シナリオ

⚡裏切者たちの決起

#√ウォーゾーン #オーラム逆侵攻

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⚡️大規模シナリオ『オーラム逆侵攻』

これは大規模シナリオです。1章では、ページ右上の 一言雑談で作戦を相談しよう!
現在の戦況はこちらのページをチェック!
(毎日16時更新)


「――注目」

 震えていないだろうか、とそう思いながら、女性は声を張った。

「臨時隊長となったナガセです。略式ながら君たちの昇進を宣言します」

 空間は薄暗く、狭い。戦闘機械群からの監視を逃れるため、人類側のスパイたちで密かに作り上げた地下基地なのだ。
 ナガセはその場にいる一人一人の顔を見ながら、言葉を続ける。

「レリギオス・オーラムの統率官、ゼーロットは、√EDENの侵攻計画を立てています。目的は、王劍『アンサラー』の奪取ですが、その所在地を誰も知らないので、奴は虱潰しに探すつもりです。……大きな人的被害が、予想されます。
 私たちは、これを阻止する必要があります。他の√からも、√能力者たちが“逆侵攻”をすることを決意してくれました。
 私たちは、これを手助けする必要があります」

 その方法は何か。

「重要ターゲットへ向かい、私たちが有する最大効率による打撃を与えることで、敵勢の足止めや遅延を図るのです。
 君たちの中には、身体の中に……」

 彼女が何度も頭の中で練習した内容だったが、先ほどからずっと喉の奥にしこりがあるような感覚があった。
 だが、何とか言葉を絞り出していく。

「ば、爆弾、を、埋め込んで、ずっと隠してきた人もいると思います。それを、使うときが来たのです。使わなければ、きっとそれが最善なのでしょう。ですが……」

 爆弾の一部だけならともかく、全部を使わざるをえなくなったら、それは何を意味するか。
 何度か深呼吸をし、彼女は最後の言葉を続けた。

「ですが、失敗は、許されません。
 ……覚悟の戦士よ。待ち焦がれた反攻の時です。人類の礎となるため……、奮闘しなさい……」

 言い終えると、お盆に乗せていた昇進祝いを一人一人に手渡していく。
 それは廃材で出来た勲章と、ただの缶ジュースだった。


「……こんなものしか用意できなくて……、ごめんなさい」

 士気の事を考えれば、こう言ったことは言うべきではない。
 それは解っていたが、ナガセは言葉は止められなかった。

「ごめんなさい……、情けない大人で。
 最後の時を――、……“人類の夜明け”を、ここにいる皆で祝ってください。
 皆が狙うべき重要ターゲットは、|追って知らせます《﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅﹅》……」

 そう言って、彼女は会室から背を向けると、別室へと引き返していった。

マスターより

シミレ
 シミレと申します。
 今回のシナリオは、⚡️大規模シナリオ『オーラム逆侵攻』の一つで、「裏切者」側のシナリオです。
 ・一言雑談で相談して、第2章以降の作戦目的を決めてください。
 ・スパイや幽閉キャラの方が参加しやすいですが、理由をこじつければ普通のキャラもOKです。
 その他の詳しいルールはこちらをご確認ください。
 (https://tw8.t-walker.jp/html/library/event/005/005_setumei.htm)

●目的
 ・(裏切者たちが狙う重要ターゲットは、皆さんの相談で決まります)

●説明
 ・戦闘機械群の派閥の一つ『レリギオス・オーラム』の統率官『ゼーロット』が、√EDEN侵攻を企ています。
 ・しかし幸いにも、戦闘機械群に侵入した二重スパイの妨害もあり、敵は未だ軍備を整えていない様子です。
 ・√ウォーゾーンのの川崎市・川崎臨海部周辺に広がる、レリギオス・オーラムの支配地域を√能力者たちが逆に急襲し、ゼーロットの軍備を先制攻撃で破壊するようです。
 ・なので、レリギオス・オーラムに潜伏していた「裏切者」たちも、呼応して動き始めました。
 ・『オーラム逆侵攻』のはじまりです!
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第1章 日常 『昇進祝い』


POW 昇進者への祝いとして、食事や歌などを披露する。または、昇進者としてそれらを受け入れる。
SPD 昇進の由来となった戦果や出来事を尋ねる or 語る。
WIZ 上がった階級で何をするかを尋ねる or スピーチする。
√ウォーゾーン 普通5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 その後、空間に残るものは先ほどと変わらなかった。
 暗く、狭く、湿った部屋に、小さなテーブル。
 そして、勲章とジュースを渡された者たち。
 それだけだった。
サビーネ・シュトローム
※口数は少ないですが、仲間思いです。

【選択 作戦3】

ついに、私達の反撃が始まるのね。奴らに人間を舐めた事を後悔させてやりましょう。

私の家は自動車の修理工場だったの。父さんから技術を学んで、いつか父さんを越えるくらいの腕を持つのが夢だった。
...機械どもが私の住んでいた町ごと、家族を奪ったせいでめちゃくちゃになったけどね。
私を拾ってくれた隊長も行方不明なんだけど、もしかしたら、√EDENで生きているかもしれない。だから、私は機械どもを√EDENに行かせないために、奴らの補給路であり、侵入路を絶ちたいの。工兵としての知識と技師、そして...自分自身さえもつぎ込んで...。これが、私の覚悟よ。


 これから瞬く間に状況が動き出し、自分たちの運命が決まる。それが明白だからこそ、会室の中の空気は緊張したものだった。

「――ついに、私達の反撃が始まるのね」

 部屋にいる誰もが声の主である少女の方を向き、頷きをもって応じる。彼らの表情は決意や意気だけでなく、一部には微かな驚きも混じっていた。彼女がこうして自分から話し始めるのを、初めて目の当たりにした者もいたのかもしれない。

「シュトローム」

 少女を知る者の一人が、彼女の姓を呼んだ。


 サビーネは手に持っていた缶ジュースと勲章から顔を上げ、その場にいる者たちを見た。そこにいるのは自分と同じようなスパイや、外部協力者たちだった。

「奴らに、人間を舐めた事を後悔させてやりましょう」

 普段から口数が少ないことを自覚していたが、言葉は自然と出てきた。
 シュトローム……。
 姓も聞けば、自然と、己が愛用する工具へ手が触れていた。

「私の家は自動車の修理工場だったの。父さんから技術を学んで、いつか父さんを越えるくらいの腕を持つのが夢だった」
「…………」

 誰もが、静かに己の話を聞いてくれている。

「……機械どもが私の住んでいた町ごと、家族を奪ったせいでめちゃくちゃになったけどね」

 雌伏の時を経て決起を決意したのならば、“これから”だけでなく“これまで”もが、自分たちの中で力を持つことを知っているからだ。

「……それからは、どうしてたの?」

 すると、一人が問うてきた。
 辛い過去を経験した者が珍しくないこの√だからこそ、今まで生き残っていられたとすれば、それはとても限られた幸運だという事を、多くの者は知っているのだ。

「私を拾ってくれた隊長がいたの。彼女も行方不明なんだけど、もしかしたら、√EDENで生きているかもしれない」

 だから、と言葉を一旦句切り、手を握りしめる。

「私は機械どもを√EDENに行かせないために、奴らの補給路であり、侵入路を絶ちたいの」
「……となると、大黒ジャンクションが重要だな。あそこは√EDENと繋がっている」

 別の一人の言葉に、視線をもって返答とする。もし、そこが重要ターゲットとなるのならば、この作戦は自分にとって大きな意味を持つ。

「工兵としての知識と技術、そして……自分自身さえもつぎ込んで」

 破壊工作用爆薬。工兵として、工具と同様にその扱い方は熟知している。

「……これが、私の覚悟よ」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

シニストラ・デクストラ
【心境】
「ついにこの日が来たのです。ついにみんなの敵討ちなのです。」
『この日が来ちゃった。無理して死んだらだめですよ。』

【行動】
作戦:3

二人で決起作戦の最終チェックをしてます。
シニストラが破壊工作に用いる爆弾やドローン兵器の動作確認。
デクストラは地図や前もって集めていた作戦ポイントの地形などの情報確認を行いつつ、互いが生きて帰ることを誓い合います。
「デクストラお姉ちゃんはどんくさいのでアタシを見失いようについてくるの。」
『シニストラお姉さまは落ち着きがないので気を付けてほしいのです。』
「『絶対に生きて奴らにぎゃふんと言わせて帰ってくるの』」

故郷と家族を奪った戦闘機械群に鉄槌を…ッ!!


 会室の中、二人の少女は真剣な面持ちでいる。髪色や肌、瞳の色は違っていても、彼女たちが双子だという事は一目瞭然だった。
 シニストラとデクストラ、二人の人間爆弾だった。


 シニストラは思う。ついにこの日が来たのです、と。
 デクストラは思う。この日が来ちゃった、と。
 シニストラはこうも思う。ついにみんなの敵討ちなのです、と。
 デクストラはこうも思う。無理して死んだらだめですよ、と。
 見た目と同じく、性格や内面も違う二人だったが、互いに視線を向け、頷き合う。

「頑張りましょう、お姉ちゃん」
「頑張るの、お姉さま」

 戦闘機械群に故郷を滅ぼされ、復讐を決意した二人は、スパイとなってからずっとこの日のために準備をし続けていたのだ。それぞれの荷物の前で、作戦の最終チェックを行っていった。

「重要ターゲットは五つなの」
「羽田、川崎市内、大黒ジャンクション、扇島地下、三ツ池公園……」

 シニストラの声にデクストラはマップを広げ、事前に集めていた地形の確認を行う。

「どこも敵は多いですけど、羽田と三ツ池公園はカテドラルが築かれているから、特に大変なのです……」
「どっちも派手に爆破しがいがあるってことなの」

 一方、シニストラの前には様々な武器や兵器が広がっている。それは拳銃や起爆スイッチなど基本的なものもあれば、

「大黒ジャンクションと市内は開けた地形で、扇島地下は監獄だから逆に狭くて入り組んでいて……。どっちもこれが使えそうなの」
『――――』


 無人兵器といった特殊な武装も用意してある。
 野球ボールほどの大きさのそれは、BALLSという球体型の無人兵器で、破壊工作の補助から戦闘までこなすものだった。
 シニストラは拳銃とその銃弾、BALLS、どれも異常が無いかを確認し、デクストラはマップと通信装置を見比べながら、直前まで情報を更新している。
 お互いは自分の荷物から目を離さず、どちらからともなく言葉を発する。

「デクストラお姉ちゃんはどんくさいので、アタシを見失いようについてくるの」
「シニストラお姉さまは落ち着きがないので、気を付けてほしいのです」

 そう言って、互いにちらりと顔を見合わせると、同時に口を開いた。


「絶対に生きて奴らにぎゃふんと言わせて帰ってくるの」

 二人は、同じ表情で、同じ言葉を、互いに伝え合う。
 誓い合うのだ。

「故郷と家族を奪った戦闘機械群に、鉄槌を……ッ!!」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

キエティスム・トゥエルブ
※アドリブ・連携歓迎です
【作戦3】

暗号化された救難信号を追ってきてよかった。
援軍として来た以上、なるべく彼らに生き残ってもらえるように死力を尽くさなければ。

ふと、昇進の喜ばしいエピソードが聞こえてくる。
彼らの中には人間爆弾と呼ばれる人もいる。どれほどの覚悟で彼らは改造を受け入れたのか。
私もサイボーグの改造は受けましたが、【欠落】によるものか術前の記憶がない。以前の私は何を思ったのか。

彼らと同じで人類の夜明けを求めたのだろうか。

感傷に浸るのは今じゃない、後の作戦を考えなければ。

懸念は大黒ジャンクション、√EDEN侵攻の橋頭保にも、今回の戦いの補給線にもなりうる彼の地。ここが一番の障害でしょうね。


 会室の中の多くは、戦闘機械群に潜入していたスパイだったが、それ以外の者もいた。彼らに協力し、この昇進会を兼ねたブリーフィングに参加した者たちだった。

「…………」

 その中に、長い黒髪の男がいた。
 キエティスムだった。


 暗号化された通信を追って来たキエティスムは、スパイたちの昇進会を離れた位置から眺めていた。
 ……援軍として来た以上、なるべく彼らに生き残ってもらえるように死力を尽くさなければ。
 死地に向かうことは、彼らも解っているのだろう。だが、彼らの気配は萎縮しておらず、昇進の喜びを語り合っている。

「オレはこの日を待ち望んでいた」
「アタシもッス!」

 それに耳を傾ければ、彼らの過去や背景、決意などの内容が聞こえてくるが、中にはやはり、人間爆弾と呼ばれる、肉体の中に爆弾を埋め込んだ者たちもいるようだった。
 作戦参加を意味する昇進に沸き立つ彼らを見て、思う。どれほどの覚悟で彼らは改造を受け入れたのだろうか、と。
 否、彼らの中には当然、覚悟や意気込みを語っている者もいる。

「――人類の夜明けだ!」

 そう語る彼らの言葉に、嘘は無いだろう。己が疑問しているとしたら、それは結局、己のことだった。

「…………」

 右腕に、視線を落とす。自分自身も、彼らと同じく肉体改造を受けている。彼らは人間爆弾で、自分は義体サイボーグだ。しかし“欠落”によるものか、術前の記憶が己には無い。
 ……以前の私は、何を思ったのだろうか。
 “人類の夜明け”と、彼らはそう言った。ならば過去の自分も、彼らと同じことを求めていたたのだろうか。


「――――」

 そこまで考えて、キエティスムは目を閉じて首を振り、思考を切り替えた。感傷に浸るのは今じゃない、と。
 考えるべきは、今後の作戦だ。瞼を開き、壁に貼られている地図へ視線を向ける。
 羽田空港、川崎市内、大黒ジャンクション、扇島地下、三ツ池公園。有力候補には既にチェックが為されている。
 個人的に懸念しているのは、その中でも大黒ジャンクションだった。√EDENと繋がるそこは今回の侵攻の橋頭保にも、補給線にもなりうるのだ。
 ここが一番の障害でしょうね、と思っていると、別室の扉が開いた。

「皆さんが向かう“重要ターゲット”が、決まりました……!」

 笑みを浮かべて、臨時隊長の言葉を待つ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『リサイクルソルジャー『ガーベッジ』』


POW ガンファイア
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【ライトマシンガン】で300回攻撃する。
SPD ダーキッシュエクスプロージョン
【火炎】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【どす黒い爆発】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【黒い炎】による戦闘力強化を与える。
WIZ バーストカーニバル
X基の【十六連装ミサイルポッド】を召喚し一斉発射する。命中率と機動力がX分の1になるが、対象1体にXの3倍ダメージを与える。
イラスト 滄。
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​


「“重要ターゲット”は、大黒ジャンクションです!」

 臨時隊長のその言葉が、昇進会の終わりだった。
 全員はすぐに準備を進め、現場である大黒ジャンクションへと向かって行った。


 決起したスパイたちの視界の先で、曲線が複雑に絡み合う、立体交差のジャンクションが見えてきた。
 大黒ジャンクションだ。もうしばらくもすれば、そこへたどり着くはずだったが、それはどうやら、敵も同じなようだった。

「……!」

 それは、人間の身体と機械のスクラップが混ぜ合わさったような、異様な歩兵だった。
 歩兵団も、大黒ジャンクションを目指して進軍中なのは、誰の目にも明らかだった。。


「ハ! √EDENに攻めるならば、こいつらが最適だ。人類はこういった姿に嫌悪感があり、士気が下がるのだからな」

 羽田に築かれたカテドラル内部で、ゼーロットは現地の映像を見ていた。

「リサイクルソルジャー、ガーベッジよ」

 言う。

「戦場に落ちている敵味方は関係なく、“ゴミ”だ。拾って再利用せよ。
 倒されたって構わない、また“ゴミ”とお前らを回収して、適当に修理して動かせば良い。
 ――質より量なのだ、戦いは!」


 √EDENへ通じる大黒ジャンクションを利用し、戦闘機械群はガーベッジの大規模侵攻を目論んでいる。
 この大規模侵攻を阻止するため、決起したスパイ、そしてそれを支援する外部協力者たちは、大黒ジャンクションへ向けて移動中のガーベッジの大群を横合いから急襲し、戦闘に持ち込む必要があった。
サビーネ・シュトローム
※口数は少ないですが、仲間思いです。

大黒ジャンクションは目前ね。...まずは、この悪趣味な人形どもを倒して、口火を切りましょうか。

忍び足でなるべく敵に気付かれないように注意しながら、進軍ルートにある廃墟などに爆薬を仕掛けます。建物の構造上、爆破すれば相手側に倒れる部分に最小限仕掛けて倒壊させます。(工兵としての経験があれば、多分思いつくと思います)爆破する時は、味方にハンドサインで注意を促し、巻き込まないようにします。後は、巻きあがる粉塵を煙幕代わりにして、移動ながら遮蔽の陰からマルチツールガンで相手の動力部を撃ち抜いて倒します。

√EDENには行かせないわよ、ポンコツども。

アドリブ、連携 ○


「大黒ジャンクションは目前ね」

 だけど、サビーネの言葉は続いた。

「……まずは、あの悪趣味な人形どもを倒して、口火を切りましょうか」
「――!」

 ジャンクションへ向かう大量のガーベッジを見て、決起したスパイたちは息を呑んだ。
 ガーベッジの数、威容、装備、そして√EDENへ進軍していること。誰もが、敵の危険性を理解していたのだ。


 サビーネは思う。√能力の事だ。隠れ潜んでいた地下勢力である自分達の中には、√能力者ではない者もいる。
 私もその一人ね……。
 一方、敵は違う。インビジブルというものを目視・使役し、万能の力である√能力を使えるのだ。戦闘機械群によって製造されたあのガーベッジも、そうなのだろう。
 だが、そんなことは自分も、他の皆も、覚悟の上だ。

「皆、聞いて。――作戦があるの」


 サビーネは一人、他の者たちと離れて行動していた。足音を殺し、ジャンクション周囲の路地を進んでいっている。
 戦闘機械群に支配された街中で、しかも今は、ガーベッジの大群が近くで進軍中している。当然、先ほど隊の皆に作戦を伝えたときも、反応は予想通りだった。

「危険すぎる」

 一人の言った言葉に、幾人もの頷きが返って来た。数といい√能力といい、こちらが圧倒的に不利なのだ。

「だから、私がやるわ」

 ガーベッジの進軍経路に先んじて爆弾を設置し、起爆させる。その作戦は工兵である自分が適任であるのは間違いなく、仲間を危険にさらしたくはなかった。

「…………」

 額の汗を拭う。たった今、ガーベッジの進軍ルートにあるビルに、爆弾を設置し終えたのだ。
 建物の荷重がかかる箇所を見極め、最小限の爆弾しか設置していない。
 本命は、大黒ジャンクションよ……。
 ここで大量に爆弾を使用すれば、そちらで立ち行かなくなる。かといって、もし爆弾に不足や設置の誤りがあれば、ガーベッジへ打撃を与えられず、ジャンクションまで到達できなくなるだろう。

「――――」

 だが、自分には工兵としての知識と経験がある。離れた位置で待機していた隊の皆に、ハンドサインで設置の完了と、

「――――」

 爆破の予告を知らせる。


「!!」

 重く、厚さを持ち、しかしくぐもった破裂音を聞いたガーベッジらは、すぐに複数の事を理解した。
 一つは、破裂音は爆薬が爆発した音であり、すぐ近くのビルの内部から聞こえたこと。
 そしてもう一つは、その音は一度で終わらず、時間差で連続したことだった。
 それらで何が引き起こされるかは、すぐに明らかとなった。

「……!」

 ビルが傾き、こちらの頭上に影を差し掛けてくるのだ。
 止まらない。
 進軍のために縦に伸びてた部隊を分断するように、大質量が一気に倒壊してきた。


 ビルの倒壊は、大気と地面を震わせるほどの轟音だった。だが、サビーネも隊員も、臆さずに物陰から身体を出すと、

「撃て……!」

 粉塵舞い上がる現場に向け、手に持っていた武器で攻撃していった。
 マルチツールガン「ワイルドカード」。工兵としての己が武器は今、その名の通り役割を変え、銃撃を可能としている。

「ガ……!」

 灰色の帳の向こう側に見えるのは、紫色に光るガーベッジの動力部と、そこを撃ち抜かれて倒れる敵の影だ。
 突然の襲撃に混乱している敵だが、中には態勢を整え始めた者たちもいる。

「オ、ォ……!」

 こちらの銃声を頼りに、粉塵の中から反撃が飛んできた。黒く燃え盛り、着弾すると爆発する弾丸は√能力だが、その狙いはやはり甘い。

「足を止めないで!」

 倒壊による粉塵を煙幕とし、その周囲を動き続けることで、敵に狙いを定めさせないのだ。
 次の遮蔽物へ飛び込み、再び武器を構える。

「――√EDENには行かせないわよ、ポンコツども」

 放つ。再び粉塵の向こう側で動力部が砕け、敵が散っていく。
 ガーベッジへの奇襲作戦が、順調に進んでいっている証だった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

シニストラ・デクストラ
【心境】
「ゴミだってお姉ちゃん。」
『ゴミなどっちてかんじですよねお姉さま。』
ゴミならちゃんと仕分けないとね。

【行動】
「味方もゴミと割り切る指揮官で助かったの。」
スパイとして潜り込んでたのは伊達ではないの。起爆スイッチを押して、破壊工作の一環として、あらかじめ機械群の物資に仕込んでた爆弾を爆破。『BALLS』をドローン操縦で潜り込ませ、持ってた爆弾を落として追い爆破なの。
『質より量なのはいいですけど、練度がない兵士は隙が多いですよ。』
同時に小型タブレットを使ってハッキングを行いサイバー側からの攪乱も行います。
アシストのAIピアチェーレにも手伝ってもらいます。
これも破壊工作の一種ですよ。
キエティスム・トゥエルブ
※連携・アドリブ歓迎です
向こうもこちらの意図に気づいたようですね
それにしてもなんという数の多さ、うらやまごほん、厄介です

この物量差ではまともにぶつかれば敗北は必至
この数的有利を作ったゼーロットを称賛したいですが、数の有利を効率的に生かすのは指揮官の能力。
数が多いからこそ生まれる不利益を思い知ってもらいましょう

スレルス車両を【運転】しながら敵に【レーザー射撃】やドローンで攻撃、ある程度の敵を引き付けて本隊から分断
これを何度か繰り返し、分断できた敵を上手く誘導して同士討ちしてもらいましょう

見るからに敵の知性は少なそうなので上手く行きそうです
相手が優秀な指揮官であれば通じませんが、どうでしょうね?


 大黒ジャンクションへと向かうガーベッジたちは、統率官からの通信を聞いていた。

『さあ、大黒ジャンクションへ向かえ、“ゴミ”共よ!』
「ウ……」

 それは命令だった。なので自分たちは疑うことなくそれを実行していった。隊列を乱さず、前進していく。

「――――」

 その道すがら、補給部隊の車列が合流してくるのが見えた。機械と肉体の混合兵である自分たちの補修パーツや燃料、弾薬、そして√EDENで収奪する際の運搬車だった。
 今回の√EDEN侵攻に向けて、以前から準備は進められており、この合流も“それ”だ。すべてが順調に進行している証拠だった。
 直後。運搬車が一斉に爆発した。


 大気を震わせるほどの大音と衝撃波によって、多くのガーベッジたちが吹き飛ばされていくのを、シニストラとデクストラは建物の屋上から見ていた。

「ゴミだって、お姉ちゃん」
「ゴミなのどっちてかんじですよね、お姉さま」

 今、二人の視界の先では、黒煙立ち昇るトラックと突然の爆発で混乱しているガーベッジたちが見えていた。

「味方もゴミと割り切る指揮官で助かったの」

 自分も含め、スパイとして戦闘機械群へ潜り込んでいたのは伊達ではないのだ。今の爆発は、人類側のスパイが事前工作として物資へ紛れ込ませた爆弾によるものだった。
 想定通り、作戦を開始していく。シニストラは持っていた起爆スイッチを捨て、即座にBALLSを起動させた。

『!』

 無人兵器群が一斉に飛び立ち、屋上から空、そしてガーベッジたちの元へ一気に飛翔していった。
 混乱の最中である現場で、矢のように一直線に接近してくるBALLSに気付いた者は、少ない。幾人かのガーベッジが声を挙げ、迎撃射撃を行おうとしていたが、その時にはもう、BALLSは持っていた爆弾を彼らの頭上から投下している。

「オ、ォ……!」

 爆発する。
 赤と黒の花が咲き、ガーベッジたちを爆炎が包んでいった。


 運搬車の爆発、無人兵器による爆撃、ガーベッジたちは度重なる爆発によって分断されていた。

『物資に爆弾!? ……人類側の抵抗勢力だ! 迎撃しろ! 殺せ!』

 ヒステリックな統率官の声に従い、生き残った者たちは行動していく。爆風に乗って離脱していくボール型の無人器群を撃ち落とさんと、持っていたライトマシンガンを放つが、風に乗った相手は速く、何より小さい。
 サイズにして野球ボールサイズのそれらは空中で散開し、四方へ散っていく。誰もが顔を上げ、首を振り、視覚素子でその姿を追う。
 だから、反応が遅れてしまった。

「!?」

 視界の端に閃光が瞬いたと、そう思った次の瞬間。アスファルトの上を光柱が突っ走った。
 レーザー光線だった。


 レーザーによって貫かれたガーベッジが、動力部の過負荷によって爆散する。キエティスムはその光景を最後まで見届けることなく、すぐにその場から離れることを選んだ。

「ああ、やはり。向こうもこちらに気付いたようですね」
「オオ……!」

 ガーベッジたちは射撃位置を閃光から導き出し、即座に応射してきた。が、その時にはもう、自分はそこにはいない。
 光学迷彩が搭載されたステルス車両によって、姿を隠しながら高速で移動しているからだ。アクセルを踏み込み、ハンドルを切りながら、思う。
 なんという数の多さでしょうか……。
 道路を埋め尽くすほどの大軍勢ともなれば、射撃時の閃光を誰かが認め、すぐに連携した反撃を見せてくる。そんな大規模の軍隊が、ここだけでなく、周囲から大黒ジャンクションへ向かっているのだ。今も、先ほどとは別のガーベッジ部隊をジャンクション周囲で発見し、射撃を与えたところだった。すぐに離脱しつつ、敵勢を本隊から分離させていく。

「うらやま――、ごほん、厄介ですね」

 一方、自分達人類側は寡兵だ。√能力者ではない者もいる。物量差は歴然で、正面からぶつかれば敗北は必至。そのように数的優位を作ったゼーロットを称賛したい気持ちもあるが、

『質より量なのはいいですけど、練度がない兵士は隙が多いですよ』
「ええ、ええ。おっしゃる通りです。お嬢さん」

 通信から聞こえた少女、デクストラの声に同意する。数が多いからこそ生まれる不利益というものもあるのだ。

「不利を抑え、有利を効率的に生かすのは、指揮官の能力です」

 果たして、それを確かめに行く。


「どうなっている……!」

 羽田空港に築いたカテドラル内部にて、ゼーロットは大黒ジャンクション周囲の現状を把握していた。
 爆撃とレーザー射撃。どちらも連携し、現地部隊の混乱と動揺を加速させている。
 それは今も続いているのだ。車両を警戒すれば小型無人兵器が爆撃を再開し、空に意識を向ければ、どこからともなくレーザー射撃やドローンが攻撃を加えてくる。

「屋内に退避しろ!」

 敵が空と道路を縦横に行くのだとしたら、それが叶わない場所に籠ればいい。出入り口が少なく、敵の攻撃を予測しやすい建物を瞬時にピックアップ。現地指揮官へ送信する。
 した。
 だが、

《ERROR: Failed to send message.》
「な――」

 画面に表示された文字列を見て、ゼーロットの意識は一瞬フリーズした。
 メッセージの送信失敗。
 そのエラーが意味することは何か。
 既にアジャストをかけて持ち直した思考は、原因を突き止めている。

「ガーベッジ側のネットが、現地でハッキングされている! カテドラル側からもすぐに制御を取り戻せ!」

 現地ネットワークに介入され、外部からの通信が遮断されているのだ。


「――ハッキングに成功しました」

 シニストラの横で、デクストラは小型タブレットを操作しながら報告した。
 BALLSの爆撃とステルス車両による攪乱、それらに対処するために、敵は必ず広域通信を用いた連携を行うことは予想がついていた。だから、それを遮断した。
 練度が低い兵士は、ただでさえ隙が多い。通信を盗み見て、ガーベッジらが有するネットワークに足を踏み入れるのは、簡単だった。そうしてポートを開かせ、こちらからのアクセスを許すよう仕向ける。後は、こちらで通信のリクエストを占有すればいい。極端に遅いリクエストを送り続ければサーバーの接続枠はすぐに埋まり、カテドラルからの通信は入り込む隙間さえなくなる。
 タブレットにインストールされているアシストAI、ピアチェーレと共に準備を進めていた作業が、実を結んだ瞬間だった。

「これも破壊工作の一種ですよ」
『ああ、おかげでだいぶ動きやすくなった』

 通信から、キエティスムの声が聞こえた。

『私も協力しよう』


 大黒ジャンクション周囲を駆け回っていたキエティスムは、ガーベッジらの動きが目に見えて低下したのを実感していた。

「!」

 レーザーやドローンで攻撃しても、先ほどまであったような反撃すら覚束なくなっているのだ。こちらの居場所を把握できず、敵はただ狩られるだけだった。
 BALLSによる爆撃、ステルス車両による攪乱と分断、ハッキングによる孤立工作。数の有利が喪失し、不利面だけが露出していることに気付いたゼーロットはどうするだろうか。

「周辺から部隊を向かわせ、外部から包囲。中に残っているガーベッジたちは……」
「ウウ……!!」

 吼えたガーベッジらが、新たな兵器を取り出したのだ。それはミサイルポッドで、十六連のハッチが見える。

「自滅覚悟で、周囲一帯を爆撃か」

 そうすれば、ハッカーやステルス車両という隠れている存在に対し、一気に打撃を与えられる。もし生き残ったとしても、瓦礫で埋め尽くされた戦場は外部から包囲されているのだ。人海戦術で探し出せる。

「そして、残骸となったガーベッジらを瓦礫から拾い上げ、また再利用。減った数も、ある程度は取り戻せる」

 ミサイルポッドの設置を終えたガーベッジは、まるで拳銃の抜き打ちのように、即座にミサイルを発射した。精密さを重要視していないことは、明白だった。
 白煙を棚引かせるミサイルを車内の窓から見上げながら、すぐにドローンを差し向け、破壊する。
 全弾撃墜。そのような派手な花火が上がれば、当然、一帯の敵はこちらへ注目する。

「通信が途絶したから、あまり動いてないのですね」

 あちこちから噴煙が起こり、ミサイルがここを目指してやって来るのが見える。今回は迎撃など考えず、即座に車両を反転させ、ミサイルが振るままに任せる。

「!!」

 ミサイルが多重に着弾した爆発音と、残っていたガーベッジらが爆散する音を背後に置き去りにして、車両を走らせる。先ほど一斉に上がった噴煙を見るに、発射地点は、自分が攪乱して分断した小部隊の位置だった。
 再び、噴煙が上がる。同じ地点に二度爆撃することで効果を狙う、ダブルタップという戦術だ。

「利用できそうですね」

 すかさず、噴煙群の中の一部をドローンで撃ち落とし、またもや花火を作り出せば、やはり先ほどと同じ結果となる。

「でも、そこに私はいませんよ?」

 敵はそれを知ることが出来ない。通信が途絶され、再利用を繰り返された彼らは複雑な思考も出来ないのだ。三度立ち上がったミサイル群は、やはり予想通り、今爆破された周囲を狙って集中落下していく。そこに取り残されていたガーベッジ部隊はもう散っているだろう。

「優秀な指揮官であれば、通じない作戦ですが……」

 ゼーロットが通信を奪取するまで、この同士討ち作戦は有効に違いなかった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

兎玉・天(サポート)
「ニンゲンちゃんの平和を脅かす存在は許さないヨ⭐︎ピョッピョーン⭐︎不思議道具〜⭐︎」
「これイイネ⭐︎持ち帰ってうさてん堂に並べよっト⭐︎」
いわゆる人のフリしたニンゲンちゃん大好き明るい人外ちゃん。
ヘンテコ雑貨屋を営んでるので何かと理由をつけて持ち帰ります。 
後日お店に並べるので何か1つでも持って帰るか、新しい不思議道具を出して貰えると嬉しいです。

適当なあだ名をつけて○○ちゃんと呼びカタカナ混じりの喋り方です。
たまにちょっと常識とズレた行動をとります。でも他の√能力者の嫌がるコトは自ら進んではしません。好奇心の塊で楽しそうな事大好きです。人を守ることに協力的です。
自由にアドリブ連携大歓迎です。


 √EDEN侵攻を目論み、大国ジャンクションへ集結しようとしていたガーベッジ達は、予想外の方向から声を聞いた。

「ヤッホー☆」
「!?」

 それは海からだった。ジャンクションがある埠頭を囲む海面に、奇妙な小舟があった。ボートは木製で、帆の代わりに和傘と洋傘で風を受けている。航路を調節するため、それら傘を開いたり閉じたりして忙しない女が、こちらに手を振っている。

「ガア……!」

 構わなかった。持っていたライトマシンガンを全員が構え、一斉に引き金を引き絞った。大気を裂く大音が連続し、海面が毛羽立つように荒れていく。
 当然、木製のボートや傘など銃弾が貫き、その後ろにいる女ごと砕いていく。
 そのはずだった。

「~~♪」

 女はまるで、跳ねてくる泥水を防ぐかのように和傘をこちらに向けていただけで、その直後。ボートのすぐ横で海水が爆発的に立ち上がり、飛来した弾丸のすべてを水に包んだ。
 威力を喪失した弾丸は水壁の途中で止まり、その背後にいる傘と船、女、そのどれにも傷を与えられなかった
 光の屈折で歪んだ光景を見せる水壁の向こうで和傘が傾き、女は己の顔と、もう一本の傘である洋傘の閉じた先端をこちらに見せてくる。

「――ピョッピョーン☆」

 刹那。洋傘の先端から力が迸った。


 天は己の攻撃の結果を見ていた。洋傘の先端から破裂するように迸ったのは、大質量の風だった。ボート上から、まるで砲弾のように飛び立っていく。
 風の砲弾は海面を押し広げ、埠頭にある構造物の中、軽量であれば一気に吹き飛ばしていき、ガーベッジらの部隊へ激突する。多くは埠頭のコンクリートから足を浮かせ、そのまま転がるように海へ落ちていった。

「その身体じゃ泳げないヨネ☆ ……でも半分は人間さんだからファイトファイト!」

 “傘舟”。奇妙な舟と傘だった。舟は二振りの傘によってしか進まず、傘は水と風を蓄え、一方は防御に、もう一方は攻撃に転じることが出来る。
 二人しか乗れないほど小さな舟で、思う。

「こんな舟で何したのカナ? “ボニーとクライド”みたいな二人だったりシ――、んン?」

 頭上に影が差したので、見上げる。すると、空にはボートを補足したミサイルの群れがあった。ガーベッジらの反撃で放たれた√能力だった。

「ピョン、ピョン……、そんでピョピョーン☆」

 水弾と突風をミサイルにぶつけて軌道を強引に変えると、そのまま埠頭へ叩きつける。

「ハッハ~☆ ニンゲンちゃんの平和を脅かす存在は許さないヨ☆」
「――!」

 ミサイルの数だけ連続で爆発が引き起こされ、激震が埠頭に走っていった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

第3章 集団戦 『ヤラレイター陸戦型』


POW ヘッドキャノン
【頭部のキャノン砲から火 】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【爆発と炎】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【敵に隙を与えない突撃プログラム】による戦闘力強化を与える。
SPD アームブレード
【腕部のブレードが超高熱 】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【オーバーヒートスラッシュ】」が使用可能になる。
WIZ アームガトリング
【腕部のガトリングガン 】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
イラスト 星月ちよ
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 決起したスパイたちは、大黒ジャンクションへ集結しようとしていたガーベッジらを奇襲し、それを成功させた。√能力を使う戦闘機械群に対し、スパイたちの多くは√能力者ではなかったし、人数もガーベッジの軍団とは比べ物にならなかった。しかし、それをやってのけたのだ。
 勝利の興奮に浸る間も無い。目標である大黒ジャンクションはすぐそこなのだ。すぐに全員が前進を再開しようとした、その時だった。

「――!」

 機械兵器の、重くて厚い駆動音が周囲から近づいてきていた。


「ガーベッジが襲撃を受けた!」

 ゼーロットはカテドラルから急ぎの指令を出していた。

「ヤラレイターを現地へ急行させろ! 近接、中・長距離、全てに対応可能であるし、二足で瓦礫を踏み越えられる!」

 それに、と続いた言葉はしかし嘲りの気配があった。

「戦場の様子を見るに、相手は人類……それも、非√能力者たちが多い! 恐らく地下勢力――」

 と、そこで一拍の間を置いてから、ゼーロットは叫んだ。

「いや、地下勢力どころか人類側のスパイだ! こちらの補給物資に爆弾だと!? やはり侵略計画の遅延をしている者たちがいたのだ! あの白髪眼帯め……!!
 十中八九、奴らは大黒ジャンクションの破壊を狙っている! そのために爆弾や火力を節約するつもりだろうが、ヤラレイターのような機甲兵器を差し向ければ、そうも行かなくなるはずだ!
 半包囲し、人間どもに圧力をかけ続けろ! 奴らのジャンクション破壊を阻止し、こちらがジャンクションに到達すれば……我々の勝ちだ!」


 前進しながら、ヤラレイター部隊は判断を迷わなかった。黄銅色の球体に手足が生えたようなその姿には、様々な兵器が搭載されている。

『事前砲撃開始』

 ガーベッジの反応が途絶えた地点を中心に、砲撃の雨を送るのだ。戦場に人類が存在することを前提とし、可能性が高い地点を狙う。

『……索敵中……』

 砕かれ、散乱した瓦礫を踏み締め、周囲を睥睨しつつ、一部を大黒ジャンクションへ前進させていく。それを押し止めるために人類側がもし姿を現せば、それで最後だ。
 重火力と重装甲で、そのまま圧し潰していく。
和泉・玲香
【ドレッドノート】
※冷静沈着な女性兵士です。

...あの子(サビーネ)からもらったお守りにヒビが入ったから嫌な予感がしていたけど、ヤラレイターに襲われいるなんて...!
助けなければ!

WZに搭乗した状態で現場に急行、味方に当たらないように注意しながらレギオンやミサイルランチャーで攻撃して、敵と味方の間に入って盾になります。
(コールサイン 自分:ナイト、サビーネ:ジョーカー)「こちらナイト。ジョーカー、助けにきたわよ!」
合流後は√能力を使用、ライフルをサビーネに渡し、他の仲間を鼓舞しながらWZの武装で敵を攻撃します。

私の家族(部隊の仲間)を傷つけた報い、きっちり受けてもらうわ...!
サビーネ・シュトローム
【ドレッドノート】
...まさか、ヤラレイターが出てくるなんて。厳しいけど、やるしかないわね。隊長のいる√EDENを守るために...!

遮蔽に隠れながらマルチツールガンとレイン砲台で敵のアイカメラや足の関節部を狙います。足が崩れれば大砲はまともに撃てないと思うので。常に遮蔽間を移動して、狙われないようにします。

(コールサイン 自分:ジョーカー、隊長:ナイト)「こ、こちらジョーカー...。隊長、なんですか...?」
隊長が合流後は、隊長の√能力で手渡されたライフルを使って、ヤラレイターに反撃していきます。

戦友諸君!ここが正念場だ、全力を尽くして明日を切り開くぞ!


 事前砲撃で生まれた瓦礫に身を隠しながら、サビーネは敵を見た。
 ……まさか、ヤラレイターが出てくるなんて。
 遠方よりやってきた球形のボディが、瓦礫を踏み越えてくる。装甲と重武装を搭載した足音は重く、大きい。コンクリートの破片などすぐに砕けて、砂となっていった。

「――――」

 すぐに他の皆へハンドサインを飛ばし、散開を示す。固まれば一網打尽となるほどの火力を敵は有しているのだ。

「でも、やるしかないわよね」

 小さな呟きは、ヤラレイターが街を踏み壊す音に掻き消される。それほど強大な相手であっても、全員の決意は変わらない。戦闘機械群の支配に打撃を与え、√EDENへの進行を阻止するのだ。
 ……隊長のいる√EDENを守るために!
 身に纏う野戦服の肩にあるマーク、道化師のそれを祈るように一度撫で、マルチツールガンを構える。
 行くのだ。


 戦場に隠れていた人類側が、突如として活動し始めた。そのことを、ヤラレイター部隊は身をもって知った。
 各地の遮蔽物から、攻撃が飛来してきたのだ。基本的な小銃弾もあれば、レイン砲台によるレーザー攻撃も混在している。

「――!」

 圧倒的に不利な状況であっても、その攻撃が自棄になったものではないことは、精確な狙いからも解った。
 まず真っ先にアイカメラが砕かれ、視界が奪われた。そして脚部関節も同様に、火力が集中していく。
 視界と脚部にダメージを受けたことで安定性は一気に不確かとなり、瓦礫が散乱する路面に耐えられず、姿勢が崩れる。

『――反撃開始』

 が、最後に視認したと思われる方向に右腕を向け、搭載されたガトリングガンを強引に発射した。
 雷撃にも似た大音が連続し、人間たちが遮蔽物として使っていたコンクリートや鉄板を削り砕いていく。


 サビーネをはじめとしたスパイたちは、遮蔽物から遮蔽物へと駆ける足を止めなかった。

『――反撃開始』
「伏せて!」

 ヤラレイターのガトリングガンはヘッドキャノンと同様、不安定な姿勢で到底制御できるものではない。案の定、射撃をしたところで右腕ごと砲身は暴れ狂い、肝心の狙いは杜撰の一言だった。大口径の弾丸の多くは、見当違いな方向へ飛んでいっている。だが、だからといって自分たちは緩むことは出来ない。

「すぐに他のヤラレイターたちも来る! 動き続けて!」

 カメラと関節を砕かれた自身を戦力外と即座に判断し、援軍を要請するのは想像に難くないからだ。
 見る。

「……!」

 異変を察知した遠方のヤラレイターたちが、続々と集まって来ていた。
 包囲の輪が、狭まっていく。


 戦場でひときわ騒がしい地点を目標として、ヤラレイターの援軍部隊は急ぎ移動していた。人類側からの敵襲を受けたと、通信があったのだ。

『アームブレード展開』

 左腕の刃が超高熱を纏う。さらに機体の移動速度が上昇し、人類側が潜んでいそうな建物目がけ、全速で突進していく。狙いはガトリングガンの弾痕が多く残ってる建物だ。
 重量と高熱によって、そこを切り開き、崩していく。現場が更地となれば、人類側が潜む空間も無くなる。
 そのはずだった。


 直後。上空より飛来したミサイルが、援軍としてやって来たヤラレイターたちへ着弾。
 その爆風と衝撃波で突進は阻害され、多くが行動不能となる。


「…………」

 何が起こったのか、離れた位置から見ていたサビーネはそれを理解していた。
 飛来したのはミサイルだけではない。先ほど自分たちがカメラと脚部を破壊したヤラレイターの元にはレギオンが急行し、それを完全に破壊した。
 そして今、戦場へ新たな影が滑り込んで来ている。
 包囲して来るヤラレイターと自分たちの間へ、盾となるように立ち塞がったその姿は、一機のWZだった。

『――こちら、ナイト』
「……!」

 その声とコールサインを聞いて、己の中で感情があふれ出した。


 ナイト。それは、部隊「ドレッドノート」の隊長を示すコールサインだった。
 名を、和泉・玲香と言う。


「ジョーカー、助けに来たわよ!」

 玲香はWZの中で、声を張った。
 ……嫌な予感はしていたけど、まさかヤラレイターに襲われているなんて……!
 サビーネから貰ったお守りに、ヒビが入ったことに気付き、√EDENから全速力でここへ向かって来たのだ。間に合ったと、そう思いたいが、シグナルは検知できても当のジョーカー、サビーネからの返事が無い。

「ジョーカー?」

 だが、杞憂だった。馴染みの声は、震えた言葉を返してくる。

『こ、こちらジョーカー……。隊長、なんですか……?』
「そうよ。待たせてごめんね。――これを使って!」

 WZのまま彼女の方へ振り返り、持っていたライフルを渡すと、すぐにまた前方へ向き直る。戦いはまだ終わっていないのだ。

「私達で戦局をひっくり返すわよ!」

 前方、追加のヤラレイターたちが迫り来るのが見えたが、それを前にしても、自分の中に恐れや忌避は無かった。むしろ、
 私の家族を傷つけた報い、きっちり受けてもらうわ……!
 マイクロミサイルランチャーを展開し、力を一気に放った。


『さあ、皆!』

 皆の前に立つWZから、軽快な風切り音と、声が聞こえてきた。推進剤を燃焼させたミサイルが飛び立ち、迫るヤラレイターへ先制攻撃を与えていくのだ。
 それを聞きながら、ライフルを受け取ったサビーネは、自分の腕の中に抱えたライフルに視線を落とした。自動攻撃型のサイキックライフル。高性能の一品だ。だがそれを見る視界は、滲んでいる。
 これまで堪えていたものが、溢れそうになっているのだ。

「……っ!!」

 否、と首を振る。己は道化師なのだ、と。
 戦場に響く隊長の声に対し、ライフルを掲げて言葉を続ける。

「ここが正念場だ、全力を尽くして明日を切り開くぞ!」
「おお……!」

 周囲の遮蔽物に隠れ潜んでいた者たちの声は皆、力と意気を感じる。そこに連戦や砲撃を乗り越えた疲れは無い。

『総員、抗戦再開よ!』

 レギオンを引き連れたWZが、前進していく。それをサポートするように、皆が周囲の遮蔽物に散開していく。己もその一人だった。ライフルを構え、引き金を絞る。
 スコープの先で、アイカメラを貫かれたヤラレイターが爆散していく。
 こちらを補足した別の敵機が、カウンターで砲撃を寄越そうとするが、隊長のレギオンはそれを許さない。
 復唱する。

「抗戦再開!」

 大国ジャンクションを背にし、誰もが退かず、敵を押し止め続けた。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

シニストラ・デクストラ
【心境】
「さすがにもう騙されてくれないみたいなの。」
『さすがに気が付かれましたか…。指揮官の反応は早い。』
なら出し惜しみなしです。

【行動】
「残ってるBALLS全機発進なの。」
それと、お腹から秘蔵の爆弾を取り出して、BALLSの一機にに装備。
虎の子の爆弾。囮に使うのよ(止血処置中)
シニストラはドローン操作しつつ、自動拳銃を装備して弾幕の雨を搔い潜りながら、囮の爆弾を護衛している風に突き進む。囮なの。ワタシ達の本命は….

『姉さま…無茶しない約束ですよ…。』
小型タブレットでハッキング。
砲撃目標は大黒ジャンクション…そこに反抗勢力のスパイいます!!
と敵の索敵に欺瞞情報を流し、偽の砲撃命令を送ります!!


 戦闘に次ぐ戦闘によって瓦礫が増えた戦場の中、シニストラとデクストラは身を潜めていた。

「さすがにもう騙されてくれないみたいなの」
「さすがにもう気付かれましたか……」

 指揮官の反応が早いですね、とデクストラが呟く。ガーベッジらのネットワークをハッキングしたことでゼーロットのメッセージを聞いた二人は、補給物資内部に爆弾が仕掛けられていることに気付いた相手が今、兵站の点検や警戒を強化していることを知った。
 そして、やって来た敵の援軍はヤラレイターという火力も有した装甲部隊だった。
 ならば、

「出し惜しみなしなの」
「出し惜しみなしです」

 これからの作戦が決定した。


「……ッ!」

 傷ついた壁にもたれながら、シニストラは歯を食いしばって痛みに堪えていた。“人間爆弾”という名の通り、自分の腹の中に隠された爆弾を取り出している真っ最中だった。
 体内に隠したということは、取り出すことも想定はしていた。だがそれでも不快感や痛みはある。腹から流れた血が服や肌、廃墟の床板を濡らしていく。
 それでも迷っていられない。ヤラレイターが包囲しつつある中、痛苦の呻きなども殺し、手早く済ませるのが最優先だ。やがて指で“それ”を掴むと、

「――――」

 ゆっくりと、引き抜いていった。
 腹筋に力が入らないよう息を吐きつつ、腹の中から異物が抜けていく感覚に合わせて、血に濡れた遺物が露わとなる。
 爆弾だ。

「お姉様……」
「ふぅ……。虎の子なの」

 姉の心配した小さな声にそう答えつつ、準備していた医薬品を用いて消毒と止血を行っていく。それが終わると、傍に控えさせていたBALLSの一機を呼び寄せ、今取り出した爆弾をそのBALLSへ装備させる。
 これで準備は整った。数度深呼吸をして、腹を手で抑えながら立ち上がる。

「――うん」

 行ける。もう片方の手には自動拳銃が握ったまま、周囲のBALLSを全機起動。浮遊していくそれらを背景にし、姉の方へ振り返る。

「大丈夫なの、お姉ちゃん」
「……すぐに終わらせますからね、お姉さま」

 痛いのはこっちのはずなのに、向こうの方が痛そうな顔してるの。


 窓や壁の亀裂からBALLSが一斉に飛び立ち、その後、姉と虎の子を搭載したBALLSが出ていくのを、デクストラは廃墟の中から見送った。

「……無茶しない約束ですよ、お姉さま」

 腹に滲んでいた血と、肌の上を流れる汗。その上にある姉の顔は、しかし笑顔だった。痛みと不安を薬で抑えたからといって、あの笑顔が興奮や高揚によるものとは思わない。
 ……ワタシを安心させるためです。
 その事を、自分は知っている。

「ピアチェーレ」

 タブレットを取り出し、内部にいるAIに呼びかける。

「お姉さまが身体を張って、隙を作ってくれます。でもゼーロットも警戒しているので、チャンスはきっと僅かです」

 窓の外から戦闘音が聞こえてきた。それはすぐに規模が増し、大音の連続となる。
 砲撃や射撃、建物の倒壊や瓦礫の破砕。様々な音が鳴り響いていく。

「ワタシたちにかかっています……!」

 最後の戦闘が始まったのだ。


 ヤラレイター部隊は、戦場に飛来して来た球形ドローンによる奇襲を受けていた。

『敵機確認』

 爆弾を投下してきたそのドローンは、投下後すぐに離脱、戦場上空をあちこちへ散開していく。

『対空射撃開始』

 それを撃ち落とさんとガトリングガンを向けるが、相手のサイズは小型で、機動も機敏だった。鈍重な大口径砲では追いつかず、効果的ではないことは明らかだった。拘り続ければ翻弄され、さらに被害が増え続ける。
 ならば狙うべきは、ドローンを操縦し制御している存在だ。そして、それはすぐに見つかった。

「!」

 片手に自動拳銃を構えた、人間の子供だった。こちらが気付いたことに気付いたその子供は、拳銃を数発放ちながら、すぐに路地へ飛び込んでいった。
 だが、そんな一瞬の間でも判明したことはある。
 一つは、子供が負傷をしていたこと。
 もう一つは、こちらを煩わせているドローンと同型機でありながら、しかし搭載している装備が他とは違う一機が、子供の傍らを付き従うように飛行していたこと。
 最後の一つは、ドローンたちの攻撃がさらに激化したことだった。こちらを押し止めんと、攻勢を強めてくる。
 先ほどの子供が操縦者であり、傍らの一機にも意味があることは明白だった。

『目標変更』

 子供を追い、全機が突撃していく。


 釣れたの……!
 シニストラは路地から路地へ走りながら、ヤラレイターの変化に気付いていた。重量のある足音が自分の方へ近づいて来ているのだ。
 操縦者だと見抜かれ、追われている。それは非常に危険な状態だったが、想定通りでもあった。敵を引き付ける囮となるため、自分は今いるのだ。

「……!」

 ヤラレイターの大火力は深刻だった。路地や建物にヘッドキャノンをぶち込まれれば、こちらとしてはひとたまりもない。なので先んじて周囲のBALLSを突撃させ、爆弾を投下したり、時には砲口へ飛び込み、砲身の奥で自爆させる。
 ガトリングガンに関しては、壁は抜けても建物は抜けられない。路地と路地を縫うようにして射線を切っていく。
 そうなると自然、ヤラレイターは残った武装であるアームブレードを頼る。大剣を構え、突撃のためにアスファルトを踏み締めたタイミングで、BALLSが脚部関節を狙って破壊する。
 爆破、砲撃音、転倒。様々な音を聞きながら、息を吐く。
 ひー……、って感じなの……。
 キツい。腹の傷を抑えながら走り、周囲の状況を把握しながらBALLSに指示も与えねばならない。集中力を切らせば、すぐに死が見える。
 だが、その時。

「あ……」

 周囲の音が、変わった。
 ヤラレイターが、動きを止めたのだ。


 武装と装甲を高い水準で保ったヤラレイターは、しかし量産機だった。つまり、武装と装甲以外の部分でコスト的な釣り合いを取っている。それは例えば機動力であり、例えば機体内部の演算機能や管制装置であった。
 デクストラはピアチェーレと共に、そこを突いた。複雑な弾道計算機を有していないヤラレイターは、遠距離砲撃をする場合は周囲のデータセンターと通信を行い、そこにある弾道計算システムを借用する。

「なら、偽の情報を渡し、お姉さまも隠します」

 小型タブレットから送信した偽装信号が大黒ジャンクション周囲を駆け巡り、ヤラレイターたちのレーダーや測距装置に干渉する。これによって今まで追っていた対象を喪失。
 隠ぺいと欺瞞、二つの作業は同時進行だ。弾道計算システムとのデータリンクに割り込むと、座標パケットをすり替えた。位置は大黒ジャンクション。そこに反抗勢力のスパイがいると誤認させたのだ。
 間に合って……!
 ネットワークの上級権限も既に取得してある。最優先指令として、大黒ジャンクション砲撃を送信していく。


 シニストラは口の端を緩めながら、データセンターを経由して傍受したゼーロットの通信を聞いていた。

『……は!? だ、大黒ジャンクションを砲撃した!? 何故!?
 “大黒ジャンクションを守れ”と私は言ったはずだ!! 攻撃してどうす――、い、今すぐ止めさせろ! 破壊したら√EDENに侵攻出来なくなる!
 ……停止コマンドが何故効かない!?』

 ヘッドキャノンを連射するヤラレイターは、今まで追っていたこちらを放置して、ジャンクションへ向けて熱心に砲撃している。
 ……お姉ちゃんがやってくれたの。
 自分が囮になって、その間にハッキングを叶え、大黒ジャンクションを誤認砲撃させる。その作戦が完璧に決まった瞬間だった。
 轟音が鳴り響くが、しかし安全な戦場を、笑いを堪えながら退却していった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

キエティスム・トゥエルブ
※連携、アドリブ歓迎です
今回の敵は先ほどと違い一筋縄では行かないようですね。
重火力と重装甲。
突破するため爆薬などを使ってしまうと大黒ジャンクションの破壊が出来なくなる。

更に敵の持つ大口径の砲、無暗に戦闘をしてしまうと周囲の非√能力者の被害は大きいでしょう。
故に戦闘は出来るだけ本隊と離れた位置が望ましい。
ステルス車両を【運転】して先行し、敵の先回りをして【破壊工作】を仕掛けます。
敵が位置に来たら建物の支柱を破壊、瓦礫で敵を押し潰すことを狙います。

その後は【迷彩】適宜使用し、散発的な襲撃を仕掛けこちらに注意を向けさせながら√能力で大きく敵の数を削ぎましょうかね。電撃なら装甲は貫通できると信じて。


『――前進開始』

 ガーベッジ達が反応を喪失した地点へ向けて事前砲撃を行ったヤラレイター部隊は、しかしその結果に満足せず、引き続き警戒状態で前進を再開した。
 統率官の判断では、戦場には非√能力者が多いとのことだったが、それが警戒を緩める条件にはならなかった。また、統率官もそのような指令を出していない。
 ガーベッジが撃破されたのは、純然たる事実なのだ。
 思考する。戦闘機械群において、数は力だ、と。
 カテドラル・グロンバインをはじめとした各種兵器工場から常に生産され、出荷される。規格化された性能、特化した専門的な役割、おおよそすべてのラインナップが揃っている。
 しかし、人類側は違う。数や装備などが不利だと理解しながら、蜂起してくる。今もだ。戦闘機械群に寝返ったと思われていた者たちが決起し、√EDENへの侵攻を阻止せんとしている。
 その時、警戒通りの事が起こった。
 横列で進軍するこちらの中央付近で、突如としてドローンが起動したのだ。

『排除――』

 そばにいた一機が砕こうと、左腕のアームブレードを即座に振り下ろす。しかし、その一瞬の間であることに気付いた。
 ドローンの突進が行く先が敵である自分達ではなく、傍らにある建物、その支柱だったことに。
 激突とほぼ同時、ドローンは自爆した。内部に蓄えた全エネルギーを持って、支柱を砕いたのだ。
 建物が、傾いていく。


 それはまるで、棍棒で殴打されるような強打だった。ステルス車両のシートに座ったキエティスムの視線の先で、ヤラレイター部隊が、頭上から倒壊してきた建物に飲み込まれていく。

「おお、あれを耐えますか」
『……!』

 倒壊の衝撃で砕け散った瓦礫の下では、多くのヤラレイターがダメージを受けて、ダウンしていたが、未だにもがいているものもいる。
 重装甲、そして重火力を有した兵器なのだ。残ったヤラレイターは警戒し、周囲にヘッドキャノンやガトリングガンを向けている。先んじて破壊工作仕掛けたこちらを探しているのだ。
 ならば、とその警戒に応えるように、己はステルス車両の迷彩を一時解除し、レーザー射撃を放った。

『敵機確認』

 ヤラレイターの反撃より、車両の発進の方が僅かに速い。相手の砲弾が、先ほどまで車両がいた地面を吹き飛ばしていく。
 ガーベッジ戦から続く戦闘で荒れ始めた路面を縫うように走り、背後を確認する。
 追ってきている。ヤラレイター自身も、その重火力もだ。

「!」

 すぐにアクセルを踏み込んで回避しつつ、車両の迷彩を再度起動。風景に擬態し、狙いをつけられないようにしていく。
 ……先ほどの敵とはと違い、一筋縄ではいかないようですね。
 ヤラレイターは無力化するには相応の火力が必要で、しかし今回の自分たちには大黒ジャンクション破壊という任務がある。
 非√能力者が多い今回の戦場では、火力や爆薬は有限だ。自分は√能力者ではあるが、だとしても大黒ジャンクションは巨大な構造物だ。
 ヤラレイターにリソースを注ぎ込み過ぎれば、本来の目標が達成できなくなる。そこをゼーロットは突いてきた。

「故に、敵をこちらの本隊から引き離さなければ」

 再びステルス迷彩を解除し、射撃やドローンによる攪乱を行う。反抗組織として決起した彼らの火力を温存し、またヤラレイターが持つ大口径砲に巻き込まれないよう、敵の注意を惹く必要があるからだ。
 当然、そうすると敵の重火力はこちらに差し向けられる。ヤラレイターが車両で軽快に移動するこちらを狙うために選択したのは、鈍重なヘッドキャノンではなく、連射できる右腕のガトリングガンだった。

『掃射』

 薙ぎ払うような射撃が来る。ハンドルを切って射線から逃れつつ、迷彩で姿を偽装していく。倒壊と破壊で様変わりしたジャンクション周囲は迷路のようで、それも敵を惑わせる助けとなっていた。
 後は繰り返しだ。ただ逃げるだけでなく、こちらの存在を意識させ続けなければならない。攻撃、逃走、回避、隠密、そしてまた攻撃。かなりの数のヤラレイターが引き付けられている。
 頃合いだった。

「――兵装起動」

 √能力を発動していく。


 ゲリラ攻撃を行ってくる車両を追っていたヤラレイター部隊は、自分たちの頭上に閃光が瞬いたのを視覚素子で捉えた。そして、視認したときにはもう遅かった。

『――――』

 それは雷だった。閃光と爆音が同時で、直下の機体にまっすぐに降り注ぐ。
 瞬間的な高電圧や高熱によって各種センサー類が麻痺し、動作が止まってしまう。だが、威力自体は大したものではなかった。
 すぐに再起動が可能だ。しかし、それは叶わなかった。
 落雷が一発や二発で終わらず、連続し、降り止まない。


 “Type-XII/RM「静寂主義」”。指定地点から二十メートル以内を落雷で攻撃するその√能力は、威力は低いが、回数が常軌を逸している。
 既に十数発は瞬間的に降り注いだが、まだ終わりではない。最大三百発にまで至る落雷が、範囲内にいるすべての敵を押し止めている。
 一発の威力が本来の落雷の百分の一であっても、ヤラレイターのセンサーや光学機器、各種素子などを破損させる。装甲だって微細に穿たれ、その浸食を大きくしていく。外装が薄い点であれば、内部回路に到達するまでさして時間もかからなかった。
 半径二十メートルの範囲内、数十機のヤラレイターが落雷によって次々にダウンしていく。
 引っ切りなしに続いていた大気を破るような爆音が、やがて失せていく。

「これはあなた方への手向けと知れ」

 三百発が叩き込まれた現場に、動作する敵機はもはや存在していなかった。
 ヤラレイター全機を撃滅した瞬間だった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

挿絵申請あり!

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挿絵イラスト