|大三角《トライアングル》はもう見れない
●悲劇の天体観測
美しく澄み切った星空。二人がゆっくりと星を見て、温かな飲み物を片手に語らう時間。……たまにするこの天体観測の日が、姉妹にとって心安らげる時だった。
山を登り、テントを張って。星を眺めて、他愛ない話で盛り上がる。それだけで、あの子と私には十分だった、と思う。今年も夏の大三角を見ようね、と笑いあったのはいつだったっけ。
「じゃあお姉ちゃん、飲み物取ってくるね」
――それが妹と交わした最後の言葉だった。
しばらくして妹の悲鳴がした。どうしたのかと思えば、二人が天体観測の為に持ってきていたテントごと、わけのわからない怪物に『踏み潰されて』、嬲られていた。
「どうして、あの子は何も悪いことはしていないのに――」
そう呟いた姉の方にも異変が起きた。自分の身体はおおよそ人とは思えない奇妙なまでに美しい金属の光沢へと『成り代わって』行く。そして、|そうなった《・・・・・》自分の方にも怪物の視線らしきものが向いて――
一人残された姉は必死に、息を切らしながら駆け抜ける。街にまで戻れば助けを求められるだろうか、でも、あの子の様に誰かが無惨に死んでしまったら――
数多の最悪の想像が過ぎりながら、なるべく人を巻き込まないように、巻き込まないようにと姉は山を矢継ぎ早に降りていく。そうだ、廃墟まで逃げ込めれば、誰にも――
「……一体何が起きているの」
呟いた言葉こそが、天使となったライラという少女の本心だったのかもしれない。
●もう果されること無き約束
「……仕事の時間だ。お前|達《ら》には欧州に発って貰う」
|斯波《しば》・|戒焔《かいえん》(極地に至る双腕・h06146)は重い息を吐きながら、資料を能力者に配り始める。
「√汎神解剖機関で、根絶されたと思われていた『風土病』の規模な発症が確認された。……その病は『天使化』」
人心の荒廃した現代では発生し得ないとされていた、『善なる無私なる心』を持つ者のみが発症する奇怪な病である。
「だが、この世の中、其処まで清らかな心を持つ存在などたいていは存在しない。故に『|オルガノン・セラフィム《なり損ない》』を大量に誘発する結果を生んでいたのだが――」
斯波は山中から駆け下り、『なり損ない』を振り切る為に廃墟へと逃げていく『天使の少女』を予知したのだという。
「今回は彼女を安全地帯まで逃がす事が目的になるんだが――最悪の知らせをしなければならん。現地で『|羅紗《らしゃ》の魔術塔』の活動も観測された。恐らく狙いは『なり損ない』の奴隷化と――『天使』の確保だ」
故に現地では状況が二転三転する可能性があり、詳細な予知を並べる事が出来ない、と斯波は告げる。
「一先ず、お前達に頼みたいのは、このライラという『天使化』した少女の安全の確保だ。残りの判断は現地のお前達に一任する――済まないが、頼むぞ」
突如人々を異形や『天使』に変えていく『風土病』、そして『羅紗の魔術塔』……これが後に『ヨーロッパ『天使化』事変』と称される大騒動になろうとは、この時の誰が予想出来ただろうか?
だが、悲劇の幕は――誰も待たずして、開かれたのである。
マスターより

たまたま某育成ゲームやってたせいでヒロインの方向性がこうなりました。
|逢坂《おうさか》・|灰斗《かいと》です。
皆様を『ヨーロッパ『天使化』事変』の事件の1つにご案内致します。
【お知らせ】
今回のシナリオは非常に分岐の方向性が多岐に渡ります。
故に、いただいたプレイング次第で分岐が転がっていきますので、ご了承下さい。
【今回のNPC】
ライラ
姉妹の姉の方。天体観測に姉妹で出掛けていた所発症、『天使化』しました。
現在は『他人を巻き込まないように』人気のない廃墟へと逃走中です。
ライラの妹
姉妹の妹の方。『天使化』したかは不明ですが、運悪く『|オルガノン・セラフィム《なり損ない》』に襲撃を受けた為、恐らく死亡していると思われます。
20
第1章 冒険 『廃墟探索』

POW
瓦礫や家具を取り除き、埋もれたものを探す
SPD
隠された通路や物品を目敏く見つける
WIZ
周囲を漂うインビジブルを調べる
√汎神解剖機関 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●隙間程度の星空
「此処に逃げ込めば、大丈夫……きっと、きっとそう」
天使と成り果てたライラは、山に程近い廃墟の中で、先程までの静謐な語らいの時間すら忘れてしまいそうな程の惨禍を思い出していた。
どうしてあの子が死ななくてはならなかったのか。
どうして私はあの子を守れなかったのか。
自分の事より、自分よりも辛く苦しい最後を迎えてしまったであろう妹の悲鳴のみが脳内にこだまする。
助けて、とは言えない。
あんな化け物が追ってくるなんて、街の人々や両親を巻き込む訳にはいかない。
それに、あの化け物も何処からやって来たのか分からない――
「皆に、迷惑を掛けないように――それでも、生き延びなきゃ」
私のせいで妹はきっと死んでしまったのだろう。そう、自罰するままに彼女は息を潜めている。
【お知らせ】
廃墟探索パートです。参加者様の区分に依って状況が変化します。
状況は夜間の廃墟です。雲一つ無い天体観測にぴったりな日です。
隙間から月明かりは漏れてきていますが、基本的には光源などもあると良いでしょう。
廃墟内は『|オルガノン・セラフィム《なり損ない》』が天使を求めて徘徊している為、多少の戦闘準備は必要です。
・通常PC並びに通常Anker
→廃墟を探索し、ライラ(並びに参加中の天使Anker)を保護する形となります。
誰かが保護に成功した場合、以降はプレイング内で最も多い方針にシナリオが分岐します。
・天使Anker
→廃墟内で『|オルガノン・セラフィム《なり損ない》』と決死のかくれんぼを行って頂きます。
ライラと合流した場合は多少会話も可能ですが、一緒に逃げ回る事になるでしょう。

善なる無私の心…………
……いえ、今考えるべき事ではありませんね
【仁刻】発動し自己強化
今回は対象を一度自身に絞り敵に気付かれるリスクを抑えます
向かう先は……|救助対象《ライラさん》の妹の方へ。
一刻を争う状況は承知ですが、
起きた事をある程度把握できている以上
此方は居場所も見当は付く筈
急げば大きなロスにはならないでしょうし……
救命が間に合えば最善
そうでなくとも後に弔えるよう亡骸か遺品を回収できれば
ライラさんの信を得る一助になるかと
発見すれば彼女にも【仁刻】治癒を施しつつ
ライラさんの捜索に移ります
状況に応じ装備[錬気竜勁]《属性攻撃》を灯りにする等
知覚を補助しながら《第六感》を研ぎ澄ませ追跡しましょう
●惨劇に残された違和感
「善なる無私の心…………」
脳裏に過るのは、『天使化』の発症条件。
だが、それを今は考えるべき事ではない、とディラン・ヴァルフリート(|虚義の勇者《エンプティ》・h00631)は首を振る。
自分の善性が単なる見様見真似だとするなら、『天使』となった者らの善性は、羨むべきモノなのだろうか。その様な思考を飛ばして、彼は真っ直ぐ山頂へと向かう。
……廃墟からは遠ざかり、途中『なり損ない』も何体かと遭遇したが、構ってやる暇など無い。この寄り道の目的は――ただ一つ。
彼の視界に映ったのは、ひしゃげた折りたたみ椅子と、最早何も覗くことが出来ない天体望遠鏡。恐らく、ライラが此処を放棄した後、『なり損ない』に嬲られたのであろう。
「であるならば……テントの残骸も、近くに」
ディランが見渡せば、その残骸は悲しい程簡単に見つかった。
テントは何かに蹂躙されたかのように押し潰され、その眼の前でコンロを拡げていただろう『何か』の血溜まりに、珈琲の黒黒とした液体が混ざってしまっている。そして、カセットボンベが、衝撃で漏れて引火しただろう『火』。
急ぎ、この場に【|仁刻:正道に捧ぐ讃歌《ロア・イデアール》】を施すが――肝心の妹であろう存在が、一向に『修復』されない。
「――効き目が見えない……最初から、間に合わない運命でしたか」
姉は、この悲劇の跡を直視せずに済んだのが幸いだったかも知れない。
飲み物を温める為に用意されていただろうカセットコンロだった物も、姉妹の揃いであっただろうマグカップも、全てが悲劇という血溜まりの中に沈んでいたのだから。
「唯一の救いは――『発症する前』に彼女は亡くなった……ということでしょうか」
人間として『死んだ』事を救いと評さざるを得ない状況こそが、この悲劇にとってある種の最悪だろう。『天使』になっていたならば遺骸を持ち帰られていたかもしれない。もしも妹だけが『なり損ない』に墜ちていたとしたら――
「……急ぎましょう」
妹の比較的無事であった遺品を手に取り、ディランは廃墟に向けて素早く下山を開始する。遺体はあまりに損壊が激しく、見せたならば逆効果としか言いようが無いだろう状態であったからだ。
数多の足跡がまるで一人を追うように続く下りの道を、まるでライラならばそうしたのではないか、と思うような駆け下り方で降りていく。
「……しかし、腑に落ちません。『なり損ない』もまた……人から生じるような言い方を……していた筈」
そう、一番奇妙な点はそこなのだ。
山の上という『人が居ないであろう』環境で天体観測をしていた姉妹が、『なり損ない』に襲われたのだ。
「……もしや、既に……『|羅紗《らしゃ》の魔術塔』は、直ぐ其処まで」
事態の一部を察した彼は、廃墟に向かう速度を更に上げていく。
……急がねば、|彼女《ライラ》は『人間』としてすら死ねないのかもしれない、と。
🔵🔵🔵 大成功

【SPD】
アドリブ・支援歓迎
自分は廃墟から少し遠い位置に陣を敷き、狙撃観測用スマートフォンと複数機展開したスナイプスポッターにの接続よる廃墟周辺の観測(使用技能:弾道計算)と他PCの援護、周辺天使への攻撃(使用技能:スナイパー、弾道計算、吹き飛ばし)を行います。
隠し通路の類らしき場所を発見した場合は、道中の瓦礫が崩せそうならば遠距離からの狙撃を行い破壊します。
途中でこちら側に敵が襲ってきた場合は『狙撃環境整備スモークグレネード』を投げつけて逃げます(使用技能:ダッシュ)
●奇妙な統率感
「比較的こっちからでも見えるけど……嫌な動きしてるね」
廃墟の近隣で陣を構えた|東雲《しののめ》・グレイ(酷薄なる灰の狙撃手・h01625)は思わず舌打ちをする。
廃墟内へ派遣したドローンから送られてくる映像は、事態の異様さを嫌でも理解せざるを得なかったからだ。
「『なり損ない』自体は文字通り、ライラって嬢ちゃんを追っかけてたみたいだけど――見失った途端に動きに『統制感』がある」
そこにはFPSでプレイヤー同士が結託して『一人のPLを追い詰めようとしている』ような奇妙さがあった。
「明らかに……狙ってるよな、これ。私だって分かる。この『なり損ない』は全部、誰かの支配下にある」
ぶつぶつと状況を呟きながら整理しつつも、廃墟内のクリアリングを続けていくグレイだが、後背から悍ましい咆哮のようなものが響き渡る。
それに即応してスモークグレネードを投げるも、一瞬視線があったソレの正体もまた、『なり損ない』であった。
「ちっ……バレたか、一端立て直して別のトコで敷き直さないと」
スモークグレネードに紛れ、離脱する最中、グレイはドローンを通して、一箇所に気になるポイントを発見した。
「……瓦礫で隠されてるけど……刻印? 妙な文様が見えるな」
隠し通路というイメージには程遠そうだが――覚えておくといざと言う時に役立つかもしれない。そんな直感を覚えながら、彼女は一時離脱する。
既に此処は『魔術塔』の手の内なのだろうか? 少しの不安を過ぎらせながら、彼女は新たに敷くべき陣地の場所へと駆け出していった。
🔵🔵🔴 成功

「ハロー、天使のガール。きっとこの声は届かないでしょうけど」
【行動】
天使のガールを探すのは他の√能力者に任せましょ。
私は私でできることをするわぁ。囮になって、なり損ない達を引き付ける。
他の√能力者がガールを探すのにも、ガールが息を潜めて隠れるのにも、徘徊してるなり損ないは邪魔だものねぇ。
廃墟の中にも開けた場所くらいあるでしょう。そこで大音量の演奏をかましてやるわぁ。
今日のナンバーは『急雲・恋はサンダークラウド』
演奏に釣られてなり損ない達が寄ってきたところで……纏めてズドンよ。
「せめて、この演奏が届いていればいいわねぇ……」
【アドリブ歓迎】
●乙女の為に|演奏《GIG》を捧ぐ
「ハロー、天使のガール。きっとこの声は届かないでしょうけど……」
姿の見えぬ|『天使』の少女《オーディエンス》に語り掛けるように、|虚峰《ウロミネ》・サリィ(人間災厄『ウィッチ・ザ・ロマンシア』・h00411)は自分の出来る事の準備を進めていた。
幸いにも廃墟の中にも演奏に十分なスペースはあった。けれども、安全面から語るのならば、『なり損ない』が統率され、徘徊している廃墟など安息の地とは言い難い。
『恋する乙女』になるだろう、或いはだっただろうライラという『少女』が、その様な地に在る事が彼女が今宵『|乙女達への応援歌《ヒットナンバー》』を構えるに十分過ぎる理由だったのだろう。
「恋の乱雲、愛の積雲、落ちる先は貴方の胸元」
パンクロックが不気味な静かさを掻き消し、廃墟中に自己主張を響き渡らせる。
そう、私は此処に居る。乙女の『ひとりの少女』としての道行きを汚そう物なら私を倒していけと言わんばかりに魔の音色が拡散し、その音に『なり損ない』達が殺到するだろう。
「その身を貫く電撃情緒はきっと――」
視界に映るは数多の『なり損ない』。事前に斥候していただろう能力者の存在によって数は減っては居るものの、それでもサリィが演奏で誘引した数はまるで補充され直したかのように廃墟を探し回らせるには十分量が存在したのだ。
「……恋の始まりだから」
彼女が紡ぐ|歌詞《フレーズ》に沿う様に、恋に落ちたかのような衝撃的な万雷が廃墟を照らす星空より理不尽に降り注ぐ。サリィの夜の静寂を割く熱狂的な演奏に惹かれたならば最後、恋の代わりに雷が落ちてくるのだ。
サリィは|魔導弦《エレキ》を掻き鳴らす――願わくば、この歌が身を潜め逃げ回る『|天使《ライラ》』に届くことを。
🔵🔵🔴 成功

天使、ねぇ……気持ち悪りぃ。
『善なる無私なる心』だぁ?……人間誰しも利己的なもんだろ。
……言やぁいいんだよ、助けてって。(渋面を作りながら小さく舌打ちをする)
廃墟で今回の保護対象を探す。
天使を探して徘徊してるっていうなら、その『|オルガノン・セラフィム《なり損ない》』の多い方を探した方が効率がいいだろう。なんせ、探し出す術を持ってんだろうからな。
積極的に探し回り、|霊震《サイコクエイク》で足止めをしながら探す。
……他人に迷惑掛けないで生きてる人間なんざ、いやしねぇんだよ、馬鹿野郎が。
●『助けて』を言えぬ者
廃墟の一角。どうも洋館の成れの果てにも感じるこの場所で、|神谷《かみや》・|浩一《ひろかず》(人間(√汎神解剖機関)の|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h03307)は一人悪態をつく。
「『善なる無私なる心』だぁ?……人間誰しも利己的なもんだろ」
『天使化』は、√汎神解剖機関の現代に置いては根絶されたものと思われていた程に、清き無私の心の者が発症する現象であった。だからこそ希少であり、『利己的』でない存在にはある種の気持ち悪さもあるだろう。
だが、それ以上に。
「……言やぁいいんだよ、『助けて』って」
彼女が助けを求めずに、一人逃げ込んだという事実が、浩一を渋面へと変じさせる。
廃墟を探索すれば探索するほど、出会うのは『なり損ない』ばかり。
『天使』が上手く逃げおおせている事は喜ぶべきだろうが、同時に、疾く見つけなければ、致命的な包囲網が敷かれている事も同義である。
「一先ずこの辺りは散らしたが……|向こうさん《魔術塔》もこりゃ此処の何処かに居るってのは気付いてやがるな」
他所で引き付けてたり、予めクリアリングを行っている筈。筈なのだ。
――数が、多い。
合流出来次第、どういった方針を取るにせよ、向こうとの交戦は免れないだろう。
余りにも数多くの『奴隷』を向こうが消費しているのだとしても、明確に本命があるからという前提ならば、多少の犠牲より希少な『|新物質《ニューパワー》』を取るといった所か。
「……他人に迷惑掛けないで生きてる人間なんざ、いやしねぇんだよ」
『|天使《ライラ》』はいかに苦痛を背負おうが、助けて、とは言わないだろう。それが容易に想像できる事が、歯痒い。
「――馬鹿野郎が」
呟きは、各地で衝突の始まっている廃墟の中で、埋もれて消えていく……
🔵🔵🔴 成功

『羅紗の魔術塔』ねぇ
機関の蔵書と、噂話くらいには知ってるけど
そうなると、魔術やらでこちらの動向を窺ってる可能性もあるよねぇ
何かあってもいいよう、備えはしとかないとかな
ま、つまり、捜索も迅速が尊ばれるわけだ
耳目を増やすのが合理的だよね
影で形成した人型を周囲に走らせて捜索
俺の目と耳も疲れるんだけど、手段選んでらんないしね
件の女の子を探すと同時
『なり損ない』の動きも観察しておいた方がいいかな
見つけた方角、数、移動方向なんかは
捜索のための情報にもなるし
……ま、あんま広く能力を使いすぎると向こうにバレるかもだけど
それはそれで構わないか
その分だけ、件の天使ちゃんへの追跡が緩くなるわけだしね
●迅速かつ
「『|羅紗《らしゃ》の魔術塔』ねぇ……機関の蔵書と、噂話くらいには知ってるけど」
|久瀬《くぜ》・|彰《あきら》(|宵深《ヨミ》に浴す|禍影《マガツカゲ》・h00869)はこの廃墟の存在を捕捉している可能性のある組織を呟きながら、念入りに準備を進めていた。
手は迅速に、かつ『多めに』。術者の耳目に疲労は伴うが、そうも言ってられないだろう。彼が行使するのは――「|月下に歩む深黎《ゲッカニアユムシンレイ》」。
小さなヒトガタが廃墟の各地を走り回っていく。
『|天使《ライラ》』が上手く隠れ息を潜めているだろう事は分かったが、同時に解ることは『なり損ない』が誘導や撃破もされていない分が適宜追加され、まだ『確認していない』だろう方面に優先して向かっていくのが見えた。
……基本的にそれより先に此方側が引き付けたり撃破したりしてしまう為、その探索は叶わないのだが……。
「間違いなく、向こうは天使ちゃんが『此処』だってのは、気付いてるね。
だって『なり損ない』が途切れないし、何よりこっちが適宜排除してるからね」
魔術塔が正確な場所を掴みきれていないのは僥倖、といった所か。
しかし、それは同時にとある危険性を示唆する。
「上手く天使ちゃんを連れて逃げられないと最悪向こうの『御主人様』と相対する可能性も高い、ってくらいか……」
いくら数があっても急拵えの『奴隷』それぞれにカメラ付ける余裕など存在し得ないのだから、物量による捜索で判断し、『手に負えないのであれば』上の者が出てくる――
「……脱出するなら腰を据えるんじゃなくて一気に抜けないと、か」
拡げた耳目から得た結果を以て、彰はとある一角へと足を進めていく。……きっと『奴隷』には収納を開けるなどと言った智慧までは無いのだろう。
せめて、其処から『匂い』で気取られぬように――と思いながらも、その足取りは自然と足早になっていくのであった。
🔵🔵🔴 成功

天使化ですか、昔、噂話程度に聞いた事はあったけど実際に起きたのを見るのは初めてね。
姿は変わったとは言え、善良な心を残してる人を見捨てる訳にはいきません、絶対助けなきゃ!
廃墟にたどり着いたら神聖竜詠唱を使いライラの場所を探します。
「神聖竜よ、ライラさんの居る場所を教えて。」
居場所が分かったら、近くに他の参加者が居れば教えて一緒に向かいます。
上手くライラさんと合流できたら、彼女が安心出来るように助けに来た事を伝え、一緒に廃墟から逃げます。
ライラさんと合流する前にオルガノン・セラフィムと遭遇したら、攻撃は出来ないので、注意を惹きながら、ライラさんの居る場所から遠ざかる様に誘導します。
●琴に迫りくる者ら
「『天使化』ですか、昔、噂話程度に聞いた事はあったけど実際に起きたのを見るのは初めてね――」
廃墟の建つ山の麓へと、マリー・エルデフェイ(静穏の祈り手・h03135)は足早に駆けていく。エルフとして長い時を過ごしては居るものの、そんな彼女であっても、『天使化』という病は噂話程度でしか得られていない情報なのである。
発症すれば『なり損ない』に墜ちるか、或いは――
理性を失わず、『天使』となって逃げ惑う善良なる人の事を思えば、彼女が傷つくのは絶えられない。ましてや見捨てる事など……。
巫女であったマリーは往時と変わらぬ所作で、『神』に祈る。ライラを救い、誰も傷つけぬ為が願いを込めて。
「……神聖竜よ、ライラさんの居る場所を教えて」
そんな祈り手の問いかけに神聖竜は1つの答えを示す。
――琴は震えず、だが震えたままに調度の中に紛れ居たり
随分と詩的な答えだが、『|琴《ライラ》は家具の中に紛れ込んでいる』という答えを返されたマリーは頷く。楽器が震えないのは『声を出さない』のと同じである。
此処まで彼女が見つからずに居れたのは半ば奇跡に近い所業だろう。
「……ずっと、息を潜めてるのね。襲われてるような悲鳴はまだ聞こえていないみたいだから、急がなきゃ」
彼女が隠れている部屋に向かうも、マリーを阻むのは天使を追う『なり損ない』達の姿。攻撃手段は完全に無い……とは言い切れないが、あんな悍ましい姿に成り果てても『元は人間である』という事実が去来して、自身の性質からも|傷つける《攻撃》という択を取ることが出来ない。そうであるならば、自分に出来ることはひとつだけ。
際限は無いとは思いたくない、けれども、味方の能力者が何度削っても『なり損ない』は此方に――
「……まだ隠れられてる、でも時間の問題かもしれない」
マリーは他の能力者に後を託す様に、囮として離れ始める。
廃墟にやって来る『なり損ない』の全てが奴隷なのかは分からないが……少しづつ包囲されているのではないか、という予想は能力者達の中で波及しつつあった。
🔵🔵🔴 成功

アドリブ・連携歓迎
妹の事や自身も人外になったって言うのは、似てるから見過ごせないんだよね。
ボクも廃墟に入って探索するけど、ロックビースト達も呼び出して、中を|探索《情報収集》させてライラさんを探す。
10cm程の大きさのビースト達なら廃墟の中なら目立たず、|隠れて《地形の利用》敵から見つかり難い筈。
ボク自身は|改造人間《肉体改造》になった事で暗視機能があるから、光源が無くても大丈夫そうなら持たずに探索する。
必要なら|ミスティカ・キー《属性攻撃》の力で光源を出す。
戦闘は出来る限り避けるけど、マグナドライバーは銃形態に戻しておくよ。
ライラさんを見つけたら、ビーストで他の皆にも場所を知らせるよ。
●似ているからこそに思うことあり
星宮・レオナ(復讐の隼・h01547)は、『天使』の伝え聞いた境遇を思い返し、決意の様に拳を握る。
「……似てる、よね。……見過ごせないな」
妹を喪い、自らも『人でなくなった』という事実が、まるで自分の境遇を想起するようで――同時、最悪の結末は防がなければならないという動機が生まれる。
廃墟に踏み入れたレオナは『ひとり』ではない。
マグナドライバーを銃の型で構えつつも召喚するは――ロックビースト。ただ、数多存在するロックビーストの中でも、今回は可愛らしい小動物の物が沢山喚ばれていた。
今回ロックビーストに『小動物』サイズをチョイスしたのは、探索の利便性から選ばれた物である。小さな動物で機動力さえあれば、|理不尽《『なり損ない』》を鑑みても中断されにくいだろう。
ちょこまかと動き回るロックビースト達は、既に探索を進めている能力者達の情報から、とある部屋の中へと突入していく。
「見えている情報的には家具の中に隠れているみたいだから――」
そうして、小動物達は『人が隠れ得る』家具の隙間に潜り込み……
マグナドライバーを介して、『天使』と目が合った。
小さな驚愕の悲鳴が聞こえた気がするも、それは同時に福音でもあろう。
「――皆、『なり損ない』が来る前に急いで!! この部屋の家具の中にライラちゃんが居る!!」
『なり損ない』が途絶えぬ不気味さを感じながら、能力者達は『天使』の待つ部屋へ向かう――まだ、魔術塔が此処に勘付いていない事を願いながら。
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ・連携歓迎
汎神解剖機関職員として悲劇に立ち会う事は少なくない。だが、此度の陰惨さは郡を抜くな……
サイコドローンを使役。周囲に馴染む鳥に見目を偽装し廃墟上空から探索
情報はリアルタイムで妖怪タブレットの付喪神に転送し分析
頼んだぞ、終夜、阿頼耶老
ライラ殿は急ぎ逃げ込んだ、痕跡を隠す余力はない筈
草木の折れた箇所や叢の踏み荒し、その他異変を確認
成り損ないは先行組情報では何者かの管理下にある様子。行動パターンや分布を分析、可能なら仲間と共有
目星が付いたら敵影をドローン情報、「魔隼の双眸」を用い確認し廃墟へ
『ゴーストトーク』で情報を集め入口を特定・潜入
発見した際は怯えさせないよう、穏やかに話をしよう

どうしようにも居たたまれない…
オルガノン・セラフィムだって元は善の心の持ち主の人だったのに…!
自我を失い以前の自身なら絶対にしないであろう蹂躙をさせられているだなんて酷すぎる…
くっそ…今は天使化に憤りを感じてる場合じゃない…
天使化してしまったライラさんの保護最優先だよね…!
心を強く持て俺…!(頬を叩き気合を入れる)
『暗視ゴーグル』を装着し廃墟に潜入
徘徊する敵に見つからないように慎重に行動しつつ
【|心霊聴取《クレアオーディエンス》】をにてライラさんの居場所を尋ねる
発見したら驚かさないように自己紹介し保護しに来た旨を話す
あなたを探しに奴らがもっと増える可能性があります
なので一緒に来てくださいと諭す
●陰惨な星夜の下で
「どうしようにも居たたまれない……オルガノン・セラフィムだって元は善の心の持ち主の人だったのに……!」
『天使化』という病は残酷な選別を齎す。それは|日南《ひなみ》・カナタ(新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h01454)という『新人』には余りにも重たい事実を突き付けていた。
「汎神解剖機関職員として悲劇に立ち会う事は少なくない。だが、此度の陰惨さは群を抜くな……」
それは新人だから、というだけが免罪符にはならない程の陰惨さを感じ取っていたのは|狗狸塚《くりつか》・|澄夜《とうや》(天の伽枷・h00944)もまた、同じであった。
心を強く持つ為に頬を叩き気合を入れるカナタを見遣った澄夜は、予め廃墟に向けてサイコドローンを散開させていく――のだが。
「……既に仲間が何人か入っている筈なんだが」
その様子をカナタも覗き込めば、性懲りも無く、なのか。『なり損ない』達が数多吸い寄せられるように――或いは『誘導』されているかのような動きで廃墟に向かってきている。
「見つからないように、かつ最短で――行かなきゃならないです、ね!」
暗視ゴーグルを構えたカナタと共に、澄夜もまた、対話の準備を開始する――そう、この地に残されたインビジブルや痕跡達との対話を。
ふたりがインビジブルと対話しながらも、ドローンからの情報などを照らし合わせて得た『ライラの侵入ルート』は意外にも素直だった。
たまたま家具の多い部屋まだ潜り込めたので、そのまま隠れた、ようにしか見えぬ痕跡。流石に先刻までただの少女だった『天使』に、器用な芸当など難しいのだろう。
先行する能力者達の情報にも沿う様に、確実に、戦闘を回避しながら進んでいったふたりは――ひとつの衣装ダンスの前に辿り着いた。
建付けはぎりぎり無事、というしかないそのタンスの横開きの扉がゆっくりと開く。『天使』特有の金属感のある輝きの肉体はあれど……その振る舞いは、普通の少女であった。
「無事だろうか、助けに来たぞ」
澄夜がそう口火を切り、二人が身元を明かしたのであれば、その扉からゆっくり出てきたライラは、自分は大丈夫だ、と告げながら漸く出てきた。
「……まだ、あの化け物は来てないみたいだから」
それよりも貴方達は大丈夫? 怪我はない? と問いかけてくる辺りが、彼女が『天使』に成り果ててしまった所以なのだろう。見た所、擦り傷などが多少見えるのは寧ろ彼女の方だが、平静を装っている様に見えるのは、心配すべき他人が現れたからかもしれない。
(ふむ……やはり、か)
(やっぱり、自分の事はあんまり気にしてないみたいだなぁ……)
此処まで追い回されたにも関わらず、いざ他者が来ると他者の心配が優先されて出てきてしまうのは『性質』の様な物なのだろうか。二人は顔を見合わせて、頷いてしまうだろうか。
「あなたを探しに奴らがもっと増える可能性があります。急いで他の安全な――」
そうカナタが手を差し出したのだが……ライラはぴくり、と何か勘付いたかのような表情で二人を見つめる。
「ねぇ、もしかして……私達、囲まれてるのかしら……?」
その言葉に反応し、澄夜が廃墟上空のサイコドローンの映像を映すと――
……廃墟の周囲に、何者かの悪意を以て、『なり損ない』が群れようとしているのが見えたのである。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『オルガノン・セラフィム』

POW
捕食本能
【伸び縮みする爪】による牽制、【蠢くはらわた】による捕縛、【異様な開き方をする口】による強撃の連続攻撃を与える。
【伸び縮みする爪】による牽制、【蠢くはらわた】による捕縛、【異様な開き方をする口】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD
生存本能
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【黄金の生体機械】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【虹色の燐光】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【黄金の生体機械】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【虹色の燐光】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
WIZ
聖者本能
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【頭上に降り注がせた祝福】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【頭上に降り注がせた祝福】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
√汎神解剖機関 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
【お知らせ】
状況により廃墟外へ脱出する前提でシナリオが進行しております。
が、廃墟は既に「アマランス・フューリー」に勘付かれています。
廃墟を囲むようにして雪崩込んでくる『なり損ない』を一体でも多く撃破しながら、脱出して下さい。
ですが、行動状況に依っては、より危険な相手と遭遇する可能性があります。
以下はプレイング指針です。
・前章参加者
→廃墟『外』に居た方は廃墟外からスタートです。この場合、廃墟が『なり損ない』に囲まれている事に気づく形となります――
が、あまり長時間居座り続けると「アマランス・フューリー」に接敵を許す形になりますので、接敵を避け、味方の援護や合流を優先して下さい。
→廃墟『内』に居た方はライラを護衛する形でのスタートになります。
彼女と共に脱出する為、『なり損ない』をなるべく多く撃破して下さい。
当然ですが時間を掛けすぎると有力敵と接敵する確率が跳ね上がりますので、腰を据えて、などは考えない方が良いでしょう。
・新規参加者
基本的に廃墟『外』からスタートして下さい。
ただし、例外として、『天使』Ankerは『なり損ない』に追い立てられてきた状況も選ぶことが出来ます。
●仕組まれた包囲網
「即席の『奴隷』とはいえ、まぁこんな物だろう。
そしてより多くの『奴隷』を確保出来れば、より良いのだが……」
|羅紗《らしゃ》を纏い、星空の下を優雅に歩む女が見据えるのは、彼女が掌握しただろう『なり損ない』と、その『奴隷』によって近隣から誘導されてきたであろう『なり損ない』によって構成された余りにも悍ましい行進の絵図であった。
「『奴隷』を1つや2つ、喪った所で、生きた『天使』そのものという|新物質《ニューパワー》が手に入ると思えば、必要な犠牲だろう」
平静と語る女が紡いでいくのは――『天使』らしき少女が逃げ込んだであろう廃墟に対する包囲網。
「全ては――魔術塔が利益が為、極東よりの使者共に遅れを取る訳にはいかないのでな」
その女の名は――「アマランス・フューリー」。魔術塔に属する羅紗の魔術士である。

「出待ちのオーディエンスには事欠かない、ってわけねぇ……」
【行動】
天使のガールに付かず離れずの距離を保ちつつ、廃墟の外を目指しましょうか。
第六感の技能でセラフィム達のやって来る方向に見当を付けて、攻撃はオーラ防御、エネルギーバリアの技能を使って起動した隔絶結界でしのぐ。
集まってきたセラフィムには一曲披露してあげる。ナンバーは『吶喊・一直線乙女44マグナム』
歌唱、楽器演奏、全力魔法の技能を使って弾幕をお見舞いするわぁ。
移動速度も上がっているから、万一ガールに危険が及んでもフォローはしに行けるでしょう。
「出待ちも程々にしてくれないと、次のスケジュールに差し支えるのよねぇ……」
【アドリブ・連携歓迎】
●切り拓くは直情の純情
ぞろぞろと異形の存在が、正に『なり損ない』という言葉が相応しい存在が、廃墟の周囲を塞いでゆく。
「出待ちのオーディエンスには事欠かない、ってわけねぇ……」
油断をすれば雪崩込んできそうなこの状況下――|虚峰《ウロミネ》・サリィ(人間災厄『ウィッチ・ザ・ロマンシア』・h00411)は外周の状況と、それらの『狙い』であろう『天使』の少女を見遣る。
(……ガールへの直接の対応は保護した味方に任せましょ、問題は外周の『出待ち』。放置すればラブコールが襲ってくる。それは此方にしたら願い下げ)
時間は惜しい。腰を据えてナンバーを披露するにはあまりにも強大な存在の影がちらつく現状。そうなれば、走りながら『弾く』他ない。
「オーケー、先ずは道を開けましょう」
魔導弦のチューニングを魔導砲撃のスタイルに。真っ直ぐな乙女の言葉を語るには、時には矢継ぎ早に叩き付けるような言葉ではならないが故に。
「――貴方に言葉を叩き付けるわ」
出待ちで大挙する『|なり損ない《熱烈なファン》』に純白に輝く魔導弦が弾丸を叩き付けて行く。
恋する乙女が好きな男の子の『良い』を語るは止まらない。それは溢れた想いが成せる技。正にそれを表現するような魔力弾の勢いは『|機関銃《マシンガン》』である。
「――素敵な所を44個。溢れる想いは44倍」
雪崩込もうとすれば、乙女の言の葉が如き魔力弾が苛烈に『なり損ない』を貫いて、少しずつ脱出が為の足掛かりが拡がっていく。ナンバーを止めれば直ぐに埋まってしまうだろう。万が一演奏自体も止められぬように、隔絶結界を盾代わりに乙女の見守り手は全力の歌を『包囲の外』へと向ける。
「――そう、いつだって乙女は一直線!!!」
一先ず脱出が為の足掛かりを作り上げたサリィは、『天使』を保護した能力者達が移動を開始したのを見て追従を開始する。この程度で簡単に包囲が崩れるとは思わない。直ぐ様に再歌唱の準備を整えながら、ひとり呟く。
「出待ちも程々にしてくれないと、次のスケジュールに差し支えるのよねぇ……」
僅かながらに切り拓かれた脱出口の先――待っているのは更なる『出待ち』か、或いは……決死の脱出行が、始まろうとしていた。
🔵🔵🔴 成功

【捜査三課】
外にいるマリーさんとスマホで連絡を取り合いつつ安全な経路を探しつつ脱出を図る
廃墟の中の仲間達と連携を取りライラさんを守り進む
彼女には「貴女を狙って怪物達が襲ってくるのでこれを被って姿を隠してください」とオーバーコートを渡し頭から被って貰って視界を遮る
それは妹を怪物に殺されたばかりの彼女に戦う所を見せたくない為
自分も|オルガノン・セラフィム《元人間》とは戦いたくないという気持ちもある
でも…ここでやられるわけにはいかない…!
守らなきゃならないものがあるから!
会敵したら覚悟を決める
すぐに終わらせるから…!
震える手でハンマーを握り【全力振り】
敵が全快する前に撃破を目指す
*アドリブ歓迎

アドリブ、連携歓迎
囲まれつつある、か
カナタ殿がいる分心強いが……状況は刻一刻と悪化している様だな。兎に角先ずは離脱が先決か
ライラ殿、先ずは御身を第一に考えて欲しい。決して無理は為さらぬ様に、約束だ
引き続き「終夜」で敵位置を把握
建物への侵入者は『魂呼・管狐』達の霊力探査を元に割り出そう
得た情報はカナタ殿や仲間達、ライラ殿とも共有
連絡は私からも管狐やタブレットで行うが、捌く情報が多すぎる故にカナタ殿にもご協力を仰ごう
交戦を避け三課の仲間達と合流優先だな
戦闘時はライラ殿を私の体や羊神符の「オーラ防御」で庇いつつ、管狐や火車の妖焔、月白の爪撃の連携攻撃で再生を許さず破壊する
……せめて、姉君の仇は取ろう
●三課の脱出行Ⅰ
「……澄夜さん、廃墟自体が囲われていってるみたいです」
「囲まれつつある、か」
外部からの連絡を受け取り終えた|日南《ひなみ》・カナタ(新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h01454)は、ライラを共に保護した|狗狸塚《くりつか》・|澄夜《とうや》(天の伽枷・h00944)と共に状況を確認していく。
「一箇所、道を拓いてはくれているようで其処を活かすしかないが……」
澄夜が管狐の霊力探査等を全力で走らせる。見える状況は刻一刻と悪化している。寧ろまだ道が拓けているだけマトモだと思える。
だが、迫って来るものが迫ってくるものである。『なり損ない』の来歴を考えれば、見せまいと振る舞えど、カナタの手が震えるのも無理はない。『天使化』という病が引き起こした分断は、外部の作為により陰惨な事態へと悪化しているのだ。
……後にライラが事実を知ったのであれば、トラウマとなり得るだろう。
「ライラさん、貴女を狙って怪物達が襲ってくるので……」
カナタが懐から取り出すのはニュースでもよく見かけるようなオーバーコート。すっぽりと身の丈を隠しそうなサイズである。
「これを被って姿を隠してください」
「ライラ殿、先ずは御身を第一に考えて欲しい。決して無理は為さらぬ様に、約束だ」
二人の言葉を受けた後、やはり二人を心配する様に見据え。ぎゅっと袖を握る。
「……分かったわ。でも、危険なら直ぐに逃げて。ああいうものが何処まで追ってくるか分からないもの」
意を決した3人は廃墟から脱出する為に、僅かながらに出来た隙間に向かい、交戦を避けて突き進んでいく。
「……大丈夫? 無茶はしないで……!」
「してま、せん!!」
カナタは先導しながら突き進むが、コレは強がりだ。油断をすれば手に携えたハンマーがフルスイングの果てにすっぽ抜けてしまいそうな程に、本来ならば『相手をしたくない』存在なのだ。
(当然だろう、『仔』となった狂信者を相手取るのとは訳が違う。『なり損ない』は文字通り『天使』になり損なった無辜の人々なのだから――)
本来の部署は違えど先達として陰ながら見守りつつ進む澄夜には、ひとりの青年が必死に足掻く姿がひしひしと感じ取れた。それでも被害なく廃墟の外へ辿り着こうとしているのは、実際の所彼らの奮戦と索敵が多いに影響しているだろう。
そろそろ廃墟の外へ手が届く。だが、包囲されている事実を鑑みればまだまだ油断できないのも実情だ。
連絡を取り合う仲間の一人の術式が眼の前で行使されたのを見届けたとしても――長い長い夜は、まだ、終わらない。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

廃墟内で敵を撃破し、脱出路を確保するよ
可能なら積極的に周りの能力者と共闘
事前に廃墟内を人型で精査したから、道順の選定は任せて
天使ちゃんとは攻撃に巻き込まない程度に距離を取るけど
何かあれば庇える程度にはしておくね
霊力で形成するのは、刀
牽制の爪は斬り落とし
捕縛は霊力を宿した影で防御
こちらの動きさえ止められなければ
噛みつきなんてわかりやすい攻撃はそうそう当たるものじゃない
当たらない大振りは、隙と同じだよね
反撃で確実に倒していくよ
元は人間だった子たちに武器を向けるのもしのびないけど
今救える命と引き換えには、できないからね
包囲に穴の空いた隙を見逃さずに切り抜けるよ
本命が到着する前に、安全を確保しないとね

連携・アドリブ歓迎
「皆、少しでも早く脱出する為に強化をかけるよ」
そう言ってマグナドライバーにキーを装填。
【Cyclone!!】
「ちょっとくすぐったいよ」
マグナドライバーから音声が流れ、そう言ってからエレメンタルバレットで、仲間とライラにスピード強化と風のバリアによる強化を行う。
『なり損ない』は出来る限り排除するが、あくまで脱出を優先。
戦闘は黄金の生体機械による攻撃にカウンターで√能力の【旋風破砕】の零距離射撃を叩き込んだり、怪力に物を言わせて|組み合って《グラップル》、他の『なり損ない』へと投げ飛ばしたり、するよ。
ライラちゃんに対しては出来る限り優しく、逸れないように手を繋いで進むよ。
●風と冥闇に紛れて
ライラの居場所を特定していた星宮・レオナ(復讐の隼・h01547)は脱出の準備を整えた面々と早期に合流し、移動しながらも素早く援護の準備を整えていた。
「皆、少しでも早く脱出する為に強化をかけるよ」
【Cyclone!!】
マグナドライバーにキーを差し込んだ彼女は銃口を構える。少し驚かれそうな光景ではあるが、大丈夫、と微笑んで彼女は引き金を引くだろう。
「ちょっとくすぐったいよ」
そう、これはエレメンタルバレットによる『風』の力。少しばかりライラが被るオーバーコートがはためくが姿を隠すにはまだ十分過ぎる範囲だ。
ライラが万が一にでも『魔術塔』に捕捉されないように、彼女の手を取ってレオナは進む。
「ルート選びは問題ないけれど、物量が激しいね。これじゃ廃墟の外に出ても……」
そんな道中で|久瀬《くぜ》・|彰《あきら》(|宵深《ヨミ》に浴す|禍影《マガツカゲ》・h00869)は彼女達の脱出行の先導を請け負うような形で合流するだろう。
「此方でも探査はしたからルート選定は任せて。今は包囲網の穴をこじ開ける形にはなってるけれど、向こうの、特にまだ『操られている』気配もない個体は……勝手に雪崩込んでくるみたいだから」
……とは言え、『なり損ない』は元を正せば罪の無い人間が大多数だろう。狂信者でもない人間を、更なる望まぬ人生へ誘わぬ為にも『害さなければならない』という事実は、殊の外、残酷に突き刺さる物だ。
逃げれば逃げる程何処かから追ってくる気配。悍ましい咆哮か、悲嘆の叫びか、最早分からぬモノもこだまするが、それに真摯に向き合うように彰は霊力の刃で次々に斬り伏せてゆく。
理性を喪った存在故か、向こうの攻撃は思った以上に大振りである。返しの刃で安全を容易く確保できる程、偶然によって生じてしまった獣は、手練れには御しやすい存在であったのだ。
「元は人間だった子たちに武器を向けるのもしのびないけど……今救える命と引き換えには、できないからね」
放置すれば更に事態は悪化するのが見えている。その最中にも能力者を気遣おうとするライラにレオナは手を握り返しながら語り掛けるだろう。
「……大丈夫、ボクらが最後まで護るからね」
外で合流を待つ仲間の下へ向かう為、風と冥闇が素早く廃墟を駆け抜けていく。
……『本命』の姿が見えないことがまだ救いなのか。決死の脱出行は続いている。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

溪(h05219)と。後は捜査三課の面子と合流。
「チッ……ったく、わらわらわらわらと」
つまり、数が多いから逃げに徹しろって話だろ?
……|警視庁異能捜査官《カミガリ》ってのはそういうの得意なんだ。相手が悪かったな。
「……なんだ、アンタらも居たのか。なら付き合え。……溪、頼んだ。突破すんぞ。」
廃墟内に居た同僚共の姿を認め、同行を促しながら、|分心:有藤・溪《エニグマ・ウドウ・ケイ》を使用し、相棒を呼び出す。
あとは溪の|霊震《サイコクエイク》で足止めされているオルガノン・セラフィムへと贈賄コンビネーションを使用する。
「……あいよ」
溪の懐から取り出された21万円の賄賂を受け取り、汚職弾丸で攻撃していく。
|霊震《サイコクエイク》の対象は広い。纏めて掃除するには丁度いい。

浩一(h03307)と。
天使……ねぇ。これは確かに浩一は歯痒い思いをしそうな案件だ。悪態を吐こうが、根は真摯だからね。
おっと、お呼びがかかった。
「まったく、死んでまで働かされるとは、僕の相棒は人遣いが荒いね」
彼の要請に応え、今日も僕は|有藤・溪《ウドウ・ケイ》としての役割を果たす。そう、契約通りだ。それに……彼の心が早々に壊れてしまうのも面白くはない。
|霊震《サイコクエイク》を使って、震度7の振動で半径21m以内のオルガノン・セラフィムを攻撃する。
……元々契約で僕が彼に与えた力だ。上手く扱えない訳がない。
「浩一、いつものだ」
渋沢栄一を丁度21枚、懐から取り出し投げ渡してやる。
●三課の脱出行Ⅱ
「チッ……ったく、わらわらわらわらと」
明らかに交戦が行われている気配がする。それと同時に、そうでない方向からも『なり損ない』が雪崩込んでくる感覚。|神谷《かみや》・|浩一《ひろかず》(人間(√汎神解剖機関)の|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h03307)は思わず舌打ちをする。
余りにも数が多すぎる故に、『逃げに徹さざるを得ない』。幸いにもそれは|警視庁異能捜査官《カミガリ》の得意分野でもある。相手が悪かったな、と此処を見ているか分からぬ『魔術塔』へと悪態をつきながら、浩一は最短で脱出班と合流した。
オーバーコートに隠された下、少女であろうものの存在の腕は星空を思わせるような金属の光沢に満ちている。
「……なんだ、アンタらも居たのか。なら付き合え。……溪、頼んだ。突破すんぞ」
同僚らがメインの護衛と言うならば、コレ程までに話が早い事は無いだろう。同時に彼が行使するのは降霊術――という生易しい物でもない。
「まったく、死んでまで働かされるとは、僕の相棒は人遣いが荒いね」
|有藤《うどう》・|溪《けい》(神谷・浩一のAnkerの警察官・h05219)を名乗り、その面を被る『悪魔』はやれやれと、肩を竦める。
そう、これは降霊術などではない。契約の果てに生まれた、ただの『|降霊ごっこ《召喚》』。
悪魔はひとりこの状況を俯瞰する。ああ、|浩一《契約者》のことだ。口では悪態を吐こうが、根が真摯なのは誰よりも理解している。だからこそ、契約に付き合って、『有藤・溪』という役割を演じるのだ。
だって、契約者の心が早々に壊れてしまうなど、この『悪魔』に取って其れ程に面白くない事も無いだろう。
「仕方ないな、足止め位は手伝ってあげよう。……浩一、いつものだ」
渋沢栄一が21枚。こんな物が何処ぞから出てくるのだろう。『悪魔』に出所を問うては行けないだろうが、浩一はいつものように、極自然に受け取る。
「……あいよ」
『悪魔』はいとも簡単に|霊震《サイコクエイク》を行使する。それはそうだ。そもそも、浩一の力は『悪魔』より渡された物が含まれている。|元の持ち主《・・・・・》が扱えぬ道理など存在しない。相対する『なり損ない』達が一瞬にして痙攣を起こしたかのような激しい『震動』にて足を止めていく。
そうなれば、『悪魔』から手渡された汚れた金が意味を成すのであろう。浩一の放つ汚職弾丸が次々に『なり損ない』を貫いては一人、また一人と数を減らしていく。
まるで生前からそうであったかのような華麗なコンビネーションが繰り広げられる中、『悪魔』はただひとり役割を演じ続けながら、この素晴らしい『物語』を観劇していることだろう。
歯痒い思いをした契約者が、どの様にこの窮地を最後まで切り抜けるのか――
『有藤・溪』の顔で軽く微笑んだその眼差しに、果たして|浩一《契約者》が気付いているのかは、分からないのだが。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

【八曲署】で参加。
「うーん、これは意図的に廃墟を包囲してますね。中にいる皆さんにこの事を連絡しておきましょう。」
スマホを取り出して、天使さんと合流しているであろう仲間にメッセージを送る。
周囲を確認する為に廃墟の上空まで浮遊して、周辺の状況を確認する。
今から中に入って合流するのも効率が悪そうだし、どこから外に出てくるのか分かれば、そのタイミングで皆と合流したほうが良さそうね。
(外に出るタイミングと場所を教えてください。)とメッセージを送り、タイミングを計る。
そのタイミングになったらLuminous Groveを周辺の敵を行動不能にするために使い、無力化を狙う。

【POW】
廃墟近くで見えにくい位置に陣を敷き、空中に『サテライトバウンサー』を装着した『スナイプスポッター』を複数機展開して相手の攻撃射程外から跳弾と遠距離射撃による殲滅を狙います(使用技能:スナイパー、弾道計算、跳弾、クイックドロウ、隠密)
また、近くに他の√能力者がいる場合は援護射撃を行いより有利に動けるようにします。
仮にこちらの姿を相手が捕捉した場合、√能力「反射狙撃作用」によるカウンターと再隠密を狙います。(使用技能:スナイパー、弾道計算、隠密)
一定数『なり損ない』がいなくなり移動可能になったと判断した場合は速やかにその場を去り、味方と合流いたします(使用技能:ダッシュ、隠密)
●三課の脱出行……と、狙撃手の天眼
少しだけ時は遡る。
「うーん、これは意図的に廃墟を包囲してますね。中にいる皆さんにこの事を連絡しておきましょう」
マリー・エルデフェイ(静穏の祈り手・h03135)はぞろぞろと集結しつつある『なり損ない』の姿を認め、急ぎ中で『天使』と合流したであろう仲間と連絡を繋ぐ。
(中に今から向かうのは効率が悪いわね、状況を俯瞰して――『出てくる』援護をしないと)
そう判断して飛び上がった彼女が見下ろす光景――澄み切った夜空の眼下は悍ましい。内部から脱出を試みる味方は無事に合流を進めているだろうが、攻撃を行っていない箇所からは次々に『なり損ない』が雪崩込んでいくのだ。
「……不味いわね、中の味方と連絡取ってる人はいるけど、無策だと囲われる」
一方で最初から廃墟外部からの援護に徹していた|東雲《しののめ》・グレイ(酷薄なる灰の狙撃手・h01625)もこの状況を観測していた。
喜ぶべきは内部の味方が的確に突破口を切り拓けているという事実が彼女からも観測出来ていたという事である。
「なら……私のやる事は変わらない。狙撃手が担うべき役割なんて、分かりきってる」
そう独りごちたグレイは改めて『スナイプスポッター』を展開する。状況を視認しながら、『なり損ない』を間引きしていけば、内部組の負担が軽減されるだろうのは、自然と理解出来たからだ。
(けれど、こんなに意図的に群れを集めるのは難しい。……誰か『トレイン』でもしてる?)
グレイの予感は、正しかった。まだ、彼女は見つかっては居ないものの、より『危険な存在』を本能的に感じ取ったのか、ドローンを一基だけ廃墟の外へと派遣する。
――|羅紗《らしゃ》を纏い、優美に歩む女の姿。傍らに腹心らしき女も見えるが、明確に危険を感じ取るのは、羅紗を纏う女魔術士の方である。
「……不味い、あの女、確実に此方に向かってる。急いで切り抜けないと全員が不味い」
グレイが見た光景はマリーも観測し得る事となった。駆け足などしていないのは、此方に対して明確な優位を敷いているという慢心なのか、それとも、『なり損ない』をより多く奴隷化する為なのか。
『外に出るタイミングと場所を教えてください』
内部の進捗を受けたマリーは、観測した情報からの焦りを少し滲ませながらも、冷静であろうと、メッセージを送る。
此処さえ切り抜けられれば後は距離を稼ぐだけの筈だ。
返答を受け取った彼女が廃墟の直ぐ側に敷くのは神聖なる光の森の聖域。争いを許さぬそれは、治癒を施す代わりに『存在を束縛する』。
光溢れるその術式の中へ躍り出た内部組を追うように、マリーは飛んでいき、グレイもソレに追従する様に脱出していく。
……死地は一先ず切り抜けたが、『なり損ない』はまだ追ってくる。安全地帯へ辿り着くまで、気が遠くなりそうなほど、能力者達は走り続けていた。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功

オルガノン……多勢の中に敵の駒が紛れているのが厄介ですね
先んじられた分の不利を巻き返すには
多少のリスクも止む無しでしょう
装備[竜眼]の強化に特化して【覇刻】起動し戦場全体を俯瞰
最優先はライラさんを保護した味方の発見と合流
次点で敵首魁の支配下にあるオルガノンを見抜き
群れ全体の動きの把握、及び撃破の効率化
最善はリアルタイムの俯瞰を維持し味方に共有する事ですが……
アマランスが逆探知、或いは何らかの遠隔攻撃を
仕掛けてくるなら寧ろ好都合
《第六感》で察知しアマランスも俯瞰対象である事から【導刻】
予め仕込んだ妨害術式で|暴発《ファンブル》を強制
追撃前に俯瞰をカットする隙を作りつつ
オルガノン制御の攪乱も出来れば御の字ですね
この場合敵の配置等は
俯瞰を切るまでに得られた情報を参考とする他ありませんが
竜眼強化に回すリソースを再配分し範囲も狭める事で
[飛葬殲刃][至斬傑牙]の強化率を向上
オルガノンの撃破ペース自体を上げる事で補いましょう
敵√能力は適宜[断界絶覇]《受け流し》で対応
一体一体確実に斬り伏せ処理します
●一手限りの策謀
「……フォローは必要なさそうです、が」
廃墟に辿り着いたディラン・ヴァルフリート(|虚義の勇者《エンプティ》・h00631)が見た光景は、廃墟を包囲するかのように殺到している『なり損ない』の大群と、その中から脱出し、『天使』と恐らく逃げているだろう能力者達という構図であった。
だが、彼が最も俯瞰できる状況であるからこそ、同時に迫る脅威も『見る』事が出来ていた。
「オルガノン……多勢の中に敵の駒が紛れているのが厄介ですね」
そして、視界の縁には『魔術塔』からの刺客の姿。既に奴隷と化している個体が紛れているとは言え、放置すればより多くの『なり損ない』が戦力としてあちらに渡る事となる。それは、出来る限り避けたい盤面であることは明白であった。
「……已むを得ませんね」
そう一人呟いて、彼はこの廃墟周辺に蠢く『なり損ない』全てに狙いを定める。
俯瞰する天眼が如き視界が故に成立する蹂躙という、初撃ですら牽制と言うにはあまりにも度を超えた一撃が戦場に降り注いだ。
此処まで派手に事を起こしたのなら、『|魔術塔《あちら》』も動かざるを得ない。視界の端、羅紗の神秘たる力を行使しようとする魔術士の姿が見えたのも当然の帰結だろう。
だが――
「……一手、潰しました」
どこかで、魔力が不本意に爆ぜる音がしただろうか。
俯瞰していた事による視界は、当然、視界の端に居たその魔術士を捉えている。
ディランは、その視界を以て、彼女に対して『|致命的な失敗《ファンブル》』を捩じ込んだのである。
優美なる魔術士は足を止め、何処かを真っ直ぐに見つめている。
口元が何かを呟くようにも見えたが。それ以上は分からない。
だが、明確に分かることがひとつ。
「これ以上……干渉しては、徒に相手を煽る……だけですね」
眼前まで迫った味方の脱出行にディランも合流し、此処で能力者達が全員揃った形での避難行は完成する。
だが、『魔術塔』の魔術士は明確に此方の存在に勘付いただろう。
あちらがどう動くか――それはまだ、分からず。夜は更けてゆく。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 冒険 『あべこべでさかさまで不安定』

POW
自我を見失わぬように、気を確かに持つ。
SPD
己を繋ぎ留める、何らかのアイテムや記憶に縋る。
WIZ
不条理な影響に対して、対抗手段を考える。
√汎神解剖機関 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
●古き魔術の置き土産
「――してやられた、か」
羅紗に織り込まれた『古き呪文』の行使に失敗させられたという事実を以て、アマランス・フューリーは深追いを止め、別の術式を構え始める。
「如何なさいますか、今からでも追撃を――」
「そんなことより、残存している『なり損ない』を順次奴隷化しろ。……最も、此処まで派手に潰されては、機能している個体が残っているかも分からないがな」
傍らに侍っていた女魔術師を制し、彼女は思索する。
不覚を取った訳ではない。ただ、想定以上の状況が起きた、というだけなのだ。
「極東の組織如きに遅れを取る『魔術塔』ではない、というのは肌で感じ取って貰わねばな」
そう呟くと――アマランス・フューリーの構えていた別の術式が完成する。
「お前達の行く先、よもや簡単に『逃げれる』と思うまい」
同時刻、廃墟から離れ、山中の森の中を進んでいる筈の能力者達は――
進めども進めども、延々と続く星空が下の森の景色に取り込まれ……
知らず知らずの内に『幻惑』の魔術の檻の中に侵入してしまっていたのであった。

捜査三課の皆さんと。
ずっと同じ景色が続いてる……。うーん、これは不味いかも?
変な魔力の気配も感じるし、これは何かしらの魔術の術中に入っちゃってるのかしら。
けれど、こういう時こそ【神聖竜詠唱】が有効に使えるはず!
「神聖竜よ、この魔術から抜け出す方法を教えて……。」
【神聖竜詠唱】で獲た情報を仲間の皆に共有し脱出を目指します。
もう一息、ここを突破できればライラさんの安全も確保できるはず。
戦闘では役に立てない分、こういうところでは役に立てるように頑張らないと!

【捜査三課】
なんとか廃墟から出れたと思ったのに…な、なんじゃこりゃぁ
アマランス・フィーリーの悪あがきか!
目の前の明らかにおかしい光景に驚きつつも、だったら尚のことライラさんを連れて絶対ここを抜け出さねばと強く思う
幸い皆合流出来たしね!力と知恵を合わせて脱出しよう!
とは言いつつ…俺には何かこの術を打ち破る画期的な√能力がない…
それぞれ皆が自身の持つ√能力などで打破しようとしてる様を見て歯がゆい思い
ん…?打破…する? も、もしかして…!
施されている術が√能力なら俺の右手で…!
確信はないけど行く手を遮るものに右手を触れ【ルートブレイカー】を試す
これで打ち消す事が出来たらその√能力を使いつつ脱出を図る
●帳を裂き、現の星空へと
「ずっと同じ景色が続いてる……。うーん、これは不味いかも?」
ライラと共に森の中を進んでいた三課の刑事達であるが、そんな最中違和感に声を上げたのはマリー・エルデフェイ(静穏の祈り手・h03135)であった。
え? となり、|日南《ひなみ》・カナタ(新人|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h01454)はその場を全力疾走して離れてみるものの――
「なんとか廃墟から出れたと思ったのに…な、なんじゃこりゃぁ!!」
『何故か』後方から能力者達と合流する形となり絶叫する事となる。
「アマランス・フィーリーの悪あがきか!」
その言葉には皆が納得するしか無い。先程から不思議な事に同じ場所にぐるぐる留まってしまっているような感覚すらあるのだから。それは先程カナタが『身を以て』証明してしまったのだが……。
「変な魔力の気配も感じるし、これは何かしらの魔術の術中に入っちゃってるのかしら」
マリーが少し考察をするが、実際にそう考えるのが順当という物だろう。それ故に彼女はこの状況で一番有用そうな手段も持ち合わせていた。
「こんな時こそ……神聖竜よ、この魔術から抜け出す方法を教えて……」
彼女が巫女として|神聖竜《カミ》に問い掛けるならば、敬虔なる巫女にそれは答えるだろう……
「――『帳裂き、現の星空へと向かえ』?」
神聖竜の返した|答え《ヒント》は詩的にも思える物であった。
その答えにうんうんと唸りながらも解釈をしようとする姿に、ライラが声を掛ける。
「帳って……私達が閉じ込められてる、此処のことなんじゃないかしら」
それにしては、なんだか、壁に覆われている、みたいな言い方に聞こえるけど……と呟いて、彼女もうんうんと唸るのに混ざっていく。
「此処の状況を打破できる何かがあれば――打破?」
そんな状況下で試行錯誤しようとする皆の姿を見たカナタがはたと思いつき、右手を伸ばす……すると、だ。
『森の景色の一部が燃え尽きて』、奥から星明かりが漏れてきているのだ。
「これです! 帳を裂いたから『現実の星空』が見えてきてるんです!!」
つまり、幻惑の森が√能力の一部として打ち消された結果、この様な状況が生まれたのだ。
「じゃあ……皆さんが、この『帳』を裂き続ければ……現実の星空に、戻れる?」
ライラが門外ながらも状況から答えを噛み砕いて能力者達に伝える。
文字通りの『突破口』のひとつを見出したカナタは先導する様に燃え尽きた森の『先』の景色へと向かっていく。
「……簡単には辿り着けないかもしれないですが、『突破口』が見えてる間なら此方のもんですよ!」
幻惑を消去しようとする能力者、外より術を再び整えようとするアマランス・フューリー。……水面下の戦いが始まろうとしていた。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功

こんな仕掛けまで用意してくれてるなんて
『羅紗の魔術塔』なんて仰々しい名前をとるだけあって
アフターケアが行き届いた組織だねぇ
ま、ご本人が現れないってことは
相手の思惑は潰せたんだろうけどー……
あぁ、大丈夫だよ天使ちゃん
このくらいどうってことない
すぐ安全なところまで連れていくからね、安心して
とりあえず、ここを出る方法を探さないと
まぁ、魔術の影響だって言うなら
仕掛けがあるのが定番だよね
何か怪しいものを仕掛けられた形跡がないかは
……ま、その辺の方々に聞いてみようか
霊力を分け与えた子たちに
何か変わったことや変なものがないか聞いてみるよ
正しい道……まではわかんないかもしれないけど
何か有益な話が聞ければいいね
●檻が齎す怪奇
「こんな仕掛けまで用意してくれてるなんて、『羅紗の魔術塔』なんて仰々しい名前をとるだけあってアフターケアが行き届いた組織だねぇ」
|久瀬《くぜ》・|彰《あきら》(|宵深《ヨミ》に浴す|禍影《マガツカゲ》・h00869)は能力者達の置かれた現況を改めて見回す。
不自然な空間の連続はまるでその一帯を正に檻の如く切り取った様に感じるだろう。
この様な魔術の出所は果たして、と思う所もあるかもしれないが、『奴隷』を捕縛する為の物の応用――と考えれば、レパートリーのひとつと言えるのかもしれない。
「外の人にも気付かれてしまったのかしら……直ぐ穴も塞がってしまったわ」
「あぁ、大丈夫だよ天使ちゃん。このくらいどうってことない」
魔術的な細工がされた事は他の能力者の行動により判明した。後はライラを可能な限り最短で安全な箇所まで連れて行くまで、である。
(なら、後はひとつでも多く手掛かりを……ということになるかな)
魔術には|仕掛け《タネ》があるのが定番である。
状況としては√能力で閉じ込められているような状況だとは判明しているが、どんな細工かの情報はひとつでも欲しい所だろう。
そう思案して、彰は周囲のインビジブルに『実体』を分け与えていく。
完全な造形とは言い難いが、人々の姿を取っていくのは此処に何があったのかは少し考える所もあるかも知れないが……『彼ら』は告げる。
この『檻』自体は即席の産物である。
(どうやらついさっき掛けられた類のようである)
そしてカーテンの様な『部分』が存在する、と。
「カーテン、おそらくだけど其処で『反対側』に位置を繋いでしまうような状態になっているんだろうね」
気付かずに歩けば同じ場所に辿り着いてしまうが、本来の空間の『端』にさえ気づけば、それを破るのが近道になりえるのだと。
「後は空間の『カーテン』を破る手段……か。無理矢理『消す』以外にもあれば助かるのだけれど……」
出る為の材料は少しづつ揃い始めている。
だが――『術者』は強大な能力者であることを忘れてはならない。
一瞬の油断こそが命運を左右するのだ。
🔵🔵🔴 成功

ふむ……今後も続く戦いに備え、
搦め手の情報と……攻略のノウハウが得られる事は、収穫ですね
無論、追撃への備えも絶やさぬように。
合流すればライラさん含む味方に纏めて【仁刻】付与
単純な身体性能強化による消耗の緩和に加え
冷静な思考の増幅で対応力の底上げを図ります
《第六感》を研ぎ澄ませ警戒を欠かさず
概念干渉の可能な装備[至斬傑牙][断界絶覇]を矛と盾として
降り掛かる障害に対処しましょう
折を見て最初に回収した形見をライラさんに渡し励まし代わりに。
「妹さんも……貴女の無事を、願う筈です」
善人というものが往々にして他者の幸福を願い
他者の想いに応えようと奮起する事は知っています
……未だ、理解の及ばぬ心理ですが。
●未だ理解の及ばぬ隔たり
「ふむ……今後も続く戦いに備え、搦め手の情報と……攻略のノウハウが得られる事は、収穫ですね」
幻惑の檻の中でも平静に状況を俯瞰『出来てしまう』ディラン・ヴァルフリート
(|虚義の勇者《エンプティ》・h00631)は、この状況下で必要な物を自然と感じ取っていた。
「この魔術の目的は――恐らく対象を弱らせる物、擬似的な『遭難』下に置くことで、肉体的にも精神的にも疲弊させ、『捕縛』の一助とする……という所、ですか」
無論、『術者』が本気を出せばこの様な檻など『児戯』にも等しいのかもしれないが、直接に狙いを定めて来ない以上は、まだ能力者達に猶予はある。
そんな状況下への備えを重んじたディランが行使するものこそ、【|仁刻:正道に捧ぐ讃歌《ロア・イデアール》】。
人々の善心を信ずるが故に、人々の『善』を良き方向へと導くもの。
……一歩間違えればパニックになり得たこの環境に置いてはこの上無い下支えだろう。
すみません、この様な状況で渡すのも……と前置きはするが、そんな最中に彼が懐からライラへと差し出したのはひとつの『真白かった』リボンである。
「……あの子の、リボン?」
「……回収できる限界が此方でした」
妹の髪留め代わりに使われていたリボンは少し血が滲んでいる……が。
それ以外の物品を、と考えるには余りにも損壊が激しかった現実がある。
「妹さんも……貴女の無事を、願う筈です」
「貴方のためにも、貴方のような人をなるべく減らす為にも。……お姉ちゃん、頑張るからね」
ぎゅうと遺品を握りしめて呟く彼女の姿に思う所はあれど、まだまだ理解が足りないのは……自身の被造理由故だろうか。
『善人』という『役』を演じる者は、真なる『善』を眺めて溜息のような物を吐いた。
🔵🔵🔵 大成功

【SPD】
【アドリブ・連携歓迎】
走れば走るほど、出口から遠ざかっていくとは……アマランスの奴め、余計なことを……。
でも、こういう時どうすればいいかはは知っているんだよな。
「逆に走る」とか「廃墟の方角に向かう」とか、「逆に動かない」とかだよな。まぁ色々試させてもらうよ。
私はそこまで頭いい方じゃないからな、具体的な脱出方法考えるのは他の人に任せた。
仮に「なり損ない」の残りが出現した場合は√能力「鋼鉄球搭載自爆機雷」を展開し狙撃がてら足止めさせてもらうよ。
(使用技能:スナイパー・弾道計算・クイックドロウ)
●時には不動たれ
「走れば走るほど、出口から遠ざかっていくとは……アマランスの奴め、余計なことを……」
|東雲《しののめ》・グレイ(酷薄なる灰の狙撃手・h01625)はこの状況下で可能な範囲の算段を立て始めていた。
この手の脱出方法は基本的に『一般的な』解法とは得てして別方向の部分が大きいのだが、現状出揃っている情報はそれなりにある。
「……と、今までの情報だと『とある地点』で反対側に転移させられるような構造になっているって話だったか」
やたらに動き回ればそれこそ相手の術中に嵌るのはグレイにも分かりきったことである。
「この内私でも試せそうな手段は――廃墟の方向は逆にナシかな。ループしてるみたいだし、なら『動かず』に状況を見据えるのが正しいか」
そういうと彼女は狙撃手としての陣を敷く。
「後は……ドローンの挙動を上手く使えるか、だね。幸い『なり損ない』は巻き込まれていない様だし」
グレイが試したのは『対になる方向へ同時にドローンを飛ばすこと』である。
魔術で囲われた範囲を動かずに実測した能力者は此処まででは居ない。試しに四方へ全く同時に、同じ速度でドローンを飛ばしたならば……
――ある一点で対となるように、反対側同士に存在していたドローンが『交差』する。
「……ビンゴ、やってみるもんだな。これが魔術の『カーテン』って奴か」
打ち破るべき障壁の位置が見えたならば後は押し通るのみ――
脱出への突破口が少しづつ能力者達の物になり始めていた。
🔵🔵🔴 成功

「ふうん……行けども行けども森も星も変わらない……してやられたわねぇ」
【行動】
第六感の技能を使用。天使のガールや√能力者達との合流を目指して動きましょ。この幻惑の領域内にいるならそう離れてはいないはず。
合流したなら脱出よぉ。
偽りの空、偽りの星、打ち破るなら本物の星の力を借りましょう。
歌唱、楽器演奏、全力魔法の技能を使用。仕上げのナンバーは『恒陣・乙女を導く超三角』。
星の力を借り受けるということは星と繋がり(ライン)ができるということ。
本物の大三角の方向へ繋がりを辿れば脱出できるはずよぉ。
「さあ、もう一度大三角を見に行きましょ?」
【アドリブ・連携歓迎】

羅紗魔術……なんてものは、俺らはまだ良く知らない。だが……逆の事はあちらさんにも言える筈だ。接触して間もないだろうからな。
……|霊震《サイコクエイク》、こいつは放った霊能振動波で生物、非生物問わず、半径レベルm内の指定した全対象にのみ、最大で震度7相当の震動を与え続ける物だ。なら……幻惑の魔術でさえ、例外じゃねぇだろ?
対象範囲内の幻惑の魔術を、震度7相当の振動でぶち壊していく。
この程度で日本の公務員止められると思って貰っちゃ困るんだよ。
●本物の|大三角《トライアングル》へ向かう歌
「ふうん……行けども行けども森も星も変わらない……してやられたわねぇ」
|虚峰《ウロミネ》・サリィ(人間災厄『ウィッチ・ザ・ロマンシア』・h00411)がライラ達に追い付いた頃には、彼女自身も事態を把握する所であった。
景色が貼り付けたように変わらず、それでいて、外へ動こうとすれば反対へと『移動』しているという、単純ながらに内部からすれば厄介な時間稼ぎ。
|神谷《かみや》・|浩一《ひろかず》(人間(√汎神解剖機関)の|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h03307)はその状況下でも相手を出し抜けるであろう一点を見出していた。
「羅紗魔術……なんてものは、俺らはまだ良く知らない。だが……逆の事はあちらさんにも言える筈だ」
「そうねぇ、たぶん『解剖機関』の人間だってアタリが付いてるくらいでしょう」
情報のアドバンテージは互いに同量であるならば、その間に向こうが知らぬ『術』で抜け出してしまえば良いのだと。
「それに、『壊せない』って保証はどこにもねぇのはさっき分かったしな。積極的に壊してやろうじゃねぇか」
浩一がそう告げたならば、サリィは再びチューニングを合わせ、演奏の準備を整える。
「それなら……偽りの星、偽りの空を打ち破る為に『本物の星』の力を借りましょう」
チューニングを終えたサリィが奏で始めるナンバーは【|恒陣・乙女を導く超三角《リードオブトライアングル》】。正しく『|天使《ライラ》』を導く為に用意されたような楽曲である。
『――乙女よどうか夜空を見上げて』
空に強い輝きが生まれる。貼り付けたような夜空の世界に『本物』が現れようと。
『琴の音色で祝福を。白き翼の導きを。猛き翼の先触れを』
本来の澄んだ星空に呼び掛ける様に、サリィの歌が空間の中にこだまする。
呼び掛けに答える様に、星空から虚飾がだんだんと剥がれていこうとするが、『術者』の抵抗だろう物は確かに見え隠れしている。
『貴女の道にどうか加護よあれ』
サリィの演奏が呼び出す『帳』への攻撃は内部からは全ては見えない物だったかもしれないが、確かに効力を発揮している。
それを好機と見た浩一は、大三角の星々への『|繋がり《ライン》』を喚起する演奏に合わせ、外周に向けて『霊震』を放つ。
かの霊震は一般的な力ではなく、ともすれば『怪異』と分類されるような物からの授かりものではあるのだが――この状況下でそれを見抜ける者が果たして居ただろうか。
その結果、見えたのは――欺瞞でもなんでもない。
本来の星明かりが沢山の『隙間』から見えている光景。
「――良い感じに『ほぐれた』んじゃないかしらぁ?」
「おう、向こうの自慢の幻惑もズタズタになってやがる……後は『もう一押し』が要るな」
外より本物の『星』を繋ぎ、内より帳すらも揺らす強烈な震動を与え続けた結果、結界の如き様相を示していた幻惑の檻の形は崩れ始めていた。
乙女を導く『災厄』は『天使』へ少し微笑んで、導き手が如く語り掛ける。
「さあ、もう一度大三角を見に行きましょ?」
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功

アドリブ・連携歓迎
ライラちゃんが不安にならない様に手を繋いで進むけど、景色が変わらないのは、どうも敵の魔術のせいらしい。
この状況がアマランスの√能力による物なら、ルートブレイカーの力で破る事は可能な筈。
それにこっちが幻を見せられてるんじゃなく、別の空間に閉じ込められてるんなら、ミスティカ・キーの【封印を解く】力で破る補助も出来るかもしれない。
鍵は閉じるだけでなく、閉じられたものを開ける為にあるんだから。
●偽りの天蓋が砕ける時
「……さて、これだけ内側からやっても『まだ』なんだから、とんでもない魔術だね」
「空が割れて――隙間から、星明かりが見える……!?」
偽りの天蓋が罅割れていく。だが、景色の不変其の物からは脱したわけではない。
それでも、超常の最中に投げ込まれて一日も経っていない|少女《ライラ》は驚愕の声を漏らすが……
「――大丈夫、此処から出ようか」
彼女の内心を慮る様に、星宮・レオナ(復讐の隼・h01547)はライラの手を握り返す。
此処までの数時間で彼女はどれ程の日常を喪ったのだろうか。
「……ええ、でも、貴方も無茶はしないで」
ただ、それでも尚、彼女の『善性』のみは不変だった。
「大丈夫、閉じられた物を開けるだけだから」
レオナはミスティカ・キーを右手で握りしめて、空に翳す。
「鍵はね、閉じるだけじゃない――開ける為の物だ。見せてあげるよ、アマランス・フューリー」
錠を開場するかのような動作で、魔術の檻を『消去』する。
封印は解かれる。内側から開かれる勢いに、最早抵抗する術は無いのだろう。
……割れた『檻』の天蓋が、崩れ落ちる。
――こうして、能力者達の前に正しい星空が帰ってきたのだ。
●天使を慮る先は
解放された瞬間、能力者達は脱兎の如く山中を駆け抜ける。
檻が破られたとならば、『魔術塔』が追い掛けて来ない保証も無いわけだ。
必死に駆け抜けて、駆け抜けて、それでも尚、追ってくる気配が無い事に安堵して、全員が腰を降ろした。
「……皆、私の為なんかに、此処まで……色々あったけど、もう、大丈夫……なのよね?」
そう首を傾げるライラに能力者の誰かが肯定を返した事だろう。
後は解剖機関の協力を仰ぐなり、適切な対処を取れば彼女の安全は一先ず保証されるだろう。
「けれど……胸騒ぎがするの。今日の事は私だけじゃない、もっと誰かが困ってるような気がして」
妹の遺品であるリボンを握り締めながら、ライラは能力者達に告げる。
「だから、その人達も助けてあげて欲しいの……そうじゃないと、きっと、妹も報われないわ」
彼女は無意識だろうが、その先に広がる町並みを――見つめていた。
🔵🔵🔴 成功