0
駆ける、駆ける
「はっ、は……!」
私は走る。
鏡を見たとき、呆然とした。様変わりした私の姿に。それから、それから――。
よくわからない化け物に、怪しい人達に、追いかけられるようになって。
このままじゃ、きっと家族に迷惑をかけちゃうと思うから、私は逃げ出した。
「……どうしよう……」
ふ、と息を吐く。
――何がなんだかわからない。これじゃ危ないことだけは、なんとなく分かっている。
誰か助けてくれないだろうか。誰か、誰か――……。
●
写・処(ヴィジョン・マスター・h00196)は眉を潜めていた。
「――……危ない方がいます。『天使』、の方です」
『オルガノン・セラフィム』、『羅紗の魔術塔』――その他に、怪異――……天使を狙う者はごまんといる。
その中でも一人の少女が追い詰められていると、写は予知した。
「早急な救助が必要です。……どうか、頼みます」
写は手短に説明を終えると、少女の居る位置を伝えた。
●
「……ここまでくれば……きゃ……!?」
目の前に現れた人だかりに、少女は数歩引く。
「――あ、あの」
「『天使』、だな」
――天使。私は、そう呼ばれる存在なのか。
「我々の『資源』として、連れていかせてもらおうか――」
ぞわ、と怖気が立った。……このままだと、私はどうなっちゃうの?
恐怖で足がすくむ、どうすればいいかわからない。
誰か助けて、誰か、誰か――!
声にならない悲鳴が、そして切なる願いを受け取る者は、今はどこに。
これまでのお話
マスターより

tkです!
今回は羅紗の魔術塔、オルガノン・セラフィムという2勢力に追われている天使の方々の保護、また敵対勢力の掃討がお仕事となります。
頑張って彼らを救い出しましょう!
第1章は連邦怪異収容局に狙われている少女の救助となります。
55
第1章 集団戦 『FBPC機動部隊『ウェットワーカーズ』』

POW
パワーグローブ
【パワーグローブ】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【腕】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
【パワーグローブ】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【腕】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
SPD
ドーピングアタック
【薬物によって増幅された反射神経】による高命中率の近接攻撃を行う。攻撃後に「片目・片腕・片脚・腹部・背中・皮膚」のうち一部位を破壊すれば、即座に再行動できる。
【薬物によって増幅された反射神経】による高命中率の近接攻撃を行う。攻撃後に「片目・片腕・片脚・腹部・背中・皮膚」のうち一部位を破壊すれば、即座に再行動できる。
WIZ
シリンジシューター
【大型注射器から射出された針】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
【大型注射器から射出された針】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。

多分突然はじめましての人が話しかけてもびっくりしちゃうだけだよねー。
お話はあとまわし~。
まずは|救助者《天使ちゃん》を取り囲む悪いヤツをぶっとばすぞー。おー。
…あ!お顔隠すの忘れないようにしなきゃ。【正体を隠す】
かかってこーい、みんなぼこぼこにしてやるー。【喧嘩殺法、怪力、遊撃、踏みつけ】
バットを力いっぱいぶん投げたらあちこち跳ね回っちゃうね。近づくと危ないよ~。
ひるんだところに真っ赤なげんこつと黒いキックど~ん。
ヒーローさんじょー…って感じでいーい?だめ?
怖い目にあったから、ちょっとでも安心できればいいとおもったんだけど~…
今度、霊子ちゃんに緊張のほぐしかたとか聞いてみよ。
【アドリブ大歓迎】
――お話はあとまわし~。
逐一事情を説明していては時間もかかるし、『天使』も混乱することであろう。まずは行動で見せつけることが適切だと、紅綺羅・レーコ(赤×黒+綺羅=可愛・h00958)は判断した。正体を隠すために顔を隠すのを忘れないようにする。
「――かかってこーい」
バットを手に立つ、気持ちとしては四番、バッター、エース。とはいっても、投げるのはボールじゃなくてバットそのものだけどね!
力いっぱいぶん投げたバットはあちこち跳ね回る。
「うわっ……!?」
「近づくと危ないよ~」
目を白黒させる天使に向かって後退させるように声をかければ、なるほど大人しく従ってくれる。いい子、なのだろう。
怯む『ウェットワーカーズ』に向かって駆け出す――真っ赤なげんこつと、黒いキックを、ど~ん!
「ヒーローさんじょー……って感じでいーい? だめ?」
振り返り、みてみれば、へたり込んでいる天使の子が呆然とおのれを見上げたのち、少し緊張がほどけたような笑顔を向けてくれていた。
🔵🔵🔵 大成功

(連携・アドリブお任せで)
わたしの家のルーツがフランス系なのと、現役女子中学生なので、フランス語と義務教育レベルの英語を駆使して天使の少女に呼びかけます。
「わたし達はあなたを助けに来ました!」
敵の目をこちらに向けるため、イヤな女の【演技】で挑発します。
「あらー、なんか痴女が集まっていますねー。羞恥心とかないんでしょうねー」
集団戦なので、【邪風の爪】による【範囲攻撃】【吹き飛ばし】を主軸とした戦闘を行います。
敵が近接攻撃を仕掛けてきたら、ウィザードブルームに乗って間合いを取り、【空中移動】【空中ダッシュ】で翻弄します。
「わたし達はあなたを助けに来ました!」
うろたえる天使の少女へそう声をかける、同じ年頃の少女が剣や不思議な本を手にしている、まるでライトノベルかアニメみたいだ、目を丸くしていた。こういう反応もあろう――今それは気にすることではない。天使の少女は駆けつけたミンシュトア・ジューヌ(知識の探索者・h00399)を見るや頷き、建物の影に隠れる。
「あらー、なんだか痴女が集まっていますねー? 羞恥心とかないんでしょうねー」
挑発の言葉に敵意をむき出しにする相手へ、そうだ、それでいいと得物を構える。
相手は集団、『邪風の爪』がカマイタチを起こす。相手を吹き飛ばしながら戦場を駆ける、尚も寄る相手に向かってウィザードブルームに乗り空中から攻撃を叩き込む!
「数がいますね……」
天使はそれほどまでに『資源』であるか、どこまで護りきれるか。
「あの……」
「うん?」
おずおずと少女が声をかけてきた。ありがとうございます、その言葉に、なるほど確かに天使だと、そう思った。
🔵🔵🔵 大成功

√ウォーゾーンならまだしも……曲がりなりにも安定した文明が維持されている√でも、人間を資源と見なすんですね
……分かっていたことです。どんな環境であれ、人が更に多くを欲するものだと
人の心が変わらないなら、力で以てこの状況を終わらせるしかないでしょう
《神経接続型ホバーバイク》を[運転]して現場に急行し、少女を襲う機動舞台の後背から先制攻撃
『神経接続型凍結砲<氷界>』を放ち、攻撃範囲内の敵を凍結
その隙に[ドローン操縦]技術で遠隔操作したバイクを少女へと差し向け、乗って離脱するよう促します
安心して下さい。私達は味方です
敵の近接攻撃は《戦線工兵用鎖鋸》で切り結び、隙を見て自壊可能部位の[切断]を狙います
曲がりなりにも、安定した文明が維持されているこの世界で。
「……っ!」
襲いかかる存在におびえる少女、目を細めて深雪・モルゲンシュテルン(明星、白く燃えて・h02863)はその元へとホバーバイクで駆けつける。ウォーゾーンでもあるまいし、こんなところで『資源』の『略奪』なぞ、錯誤にも程度がある。
『神経接続型凍結砲<氷界>』が発動される、氷結に女達は足元をとられる、或いはその身そのものが凍りつく。
「――安心してください、私達は味方です」
そう声をかけると、ドローンで遠隔操作されたバイクが少女の元へ。
「……え」
「こちらで離脱を」
「で、でも……」
お構いなく、そう言って乗るように促す。少女はぎこちなく頷くと、その上へと跨った。
「――まだ、続きますか」
飽くなきヒト、ないしはそれに類する知性の欲求。……ほどほどにしてほしいものだ。
相手の攻撃を躱しながら戦線工兵用鎖鋸で切り結ぶ、相手の大型注射器の針を切り落とし、ふう、と息をついた。
どこまで続くか。これで終わればいいが。
🔵🔵🔵 大成功

半人半妖(祖父ぬらりひょん、祖母座敷童)の御伽使い×軽自動車ライダー、20歳の女
関西風味の緩い口調
半ば趣味で駄菓子屋を営みつつ、地域ボランティアや√能力者の仕事をしている
愛車(外見は軽自動車。実態はモンスターマシン)で他の能力者の運び屋などを。
「どちらまでー?」
「おいちゃんにまかしとき」

アドリブ歓迎。
「やったろうじゃないの!」
「まぁ焦んなや、楽しいのはこれからだ」
√能力は指定した物をどれでも使用ます。
戦うことが好きで好きで楽しく、戦闘知識や勘を活かしてハデに行動します。
楽しいからこそ冷静でいられる面もあります。
多少の怪我は気にせず積極的に行動しますがヤバいときは流石に自重します。
仲間との連携も行えます。
軽口を叩いたりやんわりと皮肉を言ったりしますが、他の√能力者に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!

年齢の割に怜悧で落ち着いた娘です。良く言えば優等生的、悪く言えば面白みのない人間。どんな相手にも丁寧で穏やかな物腰で対応します。冷静沈着を旨としどんな状況でも年齢に不釣り合いなくらいの落ち着きと豪胆さを持って応じます。戦いは果敢で小さな体躯に似合わない中大型の刀を危なげなく操り前衛に立ちます。手足の短さはリーチの短さなので、後の先を取った戦い方をします。基本は刀のみで戦いますが裏をかいて至近距離で銃を抜くこともあります。

※アドリブ・連携歓迎 チョイ役・苦戦描写OK
南蛮渡来のハイカラ妖怪を自称する女の子です。
子供っぽい明るく元気な口調で(自称:ワタシ、他称:~さん、二人称:アナタ、口調:ね、わ、~よ、~の?)を使用します。
行動指針は、直積的ながら善性と倫理観を重視したもので、子供らしくひねった行動や頭の良い行動はあまりしません。
戦闘では素手やバス停で戦い、
『怪力』を活かして、殴ったり・掴んだり・投げたり・踏みつけたり・なぎ払ったりします。
以上、どうぞよろしくお願いいたします。
「どちらまで?」
優勢に傾いてはいるものの、今の戦況に怯える様子の少女へ、軽自動車から顔を覗かせたのは桜路・葵衣(ぬらりひょんと座敷童の孫はゆるーく駄菓子屋を切り盛りしたい・h01353)だ。バイクである程度逃げた彼女を、より安全に送り届けるために参じた次第であった。
「――……話は……ま、あとで聞こか。とりあえず乗りぃ」
「は、はい……!」
促されて乗る少女に、よろしいと桜路は頷く。ふわりとした羽の感触がする、ためらいなくこちらを信じる彼女は、間違いなく『天使』なのであろう。
「そんじゃ、ええか?」
「おう、後退は任せたぞ」
継萩・サルトゥーラ(百屍夜行・h01201)が得物を手に退路の確保のため敵前へと躍り出る。
「え、あの人、一人じゃあ危ないんじゃ――きゃ!?」
急発進する桜路の『愛車』のスピードに少女は目を白黒させた。
「下手に喋ると舌噛むで! ――それと――……」
――安心しぃ、あたしらはそんなヤワやないで。
●
「……ッ!」
『ケミカルバレット』が放たれる! 相手はそれでもひるまず襲いかかってくる。
「オレが言うのもなんだが、歪だな……」
「――殲滅します、殲滅します……」
人のような見た目でありながらまるでロボットのような相手に若干の気持ち悪さすら覚える。……ともあれ撃破せねばなるまい。ガトリング砲は相手の足元を狙い、着実にその歩みを止めていくが、いかんせん――。
「数が多いな!」
悪態もつきたくなる。
「――ご無事ですか!」
鳳・楸(源流滅壊者・h00145)が『狐式変身術』で身を軽くしてそこへ駆けつけた。身体を元に戻すと、大型の刀を鞘から抜く。
「後方支援を願えますか」
「勿論!」
突出する鳳に続いてアリス・グラブズ(平凡な自称妖怪(悪の怪人見習い)・h03259)もその後に続いた。ケミカルバレットによる補助を受けて、両者ともに、体に力がみなぎるのを感じる、力で押し切れるか――……。
「もうっ! 怖いんですからっ!」
肉薄してきた攻撃を避けて、アリスは強烈な殴りを相手の顔面へと叩きつけた。同時に、鳳も刀で相手を斬り伏せる。継萩のガトリング砲による面制圧の邪魔にならないよう立ち回りつつ、鳳とアリスは背を合わせた。
「……減らせてきてはいますね……よし」
「ふふっ!このまま、全部倒しちゃおう!」
お互い感触を確かめるようにする、そうしてまた前線へと駆け出す。
減らせてきてはいる、面制圧もできている、しかし、圧倒的な数の差がある――。
「むぅう! このままだと大変っ!」
アリスはそう言うと、自身の力を解放――『異形化解除』を行う。
獲物を貪り食らう顎、手から伸びる獲物を貫き縫い留める指、獲物を追跡し絡みつく触腕――そのおぞましい姿は、相手をやや後退させた。
「……!」
その姿に鳳も驚くが、すぐに気を取り直す。どんな姿をしていても味方は味方だ。
「えいっ!」
遠慮なく行われる『それ』はまさしく『暴力』であった――その下で鳳が刀で捌き、継萩は援護射撃を続ける。
「ワタシは悪の怪人見習いなんだから! こんなの、ぷっちーん! よ!」
「悪の怪人見習い……」
その言葉に鳳は呟くものの、相手をさばく手はとめない。
「……そろそろフィニッシュをかけるぞ!」
「はい!」
「はーい!」
鳳とアリスが飛び退く。
ガトリング砲が、文字通り火を吹いた――!
●
「な? 心配ないやろ?」
遥か後方に見える戦闘……の、爆発みて、少女は相変わらず目を白黒させている。
派手に戦いますなぁ、と桜路は肩をすくめた。
「ええと……なにがなんだかわかっていませんが……本当に、ありがとうございます」
「感謝するのはまだ早いで。まだまだ君を狙う連中はおるんやから」
「……」
うつむく少女を横目で見る。天冠も翼も元気なく、頼りなくその身に寄せられていた。
「これから私、どうなっちゃうんでしょう……」
「せやなぁ……ま、ひとつ言えることは――」
――そんなに絶望しなくても、あたしらみたいなのが、いつでも駆けつけるで?
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴 成功
第2章 集団戦 『オルガノン・セラフィム』

POW
捕食本能
【伸び縮みする爪】による牽制、【蠢くはらわた】による捕縛、【異様な開き方をする口】による強撃の連続攻撃を与える。
【伸び縮みする爪】による牽制、【蠢くはらわた】による捕縛、【異様な開き方をする口】による強撃の連続攻撃を与える。
SPD
生存本能
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【黄金の生体機械】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【虹色の燐光】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【黄金の生体機械】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【虹色の燐光】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
WIZ
聖者本能
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【頭上に降り注がせた祝福】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【頭上に降り注がせた祝福】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
――叫び声がする。
それはなにを求めての叫び声か、もうよくわからなかった。
●
――わたしはなんだっけ。どうしたかったんだっけ。
ああ、白い翼が見える。あれを捕まえたら、わたしは『元』に戻れるのかなぁ――。
あれ、『元』ってなんだっけ。『わたし』ってなんだっけ。
もういいや、おなかもすいたし、『あれ』を食べてしまおう。
●
「……!」
少年は息を切らせて走る。その背には白い翼。
――なんだ、なんなんだ、なんだ、あの化け物は……!
怖い、怖い、怖い怖い怖い。震えながらも足は止めない、止めてしまったら、自分はきっと――。

天使ではなくオルガノン・セラフィムに変容した時点で、救助は不可能です
生き残った皆さんが「化け物」の正体に気付いてしまう前に殲滅するしかありませんね
……誰も、隣人を殺したり、その存在に怯えることは望んでいないでしょうから
《神経接続型浮遊砲台》を傍らに浮かべながら次の戦域に急行
少女へと迫る敵群に砲口を向け、敵群の側面から『神経接続型凍結砲<氷界>』を撃ち込みます
爆発半径内の敵を纏めて凍結させると共に、極寒の領域を置いて残る敵の動きを鈍らせ、少女が逃げ切る時間を稼ぎましょう
敵の攻撃は跳躍で接近してきた瞬間に《戦線工兵用鎖鋸》で斬り払います
隠密されて正確に狙えずとも、爆発に巻き込めば撃破は可能でしょう

アドリブ・連携歓迎
作戦
組む相手がいるなら話し合って、
基本方針は援護射撃だが
必要に応じて回避メインで接近戦にて制圧射撃
肉薄して攻撃を浴びせる。
心情
必ずあの天使を生かして助ける
セリフは特になく、無言でひたすら戦う。
立回り
援護の場合、早業・カウンター・援護射撃で味方をカバー
攻撃を受けるようなら、早業を活用してかわしつつ、
忘れようとする力も活用して敵を追い込む。
少女の背に迫るモノの正体は、どこかに居た、善良なる隣人である。
――誰しもが、それを殺したり、怯えることは望んでいないであろう。
『神経接続型浮遊砲台』をかたわらに浮かべながら、深雪・モルゲンシュテルン(明星、白く燃えて・h02863)は少女のそばへと。
「……きゃっ!」
放たれた氷の弾丸で一気に冷却された周囲の気温に、少女は目を丸くする。
『神経接続型凍結砲<氷界>』――深雪のその√能力と呼ばれるものの正体は良く分からずとも、自分に対して敵対的な行動でないと見て、ほ、と胸をなでおろす。
「あ……! ありがとう、ございます」
深雪のすがたを認めた少女が駆け寄って感謝の言葉を述べようとしたところて、深雪は凛とした声で言い放つ。
「――そのままあちらへ走って!」
「えっ!? ……は、はい!」
駆け出す少女の背を追いかけようとする『オルガノン・セラフィム』――天使の成れの果てを凍結させていく。
「……」
凍結で動けない状態の相手のとどめを、ニコル・エストレリタ(砂糖菓子の弾丸・h01361)が粛々と進める。ことは静かに、しかし確実に進めなければ――冷静に対応していく。凍結していく相手を撃ち抜く、凍った相手の、砕け散る。そのような破砕音がする。
「――まだ来ます、ご注意を」
深雪の言葉に、ニコルは無言のまま頷いた。攻撃の手はまだ止めない。――彼女が逃げ切るまで!
「……!」
オルガノン・セラフィムはよだれすら垂らして天使の少女の方の方へと向かっていく。それを止める。留める。そして仕留めていく。
「――ア……」
一体のオルガノン・セラフィムが深雪を、そしてニコルを見た。
「アノ子、天使、ミタイ……キレイ、ネ……」
駆ける少女を、動かない手で指し示そうとして蠢いていた。それに深雪は目を伏せる。ニコルが、その眼前に銃口を向けた。何かを告げる口は持たなかった。この弾丸がせめてもの向けになれば、そう願いながら、オルガノン・セラフィムの頭は撃ち抜かれる。
「――……」
ふと、その個体が人間のような笑みを浮かべたような気がした。気がした、だけであったが。
「元、人間ですか――」
人間として摩耗しつつある深雪が、オルガノン・セラフィムに抱く感情は何か。憂いか、ならば――。
まだ来る、といいたげにニコルは現実を指し示すための銃声を鳴らした。深雪は顔を上げ、天使の迎撃に戻る。
――ならば……おのれの成れの果ては、あれなのだろうか。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功