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悪意の証

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 それは悪意の証だった。そこに飾られた物は、人類が今までに行っていた悪意を象徴する物だった。恨み、妬み、怒り。誰かを陥れるため、悲しませるため、苦しめるために行われてきたことができる限り集められていた。行けばあまりの悪意に気持ちが悪くなる。まともな神経の者なら気が狂いそうになる。そういった物が集められた場所だった。拷問器具、呪いの品、恨み言が綴られた日記。憎悪に満ちた絵画、彫刻。人をあざ笑うような薄暗い表現。人の業の深さ、いやらしさ、滑稽さを現したもの。言葉を尽くしても言い表せない人間への嘲りに満ちた場所だった。突然現れたそのダンジョンは、人を拒絶しながら人を求めていた。まるで悪意のように。

「√EDENにダンジョンが出現しました」
 木原・元宏(歩みを止めぬ者・h01188)は努めて冷静に話す。
「そのダンジョンは人の悪意を集めた博物館のような物です。普通の人が行けばすぐにおかしくなってしまうでしょう。幸いなことに、ダンジョンは廃坑の中にあります。うち捨てられたその鉱山は観光地となることもなく、山奥に廃墟となって佇んでいます。一般人に見つけられる前にダンジョンに向かってその博物館の主を倒して下さい。ダンジョンの主はダンジョン最奥に潜んでいます。そこで人が狂い、堕落していくところをほくそ笑みながら見ています」
 元宏は模式図をスクリーンに映す。
「ダンジョンは3階層に分かれています。一つ目が悪意の博物館です。まずはここから先の階層に行くための道を探して下さい。どこかに下の階層への扉があるはずです。博物館の展示物を見るとトラウマや恐怖を刺激されるので気をつけて下さい。2つ目の階層は博物館の管理用の区画です。モンスターや、展示物の補修をするために区画の統括者がいます。それらを排除して最下層にいるダンジョンの主、堕落させるもののところにたどり着き、主を倒して下さい。みなさんの力で、事件に巻き込まれるであろう無力な人を助けて下さい。よろしくお願いします」
 元宏は頭を下げた。

「なんだあれ? 鎌を構えた黒い天使? 堕落させるものの姿? なんだか他のものに比べたら怖くないな。おまえもそう思うだろ?」
 そう言われた『おまえ』は伏し目がちな顔で言う。
「おまえにはわからないのか、この素晴らしさが。ざんねんだなあ」
 目線の合わない瞳で言った男はもう一人の男を光る右手で握り潰した。焼け落ちた男だったものがプスプスと言う音とともに消えていく。
「ああ、ここは素晴らしい」
 そこにはもう一人の男だったもの、モンスターの姿があった。

 ダンジョンの奥でそれを見ているものがいた。彼女は楽しそうに笑うと新たにモンスターとなった男を歓迎した。
「ようこそ、私達の元へ。もっともっと堕落した姿が見たい。このくらいじゃ全然足りないもの」
 彼女の企みを、惨劇を止めなければないけない。

マスターより

九野誠司
 九野誠司(くの・せいじ)と申します。よろしくお願いします。

 √EDENにダンジョンが現れました。このままではダンジョンを訪れた人々が悪意に囚われてモンスター化してしまいます。一刻も早くダンジョンの主を倒して下さい。よろしくお願いします。

 第1章では悪意に当てられてPCのトラウマや恐怖などが蘇るかもしれません。もしよろしければプレイングにお書きいただければ描写いたします。克服しても、逃げたりごまかしたりしても大丈夫です。

 プレイングの受付は「プレイング受付中」のタグでお知らせします。みなさまらしいプレイングを是非送っていただけますと幸いです。
 それではよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『ダンジョン・ミュージアム』


POW 芸術とかわからないからぶっ飛ばす!
SPD 盗めるだけ盗んでトンズラする
WIZ お宝の価値について語りつくす
√ドラゴンファンタジー 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

矢神・霊菜
悪意を集めた博物館とはよく言ったものね
たしかにこんな展示物じゃ耐性の無いだろう一般人じゃ気がふれてもおかしくない
【精神抵抗】のある私でも何だか胸の奥がざわついて仕方がないわ…

極力展示物は視界に収めないようにしながら扉を探す
探し物をしている以上、目にしないようにしていてもどうしても視界の隅に展示物が映り込む

ああ、嫌だ
両親がこの世に居ないのだと突き付けられた時の事が蘇る
顔も声も、どんな人達だったかも覚えていないのに
幸せだった気持ちと、辛くて苦しくて怖い気持ちが胸の奥から湧き上がる
どうやっても思い出せない、思い出さない方が良いだろう記憶

今私はとても幸せなのだから
こんなモノに捕らわれてたまるものですか

 悪意が人の心を傷つけるのはなぜだろう。それは触れた物を蝕む毒のようだ。誰かから放たれた悪意は無意識に心を蝕むだろう。見ない、聞かない、そうしたところでそこに悪意の主が現れれば、人は傷つくだろう。その坑道には錆びた鉄の覆いや残された工具のように人の心を朽ちさせる物があった。恨みから誰かの爪を一枚ずつ剥がす女の絵。子供を誰かのちょっとした間違いで殺された女の絶望。愛した物を自分のものにするために殺すことしか出来ない男の彫像。
 その間を矢神・霊菜(氷華・h00124)は歩いていく。
「悪意を集めた博物館とはよく言ったものね、たしかにこんな展示物じゃ耐性の無いだろう一般人じゃ気がふれてもおかしくない。私でも何だか胸の奥がざわついて仕方がないわ…」
 展示物を極力見ないようにして奥へと進む霊菜。それでも先に進むための扉を探すためには辺りを見回さなければいけない。嫌がおうにも展示物が目に入る。霊菜の脳裏に両親がこの世に居ないのだと突き付けられた時の事が蘇る。顔も声も、どんな人達だったかも覚えていないのに。
幸せだった気持ちと、辛くて苦しくて怖い気持ちが胸の奥から湧き上がる。霊菜が思い出そうとしても思い出せない、そして、思い出さない方がいい記憶。嫌だ、嫌だと思うと足取りも重くなる。それでも霊菜は足を進める、頼りになるものがあるから。
「今私はとても幸せなのだから、こんなモノに捕らわれてたまるものですか」
 今の私には大切なものがあるから、それを思いながら霊菜は次なる階層に向けて歩いていった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

政木・朱鞠
うえ~!悪意を寄せ集めた博物館か~、なんだか実家のスパルタ修行みたいで不愉快になっちゃうね…。
毒気に当てられた連中に押し倒されたりしたけど…強引にされるのは嫌いじゃないとはいえ、修行で共倒れは勘弁して欲しかったからね…ちょっと(雑巾を絞るゼスチャー)しちゃったの思い出しちゃったじゃないか…。
イライラするから、八つ当たりついでに乱暴に通らせて貰うよ…という訳で、理不尽がまかり通る時間は早々に閉館だよ!

行動【POW】
『九尾妖力術』で手数を上げ底して全力でぶつかって行くよ。
得物は【なぎ払い】の技能と相性が良い『ハチェット』を使いつつ、趣味の悪いこの空間にダメージを与えてやりたいね…。

アドリブ連帯歓迎

「うえ~!悪意を寄せ集めた博物館か~、なんだか実家のスパルタ修行みたいで不愉快になっちゃうね…」
 政木・朱鞠(咎忍殺し・h02374)はげんなりしながら言った。朱鞠は手当たり次第に暴れ回ってまわりの展示物を壊していく。娘を救うために母親を手にかける男の絵画を、借金のカタに買い取った子供を戯れに生き埋めにしていぶして殺す男の絵を、犯罪を犯した夫を殺された悲しみで、善良な領主を刺し殺す女の彫像を。
「イライラするから、八つ当たりついでに乱暴に通らせて貰うよ…」
 朱鞠が通った後には切り刻まれた展示物が散乱していった。しかし、それらは時間が経てば光とともに蘇ってくる。まるで、おまえがまき散らしているのも悪意だと言わんばかりに。何度も展示物を刻みながら、朱鞠は気づいた。一つだけ、壊すことが出来ないものがある。それは「堕落させるものの姿」というタイトルのついた、鎌を持った女性の絵だった。大きな油絵のわりに、他の作品ほどの露骨な悪意の描写はなかったがなぜか心をざわつかせる絵だった。絵を通して誰かに見られているような気もする。
「理不尽がまかり通る時間は早々に閉館だよ!」
 怒りを込めて朱鞠がハチェットを叩き込むと、ハチェットごと朱鞠は絵の中に消えていった。どうやらここが次の階層への入り口のようだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

御剣・峰
WIZ行動

トラウマ?
なんともくだらない攻撃を仕掛けてくるものだ
そんな物に囚われている様では天武古砕流の後継者になれはしない
私の内に眠る鬼に心を食われ、私はとっくに人ではなくなっているだろう
その道を呪ったことも嘆いたこともない
確かに、血で濡れた道だ。人を殺す道だ。だが、その過程で私は得難い友を得た。闘う度に学んだ。それがトラウマだと言うなら勝手にそう思えば良い
私の出会いも、経験も、私だけの大事な財産だ。それを侮辱すると言うのなら、貴様に相応の報いをくれてやろう
さっさと出て来い。私はもう堪忍袋の尾が切れそうだ

「トラウマ? なんともくだらない攻撃を仕掛けてくるものだ。そんな物に囚われている様では天武古砕流の後継者になれはしない、私の内に眠る鬼に心を食われ、私はとっくに人ではなくなっているだろう」
 御剣・峰(蒼炎の獅子妃・h01206)はぽつりと呟く。峰は天武古砕流の正統後継者だ。厳しい修行の果てにその証を得た、その中には心の鍛錬も含まれている。左右に並ぶ友殺しの彫像、明日の糧のために施しをしている善良な金持ちを殺す子供の絵、飢えのために盗みに入った子供をかまどで焼き殺す下働きの男。そんな不快な光景を目にしても心が揺らぐことはなかった。
「その道を呪ったことも嘆いたこともない。確かに、血で濡れた道だ。人を殺す道だ。だが、その過程で私は得難い友を得た。闘う度に学んだ。それがトラウマだと言うなら勝手にそう思えば良い」
 峰は坑道の最奥にたどり着く、そこには大きな絵が飾られている。「堕落させるものの姿」と言うタイトルの絵だ。その顔があざ笑うように姿を変えてように思えた。人の全てをあざ笑い、人の想いをくだらないと切り捨てるそんな笑いだった。
「さっさと出て来い。私はもう堪忍袋の尾が切れそうだ! 私の出会いも、経験も、私だけの大事な財産だ。それを侮辱すると言うのなら、貴様に相応の報いをくれてやろう!」
 凜とした峰の声が坑道に響き渡った。
「とてもいい、その怒りが、あなたを滅ぼすところが見たい。楽しみだわ」
 不快な女の声がしたかと思うと、峰は絵の向こう側にたどり着いていた。恐らくここが次の階層なのだろう。ここを越えればダンジョンの主はすぐそこにいるはずだ。
🔵​🔵​🔴​ 成功

ヘリヤ・ブラックダイヤ
ふむ、なるほど……
生贄に捧げられる者の立場というのはこういうものなのだな。
人の生活や良し悪しなど気にしたことがなかったからな、興味深い。

興味はあるが……感慨は湧かんな。
大きな虫が小さな虫を踏み潰し、捕食していたところで虫は虫だ。
見知った者ならばいざ知らず、知らぬ他人など|私たち《ドラゴン》にとってはその程度に過ぎん。
暴虐を振るわれる側を見て消沈するような者が暴虐を振るうはずもなかろう……覚えていないが。

トラウマも恐怖も、私たちは|与えられる側ではない《与える側だ》ということをここの支配者とやらに刻んでやろう。
√能力で強化された腕力で斧を振るい、景気づけに彫刻を破壊して先へ進む。

「ふむ、なるほど……。生贄に捧げられる者の立場というのはこういうものなのだな。人の生活や良し悪しなど気にしたことがなかったからな、興味深い」
 ヘリヤ・ブラックダイヤ(元・壊滅の黒竜・h02493)は悪趣味な作品の間をもの珍しげに眺めつつ坑道を奥へと進んだ。特に感慨は湧かない。大きな虫が小さな虫を踏み潰し、捕食していたところで虫は虫、同じところを這っているもののことはわからない。わたしたちはドラゴンなのだから。
「暴虐を振るわれる側を見て消沈するような者が暴虐を振るうはずもなかろう……覚えていないが」
 つまらなそうに斧を構えるとヘリヤは無造作にあたりの彫像を壊す。許しを請い他のものに罪を着せようとする男を、気に入らないものを戯れになます斬りにさせる気の小さな老人を、バラバラにしていく。
「トラウマも恐怖も、私たちは与えられる側ではないということをここの支配者とやらに刻んでやろう」
 一番大きな絵画に斧を突き立てた時に声が聞こえた。
「あなたの傲慢さ、とても素晴らしい。招待いたします。ふふ、とても楽しみです。あなたに会えるのが、ここまで来て下さいね」
 くだらない、そう吐き捨てた言葉とともに、ヘリヤは絵の奥に吸い込まれていった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

第2章 ボス戦 『変幻の権能『ジェッロ・ペンタメローネ』』


POW あり得ないはあり得ないのだ!
【ふわふわのぬいぐるみ】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
SPD 純粋な知恵の権能《コクマ・パフォーマンス》
10÷レベル秒念じると好きな姿に変身でき、今より小さくなると回避・隠密・機動力、大きくなると命中・威力・驚かせ力が上昇する。ちなみに【美魔女】【腹ペコな芋虫】【訛り気味なゴーレム】への変身が得意。
WIZ 行くのだ、パセリちゃん!
インビジブルの群れ(どこにでもいる)に自身を喰わせ死亡すると、無敵獣【プレッツェモリーナ】が出現する。攻撃・回復問わず外部からのあらゆる干渉を完全無効化し、自身が生前に指定した敵を【伸縮自在の綺麗な髪の毛】で遠距離攻撃するが、動きは鈍い。
√EDEN 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「ああ、おもしろそうなヤツらだ。心が壊れたヤツは大歓迎だよ。調べがいがある。どこから試せばいいかな」
 無邪気な笑顔を見せてジェッロ・ペンタメローネは好奇心を隠さずに言った。この博物館の管理人、この区画の統括者、無邪気な悪意の持ち主だ。ジェッロはその好奇心で趣味の悪い作品を集め、それをこの坑道に飾っている。自分で作品を作ることもするし、壊れた作品を配下に直させることもする。もっと人間のことが知りたい。もっと突き抜けた、狂った人間のことを、キミたちはそれを教えてくれるんだよね。ジェッロの目はそう言っていた。ジェッロを倒せば先に進む回廊の封印が解け、ダンジョンの主のもとにたどり着けるはずだ。
矢神・霊菜
あなたね、あの展示物を飾ったのは
悪いけどあれくらいで心が壊されるほど軟じゃないわ
私にはちゃんとこの心を支えてくれる大切な人たちが居るもの

【先制攻撃】で動かれるより先に攻撃をしかける
【第六感】があまり行動させない方が良いって訴えてくるのよね
まあ、もし何かあっても氷翼漣璃で辺り一帯を氷漬けにしてあげる

ジェッロからの攻撃に対しては【第六感】と【見切り】を使い回避する
この階層にはモンスターも居るって事だし、そっちからの攻撃や妨害にも注意をしておいた方が良いかしら
とはいえやる事はジェッロ相手とそう変わらないけど

※連携・アドリブ大歓迎
御剣・峰
人間が知りたい?
そうか。なら教えてやる。世の中にはお前の望む狂った人間がいることを
私がそうだ。武に取り憑かれ、武に狂った一族の人間
そんな私をお前たちは怒らせた。まともに死ねると思うなよ

あり得ないはあり得ないのだ!でぬいぐるみの触れた場所が使えなくなるのなら、第六感でぬいぐるみの軌道を予測し、見切りで最小の動作で避けつつ、リミッター解除で肉体の限界を無くし、肉体改造と全力魔法で身体能力を引き上げ、残像を残す速さで最短距離を一気に駆け抜け、相手が許しを乞おうが、泣き叫ぼうが死ぬまで冷酷に殴り続ける
「お前たちに私の鬼が騒ぐ事はない。ただ、刺客としての戦い方に徹するだけだ」
政木・朱鞠
好奇心は大事だけどさ…可愛い顔して物騒な子だね。
一応、お巡りさんの端くれだから『人に攻撃してみたかった』みたいな事を言って、人を物みたいに扱うイケない実験をする悪い子によく関わっちゃうんだよね…。
被虐の味を覚えて、邪な欲望を満たすために非道を平気で行なう悪いお子ちゃまはその歪んだ心ごと砕いてあげるんだよ。
命を軽んじて抗う術のない人達を探求心のターゲットにする、その咎はキッチリ償ってからお覚悟よろしくって?

戦闘【SPD】
初手は確実にターゲットとの間を詰めてたいから、【闇に紛れる】を併用しながらギリギリ接近してたいね。
手数を能力で補いながら、得物は【居合】の技能と相性が良い『デコポン』を使いつつ、【なぎ払い】や【傷口をえぐる】で間を置かずダメージを与えたいね。

アドリブ連帯歓迎

 おもちゃ箱をひっくり返したような部屋にジェッロ・ペンタメローネは立っていた。目にはおもしろそうなものを見つけた子供のような好奇心が浮かんでいる。何を見せてくれるの? その目はそう言っていた。
「好奇心は大事だけどさ…可愛い顔して物騒な子だね。一応、お巡りさんの端くれだから『人に攻撃してみたかった』みたいな事を言って、人を物みたいに扱うイケない実験をする悪い子によく関わっちゃうんだよね…」
 政木・朱鞠(咎忍殺し・h02374)は悪い子にお説教するような調子で言った。仕事が増えちゃって困っちゃうなという感じの軽いノリだった。
「体をえぐると死んじゃうからダメだぞ。心をえぐった方がおもしろい反応が見られる」
 まじめな顔でジェッロが返す。
「あなたね、あの展示物を飾ったのは。悪いけどあれくらいで心が壊されるほど軟じゃないわ。私にはちゃんとこの心を支えてくれる大切な人たちが居るもの」
 矢神・霊菜(氷華・h00124)が噛みしめるように言った。じジェッロの反応はつまらなそうだ。
「普通だよ普通、もっと変なことは……」
 言い終える前に霊菜が冷気を放つ。ジェッロの足もとから氷が立ち上り、ジェッロの足を凍りづけにする。ジェッロは楽しそうに笑う。
「そうそう、ちょっと変わったこと、そう言うのがいい。もっと何かないの?」
 ジェッロは大きな芋虫の姿になって玲奈を襲う。
「邪な欲望を満たすために非道を平気で行なう悪いお子ちゃまはその歪んだ心ごと砕いてあげるんだよ」
 朱鞠も霊菜に合わせて氷の弾丸を撃つ。部屋の中が霜で埋まり、芋虫にいくつもの風穴が空くと、そこから氷の玻璃が広がる。痛い、痛い、おもしろい、ジェッロの歪んだ感受性が狂った声を上げさせている。ああ、死んじゃう、いい。そう言うとジェッロは自身をインビジブルの群れに食べさせる。芋虫を咀嚼する嫌な音が響く。
「行くのだ!」
 倒れたはずのジェッロの声がすると子供が描いたみたいなメチャメチャな怪獣が現れた。怪獣の長い金色の髪が生き物のように舞った。
「人間が知りたい? そうか。なら教えてやる。世の中にはお前の望む狂った人間がいることを。私がそうだ。武に取り憑かれ、武に狂った一族の人間。そんな私をお前たちは怒らせた。まともに死ねると思うなよ」
 怒りに燃えて、御剣・峰(蒼炎の獅子妃・h01206)は宣言した。それに対してジェッロは、ごめんね、残念だけどもう死んじゃったんだと困った顔をする。
「もっと色々試してみたかったんだ、心を知るためには一度壊すことが大切だろ?」
 とまじめな調子で話すジェッロ。
「キミたちの心を壊すにはどうすればいいのかな。その自信と信念を砕けばいいのかな。終わることがない苦しみか、終わることがない喜びを無理矢理与えればいいのかな。うーん」
 怪獣が暴れる中、峰は冷静に拳を叩き込むが、ぬいぐるみを殴っているようにふにゃふにゃして手応えがない。奇声を発して暴れ回る怪獣、それを止めたのは霊菜の氷の鷹だった。一つ羽ばたくと冷気の風を吹かせ、怪獣を凍らせていく。凍って硬くなってしまえば砕くことも出来るはずだ。
「私の心を砕くことは出来ないわよ。私を支えてくれる人は私の外にあるのだから。私と居てくれるのだから」
 霊菜は穏やかな声で言う。一人ではない、自分以外の存在がくれるものを霊菜は知っている。それ故、ジェッロに心を乱されることもない。
「さてと、その咎はキッチリ償ってからお覚悟よろしくって?」
 闇に紛れて怪獣の背後に回っていた朱鞠がデコポンを抜き撃つ。鞘から抜き放たれた刃が凍って硬くなった怪獣の体を斬り裂き、えぐり、深い傷を作った。
「あり得ないのだ!」
 ジェッロはぬいぐるみを呼び出して最後の抵抗を試みる。
「あたしにとっては必然だ」
 唇を真一文字に結んだ峰が怪獣の傷口に拳を叩き込む。一撃で腕が落ち、二撃目で首を落とす。それでも怪獣は動きを止めない。あり得ないのだ! と言っているかのように。峰は冷徹に拳を突き刺していく。胴が崩れ、足が欠け、最後には金色の髪だけが残った。
「お前たちに私の鬼が騒ぐ事はない。ただ、刺客としての戦い方に徹するだけだ」
 最後に正拳を叩き込むと、怪獣は溶けて消えていった。
「なかなかおもしろかったよ。また会いたいね」
 それきりジェッロの声は聞こえなくなった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『堕落者『ジュリエット』』


POW レガシー・オブ・デス
【処刑鎌型の遺産『ルート・ハーヴェスター』】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【√能力無効化空間】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
SPD フォービドゥン・フルーツ
爆破地点から半径レベルm内の全員に「疑心暗鬼・凶暴化・虚言癖・正直病」からひとつ状態異常を与える【禁断の果実(食べた者にも効果がある)】を、同時にレベル個まで具現化できる。
WIZ スレイブ・オブ・ジュリエット
あらかじめ、数日前から「【地域に生息する存在を無差別に隷属化する】作戦」を実行しておく。それにより、何らかの因果関係により、視界内の敵1体の行動を一度だけ必ず失敗させる。
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

 その女性は見たことがあった。「堕落させるものの姿」そのものだったからだ。その女性『堕落者『ジュリエット』』はゆっくりと立ち上がって言う。
「ここまで来てくれてどうもありがとう。あなた方の悪意に感謝するわ。怒り、傲慢、理不尽、十分に楽しませてもらったわ。あなたたちもワタシのように墜ちてしまえばいいのよ。もっと自由に、自分だけの喜びを求められるようになるわ。もっともっと、人が狂うところを見られるわ」
 熱に浮かされたようにジュリエットは話す。彼女を倒さなければこの悪意に満ちた場所を消すことは出来ない。
ヘリヤ・ブラックダイヤ
つまらんことを言う。
高みにいた|私たち《ドラゴン》にとって、人の営みは些事に過ぎない。人が狂うこと程度に感慨など抱くものか。
思うままに生き、求めれば手に入る。自由な生。何だろうとできるというのは退屈なものだ。

今のこの体はどうだ。人の営みへと組み込まれるしかなく、思うままにふるまえるほどの力もない。ままならぬ、不自由なことばかりだ。
だからこそ「蹂躙」ではなく「戦闘」が可能になった。勝つために腕を磨くこともするようになった。
不自由というのは存外いいものだ。お前には分からんだろうがな。

竜爪刃で斧の攻撃→鎌での攻撃を剣で「武器受け」→斧での攻撃→鎌での攻撃を「見切り」回避しながら剣で攻撃
と繋ぎ、こちらが攻撃を回避したことで√能力無効化空間を作り出されたら黒竜覚醒。外部からの影響を遮断する鱗で行動成功率半減の影響を無視し、黒のブレスで結晶化させ砕く。

……しまったな。人の体の戦闘技巧のみで倒すつもりが、つい元の体に戻ってしまう。
もっと腕を磨かねばならんな。
矢神・霊菜
なるほど、アレが此処のボスなのね
さっきのやつよりずっと悪意に満ちた存在…
堕ちる気はないし、これ以上あなたを楽しませるつもりもない
さっさと倒して終わらせましょう

√能力の氷雪で視界を奪い、【先制攻撃】と肉体の【限界突破】で速度を上げ、一気に接近する
そのまま凍って動けないだろう相手へと攻撃する

相手からの攻撃に対しては【第六感】と【見切り】で回避する
回避して√能力が無効化されても今までの冒険者としての経験からくる【戦闘知識】のおかげで戦えないなんて事には陥らないわ

※アドリブ・連携大歓迎
御剣・峰
お前が首魁か
趣味の悪い美術品を集めるだけあるな
あぁ、何も語らなくて良い。お前と話す気はない。ただ独り言を言ってるだけだ
お前をここで斬ることに変わりはないのだからな

スレイブ・オブ・ジュリエットでこちらの攻撃が一度は必ず失敗するのなら、それを織り込んで、第六感で相手の攻撃を予測し、見切りで相手の行動を読み、リミッター解除で身体能力の限界を無くし、肉体改造と全力魔法で身体能力を強化し、三倍に強化された能力に反応し、残像を残す速さで最短距離を一気に駆け抜け、鞘打ちから剣撃に繋げる二段抜刀術で攻撃し、斬り捨てる
「お前と話す事は何もない。目障りだ。さっさと失せろ」
政木・朱鞠
狂気に身を任せて堕ちるか…たしかに、面白そうだけど…。
でもね、残念ながら今はまだ理不尽な事柄に抗う術なき人たちを災いに巻き込まないよう戦っていたいんだよね…私。
貴方のお楽しみに水を差すようで申し訳ないけど、無用に世間を掻き混ぜるだけのお遊戯はさっさと終わらせて貰わないとね。
世を乱し人に危害を与える無粋な人には逮捕じゃ済まさないからね…お覚悟よろしくって?

戦闘【POW】
ジュリエットちゃんが歪んだ価値観を楽しみたいのなら、こちらもその価値観をぶん殴れるだけ力を見せるだけだよね…。
どれ位ダメージ軽減ができるかはわからないけど【武器受け】や【霊的防護】の技能を使いつつ、【傷口をえぐる】【リミッター解除】の合わせで間を置かずダメージを与えたいね。

アドリブ連帯歓迎

「お礼をしないといけませんね」
 ジュリエットはそう言って笑う。
「あなた方を包んでいる枷、常識や大事なもの、それから解き放ってあげましょう。あなた方にも見えるはずです。そうすれば」
 その顔は恍惚して上気している。誘うように鎌を頭上に振り上げ。√能力者達を誘う。
「つまらんことを言う。高みにいた私たちドラゴンにとって、人の営みは些事に過ぎない。人が狂うこと程度に感慨など抱くものか」
 ヘリヤ・ブラックダイヤ(元・壊滅の黒竜・h02493)がくだらないと吐き捨てる。竜であった彼女にとっては些細なことに囚われているジュリエットは滑稽ですらあった。
「その傲慢さ、素晴らしい。狂いもせずに尊大なさま。こうして待っていた甲斐がありますわ」
 うれしさを隠さずにいるジュリエットに斧を叩きつけるうヘリヤ、ジュリエットはそれを包み込むように受けるとそのまま鎌でヘリヤを切り裂こうとする。逆手に持った剣で鎌を受けるも背中を切り裂かれるヘリヤ。その痛みも気にせずにジュリエットの眉間に斧を突き立てる。
「素晴らしい、素晴らしい。たぎる感情は素晴らしい。お返しします」
 額から血を流しながらジュリエットがヘリヤの頭を掴んで鎌を首に突き立てようとする。すんでの所で鎌を避けるヘリヤ。つかまれた頭を視点に回転しながらジュリエットを斬りつける。ジュリエットの左腕から鮮血がほとばしるがジュリエットは笑ったままだ。その瞬間、ジュリエットの視界が白く染まる。矢神・霊菜(氷華・h00124)が振りまいた氷雪が視界を奪ったのだ。
「なるほど、アレが此処のボスなのね。さっきのやつよりずっと悪意に満ちた存在…」
 霊菜はそう呟くとより強い冷気を放ちジュリエットを氷で包む。一瞬動きが止まるジュリエット。待ってましたとばかりに飛び込んだのは政木・朱鞠(咎忍殺し・h02374)。
「狂気に身を任せて堕ちるか…たしかに、面白そうだけど…。でもね、残念ながら今はまだ理不尽な事柄に抗う術なき人たちを災いに巻き込まないよう戦っていたいんだよね…私」
 ハチェットでジュリエットを一閃してからそうこぼした。胸から血を垂らしても、ジュリエットの様子にはみじんも変化がない。
「ふふ、あなたももう狂っているようなもの。最後のたががまだ外れていないだけなのに、実に惜しいですわね。何を奪えばいいのかしらね。何を与えればいいのかしらね。そうすればあなたの場所から滑り落ちるのかしら」
 ジュリエットは人を堕落させる果実をばらまく。朱鞠はそれをデコポンで切り落とす。
「それはなにか? 誰かに聞いているようじゃまだまだだよ。世を乱し人に危害を与える無粋な人には逮捕じゃ済まさないからね…お覚悟よろしくって?」
 ふわりとした笑顔で朱鞠は宣言する。その横から、御剣・峰(蒼炎の獅子妃・h01206)がゆっくりと現れた。
「お前が首魁か」
 峰はそう言うと、鞘に収まった刀に手をかける。
「来ないのですか? いいでしょう。あなたからの怒りはヒシヒシと感じています。とてもいい。とてもいいですわね。それでこそ私が望んだもの。私から贈り物をあげます」
 ジュリエットが手を振ると地面から一面の花畑が現れる。視界が塞がれ、ジュリエットを見失う峰。こちらですわ。声がする方に蹴りを放つと、たたき割った木の実からぬめる液体が飛び散る。
「そう、全ては私の手の内。あなたを堕とせるのは至上の喜び。さあ、私の元へ!」
 勝利を確信し鎌を振り上げてほくそ笑むジュリエット。峰の顔にうっすらと笑いが浮かぶ。
「あんたの策はわかっていた。それを見越していたんだ」
 限界を超越した強化で抜き撃たれた刀は、音もなく残像を纏ってジュリエットの胸に吸い込まれた。ガンッと言う打撃音の後、ジュリエットの上半身がくの字に曲がり、音もない斬撃が胴を斬り裂く。
 「困りましたわね。体が二つに割れてしまいましたわね」
 上半身と下半身を別々に動かしながらジュリエットは笑顔を崩さなかった。
「体は大事な器ですのに。これではもっとおかしくなってしまうかもしれませんね。ふふふ、楽しいですわね」
 より一層、目を見開いた笑顔で笑うジュリエット。
「貴方のお楽しみに水を差すようで申し訳ないけど、無用に世間を掻き混ぜるだけのお遊戯はさっさと終わらせて貰わないとね。ジュリエットちゃんの歪んだ価値観をぶん殴ってあげるよ」
 印を結ぶと冷気の弾丸がジュリエットに突き刺さる。弾丸が命中した場所から氷が広がっていき、ジュリエットの体が裂けていく嫌な音が響く。
「ああ、もう脚がぐしゃぐしゃになってしまいましたわ。でも、あなたの心を散り散りに出来るなら安いものですわね」
 花園から猛烈な甘い匂いが漂ってくる、ジュリエットの体を栄養に生長した植物が悪意の花を咲かせる。
「思うままに生き、求めれば手に入る。自由な生。何だろうとできるというのは退屈なものだ」
 それを止めたのは黒竜と化したヘリヤだった。一声吠え、漆黒のブレスを吐くと周囲の花は黒い結晶となって崩れ落ちた。ジュリエットの左半身も黒い宝石のように結晶化している。ヘリヤは複雑な顔をして言った。
「……しまったな。人の体の戦闘技巧のみで倒すつもりが、つい元の体に戻ってしまう。もっと腕を磨かねばならんな。不自由というのは存外いいものだ。お前には分からんだろうがな。」
「あなたの満ち足りたさま、とても残念ね。それでは狂うことは夢よ」
 ジュリエットが不満をあらわにした。そんなジュリエットを覚悟のこもった顔で真っ直ぐに見つめ、霊菜は腕に冷気を集める。
「私は堕ちる気はないし、これ以上あなたを楽しませるつもりもない」
 ジュリエットに凍気を叩き込もうとする霊菜。それを迎え撃つジュリエットの鎌。二人が交差した後、霊菜が膝をつく。にやりと笑うジュリエット。
「ああ、残念。あなた見たいのを堕落させるのが一番楽しいのに」
 白い雪に包まれたジュリエットは空中で粉雪のように砕け散った。
「私には帰るところがあるから」
 霊菜は立ち上がりながらそう言った。悪意と狂気を振りまいたダンジョンはこうして崩れ去ったのだった。
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