シナリオ

モギセンカッコガチ、とアマランスは言った

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「さあて、今日も元気に星でも詠みましょうか!」

 星詠み、パンドラ・パンデモニウム(希望という名の災厄、災厄という名の希望・h00179)がのんびりと夜空を見上げたその時。
 目の前には靴の底があった。
「ぐえー!?」
「ああ、済まない……まさかそこに顔があるとは」

 何たるタイミングか、ちょうど空から舞い降りてきた誰かに顔を踏んづけられ、パンドラはひっくり返る。赤くなった鼻をさすりながら慌てて起きあがってみて、パンドラは目を丸くした。そこには、見知った顔があったからである。

「ふぇぇ、アマランスさん!?」

 豊かにたなびく美しい髪と澄んだ神秘的なまなざし、蠱惑的な肢体と、何よりもその総身に纏う強大なる魔力。そう、彼女こそは、かつて『羅紗の魔術塔』においてその人ありと知られ、また数多くの「天使化事変」およびそれに続く「王権決死戦」でも重要な役割を果たした美女。アマランス・フューリーその人だったのである。
 かつては√能力者たちの敵だったアマランスだが、『羅紗の魔術塔』を巡る凄絶な戦いの中、彼女は「七代目塔首」であるフェリーチェ・フューリーに囚われ、その術中に陥った。だが、彼女を慕う多くの魔術師、そして√能力者たちの尽力の末、己を取り戻すことができたのである。

「え、ど、どうしてここにアマランスさんが……?」
 わたわたとしながら訪ねるパンドラに応え、アマランスは朱唇を開く。

「あの『王劒』を巡る戦いでは世話になったな……なったわね」
「『わね』?」
「こほん、世話になった・わ・ね」
「アマランスさん口調変わりました?」
「いいのだ……いいのよ、人は変わるものなのだから。それを教えてくれたのは貴女たちだろう……貴女たちでしょう」

 然り、最初に能力者たちの前に現れた時などは、アマランスの口調はずいぶんと気負ったような固い言葉遣いだった。だが、あの事件を超えて、今は物柔らかい言葉遣いになろうとしている。それは彼女の内面そのものの変容を現しているのだろう……まだ十分に慣れてはいないようだったが。

「あれは……激しい戦いだったわね………」
 アマランスは『塔』での凄絶な戦いの数々を想起するように軽く目を閉じた。パンドラも無論、その戦いに参加した一員であり、はっきりと覚えている。死を覚悟せざるを得なかったあの戦いを。

「でもさらに貴女たちは、今後も戦いに挑んで行くのでしょう。あの戦いのせめてものお礼に、貴女たちのトレーニングの相手をさせてもらおうと思うの。模擬戦というのかしらね、私や私の配下たちが相手をするわ」

「わー、それはありがたいです!」
「……本気だけどね?」
「はい?」
 思わず聞き返したパンドラに、アマランスはくすっと微笑んだ。

「ここは絶対死領域ではないから、死んでも、貴女たちも私たちも何度でも甦る。だから、模擬戦と言っても手加減はしないわ。そうでもしないと訓練にはならないでしょう。本気で……行くわよ?」

「……アマランスさん目が怖いんですが、もしかして……まだちょこっと根に持ってますか? 私たちが何度も貴女の作戦の邪魔したこと……」
「まーさーかー、そんなことはないわー」
「うわすっごい棒読み」

 ということで、アマランスとその配下の魔術師たちが、√能力者たちのトレーニング相手として模擬戦をしてくれるそうだ。といっても、相手はリアルガチで殺りに来るので気を抜いてはならない!

「ふふふ……たっぷり『お礼』をさせてもらうわ……ふふふ……」
「やっぱり『お礼』の意味が違うような気がするんですが!?」

マスターより

天樹
 こんにちは、天樹です。
 アマランスちゃんとは無事に和解できましたが、システム的にはまだ敵として出せるんですよね。
 ということで今回はアマランスちゃんと羅紗の皆さんに模擬戦の相手をしてもらうシナリオになります。お互いに死んでも甦るので気軽かつ気楽に殺したり殺されたりしましょう!
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第1章 冒険 『怪異の精神干渉』


POW 強靭な精神力で耐える
SPD 干渉に同調して発生源を探す
WIZ 魔術的な精神防御を展開する
√汎神解剖機関 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「では――」

 アマランスはふわりと優雅に手を蠢かす。同時に、彼女を起点にヴェールのようにも感じ取れる力の波動が四方へと放たれた。

「この一帯に結界を張ったわ。これで一般人はこの中には入ってこられない。思う存分訓練ができるというわけね。それじゃ、まず、私たちはこの結界の中に隠れるから、見つけ出してごらんなさい。ただし結界内は方向感覚やカンを鈍らせる魔力が充満している。それをどう潜り抜けるかね。それと……」

 びしゃん!

 不意にどこからともなく飛んできた……パイが、星詠みパンドラの顔面を直撃した!
「はわわっ!?」
 バラエティ番組などで使われるあのパイである! パンドラは顔をびちょびちょの真っ白にして情けない声を上げた。
「な、なんですか、これぇ!?」
「ふふ、いきなり致死性の攻撃は大人げないから……最初はパイ投げで攻撃するわ。隠れた私たちが不意に投げつけて来るわよ、それもうまくかわしながら私たちを探してね」
「うう、やっぱ根に持ってる……」
和紋・蜚廉
(気配が、脳を揺らす――いや、揺らそうとしている)

「干渉か。ならば……我が在り方を試すといい」

精神の輪郭に触れる異物は、波のように寄せては返す。力任せのものではない。だが、だからこそ厄介だ。

我は“蟲”。濁った場所に在ることが生きることだった。意志がなければ沈む。消える。

(己の重みで踏みとどまる)

使うのは【環境耐性】【威圧】【野生の勘】。揺らぎに飲まれず、わずかな変化をも捉える。

「……我を視た上で、鍛えるというのか。贅沢な時間だな。……礼を言うぞ」

「力任せのものではない。だが、……だからこそ厄介だな」

|和紋・蜚廉 《わもん・はいれん》(現世の遺骸・h07277)は己の魂のさらに内側からこみ上げてくるような軋みに、それでも漆黒の瞳を煌めかせて薄く笑んだ。あたかも、気配そのものが意志を持ち、脳を、いや彼の存在そのものを揺らして来るかのようだ。

 それは魔術師たち、そしてアマランス・フューリーの張り巡らせた結界のもたらす、ゆらめくような力の波形。その結界から放たれる脈動は世界そのものの描写を書き換え、幾何学を空疎なものにするようなあり得ざる形象をもたらさんとしてくる。認識そのものが歪にへし曲がり、さらに間断無くどろりと蕩け続けていくようなあり得ざる感覚に、蜚廉は襲われていた。

 感謝と友好の証である模擬戦においてすらこれほどの力だ。改めて、アマランスや羅紗の魔術の恐ろしさを感じざるを得ない。それは往古より欧州の歴史の影に隠然と勢力を張っていた、最も強大な魔術結社の一つなのだから。
 
「精神干渉か。ならば……我が在り方を試すといい」

 だが羅紗の強大な魔術をその身で味わいつつ、蜚廉はあえて一歩を進める。精神の輪郭に打ち寄せる波のように寄せては返す異物感をこそ堪能するかのように。

「我は“蟲”。――濁った場所に在ることが生きることだった」
 歪んだ空間を走り抜け、曲がった時の中を跳躍しながら蜚廉はつぶやいた。もとより命が命としてあるべき場所に清濁の差異などあろうはずもなく、そこに貴賤もない。それでも淀み爛れた世界に身を置いて、永らえることはそれだけで一つの闘争だった。ゆえに。

「……それも、慣れている」

 軽く身を傾け、蜚廉は飛来したものを回避する。虚空を貫いてきたものは、路地の先でべしゃりと潰れ、あたかも鮮血のように白い生地を迸らせた。
 ……パイであった。
 身を隠し、いずこからか魔術師たちが投げつけて来る障害物。されど、研ぎ澄まされた彼の野生の勘にはありありと映し出される。それが飛んでくる方向、間合い、勢い。そして。

『う、うわああああああ!!!??アレって、アレって!!???』
『ちょ、あたしアレ苦手、場所変わって……変わってってばあ!!』
 ……なんか、姿を隠しているにもかかわらずそんな感じで漏れ聞こえてくる悲鳴も。

「………魔術師殿たちも、この姿は苦手か。まあ……それも慣れているが」

 固く艶やかな甲殻は誇り高き武人に相応しく、扁平な形状は臨機応変に敵の攻撃を受け流しいかなる戦場にも入り込む論理的な姿であり、また素早く俊敏な挙措は鍛え上げられたその武芸のほどをうかがわせる。
 ……戦士として、一部の隙もないほどに完成されているはずの蜚廉の容姿に、どうも何か過剰に反応する者たちがいるのは不思議なことであった。特に女性が。何故だろう。実に不可解である。

『落ち着きなさい。あなたたちにはまだ修行が足りないようね。相手の姿に囚われるなど。まして相手は私たちの恩人、姿にどうこう思うなど恥じなさい』

 かすかに聞こえてくる声は、どうやらアマランス本人に代わったようだ。
『さすがアマランス様!』
『いいこと、こうするのよ!』
 アマランスの声と共にパイが再び投擲され、今度は先ほどよりも鋭く激しい勢いで蜚廉をかすめる。
「ふむ、さすがアマランス殿本人……この我の姿を視た上で、鍛えるというのか。贅沢な時間だな。……礼を言うぞ」

 素早く身をかがめ、蜚廉は雨あられと投げつけられてくるパイを潜り抜けて前へと進む! こう、シャカシャカっとした勢いで!
『くっ、えい! えい! えい!!!!!』
 だがアマランスもさるもの、続けざまに打ち出すパイは虚空を純白に塗り潰すほどの勢いだ! さすがアマランス、訓練でも手を抜かない! 抜きやしない! ……っていうか、なんか半分自棄になってる感じさえする!

『うわあああん、えい! えい! えいいいいい!! 当たってえええええ!!』
 
 姿は見えないが、なんか半泣きになってる気がする。
『アマランス様もやっぱ女の子だよな……』
 魔術師たちの静かに頷く様子も、蜚廉の長く揺らめく繊細な触覚には確かに感じ取れるのであった。

「ふむ、怯えるのもよかろう。それを乗り越えてこその生なればな……」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

シアニ・レンツィ
オルガノン見ながら「ウフフ…ニューパワーニューパワー」とか怪しげに呟いてる予兆見たとき(うろおぼえ)はこんな日がくるなんて夢にも思わなかったな
すごく嬉しいよ

こういうときは目が多い方が有利!
√能力でミニドラちゃん達を召喚するよ。ユア、おいで!
何か飛んでくるのを見つけたら念話で教えてねー

聞き耳を立てて布擦れの音やらぼそぼそ話やら聞こえないか注意するよ
パイはハンマーでジャストガード+ふき飛ばして飛んできた方向に叩き返すね
打ち返したパイがアマランスさんに当たっちゃわないようにだけは気を付けておこう
あたしはアマランスさんのカリスマを応援する者…!
というかよく考えたらアマランスさん本人が投げてるわけないか

「すごく嬉しいよ……!」

 シアニ・レンツィ(|不完全な竜人《フォルスドラゴンプロトコル》・h02503)は小さな体に喜びを漲らせ、躍動するように駆けていた。その可憐な表情には思わず笑顔がこぼれている。
「まさかアマランスさんたちとこうやってトレーニングできるような日が来るなんてね」

 歪みながらくるくる回る異様な景色は魔術結界がもたらす影響だ。だがそれでも、シアニの言葉にどこか喜んでいるように、その結界はリズミカルに弾んで見えた。そう、結界の奥にいる誰かが、シアニの喜びに、自分も同じだと語っているかのようにだ。

「うんうん。こんな日が来るなんて夢にも思わなかったな。――アマランスさんがオルガノン見ながら『ウフフ……ニューパワーニューパワー』とか怪しげに呟いてる予兆見たときはさ」

 瞬間! 結界がめっちゃがくんがくんと揺れた! なんかこう、結界の奥にいる誰かが『違う―! 私そんなこと言ってない―!!』 とか叫んでいるようにだ!
「違ったっけ? うろ覚えだけど、まあだいたいそんな感じだったよね。たぶん」
 結界がなんだかしゅーんと萎れ、空気の抜けた風船のようにしぼんだようだった。まるで結界の奥にいる誰かが『違うもん……そんなこと言ってないもん……』と言っているかのように。

「うわ、次々と結界の環境が変わっていくね。さすがアマランスさん! すごい訓練になるよ!」
 結界がなんか落ち込んでるようなどどめ色になりかけているが、シアニは浮き浮きともうステップ踏むような軽やかさで歪み狂った空間をくぐり抜けていく。しかし、ただ結界に惑わされないというだけでは意味がない、隠れ潜んでいる魔術師たちも見つけ出さねばならないのだ。

「ん-、こういうときは目が多い方が有利! みんな集合ーっ!『|幼竜の集会所《サモン・ミニドラゴン》』!!」
 ひしゃげた空間をひらりと飛び越えながら、シアニは√能力を発動した。異界より友人たる幼竜たちを召喚する使い慣れた能力だ。その際、いつも一番最初に来てくれるのは緑竜ユアで……。

『きゃしゃー!』
「でかっ!?」

 おお、なんということか! 思わず目を剥いて見上げたシアニの視界を緑色に塗り潰してしまうほどのその巨体! それこそはユアであった!
 デカい! ユアがデカい! 大人の竜と同じくらいか、何ならそれよりもデカい! いわばこれはハイパーユアか!

「え、成長期!? こんなに急に!? 少し目を離しているうちに子供は大きくなるんだね、ユア、お姉ちゃんは感激だよ、うるうる……って違うか、結界の中で空間が歪んでるからだね」

 そう、元々異界から召喚される竜たちはさらに空間の歪んだ結界を通ることで、一時的に体のサイズがバグってしまったようだ。ユアだけではなく、他の竜たちもサイズが変なことになっている。ある者は細長く、あるものはまんまるく、あるものは三角形や四角形、またあるものはユアとは逆にさらにちっちゃく……。
「まあ、ほっときゃ元に戻るかな」
 シアニは深く考えない。めんどくさいから。

「じゃあみんな、ちょうどいろんなところに潜り込めそうな形になったことだし、あちこちで魔術師さんを探して! 見つけたら念話で教えてね! ユアは……うん、そんだけおっきくなったんだからあたしのボディガードについて。どっかからパイが飛んできたらあたしを守ってね。ただし……」

 ばしぃぃぃぃ!!!

 シアニの言葉が終わるより早く、ハイパーユアの極太尻尾がものっそい勢いで振るわれ、空間を引き裂くほどの威力で何かを叩き返していた!
 おお、それこそは結界の中の誰かが投げたパイだ! 白いクリームが軌跡を描いて飛び帰り、パイを投げた本人の元へと因果応報アタックを決める!

『きゃあああああ!!!!!』
 
 見事! びっちゃー!といういい音と共に、パイは見事その魔術師に命中したようだ。どんな相手なのか、姿は隠れていて見えないが。
 シアニは、あちゃー、と小さな肩をすくめる。
「……打ち返したパイがアマランスさんには当たらないようにしてね、って言おうとしたんだけど。まあ、よく考えたらアマランスさん本人が直接パイ投げてくるわけないか。そんな子供みたいなねえ、あはは」

『ああっアマランス様ぁ!』
『全員、見るな! 我らは何も見ていない! いいな! アマランス様の威厳が失われるような姿は何も見ていないのだ!』
『お、おう!! 見ていないとも!』

 結界の奥からなんかそんな感じの悲愴な声が聞こえてくる気がする。
「………………ええと」
 が、シアニもまた、そんな声は聞いていないことにした!
 
「………うん、何もなかった。なかったんだよ。あたしはアマランスさんのカリスマを応援する者……!! いいね、このリプレイを読んでいる皆さんも、何もなかったんだからね!」
 アッハイ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

サティー・リドナー
アマランスさんついに改心、喜ばしいですね、以前は、天使化事件で2、3件敵対
直接も戦いましたが、それが羅砂組織的に誤った専守防衛主義であったと認めたんですね。
模擬戦闘ですか、最初は、鬼ごっこ、わたくしを、捕まえご覧なさいってことですか
スターダストで飛行して中空から隠れ場所発見したら、仲間にも知らせましょう。
パイ投げで妨害は、空中浮遊で上手く回避します
奥の手はルート能力で入れ替わりで、近付きタッチ出来たら勝利でしょうか
勝負というからには、負けるつもりはありません
天使達を、二度と組織反映の礎の素材にしないと味方になってくれたことに心から安心し、嬉しい気持ちに溢れています、うちのアンカーも喜んでますね

「アマランスさんの考えが変わってくれたのは喜ばしいですね。以前は、天使化事件で2、3件敵対したこともありましたし……」

 サティー・リドナー(人間(√EDEN)の|錬金騎士《アルケミストフェンサー》・h05056)は脳裏によぎるかつての思い出に心を馳せていた。『天使』を巡り、隠された陰謀を暴き、暴挙を阻止するために赴いた、いくつかの激しい戦いを。

「それに、直接戦ったこともありましたっけ……」
 そう、あの事件の時、錬金術師であるサティーは、錬金術を悪用して命を浪費し蹂躙するアマランスを断罪せずにはいられなかった。あの時のアマランスの表情は確かに美しくはあったとはいえ、冷酷非情な魔女と評するしかないものだったけれど。
 だがそれに比べ、先ほど話をしていた時のアマランスの顔つきの柔らかさはどうだろう。憑き物が落ちたかのように険が取れ、穏やかな気品に溢れるものだったではないか。

 いわば、サティーは見事に『錬成』したのだ。非金属を金に変えるように、雲っていたアマランスの魂を黄金のように輝くそれへと。

「それこそが本当の錬金術……なーんて言うつもりはないですけどね、えへへ」
 肩を竦めて笑い、サティーは改めて、陽炎のようにゆらめき不知火のように移り替わる不定形にして異質な空間の先へと目を向けた。
「さて、今回は鬼ごっこというわけですね、私を捕まえてごらんなさいってわけですか」
 よおし、とばかりにサティーは意気込む。先の戦いと同じように術を競い技を争うものだとしても、こんな平和で楽しいやり方ならば大歓迎だ。……パイまみれになる危険はあるとしても。

「ふふっ、鬼ごっこで、空から攻めちゃいけないってルールはなかったですよね。じゃあ行きますよ! スターダストっ!」
 煌めく魔力が流れ星のように尾を引いて一閃する。そこに現れたものは天空駆ける魔法の箒、スターダストだ!
 サティーは軽やかにスターダストにまたがるとふわりと風に乗り虚空に舞い上がる。
「これならどこに隠れようと……って、あらら?」
 だが上から探せば一網打尽と思いきや、上に登っていたと思えば次の瞬間左右に曲がり、下方に降ったような気がしていたらいつの間にか遥か上空に飛び上がったりと、スターダストがまともに飛ばせない! というよりも、空間自体がねじれてひん曲がっているのだ。

「これじゃさすがに……うわっと!」

 途方に暮れかけたサティーの頬すれすれを、ひゅんと風を切って通り過ぎたのはパイだ! 姿を隠しながら魔術師たちがパイを投げつけてきているのだ。
 辛うじて右に左によけ続けているサティーだが、このままでは被弾も時間の問題ではないか!
 だが見よ、サティーの可憐な顔には笑みが浮かんでいる! 

「何でパイだけが真っ直ぐ飛んでくるんでしょう? それはパイを投げる瞬間だけは空間の歪みが消されているからですよね! それなら!」
 おお、サティーは今しも飛んできたパイに向けて自分から真っ直ぐに突っ込んだ! このままでは顔面クリームだらけになってしまうぞ!
 だが、パイに激突するかと見えたその瞬間。

「漂いし人の残滓と入れ替われ……|インビジブルジャンプ《セツナノカイコウ》!!」

 サティーは√能力を発動した! 指定座標はパイがたった今通り過ぎた空間に存在するインビジブル! そう、通り過ぎたばかりの空間は歪みがなく真っ直ぐなままだ! サティーはいわば、パイが命中する瞬間だけをスキップしたかのごとく、パイが投げられた軌道をそのまま逆進し――

「ターッチ!」

 そこに潜んでいた魔術師に見事タッチしたのである!

「うわ、参りました……」
 手を上げ降参する魔術師に、サティーは微笑むと、手を伸ばし握手を求めるのだった。

「うちのAnkerも天使なんです。だから皆さんが味方になってくれて、私も心から安心しましたし、嬉しい気持ちが溢れています。彼も喜んでますよ、皆さんとこうして……手を握り合えるようになったことをね」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

アリエル・スチュアート
『良かったですね、公爵。アマランスがカリスマを取り戻しましたよ。』
…いや、まあ、うん。
こうしてまた彼女と戦えるのはとても喜ばしいわ、喜ばしいんだけど…。
パイ投げにカリスマは有るのかしら…。

まあ、良いわ、どっちにしろアマランスとまた戦うのは私の目的の一つだったんだし。
妖精達の行軍で呼び出したフェアリーズで、結界内の情報収集を行うわ。
パイ投げはフェアリーズに防いでもらって…。
『は?(避ける)』
ちょ、なんで避けて…!?お、オーラ防御で防ぐわ!
投げられた方向に対して高速詠唱、魔力溜めの全力魔法で反撃よ。

…容赦の無さはカリスマ溢れるアマランスらしいんだけど、やっぱり何か違う気がするわ、これ…!
ボーギー・ウェイトリー
・POW

・模擬戦ー…模擬戦ですかー…ならばー…僕みたいな未熟者でもー…お世話になれるかもしれませんねー…。

・はじめましてー…アマランスおねーさんー…初対面ではありますけれどー…お噂はかねがねー…僕はボーギー…よろしくですー。

・噂と言っても、貴方の事は、こちらの情報で知ってるくらいでー…後、貴方の事を、ちょくちょく話してるおねーさんがいるくらいで…。

・いずれにせよー…僕も、悪い子はこらしめにいくくらいは、出来るようにならないとなのでー…よろしくお願いしますー…。

・飛んでくるパイ投げー…つまり当たっても、食べちゃいながら投げられた方角を探せばいいわけです。パイ美味しいです。

・アドリブと絡みを歓迎

「えっ、ボーギーくん!? ……驚いたわ、模擬戦に来てたのね」
「あ、やっぱり……アリエルおねーさんも、来てるんじゃないかと、思いましたー……ちょくちょく、アマランスおねーさんのこと、話してましたものねー……」

 思いもかけぬ出会いに、アリエル・スチュアート(片赤翼の若き女公爵・h00868)は目を丸くした。なぜなら、彼女の住むアパートに……。
「公・爵・邸!」
 失礼、彼女の住む公爵邸にいつも尋ねて来る親しい少年、ボーギー・ウェイトリー(少年少女妄想・h04521)の、灯火に揺らめくような微笑がそこにあったためである。

「ボーギーくん、『僕も、悪い子はこらしめにいくくらいは、出来るようにならないとなので』……って言ってたものね。そういう意味ではこの模擬戦はちょうどよかったかも」
「ええ……模擬戦ならばー……僕みたいな未熟者でもー……お世話になれるかもしれませんからねー……」
「ううん、そんなことはないわ」
 アリエルは優しく笑んでボーギーの小さな肩をポンと叩く。

「勇気を奮って最初の一歩を踏み出す、それが一番大事なことなの。ボーギーくんはちゃんと道を歩き出した、もうその時点で未熟者とは私は思わないわ」
「じーん……!」
 ボーギーはキラキラ輝く瞳でアリエルの気品に満ちた美しい容貌を見つめた。
「感激ですー……カリスマって……アリエルおねーさんみたいなひとのことを……いうのですよねー……」
「え、や、やだ。よしてよそんな。私なんかより……」

 と、その時! 二人の耳元をかすめてすさまじい勢いで飛来した物体が!
「危ない、ボーギーくん!」
「わ、わわ……!?」
 ボーギーを抱えて横っ飛びに物陰に転がり込んだアリエルの目前で、白い着弾痕がびちゃりと飛散する!
 おお、それこそは!

「……パイね……」
「パイですねー……」

 そう、結界の中に潜んだ魔術師たちとアマランスが投げつけてくるパイであったのだ!
「……容赦なく攻撃してくるのはアマランスらしいんだけど……」
 と、そっと顔を覗かせて周囲を伺いつつアリエルは眉根を寄せる。
『良かったですね、公爵。アマランスがカリスマを取り戻しましたよ』
「でもパイよ!?」
 アリエルに仕える|機械妖精《フェアリーズ》のAI、ティターニアの言葉にアリエルは頭を抱えた。アマランスに一種の敬意を抱いているアリエルとしては、この状況をどう飲み込むべきか、咀嚼が難しいところだ。
「こうしてまた彼女と戦えるのはとても喜ばしいわ、喜ばしいんだけど……パイ投げにカリスマは有るのかしら……!?」

「アリエルおねーさん……!」
 そのとき、ボーギーがきゅっとアリエルの手を握った。
「え、ボーギーくん……?」
「カリスマのあるアリエルおねーさんが……カリスマがあると信じるアマランスおねーさんなんですから……きっと、パイを投げていても凄いカリスマがあると思うですー……」
「……そうかなあ……」
 首をかしげるアリエルに、ボーギーは強く断言した。

「たとえばこうです……あの有名な『円盤を投げるギリシアの人の彫刻』……あんな感じでパイを投げているとしたら……!?」
「はっ!」

 そのボーギーの言葉にアリエルは想像する。――人々が瞠目するような芸術的なフォームでビシッとパイを構え、投擲体勢に入っているアマランスの姿を! 均整の取れたスタイル、全身の筋肉に漲る緊張感からその解放に至る直前の一瞬を切り取ったような鮮やかな芸術的容姿を!

「……確かに……それはカリスマかもしれないわ……!」
 瞳に生気を取り戻したアリエルは意気軒昂に|機械妖精《フェアリーズ》たちに指示を出し、臨戦態勢に復帰した! え、いいんだそれで!
「みんな、パイを防いで! 私たちはその隙に……」
『は? なぜ私たちがパイ塗れにならなければいけないと?』
「ちょっとお!?」
 だがあっさり主を見捨ててパイを回避したティターニアに、アリエルのせっかく盛り上がった戦意はまたもやくじかれた!
『ボディの隙間にパイが入り込んだら人間より除去が難しいのですよ? まったく』
「まったくじゃないわよ!?」
 アリエルはギリギリのところでオーラを展開しパイを防ごうとするが、危ない! タイミングとしては一瞬間に合わないか! パイまみれになってしまうのか、アリエル!

「捕食……です……!」

 おお、しかし! そのアリエルの危機を救ったのは誰あろう、刹那の間隙を縫い、大きな口を開けてパイを受け止め、かぶりついたボーギーであった!

「ぼ、ボーギーくん!?」
「はむはむ……ごくん」
 それこそはボーギーの特質にして特技、『捕食』の能力だ! ボーギーは鋭く投擲されたパイを見事に食らったのだ!
 だがアリエルはボーギーのその姿に対し不安げなまなざしを向ける。
「……ボーギーくん、パイ投げのパイって、ちゃんとしたお菓子として作られたものじゃないからあまりおいしくないって聞くけど……大丈夫?」
「アリエルおねーさん……!」
「は、はい!?」
 ボーギーが見せたいつにない真剣な表情に、アリエルは思わず背筋をビシッと伸ばした。

「好き嫌いをするのは……『悪い子』……なのですよー」
「はっ!」

 おお、真髄を突いたボーギーの言葉に思わずアリエルに電流奔る!
「食べられるものは……ちゃんといただくのですー。……それが『いい子』なのです―。そして……カリスマのある人もきっと……好き嫌いはしないのですー」
「そ、そうね……食べ物に好き嫌いのあるカリスマってあんまりカリスマっぽくないわね……」
 うんうん、と納得するアリエルに、にこっとボーギーも微笑んだ。

「だからきっと……アマランスさんもこの結界のどこかで……このパイをちゃんと食べているのです―」

『……えっ』
 なんか、そんな声が結界のどこかから聞こえた気がした。
 だが、アリエルもボーギーも気にしない!

「そうね……カリスマのあるアマランスならきっと食べているわね!」
「そうに違いないのですー……!」
『…………えっ…………』

 なんか泣きそうな声で、結界のどこかからまた声が聞こえた気がした。
だがアリエルもボーギーも一向にまったく全然つゆほども気にせず、ひたすらパイを捕食しつつ突き進むのであった!

『これ……食べるの、私……?』
 そんな声がどっかから聞こえる気がするけど!
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

天神・珠音
【アドリブOK】
腕試しはわたしも望むところです。
でも結界の中で敵の動きを察知するのは難しそうです。
一応第六感を張り巡らせながら周辺を警戒しますが…
隠れた相手の動きがわかればいいのです…

せっかくだからパイ投げのパイをユーベルコードで食らってみせましょう。
その時のパイが投げられた方向を読めば、隠れている場所も察知できるはずです。
そこを狙って追いかけてみますよ。

「腕試しはわたしも望むところです」

|天神・珠音 《あまがみ・たまね》(どこにでもはいないトウテツ・h00438)はキュッと唇を噛み、強い決意の籠ったまなざしで揺らめく空間を見据えた。
 不断の鍛錬に身を晒し、鋼の意思を鍛えあげることで、己の中に獰猛に蠢く暴食の四凶――『饕餮』の因子を制御するために。

「……わたしはこの『飢え』と付き合い続け、飼いならしていかなければならないのですもの……!」

 それは珠音に課せられた業。「物を喰らう」ということに絶対の力を発揮しながらも、その力に染められた過去が、いや現在が、珠音を蝕み苛んでその罪を忘れさせない。かつて食べることが好きだった明るい少女は、今は食事そのものにためらいと恐れを抱く哀しみの中にいる。
 だが、いつまでも打ち沈んでいるわけにはいかぬ。己を制し、御さなければならないのだ、この恐るべき力を!
 そしてそのための訓練なら、と珠音は意を決し、結界の中へと飛び込んだ。その中に潜むは恐るべき手練を誇る羅紗の魔術師たち、そしてアマランス・フューリー。だが珠音に恐れはない。たとえ……!

「っ!!!」

 危うく身をかがめた珠音の頭上ぎりぎりを、風を切って凄まじい勢いで何かが飛んでいき、壁になたってべしゃりと白い飛沫を上げて潰れた。それこそは身を隠した魔術師たちが投げ込んでくるパイだ!
 そう、たとえパイまみれになるかもしれないという危険を侵そうとも、珠音は退かぬ!
「……まあ、女の子としてはなるべくパイまみれになる姿は避けたいというのも本音ではありますが……」
 それはそうだ!

「っと! 今度はこちらですか!」

 今度は右から、次は左から、パイの嵐は止まらない。。かろうじてかわし続けてはいるものの、いずれも際どいタイミングだ。周囲の異変を鋭く察知する珠音の第六感は優れたものだが、空間そのものを歪め、方向感覚を狂わせるこの結界の中では、やや効果が薄められてしまうのもやむを得ない。
「ならば……しかたがありません……!」
 珠音は覚悟を決めた。彼女の内に秘められた力が解き放たれる。魂の奥底に封じられた凶獣・饕餮の呪われし力が!

「|消えない飢えで喰らい尽くす《アンリミテッドイーター》!!!」

 次の瞬間――あらゆる部位。そう、珠音の可憐な体のあらゆる部位が、巨大なる|顎《あぎと》を奈落の淵のように大きく展開した! 荒れ狂う「暴食」そのものの概念が表象されたかのように!
 戦慄すべき牙を剥き出した珠音は投げつけられてくるパイをことごとくその顎で捉え、喰らい尽くしていく。

「……パイが投げられた方向を読めば、隠れている場所も察知できるはずです……でも」
 珠音は柳眉を曇らせる。喰らうごとに、その「喰らう」ことへのトラウマが珠音の魂を蝕み、食べたいけれど食べたくないという感情が彼女の心の中で渦巻いて、一口ごとに苦しみと悲しみがいや増していくのだから。
「どれだけ食べてもぜんぜん食べた気になりませんしね……身にも付きませんし」

 ぽつんと呟いたその時。

『えっ』

 そんな声が結界の奥から聞こえた。おそらくパイを投げている魔術師のものだろう、女性のようだ。
『え……もしかして……いくら食べても太らない……?』
「はあ、まあ……」
『いくらスイーツを食べても……太らない……?』
「ですね……」
 一瞬の沈黙。
 そして。

『う、うらやましいいいい!!!!』

 そんな絶叫。
「……はい?」
『いくらスイーツを食べても太らない! いくらでも食べられる! 女の子の夢―!!!!』

 そう叫んでから、結界の奥の声はハッと我を取り戻したように、気まずそうに続けた。
『あ、ご、ごめんなさい、貴女には貴女の苦しみがあるんだろうけれど、つい……』
「……いえ」
 くすっと珠音は小さく微笑み、肩をすくめた。ほんの少しだけ、今まで抱えていた闇が薄れ、ほんの微かにだけ、背負っていた荷物が軽くなったような気がして。

「そういう点では、この力も、悪いことばかりではないのかもしれませんね。ありがとう、この力を、少しだけ肯定的に考えることができるかもしれません……」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

深見・音夢
昨日の敵は今日の友、と見せかけたリベンジマッチってとこっすか。周りに迷惑かからない分にはそういうの嫌いじゃないっす。
何なら模擬線にかこつけてワンチャンお持ち帰りも……何でもないっすよー(棒読み)

なんか思ってたよりアマランス殿も楽しんでらっしゃる? ならこちらも『熱情語りの独壇場』で一つ余興といこうっすかね。
今回語る推しはそう……可愛らしい趣味やちょっと隠しておきたい創作活動にいそしむポンコツ可愛い系なアマランス殿! コスもそれっぽく寄せてみたっす!
え、心当たりがない? HAHAHA、どこかの世界にはそんなアマランス殿がいたんっすよきっと。動揺して隙を見せたら持ってるパイを撃ち抜いてあげるっす。

「昨日の敵は今日の友――と見せかけたリベンジマッチってとこっすか。周りに迷惑かからない分にはそういうの嫌いじゃないっす」

 軽く鼻歌を奏でながら、|深見・音夢 《ふかみ・ねむ》(星灯りに手が届かなくても・h00525)は歩を進める。颯爽と、優雅に、華麗に。
 だが、危険ではないか? ここは羅紗の魔術師たちが展開した結界の中。友好のしるしの模擬戦とはいえ、どこからパイが飛んできてべしゃべしゃにされてしまうかわからないというのに!
 しかし、音夢はまるで気に掛ける様子もなく、通りの真ん中を堂々と歩き、あまつさえ、広場の中央で立ち止まって、これ見よがしにその姿を披露さえしている始末。

「何事も一生懸命なのは素晴らしい事っすからね。そら燃える! アガる! ブチアガる! ってものっすよ。ましてやそれが可愛らしい趣味やちょっと隠しておきたい創作活動ときたら、ポンコツ可愛いあざと味で辛抱たまらんっすよねえ」

 アブナイ! そんなことをしているから、今しもパイが風を切って投げつけられたではないか!
 パイは勢いよくびちゃんと白い飛沫を上げて潰れる……音夢の目の前の地面で。
 続けて2個、3個と飛んでくるパイだが、いずれも音夢には当たらず、彼女の周囲で力なく落ちていくばかりだ。これは一体どうしたというのか、音夢は特に回避も防御も行っていないというのに。

『うう……やっぱり駄目だ、俺はダメだよ!』
『俺もだ……っていうかあれはズルくないか!?』

 結界の奥から苦し気に漏らす声が聞こえる、姿を隠している羅紗魔術士たちの苦悶と苦悩の声だ。一体何があったというのか!

『ズルいよ、アマランス様のコスプレとかさ! 攻撃できるわけないじゃん!』

 まさにその通り! 音夢の今の姿は、豊かにたなびく髪と澄んだ神秘的なまなざし、蠱惑的な肢体を薄手のセクシーな衣装に包んだ、美しくもどっかで見た姿。そう、アマランスの容姿そのものだ!
 音夢は既に√能力『|熱情語りの独壇場《オシカツオンステージ》』を発動していた!
 その能力に秘められた効果こそは――『推しのコスプレをしたワンマンステージ』に他ならないのだ!

『くっ、俺はもう耐え切れん……逝ってくる!』
『漢字!』
『間違ってない!』
 そんな声と共に、結界のヴェールを破って一人の魔術師が転がり出るように現れた! 君たちは二章の敵の予定なのに、まさか約束を破って一章から直接攻撃をしようというのか! いや、そんなことはなかった!

『すみません! 凄く素敵なコスプレですね! 写真いいでしょうか!』

 カメコだった! ちゃんと相手を褒め、撮影許可を求めているあたり礼儀正しい! しかもなんかバズーカ砲みたいにでけえレンズ付けたカメラを構えた本格派だ!

「もちろんおっけーっすよー、どぞどぞー」
 音夢も機嫌よく撮影に応じる。すらりと長い手足を翻し、手慣れた様子で次々とポージングを決めていく。これぞイベント慣れした音夢の自家薬籠中と言っても過言ではない!
 カメコ魔術師はすっかり有頂天な様子で膝付き、寝そべり、様々なアングルから凄まじい勢いでシャッターを切りまくっていく。

『ええい、お前ばっかりズルいぞ! お、俺だって! すいませんこっちにも目線いいですか!』
『こちらにもファンサお願いします!!』
 一人が堕ちればあとはもう雪崩状態だ。次々と結界の奥から目の色を変えカメラやスマホを構えて飛び出してきた魔術師たちが音夢の周りに群がっていく。
「はいはいー、ありがとっす、ありがとっすー。じゃあサービスでチラリ……こっちもチラリ……」
『うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!』
 薄い衣装をギリギリまでめくり、太腿の奥や胸元の際どい所までをチラ見せしていくスタイルに魔術師たちは卒倒寸前!

『い、い、いい加減にしなさい―!! どっちに突っ込んでいいかわからないわー!!!』
 なんかもう明らかに真っ赤な涙目になってるよね、と言わんばかりの悲鳴にも似た声が響き渡ると同時に、今度は本気の勢いでパイの雨が降り注いだ!
 無論、その主はアマランス本人である。かろうじて姿はまだ隠しているあたり、さすがにアマランスの自制心は大したものだ! 
『危ない、アマランス様……のレイヤーさん!』
 だが危機一髪! 音夢に降り注いだパイの嵐を、そのとき、カメコ魔術師たちが身を挺して守ったのだ!
「カ、カメコさーん!!!」
 パイまみれになった魔術師たちに音夢の叫びが響く。
『い、いいんです……アマランス様を守ってアマラス様に討たれる……こんな幸せなことがあるでしょうか……ガクリ』
 ばったりとパイの海の中に沈んだ魔術師たちに、音夢は誓うのだった。

「カメコさんたちの犠牲は無駄にしないっす。きっと……きっとアマランス殿を同人沼に引きずり込むっすからね!!」
『ええ……何その覚悟……』
🔵​🔵​🔵​ 大成功

アリス・アストレアハート
アドリブ連携歓迎

アマランスさん…
ご無事みたいで
本当によかったです…

パイ投げですか…?
それはたのしそうです…♪
(自分もパイ投げ用のパイを持ち込み)
(※多分この子は
ゆくゆくはガチでの模擬戦をやるとは思って無い様子…?)

アマランスさん達が
隠れているのを
見つければいいんですね…?

【第六感】【霊的防護】【オーラ防御】で
飛んで来るパイを
防御行動し

√能力で
あらかじめ
隠して喚んでおいた
護霊「千夜の語部」に
お話を語らせ
周囲を
「童話やお伽話の領界」にし

持って来てたパイを投げつけ

「この領界内では…私の攻撃は、必中になります…つまり、パイを投げて、当たったところに、アマランスさん達がいらっしゃる、という事ですっ…☆』

「アマランスさん……ご無事みたいで本当によかったです……」

 アリス・アストレアハート(不思議の国の天司神姫アリス・h00831)は可憐で小さな手を胸の前でポンと打ち合わせ、楽しげに花のような笑顔を零した。その姿はあたかも天使の描かれた絵画か、それとも無垢な妖精をかたどった人形かと見まごうほどに愛らしい。

「そのお祝いの……パイ投げ大会なんですね……♪ 楽しそうです……☆」
『待って? アリス待って? なんか違う気がするわ?』

 何ならスキップさえしながら結界の中に向かおうとするアリスを、彼女の意志ある分身ともいうべき護霊「何者でないメアリーアン」が彼女のエプロンドレスの裾を掴み必死で引き留めようとする。だが!
 ずるずる!

『あなたこんなに力強かったっかしらアリス!?』
 おお、るんたった気分のアリスはメアリーアンの制止などどこ吹く風、彼女をドレスに捕まらせたまま引きずって結界の中へと踊り込んでいくではないか。
「パイ投げ大会です……楽しみです……♪」
『いやその後にガチのトレーニングが……本気の奴がくるのよ!? わー駄目だわかってないわこの子!!』
「マイ投げパイも用意してきました……☆」
『なんでそんなの持ってるのかしらあ!?』
「大会に出場する……選手の……心得?」
『選手かー。選手になっちゃってたかー』

 ドヤっとばかりに手焼きのパイを見せつけて来るアリスに、メアリーアンの瞳の焦点は失われた。だが我が道を行くアリスは平然と、結界内の歪み狂った幾何学の街並みを物珍しそうに見回している。偶然か第六感なのか、きょろきょろしたり駆け回ったりしているアリスの動きに、彼女目掛け跳んでくるパイはすべて外れてしまう!
「わー……なんかテーマパークみたいで……おもしろいです……さすが世界パイ投げ大会会場……」
『いつの間に世界大会に!?』
「でも……まず、アマランスさんたちはかくれんぼさんしてるわけですね……よおし、です」

 アリスはその身に満ちた魔力を開放。星の降るような煌めく光のシャワーと共に、美しい女性の幻影が現れる。それこそは彼女の護霊の一人、『千夜の|語部《かたりべ》』だ。

「語部さん……この世界パイ投げ大会に相応しい……不思議なお話をお願いします……☆」
『………その『世界パイ投げ大会』って言う単語以上に不思議な話をしろとおっしゃいますの?……』
 語部は美しい眉を顰め、細い首を捻る。傍らでメアリーアンも「あなたも苦労するわね……」といった表情を浮かべているがアリスは気にしない!
 ワクワクするアリスの澄んだまなざしはまさに無垢で純真な可愛さの暴走たる無言の強烈な圧力! スルーもできず、語部は考え考え、口を開く。

『ええと……あるところに何体もの霊を従える可愛らしい女の子がいましたわ……』
「はわわ……! ふしぎです……!」
『その女の子は、以前は敵だった人が味方になったことをお祝いするために、ゲーム大会に参加することにしましたわ……』
「ええっ、なぜそんなことになったんでしょう……?」
『それはこう、なんか、いろんなものを投げて遊ぶ大会でした……おしまいですわ……』
「わー、ほんとうに不思議なお話です……!」

 あなたのことよ。
 って言わないで黙ってるメアリーアンは偉いと思う。
 しかしこれで「不思議な話をする」という条件は成就! アリスの√能力が顕現する!
それはアリスを主人公にした空間形成『|アリスと不思議な不思議な御話《アリス・イン・ワンダーストーリーズ》』だ!

 空間の展開を確認したアリスは楽し気に――でたらめにパイをぶん投げる! だが、歪曲空間に潜んだ魔術師たちはまだ発見できていない。どういうことなのか?

『うわああああ!!!』
『きゃあああああ!!!』

 だが歪んだ閉鎖空間の中に、次々と叫び声が上がる! アリスの投げたパイが顔面を襲った魔術師たちの悲鳴だ!

「この領界内では……私の攻撃は、必中になります……つまり、パイを投げて、当たったところに、アマランスさん達がいらっしゃる、という事ですっ……☆」

 そう、この空間の中で因果は逆転する。「命中する」という結果が先に実現し、行為という原因はその後についてくるのだ! ゆえに、デタラメにぶん投げても必ず当たる!
 見事にパイを命中させたアリスは顔をほころばせ、ぴょんぴょんと跳んで嬉しさを全身で表す。

「わー、当たりました……♪ やっぱり……楽しいですね、世界パイ投げグランドワールドカップ……☆」
『また規模が大きくなってる!?』
🔵​🔵​🔵​ 大成功

エーファ・コシュタ
アドリブ絡み諸々歓迎

お久しぶりです、アマランスさん!何だか……雰囲気変わりましたか?
いえ、ヒトはちょっとしたきっかけで変わる物。きっとワタシでは推し測れない何かがあったのでしょう……

さあまずは…かくれんぼですね!こう見えて実はワタシ見つける側は得意なんですよ!
早速行きますよワタシたち!頭を沢山増やす【人頭戦術】で結界内を隅から隅まで文字通り"視て"回ります!
方向感覚が鈍るのは…数の力でごり押しです!その為のワタシたち軍団!
ああっ!何処からか飛んできたパイでワタシがやられてしまいました!ですがワタシが倒れても第二第三のワタシがアナタ方をきっと見つけ出す事でしょう…

「先ほどお会いしたアマランスさん……お久しぶりでしたが……」

 エーファ・コシュタ(突撃|飛頭騎士《デュラハン》・h01928)は、首を捻った。捻った拍子に頭が外れてコトンと落ちた。仕方ない、エーファはデュラハンであるのだから。
 おっと、と頭を拾い上げ、付け直しながら、彼女は考え込む。

「なんかアマランスさん、雰囲気変わりましたかね?」
 エーファは以前、アマランスと敵として対峙したことがある。それ以降、アマランスと√能力者たちが紆余曲折を経て和解できたことは知っていたが、意外なほどに柔和になっていたアマランスの姿に、エーファは軽く驚きを禁じ得なかった。

「まあ、ヒトはちょっとしたきっかけで変わる物。きっとワタシでは推し測れない何かがあったのでしょう……」
 うんうん、とエーファは頷く。頷いた拍子に頭が外れてゴトンと落ちた。おっと、と頭を拾い上げて付け直しながら、彼女は周囲を見回す。結界に覆われ、歪んで揺らめく空間を。そして、見回した拍子にごろんと頭が――。

「天丼ですかワタシ! 芸人なら天丼は三回までと言われているでしょう! いや誰が芸人ですか! ワタシは騎士です!」

 しかし実際、こうもコロコロ頭が取れていては毎回大変だ。
「ずっと手で支えてたほうがいいでしょうか……いっそのこと頭と体結んじゃいますか? しかしそれでは機動性に欠けますね……」
 エーファは騎士らしくちゃんと教訓に学ぶ。すなわち、今回は悩んで首を捻る前に、ちゃんと頭を外し、手で持って首を回したのである。意味あるのかなそれ。

「頭の安定性が良くない……これはワタシの今後の課題ですね……しかし今はこのかくれんぼに勝利することが先決です!」
 エーファは目前の問題に集中することとした。すなわち、結界内に潜み隠れる魔術師たちを、投げつけられてくるパイを避けつつ見つけ出すという難問に!

「こう見えて実はワタシ、見つける側は得意なんですよ! 早速行きますよワタシたち!」
「「「「「おー!!!!!」」」」」
 一斉に応えたのはエーファの数多いアタマたちだ! ふわふわと浮かぶアタマたちは周囲に散会し、その鋭い視線でアリ一匹逃さぬほどの捜索網を敷く! 同時にそのアタマたちは……。

「ぐえー!!」
「ああ、ワタシ―っ!!」
「ワタシが倒れてもまだ第二第三のワタシたちが……がくっ」
 投げつけられてくるパイからエーファを守る、自律行動式のシールドともなるのだ! 自らを犠牲にするとは、なんと尊い騎士道精神であろうか!

「……でも考えてみたら、ワタシ、単にパイまみれになっただけですよね?」
 だが不意にパイに命中したエーファのアタマが起き上がり、真白になりつつも、もっともな疑問を呈した。その言葉に、他のアタマたちは顔を見合わせる。

「でもサバゲなんかでも、当てられたらその試合ではアウトですよね。騎士道的には当てられたらやっぱりアウトなのでは?」
「そっかー……そう言われれば騎士的に仕方ありません。ワタシはここでおとなしくしていましょう」

 パイを当てられてアウトになったアタマは素直にその場に転がり、他のアタマたちが飛んでいくのを見送った。
「見守るだけとは残念ですが、ワタシたちならきっと上手くやってくれ……」
 だがその時! パイを当てられてアウトになったアタマ、めんどくさいから略してパイアタマはハッと気づいた!
 地面にごろんと転がっていればこそ、視野が変わり、地表すれすれに歪められた空間のズレが見えたからである!
「ワタシたち! あそこに……」
 他のアタマたちを呼ぼうとして、パイアタマは言葉に詰まる。

(ワタシはアウトになった身……そのワタシが他のワタシたちに教えるのは騎士道違反なのでは!?)

 だがしかし! その結界の隙間からうっすらと見える魔術師は、今しもパイを抱え、エーファたちに投げつけようとしている。他のアタマたちはそれに気づいていない!
 このままでは全滅だ! しかし騎士の誇りを穢すわけにはいかない!
(う、ううううっ……どうすれば……!!!)
 パイアタマが苦悶し、思わず歯をギリッと噛み締めた時。
 力を入れ過ぎたのか、その時、つるっとアタマが滑った! ただでさえ安定性が良くないエーファのアタマが、さらにパイまみれになって滑りやすくなっていたのだ!
 滑った勢いで、パイアタマはごろごろと転がっていく……魔術師に向かって!
 ストライク!!! 次の瞬間、ボ-リングのごとく、見事にパイアタマは魔術師に命中! その脚を掬ってぶっ倒したのである!

「「「「ワ、ワタシ―!」」」」
 その騒ぎに気付いた他のアタマたちも集まってくると、パイアタマを拾い上げた。
「……わざとではありません。わざと騎士道に反することはしていませんから!」
「「「「わかっています、ワタシ!!」」」」
 エーファはパイまみれのアタマをぎゅっと抱きかかえる。

「アタマの安定性が良くないって言うのも、悪いことばかりではありませんね。私のアタマは転がりやすいくらいでちょうどいいのかもです!」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

白神・真綾
絡みアドリブ歓迎
ヒャッハー!なんか楽しそうなイベントデスネェ!殺し放題とかここは楽園デスカァ!真綾ちゃん容赦しねぇデスヨ!
「ヒャッヒャッヒャー!こいつはご機嫌デース!」
勘や方向感覚を鈍らせる魔力デスカァ。そういうウゼェのは皆まとめて断絶するデスヨ!
『神威殺し』で結界内の魔力を断絶し勘や方向感覚を取り戻し、マルチプルビットを展開して索敵を開始する。
索敵に引っかかったら突っ込んで斬りかかる
「そっちが舐めプだろうと真綾ちゃん容赦しねぇデス!」

 閃刃が虚空に一颯し、天高く聳え立つビルが一棟、音もなく滑るように大地に伏せた。残る斬り跡は鏡面のごとく、輝きさえ見せるほどに鮮やかだ。

「……やっぱり斬れたデース……」

 強烈な煌めきを禍々しく放つ大鎌、|神威殺し《サイズオブタナトス》を片手に無造作にひっ下げた少女、|白神・真綾《しらかみ まあや》(首狩る白兎ヴォーパルバニー・h00844)は目を細め呟いた。
 彼女の佇む通りの向こうではこの世ならぬ者のように空間が揺らめきおぼめいており、そして。
 そしてそのさらに奥からは……

『おいあの子ビル斬っちゃったぞ!?』
『えええ……この模擬戦会場、あとで修理すんの俺たちなのに……!』

 なんか、そんな慨嘆めいた声が聞こえてくる気がするが、姿は見えない。この場所こそは歪められた結界の中、羅紗の魔術師たちが模擬戦のために作り出した空間なのだ。
 だが頓着なく、真綾はさらに呟いた。
「斬れたということは……夢ではないデスネ?」
『ええっ、あの子、夢かどうか確かめるためにビル斬ったの!?』
『普通は自分のほっぺたつねるもんじゃね!?』
 動揺する声がさらにかしましくなるが気に留めることもなく、真綾は思いに耽る。

「真綾ちゃんまじめにやってきたデース……簒奪者を殺し……怪異を殺し……古妖を殺し……でっけえ牛も殺し……オルガノンを殺し……アマランスも何回か殺したデスネェ……ほんとに、ほんとにまじめにやってきたデース……真面目に殺し尽くしたデ-ス」

『おいあの子なんかヤバくね!?』
 戦慄したような声がささやき、もう一つの声がはっと息を飲んだ。
『あ、思い出した……羅紗のグループアプリで、敵になったら気を付けろって回って来てた子だ……お勧めの対応は二つって書いてあった』
『二つ? ひとつは?』
『即逃げる』
『もう一つは?』
『……諦める』

 次の瞬間、爆発するかのように真綾の哄笑が天空に響き渡った。噴き上がる殺意が天を焦がし燃え盛る炎ともみまごうばかりに世界を覆うかのようだ! 触れただけで噛み裂き砕き散らされるのではないかと思えるほどの純然たる殺意が!

「ヒャッハァァーー!!! まじめにやってればいいことあるもんデース! なんて楽しそうなイベントデス! 殺し放題とかここは楽園デスカァ!!!」

 おお、人がこれ以上楽しそうな嬉しそうな幸せそうな表情を浮かべることができるものであろうか! そんな激烈にブチアガった様子で、真綾は大鎌を舞うように振り回す!
 そのたびにビルが二、三棟まとめて叩き斬られる! 完全にスイッチオンの状態だ! いやむしろスイッチそのものがブチ壊れた状態か!

『うわやっぱりヤバかったー!!?? てか修理がひでえことに―!!!』
『お、落ち着け! これは模擬戦だ! パイを……パイを投げるんだ!!』
 魔術師たちは慌てて歪曲空間の奥からパイを雨あられと投げつけた。

「あーん? パイとかウゼェのはまとめて断絶するデスヨ!!」
 大鎌が容赦なく振るわれる、だが真綾はパイの一つ一つをターゲットにし切除するなどというまどろっこしいことはしない!
 兇刃が旋風を巻き起こしたところ、おお、すべてのパイが一瞬にして――一握の灰と化したではないか!
 だがいかに真綾の鎌と言えど、無数のパイを刹那のうちに灰と化すとは!?
 と、彼女の足元にコロコロと何かが転がった。
 それは、『丸』であった。
 ……なんて? と思われるかもしれないが、『丸』である。
 すなわち真綾は!

「『パイの概念』ごとぶった斬ったデース!! パイは『ハイ』と『丸』に斬り分けたデース!」

 『パイ』という概念を斬り! 『ハイ』すなわち『灰』と『丸』にしたのだ! なんだそれと思われるかもしれないが概念ごと斬るってそんな感じだと思う!
『いやそんなアホな―!!??』
『やっぱり……逃げるべきだった……』
 だがそれだけにとどまらぬ。大鎌はパイもろともに魔術結界をも叩き斬った! 歪曲空間は無効化され、その向こうに見える魔術師たちの姿は今や丸見えだ!
「そっちが舐めプだろうと真綾ちゃん容赦しねぇデス!」
 大鎌の刃が死神の牙のように、悪魔の爪のように唸りを上げた。獰猛な光を瞳に宿し血に飢えて襲い掛かる真綾に魔術師たちの悲痛な叫びが轟く!

『いや舐めプとかじゃなく俺たち二章の敵なんで!!』
「二章の敵だろうと真綾ちゃん容赦しねえデース!!!!!」
『滅茶苦茶だー!!?? ぐええええ!!!!!』

 ……ではここで改めて、皆さんもぜひ覚えて帰っていただきたい。
 味方としてなら素晴らしい戦力だが、もし――敵として白神・真綾に遭遇してしまったら。
 教訓その1:逃げろ。
 教訓その2:……諦めろ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

真心・観千流
アドリブ連携歓迎
塔の結界と同じようなものですか…であるならば

想定は大量の黒ガノン、ナノクォークの弾丸もただぶつけるだけでは効果が薄い
だからまずは武器改造で3000の弾丸に11代目に使用したものと同じ楽園顕現の行動不能性質を付与
さらに今回は着弾地点の空間そのものを固める牢屋の性質も加える

用意が出来たら早業で全方位に弾幕を発射、無数の範囲攻撃で相手が隠れている場所ごと量子固定して行動不能にすると同時にパイから身を守る壁を作る
もし自分が壁の中に入ってもテレポートで脱出できるので問題なし

方向感覚が鈍っているなら全部攻撃すれば良い、壁を作れば敵の包囲を抜けるだけの時間稼ぎもできる
さて、何点になりますか?

「……さて、何点になりますか?」

 |真心・観千流 《まごころ みちる》(真心家長女にして生態型情報移民船壱番艦・h00289)は構築を完結させた布陣の中央に位置し身構える。
 3000発。
 そう、実に3000発の斉射音が木霊となって残響する中で。
 その彼女の耳に届いたのは、いずこからか送り出された、発射音の中でさえ際立ちながらも静謐な、無限に反響するかのようなささやき声。魔術結界の奥からの答えだ。
 神秘的な羅紗の衣擦れの音かのような、高貴にして妖艶なその声は、観千流も何度となく聞き覚えがある、アマランス・フューリーのものに他ならない。

『100点ね。……ただし』
「おや、ただし、が付きますか?」
『ただし、貴女なら120点が取れたでしょうに、とは思うわ』
「あら厳しい。その心は?」

 肩を竦め観千流は問い直す。自らの展開した対応策を改めて想起しながら。
 そう、先ほど彼女は――。

「あの魔術塔の結界と同じようなものですか……そういう意味では本当に『模擬戦』ですね。……であるならば」

 観千流はアマランスの配慮を汲み取って微笑んでいた。羅紗の魔術塔もまた感覚を惑わせ認識を狂わせる悪しき迷いの罠に満ちた空間である。ならば、簡易的にとはいえそれを再現したこの戦場は対応の訓練に相応しかろう。……たとえ飛んでくるものがパイだとしても。

「想定は大量の黒ガノンとして、ナノクォークの弾丸もただぶつけるだけでは効果が薄いでしょうね……」
 ゆえに観千流は弾丸をカスタマイズし、『塔』での戦いにおいて、『11代目塔主』に使用したものと同じ「行動不能」の性質を付与し、さらに「空間凝結」も加えた。その着想と、そして加工に要した時間はまさに刹那に過ぎぬ手練の早業!
「いっけー、エレメンタルバレット|『極点通過』《ナノ・バレット》!!!!」
 瞬時に銃を引き抜いた観千流はフルオートで爆射を開始! ナノクォーク弾丸を周辺一帯へとばら撒いたのだ。
「方向感覚が鈍っているなら全部攻撃しちゃえばよかろうってことですね! 場所ごと量子固定して行動不能にすると同時に、パイから身を守る壁を作るって寸法です! さあこれで……何点になりますか!?」

 ――それが観千流の『提出した答案』だった。それに対して、アマランスは「100点、ただし」と採点したのである。
「『ただし』の心は?」
 尋ねた観千流に、姿を隠したまま、アマランスの声は柔らかく木霊する。

『通常空間なら十分でしょう、100点。でも魔術結界内の戦闘では、知らず知らずのうちに常識にとらわれていないか常に自分に問いかけた方がいいわね。――|貴女の銃弾は着弾したかしら《・・・・・・・・・・・・・》?』
「!」

 思わず観千流は大きな瞳を軽く見開く。言われて見れば確かに、斉射した弾丸が届いた様子がどこにもない!

『もし空間自体が歪曲されている場合、銃弾はどこにも着弾せずに永遠に飛び続ける。そして貴女のその能力は「着弾時効果」。――着弾しなければ発動しないわ。これが「魔術」と戦う時の落とし穴。……まあ、今回の場合は方向感覚とカンの鈍化だけが前提だったし、これは後出し条件だから100点は付くけれどね』
「なるほど。それは確かに参考になります」
 
 魔術とはなんと恐るべきものか。だがその証をまざまざと見せつけられてなお、観千流はにっこりと笑みを浮かべた。

「……ですが、分子レベル以下の世界と戦う時には、知らず知らずのうちに常識にとらわれていないか自分に問いかけた方がいいかもしれませんね。――|「着弾」とは何でしょうか《・・・・・・・・・・・・》?」
『!?』
 今度はアマランスの声が息を飲んで響く番だった。同時、周囲の空間が一斉に――凝結する!

『これは……空間は歪ませておいたはず!?』
「着弾って言うのは何かにぶつかればいいんです。貴女は空間を歪め、どこにも当たらないようにした、でも」
 と、観千流は小さな肩を竦める。

「そこには必ず分子が存在します。無限空間に吸い込まれようと、そこには分子があり、銃弾は必ずどこかで分子にはぶつかっている。ならばそれは「着弾」です。物理スケールの大きな対象にぶつかるだけが「着弾」ではないんですよ」

 氷のように透き通り固まった世界の中で、観千流の可憐な姿は映し鏡のように百千に煌めいた。すべてが彫像のように佇む、空間も、パイも。

「さて、改めて――何点ですか、アマランスちゃん?」
『参ったわね……200点よ』

 アマランスが微苦笑を浮かべつつ空間の向こうで軽く両手を上げている姿が見えるようで、観千流は花のように笑みを零したのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

結月・思葉
【月影】
アドリブ◎
久瀬さんと。
正直、不完全燃焼だったのよ。だからちょうど良いわ
付き合ってくれるわよね? 久瀬さん?

|戦姫《ヴィルナ》を呼び出し、√能力【時の鐘と共に歩む、戦姫の舞踏を】
パイは思いっきりなぎ払い、投げられた方向から第六感も使って、いる場所を予測するわ(情報収集)
久瀬さん、そっちに行ったわよ!

なんでいつもの|アリス達《ソアレとペリル》じゃないのかって?
……体を動かしたい気分なのよ、悪い?(言いくるめ)

そんなに見つけて欲しいなら、見つけてあげるわよ!【|閃光の刻刃《ルーチェスシアレイ》】!(鎧無視攻撃、衝撃波、なぎ払い)(一応手加減はするつもり)
あぁ、助かるわ、久瀬さん。ありがとう。
久瀬・千影
【月影】
アドリブ◎
結月(h05127)と。
ちょいとご機嫌ナナメ(黒い微笑)の友人に手を挙げて降参の姿勢を示す。
――喜んで。なんて、言葉少なめに納得しながら魔術師塔の主、直々の礼に誇らしくなる。この礼こそが俺達、能力者が手に入れた戦果の一つだと思う。

|戦姫《ヴィルナ》が力任せに薙ぎ払ったパイが壁にぶち当たり、無残な姿になった。
――ちょいと。いや、不完全燃焼を完全抹消しようとするかのような荒々しい戦い振り。勿論、大団円の結果には俺達、双方、満足してるワケで。
あーー……結月?|アリス達《ソアレとペリル》はどした?
(聞き返されて)いーや、全然。

無銘にてパイを両断し、とりあえず彼女への被害を減らすか…

『あなたたちも来てくれたのね……姿を隠したままでは礼に悖るわね』

 揺らめく陽炎を思わせる空間の向こうから、白銀の幻のように秀麗な姿が現れた。ゆっくりと歩み出てきたその仙姿は、待ち受ける二人に対して深く丁寧に頭を下げる。
彼女の名はアマランス・フューリー。そして、アマランスが深甚なる感謝を示したのは、|結月・思葉 《ゆづき・ことは》と、(言の葉紡ぎ・h05127)|久瀬・千影《 くぜ・ちかげ》(退魔士・h04810)の二人だった。

「十分に礼を言う間もなかったけれど、改めて……ありがとう、心から」
 アマランスの声の中には魂の奥底からの真意が満ち溢れている。
 そう、あの羅紗の魔術塔の深奥、――七代目塔主フェリーチェ・フューリーとの壮烈なる戦いの中で。最後にアマランスを助け、フェリーチェを永遠の眠りに届ける手助けをしてくれたのは、思葉と千影の二人だったのだから。

「よしてくれ、俺たちだけじゃない」
 千影は面映ゆそうに逞しい肩をすくめた。
「何人ものみんなが順番に託してきたバトンを最後に手渡せたのがちょうど俺たちの番だった、それだけのことさ」
 言いつつ、千影の胸には確かに温かい感情の塊が宿っていた。それはきっと――誇りと呼ばれるものだ。アマランスに直々謝意を示される、そのことこそが。
(俺たちの勝ち取った戦果の一つ、と言っていいんだろうな)

「かもしれないわね、でも」
 千影の言葉に、アマランスは美しい容貌を揺らす。
「その最後のバトンをあなたたちが渡してくれたことも事実。だから、お礼を言わせて。そうじゃないと私も気が済まないもの」

「……私も正直気が済んでないわ、っていうかぶっちゃけ不完全燃焼なんだけど」
 そこへむすっとした様子で口を挟んだのは思葉。彼女は可愛らしい顔にジト目を浮かべ、ビシッとアマランスを指さした!

「割と一杯言いたいことがあったのよねそこの|操り人形《ピノキオ》には! 済んだことを繰り返すのもダサいからもう言わないけど! 悲劇のヒロインランス! ヒゲランス!」
「ええ……ヒゲランスはちょっとやだなって……いえ、はい、自覚はしているわ……詫びても詫びきれないことは」

 思葉の気迫にたじたじとなりつつ、アマランスは率直にその痛罵を受け入れた。
 多くの魔術師たちの思慕がありながらそれを捨ててフェリーチェの傀儡と化したことへの悔悟は、もとより誰よりもアマランス自身が深い。そうとわかっていてもやっぱり思葉は言わなければならない。言わなければ伝わらない、というのは、まさしく「塔」の戦いで誰もが改めて実感したことなのだから。

 ……「ヒゲランス」とまで言われるべきかどうかはともかくとして。

「ま、まあその辺でな? よし、じゃあアマランス、さっそく訓練と行こうぜ!」

 手を上げ、降参の意思表示を示しながら、千影はなんとか思葉をなだめる。もちろん、大団円の結果自体に大満足していることは思葉も同じで、それでもちょっとだけ、一言言いたかった、というのもわかっていたから。

『では……また後程』
 アマランスはその身をと溶け込むように消し去った。同時、周辺の空間の幾何学が狂ったように歪み、物理法則が溶け去ったかのように揺らめく。羅紗の魔術結界が張られたのだ。

「ふっふっふ。体を動かしたかったのよ。付き合ってくれるわよね、久瀬さん?」
「はいそれはもう喜んで―」
「棒読みね! いいけど!」
 爛と大きな瞳を輝かせた思葉の正面に星々の煌めきが零れるような輝きが集中する。満ちた光の中からその麗姿を現したものこそ、戦姫ヴァルナと呼ばれる時の姫だ!

「|時の鐘と共に歩む、戦姫の舞踏を《エイコウヘカケル、シンデレラストーリー》!!」

 現れた戦姫ヴァルナはその身を思葉に委ね、一体となった二者は荘厳に響き渡る鐘の音と共に、天地を貫かんばかりの光芒の剣刃を高々と振り上げる!

「|閃光の刻刃《ルーチェスシアレイ》!!!」
 虚空を引き裂いてブン回された閃光の剣は、飛びこんできたパイを容赦なく叩き落とした!
 べちゃり。なんて音がすればまだ可愛らしいと言えただろう。だが実際は。

 どごぉおおおおんん!!!

 ……そんな音がした。
 繰り返すが、パイが、である。思葉が全身全霊全力全開で薙ぎ払ったパイが壁にぶつかった音が、である。本来パイが出しちゃいけない音であり、出せるはずがない音である。
 どんだけの勢いで叩きつけたか、想像さえしたくない。
 千影は半ばドン引きの半目でそのパイだったものの残骸を見つめた。

「……うーわ。あー……結月? |いつものアリス達《ソアレとペリル》はどした?」
「今日はこっち! どごーんってしたいから!」
「そっかー。どごーんってしたいかー」
「悪い!?」
「いーや、ぜーんぜん」
「棒読みね! いいけど!」
 風が泣き叫び虚空が慟哭するばかりの凄絶な剣閃が嵐のように巻き起こり、大地も天も引き裂かんと荒れ狂う! 滝のように襲ってくるパイもその剣劇の舞の前にはただ白い飛沫を残すだけだ!

「やれやれ、まああれで気が済むならやらせとくか。――|五月雨《サミダレ》」

 あまりにも猪突猛進すぎて全周囲にまでは気が回らない思葉の隙を、千影の刃が鋭くも的確にカバーしていく。暴威の刃と清冽の剣斬が組み合わされたとき、そこに立ち向かえるものの何があろうか。

「助かるわ、久瀬さん。ありがとう。……さあ、見つけてほしいなら見つけてあげるわよヒゲランスゥゥゥ!!!」
 魔術空間ごと叩き斬っていく勢いで突っ走る思葉の姿を、千影は吐息をついて見送るのだった。
「……なんというか……羅紗の皆さんもご愁傷様だ」

『あの、それはいいのだけど、せめてヒゲランスって呼び方だけは拡散しないようにしてもらえると……』
 空間の奥からしょんぼりと呟くアマランスの声に、千影は天を仰いで呟く。
「あー……努力はする」
 できるかなあ……という思いは隠して。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『狂信者達』


POW 狂信の斧槍
自身を攻撃しようとした対象を、装備する【狂信の斧槍】の射程まで跳躍した後先制攻撃する。その後、自身は【怪異への狂信により得た魔力】を纏い隠密状態になる(この一連の動作は行動を消費しない)。
SPD 狂信の旗印
事前に招集しておいた12体の【狂信者達】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[狂信者達]全員の反応速度が半減する。
WIZ 狂信の炎
【教主】から承認が下りた場合のみ、現場に【魔力砲『信仰の炎』】が輸送される。発動には複数の√能力者が必要となる代わり、直線上の全員に「発動人数×2倍(最大18倍)」のダメージを与える。
イラスト すねいる
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「√能力者の皆さん! この度はアマランス様をお助けいただき、まことにありがとうございました!」
「「「「「あざっしたー!!!!」」」」

 魔術空間を突破した能力者たちの前に、羅紗魔術士たちが並んで一斉に頭を下げる。
「そのお礼としまして、全力で皆さんの経験値とならせていただきたく思います!」
「「「「「よろしくおねがっしゃっすー!!」」」」」
「ただ……」
 と、魔術師はふと口調を変えた。

「自分たちもこのままではアマランス様のお力になれない、と今回の事件で実感しました。皆さんの経験値にならせていただくだけでなく……自分たちも皆さんの胸を借りることで成長したく思います。ですので……改めて、全力で参ります! すべてはアマランス様のために!」
 魔術師たちは肩を組み、一斉に高らかに声を上げる!

「「「「「アマランス様のために、っしゃいくぞー! タイガー! ファイヤー! サイバー! ファイバー! そーれ、アマラーンス!!!!」」」」」

 よくわかんないけどとにかくこいつらはマジのガチで来る! 気を付けるのだ!
サティー・リドナー
『貴方達、女性を褒め讃えるセンスゼロ、(やれやれと溜め息)
アマランス親衛団員気取りならこれくらい言ったらどうなのと、かけ声を、逆指導する
(以下ラップ風)
『天使勧誘失敗諦めず、何度も大地に立つ乙女』
『気高きアルプスの積雪に耐える花、エーデルワイスのような気高き可憐な一輪の羅砂の化身』
『アマランス、アマランス根性、気力は、一級品』
と模擬戦でしたね、集団で襲う『狂信者』は、メイルサンダーシュトロームのルーと能力で疲弊させますよ
竜巻乗り越えた方から、バトルガントレットで、接近戦を、挑みボディーブロー、止めアッパーで全滅させましょう
虹の彼方にご招待です。(まあそでしょ、多分)
(歌で高揚、油断で大敵です)

「はあ……」

 サティー・リドナー(人間(√EDEN)の|錬金騎士《アルケミストフェンサー》・h05056)は可憐な顔を両手で覆い、ため息をつきながらうずくまってしまった。
「ああっ、どうかしましたか√能力者殿!」「お体の具合でも悪く!?」
 慌てて声を掛けてきた羅紗魔術士たちに、サティーはぴしゃりと言い放つ。

「違います! 悪いのは私の体調ではなく――女性を褒め讃える貴方たちのセンス!」
「ええっ!! こんな流行の最先端なムーヴなのに!?」
「最先端から10周くらい遅れてる感じです……っていうか遅れてなくてもカッコよくはないです!」

 一斉に衝撃を受け、よろめく魔術師たち。なんか、割と本気であれでイケてると思ってたっぽい。
 しかし考えてみれば無理もない、羅紗の魔術塔で長い間世間と隔絶し生きてきた魔術師たちなのだ。そんな彼らに対し、世間並みのセンスを求めるのは難しいのかもしれない。

「環境が悪かったといえばそうかもしれません。ですが、これからの羅紗は変わるのでしょう!」
 しかしサティーはあえて愛の鞭を飛ばす! そう、現状に甘えていてはいけない、という彼らの気持ちは大事だと思うからこそ、厳格な女教師となる覚悟がある!

「ならば……アマランス親衛団員気取りならこれくらい言ったらどうなんです」
 YO!
 サティーはすっくと立ちあがり一瞬で見事なパースを決めると、しなやかな体を舞わせさせ始めた。指を鳴らし弾けるようなリズムの脈動の中、流れるように鮮烈に、彼女の唇からはリリックが生み出されていく!

「天使勧誘失敗諦めず、何度も大地に立つ乙女! 瞳の輝きマジ聡明! フューリーの令名見事に襲名!」
「お、おおおお!!!???」

 息を飲んで見惚れ聞き惚れる魔術師たちの前で、見事にライムを踏んでサティーの体は跳ね、踊った。意識の、いや魂のバイブスを上げていくそのハイセンスなラップ空間は、あたかもそれ自体が魔術で構築された奇跡の瞬間であるかのようだ。魔術師たちは紡がれるドラマチックなリズムの渦に一瞬にして飲み込まれ、熱狂に巻き込まれていく!

「気高きアルプスの積雪に耐える花、エーデルワイスのような気高き可憐な一輪の羅砂の化身! アマランス、アマランス根性、気力は、一級品、Yeah!」
「「「「「Yeah!!!!!!!!!!!」」」」」

 おお、今こそコールとレスポンスの嵐に包まれ会場が一体となった情熱のストリーム! 魂の奥底から燃え上がったハイボルテージにテンションマックスだ! サティーは沸き起こる大歓声に応え指を突き上げる!

「YO!YO! 虹の彼方にご招待!! 鳴動せよ、吹き荒れよ、雷の風の渦、吹き荒べ! |暴風雷撃竜巻《メイルサンダーシュトローム》、Yeah!!!」

 ……あれ? それリリックじゃなくね?
 そうだね、√能力の詠唱だね。
 ――と気づいた時にはもう遅い。
 天地は鳴動し大気はどよめき天の竜は咆哮する! 引き裂かれた空気が烈風となって荒れ狂い、黒雲が渦を巻き雷鳴が鳴り響くところ阿鼻叫喚の轟雷が降り注ぐ!

「「「「「あれ? あれええ!!?? いつの間にかシームレスに攻撃が!!??」」」」」
「……だってこれ、模擬戦ですよね? 私たち戦っているのでしょう?」
「「「「「そ、そうでもありますがああああ!!!!!!!」」」」」
 テンアゲし我を忘れて乗りまくっていた魔術師たちは身構える間も何もあったものではない。天地を覆すほどの暴風に、あっという間に天高く散り散りに吹き飛ばされていき、かろうじて逃れ得たものも……。

「私はラッパー、くらわせるよアッパー、威力はハイパー!! YO!!」

 すかさず間合いを詰めたサティーの頑健なるガントレットが容赦なく叩き込まれたのであった。
「ぐわああああ!!!! うう、お、御見事……」
 魔術師たちは雷雨が終わった後に空に描かれた虹の彼方へ飛んでいく。サティーは実に正直者である、虹の彼方に連れていくという約束をちゃんと守ったのだから。

「歌は高揚、油断は大敵、学びましたね勉強、YO!」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

真心・観千流
アドリブ連携歓迎
執行者相手に力押しは通用しない、それを踏まえて行動します

先制攻撃は防げないので、跳躍してきた相手に対して早業+カウンター
たNQボディの性質を利用し身体を気体に肉体改造するフェイント+幻影使いの技で斧槍の刃をすり抜けつつ、纏まった相手に対し選択√能力を投射
干渉への抵抗を下げたら量子操作マテリアルを介し発生している魔力そのものを情報収集、何もない場所に未知の力場があれば敵はそこに居るはず
そうして探知した敵の居場所に叢雲の量子干渉弾頭の弾幕を叩き込んで量子固定属性攻撃で無力化しましょう

攻撃を見てからではなく事前に予測しての回避、情報があればできなくはないですが…どうなりますかね

「お誕生日おめでとうございます√能力者殿!」
「うわびっくりした!!」

 パーンパーン! クラッカーの紙吹雪が華やかに舞い散る中、一斉に声をそろえて祝福された|真心・観千流 《まごころ みちる》(真心家長女にして生態型情報移民船壱番艦・h00289)はさすがに目を白黒させた。
 そう、7月28日は彼女のお誕生日である。おめでとう!

「……模擬戦とは言え、敵からハピバ祝われたのは初めてです……えっと、ありがとうございます? ってかよく知ってましたね」
「ステシ見ました!」
「個人情報! まあいいや公開情報だし……。こほん。まあ御礼は御礼としまして、バトルはガチで行かせてもらいますよ!」
「むろんです! こちらこそ!!」

 ザザッと間合いを取って構えた両者の間に緊張感が走る。
(今後の執行者相手の戦いに力押しは通用しないでしょうし……、それを踏まえての模擬戦といきましょうか!)
 魔術師の斧が冷たく光り、観千流の白く細い喉がこくんと動いた、その瞬間に時間が弾けた!
 魔術師たちの姿が一瞬にしてかき消え、次の刹那に天が落ちかかって来るかのごとき凄絶にして裂帛の一撃が観千流を襲ったのである! 空間跳躍による先制攻撃は絶対の効果だ! 無情なる重厚な刃が観千流の可憐な体に容赦なく食い込んだ……。

 だが。

「ええ、あなたたちの攻撃自体には先を取れません――が、それだけのことです」
「これは!!??」
 愕然としたのは魔術師たちの方だった。真二つに斬り裂いたはずの観千流の体は、揺らめく陽炎のように、おぼめく不知火のように、刃をすり抜けていたのだから。
 それこそは観千流の特異なる構造たるNQボディの本領発揮! 彼女は肉体を任意に状態変化させ、一時的に気体と化すことすら可能なのだ!

「な、なんて凄い能力だ! さすが能力者殿! ……で、服は!?」
 観千流は肉体を一時的に状態変化させることが可能なのだ!
「服……」
 肉体を一時的に……
「強調しなくていいです地の文!」
 エア観千流は地面にパサッと落ちた服の中に潜り込むとそのまま再構成、ちゃんと着衣状態の肉体を再構築した! 読者諸氏にはご安心いただきたい!

 だがその隙に魔術師たちは既に姿を消している。それこそはアマランスへの飽くことなき熱狂が生み出した膨大な魔力による隠身だ。
 しかし、それとても観千流の観測を逃れることはできぬ。まこと、「観測」こそは量子の世界に舞う天使、観千流の独り舞台と言っても過言ではないのだから。

「そーれ、どーん! |多次元移動用ソナー投射《ルート・アナライズ》!!」

 空間がたわみ軋み、悲鳴を上げるかのように変動する。だがその変容を認識し得たのは観千流本人のみであろう。目に見えぬ世界、量子の世界への干渉ゆえに。
 そう、それこそは量子干渉への抵抗を大きく減じる能力であったのだ。観千流の放射した解析波は時空をも渡りゆき、いかななるものもその目を欺くことはできぬのだ、たとえ魔術であろうとも。
 観千流は瞬時に量子マテリアルを操作、目に見えぬ力場の塊を見つけ出した! 通常ではあり得ぬエネルギーの流れを!

「見えました! なんか変な力場が! ……場の測定パターンが『Amaranthus』ってなってる力場が! ……器用ですねあなたたち」

 なにしろ魔術師たちのアマランスへの熱狂が要因となっている能力なので!
「……貴重なデータが取れた気がします。まあとにかく、そこですね! 量子干渉弾頭一斉射!!!」
 鮮烈に撃ち放たれた特殊弾頭は物理法則を書き換え、空間を凝結させる――そこに潜む魔術師たちもろともに。
 もはや生ける石像と化した魔術師たちがいるであろう空間に銃口をぴたりと突きつけ、観千流は唇を開く。

「さて、……まだ続けますか?」
「……うう、降参です……」

 姿を現し両手を上げた魔術師たちに、観千流は微笑む。

「いい経験でした、バースデープレゼントとして受け取っておきますね」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

白神・真綾
んー、なんか主旨が変わってる気がするデスガ、ガチでくるならどんと来いデス。返り討ちにしてやるデース!
「ヒャッヒャッヒャー!いい度胸デース!死ぬ気でかかってこいデース!」
√能力で強化し魔術師達に突っ込んでいく
相手の√能力による先制攻撃は機動力を生かして全速回避し、隠密状態になったあたりをやたら目ったらな手数で炙り出す
「折角の奇襲先制も来るのが分かってれば問題にならねぇデスヨ。たとえ隠れてもいるのが分かってれば当たるまで振り回すだけデース!」
「1回や2回殺された程度じゃ何も変わらねぇデスヨ。根性出して10回殺されるまでに真綾ちゃんを1回は殺して見せろデース!」

「に、にげないぞー!!」「おー!!」
「あ、あきらめないぞー!!」「おー!!」
「……やっぱ無理っぽくね?」「諦めんなよ!アマランス様のためだろ!!」「そ、そうだ!!」

 なんか目の前でワチャワチャやっている羅紗魔術士たちに、|白神・真綾 《しらかみ まあや》(首狩る白兎ヴォーパルバニー・h00844)は尖った視線を向けた。
 まあ魔術師たちのビビり具合も分かる。真綾の恐ろしさとその徹底的な殲滅ぶりは、戦ったことがあれば誰知らぬものはないのだ。

「逃げねーのはまあ褒めるデース。デスが……ガチで来るなら最初からどんと来いデス! 今更覚悟決め直す時点で気合たりねーデース!!」
 燃え上がる白焔のような気迫は狂気にも似て、魔術師たちを丸ごと噛み砕かんと吠え猛る野獣のごとくに咆哮した! 魔術師たちの気持ちが固まるのを待ってやる義理など真綾にはありはしないのだから!

「ヒャッハー!! さあ首置いてけデース! 何度でも甦るなら何個でも置いてけデース! ちゃんと狩った頭入れる網も用意してきたデース!!」
「うわああ、俺たちの頭はスイカじゃないんですよ!?」
「叩けばいい音がして斬れば真っ赤だからたいして変わらねえデース!」

 煌めく大鎌の刃が魔物の牙のごとくに獰猛な輝きを大気中に放散する。超新星が地上に顕現したかのような鮮烈な光芒は彼女の能力が解き放たれた証だ!

「真綾ちゃん、本気殺すデース!『|殲滅する白光蛇の牙《エリミネートバイパーズファング》』!!」

 一陣の白い風が奔り抜けるように大地を疾駆し衝撃波が周囲を薙ぎ払う! 音速に迫る超起動オーバードライブモードが発動したのだ! 

「くっ、ただではやられませんよ!」
 だが魔術師たちもその魔力を魂の奥底からの決死の覚悟で振り絞る。真綾が超高速ならば魔術師たちはそれを上回る瞬間移動で挑むのみだ! 物理法則を超え空間を跳躍した恐るべき斧槍の刃が真綾の首を狙う、しかし!

「折角の奇襲先制も来るのが分かってれば問題にならねぇデスヨ!!」

 真綾の哄笑はそんな魔術師たちの覚悟さえも虚無に帰す。そう、意識の外側、認識の果てから襲い来るものをこそ奇襲と呼ぶのであれば、この戦場において、少なくとも真綾に対しては奇襲など成立し得ない!
 どちらにせよ「今いた場所」に対して攻撃が来るのだから、「場所」を変動させればいいだけだ!

 同時に――敵が現れるはずの場所さえわかる。なぜならそこは「今自分がいた場所」だから!
 そう、真綾の超高速は瞬間移動に対してさえも十全なカウンターとなる。
 それは時が動くことをためらうかのような一瞬の刹那の出来事。風さえ置いてきぼりにするスピードで身をかわした真綾の、「今いた場所」に向かって渾身の力で振り下ろされた斧槍ごと――真綾の大鎌は、その持ち主たちを真二つに斬り落とした!

「ぐわああああああああ!!!!!!!!」

 むしろ悲鳴を上げて絶命する余力があったことを褒めるべきだろう。生き残った魔術師たちは自分たちの血が脳天から消え失せたように感じた。
「い、いかん! いったん距離を取れ! 姿を消して……」
「襲う時は瞬間移動でも! 逃げる時は通常移動デスヨネエ! ならその辺にいるのは分かり切ってるデース!!」
 
 魔術師たちはむしろ数を活かし、大多数を肉壁として犠牲にしてでも、ただ一矢だけ報いる無二無三な特攻をこそ仕掛けるべきだったのだ。動揺した魔術師たちが頭で巧んだ「戦術」を選んだ、その時点で最早趨勢は決していた。
 どうせ近くにはいる。ならば。……真綾は当たるまで振り回せばいいだけなのだから。

 何も見えない空間から血煙だけが上がり肉片が巻き散らされる。
「ヒャーハハハハ! いい殺されっぷりデース!」
 天地に響くような狂笑を上げ、返り血を心地よく浴びながら、真綾は自身の背後で、何かがよろよろと蠢く気配を感じ取っていた。

「最初に殺した奴らが生き返ってきたデスカ。デスが、1回や2回殺された程度じゃ何も変わらねぇデスヨ。根性出して――10回殺されるまでに真綾ちゃんを1回は殺して見せろデース!!」

 無限に殺し続けようとする能力者も。
 それでもなお戦いを続けようとする魔術師たちも。
 正気のものなどその戦場にはもとより、いなかったのだ――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

エーファ・コシュタ
言葉の意味はよく分かりませんがとにかく凄い自信ですね!
しかし、皆さんの意気込みにはワタシたちも答えないといけませんね!
さあワタシたちも行きますよ!おー!…ってこれも天丼じゃないですか!

数には数です!ワタシたち散開!
頭一つ一つでは流石に攻撃力は劣るでしょうが《集団戦法》での連携でカバーです!頭突きやビーム、本体の馬上槍で押さえていきますよ!

魔力を纏って隠れたとしても…ワタシたちの《なぎ払い》眼からビームでまとめて《一斉発射》です!
皆さんの魔力とワタシたちの目力…どちらが勝るか真っ向勝負!

魔術師の皆さんもワタシと一緒に頑張りましょう!勇気づけるのも騎士の役目ですから!きっとそうです!

「言葉の意味はよく分かりませんがとにかく凄い自信ですね!」

 魔術師たちの意気軒高にブチ上がった様子に、エーファ・コシュタ(突撃|飛頭騎士《デュラハン》・h01928)は目をぱちくりとさせた。たくさんの目を。なぜならエーファのアタマはたくさんあるのだから。そのたくさんのぱちくりの勢いは、ぱちくりだけで旋風が巻き起こるほどだ!
 ……いやそれはさすがに盛ったが。

「自信はありませんが決意はあります! √能力者殿、頑張ってお相手させていただきますよ!」
 魔術師たちの身に漲る気合はそれだけでも天地をどよもすほどだ。思わずエーファも感心し、しかし同時に自らの意思も負けずと燃え上がる。
「むっ、さすがです! しかしワタシも立派な騎士になる決意の固さは譲りませんよ!」
「お見事です! しかし俺たちもアマランス様のために成長する決意の固さは譲りません!」
「ワタシも!」
「俺たちも!」
「ワタ」
「俺」

「「……これ天丼ですね!!!」」
 ハモった。

「とにかく、お互いに認め合ったところで正々堂々勝負と参りましょう!」
「望むところです! 参りますよ能力者殿!」
 両者一斉に大地を蹴ってスタート! 真正面からのぶつかり合いか! いや、違う。

「どんなゲームでも騎士に肉体勝負する魔術師はそうそういませんからね! 能力を使わせてもらいます!」
 そりゃそうだ! 魔術師たちは能力を発動、その姿を瞬時にかき消した。瞬間移動による空間跳躍で直接エーファに攻撃を仕掛けて来る魂胆なのは明らかだ!

「どうしますかワタシ! 瞬間移動が来ますよ!」
「落ち着くのですワタシ! こんな時こそ、あの新戦法を試すのです!」
「あれですね!」
「あれです!」

 エーファのアタマたちは一斉にうなずき合った。次の瞬間、魔術師たちは早くも転移から通常空間に現れ、大きく振りかぶった斧槍を叩きつけようとして――けれど!

「こ、これは!!??」
 思わず彼らは瞠目する! 何故ならそこにいたのは、いやあったのは!

「「「「「秘技! ワタシ落とし!!!!」」」」」

 アタマの上にもう一つアタマ、さらにその上にもう一つアタマ、さらにその上に……と頭を積み上げたエーファの姿であったからだ。まるで……そう、あの東洋の神秘的な玩具、だるま落としのごとくに!
 魔術師たちは瞬間移動で一瞬姿を消す、ということは一瞬周りが見えなくなるのも同じこと! その隙に、エーファは自分の頭を積み上げたのだ!
 通常空間に現れた時の勢いを止められぬまま、魔術師たちはすこーん!! とエーファのアタマの一つを撃ち抜いてしまう。そうなれば当然!

「「「「|眼力光線一斉掃射《メカラビィィィィーム》!!!!!!」」」」
 そこへ真っ逆さまにエーファのアタマたちが降り注いでくるのだ! しかも目からビームを振りまきながら!! 頭の固いことで知られるエーファのアタマとビームが同時に滝のように降り注ぐ、こんな恐ろしい攻撃があろうか!

「「「グワーッ!!!???」」」

 見る間に魔術師たちはエーファのアタマに打ち取られていく。
「いかん、いったん姿を消すんだ!」
 動転した生き残りの魔術師たちは魔力で隠形を試みる。だがエーファから逃れることはできぬ!

「ワタシにはたくさんのアタマがあります。それはつまり、目だけではなく――鼻もたくさんあるということです!」
 くんくん、とエーファの可愛らしい鼻が一斉に蠢いたとみるや。
「「「「「そこです! 目からビームおかわりー!!!!!」」」」」
 中空の一点目掛け、ビームが再度斉射されたのだ!

「「「アバーッ!!!??? な、なぜ……!!!!????」」」
 ビームに見事撃ち抜かれた魔術士たちが隠蔽空間から現れ、大地に転がる。
 彼らの疑問に、エーファは静かに答えた。

「皆さんからはあの香りがしました。山に咲くあの綺麗なお花。……『アマランス』の香りがね」
「そ、そうでしたか……」
 魔術師たちは納得した様子で倒れる。
「いい戦いでした。これからも、魔術師の皆さんもワタシと一緒に頑張りましょう!」
 エーファは輝く太陽のような笑顔で魔術師たちを励ます。そう、人々を勇気づけるのもまた、騎士の立派な役目なのだから。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

天神・珠音
【アドリブOK】
な、なんだかとても楽しそうな雰囲気ですね。
アマランスさんはみなさんにとっても大切な人なんですね。

…ではわたしも全力で参ります。
みなさんの攻撃はとても素早そうですね
それならこちらはその攻撃を利用させていただきます。

√能力の効果で斧槍の攻撃を受け止めることにします。
そして敵の攻撃を噛み砕きながら一気にダッシュして
そのまま相手を喰らい尽くします。

…あの、みなさん大丈夫ですよね?
食われても…

「はい、質問です」

|天神・珠音《あまがみ・たまね》(どこにでもはいないトウテツ・h00438)は、可憐な手をすっと挙げて、羅紗魔術士たちに声をかけた。魔術師たちは顔を見合わせ、不思議そうに指をさす。
「えーと……はい、では質問をどうぞ、能力者殿」
「食べてもいいですか?」
「……お弁当かおやつか何かですか?」
「いえ、皆さんを」

 静寂が一帯を支配した。しばしの沈黙の後、魔術師たちは改めて問い直す。
「……失礼、我々は魔術の修行にこもりきりで俗世の現代風の言葉遣いに詳しくなく……その、食べる、というのはどういう意味なのでしょう?」
「おおきな口を開けてですね」

 珠音の口はどうしてそんなに大きくなるの?
 それはお前たちを食べるためさ!

「皆さんを食べるんです」
「言葉通りの意味だった―!?」
 今更ながらに仰天しドン引く魔術師たち! まあ普通は引くだろう!
 しかしそれもやむを得ない、珠音はその身に宿す凶獣・饕餮の因子により、あらゆるものを喰らい尽くす暴食の力を奮うものなのだから、

「いえ、あのですね、我々、そんなに美味しくないと思いますが……」
 おそるおそる抗弁する魔術師に、珠音は小さな手を細い腰に当て、めっ、と可憐に𠮟りつけた。

「だめですよ皆さん、そんなに自分を卑下しては」
「卑下ですか!? これ卑下なんですか!?」
「だいじょうぶ、自信を持ってください、自分はきっと美味しいって」
「自信なんですか!? それ自信なんですか!?」
「自信ですとも。だって」

 と、珠音は済んだ瞳に優しく慈悲深い光を宿して魔術師たちを見つめる。
「……皆さんの心からは、アマランスさんをとても大切に思う気持ちが伝わってきます。その一生懸命できれいな心の持ち主が、美味しくないわけはありません」
「…………いいこと言われているような………そうでもないような………?」
「ということで全力で参りましょう!」
「なし崩しだー!!??」

 なし崩しだが仕方ない! こうなったら食べられる前に珠音を倒すしかないのだ。
 魔術師たちは半ばやけくそ気味に√能力を発動! その身が瞬時に消え失せた。
 それこそは瞬間移動により刹那の間に間合いを詰め、無慈悲なる巨大な刃を備えた斧槍で相手を打ち倒す恐るべき能力だ!

「みなさんの攻撃はとても素早そうですが……」
 だが、姿を消した魔術師たちがいずこから現れるかわからずとも、珠音には動揺はない。
「……それならこちらはその攻撃を利用させていただきます」
 おお、どうしたことか。珠音は屹立したまま微動だにせぬ。今にも魔術師たちは空間転移で彼女に襲い掛かろうというのに!
 案ずる間さえなく――恐るべき魔術士たちの兇刃が、空間を跳んでついに珠音に叩きつけられた! 
 ……だが。次の瞬間、上がったのは珠音の可憐な悲鳴ではなかった。

 ばり。ばり。

 金属をへし折るような音だったのである。
「あ、ああ………」
 次いで、魔術師たちの愕然たる旋律に満ちた声。
「……斧槍を……喰ってる!」
「歯ごたえがあって美味しいです」
 なんたることか、珠音は自分に叩きつけられた刃をそのまま喰らったのだ!
 これこそ彼女の能力、『|消えない飢えで喰らい尽くす《アンリミテッドイーター》』!!
 珠音の清楚で魅惑的な体のあらゆる部位が、――瞬時に無慈悲な捕食口と化すのだ!
 頭に叩きつけられた刃も、胸に、腹に、背中に、脚に、襲い掛かった凶器も。そこに現れた「口」がすべて喰らい尽くす! まさに恐るべき饕餮の因子!
 
 恐慌に襲われ、身を隠して逃走しようとした魔術師たちであったが、それすらも無為。
 饕餮の口はすべてを喰うのだ。
 ……「空間」すらも。

「じゃあ、このまま皆さんもいただきまぁす……!」
「ちょ、ちょっと待ってええええ! 一つだけ教えてください!!!!」
 パクッと行こうとした珠音は、魔術師たちの問いに少しだけ顎を緩める。

「俺たち、この後復活するとして……どこからどうやって生き返るんです?」
「うーん……?」
 珠音はきょとんと首を傾げ、少し思案して。

「わかんないです」

 そのままパクッと終わらせたのだった。
 ……実際、どんな復活するんだろうね?
🔵​🔵​🔵​ 大成功

アリエル・スチュアート
…そう言えば私、一般羅紗達としっかり戦った事ってなかったわね。
イングリッドとセシーリアさんはまだ治療に専念してるし、あの2人とはまた別の機会に戦えるわね。
と言う訳で、悪いけど貴方達はあくまでも通過点よ、私が戦いたいのはアマランス、その為に彼女を助けたんだから。

取り合えず数で攻め込んでくるって言うならこちらも手数で攻めるために、フェアリーズの連携攻撃と空母の援護射撃、高速詠唱と魔力溜めの全力魔法を放つわ。
羅紗砲に対しては直線状に立たない様にだけ気を付け、避けれなさそうならオーラ防御でやり過ごす。
まとまっている間にライトニングレイをお見舞いよ。

…やっぱり慕われてるくらいのカリスマはあるわよね。
ボーギー・ウェイトリー
・WIZ

・色んな意味でー…賑やかな集団ですねー…人に恵まれてるようですねー…アマランスのおねーさん…

・そういう意味ではー…やはりカリスマはあるのではないかとー…僕は詳しくはないですけれどー…人を惹き付ける力ですからねー…

・それじゃー…経験値稼ぎ、お互いに頑張りましょー…折角なのでー…魔術師さん相手なら、こちらも物理ではなくー…ちょっとしたお呪いでー…いかせてもらいますねー…

・【5】を使って、相手を指さして、ちょっとしたお呪いをぶつけましょー…人としてのお呪いですがー…なかなかどうしてー…こういうのも強いものですよねー…

・アドリブと絡みを歓迎

「ボーギーくん、また一緒に頑張りましょうね」
「は、はい……よろしくお願いします、アリエルおねーさん」

 アリエル・スチュアート(片赤翼の若き女公爵・h00868)と、ボーギー・ウェイトリー(少年少女妄想・h04521)は、魔術結界内でのパイ投げ競争に続いて行動を共にしていた。

「い、一生懸命……やりますねー」
「うん、頼りにしてるわ、ボーギーくん」
 微笑み交わす二人は仲の良い実の姉弟のようだ。その親昵な二人の姿を見つめ、魔術師たちはジーンと胸を打たれた様子でフードの中の瞳を揺らめかせる。
「友情……信頼……仲間……尊いなあ……」
「俺たちもアマランス様にあんなに信頼されたい………」
「言うな、そのためにはまず力をつけることだ。力をつけなければアマランス様のお役には立てない!」
「そうだった! そのためには……能力者殿! お互い全力で参りましょう! いい勝負をいたしましょうぞ!!」

 ビシッと背筋を伸ばした魔術師たちだったが、しかし!

「え、やだ」
「そう、やだ……エッナンデ!?」

 アリエルは一言の元に魔術師たちの願いをはねつけた!
「だって、私が戦いたいのは本気のアマランス。そのために彼女を助けたとさえ言ってもいいわ。悪いけど、あなたたちはあくまで通過点よ」
「うわ……アリエルおねーさん容赦ないですねー……」
「容赦? それは美味しいのかしら?」
 アリエルの言葉に魔術師たちは震えた。しかしそれは怒りではない。自分たちへのふがいなさだ。

「そう言われても仕方がありません、すべて我らの力が足りないのがいけないのです……ならばせめてこちらだけでも最初から奥義で参りましょう!」
 無力感を糧にそれでも明日を信じて立ち上がる魔術師たちは涙を奮って魔力を結集する! その凝集した魔力の膨大さは、さすがにアリエルも多少の警戒感を抱かざるを得ないほどだ!
 
「羅紗キャノン・セット1!」「セット2!」「セット3!」
 魔術師たちはフードの中から次々とパーツを取り出し組み上げていく。見る間に出来上がっていくのは巨大なキャノン砲だ!
「羅紗キャノンセット良し! アマランス様、キャノン承認願います!」

『え、やだ』

「そう、やだ……エッナンデ!?」
 返ってきたアマランスの声に、魔術師たちは一斉に愕然とする!
 魔力砲「信仰の炎」は、その使用に教主の承認を必要とする。この場合、それはアマランス。ゆえに、アマランスの承認がなければ羅紗砲は使えないのだ!

『いつも言っているでしょう、そうやってすぐに一発狙いの大技に頼るから技の組み立ても甘くなるし、大技は外した後の隙も大きくなる。その力任せの考え方そのものを修正しなければあなたたちは成長できないわ。それ以外で何とかしなさい。以上通信終わり』

「うわ……アマランスおねーさんも容赦ないですねー……」
 アマランスの厳しい叱責を聞いたボーギーは他人事ながら思わず引き加減。しかし、アリエルは納得したように頷いていた。
「彼女の言うとおりだわ。フッ、さすがアマランスね」
「でも……魔術師さんたち……泣いてますが―……」
 満足そうにうなずいているアリエルとは正反対に男泣きに泣いている魔術師たち。
「俺たちはどこまで甘かったんだ……こうなったらすべてを出し切って、少しでも成長しなければ!」
 そんな彼らの肩をぽんぽんと叩き、ボーギーは親指を立てて見せる。

「それじゃー……経験値稼ぎ、ぼくと一緒に頑張りましょー……」
「能力者殿! ありがとうございます! ではありがたく!」

 ボーギーのなんといい子であることか! 魔術師たちは生気を取り戻して立ち上がると、ボーギーを包囲し魔力を充填する! 羅紗キャノンは使えずとも通常魔法攻撃は可能なのだ!
「行きますよ能力者殿!」
 魔術師たちの放った魔力弾がボーギー目掛けて雨のように降り注ぎ、彼は小さい体を転がすようにして紙一重で回避していく。
「うわー……、わ、わー……」
「ボーギーくん、危ない!」
 咄嗟に救援に入ろうとしたアリエルを、しかし。
 ボーギーは僅かに片手を上げて制したのだ。

「アリエルおねーさんはー……力を温存していてくださいー……アマランスおねーさんとの……宿命の竜虎対決が待っているのですからー……!」
「竜虎だったんだ……そうかな? そうかも……?」
「そのかわり、魔術師さんたちの動きを……制約してほしい……ですー」
「それくらいなら任せて! フェアリーズ!」

 アリエルは配下の機械妖精たちを召喚、その波状攻撃により魔術師たちの動きを牽制していく。おぼろげながら、ボーギーの意図が掴めたのだ。
「これはおまけよ、ライトニングレイ!」
 天空から降り注いだ雷撃の雨が魔術師たちの周囲に降り注いだ! これをかわし、あるいは防御しようとした魔術師たちは、知らず知らずのうちに……一団にまとまっていく!

「今よ、ボーギーくん!」
「魔術師さん相手なら、こちらも物理ではなくー……ちょっとしたお呪いでー……いかせてもらいますねー…。『|5《シノツギ》』……!」
 ボーギーの体内から迸った呪力が青白い炎のように燃え上がる。これこそ、最も殺傷力の高い物体で敵を攻撃する彼の呪いが具現化した力!
 そして、この場にある最も殺傷力の高い物体とは……!

「羅紗キャノン……せっかくなのでー……使わせてもらいますー……」

 そう、完成したばかりで使用許可が出なかった羅紗キャノンに他ならない! キャノンはボーギーの操る目に見えない糸に動かされたかのようにぐるりと砲口を回し――魔術師たちに向けたのだ!

「なっ!? しかしそれはアマランス様の承認がなければ!?」
「ぼくが……所有権取っちゃったですから……ぼくが撃てって言えば撃つんですよ……撃て」

 どっかーん!!!!
「ぐえええええええ!!!!!!!」

 次の瞬間、目もくらまんばかりの閃光と共に、空間そのものが引き裂かれるような爆裂的なエネルギーが一団に固まっていた魔術師たち目掛けてぶっ放されたのだ!
「うわー……ボーギーくん容赦ないわね」
「容赦って……美味しいです?」
 閃光の中に消えていく魔術師たちを見ながら二人は語り合うのだった。

「まあ……あんなのでも、慕われてるくらいのカリスマはやっぱりあるのよね、アマランス」
「僕は詳しくはないですけれどー……カリスマって、人を惹き付ける力ですからねー……」
「ただ威厳や威圧だけじゃなく、人に愛されるのもカリスマ……なのかしらね……」
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

アリス・アストレアハート
アドリブ連携歓迎

【WIZ】

『え…アマランスさんのお祝いのパイ投げ大会では…?』
(思わずアマランスさんや配下さん達とかに二度聞き)

護霊「だから…ガチの模擬戦がくるって…言ったじゃん…☆」

『護霊ちゃん…ど…どうしよう…』

護霊「も~アリスったら、あたしが居ないと、ざこざこでよわよわなお姫さまなんだから☆」←頼られちょっと嬉しい?

背の『無垢なる翼』で飛翔
【空中移動】【空中ダッシュ】等で
立体的に立回り

攻撃等
【第六感】【幻影使い】
【霊的防護】【オーラ防御】で
防御行動

クイーンオブハートキーを手に
【ハートのA】も展開
護霊ちゃんの【霊力攻撃】で援護を貰い

【全力魔法】
【誘導弾】の【一斉発射】に
√能力とも組合せ
攻撃

「わー……一回戦突破ですね。じゃあ……えっと」

 アリス・アストレアハート(不思議の国の天司神姫アリス・h00831)は、天真爛漫に、並ぶ羅紗魔術士たちへその澄んだ瞳を向けた。
「皆さんが……パイ投げ大会2回戦の……お相手ですね?」
「えっ?」
「えっ?」
 ――思わず見つめ合うアリスと魔術師達との間に何ともいえない沈黙が流れる。

「えっと、あの、能力者殿? パイ投げ大会とは?」
「パイ投げ大会は……パイを投げる大会です……よ?」
 も一回沈黙が流れる。沈黙というかなんか気まずい空間が。
「…………ええと、能力者殿。たぶん何か勘違いしておられるような?」
「パイ投げ大会は終わった……です? じゃあ次は……何を投げるんですか?」
「何も投げません!」
「えっ」

 ここで初めてアリスの澄んだ瞳が驚愕の色に染まった!
「じゃ、じゃあ……なにをするんですか……?」
「模擬戦をするのです!」
「もぎせん……ああ」

 ぽん、とアリスは可愛らしく小さな手を叩いた。
「あれですね、お尻に紙風船を付けて……ピコピコハンマーでたたくの……」
「違います! 使うのはこれです!」

 魔術師たちはずい、と自分たちの武器である巨大にして禍々しき、恐ろしい光を宿した斧槍を突き付けた!
「ふぇぇぇ!!!??? ……そ、それ……ぶつかったら……いたくないですか!!??」
「痛いっていうか死にます」
「ふええええ!!!!????」
 再び愕然とするアリス! 最初からなんか懸け違い続けてきたボタンが今初めてかっちり現実と噛み合ったのだ!

『ほらぁ……だから言ったじゃない、ガチの模擬戦が来るって……☆』

 呆れたように吐息をついたのは、アリスの自我ある分身ともいうべき護霊、「何者でもないメアリーアン」。その彼女に、アリスは涙目を向ける。
「護霊ちゃん……ど……どうしよう……」
 その姿は花を揺らす風にも耐えきれぬほどに可憐で清楚、とてもではないがいぢめることなんてできるわけがない!
 ゆえに、魔術師たちは顔を見合わせ、口を開いた。

「……あの、もし良ければ、今からお尻紙風船ピコピコハンマー大会に変えましょうか?」
「えっ、いいんですk……」
『だめ!!!!!』

 喜色満面に魔術師たちの提案に飛びつこうとしたアリスだったが、その提案をメアリーアンは一瞬で却下! さらにメアリーアンは魔術師達にも厳しい目を向ける!

『そうやってこの子を甘やかすのはこの子のためにならないわ!』
「は、はい! すみません!!!!」
 厳しい叱咤に思わず背筋を伸ばす気をつけの姿勢になった魔術師たちは、すまなそうにアリスに対して身構えた。その手に備えられているのは恐るべき羅紗の魔術砲だ!

「お姉さんに怒られたので……あの、いきますね?」
「お、お姉さんじゃないです……しっかりさんですけど……」
『ふふん、アリスったら、あたしが居ないと、ほーんと、ざこざこでよわよわなお姫さまなんだから☆』

 なんかちょっと嬉しそうなメアリーアンの得意顔は、おそらくアリスの小さな手がキュッと自分の手を握り締めていることによるのだろう。可愛らしい彼女に頼られているということに。

『飛びなさいアリス、突っ立ってると羅紗キャノンが来るわよ!』
「そ、それは大変です……!」
 今しも羅紗の魔術が火を噴こうとした瞬間、天使の白翼が風を孕んで広がり天空高くへと飛翔する!
「むっ!?」
 魔術師たちは魔術砲を抱えて右往左往するが、鳥よりも速く胡蝶よりも華麗に舞うアリスの飛行はとらえきれない! 魔術砲は強力だがそれゆえに狙いに制約を有すると、メアリーアンの慧眼は一瞬で見抜いていたのだ。
『右! 左! 上! 下! 右と見せて左! と見せてやっぱり右からの上下、1回まわって左上よ!』
「はわ、はわわわ!??」
 もっともその指示はあまりにも高機動過ぎてアリスの目はぐるぐるになりかけていたが、その甲斐はあった。当事者のアリスがぐるぐる目になるほどなら、彼女を追いかける魔術師たちは、当然もっとぐるぐる目になろうというものだ!

「だ、ダメだ、追いつけない!!」
 ついにグロッキーになった魔術師たちが息を切らした瞬間。

『今よアリス!』
「ふ、フラワリーズ・フェイトストーム!!」
 舞い散る花の嵐に身を包んだアリスは黄金に輝く鍵杖を片手に流星のごとく駆け抜ける! 目指すは!

「お尻ぱーん! です……!」

 風を裂いて唸った鍵杖は魔術師たちのお尻をしこたまブッ叩いたのだった!
「ぐえええ!!??」
『お尻に紙風船はついてないけど、もちろん勝負はついたわね☆』
「う、うう……はい……能力者殿と、そしてお姉さんの勝ちです……」

 白旗を上げた魔術師たちに、アリスとメアリーアンは顔を見合わせ可憐に微笑んだのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

結月・思葉
【月影】
アドリブ◎
ふぅ、スッキリしたわ。叫ぶと気持ちがいいわね。……えぇ、ヒゲランスは言わないでおくわ。今は。

少し真面目にやるわ。教えるのは初めてだけど……
自分が出来る・出来ないことを理解するのは大前提。
味方も理解して、それらを駆使して敵にぶつける。敵の嫌がることを押し付ける。
この場合……敵というのは私達になるけれど。

斧槍の先制攻撃は「第六感」で躱す。回避した先に攻撃を置かれると厄介ね。怪我は多少……と思ったけど、久瀬さん、ナイスカバー

|アリス達《ソアレとペリル》、おいで
【夢と不思議の大冒険】で「いないいないばあ」!(軽い「衝撃波」、なぎ払い、鎧無視攻撃)
隠密に頼らないの。バレてると思いなさい
久瀬・千影
【月影】
アドリブ◎

今は、ね。若干、他の√能力者にも弄られつつ、涙目になってそうなアマランスを想像して苦笑。

結月に向かう斧槍を【見切り】、並外れた動体【視力】を以て鞘入りのままの無銘で防ぐ。
『龍眼壱』は負荷が酷い為、必要に応じて一秒のみ使用。隠密状態の相手に振るった斧槍のダメ出しと良かった部分を伝える。
振るわれる斧槍を叩き落とし、鞘入りのまま軽く打つのは、俺が彼等を殺したくないが為。
死んでも蘇る、それは知ってる。けど相手を殺したくもないし、殺される気もねぇ。
甘い、なんて聞き飽きてる。俺はそういう生き方がしたくてね。
――隠密は過信しない方が良いぜ。何せ――(結月の言葉に苦笑して)――そういうこった

「ふぅ、スッキリしたわ……。叫ぶと気持ちがいいわね」

|結月・思葉《ゆづき・ことは》(言の葉紡ぎ・h05127)は、先ほどとは打って変わって憑き物でも落ちたかのように爽やかな表情を浮かべていた。変に感情を貯め込まずに叫ぶのは健康にいいものだ。

「多少溜飲が下がったから、――『あの名前』は呼ばないでおくわね、アマランス」
「……『アレ』はな。うん。やめといてやった方がいい」
|久瀬・千影《くぜ・ちかげ》(退魔士・h04810)は思葉の配慮に賛意を示した、何しろ彼女が封印したその名前は、とても乙女の呼び名としてはふさわしからぬものであったのだから。

「『アレ』を自重する優しさが結月にもあったんだな」
「何よその言い方。まあ、『アレ』の他にも、『悲劇のヒロインアマランス』を縮めて言う言い方はあるものね」
「他にもっていうと?」
「ヒゲキノヒロインだから……ゲ・ロ……」
「ゆづき! ハウス! ハウスだ! それはもう絶対にハウス! な!」
「何よ人をわんこみたいに。言わないってば」

 細い肩をガシッと掴んでゆっさゆっさ揺さぶる千影に、思葉は仏頂面で応える。
「……今はね」
「『今は』、ね……」
 なんかもう戦う前から疲れ切ったような吐息を漏らす千影頑張れ。超がんばれ。

「――なんかよくわかりませんが、我らが成長せねばアマランス様にますます負担がかかる気がしてきました! ここはひとつ死に物狂いで参りますぞ、能力者殿!」
「まあ、あだ名は置いといてだ。成長するのはいいことだよな。んじゃ、行くか」
「はいはい、教えるのは初めてだけどね」

 気合を入れ直した様子の魔術師たちに、千影と思葉は改めて身構えた。
「よし、掛かってきな!」
「では遠慮なく!」
 宣した魔術師たちの姿が世界から消える。瞬間移動による空間跳躍が始まったのだ。来るとわかっていてなお対応の難しい攻撃と言えるだろう。
 
「そうね、相手の嫌がることを押し付けるというのは戦いでは大事だわ。人の嫌がることを進んでやりましょう」
「意味が違う気がするが、――な!」
 
 虚空に閃々と火花が散った。
 魔術師たちが転移しつつ振り下ろした斧槍を、千影が受けたのだ。鞘に入ったままの刀で。
 そのあり得ざる一瞬を具現化したものこそは、蒼く燃え上がる彼の右目、『竜眼 壱』――!
「一本だ」
 乾いた音が魔術師たちから立ち上がった。千影は納刀したまま剣を奮い、魔術師たちの体を撃ち据えたのだ。
「ぐわあああっ!」
 大地にもんどりうつ魔術師たちを千影は静かに見下ろす。
「……うん、まあ刃筋はちゃんと立ってるし、手の内の締まりもいい。ただお前たちの能力の場合、ポールウェポンは短く使った方がいいと思うぜ。瞬間移動は本体の力、顕現して振り降ろすタイミングは間合いが長いと逆にズレる」

 静かなる講評を平然と行う千影の姿には触れるべからざる神威ともいうべき威厳があった。思わず魔術師たちは息を飲む。

「し、しかし、なぜわかったのです!? 我らが現れる場所も、タイミングも!?」
 驚愕する魔術師たちに、千影は淡々と答えた。

「まず結月を狙うだろうと思った。そして能力者相手に下手な手傷を負わせれば逆襲される恐れがある、狙うなら致命個所、頭か心臓だ。そのラインで剣を振ればどちらも守れる。簡単な話だろ?」

 平然と答えを明かす千影の理論は、言われてみればいちいち納得せざるを得ず、しかしそれを瞬時に判断し実行することにこそ、彼の手練たる技量があると言えた。

「うう、ですが、なぜ女性の方を我らが優先すると……?」
「え、だって結月はアマランスにアタリがきつかったから」
「ちょっと久瀬さん!?」

 さらっと答えた千影の言葉に思葉は目を尖らせた。
 が、千影は肩を竦め、続ける。
「……つまり、さっき、そういう会話をしてみせたことでお前たちの意識を誘導した。結月を攻撃したくなるようにな……。戦いは直接始まる前からもう仕掛け始まってるもんだぜ。な、結月。さっきの会話はそういう意図だったんだよな?」
「………………」
「……な?」
「もちろんよ!」
 ほんとかなあ。
「ほんとよ!」
 ……ほんとらしい。

「くっ、されどまだ参ったとは言いませんよ!」

 後ずさった魔術師たちは次々と再び歪んだ空間の奥底、曲がった事象の彼方へと姿を隠していく。
「ほーら、消えちゃったわよ久瀬さん? 峰打ちとか甘いことするから」
「甘いなんてのは聞き飽きてるよ。蘇るってわかってても、俺は殺したくもないし殺されたくもねぇ。そういう生き方がしたいんだ。……っていうか、結月もそれ言い飽きてるだろ」
「美味しいケーキを食べて美味しいっていう感想は、言い飽きるってことはないものよ」

 くすくすと微笑んだ思葉は優雅に手をひらめかせる。
「さ、|アリス達《ソアレとペリル》、おいで。――いないいない、ばあ」
 
 彼女の召喚に応じ不思議の森の木陰から舞うように跳ねるように躍り出た二人の『アリス』たちは、楽園に興じ歌うかのようにはしゃぎ、遊び戯れて――。

「ぐわあああっ!!!???」

 次の瞬間、異空間に隠れていた魔術師たちを、楽し気に衝撃波で薙ぎ払ったのだった。

「な、なぜ……!?」
「隠密を過信しすぎない方がいいぜ、何しろ――」
 片膝をついた魔術師に言いかけた千影は、響く思葉の声に肩をすくめた。

「隠密なんてのはだいたいバレてると思いなさい」
 手を細い腰に当て、ゆっくりと思葉は振り返る。
「不思議なものよね、人って、姿を隠すと、まず相手の後ろに回ろうとするのよ。姿を隠してるならそのまま目の前にいたっていいのにね。だから私は自分の後ろを攻撃すればよかっただけ」

 思葉の言葉に、彼女の背後からよろめき現れた魔術師たちは、納得し感嘆したように、倒れ伏していくのだった。

「……多少は稽古になったかしらね?」
「さてね。それは結局、こいつら自身が決めることだからな……」
 
 だが、間違いなく、それは彼らの糧になったことだろう。二人の一言一言、そのすべては、まぎれもなく深い含蓄のある戦訓そのものであったのだから。

「ヒゲ……」
 訂正、その一言は除くものとする。 
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

深見・音夢
おーおー、羅紗魔術士の皆さん随分と気合が入ってるようで。
この気迫とキレの良いコール、さては親衛隊というやつっすね!
さっきパイが直撃したカメコさんにも慕われてた辺り、アマランス殿の人気が伝わってくるっす。

とはいえまぁ、パイ投げならまだしもドンパチやる以上は手は抜けないっす。ここは一つ鬼教官になった気分で真面目にやるっすかね。
この手の集団行動がウリな相手には範囲攻撃で攻めるのが定石、『雷霆万鈞』で派手に吹っ飛ばすっすよ。
ほらほら、ちゃんと散開しないと一網打尽っすよー?
あ、もし羅紗魔術士の皆さんが倒れてもアマランス殿のことはボクがしっかり推しておくっすから心配しないでくださいっす。

「おーおー……羅紗魔術士の皆さん随分と気合が入ってるようで……」

|深見・音夢《ふかみ・ねむ》(星灯りに手が届かなくても・h00525)は魔術師たちの気勢とテンション、そして一糸乱れぬ統率に感嘆の声を漏らした。

「この気迫とキレの良いコール、さては親衛隊というやつっすね!」
「わかっていただけますか能力者殿!」

 音夢のわかりみの深い態度に、魔術師たちは喜色を満面に浮かべ、彼女を取り囲む。
「そりゃわかるっすよ! あれっしょ、何ならおそろの法被とか作ってる系で?」
「ふふふ、どうやら我らの真なる姿をお見せするときが来たようですね!」
 魔術師たちは我が意を得たりと大きく頷くと、ばっと漆黒のフードを脱ぎ捨てた! 
 おお、その下から陽の光を受けて輝いたものこそは、アマランスの麗しい姿が全面にプリントされたフルグラフィックのオーダーメイド法被ではないか!
「かーっ! やるっすねえ! かーらーの!?」
「推し活うちわ!」
「さらにー?」
「缶バッジいっぱいの痛バッグ!」
「まだまだー?」
「ぬいぐるみ! 抱き枕! アマランス様痛車―!!!!」
「おおおー!!!ぱちぱちぱち」

 無限に湧き出てくるようなアマランス推し活グッズの山に盛大に拍手してから、音夢はふと首をかしげる。
「……魔術師さんたち車乗るんすか?」
「我らの拠点はシチリア島、イタリアですから……誰もが知ってるあの車やあの車はイタリアのでしょう?」
「つーまーり?」
「イタリアだけにー?」
「|痛《イタ》車―!! あはははは!!!」

 なんだろうこのノリ。いろんな意味でこう、アレだ。
 だがそんなアレ空間に突如響く雷霆のような声が!

『な、何してたのあなたたち―!? 知らなかったわ! そんな恥ずかしいもの全部没収よ! 没収―!!!!!!!』

 天からの裁きの声のごとく降り注いだ悲鳴はもうなんというか誰のものか明らかすぎるほどに明らかだ! それと共に、なんということか、魔術師たちのアマランス推し活グッズはすべて煙のように消え失せてしまったではないか!
「ああっそんなー!? アマランス様―!!!???」
 魔術師たちは大地に崩れるように膝まずいて、この世の終わりのごとく慟哭し啼泣するのだった。

「気を落とすのはまだ早いっすよ、魔術師さん」
 だが、優しく彼らの肩を叩き、音夢は柔らかいまなざしで声をかける。
「例えばこの模擬戦でいい成績を出したら……アマランスさんも推し活を許してくれるかもっすよ?」
「そ、そうでしょうか!?」
「そうなればむしろ公認! 逆に今までよりさらにアツい活動ができるという瓢箪から駒っすよ!」
「た、確かに!!!」
 
 ぱあっと顔を輝かせた魔術師たちは、涙を振り払ってぐっと拳を握り締め気合を入れる!
「では能力者殿! 改めてお相手をお願いいたします!」
「おけのした! 鬼教官になったつもりで真面目にやるっすよ!」

 さっと間合いを開いた両者の間に虚空さえ軋むような緊張感が漲った。ためらうような一陣の風がそっと吹きすぎ、木の葉がかさりと静かな音を立てた瞬間。

「かかれー!!!!」「おー!!!!!」
 どっから現れたかと思うような魔術師たちが一斉に群雲のごとく襲い掛かってきたではないか! まさに大地が揺れ動き空気がどよめくほどの大軍勢だ!
「うーわ一人見れば12人いると思えって感じっすよね……いちいち相手するよりも……」
 その物量にはさすがに音夢も辟易し、雑に力を集中する。

「まとめてドーンっす! |雷霆万鈞《エレメンタルバレット》!!」

 瞬時、空間を引き裂くように躍り出た金色の竜かとさえ思えるエネルギーの奔流が天空を駆け抜けた! 鋭き牙で天地を喰らい尽くす、それは紫電轟雷荒れ狂う嵐!
 「グワーッ!!??」「アバーッ!!??」
 集団で津波のように押し寄せたことが仇となり、魔術師たちはまとめて雷撃に吹きとばされていく。

「いかん、散会だ! 間合いを取れ!」
「バラけていいんすか? 連携取れなきゃ各個撃破っすよー?」
 おお、音夢の言うとおり! 散兵戦術を取ろうとした魔術師たちは今度は逆に少人数であるゆえに力をまとめきれず雷撃に討たれていくのみだ。
 ピクピクと痙攣し大地を埋め尽くした魔術師たちの哀れな姿に、音夢は涼しい顔で告げるのだった。

「ああ、心配しないでくださいっす。アマランス殿のことはボクがしっかり推しておくっすからね?」
「し、しまった……同担拒否の罠だったのか……がくり」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

シアニ・レンツィ
じーん…感激で泣きそう…。
ちょ、ちょっと待ってねわけわかんないパイ投げから真面目モードになるから…

この人たちの中には塔に向かった人もいるんだろうな。
あたしもね、あの場であなたたちがアマランスさんの為に頑張る姿にいっぱい勇気をもらってたんだよ。
だから、ありがとう(頭を下げて)

誰かの力になりたいって頑張るのは素敵なことだと思う。
この模擬戦で、あなたたちのお役に立てるなら嬉しいな。いい戦いにしようね。
はぁー人っていいなぁ、大好き。

√能力で引き続きミニドラを召喚し、両足を竜化。
増加した行動速度で一気に距離を詰めてハンマーを振り回してなぎ払っていくね。
敵が取り落とした武器は蹴っ飛ばして弾にしたり、攻撃はジャストガードで受け流したり。

跳躍の姿勢を見せたらユアたちに指示して一斉に火球を発射。
隠密しようとしてるところを面で燃やして炙りだすね。

戦いが済んだらドラゴンキッスでお互いを治療させながら感想戦とかしたいね。
羅紗の人たちの良かった所いっぱい探したい。
ところでグループアプリあたしも混ざれないかなー!?

「じーん……!」
「能力者殿……?」
「じーん!!」
「能力者殿!? どうされました!?」
「感動で泣きそうだよ!―!!」
「もう泣いておられますよ!?」

 大きな瞳からダバダバと涙を溢れさせているシアニ・レンツィ(|不完全な竜人《フォルスドラゴンプロトコル》・h02503)に、羅紗の魔術師たちは慌ててハンカチを差し出した。

「あ゛り゛か゛と゛お゛……え、これアマランスさんのプリント入りじゃない! いいの!?」
 ぐしゅぐしゅと涙をぬぐったシアニは、ふとそのハンカチの絵柄を見て、まだ濡れている長い睫を瞬かせた。
「良いのです。能力者殿に使っていただけるならアマランス様もお喜びになるでしょう……」
「そっちの意味もだけど、ちゃんとアマランスさんに肖像権許可取ってんのかなって」
「……お喜びになるでしょう……」
「許可取ってないんだね……『©アマランス』って入ってないもんね……」
「まあそれはともかくとしまして」
「話逸らしたね……」
「なぜ急にお泣きに?」
 魔術師たちの問いに、シアニは感動を呼び起こすように胸に手を当てた。

「あのね、あなたたちはあの場所に――『塔』に向かったんでしょ。あたしもね、あの場であなたたちがアマランスさんの為に頑張る姿にいっぱい勇気をもらってたんだよ。だから……」

 シアニは言いさして、ふと小首をかしげた。魔術師たちが、彼女の言葉に一瞬縛られたように身を固めたことを感じて。

 ――『塔』。
 それは 複雑に紡がれた歴史と恩讐という名の糸で綾なされた美しい羅紗の因縁が少しずつ解きほぐされていった場所。そして……、神秘にして禁断の秘宝『王劒』を巡る凄絶な決戦が展開された場所に他ならない。
 そこでは、数多の√能力者と天使たち、羅紗魔術師たちの想いと信念、そして命が、刹那の煌めきの中に鮮やかに交錯していったのだ。ゆえにそれを人は言う、――「決死戦」と。
 けれど。

「いえ……我らは……『そこにはおりません』でした」

 魔術師は眩い光の中に消えかける影のように力なく、言葉を零したのだ。
「え?」
 シアニは僅かに首をかしげると、目の前の魔術師の額をちょこんとつつく。
「ううん、あなたはここのホクロに見覚えがあるよ。そっちのひとも聞き覚えのあるイケボだし、こっちのひとの肩を揺らす癖も覚えてる。……みんな、「決死戦」であたしたちと一緒にいた人でしょう。なんでいなかったなんて言うの?」
「………」
 魔術師はしばし黙したのち、苦し気に声を絞り出す。

「我らは……組織の過ちにも塔首様の歪みにも気づけず、アマランス様が囚われた際にお救いすることもできず、散っていった仲間たちを守ることもできませんでした。……そんな我らが……皆様と一緒に『あの場所にいた』などという資格がありましょうか。……ゆえに我らは、あの場所には『いなかった』のです。我らの存在は無意味だったのです」

 しわがれた、枯れた声だった。
 √能力者たちは、あの戦いで得たものはあり、しかし多くのものを失いもした。
 同時に、羅紗魔術師たちもまた……。
 能力者たちと同じかそれ以上の――「喪失」をその身に受け止めざるを得なかったのだ。
 無力感と共に。

 シアニは僅かに髪の影をその面に落としてうつむき、沈思して。
 そして……。

「しゃああ!」
 おもっきり魔術師の手を取ったかと思うと。
「うりゃりゃりゃりゃああああ!!!!!」
 力いっぱいぶんぶんとシェイクハンドしたのだ! 魔術師の体ががっくんがっくん揺れるくらいに!
「お、おわあああああ!? の、能力者殿ぉぉぉ!!!!????」
 舌を噛みそうに振り回されて目を白黒させる魔術師に、シアニは声を張り上げる。耳元で、うるさいくらいに!

「ほら、こうやってあなたはここにいる! はっきりここにいる! そして! あなたがここにいるってことは、あそこにもいたってことだよ! あそこにいたっていう過去があるから、それにつながって今ここにいるんだよ! あなたたちがあそこにいたから! あなたたちが頑張ったから! あたしたちもアマランスさんも今ここにいるんだよ! 全部つながってるんだよぅ!!!」

 わっしゃわっしゃと魔術師を振り回しながら、シアニは天真爛漫に、純真無垢に、太陽のような笑顔を輝かせた。
「しょ、しょうでしょおか……」
 グルグル目になりフラフラしながら、それでも魔術師はシアニの手を握り返す。
 その手はまだ微かに震えていたけれど、最初に触れた時の、幻のような力のなさに比べれば……、とシアニは思う。震えているということは、力が戻ってきたのだと。前へ進めるかも知れない、その力を振り絞ろうとしているのだと。

「うん、じゃあ、やろっか!」
「はい、能力者殿!」
「シアニでいいよ!」
「……えっ?」
 急な言葉に戸惑う魔術師に、シアニはぐっと親指を立てる。
「少なくともあたしはシアニでいいよ! だって、仲間だし!」
 天衣無縫な彼女の声に、魔術師たちも笑みを返し、頷いた。
「わかりまし……わかった、シアニ、行くぞ!」

 瞬時、魔術師たちの姿がかき消える!! √能力を使った瞬間移動だ、だが!
「おっと! へへっ、やるじゃない!」
 シアニは口元に笑みを浮かべる、魔術師たちの一部は瞬間移動を行わず、直接攻撃を仕掛けてきたのだ。転移グループとの時間差連携だ!
「ならっ!」
 シアニは瞬時に巨大ハンマーを大地に叩きつけた! その振動は岩盤を揺るがせ、走り寄ってきた地上グループ魔術師たちを転倒させる、それと同時にシアニは天空へと跳躍! その両脚は龍種のものへと既に変異完了している! 竜ならではの超脚力による跳躍をもって、シアニは転移してきた魔術師たちを空中で迎撃する形となったのだ!
「うわっ!?」
「シアニホームラーン!!」
 
 空間が爆裂するほどの勢いで振るわれたハンマーは魔術師たちをまとめて地上へ叩き落とし、地上で転倒していた魔術師たちと激突!
「ぐえー!!??」
 もがく魔術師たちに、シアニは容赦なく追撃を駆ける!
「ユアファイヤー!!」
 召喚された友たる緑竜ユアをはじめとする幼竜たちは一斉に火球を連射! そのまま魔術師たちを見事なアフロヘアへと化したのだ!

「まず一本! 続ける?」
「も、もちろん! まだまだっ!!」

 よろよろと立ち上がる魔術師たちの姿に、シアニは満面の笑みを浮かべたのだった。

「……はあ……はあ……け、結局一本も取れなかった…‥」
 しばしの後、大地にぐったりと横たわって荒い息をつく魔術師たちに、シアニはくすっと笑みを零す。ドラゴンたちは魔術師たちの治療に飛び回っている。
「あたしもいい訓練になったよ! ありがとう! へへ、人間っていいよね、やっぱり大好き!」
 シアニは額に滲んだ汗を、先ほど貰ったアマランスのハンカチで拭う。
 プリントされたアマランスの表情はくしゃくしゃだったけれど、なぜか――微笑んでいるようにも見えたのだった。

「……ところで羅紗のグループアプリってあたしも混ざれない?」
「う-ん、アマランス様に聞いておくよ……」
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『羅紗の魔術士『アマランス・フューリー』』


POW 純白の騒霊の招来
【奴隷怪異「レムレース・アルブス」】を召喚し、攻撃技「【嘆きの光ラメントゥム】」か回復技「【聖者の涙ラクリマ・サンクティ】」、あるいは「敵との融合」を指示できる。融合された敵はダメージの代わりに行動力が低下し、0になると[奴隷怪異「レムレース・アルブス」]と共に消滅死亡する。
SPD 輝ける深淵への誘い
【羅紗】から【輝く文字列】を放ち、命中した敵に微弱ダメージを与える。ただし、命中した敵の耐久力が3割以下の場合、敵は【頭部が破裂】して死亡する。
WIZ 記憶の海の撹拌
10秒瞑想して、自身の記憶世界「【羅紗の記憶海】」から【知られざる古代の怪異】を1体召喚する。[知られざる古代の怪異]はあなたと同等の強さで得意技を使って戦い、レベル秒後に消滅する。
イラスト すずま
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 魔術師たちの一群を突破した√能力者たちの前に、純白の幻影がゆらめくように立つ。
 清廉にして壮麗、大気が波打つような膨大な魔力を漂わせた神々しいまでの美女が。
 彼女の名は――アマランス・フューリー。
 ゆっくりと能力者たちに振り向いたアマランスは、静かに頭を下げた。長く艶めく髪がさらりと流れ、気品あふれる香気が漂ってくる。

「ごめんなさい」

 アマランスがまず口にしたのはその一声だった。
「……ありがとう、とは何回か言っていると思うけど、ごめんなさい、は少なかったわよね。これまでのこと、謝罪します。それで帳消しになるわけではないのはわかっているけれど」
 そっと顔を上げたアマランスの瞳には、これまでになかったような澄んだ輝きが宿っていた。
 きっとそれが、本来の彼女の姿。

「羅紗の魔術を自分の中でどう位置付ければいいのか。私の中でもまだ結論が出ていないの。だからあなたたちとの戦いの中で、それを見出だしたいとも思っている。そういう意味でも……精いっぱい戦わせてもらうわ」

 他者の命令ではなく、誰かに操られてでもなく、ただ自分の道を見出だすために、今、アマランスは戦う。「本当の彼女」として。
 それはきっとこれまでのアマランスよりも強く、そして、――美しいことだろう。
 ゆえにこそ……能力者たちよ、全力で戦ってほしい!

「そーれ、ごーごーれっつごー!! アマランス様―!!」 
 あと、遠くからサイリウムや旗を振ったりラッパ鳴らしたりしてる魔術師たちはただの応援団なのでスルーしてよい!
八木橋・藍依
天使化事変の時にお会いしたことはあるのですが
こうして戦うのは初めてですね
ルート前線新聞社の記者で八木橋・藍依といいます
良い戦いをしましょう、よろしくお願いします

戦闘ではアサルトライフル・HK416と
三種類の手榴弾を用いて戦います
ゴーグルを使用して閃光や煙幕の影響を受けずに視界を確保します

√能力は「証拠を守れ!」を使用します
アマランスさんの能力は全て召喚と飛び道具によるもののようですね
それなら、私の能力で行動不能にしてしまいましょう
これは決死戦でも使用した作戦です
飛び道具ばかりに頼っていると、痛い目を見ますよ

まだ続けるのですか?
模擬戦と聞いているので
其方が降参するなら終わりにしてもと思うのですが

 疾風のごとき速さでコートを翻し、|八木橋・藍依 《やぎはし・あおい》(常在戦場カメラマン・h00541)は懐に手を伸ばした。
 白き閃光のようにアマランス・フューリーもまた身構える。おお、早くも二人の戦いが始まるというのか!
 ……だが、次の瞬間、藍依が手並み鮮やかに取り出したものは!

「ルート前線新聞社の記者、八木橋です。本日はよろしくお願いいたします!」

 名刺だった!

「……あ、ええ……。ご丁寧に……」
 多少面喰いながらアマランスもこれを受け取る。新聞記者として取材対象に対する礼節と配慮は常に忘れない、それが藍依の矜持であった!
「天使化事変の時にお会いしたことはあるのですが、こうして戦うのは初めてですね。良い戦いをしましょう。あ、後ほどお写真とインタビューもよろしいでしょうか」
「………え、記事になるの? 私が?」
「そりゃもう三段ブチ抜きトップで! なんなら動画配信も!」
「は、恥ずかしいわ……今日はメイクもあんまりしてないし……っていうかさっきパイもぶつけられたし……」
 もじもじする|取材対象《アマランス》だが、記者たるもの、訪れた好機を逃してはならぬ。
「大丈夫です! 私が|変装技能《メイク》のお手伝いしますし、映える写真の撮り方もわきまえていますから! ……じゃあ、詳しい打ち合わせは終わった後にするとしましょう」
 見事! 藍依は流れで合意成立した態で丸め込み、話を自然に終わらせた。アマランスの特集記事掲載が決定した瞬間である!

「わかったわ……では改めて、行くわよ、記者さん!」
「はい! ところで……先ほどお渡しした名刺ですが、実は極細のワイヤーが付いていましてね」
「……っ!?」

 その言葉が終わらぬうち、世界が純白に塗り潰された。
 身を翻した藍依の懐から転がり落ちたものは――|閃光手榴弾《フラシュグレネード》に他ならぬ! そのレバーが、名刺に仕掛けておいたワイヤーにより引かれ起爆したのだ!

「やってくれるわね!」
 思わずよろけるアマランスは、さすがに超一流の魔術師らしく咄嗟に結界を張ったと見え五感を失うまでには至っていないようだった、だが明らかにその動きには精彩を欠く!

 すかさず藍依は回り込みながら己の半身たるアサルトライフルHK416のトリガーを引き絞った。5.56㎜の殺意が紅蓮の弾幕となって唸りを上げる!
「やるわね記者さん! けれど!」
 されどアマランスもさるもの、己の体に纏った羅紗を舞うように翻し銃弾を遮り叩き落としていく。白き影が躍るような、それは妖しくも美しい一幅の絵画を思わせる麗姿!
「恐縮です! ですが瞑想している時間はないようですね?」
 藍依はHKの斉射とグレネードの投擲を織り交ぜ、緩急をつけつつアマランスを釘付けにする。嵐のように降り注ぐ弾丸と爆裂する業火は飢えた獣の群れのように休むことなく魔女に襲い掛かり続ける。
 アマランスの√能力には「10秒の瞑想」を必要とするはずだ。その隙を与えず一気呵成に畳みかけていくことが、巧妙に組み上げられた藍依のタクティクス!

「戦場で10秒あれば100回死ねますよ! アマランスさんの力は奇襲には向いていても火力戦向きではないのではありませんか?」
「……そうかしら?」

 その言葉に藍依ははっと息を飲む。劣勢に追い込まれていると見えたアマランスの美しい容貌、そこに――微笑が湛えられていると気づいて。

「『10秒の瞑想』とは、必ずしも『10秒何もしない』ということを意味しないわ。……意識を分割し行動しながら想念を凝らすことこそ魔術の本懐。これ、記事にしていいわよ?」
 妖艶に笑みながら、アマランスの周囲の空間が歪み、ひずむ。なんたることか、アマランスは戦いのうちに己の思念を集中させていたというのか。知られざる時の彼方、物理法則が狂った角度で交錯する世界から、名も知られぬ、知られてはならぬものが呼び出されようとしている!

「そうはいきません、『|証拠を守れ《エビデンスガード》』っ!!」
 咄嗟に藍依もまた己の√能力を開放した。カメラから放たれた超常のフラッシュはすべてを停止させるはずだ。それはあの決死戦でも使った藍依の得意の戦法。
 しかし。
 おお、羅紗を舞わせたアマランスは瞬時に影を作り出し、自らも、そして呼び出した恐るべき怪異へも、その光を遮っていたではないか!
 藍依の力の成就、その条件は――『命中した対象』、すなわち光を浴びたものに限られる!

「命中時効果をあまり過信しない方がいいわ。必中が保障されていない以上、防御されたら終わりなのですもの」
 くすりと笑むアマランスの風格はまさに恐るべき魔女と呼ばれるにふさわしい威容だった。

「そうですね。だから」
 だが……微笑んでいたのは藍依もまた同じであったとするなら?
 
「『必ず当たるもの』に当てればいいのです」
「なっ!?」
 アマランスはその時慄然として知る、動かない! 自らの体も、そして召喚した怪異も!
 そんなはずはない、藍依のフラッシュは防いだはずだ、当たっていないはずだ! それなのに何故!?

「私が光をあてた『対象』は。――アマランスさん、あなたの周囲の「空間」そのものです」

 藍依の言葉にアマランスは愕然と立ちすくむ。
 空間そのものが凝結させられていたならば。当然その中にいる自分も怪異も動くこと能わぬは自然の理! さらに回復効果により、空間に開けられた怪異を呼び出す異空間自体が閉じられていくではないか。
 ここにアマランスの力は封じられたのだ……!

「模擬戦ですし、お互いに勉強になったということで……降参なさるならここで終わりでも構いませんが、一言どうぞ」
 マイクを突き付けた藍依に、苦笑してアマランスは静かに両手を上げ、降参を示したのだった。
「……新聞記者さんの広い視野、参考になったわ」
「ありがとうございます。以上、現場レポートは八木橋・藍依でした!」

 ――ちなみに後日、アマランスの写真付きインタビュー記事が掲載された新聞は飛ぶように爆売れしたとのお話。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

白神・真綾
ヒャッハー!やっとまともに真綾ちゃんの修行相手になれそうなのが出てきたデース!真綾ちゃん待ちくたびれちゃったデスヨ。
「真綾ちゃん、別に感謝も謝罪も要らねぇデスヨ。ただ真綾ちゃんの糧になれデース!」
√能力を起動し嬉々としてアマランスに突っ込んでいく
「一応修行デスカラネェ。それらしく戦うデスヨ!」
いつもの攻撃特化ではなく防御と回避をしっかり行い被弾しないよう心掛けて立ち回る
アマランスの√能力は発動直後に叩き潰す
「召喚される端から潰していけば問題ねぇデース!」

「あーん? 真綾ちゃん、別に感謝も謝罪も要らねぇデスヨ」

|白神・真綾 《しらかみ まあや》(|首狩る白兎《ヴォーパルバニー》・h00844)は柳眉をしかめてアマランスの謝罪を一蹴した。
 真綾にそんなウェットな情緒は必要ない、彼女の求めるものは敵を殺すこと、ただ殺すこと、そして殺すことであるのだから。
 これまで真綾が通り過ぎてきた血に染まった道を、アマランス本人も知らぬわけではないし、彼女の想いは想いとして、それを他者に受け入れるよう強制すべきものでもないことはわかっていた。ゆえにアマランスはうなだれる。

「ええ、そうね……。感謝や謝罪はこちらの一方的な想いの押し付け、誠意の暴力とでもいうべきものだわ。そんな独善を……」
「待つデース! 今なんつったデース!」

 だが! アマランスの言葉を遮って真綾の目がギラリと光った! 思わずアマランスも一瞬たじろぎながら言い直す。
「え? あの、想いの押し付けや誠意の暴力とでもいうべき……」
「つまりお前真綾ちゃんに暴力をふるったデスネ!? 許さねえデース! 真綾ちゃん暴力には暴力で返すデース!! 喰らうデスヨ真綾ちゃんの誠意!!!」
「なんて!!??」
「『どういたしまして』!!! どうデース真綾ちゃんの誠意の暴力は!! これに懲りたら真綾ちゃんに誠意の暴力とか振るわねえことデース!!!」
「アッハイ……いろんな意味で懲りたわ……」

 真綾とはうかつに問答はしない方がいい。そう深い知見を得たアマランスだった。

「では真綾ちゃん一本先取したところで、さあ二本目行くデスヨ! 今度は物理の戦いデース!」
「今の一本に入るんだ……ええまあ、分かりやすい戦いの方がこちらも助かるわ……いくわよ!」

 アマランスの美麗なる身体の周辺に純白が降り積もる。真夏の雪とも見えたそれは純然たる色そのものだ。『白』の概念そのものが今、形を為し立体となってゆく、人には認識できぬ、認識してはならぬ異形へと。ゆえに人はそれを指してかく言うことしかできぬ、ただ「白」であるとのみ。
「純白の騒霊の招来!!」

「ヒャッハー! やっとまともに真綾ちゃんの修行相手になれそうなのが出てきたデース! 真綾ちゃん待ちくたびれちゃったデスヨ!!!」
 だが超絶の怪異を前に喜色満面、舌なめずりせんほどの勢いで跳躍する真綾もまたそれに劣らぬ人知を逸脱した脅威だ!

「真綾ちゃんの糧になれデース! 『|殲滅する白光蛇の牙《エリミネートバイパーズファング》』!!」

 鮮烈に輝く大いなる禍い、魔獣の牙を思わせる大鎌の刃は真綾の殺意そのものとして顕現し、天空を斬り裂いて唸りを上げる! 純白と黄金、二人の色が世界を塗り潰さんと吠え猛り、狂い荒ぶって衝突した!
 虚空が悲鳴を上げるかのような衝撃が周囲に広がる中、真綾と怪異は軌道を交錯させ空中ですれ違い、大地に爪跡を残した。
 
「|嘆きの光《ラメントゥム》!!」
 しかし刹那の隙もない、アマランスの指示が矢のように飛び、怪異は世界が泣き叫ぶような響きを発して白光を撃ち放つ!
「|超過機動《オーヴァードライブ》!!」
 しかしその閃光が貫いたのは陽炎のような幻影、真綾が虚空に刻んだ残像に過ぎぬ。今の真綾は亜音速で舞う死の天使なれば!

「|怪異《レムレース》だけがあなたの敵ではなくてよ?」
「当然デース! 真綾ちゃんの前に立ちはだかるものはすべて敵デース!!」
 ふわりと舞うように真綾の背後を取り、峻烈な手刀を繰り出して来たアマランスを、真綾は髪の毛を切り飛ばされつつ顔を背けて回避し――そのまま真紅の口を開けてアマランスの銀髪のひと房に食いつくと強引に噛み千切った!

「髪は女の命デース!お互いに大事にするデスヨー、ヒャハハハ!」
「……意外に避けて来るわね。被弾覚悟で突っ込んでくるタイプかと思ったわ」
 喰いちぎった髪を吐き出しながら哄笑する真綾にアマランスは苦い表情を浮かべる。
「まあ普段ならそんな感じデスガ、これは修行デスカラネエ。普段やらないことをやってみるのが次につながるデス。次に……効率的に殺す為にデスネエ!!!」

 真綾は言い捨てざまに後ろを振り向くと大鎌を一閃! 忍び寄って来ていた怪異の首を一撃で跳ね飛ばすと、その軌道のままさらに反転し、煌めく刃をアマランスの首元に振り抜こうとする!
「召喚される端から潰していけば問題ねぇデース! さあ首置いてけデース!!」
 だが。
 風のようにそよいだアマランスの羅紗が、間一髪で真綾の鎌の柄を絡めとっていた。
 霞のように柔らかく静かに纏わりついた羅紗は、しかし信じがたいほどに強固な拘束力を生み出し、真綾の渾身の力をもってしても微動だにしない!

「普段やらないことをやると言っても……癖は抜けないかしら。貴女が首を狙うとわかっていれば軌道は読めるわ。これで一本ずつ、というところかしら?」
 真綾を抑え込んだまま笑むアマランスに、けれど。
 地獄のような哄笑をもって、首狩り兎は答えた。

「そう思わせることができるから、癖って便利デスヨネエ!!! ヒャーハハハハ!!!」

 一瞬目を向いたアマランスの首筋に――
 その時、虚空から落ちてきた、もう一つの牙が。
 そう、先ほど真綾が跳ね飛ばした|怪異《レムレース》の首が、突き刺さったのだ。

「がはっ……!?」

 真綾は素早く鎌から手を離すと、痙攣するアマランスに噛みついた怪異の頭を掴み、そのまま力を込めて、アマランスの細く美しい首を――躊躇なく引き裂いた!

「普段やらないことやってみたデスガ、やっぱり真綾ちゃんは鎌で斬る方が好みデスネエ。……まあ、生き返ったら、なかなか楽しめる殺し合いだったとは言ってやるデスヨ、ヒャハハハ!!!」

 ごとりと倒れるアマランスの体を一瞥し、真綾は引き裂いたアマランスの首を掲げて笑い続けるのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

天神・珠音
【アドリブOK】
少々暴れすぎたかもしれません…
でも、まぁ大丈夫ですよね。

わたしは魔術塔での戦いに参加はしていませんが、
それでも一緒に戦えることを嬉しく思います。
ここは全力で戦って答えます。

召喚される怪異に対しても自分の√能力を利用してひたすらに喰らい尽くします。
可能な限りアマランスさんに一気に突撃して倒したいと思います。

…負けたとしても彼女の強さを確認できるだけでいいとも思っています。

「あの、さっきわたしが食べちゃった人たちはお元気でしょうか?」

 なんかちょっと脳が理解を拒みそうな一言を告げた|天神・珠音《 あまがみ・たまね》(どこにでもはいないトウテツ・h00438)に、アマランス・フューリーもややひきつったような微笑を浮かべた。
「ええ、まあ……元気というか。さっき帰って来てたわね」
「よかった、生き返れたんですね。少々暴れすぎたかもしれないので……。大丈夫だろうとは思っていたんですが」
 珠音はほっとしたように胸をなでおろす。体内に魔獣・饕餮の因子を飼う珠音はあらゆるものを喰らい尽くす業を背負った少女でもあるのだ。先ほどの模擬戦で、珠音は羅紗の魔術士たちをむしゃむしゃと頂いてしまっていた。生き返るはずだとはいえ、少し気になっていたのである。

「ただ……」
 と、アマランスが微かに顔を曇らせるのに、珠音はどきりと高鳴った鼓動を抑えた。
「ど、どうしたんでしょう、もしかして皆さん、トラウマか何かに?」
 魔術師たちは捕食されるなどという常軌を逸した経験をしてしまったのだ、生き返ったとはいえ、心的外傷になってもおかしくはないかもしれない。

「いえ。逆に。……可愛い女の子に食べられるって、なんだかクセになりそうです……って、うっとりしながら言ってたわ……」

「…………えっと?」
 今度は自身の脳が何となく理解できない領域に入りかけた気がして珠音は小首をかしげるが、アマランスは急いで手を上げ、彼女を制した。
「あー、考えなくていいわ! 世の中には知らなくていいこともあるから!」
「……よくわかりませんが、はい。えと、じゃあ、気を取り直しまして」
「そうね」
 表情を引き締め直し、二人は間合いを取る。

「わたしは魔術塔での戦いに参加はしていませんが、それでも一緒に戦えることを嬉しく思います。……ここは全力で戦って答えます!」
「嬉しいわ。では、行くわよ!」

 純白に膨れ上がるような魔力がアマランスの総身に満ち、魔女は時空が縦に回転する狂った世界の扉を開け放つ。
「純白の騒霊の招来!!」

 呼号の下、アマランスに呼び出されたものは、人類が未来永劫知ってはならぬはずだった禁忌の存在、あり得べからざる古の怪異!
 物理法則自体を喰らい尽くさんばかりの牙を剥き出して、怪異はのたうちながら珠音に迫ると、硝子の砕けるような音を立てて――おお、咄嗟に身を引こうとした珠音の左腕を喰いちぎった!

 だが。

「『|痛みを喰らい尽くす《ペインフルイーター》』……!」

 食われたと同時に珠音の左腕が時の糸を縒り合わせるかのように瞬時に再構築されたではないか。しかもそれは、己を喰らった怪異そのものの姿を模して――珠音自身よりも巨大な顎を広げると、アマランスの放った怪異をそのまま|喰い返した《・・・・・》!
「それが饕餮の因子ね。たいしたものだわ」
 アマランスは素早く身を翻すと新たな怪異を連続召喚しつつ、珠音の力に感嘆する。珠音はキュッと唇を噛み締め、襲い来る怪異に恐れることなくアマランスへと猛進しながら、呟くように言葉を紡いだ。

「……聞いてもいいですか」

 牙剥く珠音の腕を羅紗で防ぎ、華麗に宙に舞いつつアマランスは答えた。
「何を?」
「アマランスさんは……その怪異さんたちが好きですか?」
 吠え猛る怪異が消滅の光条を放つ。珠音の顎はその光線すらも喰いちぎってなおも突き進む。自らの腕に揺れるまなざしを落としながら、珠音は独り言のように声を繋いだ。

「私は……これを。私の中の饕餮を。どう扱っていいのかわからないままでいます。もちろん、戦うことは必要です。そのために饕餮の力も必要です。でも、望んで得た力ではなく、そのために哀しい想いもしてきた力です。……私と同じように異形の物を飼うアマランスさんは……それをどう考えているのでしょう」

 珠音の牙がガチリと音を立てて一瞬前までアマランスが存在していた虚空に突き刺さる。艶やかな銀髪をなびかせながらかわしたアマランスは羅紗を舞わせて珠音の牙を拘束しようとして、けれどその羅紗は牙に裂かれた。
 両者ともに凄烈な攻防を交錯させつつ、それでも……不思議に二人の間の会話だけは、別空間のように、穏やかだった。

「|怪異《この子》たちは私が生み出したもの。だから……そうね、私自身だわ」
「アマランスさん自身……」
「私は自分が嫌いだった。過大な期待を重荷に感じていた自分、失敗し続ける自分、それでも足掻いてしまい……けれどとうとう耐え切れなくなって自我を捨ててしまおうとした自分、みんな嫌いだった。だから、自分が生み出した怪異たちも嫌いだった」

 一瞬間合いを開け、両者は息を整える。鋭い眼光がお互いを射抜き、推しはかることもないまま、同時に二人は大地を蹴った。

「でも今……」
 アマランスの謳うような美声が風に乗る。
「好きになりたいと思う。まだ自信があるとは言えないけれど、自分を。そして、この子たちも。だって私だもの。私なんだから、私が一番私を愛してあげなければいけないのだもの」

 風が止まり、光が止まり、世界が止まったかに見えた一瞬だった。
 珠音とアマランスは、薄紙一枚ほどもない間隙に、お互いへ牙を擬していた。
 珠音の牙はアマランスの首筋に。
 アマランスの怪異の牙は珠音の心臓に。
 相討ちか、と見えて、けれど。

「……あなたの勝ちね。距離は同じだけれど、あなたの口の方が閉じるのが早い。続けていたら喰われていたのは私だったわ」
 アマランスはそっと微笑んで身を引き、頭を下げた。

「ありがとうございます……負けたとしても、あなたの強さを確認できるだけでいいとも思っていたのですが」
 同じくほっと安らいだ表情を浮かべた珠音に、アマランスは尋ねた。
「それで、……貴女の参考にはなったかしら」
 それは戦闘を意味し、そしてもちろん――生き方をも意味していた。

「はい、難しいですが……私も向き合ってみます。饕餮と」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

結月・思葉
【月影】
アドリブ◎
えぇ、ごめんなさいで帳消しにならない……鬱憤を晴らすまでは。
ね、久瀬さんもそう思わない?
とはいえ、全く認めないほど、私も鬼じゃないもの。ごめんなさいと言っただけでも……変わったのだから。

だから、……存分に、戦いましょう。
【不思議の国のおとぎ話】で語るのは、ある人形の話。
自身の力で|運命《糸》を断ち切る、操り人形のお話よ!
古代の怪異の動きを止め、「時間を稼ぐ」糸を語って表す。
「インビジブル制御」で更に妨害して動きにくくし、久瀬さんが動きやすいようにサポート。

自らの道を見出すのでしょう? なら、断ち切ってもらわないと困るわ。
それとも何? この程度で弱音を吐くの?(言いくるめ)
久瀬・千影
【月影】
アドリブ◎
結月の言葉に思わず苦笑する。鬱憤だ、何だと殊更に主張する彼女は他の能力者と同じぐらいアマランスを気に掛けているのは分かっていた。素直じゃないんだ、アイツ(肩竦めてアマランスにコソッと)

記憶の海から――遥か彼方、忘却の海に沈んだ古代の怪異。
その動きは鈍く、【視力】を凝らすと細く光る糸。絡め捕られた怪異は、到底アマランス本人と同等の強さなどではなくて。
『疾駆』で間合いを詰め、【居合】と【切断】にて怪異を両断する。
同じ要領でアマランスとの間合いを詰めて刀を振るわずデコピンにて終了だ。

アンタを操る宿命の糸は切れた。
そして此処から先は――他の誰かじゃなく、アンタの物語だ。

「えぇ、ごめんなさいでは帳消しにならないわ……巻き込まれた人たちの鬱憤を晴らすまでは」

 鋭い眼光を光らせた|結月・思葉《ゆづき・ことは》(言の葉紡ぎ・h05127)の声に、アマランス・フューリーは苦し気にうつむく。ようやく己を顧みた彼女の姿は、白い幻影が揺らめくように儚く見えていた。
「ね、久瀬さんもそう思わない?」
 同意を求めた思葉の言葉に、|久瀬・千影《くぜ・ちかげ》(退魔士・h04810)も思慮深げなまなざしを揺らし、アマランスに対し口を開いた。

「アマランス。アンタに聞きたいことがある」
「え、ええ……どうぞ」
 顔を上げたアマランスに、千影は刃のように声を投げる。

「――アンタ、ツンデレって知ってるか? 結月がそれだ」
「ちょ、久瀬さん!? あなた何言ってるの!?」

 急な話の展開に耳を真っ赤にし、思葉は千影に掴みかかった! 肩をがっくんがっくんと激しく揺さぶられながらも、千影はうんうんわかってるわかってる、といわんばかりに頷く。アマランスはその二人を訝しげに眺め、首をかしげた。
「……ごめんなさい、私たち世俗の言葉にはあまり詳しくなくて……その言葉の意味は知らないわ」
「そうか、じゃあ後で調べてみるといい。ツンデレってのは……」
「調べなくていい! 調べなくていいからねアマランス!!!」
 千影の声を遮った思葉に、きょとんとしながらもアマランスは頷く。

「こほん! と、とにかくね」
 無理やり仕切り直そうとしつつ、思葉は言葉を継いだ。
「……貴女の決意を全く認めないほど、私も鬼じゃない。ごめんなさいと言っただけでも……変わったのだから」
「そう、結月はただ素直じゃないだけでな、ほんとは他の皆に劣らないほどアンタを気にかけて……」
「くーぜーさーん!!??」
「わかったギブギブ」

 手を上げた千影に、はーはーと息を荒げて、思葉はびしっとアマランスに指をさす!

「ということで! 存分に戦いましょう!」
「え、ええ。よろしく……」

 なんだかよくわからない流れで狐につままれたような表情ながらも、さすがに羅紗の辣腕、アマランスは即座に戦闘態勢へと意識を切り替えたようだった。

 攻撃に移行しようとした千影と思葉の眼前に純白の世界が広がる。それはアマランスの繰り出した羅紗の波、押し寄せる懸河のごとき清廉なる白い羅紗は二人の視界を完全に遮った。
「おっと目くらましか!」
 だが同時、千影の腰間から光芒が奔る。一閃千斬、彼の居合は幻惑もろとも羅紗の波濤を斬り裂いていた。千々に斬り裂かれ、羅紗の破片が散りゆく花吹雪のように美しく虚空に閃く。
 だが斬り裂かれた羅紗の切れ端の向こうから、妖しく微笑む魔女の姿あり。その転瞬は、アマランスが間合いを取るのに十二分。
「ちっ、瞑想の時間を与えちまったか。結月、怪異召喚が来るぞ!」
「わかって……久瀬さん!」

 思葉の声よりも早く、千影の刃は迸っていた。背後へ!
 彼らの背後、斬り散らされた羅紗の破片から膨れ上がり世界へ沁み出すように、何かの影が朧に立ち上がる! その影は千影の剣閃をかわし、輪郭を明瞭にしていった。

「召喚は必ずしも私の隣から行われると決まってはいないわ」
 アマランスの声が幻の中に反響するかのように届いた。そう、アマランスはあえて羅紗を千影に斬らせ、その破片を触媒として遠距離召喚を行ったのだ!
 しかし、その術式自体は歴戦の戦士たる千影と思葉が愕然とするにはまだ及ばぬ。
 二人が息を飲んだのは。
 ――召喚された「もの」それ自体にあったのだ。

 白銀に煌めく長い髪、この世のものとは思えぬ妖しい美貌と、世界の終焉を覗き込んだような虚無に満ちた瞳。ああ、その姿、見まごうことがあろうか。あの戦いに参加した者たち誰一人として!

「フェリーチェ・フューリー!!!???」

 千影と思葉の声がくしくも重なった。まさにそれは――あの魔術塔での激戦の中、アマランスを虜としその手駒ともして能力者たちと戦った「七代目」、フェリーチェの姿にほかならなかった!

「私の記憶の中から呼び出す怪異。私の記憶の中で最も強い怪異は……彼女よ」

 アマランスの感情のこもらぬ声が淡々と響く。
 それはあの『塔』の再現そのものだった。よもや、アマランスとフェリーチェの二人に、再び千影と思葉が挑む日が来ようとは!
 けれど二人に怯懦なし、逡巡なし!
 一切の言葉交わさぬまま、二人は駆け抜ける!

「あの時の心残り、晴らさせてもらうわ! 『|不思議の国のおとぎ話《ワンダーランドマイライブラ》』!!」
 口訣を謳う思葉の声と共に周辺の世界が書き換わる。幻影のように空間が溶けだし、鮮やかで華やかな舞台劇の世界へと。
 それはある悲しい人形の物語。自信を操る糸の存在にさえ気づかぬままに踊り続けた舞人形の物語。
 だが人形は目を覚ます。己の力で、己の意思で、誰にも強制されぬ己の自由を選び取ろうと、もがき足掻く! 引き裂いた糸で自分自身の体が傷つこうとも、それは支払う代償に値する傷であるのだから!

「この|糸《うんめい》、断ち切って見せなさい、アマランス、そして……フェリーチェ、あなたもよ!」

 思葉の手繰る糸は千に変じ万に化し、虚空に踊って敵に絡みかかる!
 だがこれに対するはあの塔でも見せつけられた恐るべきフェリーチェの力だ!
「戦術・|強行掌握《フォルツァートシンパティア》!」
 フェリーチェの歌が共鳴するところ、周辺に蠢くインビジブルたちが一斉に舞い上がって自らを「糸」に絡ませ、その自由を遮ろうとする。しかし。
「私の舞台よ、演者が勝手に動かれては困るわね!」
 思葉の髪が逆立ち、その身から迸った力の波動はインビジブルたちを電撃に打たれたかのように竦ませた。

「やるわね、能力者。でも、こちらも負けはしないわ。アマランス!」
「ええ、フェリーチェ!」
 二人の交わした短い言葉は、あの塔では思いもよらなかったような寄り添いの距離。あたかも細い糸を編んで羅紗と為すがごとくに、しっとりと織られた想いの糸。
 その二人の羅紗使いが同時に繰り出す純白の地獄は柔らかに巻き込み強靭に叩き潰すまさに魔術の秘奥だ。大地が穿たれ、風が悲鳴を上げ、空間がひしゃげるほどの連撃が千影と思葉を襲う!

 その中を走る、千影が走る、羅紗の波状攻撃を思葉の千条の糸が全力で食い止めている僅かな隙を塗って!
 だがいかに対応するか、『視界』が必要だ、千影の能力が解放されるためには。
けれど無限の羅紗で遮られた戦場に視界は通らぬ、千影の能力は届かぬか――。と、思えたとき。

 彼は、渾身の力を込めて、投げ打ったのだ。
 太刀を! 上空へと!
 天空にきらめいた剣には、その鏡のような刃に、一瞬。
 アマランスとフェリーチェの姿が映し出される!

「「見えた」ぜ。『疾駆』!」

 刃のような一言と共に――。
 千影の姿はその場から消え、アマランスとフェリーチェへの、一足一刀を超えた水月の間合いへと入り込んでいた。
 魔術師たちの無限羅紗はそのあまりの間合いの近さゆえ対応できぬ! 今が必殺の時!

「これで終了だ」

 けれど、そこで振るわれたのは拳でさえなく……人差し指だった。
 額をちょんと弾かれて、アマランスは唖然とする。その千影の片手に構えた鞘に、天から舞い降りてきた刀が静かに鮮やかに収まった。

「……久瀬さん、まーた甘いことしてる」
「聞き飽きた」
「言い飽きない」
 後ろからジト目で見ている思葉の声に振り返るまでもなく応じて、千影はアマランスに声をかけた。

「アンタを操る宿命の糸は切れた。そして此処から先は――他の誰かじゃなく、アンタの物語だ」
 その言葉に優しい笑みを残し、アマランスの細い肩をそっと叩いて、フェリーチェの姿は夢のように消えていく。
 三人はその光景を見送って、静かに穏やかな視線を交わすのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

深見・音夢
ギャップ萌えも良いっすけど羅紗の魔術士としてのカリスマ溢れる姿もまた良しっす。
ここにファンサが加わればアイドルとして輝くのでは……!

そして、今の君にならこちらも真剣に相手をするのが礼儀というもの。
片鱗ではあるけれどここからは|素顔《怪人の本性》で相手をさせてもらおう。
機動力を生かして奴隷怪異を回避しつつ二丁の狙撃銃を連射して牽制、隙を作ったところで一気に距離を詰めて牙で喰らい付く!
……殺し合いなら喉元をかみ砕くところだけれど今回はあくまで模擬戦、ちょっと甘噛みするくらいにしておこう。
アドバイスを送るとしたら……もう少し配下に優しく接しても良いのではないかな。具体的には推し活グッズの公認とか。

「ギャップ萌えも良いっすけど、羅紗の魔術士としてのカリスマ溢れる姿もまた良しっす。ここにファンサが加わればアイドルとして輝くのでは……!」

|深見・音夢 《ふかみ・ねむ》(星灯りに手が届かなくても・h00525)の言葉にアマランス・フューリーは不可解気な表情を浮かべて首を捻った。

「一から十まで意味が分からないんだけど、そもそもアイドルって何。ファンサって何」
「考えるな、感じろ」
「考えさせて!?」
「っていうかっすね、アマランス殿はもう本能でアイドルやれる素質充分にあるっすから変に理論に傾かない方がいいかもっすよ」
「アイドルの素質って……私のどこが」

「立ち絵イラスト」
 音夢は胸を張って指で上方を指し示した!そこにはもちろん、アマランスの美麗で見事な立ち絵イラストがあるのである!

「いきなりメタなこと言わないで!?」
「だってっすね、ほらそのポーズ! しなやかに胸を張り巨乳を見せつけ体の曲線を強調しさりげなく片足前に出してポージングしつつ太腿チラリ、微かに上目遣いでアピールとかもう! もう! そんなポーズ天然で取れる子いるかって感じっす! グラビア撮影会100回くらいこなしてないっすかって感じっすよ!」
「わけわからないわ!?」
「つまりこうだ。アマランス殿はアイドルとして天下取れる!」
「取りたくないわよ!? 私は羅紗の魔術師として……! ……あ」

 言いかけて、アマランスは自分のその言葉にふと目を見張り、口を閉じた。
 その姿に、くすっと音夢は微笑む。優しく、穏やかに。

「……へへ、自覚できたみたいっすね。アマランス殿はやっぱり、羅紗の魔術師として、その道を極めたいんっすよね」
「……まんまと乗せられてしまったのかしら。おかしな人ね。そして、……たいした人」

 笑みを浮かべ見つめ合う二人の身に、静かに力が満ちていく。
 互いの意図が伝わったのなら、あとはただ全力でぶつかり合うのみだ。
 空間が軋むかのように、音夢の周囲の世界が密度を増した。

「今の君にならこちらも真剣に相手をするのが礼儀というもの……」

 音夢の声が変わる。言葉が変わる。目付きが、そして姿が――今、変わる!

「片鱗ではあるけれど、ここからは素顔怪人の本性で相手をさせてもらおう! 『|擬装限定解除・夜鮫《オトメノスガオ》』!!」
 世界が波打つようなエネルギーが放散された。通常は秘匿されていた音夢の本来の姿が一部とはいえ解放されたのだ!
「これは……!」
 目を見張るアマランスが捉えたのは、漆黒に艶めく強靭な外皮に包まれ、咆哮した口中に立ち並ぶナイフのような牙の山! 古代より地球の海を支配する覇者、鮫の姿を持つ怪人こそが音夢の本性だ!

「可愛くはなくなって済まないな」
「いいえ、貴女は自分の姿を表に出す勇気がある。自分の気持ちを自分の中に押し込めていた私にはなかったものだわ」
「ふふ、ありがたい言葉だ。やはり君には|人々を鼓舞する《アイドルの》資質がある!」
 礼の代わりに白刃のような牙を剥き出し、音夢は猛然と虚空を駆けた! 風が吹きすさび啼泣するような衝撃をあとに残して!

「純白の騒霊の将来!!」
 同時にアマランスも己の力を開放する。永久に閉じられていたはずの世界の壁を強引に引き裂いて、形而上界から滴り落ちたようなあり得ざる怪異がその姿を現し、悪意に満ちて獰猛に吠えたのだ!

「では、ひと狩り行こうか! あのゲームも得意でね!」
 音夢は大地を叩き割りながら驀進する怪異の猛攻をひらりと交わしつつ、長大なライフルを両手に構える。二丁狙撃銃という常人には不可能なスタイルを可能にする膂力とバランスこそ、まさに怪人体の姿がもたらすものだ!

 轟然! 二つの銃口が怒れる竜のごとくに猛る炎を噴いた。フルオートでばら撒かれた徹甲弾が容赦なく怪異の体に食い込み爆裂させる。だが怪異はいっそう狂奔し、空間ごと噛み千切らん勢いで音夢を狙う。怪異は回復技能を有しており、瞬時に傷を再生させてしまうのだ。
 だがもとより音夢の狙いはアマランス。怪異は牽制さえできていればよい。再生できるということは、再生さえさせておけばそれだけで相手の手数を封じられるということだからだ。瞬時に割り切り、音夢は残弾すべてを叩き込む勢いで二丁のライフルに乱射! さすがにその面制圧力には耐えきれず、怪異も一瞬怯む。
 その刹那、音夢は弾の切れたライフルを放り投げ、アマランスに肉薄した! だがまだ一瞬遠いか!

「レムレースを超えるまでに飛び道具を使い切っていいのかしら? この間合い、私の方にはまだ羅紗があるのよ」
 アマランスは純白の羅紗を翻し、鋼をも寸断する布刃を音夢に叩きつけようとして――けれど。

「っ!?」

 その繊手に突き刺さった「何か」に、動きが乱れた!
「これは……!?」
 目を見張るアマランスの瞳が見たものは、――牙だ!

「サメの牙は何度でも生え変わるのさ!」
 然り、音夢は自らの牙を噛み砕き、それを暗器として吹き飛ばしアマランスの手を貫いたのだ!
 我に返ったアマランスが態勢を整えようとした時にはすでに遅い。

「ごちそうさま」
 音夢の牙がアマランスのしなやかな首元を……カプリと甘噛みしていたのだった。

「ちょっと……それはセクハラじゃない?」
 降参の両手を上げつつ、アマランスは苦笑を浮かべる。
「まあ、アイドルにはハグ会とかもあるし……」
「だからアイドルにはならないって!」
 目を尖らせるアマランスに、音夢はしれっと答える。
「しかしだな、今後魔術師たちを束ねるつもりなら、人心掌握のためにもアイドル仕草を研究してもいいだろう」
 むむー、とアマランスは口を尖らせた。

「………口が上手いわね」
「そう、具体的には推し活グッズの公認とか」
「しない!!!!」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

アリス・アストレアハート
アドリブ連携歓迎

【POW】

アマランスさん…
こうして
またお会いできて
嬉しいです…

護霊「アリスも…本気になったみたいね…?」

『はい☆アマランスさん、以前に戦いました時…とっても喜んで下さってましたから…☆』

護霊「え…何それ……あの…アマランスお姉さん?…ぶたれて喜んじゃうとか、そうゆう趣味…?」
(護霊が思わずアマランスさんに聞き

『無垢なる翼』で飛翔
立体的に立回り

【第六感】【幻影使い】
【霊的防護】【オーラ防御】で
防御行動

クイーンオブハートキーを手に
【ハートのA】も展開

【全力魔法】
【誘導弾】の【一斉発射】で
攻撃

敵√能力は
こちらも
√能力発動
幼姫真竜に変身
対処

『アマランスさん…これが私の…本気ですっ…☆』

「アマランスさん……こうしてまたお会いできて……嬉しいです……」

 アリス・アストレアハート(不思議の国の天司神姫アリス・h00831)はにっこりと満開の花のような笑顔をほころばせて、アマランス・フューリーに弾むように話しかけた。
 アマランスも優しい笑顔を向け、アリスを迎える。

「私も嬉しいわ。あの時は世話になったわね」
「いえいえ……です。またお会いする約束……守れて、嬉しい…‥です。今度もせいいっぱい……戦いますね」
 然り、かつてアリスとアマランスは干戈を交えたことがあった。その時はまだ、全体としてはアマランスとは和解できていない状況だったが、アリスとは心の交流を持てたのである。
 微笑み交わす二人に、アリスの自我ある分身ともいうべき護霊「何者でないメアリーアン」は少々意外そうな表情を浮かべた。

『あら、アリスも本気で戦う気になったみたいね? 前にも戦ったことがあるってコト?』
 その言葉に、アリスは屈託なく頷いた。
「はい☆アマランスさんとは以前に戦って……」
『そうなんだ』
「その時、いっぱいポコポコ叩いて……」
『え?』
「そしたら……とっても喜んで下さってましたから…☆」

「待って!? その言い方待って!?」
 アリスの純真無垢な言葉に思わずアマランスはツッコミに入らざるを得ない! だが既に遅く、メアリーアンは半ばひきつった眼でアマランスを見つめていた!

『あー……アマランスお姉さん、ぶたれて喜んじゃうとかそっち系の……』
「待って! 違う! 違うの!」
 必死で否定するアマランスだが、しかし!

「え……あの時喜んでくださったの……嘘だったですか……?」
 今度はアリスが可憐な瞳に悲しげな表情を浮かべ今にも泣きだしそうな状況! アマランスは慌ててアリスをなだめに入る!
「待って! それも違う! そうじゃないの、本当に嬉しかったわ! でも!」
『ああ、やっぱり悦んじゃう系だったんだ……いえ、今は多様性の時代ですから、そういうのもいいと思いますよ……あははは……』
「どうしろっていうのー!!!」

 かわいそうなアマランス。きっともうどうしようもないんだよ。

「えっと……とにかく、今度も一生懸命ポコポコしますね?」
『そうしてあげてアリス、その方がアマランスお姉さんも喜ぶみたいだから……』
「あははー……もうどうにでもなーれ……ええい、行くわよ!」

 アマランスは半ばやけくそ気味に魔力を解放! 瞬時に周囲の景色が凍りつき、時空が狂った哄笑を上げたかのような不協和音が響き渡った。果てしない久遠の彼方に現実から切り離された歪みの果てから、今呼び出されるものがある!

「純白の騒霊の招来!!」

 アマランスの詠唱の残響さえ消えぬうち、悲鳴と笑い声の奇妙に入り混じったような声を上げ、現れた奴隷怪異がその巨大な爪を振り上げてアリスの小さな体を叩き潰そうとする!
 だが花の香るような薫風に乗り、アリスはすでに飛翔していた。純白の翅が羽ばたくところ、天に舞う神女のようにアリスは空に駆けようとして。
 けれど……。

「あなたと戦ったこと、嬉しかったわ。でも、だからこそ――その時の戦いははっきり覚えてもいるのよ」
 アマランスは優雅に手を振り上げる、同時。

「は、はわわ!? 飛べません!?」

 アリスの羽がはためくべき空間そのものが消失していた!
 奴隷怪異レムレースの召喚空間が拡大され、通常空間を侵食していたことにより、「空」そのものがなくなっていたのだと、まさか即座に理解できるものがあろうか!
 アリスの立体機動戦術をアマランスは事前から警戒していたのだ。空が失われたことにより、アリスは飛び得ず、ただ落ちるのみか!

『でもその時には私がいなかったですよね、アマランスお姉さん☆』

 おお、だがしかし! 落ちかけたアリスを支えて舞ったのはメアリーアンだ!
 メアリーアンの足元には――「ハートのA」が閃いている!
 宙に浮かぶ無数のカードたちは揚力ではなく魔力で飛ぶ、ゆえに空が消えたとしても影響は受けないのだ。花吹雪のように翻るハートのAたちの上を、踊るようにアリスとメアリーアンは駆け抜けてアマランスに迫った!

 可憐な獲物を逃しはせぬと、怪異レムレースが、のたうつ大蛇が鎌首をもたげるかのように二人に襲い掛かる。だが二人を噛み裂いたと見えた一瞬、その牙は虚しく無を叩いた。怪異はおろかアマランスでさえ目を見張る、オーラをプリズムのように展開し、そこに映し出された幾百幾千のアリスたちの幻影に!

『アリス、怪異は私が引き受けるわ☆ あなたはアマランスお姉さんと決着をつけなさい!』
「は、はい、護霊ちゃん!」

 幻夢の奥から黄金の煌めきが流星のように走る。神秘の鍵杖クイーンオブハートキーを手に翻したメアリーアンが、無限の幻と共にまっしぐらに怪異へと打ちかかったのだ。
 同時、アリスも全能力を開放する!

「アマランスさん……これが私の……本気ですっ……☆『|幼姫真竜顕現《プリンセストゥルードラゴン・メタモルフォーゼ》』!!!」

 虹色の輝きが全天を覆い、レムレースによって先ほど歪められた空間さえもが美しくも華麗に彩られていく。竜神の血を引くアリスの、これぞ秘められた力だ。顕現せしものは高貴にして可憐な姿の中に底知れぬ威圧感を漂わせた真なる竜姫の姿! 
 森羅万象を灼き尽くす空色の轟炎が天を焦がして燃え上がる。アマランスは咄嗟に羅紗を翻し防御しようとしたが、姫竜の神聖なる紅蓮の中に永らえるものとてあろうはずもない!
 メアリーアンが怪異をハートキーで貫いたと同時に、アリスの焔もアマランスを光の中に消滅させていたのだった。

「アマランスさん、喜んでくれた……でしょうか?」
『きっと大喜びよ☆ だってあんなにボコボコにしてあげたんですもの。イイコトしたわね、アリス☆』

 無邪気に喜びあう二人に、アフロのチリチリになったアマランスは必死で訴えるのだった。
「違うの……私そっち系じゃない……がくり」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

エーファ・コシュタ
アドリブ絡み諸々歓迎

アマランスさん…良い方々に恵まれましたね。色んな事があったみたいですが、アナタの事を思う方々がこんなにいらっしゃるんです。ワタシも含めてですが
そんな皆さんの為にも…ワタシも頑張りましょう!

ワタシもアナタには見せていない力をお見せしましょう!ワタシの騎士としての本当の姿です!
このピカピカの鎧には怖い物はありません!だって騎士なので!

ワタシたちの頭によるビームで牽制しつつ召喚された相手も馬上槍で振り払って押し通ります!
以前はワタシたちとの協力攻撃でしたが、今度はワタシ自らが出ます!だって騎士だから!

騎士と魔術師……考えてみたら良い感じではないですか?どうです?

「お久しぶりですアマランスさん!」

 アマランス・フューリーとの久々の会見に際し、エーファ・コシュタ(突撃|飛頭騎士《デュラハン》・h01928)は礼儀正しく頭を取って胸に当て、上体をかがめた。一般人は帽子などを取って胸に当て、礼をするものだが、エーファはデュラハンなので、頭を取って胸に当てるのである。さすが騎士、なんと美しい礼節か!
 ……アマランスが、何か、えええ……っていうような表情を浮かべているのは見なかったこととする!

「ええと……、お久しぶりね騎士さん」
「はい! そういえば、ワタシは騎士で、アマランスさんは魔術師ですね。いわば対になるような存在。正々堂々頑張りましょう!」
 ずい、と胸を張って前に出ようとするボディエーファに、しかし、周囲のアタマたちが不服そうな顔を見せた。

『カラダワタシ、ここはワタシたちも出ていくべきでは?』『そうです、一人だけ出番とは騎士らしくないのでは?』

 しかしボディエーファはそんなアタマたちをなだめる。
「いえ、ここはワタシの騎士道とアマランスさんの魔術師道との対決。ならばワタシ自らが一人で行くべきでしょう」
『ですが、それならワタシでもいいのでは?』『いえいえワタシでも』『むしろワタシが』
 喧々囂々としておさまりが付きそうにない状態に、ボディエーファは素晴らしい解決策を提示した。

「わかりました、では、じゃんけんで公平に決めるとしましょう」
『いや無理でしょう!? ワタシにはアタマしかないんですよ!』『そうですそうです!』
「じゃあですね、口でじゃんけんを出すのです。口を大きく広げればパー、ぎゅっと閉じればグー、唇を尖らせればチョキ。これならじゃんけんできるでしょう?」
 ボディエーファの案は確かに公平のように思える! アタマたちはそれぞれ顔を見合わせ頷きあい、かくして出番決めのじゃんけん勝負と相成った。
 ……ちなみにアマランスは何が起きているんだろうこれ……って顔で見つめている。

「いきますよ! 最初はグー……じゃんけんぽん!」『ぽん!』『ぽん!!』『ぽん!!!!』

 エーファたちのじゃんけんが炸裂! 勝ったのは……おお、ボディエーファだ!
 多数にも拘らず、勝負はアイコになることなく一発で決まった。
 なぜなら……アタマエーファたちの口じゃんけんは、最後に「ポン」という以上、絶対口を結んだグーしか出せないからである!
「やった! ワタシの勝ちです!!」
 ただし、エーファの名誉のために強調しておかなければならない。決してそれは罠や計略ではなく、本当のガチで偶然であったのだと。

「ワタシはただ堂々として騎士らしいからパーを出しただけだったのですが……まあとにかくお待たせしましたアマランスさん!」
「……よくわからないけれど、いいのね? なら、行くわよ?」

 不得要領ながらも戦闘態勢を整えるアマランス。ここにアマランスとエーファの対決が始まったのだ!

「純白の騒霊の招来!!」
 アマランスの令号が響くところ、天空が揺らぎ時間が正気を失い、因果の届かぬ彼方から呼び出されしものは、怪異レムレース! 吠え狂った怪異はエーファに対し猛然と襲い掛かった!

「相手にとって不足はありません!!」
 だがエーファとてもその勇気に翳るところなし。馬上槍を隆々としごき、空気を裂いて勇猛に吶喊するエーファの姿はまさに、怪物退治に颯爽と赴く騎士物語の主人公を彷彿とさせる!
 レムレースの剥き出した牙を槍で弾きながらエーファは素早く体を入れ替え、幾度となく鮮烈な突きを見舞う。間違いなくその穂先は怪異の体に風穴を穿ち抜いていく、だが、怪異には回復の能力があったのだ。裂かれるたびにその体を再生し、怪異はさらに迫る!
 さらに加えて、エーファの相手は怪異のみではない。後方に控えるアマランスが振るう羅紗が遊撃として騎士を側面から、あるいは後方からも襲うのだ!
「きゃあっ!!」
 ついにかわし切れず、怪異の一撃がエーファを撃ち据えた!
 転倒するエーファはかなりのダメージだ。ここまでだというのか!

 だがしかし。

『ワタシ! 負けてはいけませんワタシ!』『ワタシなら立ち上がれるはず!』『信じています、ワタシ!』『ワーターシ!! オー、ワーターシ!!』

 おお、膝をついたエーファの背後から湧き上がるのは大海の波濤のような大声援だ。先ほどは激しく競い合い勝負しあったエーファたち。だが、本当はその心は一つなのだ!
 友にして仲間、そして自分自身でもあるアタマたちの誠心誠意のエールが、今エーファの魂を熱く激しく揺り動かす!

「ワタシたちの心……確かに受け取りました! これこそ真の騎士の姿です! うおおおおお!!!『|究極完全騎士顕現《アルティメットフォーム》』!!!」

 いくつもの魂の力を一つに合わせ、雄たけびを上げたエーファの全身が高貴なる黄金に煌めき輝いた! これこそエーファの新たな力、絶対なる騎士の力に覚醒させし証に他ならない!
「眼からぁ! ビィィィーム!!!!!!!」

 裂帛の気勢と共に放たれた金色のビームは闇を引き裂き光を友として怪異に炸裂! さらに怪異を撃ち貫いてアマランスをも直撃したのだ!

「がはっ……!」

 がくりと膝をついたアマランスは、揺れる前髪の奥から声を漏らす。
「……見事ね、騎士さん。貴女の勝ち、いえ……貴女たちの勝ち、よ」
「はい、これがワタシたちの騎士道! 仲間を信じ自分を信じる心です! そして……、それはアナタもですよ、アマランスさん」

 にっこりと微笑むエーファに、アマランスは一瞬不思議そうな表情を見せたものの。こう続けたエーファの声に、花がほころぶように笑みを見せたのだった。
 
「……アナタの周り、良い方々に恵まれましたね。色んな事があったみたいですが、アナタの事を思う方々がこんなにいらっしゃるんです。ワタシも含めて、ね」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

シアニ・レンツィ
ああ、また鼻の奥がツンとしていけないや
繋がってるんだよね
フェリーチェさんからアマランスさんへも
何度もこの人と戦ったことも
この戦いも、きっと何かに繋がっていくんだろうな

√能力でミニドラちゃんたちを召喚
今回はずっと出てもらってるね。いつもありがとう、みんな

魔力の鎖をアマランスさんに飛ばして動きを阻害してもらうね
数秒でもいいし、回避に意識を向けさせるだけで充分
その間にあたしはアマランスさんの怪異に向けて、怪力重量ハンマーブースタ―全部の勢いを乗せた一撃を叩き込んでの吹き飛ばし!
戦場からできるだけ遠くへ吹き飛ばすよ
人数有利を作ったら今度は火球を指示して布を燃やしてもらいながら肉薄してどーん!

「ああ、また鼻の奥がツンとしていけないや……」

 くしゅ、と可愛らしい鼻を擦りながら、シアニ・レンツィ(|不完全な竜人《フォルスドラゴンプロトコル》・h02503)はアマランス・フューリーの前に進み出る。
 物問いたげに自信を見るアマランスの視線に、シアニは元気に首を振った。
「ううん、ただね、思ったんだ。繋がってるんだよね……全部、って。つながってここまで来て、そしてここから先にまたつながっていくんだ。何度もあなたと戦ったことも、そして」

 小さく息をついて、シアニはその名を出した。

「……フェリーチェさんからアマランスさんへもね。きっと全部、何かにつながっていく。それってほんとに、奇跡みたいな当たり前で、当たり前みたいな奇跡なんだ」

「……たぶん、それが」
 アマランスもまた、シアニの言葉に小さく微笑む。
「それが魔術の真髄よ。奇跡みたいな当たり前、当たり前のような奇跡、こそがね」
「そっかー、これが魔術か。あたしも羅紗の魔術師の一人になれるかな?」
「なりたいの?」
「羅紗のグループアプリには入りたい」
「…………アプリが目的で魔術に興味あるって人は初めて見たわ」

 目をぱちくりと瞬かせたアマランスに、シアニは楽し気に笑いかけて、続けた。
「へへ。じゃ、やろっか!」
「ええ、行くわよ、『純白の騒霊の招来』!」
「ミニドラちゃん、出ておいで!!」
 両者の力が世界を圧するように膨れ上がり高まって、奇しくも同時に異界の扉が開かれた! この世ならざる存在が時の果てより時を同じくして来迎する。
 アマランスが呼び寄せたものは怪異レムレース・アルブス、そしてシアニが誘ったものは緑竜ユアをはじめとした幼竜たち、この一連の戦いの中で、何度もシアニに力を貸してくれた友たちだ。

「ずっと出てもらってるね。いつもありがとう、みんな。じゃあ……!」
 シアニが竜たちと戦闘に入ろうとした時。
 ……アマランスがポツリと声を漏らした。

「……かわいい」
「え?」
「かわいい……ずるい……」
「え、何、ミニドラちゃんたちが?」
 
 きょとんとするシアニの声に、はっとアマランスは我を取り戻したように口を抑えた。
「え、今私何か言った?」
「ミニドラちゃんたち可愛いって。そういえばアマランスさん、可愛いもの好きだったよねえ」
「な!? ななななななぜそれを!!!???」
「いやどこからともなく……風の噂で……」

 ああああ、とアマランスは耳まで真っ赤になって頭を抱えた。
「だって! だって……私の使い魔たちはアレなんですもの!」
 レムレース・アルブスは、「エッワタシデスカ!?」のような表情で――表情があるのかないのかわからないが、まあそんな雰囲気で、アマランスとシアニをきょろきょろ見回している!
 一方、アマランスはしょぼんとした様子でぼやく。
「もちろんレムレースは強力だし頼もしいわ、信じてもいる。でも、……カワイイ系ではないでしょう! それに比べてあなたの友達はみんな可愛いんですもの!」
「いや……まあうん……ミニドラちゃんたちは可愛いけども」

 どうしよう、といった様子でシアニはユアたちの顔を見た。実際可愛い。それと比べ、レムレースは、まあ、控えめに言ってあんまり抱きしめたくなるような感じではない。
 しかし! シアニはあえて声を振り絞る!

「アマランスさん! 今は、キモカワイイ系も流行りなんだよ!」

「キ、キモカワイイ系!?」
「レムレースちゃんはキモカワイイ方面で光るはずだよ! ぬいぐるみとか作ればバエること間違いなしだよ!」
「そ、そうかしら!?」
 レムレースと顔を見合わせたアマランスは一気に顔を輝かせた。
「そう……そうなのね、キモカワイイのね。分かったわ、行くわよレムレース!」
 
 わかっているのかいないのか、とにかくレムレースは高く咆哮し、シアニと竜たちへ向かって猛進を開始した! のたうつ体は物理法則に従わず、あり得ざる角度から角度を横切って世界を斜めに泳ぎゆく。常人ならその動きとも呼べぬ動きを見るだけで底知れぬ狂気に陥るに違いない。
 だが竜たちはさっと散会しこの異形なる襲撃を回避すると胡蝶のように乱舞し、その軽快な動きで怪異を翻弄に掛かった。竜を追う怪異と天に舞う竜たちの鮮烈な追走劇は、いつ果てるともなく続く。
「まあ確かに……ちょっとだけ……キモいかな……」
 うーん、と改めて敵味方を眺めつつシアニは漏らしながら……空間を圧迫するような巨大ハンマーを肩に担ぎ構えた。
 竜たちの舞はすべて、シアニの元へ怪異をおびき寄せるための戦術であったのだ!
 誘い込まれ、まんまとシアニの眼前へと導かれた怪異の鼻面に――。

「おりゃああああ!!! ハンマーブースター!!!」

 世界そのものが爆裂するような大響音が響き渡ると同時、シアニの全身全霊のフルパワーを込めたハンマーが降り抜かれ、戦場全体を震わせるような激しい衝撃波と共に――怪異は蒼天の彼方できらーんと輝く星となったのだった。

「ああっ、レムレース―!! あなたの仇はうつわ!」
 瞳を復仇に燃やし無限の羅紗を舞わせ襲い来るアマランスに、竜たちの火球が飛ぶ。通常の布ならば容易く燃え上がらせる火勢なれど、羅紗の魔法布は大気を巻き上げ風を呼び、火球の軌道そのものを捻じ曲げシアニへと襲った!

「風には風だよ、ミニドラちゃんたち!」
 だがシアニはすかさず竜たちに指示を飛ばす。いくつもの火球が連なり重なった時、それは天を突く火柱となり、上昇気流によって旋風を巻き起こすのだ!
 轟然たる威力の紅蓮旋風はさしもの羅紗の巻き起こす風さえも飲み込み、あえなく薄絹を真紅に染めて燃え上がらせた……!
 さらに炎の竜巻はその火力による陽炎で周囲の光景を歪ませる。
 アマランスが一瞬シアニの姿を見失った時――。

「はい、どーん!!!」
 
 背後に忍び寄っていたシアニが情け容赦なく鉄槌を振りかぶり、アマランスをしたたかに叩きのめしていたのだった。
 小鳥の歌うように声を奏で、ピョンピョン跳びつつシアニの勝利を祝う竜たちを、アマランスは涙目で見つめる。

「やっぱり可愛い……ずるい……」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

真心・観千流
アドリブ連携歓迎
今からするのは過去か、未来か、あるいは並行世界の話です
私は四代目塔主と戦闘を行いましたが、あと一歩の所で撃破できませんでした
理由は火力不足、√能力でインビジブルを削ることには成功しましたが再構築した肉体を破壊することはできなかったんです
……だからこれは、その弱点を埋める戦法の一つ
魔術師さん達は√能力者でないなら遠くに逃げてください、巻き込まない自身はありませんよ

不明兵装起動、同時に極点通過の弾丸に属性攻撃+武器改造で法則欠落と空間欠落の性質を付与
文字列に対してカウンター+早業+弾幕で迎撃します
着弾地点から半径33m、その範囲内を原子核崩壊による物理的破損を引き金に空間と法則を欠落させる事で何も無い虚に変貌させる
法則が消えるため魔術など論理立った攻撃は意味を成さず、空間ごと消えるため単純な物理攻撃は消滅する、生まれた虚はすぐに埋まりますがその際敵を引き寄せる効果が発生します

これを3300発、対執行者用に編み出した高火力攻撃の試作版
本気の貴女に、こちらも本気で応えましょう!

「私は――四代目塔主と戦闘を行いましたが、あと一歩の所で撃破できませんでした」

 真夜中の森の息吹のように静かに口を開いた|真心・観千流 《まごころ みちる》(真心家長女にして生態型情報移民船壱番艦・h00289)の声に、アマランス・フューリーは耳を傾けた。
 
「………それは、『今』から見れば、過去か、未来か、あるいは|並行世界《エヴェレット解釈》の話ですけれどね」
 それはどこか夢の中のようで、しかし同時にまぎれもなく明確で明晰に実体感を持った記憶に他ならない。

「並行世界、ね。√世界の関係とも少し違うわね。魔術においては高次世界を間違いなく想定するけれど、それは形而上的な視点であって、並行世界の概念ではない。……けれど、あの『塔』の中においては何が起きていても不思議ではなかったのかもしれないわ」
 アマランスも軽く瞼を閉じると、次にやや悪戯っぽく目を開き、応じた。
「……あなたは多世界解釈を支持するの? 意外にロマンチスト?」
「そりゃあロマンチストですよ。私は消された世界から希望を託された|情報移民船《ボイジャー》。体はロマンでできています。……あ、でも、待ってください?」

 観千流はふと何かを思いついたように眉根を寄せる。

「ん-、分岐した多世界からの情報フィードバックによる|多世界《エヴェレット》ネットワーク構築……による絶対解の導入? あれ? あるかな? アリかも? どう思います?」
「何が!?」
「そうですよね、可能性としてはアリですよね。問題はその膨大な情報をさすがに処理しきれるかということですが……ああ! 構築したネットワーク自体で演算を行えばいいんじゃないですか!? どう思います!?」
「何が!?」
「よぉしやる気になってきましたよ! じゃあ改めて、参りましょう!」
「よ、よくわからないけれど……やる気になったのならいいことね!」

 峻烈にまなざしを絡めあった、その瞬間が開幕の証だった。
 素早く身を翻し、後ろに飛びのいて間合いを取ろうとした観千流の眼前に、しかし。その瞬間。アマランスの妖艶な美貌が吐息のかかるくらいの距離まで迫っていた。
「えっ!?」
「あなたは射撃戦が得意よね。ならその間合いを潰す」
 視界を覆うほどに乱舞する純白の羅紗は、たとえ輝く文字列によって魔力が充填されておらずとも、風を斬り裂く恐るべき凶器だ! まともに食らえば肉も骨も斬り裂かれるであろうことに疑う余地もない。
 千変万化し怒涛のように襲撃を重ねる無数の羅紗は白い地獄の顕現! その破滅的な猛攻を前に、観千流はボディを気体に、あるいは液体に次々と相変異させ凌ごうとする。そのあり得べからざるおそるべき光景は、まさに超人と魔人の激突と呼ぶにふさわしい!
 おお、だがあくまでも観千流の行動は回避と防御に終始しているのみではないか。抜き撃つ零距離射撃すら許さぬ手数の速さと多さがアマランスの優位を形成している――。

「ちゃんと戦略を全体で組み立ててる? 私に射撃で挑もうとするなら最初に射撃を見せるべきではなかったし、その逆も然りよ?」
「言ったでしょう、私はロマンチストなんです! だから得意の武器を最後まで……押しとおします!」
 観千流の瞳が煌めいた。彼女に未だ機あり。そう、観千流本人の動きが封じられているのならば――観千流以外のものが動けばよい!

「バウンドリフレクタッ!!」
 
 呼号に応じ、自立稼働する盾が舞う。だが、いっときアマランスの攻撃を遮ったところで、結局それは防御するのみに変わらぬのではないか?
 だが――さにあらず。
 観千流は、盾を――自分に向けたのだ!

「っ!?」
 刹那、虚を突かれたアマランスの眼前で、観千流の体は、一瞬にして彼方まで弾き飛ばされていた。バウンドリフレクタの能力は強力な斥力の発動。触れたものを弾き飛ばす。|観千流本人《・・・・・》であろうともだ! その間隙は観千流が体勢を立て直すに十二分!

「兵装起動、弾丸改造……!」
 宙を舞いつつ観千流は超高速で精霊銃を抜き放つ。垣間見た世界に、アマランスが羅紗に輝く文字列を充填している姿が映る。発動は――。

「エレメンタルバレット『極点通過』!!!」
「輝ける深遠への――!」

 一瞬を分割したほどの差で、観千流が早い! 
 閃光よりも早く弾丸は撃ち放たれる、その身に恐るべき破滅と崩壊を纏った終末と終焉の使者として!

「……私が四代目を討てなかった理由は火力不足、√能力でインビジブルを削ることには成功しましたが、再構築した肉体を破壊することはできなかったんです」
 観千流は銃を翻しながらつぶやく。良い経験ではあったが口惜しみがないと言えば嘘になる。だが、だからこそ。そこから観千流は教訓をくみ上げた!

「……だからこれは、その弱点を埋める戦法の一つ!」

 弾丸が炸裂した瞬間――。
 世界からすべての意味が失われた。

 原子核崩壊による物理的破損を引き金に、空間と法則そのものを欠落させる弾丸。

 それこそが観千流の切り札であったのだ。
 ブラックホールならまだそこには特異点が存在するといえる。
 だが、そこには――「|何もない《null》」。
 言葉通りの虚無、絶対なるすべての否定そのものだ!
 法則もなく論理もなく空間もなく……そして、救いもない。

「これはっ!?」
「有から無を作り出す、これもまたロマンですね」

 アマランスの驚愕の所以は虚無の構築に関してだけではない。虚無は一瞬のみでさすがに世界によって即時復元はされる、だがそれこそが二の矢!
「ああっ!?」
 アマランスの体が大きく揺れる。世界修復の余波は強力な吸引を導き、さしもの魔女の動きさえも制し崩す。

「……これを3300発。対執行者用に編み出した高火力攻撃の試作版、本気の貴女に、こちらも本気で応えましょう!」
 決意に満ちた観千流の瞳の輝きと共に、銃口は生み出していく。
 純白の魔女を包み込む暗黒の破滅を――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

サティー・リドナー
WZ『昇龍大河』機乗
何でもありなガチバトル、様々な敵を想定戦って貰うのいいでしょう
「正直今まで羅砂のトンチキで愉快な魔術師達とのふれあい模擬戦も面白く楽しかった」
「しかし最後はガチな再戦お望みですね、受けてたちましょう」
まずルート能力でアマランスの魔術攻撃のスキを狙うため、また遠距離からの攻撃【聖者の涙】を見切り回避するため使用します
よけ切れないのは、捨て身の一撃の剣で斬ります
【純白の騒動霊の招来】は融合で行動力低下で攻撃回避出来なくなるのを危惧し、剣で斬る
【輝ける深淵への誘い】は、古代怪異召還時に、同時ルート能力捨て身の渾身の一撃使用でチャージして、怪異を一撃で葬ろうと突進して拳を叩きつける
もし一撃で倒せたら、動揺でスキも大きくなると思い追撃で捨て身の一撃で斬りかかる。

「正直、今まで羅砂のトンチキで愉快な魔術師達とのふれあい模擬戦も、面白くて楽しかったですよ」

 サティー・リドナー (人間(√EDEN)の|【創成の錬成師】錬金騎士《ヒラメキマイスターアルケミスト》・h05056)がにこやかに話しかけた声に、アマランス・フューリーは心中複雑そうな微苦笑を浮かべた。

「ええ、まあ……あの子たちも本人としては真面目にやっていたのだとは思うわ。まあ、面白かったと言ってもらえるのは嬉しいけれど」
「はい、もちろん。真剣なのは伝わりましたから。実際、何でもありなら色々な敵を想定して戦うべきでしょうし、そういうバラエティに富んだラインナップなのも模擬戦の醍醐味なのかなーって思います」

 楽し気に頷きながらいったん口を閉じると、サティーは宝石のようにキラキラと輝く瞳で真っ直ぐにアマランスを見つめた。

「ということで。バラエティに富んだランナップの最後は……ガチな再戦をお望みですね、受けてたちましょう」
「ええ、あなたと戦ったことは覚えている。今度もよろしくお願いするわ」

 アマランスも白い頬に笑みを浮かべサティーに対峙する。しかしその笑みは慈愛のそれではなく、思う存分お互いの力をぶつけあおうという決意と覚悟の微笑みだ。
 次の瞬間時間が弾け、両者はともに大地を蹴る!

「間合いを詰めないと、遠距離からの魔術連打が来ますね……!」
 サティーが試みるのは近接での打ち合い、対してアマランスはおそらく間合いを広く取った射撃戦を意図するだろう。すなわち、お互いの距離をどう掴むかが勝敗の分かれ目となる!
 だが逆に言えば……サティーが間合いを詰めるまでは、どうしても初手はアマランスが取るということを避けられぬということでもある。

「純白の騒霊の招来――レムレース・アルブス!!」

 アマランスの詠唱が響いた時、天空が悲鳴を上げ時空が狂気に陥ったかのような哄笑を発した。いかなる歴史の中にも現れたことのない異形の怪異が、軋んだ物理法則の彼方からゆっくりと身を起こし、その淀み爛れた体を現世に這い出させてくる。アマランスの奴隷怪異、レムレース・アルブスだ!
「|嘆きの光《ラメントゥム》!!」
 レムレースはアマランスの指示が飛んだと同時に鮮烈な波動を撃ち放つ! 周囲全ての空間もろとも貫かんとばかりに閃いた異界の輝きは直撃すれば√能力者とて崩壊を免れぬ。
 サティーの真紅の髪が一筋宙に舞って――。
 けれど、文字通り紙一重、いやそれ以下の刹那の間隙の中に、サティーはそのしなやかな身を託していた!
 紺碧の瞳が蒼く燃え上がっているのを見るが良い、これぞサティーの能力!

「敵の隙を見破り示せ――『|竜漿魔眼式《リューショウマガンシキ》』!!!」

 力が集中したその目はすべての隙を見逃さぬ。僅かな空間のひずみ、微かな波動の揺らめきであろうとも。
 超常の閃光をかわし切ったサティーに好機あり。それほどの絶大な威力であるからこそ、怪異と言えども連射はできぬはずだ。一瞬の時間の優位は今度はサティーが取った!
 
「昇龍大河!!」

 風の中からメタルの光が迸る。響く玲瓏のコマンドに応じて疾走してきた鋼の機体にサティーはひらりと身を躍らせた。
 これこそ彼女の愛機、ウォーゾーン「昇龍大河」! 相手に奴隷怪異あるとすれば、サティーにもウォーゾーンの用意ありだ。最初の一撃はあえて生身のまま小さなターゲットで回避し、それに続いてマシンの推進力で一気に距離を詰めるのがサティーの構築した戦術だった!

 大地を削り風を抉って、ウォーゾーンは驀進しアマランスへと一気に詰め寄る!
「レムレース、そのマシンを止めなさい!」
 奴隷怪異は昇龍大河に纏わりつこうとゆらめく身をくねらせる。レムレースの最後の一手は相手との融合、そして道連れの自滅だ。
「そうはさせませんよ!」
 だがサティーの総身に燃え立つようにオーラが湧きあがる。その輝きはウォーゾーンを包み込み、マシンは今、黄金の流星と化して天空を駆け抜ける! 触れようとしたレムレースもオーラに弾かれ近づけぬ! 怯んだレムレースに真正面から対峙し、サティーは昇龍大河のコクピットからすっくと立ちあがり、滑空するマシンの勢いを保ったまま、鞘走らせた剣を大きく上段に振りかぶった!

「錬・成・剣―っ!!!」
 柄だけだったその剣から勝利を約束するかのような輝きが迸った! エネルギーを刃とするその剣に、サティーは全力を込め、ウォーゾーンもろとも突進する!

「はあああっ!!!|捨て身の渾身の一撃《ナリフリカマワズフルチャージ》!!!」

 閃!

 虚空もろとも両断する勢いで叩きつけられた、ただ一刀の高上剣、天から地までを一刃に結んで、衣擦れほどの音が立つこともなく速やかに滑らかに――。
 怪異を真二つに斬り落としていた。
 その余勢はさらにまっしぐらにアマランス本人へと奔りゆく。
「くっ!?」
 咄嗟に自らの身を覆わせたアマランスの羅紗が、はらりと散って、花弁のように大地に舞う。

 裂かれた羅紗の陰からアマランスの美しい顔が覗く。輝くサティーの刃は肌に触れぬか触れぬかのところでアマランスに付きつけられていたのだ。
「……お疲れ様です。いかがでしょうか?」
 にっこりと微笑むサティーに、アマランスは微苦笑を浮かべ、両手を上げる。

「あなたの勝ちね。お見事よ」
「ありがとうございます! また機会があったら是非!」

 アマランスは差し伸べたサティーの手を取り、二人は春の優しい風がそよぐように爽やかに笑い合ったのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ボーギー・ウェイトリー
・WIZ

・あー…ダメだこりゃ。|悪い子《・・・》ではなくなりつつある。その定義から逸脱しつつある。瞳はまっすぐに。感謝と謝罪。その意志がはっきりと見受けられる。ならばもう、目の前にいるのは罰を受けるべき悪い子ではない。ただの魔術師、ただの人間、一人の女。であれば、俺が出張る必要はない。意味はない。

・そもそも、いい話に俺の出番なんざあるもんじゃねぇし。後は、隣にいるおねーさんに正体を好き勝手にばらすもんでもないだろうし。そんじゃ、純粋無垢な子供として頑張ろうか。

・さてー…では、僕も頑張っちゃいましょー…気にしないでいいですよー、アリエルおねーさん…僕が、そちらに合わせますのでー…。

・【5】を使って、相手を指さし、ちょっとしたお呪いをぶつけましょー…しっかりとした魔術相手ではあまり意味がないかもですがー…そこで【13】も使いますー…さっきも言った通り、僕は援護でー…呪いの鬼火を、作りましょー。

・…それにしても、アリエルおねーさんの熱意、凄いですねー…僕も、羅紗の魔術に興味出てきましたー…

「えと、じゃあ……僕がお先に……頑張らせてもらっちゃいますねー」

 後方で少し心配そうに見守る姉のような女性にぶんぶんと手を振り、ボーギー・ウェイトリー(少年少女妄想・h04521)はちょこちょこと戦場に進み出た。
 これまでは彼女と一緒だったが、せっかくの修行の最後のステージならばと、ボーギーは単独戦を申し出たのだ。
 眼前には純白の魔女、妖艶な美貌と強大な魔力を身に纏った恐るべき羅紗の魔術師、アマランス・フューリーが待ち構えている。

 けれど。
 アマランスの頬に静かに浮かぶ笑みに、邪気はなかった。
 かつて話に聞いた、禁忌のたくらみと邪な計画に身を落としているような、歪んだ雰囲気は微塵も感じられなかった。
 ただ静謐に、ただ温容に。純粋に、お互いを高め合い魂を錬磨して前に進むために、彼女は立っている。

 ……深い闇の底から、ぶくぶくと泡が膨れ上がり弾けるような声がした。
 誰にも聞こえぬ声がした……。
 ボーギーの内側で。

(あー……ダメだこりゃ)

 「声」はボーギーの内側で淀んで反響し、溶けて消えるように沈んでいく。
(アレは……「悪い子」……ではなくなりつつある。その定義から逸脱しつつある。瞳はまっすぐに。感謝と謝罪。その意志がはっきりと見受けられる)
 どろりと滴るような重い思念がボーギーの中で狡猾な蛇のようにのたうった。
(……ならばもう、目の前にいるのは罰を受けるべき「悪い子」ではない。ただの魔術師、ただの人間、一人の女。であれば、――「俺」が出張る必要はない。意味はない……)

「あー……」
 口を開きかけたボーギーの目を見て、アマランスはそっと唇に人差し指をあてた。そのジェスチャーに、ボーギーは少し目を見開く。
「………おや。『分かってる』感じ……です?」
「なんとなく感じ取れる程度だけど。でも、あなたが秘密にしておきたいことなら、私は黙っているわ」
「さすが……一流の魔術師。ほんとに……いいおねーさんになったん……ですねえ。じゃあ、改めて……お願いします」

 ボーギーが口の端に浮かべた笑みはどこまでも純粋無垢な子供のものだった。

「ちょっとばかり夜遊びしましょー……『|5《シノツギ》』」
「! 速い……」

 両者の総身に魔力が膨れ上がる、しかし! 詠唱を始めかけたアマランスよりも、流れるように指をさしたボーギーの口訣の速さが上回った!
「アマランスおねーさんの……魔術の方が……しっかりとした術式でしょ―けど……僕のは「ちょっとしたお呪い」の分、発動も簡単……ですから……」
 そう、ボーギーは術式の簡略さそのものを戦略としたのだ。
「……っ」
 アマランスは艶めく唇を噛み、詠唱をやめると、そのまま羅紗を舞わせ直接攻撃に打って出た! 吹雪のような純白の猛撃は大地を抉り風を引き裂いて唸りを上げる! 艶やかにして柔和な羅紗が舞いながら獰猛な獣の牙のごとく虚空を噛み裂いていく!

「あららー……おねーさんの魔術……つづけないですか?」
 転がるように何とか回避しながら驚いて見せるボーギーに、アマランスは鋭く言葉を吐く。
「先ほど見せてもらったわ、あなたのお呪いは相手の力さえ操る。ならば、私が怪異を召喚すればそれも操るでしょう」
「ですねー……そのつもりだったですがねー……」
「そしてこの羅紗の破壊力はあくまで私の武技によるもので、「布自体」には依拠しない。「殺傷力の高い物体」ではないわ」
「ふむー……」

 ボーギーは嵐のように繰り出される羅紗をおたおたと避けながら唸る。さすがにアマランス、一筋縄ではいかない。
「ん-、……他に……一番殺傷力の高い物体というですとー……」
 彼はちらっと後方を振り返り、心配そうに見つめる少女を眺めた。
「まあさすがに……それは悪い子過ぎますねえ……なら」

 ボーギーに迫ったアマランスがとどめの一閃を加えようとした、まさにその時。
「さすがに……これくらいが……せいいっぱいですが―」
 僅かな一瞬、だが確かな一瞬、――アマランスの足元がゆらりと揺れ動き、その体勢を崩した! 攻撃に移ろうとしていた絶妙な刹那だけに、大きくバランスを失い、アマランスは転倒する!
「なっ!?」
 息を飲むアマランスに、ボーギーはのんびりと告げた。

「この近くにある……一番殺傷力が高い物体は……ちきゅー、ですねー」

 0.1秒に満たぬ時間でよい。1㎝に満たぬ範囲でよい。それほど強い振動でなくてもよい。
 ただ相手の体勢を崩す程度でよいのなら! それは可能となる!

「はい、『|13《ジュウニノツギ》』―」

 アマランスが立ち上がるよりも早く。
 ボーギーが放った鬼火が彼女を直撃していた。

「きゃああああっ!」
 悲鳴を上げて転がるアマランスと同時、ボーギーもさすがに、ふー、と大きな吐息をついて腰を下ろしていた。

「ちきゅーは……ちょっと……頑張りすぎたですかねー……」
「と、とんでもないわねあなた……」
 肩で息をつきながらようやく火を消したアマランスは半ば呆れたように、しかし半ばは感心したようにボーギーを見つめた。

「でも、既成概念に囚われないというのは魔術で一番大事よね。私の方が勉強をさせてもらったわ、あなたの勝ちよ」
「どーもですよー……」
 にっこりとアマランスの賛辞を受けたボーギーは、とことこと自分を待つ少女の元へと歩み寄り、ぱん、と高くハイタッチを交わすのだった。

「次は……おねーさんの番ですね―。えへへ、おねーさんの瞳が燃えている……ですよ。熱意、凄いですねー……僕も、羅紗の魔術に興味出てきましたー……」
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

アリエル・スチュアート
言葉は不要よ、アマランス。
こうしてまた貴女と対角に立って戦える、それだけで私は十分よ。
さあ、以前とは違う私を貴女にも見せてあげるわ!
『ええ…この微トンチキな空気の中でガチるんですか、この公爵…?』

ボーギーくん、悪いけど、合わせられないかもしれないわ。
この気持ちの逸りは抑えられそうにないの。
まずはあえていつも通りの基本スタイル、高速詠唱と魔力溜めの全力魔法を放つわ。
怪異を召喚してきたら、いったんそちらを優先するわ。
でも貴女ならもう対策はしてきているわよね?
だからそこに見様見真似の羅紗魔術を織り交ぜて、アマランスの羅紗魔術をそのまま見様見真似で再現してお返ししてあげるわ。
これが私の貴女へのリスペクトを込めた想いよ。
『…やっぱりその想い、敬愛じゃなくて恋か何かじゃないですか?』
敬愛よ。
『あ、はい。』

でも、まだそれで終わりじゃないわ。
これが貴女に新たに見せる私のとっておき、M.I.S.T.転送よ。
不意打ちで一気に接近して魔力溜めの全力魔法、|聖十字の光《グランドクロス》を受けなさい!

「最後は私のようね、アマランス」

 先陣を切った友とハイタッチを交わして、アリエル・スチュアート(片赤翼の若き女公爵・h00868)はゆっくりと戦場へ進み出た。白き魔女、アマランス・フューリーの待つ最後の戦場に。
「もう言葉は不要よ、アマランス。こうしてあな……」
「あなたにも本当に世話になっているわね、アリエル」
「げほっごほっごほっ!!?? え、今、私の名を!?」

 いきなりむせたアリエルに、アマランスはきょとんとした表情を浮かべ、小首をかしげた。
「それはそうでしょう……あなたとは何度運命が交錯したと思っているの。感謝もしているし、名前だってしっかりと覚えているわ、アリエル」
「ちょ、まって、そんな連呼されたら心臓ヤバ……」

 ぜーはー、と息を荒げながらアリエルはいったん後ろを向き、かがんで呼吸を整えようとする。
『ほら公爵……こんな微トンチキな空気の中でシリアスに決めようとかするからですよ』
 呆れたような音声を器用に合成する相棒のAIティターニアを、アリエルはジト目で睨みつけた。構わず、ティターニアは続ける。

『いくら愛しい人に名前呼んでもらったからって。乙女ですか』
「乙女よ! っていうか『愛しい』って何!?」
『恋をしているのでしょう?』
「ちっがーう! 敬愛! なんですぐ単純に恋とかにつなげようとするの! それでもAI!?」
 顔を真っ赤にし抗議するアリエルに、ティターニアは淡々と返した。
『私の名前をご存じですね?』
「……『ティターニア』」
『何かおっしゃることは?』
「……そりゃ|夏の夜の夢《コイバナ》大好きよねえ……」

 はあ、と大きく息をつき、もう一度深呼吸をしてから、アリエルは改めてアマランスに向き直った。

「……こうしてまた貴女と対角に立って戦える、それだけで私は十分よ」
『あ、そこからもう一回続けるんですね……』
「そこうるさい! さあ、以前とは違う私を貴女にも見せてあげるわ!」

 ビシッと決めたアリエルに、アマランスは少し困ったような表情を浮かべ、呟くのだった。

「……ええと。あまり変わらない楽しい人に見えるわ……あ、褒め言葉よ、褒め言葉」
「…………うう、嬉しいけどそれは私の欲しい言葉じゃない―! もう、行くわよ!」
 なんか半分自棄になったように見えつつも、アリエルは全身に魔力を漲らせ、その力を開放する!

 煌めく閃光が迸り、星屑の舞のようにアマランスに降り注いだ。美の中に滅びを内包するその魔力の弾幕を、しかし優雅に華麗に靡かせた羅紗の一颯でアマランスは捌ききる。あたかも一幅の絵画、あたかも女神の立像、はるけき彼方から星々の奏でるシンフォニーが聴こえてくるような、それは典雅にして芸術的な挙措。
「ああもう、やっぱりきれいね……! だからこそ!」
 アリエルはアマランスの一挙手一投足、細い指の先までも洗練された動きに視線と魂を奪われつつ、なおも黄金に輝く闘志を燃やす。それは憧憬を糧とし尊崇を燃料として激しく高ぶる至純なる思慕だ!

「そう、だからこそ! 憧れているからこそ、私は貴女を超えたい!!」

 アリエルの繊手が翻るところ、さしものアマランスの深い瞳が瞠目に見開かれた。
 ありうることか、そこには。
 宙空に燃え上がる神秘の焔によって形作られた、知られざる禁断の知識の深奥を記述する輝ける文字列が浮かび上がっていたのだ。

「……羅紗魔術!?」

 アマランス・フューリーでさえもが絶句する。
「見様見真似だけどね。貴女との戦いや羅紗魔術師たちとの交流のすべてを注ぎ込んだ。これが私の――」
 アリエルは全霊を込め、攻撃を開始する!

「貴女への最大のリスペクトを込めた想いのすべて!!受け取って!!!『ラーニング・ラシャ』!!!」
 
 燃え上がる光文字が世界の法則を書き換えてアマランスへと降り注ぐ! 感に堪えぬようにアマランスは瞳を閉じて一瞬立ち尽くし――。

「独力でそこまで。さすがねアリエル。ならば私も全力で応えましょう。『記憶の海の攪拌』――!!」

 時が軋み悲鳴を上げた。アリエルにもわかっている、記憶の扉が開かれ、あり得ざるものが呼びされようとしているのだと。
 だが……それを。羅紗の魔術文字を防御した、時の壁の向こうから現れたものを。
 その姿を見て、今度はアリエルが言葉を失う番だった。

「……私……!?」

 然り。
 アマランスの傍らに立つ、呼び出されたものは。
 他の誰でもない、アリエル自身の姿だったのだ。

「先ほどまで、私の記憶の中で最も強いものはフェリーチェだった。けれど、たった今、変わったわ。――私の記憶の中でもっとも恐るべき存在は。……貴女よ、アリエル」

 呆然とし、そしてその次に。
 ……アリエルの瞳に尊く光るものがあった。

「……それが。……私が一番欲しかった言葉かも……しれない」

 けれど込み上げる感情に流されている時間はない。召喚された「アリエルの記憶」は全力で魔法を撃ち放とうとしている。アリエルは自分自身だからこそわかるのだ、その威力の絶大さを。
 けれど。アリエルは瞳をぐいとぬぐうと、莞爾と微笑む。

「……でも。その私は一秒前までの私。私は超えるわ、あなたも、そして私自身も!『M.I.S.T.転送』っ!!!!」

 アリエルは止まらぬ、その進歩は、前進は久遠に続く、彼女が彼女である限り!
 呼号に応じ現れ出でしものは鋼の分身、魔術機械式戦闘補助ユニット、MIST! それはアマランスの知らなかったアリエルの力、一瞬前よりも強いアリエルの魂だ!
 輝く光そのものとなり、まっしぐらに突き進んだアリエルは、『記憶』をMISTに拘束させるとそのままアマランスに叩きつけ、今こそ見せる、溢れる想いを。

「『|聖十字の光《グランドクロス》』-ッ!!!!」

 縦の一撃に敬意をこめて。
 横の一閃に超えていく想いを伝えて。
 眩い光で伝える十字に刻まれたメッセージ。
 聖十字の輝きの中で、アリエルとアマランスの魂は確かに触れ合っていったのだった……。

「――素晴らしい戦いだったわ。忘れない、アリエル」
 夕日の紅い輝きに染まりながら微笑みを浮かべるアマランスに、アリエルもぎこちなく頷く。
「そ、そうね、それで、その、もしあなたさえよければなんだけど……」
「もちろんいつだって模擬戦の申し込みは受けるわ。いつでも言ってね」
「………ええ」

 にこやかに手を振りながら去っていくアマランスと魔術師たち。その後ろ姿を何となくしょぼんとしながら見送るアリエルに、傍らのティターニアはぼそっと漏らす。
『せっかくチケット用意した映画誘えなかったじゃないですか。ヘタレ』
「うるさーい! 敬愛!!!」
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

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