ときめき目が眩む
●気怠さ・息切れ・睡眠不足。
「はぁ〜…」
どこかの学校内──。
部活に励む生徒たちの明るさとは対照的に、運動場に程近いベンチへと腰掛けた学生は、盛大にため息を吐いてガックリと項垂れた。思春期に悩みはつきものとは言えあまりに浮かない顔でポツリと独りごちたことには─。
「あ〜あ、どこかにいないっすかね〜…理想の『親分』…」
焼きそばパンとか、自分もうほんと全然秒で買ってくるんすけどマジで。でもたまにはカレーパンも食べなきゃダメっすよ!なんて小言を言ったら親分は笑ってくれて……あ〜あ…パシられてえなぁ…はぁ〜…。
そんな常人には理解不能な言葉と共にもう一度ため息を吐く。
校舎の二階から怪しい影が自分へと狙いを定めているなど知る由もなく──。
●頭痛・腹痛・目のかすみ。
「──やあやあ、お集まりの諸君。単刀直入に言うと『潜入調査』だよ」
好きだろ、そういうのなんて星詠みの中条・セツリは気軽に言う。
「既に知ってるひともいるかもしれないけれど、ほら例の…どこぞの誰かが傍迷惑な事に『Anker抹殺計画』なんてものを企てたとかで、今回僕にもその予兆が降りてきてねぇ」
Anker抹殺計画─全貌や意図は未だ謎に包まれているが、その手は√能力者のAnkerだけでなく将来Ankerになりうる一般人にも伸びていると言う。なんとしても未然に防ぎたいものだが─。
「まあそれで、だ。今回の候補者は学生。
つまり手っ取り早く、皆には学校へ『潜入』してもらおうって訳」
冒頭の言葉はそこに繋がるのかと納得した√能力者へ、なぜか紙袋が渡される。中を見ると学校パンフレットとセーラー服や学ランの制服一式。どうやらこれで予習と準備をしろ、という事らしい。
「今回の目的地は√EDENの日本。とある都市にある『|聖《セント》・|断罪《ジャスティス》学院』
小学校から大学まで擁した大規模な学校だから様々な年齢層の出入りが激しくて、怪しまれずに潜入できる─敵にも僕らにも好都合って訳さ。
今回の守るべき候補者は高校生だけど、前述の通りだから小学生から大学生、教員と…各々好きな立場で潜入してくれよ。
それで、潜入したらまずは対象と接触してもらいたいのだけど…」
珍しく中条は言葉を詰まらせて、どういったものかと頭を抑えて言葉を選ぶ。
「…えぇとなんて言うかなぁ。その子はそのつまり下っ端気質というか『腰巾着』というか…。
平たく言うと尊敬できる、自分が従うべき『リーダー』『親分』を求めてるようでね。
だからほら君たち、結構イケてるだろ?もしかしたら懐かれちゃうなんてこともあるかもしれないが…まあ、多分Anker候補になるくらいだからきっと悪いやつじゃないとは思うんだけど…それに─」
それに。何かを懐かしむ様に目を細めて笑い、続ける。
「─意外と『縁』なんてこんな、些細なきっかけから繋がるかもしれないからね。
何はともあれ健闘を祈るぜ。じゃあ、行ってらっしゃい」
マスターより

初めまして、「仮釈放」と申します。
Anker抹殺計画という物騒な名前に反してゆる〜いかる〜いノリで学園生活を満喫していただければと思います。
●特記事項
Anker候補者(下記参照)は希望する方へお譲りできます。希望されるはその旨をプレイングに盛り込み、アピールして頂ければと思います(実際の作成などはご自由にどうぞ)
同伴者がいる場合は、分かるように記載して頂くようお願いいたします(お揃いの絵文字や合言葉など、何でも大丈夫です)
アドリブ等多めになるかと思います。ご了承ください。
●第一章。
√EDENの日本にある学校へ、学生や教員等様々な形で潜入し、青春を堪能するとともにAnker候補へ接触を行ってください。
Anker候補は腰巾着ゆえ、接触してきたあなた達に何かしらの『可能性』を見出して腰巾着仕草を見せてくることでしょう。
●Anker候補。
『|古谷《フルヤ》・カナオ』
『腰巾着』のAnker候補。
「〜っす」口調の中性的な腰巾着。いつか理想の『親分』に会える日を夢見ている。
どうでもいいがおにぎりを「握り飯」と呼ぶ。その方がワイルドだと思って。
●舞台。
私立|聖《セント》・|断罪《ジャスティス》学院。
小等部から大学院までを擁し、幅広い学科と自由な校風が売りの超マンモス私立校『断罪学院』の高等部。
ちなみ断罪学院は地域から『青春の監獄』の愛称で親しまれている。いい意味で。いい意味でね、うん。いい意味だから。
●第一章は断章追加後から受付予定。
第二章、第三章の展開はその都度、断章にてお知らせいたします。
それでは初シナリオゆえ至らぬ点もあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。
17
第1章 日常 『シュレティンガーな性別』

POW
少年のかわりに件の人物の性別を確認してくる
SPD
少年のかわりに件の人物の情報を集めて見る
WIZ
「まずは仲良くなることだ」と少年が意中の相手と交流できるようサポートする
√EDEN 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
●心拍数並びに脈拍数急上昇。
学園──ある者は過去を懐かしみ、ある者は未知の世界への憧れに胸を膨らませ、またある者は苦い顔をする、十人十色の不思議な空間。
様々な思いはあれども『普段と違う衣服を身にまとい、見知らぬ|学校《ばしょ》にて過ごす』という非日常はいくらかの感情─高揚、期待、不安…を引き起こすだろう。
「はぁ〜…」
さて、校内を思い思いに過ごしていれば、そのうちいやにデカいため息を吐いて黄昏ている少年(?)を見かけるに違いない。
かれこそが今回狙われたAnker候補|古谷《フルヤ》・カナオ。
少し、かれの話を聞いて『理想の親分像』などに付き合ってやるといいかもしれない。

★メガくん(h06434)同行
(制服を着て生徒になりすましつつ)うまいこと、学校には忍び込めましたね。……服着てるメガくん、なんか新鮮です。いや、まァ、着てなくても大丈夫だとは、思うんですケド……!
さ、さて。問題は、古谷さんと どうお話しするか……そうだ、お料理部(※無許可)として、ご飯を差し入れるのはどう、ですかね……?
何か恩を感じてもらって、こう……いい感じに話を聞けるかもしれません……!
いいですね、唐揚げ……! 火傷には注意して、アゲアゲしましょう。
ちょっとくらいなら、食べても……いただきます、お、おいしい……!
(古谷さんが来たら、一緒に唐揚げ食べつつお話しします)

★真人(h00758)同行
(学ランをきっちりと着込み)……久方振りに服を着た気がしますね。
いえあの、変な意味ではなく。排熱処理の関係上。
お料理部。(ぎらりと眼鏡を輝かせ)
素晴らしい。作りましょう食べましょう、ついでに差し入れましょう。
学生といえば唐揚げ。
揚げたての唐揚げに屈しない学生などおりません。揚げれば揚げるほど良いです。
掴みましょう、胃袋を。
揚げては食べ揚げては食べ……ああ、この揚げたてのカリッとジューシーさ……!何物にも変え難く…!
何故ここにビールがないのですか!?
学校だからですね、はい。
……ちゃんと差し入れ分も揚げますよ?ええ、ええ。当たり前じゃないですか……
●ピカピカの新入生(成人済)
真新しい学ランに身を包んだ八手・真人(当代・蛸神の依代・h00758)とオメガ・毒島(サイボーグメガちゃん・h06434)は頭を捻っていた。
学院への潜入は成功、しかし対象との接触はどうしたものか─。
悩みながらただいたずらに時間が経過しようとしたそんな折、見かねたものか、からかっているのか、それとも神の天啓か──真人の護霊「たこすけ」こと蛸神様の触腕がふたりの顔へ何かをペタリと貼り付けたのだった。
ひっぺがして見てみれば、それは掲示板から剥がれ落ちた「部員募集」の張り紙。どうやらこの学校はクラブ活動が盛んな様だ。
「クラブ……アッ!お料理部とか……どうでしょう!」
「お料理部!成程、差し入れで対象に近付くと。そうなると学生が好きなものと言えば…唐揚げ」
「アッ唐揚げ……!アツアツの……!」
「カリッとジューシーで……!」
「白米……!」「ビール!!」
唐揚げ──みんな大好き魅惑のお惣菜。それを差し入れれば学生はきっとイチコロ。何より考えすぎて少々空腹な自分たちが既にイチコロ…ごくり。
そうと決まればこうしちゃおれぬ。
オメガパワーはクッキング。着慣れぬ学ランを脱ぎ捨て、いつもの姿にエプロンを装備すると、食に一家言あるオメガは頭脳をフル回転させて最高の唐揚げ調理法を模索する。
その間、真人は買い出しに走り、キャスター付き保冷ボックスいっぱいに鶏肉や調味料を詰めてえんやこらと意外な怪力を発揮し戻ってくる。
「店長とバイト」という|コンビネーション《関係性》──俺たちが力を合わせれば……!ええ作れますよ、最高の唐揚げが!そんな思いでふたりは手際よく山ほどの唐揚げを試作、試食、試作、実食、追加、完食、追加、おかわりしていくのだった─。
●いいかい学生さん
夕暮れ時の校内──ため息を吐いて黄昏ている古谷・カナオの前に二つの人影が立ちはだかる。
「ア、アノ……よかったら試食いかがですか……?」
「我々お料理部(無許可)は日夜モニターを募集中です。よければご協力を」
「……あ、どもっす…」
初めて聞くクラブ活動に、急な誘い。浮かない顔をしたカナオだったが、差し出された食欲をそそる香りに育ち盛りの学生が抗えるはずもなく─。
「……うまい!!」
人の笑顔って、美味しいと言ってもらえるって良いものですね。しみじみ…さて掴みは上々。この調子で先ほどのため息の原因を─。
いよいよ本題へ踏み込もうとした矢先、ふとカナオは勢いよく地に身を投じる。
──DOGEZA。それは古来奥ゆかしき、そして一部地域ではこれから碌でもないことが起きる予兆と言われる不吉な体勢。その姿勢を取り、頭を下げたままカナオはふたりへ叫ぶ。
「感動しました…自分を弟子にして下さい!!!」
「エェ……!?チョットそれは……」
「なんですか、急に」
「自分、こんな美味しい唐揚げ初めて食べたっす!ぜひ自分らで力を合わせて、唐揚げの|でっかい大会《グランプリ》で|大賞目指す《テッペン獲る》っす!!」
「いえ私たちはただのクラブ活動(無許可)で」
「唐揚げは好きですけど、特にこだわりは……」
「いやほんと勿体無いっす!全国行けるっすよ!」
DOGEZAのまま熱弁し、盛り上がるカナオを尻目にふたりは顔を見合わせて…ともかく当初の目的、『対象との接触』は達成出来たがこれは…どうしようね?とりあえず俺たちも食べますか……唐揚げ…。
サクリ。うん、美味しい!
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功

※アドリブ、連携歓迎
今いるAnkerだけじゃなく、将来Ankerになりうる人物まで狙われるだなんて難儀だな。まあ、ヒーローとして助けなきゃいけないことに変わりはないけどね。
……『親分』を求めてる、か。なら、いっそ不良たちをまとめ上げる番長にでもなってみれば、噂を聞きつけたその子がこっちに興味を持って接触してくるかもしれない。
とりあえず、高校生として潜入して、時代錯誤なカツアゲでもしてるような連中を我流の[喧嘩殺法]で軽くのしてみるか。
もっとも、こんな私立のマンモス校に今どき不良なんているのかは分からないけど。俺のいた学校はちょっと荒れてたからなぁ。ガラの悪い連中を片っ端からぶっ飛ばしてたっけ。

オヤブーン?コシギンチャック?パーティとか職業の話でしょうか?
学校には来た事がありませんがこの際まあいいでしょう、貰った学生服と大きな杖を持って正面から堂々と潜入です!
そこのため息をついてる方!冒険しますよ!案内してください!何やら暇そうな顔をしていたのでいいかなって
いいですか?楽しい事はあちこち自分で探し回ると見つかるのです!これでも冒険者なのでよくあちこち行った物です!ここも闇雲にあちこち行きたい!
そういえばなぜため息を?理想のオヤブーン?オヤブーンはわかりませんがパーティのリーダーとかそういう感じの人ですかね
身体を張ろうと常に仲間の前に出ていたのでよくモンスターと間違えて叩いたものです!
●『プロ』が来たりて理想を示す
「そもそも『オヤブーン』ってなんなのでしょう?」
ルナリア・ヴァイスヘイム
(|白の魔術師《ウィッチ》/朱に染める者・h01577)は可愛らしく首を傾げる。
金髪碧眼の容姿、セーラー服に白いローブを羽織り、手にはトネリコの大杖と、学校の潜入調査にしては目を惹く格好だが「魔術同好会の留学生」とでも思われているのか、先手必勝で何か言いたげな相手へ杖を|ぶちかま《チェスト》しているのが効いているのか、今のところ問題なく潜入に成功している。
「親分ってのは…皆をまとめ上げる力を持った人間で、コシギンチャクはそれに惹かれる人間って感じかな」
ルナリアの疑問に空地・海人(フィルム・アクセプター ポライズ・h00953)は手にしたカメラを撫でながら答える。
Anker抹殺計画──ヒーローとして見過ごすことの出来ない事件だが、久しぶりに袖を通した制服に学生の喧騒が醸す空気は任務中とは言え、自分の学生時代を思い出させる魔力があった。
しかし、今の時代に『親分』とは古風な──。
「つまり『パーティのリーダー』と言うことでしょうか?」
「その通り。学校での親分は『番長』って言うんだが俺たちが番長らしい行為─例えば不良退治や、不良どもをまとめあげれば『保護対象』は俺たちに興味を持つと思うんだ」
「なるほど…じゃあそうと決まれば不良を退治しにいきましょう!」
なぜかブンブンと杖を振り始めるルナリアに海人は笑い、気分転換とカメラを覗きながら周囲を見渡す。
「しかし不良って言っても今時そう簡単に──あ」
カメラの奥──鋭い第六感が働いたとでも言うのだろうか。そこには、大量の不良に囲まれてカツアゲをされている生徒が見えた。嘘だろ…こ、こんな…今時|古風《ベタ》な…!
●「隙あり、チェスト!」とか最初に言い出したのは
──かたやヒーロー、かたや冒険者。
√能力など使うまでもなく、海人の喧嘩殺法とルナリアの大杖の下にカツアゲを試みた不良たちはばったばたと薙ぎ倒される。
「大丈夫か?災難だったな」
助けられた学生─なんの因果か今回の対象である古谷・カナオは声を掛けられても事態が飲み込めないのか呆けて口をパクパクさせるばかり。そしてようやく口をついて出てきた言葉は─。
「…マイ|親分《ヒーロー》……!!」
「俺、もう親分認定されてるのか!?」
「えい!」
すかさずルナリアが杖でポカリ。目を丸くしてすっ転んだカナオの手を引っ張り、立たせる。
「ボーッとしてないで!冒険しますよ!」
藪から棒なその言葉に再び唖然としたカナオだがルナリアはお構いなしに引っ立てていく。
「何があったかよく分かりませんが、楽しい事はあちこち自分で探し回ると見つかるのです!だからここも闇雲にあちこち行きたい!知り合った縁です!どうせ暇でしょう、案内してください!」
冒険者とはかくなるもの。自由奔放で勇猛果敢、大胆不敵でとびきり無敵。カナオの返事も聞かずにグイグイと突き進む。
「古谷くん…だったか?|あんなこと《カツアゲ》があったしルナリアちゃんの言う通り、少し身体を動かして気分転換した方がいいぜ」
ルナリアの行動には少々面食らったが、対象と一緒にいれば護衛になる。そう踏んだ海人は二人の後を悠長に着いていく。
それに、知らない学校を探索するのも新鮮で悪くない。ヒーローにもたまには息抜きが必要なのだと、前を行く二人へカメラを向け、画角を合わせた。
こうして成り行きから始まった三人の校内探検珍道中。偶然の出会いから動き出す歯車…とびきりの冒険が今、始まる──かもしれない。
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功
第2章 冒険 『強引! ダイレクトマーケティング作戦!』

POW
腕っぷしで黙らせる!
SPD
理路整然と論破する!
WIZ
思いもよらない奇想天外な方法で解決する!
√マスクド・ヒーロー 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●袖触り合って縁結び
前略、お袋様。今朝方ぶりです。
入学して早数ヶ月。学校生活にもようやく慣れてきた今日この頃、なんたることか本日、自分に運命の出会いがありました。
もうほんと心の先輩っていうか?その姿があまりに格好良すぎて夢みたいで泣いちゃったみたいなそんな感じでもうめちゃくちゃやばいです。
という訳で、今日は遅くなるんで晩御飯はとっておいてください。
かしこ。
●勢い余ってラリアット
「なんやかんや」の六文字では収まらない様々な成り行きの下、ともかく√能力者たちは無事(?)に対象『古谷・カナオ』への接触に成功した。
しかし、お忘れではないだろうか──かれが『腰巾着』であると言うことを。
「先輩の漢気に惚れました!」
このセリフだけならまだ理解の範疇だが。
「自分、役に立ちますんで!」
「先輩!お茶と麦茶どっち派ですか!?」
「焼きそばパンとか食べたくないっすか!?」
「肩凝ってません?自分マッサージうまいっすよ!」
あの手この手で子分になろうと己を売り込んでくる、カナオの怒涛の|自己RPタイム《セールストーク》になんとなーく強い拒否も出来ず、いやしたとしてもこいつ無敵か?と思える粘り強さに√能力者たちは頭を悩ませるのであった。
──かくして、予想だにしなかたった。いやちょっとはしたかな?まあしたかもな。
そんな戦いが、幕を開ける。
●補足
第一章のご参加、まことにありがとうございました。続く第二章ではAnker候補であり、今回の保護対象である『古谷・カナオ』との味方(?)内での|攻防《しんり》戦となります。
第二章から/のみの参加も歓迎しております。
それではよろしくお願いいたします。

★メガくん(h06434)同行
アワワ……ど、どうしましょう、メガくん……!
このままだと俺たち『親分』になっちゃいますよ……!
いや、まァ、なってもイイのかもしれませんケド……。
も、ももも、もっとイイ人がいるハズですよ、古谷さんには……ホラ、たとえば、エット……。
(メガくんを肘でつっつく。なんとかしてくれることでしょう)
(博士の登場を見て)わァ〜……す、すご〜い、見てくださいよ、この親分感……! その、あ、悪の親玉? みたいな……。
なんだかんだ面倒見もいいし、親分にピッタリですよ、多分……? ねっ。メガくん、ねっ。
エッ、穏便に、穏便に……! が、頑張って! 天才博士カッコイイ〜憧れちゃう〜……!

★真人(h00758)同行
(貰った焼きそばパンをたいらげ)
先輩的存在に憧れている…つまりもっと上の存在を呼べばそちらに意識が持っていかれるという事。
うってつけの囮……失礼、我が毒島博士を呼びます。
どこからともなく爆発音!
自慢の愛車(スーパー毒島カー)をブイブイ言わせ、煙幕(濃い味)の中からいざ登場!
……すっかり見慣れてしまいましたが、どう見ても怪しい不審者ですね。
新任の科学教師とでも言っておけば誤魔化せるでしょうか。
ワッハッハッハ!私を呼んだかオメガよ!
……あぁン?お前まさかこの私にガキのお守りをさせようなんて言うんじゃないだろうな。
……ああ、やはり一筋縄ではいきませんか。
頼みますよ、博士。
●|追うものと追われるもの《せんぱいこうはい》
「アワワワワ……アワワワ…ワワワ……」
「一句読んでる場合ではありませんよ、真人」
もしゃりと、カナオが買ってきた焼きそばパンを平らげるとオメガ・毒島(サイボーグメガちゃん・h06434)は隣で慌てふためいている八手・真人(当代・蛸神の依代・h00758)を勇気付けた。
ふむ、焼きそばは少なめとは言えしっかり濃い味付けなのでボリュームあるコッペパンでも問題なく行けてしまう。きちんと添えられた紅生姜と青海苔も嬉しいアクセント。素晴らしき学生の味方ですね。ええ。
「だ、だってこのままだと俺たち『親分』になっちゃいますよ……!いや、まァ、なってもイイのかもしれませんケド……」
真人はカレーパンを手に持ったまま、悠長なオメガを小脇で突いてコソコソと耳打ちする。
日頃、カミガリの手伝いやオメガの店でアルバイトに勤しむ真人の周囲には頼りになる年長も多く、それ故に『慕う』という気持ちは理解できる。だが曇りなき瞳をキラキラとさせて『慕ってくる』若者にはやや免疫がないので。
先輩!自分なんでもするっす!唐揚げの下味とか…いや、まず油の適温の見極め方からっすかね?きらりきらり。うう眩しい…墨を吐いてないのに干からびそう……あと俺たちそこまで唐揚げに命をかけてないんです……。
それに、大前提としてこのまま親分になったとしてかれに模範を示せるのだろうか…このままじゃいつか本当の後輩が出来た時も駄目なのでは……考え始めると漠然とした不安がぐるぐる襲い来る。
「(八手先輩のそういう優しいとろこ、マジ尊敬っす…!)」
「うわァ!?の、脳に直接……!?」
一方、オメガは動じない。
博士の|最高傑作《オメガ》を冠しているだけあり、常日頃から自己肯定力はやや高めである。しかし、子分を受け入れるのはまた別の話。それと真人、そのカレーパン食べないならもらっても?
故に、緊急事態にオメガ頭脳が閃き唸る。危機を脱せと轟き唸る──頭脳は|生体《なまみ》とは言え、サイボーグが唸ったらそれは熱暴走なのでは?ご安心。学生服で排熱機能が落ちるほどヤワではありません。ええ。カレーパン、こちらも中々。
そうして導き出された回答は。
「目には目を、歯には埴輪、化け物には化け物を──やりましょう。出番です、『毒島博士』」
●|21+22+16<71《亀の甲より年の功》
──『爆風消火』というものをご存知だろうか。大まかに言えば消火が困難な大規模火災等に対しあえて爆弾をぶつけ、そのエネルギーで消火を試みるとかなんかそういうダイナミックなあれである。
詳しい原理はともかくつまり、この時二人がとった手段とはそれに近しいものであった。
突如周囲に漂う濃い煙幕……それを突き破るように現れた道路運送車両法第99条の2をものともせぬサイドカーが、古のアニメめいた急スライドブレーキにて停車する。ポカンと眺める三人の前に白衣を閃かせて降り立ったのは──。
「ワッハッハッハ!私を呼んだかオメガよ!」
ドクター・毒島。
オメガの|恩人《Anker》である天才科学者。齢71歳の老いを感じさせぬ、若者とはまた別種のこってりとしたパワーと情熱に溢れた今ひとつ落ち着きのない男…おそらくこの人くらいですよ、この歳でこんな元気なの。しかしともかく頼みますよ、博士。あとここ一応学校ですよ博士。
「ということで、我々の上位存在。新任のドクタ…毒島教師で──」
「……あぁン?お前まさかこの私にガキのお守りをさせようなんて言うんじゃないだろうな」
「わァ〜……す、すご〜い!ホラ、カナオくん!この人が俺たちの尊敬する毒島先生です……!」
「コホン、はい、こちらがかの一部で有名な化学教師の毒島教師。私も私生活でお世話になっております」
怪訝そうな毒島博士を宥め、誤魔化すように二人はめいいっぱいのアピールを開始する。実際すごい人なのだが状況的には…腰巾着が…増えちゃった……!!
「ほう?自分文系なんでお恥ずかしながら初めてお目にかかりますが、そんなすごい人なんすか?」
「ええ、ええ。こんな悪の幹部のようなナリですがそりゃあもう素晴らしき技術の持ち主で」
「見るからにすごいですよネ……破天荒で…こんな天才博士カッコイイ〜憧れちゃう〜……!」
「ええ、師事するなら未熟な私たちより博…いや先生の方が適任かと──」
「ほうほう、お二人が尊敬する、つまり親分の親分…」
二人の褒めに満更でもなさそうに|得意げな《ドヤってる》毒島博士をしげしげ眺めながらカナオの考え、述べることに。
「……毒島先生が自分の『親分』なら、その親分を親分と慕うお二人も自分の『親分』ってことっすよね!」
「「え…!!?」」
それは親分でなく『兄弟子』とか、いやまあでもそうなる…カナ…カモ…?ゴホンゴホン、ところでいまだ毒島博士が登場した時の煙幕がうっすら漂っているのだが…。
「アノ〜ところで、この騒ぎだと先生とか来ちゃいそうな……」
パタパタと手で仰ぎながら話を変えるよう、真人が今更すぎる不安を呈する。
「大丈夫っす。|断罪学院《このガッコウ》は学生を重んじた校則が絶対第一で、放課後は日本国憲法並びに教員の指導は適用されないっす」
「ワ……ワァ……!」
「言い方が怖すぎませんか?」
この学校……何か変?今更ながら内心嫌な予感がしてきたところに、毒島博士の声がかかる。
「おいオメガ、さっきの唐揚げと焼きそばパン私にもくれ」
「晩御飯前に胃がもたれますよ、博士」
「あ!親分の頼みとあらば自分、|一走《ひとっぱし》り行って買って来るっす!」
「え……じゃ、じゃあ俺はお茶でも持ってきますネ…唐揚げは残ってたかな……」
──煙幕だけに(は?)煙に巻かれるように(は??)話が有耶無耶になりつつも戦いは……続く!
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

いいんじゃないですか?パーティはその場のノリと勢いでよく組みますしダンジョン内で急に組む事もありますからね!
見た所カナオちゃんはまだ冒険に出た事もない様子…なら戦闘訓練からですね!
|杖《ゴツクて重い》を貸してあげますから頑張って避けたり防いだり!魔法に抗ってみてくださいね!えいっ混乱魔法をシビビビビ!
むぅ…確かこういう時は…カナオちゃん!パーティをクビです!今の実力では自分の身を守れませんよ!まずは学園でしっかりお勉強と運動で基礎を付けないとです!ダンジョンはそれからでも遅くはありませんよ?
むふー…他の|世界《√》ではパーティ追放というのが流行っているとか、一回やってみたかったのです!

ハコです。
自由に行動します。お任せというものですね。
ハコは皆さんのサポートをさせていただきます。
探索や冒険ではいろんな機構に変形可能なモノリスを駆使し、攻略したいと思います。
レクタングル・モノリス。
あらゆる武器にも機械にも変形します。
要所で使い分けのできる便利なモノリスです。宇宙ですね。
拠点の防衛や様々な状態、環境にも耐性がありますので防御役や盾としてもお役に立てるとハコは思います。
ハコ自身は人間なので基本的にモノリスのちからです。神秘ですね。
あとは状況におまかせして動きます。
ハコです。よろしくお願いします。
●教えてあげる、ダンジョンメモリアル
パーティ──それはダンジョン探索にかかせない要素。馴染みの冒険者と組むこともあれば、見知らぬ冒険者同士が即席で協力し合うこともあるだろう。パーティの数だけ出会いと別れのドラマがある、冒険の華。
「うーん…いいんじゃないですか?」
故に、ルナリア・ヴァイスヘイム(|白の魔術師《ウィッチ》/朱に染める者・h01577)は、そんな出会いをノリと勢いでこなしてきた寛大さでカナオの弟子入り志願を快諾する。
「マジっすか!?」
「……でも!そんなヤワヤワじゃダンジョンを生き残れませんよ!」
えいっとルナリアがどこからか大杖を一本取り出し、カナオに投げつける。何気なくそれをキャッチすれば…えっゴッツ…重ッ!!?状況が飲み込めないまま、両腕でどうにか杖を持ち堪えていると…ブゥン─ルナリアの振るった大杖が空を切り、そのゴツく巨大な杖状の物体が出してはいけない音を出した。
それは例えるならば、剣道部が全力で竹刀を振った時に出るような達人のそれで──え?その細腕で、その高速の素振りを?このごっつい杖で??
「見た所、カナオちゃんはまだ冒険に出た事もない様子…なら戦闘訓練からですね!今から魔法をかけますのでその杖で頑張って避けたり防いだり!魔法に抗ってみてくださいね!」
「ははは…|先輩《おやぶん》、なにを冗談…はわッ!?」
ここは√EDEN、魔法や冒険など御伽噺と言われる現代文明社会。しかし──ルナリアは違う!やるかやられるか、とるかとられるかの死線を潜し√能力者…である以前に冒険者なのだ。
それ、えーい!シビビビビ!そんな可愛い掛け声とは裏腹に放つ魔法は『|あえて弱めた《威力100分の1》の状態異常を|連続で浴びせる《300回攻撃》』というえげつねえもの。人呼んで『|普通じゃなくなる魔法《クッタリスルマホウ》』…響きがコワイ!
いや先輩、ちょっと不思議なことを言う人だとは思ってましたが流石に学生にもなって魔法とか冗談きつ…なんだこの身体に襲いかかる『疲労、混乱、麻痺、眠り』のような不調は!?ちっ違う!このひとは|本気《・・》だッッ!!本気で自分を!!鍛える気だッッ!!
●黒いモノリスはスイートボックス、とっておきのしんぴ
「──ハコは"パーティ"というものをよく知りませんが」
その光景を眺めながら、小等部の制服を身に纏ったハコ・オーステナイト(▫️◽◻️🔲箱モノリス匣🔲◻️◽▫️・h00336)は傍の|それ《・・》に静かに指示を出した。
モノリス─正体不明の不可思議な機構を持つ、漆黒の長方体─一体どのような仕組みか、はたまた純然たる宇宙の神秘か、ともかく|レクタングル・モノリス《それ》はカナオが攻撃を受けた側から瞬く間にダメージを回復させていく。
攻撃を受けて即回復!ん?何かきた?きてない…?またきた!?いや気のせいか…?今度こそ!?あれおかしいな?カナオの認識能力はもうぼろぼろ。
傍目から見れば、大杖を振っているルナリアに、何やら変にもがいているカナオ。それを眺めているハコといった謎の組み合わせだが、通りすがりには「『魔術同好会』がまた何か変なことをやってらぁ」とスルーされてしまうのであった。おっおかしい…!この世界に神はいないんすか!?
ところで、ハコは手助けこそすれども特殊な生い立ち故、ルナリアのスパルタ教育も『そういうもの』と思って止めはしないが──。
「これは、一般市民には少々厳しいかと」
「そうですか?」
うーんと首を傾げるルナリアにハコは提言します。はい、ハコは賢いのです。
●今日こそ言えそう──『お前は首や』
「ハァ…ハァ…何もしてないのに疲れた…!!」
「お疲れ様です。ハコは見届けました」
ようやくルナリアの地獄の魔法300回ノックが終わり、肉体は無傷、精神は疲労困憊な謎の状況に息を上げながら、カナオは地面へ大の字になる。
「むう…カナオちゃんもうバテバテなんですか?」
「いや、だって…一体なんなんすか…?手品?催眠術?ハコ先輩もなんなんすかあの黒いのは?!」
「えいっ!」
疑問を捲し立て始めたところをすかさず大杖でポカリ。これぞ人力魔法『|忘れようとする力《みねうち》!』
「カナオちゃん!パーティをクビです!」
「へ?」
「今の実力では…残念ですが自分の身を守れませんよ!まずは学園でしっかりお勉強と運動で基礎を付けないとです!」
正論のような、一般人に無茶を言いなさるようなお言葉だが、確かに√能力者に弟子入りするという事は事件に巻き込まれる可能性も高い。現に今、そもそもルナリアとハコは何者かに狙われたカナオを守りに来ていたのだ。忘れかけていたが。
「……そうっすね…確かに、自分まだまだっす!自分が手が届かない|領域《ところ》に二人はいらっしゃる…へへっやっぱりすげえっす…!!
「それに『ダンジョンはそれからでも遅くはありませんよ?』と、先輩が言ってくれたのってつまり…鍛えれば自分にもまだまだ弟子入りのチャンスがあるってことっすよね!!」
「むふー…他の世界√ではパーティ追放というのが流行っているとか、一回やってみたかったのです!」
「おお、これが噂に聞きたるパーティ追放…あとで後悔してももう遅いやつですか。しかし、このメンバーがいわゆる"即席パーティ"ということであれば……はい、ハコは疑問があります」
「なんですか?ハコちゃん」
「ハコもパーティを追放されますか?」
「ハコちゃんは……合格です!」
カナオが何やらうまい具合にまとめようとしてたんです!話を聞いてください…!まあそんな自由なとこもマジリスペクトっすが…。
ルナリアの言葉を胸に、強くなり、再びの弟子入りを決意する。
全く懲りないへこたれないカナオの挑戦は──続く!!
🔵🔵🔵🔵🔴🔴 成功

※アドリブ、連携歓迎
最初のうちは『こういう、後輩に慕われるってのも悪くないかもな』なんて思ってたんだ。顔だって、まるで女の子みたいに可愛いし。
……舐めてたんだ、俺は。腰巾着ってやつを。まさかここまで、ひっきりなしに腰巾着ダイマを食らうとは……。ヒーローとして無碍にもしにくいけど、流石にそろそろ参ってきた。いや、守る立場としては近くにいてくれるのは助かるんだけどさ。
……なんでそこまで腰巾着になりたがるのか、ちょっと探ってみるか。悩みでもあるなら解決してやって、それで満足してくれりゃ、大人しくなるかもしれないし……。まあ、この子が単なるナチュラルボーン腰巾着だったら意味ないけど。
古谷くんにカメラを構え、√能力を発動する準備をする。
え? なんで急に写真を撮るのかって?
「…………ほら、あれだよ……アレ。親分として、可愛い後輩はカメラに収めとかないとな!」
フラッシュを焚いて、カメラをパシャリ。√能力で古谷くんが本音を話しやすい状態にして聞いてみようか。なんで君はそんなに腰巾着腰巾着しているのかを。
●青春スキャンダラス
「おやぶ〜ん!」
呑気に己を呼びかける声に、空地・海人(フィルム・アクセプター ポライズ・h00953)は少しばかり頭を抱えた。
|あれから《・・・・》その声を何回聞いたものか。
今回の保護任務、腰巾着のAnker候補『古谷・カナオ』と海人が知り合った経緯が
『不良にカツアゲされているところに、|初対面の先輩《海人》が颯爽と助けに入ってくれた』
だなんて、今時ドラマでも見ない|お約束《ベタベタ》。
そんなんもう、頼れる親分を求めている腰巾着気質には劇薬である。そして嬉しい事に(困った事に)その時、助けの手を差し伸べた海人の姿が余程輝いて見えたのか万事何かにつけてこの調子。
海人を親分だの先輩だのヒーローだのと慕い、姿を見つけると駆け寄ってくるので。
先に説明した通り、海人たち√能力者がこの学校へ訪れなければ起こりえなかった出会い。『運命』あるいはもう少し詩的に『星の巡り合わせ』と呼べなくもないのだろう。
しかし、けれど────流石に疲れる!!
どんな純粋な好意も、積もり積もれば侵略行為……行為と好意をかけている訳ではなく。今ちょっとうまいこと言えそうだな、なんて微塵も思ってなく──ともかく、四六時中とは言わずともべったりとされれば、憎からず思っていた相手でもしんどさが勝つのである。
俺は……腰巾着を舐めていた……!
今後二度と思わなそうな感想を海人は抱く。世界って広い。まだまだ見知らぬ強敵がいるんだなぁ。遠い目をして空を見る。あぁなんて綺麗な青空。
しかし参ってばかりもいられない。事件はまだ起きていないのだ。
それに、事件とは関係ないがこの調子で他の人間に絡んでいけば今は大丈夫でもいつかトラブルに発展しかねない。新たな犠牲しゃ……訂正、問題が発生する前にヒーローとして、そして一人の人生の先輩として道を示してやりたいところ。
であれば、かれのために「俺は弟子は取らない」とキッパリ断って生き方を諭すべきか。
はたまた「そういうの、よくないぜ」なんて冷静に指摘してやるべきか。
いっそ「腰巾着に興味はねえんだよ!」とバッサリ切り捨て……そもそも弟子? 舎弟? うーん、言い方が難しいな……というか面と向かって『腰巾着』って悪口にならないか?
配慮と思案が海人の脳内でぐるぐると渦巻いては消えていく。あぁ青春、俺は何しに学園へ?
──任務です。
●願いを込めたPhoto Magic
と、色々考えつつもふと手にしたカメラに気付くとある事を閃いた。そうだ俺には|こいつ《カメラ》がある。これならばどうにか平和的解決が望めそうだと、海人は寄ってきたカナオへさらに手招きする。
「なあ古谷くん。写真のモデルになってくれないか?」
「はーい…って、なんすか? 急に」
「ほら、あれだよ……アレ。親分として、可愛い後輩はカメラに収めとかないとな!」
「そうですか? どうせなら親分とツーショットの方が嬉しいっすが……まあお役に立てるなら、えへへ……なんだか恥ずかしいっすね」
照れつつ前髪をささっと直し、ぎこちないピースと笑顔ではいポーズ。
そこへパシャリと光るフラッシュ──これが海人の√能力のひとつ『|ダオロスの聖なる光《イルミナントトゥルース》』
ただの撮影と侮るなかれ、このフラッシュにより本音や真実を語ることへの抵抗力が弱まる──つまり腹を割って話しやすくなるのだ。尤も、自然な流れで語りかけ、|回答《本音》を引き出すのは本人の力が大きいところで、ここは『親分』の腕の見せ所──。
「ところで、古谷くんはなんでそんなに腰ぎ……俺を慕ってくれるんだ?」
「へ? うーん、そうっすねえ……なんでって言われても『格好いいから』とかじゃダメっすか?」
「それは嬉しいけど、もう少し理由があるのかなって思ってね。ほら、元々親分に憧れてるみたいだったじゃないか」
パシャリとシャッターを切りながらごく自然に本質へ迫っていくと、少し考え込んでからポツポツとカナオは口を開き始める。
「自分は昔から、何をやってもダメダメで……バカにされてきたんです。でも、ある日とある本に出会って──そこに描かれていた親分の姿、そして周りにいる舎弟っていうんすかね? その組み合わせを見て『これだ!』と思ったんです」
つまりそれは「ヒーローに憧れる少年」や「王子様に憧れる少女」めいた一般的な心理なのかもしれない。ただそれにしてはあまりに頑固で、何かもう少し訳がありそうな──。
「へえ、そんなにいい本だったんだ。なんて言うのかな? 俺も興味が出てきたよ」
「はい! お恥ずかしながら本っていうかマンガなんすけど……『魁!花の漢組応援団』って言って──」
あ、それは読んだことはないが知ってるぞ。なんかもう、昭和の破天荒なパワーと勢いがめちゃくちゃなあれだ。そうかぁ、それを読んだのか。そして憧れちゃったのか。じゃあ……ダメかも。うん、そのままの君でいてくれ。何かしらの|説得力《パワー》を感じて、海人は遠い目をした。
しかし、そういえばあの有名な最終回は確か──。
「……じゃあさ、もし俺を『親分』っていうのなら、古谷くんは卒業しても俺にずっと着いてきてくれるのか?」
「えっ……!?」
最終回──確か主人公と子分は日本を飛び出して世界に殴り込みをかけるような物だった。そこからなんとなく質問したのだが。あれ? 反応がなんだかおかしいな──あ──。
「忘れよう! 一旦忘れよう!!」
これではまるでプロポーズ、いやそこまでではないにせよ『俺についてくる気があるのか?』と、つまり弟子と認めたようなものではないか。違う! そんなつもりはない! 弟子は取らないぞ!
早とちりして感動に震え、改めて忠誠を誓おうとするカナオに海人は慌てて否定と説得、そして√能力をひとつまみ……どうにかその場を乗り切ったのであった。
いやあ、持っててよかった『忘れようとする力』
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『外星体『サイコブレイド』』

POW
ハンターズ・ロウ
【暗殺】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。
【暗殺】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。
SPD
サイコストライク
【装備中の「サイコブレイド」】による高命中率の近接攻撃を行う。攻撃後に「片目・片腕・片脚・腹部・背中・皮膚」のうち一部位を破壊すれば、即座に再行動できる。
【装備中の「サイコブレイド」】による高命中率の近接攻撃を行う。攻撃後に「片目・片腕・片脚・腹部・背中・皮膚」のうち一部位を破壊すれば、即座に再行動できる。
WIZ
ギャラクティックバースト
60秒間【サイコブレイドに宇宙エネルギー】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【外宇宙の閃光】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
60秒間【サイコブレイドに宇宙エネルギー】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【外宇宙の閃光】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
●これもいつかきっといい思い出になるからさ、多分
二度目の「なんやかんや」をどうにか乗り越えて、潜入している√能力者たちも若干この学院に来た目的を忘れかけてきた頃──。
「随分、お楽しみだな──」
いつものようにカナオとたわいもない「なんやかんや」に興じているとふと背後から忍び寄る気配。ゆらりと声をかけてきたのは学院、いや|この世界《√EDEN》に似合わない剣を担いだ不可思議な男。
上着からうねり出る触手めいた黒き物体に、サングラスから覗いた目は三つ──紛れもない異形。
その男は──。
「用務員さん……!?」
「「用務員さん!?」」
カナオの叫びに思わず驚愕の声を上げた√能力者たち。用務員さん!!?
あまりに騒然とした反応に、サングラスの男は顔を逸らす。
フードに隠れた表情は窺い知れぬが、どこか悲しそうな、気まずそうな…まるで友達と馬鹿騒ぎしている帰り道、急に後ろから母親に声をかけられたかのような──。
平たく言えば「今ちょっとそういうのじゃないから空気読んでくださる?」のオーラを放っていた。
「先週、自転車のパンクを直してくれたじゃないっすか!」
「それは──」
「おとといも『熱中症には気を付けろよ』って!」
「それも──」
「朝、カブトムシが取れる木の見分け方を教えれくれて!」
「──全て、|Anker候補《お前》を『抹殺』するためだ」
その割に、どうも普通に学校生活に溶け込んでいらっしゃったし、奴さん意外と博識でいらっしゃる。
まあ、それはおいといて。
カナオの言は置いといても、確かに男の纏う空気は悪人のそれではない。まるで優等生が周囲に舐められぬ様、精一杯の『|不良《ワル》』を演じているような……。
しかし男の意図はどうであれ、Anker抹殺計画──無碍の民を狙うならば、戦いは避けられないのだ。
「……"つんでれ"ってやつっすかね…?」
カナオ、違う。時に人生には辛くても悲しくても、受け入れなければならない現実というものがあるんだ。
でもそのポジティブさ、先生いいと思うぞ!
「…よく分かんないけど、|先輩《おやぶん》~! 頑張るっすよ~!!」
男と√能力者たち、双方ちょっと変な空気になってるが──さあ! 戦いだ!

★メガくん(h06434)同行
用務員さ——さ、サイコブレイド、さん……。
イヤ、俺とは無関係ですっ。
アナタが本当はイイ人っぽいことは、知ってます。
ケド、こう……なんか……俺たちと古谷さんだって、二度も「なんやかんや」した仲なので……。
抹殺は、させません……親分ではないですケド、多分……!
えっと……メガくん! あの剣は、任せてくださいっ。
たこすけ。腕でも剣でもいいから、巻きついて……!
剣を手放させれば、なんとかなる、ハズ……。
エッ、せせせせ、戦車……ひッ、轢かれる——!
ギャーッ、イヤーッ、たこすけ、助けてーッ!!
(蛸神が依代をグイッと後ろに引っ張り、回避。戦車にへばりつく)

★真人(h00758)同行
ウネっておりますね。真人の叔父様ですか?何、違う?そうですか……
親分ではありませんが、同じ唐揚げを食べた仲です。お守り致しますよ。
真人が引き付けている今がチャンスです。
お願いします、博士。
(全ての語彙をフル回転し博士をヨイショ。ライバルのパク……オマージュし開発された重戦車GOGO毒島号が唸りを上げる!)
"轢き逃げて下さい。"
ええ、ええ。先ほど校庭内の監視カメラの死角を見つけましたのでね。
|轢《い》けます。
ついでに真人も拾って逃げましょう。
……あっ(手を掴み損ね、戦車側面に張り付いた吸盤が命綱と化したとか何とか…)
……博士。余った唐揚げ、食べますか?
●|楽《おい》しかった学生生活(偽)
八手・真人(当代・蛸神の依代・h00758)とオメガ・毒島(サイボーグメガちゃん・h06434)はカナオへ後方に避難する様に指示しながら、敵──用務員改め『外星体『サイコブレイド』』と対峙する。
この学校で過ごした時間は、本来の学生生活の三年間とは比べものにならない些細な時間だが、なんやかんやあった。思い返せばなんやかんや、まあまあ楽しかった。
二十歳を超えて袖を通した学生服に「絶対バレますよ、こんなの……」と頭を抱えたが全くバレず、成人男性として何か焦りが生じた潜入工作。そこからノリと勢いで始めた調理実習。美味しかった会心の唐揚げ。人からもらった調理パン──。
む?私たちの思い出、ほぼ『食』では?いやそんな馬鹿なことが……アッ食べてばかりですね俺たち……そんな青春もありでしょう。ええ。どうせなら学食も制覇したいところでありましたが。やっぱり、食じゃないですか……!
「親分たち、頑張るっすよ〜!」
そんな回想の中、遠くから聞こえてきたカナオの声援に二人はアイコンタクトの後、頷きあう。
そう、「なんやかんや」の一番は『後輩』との交流。
抹殺を防ぐため、それ以上に『先輩』として、同じ唐揚げを平らげた仲として、ここはなんとしても頑張らねばならない。
例え相手が訳ありだろうが、後輩には手を出させない──。
「……親分じゃないですケド」
「親分ではありませんが」
でもそこは譲らない。それだけは認めない。認めちゃいけない。人間には譲れない一線があるのです。ええ。認めちゃったら、後が怖いですからネ……!
●P・T・A(パートナー・タコ・アシスト)
「しかし──」
お互いに、まるで先に動いた方が負けとでも言うかのように出方を伺うジリジリとした緊張感の中、オメガが口を開いた。
「何やら裾から黒いのがウネっておりますね。もしかして真人の叔父様ですか?」
「イヤ、俺とは無関係ですっ」
ここで血縁が増えたら、帰りそびれて後方でカナオと一緒に暇そうにしている毒島博士を含めてもう父兄参加なのだが──その言葉がきっかけなのか、痺れを切らしたのか、牧歌的な空気を壊す様、先に動いたのはサイコブレイドであった。
剣を振り上げ、二人の間に割って入るように素早く斬りかかって分断すると、体勢を素早く立て直して次の攻撃に移る。
「……メガくん! 剣は、任せてくださいっ。剣を手放させれば、なんとかなる、ハズ……! たこすけお願いっ!」
真人はそう叫ぶと護身用ナイフを取り出し、オメガの返事も聞かずに一か八か、サイコブレイドの前にあえて躍り出た。
そして剣が振り下ろされるその刹那、黒き触手──蛸神の触腕がサイコブレイドの腕を器用に絡めとれば、まるで『こんな|触手《もの》と一緒にするな』とでも言いたげにギリギリと締め上げ、剣もろとも動きを封じていく。だがそれは一時的なもの。この隙に何か決定打を──。
「──さあ今がチャンスです。お願いします、博士」
「ああん? なんで私が」
目の前の状況を全く把握せず、面倒臭そうにする毒島博士。しかし扱いは心得たとばかりに駆け寄ったオメガのこそりと耳打ちすることに──。
「博士。ここで『例のあれ』をお披露目して活躍すれば、こちらが元祖と主張できる機会。あわよくば『向こう』を類似品と……」
「オメガ、何ぼさっとしている! 早く準備しろ!行くぞ!」
まあここら辺は監視カメラの死角なので活躍は知られないのだが、そこは黙って……。
●(アイデアを)|盗んだ《パクった》戦車で走り出せ
さて、一方その頃。
動きを封じたもののナイフの届かない距離、抜け出されれば反撃が厳しい状況の中を真人は耐えていた。勿論片腕を封じられたとて、サイコブレイドも大人しくやられてばかりではない。反撃を試みようと抵抗するその力に、触腕の力が弱まり……ついには脱出されてしまう。
そうして再び振りかぶられ、きらりと光った剣に──ギュッと目をつぶり、真人が覚悟を決めたその時。
ドン!!
鈍い衝撃音、そして何かが急停止する音、ぐわりと揺れる身体──別の意味で恐る恐る、目を開くと……。
「アッ……! アッ!!」
目の前にはなぜか戦車『GOGO毒島号』、そして少し遠くにボロクズめいて転がっているサイコブレイド、ゆらゆら動き、自分を守る蛸神の触腕──この状況から推測出来ることは……いいのかなぁ? これ人としていいのかなぁ!?
多くは語らぬ、語れぬその光景を様々な意味で呆然と見つめていると、戦車のハッチからカナオ、そしてオメガが顔を出して手を差し伸べる。
「先輩! 大丈夫っすか!?」
「真人、早く乗ってください! 逃げま──……あっ」
「古谷くん無事だったんですね……! でもメガくん、逃げるって…………ギャーッ、イヤーッ、たこすけ、助けてーッ!!」
逃げるって、サイコブレイドからじゃないですよね。多分、|別の何か《国家権力》からですよね。そんな言いたいことはあれども、なんともタイミングの悪いことに真人がよじ登ろうとした瞬間、戦車はなんの前触れもなく急発進・急加速。
蛸神の触腕で慌てて戦車の側面にへばりついたのだが……勿論|戦車《博士》はそんなこと考慮してくれるはずもなく、真人はしばらく身体中に風を感じる命懸けのドライブを堪能したのであった──。
──さて、その後。
オメガがどうにか真人を引っ張り上げて戦車内部に引き摺り込み、先程の戦いもあり息も絶え絶えになっている傍ら。
「すごいっす!! これ全部博士が作ったんすか!?」
「ワッハッハ! そうだ! 私の凄さにようやく気付いたのか! 世間じゃ大門とかいう輩がとやかく言われているがこの私の方が何万倍も──」
「マジすごいっす! あっ唐揚げもっといりますか!?」
二人の苦労も知らず、唐揚げをつまみながら呑気に、カナオと毒島博士はいい感じに意気投合していたのであった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

なるほど用務員さんでしたか!
カナオちゃんはお世話になっていたみたいですね!
じゃああの時も実はいらっしゃったんですか?
そう…初めてカナオちゃんと会って不良さんをボコボコにした時も…(不良代わりにポコポコと杖で叩きつつ)
学校中に精霊さんを解き放ったのを見つかって学校の中を走り回っていたあの時も…
|他のあれやこれや大暴れした時《溢れ出す存在しない記憶》も…
こんな感じのふわっとした記憶語りと場面転換で|光って眩しくなる《外宇宙の閃光》時だけ遠くて間の悪い状態にしちゃいましょう!
所で用務員さんとはどんな事をなさっている方で?
ふむふふ花壇にお花を植えたり…お掃除をしてくれたり…なるほど~
●飛び出してGO! 青春の彼方
「なるほど!」
なるほど。ルナリア・ヴァイスヘイム(|白の魔術師《ウィッチ》/朱に染める者・h01577)はこの流れにあっさりと納得した。サイコブレイドの苦虫を噛み潰したかの様な顔は置いといて、納得した。
「あの用務員さんにカナオちゃんはお世話になっていたみたいですね!」
「はい!もうめっちゃいい人で、内心親分と慕ってたんすけど……」
そこでチラリとカナオはサイコブレイドを見る。
「用務員さん……残念っすよ」
止めろ、そういう目で見るんじゃない。そういうの本当、地味に傷付くんだぞ。あとさらっと怖い事を言うな。
「と言うことは……じゃあ、あの時も実はいらっしゃったんですか?」
愛用の杖を構え、踊るように軽やかな一歩を踏み出したルナリアにサイコブレイドは剣を構え──先手必勝と襲いかかる。しかし、意に介せず粛々といつも通りのマイペースでルナリアの続けることに。
「語らねばなりませんね……あれは数日前カナオちゃんと初めて出会った時……」
サイコブレイドの振りかぶった剣が、虚空を斬る。刹那、体が揺れたと認識した側から遅れて痛みが走った。振り返ると、いつの間にか背後に回ったルナリアが大杖を振りかぶり──もう一撃を容赦なくサイコブレイドの後頭部へ叩き込んだ。
「こうして不良さんをボコボコにして……」
語りと共にゆらりと、周囲の空気が歪み視界がキラキラとした、サングラスすら意味をなさぬ強烈な光に覆われる。
「学校中に精霊さんを解き放ったのを見つかって学校の中を走り回っていたあの時も……」
閃光が収まり、周囲を見渡すとそこは校舎内。転移能力か幻惑か……そんなサイコブレイドの思考より早く、廊下の向こうからルナリアが精霊と共に勢いよく助走をつけて飛びかかり一撃を喰らわせ、精霊が二、三の追撃を行う。
そうして、膝をついたサイコブレイドを見下ろしながらルナリアは続ける。
「この後、カナオちゃんをもみくちゃにしたのがばれて『黒魔術実践中です!』と嘘をついたのも! 生徒会に忍び込んでこっそり生徒会長のスピーチ原稿を書き換えちゃったのも! 廃部寸前の部活に助っ人に入って全国優勝しちゃったのも!」
「なんやかんやと全部見られてたんですね!?」
閃光に次ぐ閃光──それは己が放つ外宇宙の輝きに似て……そして場を支配し、近接に引けを取らぬこのエルフの力、一体──いや、それ以上に。
「お前……学校で何やってるんだ!?」
猛攻により息も絶え絶えの満身創痍の身で、絞り出すようにサイコブレイドは重要な事を|言い放つ《突っ込む》。そうだね。
「それはあなたに言われたくありません! えい!」
ポカリ。お馴染みめいた杖の一撃を頭に喰らうと、サイコブレイドは倒れ、動かなくなった。
「で、出たー!ルナリア先輩の大杖アタックっす!こりゃあもう勝負が決まったようなもんす!」
「ふふん、ざっとこんなもんです!」
駆け寄ったカナオに得意げにピースをすると、そういえば、とルナリアは一言呟いた。
「所で用務員さんとはどんな事をなさっている方で?」
「え? 今更そこっすか?」
🔵🔵🔵 大成功

※アドリブ、連携歓迎
あんたも苦労してるな…。倒すけど。
青い『√妖怪百鬼夜行フォーム』へ変身。右腕に氷属性を纏わせ、敵が動き出す前に3倍の移動速度でダッシュする。鳩尾にアッパーを叩き込み、そのまま冷却。宇宙エネルギーをチャージ完了される前に敵の凍結を狙う。
あんたのチャージが先か、凍結が先か…漢のガチンコ勝負だ!
お疲れ様…用務員さん。
でも、まだ終わりじゃない。俺には向き合うべき腰巾着がいる…!
Anker抹殺計画から守る意味でも、|犠牲者《親分候補》を増やさない意味でも、俺がこの子を見守るしかない。これが親分として…ヒーローとしての務めだ!(やけくそ)
俺のAnkerになりそうだけど、一人くらい増えてもどうってことない。
…それに、「親分」と慕われたとき、何か“ときめき”を感じたのも事実だしな…。
古谷くん…いや、カナオ。俺は本当はこの学校の生徒じゃないけど…これからも俺に着いてきてくれるか?
なお、「後悔先に立たず」という言葉が全力で脳裏をよぎったが、すぐに『忘れようとする力』でその言葉を忘却した。
●みんなどこかで苦労人
「あんたも苦労してるな……」
「…………」
何とも締まらぬ空気に、思わず飛び出た、空地・海人(フィルム・アクセプター ポライズ・h00953)の軽口にも反応せず、男──『外星体『サイコブレイド』』は無言で剣を構える。
サングラスに隠れてもなお光る異様なエメラルド色の虹彩。そこに見えるはただならぬ覚悟と決意。確固たる意志。
そして何よりも、先程までの空気を掻き消すほどの──戦意。
いかなる理由があるのかは知らないが、相応の覚悟を持って対峙するのであれば、こちらも己が|信条《ことわり》にて出迎えるのが筋というもの。
「あんたがどんな理由で、|こんな大それた《Anker抹殺》計画を企てたのか知らないけど──まあ、倒させてもらうよ」
ヒーローはいかなる時も市民を守り、悪を倒さねばならぬ。その意志に、揺らぎはない。色んな意味で可愛い……気がしてきた気がしないでも?ないかもしれない?後輩がいるのであれば、尚更に。なんだかこんがらがってきた。可愛い、多分。きっと。
そんな雑念を振り払う様に、数回深呼吸し、精神を集中させる。そうして。
「現像! √妖怪百鬼夜行フォーム!」
気合いと共に叫ぶと、海人はベルトバックルへ、ルートフィルムを装填した。
●ヒーロー、それは君が見た|閃光《フラッシュ》
──例えば、幼き頃に憧れた|存在《ヒーロー》が現実にいないと|理解していながら《・・・・・・・・》夢見る事は幼稚なのだろうか。
いい年と言われる年齢でいまだに卒業出来ない事は罪なのだろうか。
ヒーロー、番長、親分──己の憧れを捨て、卒業して、きちんと現実を受け入れる。それが当たり前なのだとして、得られるものは何なのだろう。だからと言って『憧れ』が都合よく現れる訳はないと分かっている、半端な気持ちで信じ続ける日々に。
もし|それ《・・》が目の前に現れたら。
自分は、一体どうすればよいのだろうか──。
「現像!」
そう声が響いたと思えば、すでにそこには見知った『先輩』の姿はなかった。ただ、そこにいたのはまるで幼少期にテレビで見たような、青い姿のヒーロー。
「……先輩…………冗談っすよね?」
カナオの声にそれ──『フィルム・アクセプター ポライズ』は振り向くとゆっくりとサムズアップし、用務員。否、サイコブレイドへと向き直り、消えた。
√妖怪百鬼夜行フォーム──ポライズの数ある戦闘形態のうちの一つ。「透鏡籠手・焦点覇迅甲」を装備した腕から繰り出される攻撃はおよそ二倍、移動速度は通常の三倍。全力で駆け抜ければ青き風の如し、常人の目にはまるで消えた様に映るだろう。
だが、敵は底知れぬ存在。戦う素振りもなく先ほどから剣を構えたまま、まるで力を溜めているかの様に動かない。その不気味さに、慢心できぬ事は重々承知。だからこそ攻撃が来る前に先手を撃ち、その一撃で全てを仕留める──狙いを知ってか知らぬか、その動きを目で追う様にサイコブレイドはいまだ動かない。
時間との勝負、そう踏んだポライズは急接近し、サイコブレイドの鳩尾へ氷属性を纏った右腕にて全力のアッパーを叩き込む。常人ならそれだけで倒れる威力を、しかしサイコブレイドは不気味に耐える──。
「させるかっ!」
ポライズは怯まず、そのまま右腕に力を込めた。氷属性を選んだ理由──それは、破壊力ではなく敵の凍結。相手が力を溜めているのならば、完了する前に凍結すればいい!チャージが先か、凍結が先か…漢のガチンコ勝負だ!
そうして60秒と少し──時間にして僅かな、しかし永遠にも思える死闘の果て、凍りついたサイコブレイドは剣を落とし、倒れた。
「せんぱーい!!」
我に返り、やっとの思いで声を出したカナオの声援に、|ヒーロー《海人》は振り返り、もう一度親指を立てる。
あぁやっぱり、最高に格好いいっす。
自分の、自分が信じた『|先輩《おやぶん》』は──。
●この|監獄《しはい》からの卒業──
「さて、と言う訳なんだが──」
「はい!」
瞳をキラキラとさせたカナオに、どう言い訳をしたものか。変身を解除した海人は考える。ええとまずどこから……√能力者とAnker? 各世界について? そもそも俺の力……ヒーローって正体がバレたらどうするんだ?
ああもう! 伝えることはたくさんある。けれども今、大切なのは。
「古谷くん…いや、カナオ」
コホンと咳を一つ。改まって口を開く。
偶然出会ったなんだか危なっかしいやつ。うん、きっと俺はこの決断を後悔するんだろう。けれどきっと、別の道を選んでも後悔するのかもしれない。
どちらにせよ、ならば自分の"|第六感《ちょっかん》"を信じよう。
「俺は本当はこの学校の生徒じゃないけど……」
……それに、「親分」と慕われたとき、何か“ときめき”を感じたのも事実だから。
「……これからも俺に着いてきてくれるか?」
「はい!! 勿論っす!!」
いい返事。すっごいいい返事。強豪運動部のやる気ある一年生みたいな食い気味の返事。別にそういう告白の類いじゃないんだが、もうちょっとムードってもんをだな……あれ? なんで俺が伝える側に?
そんな海人の思いも知らず「わあい」なんて声が聞こえてきそうな小躍りのカナオ。やめろ『親分の歌』なんて歌うんじゃない。早速、「後悔先に立たず」という言葉が全力で脳裏をよぎったが──忘れよう。忘れるぞ! もうどうにでもなれ! 男に二言はない! 犠牲者は俺一人でいい! これがヒーローの務め……!!
「……なんだかどっと疲れたけど……ラーメンでも食べに行くか」
「はい! 自分大盛り無料のいいとこ知ってるっすよ〜!」
「お、そりゃ楽しみだな」
まあ、でも悪くない……かもしれない。
偶然できた『腰巾着』。これも一つの『縁』として──。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功