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深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ
●地獄へようこそ
「皆さん。過去類をみない最悪なダンジョンの存在が明らかとなりました」
|伽藍堂・空之助《がらんどう・からのすけ》(骨董屋「がらんどう」店主・h02416)が開口一番そう告げた。
普段は、どのような依頼でも緩い空気感を以て話をする空之助が、これほど真剣な表情を浮かべることは稀である。ならば、自然とその内容は重要かつ困難なものであろうと推測した√能力者達は身構えた。
「いいですか。このダンジョンに潜んでいるのは『『悪童魔女』ルルフィア』ッス」
なるほど。
悪戯好きな魔女で、特に他人を辱めたり困らせる悪戯を好む厄介な相手だ。
如何なる手段を以て、√能力者――√ドラゴンファンタジー内では冒険者である我々を陥れようと策を練っているのだろうかと、戦々恐々しつつ話の続きに耳を傾ける。
「『『悪童魔女』ルルフィア』に辿り着くには、絶対に通らなければならない、封印された扉がなんとニ個もあります」
ふむ。
モンスターという言葉が出てこないという事は道中に危険は無く、その扉を如何にして通るかが問題である、と。
「物理攻撃は一切受け付けない扉を解こうとすれば、自動的にその様子を全国ライブ配信される上に、更には一言一句を名前付きで詳細に入り口に存在する絶対に破壊不可能な石版に書き記されてしまうんすよ! つまり、未来永劫記憶として残されてしまう訳です」
うん?
そこまで話を聞いた者達が、一様に首を捻った。
物理攻撃を一切受け付けないとなれば、物理とは違った手段――魔法や或いは難解な謎解きでもさせられるのか。
だが、今までの攻略情報が全てご丁寧に入り口に設置されてある破壊不可能な石版に記載されているのであれば、扉を開くことはそう難しくないように思える。
だからこそ、何処が最悪なのかが分からない。
そして、その最悪たる所以を空之助は、おぞましげに顔を青くして語り始める。
「……魔法でもありません。謎解きでも、ありません。扉を開くただひとつの手段。それは――」
――『自分でもキツいと思える黒歴史を一つ語ること』です。
その場にいた何人かが回れ右して逃亡を図った。
だが、それは赦されない。このシナリオタイトルに興味を惹かれて覗いてしまった時点で、すでに深淵もまたそちらを覗いているのである。
つまりは、だ。このダンジョン内にいる『『悪童魔女』ルルフィア』を倒すためには、全国ライブ配信された状況下で、己の黒歴史を語らなければならない。しかも、語った内容は一生消えない石版に書き記されてしまうという地獄付きである。
「更にですよ。このダンジョン内では、基本的には物理攻撃が一切出来ない仕様となっておりまして。『『悪童魔女』ルルフィア』との戦闘の際にも、√能力を使用して攻撃する、或いは通常攻撃するためには『黒歴史』を話さなければいけない決まりがあるッス。等価交換ってヤツです」
なんとも嫌な等価交換である。
ちなみに、対価である黒歴史が軽い内容でお茶を濁そうとした場合は、戦闘どころか扉を通過することすら出来ないらしい。
それでは宜しくお願いするッスね~と、我関せずに見送る空之助に殺意すら覚える√能力者もいることだろう。何故ならば、『『悪童魔女』ルルフィア』を討伐できたとしても、心に負う傷は深い。
それでもなお、この恐ろしいダンジョンに挑まんとする強者に最大限の賛辞を贈る。
こうして、どちらにしろ惨事をお送りすることが確定している恐ろしい物語の幕が明けたのである……!
これまでのお話
マスターより

初見の方は初めまして。
以前参加していただいたことがある方は感謝を。
MSの|師走文《しわすふみ》と申します。宜しくお願いします。
なんか、唐突に頭空っぽで楽しめるシナリオが書きたくなりました。
後悔はしていません。
皆さん、古の右腕に封印されし中二病を存分に暴露しましょう……!
サポート使用出来るような内容ではないので、参加者様が集まるかどうか戦々恐々しております。
途中参加、特定の章だけ参加は全然可能です。
ただ、どの章から参加しても、最低一つ黒歴史を語らなければなりません。
●連絡項目
第一章の受付【5月12日09:00~5月15日24:00迄】です。
シナリオ分類(詳細はMSの自己紹介文参照)
このシナリオは【🏠ギャグシナリオ】です。
執筆状況は随時【MSページの一言雑談】にて更新。(Xの代用)
各章の受付日等は、シナリオの【タグ】にて掲載します。
●第一章『語れ! 黒歴史!』
実際の話でなくとも、黒歴史を作ってもらって構いません。
ただ、参加した『キャラの黒歴史』が、石版という名のリプレイで残り続ける事になります。真面目なキャラで頑張ってる人! この先は地獄だぞ……!
●第二章『語れ! 黒歴史! Ver2』
一章で使った黒歴史は認証されません。
●第三章『『悪童魔女』ルルフィア討伐戦』
第一、第二章で使った黒歴史は適用されません。
√能力使用時に黒歴史を作る=中二病満載の詠唱とかでも可能です。
●注意事項
同行者がいる場合
『相手の名前』『ID』または『グループ名』のご記入をお忘れなく。
グループ参加における人数制限はございません。
それでは皆様方のご参加、お待ちしております。
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第1章 冒険 『封印された扉』

POW
肉体や気合で封印の解除に挑戦する
SPD
速さや技量で封印の解除に挑戦する
WIZ
魔力や賢さで封印の解除に挑戦する
√ドラゴンファンタジー 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●地獄の一丁目
ダンジョン内に、無事?に潜入する事が出来た貴方/貴女。
仰々しく、いかにも封印されし扉ですって感じで行く手を阻む扉へ歩み寄ると、全員の頭に直接声が響いてきました。
『汝、秘めし黒歴史を語れ……。さすれば道は開かれん』
コイツ、直接脳内に……ッ!?
そう返そうとした人は、きっとこの試練に向いているでしょう。
一人ずつしか認めないらしく台座まで準備されており、そこにスポットライトまであてられています。この台座に立って語れば、それはもう動画映えするでしょう。
語らなければならない内容のことを思えば、ただのありがた迷惑でしかないですが。
それでも訪れた者達は、前へ進むために語らなければならないのです。
己の黒歴史を――!
●プレイング記載内容
黒歴史:一つ
後はご自由にどうぞ。
破壊は出来ませんが、扉を殴っても構いませんし、羞恥に身悶えても構いません。
内容によって、扉が煽ったり哀れんだり慰めてくれたりします。

※温厚な優しい性格ですが、同人誌制作で徹夜したため、妙なテンションです。
わたしの黒歴史を聞きたいと?良いですわ。嫌だと言っても聞かせてあげますわ...。うふふ...。(すわった目で)
お姉様(Anker)と知り合って間もない頃、お姉様の部屋で一人でいた時に(ちょうどお姉様はトイレに行った)本棚の奥に雑誌みたいなものが隠されているのを見つけて、こっそり見てみたら「お姉さんと小さい女の子がラブラブする同人誌」だったんですわ。しかも、お姉様にバレて、わたしも「そういうの」が好きだと勘違いされて、お姉様のサークルで制作を手伝う事になったんですの...。おかげで、今日も来る前まで徹夜ですわ。うふふ..。
「うふふ……。わたしの黒歴史を聞きたいと?」
ルビナ・ローゼス(黒薔薇の吸血姫・h06457)が、爽やかな風と共に登場して台座の上でスポットライトを浴びる。
√能力である『先陣ロマンチカ』によって、ルビナの能力が軒並み上昇しているのだが残念ながらこの扉には通用しない。通用しないのだが――。
『――お、おぅ……。なんか随分と目が据わったお嬢ちゃんが来たな』
実は意思を持っていたらしい、第一の扉が引いていた。
√EDENとは違う√のワラキア公国の高位貴族であるローゼス公爵家の長女である彼女の佇まいは気品に溢れているのが常である。公爵家の淑女たるもの、常にそれに見合う振る舞いを忘れてはいけないのだ。
台座に上ったことを確認されると、全国に向けての動画配信が開始された。一般人が己の黒歴史を語るだけであれば、それほど視聴者は見込めないのだが、√能力者である冒険者達は見目麗しい者が多い。そんな者の黒歴史が大々的に公開されるのだ。これを楽しみにしている者も大勢いる。
「嫌だと言っても聞かせてあげますわ……」
『なんか怖い』
だが、こんな雰囲気で意気揚々としている者など早々居ない。
扉や視聴者は知らないのだ。普段は温厚で優しい性格なルビナだが、同人誌制作で徹夜したため、妙なテンションになってしまっていたのである……!
「あれはそう……。お姉様と知り合って間もない頃の話ですわ」
『…………』
うっとりとした表情で話し始めるルビナに、扉は黙り込んだ。
おかしい。本来であれば、あの台座に立った者は羞恥に身体を震わせながらも、辿々しい口調で己の恥ずべき秘密を語って心にダメージを負うはずだ。なのに、何故か壇上の少女は、まるで演劇でも行っているかのように身振り手振りを交えて揚々と語っているではないか。
「お姉様の部屋に一人でいた時に……。あ、ちょうどお姉様はトイレに行っていたときですわ。わたしはほんの気紛れで本棚にあった一冊を手に取ろうとしたんですの。あれこそ運命の悪戯。青天の霹靂。そこで本棚の奥に雑誌みたいなものが隠されているのを見つけて、こっそり見てみたら『お姉さんと小さい女の子がラブラブする同人誌』だったんですわ。しかも、お姉様にバレて、わたしも『そういうの』が好きだと勘違いされて、お姉様のサークルで制作を手伝う事になったんですの……。おかげで、今日も来る前まで徹夜ですわ。うふふ……」
『オ、オゥ……』
高速詠唱なみに速度で語られた内容に、扉はただただ返事をするしか出来なかった。
だが、ルビナの話はそこで終わらない。
まだ締切まで時間があると油断していた者に訪れる地獄の締切前日。迫る印刷所のタイムリミット。一向に進まない原稿。飲む本数が増えるほどに、鉄の味しかしなくなる栄養ドリンク。頭に過ぎる『生(新刊あります)か死(新刊落としました)』の二者択一。妥協してコピー本を作ってお茶を濁そうと思ったものの、現地周辺のコンビニのコピー機は停止されてしまっている。ならばと、地元で出発前にコピーすれば良いと思っていたのに、そもそも一般的なコンビニにそんな大量にコピーすることが計算されていないから用紙の補充を願う度に時間が取られる上に、その時に原稿を見られた際に向けられる白い目。全てが己を殺しに来ていると感じられるのだ!
「聞いておりまして?」
『ア、ハイ。スイマセン……。あの、もう通ってもらっていいです。勘弁してください』
目が据わりきっているルビナに、扉は完全に白旗を上げた。
🔵🔵🔵 大成功

こんにちは、中条です。いえい。好きな言葉は強そうなので「ブイヤベース」です。じゃあ始めよう。
さて、取り出したるは僕の『他世界の言語混じりで綴られた日記帳』
では適当な頁を、ええと『…永きに及ぶ光と闇の|回旋曲《ロンド》、我が心は煉獄の迷い子が如き境地に─』……ここなんて読むんだっけな?ああ「|光と闇の回旋曲《ハルマゲドン》」だ。破壊力は低いけど「ハルマゲドンってそう言うのだっけ?」を踏まえると中々じゃないかい?自画自賛。
ちなみにこの文章の表す意味は「最近ずっと天気が不安定で嫌だな」だよ、覚えて帰ってね。
え?軽い?大丈夫、この調子であと数百冊あるからね。質より量。覚悟するがいい。
心にダメージを与えるはずが、何故だかこちらの方がダメージを負う結果となった第一の扉は心を落ち着かせようとする。落ち着かせようとしたのだが――。
「こんにちは、中条です。いえい。好きな言葉は強そうなので『ブイヤベース』です」
――これ、あかんやつや。
スポットライトが当たる台座の上で、意味不明な自己紹介を始めた|中条・セツリ《ちゅうじょう・刹利》(|閑話休題《それはさておき》・h02124)の姿に遠い目をした。
ブイヤベースが強そうならば、アクアパッツァはどうなのか。思わずツッコミを入れたくなる気持ちを抑え、扉は本来の業務に取り掛かる。
『良かろう。ならば汝の秘めし黒歴史を――』
「じゃあ始めよう。さて、取り出したるは僕の『他世界の言語混じりで綴られた日記帳』!」
『――わァ……』
我が……我が強いッ……!
あまりの強さに、扉が思わずちいかわ化してしまった。黒歴史など、本来であれば嬉々として語るべき内容ではないはずである。なのに、今回訪れた冒険者達は皆、ここが由緒正しい発表会の場だと勘違いでもしているのではないかと、こちら側が困惑するのみとなってしまっている。
ばんなそかな。黒歴史を語ることで心にダメージを与え、憔悴しきったところを美味しくいただく計画がまるっとお見通しだとでも言うのか。
「では適当な頁を、ええと『…永きに及ぶ光と闇の|回旋曲《ロンド》、我が心は煉獄の迷い子が如き境地に─』……ここなんて読むんだっけな? ああ「|光と闇の回旋曲《ハルマゲドン》」だ。破壊力は低いけど『ハルマゲドンってそう言うのだっけ?』を踏まえると中々じゃないかい? 自画自賛。ちなみにこの文章の表す意味は『最近ずっと天気が不安定で嫌だな』だよ、覚えて帰ってね」
『あばばばばばば』
中条の黒歴史詠唱に、扉がバクる。
そもそも、『覚えて帰ってね』とはこれ如何に。扉は扉。帰る場所など無く、ここが住まいである。
「え? 軽い? 大丈夫。この調子であと数百冊あるからね。質より量。覚悟するがいい」
『なん……だと……?』
誰も軽いなどと欠片も思っていないのに、攻撃?の手を緩める気が無い中条に戦慄する扉。
(こ、このままでは拙い。こんな碌でもないものに付き合わされていては身が持たぬ……!)
そういうルールにしたのは自分達であることを棚に上げて、扉は早々に扉を開けて中条に進むように促す。
『……進め。深淵に抱かれても尚此処に立つ、理の反逆者よ』
「ふっ……。君もなかなか分かっているじゃないかい」
扉の言葉のチョイスが、無事、中条の心の琴線に触れたらしい。中条は満足げに頷いて扉を抜けて奧へと歩みを進めていった。
ちなみに。扉が言った言葉の意味は、『黒歴史現在進行のまま来ましたね。貴女、恥ずかしがることすらしなかったじゃないですか』である。
🔵🔵🔵 大成功

※引き続き、徹夜のため、妙なテンションです。
もう一つ、話しますわ。うふふ。
風邪をひいた時のことですわ。お姉様がお粥を作ってくださいました。...お粥って、紫ではありませんよね。嫌な予感はしましたが、思い切って食べました。
...何故かお花畑に立っていました。目の前に守護神ディアナ様が現れて、再び立ち上がった事(お姉様に救われるまでは心が壊れていた)を褒められた後、現世にお戻りなさいと言われました。
...気が付くと、ベッドの上でした。お姉様曰く、お粥を食べた後、倒れたそうです。危うく死にかけてましたわ。(Ankerの攻撃扱い?)怖っ!毒耐性はこの時得ましたわ。
それ以来、料理はわたしがしていますわ。
重く閉ざされた第一の扉。
次は如何なる猛者が訪れるというのだろうかと、扉と配信動画を見ている視聴者が待ち構えていた時だった。
「あの~。もう一つ、お話したいことがありますの」
まさかの扉の内側からの声ッ……!
その声に聞き覚えがあり過ぎる扉は、恐怖に身震いした。
まさかのリテイクッ……!
圧倒的強者にのみ許される荒技ッ……!
だが、それは道理が通らぬ外法ッ……!
通るかッ……! そんな外法ッ……!
幸いというか当然というか。この扉は内開きである。一度通った者が、再び外に出て扉の前に立つことは不可能だ。
そう。不可能なはずだった。
「――『ルートブレイカー』。あ、開きましたわ~」
全てのルールを無効化し、文字通り己の道を塞ぐものを破壊したルビナ・ローゼス(黒薔薇の吸血姫・h06457)は再び扉の前へと舞い戻る……!
そして、スポットライトがあたる台座に上がるやいなや、マシンガンの如く語り始めた。
「では早速。あれはそう……風邪をひいた時のことですわ。お姉様がお粥を作ってくださいましたの」
視聴者も扉も、そこで先程の話とは毛色が違うことを察して、安堵の溜息を吐いた。
誰だってあのような地獄の体験を聞きたくはないのである。
「……お粥って、紫ではありませんよね。ですが、お姉様が自ら創って(誤変換ではあらず)くださったのです。嫌な予感はしましたが、思い切って食べましたの。するとどうでしょう。気がつけば、わたしは何故かお花畑に立っていましたの。更に、なんとその目の前には守護神ディアナ様がおられるではありませんか」
たぶん、そこにはお花畑だけではなく、大きな川も流れていたのではないのかと。
扉と視聴者は問いたかった。
だが、それを聞いてしまえば嫌な知識が増えるだけだ。世の中には、知らなくていいものだってある。
「守護神ディアナ様には、お姉様に救われるまでとはいえ、心を壊していてもなお立ち上がったことを褒めていただきましたわ。そして、こう仰ったのです。『|くににかえるんだな。おまえにもかぞくがいるのだろう……《現世にお戻りなさい。お姉様が待っていますよ》』と。そう優しく導いてくださいましたの」
それって、本当に守護神ディアナだった?
なんか、金髪で待ちガ◯ルとかいう不名誉な名前で呼ばれたりしてない?
話を聞かされている扉と視聴者の疑問は尽きないが、ルビナの話も尽きていなかった。
「……気がつくと、ベッドの上でした。お姉様曰く、お粥を食べた後、倒れてしまって。打ち所が悪かったのか、生死の境を彷徨っていたそうですわ」
あと、ついでに何故か【毒耐性】を会得しました。
そう語るルビナに心の中で、全員がツッコミを入れる。
ルビナ、それ打ち所やない。毒物や。
「それ以来、料理はわたしがしていますわ」
哀しげに顔を伏せるルビナに、扉も含めて視聴者のコメントも止まってしまった。
だが――。
――嫌な、事件だったね。
配信動画サイトのコメントに、その一言だけが流れるのであった。
🔵🔵🔵 大成功
第2章 冒険 『封印された扉』

POW
肉体や気合で封印の解除に挑戦する
SPD
速さや技量で封印の解除に挑戦する
WIZ
魔力や賢さで封印の解除に挑戦する
√ドラゴンファンタジー 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●断章
『ふっ……。よくぞ第一の関門を突破してみせた。見事だ。だが、侮ってもらっては困る。奴は四天王の中でも最弱……」
第二の門が、何やら意味不明な言葉を語りかけてくる。
二つしかない門のはずが、四天王とはなんぞ?
すでに、このダンジョン内はギャグ空間に汚染されてしまっており、内部に居る者達は身体の芯までギャグキャラへと変貌してしまうのだ……!
この地獄から抜け出す手段は、ただ一つ。
最深部に居る『『悪童魔女』ルルフィア』を倒すしか無い……!
頑張れ!
冒険者諸君!
●プレイング記載内容
黒歴史は勿論、ギャグ話でも最終的に面白おかしく師走文が調理するつもりです。
ご参加はお気軽にどうぞ。能力値による行動に変化はありません。

※やっぱり、妙なテンションです。
HAHAHA!!わたしが来た!!
秋葉原に行った時の事ですわ。キャラのモデルを頼まれたので、お姉様と衣装を買いにきました。無事、衣装を買った後、試着してみてと言われて、試着して出たらお姉様がいません。(隣の店で限定グッズの販売があり、そちらに行った)
お姉様が服を持っていたので、そのまま探す事になりましたわ。おかげで、コスプレイヤーと間違われて、撮影会をすることになりましたわ。知っているアニメだったので、ポーズに台詞まで完全再現しましたとも。...最後はお姉様が混じって、ようやく我に帰りましたわ。
...うふふ、ルルフィアちゃんと戦う時のネタを思いつきましたわ。うふふ
第二の試練の門に最初に挑むのは――。
「――HAHAHA!! わたしが来た!!」
テンションが壊れたままの、ルビナ・ローゼス(黒薔薇の吸血姫・h06457)であった。
能力『先陣ロマンチカ』によって、存分に強化された全能力と、爽やかな風と共に壇上へ立ったルビナは、正に威風堂々といった姿である。
『貴様が、第一関門に“二撃決殺”を叩き込んだ剛の者であるか……』
ここから先は死地。『一瞬たりとも気を抜くことは出来ぬ』といわんばかりの緊張感が辺りを支配する。
それでもやはり、先に動いたのはルビナであった。
相手は扉なのだから、動けるはずも無く。その結果は、当然と言えば当然なのだが、そういう駆け引きも楽しみたいものなのだ。
「……“秋葉原”に行った時の事ですわ」
その言葉を聞いた一同に、電撃奔るッ……!
『ま、待て! まだ戦うにあたっての心構えが出来ておらんかった!』
「あ、はい」
思わず、ルビナの言葉を遮る第二の門。
その内心は、嵐の如く荒れ狂っていた。
(“秋葉原”……。あの“秋葉原”での出来事だと? 嫌な予感がしてたまらぬ。勢いでここまで来たが、引き返すべきか? 否、そうではない。登場からすべて、此奴の演出……! あの時からすでに此奴の術中に嵌まっておったというのか……!)
「(だが、今更引き返すことは出来ぬ!)……よぅし! 語るが良い!」
それはまさに、ブレーキが壊れた車で崖の上で行うチキンレース。
どうせ止めることがかなわぬのであれば、踏め……! アクセルを……!
「キャラのモデルを頼まれたので、お姉様と衣装を買いにきました。無事、衣装を買ったところ、お姉様に『試着して、魔法少女になってよ!』と言われて、試着して出たらお姉様がいませんでしたわ……」
「ア、ハイ」
どんなに覚悟していても、地獄は地獄。はっきりわかんだね。
「お姉様が服を持っていったので、魔法少女のコスプレイ衣装のまま探すことになりましたわ。おかげで、コスプレイヤーと間違われて、撮影会をすることになりましたわ。知っているアニメだったので、ポーズに台詞まで完全再現しましたとも。……最後はお姉様が混じって、ようやく我に帰りましたわ。そして、お姉様に詰問しましたわ。『何故、わたしの服を持ったまま居なくなってしまったのか』と。『その限定グッズはどうしたのですか』と。ですが――」
――訳がわからないよ。
たった一言。
それが、ルビナの問いへの答えだったという。
ならばせめて。
戻ってきた時点で、言ってくれさえすれば。
わたしは、あのような辱め(撮影会)の時間を僅かにも短く出来ていたというのに。
そう問いただすルビナに、お姉様の返答は非情なものだったという。
――訊かれなかったからさ。知らなければ知らないままで、何の不都合もないからね。
語り終え、遠い目をしながら次に控えているルルフェイアとの戦闘に思いを馳せるルビナ。
だが、そこまで黙って聞いていた第二の門と、視聴者は思った。
――それ、お姉様っていうか、マスコットのフリした鬼畜地球外生命体じゃね?
🔵🔵🔵 大成功

アドリブ等歓迎
黒歴史かあ……うーん……(眉間に皺が寄る)
よし分かった。ここは腹を括って話をしようじゃないか。
俺が持ってる霊剣な。|花霞《はながすみ》っていう名前があるんだけど、この名前には由来があってね。
そう、あれは俺が中学生ぐらいの時だったか。多感な時期の俺にそれはもうぶっ刺さる、刀使いを題材にした格好いい漫画があったんだよ。
で、劇中に登場する刀にもそれぞれ名前が付いてて。それにすっかり影響された俺は、修学旅行で買った木刀に名前を付けたんだ。
……もう分かるだろ?それが「元祖」花霞ってことさ。
更に言うと花霞は異世界からの精霊が宿ったっていう設定もあって……(以下延々と設定秘話が続く)
「“黒歴史”かぁ……。う~ん……」
壇上に立って、頭を悩ますのは、|紬・レン《つむぎ・れん》(骨董品店「つむぎや」看板店主・h06148)。
ようやく、まともに己の黒歴史を晒すことに忌避感を抱いている様子の能力者に、第二の門も自分の気持ちが高揚するのを感じた。
『ふっ……。やはり、所詮は人間。我が恐ろしさに怖じ気づいたか』
「……よし。分かった。ここは腹を括って話をしようじゃないか」
第二の門の挑発とも取れる言葉に、紬は覚悟を決めて己の黒歴史を語りだす。
「俺の持ってる霊剣な。|花霞《はながすみ》っていう名前があるんだけど。この名前には由来があってね」
『おぉ。良いぞ良いぞ』
由来というものは、黒歴史の宝庫である。
その単語の登場に、第二の門も人の身であれば前のめりで話を聞いていたことだろう。その先を急かすような雰囲気が見て取れる。
「そう、あれは俺が中学生ぐらいの時だったか。多感な時期の俺にそれはもうぶっ刺さる、刀使いを題材にした格好いい漫画があったんだよ。で、劇中に登場する刀にもそれぞれ名前が付いてて。それにすっかり影響された俺は、修学旅行で買った木刀に名前を付けたんだ」
扉も、動画を視聴していた者達もウンウンと頷く。
あれに憧れを抱かぬ者など、男の中におらぬであろうと。各々が考えていた刀の名を語るコメントが動画内に溢れていた。
つまりは――。
「――もう分かるだろ? それが「元祖」花霞ってことさ」
照れながらも告げる紬の姿に、中性的な容姿も相まって爆速でコメントが流れ出す。そんな状況に、扉もほっこりである。
永遠は、ここにあったよ。
そんな想いが去来した。
すでに第二の門は目的を見失ってしまっている。ただ、黒歴史を語り明かす場へと変化してしまっていた。
「更に言うと花霞は異世界からの精霊が宿ったっていう設定もあって……」
『ほほう。なるほど。であれば――』
「――あぁ。そういうのもいいよな。でもやっぱり、この設定は俺的には外せなくてさ」
様々な設定秘話を交えながら、意見を交換して、笑い合う。
男友達の部屋で駄弁っているような感覚で言葉を交わす。
憧れを語り、共有し合うことが、これほどまでに素晴らしいことだということを忘れてしまっていた。
『それは、どんな風な口上で行うつもりなのだ?』
「えぇ? そりゃまぁこうしてさ。ピンチだけど静かに、厳かな感じで。そんな状況下なのに、敵に恐怖を与えるような感じでさ」
その全てが、余すこと無く全国配信されており、凄まじい勢いで入り口の石版に刻まれ続けている事を忘れて。
紬は、第二の門と懐かしい時間を共有した。
それはもう、密度の濃い時間を、共有してしまったのだ。
『おっと。そろそろ、我は次にいかねば』
「お。確かに長々と話しちまったな。悪い悪い」
『いやなに。こちらも、徳難い時間であった。また機会があれば』
和やかムードで紬は開かれた扉の奥へと進み、閉まりゆく扉に手を振る。
心なしか扉も、手を振って見送ってくれているように思えた。
そして、完全に扉が閉じられてから、紬は我に返った。
「……って! なんで長々と黒歴史を語らされてるんだよ、俺は!?」
地面に寝転がり、悶え苦しむ紬。
ひとしきり悶絶してから、息も絶え絶えなままで内側から扉を殴るが、扉はフフンと笑い声を上げて、紬に告げた。
「ふっ……。憧れを共有出来たじゃろう? だが、それは違う。貴様がそれを一番理解しているはずだろう。『憧れは理解から最も遠い感情なのだから』」
その言葉に、紬は愕然とした表情を浮かべることしか、出来なかった。
🔵🔵🔵 大成功