シナリオ

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熱夏闘虫録デスカブト伝~ヘルクワガタ来る~

#√妖怪百鬼夜行 #一章の断章追加終了。随時プレイング受付ます

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 #√妖怪百鬼夜行
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 セミの声が聞こえない。ヒグラシも、カエルの合唱も、止んでしまった。
 ひと気のない無人駅。田んぼの広がるあぜ道。どこか空気が湿っている、そんな夜。
 ――夏の夜が、もう四日も続いていた。

 ここは√妖怪百鬼夜行、虫金宮(むしかねのみや)町。山に囲まれた静かな町の最奥、今やほとんど使われていない神社の参道をひとりの少年が歩いている。
 よく日に焼けた手には虫かご、網、白い布。少年の手には余るような大きさのライトを掲げながら。
 彼の行く先は、神社の境内にそびえる巨木だった。
 巨木の根元に飲み込まれるようにして、古妖を封印したとされる小さな祠があった。まるで虫かごのような組み木細工のその祠に、ひとつ、ふたつと雫が落ちる。木の幹を伝って、樹液のような黒い液体が、ぽたぽたと。そこには大小様々な甲虫が集まっている。
「うわぁ、すっげぇ!」
「兄ちゃんにも見せたかったなぁ、この光景!」
 無邪気な少年の声を圧し潰すように。
 |大きな《大きすぎる》虫の羽音が、二つ。

●アクアショップの星詠み
 大小様々な水槽が並ぶアクアショップ店内は、今日は水の循環音に混ざってクーラーの稼働音が小さく響いていた。
「……情念を抱え、古妖の封印を解いてしまった少年がいるそうだ。場所は√妖怪百鬼夜行、虫金宮町。奇妙建築の裏路地をしばらく往けば、ここからそう遠くは無い」
 冷凍餌のパックを片付けながらそう切り出したのは、ツナギの袖をまくった大男。星詠みの鏡林・硝太郎(水槽の付喪神・h05645)だ。彼の指先が水槽のガラスを軽く叩くと、星のような発光班の小さな魚群が旋回する。
「封印を解かれた古妖は、闘虫王者。デスカブトと、ヘルクワガタ。……闘虫ブームの頃、誰かが外から持ち込んだ。特定外来種というらしい」
 数メートルほどの巨体を持つ、甲虫とクワガタ虫。外来種のそれらがこれ以上増えないようにと確保、封印してあった|祠《ケージ》の一つが虫金宮町にあったらしく。今回その蓋が緩み、デスカブト達が飛んで行ってしまったのだという。

「虫金宮町では、もう四日も日が昇っていない。……これは、古妖の復活に呼応して発生した現象のようだな。
 封印を解いたのは少年。名前は和登(かずと)。神社の境内でずっと昆虫採集を続けているらしい。夜に行くとカブトムシがよく採れるからって。
 たぶん、デスカブトたちが餌を求めて動いた跡なのか、神社内の木々からは樹液が止めどなく溢れているそうだ。和登はそれを利用して、甲虫を集めたいらしい。よほどのことが無い限り境内から出ようとしないだろうな」
 硝太郎はふと、視線を水槽に落とす。
 霊魚たちが静かに浮かび、そのうちの一匹が、ぴたりと動きを止めた。
「おれが予知した限りじゃ、彼の情念には“兄と一緒の自由研究”が関わっている。
 兄に賞を取らせたかった。勝たせたかった。……でも、本当は――。」
 短い間を置いてから、静かに言い切る。
「終わらせたくなかったんだろう。兄と一緒に昆虫を追いかけた、楽しい夏を。」

「君達に頼みたいことは二つ。和登を助けて、デスカブトとヘルクワガタの再封印。くれぐれも気をつけて。彼らはただの虫じゃない」

 そうアクアショップを送り出され、近くの路地を通ると……そこは夜の終わらない田舎町だった。神社の奥には小さな灯りが、いまも揺れている。

マスターより

佃煮
 どうも、干物です。
 まちがえた。佃煮です。暑くって。
 今回は√妖怪百鬼夜行、夏の夜へご案内します。

 第一章は🏠です。神社へ行き、古妖を解き放ってしまった少年、和登に接触してください。解き放った自覚はあまり無く、夜が長くなってラッキー!虫がいっぱい取れる!ぐらいに思っていますが、少し不安は覚えているようです。

 第二章は⛺です。樹液の出る木を歩いていると、不思議な昆虫を見つけることがあるかもしれません。それを和登と一緒に捕まえ歩くのが再封印に繋がります。

 第三章は👿、『闘虫王者『デスカブト・ヘルクワガタ』』との戦闘及び再封印です。

 和登について。
 虫かごと昆虫採集セットを常備しており、虫の話になると目が輝く少年(種族:人間)です。今年で小学五年生。数年前に高校生の兄を事故で亡くしており、「兄ちゃんがやってた自由研究を引き継いで、賞を取る」ことが和登の目標であり、情念のようです。
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第1章 日常 『夜霧を彷徨う』


POW 子供たちを走って捕まえる
SPD 子供たちの先回りをして捕まえる
WIZ 子供たちを罠でおびき寄せて捕まえる
√妖怪百鬼夜行 普通5 🔵​🔵​🔴​


 四日もずっと出ている月は、今はすっかり雲に隠れていた。林に囲まれた神社の境内にある光源はわずかな街灯と社務所の灯り、少年の持つライトぐらいだろう。石段には苔が這い、参道にはひび割れた灯籠。境内の奥には、大きなクヌギの木がそびえ立っている。しばらく歩くと、蚊取り線香の匂いがするだろう。境内にはちょっとしたソロキャンプのような設備とテントが張られ、社務所の縁側に一人の少年が座っている。
和紋・蜚廉
裏手より参道へと忍び寄る
翳嗅盤に指を添え、風の動き、草の匂い、虫の翅音を拾いながら、境内を探る

灯りの前に、少年。……和登か
だがいきなり声をかければ、怯えるか警戒するだろう

まずは境内の状況を観察
痕跡のある地面、虫捕り網の放置、テント内の食料や道具
生活の断片から少年の気持ちの所在を探る


見極めた上で、気づかせる程度に前へ
物音に驚いて此方に向けば、威圧でも怪異でもなく
虫の姿――生き物の声を持って、語りかける

「……この境内、虫がよく集まるらしい」
「汝が残した灯りに、我も呼ばれたのだろう」
「虫のことなら、少しばかり話せるぞ。今宵は共に、見てゆこうか」

共に虫を語れる者として
少年の夏が、過ちにならぬように

 夜の気配が辺りを覆っている。
 虫金宮町、神社の裏手。その草葉の陰を抜けて、|和紋・蜚廉《わもん はいれん》(現世の遺骸・h07277)は静かに境内へと歩みを進めた。彼の翳嗅盤が読み取るのは、古木の苔の香りに、乾いた草葉が立てる音。クヌギの木へ集まる虫たちの翅音が、合間を縫うように流れていく。
 やがて漂ってきたのは、樹液の匂いに混ざるような人の感情の滲みだった。少年のものであろう、終わらせたくないという未練。心を焦がす、名残火のような願い。
 夜の境内を和紋は歩く。蚊取り線香の匂いと灯りを辿って神社の社務所へ進むと、少年の視界に入るか入らぬかの位置でそっと身を潜めた。
(いきなり声をかければ、怯えもするだろうな)
 社務所近くはちょっとしたキャンプの様相だった。虫捕り網は地面に伏せられ、テントの傍にはジュースの空き缶と、小学生のものではない、もう少し上の年代が使う学習ノート。少年、和登は社務所の縁側に座り、白い布を広げているところだった。
 物干し竿は地面に固定されており、その間には洗濯用のロープが張られている。そこへおそらく白布を張るのだろうと思われた。簡易的なライトトラップ――夜行性の甲虫をおびき寄せるための手法だ。
 羽音が聞こえた。灯りに惹かれ、カナブンが一匹、また一匹と布の表面へと舞い降りる。
 小さなテントに置かれていたのは、半開きのノートだった。そこにはびっしりと何かの観察記録が書き込まれている。境内の見取り図、採集した虫のスケッチ、記された時間帯、天候、気温。幼い筆跡と、高校生ぐらいの筆跡が混在したそのノートは、和紋が潜む方からもよく見えた。
(兄のためか、自分のためか……いや、どちらでもあるのだろうな)
 和紋はゆっくりと、ほんの少しだけ、前へ出る。音もなく、威圧もなく。ただ、生き物として。
「……この境内、虫がよく集まるらしいな」

 少年が顔を上げる。思ったより驚かないのは、色々な人や妖怪が混在するこの√の人間故だろうか。
「おじさんも来ちゃったんですか?」
「ああ。汝が残した灯りに、我も呼ばれたのだろう。虫のことなら、少しばかり話せるぞ。今宵は共に、見てゆこうか」
 和紋の黒い翅が静かに畳まれた。名を呼ばずとも、灯りがあれば虫も、話相手も寄ってくる。そんな夜もある。
🔵​🔵​🔴​ 成功