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禍津の蛇来たりて大暴れ
●びったんびったん、じったんばったん
「|峨旺旺旺旺旺旺旺雄雄雄怨!《GAOOOOOOOOOOOOOONNNN!!!!!!!!!!》」
強い妖が、『マガツヘビ』が荒れ狂う。びったんびったん体を、四肢を、尾を震わせて目につく木々をなぎ払い。
「或れから何年経った? 十年か?百年か? 糞が、糞糞糞餓鬼共が!!!! 此のマガツヘビ様を轢き潰し殺しやがって、糞糞糞が!!!」
じったんばったんじだんだ踏んで、なだらかな道路をぼこぼこに踏み荒らし。
「誰が『無限の妖力と矮小なる頭脳の持ち主』だ! 調べたぞ矮小の意味この野郎!! どいつもこいつも糞馬鹿にしやがって! 今度こそ、全部全部ぶち壊してやる!! 人も妖も、全ての√も、あとあれだ、勿論√EDENもだ……!!」
黒き妖の火を蓄えながら、暴れるたびぼろぼろ鱗を、肉片を落とし、分身を生み出して、破壊を広げようとしているのだ。
それは、街に近づいてきている。
●大暴れの超強力古妖
「皆も知ってると思うけど、超強力な古妖、『マガツヘビ』が蘇ったんだ」
猫宮・弥月(骨董品屋「猫ちぐら」店主・h01187)が降ってきた星詠みを話し出す。
マガツヘビは√妖怪百鬼夜行のすべての妖怪、もちろん今蘇り、妖の世を取り戻そうとする古妖にすら伝わる掟、「マガツヘビの掟」に語られるその妖怪だ。「全てのあやかしよ、マガツヘビを討ち滅ぼすべし」、そう語られる程に強力な妖である。
「そのマガツヘビが蘇った。幾多に分かたれた肉片の一つが、街の近くで暴れているんだ」
荒れ狂うマガツヘビは鱗や肉片を撒き散らし、だんだん街にやって来る。鱗や肉片も小型マガツヘビとなって、先行して街へと迫ってくるのだ。
小型マガツヘビはマガツヘビと同じ外見で、同じ性格、同じ√能力を持っている。
「小型マガツヘビの強さは、古妖と同じくらい。それが群れを成してやってくる」
√能力者だけでは到底倒し得ない。けれど今度ばかりは援軍がいる。
「「マガツヘビの掟」にしたがって、古妖が力を貸してくれる」
今回は『鬼獄卒『石蕗中将』』が力を貸してくれる。彼の助力があれば、余力を残して小型マガツヘビの群れを蹴散らすこともできるだろう。
本命は続いてやってくるのだから。
「小型マガツヘビの群れのあとには、マガツヘビ本体がやってくるよ。肉片の一つに過ぎなくても、その力は強大だ。……ちょっと、その、頭は良くないみたいだけど」
それ故に戦略などねらず、「無限の妖力」を振りかざし周囲に大規模破壊を撒き散らす。√能力者であっても勝ち目がない存在だが、鬼獄卒『石蕗中将』が再び力を貸してくれる。策や戦略を講じ、協力してマガツヘビを倒してほしい。
「無事に倒せたら鬼獄卒『石蕗中将』が、マガツヘビの肉片を封じてくれるみたいだ」
彼の提案する「魂封じの宴」を行うことで、マガツヘビの復活速度を抑えることができるらしい。蓮の花見を主とした宴のようだ。実際にその場になれば、どういうものかわかるだろう。
「古妖との共闘、複雑な人もいると思う。けれど助力なくしてマガツヘビと戦い、勝つことはひどく難しいんだ。今は彼ら力を借りてほしい」
どうかよろしくお願います、と弥月は√能力者に頭を下げた。
●じったんばったん、ぴったんたん
小型のマガツヘビが街へとたどり着いて、あたりを破壊している。
「がおおお!」
「がおお! くそがー!」
尾の一薙ぎで看板を壊し、腕のひとふりで塀を倒し。小型であっても力は強く、目に入ったものすべて壊す勢いで暴れている。
その場に駆けつけた√能力者は、彼らと戦っている鬼獄卒『石蕗中将』を見つけるだろう。
小型マガツヘビを鞭や刀で払う彼は、√能力者を見つけると近くへとやってくる。
「もしや加勢に来てくれたのだろうか。であればありがたい。マガツヘビを倒すまで、共に闘おう」
これまでのお話
マスターより

じったんばったん大暴れ。霧野です、よろしくお願いします。
●シナリオについて
√妖怪百鬼夜行にて、蘇った超強力な古妖「マガツヘビ」を、「鬼獄卒『石蕗中将』」と協力して撃退してください。
一章は小型マガツヘビとの戦いです。フラグメントに表示されている鬼獄卒『石蕗中将』と協力して、彼らを撃退してくだだい。小型マガツヘビはマガツヘビ本体と同じ外見と性格、√能力を持ち、通常の👿程度の強さの大群です。
二章ではマガツヘビ本体とのボス戦です。√能力者だけでは倒すのが難しい相手ですが、鬼獄卒『石蕗中将』と協力すれば勝つこともできるはずです。
三章は🏠です。マガツヘビを倒せれば、復活しようとする肉片を奇妙建築で埋め尽くして鬼獄卒『石蕗中将』の提案する「魂封じの宴」を行います。
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第1章 ボス戦 『鬼獄卒『石蕗中将』』

POW
獄卒鞭
【鞭】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【獄卒の刑場】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
【鞭】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【獄卒の刑場】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
SPD
石蕗妖鬼衆
事前に招集しておいた12体の【式神鬼】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[式神鬼]全員の反応速度が半減する。
事前に招集しておいた12体の【式神鬼】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[式神鬼]全員の反応速度が半減する。
WIZ
魔獄刑場
自身の【周囲の戦場】を【血を思わせるどす黒い赤色】に輝く【魔獄刑場】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
自身の【周囲の戦場】を【血を思わせるどす黒い赤色】に輝く【魔獄刑場】に変形させ、攻撃回数と移動速度を4倍、受けるダメージを2倍にする。この効果は最低でも60秒続く。
√妖怪百鬼夜行 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴

【世界の為に】
情念を利用してあれこれしようと企むのは看過は出来ないけど、世界を壊すマガツヘビは見過ごせない……!
『サマータヰム・ポップスタア』
世界を夏色に、増え続ける夏色の星を反射と攻撃に転用して、分体を撃破していきましょう。
歌が、世界を救うように、私がそうでありたい自分でいる為に……!
中将が守りに時間をかけてくれるなら、星は無限に増え続ける、数は問題ではなくなるわ。
……本当は、こうであればよかったと思うわ。
その力を、√を守護する力として、共存することが出来たなら、愛される事も、愛する事も、いつか知る事ができる道もあったかもしれないと……。
どこかで交わる道がありますように、願ってるから。
●
「……|とっても綺麗だね、そう呟いて君はグラス越しに《サマータヰム・ポップスタア》」
捧・あいか(いのち短し弾けよポップスタア・h03017)はマイクを握って歌い出す。
世界を夏色に、歌声を星に。眩しい日差し、抜けるような青空、それを写した青い星々が一つ、二つと踊りだす。それは小型マガツヘビへと届けば、ぱちんと弾けて消えていく。
幻の星々にマガツヘビはぎゃあぎゃあ痛みを感じているようで。
「がおお! くそ、くそいてえ! なんだこれ!」
不平不満を言っていっそう暴れるけれど、動きを早めた石蕗中将がその攻撃を刀でいなしていた。あいかには決して攻撃が届かぬよう、小型マガツヘビを防いでくれる。
(歌が、世界を救うように、私がそうでありたい自分でいる為に……!)
複雑な気持ちは飲み込んで、爽やかに、少しだけ切ない気持ちを込めて、いつかの夏の日を思い起こさせる歌をあいかは紡ぎ続ける。
きらりきらめく星は幾つも幾つも生まれては、暴れる小型マガツヘビの元に飛んでいく。ぶつかって弾けて消えて、壊されてその力を返して、痛みを傷を増やしていく。
反射しきれない攻撃をそらしてくれる石蕗中将の背を見ながら、あいかは歌い続けた。
かの鬼獄卒は情念を得て力を増し、妖怪の世を取り戻すと主張する古妖だ。それを看過できるはずもない。
けれど彼の力があればこそ、この場のマガツヘビと戦って勝つことができるのだ。世界を壊そうという妖怪を見過ごすことはできない。
(……本当は、ずっとこうであればよかったと思うの)
古妖も人と手を取って、その力を√を守護する力として奮ってくれたら。人や妖と共存することが出来たなら。そうであるならば、互いに愛される事も、互いを愛する事も、いつか知る事ができる道もあったかもしれない、これからあるかもしれないから。
(きっとどこかで交わる道がありますように、願ってるから)
そっと触れようとしても届かない遠い夏の日の幻を歌いながら、あいかは今はまだ、理想というグラス越しの未来を願うのだ。
🔵🔵🔴 成功

「でけー!」
小型と聞いていたのに大きい蛇に、目を丸くしています。ちゃんと話していてくれたはずですが、聞いていなかったようです。むずかしいはなしはわからんかった。
ですが仕事のやる気は十分あるので、臆することなく立ち向かいます。
「わるいやつはやっつけろ!」
「おにのおっちゃんがまえな?」
「じゃーうしろからやるぞ!」
石蕗中将が鞭で攻撃してくれますので、かろんは後ろから攻撃します。といっても実際に行動するのは大神や眷属たちです。
壱獣霊式大筒を発動。
大筒を召喚できるだけ召喚して、大神や眷属たちを詰め込んで撃ち出します。弾は自分で戻ってきてくれるので撃ち放題です。
「どんどんいくぞー!」
●
じったんばったん、ひたすらに暴れて回る小型マガツヘビを見た獅猩鴉馬・かろん(大神憑き・h02154) は思わず大きな紫の目も口も開けて叫んでいた。
「でけー!」
小型なヘビと聞けば、手のひらから精々手からひじくらいの長さくらいだと思うだろう。けれど小型マガツヘビはもっと大きい。かろんの想像よりずっと大きかった。
星読みは特に小さいとは言っておらず、このくらいだよ、こういう感じだよ、と話していたが、かろんは聞き流していたようだ。だって難しい話はわからないのだ、まだ六歳だもの。
でもお仕事へのやる気は十二分にあったので、街を壊すべく、がおがお喚いて暴れる大きな小型マガツヘビに臆することはないのだった。
暴れる現場でもかろんはぐんと胸を張り、まっすぐに前を見据えて、推定自分より大きな小型マガツヘビ達に堂々と宣言してみせる。
「わるいやつはやっつけろ!」
威勢のいい、けれど子供らしい声と一緒に、にゅっとかろんに憑いた大神や、猪、鹿や猿など神の眷属の山の獣達が顔を出す。
かろんと山の一団は、鞭を振るう石蕗中将の後ろにむんと陣取った。
「やっほー、おにのおっちゃんがまえな?」
「ふむ。了承した」
鬼獄卒は思い切り鞭を振るう。小型マガツヘビは打たれてぎゃあぎゃあ叫び、外れた鞭の作る刑場でじったんばったんのたうっている。
「じゃーうしろからやるぞ! いーち、にー、さーん……」
かろんはその間に後ろに大筒を可能な限り喚び出した。大神や眷属がぎゅむっと入り込み、どんどんどーんと撃ち出されていく。じったんばったんのたうった小型マガツヘビを狙い撃ちすれば、ぎゃんぎゃん大声で喚いてダメージを受けていた。倒れてしまえば次の小型マガツヘビを狙うだけ。
「がおおおお! くそくそ、くそいてえ!」
「どんどんいくぞー!」
弾は当たれば自分達で戻ってきてくれるし、自分でぎゅっぎゅと詰まってくれる。かろんは大筒を呼び出して準備するだけだ。
鬼の後ろでどどんと大砲を打ち出すかろんはむふんと胸を張り、せっせと召喚を続けるのだった。
🔵🔵🔴 成功

霧野マスターにおまかせします。かっこいい継萩・サルトゥーラをお願いします!
アドリブ歓迎。
「やったろうじゃないの!」
「まぁ焦んなや、楽しいのはこれからだ」
√能力は指定した物をどれでも使用ます。
戦うことが好きで好きで楽しく、戦闘知識や勘を活かしてハデに行動します。
楽しいからこそ冷静でいられる面もあります。
多少の怪我は気にせず積極的に行動しますがヤバいときは流石に自重します。
仲間との連携も行えます。
軽口を叩いたりやんわりと皮肉を言ったりしますが、他の√能力者に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
●
小型マガツヘビの一体が暴れていると、威勢のいい声が降ってくる。
「いっちょハデにいこうや!」
すぐにパァンと響き渡る銃声に続いて小型マガツヘビは熱を感じ、更にそこ目掛けて押し付けられる衝撃と痛みが続く。すぐに動きを止めるほど大したものではないにせよ、痛いは痛くて、ぎゃあぎゃあ叫んだ。
「くそがぁ! いてえ!」
継萩・サルトゥーラ(百屍夜行パッチワークパレード・マーチ・h01201)が暴れる最中を潜り抜け、決めた攻撃に小型マガツヘビは目を釣り上げた。蹴りから体勢を戻すサルトゥーラに狙いを定め、二本の腕を振り上げる。
「はは、やったろうじゃないの!」
ぶんぶんと振られた腕の一本をサルトゥーラは軽快に避ける。攻撃の届く範囲を見切り、周囲の状況を育まれた経験で感じながら無傷で避けて。
もう一本の腕がばらりと飛んできた鞭でそらされ、当たらないことを確認して、マガツヘビから安全に距離を取った。先程小型マガツヘビへと撃ち込んだソードオフショットガンをリロードしながら、鞭の持ち主に礼を言う。
「ありがとな、石蕗さん」
「礼には及ばん。共闘するものとして手を貸すのは当然だ」
ぎゃあぎゃあ喚いて暴れる小型マガツヘビの攻撃を石蕗中将は鞭を振るって牽制し、サルトゥーラは軽快なステップで避ける。
「くそくそ、よけんな! ぶちあたれ!」
「はっ、当たるわけないだろ?」
「くそがぁ!」
ぎゃんぎゃんと吠えたぎる小型マガツヘビがまた腕を振り上げる。そのタイミングで鞭がびゅんと風を切った。強かに打たれて体勢を崩した小型マガツヘビにサルトゥーラは一気に距離を詰める。
「まぁ焦んなや、楽しいのはこれからだ」
がばっと開けたマガツヘビの口の中目掛け、ソードオフショットガンの引き金が弾かれる。おまけとばかりにサルトゥーラの蹴りが小型マガツヘビの鼻っ面を蹴り上げた。
反動を使って飛びすさる体は鞭で引かれ、倒れる小型マガツヘビから距離を取ることができた。
案外戦場を見てフォローしてくる中将に、サルトゥーラは目を細め笑うのだった。
🔵🔵🔴 成功

マガツヘビ……掟は知っていますが、実物を目にするのは初めてですね。
私は協力する事に異存はありません。むしろ、積極的に協力したいところです。同じく数百年を生きた|妖怪《モノ》同士ですからね。
「私は人に被害さえ出ないのなら、酒を酌み交わすのも悪くないと思っているのですよ。多分、私の方が100年と少しくらいは若いと思いますから、酌の一つもさせて頂く側でしょう……宴の席を設けられる機会がある事を、気長に待ちましょうか」
分体とは思えない力の持ち主ですから、地道に一体ずつ、確実に始末するしかないんですよね。石蕗中将と同じ対象を狙う事でダメージの蓄積と、ついでに外した時の被害の軽減を図りながら戦います。
●
辺り一帯触るも触らぬも壊すべく、ぎゃあぎゃあ喚いて暴れる小型マガツヘビに白銀・雅(あやかし妓楼の女主人・h01079)は霊帯を手に目を眇めた。
(あれがマガツヘビ……掟は知っていますが、実物を目にするのは初めてですね)
目にした姿は膨大な妖力を思い切りぶつけてくる、まさに暴力の具現化だ。今目にしている小型の個体であっても、並みの古妖並みの力を持っているのは一目瞭然。
けれど臆して放置するわけもない。石蕗中将が鞭を奮った個体を狙い、雅はぐっと踏み込んだ。
暴れる小型マガツヘビの奮った攻撃をくぐり抜け、胴体に思い切り当身を当てる。軽く揺らいだ体を石蕗中将の鞭が縛り上げ、鞭を潜り抜けた尾は雅の霊帯がくくり上げた。動けない小型マガツヘビの顎を、雅の脚が回る遠心力も乗せて蹴り上げる。
がんっと上向いたあと、鞭を振りほどいた小型マガツヘビがじったんばったん暴れだす。
「いてえいてえ! くそが、くそくそ!」
嵐のような攻撃を、雅にも当たらぬよういなす石蕗中将の側で構えを直し、雅はゆうるり口を笑みの形にする。
「ありがとうございます」
「礼は必要ない。共闘する以上、手を貸すのは当然だ」
数百年を生きてきた妖怪同士、積極的に協力したいと思っている雅はころころ鈴を転がすように軽やかに笑ってみせた。
「ふふ、私は人に被害さえ出ないのなら、あなた方古い妖とも酒を酌み交わすのも悪くないと思っているのですよ」
「ほう」
「多分、私の方が100年と少しくらいは若いと思いますから、酌の一つもさせて頂く側でしょう」
無闇矢鱈に暴れるのをやめても、痛みに苛立つそのままに向かってくる小型マガツヘビに鞭が飛ぶ。
「そのような宴の席を設けられる機会がある事を、気長に待ちましょうか。今は無理でも、いずれ、ね?」
「さて、な」
つれない中将の言葉は妖艶な笑みで受け止め、雅は再び回し蹴りを放つ。ぎゅっと鞭にも締め上げられた個体が倒れたあとは、別の個体を倒すまでだ。
ずんと音を立てて倒れた小型マガツヘビにはもう目もくれず、雅は新たな個体へと狙いを移すのだった。
🔵🔵🔴 成功

大変なことになってますねぇ……。
あ、石蕗中将閣下。今回ばかりはご協力のほどをよろしくお願いします。(頭を下げる)
では、始めましょう。
√能力を使用致しますので、中将閣下はどうぞ此方に。
わたくしの√能力は視界全域。全方向に広く視えますので、死角はありませんよ。
ずっととは行きませんが、感覚と行動を忘れさせて隙を生みますので、そこを鞭で一掃していただければと思います。
一発で倒し切れなければ、続けて能力と経験の忘却にて棒立ちにさせますので、もう一度お願い致します。
ニ発も入れていただければ、相手も弱りますでしょう。あとはわたくしの方で|忘却《け》せますから。
それでは、参りましょうかぁ。
●
「なんとも大変なことになってますねぇ……」
人間で言う頭の位置にある、翼に着いた目玉をゆらゆら揺らして周囲を見ながらアイン・スフィア(パン屑、ペン先、残り滓・h00834)は小さく呟いた。その視界がちょうどアインの近くにやってきた鬼獄卒を捉える。
「あ、石蕗中将閣下。今回ばかりはご協力のほどをよろしくお願いします」
「ああ。今ばかりは共に戦おう」
ぺこりと頭を下げて優雅に礼をするアインに、石蕗中将も鷹揚に頷いた。
すぐに前に出て新たな小型マガツヘビを打ち据えようとする中将に、アインはそっと手を前に出し止める。
「何か?」
「これより√能力を使用致しますので、中将閣下はどうぞ此方に」
ふわりとアインの顔とも言える翼が広がった。前横後ろ、全方位を赤い瞳が見つめる。
「では、始めましょう。てやーっ」
見えるもの、選んだものにアインは自身の本質を広げていく。人間災厄『忘却』は伊達では無い。アインの選んだ小型マガツヘビに、まずは緩く忘却が重なった。
「おお? なんだ、わすれた! くそ、わすれちまった!」
「ふむ」
一瞬何を感じ、何をしていたか忘れた小型マガツヘビがぎゃんぎゃん声を上げる。生じた隙に石蕗中将は鞭を振り上げて、強かに打ち据えた。痛さという感覚も忘れてしまった小型マガツヘビは、それでも打たれたことにまた喚く。
「なんだこれ! なんだ!?」
感じるはずのものがないことに苛立ち騒ぐ小型マガツヘビにまた一つ、忘却が届く。同時に打ち据えられた鞭が絡みついた。
「わすれた! なにかわすれた! くそがぁああ!」
忘れたことに苛立って、喚く小型マガツヘビにアインは優しく語りかける。
「大丈夫ですよ、その不快感もすぐに|忘却《き》えますから」
世界からの忘却が、喚く小型マガツヘビを包み込む。ふわりと残った鞭が地に落ちて、はらりと解けた。
鞭を戻す中将に、アインは忘れ去られた存在などなかったように言葉を向ける。
「それでは、参りましょうかぁ」
まだまだ残っているのだから、とアインは翼をゆったり動かすのだった。
🔵🔵🔴 成功
●
「手の妖の君や、海の妖の君には改めて言うまでもないことだが、我ら妖怪には『全てのあやかしよ、マガツヘビを討ち滅ぼすべし』という掟がある」
「……え? 知らないわよそんな掟」
訪れた『カンパニー』一行に向けられた石蕗中将の言葉に、カノロジー・キャンベル(Company president・h00155)は美しい『手』を振って否定する。その仕草に中将は緩く眉を上げてみせた。
「全ての妖怪に伝わっているはずだが」
「アタシ妖怪じゃないもの。んもう、ツワブキちゃんったら失礼しちゃうわ!」
「そうじゃなぁ、カノロジーは妖怪じゃないのう」
「ちゃんと人間ですものね」
カノロジーは人間の頭の位置にある『手』でも、二本の腕の先の手でも、きゅっと握り拳を作り、頷くヴィルヴェ・レメゲトン(万魔を喚ぶ者・h01224)や八隅・ころも(クラ子・h00406)と、顔を合わせるように傾けてみせた。
そんな彼らに石蕗中将は胡乱な目を向ける。妖怪より妖怪めいた見た目をしたオネェは間違いなく妖怪ではないという事実に、それを当たり前とする二人に、恐ろしい鬼の顔が戸惑い眉を潜めていた。
「……まあ、置いておこう。とりあえず共に戦ってくれるのだろうか」
「ええもちろん。あなた……敵と共闘っていうのも変な気分だけど、仕事は全うするわ。それが『カンパニー』ですもの❤」
カノロジーは依頼を受けたのだから、完璧にこなしてみせよう、と頷いて。
「まさか主と共闘するとは思ってなかったがの、まあここは乗ってやるのじゃ。あのマガツヘビはどうみてもヤバいやつじゃ。我らだけでは倒すのはちょっとだけ苦労するじゃろうしなぁ」
小さな背丈で偉そうに胸を張りつつも、ヴィルヴェも同意をし。
「ま、良いんじゃありません? 普段は敵であったとしても私個人はあなたに何の恨みもありませんし、人間は『敵の敵は味方』とも言うでしょう」
人間を好まない古妖にさらりと人のことわざを引用しながら、ころもも優雅に頷いた。
なんとも個性的な一行に若干惑うような雰囲気を醸し始めた石蕗中将に、三人はさっさと役割を振っていく。
「じゃ、ツワブキちゃんには前衛を務めてもらうわね。式神鬼呼べるんでしょ?」
「そのでかい図体でちゃんと働いてもらいますわ」
「うむ、ヴィルヴェ達の盾になれること、光栄に思うが良い」
ちょうどよく群れの一つが現れたところだし、と指さされれば、ぎゃんぎゃん喚いて暴れだした小型マガツヘビの群れへと、石蕗中将の意識も逸れた。
「承知した。攻撃は任せよう」
石蕗中将が手を上げれば、すっと十二の影が現れる。紙の面をつけ、額により角を生やした式神鬼達は、石蕗中将が刀の先で示した小型マガツヘビへと群がっていった。
さらに式神鬼の影に隠れるようにころもも飛び出していく。
ひらりと優雅に烏賊衣の裾を翻し、しなやかに伸びた烏賊の脚と少女の手足を白銀の剣に変え、鋭く素早い輝きをするりと小型マガツヘビに斬りつける。すぱりと切れた体表に、小型マガツヘビはいっそう大きくわめき出した。
「いってえ! くそいてえ、くそくそ!」
「ふふん、一本だけじゃありませんのよ」
白銀がひらりひらりと翻り、すぱすぱすぱりと小型マガツヘビの皮を切っていく。振り上げた拳の反撃を食らうより先に、ころもの烏賊の腕が巻き付いた。同時に動いた式神鬼が小型マガツヘビの拳を押さえ込んでいる間に、触手を支点にくるりひらりと位置を変えていく。
√能力者と古妖の式神が協力している状況でも同等に渡り合う程の力のある小型マガツヘビに、ヴィルヴェはむうと唇を尖らせた。
「おまけの雑魚のはずが、普通の古妖くらいの強さとかどうなっとるんじゃ? 本体も本来の体の肉片なんじゃろ?」
ヴィルヴェはそう言いながらもぐるりと周囲に複雑な呪文と図形作った複雑な魔法陣を展開した。大きな瞳で道を見出し、世界を支える樹の精霊へと繋がる門を紡ぎ上げて。そこにLesser keyの鍵を差し込んで回す。
「まあよい。……開門せよ。最上位なる草木の精よ、あやつをぶちのめして絡み取るのじゃ!」
にっと不敵に笑って門を開いたヴィルヴェの指示通り、呼び出された精霊は小型マガツヘビが崩した瓦礫の破片を巻き上げた。狙うはころものつけた傷、そこに鋭い尖先を突き刺し、ぐっと押しつぶす。
式神鬼達に押さえられた小型マガツヘビは蔦と瓦礫を避けれるはずもなく、傷跡を抉られた上に、蔦でぐるぐるに絡めとられることとなった。
「いってえ! くそ、くそつたが、じゃまだぁあ!」
迷惑なほどに喚く小型マガツヘビに、カノロジーは優雅に手を『手』の付け根に添える。
「掟が伝わるほどに、ねぇ……どれだけ嫌われてたのかしらね?」
「あれは、世界を壊すものだからな」
ゆっくりと反応した石蕗中将にカノロジーはひらひら手を振った。
「ん、ツワブキちゃん、お疲れ様。普段ならタンク役はアタシなんだけど、古妖相手は古妖が最適ね❤」
「……たんく? ああ、攻撃を受け止める役か。成る程。我らも肉片、倒れても何一つ支障はない」
「あ、式神鬼はそのまま押さえててもらっていいかしら、燃えちゃうけど」
「構わない」
ころもが速度を落として戻ってきた頃合いで、カノロジーは前に出る。しっかり六十秒の間、異能の火を溜め込んでいた彼は、喚く小型マガツヘビへとするりと手を向けた。
「ウフフ、もう手遅れよ❤」
艷やかな声のあと、ごう、と小型マガツヘビが燃え上がる。戒めを受けた小型マガツヘビはカノロジーに手も尾も出せず、避けることもできずに燃える炎の中で大きく口を開けていた。
「くそくそくそ、くそがぁあ! くそな手の妖怪のお前も、くそちびがきも、くそタコの妖怪も、くそおにも、ぜんぶこわしてやるぅうう!」
ぎゃんぎゃん燃えながら喚く言葉に、『カンパニー』一行は三者三様の答えを返す。
「だーかーらー、アタシは妖怪じゃないっての」
カノロジーは火柱を維持しながらやれやれ、と肩をすくめ。
「ふん。さっさとお主のようなおまけは潰して、本体を叩くのじゃ!」
ヴィルヴェは鍵の先をとんと地につけ胸を張り。
「……あ゛? ヘビ風情が串刺しにして蒲焼きにしてやりますわ!!!!」
タコと間違えられることが大嫌いでとっても不満なころもは目を釣り上げ、燃える小型マガツヘビに向かおうとするのを、落ち着けと押さえ込まれることになる。
「腕は確かだ。頼もしい」
気ままに自由に、そして力強い『カンパニー』の頼もしさを賞賛しながらも、石蕗中将はすこうし眉間のシワを深くした。

【カンパニー】
ころもちゃん、ヴィルヴェちゃんと❤
「全てのあやかしよ、マガツヘビを討ち滅ぼすべし」ねぇ…どれだけ嫌われてたのかしらね?
…え?知らないわよそんな掟
アタシ妖怪じゃないもの。ツワブキちゃんったら失礼しちゃうわ!
敵と共闘っていうのも変な気分だけど、仕事は全うしなきゃね。『カンパニー』ですもの❤
ツワブキちゃんには「石蕗妖鬼衆」を使って前衛を務めてもらうわ
普段ならタンク役はアタシなんだけど、古妖相手は古妖が最適でしょうからね❤だからアタシは妖怪じゃないっての
手法・星火燎原
一分間溜めた異能の火柱で、ヘビちゃんたちを一網打尽よ~❤

【カンパニー】
カノロジー、ころもと参戦じゃな
まさか古妖と共闘とはのう……
まあここは乗ってやるのじゃ
あのマガツヘビはどうみてもヤバいやつじゃ
おまけの雑魚のはずが、普通の古妖くらいの強さとかどうなっとるんじゃ?
『世界樹の精霊による拘束』で精霊を召喚じゃ!
精霊の操る蔦によってその辺のものでマガツヘビを攻撃してやろう
そうすれば絡みつく蔓草で、仲間の攻撃が当たりやすくなるはずじゃ
さっさとおまけは潰して、本体を叩くのじゃ!

【カンパニー】
カノロジー、ヴィルヴェちゃんと
共闘?ま、良いんじゃありません?
普段は敵であったとしても私個人は何の恨みもありませんし、人間は『敵の敵は味方』とも言うでしょう
とは言え、そのでかい図体でちゃんと働いてもらいますわ
分身を隠れ蓑にマガツヘビに接近し
剣裂烏賊で切りかかり、反撃くらう前に分身に触手を巻き付け移動の支点とさせてもらいましょう
ヴィルヴェちゃんが拘束し、カノロジーのチャージが終わったのなら退散しましょう
まとめて炙り烏賊なんて堪ったもんじゃありませんの
…あ”?タコ妖怪かと思った?
ヘビ風情が串刺しにして蒲焼きにしてやりますわ!!!!
●
「手の妖の君や、海の妖の君には改めて言うまでもないことだが、我ら妖怪には『全てのあやかしよ、マガツヘビを討ち滅ぼすべし』という掟がある」
「……え? 知らないわよそんな掟」
訪れた『カンパニー』一行に向けられた石蕗中将の言葉に、カノロジー・キャンベル(Company president・h00155)は美しい『手』を振って否定する。その仕草に中将は緩く眉を上げてみせた。
「全ての妖怪に伝わっているはずだが」
「アタシ妖怪じゃないもの。んもう、ツワブキちゃんったら失礼しちゃうわ!」
「そうじゃなぁ、カノロジーは妖怪じゃないのう」
「ちゃんと人間ですものね」
カノロジーは人間の頭の位置にある『手』でも、二本の腕の先の手でも、きゅっと握り拳を作り、頷くヴィルヴェ・レメゲトン(万魔を喚ぶ者・h01224)や八隅・ころも(クラ子・h00406)と、顔を合わせるように傾けてみせた。
そんな彼らに石蕗中将は胡乱な目を向ける。妖怪より妖怪めいた見た目をしたオネェは間違いなく妖怪ではないという事実に、それを当たり前とする二人に、恐ろしい鬼の顔が戸惑い眉を潜めていた。
「……まあ、置いておこう。とりあえず共に戦ってくれるのだろうか」
「ええもちろん。あなた……敵と共闘っていうのも変な気分だけど、仕事は全うするわ。それが『カンパニー』ですもの❤」
カノロジーは依頼を受けたのだから、完璧にこなしてみせよう、と頷いて。
「まさか主と共闘するとは思ってなかったがの、まあここは乗ってやるのじゃ。あのマガツヘビはどうみてもヤバいやつじゃ。我らだけでは倒すのはちょっとだけ苦労するじゃろうしなぁ」
小さな背丈で偉そうに胸を張りつつも、ヴィルヴェも同意をし。
「ま、良いんじゃありません? 普段は敵であったとしても私個人はあなたに何の恨みもありませんし、人間は『敵の敵は味方』とも言うでしょう」
人間を好まない古妖にさらりと人のことわざを引用しながら、ころもも優雅に頷いた。
なんとも個性的な一行に若干惑うような雰囲気を醸し始めた石蕗中将に、三人はさっさと役割を振っていく。
「じゃ、ツワブキちゃんには前衛を務めてもらうわね。式神鬼呼べるんでしょ?」
「そのでかい図体でちゃんと働いてもらいますわ」
「うむ、ヴィルヴェ達の盾になれること、光栄に思うが良い」
ちょうどよく群れの一つが現れたところだし、と指さされれば、ぎゃんぎゃん喚いて暴れだした小型マガツヘビの群れへと、石蕗中将の意識も逸れた。
「承知した。攻撃は任せよう」
石蕗中将が手を上げれば、すっと十二の影が現れる。紙の面をつけ、額により角を生やした式神鬼達は、石蕗中将が刀の先で示した小型マガツヘビへと群がっていった。
さらに式神鬼の影に隠れるようにころもも飛び出していく。
ひらりと優雅に烏賊衣の裾を翻し、しなやかに伸びた烏賊の脚と少女の手足を白銀の剣に変え、鋭く素早い輝きをするりと小型マガツヘビに斬りつける。すぱりと切れた体表に、小型マガツヘビはいっそう大きくわめき出した。
「いってえ! くそいてえ、くそくそ!」
「ふふん、一本だけじゃありませんのよ」
白銀がひらりひらりと翻り、すぱすぱすぱりと小型マガツヘビの皮を切っていく。振り上げた拳の反撃を食らうより先に、ころもの烏賊の腕が巻き付いた。同時に動いた式神鬼が小型マガツヘビの拳を押さえ込んでいる間に、触手を支点にくるりひらりと位置を変えていく。
√能力者と古妖の式神が協力している状況でも同等に渡り合う程の力のある小型マガツヘビに、ヴィルヴェはむうと唇を尖らせた。
「おまけの雑魚のはずが、普通の古妖くらいの強さとかどうなっとるんじゃ? 本体も本来の体の肉片なんじゃろ?」
ヴィルヴェはそう言いながらもぐるりと周囲に複雑な呪文と図形作った複雑な魔法陣を展開した。大きな瞳で道を見出し、世界を支える樹の精霊へと繋がる門を紡ぎ上げて。そこにLesser keyの鍵を差し込んで回す。
「まあよい。……開門せよ。最上位なる草木の精よ、あやつをぶちのめして絡み取るのじゃ!」
にっと不敵に笑って門を開いたヴィルヴェの指示通り、呼び出された精霊は小型マガツヘビが崩した瓦礫の破片を巻き上げた。狙うはころものつけた傷、そこに鋭い尖先を突き刺し、ぐっと押しつぶす。
式神鬼達に押さえられた小型マガツヘビは蔦と瓦礫を避けれるはずもなく、傷跡を抉られた上に、蔦でぐるぐるに絡めとられることとなった。
「いってえ! くそ、くそつたが、じゃまだぁあ!」
迷惑なほどに喚く小型マガツヘビに、カノロジーは優雅に手を『手』の付け根に添える。
「掟が伝わるほどに、ねぇ……どれだけ嫌われてたのかしらね?」
「あれは、世界を壊すものだからな」
ゆっくりと反応した石蕗中将にカノロジーはひらひら手を振った。
「ん、ツワブキちゃん、お疲れ様。普段ならタンク役はアタシなんだけど、古妖相手は古妖が最適ね❤」
「……たんく? ああ、攻撃を受け止める役か。成る程。我らも肉片、倒れても何一つ支障はない」
「あ、式神鬼はそのまま押さえててもらっていいかしら、燃えちゃうけど」
「構わない」
ころもが速度を落として戻ってきた頃合いで、カノロジーは前に出る。しっかり六十秒の間、異能の火を溜め込んでいた彼は、喚く小型マガツヘビへとするりと手を向けた。
「ウフフ、もう手遅れよ❤」
艷やかな声のあと、ごう、と小型マガツヘビが燃え上がる。戒めを受けた小型マガツヘビはカノロジーに手も尾も出せず、避けることもできずに燃える炎の中で大きく口を開けていた。
「くそくそくそ、くそがぁあ! くそな手の妖怪のお前も、くそちびがきも、くそタコの妖怪も、くそおにも、ぜんぶこわしてやるぅうう!」
ぎゃんぎゃん燃えながら喚く言葉に、『カンパニー』一行は三者三様の答えを返す。
「だーかーらー、アタシは妖怪じゃないっての」
カノロジーは火柱を維持しながらやれやれ、と肩をすくめ。
「ふん。さっさとお主のようなおまけは潰して、本体を叩くのじゃ!」
ヴィルヴェは鍵の先をとんと地につけ胸を張り。
「……あ゛? ヘビ風情が串刺しにして蒲焼きにしてやりますわ!!!!」
タコと間違えられることが大嫌いでとっても不満なころもは目を釣り上げ、燃える小型マガツヘビに向かおうとするのを、落ち着けと押さえ込まれることになる。
「腕は確かだ。頼もしい」
気ままに自由に、そして力強い『カンパニー』の頼もしさを賞賛しながらも、石蕗中将はすこうし眉間のシワを深くした。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴 成功

連携・アドリブ歓迎
〆
私にとって石蕗中将は封じるべき相手で、妖怪と人間の子の私は、彼の言う腐敗の塊なんだろうけど。
思いは違っても、今は同じ√に生きる者同士、背中を預けるね。
直接刃を交えたことはないけど、力を合わせることができるなら、これ以上ないくらい心強いよ。
中将が戦っている周りの個体か、他の√能力者が戦っている個体を協力して狙うよ。
一体ずつ、確実に数を減らしてこう。
弐之歩『白雨』でマガツヘビの尻尾の間合いの外から、一気に詰めて攻撃するね。
複数の個体が固まっていたら、一人で同時に相手にしないように、味方や中将がいる近くまで移動しよう。
乱暴者にこれ以上、街も、みんなの生活も、荒らさせないんだから!
●
イリス・レーゲングランツ(搏景の迷い子・h04975)にとって石蕗中将は人と妖怪が手を取り合う世界を揺るがす、封じるべき相手である。「人間との交わりは妖怪を腐らせる」と主張する石蕗中将からすれば、妖怪と人間の間の子であるイリスは、彼の言うところの腐敗の塊なのだろう。
とはいえ、そのような事情は今は横に置くべき事態、世界を壊すマガツヘビえお止めるためには力を合わせるべきなのだ。
(思いは違っても、今は同じ√に生きる者同士、背中を預けるね)
どす黒い血色の魔獄刑場に戦場を変え、いっそう速度を上げた石蕗中将に続くようにイリスも速度を上げた。
(中将は、やはり強い。直接刃を交えたことはないけど、力を合わせることができるなら、これ以上ないくらい心強いよ)
中将の速度に追いつくことはできなくとも、その背を追うように、イリスは中将と同じ個体を狙って彩刃『虹霓』を携える。その姿は夏の空、稲妻が奔るが如く。
確実に一体ずつ仕留めるため、イリスが己と狙いを同じくしたと悟った中将は、あえて小型マガツヘビの真正面に躍り出る。大きく鞭を振り上げて、ばしりと小型マガツヘビを打ち据えた。痛みに喚く小型マガツヘビの気を引くように、彼は続けて鞭打ちながら至近距離を維持している。
その間にイリスも狙いの位置へと到達する。小型マガツヘビの後側、尾の届かない位置から一気に距離を詰めていき。
「あぁ!? いてえ! いてええ! くそ、くそ狐の妖怪がぁああ!」
小型マガツヘビがイリスの接近に気づいたときにはもう遅く、後ろを振り返ろうと隙を見せれば鞭が一発当てられる。痛みに喚くその隙に、すれ違うように紫電が一筋駆け抜けた。構えた彩刃『虹霓』で強かに尾の付け根を打ち据えれば、浸透する痛みに傷に、小型マガツヘビがぎゃんぎゃん喚いて悪態をつく。
「あなたみたいな乱暴者にこれ以上、街も、みんなの生活も、荒らさせないんだから!」
人も妖怪も、その間の子も手を取り合ってマガツヘビを倒してみせると、長いまつげのその下の紫も輝かせ、イリスは高らかに宣言してみせた。
🔵🔵🔴 成功

石蕗中将さんと急いで合流して加勢に加わります。
鎌鼬三姉妹と牛鬼二体(蜘蛛)に、中将さんを攻撃するマガツヘビの牽制を指示して「加勢します!」と声をかけ前線に立ちます。
中将さんに、自分がマガツヘビの動きを鈍らせるので、そのタイミングで敵を攻撃して仕留めて欲しいと協力をお願いします。
黒龍之来臨の死霊弾の連射でマガツヘビの破壊を止めさせ、死霊の群れで凍らせてから中将さんに攻撃を合図し、僕も続いて縛霊手の強打で攻めます。
住人が避難しても、街には大勢の人々の大切なモノが残されたまま。
錆びた看板1つだって、誰かの宝物だったりする。
1人でも多く、1つでも多く、再会を喜び合えるように、これ以上は、壊させない!
●
鎌鼬三姉妹と牛鬼二体を引き連れて、ガザミ・ロクモン(葬河の渡し・h02950)は、急ぎ石蕗中将のいる戦場へと赴いた。
ガザミは石蕗中将を狙う小型マガツヘビを指して、攻性インビジブル達へと指示を飛ばす。
「ヨキ、コト、キクにニライ、カナイ。あそこの小型マガツヘビを押さえてください」
小型マガツヘビを鎌鼬や蜘蛛姿の牛鬼が、腕を振り上げた小型マガツヘビへと襲いかかる。長く留めておくことは無理でも、牽制の一つになればいい。
ガザミはそのまま中将に並ぶように前線へと躍り出た。
「中将さん、加勢します! 僕が動きを鈍らせますので、そのタイミングで攻撃して仕留めてください」
「了承した。共闘、ありがたく」
石蕗中将の返事を聞きながら、ガザミは死霊弾を撃ち出した。当たるように念と呪いを込めた弾が、鎌鼬に切られた表皮に当たって小型マガツヘビの気をそらす。牛鬼も合わせて糸をより合わせ、それをぐっとマガツヘビの腕に巻きつけた。
「くそ、じゃまだ! くそくそ、くそがあ!」
撃たれる弾を払い除け、くくられた糸を千切ろうとぶんぶんと腕を振った一瞬に、死霊の群れがまとわりつく。芯まで凍える死霊達が小型マガツヘビの体に絡みつき、数瞬の猶予を生み出した。
「今です!」
ガザミの声がけと同時、石蕗中将の鞭がしなる。強かに打ち据えた一発は、小型マガツヘビの胴に跡を残した。同じ場所を万雷を纏う黒龍の顎のごとき縛霊手の強打で打ち据えられて、小型マガツヘビはいっそう大きな声を上げる。
「いてえ! くそ、くそがあ! ぜんぶこわしてやるぅう!!」
「させません!」
ここから住民がすでに避難していても、この街には大勢の人々の大切なモノが残されたままだ。そこで壊れた錆びた看板も、傷つけられた家屋も、壊れて転がる品々も誰かの宝物なのだ。
「1人でも多く、1つでも多く、再会を喜び合えるように、これ以上は、壊させない!」
暴れる小型マガツヘビを一体でも早く倒すべく、ガザミは気炎を上げていた。
🔵🔵🔴 成功

桜(h06126)とコンビで
小型……小型ぁ?
分身体でこのパワー、確かにこりゃ洒落になんないわね
雷霆銃から【雷撃弾】を放ちながら参戦
帯電バフは指揮で能力低下したのを補うのにちょうどいいハズ
状況が状況だしね、今は|鬼獄卒《あんた》の指揮下に入ってあげるわよ
前衛は中将と式神鬼に任せて、桜と連携しながら後方から援護(弾幕)
建物から建物に跳び移りながら雷撃弾を【乱れ撃ち】
【牽制射撃】で小型マガツヘビの足止めをしつつ、帯電バフを切らさないように立ち回る
爆弾で足場を崩したり(破壊工作)、【挑発】して【おびき寄せ】て、一か所に集めて……
桜ぁ! ぶっ放しなさい!

雷鼓(h03393)とコンビで
わーお、パワフル~
これだけ強かったら策とか練る必要なかったでしょうねぇ
雷鼓の雷撃弾で怯んだ敵を【斬空破】でズバっと【切断】
結構消耗しちゃってるんじゃない?
あいつの肉、妖力の塊だろうし、妖怪なら食べて回復できそうだけど
さぁて、中将殿? ご下命をどうぞ?
雷鼓と一緒に後衛で援護よ
マシンガンフィンガーで【牽制射撃】したり、大口径対魔ライフルで【貫通攻撃】したり、風遁(衝撃波)で斬り刻んだり
挑発でヘイトが向いた雷鼓を【鉄壁】のサイボーグアームで【庇ったり】
我ながら八面六臂の大活躍ね
雷鼓が誘い込みに成功したら……おっけー!
対結界ミサイル! 【一斉発射】!! いっけー!!
●
じったんばったん、ぎゃあぎゃあ喚き、古妖と変わらない力を滅多矢鱈に振り回して暴れ回る小型マガツヘビに、高所より見下ろす瑞城・雷鼓(雷遁の討魔忍・h03393)はうわあと言いたそうな顔をした。
「小型……小型ぁ? あれで?」
そんな幼なじみの傍らで、鋼河・桜(風遁の討魔忍・h06126)は小さなヘビとはとても言えない、そんな姿に、そして暴れ回るその力にちょっと引いたような、呆れたような顔をしていた。
「わーお、パワフル~。これだけ強かったら策とか練る必要なかったでしょうねぇ」
「確かに分身体でこのパワー、確かにこりゃ洒落になんないわね」
ただひたすらにその力で、何もかもなぎ倒して気に入らないものを壊してしまえばよかったのだろう。その意識のまま暴れる小型マガツヘビを放っておくわけにはいかない。
「行くわよ、桜! 雷遁! |雷撃弾《ライトニングバレット》!!」
「任せなさい、雷鼓! |風遁! 斬空破!!《サイクロンカッター》」
二人の忍びが宙を舞う。石蕗中将が式神鬼を向かわせた小型マガツヘビに得意の術を放ちながら、身軽く戦場へと降り立った。
雷鼓の持つ二丁拳銃、雷霆銃ヴァジュラより放たれた弾丸は小型マガツヘビの目前で爆ぜた。爆風で強かに小型マガツヘビを叩きのめし、内に秘めた雷電の力を式神鬼や中将へと届け、支援とした。
爆風に動きを止めた小型マガツヘビに、桜の風気によって練り上げられた斬撃波が襲い来る。当たった場所の肉を切り取って、石蕗中将の辺りに風が飛ばしていった。
「くそがあ! いてえ! くそがああ!」
ぎゃんぎゃん喚く小型マガツヘビの声を背景に、雷鼓と桜は中将へと並び立つ。
「」
「討魔忍参上! 今は鬼獄卒、あんたの指揮下に入ってあげるわよ。さっさと小型の方を倒しましょ」
「同じく討魔忍参上! さぁて、中将殿? ご下命をどうぞ? あとあれの肉片は妖力の塊じゃない、食べたら回復できそうよ?」
「協力、礼を言う。ならば後方よりの援護を願う。肉は食らう隙があれば食おう」
そう言うと中将は、痛みに喚いていっそう暴れる小型マガツヘビに再び式神鬼を向かわせた。列を組み、複数の方向より小型マガツヘビを留めることで、後衛からの火力や支援が届くようにと戦い出す。
雷鼓は地を蹴り壁を蹴り、建物の上を渡りゆく。雷遁を雷霆銃より乱れ撃ち、式神鬼の包囲を抜けようと暴れる小型マガツヘビの動きを押しとどめた。同時に雷電での支援も常にあるように幾重も打ち続ける。
桜は雷鼓を支援するように飛び回る。建物の上から雷鼓気を引かれた小型マガツヘビを大口径対魔ライフルで撃ち抜いた。撃ち抜かれたことに苛立つその個体には、雷鼓の爆弾が足元を襲う。グラリと傾いだその瞬間に、再度斬空破を飛ばして切り刻む。
式神鬼に阻まれ、雷鼓と桜の牽制で思うように動けなず苛立つ小型マガツヘビに、少し遠間から雷鼓は嘲る声をかけた。
「なぁんだ、マガツヘビって言ってもこんなものなのね! 矮小って言葉、ピッタリじゃない!」
「くそがきが、ちょうしにのるなああ!!」
ぶんと太い腕が、尾が、式神鬼を払い除け一直線に雷鼓へと向かってくる。
避けるでもなく立つままの雷鼓へ、小型マガツヘビ腕が伸びた。小柄な体躯に届くその前に、桜の腕が割り込む。頑丈なサイボーグの腕は、ただの肉と骨よりは被害が少ない。ギシギシと軋む腕に眉を寄せ、かかる重圧に耐えてみせれば、雷鼓と桜の目の前ですでに傷を負っていた小柄マガツヘビは止まった。
雷鼓はおまけの雷撃弾を撃ち込みながら桜に叫ぶ。
「桜ぁ! ぶっ放しなさい!」
「おっけー! 対結界ミサイル! 一斉発射!! いっけー!!」
桜の機械化した部分より、強力なミサイルが放たれた。すぐ目の前の攻撃に、小型マガツヘビは尾で振り払おうとするけれど、追いついた式神鬼が押さえ込む。
払うも避けるも叶わず、傷ついた小型マガツヘビは式神鬼ごと雷撃弾とミサイルの爆発に飲まれて肉片となり、消えていく。
「まったく、無茶するんだから」
「別に庇われなくってもあれくらい避けたわよ!」
「はいはい。ほら、次に行くわよ」
負けず嫌いが顔を出し、ムキになる雷鼓をあしらって、桜はくるりと踵を返す。雷鼓もすぐに彼女を追うのだった。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功
第2章 ボス戦 『マガツヘビ』

POW
マガツカイナ
【腕】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【霊的汚染地帯】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
【腕】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【霊的汚染地帯】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
SPD
マガツサバキ
60秒間【黒き「妖の火」】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【禍津ノ尾】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
60秒間【黒き「妖の火」】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【禍津ノ尾】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
WIZ
マガツイクサ
【小型マガツヘビの群れ】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【禍津ノ爪】」が使用可能になる。
【小型マガツヘビの群れ】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【禍津ノ爪】」が使用可能になる。
√妖怪百鬼夜行 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
●禍津の蛇、大暴れ
小型マガツヘビを倒し、一息ついたそのすぐ後に、大音量の吠え声が響き渡る。
「|峨旺旺旺旺旺旺旺雄雄雄怨!《GAOOOOOOOOOOOOOONNNN!!!!!!!!!!》」
苛立ち怒り狂い、目にしたものすべて壊してしまえ、と蘇ったマガツヘビ本体がやってきた。
「糞共が、邪魔しやがって! 今度はお前らを轢き潰して殺してやる! 人も妖も、全て全て、轢いて握って潰して壊して殺してやる!! この世界も、他の世界も、それから√EDENもだ!!」
先程の小型マガツヘビとは比べ物にならない程の無限の妖力で、ただ怒りのまま触れたものを壊して潰してしまおうとマガツヘビは暴れ回る。暴れまわって周囲全てに破壊を広げていく。
普通ならば勝つことはできない、それほどの力の差があった。
けれど式神鬼が、鬼獄卒『石蕗中将』がマガツヘビを押さえるために前に出る。
「私達があれを押さえよう。また、他に策があるならば従おう。マガツヘビは力こそ強いが頭はさほどでもない。策にもかかりやすい」
彼と力を合わせれば、あるならば策を交えて戦えばきっと勝つこともできるだろう。

ありがとうございます、中将閣下。引き続きよろしくお願いします。
兎にも角にも√能力を使って頂かなければ。
直情的でプライドが高いとお見受けしましたので、中将閣下が挑発して下されば、見せつけるように√能力を使って下さるのではと。
タイミングを合わせてわたくしも隠れつつ√能力を使用し、纏っていた小型マガツヘビの群れを剥がし、能力を強制的に解除致します。
時が止まるので、相手も解除されたとは気付きませんでしょう。この隙に中将閣下には√能力で己を強化しつつ背後へ移動して頂き、こちらの能力解除に合わせて全力で不意撃って頂きたく。
細やかながらレーザーで支援致しますね。
●
石蕗中将の言葉に、アインは柔らかく礼をいう。
「ありがとうございます、中将閣下。引き続きよろしくお願いします」
ふわりと翼を揺らしつつ姿勢を正し、今も暴れるマガツヘビをアインは見やる。
なるほどなるほど、確かに力は溢れており、中将の生み出した式神鬼十二体であっても完全には押し留められていない。しかし動きは単調に暴れるか、気まぐれな行きあたりばったりでしかなく、統率された式神鬼に翻弄される時すらある。
「ふむ。中将閣下。一つお願いしたいのですが」
「……聞こう」
式神鬼を操る中将の、少し遅れた反応速度の応えを得て、アインは策を語り始める。
「かの大妖に兎にも角にも、速度を早め、鋭い爪を纏う力を使って頂きたいのです。直情的でプライドが高いとお見受けしましたので、中将閣下が挑発して下されば、見せつけるように力を使って下さるのではと。それが叶うなら、わたくしは隠れた場所よりマガツヘビの不意をつきましょう」
「……了承した」
中将はアインの言に頷いて、式神鬼の動きを変える。押しとどめるときには今までのように真摯に押さえるでなく、あえて肩を揺らして嗤うように。その攻撃を避けるときには、大げさに身をよじるように。
止めは中将の一言だ。
「……言い伝えられている妖ほどの強さはないな。疾く、鋭い爪もない。偽物か、やはり矮小な頭脳ゆえ活かしきれぬか」
「峨旺旺雄雄雄怨! 糞が、糞糞!! 糞餓鬼が!! なら見せてやる!!」
ずるりと、落ちた肉片が小型マガツヘビの形をとって、轟々と吠えたぎるマガツヘビにまとわりつく。体表を覆う群れの数に合わせ、動きはいっそう疾くなり、爪が鋭く伸びていく。式神鬼達を蹴散らす動きもひときわ激しくなっていた。
それはアインの狙い通り。力を増した動きに慣れた頃を見計らい、√能力を行使する。
音が止まる。塵すら動きを止め、何も動かない。光も動かない時を止めた戦場で、アインの左手には木星の紋章が輝いた。
「群れを剥がし、能力を解除します」
誰も傷つけず、困難を解決するために叶えられる一つの願い。それは確かに叶えられた。
音が戻る、塵が漂い戦場は動き出す。
急に体の重くなったマガツヘビはつんのめり、地面に頭から突っ伏した。
さらに動きを押さえるように仄光より生じた光線が、倒れたマガツヘビの肉を穿つ。
狙い以上にうまくいった作戦に、中将へと合図しつつ、アインはマガツヘビに声をかけた。
「申し訳ありませんが、あなたを止めさせていただきますね」
アインの声はどこか優しい。マガツヘビに怒りや憎しみだけでなく、暴れるしかないあやかしを憐れむようですらあった。
後ろから思い一撃を受け、痛みに喚くマガツヘビの声を聞きながら、彼はそっと頭を垂れるのだった。
🔵🔵🔵 大成功

【カンパニー】
あらまあ、おっきくって逞しいのね~❤
でも、知性がなければいくらでもやりようはあるわ❤
前衛はツワブキちゃんがどうにかしてくれてるから…
ヴィルヴェちゃん、陽動お願い❤
ころもちゃんは隙を作り出せるかしら?
じったんばったん大暴れな怪獣ちゃんに、キツーいお仕置きしてあげましょ❤
…って、そのゴーレムの造形は何よう!?
手法・快刀乱麻
目潰し食らって大暴れなマガちゃんに一撃よ~❤
手の一本、尻尾の先でもいいわ
少しでも弱らせてアタシたちの後に繋ぐわよ!

【カンパニー】
カノロジー…なんと言うか言葉に品がないですわー
ま、やりようがあるってのはその通りですわね
ヴィルヴェちゃんのゴーレムと式神に囲まれたマガツヘビの行動なんてお見通し
力任せに大振りの攻撃でまとめて吹き飛ばそうとするはず
その隙に神経毒が含まれた私の墨を吹き掛けてスッ転ばせてやりますわ
滑りと毒で動きが鈍ったら後はカノロジーにお任せしますわね

【カンパニー】
ふむ。力だけの馬鹿じゃな。
まあその力が桁違いなのが問題じゃが
『ゴーレムメイカー』で反射のゴーレムを量産じゃ
ゴーレム達には『幻影の指輪』でカノロジーの幻影をかぶせておこうか
ほれほれ、殴りたくなるじゃろ?
そうして殴れば、反射で大ダメージと言う寸法じゃ
強すぎる力が仇となったな
ついでに仲間への攻撃も防げるから一石二鳥じゃ!
矮小なる頭脳では幻影は見切れんじゃろ
強さに見合う知能が無いと、宝の持ち腐れじゃな
●
妖力に溢れ、がむしゃらに暴れ狂うマガツヘビにも、『カンパニー』一行は別段調子を崩さない。
「あらまあ、おっきくって逞しいのね~❤」
「カノロジー……なんと言うか言葉に品がないですわー」
「あら、そうかしら?」
きゃっとハートマークつけてはしゃぐようにしなを作ったカノロジーに、ころもは少し半眼気味の冷たい視線を向けた。複雑なお年頃故に、やや過敏になっているのかもしれない。やや潔癖な心持ちの年頃なのだろう。
一方、もうちょっと若いヴィルヴェはまったく気にした素振りはなく、暴れて吠えるマガツヘビを観察していた。
「うむ。戦略も何もない、ただひたすらに有り余る力をぶつけておる。大妖、総身に知恵は……の、単なる力だけの馬鹿じゃな。まあその力が桁違いなのが問題じゃが」
ヴィルヴェ言葉に、カノロジーはうふんと笑って、ころももコクリと頷いた。
「そうね。でも、知性がなければいくらでもやりようはあるわ❤」
「ま、やりようがあるってのはその通りですわね」
確かに桁違いの力は大きな障害だ。けれどそれを小さくしてしまえる隙が、矮小なる頭脳と称されるほどの知性の無さである。
今も石蕗中将が優れた指揮能力で操る式神鬼の連携に、マガツヘビの行動が制限されていた。最小限の被弾でいなす式神鬼達を見ながら、カノロジーはヴィルヴェところもに作戦を告げる。
「ふふ、前衛はツワブキちゃんがどうにかしてくれてるから……ヴィルヴェちゃん、陽動お願い❤ ころもちゃんは隙を作り出せるかしら? じったんばったん大暴れな怪獣ちゃんに、キツーいお仕置きしてあげましょ❤」
「うむ、陽動任されよう」
「ええ、もちろん。お任せあれ、ですわ」
頷いたヴィルヴェが早速見つけた道をLesser Keyで開き、周囲に散らばる瓦礫に精霊を宿らせた。
「ふっふっふ、ついでに殴りたくなる見た目も被せるぞ」
「ヴィルヴェちゃん、そのゴーレムの造形は何よう!?」
「あら、すてきに殴りたくなりますわね」
「ころもちゃんまで!?」
「無論、敵じゃったらじゃよ」
「そうですわ、敵ならば、ですわ」
美しい体躯にすてきな頭ももちろん『手』、優美なオネェの仕草をするカノロジーの幻影を被された、反射ゴーレムの完成である。
無論、カノロジーはそこそこ不満げな声を上げる。前に出ることを厭いはしないが、殴りたくなる見た目と言われると引っかかるものがある。ヴィルヴェところものからかいに、信頼の証とわかっていても、カノロジーはんもう、と腕を組んだ。
ゴーレムはヴィルヴェの命じた通り、マガツヘビへと群がっていく。しなやかなオネェの幻影を纏って式神鬼に苛立ったマガツヘビを煽るようにわらわらと、ヴィルヴェの詠唱に応じて増えていく。
「糞が、なんだ! 手の糞妖怪か!! 邪魔だ!」
苛立ちのまま身に小型マガツヘビを纏い、速さと鋭い爪を手に入れたマガツヘビがカノロジーゴーレムを貫いた。同時に跳ね返った痛みがマガツヘビを襲う。自分の鋭い爪で纏った小型マガツヘビを貫いて、その奥の肉まで走る傷に大きく吠えたぎる。
「峨旺雄雄! 痛え!! 糞糞、糞がぁ!!」
「うむ、狙いどおりじゃな」
思った通りに殴っては痛みに吠えるマガツヘビにヴィルヴェはべ、と舌を見せている。単純な頭では幻影を見破れないだろう、苛立ちのまま仲間への被弾も防げるし、反射でダメージを重ねるし、一石二鳥だ。
「強すぎる力が仇となったな。強さに見合う知能が無いと、宝の持ち腐れじゃな」
繰り返し詠唱してカノロジーゴーレムを補充しながら、ヴィルヴェは満足そうにむふんと笑う。
「殴られるアタシはちょっと複雑よぉ」
「タンク性能に優れておるということで、一つ」
「もう」
カノロジーの再びの声も、さらりとヴィルヴェは流してみせた。
手を出せば痛いと知ったから小さな力で小突くだけ、怒りはそのまま炎として溜め込マガツヘビ。けれど小突けば跳ね返る痛みに、合間に動きを縛ろうとする式神鬼達に、マガツヘビの苛立ちもどんどん募っていく。
「糞があああ! 全部、全部だ、薙ぎ払ってやるうぅう!!」
ごうと黒き妖の火が燃え上がる。長く伸びた尾に炎がいっそう強く燃え上がり、纏われ、ゴーレムと式神鬼を一纏めに薙ぎ払った。
そのタイミングを、彼女は待っていた。
「ふふん、お見通しですわ。Buuuuuuu!!!!!!!!!!!」
大振りな攻撃のさなか、ずっと機を窺っていたころもがマガツヘビに墨を吹き付ける。
「峨嗚呼、滑る!? なんだ、墨!? 糞、糞糞!!」
彼女のドレスのように何も通さないほどに黒く、どこまでもとろりと滑らかな墨がマガツヘビの行動を阻害していく。大きい体で力任せに立ち、ぶんぶんと暴れようとしても、滑ってうまく力が入らない。
「ふふん、いいざまですわー。そのまま私の墨で神経まで侵されてしまいなさい」
目元にまでたっぷり吹きかけられた墨はマガツヘビの視界も覆っている。故にころころ笑うころもの姿も見えず、言葉だけでマガツヘビは単純に判断してしまう。
「糞がぁ! 手前、蛸か、蛸の墨かぁあ!! 糞蛸のくせに潰してやるぅうう!!」
「あ゛あ゛!? 串刺しどころか開きにしてやりますわよ!? カノロジーが!!」
神経毒も含まれた墨に蝕まれながら吠えたマガツヘビに、ころもはぎゃんっと吠え返す。
指名されたカノロジーは、滑りながら暴れ、神経毒をいっそう早く身に回しながらまた暴れるマガツヘビへとすでに近寄っていた。彼もマガツヘビと同じように滑りはするが、冷静にグラップルで鍛えた体幹で、動作を制御すればどうということはない。
先程よりも緩慢になってきた動きの隙をついて、カノロジーはすっと右手の指を揃える。
「開きにするにはちょっと大きすぎだけど、尻尾の先くらいはいけそうね」
カノロジーの手が、手刀の形を取って振り上がる。
それを嫌がって、足掻くようにマガツヘビの太い腕がカノロジー目掛けて振り下ろされる。片腕は追加でかけられた墨が滑らせた。もう一方は、反射ゴーレムが分け入って砕けて跳ね返した。尾の動きは式神鬼達が組み付いて封じている。
「——アタシは、手だけで十分切れるのよ」
炎をまとった尾の先が、カノロジーの手刀ですぱりと切り落とされた。妖力の塊のようなそれは、宙を舞ってから地に落ちて、すっと虚空に消えていく。
切られた尾の先を妖力で補い、組み付いた式神鬼を振り払い。反射ゴーレムの反射でより力を失い、墨で滑って体を損なってはまた吠えるマガツヘビ。
「痛えぇええ!! 糞共、皆潰してやるぅうう!!」
「できるものならやってみなさいな」
「その度、その一撃を返してやろう」
「完全な開きにしてやりますわー!」
少しでも弱らせて、仲間に、先に繋ぐ。これを繰り返せば無限と謳われたマガツヘビの分体を倒せると、今の戦いで確信も持てた。
『カンパニー』一行は油断せずに暴れるマガツヘビに相対し、己の得意分野で魅せてやろうと意気込み再び戦場で舞うのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴 成功