シナリオ

ふわふわでもこもこのグッズをどうぞ

#√汎神解剖機関 #クヴァリフの仔

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●怪異アイテムのお店が開店しました
「いらっしゃいませ、リラクゼーショングッズショップ『ふわもこ』です!」
 日本のとある都市にて、リラクゼーション用グッズを売る新たな店が開店した。
 無茶苦茶ふわふわモフモフなキャラクター、怪異のヌッコやイッヌ、ハッムにウッサを模したぬいぐるみに抱き枕だったり。
 ヌッコやウッサの毛並みを模したという、すべすべだったりさらさらだったりなシーツ、ふかっと温い毛布にお布団、ふわもこなルームウェアやシックにさらりとしたパジャマだったり。
 イッヌと遊ぶ青空の香りやら、ハッムとまどろむひだまりの香りやらと謳ういい香りのフレグランスにエッセンスオイル、静音のアロマディフューザー、優しい味わいのハーブティだったり。
 不思議な設定の「怪異アイテム」と言う名のリラクゼーショングッズを扱うお店だ。
 この計画を聞いた『連邦怪異収容局員『リンドー・スミス』』はまたか、と思った。
「前回、レストランで失敗していなかったか?」
「前回は怪しかったから、というのもあるでしょう」
 企画者は今度は大丈夫だ、と胸を張る。
「今回は「怪異アイテム」と謳っていますが、怪異の手法を極僅かに取り入れただけの無害で優しいものばかりです。怪しまれる確率は少ないですよ。ネッコやウッサなどは非実在怪異ですし」
 リンドーは眉間に寄ったシワを揉むように手を当て、頭痛をこらえた。
「せめてショップ名を変えるように」
「『Fluffy beauty prity cutie Shop』の略称でFBPCはまずいでしょうか」
「隠す気が本当にあるのか?」
 店名は変わることになった。

●リラクゼーショングッズのお店、ふわもこ
「『連邦怪異収容局』の職員が、またクヴァリフの仔を召喚するみたいだ」
 猫宮・弥月(骨董品屋「猫ちぐら」店主・h01187)は猫カバーのスマホにまとめたメモを読みながら、√能力者に降ってきた星詠みを語る。
 最近、怪異を崇める狂信者と化した人々に対して、仔産みの女神『クヴァリフ』が伝えた己の『仔』たる怪異の召喚手法を実行する事件が起こっている。今回弥月が詠んだ星も、その事件の一つだ。
「今回、彼らはリラクゼーショングッズの店、『ふわもこ』なる店を開いているよ。そこで召喚するために必要な資金や購買欲やかわいい気持ちといったエネルギーを集めてるみたいだ」
 召喚場所を確保し、召喚用の資材を手配し、かつ召喚するための人員を確保、養うためにも資金がいる。連邦怪異収容局の予算は潤沢だが、多少でも他の当てがあるのは良いことだ、とショップ運営をしているらしい。
「ただ、今回は現地スタッフを雇ったみたいで誰が連邦怪異収容局職員かはわからないんだ」
 なので、今回は√能力者達にはお店に行ってまずは様子を見てきてきてほしい。お客となってグッズを楽しみ、ついでに怪しい痕跡や人物を探してほしいのだ。
「きっかけが見つかれば、追いかけることもできると思うよ。アジトに入るための障害か、アジトを守る怪異がいるかもしれない」
 店を楽しむ人が多ければ障害に、怪しいものの捜索メインの人が多ければ怪異に当たりそうらしい。障害の方が簡単そうではある。
「見つけたアジトで召喚されたクヴァリフの仔を回収してきてほしい。簡単にはいかないだろうけど」
 敵の√能力者か、引き寄せられた怪異か、どちらかと戦うことになるのは間違いない。それでもこの世界には『クヴァリフの仔』からもたらされる可能性が必要なのだ。
「このまま連邦怪異収容局を放っておくのも問題だしね。どうか、よろしくお願いします」
 弥月はそう願い、頭を下げるのだった。

●リラクゼーショングッズショップ『ふわもこ』へようこそ
 話に聞いたお店に入れば、柔らかなナチュラルカラーとアクセントのパステルカラーが合わさった、穏やかなディスプレイが出迎えてくれる。
 ふわふわもこもこの怪異、ねこっぽいネッコ、犬のようなイッヌ、ハムスターめいたハッム、うさぎらしいウッサを模したぬいぐるみはふわふわのもこもこ、抱きしめて顔を埋めて撫でてと幸せな手触りに抱き心地。それを大きくしたような抱き枕にクッションは、添い寝して抱きつくのもいいだろう。
 ふんわりと優しく香るフローラルだったりハーバルだったりするアロマやフレグランスは心を落ち着けてくれるし、ころんと丸みを帯びた置物も可愛らしい。
 不思議なほどに柔らかくて優しく、心癒して解いてくれるような品々に、お客さんは夢中になっていた。
 ほんの少しだけ、怪異が人を引きつける手法を取り入れた、けれど全く無害な怪異アイテムのお店である。

マスターより

霧野
 ゆったりふわもこはいつでも求められる、かもしれません。霧野です、よろしくお願いします。

●シナリオについて
 コミカル方面のシナリオです。軽いノリでいきたいです。重たい気持ちも歓迎です。
 1章のリラクゼーショングッズのショップで怪しいものや人を探ってください。不思議な気配、怪しい人物、仕入先など、お客の振りで探せば手がかりがあると思います。
 グッズを楽しめば障害が、捜索をメインにすれば怪異との戦闘が2章で発生します。
 3章では障害を抜ければクヴァリフの仔を回収に来た√能力者、連邦怪異収容局員『リンドー・スミス』との、戦闘して時間がかかればおこぼれをもらいに来た怪異との戦闘があります。
 よろしくお願いします。
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第1章 日常 『recess with unknown』


POW ゆっくり慎重に、「怪奇アイテム」に触れる。勇気を出して挑戦する。
SPD 取扱マニュアルを確認する。「怪奇アイテム」の利用価値を考える。
WIZ 「怪奇アイテム」を理解しようとする。己の知的好奇心に従う。
√汎神解剖機関 普通5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

凍雲・灰那
へぇ。この一見するとただのゆめかわな店が、収容局の手先なのか。
……擬態としちゃ上等なのは確かだが、上も良く呑んだなこの提案。

どれ、適当に楽しめばいいんだろう?下手に探してるのを見られて警戒されちゃ仕方がねェってもんだ。
おお、こりゃ抜群の肌触り……この辺のぬいぐるみ、咲乃ちゃんにお土産で買って帰るのも良さそうだな。
む、そろそろ暖かくなってくるとはいえ、この毛布のぬくもりは侮り難し……!
来冬に備えて買っておこうか。いや買わねばなるまい。
ひだまりの香りのフレグランスというのも、中々に悪くない。店で使うと商品に匂いがついちまうが、住居スペースで使う分にはいいだろ。

……これ、先に会計しとくか。


(へぇ。この一見するとただのゆめかわな店が、収容局の手先なのか)
 凍雲・灰那(Embers・h00159)は初めて訪れたお客です、興味津々です、という風情で『ふわもこ』の店内をゆっくり見回す。
 自然の色調をベースにし、淡い色合いをアクセントにし装飾で飾り、柔らかそうだったり、手触りが良さそうだったりするものをディスプレイして客を出迎えるその手法は、いかにもリラックスしてほしいと言わんばかり。怪異という恐ろしい怖いもの、というイメージからはだいぶ遠い。
(ふぅん……擬態としちゃ上等なのは確かだが、上も良く呑んだなこの提案)
 アメリカの『秘匿戦力』として強力な怪異を蒐集・支配・使役する機関、FBPCがこんなやり方をよく通したものだ、と灰那は僅かに片目を眇めた。
 企画をプレゼンされたリンドー・スミスが灰那の思考を知ったら、こう言っただろう。「好きで認めたわけではない、何を言っても聞かなかっただけだ」と。
 そんなことは露知らず、灰那は早速商品を眺め始めた。
(どれ、適当に楽しめばいいんだろう? 下手に探してるのを見られて警戒されちゃ仕方がねェってもんだ)
 さてどう楽しむか、と考えながらウッサのぬいぐるみに触れてみれば、その触り心地に手が止まらない。いつまでも撫でていたくなる。
(おお、こりゃ抜群の肌触り……この辺のぬいぐるみ、咲乃ちゃんにお土産で買って帰るのも良さそうだな)
 そっと店のかごにぬいぐるみを移し、今度は毛布やシーツのある棚に。サンプルで置かれた毛布に手を滑らせ、間に挟めば素晴らしく温かい。真冬でもこの毛布が一枚あれば快適なお布団になりそうだ。
(む、そろそろ暖かくなってくるとはいえ、この毛布のぬくもりは侮り難し……! 来冬に備えて買わねばなるまい)
 毛布もかごに入れ、今度はフレグランスの棚に行くに ひだまりの香りのテスターをそっと香ってみれば、ふわっとハーバルの香るソーラーノートが灰那の心も緩ませる。駄菓子屋の店内に使うには向かないが、住居スペースのような生活空間で楽しむのには良い塩梅の仄かな香りだ。これもかごに入れる。
 そうやって商品を見ていくうちに、焔の精が見つけた痕跡を報告したときには、灰那のかごはいっぱいになっていた。
「……これ、先に会計しとくか。ぬいぐるみのラッピングも頼まなくちゃな」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

白峰・未咲
ふ、ふわもこ……!
(はっと我に返って、でも声には出さず)いえ、ダメです。あれは怪異、あれは怪異……(自分に言い聞かせ)

そもそも「怪異」に「癒し」って時点で色々とおかしい気がするんですけれども、どうなんでしょうね
そういう違和感も封印されちゃってるんですかね……?

流石に社会人とは見てもらえなさそうですから……お客さんとしてそれとなく調べてみるのが一番確実、ですよね……
ぬいぐるみには罪は無いですし、色々問題なのは連邦怪異収容局の人たちの方ですし……
(そんなことを思いつつ、かわいいけれどこれは怪異の類なのだと心の中で言い聞かせつつ、周囲の様子を伺って、違和感のありそうな人、もの、事象を探そうとする)


(……お客さんとしてそれとなく調べてみるのが一番確実、ですよね……)
 自身の見た目では、雑誌の特集で店の情報を細かく聞く、というような社会人として見てもらうのはまだ無理があるだろう。そう判断した白峰・未咲(未だ咲かぬ花・h00247)は、一般客として店を調べることにした。
 そう決めて店内に入れば、真正面でふわふわでもこもこなぬいぐるみが未咲を出迎える。ふわっふわで柔らかく、それでいて滑らかな艶のある毛並みに、もこもこと柔らかそうなボディが抱っこしてほしいというようなポーズで飾られていたのだ。デフォルメされた動物っぽい形も可愛らしい。
「ふ、ふわもこ……!」
 思わず漏れた自分の声に、未咲は我に返った。
(はっ、いえ、ダメです。あれは怪異、あれは怪異……非実在怪異らしいですが、怪異アイテムです……)
 危険はないらしいが、怪異の手法を取り入れた品だという。存在しないかわいい怪異をモチーフにしたものであっても、その危険性は0ではない。
(そもそも「怪異」に「癒し」って時点で色々とおかしい気がするんですけれども、どうなんでしょうね。そういう違和感も封印されちゃってるんですかね……?)
 可愛さで擬態しておびき寄せるタイプの手法なのかもしれない。つぶらな瞳のデザインで見つめ返してくるぬいぐるみをじっと見つめ、その手触りを確かめて、これが本当にいたら一緒にいっちゃいそうな人もいるかもしれない、と未咲は頷いた。ぎゅっと抱きしめてみるとふかふかで心地よく、そっと撫でれば穏やかな気持ちになっていく。
 ぬいぐるみに罪はない。怪異アイテムと謳っているけれど、これはリラックスさせることを目的とした怪異の手法を取り入れただけの品だ。その後ろに連邦怪異収容局がいるというだけなのだ。
(かわいいけれどこれは怪異の類です、存在しない怪異ですけど……うう、夢中になっちゃいけないんです)
 未咲は自身に言い聞かせる。どんなに手触りが良くて、どんなにふわもこで、どんなに抱きしめていると幸せを感じるようなぬいぐるみであっても、夢中になってはいけないのだ。
 抱き心地を試してます、というお客の振りだと言い聞かせながら、未咲はちゃんと周囲を探る。
 そうすると一人、バックヤードから顔を出した女性が、他の店員とは違う熱のこもった目で店内を見ていたことを確認するのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

眞継・正信
アドリブ・連携歓迎

彼らは今回もきちんと労働し、その対価を用いて召喚を行おうとしているのだな……邪魔はしたくないが、人々の不利益につながるならば致し方ない。

店の品はどれも珍しいものだが、中々ピンとこないのだ。こういったときは人に聞こう。
「ゴーストトーク」で年若いインビジブルと対話し、店内の売れ行きについて尋ねてみる。
私のように年嵩の人間は、どんなものを買っていたかね?

同様に、店員方にもおすすめを聞こう。売れ筋商品もだが、色々と聞いてみて熱意がこもっていれば、やはりそれは怪異の本職……FBPCの人間だと見込みがつくだろう。
私の気に入ったものが一番良い? それならば、まあ。選ぶのは、イッヌかな……。


(彼らは今回もきちんと労働し、その対価を用いて召喚を行おうとしているのだな……)
 前回、今回と真面目に経営をし、正当に獲得したリソースで召喚を行うという姿勢は眞継・正信(吸血鬼のゴーストトーカー・h05257)には悪くないと感じられた。
 しかしクヴァリフの仔はこの世界に必要で、FBPCの手から回収しなくてはいけないのだ。
(邪魔はしたくないが、人々の不利益につながるならば致し方ない)
 正信は折り合いをつけ、『ふわもこ』へと足を踏み入れる。
(ふむ、店の品はどれも珍しいものだが、中々ピンとこないな)
 店員から見えない棚のそばで、正信は世界に漂うインビジブルへと祈りを向けた。その祈りに応じ、年若い女性の姿が実体化する。
「応じてくれてありがとう。早速だが、私のように年嵩の人間は、どんなものを買っていたかね?」
「そうですね、贈り物が多いですね。小さなお孫さんへぬいぐるみ、成長されたお孫さんには寝具や小さな置物、趣味の品を。あとはご自分が使用されるので好きなものを、という傾向ですね」
「ふむ。店員におすすめを聞けばまた違った傾向が知れるだろうか」
「おそらく。先程の傾向は、私が見た範囲でお答えしましたので」
「では聞いてみるとしよう。感謝する」
 元々店員に聞くつもりだったところにインビジブルにも後押しされ、正信はあらためて店内を見渡した。
「すまない、少し手伝ってもらえるだろうか。おすすめの商品はあるかね?」
 買うものに悩んでいますという風情の正信に、店員は用途や好みを聞いて、彼らのおすすめを教えてくれた。その姿勢は品物への情熱はあれど、怪異への熱はない。かわいいキャラクターですよね、という熱はある。
 しかしバックヤードから店内の様子を覗く女性は、怪異の話になると熱い視線を向けてくる。いいぞ、怪異はいいぞ、という風情だ。
 怪しい人物が特定できたところで、正信は一つくらいは品を選んでいこうかと聞いてみる。
「一つ、選ぶならどれだろうか」
「そうですね、色々用途がありますし、効果も様々です。でも一番はお客様が気に入ったものですよ!」
「そうか。それならば、まあ。選ぶのは、イッヌかな……」
 |灰と茶の毛並みに青い目《オルジュになんとなく似ている》のイッヌのぬいぐるみを手に取り、正信はぬいぐるみとしばし見つめ合うのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

マキ・タカミネ
「お店の名前の通り、ゆるふぁで可愛らしい商品がいっぱいですね~♪」
私服の森ガールな服を身に着け、コミュ力を活かして店員に話しかけます。

「ハッムとまどろむひだまりの香り?・・・この香り、試してみてもよろしいですか~?」「ああ♪ 日向ぼっこしたあとのモフモフの香りがしますね~♪」
まずは、商品の良さを褒め、さりげなく原材料や効果をじっくりと考察します。

「これだけの品・・・仕入れるの大変でしょう~? キャラクターモノとかは、このお店のオリジナルなのですか~?」(ハッムのぬいぐるみを撫でてみる♪(←なにげに普通に癒される♪))
なるべくさりげなく、仕入れルートのヒントが得られないか聞いてみる。


 落ち着きと可愛いを両立させた飾り付けの『ゆるふわ』の中を見渡して、店内に馴染む森ガールな私服のマキ・タカミネ(量産型WZ「アストライア」の搭乗者・h02335)はおっとり呟いた。
「お店の名前の通り、ゆるふぁで可愛らしい商品がいっぱいですね~♪」
 デフォルメされたキャラクターに柔らかそうなぬいぐるみ、穏やかな香りに照明、丸みを帯びた小物やリラックスへの想いを感じさせる品々でいっぱいで、なんとなく心地よくなってくる。
 マキは早速高いコミュニケーション力を活かし、店員へと話しかけた。
「ハッムとまどろむひだまりの香り? ……すみません、この香り、試してみてもよろしいですか~?」
「はい、どうぞ! テスターがありますよ! テスト用のシートもよろしければどうぞ」
「ありがとうございます〜……ああ♪ 日向ぼっこしたあとのモフモフの香りがしますね~♪」
 吹き付ければふわっとハーバルがメインのソーラーノートが漂った。少し土っぽい匂いと、ふわっと軽さを感じる爽やかな香りも感じる。裏の成分表を眺めれば、ほぼ自然由来のハーブだ。一部保存料が怪しいかもしれない。
 他のぬいぐるみや布製品、小物も自然由来のものが多く、原材料にも気を使ったというポップが並び、マキはそれにも目を止める。
「これだけの品……仕入れるの大変でしょう~? キャラクターモノとかは、このお店のオリジナルなのですか~?」
「いえ、原案者の方がいらっしゃいますよ。日系のアメリカの方で、今もほら、お客さんの様子が気になるみたいで」
 店員はバックヤードから顔を覗かせた女性を示す。女性は店内の様子を見渡しては、うんうん頷いているようだ。モチーフの怪異の話が聞こえるといいぞ、怪異はいいぞ、と頷いているので怪しさも高い。
「わぁ〜。あの方が仕入れを?」
「はい! ええと、制作企業は確か……そうだ、FBPCって言ってました!」
 所属隠せてないじゃないですか、とマキは一瞬思った。
 ともかくあの女性を尾行すれば、アジトがわかりそうである。手触りや抱き心地を確かめるお客のようにふかふかのハッムのぬいぐるみを抱きしめ、マキはこのあとどうするか考えることにした。
(あ、気持ちいいです〜♪ 撫で心地もいい感じ〜)
 普通に心地よい感触を撫でて癒やされ、頬を緩めながら。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

國崎・氷海風
猫宮さんに聞いて来ては見たけれど……人間ってこんなのが可愛いって思えるの?
それはそれで“可愛い”ねェ
夢中になってる人々を見つつ、店員や客で怪しい動きをしている人が居ないか【情報収集】してみようかな
あぁぬいぐるみの手触りは悪くないよね、でも俺は……と、イケナイイケナイお仕事だった よォ
【暗殺】の知識も使ってみたら少しは怪しい場所とか、みつけられないかね。色や音が少し変わる所とかね!
それにしても本当に人間って可愛いね。
俺ももっと人間研究しないとねぇ?


 知り合いの星詠みに聞いた店に訪れた國崎・氷海風(徒花・h03848)は商品の一つを手に取った。
(猫宮さんに聞いて来ては見たけれど……)
 柔らかな布とふかふかの毛並み、まあるく滑らかに作られた造形、動くことも音を出すこともないただのぬいぐるみ。
 動物に似ているようなそれをサングラスの奥から見つめ、氷海風はゆるりと口の端を上げた。
(人間ってこんなのが可愛いって思えるの?)
 願わず、淀まず、ただそこにあるだけの柔らかい存在。自らの熱もない、流れる血潮もない、おいしい欲もない、無力なそれが可愛いと。
(それはそれで“可愛い”ねェ)
 氷海風は愛おしそうに笑みを浮かべ、優しげに笑う。
 華やいだ声をできるだけ静かに上げたり、ぎゅうっとぬいぐるみを抱きしめたり、穏やかな顔で香りを楽しんだり、夢中になっているお客を眺めて。
 品を丁寧に並べ、お客の問に答え、商品を勧める店員を眺めて。
 可愛い可愛い人間の様子に柔らかな笑みを浮かべて、怪しい存在はいないかどうか探りながら。
 その中でバックヤードから覗く女性、彼女がどうにも気にかかる。店に飛び交う声を聞いて、怪異の話にはいいぞ、怪異はいいぞと言うように頷いているのだ。けれど暗殺者としての知識は、あれは素人ではない身のこなしだと読み取った。
 静かに笑んだまま、氷海風は手にしたぬいぐるみを撫でる。
(あぁぬいぐるみの手触りは悪くないよね、でも俺は……)
 別の手触りが好ましい。もっと、そう、今ここにいる“可愛い”もののような。
(と、イケナイイケナイお仕事だったよォ)
 笑みを苦笑に変えて、氷海風はぬいぐるみを棚に戻した。とりあえずバックヤードの女性をあとで追いかけてみればいい。
 店の中にはこれ以上怪しいものはないようだ。あとは可愛いものが可愛と思うものを楽しんでいる様ばかり。
(それにしても本当に人間って可愛いね)
 賢いと思っていながら愚かで、慧眼を持ちながら盲目で、気づいているのに気づいていない。
 自身の商う香辛料の店にもこういった可愛さを取り込むべきか。それとも可愛さに惹かれる可愛いものを呼ぶような宣伝をしてみるべきか。
(俺ももっと人間研究しないとねぇ?)
 |可愛い《食べちゃいたいくらい》ものを知りたい気持ちはいつだってあるのだから。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

七豹・斗碧
いろんな手段を使うんだなあ…頑張る姿勢はすごい大事だと思うよ。方向性が盛大に間違っていることを除けば
ひとまず、お店を楽しむお客さんのふりをしながら怪しい人とか怪しい雰囲気を探せばいいんだよね。がんばるよ

それはそれとして可愛いお店だなあ。うわあ…このウッサのぬいぐるみすごいもふもふでもふもふがもふもふだよお!
…はっ、いけない。つい楽しむに全力投球しちゃう所だった。売り物にいつまでも抱きついちゃだめだよね
怪しい人や怪しい気配、【第六感】でなにか察知できないかな
裏があることは確定してるんだし、少し意識を向ければなにか引っかかるかも
…けどあまりにももふもふだから、このウッサぬいぐるみ買ってもいいかなあ


 前回はレストラン、今回はリラクゼーショングッズのショップ。もちろん他の活動をしているFBPCの職員もいるだろう。
(いろんな手段を使うんだなあ……)
 七豹・斗碧(白翔レイドレパード・h00481)はもこもこのウッサのぬいぐるみを手に取り、ふかふかと揉んだ。
(頑張る姿勢はすごい大事だと思うよ。方向性が盛大に間違っていることを除けば)
 『秘匿戦力』を収集する、多分秘匿組織のFBPCのカバーとしてかわいいショップはありなのだろうか。ちょっと物申したい気もする。
(ひとまず、お店を楽しむお客さんのふりをしながら怪しい人とか怪しい雰囲気を探せばいいんだよね。……それはそれとして可愛いお店だなあ)
 自然な色味と淡い色合いを程よく取り入れ、飾られた店内。そこに置かれた商品には柔らかい曲線や丸みを帯びたものが多く、可愛いらしいものが多い。
 斗碧が手にしたウッサのぬいぐるみはうさぎっぽい怪異をモチーフに、と謳っている。デフォルメしたうさぎがふわっふわでもっふもふな毛並みをしているようなぬいぐるみだ。
「うわあ……このウッサのぬいぐるみすごいもふもふでもふもふがもふもふだよお!」
 先程から味わっていた手触りに思わずぎゅっと抱きしめると、触れた部分すべてがもふもふだった。斗碧はその心地よさに夢中になりかけ、なんとか我に返る。
(……はっ、いけない。つい楽しむ方に全力投球しちゃう所だった。売り物にいつまでも抱きついちゃだめだよね)
 斗碧は名残惜しくもそっとウッサのぬいぐるみを棚に戻し、他の商品を見ています、という体で店内を見渡した。
 怪しい人、もの、気配、そういったものに意識を向けて頑張って探ってみれば、うっすら品から感じる怪異の気配よりも濃い気配がバックヤードから覗く女性より感じられる。女性は怪異の話題にいいぞ、怪異はいいぞと頷いているようだった。
 妙に引っかかった彼女の行動を追えば、アジトにたどり着ける可能性が高そうだ。斗碧は獲物を確認しすっと目を細めたあと、もう一度ウッサのぬいぐるみを手に取った。
(……けどあまりにももふもふだから、このウッサぬいぐるみ買ってもいいかなあ)
 この気持ちよさは耐え難い。斗碧は金の目に茶色のウッサぬいを手にとって、しばし見つめ合うのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

緇・カナト
●白と黒
リラクゼーショングッズの店ふわもこ…
すごいなぁ名前が安直だァ
分かりやすくて助かるんだけども
それじゃあ買い物に向かおうか〜

最近レモン君は猫が気になってるんだっけ?
あの辺の大きいふわもふ抱き枕とか
クッション良さそうな気もしつつ〜
三毛猫チョイスかぁ…ほぅほぅ
オレが色々買って帰ると地這い獣あたりに
襲われちゃいそうなのが…
かわいいのに勿体ないよね

大鍋堂のお店スペースに置けそうだったら
キミはネッコ派?イッヌ派?
それとも此方のウッサ派?
…とか出来たりもして〜
じゃあ此のイッヌとウッサの
クッション買って行っちゃおう
ふわもふ満喫レモン君が見られる日も楽しみ〜
ネコ派の推し方が強いなぁ
茶治・レモン
●白と黒
ふわもこ…安直ですが、惹かれるワードですね
気に入るふわもこを見つけて、是非連れて帰りましょう!

そうですね、僕は猫が気になります
ネッコ…いえ、ヌッコでしたか…
確かに抱き枕は魅力的です
特にこの三毛猫模様の、可愛いですね…!
よしっ、この子は連れて帰ります!(小脇に抱える

カナトさんはイッヌ派です?
あ、あー確かに、嫉妬で噛まれてしまうかも…?
なら、お布団はどうですか?
地這い獣の楽々さんとも、一緒にごろごろできますよ

大鍋堂に置くのもありです!
ネッコ、イッヌ、ウッサ…
多種多様揃えておけば、絶大な癒し効果がありそうですね
カナトさんも、一緒にふわもこ満喫しましょう!
…ネッコ、もう2,3個買って帰ります?


「リラクゼーショングッズの店ふわもこ……すごいなぁ名前が安直だァ。分かりやすくて助かるんだけども」
 ど直球ストレートな店の名前に、緇・カナト(hellhound・h02325)は安直な思い切りの良さにどこか賞賛するような声を上げ。
「ふわもこ……確かに安直ですが、惹かれるワードですね」
 茶治・レモン(魔女代行・h00071)は柔らかさを想起させる単語に目を輝かせた。
「気に入るふわもこを見つけて、是非連れて帰りましょう!」
「うん、それじゃあ買い物に向かおうか〜」
 二人、連れたち店内に入れば、出迎えるのはリラクゼーショングッズの数々だ。
 ふわふわもこもこの怪異を模したというぬいぐるみに抱き枕、クッションがまずは目に入る。それからファブリックやフレグランスの棚、置物や小さなグッズの棚と選り取りみどり。
 カナトとレモンは早速大物、ぬいぐるみや抱き枕が集まる棚へと向かっていく。
「最近レモン君は猫が気になってるんだっけ?」
「そうですね、僕は猫が気になります」
 カナトの問いかけにレモンは頷く。カナトはそれに可愛らしいねこのような抱き枕やクッションの集まる場所を指した。
「うん、ならこの辺の大きいふわもふ抱き枕とか、クッション良さそうな気もしつつ〜」
「ネッコ……いえ、ヌッコでしたか……確かに抱き枕は魅力的です。特にこの三毛猫模様の、可愛いですね……!」
「三毛猫チョイスかぁ……ほぅほぅ」
 三毛模様のヌッコの抱き枕と目があったレモンは、その子を抱き上げる。ふかふかの抱き心地ともふもふの触り心地が同居し、ふわっと心もほぐれるような心地を味わえた。カナトはそんなレモンを温かく見守っている。
「よしっ、この子は連れて帰ります!」
「いいねぇ」
「カナトさんはイッヌ派です?」
 黒い毛並みの、特にもこもこもこもこなイッヌのぬいぐるみを示したレモンに、カナトは少し悲しそうな声を出す。
「う〜ん……オレが色々買って帰ると|地這い獣《楽々》あたりに襲われちゃいそうなのが……」
「あ、あー確かに、嫉妬で噛まれてしまうかも……?」
「かわいいのに勿体ないよね」
 噛み付く口も多めの地這い獣を思い浮かべて、カナトとレモンはイッヌのぬいぐるみから目をそらす。かぷかぷ無残に千切られるのは少々可哀想だと思えた。
「なら、お布団はどうですか? 楽々さんとも、一緒にごろごろできますよ」
「ありかも、あとで見てみよっか」
 ふわっと軽く暖かな布団なら、地這い獣も噛まないかもしれない。少し先にある、カナトも楽々も一緒に楽しめそうな品物をレモンは明るく勧めてみる。カナトもそれには頷きつつ、次に並んだクッションに目を止めた。
「このクッションもいいよね。大鍋堂のお店スペースに置けそうだったら、キミはネッコ派? イッヌ派? それとも此方のウッサ派? ……とか出来たりもして〜」
「はい、店内に置くのもありです! ネッコ、イッヌ、ウッサ……多種多様揃えておけば、絶大な癒し効果がありそうですね」
 まんまるな本体に耳がぴょこんとついていたりするクッションを持ち、カナトがレモンにプレゼンすれば、レモンも妙案だときらきら瞳を輝かせた。
 大きな窓から日の光が差し込む大鍋堂の店内に、ふかふかもこもこのクッションが並ぶ。柔らかで温かな、丸みを帯びた動物のようなクッションは、訪れたものを優しく迎え入れてくれるだろう。
 想像の店内が幸せそうで、レモンはカナトに顔をほころばせる。カナトもそんなレモンに微笑み返し、イッヌとウッサのクッションを手に取った。
「じゃあ此のイッヌとウッサのクッション買って行っちゃおう。ふわもふ満喫レモン君が見られる日も楽しみ〜」
「ありがとうございます、カナトさんも、一緒にふわもこ満喫しましょう!」
 穏やかな店内、緑に囲まれた空間で、ウッサのクッションに埋もれヌッコの抱き枕を抱えたレモン、イッヌのクッションに身を預けたカナトがお茶をしてほっこり癒やされる日も近いかもしれない。
 レモンはもう少しふわもこがあってもいいかもしれない、と並ぶクッションや抱き枕を改めて見る。白黒縞虎、様々な毛並みのヌッコ達がそこにはいた。
「……ネッコ、もう2、3個買って帰ります?」
「ネコ派の推し方が強いなぁ」
 |千疋狼《オクリオオカミ》が怪しい痕跡を見つけるまであと少し。その間、カナトとレモンは連れ帰るクッションを真剣に楽しく選ぶのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

一戸・藍
アドリブ、絡み歓迎

リラクゼーショングッズのお店ですか。いいですね〜
ちょうど、台車の段ボール箱に敷くクッションを探していたところです
擬人化装置を使用して人型に
普段移動に使っている台車は店の外

いろいろあって迷ってしまいますね
いぬ、ねこ……こちらはうさぎでしょうか? うーん、どれもかわいい……
そうだ、さかなのグッズはあるのでしょうか?
店員さんに尋ねつつ、少し様子を観察してみましょう
すみません、私この、怪異アイテム?というシリーズのグッズはあまり知らなくて………おさかなさんのクッションやぬいぐるみはありますか?


(リラクゼーショングッズのお店ですか。いいですね〜)
 ごろごろと陸上型ドローンな台車を動かして、一戸・藍(外来種・h00772)は『ふわもこ』へとやってきた。アジアアロワナな魚体を収めた段ボールに敷くためのクッションも欲しかったところだったのだ。ちょうどいい機会である。
 店の外の物陰で台車を止め、藍は擬人化装置を使用して人型になり、店へと入る。
 落ち着きと可愛さを程よく合わせて飾られた店の中、藍は、まずクッションが置かれた棚へと向かう。ふわもこな怪異を模したというネッコやイッヌ、ウッサやハッムなるキャラクターのクッションが、大きさや色も柄も様々に藍を待ち受けていた。
 普段遣いの段ボールに敷くのによいサイズのクッションを見比べて、藍は首を傾げる。
「いぬ、ねこ……こちらはうさぎでしょうか? うーん、どれもかわいい……」
 柔らかな丸みに優しい触り心地はどれも素敵で迷ってしまうのだ。
(そうだ、さかなのグッズはあるのでしょうか?)
 これだけあるならば藍の種族でもある魚にちなんだキャラクターもあるのでは、と藍は近くの店員に聞いてみた。そのときに店員の様子も確認する。怪しい素振りや何かきっかけが掴めればいい。
「すみません、私この、怪異アイテム? というシリーズのグッズはあまり知らなくて………おさかなさんのクッションやぬいぐるみはありますか?」
「はい、ありますよー。ギョーって怪異をモチーフにしたクッションやぬいぐるみが!」
「ギョー」
「すべらかでなめらか、でも柔らかさはひけをとらない、そんなラインです! もこもこもいいけどサラッとした肌触りもいいよね、という方にも人気ですよ!」
 朗らかに店員は魚型のクッションを示してきた。金魚っぽいものや鯉っぽいもの、青魚やまさにアロワナっぽいものまである。
「これはすごいですね……こんなに用意されるなんて」
「キャラクター原案の方が思いつくままに作ったらしくて、他の子に比べると数は少ないんですけどね。ゆっくり選んでくださいね!」
 ちょうど原案者がバックヤードから覗いてますよ、と店員が示す人を見てみれば、いいぞ、怪異はいいぞ、と怪異の話題が聞こえるたびにうんうん頷く女性がいた。
 ギョーのクッションを実際に触り、感触を確認して選びながら、藍は女性の動向を探ることにする。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

インベクティブ・シャイターン・エフォーリル
ここが話にあったふわふわ、もこもこのお店!
中に入って調査だよ……お小遣いもバッチリ用意したから!

ふわぁ……もこもこ……ふわふわがいっぱいだ
可愛らしいのが店内中に!……ぬいぐるみに触れて良いのかな、いいの?やった!
そーっと、そーっと……触り心地……スゴイ
みんなこんなに触り心地良いのかなって一通り軽く触れてみて触り心地確認
むむ……僕が一番好きなのはこのハムスターの子かも!

ぬいぐるみサイズでこれなら、大きくした抱き枕はどうなんだろう
よし……覚悟を決める。大丈夫……僕も男、根性で調査を忘れる事はないよ
抱き枕のハッムに慎重に……勇気持って!添い寝スペースはそっちだね、よーっし!
それじゃ……ぎゅぅ……ふわっふわっ……もこっもこっ……ふわぁ……すごい……幸せ気分
いっぱいナデナデしたり……頬ずりしてもふわふわでいっぱい……

ゆるゆるーの中でちょっと良い視力でぼんやりと店内を眺める
添い寝で暫しの間時間を忘れてしまっている中、だからこそ、自身や楽しむ人々を比べての違和感を覚えれる
……?あの人……なにか……変?


(ここが話にあったふわふわ、もこもこのお店!)
 看板も丸みを帯びた優しい曲線の文字で、飾られた装飾も柔らかそうな色合いで出迎えた店、『ふわもこ』の前で、インベクティブ・シャイターン・エフォーリル(破壊者・h00162)は目を輝かせていた。
 ガラス越しに見える商品はどれもこれもふわふわでもこもこに見えて、わくわくどきどきが高まってくる。どれもこれも抱き心地、触り心地が良さそうで、今でも目移りしてしまった。
(早速、中に入って調査だよ……お小遣いもバッチリ用意したから! どんな子でも大丈夫!)
 気に入った、もとい気になる要調査の品はきちんと買える資金も用意してきたのだ、今日もインベクティブに隙はない。むんと気合を入れ直し、店内へと入っていく。
「ふわぁ……もこもこ……ふわふわがいっぱいだ」
 外から見たとおり、中にはふわもこなぬいぐるみやクッションがいっぱいだった。柔らかな曲線やもふもふな毛並みのぬいぐるみや抱き枕、クッションが並んでインベクティブを出迎える。可愛らしいが店の中いっぱいに溢れているようで、インベクティブのわくわくはいっそう強くなっていく。
 目の前にあるぬいぐるみに触れていいか、インベクティブがどうしようかきょろきょろとしていれば、その様子に気づいた店員が朗らかに声をかけてきた。
「よかったら触ってみてください! 気に入ったら、抱き心地も確認してみてくださいね!」
「いいの? やった!」
 インベクティブは、まずはそーっと、そーっと、手を静かに伸ばし、優しくハッムのぬいぐるみに触れていく。触れた瞬間、もこもこの毛が指を受け止め、手のひらをそっと包み込んだ。ゆっくり撫でれば、ふかふかの毛並みがするっと滑っていく。
「……触り心地……スゴイ」
 優しく愛情込めて育った毛並みのような触り心地は、どこまでも良い心地しかない。インベクティブはハッムぬいの全体を撫でてから、他のぬいぐるみも撫でてみる。ウッサはぽわぽわの部分も軽くて気持ちいいし、イッヌは他より硬めで少し弾む心地もある。ヌッコはしなやかにサラッとした心地が味わえる。皆違ってどれもよい。
「むむ……僕が一番好きなのはこのハムスターの子かも!」
 一番好きなハッムのぬいぐるみを一度ぎゅっと抱きしめたあと、そのふわふわもこもこに目を細めた。
(ぬいぐるみサイズでこれなら、大きくした抱き枕はどうなんだろう。もっともこもこ、ふかふか?)
 同じハッムの抱き枕を見つめればどきどきと期待が高まって、インベクティブは一度拳をきゅっと握った。今、覚悟を決めたのだ。
(大丈夫……僕も男、根性で調査を忘れる事はないよ。どんなに気持ちよくたって覚えていられる)
 インベクティブはハッムの抱き枕を持ち、添い寝して抱き心地を確認できるベッドのスペースへと移動する。
「よし、それじゃ……」
 靴を脱いで横になり、ぎゅぅとハッム抱き枕を抱きしめた。ほわっとおひさまのような香りといっしょに、ふわふわでもこもこの抱き心地がいっぱいに伝わってくる。
(ふわっふわっ……もこっもこっ……ふわぁ……すごい……幸せ気分)
 抱きしめて伝わる抱き心地を全身で味わい、優しくいっぱい撫でてもこもこの手触りを味わい、頬ずりして柔らかく受け止められる感触を味わう。どこもかしこもふわふわでいっぱいで、ゆるゆるとした心地へと誘われていく。
 ぬくぬく、ふわふわ、もこもこの感触にとろりと浸りながら、インベクティブは閉じがちになる瞼をそっと押し上げた。ぼんやりと店内を見回して、店員や楽しむ人達をその良い視力で眺めていく。
 時間を忘れて楽しむ自身、同じようにはしゃいだりほんわりとして夢中なお客さん、やる気にあふれて店内の様子を見守る店員。
(……? あの人……なにか……変?)
 その中で、一人、なんとなく気になる人がいた。ふわふわもこもこを楽しんでいる人達の中、ふわもこを薦めたい人達の中、一人だけ。
 バックヤードから店内の様子を窺う女性は、怪異の話題になる度、いいぞ怪異はいいぞ、と頷いて、店内を観察しているようだった。
 ぽふりとハッムの抱き枕を抱きしめ直し、インベクティブは女性の特徴を覚えておく。あとで追い掛ければ、きっとFBPCの尻尾を掴めそうだ。
 ハッム抱き枕の尻尾を撫でながら、インベクティブはうん、と頷いて。
 もう少し、女性が動き出すまで、とハッム抱き枕をぎゅぅと抱きしめ、ほわほわとした心地を存分に味わうのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ステラ・ノート
ユナさん(h01946)と一緒に。

普通に可愛いお店だけれども……怪異の召喚の為のお店、なのだよね。油断は禁物。
まずはお客さんとしてお店に入って、情報を集めるね。

わぁ…!ふわふわもこもこ、可愛いのがいっぱい。
ユナさん、この抱き枕、すごいよ。
優しく包み込んでくれるような、ふかふかの抱き心地がたまらない……
こっちのアロマも良いね。
甘めのお花の香りも良いし、ふんわり暖かいお日様の香りも素敵。

お買い物も楽しいけれど、さりげなく店内を調べるのも忘れずに。
怪しいやり取りがないか、店員さん達の話し声に聞き耳を立てたり。
他の人達とは違う動きをしている人を見かけたら、ユナさんと協力してこっそり追跡を試みるね。
ユナ・フォーティア
ステラ氏【h02321】と一緒に!

『連邦怪異収容局』の職員がクヴァリフの仔を召喚する為の資金や購買欲等のエネルギーを集めてるって言うリラクゼーショングッズのお店、ふわもこか〜…
買い物しつつ怪しい職員や証拠が見つかるといいね★

きゃー!(早速動物の方へダッシュ!)ぬいぐるみはふわふわのもこもこ!(ギュッ)ワンちゃんもウサちゃんもニャンちゃんもハムちゃんもいるー!
めっちゃキュート&フラッフィ〜♡
ほら!ステラ氏も抱っこしてみて!
抱き付き顔を埋めて撫でてと幸せな手触りに抱き心地〜はぁ〜もう幸せ〜♡

おっといけない!
本来の目的忘れるところだった!
とりま怪しい職員さんいたら、スマホで録画や録音しつつ追跡だぞ!


「ここが、あのリラクゼーショングッズのお店、ふわもこか〜……」
「普通に可愛いお店ね……」
 『ふわもこ』はナチュラルな茶色やベージュ、温かな色味のモカなどをベースに、アクセントには淡いピンクやイエロー、ブルーのパステルカラーで落ち着きと可愛さを合わせたディスプレイの店だ。外から見ている分には、可愛いをたくさん詰め込んだすてきなお店に見える。
 けれど、この店こそが『連邦怪異収容局』の職員がクヴァリフの仔を召喚する為の資金や、購買欲等のエネルギーを集めてる店、そのものである。どんなに可愛くとも怪異の召喚の為の店なのだ、油断は禁物だ。
 ステラ・ノート(星の音の魔法使い・h02321)とユナ・フォーティア(ドラゴン⭐︎ストリーマー・h01946)は視線を交わし、頷き合い。油断も隙も見せないぞ、と心を強く持って店内へと入っていく。客として商品を楽しみにしている素振りで情報を集めるのだ。怪しい職員やアジトに繋がる証拠が見つかれば尚いい。
「わぁ……!」
「きゃー!」
 店内に入ると、ふわふわもこもこで柔らかな丸みを帯びたぬいぐるみに抱き枕、気持ちよさそうな寝具や優しい印象の雑貨、リラックスを誘うフレグランス等々がステラとユナを出迎えた。
 柔らかな丸みに、ふわふわもこもこの見た目に、思わず二人で動物っぽい怪異を模したというぬいぐるみや抱き枕の棚にダッシュする。
「ふわふわもこもこ、可愛いのがいっぱい」
「ふわふわのもこもこ! ワンちゃんもウサちゃんもニャンちゃんもハムちゃんもいるー!」
 ステラがどれにしようかと少し迷う横で、ユナがぎゅっと気に入ったぬいぐるみを抱きしめると、もふもふの毛並みの手触りとふわふわの抱き心地が抱きしめた面からたっぷり伝わってくる。もこもことした肌触りも感じられ、幸せに誘ってくるようだ。
「めっちゃキュート&フラッフィ〜♡ ほら! ステラ氏も抱っこしてみて!」
 可愛くふかふかなぬいぐるみにユナの顔もほころぶばかり。顔を埋めて頬ずりすれば、ふんわりと優しく包み込みぬいぐるみにとろけるような心地を味わえる。この心地よさをステラにもぜひ味わってほしい、とユナはおすすめするのだ。
「うん。……ユナさん、この抱き枕、すごいよ。ふかふかぁ」
 ステラはより大きな抱き枕をぎゅっと抱きしめた。ぬいぐるみよりも大きい抱き枕もふかふかで、全身を優しく包み込んでくれるようにもふもふもこもこが受け止めてくれる。ただ抱きしめているだけなのに、うっとりお昼寝するような気持ちになりそうだ。
「ふわぁ、たまらない……」
「うんうん、はぁ〜もう幸せ〜♡ 」
 ふかふかふわふわを味わったあと、ステラはフレグランスにも目を向ける。
「こっちは甘めのお花の香りで、こっちはふんわり暖かいお日様の香り。素敵」
「ステラ氏、この夜の香り似合いそう。星空イメージだって」
「わぁ、優しい香り」
 フローラル甘い香り、ソーラーノートの爽やかな香りのフレグランスは明るく穏やか。夜の香りにはラベンダーにゼラニウム、ほんの少し煌めくようなベルガモット。きらきら星の降るような夜のイメージだ。
「ユナさんはこっちがいいかも」
 甘いオレンジと爽やかなレモングラス、少しだけスッキリしたミントの香りを楽しんで、ステラはにっこり微笑んだ。
 もちろん、楽しんでいるばかりではない。ステラもユナも調査に来たことを忘れてはいないのだ。
 ぬいぐるみや抱き枕を抱きしめ、ふわもこにほうっと心と顔を緩めながら、フレグランスを確認してこれもいいあれもいいとはしゃぎながら、さり気なく店内を観察していた。
「ね、ステラ氏。あそこ、バックヤードだよね」
「うん。覗いてるね」
 ユナのスマホのカメラをインカメに切り替えて、振り向かずに二人で背後を確認する。
 バックヤードから覗く女性が一人、怪異の話が出るたびに、いいぞ怪異はいいぞ、というような顔をしていた。聞こえてくる店員の話からすれば、彼女がこの店の怪異だというキャラクターの原案者兼仕入れ担当ということらしい。
「追いかけようか」
「お店、終わったら出てくるよね」
 それ以外に気になる点も、怪しいやり取りも特にない。ぬいぐるみをもう一回抱きしめつつ、ステラとユナは女性の動向に気を配り、ふわふわもこもこを堪能するのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 冒険 『真夜中に鳴り響くもの』


POW 思い切って電話に出る
SPD 受話器を取りすぐに切る
WIZ 電話ボックス自体調べる
√汎神解剖機関 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●夕方、電話ボックスより
 『ふわもこ』の入り口には「Closed」の札がかけられて、ブラインドも下りて店内は見えなくなる。店員達も一人二人と店の裏から帰っていった。
 そうして真夜中、上機嫌な鼻歌と一緒に最後の一人、怪異はいいぞと頷いていた女性が裏の出入り口を施錠した。
 怪しい気配をほんの少しまとわせていた彼女はそのままうきうきと歩き出す。
「はー、今日も良い売れ行きでした!」
 見られていることに、追われていることに気づいているのかいないのか。女性は軽い足取りでてくてくと道を辿り、曲がり角を曲がる。

 追いかけて曲がってもそこには誰もいなかった。
 ただ電話ボックスがやたらあるだけである。
 リリリン、と呼び出し音を鳴らす電話ボックスが。
 年々、設置台数の減っているはずの電話ボックスがやたらと配置されて、真夜中なのに呼び出し音が鳴っている不思議空間。
 さあ、どうしようか。
眞継・正信
アドリブ、連携歓迎

こういった電話ボックスも、最近は見なくなったな……。
何かの連絡にしても、なぜ普通の電話機ではなくこの電話ボックスなのだろう。

「ゴーストトーク」で、この電話は普段は誰が取っているのか、どこから電話がかかっているのか、そもそも普段から利用されているのか、等を確認できればインビジブルに聞いてみる。
聞いて分からないことがあれば、自分で調べるしかあるまい。
小説なんかでは、電話ボックスに何かの暗号が貼られているとか、あるものだが……。
全てのボックスが同じ仕様なのか、変わったところはあるのか等を自分で調べつつ。

どうだね、「Orge」。何か匂うかい?
匂うことがあれば、教えてくれるかね。


 透明な壁のブースに緑の電話が入った電話ボックスがいくつも配置され、時折どれかがリリリンと鳴る光景を前に、Orgeを呼び出して共に並ぶ正信は、ゆっくりと電話ボックスを見比べる。
(こういった電話ボックスも、最近は見なくなったな……。何かの連絡にしても、なぜ普通の電話機ではなくこの電話ボックスなのだろう)
 FBPC職員ならスマホくらい持っているだろう。電話ボックス自体が何かの役割を果たしているのだろうか。それとも罠の一つだろうか。
 推測に対する確証を得るには、目撃者に聞くのがいいかもしれない。周辺に漂うインビジブルに祈りを向ければ、男の姿が一つ現れた。
「応えてくれてありがとう。この電話はいつもこうして鳴っているのかな? 普段は誰が取っているのか見ただろうか」
「そうですね、最近真夜中にふっと現れて、若い女性が入って行くのを見ます。で、鳴っている電話を取ってボタンを押すと女性が消えて。しばらくすると電話ボックスも消えてしまうんですが……今日は残ってますね?」
「ほう。どこから電話がきているかはわかるかな」
「声、聞こえないので。ちょっとわからないです」
「ふむ。ありがとう」
 質問の結果、消えた女性はどこに行ったか、何故今日は残っているのか、分からない点も出てきた。正信はOrgeと共に電話ボックスを見比べていく。どれもこれも同じ規格で、目立つ傷や汚れもないブースと電話だ。張り紙などもない。
(小説なんかでは、電話ボックスに何かの暗号が貼られているとか、あるものだが……。仕様も変わったところはないようだ)
 正信は共にゆくOrgeに目をやり、声をかける。
「どうだね、オルジュ。何か匂うかい?」
 バウ、と一つ静かに鳴いたOrgeは一つのボックスを示す。そのボックスのドアの隙間に、見えにくいがふわもこな端切れが一つ残っていた。
「ありがとう」
 褒めて頭を撫で、正信はそのボックスに入る。リリリンと鳴った電話を取って、耳に当ててみた。
「こちらはFBPC転送サービスです。規定の場所に転送を望む方は1を、メッセージを送りたい方は2を……」
 留守番電話のような文言が流れて来たのに合わせ、正信は電話機の1を押してみる。
 すると、正信はボックスの中から消え——別の場所に移動していたのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

マキ・タカミネ
「ふむん……」

マキは考える…
尾行している女性は、あまりにも簡単にわたしたちに怪しませ…そして、簡単に尾行させた…

「罠?でしょうか~」
その可能性は薄い・・・・ 相手は守る側だ…
こんなあからさまな罠は、使えても一度ですし…
わたしたちに、気づいてここをやり過ごして逃げるにしても…
こんな…冗談みたいな…

りんりんと鳴り響く電話ボックスを見・・・
「まぁ… なにはともかく…調べてみましょう~」
レギオンの超感覚センサーで、電話BOXを含む一体すべてをくまなく調べる…(電話機が罠で隠し通路があるかも?とは疑っている)

仲間が追い付いてきたら、結果をすべて報告する
結果、自分の調べた範囲で危険がなければ電話に出る。


「ふむん……」
 おっとりした口調とは裏腹に、マキは冷静に思考を巡らせる。
(追いかけた女性、彼女は、あまりにも簡単にわたしたちに怪しませ……そして、簡単に尾行させた……)
 あからさますぎる程にわかりやすく、怪しんで警戒してみせろと言わんばかりである。そしてわかりやすい程に怪奇現象が起きている。
 そうなるとこれはFBPCの仕掛けである、と思えるのだ。ならば可能性は何があるか。
「罠? でしょうか~」
 そう言いながらもマキはその可能性は低いと否定する。
(相手は守る側だ……こんなあからさまな罠は、使えても一度ですし……)
 電話に出たら即座に強制移動させられるならまだいいだろう。怪異に飲み込まれる、気絶させられてどこかに連れて行かれるなどされても対処はできるが、少々手間だ。そして一度使ったわかりやすい罠は二度は使えない。
(わたしたちに、気づいてここをやり過ごして逃げるにしても……こんな……冗談みたいな……)
 近年、数を減らし続ける電話ボックスがここにだけやたらにあって、鳴っている。いかにも怪異ですよ、と言わんばかりにリリリンと。
 今もまた、リリリンと鳴り始めた電話ボックスを見て、マキはむぅと悩みながらもレギオン達を呼び出した。
「まぁ…… なにはともかく……調べてみましょう~」
 まずは電話ボックス達と、マキの操れる範囲いっぱい、すべてくまなく調べれば良いのだ。電話ボックスが罠ならば、他に道があるだろう。隠された通路やドアがあるかもしれない、とレギオンの超感覚センサーで観測していく。
 わかったことは、隠し通路もドアもないこと。電話ボックスにわかりやすく目立つ違いはなく、どれもこれも同じ規格であること。ひとつだけ、ふわもこの端切れがブースの扉、見つけにくい位置に挟まっていたことだ。
 情報は仲間にも共有し、マキは改めてわかりやすい違いのあった、端切れのある電話ボックスの電話が鳴ったタイミングで電話に出てみた。
「こちらはFBPC転送サービスです。規定の場所に転送を望む方は1を、メッセージを送りたい方は2を……」
「……なるほど〜」
 どうやら移動するのは間違いないようで。そういう感じなのか、とマキは電話の1のボタンを押す。
 すると、マキの視界から電話が消え、すぐに別の場所に立っていたのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

國崎・氷海風
ふーん、なるほどねェ。怪奇に怪奇をぶつけるとどうなるんだろォ?
まぁ何があってもいいように暗闇からの絶望を直ぐに発動できるようにしといて、電話に出てみようかな。
人間ってどうでるんだっけ?
「はい、もしもしィ?」
こんな感じだった気がするねェ。
あぁでももしも怪異からの返答があったなら……なんて楽しいんだろうねェ。捕まえるのはどちらだろうか、捕まった方が先に進めるかな?ふふ、楽しみだなァ


 真夜中、幾つもある電話ボックスの中の一つがリリリン、と呼び出し音を鳴らす。取らないでいれば鳴り止み、別のボックスが鳴り始める。周期も順番もランダムに、けれど確かに鳴り続ける。
 リリリン、リリリン、と誘うように。
「ふーん、なるほどねェ」
 氷海風面白そうに笑った。
 これはどんな怪奇だろうか、人を喰らうのか連れ去るのか。はたまたじんわり染みる呪いのように、あとから不幸を呼び寄せたり、電話に出た者を捕らえに来るのだろうか。
 リリリンと鳴る電話ボックスには大きな違いは見られない。ぱっと見は特別なものがあるでもなく、皆同じ規格で作られているようだった。
「怪奇に怪奇をぶつけるとどうなるんだろォ?」
 もう一度じっくり確認し、氷海風は一つだけ違いがあった電話ボックスの前に立つ。このボックスのブースのドア、そこに見つけづらいがふわもこの端切れが挟まっていたのだ。
 ボックス内に入り、電話が鳴るのを待つ。その間に|暗闇からの絶望《オートキラー》をすぐ発動できるように準備し、受け答えを考えて。確か人間はこんな風に、と思い出したところでリリリン、と呼び出し音がなる。しなやかな動きで氷海風は受話器を取った。
「はい、もしもしィ?」
 さて、こんな感じだった気がするけど、と思いながら応答を聞こうと耳を傾ける。異常があればすぐに切れるように。
「こちらはFBPC転送サービスです。規定の場所に転送を望む方は1を、メッセージを送りたい方は2を……」
 氷海風はすぐに電話を切った。
 確かに返答があったがこれじゃない感がするのはなんでだろうか。もっと楽しい、ちょっと怖そうなのとか、ひたひた迫って来そうなのとか、いっそどろどろなのとか想像できそうなのに。こっちが捕まるのか、それともあっちが捕まるのか、どちらが捕食者か、なんて考えもできたのに。
「……うーん。まあ、返事はあったしねェ……」
 リリリン、と再び鳴り出した電話を氷海風は取る。
 繰り返されたメッセージに応じ、電話の1のボタンを押してみた。
(もしかしたら、これがこの怪異の捕まえ方なのかもしれないし。捕まった方が先に進めるかな? ふふ、楽しみだなァ)
 すると、氷海風の目に映った光景が変わる。
 ボタンを押して数秒後、電話ボックスから別の場所に移動させられていたのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

七豹・斗碧
電話ボックスすごいたくさんある…。さっきのおねーさんはどこに行っちゃったんだろう
これ取ってもいいのかな?というか取って大丈夫なのかな
でもこのシチュエーションは新しい御伽のアイデアにはなりそう…それどころじゃないや今は

とりあえず受話器を外してみよう。耳には当てないで、なにか聞こえてくるかちょっと観察してみる。一応その時は周辺になにかいるかもだし気をつけるよ
本能的に危ない感じがしたらすぐ切っちゃうけど、大丈夫そうならなにかヒントが得られるかもしれないしちゃんと聞いてみようかな。でもこういうのって大抵いいこと起きなさそうな気がする
…一応もしものためにロア(影業)喚んでおこう。変なの出てきたら噛んでね


(電話ボックスすごいたくさんある……)
 真夜中にやたらある電話ボックスが、ランダムに鳴っている様子に斗碧は辺りを見回した。
(さっきのおねーさんはどこに行っちゃったんだろう)
 先程まで追いかけていた女性の姿は無く、見た目同じような電話ボックスがあるばかり。
(これ取ってもいいのかな? というか取って大丈夫なのかな)
 周期も順番もランダムに鳴っている呼び出し音に、斗碧の雪豹の耳が小さく動く。まるで何かを呼び寄せるように、リリリン、リリリンと鳴っているのだ。真夜中に鳴り続いているのに、誰も来ないところもホラー感がある。
(でもこのシチュエーションは新しい御伽のアイデアにはなりそう……それどころじゃないや今は)
 ちょっと好奇心が疼いたが、ぱたんと尻尾を振って打ち消して。まずはクヴァリフの仔を確保するために動かなくては、と電話ボックスを改めて見回した。
(とりあえず受話器を外してみよう)
 斗碧はドアにふわもこの端切れが挟まった電話ボックスに入り、電話へと向き合った。
「変なの出てきたら噛んでね」
 イスキオス・パラドクスより現れた大きな獣、ロアに約束だよ、と頼んでから、斗碧は受話器を取った。
 まずは耳には当てないで、何か聞こえてこないかちょっと観察してみる。目はきょろりと動かして、周辺に異常が発生しないかも確認しつつ。
 受話器からは録音された女性の音声が流れてくるのがわかる。同じ文言を繰り返しているようだ。
 本能は危険はなさそう、と言っている。斗碧は警戒しつつ、ヒントを得るためにも聞いてみることにした。
(でもこういうのって大抵いいこと起きなさそうな気がする)
 尻尾を少し膨らませ、ロアに頷いてから斗碧は受話器を耳に当てた。
「こちらはFBPC転送サービスです。規定の場所に転送を望む方は1を、メッセージを送りたい方は2を押してください。もう一度メッセージを繰り返す場合は9を……」
 斗碧は受話器を耳から離し、ついまじまじと見てしまった。もう一度、耳に当てれば、留守番電話めいた同じ文言が繰り返されて聞こえてくる。
 ともかくヒントっぽくはある。これで女性が消えたなら、転送されたということで1を押せば追いかけられるかも、と直感が囁いた。
 斗碧は思い切って電話の1のボタンを押す。
 すると目の前の電話もボックスも消えて、別の場所に立っていたのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

緇・カナト
電話ボックスって最近減ってるよねェ
スマホ使えない時とか
連絡取るのに便利なのに〜
…なんて余談はさて置いて
リリリン鳴ってる呼び出し音には
応えてしまうに限る

受話器を取ったらハロー?と第一声
向こう側が会話可能なら
ふわもこショップにいた客だけどねぇ
買いそびれてしまったモノがあってね〜
あんなにステキな怪異たち、
いったい何処で出会えたのやら〜
続ける会話内容は適度に
向こう側の存在・場所は
探れても探れなくても時間潰し

電話で会話始める前には
引き続き千疋狼での索敵も
通話前・通話中の怪しい
電話ボックス周りを探らせて
更に影業Luckには電話機そのもの
様子見・調査をさせておこうかな
この電話線…実は地獄まで繋がっていたり?


「電話ボックスって最近減ってるよねェ」
 スマホの所持数が増えてきた昨今、利用されない電話ボックスは減少して行くばかり。カナトはそう独りごちる。
「スマホ使えない時とか、連絡取るのに便利なのに〜」
 余談はさておき、今はこの現象へと対処しよう。
(リリリン鳴ってる呼び出し音には、応えてしまうに限る)
 その前に、引き続き千疋狼に電話ボックスを調べさせることにする。何か目立った違いがあれば、それは特別な電話ボックスになるだろう。
(実はこの電話線……実は地獄まで繋がっていたり?)
 調べれば残念ながら地獄に繋がってはいないけれど、どこかに不思議な力で繋がっているのはわかった。声なりなんなりが届く環境である。
 それから目立つ傷も違いもなく、同じ規格の電話ボックスの中にひとつだけ、見つけにくい位置にふわもこの端切れが挟まったものがあった。
 カナトはそこから電話に出てみることにする。間違っていたら、別のボックスから挑戦すればいいだけだ。|影業《Luck》には電話機そのものの様子見と、何か手がかりがないかの調査をさせておく。
 リリリン、となったところで、カナトは受話器を取った。
「ハロー?」
「こちらはFBPC転送サービスです。規定の場所に転送を望む方は1を、メッセージを送りたい方は2を……」
 自動で流れてくる応答メッセージに、カナトは2のボタンを押した。すると明るい女性の声が返ってくる。
「|Hello《はーい》, |This is FBPC, site 1025《こちらFBPC、サイト1025》, |Sophia Johnson speaking《ソフィア・ジョンソンです》. |I'll take the message《メッセージ承ります》!」
「やあ、ふわもこショップにいた客だけどねぇ。買いそびれてしまったモノがあってね〜」
「わあ、お客様ですか! ありがとうございます!」
 カナトの言葉に、向こうも日本語に切り替わった。喜んでいる様子が声からも伝わってくる。
「うん、ふわもこで大変よかったよ。あんなにステキな怪異たち、いったい何処で出会えたのやら〜」
「申し訳ありません、彼らは非実在怪異なので存在していません。残念ですよね……怪異、お好きですか?」
「もちろん」
 本心はともかく、探る時間を稼ぐべくカナトは会話を続ける。
「でしたら別の子をご紹介します! このあと、電話を切っていただいて転送サービスで1を押してください、そうしたらこちらに来れますから!」
「そう? ならお邪魔するよ〜」
 どうやら向こうに招かれたらしい。女性が消えたからくりもわかり、カナトはゆっくり目を細めるのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

白峰・未咲
ふわもこ……もふもふ……
いえ、大丈夫です
なんでもないです
(と、言いつつも未練はそこそこ残っている様子)

様子を見ていて気になる様子の店員さんが居たので、
そっとついて来てみましたが……
今度はあからさまに怪しく鳴る電話がっ
しかも電話ボックスの電話ですし、これ、気づかれているって、ことですよね……
(周りを見回して)

でも、出ちゃうと余計こじれそうですし
それなら向こうの動きを待った方がいいような気もするんです
なんていうか……そう、持久戦って感じです

あちらが何かしてくるなら護霊達と対処すればいいと思いますし
何もなければ電話ボックスそのものを調べてみましょう
何かしら仕掛けがあるかもしれないですし


 真夜中に女性を追いながら、未咲はほうっとため息をつく。
「ふわもこ……もふもふ……」
 ぼんやりと堪能しきれなかった未練に後ろ髪を引かれ、ぼうっとした様子の未咲に、他の√能力者が大丈夫か、と声をかけた。その声に未咲はきりっと背筋を伸ばしてみせる。
「いえ、大丈夫です。なんでもないです」
 ふわもこを心から堪能できなかったことは残念で、機会があれば堪能しなおしたいが今は切り替えなくてはならない。
(様子を見ていて気になる様子の店員さんが居たので、そっとついて来てみましたが……)
 上機嫌に歩く彼女が曲がった角を曲がったら、今度はリリリンと音がするのだ。
(今度はあからさまに怪しく鳴る電話がっ)
 最近数を減らし続け、見かけなくなった電話ボックスである。呼び出し音がなることはそうそうない。
(これ、気づかれているって、ことですよね……)
 未咲は注意深く周囲を見渡した。今の所異常はなく、女性の姿も見当たらない。
 周期も順番もランダムに、リリリン、リリリンと電話ボックスから呼び出し音が鳴っている。これに出てください、と言わんばかりに鳴っている。
(でも、出ちゃうと余計こじれそうですし……)
 ならば向こうの動きをしばらく待つ方がいいのでは、と未咲は思うのだ。
(なんていうか……そう、持久戦って感じです)
 電話に出た途端何かが襲ってくる、電話ボックスから出られなくなるなどの怪奇現象が起こるかもしれない。もしくは罠にかからないことに相手が焦れて、何かアクションを起こすかもしれない。
 それまで待てばいい、何か起こったら五彩の護霊達と共に対処するだけだ。
 未咲は警戒しながら、電話ボックスの様子を窺う。
「……何もないですね」
 しかし、しばし待っても何も起きない。
「……うん、電話ボックスそのものを調べてみましょう」
 何かしら仕掛けがあるかもしれないと調べると、目立つ傷も違いもなく、張り紙もない。異常もなく同じ規格の電話ボックスが幾つもあるだけで。違いは見つけにくい位置にふわもこの端切れが挟まっていたくらい。
 未咲が仕方なく、端切れのあった電話ボックスに入ってなった電話に出てみれば、転送サービスと聞こえてくるではないか。
 未咲が警戒しつつボタンを押せば、電話が目の前から消えて。辺りを見れば、別の場所に移動させられたとわかるだろう。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

インベクティブ・シャイターン・エフォーリル


ハッムの抱き枕はちゃんと家に置いてきて、夜ご飯もしっかり食べてきました!
そのせいで……ちょっと眠たい……普段はこの時間帯には寝てるのもあるから……ふわっふわっもこもこと一緒に寝たいな
特徴のある女性は……あれ?曲がり角を曲がったら見失っちゃった。眠たくて追いかけるのちょっと遅れたからかな

その代わりに電話ボックスがいっぱい……どうしてこんなに……しかも鳴ってる
……真夜中に鳴ってるの雰囲気あるけど……大丈夫、僕って除霊出来るから何とか出来るよ!多分、きっとね!
覚悟を決めて……電話に出る!もしもし!

出た後の事は出たとこ勝負、怪異はいいぞって女の人が言ってたから、怪異って良いよね!お話するのも良いかも?
僕はハッムが特に好きだよ!今日ね、我慢出来なくてついハッムの抱き枕買ったんだ、ふわふわでもふもふで、すっごく抱き心地が良いんだよ!
電話の人はあのショップの中だとどれが好きなんだろう?って興味が湧いちゃって、此方からも聞いてみちゃうの
怪異アイテムとキャラクター達の話をいっぱいしてー、意気投合でゴー!


 購入したハッムの抱き枕は家においてきた。夜ご飯もしっかり食べた。これからの活動のエネルギーも準備も抜かりはないが、むしろお腹いっぱいで一度リラックスしたからこそ、インベクティブの瞼は少し重い。
(……ちょっと眠たい……普段はこの時間帯には寝てるのもあるから……ふわっふわっもこもこと一緒に寝たいな)
 あのふわもこと一緒に眠ったらいい夢が見られそうだ。ぬくぬくのお布団で、ふわもこなハッムと一緒に眠るのはとても幸せだって思える。でもちゃんと事件を解決するのだ、とインベクティブはやってきたのだ、もう少し頑張らなくては。
 だから怪異はいいぞ、と頷いていた女性を追いかけていたけれど、曲がり角で見失ってしまい、インベクティブは少し首を傾げた。
(眠たくて追いかけるのちょっと遅れたからかな)
 きょろりと見回すインベクティブは、女性の代わりにやたらいっぱいの電話ボックスを見ることになる。あまり見ることのない存在がやたらあり、ランダムな周期と順番で、リリリンと呼び出し音を鳴らしているのだ。
「……真夜中に鳴ってるの雰囲気あるけど……大丈夫、何とか出来るよ! 多分、きっとね!」
 怪異や幽霊の仕業でも大丈夫、除霊できるし√能力もある。大丈夫だと自分を鼓舞して、インベクティブは手近な電話ボックスに入ってみた。電話がリリリンと鳴ったタイミングで受話器を取る。
「もしもし!」
「こちらはFBPC転送サービスです。規定の場所に転送を望む方は1を、メッセージを送りたい方は2を……」
「へ? あ、メッセージ送れば、お話できるかも?」
 出たあとは出たとこ勝負、なるように慣れ、と思い切ったはいいけれど、留守番電話のようなメッセージにインベクティブはちょっとだけわたわたしたあと、電話の2のボタンを押す。
「|Hello《はーい》, |This is FBPC, site 1025《こちらFBPC、サイト1025》, |Sophia Johnson speaking《ソフィア・ジョンソンです》. |I'll take the message《メッセージ承ります》!」
「わ、わ、こんばんは!」
「はい、こんばんは! どうしました?」
 唐突な英語に面食らい、普段使う日本語で挨拶をすれば向こうが日本語で返してきた。
「えっとね、あの、電話が鳴ってて。こういう怪異が、僕も好きで。怪異アイテム、ふわもこのお話したくて」
「まあ、ありがとうございます! お客様だったんですね!」
 電話の向こうの女性は嬉しそうな声で返してくるので、インベクティブもホッとして、気に入りのふわもこのことを話し始めた。
「ふわもこのもこもこ達、イッヌもウッサもネッコも可愛かったけど、僕はハッムが特に好きだよ!今日ね、我慢出来なくてついハッムの抱き枕買ったんだ、ふわふわでもふもふで、すっごく抱き心地が良いんだよ!」
「ありがとうございます。ハッムはふかふかでさらふわ、一緒に眠るとおひさま気分を目指して作ったんですよ」
「そうなんだ! 一緒に寝るのが楽しみになっちゃう。ハッム、大事にするね。いっぱい一緒に寝て、可愛がるよ」
「よかったです。ぜひ幸せにリラックスしてください」
「お姉さんはどの子、怪異が好き?」
「お店の怪異は、想像したもので実際にいないんですが、どの子もかわいいがられたらいいな、みんながリラックスできたらいいなと思ってデザインしてます。ふわもこの手触りとか、弾力とかも色々考えました。特に、と言われるとヌッコが好きですよ。実在の子なら、今はクヴァリフの仔に夢中です」
「そうなんだ! その子もかわいい? どんな姿なの? 見てみたいな」
 インベクティブの言葉に、女性は明るい声で返してきた。
「とっても可愛いですよ! お時間あるなら、こちらに来ますか? 一回電話を切って、端切れのある電話ボックスに入ってください。そこの電話が鳴ったら出て、1のボタンを押してください。そうしたら、クヴァリフの仔も見れますよ」
「うん! じゃあ、またあとで!」
「お待ちしてますね」
 インベクティブは電話を切り、うきうきと端切れのある電話ボックスを探す。するとひとつだけ、見にくい場所にふわもこの端切れのあるボックスがあった。
 そこに入って電話が鳴ったら取れば、先程の留守番電話のようなメッセージが流れてくる。
 インベクティブは、今度は落ち着いて1のボタンを押す。
 すると目の前から電話が消え、別の場所に移動させられていたのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

一戸・藍
アドリブ連携歓迎

おや、電話ボックスがたくさん……これだけでしたら映えスポットのようにも見えますね
真夜中に公衆電話から呼び出し音って、なんだかホラー映画みたいですね~。ちょっとわくわくしてきました

先程の女性が見あたりませんし、まずはレギオンを飛ばして周囲と電話ボックスを調べてみましょう
あの女性、あるいは何か異常を見つけたらすぐに段ボール箱で待機しているレギオンフォートレスへ情報を送るように

……電話、鳴りっぱなしですね。せっかくなので出てみましょうか
もしもし、一般通過アロワナです
アロワナです、魚の。アジアアロワナ


 立ち並ぶ電話ボックスに、藍は少し首を傾げた。
「おや、電話ボックスがたくさん……これだけでしたら映えスポットのようにも見えますね」
 光の具合やシチュエーションが変われば、ノスタルジックだったり、今ならでは斬新な風景だったりと映えスポットになったかもしれない。
 けれど時刻は真夜中、周期も順番もランダムに呼び出し音が鳴り響く。少ない灯りもどこか不気味、何故か自分以外の人もやって来ない。
「ふふ、真夜中に公衆電話から呼び出し音って、なんだかホラー映画みたいですね~。ちょっとわくわくしてきました」
 先程の女性も見当たらないし、まずは電話ボックスを調べてみるとしよう。藍はレギオンを呼び出し、周囲へと飛ばす。
 女性が潜んでいないか、電話ボックスに異常はないか、その他、周囲には異質なものがないか。超感覚センサーで調査させ、段ボールで待機するレギオンフォートレスへと情報を集積する。
 結果、女性の姿はレギオンで調べた範囲にはなく、異質なものも存在しない。電話ボックスは目立つ傷も違いもなく、同じ規格の電話ボックスだ。そのうちの一つにだけ、見つけづらい位置にふわもこの端切れが挟まっていた。
「……電話、鳴りっぱなしですね」
 調査している間も、リリリン、リリリンと電話は鳴り続けている。早く、早く、と呼ぶように。
「せっかくなので出てみましょうか」
 ひとつだけ違った電話ボックス、端切れの挟まっていたそこに入って藍は電話が鳴った時に受話器を取る。
「もしもし」
 受話器からは、録音された女性の声が流れてくる。
「こちらはFBPC転送サービスです。規定の場所に転送を望む方は1を、メッセージを送りたい方は2を……」
「なるほど。では」
 メッセージを聞いて、藍は2を選択した。
「|Hello《はーい》, |This is FBPC, site 1025《こちらFBPC、サイト1025》, |Sophia Johnson speaking《ソフィア・ジョンソンです》. |I'll take the message《メッセージ承ります》!」
「もしもし、一般通過アロワナです」
「What?」
「アロワナです、魚の。アジアアロワナ」
「ああ、怪異の方ですか?」
「いえ、野良アロワナです。怪異には興味があります」
「なるほど。でしたら新しい怪異はいかがでしょう」
 明るい女性の声は、電話を切って再度鳴ったら出て、1を押したら召喚現場に来られると教えてくれた。
「ありがとうございます、では伺いますね」
「お待ちしてます」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ユナ・フォーティア
あれ、ふわもこ店員のお姉さんがいないなぁ…ん?ひょっとしてこれ、電話BOXだっけ?
しかも真夜中なのに鳴ってる!これって心霊現象かな??
よっしゃ!これ、出てみようかな★
あ…でもこんな怪しい電話ボックスを調べもせずにいきなり出るのは流石に鬼ヤバだよね?

こういう時こそこれの出番!(ポケットのスマホ取り出し)ジャジャーン!特殊撮影アプリ〜!
このアプリで電話ボックスでの過去の出来事をご開帳だぞ〜★
更にレーダー機能での電話ボックスの周りの怪しい物を見つけちゃうぞ!トラップの可能性があるからね!(まあ、機能使うと充電切れになりやすいけどね…)
一通り調べ終わったら、お待ちかね電話で出て、お話ししてみようかな♬


「あれ、ふわもこ店員のお姉さんがいないなぁ……ん?」
 曲がり角を曲がった瞬間いなくなった女性の姿を探してユナが辺りを見回すと、リリリンと音がする。音が鳴る方を見れば、最近見かけなくなったものがあった。
「ひょっとしてこれ、電話BOXだっけ?」
 透明なブース、四角い電話、本やネットでしかなかなか見なくなった電話ボックスだ。
「しかも真夜中なのに鳴ってる! これって心霊現象かな??」
 真夜中に、周期も順番もランダムに、リリリン、リリリンと鳴っている。照明も少なく、影の多い電話ボックスがひたすら鳴る光景は不気味かもしれないが、ユナは別に怖くなかった。
「よっしゃ! これ、出てみようかな★」
 いっそノリノリで出る気満々だった。幽霊や怪異が出ても歓迎といった雰囲気ですらある。
「あ……でもこんな怪しいのを調べもせずにいきなり出るのは流石に鬼ヤバだよね? それならこれの出番!」
 ユナはポケットから取り出したスマホの画面をぱぱっとタップして、一つのアプリを立ち上げた。
「ジャジャーン! 特殊撮影アプリ〜! 電話ボックスでの過去の出来事をご開帳だぞ〜★」
 意気揚々とユナは撮影を開始する。電話ボックスをできるだけ多く映るよう位置を調整し、動画で撮影すれば、過去の光景が早戻しするように記録されていく。
 じりじり減っていくバッテリーを気にしつつ撮影を続ければ、見失った女性の姿が急に現れた電話ボックスの一つに入って消えていく光景も逆再生された。
「よし!」
 怪しい存在や物もレーダーに引っかかることもなく、他にトラップもないことが確認できる。ユナは残り少ないバッテリーにちょっとそわそわしながらアプリを落とし、スマホをポケットにしまってから、女性が消えた電話ボックスへと入っていった。
「お待ちかね、ここの電話に出てお話ししてみよう♬」
 ちょうど鳴った電話を取れば、録音されたメッセージが聞こえてくる。
「こちらはFBPC転送サービスです。規定の場所に転送を望む方は1を、メッセージを送りたい方は2を……」
「じゃあ2で★」
 ぽちっとユナがボタンを押せば、再び声が聞こえてくる。
「|Hello《はーい》, |This is FBPC, site 1025《こちらFBPC、サイト1025》, |Sophia Johnson speaking《ソフィア・ジョンソンです》. |I'll take the message《メッセージ承ります》!」
「こんばんは〜、ふわもこのお姉さんですか?」
「あら、お店にいらした方ですか?」
「うん♪ 実は怪異が気になって、色々探してるんだ〜」
「まあ、ならこちらに来てください! 新しいかわいい子を紹介しますよ!」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『連邦怪異収容局員『リンドー・スミス』』


POW 武装化攻性怪異
【肉体融合武装と化した怪異】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
SPD トランパー・オブ・モンスターズ
騎乗する【怪異の群れ】から跳躍し、着地点の敵1体に【荒れ狂う怪異の群れ】による威力3倍攻撃を放つ。また、跳躍中に【さらなる怪異を解放】すると命中率半減/着地点から半径レベルm内の敵全員を威力3倍攻撃。
WIZ 怪異制御術式解放
自身の【蟲翅】がA、【刃腕】がB、【液状変異脚】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

●そしてリンドー・スミスは頭を抱えた
「Ms.ソフィア。テレフォンボックスが繋がり続けていたようだが」
 うねうねぶよぶよしたクヴァリフの仔が何匹も召喚されたポイント、広く暗いただの野原に、『連邦怪異収容局員『リンドー・スミス』』は回収に訪れた。
 その道中見かけた怪異の現象に、利用者であるソフィア・ジョンソンへと問いかける。
 うっとり野原のど真ん中、描かれた召喚陣の中のクヴァリフの仔を眺めていたソフィアは、リンドーの声にぱっと顔を向けた。
「こんばんは、Mr.リンドー。ええ、この子たちが可愛くって、うっかりここについたあとに消すのを忘れちゃいました。でもでも、怪異に興味のある方がついてきてたみたいで、数人お呼びしたんですよ!」
「は? 呼んだ!」
「ええ! もうすぐ来られると思います!」
 リンドーはすごぶる嫌な予感に眉根を寄せた。
 予感に従い、テレフォンボックスの転移ポイントに指定したと聞いていた野原の端を見れば、√能力者達が次々とやってきた。
「あら、たくさん来られたかしら?」
「いや、あれはFBPCの敵だろう」
「まあ、どうしましょう。お話できるかしら? たくさんおしゃべりしたいのですけど」
 どうしましょう、とリンドーを窺うソフィアの視線に、リンドーはため息をついて頭を抱えた。
「Ms.ソフィア、君は撤退を。私は彼らを可能ならば撃退する」
「はい、了解です。この仔達は……」
「回収できないだろう。君だけで撤退だ。回収は私がしよう。できれば、な」
「はい。お気をつけて」
 リンドーの命に従い、ソフィアは野原から姿を消した。
 リンドーは残されたクヴァリフの仔を庇うように、√能力者へと向き直る。
「あー……降伏したまえ。人間同士で争うなど愚かなことだ」
 まあ多分、争いは避けられないだろう、と頭を抱えながら。
====
※このリンドーさんはノリのいいリンドーさんです。戦う以外のことでも付き合ってくれます。最後に一発かますくらいで納得してくれると思います。(他のシナリオではそうはいかないですが)
國崎・氷海風
なぁんか可哀想な立ち位置にいる気配を察知したんだけどォ、クヴァリフの仔貰う訳には行かないよねぇそうだよねぇ
愉しそうだから、欲しいんだけどなぁ!
ひとまず赤狼で牽制しつつ俺は暗闇からの絶望にて、攻撃を。
傷口を抉るようにシて少しでもダメージを重ねられたら嬉しいね
激痛耐性もあるし、少しでも耐えられたら。
それにしてもふわもこといい、今回の件といい、なんだが残念な気配がするなぁ


 頭痛をこらえるようなリンドーの姿に、氷海風は烏玉に浮かぶ|耀金《ようこん》と|朱殷《しゅあん》を細め、口の端をゆっくり上げた。
「なぁんか可哀想な立ち位置にいる気配を察知したんだけどォ苦労しているねェ」
「そう思うなら退いてもらいたい」
「それは無理かなァ。むしろそっちが退いてサ、こっちがクヴァリフの仔貰う訳には」
「こちらもクヴァリフの仔必要なのでな、渡すわけにはいかない」
「行かないよねぇそうだよねぇ」
 あは、と愉しげに笑った氷海風に、リンドーは自身と融合した蟲の怪異の群れに騎乗し、氷海風へと近づいてきた。氷海風は接近するリンドーに影から呼び出した赤狼をけしかける。赤狼は牙をむき出し飛びかかり、無数の怪異を齧り千切り、爪や脚で払うもリンドーは止められない。
「あれ、愉しそうだから、欲しいんだけどなぁ!」
「そうか、諦めてもらおう」
 赤い舌を見せて笑う氷海風へ、リンドーは怪異の群れから跳ぶ。跳躍の勢いを乗せた鋭い刃の蟲の腕が振り下ろされれば、氷海風は体を切り飛ばされるかもしれない。
「ふふ、無理だねェ」
 けれど、その一撃を氷海風は避けた。暗闇に紛れるようにリンドーとの距離を詰め、手にしたハチェットで蟲の腕を切り落とす。切り落としたあと、残った腕の方へ刃が食い込むようにひねってから、闇に隠れて着地したリンドーの後ろへ回る。
 無言で眉間のシワを深くしながら、融合した怪異で新たに腕を補う姿を見ながらも、氷海風はクヴァリフの仔を回収した。うねうねぶよぶよした存在を、ひとまず適当にしまいこむ。
(それにしてもふわもこといい、今回の件といい、なんだが残念な気配がするなぁ)
 もうちょっとこう、連邦怪異収容局っぽく不気味だったりどこか残酷だったり、自国のためなら犠牲を問わない、そんな活動をするものじゃないのだろうか。
 かわいいふわもこで資金を得るとか、エネルギー稼ぐとか、うっかり系エージェントを使って召喚儀式をするとか、残念である。
 少しつまらない気持ちでクヴァリフの仔を見て、氷海風が一歩後ろに下がれば、先程までいた場所をリンドーの刃の腕が凪いでいった。
「そこだろう」
「……ふふ」
 闇に紛れているのに気づいて切ってくるなんて、ちょっと面白いかもしれない。
 頬をかすった痛みに、氷海風は笑った。もう少し、愉しめそうだ。
🔵​🔵​🔴​ 成功

眞継・正信
アドリブ、連携歓迎

この方が噂のスミス氏か。噂よりも、いくぶん人間らしさを感じるな。

人間同士の争いが愚かだというのは道理だ。私も戦いは好まない。
特に今回のFBPCの人々は、勤労と対価の尊さを知る者たちのように思える。

だが……

「あなた方には怪異の力を独占しようとする節があるようだが……怪異の力はこの√の未来を拓くものだ」

それに……

「対話もなくただ降伏を求めるなら、こちらも容易く応じるわけにはいかない」

実力も相応と見た。隙を突けるなら跳躍の瞬間。
「クロウタドリ」を放ち、羽ばたく小鳥に彼の態勢を崩させる。同時に「Orge」にクヴァリフの仔の奪還を命じる。
覚えているかね? 先日も上手くやってくれたな。


 頭を抱えて降伏勧告をするリンドーを、正信はオルジュを控えさせたまま観察する。
(この方が噂のスミス氏か。噂よりも、いくぶん人間らしさを感じるな)
 リンドー・スミス、自らと怪異を融合し冷静に仕事を行うエージェント。しかし部下に振り回され、疲れたような風情を見せられると、なんだか可哀想にも思えた。
「ご機嫌いかがかな。優れているようには見えないが」
「ありがとう、早く帰って眠りたいよ。君達も早く帰ってもらいたい」
 今は争いたくない、という気持ちが強そうなリンドーに、正信はふむ、と頷いてみせた。
(そう、人間同士の争いが愚かだというのは道理だ。私も戦いは好まない。特に今回のFBPCの人々は、勤労と対価の尊さを知る者たちのように思える)
 しかしながら彼らは敵である。汎神解剖機関とは主張が異なり、目的を果たす過程や結果において、「犠牲」の定義が異なる可能性すらあるのだ。
「クヴァリフの仔を回収したらすぐにでも帰るとも」
 そういう正信に、リンドーは首を振る。
「いいや、渡すわけにはいかない。これはFBPCが預からせてもらおう」
「ふむ、あなた方には怪異の力を独占しようとする節があるようだが……怪異の力はこの√の未来を拓くものだ」
「それは同意する。しかしながら弱者には、クヴァリフの仔は扱えまい。正しい機関による収容によって、無辜の民は守られるべきだ」
「弱者は守られるべき、そこは同意しよう。まあ、正しい機関、という点はきっとお互い同じにはなるまい」
 だが、と正信は続ける。
「対話もなくただ降伏を求めるなら、こちらも容易く応じるわけにはいかない」
「敵対者と会話が必要かな?」
 戦闘より会話を好む正信と、無駄なく任務に当たるリンドーでは主張は折り合わず、交わることはない。
 リンドーはここで会話は終わり、とばかりに怪異の群れに騎乗した。そのまま正信へと迫り、勢いをつけ跳躍する。
「|クロウタドリ《メリル》、オルジュ」
 その瞬間、正信の周囲に黒い小鳥が群れをなす。死霊が姿をなした群れは、跳んだリンドーへと勢い良く群がり、ばちりばちりと霊障でもって体勢をゆるがせ正信に届く前に地に落とす。
 同時に命じられたOrgeがリンドーの背後、蠢くクヴァリフの仔を確保に走った。先日の経験も生きていて、素早くうにうにを咥え、戻ってくる。
「よくやった」
 正信は忠実な可愛い従者を、優しく撫でるのだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

白峰・未咲
確かに、人間、住んでる√は違っても、同じような目的をもった人間が争うのは無益だと思います
思いますけど……|クヴァリフの仔達《それ》、持って帰って利用するおつもりなんですよね?
それはちょっとはいどうぞって言っちゃいけないかなって思うんです、私

それはそれとして……かわいい、ですかね
……|クヴァリフの仔達《それ》
(そんなことないと思うんですが、私がおかしいんでしょうかと言いたげに若干不安そうに)

『未咲は優しいね。|他人の√《よそのせかい》で勝手をするような輩は問答無用で良いんだ』
|宙《そら》の護霊がそう言って容赦なく攻撃をするけど、その私が独特なだけなのかなって思っただけなんだけどな


 疲れた声のリンドーの勧告に、未咲は静かに、けれど彼女が本来持つ芯の強さを示す凛とした声で言葉を紡ぐ。
「確かに、人間、住んでる√は違っても、同じような目的をもった人間が争うのは無益だと思います。思いますけど……|クヴァリフの仔達《それ》、持って帰って利用するおつもりなんですよね?」
「もちろん。無辜の民を守るため、正しく収容し利用されるべきだからな」
「それはちょっとはいどうぞって言っちゃいけないかなって思うんです、私」
「自分達ならば正しく使えると?」
「はっきりそう、とは言えないのですが……」
「迷い、惑う。結構なことだ。しかしそれは私には関係ない。この世界の存続のため、自国のため、彼らは収容させてもらおう」
 邪魔をするなら、とリンドーは腕より怪異の触手を伸ばし未咲へと向ける。五彩の護霊がざわめく中、さらなる戸惑いを顕にして未咲は首を傾げた。
「それはそれとして……かわいい、ですかね……|クヴァリフの仔達《それ》」
 不安そうな未咲の言葉に、リンドーは手を止め首を振る。
「いや。別に私はかわいいとは思わないが」
「ですよね」
 うねうねぶよぶよした見た目は、一般的には気色悪いとかなんか嫌だなぁ、の分類である。その点はリンドーも未咲も、一般社会の感性に即していた。リンドーはこの問から思い当たる節に頭を抱え直した。
「……Ms.ソフィアは可愛いと思っているようだ。彼女の感性が独特なだけだ。安心していい」
「ですよね……」
 今ここにソフィアが残っていたら、彼女はもう、それはそれは幸せそうに解説しただろう。「このうねってしたところとかキュートでしょう? それからぶにぶにな感触はプリティ! 伸び縮みするのも愛らしくてですね」とか。
「まあ、他者の意見を慮るのは良いことだ。それは己の確固たる自我を持ったとき、より良い方向に進むための力になる。それができない今は、帰って寝なさい」
 跳ね飛ばす触手が振るわれるより早く、五彩の光刃が夜の暗さを切り裂いた。向けられた触手を切り飛ばし、リンドーは後退して距離を取る。
『会話してやるなんて、未咲は優しいね。|他人の√《よそのせかい》で勝手をするような輩は問答無用で良いんだ』
 幾度も√EDENに現れ、豊富なインビジブルを狙ったリンドーに容赦は必要ないと
|宙の護霊《そら》が言い、容赦なく攻撃を続けている。
「優しいとかじゃなくて、その、私が独特なだけなのかなって思っただけなんだけどな」
 とりあえず独特ではないらしいことは確認できたから、いいのかなぁ、と内心思いつつ。その可愛くないものをどうやって回収しようか、未咲は触手と光刃の合間でまた、悩むのだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

七豹・斗碧
可愛いって色んな種類があるんだなあ
私はもう少しもふもふしてる方が…あ、でもぶよぶよしてて目がつぶらなのは可愛いかな。あとはもっとカラーリングが赤かったり青かったり…
おじさんは可愛いと思う?クヴァリフの仔
私にはよく分からないけど、この仔たちが可愛いなら恐らくおじさんも含めこの世の森羅万象がほぼ可愛いよ

とはいえ可愛いからお持ち帰りってさせるわけにもいかないからね
というわけでもう一回出番だよロア!おじさんと可愛い勝負だ!
え?どういう勝負かって?可愛い(火力)勝負だってば
え?ロアの姿がはっきりしないって?でも雰囲気が可愛い(強そう)でしょ
というわけでロア、おじさんと遊んでおいで
可愛いを見せつけるんだ!


 斗碧は暗い野原の真ん中で、うにうにぶよぶよのたうつクヴァリフの仔を観察していた。
「可愛いって色んな種類があるんだなあ」
 どこぞの職員はこれもかわいいと力説するらしい。
「私はもう少しもふもふしてる方が……あ、でもぶよぶよしてて目がつぶらなのは可愛いかな」
「そうか?」
「あとはもっとカラーリングが赤かったり青かったり……」
「そういうものか……」
 降伏勧告をしたり、他の√能力者とバチバチやったりしていたリンドーだが、今は一息ついているようで斗碧の感想にも相槌を打っている。
「おじさんは可愛いと思う? クヴァリフの仔」
「いや、今の所可愛くは思えないが……どうなんだろうな」
 リンドーはしばし考える。もしかしたら、いつかなついたら可愛く思えるのだろうか。頭の中のソフィアは、いいぞ怪異はいいぞと笑っている気がする。
「そっか。私にはよく分からないけど、この仔たちが可愛いなら恐らくおじさんも含めこの世の森羅万象がほぼ可愛いよ」
「うん、未来永劫可愛くないということでいいな」
「とはいえ可愛いからお持ち帰りってさせるわけにもいかないからね」
 若干疲れたようなリンドーを置き去りに、斗碧はむふんと自慢の可愛い子を呼び出した。もう一度出番だ、と呼ばれたロアは、斗碧の側で揺らめいている。
 敵対するならば、と怪異の群れに騎乗したリンドーに、斗碧はびしっと指を突きつけた。
「さあロア、おじさんと可愛い勝負だ!」
「は? 何だそれは」
 可愛い勝負とは、とリンドーの口から疑問の声が上がる。
「え? どういう勝負かって? |可愛い《火力》勝負だってば」
「その影の、大きな獣……か? 姿形がはっきりしないが、どう判別しろと」
「でも雰囲気が|可愛い《強そう》でしょ」
「そもそも私は可愛いとは違うだろう。何を基準に争うんだ」
 混乱するリンドーを置き去りに、斗碧はロアをけしかける。
「というわけでロア、おじさんと遊んでおいで。可愛いを見せつけるんだ!」
「話を、ああ聞いてないな……」
 騎乗したリンドーが跳ぶより早く、ロアがどーんと飛び込んでいった。怪異の群れを腐食させて、ごろんごろんと遊び回る。リンドーにも愛でろ撫でろとぐいぐい体を押し付けていた。
 ロアをいなしきれず倒れ込むリンドーを尻目に、斗碧はクヴァリフの仔を拾い上げる。
「うーん、やっぱり可愛さはよくわからないや」
 斗碧にとって、うねぶよよりふわもこが可愛いな、と結論を出すのだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

緇・カナト
●白と黒
Mr.リンドー氏にも色々あるんだなァ中間管理職みたい
ふわもこショップを楽しませて貰った客だけど
人間同士で争うのが愚かだと言うのなら…
ふわもふと戯れるのは如何だろうか?

悪評高きは天の大狼、
フェンリル狼に変身して〜
ブレス使い過ぎはピンチだけれども
それ以外は無敵のもふもふである事を活かして〜
武装化攻性怪異と戯れたり引っ張ったり咥えたり
何か取ってこい的に飛ばしたりは出来ないの…?
オレは別に取りに行く気は微塵もナイけれど
白猫レモン君も楽しそうに戯れあって…
わぁ愛護組織とか面倒そう
言葉の力ってコワいよねぇ

さて、そろそろ…ふわもこごっこにも
飽き…満喫した頃合いで
絶対零度のブレスでお片付けしようかァ
茶治・レモン
●白と黒
リンドーさんて、もっとクールな方だと思ってました
とっても親しみやすいんですね!
ふわもこするに、僕も清き一票です
人類皆、ふわもこになれば良いんです!
リンドーさんは…あっ、変身できないんですか
お可哀想に…

魔法を使って猫変身!…は良いのですが
困りました、攻撃手段がありません
カナトさんの攻撃を応援しつつ
リンドーさんの視界をうろちょろします
華麗に回避しつつ、思い出しかのように猫パンチ
僕、お邪魔ですか?でもほら、今の僕って猫ですから
攻撃したら、|動物愛護《しかるべき》組織に訴えて勝ちます

無敵のふわもこ状態のカナトさん、そして僕!
勝敗は分かりきったことでしたね

カナトさん、やっちゃって下さい!


 若干部下の所業に悲哀を感じさせるような声音で、一応降伏勧告を行ったり、戦闘したり対話したり、じゃれかかられたりしたリンドーにカナトは仮面の奥からしみじみ笑う。
「Mr.リンドー氏にも色々あるんだなァ、中間管理職みたい」
 一方、レモンはたいそう朗らかな声で、リンドーの印象について語るのだ。
「リンドーさんて、もっとクールな方だと思ってました。とっても親しみやすいんですね!」
 自国のため、組織のため、冷静に冷徹に、確実に仕事をこなすエージェントの面が強いリンドーだが、今回に限っては随分と隙が多いようで、振り回されて疲れたようにため息をつきすらする。
 それが心労ゆえか疲労ゆえか、はたまた他の要因か理由はわからないけれど、こちらの方が付き合いやすいとレモンは、表情は動かさす、けれど声はどこか明るく言うのだ。
 リンドーは頭を抱えたまま、二人の評価に口を挟む。
「……その評価が妥当かはわからないが、降伏するのか、帰るのか、決めてもらいたい」
「そうだなぁ、こちらもふわもこショップを楽しませて貰った客だけど」
「ああ……」
 案外人気出たのかあの店、というようなげんなりと驚きが混じった表情のリンドーに、カナトは楽しげに告げる。
「人間同士で争うのが愚かだと言うのなら……ふわもふと戯れるのは如何だろうか?」
「いいですね、ふわもこするに、僕も清き一票です。人類皆、ふわもこになれば良いんです!」
「は?」
 ふわもこを楽しんだものだからふわもふと戯れるのも好きに決まっている、と言わんばかりの二人の言葉に、リンドーの動きが固まった。
 カナトが夜に響く声で一吠えすれば、神世より悪評高き天の大狼、凍てつく吐息のフェンリルへと姿が変わる。
 レモンがほんの数瞬念じれば、真白に月の瞳の猫へと変わり、大きな狼へとぴょんと飛び乗った。
「さあ、どうだい……?」
「にゃあ(リンドーさんは……?)」
 ふわもふとなったカナトとレモンの、そちらのふわもふを見せてみよ、との視線にリンドーはまた一つ、ため息をつく。
「期待には添えない。ふわもふの姿など不要なのでね」
「にゃん(あっ、変身できないんですか。お可哀想に……)」
「可哀想だねェ」
「そうか??」
 ふわもふのぽやぽや柔らかな毛並みの猫レモンと、しなやかな毛並みのフェンリルカナトの同情にリンドーは首を傾げた。自分がおかしいとは思わないが、同情されるほどのことかとも思う。
「まあいいや、とりあえず遊ぼうか」
「にゃー(ですね、カナトさん頑張れー)」
「ああ、こらやめなさい」
 氷の吐息は辺りを急激に寒くするし、攻撃されれば血を失うが、じゃれて遊ぶには何も問題ない。カナトはリンドーの側でもにもにしていた、鞭っぽい攻性怪異をかぷりと口で咥えて引っ張ってみる。びにょんと伸びては戻るそれとじゃれて振り回しては、リンドーの体もぐらぐら揺らしていた。レモンはそんなカナトの背中で尻尾や手を振って応援している。
「何か取ってこい的に飛ばしたりは出来ないの……?」
「攻性武装だからな、まだ弾き落とすほうが得意だろう。そもそも、そちらは何か投げたとして取ってくる気があるのか?」
「微塵もナイよ」
「にゃん!(犬じゃないですしね!)」
 ふかふかの尻尾で白猫のレモンと戯れて、カナトはリンドーをちょっとだけからかってみせた。
 ふわもこの毛並みのフェンリルの毛並みは、表面はほんのり冷たくサラサラで、アンダーコートはみっしりふかふかのぬくもりたっぷりである。背中や頭、尻尾で少しずつ感触も違うのが、じゃれつくレモンにはとても楽しいものだった。
 レモンはぽわぽわふわふわの毛並みの白猫で、ちょこまかとカナトにじゃれて動き回り、尻尾や脚と戯れて、にゃあにゃあ元気に笑い声を上げている。未熟ゆえに人の言葉は出せないけれど、十二分に楽しいは伝わってきた。
「……もういいかね?」
 うろちょろ視界をはねまわり、時折揺れた怪異を華麗に躱しては猫パンチでじゃれつく白猫と、怪異を丈夫なおもちゃとみなし、噛んだりじゃれたりする狼に、リンドーはもういいかと攻性怪異を振り上げた。
「にゃー、にゃん、にゃう(僕、お邪魔ですか?でもほら、今の僕って猫ですから。攻撃したら、動物愛護しかるべき組織に訴えて勝ちます)」
「わぁ愛護組織とか面倒そう。言葉の力ってコワいよねぇ」
 そんな脅し文句にリンドーの手が止まる。FBPCは、ある意味訴訟大国と言ってもいいくらいな国の組織である、その面倒さはよく身に染みていた。
「さて、そろそろ……ふわもこごっこにも飽き……満喫したし」
「飽きたと言いかけたな?」
「なぁん!(カナトさん、やっちゃって下さい!)」
 動きの止まったリンドーに、カナトも加えた怪異を離す。十二分に満足しましたと言わんばかりの顔を取り繕ってから、すっと息を吸い込んで。
 ごう、と絶対零度の息を吐き出した。白く空気が変わる向こうで、攻性怪異が凍って砕け、リンドーも後退しつつ凍ったコートの裾を払いのける。
「にゅあー!(無敵のふわもこ状態のカナトさん、そして僕!勝敗は分かりきったことでしたね)」
「そうだねぇ」
 うなうなむふんと胸を張るレモンに頷き、カナトはブレスを引っ込める。
 二人は凍った野原の向こう側、うにょんとしたまま凍ったクヴァリフの仔をあとで回収するのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

凍雲・灰那
おっと、買った物店に置いてきたら遅れちまったか。
だが間に合いはしたようだ。危ねェ危ねェ。

うーむ。
まさかオレがお前を憐れむ日が来るとは思わなんだ。
個性的な部下を持つと大変だな。
まァ、手を抜く訳にゃいかん。元より油断出来る相手でもねェしな。

てェ事で――――数で圧し潰させて貰うぜ?
軍勢召喚。大量の焔の精を呼び出し、突撃させる。
|狙いはクヴァリフの仔だ《・・・・・・・・・・・》。

回収対象なんだっけ?じゃあ、ちゃーんと守らねェとなァ。
ゴリゴリ削れてくれよ。その方がオレも、後続の奴らも楽になるんでね。


(おっと、買った物店に置いてきたら遅れちまったか)
 自身の営む駄菓子屋に、購入した愛娘への贈り物などを置いてきたら回収担当がすでにいた。遅れてしまったかと灰那は少し焦るが、まだクヴァリフの仔は召喚陣のあたりをうねうねしているようだ。
(危ねェ危ねェ)
 灰那が到着したのは、リンドーの降伏勧告の少し前の時点。部下の所業にため息をつき、なんかもう色々疲れて頭を抱えるリンドーに、少しだけ灰那は憐れに思った。それをそのまま当人に告げる。
「うーむ。まさかオレがお前を憐れむ日が来るとは思わなんだ。個性的な部下を持つと大変だな」
「そう思うなら帰ってくれ。こちらもさっさと撤収したいのでな」
「そういうわけにもいかねェよ」
 ややくたびれていて、憐れに思う対象でもそれはそれ。手を抜くわけにはいかず、油断できる相手でもない。
「てェ事で――――数で圧し潰させて貰うぜ?」
 灰那呼び起こすのは焔の精。周囲を埋め尽くすほどの生きた炎達を突撃させる。|狙いはクヴァリフの仔だ《・・・・・・・・・・・》。
「回収対象なんだっけ? じゃあ、ちゃーんと守らねェとなァ」
 自分達も回収しなくてはいけないわけだが、おそらくリンドーが対応して消耗してでも守ってくれるだろう。
燃えている彼らは、うねうねしている無力な仔らに向かっていく。
 しかし、リンドーは動かない。タバコを一本取り出して、ゆっくりと吸い始めた。
 灰那はわずかに首をかしげ、リンドーを嗾ける。
「おい、いいのかよ。燃えるぞ? 回収対象が灰になっちまうぞ?」
「それを燃やそうとしているそちらが言うのか?」
 ふぅ、と吐き出されるため息に合わせて紫煙が棚引いた。しんどそうにしながら、彼はそれでも怪異を呼び出す。
「すでに今回の計画が失敗なのには変わりない。他の組織に回収されるなら、いっそ潰してしまうのもありではある。むしろ燃やしてもらえるならありがたい。こちらでの処理をしなくて済むからな」
「おう……」
 随分とリンドーは疲れているのか、それとも無駄に冷静なのか。灰那の方が少し戸惑ってしまった。
「……まあそういうわけにもいかないが。はあ、仕方ない」
 呼び出した怪異に騎乗し、リンドーは跳躍して攻性怪異を呼び出して範囲攻撃を行った。焔の精はクヴァリフの仔を狙いながらも、邪魔するリンドーを燃やしていく。
「あー……ゴリゴリ削れてくれよ。その方がオレも、後続の奴らも楽になるんでね」
 ただ、ちょっと。大変そうな生き方してるな、とは思った灰那なのだった。
🔵​🔴​🔴​ 苦戦

一戸・藍
アドリブ連携歓迎

擬人化装置OFF
こんばんは、アロワナです
怪異ではありません

突然すみませんが、あちらのクヴァリフの仔は頂いてもよろしいでしょうか?
私、この段ボールにクッションを敷くのが好きでして、なんだかぷにぷにしていて良さそうだな、と
(話しながら段ボール箱に収納していたレギオン群を飛ばし、先程購入したお魚怪異のクッション、ぬいぐるみが敷かれた箱内部を見せる)
ダメですか……ですよね〜、残念

レギオン群を周囲に散らし「過背金龍」を発動、時間の続く限り制圧射撃
隙を見てレギオンフォートレスを操りクヴァリフの仔の回収を試みましょう

怪異ではありません。一般通過アロワナです


「こんばんは、アロワナです」
「……アロワナだな」
「はい。怪異ではありません」
「普通、アロワナが喋っていたら奇異だと思うが。怪異と思われても不思議ではないのでは?」
「そんなことありませんよ?」
「そうか?」
 この地に現れ流暢に喋る野良アロワナこと藍の言葉に、リンドーは首を傾げた。人間の姿以外が喋っている光景は一般的には奇異だろう。第一声がアロワナです、と自己紹介してくる辺りも加味して、怪異好きソフィアが一瞬怪異と勘違いしても不思議ではないのでは、というものだ。
 そんなリンドーに、藍はヒレをぱたりと動かして、召喚陣の辺りで蠢くクヴァリフの仔を指し示した。
「突然すみませんが、あちらのクヴァリフの仔は頂いてもよろしいでしょうか? 私、この段ボールにクッションを敷くのが好きでして、なんだかぷにぷにしていて良さそうだな、と」
 ほら、と藍はレギオン群【カラシン】を飛ばして段ボールを持ち上げ、傾けて内部を見せる。お魚怪異ギョーのクッションやぬいぐるみを詰めた内部は程よくみっちり詰まっており、アロワナ体を納めても心地よく受け止めてくれる程度に快適性や居住性が向上していた。
 リンドーはさあ、さあ、とぴちぴちはねてみせる藍に首を振る。
「ダメに決まっているだろう」
「ダメですか……ですよね〜、残念」
 愛のその言葉と同時、周囲に予め散らばっていたカラシン達が金色に輝いた。必殺モードとなったカラシンはきらびやかに輝きつつ、四倍になった移動速度と攻撃回数でリンドーを撃ち続け制圧していく。
 リンドーも負けじと攻性怪異の触手を伸ばしカラシンの群れを払いのけるが、如何せん相手の速度と数が多い。そうやすやすと本体の藍には手が伸ばせなかった。
 リンドーの注意がクヴァリフの仔から離れた瞬間、藍はナマズ型のレギオンフォートレス【キャット】を発進させる。うねうねしている触手を一匹つまみ上げ、段ボールまで回収していった。
 ぽとんと段ボールに落ちたクヴァリフの仔はうねうねぶよぶよしている。間近に現れた新しい存在に仲間かどうか迷ってすらいるようだ。
 そんな仔に、藍はいう。
「怪異ではありません。一般通過アロワナです」
「怪異に近いんじゃないか?」
 六十秒みっちり撃たれ続け、払うだけでも疲れたリンドーのツッコミは聞かなかったこととする。
🔵​🔵​🔴​ 成功

インベクティブ・シャイターン・エフォーリル
分かりました、降伏します!争いは良くないと思うのは僕もですので、気が合いますね!
その代わり、可愛いクヴァリフの仔の魅力を語ってください!そう言っていたお姉さんは何処かにいってしまったので代わりにお願いします!
その……僕から見るとあまり可愛いと思えないというか……お店にあったハッムやヌッコ達の方がすっごくとても可愛いと思います!ふわもこですし!(狂気耐性持ち
でも片方だけ魅力を語るのはあれなので、そちらのターンです!

布教をしてみるけど、あのお姉さんの仲間ならふわもふグッズを実際に試したり、作っていたりもしていたのかも。ふわもこ仲間だったり?って思わずキラキラした目で見つめちゃいますね!
あ、味わった事がないなら折角なので一緒にふわもこで寝ましょう、味わった事があるなら断る理由はありませんね!
……実は僕、結構前から眠たくて眠たくて……ふわもこで一緒にごろ寝、ふわふわお布団があれば最高だね!
ないならないで我慢するよ。僕、根性あるから!
してくれないなら思いっきり膨れて、駄々をこねてパンチしちゃうよ!


「分かりました、降伏します! 争いは良くないと思うのは僕もですので、気が合いますね!」
 はいっと挙手するような勢いでよいこのお返事をするインベクティブに、リンドーはどこかほっとした様子で頷いた。
「そうか、話が早くて助かる。なら早急に……」
 帰るといい、と続くはずだった語尾にインベクティブの言葉が重なった。
「その代わり、可愛いクヴァリフの仔の魅力を語ってください! そう言っていたお姉さんは何処かにいってしまったので代わりにお願いします!」
「は?」
 言われたリンドーの目は点になりそうだった。戦術面のクヴァリフの仔の魅力といえば、まず強化能力が挙げられるだろう。それは同時に危険でもある。けれど、目の前の√能力者はそういう面の魅力を語れと言っているのではない。
 インベクティブはそっと申し訳なさそうに、うねうねぶよぶよのクヴァリフの仔をちらちら見ながら言葉を紡ぐ。
「その……僕から見るとあまり可愛いと思えないというか……」
「そうだな。あまり可愛くはない」
「ですよね! お店にあったハッムやヌッコ達の方がすっごくとても可愛いと思います! 丸かったり柔らかいラインだったり! つぶらな瞳とか、短めにデザインされた手足とか! それにふわもこですし!」
「まあ、一般的に可愛いと言われるのはそちらだろう。同意するよ」
 インベクティブほどの熱意はリンドーにはないが、言っていることはよっぽど理解できた。うん、と頷くリンドーに、インベクティブはぱっと明るい笑顔になる。
「ありがとうございます! でも片方だけ魅力を語るのはあれなので、そちらのターンです!」
「いや、別に私は可愛いとは」
「どうぞ!」
「……あー。まあここの個体だけかもしれないが。小さいところは可愛いんじゃないか」
「ふむふむ」
 インベクティブの両の手のひらで抱えられる程度の大きさの個体がここには多く、比較的小さいのは可愛いことが多いだろう、とリンドーは考える。人間も小さい頃は愛らしいものが多いから。
「あとは……Ms.ソフィアなら、うねうねぶよぶよも可愛いと言うんじゃないだろうか。多分」
「そうなんですか?」
「おそらく。「ぴちぴちうねうねしてるラインとか動きとか可愛くないです? ぶよぶよした手触りもとってもプリティ!」とか言うだろう」
「なるほど!」
「しかし安心していい、あれが可愛いと断言できるのはごく一部だ。君はおそらく正常だろう」
 リンドーは青少年の健やかな成長を祈るように締めくくった。うんうんと頷く少年には全うに育っていただきたい。
「さあ納得したかな? なら今度こそ」
「あなたもあのお姉さんの仲間ならふわもふグッズを実際に試したり、作っていたりしましたか?」
「……作りはしなかったが試しはしたな。確かにふわもこで心地よいものだとは思うが」
「ですよね!」
 インベクティブはきらきらした瞳でリンドーを見た。きっとこの人もふわもこ仲間に違いない、と感じて。
 もう深夜でだいぶお疲れそうだし、仲間としてふわふわでもこもこのお布団や抱き枕と一緒に寝るのもよいのではないだろうか。試したことがあるならば、その魅力には抗えまい。インベクティブはそう思ってにこにこ笑みを浮かべた。
「ならお休みしましょう! ……実は僕、結構前から眠たくて眠たくて……ふわもこで一緒にごろ寝、したいなって」
「ここで??」
 ここは野原の真ん中、近くにはクヴァリフの仔と召喚陣しかない。どこにふわもこがあるというのか。リンドーは大丈夫かこの少年、と眠たげに瞼を緩め始めたインベクティブを見た。
「ないならないで、がまんするよ……僕、根性あるから……ふわぁ……」
「ああもう……確か、Ms.ソフィアが押し付けてきた品があったな」
 あくびをするインベクティブにリンドーは頭を抱え、片隅に押し込んで忘れようとしていた品の存在を思い出した。
 どこからか取り出したそれは、金色の毛並みに青い目で、眼帯をしたちょっと目つきの鋭いヌッコとイッヌの抱き枕に、ハッムの布団だった。Ms.ソフィアが「試供品です、Mr.リンドーモデルを作りました!」と意気揚々と置いていったのだ。キュートでプリティなそれが自身をモデルにしたとは認められず、押し込んで忘れていたのだ。
 こっくりこっくり舟を漕ぎだしたインベクティブをふわもこにぽいと放り投げ、うずめればまあ作業は完了だろう。あとはクヴァリフの仔を残ったものだけでも回収すればいい。ふわもこグッズは廃棄されるに違いない。
 リンドーは疲労からか甘めの判断をし、さっさと離れようとした。しかしコートの裾が引っかかって動けない。
 見れば、インベクティブの手がコートの裾をガッチリと握り込んでいたのだ。√能力者の握力は強い、どうあがいても外せないし、流石にコートは置いて行きたくないが、このままでは動けない。
 遠い目をしたリンドーは、長く長くため息をついて。諦めてふかふかのヌッコの上に頭を預けるのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

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挿絵イラスト