分ぐらいを確保するつもりで、ガーッと食べようではないか。

「銃弾」の一発一発に魂を込めるのだ、だいぶ慣れたとはいえやはり腹は減る。
次の戦いに備え、腹も心も満たすには、やはり焼肉こそが一番だ。
炭火だと精霊も喜んだかもしれんがそれは些細な事!

……店員よ、網の交換はできるか?

 シュウシュウ、パチパチ。
 熱された焼き網に脂の弾ける音が響く。それはカツヨリ・サンダン(”No soul, No bullet"・h02403)の牛タンが、食べ頃になった事を示す証であった。

「焼肉だ。焼肉を食おう。こういう時には焼肉と決まっている」
 食べ放題と聞いてカツヨリの足が焼肉屋へと向いたのは、ほんの少し前のことだ。
 次の戦いに備え、腹と心を満たすには焼肉が一番――そう判断した結果である。
「食べ放題なら遠慮は無用。存分に頂こう」
 そして今、カツヨリは店内の卓で牛タンと格闘していた。焼き網の下で爆ぜる炭火に、精霊もご機嫌の様子だ。
 彼が頼んだタンは根元部分の厚切り『タン元』で、タンの中でも上位を争う人気部位。それが網で丹念に焼かれ、ジュワジュワと脂を沸かせている。

 分厚い立派なタン元だけに、焦がしては台無しだ。最上の一瞬を逃すまいと、カツヨリは両眼を閉じて集中。精神を研ぎ澄ましていく。
(「もう少し……だな」)
 浮き出た脂がタンの表面で踊る。
 だが、カツヨリはまだ動かない。
(「落ちつけ……焦りは禁物だ」)
 脂の踊るテンポが上がる中、更に意識を集中。
 そして――焼ける音が僅かに変わる瞬間を、彼の焼肉を求める“魂”は逃さなかった。

「――今だ!」

 機械の両腕にトングと皿を持ち、目にも留まらぬ速さで牛タンを掬い上げる。
 果たして焼け色は、正に最上。温かいお茶でカツヨリは体を温め、炙ったタン元に箸を向けた。
「……うむ、良い塩梅だ」
 噛み締める度、口内には脂と肉汁が泉のように溢れ出る。歯応えはサクッと心地よく、食べていて飽きる事が無い。一口一口、丹念に肉を咀嚼するカツヨリ。内なる魂の喜ぶ声が、彼には聞こえて来るようであった。

「素晴らしいタン元だった。さて、次は……」
 程なく網が交換されれば、カツヨリが次に焼く肉は牛カルビだ。
 タレで下味がついたそれは火が通るにつれて、ポタポタと脂が滴り落ちる。蒸発する脂に乗って漂うのは、大蒜ダレの焦げる香ばしい匂い。やがて両面が程よく焼き上がると、艶々の御飯をよそって準備は完了だ。
「では……頂こうか」
 脂で艶めく肉で白飯を包み、一思いに頬張る。
 同時、甘い脂と共に迸るのは濃厚な肉の旨味であった。濃い目の大蒜ダレが絡んだそれを炊き立ての御飯が受け止めて、めくるめく幸福となってカツヨリの心を満たす。
「ふう。美味い」
 口から洩れるは、ただ感嘆の吐息のみ。
 熱々のカルビと御飯が空になるまでに、さしたる時間は要しなかった。

 そうしてタンとカルビを平らげたカツヨリの下には、再び同量の肉が届けられた。
 一日分の確保が完了し、次に挑むは二日目の分だ。炭と網の交換も終わり、白米とお茶の準備も十分。彼の焼肉はまだ終わらない。
「……よし、始めるか。酒は程々に留めるとして、最低でも三日分は確保しよう」
 熱された炭火が、精霊の歓声にも似てパチンと弾ける。
 熱くも美味なる第二幕が、これより始まろうとしていた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

春日・陽菜
●大鍋
呼び名:名前+さん

ひなね、お外で焼き肉食べるの、はじめてなのよ
牛さんのお肉なのね、…牛さん?(時雨さん見る)(そっと目をそらす)
食べるのね!

普通じゃないお肉もいっぱいあるのね
カナトさんは焼き肉詳しそうな雰囲気なのよ、焼き肉先生
でね、芥多さんはね面倒見が良さそうな雰囲気なの
(そっとお皿を差し出す)
レモンさんは頑張ったから、一人で全部食べてもいいのよ!
(みんなの真似をしてレモンさんに焦げを渡す)
邏傳さんはお肉と甘いの、どっちが好き?
ひなね、たこ焼きも好きだからご一緒に食べませんか!
(たこ焼きをお肉で巻いてる)
あとね、あとね、バニラアイスもー!
緇・カナト
●大鍋
わーい焼肉食べ放題
大人数な御飯も初めてだからワクワクだねぇ
郷に入りては肉を食べよ〜

焼肉はタン塩とかハラミが好きなんだよねぇ
何て言うんだっけ、ないぞ…ホルモン系?
焼肉奉行のひとが居るなら
焼き加減はお任せしたいところ
芥多君はそういうの得意そうな印象あるなぁ
時雨君も敏腕そうな雰囲気で
焼けたの食べて良いなら貰ってしまうよ美味しい

好きなものが知れたりでご飯時って楽しいよね
邏傳君とレモン君たちが
美味しそうな事してるし
陽菜さんの肉巻きも良いなぁ
オレもデザートのアイスも食べよう
種類があるならチョコに抹茶に…
サイドメニューにも目移りしそうで
皆が満足するまで沢山食べようねぇ
お酒飲みたい組にもお邪魔しちゃおう
茶治・レモン
●大鍋6人
皆さん、焼肉の時間です
郷に入りては肉を食えと言います
お腹いっぱい食べましょう

時雨さんが罪悪感で苦しまない様に
牛は僕が責任を持って食べてさしあげますね
カルビ美味しい…このハラミも美味しい…
あっ君、おこげをありがとうございます
はい時雨さん、あーん(おこげをパス

カナトさん、それはあっ君が焼いてた肉です
食べても大丈夫ですよ

飲酒組の分まで、僕は食べます
サイドメニューはポテトとたこ焼き
邏傳さんも陽菜さんも、是非一緒に食べましょう
焼肉のタレ掛けてもいけますよ
たこ焼きを、肉で…!?
陽菜さん、もしや天才では?
アイスにタレ…なるほど、試してみましょう

すみませんバニラアイスとカルビ
あと唐揚げとキムチ下さい
日宮・芥多
●大鍋
店員さん、肉全種を十人前ずつお願いしまーす
大所帯ですから余裕でしょ

面倒見が良くて超尊敬できるとの声援を受けた俺が務めましょう…焼肉奉行とやらを、公正に!
実際肉の扱いは得意ですよ
解剖してるんで。趣味で(陽菜さんの皿に肉山盛り

はい邏傳さん、カナトさんオススメのタン塩
はい時雨さん、熱々カルビ
はい魔女代行くん、焦げ
そうそう、頑張ったから全部食べていいですよ〜

追加でポテトとたこ焼きと
石焼ビビンバも美味そうですよ
普通のかチーズのか…誰か!ビビンバシェアしませんか!
あとアイスと唐揚げと…うわ俺も呑みてぇ〜…
よし、これにて俺は普通のかっくい〜男に戻ります(呑みたい組に編入
アイスにタレ…案外肴になるのでは
八卜・邏傳
●大鍋
お肉〜♪
ひなちゃん焼肉初めてさん?実は俺も初心者でー
どれがどんなお肉かイマイチ分かっちょらん!

カナトちゃんオススメはタン塩とハラミ?ふむふむ確かに美味そお!
えっ♡時雨ちゃんからのあーんとな!?わぁい!!あーん♡…うん?んんん??
はふぁい(固い)……
あ、芥多ちゃん!ビビンバ!食べたい、です!チーズの!
3人とも呑めるん、かっくいね〜

レモンちゃんありがとー♡ポテトに焼肉のタレかー流石ポテトさんは皆と相性抜群ちゃん!こうやってみんなでつまむの憧れちょったん!
俺はお肉も甘いのもイケちゃう派☆って肉巻きたこ焼き…!ひなちゃんやりおるな!美味そじゃん♪
そいえば…バニラアイスに焼肉のタレって合うんかなあ
野分・時雨
●大鍋
メシ抜きで来ました。対戦よろしくお願いします。

どうして目ェ逸らされたんでしょ。大丈夫ですよ、陽菜チャン。牛さんはとても美味しいです!

隙間なく焼きます。育ち盛りさんたちのお陰で余ることは無いですね。
カナトさんが内臓って言うとなんか不穏なんですよねぃ。ホルモンです。どうぞ、たくさん。

焼きつつも腹は減るもので。肉ください(口開け)熱々のままで結構で……芥多くん容赦ない。
焦げ肉の連鎖は仕方ありませんね。邏傳くん、はい。あーん。

目の前で美味そうにしてると気になりますよねぃ…レモンくん、ぼくの分もください。共食い上等です。

デザートは誰かにあげますねぃ。代わりに呑みたい。
では、野郎で乾杯しましょうか!

 数多の世界より集いし√EDENの能力者達は、その姿形も様々である。
 人間、人妖、ドラゴン、サイボーグ、果ては野良ドーベルマンまで、その在り様は多様の一言では到底言い尽くせない。
 それは此処、平和な街の焼肉屋に集う6名の能力者達も例外では無く。熱く、激しく、そして楽しい食べ放題の時間が、ここに始まろうとしていた。

「皆さん、焼肉の時間です」
 着席した仲間達を前に、茶治・レモン(魔女代行・h00071)が粛々と告げる。
 ウォーゾーン出身のサイボーグ少年兵である彼にとって、焼肉屋の食べ放題は異郷文化の一つと言って良い。だが同時に、現地のやり方を尊重する姿勢を、この少年兵は決して疎かにしなかった。
「郷に入りては肉を食えと言います。今日はお腹いっぱい食べましょう」
「おー、じゃんじゃん食べよ~。ワクワクだねぇ、大人数な御飯も初めてだし」
 そこへ朗らかな返事を返すのは、緇・カナト(hellhound・h02325)。
 謎多き好青年といった出で立ちの彼だが、先程から仮面の奥でメニューを見つめる眼は全く笑っていない様子だ。
 黒妖怪人であるカナトは絶えずエネルギー補給が必要で、常に飢餓感に苛まれている。彼にとって焼肉屋の食べ放題は、さしずめ灼熱の砂漠でオアシスを見つけた旅人のそれであろうか。

「まあ、まずはお茶でも飲んでカナトさん。体を温めた方が食も進みますよ」
 そこへカナトを労うように、日宮・芥多(塵芥に帰す・h00070)が温かいお茶をそっと差し出す。まずは心身をリラックスさせて焼肉に臨もう――そんな細やかな気づかいに、カナトは頬を綻ばせた。
「ありがとー芥多君。じゃ、お言葉に甘えてゆっくり選ぼうかな。|お代わりの分《・・・・・・》」
「ええ、頼んだ肉全種もじき届く筈ですし。この大所帯なら十人前は余裕でしょ?」
「ひとりあたり、二人前弱だから……うん、前菜くらいにはなりそうだね」
 一般人が聞けば仰天しそうな会話を平然と交わす二人だが、周囲の仲間がそれに驚いた様子は全く無い。
 サイボーグの暗殺者である芥多を含め、この席に集まった者は全員が能力者、あらゆる意味で一般人とは異なる面々である。注文した品の完食は彼らにとって大前提。配されたお茶で体が温まるにつれ、大きなテーブルに期待の空気が満ちていく。
「……お、来ましたね」
 そうして、良い具合に能力者達の心身がリラックスした頃。
 カートに積まれて次々に運ばれて来る大量の肉に、芥多はキラリと目を輝かせた。

 肉を乗せた大皿が、瞬く間にテーブルを占領する。
 薄切りの肉、厚切りの肉、サシたっぷりの肉、色鮮やかな赤身肉、などなど……それは食べ放題を求める能力者達にとって、まさに心躍る光景であった。
「お肉~♪ お肉~♪♪」
 そんな山盛り肉を前にして、八卜・邏傳(ハトではない・h00142)がカチカチとトングを鳴らして歌う。
 姿形こそ人間だが、彼はドラゴンプロトコル――ヒトの姿に堕とされし、れっきとした竜である。その貪欲さも、当然ながら一般人のそれとは比べ物にならない。高まる期待に胸を弾ませつつ、彼はすぐ傍の春日・陽菜(宙の星を見る・h00131)に目を向けた。
「そういや、ひなちゃん焼肉初めてさん?」
「うん。ひなね、お外で食べる焼肉、はじめてなのよ!」
 小さなエプロンをかけた姿で、陽菜が頷きを返す。
 人の姿をした人外という意味では、彼女も邏傳と同様の存在だ。魔性の子供と呼ばれる取り替え子の陽菜は、仲間達と一緒に囲む団欒を心待ちにするように、元気一杯の笑みを浮かべるのであった。

 そうこうする間にも、焼肉の準備は整っていく。
 注文した御飯は白米と麦飯のお櫃が一つずつ。胃もたれしないよう、キムチやナムル、サンチュもたっぷり。その他諸々も滞りなく揃い、やがて焼き網から熱気が上り出すと、芥多は仲間の前で大皿を掲げた。
「牛肉も揃いましたし始めましょう。どれから焼きます?」
「うむ、迷うな! 正直、どれがどんなお肉かイマイチ分かっちょらん!」
 芥多の言葉に、邏傳がトングを手にカラカラと笑う。
 何しろ、注文した肉は数も種類も膨大だ。お腹一杯食べられるのはいいとしても、こう美味そうな物ばかりでは迷いの一つや二つ、いや、三つや四つも生まれてしまう。
「お肉? ……牛さんの?」
「んんん? どうしたんです、陽菜チャン?」
 一方、牛肉という単語を耳にして、陽菜の目は向かいの仲間へと向けられた。
 何やら意味ありげな視線を感じ、微笑を返す野分・時雨(初嵐・h00536)。次の瞬間、それに気づいた陽菜は、慌てたように視線を逸らす。
「牛さん……?」
「――ああ」
 そこで漸く、彼にも合点がいった。
 時雨――牛鬼の人妖である青年は飄々とした態度を崩さず、陽菜へ微笑みを浮かべる。少女が楽しい時間を過ごせるよう、誤解を解いておくのは大人の役割と言うものだ。
「陽菜チャン、動物の牛さんはとても美味しいです。さ、食べましょう!」
「……食べるのね!」
 時雨の言葉に、陽菜が明るい笑顔を取り戻す。
 6名の能力者達の焼肉食べ放題は、そうして幕を開けるのだった。

 大人数の焼肉となれば、進行役たる焼肉奉行の存在は往々にして欠かせない。
 ある意味で責任重大な役割の担当者は、しかし直ぐに決まった。
「俺が勤めましょう。面倒見が良くて超尊敬できる――そんな声援を受けたこの俺こと、日宮・芥多が公正に!」
 冗談めいて言う芥多であるが、実際肉の扱いにかけては得意な自負がある。
 果たして仲間達から承認を得ると早速、奉行役を仰せ付かった彼の手で、牛肉が次々と焼かれ始めた。
 焼き網に乗った赤いタンがジュウジュウと音を立てて、食欲を誘う色に変わっていく。横ではハラミがジリジリと炙られ、漂わせるのは焼ける脂の甘い香気。仲間達のゴクリと生唾を飲み込む音が、テーブルにはっきりと響く。
「わあ……! 普通じゃないお肉もいっぱいあるのね」
「気になります? じゃあどんどん行きましょう、遠慮せずに!」
 そう言って芥多は、陽菜が差し出す皿に、良い具合に火の通ったタンを盛っていく。
 仲間と共に過ごす食べ放題のひと時。彼女が初めて体験するという外での焼肉が、最高のものになれば良いと思いながら――。

 歯応えの良い牛タンは、噛み締める度に肉汁が滲んだ。
 素材の良さは勿論、何よりも芥多の焼く腕が良いのだろう。温かいタンを陽菜が一心に頬張る一方、向かいでは時雨も同じものを皿に盛っていた。こちらもまた、負けず劣らずの大盛りである。
「メシ抜きで来ました、対戦よろしくお願いします」
 その言葉に違わず時雨の手と口は焼肉と食事にフル回転で、先程から一秒も休まる気配が無い。タンを噛み締め、白飯をかっ込み、茶を啜ってほっと一息――そうして再び肉を焼く作業に戻るといった塩梅だ。
「やー、やっぱタン塩とかハラミ美味しいよねぇ。何て言うんだっけ、内ぞ――」
「ホルモンですねぃ。どうぞカナトさん、ハラミ焼けましたよ」
「おっ、食べて良いなら貰ってしまうよ」
 内蔵と言いかけたカナトの言葉を絶妙の間合いで遮って、焼けたハラミを乗せる時雨。どしどしと盛られたそれを頬張って、カナトの頬が歓喜に緩む。
「んー、美味しい!」
 焼き加減は、時雨の敏腕さを伺わせる絶妙のものだった。ミッシリとした噛み応えに、溢れるのはコクのある脂。濃い目のタレに塗したそれを御飯と共に噛み締めながら、彼は暫し飢餓を忘れて舌鼓を打ち続けた。

 芥多と時雨が肉を焼く流れで、食べ放題は賑やかに進む。
 サーロインに感涙し、ロースを頬張り、ナムルをつついた後はカイノミを齧り……大皿に盛られた肉の山は、恐るべき勢いで6名の胃袋に収まっていく。驚く事にそのペースは衰えるどころか、一層勢いを増しつつあった。
「しかし、芥多君は焼肉奉行が堂に入ってる感じだねぇ……どれも美味しいよ、焼き加減はお任せするからどんどん焼いて!」
「はいはい、どんどん焼きますよー。じゃあ、一巡してホルモンに戻りましょうか!」
 カナトの言葉に笑顔を返し、芥多は新たな皿に手を伸ばす。焼くのはタン塩とハラミ、そして牛カルビだ。そうして彼がふと目を向けると、テーブルにはゆるゆるとした空気が流れていた。
「……ふふふ……」
 それを見た芥多の目に、悪戯の光がキラリと煌く。
 ここはひとつ、ちょっとした余興で席を盛り上げるとしよう――。

「はーい、皆さん焼けましたよー!」
 やがて望み通りの具合で焼けた肉を、芥多は次々に仲間達へ供していった。
「はい邏傳さん、カナトさんオススメのタン塩!」
「カナトちゃんのオススメ? ふむふむ確かに美味そお!」
 芥多の焼いた肉を、邏傳は大口で頬張った。火加減と言い味付けと言い、まさに絶妙の味わいである。心地よい歯応えを楽しみながら、完全に警戒心を緩める邏傳。その様子を見遣り、芥多は次なる一切れに目を向ける。
 そこに在るのは、ジュウジュウと焼けた牛カルビ。熱々のそれを供する相手は、すでに決まっている。標的は彼が視線を移した先、焼きたての肉を催促するように大口を開けた時雨であった。
「焼きつつも腹は減るもので。芥多くん、肉ください」
「ええ勿論。はい時雨さん、熱々カルビ」
「んぐっ……! 芥多くん、容赦ない!」
 ひょいと放り込まれたカルビに、時雨の口から真っ白な湯気が洩れる。阿吽の呼吸とはまさにこの事だろう。悲鳴を押し殺してカルビを飲み込むと、芥多の次なる矛先はレモンへと向いていた。

「はい、魔女代行くんも。頑張ったから、どんどん食べて下さいね~」
 そう言って芥多が差し出したのは、立派な肩ロースであった。
 俗にザブトンと呼ばれる角ばったそれは、サシがたっぷり入った立派なもの。火加減も実に絶妙な一品を、肉の端と端を摘まんだ形で受け取って、しかしレモンは芥多の悪戯を直ぐに察知する。
「これは……! はい時雨さん、あーん」
「おやおや、これはどうも…… ……邏傳くん、はい。あーん」
 レモンから肉を譲られた時雨も、即座に事情を察したらしい。プレゼントする相手は、焼けた肉を貪り食う邏傳だ。
「えっ♡ 時雨ちゃんからのあーんとな!? わぁい!! あーん♡」
 果たして時雨の差し出す特上のザブトンを、邏傳は満面の笑みで頬張り――次の瞬間、その両眼が驚愕に見開かれた。
「うん? んんん?? ……!!!!」
 突き刺すような刺激が、邏傳の口内で炸裂する。
 ツンと香る山盛りのワサビを、芥多は巧妙に隠す形で渡していたのだ。悶絶する邏傳に時雨は温かいお茶を淹れてやると、気を取り直して焼き網の肉に戻る。
「さてさて。もうじきカルビとハラミが良い焼き具合になる、筈……」
「あーカルビ美味しい…このハラミも美味しい……」
 そこで時雨が目にしたのは、一切れ残らず焼き網から消失した彼の肉。そして、麦飯をお供にそれらを頬張るレモンの姿であった――。

「いやー……味の濃い肉には、濃い味のタレが合いますね。とても美味しいです」
「……レモンくん、ぼくの分もください」
 舌鼓を打つレモンに絞り出すような声で言いながら、抗議を上げる時雨。そんな彼に、カルビのサンチュ巻きを頬張りつつ陽菜が言った。
「レモンさんは一人で全部食べてもいいのよ。頑張ったから!」
「そうですね、ここは僕が責任を持って食べてさしあげます――あ、そうだ」
 陽菜の言葉に頷きながら、レモンの視線は焼き網の一角に視線を向ける。
 そこで焼かれているのは、騒動の張本人たる焼肉奉行のそれだ。たっぷりの脂を含んだ香りを漂わせる牛カルビに、贅沢な厚切りハラミ。色艶の良いレバーは火が通っても縮むことなく、濃密なゴマ油の匂いを漂わせている。
「カナトさん、時雨さん。それはあっ君が焼いてた肉です、食べても大丈夫ですよ」
「そうかそうか。なら頂いちゃおう」
「いい焼き具合じゃないか。うん、美味い美味い」
「はぇっ!? ちょ――」
 かくして幕を開けるのは、熾烈な肉の奪い合いだ。能力者達の賑わいと歓談は絶える事なく、それからも華やかに宴の席を彩り続けた。

 楽しい時間が過ぎゆく中、山のようにあった肉は既に尽きつつあった。
 当然のように追加メニューを頼む流れになり、能力者達はメニューを手に各々の好みを注文していく。
「では、野郎で乾杯しましょうか!」
「いいねぇ。オレもお邪魔しちゃおう。あ、未成年はソフトドリンクね?」
「うわ俺も呑みてぇ~! よし、これにて俺は普通のかっくい~男に戻ります!」
 時雨が頼んだのは酒であった。そこへカナトに芥多と大人のグループが続く中、未成年のレモンが目を向けたのはサイドメニューである。
 新鮮な油で揚げたホクホクのポテト、紅生姜と青海苔が香る山のようなたこ焼き。熱々の湯気に乗って漂うソースの香りは不思議なもので、そこそこお腹が膨れた筈のレモンを再び空腹へと誘っていく。
「これは何とも危険な香り……邏傳さん、陽菜さん、一緒にどうですか?」
「喜んでー! レモンちゃんありがとー♡」
「うんうん! ひなね、たこ焼き大好き! あとね、あとね、バニラアイスもー!」
 時雨とカナト、芥多が酒杯で乾杯する傍らで、レモンと邏傳、陽菜もサイドメニューに舌鼓を打ち始めた。
 ケチャップの赤に彩られた熱々のポテトは、見ているだけでも美しい。トマトの酸味とほっくりしたポテトの食感、更には油の芳香も加わり、一度手を伸ばせば止まらない危険な美味さである。
「ふむ、これは……焼肉のタレもいけますね」
「流石ポテトさんは皆と相性抜群ちゃん! こうやって皆でつまむの憧れちょったん!」
「見て見て、これ美味しいの!」
 一方で陽菜がつまむのは、たこ焼きだった。
 ただし、只のたこ焼きではない。焼いた肉で外をクルリと巻いたそれは、言わば肉巻きたこ焼きとでも言うべきだろうか。初めて目にする一品に、邏傳とレモンの目はたちまち釘付けになる。
「肉巻きたこ焼き……! ひなちゃんやりおるな! 美味そじゃん♪」
「たこ焼きを、肉で……!? 陽菜さん、もしや天才では?」
 薄茶色の肉を纏った球状のそれは、食べてみれば実に乙な味わいであった。たこ焼きの生地が焼肉の上質な脂を吸って、更にはソースが焼肉のタレと絡み。中心部のタコの食感も小気味良く、これまた手の止まらない美味さである。
 感動の声を上げるのも忘れ、ポテトと肉巻きたこ焼きを黙々と頬張る陽菜達。美味しい料理を分け合いながら過ごす満ち足りた時間に、お茶を啜る三人の口からほうっと温かな吐息が洩れた。

 卓に満ちる温かい空気。食欲をそそる香りが尚も尽きずに漂う中、芥多はメニューを手に新たな注文を考えていた。
 頼んだ酒はすっかり干された後だ。余り多くを呑まなかった事もあり、芥多もカナトも時雨も酔いの回った者はひとりも居ない。そろそろ甘い物が欲しい頃合いだが、その前にもう二、三品ほど頼んでも罰は当たらないだろう。
「石焼ビビンバ注文します! 誰かシェアしませんか!」
「あ、芥多ちゃん! ビビンバ食べたいです、チーズの!」
「了解、チーズね。あと唐揚げとアイス!」
「唐揚げですか、いいですね。あ、僕もバニラアイスを」
 芥多の呼びかけに、邏傳が、レモンが、先を争うように手を挙げる。
 さすが育ち盛りの若者は食欲が違うと思いつつ、6名分のリクエストを注文する芥多。程なくして届けられた数々の料理を、能力者たちは尚も歓声と共に平らげていった。

 チーズビビンバと唐揚げが加わったことで、宴は一層華やかさを増した。
 そこに冷たいアイスが加わって、盛り上がりは今や最高潮だ。熱いもの、冷たいもの、塩辛いもの、甘いもの――各々が頼んだ料理を前に、能力者たちの口からは満足と喜びの声が洩れる。
「ねえ、邏傳さんはお肉と甘いの、どっちが好き?」
「ん? 俺は両方イケちゃう派☆」
 シェアしたチーズビビンバの熱々おこげを頬張りつつ、朗らかに微笑む邏傳。問いかけた陽菜が匙で食するバニラアイスを見て、ふと彼は思いついたように呟いた。
「そいえば……アイスに焼肉のタレって合うんかなあ」
「ふむ……案外肴になるのでは?」
「面白そうですね。試してみましょう」
 話に乗った芥多とレモンが、さっそくタレを一滴アイスに塗す。茶色の染みたバニラを恐る恐るといった様子で一匙口に含めば、中々どうして悪くない。アイスの甘味が塩気で引き立ち、むしろお腹が減る感覚すら覚えるようだった。
「……結構いいのでは? これ」
「ええ、本当に。カナトさん、お代わりいいですか?」
「ああ、いいとも。皆が満足するまで沢山食べようねぇ」
 芥多と顔を見合わせ、恐る恐る手を挙げるレモンに、カナトはメニューを差し出した。
 一足先にお代わりを決めたカナトの傍では、チョコと抹茶のアイスが空になっている。デザートの甘味で腹が減るとは、何とも不思議なものだが――中々どうして、こんな時間も悪くはないとカナトは思う。

(「ご飯時って楽しいよね。皆の好きなものが知れたりで」)
 今日と言う日は、きっと素敵な時間を分かち合えた筈。
 そんな確信に近い想いを胸にカナトが見遣った先では、仲間達が新たに一戦交えんと、メニューを片手に注文をあげ始めていた。自分だけでなく、彼らの胃袋もまた、どうやら並ではないらしい。
「すみません、カルビを。あと唐揚げ追加で」
「ひな、たこ焼き欲しい!」
「お肉、お肉~♪ お肉も追加! 肩ロースの四角いやつ!」
「抜いた飯の元は取れましたかねぃ。まぁ折角ですし、タンとカルビとハラミ、もう少しばかり行きましょうか!」
「という訳で店員さーん、お代わりお願いします! あ、ポテトも追加で!」
 焼いて、食べて、笑って、また食べて。
 6名の能力者達の食べ放題は、まだまだ終わる事は無さそうだ――。

 こうして√EDENを巡る事件の一つは、大成功のうちに幕を下ろす。
 街を襲った戦闘機械群を退けて、ひと時の休息を過ごした能力者達。
 いずれ現れるであろう新たな脅威に備え、彼らは各々の日常へ戻って行くのであった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

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挿絵イラスト