⑫爆発物持込厳禁
突き抜けるように青い空、その入道雲の向こうから、どこか虫の羽音にも似た音が飛来する。プロペラが空気を引き裂き、モーターが唸り声をあげるその体は、ひとつやふたつではない。青空へ広がる一群の影は鳥の群れにも似ているだろうか。
近付く事に増してゆく羽音に、真っ赤に染まったランプと、液晶に映し出された黄色の記号。警告を示す重みは無感情に群れを成し、ただ一つ所を目指してゆく──そのコンテナに、爆発物という積み荷を乗せて。
●
「たいっへーん!詳細不明の|派閥《レリギオス》、『レリギオス・グロンバイン』の戦闘機械群が福岡空港を占領しにきちゃう!
しかも、福岡空港を『√EDENの|天蓋大聖堂《カテドラル》』に改造しようとしているんだって?
√EDENにそんなものができちゃったら、ど〜なっちゃうの〜!?
っと、ゆーことで。阻止しないわけにはいかない事態になっちゃってま~す」
バロニール・アポカリッツァはこの場に集まったEDEN一向へ冗談めかして捲し立てると、ぬいぐるみの手を打ちすぐさま悪戯っ子のような笑顔を浮かべる。
「ゾディアック継承戦争、第二戦線に突入だよ~。そして、今回皆に阻止してもらいたいのは福岡空港の改造です!
勝手に空港を改造しようなんて、すんごーい迷惑だよね〜」
カラリと笑いながら言葉を添えて、バロニールは肩を竦める。天蓋大聖堂への改造は『√EDEN侵攻の大拠点建造』である。拠点建造を成功させてしまった場合、そこから繋がる未来は想像に難くない。必ず阻止しなければならないだろう。
「それでね。戦闘機械群が空港にやってくるんだけど…今回皆に対応してもらいたいのは、空からやってくる『暴走した運送用ドローン』なんだ。
天蓋大聖堂へ改造する為に『邪魔なもの』はサクッと全部お片付けしたいのか、爆薬をいーっぱい積んでバンバカやってくるみたいなんだよね。
爆薬なんてばら撒かれたら、とーっぜん、空港はめっちゃくちゃになっちゃうよね!
飛び回って爆弾を落として来たり、自爆してきたりする敵だから、そういうのに気を付けて戦ってほしいかも~」
襲来するのは、機械兵団によって制御権を奪われた運送用ドローン。派閥の制御下にあるドローン群は、爆発物を運び、高速で飛来し、攻撃を行うようにプログラミングされている上に、『自爆』プログラムのオプション付き。爆薬が投下される前に、そして自爆される前に対応することも必要となってくるだろう。
「それからなんでも、この作戦を阻止することができれば、詳細不明のレリギオス・グロンバインの統率者である合体ロボット『グロンバイン』に直接戦闘を挑むチャンスができそうなんだって。
誰それ何それって感じだけど、ここで侵攻の一手を阻止できて、詳細不明の派閥の統率者も出てきてくれるなら、頑張り所になりそうだよね」
押し寄せる戦力は膨大ながら、ひとつひとつを対処してゆくことで次へと繋がる布石となってくれる筈だ。バロニールは皆を見渡し、最後に笑顔を浮かべ応援を口にする。
「それじゃー伝えたい事はそんなところだよ。張り切って、頑張ってね〜!」
ぬいぐるみの手を振って、福岡空港へと向かう背中を見送った。
マスターより
後ノ塵後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。第二戦線でもよろしくお願いします。
オープニング公開時からプレイングを受け付け、順次執筆させていただきます。
難易度は普通、一章構成の戦争シナリオです。
爆薬を積み込んだ『暴走した運送用ドローン』群との集団戦となります。
プレイングボーナス:福岡空港の改造を阻止する。
制圧効果:戦場⑯が出現する。
皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
12
第1章 集団戦 『暴走した運送用ドローン』
POW
突撃爆発(範囲)
【積載した高性能爆薬】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【焦土】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
【積載した高性能爆薬】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【焦土】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
SPD
突撃爆発(超)
60秒間【攻撃目標まで突撃するエネルギー】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【自爆攻撃】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
60秒間【攻撃目標まで突撃するエネルギー】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【自爆攻撃】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
WIZ
突撃爆発(x12)
事前に招集しておいた12体の【爆薬を満載した同型ドローン】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[爆薬を満載した同型ドローン]全員の反応速度が半減する。
事前に招集しておいた12体の【爆薬を満載した同型ドローン】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[爆薬を満載した同型ドローン]全員の反応速度が半減する。
クラウス・イーザリー(まだ見ぬ派閥、か……)
√ウォーゾーンで生まれ育ったけど、グロンバインのことは聞いたことがない
引きずり出して叩いておけば故郷を守ることに繫がるかもしれないな
青空の下で飛来するドローンの群れを見上げ、敵が射程に入り次第決戦気象兵器「レイン」を使用
搭載された爆薬、或いは動力部やプロペラを撃ち抜いて爆散させるか地上に叩き落とす
落とし切れない奴らはレイン砲台のレーザーと拳銃の射撃で追撃し、近くまで迫られたら属性攻撃と範囲攻撃を合わせた炎魔法で一気に焼き払う
自分に向けて爆薬の投下、或いは突撃自爆が行われるなら避けずに魔力防御で受け止める
下手に回避すると空港に被害が出てしまうからね
晴れ渡る夏の青空の下。クラウス・イーザリーは暗雲のように飛来するドローン群を見上げる。
(まだ見ぬ派閥、か……)
胸に抱くのは、迫り来る脅威への警戒心だ。詳細不明の派閥『レリギオス・グロンバイン』…√ウォーゾーンで生まれ育ったクラウス・イーザリーも、グロンバインのことは聞いたことがない。今ここで引きずり出して叩けるならば、この先の未来で故郷を守る事にも繋がる可能性は高いだろう。──この世界は、繋がっているのだから。
レイン放題を起動したクラウスは決戦気象兵器『レイン』を広げ、ドローン群が射程に入った直後、雨粒のようなレーザー光線を照射する。爆薬が積まれたコンテナは、ろくでもない『積み荷』を運べるだけあってそれなりに丈夫で、威力を落とした雨粒の一撃では墜としきれないだろう。だが、その剥き出しのプロペラや動力部はそうではない。迫り来る敵は軍用兵装ではなく、暴走した運送用ドローンなのだから。
レインの雨粒は上空でドローン群を次々に撃ち抜く。爆散していくドローン群から爆薬を積んだ積載コンテナが滑り落ちるが、雨粒の余波に飲まれ薄くなった表面をレイン砲台のレーザーと拳銃で狙い打ち追撃すれば、上空で起爆した爆薬は誘爆し、爆風はドローン群へと連鎖してゆく。
鼓膜を揺らす轟音と閃光のような炎が黒雲を広げ、空は爆散したドローン群の破片を無数に零れ落とす。だが次の瞬間、その黒雲を突き抜けてくるのは十二体のドローンだ。爆薬を搭載した飛行小隊は一機の指揮個体の先導で爆風と雨を抜けると、敵性個体であるクラウスへ向かってくる──。
空港を一瞥したクラウスが炎魔法を広範囲に放てば、指揮系統で繋がっているドローンの反応速度はクラウスの攻撃にあと一歩間に合わない。炎に焼き払われたドローンは爆散するも、炎を回避し抜けた僅かな数機が爆風を突っ切りクラウスへと突撃する。だがその自爆は、想定内の攻撃だ。クラウスが目前に魔力防御を展開した直後、ドローンの爆風が包み込む。
「下手に回避すると空港に被害が出てしまうからね」
黒煙が晴れた時、そこに立っていたのは涼し気な笑みを浮かべるクラウスの姿だった。
🔵🔵🔵 大成功
不破・鏡子ドローンは便利なんだけど、ちょっと爆薬を積めばすぐに兵器になっちゃうのは困り物よね。
それにしても空港を改造して自軍の侵略の足がかりにするとか、その為にここのドローンを使うとか……流石ロボット、効率的と言うかなんと言うか、リソースが大体こっち持ちなのが腹立つわね!
絶対阻止してやるわ!
ここはスピード・アッパーで行く。
爆発しようとする前に、こっちからジャンプして近付いて蹴り飛ばしてやるわ。
運送用だと言うのなら爆薬は積んでいるだけ、ドローンを破壊すれば少なくとも狙いの位置には行けないでしょう。
この多さだもの、悠長に爆発物処理してる場合じゃない。
エネルギーバリアで身を守りつつ、なるべく多く蹴落とすわよ!
空地・海人※アドリブ、連携歓迎
福岡空港へは一発たりとも爆弾を落とさせないぜ!
変身ベルトを腰に巻き、「現像」の掛け声と共に、灰白の装甲を纏う【フィルム・アクセプターポライズ √ウォーゾーンフォーム】へ[変身]。次々に迎撃できるように、「現在最も必要な能力ひとつ」として速度を強化だ。
ネガミサイルランチャーから発射する[誘導弾]、瞬時に形成したネガマズルからの[クイックドロウ]、数機形成した空撮爆弾・ハイアングルボマーによる[牽制射撃]……あらゆる射撃攻撃を駆使して、全機空中で爆破してやるぜ!
[第六感]を研ぎ澄まして、爆薬投下や自爆突撃をしてきそうな機体を感じ取り、特にそいつらを優先して破壊してやろう。
プロペラの飛翔音を響かせて、空港へと迫り寄るドローン群。その姿は鳥の群れのように、あるいは暗雲のように──青空へ広がる第二陣を見上げるのは二人の√能力者だ。
不破・鏡子は人相を隠すフルフェイスヘルメットの下から、ドローン群が押し寄せる空を睨みつける。
「空港を改造して自軍の侵略の足がかりにするとかドローンとか、流石ロボットって感じだけど…腹立つわね!」
今回のように効率的で強かな作戦は、称賛にすら値しよう。だがそれ故に効率のリソースは大体侵略される側持ちであるのが常であればこそ、無性に腹の立つ話である。
「ああ。生活を豊かにする為の道具を、戦争に利用するなんて許せないぜ!」
空地・海人もまた空を睨みつけて拳を突き上げる。侵略の一歩を前に鏡子と海人の志は同じく。二人は大きく頷くと、それぞれの力を解放する。
「アーマーパージ!全エネルギー、スピード系へ!」
鏡子がヘルメットに指をかざしコールすればバイザーへと変形し、ショートジャケットが解けるように崩れ、瞬く間に青く輝くバニーガールのような装甲スーツへと変形する。
「現像」
海人はカメラ型バックルの変身ベルトへとルートフィルムを装着し、静かなる掛け声と共に生身にヒーローの姿を重ね、変身するのはフィルム・アクセプターポライズ、灰白の装甲を纏うその姿は√ウォーゾーンフォーム。
「福岡空港へは一発たりとも爆弾を落とさせないぜ!」
「絶対阻止してやるわ!」
正義のヒーローへと姿を変えた二人はすぐさまその力を行使する。
海人のネガフィルムセルが肩部へ瞬時に形作るのはネガマズル。現在最も必要な能力ひとつとして、速度を強化した海人のクイックドロウは、押し寄せるプロペラを次々に撃ち抜いてゆく。ドローンが傾き揺らいだその瞬間、その軌道に向かうのは鏡子の追撃だ。
地面を強く蹴って飛び上がり、瞬時にドローンへ接敵した鏡子の鋭い蹴りが、狙うのはその動力部。悠長に爆発物処理してる暇などないからこそ、被害が出るような場所へ近付けさせはしない。上昇したフィジカルでドローンの間を跳ね回り次々に蹴落としてゆけば、墜落するドローンと零れ落ちる爆薬へ、海人の脚部からネガミサイルランチャーの誘導弾が向かいゆく。
「残らず空中で爆破してやるぜ!」
海人がその宣言通り落ち行く爆薬を塵と変えれば、青い空には爆風と黒煙が広がってゆく。
青い稲妻のような鏡子の蹴技と海人の止まぬ射撃の連携で、ドローン群は凄まじい速さで数を減らしてゆくも、その中で幾つものドローンがランプと液晶を激しく瞬き低い警告を唸らせ──海人の研ぎ澄ました第六感は僅かに速くそれを感じ取った。
「くるぞ!」
これまでとは違う動きを見せるドローンの姿に、海人が鏡子へ鋭い警告を放てば、青空を舞う鏡子はすぐさま胸の前で腕をクロスしエネルギーバリアで身を守った。すぐさま突撃してきたのは、コンテナに積載した高性能爆薬をまるで射出するかのように吐き出すドローンだ。
激しく弾ける発光と爆炎は一瞬で鏡子と周囲のドローンを飲み込むが、その戦況を見上げる海人に焦りはない。名も知らぬ女ヒーローの正義の心は、こんな所で散るほどヤワではないのだから。
「出番だぜ、ハイアングルボマー!」
爆風を突き抜けてくる幾つかの気配に、ネガフィルムセルが再び形作るのは数機の空撮爆弾ハイアングルボマー。凄まじい速度で空へ飛び立つと、群れから外れ突撃してくるドローンを射撃し動きを牽制する。
思惑を阻害され、バラける事なくひとつの塊となったドローンたちに迫るのは、青空を舞う一つの影。
「残念、こっちよ!」
鏡子の鋭い連続の蹴りがドローンたちを高々と打ち上げ、突撃を空振りに終わらせたドローンたちは積載した高性能爆薬を零れ落とす。落ちれば辺り一帯を焦土に変えるであろうその爆薬に向かうのは、ありったけの射撃に誘導弾だ。
再び空に弾ける閃光と爆風の連鎖は空へ残っていたドローン群を全て飲み込み、広がる黒煙から僅かばかりの塵が落ち行く。
「やるな」
「そっちこそ」
あらゆる技を駆使しドローン群の第二陣を、残らず撃墜した二人のヒーローは、晴れゆく空の下で拳を合わせ互いを健闘した。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
盧・飛騰|以戦養戦《戦を以って戦を養う》……
何処のものかは知らないが、鹵獲したドローン群による特攻が有効な戦術である事は確かだ
だが、【ドローン操縦】は私の得手とするところ
そう思い通りにはやらせん!
巡航形態に変形して敵ドローン群へ向けて【空中移動】
滑走路等の、人や物が少ない箇所の上空を選んで迎撃に当たる
洋上で迎撃できればそれが理想だが、地理的に叶うまい
【玄鳥群舞】にて無数のドローン飛燕剣を召喚(発進)
【ドローン操縦】の技能を以って敵ドローンの挙動を【見切り】それらを迎撃する
複数機による【集団戦術】【連携攻撃】を以って着実に仕留める【逃亡阻止】
ドローン飛燕剣が爆発に巻き込まれたとしても問題はない
空港へと迫り寄るドローン群の第一陣と第二陣を退けて尚、その暗雲のように広がる色はまだ勢いを落としてはいなかった。
「ドローン群による特攻とはな」
2.5mもの大型の完全機械人、盧・飛騰は青い空を見上げ呟く。√ウォーゾーンの『レリギオス・グロンバイン』…詳細不明の派閥の思惑はどこにあれ、鹵獲したドローン群による特攻が有効な戦術である事は確かだろう。
「だが、そう思い通りにはやらせん!」
飛騰は大きな両足で滑走路を駆けると踏み出すようにひと飛び。その姿を巡航形態へと変形させる。飛行機とも船とも思わせる『体』となったそのランディングギアは地面を滑り、ドローン迫る青空へと舞い上がる。
最も理想的な戦術は洋上での迎撃だが、この空港の地理をみればそれを叶えることは難しい。ドローンのプログラムを無理やり誘導する事ができればまた違ったかもしれないが、緊急時に理想的な装備が整わずとも戦いようはある。
「|以戦養戦《戦を以って戦を養う》……」
静かに呟く飛騰のデュアルアイが、まるで炎を灯したかのように熱を帯びる。何より──ドローン操縦は飛騰の得手とするところだ。
「剣よ、舞え!」
滑走路の上空で旋回しながら、飛騰がその胴体の発射口から放つのは無数のドローン飛燕剣だ。仙力による巧みな操縦で迫り来るドローン群の挙動を見切り、まるで空を薙ぎ払うかのように飛燕剣を飛翔させる。飛燕剣の薙ぎ払いがプロペラや動力部を削ぎ落したと同時に、もう一度飛来する刃が零れ落ちた爆薬を切断し、次々にドローン群を迎撃してゆく。
瞬く間に空は爆炎と爆風が広がりゆく中で、ふいに黒煙を突き抜けるのは十二機のドローンだ。一機の指揮個体に従う十二のドローンはその他のドローンを囮にしながら、巧みに飛燕剣の攻撃をすり抜け敵性個体である飛騰へ向かい行く。そのコンテナに満載した爆薬を、ただ飛騰へ届ける為に。
「その程度で私を抜けるなど……甘い!」
飛騰は殊勝な笑みを零し大きく旋回する。十二機のドローンは遅れて飛騰の翼を追いかけるが、指揮系統で繋がったドローンの反応速度は、飛騰の更に後ろから飛来する剣に気付くにはあと一歩が足りていない。飛燕剣がドローン群を円状に包囲し一斉に貫けば、剣もドローンも諸共爆発に飲み込まれる。
爆風を背に飛騰は滑走路へ着陸する。人型形態へ変形した飛騰が見上げる空は、ドローン群の一波を乗り越えた青に黒煙が広がっていた。
🔵🔵🔵 大成功
澪崎・遼馬アレンジ、連携歓迎
「如何にも機械らしい策だな。無駄のない上に慈悲もない」
シンプルだが効果的な手。単純なだけに隙も少ないのは厄介な点だ。とはいえ、対処できないわけではない。シンプルな策にはシンプルに対応するとしよう。
「花火というには少々物騒だが。咲かせてやろう」
要するに、ドローン達が投下した爆薬や自爆特攻をする前に破壊してしまえば良いのだろう。《徹甲弾「不帰」》を使用。視界内のドローン達の中心へ弾丸を撃ち、青黒い炎で焼き払おう。広範囲の炎なら爆薬に引火する上、空中での連鎖爆発も狙えるはず。
これだけ派手に爆発すれば直撃はせずとも余波で空港が傷つく可能性もある。最低限、《我、空ヲ現シタリ》で修復しておこう。
ルメル・グリザイユ改造利用しようとしてる空港を爆破しちゃったら、本末転倒なんじゃないかな~…?
ま、そもそも被害を出させるつもりなんてないから、どっちでも良いんだけどねえ。
[高速思考]によって脳内の情報処理能力を引き上げ、飛来する個体の機首の向き、推進プロペラの角度、アプローチの軌道をミリ単位で瞬時に見極める。
直撃コースへ入る直前のタイミングを完璧に合わせてNexus Gravitorを発動。まずは下向重力を叩き込んで強制的に高度を落とさせ推進力を削ぎ落とすと同時に、プロペラであるローター部分のみを亜空間へ部分転移させて物理的に回転をカット、空中で完全に挙動を凍結させる。
間髪入れず、詠唱錬成剣の刃を貫通力に長けた騎槍であるランスのような形状へ[武器改造]で変形。全身の筋肉に力を込める[怪力]に乗せ、爆薬の誘爆を避けつつメインフレームにあたる動力核へ狙いを定めて深く突き刺す[貫通攻撃]を叩き込み、自爆させるスキを与えずに一撃で撃墜する。
よおし、まずは一体。この調子でどんどんお掃除していこっか~。
万が一の至近距離での爆風や衝撃に対しては、予め服用しておいた|レーテの霊薬《[激痛耐性]》で体勢を崩さず耐え抜き、すぐさま次の標的へ意識を向け、同様の手順で一連の連続撃墜を絶え間なく繰り返す。
幾度となくドローン群の波をEDENたちが乗り越えて尚、青空を埋めるように大きく広がるドローン群の一波が押し寄せる。先陣が残らず志半ばで散っていたとしても、空港へ迫るドローンたちが留まる事はない。プログラムに従ってコンテナの積荷を運ぶ、それだけが彼らの存在意義であり、この作戦に送り出した謎の存在の意志なのだから。
「如何にも機械らしい策だな。無駄のない上に慈悲もない」
晴れやかな空を埋める不穏な景色を見上げ、澪崎・遼馬は無表情に吐き捨てる。押し寄せる波はいかにもロボットらしく、シンプルで単純だが効果的な手であろう。
「う~ん…改造利用しようとしてる空港を爆破しちゃったら、本末転倒なんじゃないかな~…?」
一方でルメル・グリザイユは気の抜けた声で呟き頬をかく。戦力を投入してくる以上、EDENたちとの戦闘を見据えた上で損失損害までもを見通している…ということなのだろうか。そうだとしても、改造利用するならそれなりに元々の施設も大事にしてもらいたいところだった。
「ま、どっちでも良いんだけどねえ」
「同感だ。向こうがその気なら、こちらへ辿り着く前に破壊してしまえば良い」
だがそもそも、この場に被害を出させるつもりなど毛頭ない。暗雲近付く光景にも臆することなく、遼馬は『此岸』に弾を装填し、ルメルは黄金色の小瓶をひと息に煽った。先に響いたのはひとつの発砲音──空港へと迫るドローンたちの中央へ淀みなく向かうのは、冥界の弾丸だ。
「花火というには少々物騒だが。咲かせてやろう」
向こうの戦法はあくまでもシンプル。それだけに隙も少ない事が厄介な点ともいえようが、だからこそ対応するのもシンプルな索が最も効果的だろう。
中心の個体へ|徹甲弾『不帰』《イルカルラ》が命中すれば、瞬く間に冥府の青く黒い炎は周囲を埋め尽くし焼き払う。敵を焼き尽くし味方には『冥神の加護』を与える炎の熱が、瞬く間にコンテナを焼き溶かしてしまえば、中に積まれた爆薬に容易く引火する。
まるで連続で打ちあがる花火のような炸裂音を空へと響かせながら、横並びの隊列複数にまで連鎖し広がる爆発。それを見上げていたルメルは軽く口笛を吹かした。それは味方へ向かうものでもあり、一撃でその数を多くを散らしたドローン群が、それでも未だ衰えを知らぬことへ向かうものでもあった。
後続のドローン群が爆風を突き抜け加速する。そのコンテナに積載した高性能爆薬の届け先は当然、敵性体である二人だ。勢い良く迫るドローンにルメルは不敵な笑みと剣の柄を携える。
「よおし、働きますか〜」
どれほどの速さで訪れようとも、高速思考によって脳内の情報処理能力を引き上げたルメルにとって、ドローン群の動きは掌の上のように見えるもの。飛来する個体の機首の向き、推進プロペラの角度、アプローチの軌道…それらを瞬時にミリ単位で見極めると飛び出し、Nexus Gravitorを発動する。
直撃を狙うコースに入るその直前、ドローンは突如下へ向かう強い重力に高度を落とした。推進力を削ぎ落とされたドローンはすぐさま高度を戻そうとモーターを唸らせるが、そこにプロペラは既にない。飛行に重要なパーツを亜空間へと転移させられ、空中で完全に挙動を凍結させ急速落下するドローンが落ち行くその刹那──地面を飛び上がったルメルは刃のない柄を突き出した。
錬成剣の柄は一瞬で刃を生み出しうねる様に姿を変え、またたく間にその身を鋭い槍へと形作ると、加護の強化とルメルの怪力とを乗せた一撃はドローンのメインフレームの動力だけを容易く、そして深々と突き刺した。
コンテナからは力なく積載した高性能爆薬を溢れ落とすも、遼馬の弾丸が爆薬を撃ち抜けば、それは地へ焦土を生む前に大きな爆風だけが散ってゆく。
「よおし、まずは一体。この調子でどんどんお掃除していこっか~」
至近距離で爆風の衝撃を浴びても、冥神の与える加護とレーテの霊薬によってルメルの気軽な様子は変わらず、その体勢も一切崩れることはなく──そして、ルメルの意識はすでに標的である二機目へ向いていた。
遼馬へ向かうドローンの突撃を重力で妨げ、プロペラを亜空間へ飛ばし、動力部を的確に槍で貫く。転がり落ちる爆薬の爆風を見送ることも無く槍を振ってガラクタを振り払い、また次の標的へ。近寄る突撃ドローンたちもそうして次々に対処していくうちに、ふいにドローンの数機が上空で不審な動きを見せる。
列をなす群から外れ爆風に飲まれぬ上空へ居座り、上部のランプをゆっくりと点滅させるドローンたちはモーターだけを唸らせる。
「そろそろ60秒だねえ。穴を開けるよお」
「了解した」
会話と呼ぶにも短すぎる言葉だけを終わらせると同時に、後方のドローンたちは唸りを上げて突撃し、彼らもまた動き出す。
まるで後列を守護するように並ぶドローンの列の中へ、割り込むようにルメルの槍が投擲される。轟音と共に投げられた槍は風を斬って複数のドローンを貫けば、生まれた穴へすぐさま向かうのは冥府の弾丸だ。
狙い澄ましたその一撃が、モーターを激しく震わせながら徐々にランプを強く光らせるドローンたちへと命中すれば、再び青く黒い炎が燃え上がり──モーターを唸らせながらも炎に焼かれるドローンたちは大きな火花を散らす。
弾けるような音に続くのはこれまでよりも遥かに大きな爆発と爆風だ。大きすぎる真昼の花火は文字通り残ったドローン群の全てを飲み込み、その余韻の最後を空から落下する錬成剣の柄が締め括る。
「ちょっと爆風でやられちゃったねえ」
さっきまでは槍であったそれを拾って、ルメルは空港を見渡し息を吐いた。自爆突撃はすべて対処したものの、爆風まではそうもいかない。
連戦での防衛の中で、あれだけの数のドローン群とその爆発が幾度となく空港を襲った事を思えば『軽傷』に過ぎず、EDENたちの完勝といえる結果でも──やはり、見渡してみれば多少の余波は目に見えて残ってしまうものだった。
「問題ない。絶望も虚無も一時のものだ」
けれどここに居るのは、そうした自体にも対応できる√能力者だ。遼馬が涼しい顔で手をかざすと、青い光が周囲を円状に包み周辺の『傷』はまたたく間に癒えてゆく。この空港自身と──幾度も爆風に飲み込まれていたルメルの体も。
「わあ、僕の傷も治してくれたんだあ。もう痛くないよお」
「…はじめから痛みはないだろう?」
「うん〜。まあね〜」
ルメルはポケットから取り出した空の小瓶を軽く振る。レーテの霊薬によって痛みは感じてはいないが、それは一時的なものだ。効果が切れた時に傷があればどうせ痛い。
傷を癒やし軽口を叩きながら、彼らは空港を去っていく。
無傷の空港の上には、ドローンだった無数の残骸だけが散らばっていた。それらも、忘れようとする力によって目に止まることなく、綺麗に片付けられてゆくだろう。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
