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再誕

#√汎神解剖機関 #ノベル #蛸神様

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 原初の蛸神、それはもう、慈悲深く、黄金色の光を湛えていた。
 何もかもは逆転した――あらゆる理が流転した――オマエを守っていた壁は崩れ、こわれ、無くなる事だけはなかったが、それでも、この大きな事態については対応するまでに時間がかかった。神様の気儘さに、蛸神様の気紛れさに、日々日々頭蓋が罅入りそうな思いであった。兄ちゃんは言っていた、タコさんは優しい神様だと。兄ちゃんは笑っていた、タコさんはマトを守る為に、なんでもしてくれると。しかし、そんなふうには思えない。何故ならば『タコさん』とやらは『蛸神様』とやらは『兄ちゃん』をこんなふうにした張本人なのだから。今、兄ちゃんは俺の隣はスヤスヤと眠っている。まるで子供のように、まるで赤子のようにスヤスヤと眠っている。それもその筈、兄ちゃんの心は――こんなことは言いたくもないけれども――本当に、退行してしまっているのだから。兄ちゃんは素直だ。帰ってきてからの兄ちゃんは嘘の『う』の字も知らない、純粋無垢なひとだ。だから、この『蛸』に対しての感情もまったく心の底からの『もの』に違いない。だけど、俺は違う。今、憑かれているのは『俺』だし、まだ、何もしてこないけれども、如何にも信用なんて出来そうにない。そもそも、何が『蛸神様』だ。神様なんだったら、俺の兄ちゃんを帰してくれよ。……いや。これは誰の所為でもない、血の繋がりが孕んだ、一種の運命である。偶然がサイコロを転がす事などなく。神意は――ドラムを叩くよりも明らかだ。
 これは原初返りとでも呼ぶべき沙汰である。これは黄金時代の再来とも呼ぶべき沙汰である。誰かさんの性格が穏やかであった故、花咲いた奇跡とでも表現すべきか。視点が違えば横暴だが、成程、神様にとってはゆりかごの慈愛に等しい。
 蛸神様にとってオマエの『兄』は――八手・和文は――優秀な依代であり『友』であった。お仕事の時も休みの時も心を通わせ、文字の通りの『同体』としてこれ以上ないほどであった。彼が壊れた時……混ざり過ぎてしまった時、蛸神様は『少しやり過ぎた』と反省したのかもしれない。お疲れ様、と、頭を撫でてやってもいい。ゆっくりお休み、と、影を置いていってもいい。そんな想いを蛸神様は抱いている……のかもしれない。そうとも、不確定だ。不明なのだ。不定形なのだから――言葉の悉くは『かもしれない』に支配されている。……認めない。認めてたまるものか。こんなヤツを神様扱いするなんて……。須臾、蛸壺の最奥にひとつの『かたち』が生じた。たこすけ……そう、たこすけ……。特別な思い入れなんてない。意味なんてない。野良猫か野良犬に『する』かのような気軽さで……名を与えた。
 ビチビチと、クネクネと、オマエの背中から『たこすけ』が出現した。這うように、弄るように、オマエの血液を啜ろうとしている。抵抗は無駄だ。抗おうとしても身体の一部なのだから、繋がっているのだから、勢いよく吸われておしまいである。そんなにも、嫌だったのだろうか。だとしたら、これは『俺』のしたことは……まちがいじゃ……ない……? 世界がぐるんと大笑いしてきた。地面とお友達になる最中、たこすけの雀躍が聞こえる……。
 嫌がってなどいない。名付けを喜んで受け入れたのだ。確定した。明らかとされた。怪異として縛り付けられた。悪くはない。あの、和文の弟からの贈り物なのだ。和文との契約通り……約束の通り……新たな依代だけの、新たな神として『再誕』する事にしよう。大切な『たこすけ』という四文字。神様として生きる永劫――その途中の『ひとつ』として――八手・真人は『絆』とされた。特異点である。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​ 成功

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