シナリオ

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【王権決死戦】星芒は散るか、破滅主義

#√EDEN #宿敵旅団 #ペンタクルム・ゲート #王劍『縊匣』 #王権決死戦 #ペンタクルム・ゲート最終決戦

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 #√EDEN
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『ペンタクルム・ゲート』関連シナリオ

これは、宿敵旅団『ペンタクルム・ゲート』に関連するシナリオです。これまでの物語は、#ペンタクルム・ゲートで確認できます。
このシナリオに登場する宿敵は、宿敵主との『Anker』関係が失われています。

王権決死戦

これは王権決死戦です。必ずこちらのページを事前に確認の上、ご参加ください。
また、ページ右上の 一言雑談や特定の旅団等で、マスターが追加情報を出すこともあります。

●√
 集結。
 それは何かを成すために行われるものであって、徒に集まるものではない。
 ということは、だ。
『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男は、なるほどと理解した。
「んで、あんたが戻ってきたってだけじゃあ、今、俺達が集まるのはリスキーが過ぎるよな。あるんだろ? こうもEDENの連中にコテンパンにされた俺等が盤面ひっくり返せるような何かが」
 彼の言葉に『心と可能性を探求する者』が静かに頷く。
 宿敵旅団『ペンタクルム・ゲート』において、中心であったのは言うまでもなく『アンドロスフィンクス』だった。
 しかし、それも絶対死によって喪われた。
 今ここにあるのは、己たちの計画を邪魔するEDENたちへの憎悪のためであった。少なくとも『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男にとってはそうだ。
 他の簒奪者がどうか走らないが。
「気に食わねーんだよな」
 彼の苛立ちとは裏腹に『心と可能性を探求する者』が呼びかけると、空間が切り裂かれ、その内側から飛来するものがあった。
 数にして十四。
 彼はそれを具に把握していた。
「剣……いや、これは」
「……白い劍。清羅は白い劍を追って……気づいたら、異空間に着いてた……」
 切り裂かれ、開かれた空間から姿を表したのは、十四の劍だけではなかった。
 現れたのは、骸纏ノ姫『清羅』だった。

 彼女は語る。
「その、異空間が……『ペンタクルム・ゲート』の中枢……アンちゃんが、開きたかった、扉……」
「白い劍ってのは、王劍『縊匣』か。しかし、これはあれだろ。小王劍ってやつだ。これはアンタが?」
「そう……清羅はゲートを守るために、少しだけ……みんなの分だけ奪ってきたの」
 彼女はわずかに申し訳なさそうな顔をしたが、十分と言えば十分な戦果とも言えた。
「いやいや、俺なんかあれだよ? そっこーでボコにされて、戻ってくるだけで成果らしい成果もあげられてねーんだって。誇っていーぜ。んで、やるんだろ?」
『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男は笑った。
 そう、この期に及んでまだ笑ったのだ。
 ここが『ペンタクルム・ゲート』の分水嶺。
 退路はない。あるのかもしれないが、彼の中にある悪意が膨れ上がっていく。

「……アンちゃんがしたいこと、できなくなっちゃう……」
「なら、やろーぜ。やりつくしてやろーぜ。そんでもって、EDENの連中に一泡吹かせてやろーな。ああ、それがいい。連中が度肝を抜くような、反吐が出るような顔を見てみたい」
 彼はそう言って、飛来した小王劍を手にした。
 奮える。
 そう、震えではなく、奮えたのだ。
 殺してやろう。
 思う存分に。
 悪意のままに――。

●悪意
 つまり、話を要約するとこうだ。
 王劍『縊匣』は、おそらく『アンドロスフィンクス』の計画が頓挫しかかっていることで、『ペンタクルム・ゲート』に見切りをつけた。
 そして王劍『縊匣』にエネルギーが奪われたせいで、『ペンタクルム・ゲート』の本体とも言うべき『5つの扉のある異空間』が、消滅しかかっている。
 これを消滅させないことが、まず第一。
 方法は単純明快。
「エネルギー源、つまりは大量のペンタクルム・パールが必要になるってことだ。これが消えちまうと、俺等のそもそもの目的も丸潰れってわけだ」
「然り」
 手にした『邪剣・禍骨』は肯定する。
 簒奪者の男は、ふむ、と頷く。
「んで、こっちね。問題は」
「小王劍。これにより、人間を殺害することで悪意を育てることなくペンタクルム・パールを生成することができよう」
「これまでの苦労は何だったのって感じだよな。いやまあ、なんなら、最初から王劍『縊匣』の小王劍を狙ってた方が早かったまであるんじゃね?」
「詮無きこと」
「左様で。んじゃま、獲物をえり好みしなくて済むってわけだ。つまり」
「数多くを殺せば良い。さすれば、得られん」
「ま、なら、俺等の目的は簡単だ。ぶっ殺して、ぶっ殺して、ぶっ殺す。ついでに、王劍『縊匣』も追いかけて見つけ出すってわけだ。そんでもって、あとのことは、他の連中に任せよっと」
「王劍『縊匣』あらば、簒奪されしエネルギーと王劍が持つインビジブルを組み合わせて完全な形で『ペンタクルム・ゲート』は成就される。これにより、5つの扉で5つの√を絆ぐ望みは果たされよう」
「ハッ、そう簡単に上手く事が運ぶもんかね? いやまあ、そうなんだって言われたら、そうなのかも? って思ってしまうような説得力ある説明どうもね。ま、どっちだっていいや」
 簒奪者の男は、やはり酷薄に笑う。
 そう、己に大切なことは、多くを殺すこと。
 多くの悪意を育てること。
 ただそれだけなのだ――。

●星詠み
 それは冷たい水面のような青い瞳だった。
 黒髪が揺れて、星詠みである鍵宮・ジゼル(人間(√汎神解剖機関)の怪異解剖士・h04513)は、冷静さこそが常であるような平らな表情で集まったEDENたちに呼びかけた。
「お集まりいただき、ありがとうございます。宿敵旅団『ペンタクルム・ゲート』が各地で一般人の襲撃を開始したようです」
 彼女の表情は変わらない。
 宿敵旅団の簒奪者『邪剣・禍骨』。
 これを持つ男は、なんと王劍『縊匣』の小王劍を手にしている。
 彼らが如何にしてこれを手にしたのかは不明だが、それにより生み出される被害は甚大なものとなるだろう。

「彼らはこれまでと違い、一般人を殺すことでペンタクルム・パールを生み出しているようです。以前のようにただちに戦闘力が強化されるということはないようですが、ペンタクルム・パールを溜め込むことで何かを利用しようとしているんかも知れません」
 彼女はそう告げて、√EDENを示す。
「どうやら、彼は白昼堂々とスクランブル交差点に現れ配下と共に虐殺を開始するようです。目につくものを片端から、です。老若男女問わず、です。この虐殺を止めねば、彼らの目論見を果たさせてしまうことでしょう。そして何よりも、これは……『決死戦』です。Ankerとのつながりの断たれた状態……つまり、絶対死領域にあるのです」
 危険性は言うに及ばず、だ。
 だが、これを見逃せば、簒奪者たちは虐殺の限りを尽くして、ペンタクルム・パールを生成するだろう。
 それを止めねばならない――!
これまでのお話

第3章 ボス戦 『邪剣・禍骨』


POW |禍骨焼滅堂《カコツショウメツドウ》
【相手の殺害方法】を語ると、自身から半径レベルm内が、語りの内容を反映した【惨殺空間】に変わる。この中では自身が物語の主人公となり、攻撃は射程が届く限り全て必中となる。
SPD |叫喚鏖殺剣《キョウカンオウサツケン》
【邪剣に惨殺された霊】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【|魂喰《タマハミ》の剣】」が使用可能になる。
WIZ |流転穿断割《ルテンセンダンカツ》
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【邪剣】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【周囲に溶け込む焔】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
イラスト 函田実烏
√EDEN 難しい20 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●小王劍
『どれだけ生きるのだとしても、土に帰る。
 己は土塊。
 なれど歩き回り、考えうる限りを考える土塊。
 例え塵だから、塵に帰るのだと言われても、己の一片も奪われることはない』

「ハッ、しつこいのは知ってるけどさ、大概でしょ」
『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男は、己の背に迫るEDENたちを見た。
 彼らの瞳に強い意志を感じた。
 なんとしてでも、という強烈なものだ。それはキラキラきらめいているようにも思えてならなかった。
 破れかぶれでもなければ、死後蘇生があるから、という驕りもない。
 それはそうか、と彼は笑った。

 手にした小王劍。
 その力が解放される。
 EDENたちは己の『欠落』を埋め得る存在、Ankerとのつながりが途絶したのを直感的に理解しただろう。
 寄る辺もなく、寄す処もない。
 ただ独り海原に漂うかの如き不安が襲い来る。

 故に『絶対死領域』。

「さって、追いつかれちゃったのなら腹をくくるしかねーよな。やるぜ、『邪剣・禍骨』。連中をすべからくぶち殺して」
「さらなる悪意を世にもたらさん。気高き理想の果てに、訪れる瓦解の様こそ、我らが悪意の結実であるがゆえに」
「ああ、そのためのEDEN衝動ってやつだ。さあ、EDENよ、見せてくれよ。あんたらがどれだけ、見ず知らずの誰かの為に生命を賭けられるのか。その理想の高さってやつを――!」

――――!!!警告!!!――――
 ※このシナリオに参加希望の方は、プレイングの冒頭に【死を覚悟する】と記載してください(【 】も必要)。記載がない場合は採用できません。
 ※前章までのご自身のキャラクターのリプレイにおける状態、​🔴の数をよくご確認ください。ですが、それも宛にはできません。
 ※難易度をよくご確認ください。『至難』です。
 ※このシナリオは王権決死戦です。参加者には『絶対死』の危険性があります。
 ※絶対死したキャラクターは殆どのコンテンツが使えなくなり、二度と蘇ることはありません。覚悟のうえで、王権決死戦にご参加ください。
――――!!!警告!!!――――

●√
 誰かの瞳に写った亀裂走る世界を視るのは『欠落』。
『欠落』を抱えるのは、その心が健全ではないからだ。 
 健やかな心には、忌むべき真実の記憶は刻まれない。
 真実は時として人を不幸にする。
 なら目指すべき約束の場所――楽園を知りながら、√能力者は皆等しく不幸である。

 君は否定するだろう。
 しかし、厳然として眼の前には真実しかない。現実は偽らない。偽るのは己の心だけだ。
 それでも忘れることはできない。
 √能力者は『欠落』得て、知ってしまったからだ。
 正道ではない己を。
 王道ではない己を。
 さりとて邪道でもない己を。
 ただ不幸にも異端に成ってしまった己を。
 故に、君は視るだろう。
 数多に重なった√を。

 死することのできぬ運命は、今、『王劍』によって断絶された。

 選べ。
 その手で。
 生か、死か。その√を――。
※修正。
※難易度は『難しい』でした。
折木・龍也
【死を覚悟する】
ヤロウも絶好調だな、ずいぶん煽ってくれるじゃねえか!
だが破壊工作屋だぜ俺は。一人で首狩りなんてガラじゃねえよ
目の前で好き勝手されるのが気に食わねえだけだ
それが高い理想だってんなら、そうなのかもな!
ユーサネイジアで距離を取り、ラスト・コールで射撃。爆撃に使ったドローンも特攻させ弾幕を張る
寄られれば霊震で踏み込みと姿勢を乱す
斬撃には銃を持たない腕を割り込ませ、コクピットと銃を庇う
損傷は覚悟の上、欲張らずブースターで距離を切り再び制圧射撃
外部スピーカーで叫ぶ
命を賭けるなとは言わねえ!だが捨てるんじゃねえぞ!
俺は俺にできることをやる。削って、繋いで、次へ渡す。
それで全員帰れりゃ上等だ!

「ああ、そうだな。だとすると、あんたの殺し方っていうのは、希望も一切合切見えぬような暗闇の中、というのがふさわしいのかもしれないな――」
 語る言葉は世界を塗り替える。
 折木・龍也(伏龍・h13162)は、追いすがった『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男が振り返り、そう語った言葉を聞いた。
 刹那、怖気が背筋を走り抜けた。
 まずい、と思ったのもまた刹那。
 であれば、彼が取るべき行動はただ一つであった。
 すなわち、防御。

 暗転。

 龍也は己が纏うようにして駆るWZ『ユーサネイジア』が激しく揺れたのを感じただろう。
「ヤロウ……絶好調だなッ」
「まだ慣らし運転のつもりなんだけど、あんたがそう感じるんなら、それは力の差ってヤツじゃあないか? それとも本気じゃないって言い訳でもするかい、死んだ後でもさぁ!」
「ずいぶんと、煽ってくれるじゃねえか!」
「煽りもするさ、殺し合いだからさ!」
 機体が揺れる。 
 暗転した世界の中で龍也は己に迫る凶刃、邪剣の閃きを視た。
「チッ、破壊工作屋のお株を奪うようなことしてくれやがって!」
 周囲は暗転し、惨殺空間がすでに広がっている。
 攻撃は全て必中。
 そして、WZの装甲すら切り裂くほどに鋭いのだ。

「一人で首狩りなんてガラじゃねえ……だが、目の前で好き勝手されるのが気に食わねえだけだ」
「あんたらのご高尚な衝動とやらは、生命だって簡単に賭けてしまえるんだろ? ならさあ、死ぬだろ。あっさりと!」
「理想ってのは、誰だって抱くものだ。それを!」
 弾かれるようにして『ユーサネイジア』が距離をトランとする。
 だが、距離を取ることは許さぬと凶刃が翻り、装甲を切り裂いていく。まるでバターか何かだ。
 恐ろしく鋭く、また同時に二刀で振るわれる小王劍の斬撃もまた同様なのだ。
 放たれる牽制射撃。ドローンを使っての特攻。
 これらの弾幕すら容易く切り裂いて肉薄するのだ。

「どうしたよ! 接近戦は苦手ですって宣伝でもしてんのかな、なあ!」
「うる、せえなあ!!」
 √能力。
 最大震度でもって『邪剣・禍骨』を襲う霊能震動波。
 それでもなお振り抜かれた邪剣が投擲となって迫る。とっさに片腕を掲げ、その投擲が腕部を両断する。
 宙を翻り、腕部を両断した青い刀身が残光を描いて『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男の手元に戻る。
 なんとかコクピットと銃は守れたが、腕部を失ってしまっている。
 ブースターで再び距離を撮りながら、射撃を叩き込む。 
 その中で、龍也は叫んだ。
「命を懸けるなとはいわねえ! だが、捨てるんじゃねえぞ! 俺には俺にできることをやる。削って、繋いで、次へ渡す」
 龍也は己の限界を見極める。
 まだ戦える。
 戦えるのか。
 この死と間際にある瀬戸際において、己は戦えるのか。
 そうした思考を振り切り、彼は叫んだ。
 続く者たちへ。
「それで全員帰れりゃ、上等だ――!」
🔵​🔵​🔴​ 成功

アネリス・コーネリウス
【死を覚悟する】
悪意の連鎖を断ち切りましょう
白光の階の切先を『邪剣・禍骨』に向けます

見ず知らずの誰かの為に生命を賭けられるから来ました
きっと今日助けた人たちは一生縁のない人が大半です
けれど今までも誰かが――特定の英雄ではなくて、それこそ今共に戦っているEDENの皆さんのような、たくさんの勇気ある人達がそれぞれの方法で道を繋げてくれたから
今私はここに立てているのでしょう

Heavenly Starを発動し、邪剣・禍骨の元へ飛翔し先制攻撃
竜漿魔眼で相手の隙を探りつつ
霊力と神聖魔法を込めた旗槍を振るい続けましょう

いかに霊的防護で身を守ろうと
ここに至るまでの負傷もけして無視できるものではなく
今剣を受けたこの傷も痛みますが
生きるという強い意志と希望は持ち続けて

死ぬのは当然怖いし
もっとスマートな方法もあるのかもしれない
けれどかつて私が憧れた冒険者の皆さんの背中のように
今の私が示せるものがあるのなら!

強大な相手だろうと、この攻撃が通じるのだと
そして共に戦う仲間に道を繋げられることを信じて
最善を尽くします

「ハッ、全員、ねぇ? それで上等だってんなら、そりゃあ、あんたらはあまりにも俺のことを低く見積もっているんじゃあないか――?」
『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男は、土煙が舞い上がる中、牽制射撃を切り払いながらも身に受けた震動が未だ体から抜けぬことに舌打ちした。
 それもつかの間である。
 僅かな苛立ちなど、すぐさま消して見せる。
 彼は、頭を振って未だ震える手を見た。 
 腹立たしいし、苛立つが、それもコントロールできる感情の一つでしかなかった。

「悪意の連鎖を断ち切りましょう」
 白銀の切っ先、旗槍が突きつけられる。
 アネリス・コーネリウス(真紅・h09190)は手にした力を思う。
「悪意の連鎖なんてのは終わらねーよ。終わるわけがねーんだよ。俺等が人間である以上な。いや、知性がある以上とでも言えばいいかな? 悪意ってのは、どうあっても生まれるものなんだよ」
「だとしても、その連鎖はつなげてはならないものです」
 アネリスは毅然と言い放った。
『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男は、その青い刀身の邪剣で空を切るようにして宙を斬った。
 纏うのは、これまで惨殺せし犠牲者たちの怨霊である。
 力が膨れ上がり、重圧が底抜けにましていくのを感じただろう。
「そう、私は見ず知らずの誰かのために生命を賭けられるから来ました。きっと今日助けた人達は一生縁のない人が大半です」
「そりゃあ、やりがいがないってもんじゃあないか? EDEN! 誰にも感謝されず、顧みることなく死んでいくことに未練は? 惜しさはないか? あるだろ。ないわけがないよな? だって、生きているんだ。誰だって報われたい。そういう人生でありたいと思うもんな!」
 そのために己の生命を投げ出すのかと『邪剣・過骨』を持つ簒奪者の男はアネリスに斬り掛かった。
 鮮血が舞う。
 傷がましていく。
 痛みが体の芯へと走っていく。
「そうかもしれません。誰だって報われたい。けれど、今までも誰かが――特定の英雄ではなくて、それこそ今も共に戦ってくれているEDENの皆さんのような、たくさんの勇気ある人達がそれぞれの方法で道をつなげてくれたから、今私はここに立てているのでしょう」
「勇気? そりゃあ、違うぜ、勘違いだ。そりゃ、蛮勇っていうんだ。無謀とも言うぜ! 事実、あんたは、ここで死ぬ。誰に見られることなく、この暗闇の惨殺空間で、血を失いながら死ぬんだ!」
 広がる惨殺空間。
 暗闇が視界を奪う中、アネリスは飛ぶ。

 暗闇の中を駆けるは、|Heavenly Star《ヘブンリー・スター》。
 星に手が届かないと知ったのは、いつだろうか。
 そして、それでも諦めきれぬと手を伸ばすのは、憧憬ゆえか。
 けれど、手を伸ばすことをやめないのを決めたのもまた自分なのだ。アネリスは、翼を得て飛翔する。
 インビジブルと位置を入れ替え、飛ぶ度に青い剣閃が暗闇に翻り、彼女の体に傷を与えていく。
 手にした旗槍で弾くこともできない。
 恐ろしく疾い剣閃に翻弄されるしかない。霊的防護も意味をなさなかった。
 無視できない痛みがアネリスの体から徐々に精彩を奪っていくようだった。だが、その瞳が。
「その目、気に入らねぇな! まだキラキラしちゃってさぁ!」
 生きる。
 死を覚悟してなお、生きることをやめない。
 死ぬのは怖い。
 当然のように恐ろしい。もっと上手くやることもできたはずだ。けれど、アネリスは不器用ながらも踏み出した。
 その瞳に竜漿が集まっていく。

「生きているんです! 煌めくでしょう! 懸命に生きているんです! 輝かぬわけがないでしょう! だから、あの日憧れたんです!」
 冒険者に。
 彼らの背中に。
 そして、その背中もまた彼女の中に連なりを示す。紡がれた意思は、彼女の竜漿魔眼に集約されたインビジブルから引き出したエネルギーによって暗闇の中で青い剣閃の隙を見出す。
「今の私が示せるものがあるのなら! それは」
「なんだよ! 破れかぶれの自暴自棄か!?」
「いいえ、覚悟です! そして、共に戦う仲間に道を繋げられると信じること! それが私の最善です!」
 振るう旗槍の切っ先が迫る青い剣閃を弾き、火花を散らしながら『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男の肩を貫いた――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

ジェイド・ウェル・イオナ・ブロウクン・フラワーワークス
【死を覚悟する】
——インビジブル化を使用
いつの間にか取れた眼帯の下の目は
インビジブル化で少女めいた容姿となったことで
生きていたらAnkerとなり得たあいつに近づいただろうか
どっちでもいっか

よぉ、邪剣と付属品
いや改めて見るとあんたら見目はご立派なもんだ
おべっか?んな余裕あるわきゃねーだろ
死を覚悟してんだ
実力差も承知
おまえらだって命懸けだろ
わーってるわーってる
終わらせに来たんだ

サバイバルナイフを早業で抜いたとして
おれが奴の叫喚鏖殺剣の速さに叶うはずがない
喧嘩殺法の体捌きでもかわしきれないだろう
ならどうするか
瞬き一つせずに奴らを見据える
集中し、奴がおれに迫った瞬間
「にゃー!!」と叫ぶ
間抜けだが一音で済んで手軽な麻痺√能力
これでも麻痺を保ち続けるのは難しいだろう
相手が相手だ
だが一瞬でも動きを鈍らせたら
早業で踏み込んでサバイバルナイフを食らわす
何一つとして、無駄にはしない
無駄にはならない
おれの命もこの一撃も、だ
次に繋げるんだからな
悼傷痛
腕の一本でも寄越せよ、付属品ッ!!

「チッ――なんとまあ、面倒なことだぜ、これはッ」
 迫る旗槍の銀閃。
 鋭き一撃が肩をえぐる。舌打ちが飛び、血潮も飛沫となって飛んだ。
 しかし、『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男は、手にした小王劍を掲げた。
 膨大なインビジブルを収奪する王劍。
 小王劍とて、白き刃の煌めきを導べとして、インビジブルを集約させ得るのだ。
 圧倒的な出力。
 エネルギー総量。
 通常の√能力者と簒奪者。
 これらの間に横たわる溝は深い。

 敗北に対しての要因は、ほぼ存在しない。
 負けることなどありえない。
 だが、それでもこれまで『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男は、EDENたちに敗北を喫してきた。
 それは事実だ。
 故に彼は油断しない。

「よぉ、邪剣と付属品」
「ハ? 誰だあんた」
「見覚えない? ああ、そうかそうかもな」
 その言葉に ジェイド・ウェル・イオナ・ブロウクン・フラワーワークス(笑おうぜ・h07990)は、己がインビジブル化しているのだと思い出した。
 死の淵。
 その縁に立っている。
 自覚が力を膨れ上がらせ、己の姿が変容しているのだと理解する。
 少女めいた容姿。
 もしも、生きていたのならば、己のAnkerたり得たであろう存在のことを思う。
 どちらでもいい。
 そう思った。
「いや、改めて見るとあんたら見目はご立派なもんだ」
「わけのわからねーことを言うな。おべっか使っても良いことなんもねーぞ」
「んな余裕あるわきゃねーだろ」
 ジェイドは言い放った。
 死を覚悟してなお、実力差は明白。
 とは言え、互いに命がけである。

「だったら、なんだってんだ? 悠長にお話でもしにきたか?」
「わーってるわーってる。終わらせに来たんだ」
 引き抜くサバイバルナイフ。
 剣呑な輝き。
 しかし、それ以上に悍ましきは、これまで惨殺してきた怨霊を纏う『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男の速さであった。
 剣閃が走る。
 二刀は十字に交差し、ジェイドが反応できたのは、そこまでだった。
 どれだけ集中しても、瞬き一つ禁じても、それでも己に迫った斬撃を躱すことはできない。できないのだ。なら、どうする? どうすればいい?

「にゃー!!」
 間抜けに過ぎる、という自覚はある。
 だが、それは√能力だった。
 叫んだ瞬間、視界内の対象を麻痺させる√能力。しかし、瞬きをすれば、その効果が喪われてしまうだろう。
 それを禁じるために目を見開き、出力を上げる。
 乾いていく眼球。
 しかし、そこに揺らめくはインビジブルの孤影。引き出されたエネルギーが一瞬で枯渇する。だが、インビジブル化した体は、肉体を生きたまま変貌させている。
 死ぬことなく、死を超える。
「バカ見てーなことを……クソッ、こんなので……動けないってのは! なんとかしろよ!」
「これま息を止めるような√能力よ。であれば、限界が来る」
「そうだろーな! けどさ、その間にできることがあるだろ!」
 踏み込むジェイド。

 手にしたサバイバルナイフの一撃が『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男に叩き込まれる。
 無防備な体。
 そこに刻まれた傷。
 血が舞う。
 だが、麻痺は長くは保たない。瞼を閉じた刹那、ジェイドは我が身に走る激痛に呻いた。
 苦しい。
 痛い。
 熱い。
 だが、ジェイドは少女の見た目ながらも踏みこらえた。
 何一つして、無駄にしてはならない。
 無駄にしない。
 無駄にならない。
 それをもう知っていいる。なぜなら、共に戦うEDENたちが示している。次につなげること。その意味を。

「無駄だったなぁ! ええ? ほんの僅かしか、俺の気を逸らすしかできなかった! 何もかも!」
「そうはならない。おれの生命も、この一撃も、だ。次に繋げるんだ。だから!」
 サバイバルナイフは、渾身の力を持って振るわれた。
 痛みが、さらに走り抜け、激痛が脳の神経を焼き尽くす。
「粗末にはしても、無駄にはしない。そう在りたいよな。そう在れるって証明しなくちゃ、この|悼傷痛《ムダニシナイ》はッ!!」
「ハッ……なんだよ、そりゃ……ッ!?」
 押し込むようにして放たれた一撃だった。
 苦痛など、どうにでもなる。
「腕の一本でも寄越せよ、付属品ッ!!」
 繋げる。つなげる。次につなげる。
 その強靭なる意思は、さらに紡がれるようにして『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男の右腕の力を奪った――。 
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

神隠祇・境華
【死を覚悟する】
【月境】
何度も貴方の悪意を見て、その刃と戦ってきました。
私達も、多くの方々も――はい。最後まで行きましょう、シンシアさん。
霊刀を構え、二人でフロリレギウムを発動。
これまで共に歩き、積み重ねてきた旅路を、そのまま戦う力へ変えます。
さらに金銀の糸で互いの意志と動きを繋ぎ、僅かな変化も逃さぬよう反応を重ねます。
貴方の刃も、もう何度も見ました。
剣筋が見切れなくとも、狙いがわかれば対処は出来ます。
狙われた側は必中の一撃を刃へ重ね、弾いて軌道を逸らす。
その瞬間、もう一人の必中を貴方自身へ。
役割を入れ替えながら、二人で攻防を重ねます。
一人だけでも、二人だけでもなく。連なる皆さんと――どんな悪意にも、抗ってみせます。
誰かの日常を守りたい、それは確かな願いです。
その上で私は、シンシアさんと二人で生きて帰りたい。
どちらかを捨てるつもりはありません。
欲張りで構いません。それだけの価値がある望みです。
賭けるべき時には二人で死力を尽くし、その上で共に帰る。
二人の想いを重ねて、刃を届かせましょう。
シンシア・ウォーカー
【死を覚悟する】
【月境】
ここまで多くの仲間と共に辿り着きました。
最後まで――行きましょう、境華さん!

使い慣れたレイピア片手に戦います。
簒奪者のように強くない私には、いかに√能力者といえどそう特別なことはできません。全力の魔法を込めて堅実に貴方を刺すだけです。

二人でフロリレギウムを発動。
境華さんと一緒に多くの経験をしてきました!楽しい思い出も、厳しい戦闘も、無力感に苛まれたこともありました。邪剣・禍骨と戦ったのだって一度や二度ではなく。

代わる代わる矢面に立ち、一人が相手の必中攻撃を相殺しつつもう一人が邪剣・禍骨へ刃を届かせます!
私達の、そして誰かのささやかな日常を守ることこそが、いま私達が貴方に立ち向かう理由だと思うのです。
2人でできるのなら、もっと多くの人達とだって……!
執念でも衝動でも、この想いを形容する言葉はなんだってよいのですが。
突き動かすこの想いがある限り、私達は貴方の悪意に抗い生きるため戦います!

きっと大丈夫です、隣にいてくれる人を、そして共に戦う皆さんを信じていますから。

「片腕が……動かねーか。しくじったなぁ……とは言え」
 目の前に翻るのは、『邪剣・禍骨』。
 青い刀身が残光を揺らめかせるようにして宙に舞う。簒奪者の男は、白い刀身の小王劍を手にした。
 片腕はもう使い物にならないだろう。
 それはEDENたちが為したことだ。
 恐るべきことに、これだけのインビジブルを集め、圧倒的なエネルギー総量を誇ってなお、EDENたちは迫る。
 肉薄している。
 追いすがっている。
 これを恐るべきことと言わずして、なんと言う。
 油断はなかった。これまでの敗北を糧にしてきた。だというのに、彼は追い詰められている事態を冷静に分析する。
 数の問題か?
 いや、それも違う。
 如何に数が多かろうが、有象無象であれば意味がない。それは証明されていることでもあった。
 であれば、何が違う?
 衝動の有無か? 果たしてそうなのか?

「物語は我が手に―― 共に歩み、重ねた頁よ。花水木の揺れる場所へ――綴りましょう」
「2人綴るは花水木寄り添う旅路」
 言葉が重なる。
 意思が重なる。
 その重なり合ったものが、煌めきとなってインビジブルの孤影から引き出されたエネルギーと共に発露し、√能力へと姿を変えた。
 |花水木の収斂《フロリレギウム》。
 旅路を語る。
 シンシア・ウォーカー(放浪淑女・h01919)と神隠祇・境華(金瞳の御伽守・h10121)のこれまでの歩みを。そして、これからの歩みを。
 それらが彼女たちの戦う力へと変わる。
 花水木の揺らぐ箱庭へと変貌した戦場の中で、主人公は二人いる。
『邪剣・禍骨』を持つ簒奪者の男は、やはり舌打ちした。
 苛立ち、だろうか。
 それとも別の感情だろうか。それは彼にしかわからないことだった。
「だとしてもだ。旅路ってのは、終わりを迎えるものだ。それが今であるかもしれないってことに想像をはせることができないのは、それはそれで欠陥じゃあないのか? そうとは考えられないか? EDEN。あんたたちの歩みが、今日終わるかもしれないってことを、想像もできないか!」
「楽しい思い出も、厳しい戦いも。無力感に苛まれたことも。あなたと戦ったのだって一度や二度ではなく」
 迫る邪剣は剣閃となってシンシアを襲う。
 だが、その一撃を境華は携えた霊刀で弾いた。互いに視線が交わることはなかった。ここにあって、彼女たちの斬撃は必中。
 慌てることはない。
 ただ、互いを守ることに注力するのではなく、互いの死角をカバーすることに力を注ぐ。
 弾く。
 剣戟が響き渡りながら境華は簒奪者の男へと斬り掛かった。
 小王劍と火花を散らす霊刀。
 押し負ける、と思った。
「一人だけでも、二人だけでもなく。連なる皆さんと――どんな悪意にも、抗って見せます」
「悪意に抗うだ? そんなもの、なんの足しになる。絶対的な力の前には、そんなもの、屈するほかないんだぜ? それで何を守るってんだ?」
「誰かの日常を。それが確か願いです」
「滑稽だな! 自分より他人を優先するだなんて! それはさ、偽善っていうんじゃあねーのか?」
「確かにそうかもしれません。この期に及んで、私は……シンシアさんと二人で生きて帰りたい。でも」
「どっちもは許さねーよ! 許されるわきゃねーだろ!」
「どちらかを捨てるつもりはありません。欲張りで結構。それだけの価値がある望みです!」
「だったら、その価値ごとぶった切ってやるよぉ!!」
 弾き飛ばされる境華。
 しかし、入れ替わるようにして邪剣を弾いたシンシアが踏み込む。
 背に邪剣が迫るも、今度は境華が受け止めた。

「私達の、そして誰かのささやかな日常を守ることこそが、いま私達が貴方に立ち向かう理由だと思うのです」
「それはつまんねー動機だよな! そんなもんか、EDEN衝動ってのは、そんなつまらねーもんなのか? そんなありきたりなもんで! 俺を、悪意を止められるとでも!」
「二人でも、こんなにも心が湧き上がるのです。内側から! この衝動が止まらないのです。なら、もっと多くの人達とだって……!」
「できるものかよ! それが、その繋がりが! 誰も彼もと得られるんなら、人間、もっと平和的なもののはずだぜ! 善意なんてのはな、悪意の裏返しでしかねーんだよ! それを知らず、ただ衝動のままに戦うあんたらには!」
「形容する言葉など、なんだってよいのです」
 己を突き動かす思いがある。
 だからこそ、戦える。

 陽炎に消えるようにして邪剣と簒奪者の男の姿が薄れていく。
「物語は我が手に──糸に歩みと意志を結び記した古き結縄よ。二筋の糸に互いの感覚を束ね、いま一時、迷わぬ導きをお貸しください」
 境華は互いの意思と動きを繋ぐ金銀の撚り合わさった糸を放つ。
 それはシンシアとだけではない。
 この場に至ったEDENたち全てに絆がれていた。
 そして、それはシンシアからも放たれている。
「結縄は確かに歩みと意志を伝えて」
 絆がる。
 それは、確かな力だった。
 ただ、繋がるというだけなのならば、ただの力でしかない。
 単純な力だ。
 だが、もしも。それを互いのうちに感じることができたのならば、さらに強大な力に押しつぶされぬ強固なものへと変わりゆくだろう。
 シンシアと境華は理解していた。

 己達が紡いだのは、金銀の撚り合わさった糸だけではないのだ、と。
 この衝動、すなわち――Endless Desire for Essential Nexus――つながりを求める限り無き欲望は、見えぬものを見る。
 煌めく瞳は、燦然と闇を照らす。
「きっと大丈夫です。隣にいてくれる人を、そして共に戦う皆さんを信じられる」
 それはきっとEDEN衝動を持ち得る者たちが感じ取れる力。
 その糸が紡がれ、悪意の狡猾さを照らした――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

●√
 理想は掲げられるものだ。
 それが眩いものであると信じているからでもある。
 そして、同時に眩きものは暗澹たる未来を照らしてもくれるだろう。
 未来を信じられない。
 悪意に満ちた世界を歩くことも恐ろしさというものを、知っているから。
 だから、止めねばならないのだ。

 世界は重なり合っている。
 もしかしたら、それはどれもが他愛のないものであるかもしれない。本来なら、知るべきものではないのかもしれない。
 悪意は、人の中にある。
 それはどうしようもないものである。
 だが、他者がいなければ向けようのないものだ。剣の切っ先とて、振るうべきものがいなければ無用の長物に他ならない。
 きっと、そういうものなのだと思う。
 眩い光が、悪意を照らす。

 そして、虚無主義は人の心を欠落させる。
 贖うためか。
 それとも補うためか。
 簒奪せしものは、虚のごとき穴に注ぎ込まれていく。そして、際限がない。だからこそ、飽くなき欲望こそが正しいのかもしれない。
 未知を既知にするのが、人の歩みだというのならば、決して照らすことのできぬ闇があることもまた知らねばならない。
 だから、よかった、と思ったのだ。
 ここで倒さねばならぬ悪意の形を見た。

 欲するを得る。
 それは生命体として当然の欲求であった。
 欠けたものを埋める。それは理解できるものであった。
 だがしかし、理解できえぬものもあっただろう。理解と偽りながらも、そこにあるのは羨望の眼差しでもあった。
 それを手放した身からすれば、あまりにも安易。
 さりとて、譲る道筋もなく。
 ただ、対決するしかない。
 悪意と、ではない。結局、そこにあるのは敵ではなく、己の似姿めいた他者であるから。

 そして、思うのだ。
 他者と己との違いを。
 どうしてこうも他者と己は違うのかを。
 そして、その違いを認識するために、他者を傷つけるというのならば、それは方法を違えたとしかいいようがないだろう。
 人を思う。
 他者を思う。
 似ているようでいて、違う。
 誰かの営みを穢し、損なうことでしか、実感できぬ己があるというのならば、それこそ道を開けてもらう他ない。
 結局、人の環に加われぬものは、去るしかないのだ――。