赤いスカート履いてた女の子
●
『この場所の因縁は仔に良い影響を与えようぞ』
狂信者たちがとある場所に目を付けた。
そこは古めかしい洋館で、過去に住んでいた者が神隠しにあったという伝承がある。
『くっくっく。怪異によって消えたモノが居るならば、怪異によって増える』
『これも等価交換と言うやつかのう』
狂信者たちはよくわからない理論で、クヴァリフの仔を降ろすことにした。
そして新しい儀式のために移動するに際して、余計な事をしていったのだ。
『上手く行ったが。羽化にはまだ時間が掛かるでな』
『うむ。守りを付けておくか』
洋館の周囲に呪いをかけ、下級怪異を呼び寄せて防御を固めていたのである。
もり誰も介入しなければ、大事になると星詠みが語ったという。
●
「クヴァリフの仔に関する事件のあらましは聞いているか? 狂信者たちが仕掛けた儀式の場所が幾つか判った。今回はその場所を特定したので、対処に向かってもらう」
園城寺・円が地図を手に説明を始めた。
星詠みによる予知情報で手に入れた情報だろう。
「とある洋館にクヴァリフの仔が降ろされ、怪異が強化される。そこはもともと、神隠しにあった女の子が住んでいたとされる建物だ。クヴァリフの仔を核にしていつ怪異化してもおかしくはないだろうな」
マドカはそう語ってから、簡単な家の絵を描いた。
そしてその周囲に、碁盤の目の様に線を書き込んでいったのだ。
「狂信者はこれを守るべく周囲に幻覚をもたらす怪異を用意したようだ。何処へ行っても同じ道筋を辿り道祖神を訪れるような感覚を受けるが、実際にはそう思い込まされているだけだ。これを何とかして洋館に辿り着くか、それを実行している下級怪異を叩き潰して欲しい。その後は神隠しにあったとされる女の事の対決になるな」
そう言ってマドカは簡単な地図と、ルートとも言うべき流れの説明を終えたのである。
マスターより

baronと申します、寄れ惜しくお願いしますね。
今回はクヴァリフの仔に関するお話になります。
●流れ。
基本的に夜まで待ってまとめて執筆、クリア後は翌日以後の夜にまとめて執筆となります。
第一章:ループする街並み。
昔はもっと町が小さく、同じ形式の村の集合体形式であった為、その街並みを利用した幻覚が掛かっています。洋館を見つけた際にそのまま飛び込むか、それとも周囲を固めている下級怪異に挑むか、プレイングが多い方次第でお話が分岐します。
第二章A:洋館の中で探す。
神隠しにあったという少女を探します。
第二章B:下級怪異を探して倒す。
周辺に幻覚を掛けていた下級怪異を倒します。
なお、怪異の出現する力を使ってしまうようで、こちらのルートを通った場合、第三章が少し楽になります。
第三章:神隠しの少女と戦う。
クヴァリフの仔を格に実体化しつつある怪異を倒し、仔を回収します。
第二章がBルートの場合、少し楽になります。
33
第1章 冒険 『無限ループってこわくね?』

POW
裂帛の気合いで幻惑を吹き飛ばす
SPD
ループの限界まで一気に走り抜ける
WIZ
ループの法則性を見出して脱出手段を講じる
√汎神解剖機関 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

土地勘のないところで、迷うのはちょっとやですねえ……。
円城寺さんのお話なら、幻覚なんですよね?
そこまで広くないけれど、感覚を惑わせてすごく広大なエリアに見せているってこともあるのかな。
どの程度の広さなのか知りたいですね。わかりました。走りましょう。
虱潰しに行けば、何かには行き当たるでしょうし。
出来ればガーディアンさんを見つけて倒してしまいたいところではあります。
見つけたら音を出して仲間を呼んで……。
いえ、ほかの方が先に見つける可能性もありますね。
サインを見落とさないよう、気をつけましょう。
戦闘は火力より手数派。防御より躱す派です。
味方がいればサポート(隙を作るなど)メインでうごきがちです。

アドリブ、共演歓迎。
『配り婦の仔』とも聞こえるのが皮肉ですね。
世界に害為す怪異を配る存在…その一端、排除しなければ。
洋館の大まかな位置と道祖神を確認。
手を合わせ、少しの間騒がしくする事に頭を下げておきましょう。
この道祖神はあちらと私達、どちらの味方になってくれるかしら?
空飛ぶ絨毯で上空から道筋を確認したいけど、どこまで幻覚の影響があるのかしら。
余裕がありそうなら仲間も乗せて複数の目で確認したい所。
まあ「確認出来ない」という結果も立派な情報ですわね。
幻覚解除の効果を期待して屠蘇器で酒やら聖水やらを撒いてみましょう。
洋館への道筋がバレたとなれば、下級怪異も顔を出してくれるんじゃないかしら。

『クヴァリフの仔』ねぇ…効力としては、強力な怪異を現出させる為の核か触媒みたいな物なのかしら?
こんなの見付けてくれちゃって、厄介な話ね…
こういう無限ループの類って、大抵ループの起点があって。その起点に、ループを起こす為の『核』が仕掛けてある物なのよね…
どう道を辿っても、最終的に道祖神へ辿り着くのなら…その道祖神がこの道のループの核、かしら?
若干罰当たりだけど道祖神を壊したら、この一帯だけでも幻覚が晴れたりしないかしらね
これで上手く行く様なら、道祖神を見付けたら破壊しながら進むわ
もし幻覚が晴れて館を見付けられたら、中に入るのは周囲の下級怪異を始末してからにするわね
アドリブ絡み連携歓迎
●
「んー。『クヴァリフの仔』ねぇ……効力としては、強力な怪異を現出させる為の核か触媒みたいな物なのかしら?」
|玖珠葉・テルヴァハルユ《くすは・テルヴァハルユ》(年齢不詳の骨董小物屋・h02139)が一連の事件に関する根幹へと思案を馳せた。
「本当かは分かりませんが、ここの首謀者に関してはそう使ってるみたいじゃないですかね」
その言葉に|見下・七三子《みした なみこ》(使い捨ての戦闘員・h00338)が消極的賛成をする。星詠みからの情報を聞くにソレっぽいが、他の地域の事件全てに関しても同様とは限らないからだ。
「どちらにせよ、『配り婦の仔』とも聞こえるのが皮肉ですね」
逆月・雫(酒器の付喪神の不思議居酒屋店主・h01551)はその怪異の名前にミーム的な物を感じた。何かの意味があって怪異の神の名前があるとして、ソレに引っかけたダブルミームではないかという推論である。もちろん関係ない可能性もあるが、そう言う視方を嗜むのも不思議なお店を経営する店主の日常なのだろう。
「世界に害為す怪異を配る存在……その一端、排除しなければ」
「まあ、そうなんだけどね。今回のポイントは面倒なのよね」
雫の推論が何処まで正しいかは別にして、玖珠葉は危険な事件を何とかするという問題に関しては同意した。
「こんなの見付けてくれちゃって、厄介な話ね……」
「土地勘のないところで、迷うのはちょっとやですねえ……」
玖珠葉の言葉に七三子が頷く。何しろ幾ら移動しても同じ場所に行ってしまうとか、探したり特定の場所に行きたいと思っても行けないのは面倒過ぎるだろう。それこそ42.195km走り続けて辿り着かないとか、三日三晩歩いて家に帰れないとか辛過ぎるだろう。
「園城寺さんのお話なら、幻覚なんですよね?」
「貰った資料を見る限りそんな感じね。転移ゲートを使った閉じた空間とかじゃないらしいわよ」
七三子が確認すると雫は貰っているメモと、起き得る展開を想像しながら答えた。無限ループを引き起こす手段は幾つも考えられるが、最も面倒くさいのが空間的に繋げるパターンだ。アレは怪異であろうが妖怪であろうが突破できないので、対象方が限られてしまう。
「じゃあ、そこまで広くないけれど、感覚を惑わせてすごく広大なエリアに見せているってこともあるのかな」
七三子たちはひとまず行けるところまで行ってみた。
すると本当に道祖神の元に辿り着いたではないか。
ちなみに道祖神とは、鬼とかお地蔵さまなどを村の守り神として、村の入り口に飾るものである。
「ここからあの通りを抜けて、幾つか目の曲がり角で曲がると辿り着く。何とかなく見えはするけど、直進は出来ないみたいね。とりあえず、お参りしておきましょうか」
雫はこれから周辺を騒がしくするという意味も込めて、道祖神に手を合わせて頭を下げた。
「さて、この道祖神はあちらと私達、どちらの味方になってくれるかしら?」
「それなんだけど、こういう無限ループの類って、大抵ループの起点があって。その起点に、ループを起こす為の『核』が仕掛けてある物なのよね……」
雫がお参りを済ませた頃に玖珠葉が自分の推論を話した。
それも幾つかある無限ループの一つであり、核が磁石の磁器起点であるとか、文房具のコンパスの描く円の中心点となるように、認識を修正して振り回すという訳だ。
「どう道を辿っても、最終的に道祖神へ辿り着くのなら……その道祖神がこの道のループの核、かしら?」
つまり、幻影を見せるタイプの幻覚であったり、認識を誤魔化すタイプの幻覚であったり、どの方法でも良いから、道祖神へ道祖神へと移動させ様としているのだという案であった。
「若干罰当たりだけど道祖神を壊したら、この一帯だけでも幻覚が晴れたりしないかしらね」
「最悪、やっても良いとは思うけど、それは最後の手段でしょうね。まずは空飛ぶ絨毯で上空から道筋を確認したいけど、どこまで幻覚の影響があるのかしら」
玖珠葉の提案にお参りしたばかりの雫は難色を示すが、それでも一理あると言わざるを得なかった。無限ループは疑似的な不死と同じで幾つか設置手法がある様に、解放もまた幾つもあるモノだ。破壊する必要があれば壊すとしても、最後の最後にしたいところであった。
「余裕がありそうなら仲間も乗せて複数の目で確認したい所。まあ『確認出来ない』という結果も立派な情報ですわね」
雫は自分の理論を先に試してもらう為、明確に方式と基準を定めた。
『果て』が確認できないと判れば、道祖神を壊すのも止む無し、他にも全く分からない場合なども、壊すのも仕方なしとしたのだ。
「確かに、どの程度の広さなのか知りたいですね。わかりました。走りましょう。虱潰しに行けば、何かには行き当たるでしょうし」
そんな感じでアイデアが出る中で、七三子は流れるように最も面倒くさい方法を自分が引き受けると挙手した。実に素晴らしい三下ムーブというか、幼いころから育った環境で下っ端をやる癖が染みついているのだ。これには二人も苦笑い。苦労する厄を率先してくれるありがたい仲間を止めることはできなかったという。
という訳で、幾つかの案が出た上で、順番とか上限が決められた。
「出来ればガーディアンさんを見つけて倒してしまいたいところではあります。もし見つけたら皆さんを呼場せていただきますし……いえ、そちらで見つける可能性も高いですね。その折は駆けつけます。その上で、一つ確認をしておきましょう」
最後に七三子は手順を確認した。
こういう事は『●●で良いはずだ』『ヨシ!』というよりも、実際に確認した方が良い。電話の応対でも、相手の行ったことを勘違いで捉えてないか確認するのがセオリーと言うではないか。
「怪異が居れば、倒してしまって良いのでしょうか?」
なんというか七三子は自分より仲間のアイデアの方が良いから出逢わない可能性を想起したが、その言葉は半ば『倒してしまっても良いですか?』という意味にも聞こえる。もちろん、戦隊モノでそんな事を口にした怪人も戦闘員も倒されてしまう訳だが。仮にホラーモノだったとしても、単独行動は危険。ナチュラルに死亡フラグを立てる娘であったという。
「そうね。洋館への道筋がバレたとなれば、下級怪異も顔を出してくれるんじゃないかしら」
「こちらは道祖神だったら破壊するつもりだけど、もし幻覚が晴れて館を見付けられたら、中に入るのは周囲の下級怪異を始末してからにするわね。だから倒す方向で良いと思うわよ」
雫も玖珠葉もその意見に否応は無いので同意した。
話に聞いた限り、屋敷にストレートに入って最後の怪異に出逢うよりも、守護している怪異を倒す方が楽であるそうだ。多少手間取るかもしれないが、こちらの方が楽ならば倒してしまう方が良いだろう。
「それでは! 行ってまいります。おおおおおお!!!」
そして七三子は裂帛の気合と共に走り始めた。
高速で走り抜けるというよりは、全力で走り抜けて強引に幻覚を突破するパワープレイであったという。
「ぬおおおお!!!」
「見た感じ……同じ形の村が周囲にあって、中心的な場所に領主の館があるって感じなのかしらね?」
その様子を雫は上空から見ていた。
洋館に直接行けないのでわかり難いが、上空から見ると複数の村が存在するのが眼下に見える。
「てややややや!!」
「あ、また曲がった。もしかして、あそこにも道祖神があるの?」
「道祖神が移動しているのか、そう見えているだけかも。どっちにせよ、壊す方向で良いわよね? それで上手く行く様なら、道祖神を見付けたら破壊しながら進むわ」
雫が確認をすると玖珠葉にも同じ光景が見えているらしい。
どうやら複数の村があると見えているのは勘違いではないのと、下で七三子が違和感なく彷徨っているのも間違いではないそうだ。
「壊した筈なのに壊せてない? リアルな幻覚があるとは聞いたけど……どんな幻覚とまでは突き止められてない。やっぱり、この道祖神自体が怪しいわね」
やがて玖珠葉は実際に破壊しても、道祖神がまた現れている事に気がついた。つまり、道祖神が存在しているという事が嘘で、道祖神を映し出して『同じ場所なのではないか?』と間違え易い地形で誤魔化しているだけということだ。
「なら、幻覚解除の効果を期待して屠蘇器で酒やら聖水やらを撒いてみましょう。違ったとしても、液体をまいて居るのだから、隠れていても判るわよ。だって起伏に添って液体が流れてしまうものね。だから……お呑みなさいな、ご遠慮なさらず♪」
そして雫は屠蘇器から無限に湧き出す酒を周囲へと振りまいて行った。それは物理的に探る行為であり、同時に範囲型の√能力である。そこに存在して居たら、隠れていても攻撃することが可能なのだ。
『ギャアア!?』
そして何処かわざとらしい何者かの悲鳴が響き渡り、周囲の光景が変わって行った。
「道祖神が消えた。……さっきと同じだけど、少し道の印象が違うんじゃないかしら?」
「多分、同じ道だと思わされていたけれど、違う道だったのですわ。流石に同じような町並みでも、まったく同じ光景であるとは思えませんしね。道祖神を中心とした特徴のない光景を、特徴的な道に被せていたというところでしょうね」
周囲を見張っていた玖珠葉が気が付いたことを述べると、雫が頷いて認識の同期を確認した。もしかしたら倒した何者かの死体が隠れているかもしれないが、きっと道祖神の周囲で同じことを繰り返せばやがて辿り着けるであろう。
「お二人とも! 見つけましたよ! 洋館です! あと、怪しい影も!」
そして七三子が気合で走り続けた結果、体力勝ちで地形と敵の位置を把握した様である。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『ヴィジョン・ストーカー』

POW
影の雨
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【影の雨】で300回攻撃する。
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【影の雨】で300回攻撃する。
SPD
影の接続
半径レベルm内の味方全員に【影】を接続する。接続された味方は、切断されるまで命中率と反応速度が1.5倍になる。
半径レベルm内の味方全員に【影】を接続する。接続された味方は、切断されるまで命中率と反応速度が1.5倍になる。
WIZ
影の記憶
知られざる【影の記憶】が覚醒し、腕力・耐久・速度・器用・隠密・魅力・趣味技能の中から「現在最も必要な能力ひとつ」が2倍になる。
知られざる【影の記憶】が覚醒し、腕力・耐久・速度・器用・隠密・魅力・趣味技能の中から「現在最も必要な能力ひとつ」が2倍になる。
√汎神解剖機関 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
●
『来た道。行く道。我が町。何処かで見た町』
『社会見学行ってみよう。●●のあの町へ』
『来た道。行く道。我が町。何処かで見た町』
『年始年末には故郷に戻ろう。●●にある懐かしいあの町へ』
テレビで町を放映する教育系の番組であろうか?
そのテープを利用し、間延びさせたような声がする。
それは画像を投影し、あるいは認識を改変する下級怪異だ。
動きは鈍そうなので強くはなさそうだ、だが、その魔の手から逃れるのは難しそうであった。何しろ見える光景を、認識している状況を、書き換えてしまう怪異なのだから。

私達に近しいタイプの怪異のようですが…だいぶ禍々しいですわね。
感情が薄いというか…なさそう、というか。
物理的でないダメージはちゃんと受けて下さるかしら?
認識の書き換え、記憶に無い郷愁の植え付け、あちらさんの基本能力はそんなところかしら。
ならばこちらは『その上から』書き換えていく方向でいきましょう。
…行きましょうか、お菊様。
怪談の闇に紛れて一気に近付き、飛び出す絵本や屠蘇器の酒による範囲攻撃でなるべく多くの敵にダメージを与えるように。
離脱の際は絨毯で。
縦軸の動きも入れて、敵さんの意識を撹乱。
時には絨毯は雨避けにもなるでしょう。
場合によっては私を囮に、仲間に敵への攻撃をお願いしますわね。

無事に見つかりましたね!
頑張って走った甲斐がありました。
協力して倒してしまいましょう。
どちらかというと支援のほうが得意なので、 自分で大技を狙うよりは、味方の攻撃する隙を作りたいところですね。
とりあえず最初にバフを撒いて、敵味方の様子を見ながら動こうと思います。
味方が死角に入るよう、敵を誘導したいところですが、…この敵、死角ってどこなんでしょうね…?
(元下っ端戦闘員です。攻撃力よりも手数、そもそも攻撃よりも回避や攪乱等の行動を好みます。 アドリブや連携等自由に調理いただければ幸いです。)

認識している状況を、書き換えてしまう怪異かあ…
怪異の力に対するECMになるかは分からないけど、やれる事はやっときましょうか。
怪異の認識障害を引き起こす力を霊的防御しつつ情報収集して解析し、霊気と破魔の力を媒介にハッキングを仕掛けてジャミングを起こし、認識障害の解除或いは軽減を試みる
ある程度でも怪異に対する照準が定まったなら《Fragarach》を起動して一気に敵を一網打尽にし、広範囲の敵にダメージを与えて仲間が敵を殲滅する為の一助とする
もし自身の√能力だけでも充分に通用するなら、一気に殲滅を試みる
妖怪大将ともあろう者が、化かし合いで簡単に負ける訳にはいかないのよね。
アドリブ絡み連携歓迎
●
「無事に見つかりましたね!」
|見下・七三子《みした なみこ》(使い捨ての戦闘員・h00338)は仮面の下に満面の笑みを浮かべた。まだ敵を見つけたばかりなのだが、生来の三下気質である彼女は既に解決した気分だ。
「頑張って走った甲斐がありました。協力して倒してしまいましょう」
「そうね。力を合わせることに異存はないわ」
七三子の背中にブンンブン振られた尻尾を幻視した|玖珠葉・テルヴァハルユ《くすは・テルヴァハルユ》(年齢不詳の骨董小物屋・h02139)であるが見なかったことにする。七三子は別に獣人ではないし、玖珠葉もまた共闘しただけで仲間以上の認定をするほどチョロくないからだ。え、誰でも目上判定しそうな七三子さんがチョロイかって? それは今ここで語る時ではない。
「私達に近しいタイプの怪異のようですが……だいぶ禍々しいですわね」
それはそれとして、逆月・雫(酒器の付喪神の不思議居酒屋店主・h01551)は冷静に敵の姿を観察していた。見た所、付喪神に似たタイプの怪異のようだ。妖怪と怪異の差なのか、とても怪しい力を感じさせている。
「感情が薄いというか……なさそう、というか。物理的でないダメージはちゃんと受けて下さるかしら?」
雫は形の良い眉を思わずひそめた。
なんというかこの手の業界は実に千差万別だ。
物理攻撃で簡単に倒せる代わりに魔力とか妖力効かない奴だったら困るよわね? みたいな知識的な断片が脳裏をかすめる。仮に効き難いとしても√能力は普通に効く筈だが……と弱気になりかけたことを自覚した。
「認識の書き換え、記憶に無い郷愁の植え付け、あちらさんの基本能力はそんなところかしら」
「そんなところでしょうね。うーん認識している状況を、書き換えてしまう怪異かあ……」
雫は意識を切り替えて、自分は自分と弱気を振り切り分析を果たした。
その言葉を受けて玖珠葉も頷きながら、自分だったらどう対処しようかと悩み始める。何が面倒かといって、一口に幻覚と言っても幻影タイプと違って認識欺瞞は方向すら誤魔化されることがあるからだ。ちなみに二人が相談している中、最後の一人は誰かが何とかしてくれるだろうと確信していた。
「怪異の力に対するECMになるかは分からないけど、やれる事はやっときましょうか。認識障害の解除或いは軽減を試みるわ」
玖珠葉は敵の能力を分析し始め、霊気と破魔の力でハッキングやジャミングを試むことにした。術を掛けられることは仕方がないが、黙って喰らう必要はないからだ。相手のECCMと対抗合戦になった場合、先手を取ったこちらが有利になるので発見しており、まだ戦闘を仕掛けてない今の内から行動して損はあるまい。
「ならばこちらは『その上から』書き換えていく方向でいきましょう。場合によっては私を囮に、敵への攻撃をお願いしますわね」
その言葉を聞いて雫は『相手が成功してしまう』ことを前提に入れた。その上で、起きてしまったらむしろ自分たちの良いように転がる作戦を立てたのだ。いわゆる『嵌め手』というやつで、途中までは相手の思惑通りに乗り、一番良い感傷ポイントで自分たちの流れに引き込む戦い方である。
「ほほう囮に。奇遇ですね! どちらかというと支援のほうが得意なので、 自分で大技を狙うよりは、私も方の攻撃する隙を作りたいところですね」
二人の会話を聞いて居た七三子は、突如として汗をダラダラと流し始めた。まるで自分がオオトリを務める真打ちのようではないか。実に荷が重い。山のように重い、押し潰されそうになったので全力で逃げることにする。
「身のこなしの問題もあります! 私が先行しましょう!」
七三子は猛烈に嫌な予感がしたのでシュタっと手を上げると、ルート能力を起動して自分が率先して敵に向かった。その瞬間に仲間達は彼女の協調的な精神を注入されて、押せば泉のごとく湧き出る嫉妬心……では無く社畜的友愛精神に満たされる。
そして味方の静止を振り切り、シュターンシュターンと走り始めたのだ。
ちなみに彼女のハートを注入された名kまあ体も、同じような速度で介入出来る程に強化されていたという。
「お味方が死角に入るよう、敵を誘導したいところですが、……この敵、死角ってどこなんでしょうね……?」
敵めがけて突っ込んだ七三子は、思わず脳裏にクエスチョンを浮かべた。
だってブラウン管が無数に浮かんで周囲を見ているのだ。死角ってどこやらほいと思っても仕方あるまい。
「仕方ありません。ここは分身影八つ……って、できるかー!? ええっと、えいえいおー……、です」
七三子は下っ端戦闘員としてのモットにしたがい率先行動で突っ込んだが、このままでは死にそうなので、残像を発生させながら回避行動を取った。敵の目の前を横断して向こうに逃げきれば場良かろうなのだ! ということだろう。
『きゅるきゅるきゅる』
「はやい……。上半身(?)と下半身(?)がバラバラに動いてみ切れなっ……ぐあ~」
なんということだろう、敵は影と接続すると高速で動いて来た。
要するに七三子が使った技と同じような業である。
陰だけに影業というべきだろうか? とりあえず版権に引っ掛かりそうなのでこの辺でやめておこう。七三子の攻撃も通じたが、相手の攻撃もモロに直撃したとだけいっておく。
「もう少しで死ぬ所でした。というか、火力があんまりありませんね。命中精度とか高いですが」
割とあわてんぼうでビビりな彼女であるが、これでタフである。
タフでなければ戦闘員は務まらないからだが、七三子は相手の火力が低い事を看破する。そのこともあって彼女は重傷にはならなかったのだろう。
「と、言う事はあの個体は洗脳特化型で、誰かを洗脳するのが得意だけれど、得意分野以外では火力は低いという事ですね。ひとまず物理が得意として、ここは魔力で参りましょうか」
その様子を見ていた玖珠葉は分析を終える。
仲間が能力を向上させる√能力を使ってくれたこともあり、上手く反応できそうだった。そして相手の能力的に回避は低そうなので、最も通用しそうな魔力攻撃を前提に攻撃を掛けるつもりだった。
「まずは倒せる数体だけ殲滅しましょうか。今ならば、先程の攻撃に注意が割かれて居るでしょうし、ね!」
玖珠葉は息を整えて、右手を右から左に動かした。
するとその動きに比例して、空間が割けていく。
全ての物がスクウェア状にカットされ始め、凝縮された霊気が刃となって敵を残骸に変え始めたのだ。
「やはり相手の攻撃範囲に入らずに先手を取れば、十分に行けるわ。妖怪大将ともあろう者が、化かし合いで簡単に負ける訳にはいかないのよね」
相手は砲台型なので回避しないし、それほどタフでもない。
特に仲間が牽制攻撃を掛けた個体なら一撃で倒せるし、無傷だったら倒せない相手も居るかもしれない程度だと思われた。ならばイニシアティヴを握って距離を調整し、上手く戦えば有利を取れると気が付いたのである。むしろ気が付かずに先手を取られて、物理攻撃を喰らう方が危険であろう。
『まずはまずはまずは倒せる数体だけ殲滅しましょうか。今ならば、先程の攻撃に注意ががががが』
「コピー!? どうやら火力攻撃を選択したみたいね、なら!」
相手が自分の姿を映し出したことで、玖珠葉は咄嗟に指を二本立てた。いわゆる剣印というやつで、そこに霊力を集中させて相手の攻撃と可能な限り相殺する。ひとまず範囲攻撃ではないようだし、空間攻撃に空間攻撃で対抗しておけば、相手の攻撃で自分が微塵斬りにされることは無いと判断したのだろう。
「……行きましょうか、お菊様」
雫は仲間の判断に頷くと、自分も魔力攻撃を掛けることにした。
意識を集中させて物語を思い出しながら、部隊の中でもハイライトをイメージする。
「いちまい、にまい……」
番町皿屋敷は怪談なので、音楽と違って第何楽章とかはない。
どこから話を切り出すか、どう流れを導くかが重要であろう。
雫は怪談を語る事で周囲を闇に落とし、その闇に紛れて手持ちの飛び出す絵本や、屠蘇器に入った酒で周辺を攻撃し始める。
『いちまい、にまい……』
「もうタネは割れて居ますよ。ここは一足先に失礼しましょうか」
敵の攻撃で陰からナニカが飛んでくるが、雫はこの時点で絨毯に乗って後方に下がっている。連続攻撃でダメージを与えようとしていたが、それほど速度は無い。どうも対応型で猿真似で返して来るので、いまいち有効手段の選び方が鈍い様である。雫の行動は移動攻撃時見ているわけだが、怪談を語っている最中は必中だ。少々の無理は問題ないのだろう。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

野良豆柴の豆柴パンチ|格闘者《エアガイツ》×汚職警官、男です。
普段の口調は「「丁寧(自分、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
真面目な相手には真面目に戦いますが、しょうもない相手には相応の戦い方をします。
防御はオーラで受けるか野生の感で回避します。
√能力は指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の√能力者に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
無数のテレビが女性陣に絡んでいる。
出ているのは触手だろうか? それとも実は撮影中なのだろうか?
「む? お嬢さん方のピンチ?」
その姿を見て安藤・ポチ(野良豆柴の豆柴パンチ|格闘者《エアガイツ》・h02478)はやらねばならぬと思った。なお、はっはっはとやる気たっぷり尻尾フリフリの豆柴である。
「ど~れ」
そしてここからがポチの真骨頂である。
果敢に飛び掛かりパンチ! パンチ! ここにパンチ!
貴方の為にパンチ! 手を伸ばしてパンチ! 世界の為にパンチ! ご近所の為にパンチ! まあ、ここまで連続攻撃を掛けたりはしないが、ノリというものはある。行きがかりの駄賃であろう。ああ、豆柴のパンチとはどうしてこんなに可愛らしいのか。できればアンアンと啼いて欲しいのだが、それは尊厳の問題で教養出来ない。そう、ポチは野良とはいえ警察官。というか野良警官。尻尾を振るが義理人情以上の事はしないのだ。
『み……ぎゃ……がががが』
「なんだ? 壊れたテレビかな? いや、まんまですね」
敵は反撃として放った影の雨の最中でぶっ壊れた。
それだけでも痛い。だが、別に耐えられないよ程ではない。
「あ、野良警官なんで身構えなくて大丈夫ですよ」
そしてポチは女性陣のピンチを救ってさっそうと立ち去ったのである。
きっと報酬は後程振り込まれるのであろう。
🔵🔵🔴 成功
第3章 ボス戦 『神隠し』

POW
攫う『かみのて』
【虚空より生える無数の『かみのて』】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
【虚空より生える無数の『かみのて』】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
SPD
増殖する『かみのて』
自身の【かみのて】がA、【かみのうで】がB、【かみのかいな】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
自身の【かみのて】がA、【かみのうで】がB、【かみのかいな】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
WIZ
荒ぶる『かみのて』
【虚空より生える『かみのて』】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【掴む腕】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
【虚空より生える『かみのて』】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【掴む腕】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
√汎神解剖機関 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●
洋館を守っていた下級怪異は倒された。
本来は戦うのではなく誤魔化す予定だった存在である。
場所を突き止められて無理やり戦った為、周囲のエネルギーを使ってしまっていた。
『ああ。聞こえるわ。誰かの声』
『|朝《あした》、|昼《ひるひ》、|夕《ゆうべ》の出来事』
『でも、何か忘れているような気がするの』
天神、猩々、白羽の矢。妖精の輪、取り換えっ子、赤い靴の少女。
誰かに子供が浚われる類型であり、その本質は子供を浚うのは親の都合だという。
そして、ソレは此処に逆転する。子を浚う伝承と、仔を配る伝承が交じり合う時。
『この仔は誰の子?』
クヴァリフの仔で覚醒することなく、赤いスカートの少女は首を傾げた。

アドリブ&野良連携歓迎
身長200㎝の鉄十字怪人モードで事に当たる。
「お前を倒せば、この地域の怪異は収まるようだな」
「ならば私が、能力者の手助けに入ろう」
POW攫う『かみのて』に対抗
愛用のブラスターガンで遠距離攻撃主体で戦う。
「それにしても相手の『て』が多いな。だが手数には私も自信がある」
自律浮遊砲台ゴルディオン1~3号機(アイテムです)を起動し、
計算し尽くされた弾道計算と一斉発射で『て』を近寄らせない。
だがそれでも近寄って掴みかかってきた『て』に対しては、
「ご苦労。褒美をやろう」
私が身にまとう重甲の各所に仕込まれた爆薬炸薬を一斉起動して吹き飛ばす。
「まだまだ弾薬も炸薬もたっぷりあるぞ?」

さて、誰の子かしらね?ま、貴女が気にする事は無いわ。
貴女も此処で、眠らせてあげるから…貴女は何も、気にする事は無いのよ。
この子が攫われた成れの果てなのか、伝承が形を得たのか知らないけど…
実際に形を持っちゃうなんて、詰まらない話ね。
第六感を鋭敏にして、どこから攻撃を受けても即応出来る様に心身を準備し、自分の刀などを奪ってくる可能性も考慮しつつ、虚空の手の攻撃に備える
敵の自身に対する行動を上手く見切ったら、攻撃を受ける前に《インビジブル・ダイブ》を起動
少し間合を取った位置のインビジブルと位置を交換しつつ
敵の攻撃が自身に触れる前に跳躍して攻撃を躱し、状態異常を受ける事を避ける
攻撃を避けたら全身全霊の霊気を織り上げて、白銀の鳳を紡いで身に纏い《Akashic Buster》を起動
敵の本体へ向けて全力全開で突撃して、現状の自身の最大攻撃を叩き込む!
終わりの刻よ。ゆっくりお眠りなさい。
所で『クヴァリフの仔』って回収できるのかしら?
できるなら、汎神解剖機関に届ければ良いのかしらね?
アドリブ絡み連携歓迎

アドリブ、共演歓迎。
以前似たような敵と相見えましたが…これは。
仔を引き剥がさねばと思っておりましたが、彼女が神隠しの被害者であると言うなら…尚更、ですわね。
これだけの『手』です、中心となる「彼女」とその「眷属・手下」という感じで良さそうですね。
では私は周囲の「手」をメインに立ち回る方向で。
絨毯を乗り回して敵頭上からの酒や絵本の攻撃を、場合によっては大量の酒で全体に。
全体的に弱体化してくれれば、倒すのも引き剥がすのも易くなるかと。
神隠しにあった少女の名前は聞いている?
聞いているなら彼女の名で呼びかけましょう。
蛙が鳴くから帰ーえろ。
…怪異としてではなく、一人の少女として親御さんの下へ送りたいわね。
●
「お前を倒せば、この地域の怪異は収まるようだな」
|明星・暁子《あけぼし・るしふぇる》(鉄十字怪人・h00367)が戦いの気配を聞きつけて援軍として現れた。専用用重甲着の装者であり、正義たらんとする怪人である。
「ならば私が、能力者の手助けに入ろう。よしなにな」
そう言って暁子は重装甲をまとって前線に立った。
もちろん一人で戦っても良いのだが、その分厚い装甲で盾となり味方を守るのも仕事の内だ。当世分に言うと、『タンク』というやつであろう。
「さて、誰の子かしらね?ま、貴女が気にする事は無いわ」
最後の敵は赤いスカートをはいた少女であり、宙に子供が浮かんでいるのが奇妙だと|玖珠葉・テルヴァハルユ《くすは・テルヴァハルユ》(年齢不詳の骨董小物屋・h02139)は思った。ただ、その不思議な様子に取り合う気はない。
「貴女も此処で、眠らせてあげるから……貴女は何も、気にする事は無いのよ」
何しろ、今回の事件のあらましは玖珠葉も聞いていたからだ。怪しい邪神崇拝集団によって利用された怪異であり、また悲しそうな謂れがあるのならば、特に挑発したりするようなところは何も無い。無関心で済ませられる範囲だと言えよう。
「以前似たような敵と相見えましたが……これは」
敵の姿に逆月・雫(酒器の付喪神の不思議居酒屋店主・h01551)は前に見た敵であることを理解した。同じ個体であり、別の部位を元に再現されたボディではある。だが、同じ存在でも別個体で利用されている来歴があるならば別個体でもあろう。
「仔を引き剥がさねばと思っておりましたが、彼女が神隠しの被害者であると言うなら……尚更、ですわね」
雫は今回の個体が被害者に近い状態であることに思いを馳せた。
珍品を扱う店主として、来歴に思いをはせるのは日常ではある。その上で、邪神崇拝集団に利用されているというのもあるが、『神隠し』を実行している側というよりは、された側に近い状態だと把握したからだ。例え怪異となり果てているとしても、哀れな存在を無条件に憎む気はないのだ。今回の事件の擁そうとして仔を引きはがすつもりであったが、猶更引きはがしたいと思った。
「この子が攫われた成れの果てなのか、伝承が形を得たのか知らないけど……実際に形を持っちゃうなんて、詰まらない話ね」
その話を玖珠葉も聞いたが、ことさらに関心を抱くことはない。
冷たい人間という訳ではない。家族が失われるという感情に共感性を抱けないのだ。彼女の欠落ゆえか、ただ単に『目に見える伝承など物理現象に過ぎない』くらいの思い入れで済ませてしまっていた。
「ふむ。理解した。どちらにせよ倒してやることが本人の為という事だな。解放してやるとしよう」
暁子は元もと悪の組織に所属した怪人である。
ゆえに『倒してしまっても良いのだな?』とか確認したりしないし、ウエットに同情するよりも、苦しみを長引かせない方が良いだろうと判断した。ここで議論する余裕など無く、また迷っていては勝利もおぼつくまい。そして苦しみを背負うならば、元悪の組織であった自分が苦悩に相対しようと突き進んだのである。
いずれにせよ、戦いが始まることとなる。
周囲から力が注ぎ込まれる前に倒してしまううべきであろう。
「それにしても相手の『て』が多いな。だが手数には私も自信がある」
そして三人の中で最も早く戦ったのは前衛を務める暁子であった。
もちろん走って攻撃したら重装甲の影響もあったかもしれないが、彼女には別の『手』がある。
『ああ。聞こえるは。誰かの声が。みんな、何処なのかしら?』
「ここだ。たっぷりと見るが良い」
暁子は半自立式の浮遊砲台を無数に浮かべ、自身もブラスターガンを持ち牽制攻撃を始めた。そして本命のブラスターキャノンを召喚師、一斉発射したのだ。
『みなさんこちら。手の生る方へ』
「鳴るではなく生るか。ご苦労。褒美をやろう」
周囲から発生する無数の手は、射撃攻撃など無視して手招きした。
すると暁子の位置が一歩、また一歩と『向こう側』に近づいて行くのだが、物理的に掴み掛かる手ともども暁子は装甲に仕込んだ爆薬炸薬の類を機動し、リアクティブアーマーとして吹き飛ばしたのだ。
「まだまだ弾薬も炸薬もたっぷりあるぞ?」
暁子は異空間に引き吊られた分だけの痛みを感じつつも、掴みかかった手のダメージなど無いとばかりに不敵な笑みをその装甲の下で浮かべた。まさに人間戦車とでも言わんばかりだ。
「なるほど。これだけの『手』です、中心となる『彼女』とその『眷属・手下』という感じで良さそうですね」
その様子を見ることで雫も彼女を敵と判断した。
あるいは、今までは鑑定していただけであり、対処はここからという事だろうか?
「では私は周囲の『手』をメインに立ち回る方向で。ひ・ふ・み・よ・い・む・なな・や・ここの・たり」
そう言って雫は空飛ぶ絨毯を操ると、空中へと昇って行った。
そして屠蘇器から酒を降り注がせ、均等にお清めの酒を振りまいて行くのだ。
料理で塩を振る時は高い位置から、という原則を思い浮かべれば、どうして空を飛んだのか判る者も居るかもしれない。
「お呑みなさいな、ご遠慮なさらず♪」
雫は広域にお祓いを行う事で、『場』を崩さんとした。
この場が伝承の成就であり、反転であるとするならば、その『場』を解体することで敵の存在から悲劇を拭い去ろうとしたのである。
「全体的に弱体化してくれれば、倒すのも引き剥がすのも易くなるかと思うのだけど……。神隠しにあった少女の名前は聞いている?」
「聞いてないわね。噂が先行して最初から存在しない場合や、異装束を着ていたオトコノコの可能性もあるから微妙じゃない? 時間があったら観光がてらに調べてみるのも良いかと思うけれどね」
雫が聞いているなら彼女の名で呼びかけようと尋ねると、玖珠葉は肩をすくめてそう返した。名前はあるかもしれないし、無いかもしれない。あったとして基本的に星詠みは必要なこと以外は告げない事が多いし、これまでは聞く気も無かったのだ。確かに一番関心のある雫が聞いていないのだから、他のメンバーが聞いている筈もなかった。暁子辺りならおそらく『知らぬ』で済ませる筈だ。
「それもそうね。なら後で……っ!? まさか!」
『あらあら。困ったわ。どうしましょう』
その時、雫めがけて仔がぶつけられようとしていた。
おそらくは周囲で一番、仔が強烈な存在だからだろう。
同時に今の『神隠し』は仔を自分と同じ存在とは認識していないこともあるかもしれない。いずれにせよ雫の周囲にも手が群がっており、そこから抜け出すのに苦労した。
「……だいたい理解したわ。確かに脅威だけど、何とかできない状態でもない。能力によって、射程や範囲もあるみたいだしね」
玖珠葉は第六感を含めた感覚を研ぎ澄まし、周囲の状況を伺い、そして仲間達への攻撃を観察していた。もちろん彼女が真っ先に狙われた場合、対処できるように身構えて……だ。この手の対処は有用であり、技能ならば多少なりとも、名案とも言うべきなアイデアならばかなりの効果があるものだ。
『あらあら。困ったわ。どうしま……』
「ソレは見せてもらったわ」
敵が再び仔を投げつけ、同時に絡めとろうと手を出現させた。
だが玖珠葉あわてず騒がず予兆を感じ取ると、少し離れた位置にいるインジブルと己の位置を入れ替え、敵の攻撃範囲から逃れたのだ。同時にそのインジブルの周囲に霊的な力が溢れ還り、掴みかかった手や仔にダメージを与えていく。相手の攻撃が単体型であり、その位置に自分が居ないのだからこれほど有効な事はない。
「如何に深い闇であっても、一握の希望で全てを斬り拓く。虚空に刻まれた人々の意志を、此処に全て解き放つ!」
ソレは夜を切裂く朝日の如く。
絶望の闇が吹かれれば深いほど、燦然と輝く希望の光。
白銀にも見える輝きを駆り集め、鳳を紡いで全身に纏ったのだ。
「終わりの刻よ。ゆっくりお眠りなさい。」
『ああ、あああ、ああ……』
霊障で動けないのかそれとも無理に反応しようとしている状態なのか。
玖珠葉が白銀の鳳をまとって疾走すると、敵は動けずにいた。
周囲に存在している無数の手を砕き、赤いスカートを纏った少女に突撃を翔けたのである!
「ちゃんと『クヴァリフの仔』って回収できたみたいね。できるなら、汎神解剖機関に届ければ良いのかしらね?」
「知らぬ。だが、専門の機関があるならその方が良いのだろうな」
玖珠葉が仔を拾い上げるが特に反応はない。
ニューパワーに興味のない暁子はそっけなく応え、さっさと帰還してしまった。
「じゃあ私が届けて来るわね」
「お任せするわ。決着がついたみたいね。蛙が鳴くから帰ーえろ」
玖珠葉が忘れないうちに届けて来ると告げると、雫は気のない返事で周囲を眺め始めた。
「……怪異としてではなく、一人の少女として親御さんの下へ送りたいわね」
どうやら雫はこれから建物の来歴を辿り、あるいは町の歴史を調べて回るのだろう。
願わくば神隠しにあった少女が安らかならんことを祈りつつ、この日の事件を終えたのである。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功