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水晶の街と1人の天使

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 これは、ずっとずっと昔のこと。
 水晶の街と1人の天使のお話です。

 街の名前はクリスラーン。
 街を包む美しい水晶は、太陽も月も受け止めて輝き、虹色の光に包まれていました。

 みんなが信じる神様の名前はクィスさま。
 街の水晶は、みんなクィスさまのおかげ。
 だから、たくさんお祈りしました。
 祈りは輝く水晶として街を包み、光溢れるクリスラーンはまるで楽園のようでした。

 けれど、恐ろしい日が突然訪れました。
 地の底から次々と醜い怪物が溢れてきたのです。
 怪物達は街へと押し寄せました。

 人々はそれを厄災と呼びました。

 街へと迫る厄災に立ち向かうのはたった1人の天使の少女。
 輝く翼を開き神様から受け取った水晶の力で、厄災へと飛び込んでいったのです。

 彼女は、神様から貰った加護の力で厄災に抗います。
 襲いかかる厄災を水晶の盾で受け止め、その隙を水晶の剣で切り捨てます。

 自らが傷つこうとも、天使の少女は決して屈しません。
 皆を助けるために羽ばたくのです。

 けれど、その小さな体の腕は、広く大きな都の隅々まで届きません。
 今こそ必要なのは神様の大きな掌です。

 けれど。
 けれど、けれど、けれど――。

 神様は、助けませんでした。
 それどころか、守るべき人々は神様の力で次々と水晶へと変わっていったのです。

 だから。
 忘れないでください。
 信じる存在は、あなた自身で選んでください。
 想うのも、願うのも、感謝するのも、あなた自身が決めてください。

 だから。
 信じるものを、ちゃんと見てください。
 その瞳をしっかり見つめて。
 優しい笑顔では、瞳をしっかり見ることができません。
 だって、目が細いですから。

 ちゃんと、目を開いて――しっかり視て。

 神様だって想いがあるのです。
 その想いをちゃんと視てください。

 クリスラーンのカミサマは、自らが神様であるために祈りを集めていただけでした。

 カミサマは何も言わずに去りました。
 去ってしまいました。
 この街を守る必要は、もうないのだと――。

 そのとき、天使は気付いたのです。
 カミサマが自身に下さった加護は、種子。
 水晶を操る力なんかじゃない。
 これは、蝕むもの。
 輝きで隠された、禍々しいもの。

 だからといって、今は人々を守るために戸惑ってなどいられません。

 彼女は優しかった笑顔を、辛く苦しい顔に変えて戦いました。
 カミサマのくれた力で厄災を倒し続けたのです。

「大丈夫ですか?」
 
 厄災を倒して振り向けば、人々は水晶に変わっていきます。

「怪我はありませんか?」

 厄災を吹き飛ばして声をかけても、もう返事はありません。

「必ず助けます!」

 厄災の前に立ち塞がって出来た傷は、水晶の像を汚しただけでした。

 満身創痍で厄災をすべて払っても、天使は誰1人救えなかったのです。

 天使は悲しみ、苦しみ、悩み、謝りながら自らを絶つことを選びます。
 絶望し諦めた訳ではなく、抱えた種子を終わらせる為に。

 けれど、彼女は終われませんでした。

 何度何度自らを罰しても、目は覚めるのです。
 夜のように落ちた瞼は、朝のように必ず開くのです。

 その中で、彼女は気づきました。
 私一人では、この闇を晴らせない。

 一人で晴らせぬのなら、晴らせる者を探そう。
 だから、前を向いて翼を動かすと決めました。

 それから彼女は人を救い、育ち育てていきます。
 導きの白天使の物語はこうして始まったのでした。

 導きの白天使は、英雄を育て幾度となく世界を救います。
 数々の厄災を打ち払い、魔を砕き、人々を守り。
 数々のお話の中で翼を開くのです。

 力なき少年が剣を取り、村を救い、街を救い、国を救い。
 優しき王と呼ばれるまでの英雄譚。

 天使は王が眠るまで、隣で彼を支え続けました。

 一人の詩人が奏でるハープで厄災を払い、傷んだ人々の心へ温かい光を届ける物語。

 天使は青年の音で歌い踊り、人々の心へ共に春風を届けました。

 天使と嘯いた少女が、本当の天使と出会い、人々を救う本当の天使に至るおはなし。

 意地悪だった娘は天使と出会い、旅路の果てに本当の天使として人々を救いました。

 天使に導かれた者達は皆、幸せを世界に作り出した英雄になったのです。
 それなら、天使はどうなったのか、ですか?

 導きの白天使は英雄譚の後、救いの手を持つ英雄たちに願うのです。

「――」

 どんな優れた英雄たちにも、天使の願いは叶えることができませんでした。
 剣でも、楽器でも、翼でも。
 澄んだ心、英雄の心――本当の水晶の心とは、そういうことなのかもしれません。

 これは、ずっとずっと昔から今も明日もこれからも続いていく、本当の昔話です。
 このお話には、英雄にだけ伝えたという秘密の願い事があるんです。

 |――《・・・・》。

 もし――物語のすべてを見届けたのなら、ここに約束の言葉を付け足してください。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​ 成功

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