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夢現堂のある日の1日

#√妖怪百鬼夜行 #ノベル #不思議骨董屋店主

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 ――私の1日は、大きな樹をみることからはじまるの、です。
 樹齢1000年を超える大樹を見上げるは、大樹近くの古書店『夢現堂』の夢見月・桜紅(夢見蝶・h02454)。
 いつもと変わらぬ樹を見上げることでなんとなく、今日も1日頑張れるような温かい想いに包まれた。古書店には様々な書物が収められている、ああそうとも。古いばかりではないそれこそ色んなジャンルだ。
 黒髪の女性が購入して集めて、必要なら売る――誰かの訪れがあるかも知れない。
 此処は誰かの訪れを、歓迎で出迎える夢現堂。
 夢現堂で手に取った書物の内容を体験出来るかもしれない、誰かが噂に乗せて話すのだって聞くことがある。
 ――訪れたお客様は、いつも素敵な方ばかりです、ね。
 舞い込む風は、いつだって木陰を温める春のような温かな風だ。

 店内を少し、軽めの掃除することから桜紅の一日は始まった。
 本を整理する。本を開く。戻す。
 埃があれば軽く払って、本の順番を整理した。
 ――必要な誰かに届くように、と。
 本との出会いはいつだって偶発的なものだ。
 直感だとか。運命だとか。
 巡り巡って、本がヒトを――"誰か"の元へ行きたがるから。

 ――お客様がいらっしゃる時もあれば、いらっしゃらないこともあります、ね。
 今日は訪れた客がいる。色んな本をに目を走らせては、元の棚に戻すのが見える。
 誰も訪れない事も桜紅の中では日常の一つ。
 誰かが訪れる事も、日常の一つ。
 そんな時は自身の読書の時間に充てつつ、待つ。
「お客様。焦らずお探しになるのも良いかと思います、よ」
 美味しいお茶は読書のお供。
 桜紅がお客様にお茶をお出しして、のんびりとした時間を過ごす。
 ほっと一息、休めば違う視点もあるだろう。
 ――お茶を飲みつつ、リラックスしながら欲しい本が見つかったら、嬉しい、ので。
 店主の思惑が、客の想いの扉を叩いたのかはたと、聞きたそうな顔を此方に向けてきた。おずおずと、若干の小声ででも確かに――。
『本の事、お詳しい……ですか』
 お客様は本を探していた。自分が読んだことがないジャンル。
 知らないような展開を求めている話し口。わくわくするような話でも、絵本でも!と桜紅からすれば思いつく本の数が徐々に絞られていく。
「お聞かせくださった条件なら、ちょっと感動する優しい話、数分後にゾッとする怖い話、数ページ後に状況が変わっているようなショートストーリー集などもいいかも知れないです、ね」
『長めの本でも良いんです、じっくりと読める厚い奴でも』
「そうなると……時には人の運命を変えてしまうくらいの、衝撃を齎す話……、とか?」
『!?本当にどうにかなってしまう本とかあったら、ちょっと怖いですよ!?』
 ――ああ、噂を聞いて"識って"訪れたお客様なのです、ね。
「大丈夫、です。私は、お客様を不幸にさせません。力不足の時は多々あります、が、少しでも良い方に導けるよう、お手伝いします、よ」
 にこりと優しい応対を心がければ、客は怖がる姿勢をすぐに解いた。
『……ではオススメを順番に教えてください』
 決めかねていた客は、桜紅のオススメを尋ねる。
 これと、あれと、それと、と腕にいくつか本を重ねて戻ってくる頃にはすっかり落ち着きを見せていた。
『このお茶……美味しいですね。そんなに、読まれたいという本がいましたか?』
 まるで人を連れてきたかのように応答する客は、試し読みと本を開いてぺらりぺらりとページをめくる。わくわくするような出会いから、導かれるように本を買うイメージがみえるよう。
 閉店まで、客はずっと迷いっていて――。
 迷うからまた明日訪れたい、と穏やかな表情で店を後にしていった。

 閉店作業もテキパキと。
 からりと扉を閉めて一段落したら、明日の準備をしなくては。
「今日のお客様が、出逢いたい本と会えるといいのです、が」
『まだ、やっているかい!?』
 開けた扉を開けて、声をかけてくるのは"お客様"。
 ――時々、時間外でも尋ねてくる方々はいる、ので。
「勿論、です」
 実際は丸一日、開けっ放しの方が多いかも知れない。
「妖怪も、人も、どんな世界の人も……大切なお客様です、よ」
 だからどうか、あなたも素敵な1日でありますように。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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