過ぎ去った営みの陰で
そこは都心から程よく離れた郊外、人の住む事も無くなった荒廃した集合住宅だった。老朽化で人が住むには危険が多く、さりとて数階建ての建物が立ち並ぶそこを解体するには莫大な資金がかかる。
やむなく放置されたそこは、心霊スポットや自殺の名所として機能する事となり、好奇心に任せた人間や世を儚んだ者達だけが訪れる場所となった……何が言いたいかって?生贄の調達や隠れて何かをやるには丁度いい場所だって事だ。
……埃っぽい空気と、カビ臭い匂いで目を覚ます。目に入るのは、剥げたリノリウムの床、カビで黒ずんだ壁、壊れて曲がったブラインドの隙間から陽の光が差し込んでいる。次に、自分と同じ様に布や縄で拘束された人間が複数目に入る。そうして、それを囲む様にして立っている、ぼやけた遺影を抱えて立ち尽くす頭の無いスーツの人影達。
「……ここは正解ね。贄になる人間も、それを死に引き摺り込む怪異も、両方揃ってる」
スーツの人影が割れ、奥から恍惚とした表情をした赤毛の女が現れる。
「さあ、『クヴァリフの仔』の贄になりなさい。安心して、貴方達の犠牲は私達『羅紗の魔術塔』が有効に活用してあげるから」
●
「天使がダメなら『クヴァリフの仔』か……ご苦労なこって」
煙草を咥え、煙をふかしながら、|神谷・浩一《かみや・ひろかず》(人間(√汎神解剖機関)の警視庁異能捜査官カミガリ・h03307)は続ける。
「老朽化した集合住宅で、『羅紗の魔術塔』所属の√能力者が怪異を隷属させて手駒にし一般人の命を刈り取る事で、その血を贄に『クヴァリフの仔』を召喚している。既に犠牲は出ちまってるが、組織全体の失態を取り戻そうとしてか、引き続き儀式は執り行ってるようだ。アンタらには、まだ生きている人間の救助、怪異の殲滅、既に生み出されている『クヴァリフの仔』の奪取を頼みたい。
どうも儀式を繰り返し行える様に生贄は分断されてるみたいでな。方法は任せる、各々で助けてやってくれ。……好奇心で忍び込んだ結果死んじまいました、じゃあ勉強代には高すぎる。よろしく頼む」
マスターより

お世話になっております。神夜です。
今回は心霊スポットで『クヴァリフの仔』を生み出すルーティンを組んだ『羅紗の魔術塔』の√能力者の動向を打ち砕いてもらうシナリオになります。
1章は囚われた人々の救助をして頂きます。儀式の最中に乗り込んで解放する、気づかれない様に部屋を回ってスマートに救出する等、行動はお任せします。
2章は皆さんの動きに気づいた怪異が排除しようと襲いかかってきますので対処して下さい。
3章では、既に生み出された『クヴァリフの仔』を持ち去り脱出しようとする『羅紗の魔術塔』の√能力者を倒し、敵が所持するクヴァリフの仔を奪取して下さい。
2章以降の細かい部分は断章にて。プレイングはシナリオ公開直後から受付致します。どうぞよろしくお願いします。
12
第1章 冒険 『捕らわれた人々の解放』

POW
派手に乗り込んで状況をかき回し、脱出のための隙を作る
SPD
素早く捕らわれている人のもとへ行き、解放する
WIZ
魔法あるいは策略を使用して、捕らえられている人を手に入れる
√汎神解剖機関 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

おおお、いよいよ羅紗の魔術塔もクヴァリフの仔の争奪戦に参戦してきたの!?しかも召喚してるって狂信者ポジションじゃん!魔術師も怪しい儀式似合いそうだし案外ぴったりなのかも?でもでも、組織としてはそのへんのカルトとかよりずっとやばそうだし、儀式を阻止して仔も絶対に奪わないとね!
こそこそなんかするとかやってられないから派手にやっちゃおう!
ってことで【彷徨雪団ワンダリングスノー】で召喚した29体の雪だるま達と一緒に儀式に乱入!みんなで雪玉投げて場を引っ掻き回しちゃおう!
私は[霊雪心気らぴかれいき]飛ばしたり近い敵を殴ったりしつつ、どさくさに紛れて囚われた人を運ぶよ!

今もし儀式の真っ最中なら、犠牲になろうとしている方を助けたい……ところですが。
うーん。もし他に誰かがそっちを止めてくれるなら、先にこっそり、逃がせるだけの人を逃がそうかな。
手がかりがないので、しらみつぶし。数を当たりましょう。
……見張りさんもいらっしゃるかとは思いますが。そこはあれです。問答無用先手必勝で眠っていただく方向で……。
ルート能力は、逃げたり怪我した方の回復したりの助けになりそうなものを準備しときましょう。
……とりあえず、力を手に入れるために無関係の一般の人をどうこうするの、迷惑なのでやめていただきたいんですけどねえ……。
泣き言言ってもしょうがないですね。
できることを頑張りましょう!

※温厚な優しい性格です。喋り方は上品なお嬢様言葉です。
羅紗の魔術塔って、本当に許せませんわね。目的のためなら、一般人を犠牲にするなんて。無事に救出しますわよ。
まず、√「姿なき目撃者」でインビジブルたちに、囚われている人の居場所を聞いておきますわ。これで大分無駄を減らせると思いますわ。
居場所がわかったら、「闇隠れの外套」の効果で隠れながら部屋を周り(鍵開けで扉は解錠)、一般人を救出しますわ。
その後、建物から脱出するまで護衛して、次の人たちを救出しに戻ります。
魔術塔の思い通りにはさせませんわ!

アドリブ・絡み大歓迎。
欠落:恐怖心なので迷惑にならない無茶はする。
有効な技能も積極的に使う。
世を儚んでるような方々に関してはこのまま放置して、仔がもっと貯まった所で強襲して仔を奪えば、大量に捕獲できそうなんだけど。
まあ一応助けるか。
夜半に忍び込んで、家々を見て回る。
出入りしやすいように出入口が壊されてるとか怪異が出入りしてるとか、ちょっとした物音を頼りに生贄が収容されてる家を探し、出来るだけ穏便に忍び込んで解放して行こう。
「静かにね。多分これから戦闘が始まって賑やかになるから、その隙をついて逃げるといいよ」
それまでは、目立たない所に隠れててもらうか。

ひび割れた廊下、剥がれた壁紙、腐った階段。
もう誰も住んでいないはずの集合住宅に、今夜も“あるはずのない何か”が灯りをともす。
「贄とか儀式とか古いよね~。流行ってんの?命をコインみたいに扱うのさぁ、ほんとセンス悪〜」
無害・チャンは錆びたコインを弾きながら、にやけた顔で錆びた扉を蹴る。
「ま、どうせ壊すんだし、中で何やってようが関係ないよね。あっそ、って感じ?」
中にいる何かがこちらに気付いたのか、慌ただしい足音が聞こえた。無害ちゃんはいっぱいいるじゃん!と愚痴りながら小さく舌を鳴らすと、ゆらりと廃墟に踏み込んだ。
「さぁ、いくら賭ける? この命のルーレット、止めてみせよっか」
●闇の帷の中で
静寂に包まれた夜半、|北條・春幸《ホウジョウ ハルユキ》(汎神解剖機関 食用部所属 怪異調理師・h01096)は、アンティーク調のランプを創造すると、灯りをつけること無く件の集合住宅へと足を踏み入れる。普通であれば恐怖を煽る静けさや不気味さにも、それを感じる心を欠落した男からすれば訴えかけてくる物も無く、軽い足取りで廃墟の中を進んでいく。
「おい、ニンゲン」
足元を見ると、黒猫がなぁーごと鳴いている。|アンティーク調のランプ《不思議骨董品》のおかげか、意識を集中せずともしっかりと意思疎通の出来る言葉に聞こえている。
「安心しろ、あの気味悪いヤツらは近くには居ない。……アレはお前の仲間か?」
黒猫は怪訝な顔で春幸を見上げ問いかける。
「いや、僕はそれらをなんとかしに来たんだ」
「そうか……寝所に妙な奴らが入ってきて迷惑しているんだ。案内してやる、早くなんとかしてくれ」
「もちろん、そのつもりだよ。……ちなみに、そいつらに部屋に運び込まれた人間はいなかったかい?」
「……案内してやる、アレも邪魔だ、連れて帰るなら連れて帰れ」
小さく舌打ちした黒猫が、春幸を先導する。黒猫の導きに従いながらもしっかりと聞き耳を立て、人の気配のする部屋に何やら印を書いていくのだった。
●闇夜の黒薔薇
(目的のためなら、一般人を犠牲にするなんて……許せませんわ。無事に救出しますわよ)
ルビナ・ローゼス(黒薔薇の吸血姫・h06457)は黒い外套を目深に被りながら、夜の廃墟を行く。
「……皆さんが見た真実を教えて下さいませ。」
降霊の祈りを捧げ、未だ縛られた者共に協力を仰ぐ。
「なんだい、お嬢さん。オレで出来る話ならいくらでもしてやるよ」
現れたのは脇腹をナイフで刺された軽薄そうな男が1人。顎に手を当てながら笑顔で顔を寄せて来る。
「……ここ最近、人が集められているような部屋は無くって?」
少しばかり後ろへと距離を取りながら問いかけるルビナ。
「人……そういやなんか沢山の首の無いスーツ姿の男がいろんな部屋に人担ぎ込んでたな。みんなおんなじ格好だから気味悪いったらねぇ。部屋の場所は……ああ、お嬢さんと同じくらいのタイミングで来た男が、部屋の入り口横やら扉やらに、√って印付けて行ってたな、その部屋と一致する。……そんなに距離取るなよ、久々に人と話せて嬉しいんだ。大体俺の好みはグラマラスなお姉様で小さいのは守備範囲外」「ありがとう、それと何か言いまして?」
食い気味に距離を詰めて笑顔で黒いナイフの刃を男の首元へと添えるルビナ。ともあれ、先に当たりをつけている仲間がおり、それに間違いが無いという裏付けが取れたのは喜ばしい事だ。
「わかった、俺が悪かったよ。もうナイフはこりごりだ。ま、こっち側に来るのが早い人間は少ない方がいい、頑張ってくれ」
「ええ……その為に来たのですから、お任せ下さないな」
そう言って再び歩き出したルビナを、男は両手を上げたまま見送った。
●れっつごー雪だるま調査団
「いよいよ羅紗の魔術塔もクヴァリフの仔の争奪戦に参戦だね!組織としてはそのへんのカルトとかよりずっとやばそうだし、儀式を阻止して仔も絶対に奪わないとね!
……あの部屋、めっちゃ集まってるね。よし、こそこそなんかするとかやってられないから派手にやっちゃおう!」
聞き込みよりも足で稼ぐ方法を取ったのは、|雪月・らぴか《ゆきづき・らぴか》(霊術闘士らぴか・h00312)。そうして首無しスーツの集団が吸い込まれていく部屋を開けて突入する。
目に入ったのは拘束された人々とそれを囲む首無しスーツ達だった。
「みんなー、調査の時間だよー!」
どこからともなく雪だるまの群れを呼び出し、始まらんとする儀式に乱入する。一部は拘束された人々を囲む様にして首無しスーツとの間に割って入り、残りは雪玉を投げて場をかき乱す。
「んしょっ!!さ、もう安心だからね。これに懲りたら怪しい場所には来たらダメだよ」
混乱に乗じてらぴかは雪だるまを掻き分け、囚われた人々の拘束を解きにかかるのだった。
●夜を駆ける
(……とりあえず、力を手に入れるために無関係の一般の人をどうこうするの、迷惑なのでやめていただきたいんですけどねえ……。泣き言言ってもしょうがないですね。できることを頑張りましょう!
さて……今もし儀式の真っ最中なら、犠牲になろうとしている方を助けたい……ところですが)
|見下・七三子《みした なみこ》(使い捨ての戦闘員・h00338)がそう思考すると同時に、少し離れた所から派手な物音が聞こえて来る。
「任せて良さそうですね」
先にこっそり、逃がせるだけの人を逃がそうと動き出した七三子の下に1通のメールが届く。
『入り口、√の印、人の気配有り』
(しらみつぶしに探すつもりでしたが……絞り込めるのは有り難いですね)
見張りの怪異は少数、拳と蹴りで速やかに黙らせていく。先手必勝だ。
「あら、手際のいい事で。……護衛は引き受けますわ。その調子で分担しましょう」
声を掛けて来たのは小柄な少女。ここにいるという事は恐らくご同輩だろう。
「そうですね、その方が効率は良さそうです。それでは頑張りましょう。ええっと、えいえいおー……、です」
控えめに拳を上げながら、協調の思念を接続し、彼女……ルビナの命中率と反応速度を上げてやる。これで急に怪異と遭遇してもいくらか優位に立ち回れるだろう。
救出した人々をルビナへと引き渡すと、七三子は再び別の部屋へと急いだ。
●そうして儀式は閉じる
「贄とか儀式とか古いよね~。流行ってんの?命をコインみたいに扱うのさぁ、ほんと、センス悪〜」
|無害・チャン《むがいちゃん》(人間災厄「ハッピー・ラッキー・ルーレット」の警視庁異能捜査官カミガリ・h05396)が錆びたコインを弾きながら、にやけた顔で錆びた扉を蹴ると、既に中では雪だるまとスーツの怪異の雪合戦が始まっていた。
「ま、どうせ壊すんだし、中で何やってようが関係ないよね。あっそ、って感じ?」
「はい、失礼するよ」
いっぱいいるじゃん、と不機嫌そうに小さく舌を鳴らす彼女の横を、知人の家を訪ねるかの様な気やすさですり抜けていく春幸。飛び交う雪玉と怨念の中、構う様子もなく、らぴかのいる贄の元まで辿り着く。既に好奇心で足を踏み入れた者は彼女の働きで立ち上がり逃げようとしている。春幸が見下ろすのはそれでも立たない無気力な者達。
(このまま放置して、仔がもっと貯まった所で強襲して仔を奪えば、大量に捕獲できそうなんだけど)
「まあ一応助けるか。……静かにね。多分これからもっと賑やかになるから、その隙をついて逃げるといいよ」
「あーっ、私も運ぶよっ!!」
手にしたアンティーク調のランプに灯りを灯し、無気力な者を担ぎ上げると動ける者には逃げる様に声をかけ、先導する。らぴかもそれに続いて無気力な者を抱え上げると部屋の入り口へと急いだ。
横を抜けていく2人と生贄だった人々をちらと横目で見遣った後、無害ちゃんはゆらりと部屋の中へと踏み込み、大量の幻覚コインを怪異の群れへと投げ放った。
「さぁ、いくら賭ける?この命のルーレット、止めてみせよっか」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『トモビキ』

POW
引き摺る紅の呪い
【後追いを求める執念 】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【赤い掌の呪い】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
【後追いを求める執念 】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【赤い掌の呪い】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
SPD
愛別離苦
自身の【ぼやけた遺影 】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【ショック】を付与する【対象の知人かつ既に故人の遺影】に変形する。
自身の【ぼやけた遺影 】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【ショック】を付与する【対象の知人かつ既に故人の遺影】に変形する。
WIZ
ブラッド・スコール
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【血のゲリラ豪雨 】で300回攻撃する。
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【血のゲリラ豪雨 】で300回攻撃する。

※温厚な優しい性格です。喋り方は上品なお嬢様言葉です。
また不気味な奴らが出て来ましたわね。塩を撒いたら嫌がらないかしら?
√「先陣ロマンチカ」を使って登場し、ハチェットと黒いナイフでなぎ払いますわ。
敵の攻撃は幻影と残像を組み合わせて回避していきますわ。
敵の持っている遺影はお姉様(Ankerの和泉・久遠)になるでしょうけど、甘いですわ。わたしを追いかけて別√に来るくらい頑丈なお姉様が簡単に亡くなるわけありませんわ!もし死んでも、護霊になって わたしの側でハアハアし続けるような人ですもの。残念でしたわね!
さあ、残りは黒幕だけですわね。覚悟なさい!

アドリブ・絡み大歓迎。
欠落:恐怖心なので迷惑にならない無茶はする。
有効な技能も積極的に使う。
「ミルキー君。お仲間のためにも手伝ってね」
Ankerの|飼い猫《ミルキー君》召喚。
右は金目で左は青目。短毛種で尻尾が短いお転婆さん。
僕より頼りになるかもね。
案内してくれた黒猫君のためにも、大掃除して行こう。
もちろん仔も全て回収させてもらわないとねえ。
前衛で闘う人が多ければ、後ろから跳弾を利用して敵を仕留めて行こう。
毒を仕込んだ怪異弾をたっぷり叩き込んであげようね。
後衛が多ければ近接かな。囲まれないようミルキー君に援護してもらいながら、同じく毒攻撃で闘うね。

全員……ではないんでしょうけど、囚われてた人たちを助けられてよかったです。
これ以上犠牲を出さないためにも、ちゃんと元を断っておかないと、ですね。
うん、なんですが…。
わあ、なんかちょっとホラーな見た目の敵さんですけど、め、めげません。
とりあえず、攻撃が当たるのなら、倒せるってことです、怖くないです。怖くないですとも!
基本的には、殴る、蹴るの近接格闘メインです。
一撃の威力よりも、手数や機動力を重視し、た戦い方のほうが得意です。
他に味方がいるなら、攪乱や陽動ですとか、
味方が攻撃するチャンスを作るための行動をとりますね。
戦隊モノの下っ端戦闘員です。連携・アドリブ歓迎します。

ふひい、大体生贄は助けられたかな?雪だるま達もありがとね!
これで全力で戦えるね!よーし、やるよー!
羅紗の魔術塔の人もクヴァリフの仔も見当たらないね?でもでも、ここが儀式場だから近くにはいるのかな?速めに片づけて探しに行きたいね!
【両鎌氷刃ブリザードスラッシャー】を発動!ササっと近づいてズバババッっと斬って次、って感じで戦っていくよ!
敵の√能力食らうとダメージも異常もやばいから、移動し続けて狙いを定めさせないようにしたいね!それでも攻撃されたら移動の速さで避けるよ!囲まれて逃げ場がないって状況もまずいから、敵の位置はちゃんと見ておかないとだね!

ねぇねぇ、無害ちゃんが来たからには……いくら賭ける?何を賭けてくれる?
怪異さんたち、ちょっとばかし、派手に揺れてもらうよ?
無害ちゃんは余裕そうな表情で怪異を見据えると、獰猛に笑いながら目を見開いた。
「さぁさぁ!出たとこ勝負だよ!」
静寂を切り裂く大声で叫び賽子を指先で弾くと、空中を跳ねたそれが霊的な火花を散らしながら着地する。次の瞬間、床に微細な亀裂が走り、蓄積した霊圧が震動波となって拡散していく。
敵の足元へ、制御された揺れが一斉に走る。
「いいね!ツイてるねぇ怪異さんたち!今日の分の運、ぜーんぶ使い果たしちゃったかなぁ?」
「ねぇねぇ、無害ちゃんが来たからには……いくら賭ける?何を賭けてくれる?」
無害ちゃんは、指の間に挟んだコインをダイスへと持ち替え、不敵な笑みを浮かべて見せる。
「さぁさぁ!出たとこ勝負だよ!」
彼女の表情が獰猛な笑みへと変化し、大きく目を見開く。発された静寂を切り裂く大声と同時に、彼女の指先からダイスが零れた。
√能力『|大・博・打《ギャンブル・ボム》』、投げたダイスの出目によって、最大で震度7相当まで放たれる霊能振動波の威力が変わる、振れ幅の大きな能力だ。そうして空中を跳ねた8つのダイスが霊的な火花を散らしながら着地する。出目は全て1 。
通常、一般的に想像されるダイスの出目は6までしかない。では、最大の震度が出る場合とは……そう、全てのゾロ目である。
「いいね!ツイてるねぇ怪異さんたち!今日の分の運、ぜーんぶ使い果たしちゃったかなぁ?……じゃ、ちょっとばかし、派手に揺れてもらうよ?」
次の瞬間、床に微細な亀裂が走り、蓄積した霊圧が震動波となって拡散していく。床や空気を伝い、制御された揺れが一斉に怪異の群れへと走る。
「また不気味な奴らが出て来ましたわね。塩を撒いたら嫌がらないかしら?」
そんな言葉を溢しながら、ルビナが爽やかな一陣の風と共に部屋へと飛び込んでくる。
「羅紗の魔術塔の人もクヴァリフの仔も見当たらないね?でもでも、ここが儀式場だから近くにはいるのかな?速めに片づけて探しに行きたいね!」
「これ以上犠牲を出さないためにも、ちゃんと元を断っておかないと、ですね。」
続いて部屋に戻ったらぴかの言葉に、一緒に戻った七三子が頷く。
「ミルキー君。お仲間のためにも手伝ってね」
「んなあーーー」
最後に部屋に戻った春幸が、ポケットから取り出した抜け髭を千切ると、背中にライフルを背負った飼い猫のミルキーが現れ、やる気は充分とばかりにひと鳴きする。
そう、他の√能力者が生贄の避難に尽力する中、1人で敵の注意を惹きこの場に留めた無害ちゃんの働きにより、しっかりと準備を整えた状態で対峙できる事となったのだ。おかげで1人残らず解放する事に成功していた。
先陣を切り、ハチェットと黒いナイフの二刀で斬り込んで行くのは、ルビナ。残像と幻影を組み合わせ、両手の手数で切り込んでいく。
ふと、振動波に抗った怪異がルビナの方へと遺影を向ける。ルビナの記憶の中にあり、かつ、故人の姿が遺影に映る。それが何者であるか、彼女以外に知るべくもないが、それは着実に彼女の心へと澱みを投げかけていた。身体が、重い。
直後、放たれた怪異弾が遺影へとめり込んだ。春幸だ。
「僕が援護する。……もちろん、ミルキー君も一緒に。存分に力を振るってくれ」
壁や家具を使っての跳弾で、毒の怪異弾を的確に遺影にめり込ませている。ミルキーもにゃんと鳴くと、背中の自動攻撃型サイキックライフルの狙いを定めて、遺影の顔部分を撃ち抜いて行った。
「案内してくれた黒猫君のためにも、大掃除して行こう。もちろん仔も全て回収させてもらわないとねえ」
穏やかに、笑った。
「うん、なんですが……」
鋭い蹴りで怪異を蹴り飛ばし、七三子は言い淀む。
(わあ、なんかちょっとホラーな見た目の敵さんですけど、め、めげません。)
「とりあえず、攻撃が当たるのなら、倒せるってことです、怖くないです。怖くないですとも!」
膝、拳、回し蹴り、一撃の威力よりも、ダメージを積み上げていく戦い方だ。周りの味方の様子に目を配り、抜群の機動力で部屋の中を駆け回り、割って入って陽動や撹乱もこなしてやる。他人の見せ場を察し、活かさなければ戦闘員など務まらないのだ。そうして、手数の多い攻撃で誘導してやった先では、らぴかが両端へと鎌のような氷の刃を生成した魔杖を構えていた。
「2つの刃をクルクル回せば、私自身が猛吹雪ー!いっくよー、|両鎌氷刃《リョウレンヒョウジン》ブリザードスラッシャー!!」
ピンクに輝く氷の刃が滑り、怪異の身体を横一文字に断つ。
「次っ!!」
滑らかな動きで怪異を斬っていくラピカ、幻影と残像で手数を稼ぎ斬撃を繰り出すルビナに、部屋の中にあるガラスの破片や鏡、家具の色々が殺傷力の高い順に襲いかかる。
「任せて」「下さい!!」
春幸がシリンジシューターの面の攻撃で細かい破片を打ち落とし、大きな家具は七三子が無手での連撃で大きく軌道を逸らしていく。
(これは……私が気をつけて見る必要は無いかな)
位置取りを頭の片隅で思考していたらぴかも、仲間に任せて攻撃に全ての意識を割り当てる。意識を向ける仕事が少なければ、当然やるべき事も少なくなる。攻撃にルビナとらぴか、守りに春幸と七三子、そうしてそこに、再度無害ちゃんの搦め手が加われば、手早く決着が着くのは自明であった。
……倒した怪異の身体が発火し、燃え盛る。
「ああ、やってくれるわね……生贄も、手駒も、台無しじゃない。また集め直さなきゃ。でもまずは……普通の人間より√能力者の方がいい生贄にはなりそうよね。ねぇ、邪魔したお詫びに一回死んでよ。いいでしょう?生き返るんだから」
ベランダで、女が嗤った。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『赤羅紗の魔術師『レッド・ウーレン』』

POW
怪異燃焼術
【隷属した怪異】を召喚し、攻撃技「【ブレジング・バーン】」か回復技「【ルミナス・ヒール】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[隷属した怪異]と共に消滅死亡する。
【隷属した怪異】を召喚し、攻撃技「【ブレジング・バーン】」か回復技「【ルミナス・ヒール】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[隷属した怪異]と共に消滅死亡する。
SPD
陽炎のコート
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【魔術の炎】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【煌めく炎】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【魔術の炎】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【煌めく炎】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
WIZ
バックファイアー
自身が受けた武器や√能力を複製した【炎の怪異】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
自身が受けた武器や√能力を複製した【炎の怪異】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。

※温厚な優しい性格ですが、会話する価値も無いと判断したので、敵との会話には応じません。(味方には普通に会話します)
...さて、「害獣」を駆除しましょう。(淡々とした声で)
敵の攻撃をこちらに惹き付けるように立ち回りながら、ハチェットと黒いナイフで攻撃しますわ。フェイントを混ぜながら狙うのは、関節と喉。関節がやられれば、他の仲間が狙い易くなるでしょう。喉ならば、耳障りな「鳴き声」が聞こえなくなりますわね。
敵の√能力は√「ルートブレイカー」で止めます。(特に、同化消滅する敵を呼ぶもの)
...人の命を平気で犠牲にするものなど、価値はありませんわ。まあ、分からないからやってるんでしょうね。

うひょー!セクシーなお姉さんだー!アマランス・フューリーもそうだったし、羅紗の魔術塔ってそういう集団なのかな?
生き返るからいいってことなら、もっと目立たないところで人を巻き込まずに自分を生贄にしてたら、多分私達も邪魔することなかったけどね!心霊スポットの平和のためにも、これ以上ここで儀式はさせないよ!
近づいて魔杖で殴りにいくよ!怪異に邪魔されそうだけど、[霊雪心気らぴかれいき]を飛ばして牽制しつつ、多少ダメージくらってでも殴りにいくよ!融合狙いだったら流石にちょっと迂回するけど!
怪異とレッドの両方が近い、って状況になったら【変形連鎖トランスチェイン】の連続攻撃で両方とも攻撃しちゃおう!

アドリブ・絡み大歓迎。
欠落:恐怖心なので迷惑にならない無茶はする。
有効な技能も積極的に使う。
そうだねえ。呼び出した仔を全部くれるなら、生贄くらいなってもいいよ。
と言うか召喚方法や陣を全部教えてくれるなら、汎神解剖機関でいくらでもお呼び出し出来て便利なんだけど。
どうする?
と、聞いても無駄なんだろうな。なんで皆こんなに血の気が多いんだ?
やっぱり独占したいからかな。まあそれはこっちも同じか。
仕方ないよねえ。
√能力で回復しながら敵をマヒさせるように攻撃して行こう。
このまま瀕死まで追い込んだら、彼女を生贄に仔を呼び出せたりするのかな?
ちょっと試してみたいねえ

生き返るからって、ほいほい死んであげるわけにはいきませんよね。
それに、ふつうの人を生贄にするのはもっと許容できません!
全力で、抵抗させてもらいますね!
攻撃力より手数重視。
味方がいるようでしたら、サポートをメインに動きます。
敵の攻撃に合わせて牽制射撃を行い、敵の攻撃の威力をそぎつつ、味方にバフをかけられたら一番いいんですけど。
ちょっと欲張りですけど、狙ってみましょう。
多少の怪我は気にしないことにします!
……それにしても、おなかが冷えそうな格好ですよね。羅紗の魔術師っておなか出してないとなれないんでしょうか……。
戦闘後は、そうですねえ、まだ捕まってる人がいないか、一応見ておきましょうか。
(うひょー!セクシーなお姉さんだー!アマランス・フューリーもそうだったし、羅紗の魔術塔ってそういう集団なのかな?)
などと考えながら女に視線を向けているらぴかの横で、今にも飛び出しそうなルビナを片手を挙げて制し、春幸が口を開く。
「そうだねえ。……呼び出した仔を全部くれるなら、生贄くらいなってもいいよ?
……と言うか、召喚方法や陣を全部教えてくれるなら、汎神解剖機関でいくらでもお呼び出し出来て便利なんだけど」
「汎神解剖機関っていうのは、本当にジョークが上手ね。座布団あげたらいいかしら?」
クスクスと笑いながら女が返す。
「生き返るからいいってことなら、もっと目立たないところで人を巻き込まずに自分を生贄にしてたら、多分私達も邪魔することなかったけどね!」
「んふふっ、それこそ悪い冗談だわ。そんなことしたら私がクヴァリフの仔を回収出来ないじゃない」
らぴかの言葉に、掌で魔力の炎をゆらめかせやがら答える。
「なんでそう血の気が多いんだ?
やっぱり独占したいからかな。まあそれはこっちも同じか。……仕方ないよねえ」
やれやれと息を吐いた春幸がメスを投げ放とうと摘んだ動作が開戦の合図となった。
「あら、せっかちね。余裕の無い男はモテないわよ?」
女……レッド・ウーレンが即座に距離を詰め、魔術の炎を叩き込まんとする。
「……もうよろしくて?『害獣』を駆除しましょう」
淡々と告げ、滑り込む様に割って入ると、鋭い刃でもって斬りつけようとするルビナ。まず狙うのは喉元……割いてしまえば耳障りな『鳴き声』が聞こえなくなる。
「お転婆が過ぎると可愛げがないわよ、お嬢ちゃん」
返る言葉は無い、身勝手に鳴く存在とは、会話する価値も無い。レッド・ウーレンはつまらなそうに距離を取ると、煌めく炎を纏い消えた。
直後、七三子がハンドガンの引き金を引き、床に着弾したそれが煙幕を放つ。
「これでお互い見えないという条件は同じ……生き返るからって、ほいほい死んであげるわけにはいきませんよね。
それに、ふつうの人を生贄にするのはもっと許容できません……全力で、抵抗させてもらいますね!」
「うおりゃぁぁっ!!」
煙幕の充満する部屋の中、らぴかは元気に魔杖を振り回し、ばったばったと怪異を薙ぎ倒していく。
「元気がいいわね……でも、これならどうかしら」
怪異の一体が遺影も傘も投げ捨て、らぴかへと組み付き、そのまま一体化を図る。じわじわと行動力を奪わんとしたその時、ルビナの右手が触れ、組み付いた怪異を消し飛ばす。
「ありがと!!」
「まだ終わっていませんわ。気を引き締めて下さいまし」
即座の対処に歯噛みするレッド・ウーレン。
「ちっ……」
「忘れてもらっては困るね、寂しいじゃないか」
いつのまにか肉薄した春幸が、鋭いメスで斬り上げる。
「このまま瀕死まで追い込んだら、君を生贄に仔を呼び出せたりするのかな?……ちょっと試してみたいねえ」
「残念ね、来るとわかって使える形で陣を残しておく訳無いじゃない」
レッド・ウーレンは、傍で揺れる怪異を掴み、それを爆ぜさせて今しがた斬られた傷を癒して見せながら答える。反撃とばかりに手に纏った魔術の炎を叩きつけようとすると、数発の銃弾にそれが阻まれた。
「……それにしても、おなかが冷えそうな格好ですよね。羅紗の魔術師っておなか出してないとなれないんでしょうか……」
銃口をレッド・ウーレンへと向けたまま、七三子がそう呟く。
「あら、挑発かしら?」
「あ、いえいえ、ただの疑問です」
真意は七三子にしかわからない。
「おおっ!きたきた繋がるコンボチャンス!」
そして、らぴかはその隙を見逃さなかった。ピンクの氷刃を生やした魔杖を振り回し、しっかりとレッド・ウーレンを捉える。
「いっくよー、|変形連鎖《ヘンケイレンサ》トランスチェイン!!」
まずは暗視でしっかりと位置を捉えてやり、あとは元気に振り回してやる。
「な、なによそれっ、あたまっ、おかしっ、ふぎゅっ」
怒涛の連撃に女魔術師も流石に怯んでいる。最後に霊力を込めた渾身の一撃を叩き込んでやれば、女魔術師の身体は宙を舞う事となるのだった。
「……人の命を平気で犠牲にするものなど、価値はありませんわ。まあ、分からないからやってるんでしょうね」
仰向けに転がった女魔術師に、ルビナは冷ややかな言葉を投げかけ、ハチェットを女魔術師の首へと添える。
「はぁ……いいわ、今回は負けを認めてあげる。でも……また来るわよ」
その言葉を最後に刃は落とされ、女魔術師の意識は途切れたのだった。
「……ありましたよ、見つけました」
その後、集合住宅の中を手分けして探し、七三子の声である部屋に集合した。そこには幾許かのクヴァリフの仔と、数人の若者が転がっていた。
「これは僕の方で預かる。しっかりと機関で収容して研究していくよ」
「もともとそういうお仕事です、構いませんよ。狙う輩がいないとも限りませんから、私も同行しましょう」
春幸の言葉に七三子が頷く。
「それでは、私達は彼らを運び出しておきますわね」
「うん、こっちは任せて!!」
ルビナの言葉にらぴかが続けて胸を張る。
こうして、廃墟と化した集合住宅で起きた今回の件は収束を見せたのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功