シナリオ

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モギセンカッコガチ、とアマランスは言った

#√汎神解剖機関

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「さあて、今日も元気に星でも詠みましょうか!」

 星詠み、パンドラ・パンデモニウム(希望という名の災厄、災厄という名の希望・h00179)がのんびりと夜空を見上げたその時。
 目の前には靴の底があった。
「ぐえー!?」
「ああ、済まない……まさかそこに顔があるとは」

 何たるタイミングか、ちょうど空から舞い降りてきた誰かに顔を踏んづけられ、パンドラはひっくり返る。赤くなった鼻をさすりながら慌てて起きあがってみて、パンドラは目を丸くした。そこには、見知った顔があったからである。

「ふぇぇ、アマランスさん!?」

 豊かにたなびく美しい髪と澄んだ神秘的なまなざし、蠱惑的な肢体と、何よりもその総身に纏う強大なる魔力。そう、彼女こそは、かつて『羅紗の魔術塔』においてその人ありと知られ、また数多くの「天使化事変」およびそれに続く「王権決死戦」でも重要な役割を果たした美女。アマランス・フューリーその人だったのである。
 かつては√能力者たちの敵だったアマランスだが、『羅紗の魔術塔』を巡る凄絶な戦いの中、彼女は「七代目塔首」であるフェリーチェ・フューリーに囚われ、その術中に陥った。だが、彼女を慕う多くの魔術師、そして√能力者たちの尽力の末、己を取り戻すことができたのである。

「え、ど、どうしてここにアマランスさんが……?」
 わたわたとしながら訪ねるパンドラに応え、アマランスは朱唇を開く。

「あの『王劒』を巡る戦いでは世話になったな……なったわね」
「『わね』?」
「こほん、世話になった・わ・ね」
「アマランスさん口調変わりました?」
「いいのだ……いいのよ、人は変わるものなのだから。それを教えてくれたのは貴女たちだろう……貴女たちでしょう」

 然り、最初に能力者たちの前に現れた時などは、アマランスの口調はずいぶんと気負ったような固い言葉遣いだった。だが、あの事件を超えて、今は物柔らかい言葉遣いになろうとしている。それは彼女の内面そのものの変容を現しているのだろう……まだ十分に慣れてはいないようだったが。

「あれは……激しい戦いだったわね………」
 アマランスは『塔』での凄絶な戦いの数々を想起するように軽く目を閉じた。パンドラも無論、その戦いに参加した一員であり、はっきりと覚えている。死を覚悟せざるを得なかったあの戦いを。

「でもさらに貴女たちは、今後も戦いに挑んで行くのでしょう。あの戦いのせめてものお礼に、貴女たちのトレーニングの相手をさせてもらおうと思うの。模擬戦というのかしらね、私や私の配下たちが相手をするわ」

「わー、それはありがたいです!」
「……本気だけどね?」
「はい?」
 思わず聞き返したパンドラに、アマランスはくすっと微笑んだ。

「ここは絶対死領域ではないから、死んでも、貴女たちも私たちも何度でも甦る。だから、模擬戦と言っても手加減はしないわ。そうでもしないと訓練にはならないでしょう。本気で……行くわよ?」

「……アマランスさん目が怖いんですが、もしかして……まだちょこっと根に持ってますか? 私たちが何度も貴女の作戦の邪魔したこと……」
「まーさーかー、そんなことはないわー」
「うわすっごい棒読み」

 ということで、アマランスとその配下の魔術師たちが、√能力者たちのトレーニング相手として模擬戦をしてくれるそうだ。といっても、相手はリアルガチで殺りに来るので気を抜いてはならない!

「ふふふ……たっぷり『お礼』をさせてもらうわ……ふふふ……」
「やっぱり『お礼』の意味が違うような気がするんですが!?」
これまでのお話

第3章 ボス戦 『羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』』


POW 純白の騒霊の招来
【奴隷怪異「レムレース・アルブス」】を召喚し、攻撃技「【嘆きの光ラメントゥム】」か回復技「【聖者の涙ラクリマ・サンクティ】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[奴隷怪異「レムレース・アルブス」]と共に消滅死亡する。
SPD 輝ける深淵への誘い
【羅紗】から【輝く文字列】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【頭部が破裂】して死亡する。
WIZ 記憶の海の撹拌
10秒瞑想して、自身の記憶世界「【羅紗の記憶海】」から【知られざる古代の怪異】を1体召喚する。[知られざる古代の怪異]はあなたと同等の強さで得意技を使って戦い、レベル秒後に消滅する。
イラスト すずま
√汎神解剖機関 普通11

 魔術師たちの一群を突破した√能力者たちの前に、純白の幻影がゆらめくように立つ。
 清廉にして壮麗、大気が波打つような膨大な魔力を漂わせた神々しいまでの美女が。
 彼女の名は――アマランス・フューリー。
 ゆっくりと能力者たちに振り向いたアマランスは、静かに頭を下げた。長く艶めく髪がさらりと流れ、気品あふれる香気が漂ってくる。

「ごめんなさい」

 アマランスがまず口にしたのはその一声だった。
「……ありがとう、とは何回か言っていると思うけど、ごめんなさい、は少なかったわよね。これまでのこと、謝罪します。それで帳消しになるわけではないのはわかっているけれど」
 そっと顔を上げたアマランスの瞳には、これまでになかったような澄んだ輝きが宿っていた。
 きっとそれが、本来の彼女の姿。

「羅紗の魔術を自分の中でどう位置付ければいいのか。私の中でもまだ結論が出ていないの。だからあなたたちとの戦いの中で、それを見出だしたいとも思っている。そういう意味でも……精いっぱい戦わせてもらうわ」

 他者の命令ではなく、誰かに操られてでもなく、ただ自分の道を見出だすために、今、アマランスは戦う。「本当の彼女」として。
 それはきっとこれまでのアマランスよりも強く、そして、――美しいことだろう。
 ゆえにこそ……能力者たちよ、全力で戦ってほしい!

「そーれ、ごーごーれっつごー!! アマランス様―!!」 
 あと、遠くからサイリウムや旗を振ったりラッパ鳴らしたりしてる魔術師たちはただの応援団なのでスルーしてよい!