シナリオ

⚡️【オーラム逆侵攻】フラガラッハの鋒

#√ウォーゾーン #オーラム逆侵攻

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⚡️大規模シナリオ『オーラム逆侵攻』

これは大規模シナリオです。1章では、ページ右上の 一言雑談で作戦を相談しよう!
現在の戦況はこちらのページをチェック!
(毎日16時更新)

●侵略からの、逆侵攻
「√ウォーゾーンが動き出している。それも、かなり大規模な√EDENへの侵攻計画だ」
 集まってもらった√能力者を前に、今回の予兆を受け取った星詠みワーズ・ディアハルトはゆっくりと言葉を置いた。
「目的は、王劍『アンサラー』――敵さんにして見れば、√EDENに鹵獲されていると息巻いているようだが……√EDENに、そんな物騒なものはまだ現れても――いや、まだ誰もその在処を知らない、という非常にはた迷惑な状況でな」
 星詠みは、その事象に深いため息をつくと、すっと息を吸い平静を伴って話を続ける。
「だが……放置していれば攻め込まれるのは時間の問題、ということだ。実際、大規模侵略に使えと云わんばかりに、そこには互いに大きな√の繋がりが見つかっている。――とはいえ、どうやら奴さん方は内々に抱えていた二重スパイの活躍により今は軍備を整えるどころでは無いらしくてな。ならば、」
 場の星詠みは、一拍置いて言葉を告げた。
「今回は――これを機に【通常より弱体化している、とも云える√ウォーゾーンに先手で忍び込み、|派閥《レリギオス》のその1拠点『レリギオス・オーラム』を急襲する】――それが今回の目的だ」

●作戦
 星詠みは、一拍間を置き言葉を続ける。
「今回は圧倒的な先手を取っている為、未来の詳細なゾディアックサインこそ詠めないが、行動の優位性は保証されている……当然大失敗こそしなければ、だが」
 そして、持ち出し不可としてこの場に集めてきた閲覧用タブレットを各自に配り、随時説明に必要な情報を送り込んだ。
「データはスマホなり電子機器、魔法等で保存しておいてくれ。この行動データをベースに、作戦に参加してくれる人には臨機応変にソフト内の【一言掲示板】で、やりとりをして今後の目的を立てて欲しい」
 星詠み自身も、己のスマホにそれらを表示させながら、
「予兆の中で、レギオンス・オーラムの支配地域である『川崎市』の一部地域に、戦闘機械群の支配下において、人類がすれすれながらも文明と生活を維持している地域を見つけた。まずはここに向かって現地の情報収集や、整理をしてもらえれば幸いだ」
 そして、と、星詠みは続ける。
「今回ばかりは、個別単独活動のみで勝利が掴めるほど甘いものでもないだろう。何しろ敵側に戦力が整っていないとはいえ、各個撃破される可能性も高い。だから、収集した情報を元に、皆で相談した後に現地で最適と思われる行動を取ってほしい。それが作戦成功の鍵になる――かなりふわっとではあるが、星詠みとして目にした作戦の目安はタブレットのソフトに移しておいた。そちらをご一読願いたい」
 タブレットを見れば、【1.統率官ゼーロットの撃破】【2.オーラム派機械群の壊滅】【3.大黒ジャンクションの破壊】【4.囚われている√能力者の解放】【5.カテドラル・グロンバインの破壊】――という内容が並んでいる。
 仔細は、後で細かに読んだ方が良いかも知れない。到着現地で、詳細な情報を集めることも可能であろう。

●逆侵攻の意義
「本来ならば、これだけ詠み切ったのでこれだけ行えばいい! と宣言出来ればいいのだかね。ゾディアックサインの予兆について、俺は相変わらず役立たずでな……申し訳無い……」
 情けなさを浮かべつつ、冷静に表情を切り替えて星詠みは口にした。
「『|派閥《レリギオス》オーラム』は人類殲滅派だ。ここで叩く事には、確実な意味があると思いたい。√能力者を殺す王劍との関わりもあるしな――それでは、どうか宜しく頼む」
 そう告げて星詠みは一礼すると、集まってもらった√能力者に静かに頭を下げた。

マスターより

春待ち猫
 数多いシナリオの中からご閲覧有難うございます。春待ち猫と申します。
 今回は、プレイヤーキャラクター様にシナリオ進行を決めていただく、新しいシステムを含めた【⚡オーラム逆侵攻】のシナリオを出させていただきます。

●資料【オーラム逆侵攻】
『https://tw8.t-walker.jp/html/library/event/005/005_setumei.htm』
 上記に、各目的地などの行動目安などが記載されております。何とぞ、ご参照頂けますよう宜しくお願いいたします。

●注意事項
 今回のシナリオでは『第二章(第三章は、第二章の選択確定段階で決定致します)』の目的地が未定です。
 ※第二章目的地は、参加者様の『当シナリオの一言雑談ページ(画面右上アイコン)』より【皆様による雑談の中で】決定してください。
 第一章はOPを参照に、得た情報は第二章への雑談目安としてくださって構いません。

●第二章決定一例:
 行き先に触れた雑談数があまりに少ない:一番多い目的地意見を参照。
 別場所への内容が同数:シナリオプレイングの内容から自然と思えるものをMS裁量で行き先を決定。
 雑談場が荒れたと判断:MS裁量で行き先を決定。

●一言雑談におけるMS対応
 不干渉:相談内容を閲覧し内容も反映しますが、一言雑談には発言しません。
(目的地相談は、タグによる告知と、第二章断章が投下された時点で停止とさせていただきます。
 雑談等は引き続きご利用可ですが、全体を通しての明らかなプレイングの補足としてのご利用は受け付けておりません。あらかじめ、ご了承下さい)

●シナリオ進行について
 第一章~第三章のプレイング受付開始期間、その他随時連絡事項等はシナリオタグにて告知致します。章間には都度断章を入れますので、プレイングは断章と受付タグの双方をご閲覧いただきました上で、プレイングの送信をいただければ幸いです。

 それでは、お気軽に雑談などをしていただきながら進めて頂ければ幸いです。
 皆様のプレイングを、心よりお待ち申し上げております!
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第1章 日常 『僕らは非日常な日常の中で生きている』


POW 心技体を鍛え上げます、訓練を行います。√能力者との模擬戦も面白いかもしれないです。ご自由にどうぞ。
SPD 現状を知るための状況確認、偵察任務、ハッキングといった技術面でのサポートです。ご自由にどうぞ。
WIZ 励ましたり、喝を入れたり、寄り添ったり、メンタル面でのサポートです。ご自由にどうぞ。
√ウォーゾーン 普通5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 レギオンス・オーラムの支配地域である『川崎市』一帯の東。
 辿り着いた√能力者が目にした光景は、立地建築物こそは√EDENの光景に近しい。しかし、生命攻撃機能を無効化したのがやっとの地域としては人間にとっての安住出来る居住区とは到底言えたものではなかった。
 食糧や武器、物資の不足は世界共通。だが、√能力者が辿り着いた時、レギオンス・オーラムの活性化による不穏を感じ取っていた住民達の空気が、僅かだが和らぐのを感じ取った。
 確かに別√の存在だとしても、自分達を消しにかかる戦闘機械群に比べれば、その存在は遥かに安堵出来る事には間違いないのだ。
 ――同時に、ここ数日で鹵獲した通信システムの改造が上手く行き、この周辺地域の状況把握が明瞭になった事が話題になっていた。
 これで情報が薄らとしか無かった周辺地域と作戦の状況、戦況についても詳しく触れられるかも知れない。

 斯くして、√能力者は各自の思慮を伴い動き始めた。確かな次の一手の為に。
クラウス・イーザリー
「急に訪れてすまない。俺は傭兵のクラウス。一緒に来たのは俺の仲間だ」
まずは周囲の住民達に怪しくないことを伝え、活動の許可を貰おう
こういうのは√ウォーゾーンでの身分を持っている人間がやるのが一番いいだろう

行動を許してもらえたら、通信システムに接続して周辺地域の情報や作戦の進行状況を探る
特に次に向かであろう場所……恐らくは大黒ジャンクション……の状況や地理情報、敵の情報など探れそうなものは何でも探ろう
可能なら敵側のネットワークにもハッキングし、情報収集と偽情報のばら撒きによる撹乱を試みる

少しでも次の作戦が楽になるように、最大限の準備をしよう

※アドリブ、連携歓迎
ヨシマサ・リヴィングストン
おお~、鹵獲した通信システム!大変心がウキウキする響きです。ボクもその改造したシステムを見せてもらってもいいでしょうか~?レリギオス・オーラムの通信システムの構造は一度熟知しておきたかったので今回の改造についてぜ~んぶお聞きしておきたいです。機械と戦う上で通信システムの主導権を取ることが勝敗にかかってきますからね!ここさえしっかりしておけば『分解再構築プロセッサMk-II』で今後向こうの通信を傍受したり乗っ取ることが可能になるはずですし~。
あ、ついでに周辺地域や現状についてもおさらいしておきましょうか~。早速頭に叩き込んだオーラムの通信で現在の戦況を見ていきましょう!試運転です!
セージ・ジェードゥ
アドリブなど歓迎

【心情】
ようやく今までの努力が報われる時が来るんだな。
折角の機会だ。必ずものにして見せる。

【行動】
物陰に隠れてハッキングを行い情報を収集する。
主に敵の機械群の位置や巡回ルートを改めて確認しておこう。
俺の記憶に齟齬があるとまずいからな。
どの作戦が選ばれたとしても対応できるようにしっかり情報収集しよう。
敵からバレないようにジャミングもしておいてもいいかもな。
√能力者の方とも情報を共有しておきたい。

●電子情報収集戦
 その文明だけが進んだような『集落』とも呼べる土地の人々は、訪れた√能力者の一行を、一斉に値踏みするような眼差しで見つめ上げていた。
 確かに戦闘機械群ではなく、人間ではあるが。だがそれは、自分達に利益をもたらす存在なのか。
 食料物資を運びに来た者か――もしくは、戦闘機械群の人間利用派などに与した『人間の敵』なのか。
「急に訪れてすまない。俺は傭兵のクラウス。一緒に来たのは俺の仲間だ」
 そう話す、クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)がその場で外して見せた、演習時代から人類の為に戦ってきた事が伝わる使い古したゴーグルを目にして、住民の人々はその言葉に偽りはないと判断し、√能力者達を地域内の中心へと迎え入れてくれた。
 受け入れたのは、戦闘機械群派に与した人間は、総じて人間を見下した目で見つめ、それが態度と瞳に表れるからだ、と後でこの場の敵警戒に当たっていた人物が教えてくれた。
 ――戦闘に出たばかりの人類側であったはずの|少女人形《レプリノイド》達が、戦力差に圧倒され裏切り、三ツ池公園の『カテドラル・グロンバイン』へ向かったときも――人と同じように動く存在でありながら、そのような態度と目を隠しもしなかったのだと。戦場で苦汁を舐めたらしき、その場にいた誰かがそう告げていた。

 地域内を歩けば、立場を伝えて尚も囁くように、不安や希望を抱く視線があちこちを撫でるようにかすめていくのが伝わってくる。
 この戦地を渡り歩く傭兵というのは、強く稀少である代わりに奇特でもある――それが複数の世界を渡り歩く√能力者であれば、そうは名乗らなくとも尚の事。だが、それを軽微な違和感にまで落とし込んだのはクラウスの紹介があるが故だった。これで、ある程度仲間たちも自由に動けるに違いない。

 情報収集、己に出来る事を可能な限り――そう思うクラウスと、隣を歩いていたヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)は、目的として、ここしばらくで一気に戦闘が激化した『レリギオス・オーラム』の抗争に協力しに来た事を住人に伝えていく。すると住人はふたりを、最近ようやく鹵獲できたが、ここでは改造解析する為の技術者すら足りずに難儀している、という通信システムのところに案内してくれた。
 破壊した、敵の大型戦闘機体から隔離した通信システム――それを目にしたヨシマサは茶色がかった赤の瞳を、感銘の声と共に大きく煌めかせた。
「おお~、鹵獲した通信システム!」
 目の前の通信システムは、一応ながらに改造途中という事もあって、配線が剥き出しになっている。これが人材不足でまだ解析にも至っていないという、ある意味危機的な状況に、ヨシマサは数度噛みしめるように頷いて、必死にまずは改造に取り掛かろうとしている住人達へと声を掛けた。
「ボクもその改造したシステムを見せてもらってもいいでしょうか~? レリギオス・オーラムの通信システムの構造は一度熟知しておきたかったので今回の改造についてぜ~んぶお聞きしておきたいです」
「あなたは技術工か、助かる。何しろ人手が本当に足りなくてなぁ。向こうにも敵の記録媒体は端々に置いてあるんだが、これが通信機器も兼ねた大物だ。手伝ってくれ!」
「任せてください~。機械と戦う上で通信システムの主導権を取ることが勝敗にかかってきますからね!」
 ――この人類が戦う戦火において。人の命がゴミのように消えていく戦火だからこそ。一度仲間だと判断したものは、協力し合わなくては話にならない。
 気さくな技術士は現状ほぼ手つかずな通信システムの様子を、二人に惜しみなく開示してくれた。
 名乗り出たヨシマサに、数度ほど同じ依頼を共にして顔を知るクラウスが声を掛ける。
「ヨシマサ、出来そうかい?」
「はい~。ここさえしっかりしておけば『|分解再構築プロセッサMk-II《クラフト・リデュース・プロセッサマークツー》』で今後向こうの通信を傍受したり乗っ取ることが可能になるはずなので~……あー、これは少し手間が掛かりそうですね~」
 戦闘機械群は、最終目的が同じなだけでその手段は派閥によって原型を留めない程異なり、派閥による小競り合いが当たり前のように行われている。そのため、通信などに使われるシステムが派閥により違う事などは日常茶飯事だ。そのため、過去のシステム知識が、確実に役に立つという保証が無いというのが現実なのである。
 ここで、ヨシマサが己の告げた√能力の条件を満たしておけば、以降の行動に於いて迅速な情報収集と解析が可能となるであろう。
「ふふ~、楽しくなってきました。少し時間は掛かりそうですが、頑張っちゃいますよ~」

 ――一方、クラウスの紹介から敢えて外れ、ひとり別口から密やかに地域内部への侵入を果たす、まだ年若き少年がいた。
 セージ・ジェードゥ(影草・h07993)――齢十四にして抵抗組織に属する√ウォーゾーンの特殊部隊員だ。だが、この世界の住人であり、現状スパイとして戦闘機械群に侵入していた以上、クラウスが仲間だとして紹介したときに味方としての信憑性が下がると判断し、自ら離れすぎない距離でありながらも、単独行動を選択したのである。
「(ようやく、だ……ようやく)」
 物陰に隠れ潜みながら、静かに息を整える。
「(今までの努力が報われる時が来るんだな――)」
 首に巻いたマフラーを正すように硬く握りしめる。それは、過去の幸せ。戦闘機械群に殺された両親に買ってもらった、とても優しい記憶の一部――今は、改造され戦闘道具の一部であるが、その想いはどこまでも心に根付いて離れない。
「(……折角の機会だ。必ずものにして見せる)」
 色づく当時の目の輝きはとうに失われていた。代わり、深く心に傷跡を残してなお生きるその瞳に、深く重い復讐と信念の炎を灯して、セージは己の身を隠す為の物陰に視線を巡らせる。
 目を付けた先は、戦闘機械群の破損パーツの山の一部。セージはその一部に、まだ情報が拾える、微弱な通信機能を宿した記録のユニットパーツがあることに気が付いた。それは、この世界の敵側に在していたスパイであり特殊部隊であるが故に、気付けたもののひとつ。
 情報はどこに転がっているかも分からない。セージはまさにこの地の為に立ち上がった存在であり、少なからず敵勢力の配置や、敵が人間を殺害して回る為の巡回ルートなどの特殊知識には己に信を置いている。だが、それでも齟齬が無いかの確認は重要。それだけ――今回の作戦に掛ける熱量と努力も人一倍大きなものだった。
 そうしてセージは早速、スマホに見える手持ちの端末――本来の機能から盗聴までを行えるハッキングツールを繋いで、情報を拾い上げ始めた。

「ふふ~。これは我ながら少し自信を持ってしまう出来ですね~」
 通信システムの改造と、こちらの陣営のものとして利用する為の再構築。それらを完全に終わらせたヨシマサはその知識を確かに自分のものとして叩き込んだ。
「これで使えるようになったかな……」
「はい~。これで、この地域のデータ閲覧、一帯の通信網はある程度回復です。とは言えここのエネルギー、供給が不安定らしくて長くは使えないようですね~……」
 どうやらここのエネルギーは恒久供給とはいかないらしい。それを聞いたクラウスが静かに頷く。
「そうだね……でも、戦闘情報なら敵が勝手に広めてくれるはず。ここで出来る事は全部やっておこう。必要そうな情報を手当たり次第洗い出したら、誤情報で敵を攪乱してみようか」
「名案っす! それじゃ、周辺地域や現状についてもおさらいしておきましょうか~。早速頭に叩き込んだオーラムの通信で現在の戦況を見ていきましょう! ――試運転です!」
 軽快な音を立てて、ヨシマサが改造した通信システムの稼働スイッチを押す。表示されたインターフェースを即座に理解し、二人が最初に仲間と話し合った大黒ジャンクションを中心にデータを引き出していく。

 溢れるようなデータの中から、以下の情報が認識出来た。
 ――渦を巻くように大地を巡る巨大通路『大黒ジャンクション』に、√EDENに通じる道が最近発見されたこと。
 統率官『ゼーロット』がそれを発見した事もあり、今回の√EDEN侵攻作戦が決行に移されようとしている様子。
 しかし戦力が整うまでの間は、戦闘機械群によって無数の通路は全て監視と共にゲートが封鎖されているという事が判明した。
 破壊を目指すには、一難ある事は避けられないであろう。

「この戦闘機械だけでも遠ざけられたらいいのだけど……」
 出来る限りの戦闘疲労は避けたい。クラウスはしばし思案し、届けられる範囲――大黒ジャンクション方面の戦闘機械群に向け、
【羽田空港に築かれた『カテドラル・ゼーロット』が、襲撃されている。大黒ジャンクションのシステムを監視している戦闘機械群は直ちに防衛へ戻るべし】
 という、通信に誤情報を伝達する。
 しばらくしてノイズ混じりだが【了解した】という一方と共に、監視の戦闘機械群が僅かな混乱を残しつつも姿を消す様子が確認された。
 ――一方、通信が復旧した二人の会話を傍受し耳にしていたセージの方も、傍らの記録ユニットに、扇島にある『扇島地下監獄』の情報がある事を確認していた。
 セージが復帰した通信を伴い様子を窺うと、

 扇島『扇島地下監獄』――こちらも、やはり戦闘機械群の監視と共に、確認出来た範囲では、入り口は封鎖に近く内側からも外側からも堅く閉ざされているのが伝わってきた。
 同様に、侵入は一筋縄ではいかないだろう。

 そして、こちらの戦闘機械群は現場を死守せよとでも言われているのであろう、クラウスの誤情報にも一切動く様子はなさそうである。
「敵だけでも――」
 セージは、現場へのジャミングと共に【内部にいる√能力者の一部が集団で反乱を起こした】という情報を流す。ジャミングは軽度、伝わる音声は明瞭ではなく。しかし、それが現実味を帯びて伝わったのであろう、表の監視をしていた戦闘機械群を攪乱させる事に成功した。

「よし、これで良いな……ん?」
 セージが仲間との合流地点へ戻ろうと、通信を切ろうとした刹那――川崎市・川崎臨海部周辺を映し出していた地図に、一際激しい光を放つ一筋の熱源が見えた。それは『大黒ジャンクション』に飛翔の速度で移動して、そして消える――。
「今のは……」
 不思議に思いつつも、己の立場では長居は出来ない。
 セージは首を僅かに傾げつつも、自分の得た情報を共有すべく、その場所を後にした――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ジョーニアス・ブランシェ
アドリブ・連携歓迎

 『さて。情報収集する人間が多いのなら、俺は住民のメンタルケアでもするか』
星詠みから保存しろと言われた資料を、戦闘でも外れないように改良したスマートグラスに落とし込んで。√ウォーゾーンには来たことが無かったが、この状況を知っていたら食料や薬を詰め込んで車で来れば良かったなと少し後悔。が、無い物は仕方ない、手持ちで手放せる物資を選んで住民に話し掛け、必要なら薬やちょっとした携帯食料などを渡しながら歩き回っていると、どこからか幼い子供らがやってくる。お菓子を渡して痛い所は無いか、困った事はないか、逃げる場所はちゃんとあるかと頭を撫でて話を聞きつつ、子供らのメンタルケアに努めよう。
久遠寺・悟志
支援物資として、大きな段ボール箱一杯のあんパンを持って行くよ
住民の皆から情報収集しようにも、皆の頭が空腹のせいで回ってなければ、状況を正確に伝えられないかもしれないし
それに、僕らが信頼を得ることも大事だしね

一人一個だよ
一列に並んで、順番に受け取ってね
食べ終えてからでいいから、聞きたいことがあるんだ

皆に聞きたいことは以下
・周辺地域、特に大黒ジャンクションと扇島地下監獄の状況はどうなっているか
・現在進められている作戦の内容と、詳しい状況
・戦況はこちらに有利か、厳しいか

嘘をつく人はいないと信じて、目元の包帯は外さない(心を読む能力を使わない)で接するよ
コミュ力を駆使し、急かさず、穏やかに話を聞くね

●人心懐柔戦線
「これでよしっと……」
 ジョーニアス・ブランシェ(影の守護者・h03232)は、依頼を託された際に渡された資料を、激化する戦闘でも外れないよう顔にしっかりとフィットする最先端のスマートグラスに落とし込みながら、『集落』とも呼べるこの√ウォーゾーンの地域に足を踏み入れた。
 街並みは人類のみに被害を与え、建物自体は自動修復されるために、ほぼ√EDENと変わるところではない。しかしその結果、心身共にぼろぼろである周囲の風景に見合わない人々が、あちこちに溢れているという結果となっていた。
 住民のメンタルケアでも、と思っていたジョーニアスであったが、これでは何を取っ掛かりとして良いものか。この状況を知っていれば、食料や薬を詰め込んだ車で来れば良かったと、先に立たない後悔が思考を巡る。
 手持ちにも小さな携帯食料や菓子は無いわけではない。だが、ここの人々に心の余裕がないのも確かなのだ。不平等は一気に反抗心――引いては敵意すらも煽りかねない。
「さて……どうするか」
 ジョーニアスが考え込む中、
「んっ、よいっ…しょ……」
 その視界の先を、仲間の一人である久遠寺・悟志(見通すもの・h00366)が、正面がぎりぎり視野に入っているかも分からない大きな段ボール箱いっぱいのあんパンを抱えて歩いている。
 悟志は、人妖「さとり」としてその能力を抑えるために、目に包帯を巻いている、見えている様子は動きから分かるが、見ている側としてはどうしても不安になるもの――ジョーニアスは思わず、悟志に声を掛けた。
「重そうだな、手伝わせてくれないか」
「……うん。ジョーニアスさん、それならお願いしてもいいかな?」
「ああ、任せろ。力仕事なら得意だ」
 体躯的にも、前が見えなくなりそうな悟志よりも身長的にも高いジョーニアスの方が適任であるには違いなかった。
 段ボールは鉛が入るほど重たいわけではなかったが決して軽いものでも無い。
「これは何が入っているんだ?」
「あんパンだね。配ろうと思って――情報収集しようにも、住民の皆が空腹のせいで疲れてしまって思考が回っていなければ、状況を正確に伝えられないかもしれないし」
 それに、と悟志は続ける。
「――僕らが信用を得ることも大事だしね」
 仲間の紹介があった。それでも、外部からの来訪者への目は様々なものが含まれている。
 それだけ、この世界では【外部からこの地に到る】という事が奇特なことの表れでもあったから。
「それなら手伝わせてくれ。ここまで情景が酷いと思わずほぼ手ぶらで来てしまってな……」
「ああ――それなら喜んで。一緒に配ろうか」

 そうして、あんパンの配布会が開かれた。
「あんパン配ってるぞー!」
 広がるジョーニアスの声に周囲が気付き、近づいてきた相手に、
「一人一個だよ。一列に並んで、順番に受け取ってね」
 まるで促す様に優しく響く悟志の言葉に、人々は静かに大人しく従っていく。
 その中のひとつを配っていく最中に、ジョーニアスは、あんパンを配った先、並んでいて正面に立っている年端もいかない幼い少年が、困ったように口をもごもごさせている様子を目に映した。
「おう、どうした? 何か困ったことでもあったのか?」
「あの、ね。パパが遠くからやっと帰ってきてくれたの……でも、大怪我しちゃったから元気ないって……」
 ここは、子供も大人も等しく餓えている。見える所での子供だけの贔屓は許されないだろう。そう判断して、あんパン配りを悟志に任せ、ジョーニアスは少年と少し離れたところに向かうと、元気になれるように薬として、所持していた痛み止め、気つけ用のスピリタスをこっそりと渡してあげた。

 悟志の方も、順調にあんパンを配り終え、周囲には涙ながらにあんパンを食べる人々の姿を目に心を痛めていた。これで目の包帯を外していたら、どれだけの衝撃が胸を襲ったかは想像もつかない。
「(でも良かった、皆に行き渡ったかな……?)」
 皆、幸せそうにパンを食べている。その幸せを遮っていいかは分からなかったが、少なくとも現状の戦闘状況を把握しなければ、この状況はいくらでも続くのだ。
 悟志の優しい心が僅かに痛む――その時、
「あの、あんパンを配っておられたのはここでしょうか……?」
 一人の病み上がりを思わせる、顔を薄らと青白く染めた中年の男が悟志と戻って来たジョーニアスの元へと訪れてきた。
「先程、は子供が失礼をしました。薬まで頂いてしまって――ですが、」
 男は小声でこう続ける。
「私も……√能力者なので、後は放置していても自力で何とか……なので、こちらは」
 そっと、ジョーニアスにスピリタスの瓶が返されて、
「このタイミングでいらっしゃったという事は、『レリギオス・オーラム』の動きについて、来てくださったのだとお見受けします。――私は、大黒ジャンクションで捕まって、扇島地下監獄から命からがら逃げ出してきた身ですが、もしお役に立てる情報があるなら」
 静かな中に強い光を瞳に湛えて言った男に、悟志とジョーニアスは顔を見合わせる。そこのふたつは相談でも上がっていた重要拠点であったのだから。
「……ありがとう。丁度僕たちもその情報がほしかったんだ。そのふたつ――大黒ジャンクションと、扇島地下監獄はいまどうなっているんだろう……?」
 そっと、優しく心の傷に触れないように気をつけながら、悟志は優しく問い掛ける。
 この経緯で現れた人物であれば、嘘をつく存在ではないであろうと判断し、悟志は人狼『さとり』としてではなく、一人の存在として相手の心と向き合うことを決めた。

「大黒ジャンクションは、√が開いたと聞いた瞬間に、様子を目にして、場合によっては破壊しなくては――と思ったところで、丁度同じくそのルートを確認しに来た『ぜーロット』の戦闘機械群と遭遇し、訳も分からず捕まってしまい……申し訳ありません」
 その謝罪は『詳細は分からないという事』――だが、
「扇島地下監獄の方はどうなっているんだろう……? ああ、苦しいとかあったらゆっくりでいいからね?」
 目の前の男に、言葉で寄り添うように悟志が告げる。
「ええ、扇島地下監獄の方は――厳しい監視網が引かれていました……脱走を試みて、監視している戦闘機械群に見つかった√能力者は、皆動けぬほどにボロボロになって牢屋や独房に逆戻りされられていました……。私は仲間の助力で戦闘機械群に見つかる前に脱出出来ましたが――皆、死ねない分意識はあるものの……あれでは、先に心が」
 男はそこで一旦沈黙する。己の無力さを嘆くかのように。
「――すみません、知っている事は全部話すと決めているのに……他に、知っていることと言えば――」
 悟志の問いに、男は答えていく。
『現在進められている作戦の内容と、詳しい状況』――これについては、先程仲間が分解再構成していた通信システムの奪取が、ようやく長く潜んで計画を進めた結果得た、第一歩であること。これ以上の戦果は得られず、だが同時に『これからだ』という気運もあるということ。

 同時に『戦況はこちらに有利か、厳しいか』――この問いに、男は、長い沈黙の後に苦渋の表情で、強く抑えた声で告げた。
 ――厳しい。どこも外部助力が無くては、現段階では人類側が勝てる道理が一切見出せない程である、と――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

志藤・遙斗
【三課】で参加【アドリブ歓迎】
基本丁寧語 呼び方は名字+さん付け
タバコを吸いながら
「さてと、とりあえずは情報収集からですかね?」
「かたまっていてもアレですし、個別に情報を集めましょう。大体1時間くらいしたらココにもどってくるでいかがでしょうか?」
「もしも周辺の調査をする際は十分気を付けてくださいね。」
近くに避難している人にタバコを差し出しながら
「すいません、まだ情報が集まりきっていないのでいくつかお話を伺っても?」
「わかる範囲で良いので、敵の兵数や種類等些細な事でも良いので教えてもらえませんか?」
金菱さんと合流後集まった情報を共有
「今集められるのはこれくらいですかね?後は次の作戦が決まってからになりそうですね」
「なんにしても川崎市を開放できれば人類にとって安全地帯を確保できますし、頑張りましょう」
金菱・秀麿
【三課】で参加【アドリブ歓迎】
飄々とした口ぶり 呼び方は「名字呼び捨て」か「お前さん」

現場に着いて早々辛気臭い雰囲気を感じ取る。
「いかにも戦争前ですって感じのきな臭い雰囲気が漂ってるな」
√能力を使いを使い、
有力な証言をしてくれるインビジブルを
探ってみるのも手かと思案する。
「志藤が避難民から聞き込みをするなら、俺は少し離れた場所を探って来る。まぁここから一時間で回れそうな場所となるとこの辺りになるか……」
そう言って川崎市周辺の地図を取り出し、『大黒ジャンクション』と『扇島地下監獄』の
中間地点を指さして見せる。

志藤と合流後集まった情報を共有
「なかなか、曰くありげなものが見れたかねぇ……」

●人力情報収集戦線
「いかにも戦争前ですって感じのきな臭い雰囲気が漂ってるな」
 見渡す限りの剣呑を滲ませた気配。通信システムを入手しての勝利の凱旋を経たとはいえ、それが心の安寧とイコールではない事が叩き付けるように伝わってくる。
 その殺伐とした雰囲気を読み取るように、金菱・秀麿(骨董好きの異能刑事・h01773)は思わず微かながらに眉を顰めた。
「――さてと、とりあえずは情報収集からですかね?」
 その傍らで、指で挟んでくゆらせていた煙草をひと吸いして、志藤・遙斗 (普通の警察官・h01920)は辺りをざっと見渡した。
『集落』とも呼べる環境の地域ではあるが、立地自体は√EDENと大差なく、人も少なくない上に土地としては決して狭いわけではない。複数が一緒に同じ行動を取るには難が出ることは直ぐに察することができた。
「かたまっていてもアレですし、個別に情報を集めましょう。大体一時間くらいしたらココにもどってくるでいかがでしょうか? 俺は集まった人達から聞き込み行ってきます」
「志藤が避難民から聞き込みをするなら、俺は少し離れた場所を探って来るとするか――さて、どの辺りにしたもんか……」
 秀麿は、何か外部情報を得る手段を思い至ったのか――遙斗と同様に所属する場で支給されているスマホに指を滑らせ始める。
「まぁここから一時間で回れそうな場所となると、この辺りになるか……」
 表示させたのは川崎市臨海部周辺の地図。そこから少し拡大させた先――『大黒ジャンクション』と『扇島地下監獄』の中間地点に、トンと肌黒で逞しさを感じる指を置いた。
「周辺の調査をする際は十分気を付けてくださいね」
 食料が一切無いこの場所でさえ、人が戦闘機械群から生きられる空間としてようやく勝ち取ったのが、この安住の地なのである。生きている存在にとって、この外は危険しか無く、それは√能力者でも変わらないのだ。
 秀麿は遙斗の言葉に頷くと早速見張りをしている人間と二、三ほど言葉を交わして姿を消した。手際として見るに、このような行動には慣れている様子が窺えた。
「さて、と――」
 秀麿が外部からの情報を捜査してくる。そうなれば、遙斗の方も収穫無しとはいかないであろう。遙斗は早速、その内部を歩き始めた。

 建物は復元される――だが、いざこの地が戦闘機械群に襲撃されて戦闘が起きたとき、家や建物などは逃げ場なく砕かれ殺されるための第二の墓でしかない。避難してきたばかりの人にとってはその感覚が肌身に焼き付いているのであろう、外や公園に集まっている人の数は決して少ないものではなかった。
 遙斗は、その中から公園近くの路上に座り込んでいる男に目を向けた。片足は義足であり、座り込んでいても、尚も着ている戦闘服から明らかに過去、もしくは最近まで戦場に身を置いていた事が分かる人物に足を向ける。
 屈んで、そっと煙草を差し出しながら、軽く敵意のない事を示す挨拶代わりの笑顔を向けた。
「すいません、まだ情報が集まりきっていないので、いくつかお話を伺っても?」
「……ああ、お前さん。噂になってる外から来た傭兵か。という事は、レリギオス・ゼーロットの動向だな? 俺はあまり詳しくないんだが……――ありがとよ」
 そう言いつつ、男は差し出された煙草を手に取り、火を受け取った。この世界にも煙草は存在する。だが、戦闘機械群との『第三次世界大戦』以降、腹が膨れる食料が優先される世界での通常の煙草は、他√から手にしても尚も貴重な嗜好品である。
「わかる範囲で良いので、敵の兵数や種類等些細な事でも良いので教えてもらえませんか?」
 煙草の煙を深く深く肺に入れ、大きく吐き出しながら男は考え答える。
「これは、俺が撤退を余儀なくされた時の話なんだが……」
 男は自分の足を見やりながらも口を重く、独りごちるように言葉を置き始めた。
「大黒ジャンクションで、人類側が負けて撤退が起きた――その時に……√の連絡通路を、別の派閥が狙っているというのは聞いていたが『アレ』がそうだったのだろうか……だとしたら、恐ろしすぎる……」
「『アレ』とは……?」
「俺が逃げ出しざまに見た、あれは――間違いない『スーパーロボット』への進化体だ」
 鳥を思わせる飛翔体――男はそう語った。

 それは凄まじい破壊力を伴う超大型光線砲により、コンクリートを灼き切った。
 輝くオーラを纏って翼と共に空を飛翔し、防御壁などものともしない高速の体当たりは全てを砕いた。
 激しい光を放つ、放電による無数の波状型電撃攻撃は無数の戦闘機械群を稼働停止に追いやったのだ、と――。

「異なる派閥同士の小競り合いだったのだろう…とは思う。だが、たった一体で――あの力量差は圧倒的過ぎた。アレがまだいるなら、対面して普通の人間が生きていられる道理はない、生きてる……自分が奇跡だったんだな……」
 そう、大黒ジャンクションでの話を、男はそう締め括った。

 一方、地図が指し示す大黒ジャンクションと扇島地下監獄との中間――出来る限り道が絞り込まれたY字路の中心で、秀麿は手にしていた『反魂万華鏡』を覗き込んだ。
 きらきらと、同じ形を取ることの無い世界が反魂万華鏡越しの瞳に映る。そこにひとつ、ふわりと映し出された存在に、秀麿は問い掛けた。
『少し前の事についてちょいと尋ねたい』
 その言葉と共に――映し出されていたインビジブルはひとつの女の形を取る。
【|前世尋問《ゼンセジンモン》】――√能力により明瞭な形を持った人物に、秀麿が大黒ジャンクションと扇島地下監獄について知っているかを問うと、『それ』は「扇島地下監獄」であれば、と言葉重く語り始めた。
「私、人間なのに√能力者と勘違いされて……捕まっていたんです……」

 曰く――
 あそこでは、女型の古い西洋召使い型の監視機械がいて、見つかった者は例外なく脱出失敗している事。
 生かさず殺さず。√能力者だから生きているだけ、の者も多い。
 敵に一瞬目を奪われただけで全ての動きが鈍るのだと、共に脱走を企てた誰かが言っていた――

「自分を逃して残ってしまった、挙げ句脱走したのに自分も死んでしまって……無事にいるかどうか……」
 そのように、さめざめと悔恨の涙を零す相手に、優しく声を掛けつつも秀麿は続ける。
「そこには、何か目を付けられていない隠し通路みたいなモンはないかね」
 それについても、インビジブルとなっていた女は語った。

 地下監獄の出入り口は監視も一際厳重で複数のロックの解除が必要になるが。近くの小さな建物内にある大型排気口が、外部へと繋がっていた。そこならば厳重な防御設備ひとつを越えることで恐らく内部へ侵入出来るであろう、と――。

 そして、最初の拠点地で遙斗が数本ほどの煙草を吸い終える頃――約束の時間通りに、秀麿が入り口の見張りに挨拶して、こちらに歩いてくる姿が見えた。
「何とか無事に戻って来られたな」
「それじゃあ、さっそく情報の共有をしましょうか」
 不確定な情報も少なくない。ふたりは、拠点の人々に聞こえない程度の声で、慎重に場を選んで互いに手に入れた情報の内容を互いに話し始めた。
「――こちらは、ゼーロットとは直接の関係はないかもしれませんが、もし『ソレ』がまだいた時には脅威になるでしょうね」
 遙斗が、自分の得た情報を伝えていく。
 確かに話の内容が事実であれば、ゼーロットの戦力とは関係が無いかも知れない。だが、大黒ジャンクションそのものを叩く場合、それが出てくる可能性があるという可能性を胸に置けば不意討ちは防げるはずだ。
「こちらの方は――と、まぁ……なかなか、曰くありげなものが見れたかねぇ」
 こちらは脱出者だったものの体験談だ。敵情報については不明瞭な点も多いが、言葉通りであれば扇島地下監獄へ侵入する有力ルートのひとつを得たことになる。
「今集められるのはこれくらいですかね? 後は次の作戦が決まってからになりそうですね」
 軽く伸びをしてから、遙斗が再び煙草に一本火を付ける。
 情報は集めきった――仲間たちと情報を統合すれば、次の作戦の指針に繋がることは間違いないであろう。

「なんにしても川崎市を開放できれば人類にとって安全地帯を確保できますし、頑張りましょう」
 そうして、一同は再度、話し合いを行う為に集合場所で落ち合うことにした。
 次の作戦は、自分も知らぬ√能力者も全体で動いている、文字通り世界に刻む行動になる――その事実に、各々に抱えられた思いを胸に秘めながら。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 冒険 『封鎖されたゲート』


POW ゲートの破壊を試みる
SPD ロックの解除を試みる
WIZ 隠し通路を発見する
√ウォーゾーン 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●大黒ジャンクション
 規則は正しくも、人を圧倒する巨大さでひたすら無尽に旋回する巨大通路――大黒ジャンクション。ここから行き着いた先には√EDENに通じる『道』がある――。
 それを戦闘機械群のレリギオス・オーラム統率官『ゼーロット』が知ったことが、【オーラム逆侵攻】に至る全ての切っ掛けとなったと言っても過言ではないであろう。

 √能力者の一行は、意志の交流による相談を重ねた結果、情報を元に苦渋の決断を迫られつつも、ここ大黒ジャンクションの破壊を次の目標として立てる事にした。
 現状――情報収集を行っていた拠点で、通信諜報と偽情報拡散といった次につながる手際によって、重要拠点でありながら、群がっていた敵の監視を撤退させる事に成功していた。
 そのため、あちこちから電子稼働音は聞こえるものの、今のところ敵対勢力の影は見受けられない。
 しかし、現地に向かった√能力者を待ち受けていたものは、無数の物理バリケードに、強固なゲート、ロックの掛かった巨大扉など多岐無数にわたる妨害壁だった。
 大黒ジャンクションの中核に辿り着くためには、これらを何かしらの方法で突破しなくてはならない。

 その方法を咎められる事はないであろう。
 √能力者に今、未来の窮地を救うため、この場を乗り越える手段が問われている――


久遠寺・悟志
▼心情
√EDENへの敵の侵入阻止のため、全力を尽くそう
囚われた√能力者は耐えてくれるって信じる

▼行動
天井がないなら、空飛ぶダルマ自転車に乗れば飛び越えられそうだけど……
いや、そんな簡単なわけないか
嫌な予感がするし、やめとこう

僕の影から影業を呼び出す
おいで、磯撫で

それから、僕は磯撫でと一つになる
変形合体+異形化
黒い半魚人になるよ

あとは、妨害壁を牙でかじって穴を開けながら進むよ(捕食)
おいしくはないだろうけど、柔らかいプリンみたいにどんどんかじれるはず

お腹いっぱいになっちゃったり、顎が疲れたりしたら、妨害壁への尾びれアタックに切り替えるよ
無数の針がついたこの尾びれで、ザクザク壁をすりおろしていくね

●信じて行動することにこそ
 今回の作戦の指標は、√EDENへの敵の侵入阻止に定まった。
 それは、√能力者の救出作戦とを天秤に掛けた苦渋の結果。
 当初からそちらを推していた久遠寺・悟志(見通すもの・h00366)にとって、救出作戦との取捨選択は本当に胸を痛めるものであったが、共に行動する仲間たちが言う事も、もっともであり――何より『囚われた√能力者は耐えてくれる』と、悟志はそれを信じる事に心を懸けた。
 この川崎市にいる限り、救出するチャンスも少なからずあると信じて。

 大黒ジャンクション――時間が経つのは早いもので、見上げた空はいつの間にか黄昏色に染まっていた。
 眼前には巨大なバリケード、周囲には小さな電子音が常に鳴り響いている。足下や壁を照らす光源も存在しているが、全体を照らすにはあまりに足りない。完全に夜陰に紛れるようになってしまえば、障害物の些細な変化や事象を見逃す事になるかも知れない。
「急いだ方が――天井がないなら、空飛ぶダルマ自転車に乗れば飛び越えられそうだけど……」
 ふ、と。広々と広がる不気味なほど何も無い空を目に、悟志は自分の愛車である自転車――後輪より前輪が圧倒的に大きな、空を飛べるダルマ自転車で飛び越えていくという手段を思い至ったが――。
「……」
 悟志は胸から湧き上がる不穏を感じて、傍に落ちていた鉄の破片を手に取りバリケードの頂点を越えるように高く弧を描くように投げ込んだ。
 瞬間、言葉を無くすほどに猛烈な、物が熱されて空気が焼けるような激しい物音が響いた。そして、同時に駆け抜けた鋭い閃光と共に、溶けかかって真赤になった鉄の破片が地面に落ちる。
 ――悟志の嫌な予感は的中した。これで半ば強引に空を飛び越えようとすれば大変な目に遭っていたに違いない。

「それなら……おいで、磯撫で」
 静かな声で、己の影を呼ぶ――自主的・積極的に敵を殺害する怪魚として存在する悟志の影。それは、黒を伴い渦を巻き、浮き上がるように形を成すと、主の声に従うように相手と同化し――そこには、見る間に一匹の闇色の半魚人となった悟志の姿があった。
 ――バグンッ! そして黒い半魚と化した悟志が、有象無象の金属や何やらが積まれたバリケードとなっている障害壁を、まるで大口を開いて、プリンでも齧るかのような容易さで一気に食い破っていく。
 ゴクン、と呑み込めばその塊は影の何処かに溶け去った。
「うん、美味しくはないけど……」
 不可能ではない、と。悟志はしばらくバリケードを食べ続けたが――しかし人妖ならでは、とはいえ。食い破られた場所から、不安定さにこちらに向かって崩れ始める障害壁の一部を、片っ端から貪りかじり続けていく悟志に、それらは思った以上に身体に溜まっていき。
 気が付けば、こちらへの鋼鉄の雪崩れが落ち着く頃には感覚的には『お腹がいっぱい』とも言える状態になってしまった。

「限界ってあるんだね……じゃあ、」
 半魚人の悟志は、初めて感じ入る己の胃の限界を実感すると、くるりとバリケードに背を向けた。
 そうしてバリケードに突き出されたのは、無数の凶悪にも見える太く禍々しい鋭い針のついた大きな尾びれ。
 それを、かじりかけたバリケードを抉るように一薙ぎ二薙ぎすると、崩れかけこちらを呑み込もうとしていた金属塊にも近い障害壁は、一気に雪崩れる間もなく根こそぎ払われ、次々に弾き飛ばされていった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

クラウス・イーザリー
(敵がいないなら、ある程度余裕を持って行動できるか……)
とはいえ、いつ敵が戻ってくるかわからない
慎重に、でも迅速に行動しよう

物理バリケードは氷の跳躍を用いて乗り越え、ロックはハッキングで解除
ゲートも同じようにハッキングで開ける
いずれの障害も、乗り越えたり解除することが難しいようなら最大出力のマルチツールガンとレイン砲台で破壊する
……敵が異常を察知して戻って来そうだし、これをやるのは最終手段だな

全員が乗り越えるための時間を稼ぐため、ハッキングでの偽情報拡散はここでも継続して行う
『異常無し』と送っておけば、敵が戻ってくるまでの時間も長くなるかな……

●慎重警戒を伴にして
 クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)は周囲の様子を目にしては考えていた。
「(敵がいないなら、ある程度余裕を持って行動できるか……)」
 偽情報による陽動作戦も上手く行ったのか、敵の影は微塵も見受けられない。だが、訪れつつある夕闇によってバリケードを照らすように自動点灯し始めたスポットライトは、戻って来た敵にこちらの位置を伝えるには十分過ぎるものだった。
「(慎重に、でも迅速に――)」
 そう強く己の心に決めて、クラウスは冷静を伴ってそれでも素早く行動を開始した。

 物理バリケードが、天井がないからと易々と乗り越えられるものではないことは、他の仲間が証明してくれた。上空のレーザー網にも穴はあるかも知れないが、それを探している余裕は無い。
 クラウスは、僅かな思慮の後に眼前の金属が荒く積まれた障害壁の一部が、その積み方の乱雑さ故に、向こう側の見通せる場所がある事に気がついた。
 人がくぐり抜けられるスペースでは当然ないが、今回は反対側の空間が目に入るだけで十分――【|氷の跳躍《フリーズリープ》】√能力によって、その向こう側にいる一瞬のインビジブルに軽く手を伸ばす。すると、クラウスは瞬時にその姿を消して、己の立ち位置をインビジブルのいた場所――バリケードの向こう側に移動する事に成功した。今頃、クラウスがいた場所には疑問も持たず、ただ一匹のインビジブルが漂っているに違いない。

 物理バリケードを抜けて見えた先には、今度はロックによって制御されているゲートなど、様々な障害壁が展開されていた。
 もはや見るだけで若干うんざりしてしまいそうな光景が広がっている。それだけ敵にとって√EDENへの守りたいものがあることへの証明とも言えるが――。
「……さて」
 √ウォーゾーンに於いて、クラウスにとってはロック解除の為のハッキングは日常茶飯事だ。次の障害壁も紐解くように越えていく――問題は、これが幾つ続いているのか、だ。
 何しろ想定を越えて、数が多い。今回は情報操作で時間がどのくらい稼げるか、そして通路自体に完全な行き止まりがあるという可能性のもと、急ぐための折衷案として、大黒ジャンクションという最終目的地を定めた上で幾つかのルートに分かれて行動しているが、これは手段を持たない仲間は苦戦するであろう事は必至。
「――」
 ここで自分が、武力行使としてマルチツールガンとレイン砲台で最大出力を迸らせて、1ルート完全かつ確定した通路確保を行えば、仲間もそこを通りやすくなる――だが、敵が異常を感知して戻って来る可能性も非常に高い。最終手段だと言っても過言ではないであろう。
 実際、今後仲間がそのような手段を取る可能性もあり、そうでなくともどのタイミングで敵が戻って来るか分からない。
 幸いにもクラウスは、ここはさほど難しくなく抜けられそうだった。中核に辿り着く手前、クラウスは仲間全体が辿り着くまでの時間を稼ぐべく、ここでも機材のひとつをハッキングして【大黒ジャンクション:異常なし】という定期通信を装う偽情報を拡散する。
 敵は気付く様子もなく、情報の伝達は無事終了した。
 だが、何も無いとされている手前、そこで破壊活動などが行われれば、やはり敵は直ぐに異変に気付くことだろう。
 クラウスは小さくため息をつきつつも、残り続ける緊迫感に、静かに緊張を取り戻した様子で、改めて可能な限り近づいた中核へと視線を向けた。
 クラウスが、本能から感じ取る。
 そこには――何かいた。
 まだかなりの距離が離れているにも関わらず、今にもこちらの存在を捉えようとしている、極めて強力な存在が――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

セージ・ジェードゥ
アドリブなど歓迎

【心情】
伊達に長年『お世話』になってきたわけじゃ無いからな。あいつらの使うソフトもある程度は頭に入ってる。
慎重に素早くやっていくとするか。

【行動】
俺はハッキングや鍵開けを使いロックの掛かった扉を開けるよ。
機械側には長年『お世話』になっていた経験もあるから上手くハッキング出来るはずだ。
ただ油断はせずに慎重に素早くやっていきたい。
鍵開けの方もツールナイフからピッキングツールを出してやってみようか。
敵がいないとはいえ一応ジャミングも使い俺たちの存在が感知されるのを防ぐ。
ジョーニアス・ブランシェ
アドリブ・連携大歓迎

妨害壁を見上げる。何かしらあると思ってはいたが、これだけの規模を設置するとはご苦労なこった、と毒づきながら、さて、と考える。人類勢力に加えて別の敵対勢力に向けての牽制だろうが、こういうものはメンテやら何やらの都合で必ず隠し通路があるものだ。ならば。
√能力Energeiaにて歴代当主の一人を呼び出し、この妨害壁の隠し通路を見つけて貰おう。
見つかったなら、中に敵さん誰も居てくれるなよと願いながら手持ちのガンライフルを光線仕様に変え、静かに乗り込む。同行者がいるなら先頭を引き受けようか。可及的速やかに壁の向こう側へ辿り着き、内側から仲間がこちら早く来れるよう工作できれば理想的だ

●鉄塊をくぐり抜け
 眼前には、ただ無駄に投棄されたにしては、余りにもうずたかく積まれた鋼鉄のジャンクの山によるバリケードが存在していた。
 その頂点までを見上げようとして、そのあまりの高さにげんなりした様子でジョーニアス・ブランシェ(影の守護者・h03232)は呟いた。
「……何かしらあると思ってはいたが、これだけの規模を設置するとはご苦労なこった」
 その言葉を拾うように、傍らに立っていたセージ・ジェードゥ(影草・h07993)が小さく頷き言葉を返す。
「――しかもこのバリケードは敢えて不安定に作られてるみたいだな。頑丈そうに見えるが、中途半端に登ったりどかそうとすれば、一気に雪崩を起こして相手を呑み込む仕組みだぜ? その上で上空には自動機械による無差別レーザー攻撃……本当に『よくやりやがる』」
「……えげつないな。さて、俺はこの世界にはあまり知見がないわけなんだが――こういう牽制の類のものには、大体メンテやら何やら必ず隠し通路があるとみた。どうだ?」
 ジョーニアスがセージに問い掛ける。この世界に於いて、敵側にスパイとして身を置いていた彼以上に、現状この場にこれ以上、敵陣に詳しい存在はいないだろう。
「ああ、だが奴等は苛立つほどに巧妙だ。肝心の隠し通路の場所は恐らく通路ごとに違うし、道ごとまとめて既に捨て道として廃棄されてる場合も……」
「なるほど……? そりゃ、あたりを付けるのも面倒だな。ならば、」
 ジョーニアスが目を閉じて意識を集中させる。
『――我が願いを聞き届けよ、我が一族歴代当主よ』
 √能力【|Energeia《エネルゲイア》】が脈々と受け継いだ血の系譜から、ジョーニアスの一族から歴代の当主を一人その場に浮かび上がらせる。
『このバリケードの、向こうに通じる隠し通路を教えてほしい』――それは、敵も味方も誰も傷付けず、確かに困難を解決するのに必要な力として判断された。ジョーニアスの歴代の当主は、バリケードの端にあるひとつのタイルを指差して、陽炎が揺らめくようにその場から消失した。
 存在がAnkerとはいえ、やはり√能力者の力の行使は驚くべきものだ。セージが驚きに目を丸くしている間に、ジョーニアスはそのタイルを確認しに向かう。
 良く見ると、タイルはコンクリートに表層を偽装したセラミックでできていた。バリケードが崩れても巻き込まれない絶妙な位置。タイルを外すと、そこには√能力通り、通路下部へと繋がる階段が見出された。

 そうして、ジョーニアスとセージは、二人で通路下部へ降り立った。
 その先は、仄かな明かりが連なる地下のような通路になっており、無骨なバリケードではない代わりにシンプル故に頑丈なゲートがその扉を閉じていた。
「ここは、正統派のロックのようだな」
 ゲートの傍らにはゲートの制御ボックスのようなものがあり、そこには鍵が掛かっているのをジョーニアスが見つける。
「迂闊にドアノブに触れるのも危険だぜ『人間用の罠』かも知れないからな」
「――ああ、敵は機械だからドアに見えても、それを開ける仕組みがドアノブである必要がないのか……!」
「そうだ、だからこのドアノブは罠の可能性が高い。ここは俺がやる」
 ピッキングツールを含めたツールナイフを手に、システム制御されている事を視野に入れたカスタマイズゴーグルを頭に掛けながら、セージが告げる。
「――伊達に長年『お世話』になってきたわけじゃないからな。あいつらの使うソフトもある程度は頭に入ってる」
 この言葉にどれだけの苦渋が含まれている事か。この技術で、憎むべき機械群に取り入る為にどれだけの人間を犠牲にしたか――その言葉の意味はセージにしか分からない。
 だが、いよいよ反旗を翻す時が来たのだ。両親の敵を討ち、憎むべき戦闘機械群を自分の手で叩くときが――。
 セージの意志が、つい意気込みそうになる心を抑え込む。
 案の定、ドアノブをゴーグル越しで見れば、やはりそれは罠だと分かる。
 ここまでは順調だったが、油断は許されない。ここから先は、慎重さと素早さが同時に求められるのであるから。
 ハッキング端末に繋ぎ、ピッキングによるロック解除と同時に、警戒されないため、ここからの異常が伝わらないようジャミングをしながら作業を進めていく。
 ――しばらくして、ゲートはゆっくりと音を立てて開き始めた。
 ジョーニアスが、己の所持するガンライフルを光線銃仕様に組み替え、先頭を引き受ける。背後からセージが熱源の計測で敵の有無を測りながら先に進んでいく。
 そしてふたりは、警戒しつつも繋がっている階段から通路に再度上がって――感じ取った。
 伝わる空気からも分かる。ここから先に、明らかな『異質物』が存在しているということ――。
 ジョーニアスが小さく息を呑みながら言葉を漏らした。
「これは……内側から仲間に手引き工作など、悠長なことをやっている余裕はなさそうだな」
 敵の姿はまだ見えない。だが、それもすぐに把握されるであろう。
 それは直感というよりも、ふたりの本能に近いものだった。

 ジョーニアスとセージは、それぞれ咄嗟に武器を構えた。
 感じ取る――強大な敵の存在が、もう直ぐそこまで迫っている――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

金菱・秀麿
【三課】で参加【アドリブ歓迎】
飄々とした口ぶり 呼び方は名字呼び捨て

「さて、お次はこの堅牢な門を
 突破せにゃならん訳かい……」

大黒ジャンクション前のゲートを前に考え込む。

「力ずくで突破するのもありだが、
 イマイチ俺の性には合わんかなぁ」

頭を掻きむしりぼやいて見せる。

「隠し通路を探すって訳じゃないが、
 遺留品探しは得意な分野なんでねぇ……」

得意分野の遺留品探しで、
ゲートの周辺に目を凝らしてみる。

「ひょっとすると、
 突破の手掛かりが見つかるかもしれん。
 お前さんはどうする、志藤?」

一通りゲートの周辺を探し回り、
職務質問から戻って来た志藤に声を掛ける。

「よぉ、そっちはどんな様子だ?」
志藤・遙斗
【三課】で参加【アドリブ歓迎】
タバコを吸いながらゲートを見上げる
「さすがにこれを破壊するのは骨が折れそうですね。
さて、どうしたものか?」
タバコを吸いながらしばらく思案してから
「金菱さんは遺留品の捜索ですか?なら俺はどうしようかな?
ゲートを開けたいですけど、電子制御されていたら俺では難しそうですし、俺は隠し通路をさがしてみようかと思います。
都合よく知っているインビジブルが居れば良いんですけどね」
鎮魂用のタバコに取り換えて『職務質問』を使用
「申し訳ないのですが、この先に行きたいのですが、何かご存じありませんか?」
通路が見つかれば情報を共有する、見つからない場合は金菱さんに合流して遺留品の捜索を行う

●鎮魂の願いも添えて
「さて、お次はこの堅牢な門を突破せにゃならん訳かい……」
 ――白い艶やかな未知の金属でできた、向かい側の一切見えない巨大なゲート――傷ひとつ付いた様子の無いその扉の形をした壁は、金菱・秀麿(骨董好きの異能刑事・h01773)の前に、重厚感も顕わに存在していた。
 流石に日常から飄々とした雰囲気を絶やさない秀麿も、これから掛ける露骨に先の見えない手間を考えれば、果てのない疲労にげんなりせずにはいられない。
 同じく渋い顔をしていたのは、お気に入りの煙草を一気に肺の奥まで吸い込んで、それからゆっくりと呼気から尚も重量を感じさせる半透明の煙を零した志藤・遙斗(普通の警察官・h01920)だ。
「さすがにこれを破壊するのは骨が折れそうですね。さて、どうしたものか?」
 遙斗が新しい煙草に火を付け、道路を完全に閉鎖しているゲートを見上げる。僅かに見える頂点の高さより更に上――その直ぐ背後に、僅かに金属物を積み上げたバリケードの一部を見た気がして、遙斗は一際のタイムロスによる不安を感じ取らずにはいられない。
 一瞬、引き返し他の道を探すという手段も考えられたが、他の道は大黒ジャンクションの巨大通路の大きさと長さから、ふたりにその発案を奪うには十分だった。
「力ずくで突破するのもありだが、イマイチ俺の性には合わんかなぁ」
 秀麿が男らしい仕草で、思考が行き詰まったくせっ毛の頭を乱暴に掻きながらに口にする――実際、他の通路を探すくらいならば、ここを力尽くで突破した方が早いのは事実なのだ。
「そうだな……隠し通路を探すって訳じゃないが――」
 秀麿はそう告げて辺りを意識して全景を見渡すように目をやった。
「遺留品探しは得意な分野なんでねぇ……上手くいきゃ、それひとつ見つかるだけでも、突破の手がかりが見つかるかもしれん」
 本来ならば、繋がらないゲート突破と遺留品探し。しかし、秀麿にはそれを繋げる――√能力がある。
「金菱さんは遺留品の捜索ですか?」
「ああ、お前さんはどうする、志藤?」
「それなら、俺は……」
 遙斗は己の霊力を集中させて煙草の煙を何も無い空間に吹き付ける。すると、ふわりと魚の形をしたインビジブルの尾が視界の端に見えた気がした。
「俺は隠し通路をさがしてみようかと思います。ゲートを開けたいですけど、電子制御されていたら俺では難しそうですし――都合良く知っているインビジブルが居れば良いんですけどね」
「よし、それじゃあしばらくしたらまたここで集合だな。収穫がありゃ良いんだが……」
 この場合、多少の博打は止むを得ないであろう――それを合意として、ふたりはそれぞれ別行動を開始した。

 遙斗は、先程目にした気がするインビジブルが泳いでいった方向に数歩ほど歩いてそちらに目を向けた。
 煙草を好きな銘柄から差し替えて、霊媒鎮魂の為に存在する、まじない掛かりのものへと変える。味が好みな訳ではなく、あくまで業務用というものではあるが――それは、√能力の発現を可能とさせる。
『申し訳ないのですが、この先に行きたいのですが、何かご存じありませんか?』
 √能力【|職務質問《コエヲキカセテ》】――遙斗が声を掛け、ゆらりと紫煙が漂ったその先に――先程から辿って薄らと存在を感じ取れる程度であった魚型のインビジブルが、煙に触れると共に『生前そうであった』ひとりの戦場工作員の姿を取った。胸に、恐らくこの世界に合わせ改造しているであろう、かなり小さなレシーバー状の情報端末らしきものを入れているのが印象的だった。
 その人物は語る――『隠し通路は分からないが、自分は、この道を塞いでいるゲートの完全な解除コードを知っている』と。
 その工作員の話は続く。
『だが、この大黒ジャンクションでの戦闘の折に先にあった、鋼鉄塊のバリケードを対処しようとした瞬間、それは崩れなだれを起こした。逃げようとした矢先、ゲートが意図せず再度閉鎖され――その間に押し潰されて自分は死んだのだ』と。
 遙斗は、仇が取れるかは分からないが、『レリギオス・オーラム』の侵攻を止めるために動いている旨を伝えると、男はこちらにパスキーの暗号を教えた後、何かを言い掛けた後、ふわりとその場から消えてしまった。

「よぉ、そっちはどんな様子だ?」
 戻った遙斗に、ちょうどゲートの際で何かを拾ったらしき秀麿が声を掛ける。起きた事象をそのまま伝えると、秀麿は考えた末に手の中の拾ったものを遙斗に見せた。
 ――それは、遙斗がほんの先程、目にしたレシーバー状の情報端末と同じものだった。遙斗が僅かに顔色を変えて、先のインビジブルが同じものを所持していた旨を伝える。
 だが、同時に秀麿の手元にある既に『遺留品』と化した通信機器は、恐らく話の過程で一部が破損し、色は血の跡で赤茶けて、もう同じ機能は既に果たせないであろうことが窺えた。
 秀麿は、遺留品に意識を向けて、√能力【|遺留品はかく語りき《イリュウヒンハカクカタリキ》】を発動させる。
 ――これは、先の遙斗の能力とは異なり、『死者の一時的再起』ではなく『過去にあった所有者の、生前に於ける死の直前の記憶と、情報交換からの交渉を行う√能力。
『情報端末の持ち主の記憶』は語った。今は崩れ切り動かなくなっているが、当時の自身の身体は崩れたバリケードの下敷きになり、そしてこの情報端末だけが弾き出されて残されたのだと。
 ゆえに――その記憶が交渉として望むのはただひとつ。身体が下敷きにされた『バリケードをどかしてほしい』と。
 それが、己の最後の願いである、と。

 そして、教えられたパスキーで慎重にロックを解除し重厚な扉を開いた先。そこには半ば錆び付いた鋼鉄のバリケードが乱雑に崩れて、その一部が小さな丘くらいの高さで広がっていた。
 そして同時に――その約束を承諾した秀麿の手元には、交渉成立の証として√能力で出現した、この世界に於いては確かに【骨董品】とも呼べる『TNT爆弾の一式』が爆破装置ごと出現していた。
「……まあ、最終的には若干力押しになっちまったが、これがバリケードをどける一番の効果的方法という所か?」
「そうですね。地面の通路だけは、破壊しないように気をつけていきましょう」
 一度崩れてもう動かない、とはいえまだ高さはある。爆弾を使わずに人間が乗り越えれば、いつレーザービームの的になるかも分からない。

 選択肢は他に無く。
 そうして巨大通路には、鎮魂の代わりとして大きな爆発音が響き渡った――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

命護・凌哉
●アドリブ連携歓迎
一番楽なのは正面からこじ開けることなんだがそれはそれでリスクでけえし、んー。

とりま最初は『穢れを喰らう黒き竜性』で辺りの穢れを取り込み
『穢れを清める白き竜性』で浄化
不運に見舞われて失敗するリスクを最小限に抑えるぜ
次に【高速詠唱/多重詠唱】で仲間たちに【破魔】属性の【オーラ防御/エネルギーバリア】を付与
何かあったら護ってくれるハズだ

そんで【幸運招くは白羽の猫霊】を発動する
何かしら隠し通路なりの糸口になるものを子猫に探してきてもらおう
正面と隠し通路、ニ方向で攻め入れる形にできるのが理想だ
そうすりゃどっちかがしくじってもどっちかが成功できるハズだし、見つけたら仲間に連絡する

俺自身は【再臨する大地の守護竜】で真正面からゲートを破れないか試してみるぜ
灼熱のブレスと極寒のブレスを交互にぶっかけて脆くしたら突破できねえかなあ……
ついでに竜の姿に【おびき寄せ】られて他の仲間たちは隠れて行動しやすくなるだろ?
俺がダメでも他のみんなに繋げられるように、布石は万全にしときたいからな!
ヨシマサ・リヴィングストン
ふんふん、お任せください~。ボクはハッキングもある程度出来ますが本業はハードウェア方面です。こういうのは粉砕するのが一番早いです!
とはいっても完璧な粉砕には威力が必要なので~…威力は他の方に任せて、ボクは粉砕しやすいように場を整えていきましょう。『分解再構築プロセッサMk-II』と【メカニック】で扉の蝶番に当たる部分やバリケードの構造上一番弱い部分を解析、レギオンでそこを集中して破壊していきます。そうすればあとはドーンとやるだけで破壊出来るはずですよ~。
ま~【ハッキング】した方が早い場所もあるかな~と思うのでそこは臨機応変に対応して行きましょ~。

●精密機械は叩けば壊れる
「一番楽なのは正面からこじ開けることなんだがそれはそれでリスクでけえし、んー」
 命護・凌哉(大地を守護せし白黒の残滓・h01033)は悩んでいた。
 目の前には『如何にも重く強固な合金です』と言わんばかりの両開きの扉がひとつ。中央には更に『如何にも此処がその鍵です』と見て取れるような頭ひとつ分ほどの大きさをしたセンサーが付いている。
「これ、顔認証……とかな訳ないよな。どのみち俺、登録されているわけねぇし」
「――ああ、それ。気をつけた方がいいですよ~、システム認証や虹彩認証と思わせて、眼球ごと頭や身体をレーザーで灼き抜かれるケースが後を絶ちません~」
 凌哉の様子を目にして後を追い掛けて来た、ヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)が少し間延びしつつも慌てて告げる。
「マジか!! ……そうなると正面と隠し通路、二方向で攻め入れる形にできるのが理想だよな? そうすりゃどっちかがしくじってもどっちかが成功できるハズだし」
 仲間がひとりいるだけでも心強い。慌てて正面のセンサーから飛び退きつつも凌哉が考えたように口にする。
「ふんふん、お任せください~。ボクはハッキングもある程度出来ますが本業はハードウェア方面です。こういうのは……」
「こういうのは……?」
 何か特別な工作案などが飛び出すかもしれない、そのような凌哉の眼差しを一身に浴びて――ヨシマサは断言した。
「粉砕するのが一番早いです!」
 凌哉は全力でずっこけた。しかし――どんな機械も粉砕すればただの金属。真理である。
「とはいっても完璧な粉砕には威力が必要なので~……」
 と、今度はヨシマサが考え込んだ。見た目から感じるこの重さの両開きである金属扉。鍵部分だけを破壊したとしても、今度は動かすのに労力が掛かることは想像に難くない。
「ああ、それなら――! 金属なら、灼熱のブレスと極寒のブレスを交互にぶっかけて脆くしたら突破できねえかなあ……」
「名案です! それなら、ボクは粉砕しやすいように場を整えていきましょう~」
「よしっ、それじゃあまずは下準備からだな。俺にも出来る事と言えば――」
 凌哉はしばらく考えた後に、己の固有能力とも言える自分の力を発動させた。
 まずは周囲に漂う、生命に害成す穢れの概念を取り込む『|穢れを喰らう黒き竜性《ファウルネシヴォア・ネグロドラゴン》』を発動し、自身にそれを集積することで、他存在が事故などによる不運に襲われて行動失敗するリスクを最小限に。そのままでは自身の行動に影響するため、同時に穢れを浄化する『|穢れを清める白き竜性《ピュリフィケイト・ブランシュドラゴン》』で自己を循環浄化する。
 そして、念には念を入れて複数の術式を一気に纏め上げた詠唱を元に、ヨシマサに魔を破砕する魔力防御を展開させた。
「お、おお。何だか良く分からないですが、凄いですね~」
 竜漿という形で魔力が発展している√ドラゴンファンタジーの魔法は、√ウォーゾーンに端を発するヨシマサには理解の出来ない神秘の嵐だ。それでも、ヨシマサはそれらを空気の変化として感じ取りながらこくこくと頷いた。
「あ、一緒にこいつも連れていってくれ、きっとあんたを助けてくれると思うぜ!」
 重ねて凌哉は√能力【|幸運招くは白羽の猫霊《フォーチュンカムズ・スピリットキャット》】を発動させる。すると何も無い空間に、くるんと一回転して羽の生えたふわふわの長毛種の猫が現れた。羽の生えた子猫はヨシマサの足元に寄ると「にゃ~ん」と可愛らしく一声鳴いた。
「おお、これはもふもふしたくなります!」
「ああ! いくらでももふもふしていいぜっ!」
「これは……っ! 素晴らしい毛並みです――!! さて、それじゃあ行きますか~」
 ヨシマサが白猫の感動的な毛並みを堪能した後、大きく顔を上げて、改めて扉の全景を確認することにした。

 金属扉は仕組み上は両開きであると見受けられたがそれ以上は一見では分からない。こういう防衛壁ほど脆い場所ほど厳重に隠されているものだ。
 さて、とヨシマサが考えた先、
「にゃ~ん」
 と白猫がまるでヨシマサを案内するようにトコトコと歩き出し始めた。ヨシマサが後を追った先で、白猫は役割を終えたようにまたクルンと一回転してその姿を消した。
「ふむ、ここですか……なるほどなるほど、そうなると――」
 ヨシマサが先の拠点で見て、分解再構築していた、敵から鹵獲した通信機器を思い起こす。機械の構造というものは常に最適化されていくものだ。そうすれば、技術は流用され必然的に要の部分の機能はどこかしらが似てくる――。
「――見えました。要はここと、もう一つが『あちら』ですね~」
 ヨシマサはそのメカニズム技術をもって、構造の要が二カ所であることを完全に把握しきる。そして『LS版工具箱改β2_2』から道具を出すと、√能力【|分解再構築プロセッサMk-II《クラフト・リデュース・プロセッサマークツー》】によって、構造を熟知していても尚も手間となる外部防御装置を瞬時に分解解体し、あっという間に構造破壊の重要部分を露わにさせた。
「さて、やっちゃいますか~」
 ヨシマサの周囲にふわりと自身のレギオンである『シーカーズ・フレアVer.1.0.52』が浮き上がる。
 焦点を目視する――瞬間、ヨシマサの脳内に埋め込まれたチップに反応したレギオンは、的確にその思考に基づき扉の構造的な弱点とも言える部分を木っ端微塵に破壊した。

「いけました! これであとは『ドーン!!』とやるだけで破壊出来るはずですよ~」
「よっしゃ! 後は任せろっ!」
 大きく上がるヨシマサの呼び掛けに、待ち構えていた凌哉が応えた。
「行くぜ!!『焦熱八寒のフルコースを喰らいやがれ!!』」
 言葉と共に、凌哉の身体が爆発的に巨大化し、気が付けば純白から漆黒までのグラデーションを伴う一体の『竜』がそこには存在していた。
 √能力【|再臨する大地の守護竜《ガルディアンド・リンドブルム》】――大黒ジャンクションに至る巨大通路に現れた、一体の存在感溢れる竜が、その口を大きく開く。
 口内に見える、赫々と燃える朱赤と凍てつく白が相反せずに同在し合う――それらが、竜の瞳が大きく見開かれた瞬間に、苛烈なドラゴンブレスとして一気に金属扉へと叩き付けられた。
 √ウォーゾーンにて使われている特殊合金といえど、ここまでの熱波と冷気は想定もしていなかったであろう。扉は先程ヨシマサが破壊した部位から、熱膨張と収縮を繰り返し、盛大な破壊音と共に中央から縦にひとつ大きく罅が入り、その後幾重にも繰り返されたブレスによって各所に猛烈な罅割れとして刻まれていき――最終的に、扉は激しい音を立てて見事に粉々に砕け散った。

「お見事です! しかし、その姿少し目立ちますかね~……」
 今回行動した一行の中では、ここを通るうちこれが一番派手な破壊行為となった。破壊行為のみならず、とにかく超大となる竜の姿。これが目立たないはずがない。
 体内の竜漿を使い切れば、気絶は免れない――それを避けるべく凌哉は扉破壊と共に急いで元の姿に戻る。
「いや、あれなら敵がおびき寄せられて、他の仲間たちは隠れて行動しやすくなるだろ? ――他のみんなに繋げられるように、布石は万全にしときたいからな!」
「なら、こちらは急ぐとしましょう~! 気付かれた敵に捕まったら元も子もありませんからね~」
「おうっ!!」

 そう、ここの大黒ジャンクションにおける通路開放は、自らの道を切り開くだけのものでは無い。自分達も知らない他の√能力者に繋がるものだ。
 大黒ジャンクションの破壊による防衛の一手。この作戦結果は、この場限りのものではないのだから――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『スーパーロボット『リュクルゴス』』


POW 超大型光線砲リュクルゴス・レイ
X基の【超大型光線砲】を召喚し一斉発射する。命中率と機動力がX分の1になるが、対象1体にXの3倍ダメージを与える。
SPD 斬光飛翔翼アポロニアウイング
【エネルギーフィールド】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【アポロニアウイング】」が使用可能になる。
WIZ 電撃放射角ケリュネイアホーン
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【角状の部位からの放電】で300回攻撃する。
イラスト key-chang
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

 遮蔽物のない広い通路。そこに一際、強大な一体の『何か』が君臨していた。
 ――白と金色、その風合いは異形でありながら、確かな王者の風格を滲ませて存在している。
「来たか」
 長大な翼から響く金属音。光り輝く角は、幻視すれば光輪にも見える神秘的な勇猛さ――人間より幾回りもある、一羽の流麗な鳥を思わせるシルエットが、√能力者の方へと向き直った。
「我が名は、レリギオス・リュクルゴスの王――スーパーロボット『リュクルゴス』」
 どこから声を出しているのかは分からない。だが、人語の知性を宿した、その鳥とも獣ともつかない頭部に宿す瞳は、確かに√能力者達を捉えていた。
「以前より目を付けていた、この場の『道』から煩わしい熱源が消えたと思い、自ら様子見に来れば――なるほど」
 静かに、荘厳な声が響き渡る。
「来るがいい。小さき存在達よ。目的があるならば……我を退け、その武勇を見せてみよ」
 それ以上の言葉は無かった。
 だが、リュクルゴスの頭部から伸びる、黄金の角が細やかに放電し火花を散らし始める。

 ――臨戦態勢。目的はただひとつ。
 スーパーロボット『リュクルゴス』を破壊せよ。
久遠寺・悟志
敵の心は読まない
きっと嘘はついてない
全力でぶつかり合う、それだけだ

名乗り返すよ
僕は√能力者、久遠寺・悟志
行くよ、リュクルゴス

戦闘に入ると同時に、【くらがりの大蛇】へと異形化
スーパーロボットvs大怪獣……住民が見たらどんな顔するんだろうね

敵の攻撃は超大型光線砲の一斉発射だね
一斉発射ってことは攻撃一回分だから、どんなに威力が高くても、無敵状態で耐えられるはず
もし連射されると危ないけど、そのことがバレないよう演技する
妖力の減少は隠し、「いくら撃とうとエネルギーの無駄」と思わせるよう振る舞う

這いずり敵に接近し
毒使いとして、猛毒のブレスを浴びせるよ
金属も腐食させる猛毒で、可能な限りダメージを与えていくね

●真実を見据える|心《め》
 その響き渡る言葉には、確かな王の尊厳が在った。
 鈍色じみた重量感ある、それでも澄んだ金属音。それが久遠寺・悟志(見通すもの・h00366)の方角に動かされる。
 機械故にほぼ動かす必要のない眼孔は、確かに悟志へと向けられていた――。
「(きっと――その言葉に、嘘はついてない)」
 悟志はこれから始まる戦闘に備える為に、指に触れていた瞳を隠す為の包帯から、そっと手を放した。
 人妖『さとり』として、自分の存在として嫌が応でも付きまとってきた、その『相手の心を読み抜く』能力――だが、それが無くても、分かるのだ。
 今、目の前の相手は、ゼーロットに与しているものではなく。しかし、そうでありながら確かに『強く』存在している敵なのだと。
 それならば、と。悟志は心に決める。
 ――全力でぶつかり合う、それだけだ――

「僕は√能力者、久遠寺・悟志――行くよ、リュクルゴス」
 名乗られれば名乗り返すは、恐らくこの相手には礼節にも至る。静かな決意溢れる言葉に、リュクルゴスの気配は確かに頷くようにその空気を揺るがせた。
 次の瞬間。悟志の周囲を漂う空気が、轟と渦巻き周囲を取り巻く。
 暴風が吹き荒れ、収まった時。そこには広場で並々ならぬ巨大なとぐろを巻く、一体の大蛇の姿があった。
 √能力【くらがりの大蛇】――周囲に一般人がいればこの光景はどう映っただろうか。既に夜となり灯りが煌々と照らされる大黒ジャンクションにて、スーパーロボットにも負けぬ巨躯を誇る、妖異の蛇が牙を剥く。
『ふむ……』
 リュクルゴスはその様に小さな感銘を示すかのように言葉を落とすと、その返礼であるかの如く、胸元に位置する宝珠を中心に現れた無数の球体ユニットに、一気に熱を集め始めた。それは鋭い白光となり闇を刺すように輝き始める。
 大蛇が夜に溶けるようにうねり近づく。しかし、その動きを世界ごと切り裂くように、リュクルゴスから放たれた、太くそして全てを焼き尽くすかと思われた超大型光線砲による一閃【リュクルゴス・レイ】が大蛇を――悟志を焼き斬り払った。
『これで――何と……!?』
 リュクルゴスから驚きの声が上がる。大蛇と化した悟志は無傷。その動きを止めることなく、リュクルゴスへと鎌首を持ち上げる。
 だが――一方で、悟志の方も決して完全な無傷な訳ではなかった。身体的ダメージはゼロ。しかし、受けた攻撃は確かに、無敵の代償として悟志の体内にある妖力をごそりと奪い取っていったのだ。
 次にもう一度同じものを受ければ、身体はともかく妖力切れによる気絶は避けられない。
 しかし。連発出来るものでもないのであろう、リュクルゴスが主砲ではなく、先に召喚した小さめの補佐ユニットらしきものから細いレーザー光線を無数に悟志に向かい奔らせる。
 ――大蛇として這い寄る、悟志の『身体は』無傷。しかし、その妖力は見る間に削られていく。
「(気付かれちゃ……いけない……!)」
 削られる妖力に遠くなる意識をそれでも保つ。動きをそのままに、敵に近づくと、悟志は強固な金属をも腐食させる猛毒のブレスを噴き出し、相手に叩き付けた。
 敵が、場を離れようと飛翔しようとする。しかし灼き払い動きを止めることを前提とした動きは、悟志への接近を完全に許していた。ブレスの回避は容易ではない。
『ぐ……っ!』
 上空へ翔け上がり旋回することで避けようとしたリュクルゴスの神々しくも思われた艶やかに光を反射する翼の一部が、その塗装と内部を剥がし溶かし、鈍い合金を露わにしていく。
 猛毒のブレスによる追従は続く。それは悟志の妖力が続く限り、見る間に次々と、相手の身に備えられた白金の輝きを奪っていった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

クラウス・イーザリー
「……俺達の狙いはオーラムであって、お前じゃないんだけどな」
そんなことを言ったところでリュクルゴスが見逃してくれる筈もない
想定外の事態だけど、頑張って勝つしか無いな

決戦気象兵器「レイン」を起動
300発のレーザーを角や翼、仲間が傷付けた場所に集中させて攻撃
相手が飛び回って攻撃が当て辛いなら広範囲にレーザーを降らせて動きを牽制する

ケリュネイアホーンの放電はエネルギーバリアと電撃耐性、霊的防護を重ねて凌ぐ
接近されたらスタンロッドの鎧無視攻撃で反撃しよう

別の派閥のボスが出てくるとは思わなかったけど、敵が誰であれ退くことはできない
人類の反撃の第一歩なんだ、誰にも邪魔はさせないよ

●強き決意と意志の下
『スーパーロボット【リュクルゴス】』――それは『巨大派閥リュクルゴス』の王にして、戦闘機械群の中でも数少ない『スーパーロボット』の領域に辿り着いた稀有な一体。
 この√世界の存在にはあまりにも悍ましく、他√世界の存在には神々しさすら感じられるやもしれない存在だ。
 だが、どちらにせよ今は、立ち向かうべき相手。
 たとえそれが――統率官『ゼーロット』より強力な可能性を秘めていたとしても。

「……俺達の狙いはオーラムであって、お前じゃないんだけどな」
 ぼそり、と。クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)は、若干の忌々しさを交えて呟いた。今回のクラウス達の目的は、あくまで『レリギオス・オーラム』を叩く事にある。本来ならば、世界中に蔓延している戦闘機械群の別派閥までに手を出す余裕などありはしないのだ。
『……』
 対して、リュクルゴスは沈黙を返した。まるで、それに答える言葉は存在しない、と言わんばかりに。
 そしてリュクルゴスは動きもしない。あくまで、行動で示しているのだ――この場を退く気は欠片もありはしない、と。
 そして、瞳孔のようなアイモニターが、確かにクラウスを捉えるの様を気配から察知する。
「……見逃してくれるはずもない、か」
 今回の作戦は、ここ大黒ジャンクションの破壊。別派閥とは言え、それと同じ√EDENへの道を狙う存在が、それを黙認する訳がない。
「想定外の事態だけど……」
 クラウスの背後を、ひとつひとつが目に捉えるのも困難な粒子状の『レイン砲台』が、まるでふわりと湧き立つ霧のように取り囲む。
 それは、この√世界で死んだ親友の形見のひとつ。ようやく使いこなせるようになった、自分の|力《ねがい》の形。
「――頑張って勝つしか無いな」
 言葉を受けて、リュクルゴスの黄金の角が電流による火花を散らす――それが、苛烈な戦闘の合図となった。

 戦場は一瞬にして、夜の闇が司る世界を一瞬で閃光が散りばめられる、場違いなまでの華やかさに塗り替えた。
 クラウスの放つ√能力【決戦気象兵器「レイン」】が、先の戦闘で腐食したリュクルゴスの角から翼に掛けて中心に撃ち放たれた。指定地点から半径円状に展開されたレーザー光線が、劣化した部位を次々と打ち崩していく。
『成る程……!』
 リュクルゴスが苦痛と感銘を交えた言葉と共に、その意図を察して、上空を旋回して一気にその場から距離を取る。
 同時に遠方、その射程外まで逃れたリュクルゴスの角が一瞬、ひときわの輝きを放つように爆ぜた。
 だが、これは損傷による爆発ではない――とっさに察知したクラウスが、コートに隠し持っていた魔法剣を核として、自己を中心に防御壁を張り巡らせる。
 リュクルゴスの存在感を重ねる電撃放射角、ケリュネイアホーンから弾けた一筋の電撃が大黒ジャンクションのコンクリートを放電しながら駆け抜けた。
 クラウスが張り巡らせた防壁が悲鳴を上げる。だがクラウスは、ここはまずは耐え凌げればよいと、魔力を一層の防壁強化へと回し切る。正確には――これを耐え凌げなければ自分が死ぬ瀬戸際であると、本能が察していたのだ。
 防御壁を駆け巡り罅を入れかけていた放電流が、一際の衝撃と共に終わりを告げる。その瞬間を隙と見たリュクルゴスが、確実に屠るべく一気にクラウスとの距離を詰め接近してくる。
 しかし――その瞬間が、隙となったのはリュクルゴスの方だった。
 接近しての重なる金属音と共に払われようとする翼の殴打。それに、クラウスは重ねるように最大出力にした高圧電流を備えたスタンロッドの一撃を叩き付けた。
『……ッ!!』
 リュクルゴスの翼の一部に電流が走り、ショートした後、小爆発を起こす。
「別の派閥のボスが出てくるとは思わなかったけど、敵が誰であれ退くことはできない」
 クラウスが、エネルギーの疲弊により両肩で息をつきながら、確かな言葉を口にした。

「――人類の反撃の第一歩なんだ、誰にも邪魔はさせないよ」
 ひとつ深呼吸をして、そして告げる。
 その言葉に、誰よりも強い意志と決意を滲ませながら。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

金菱・秀麿
【三課】で参加【アドリブ歓迎】
飄々とした口ぶり 呼び方は名字呼び捨て

「こりゃまた随分な大物のご登場だね……」

カミガリ式M60で威嚇射撃をしながら、
リュクルゴスを牽制しようとするも、
その機動力の高さに思わず舌を巻く。

「伊達にスパロボは名乗ってないって訳かい」

放たれた光線砲をすんでのところで回避し、
物陰に隠れ拳銃の弾丸を装填する。

「志藤、俺が奴の動きを止める。
 その隙にお前さんはあのデカブツにキツイ一撃を喰らわせてやんな」

志藤と連携してリュクルゴスを攪乱しつつ、
自らの√能力『金縛法』で、
リュクルゴスの動きを止める陽動を試みる。

「かなりの機動力だが……少し大人しくしてもらおうか。そこを動くなよ!」
志藤・遙斗
【三課】で参加【アドリブ歓迎】
タバコに火を付けながら『リュクルゴス』を見上げて
「これは中々の大物が出てきましたね。さてどこから攻めるのが良いですかね?」

戦闘時は刀と銃で攻撃
銃でまずは牽制を行い隙を見つけて斬りかかる
金菱さんが光線を避けた場合
「やはりあの光線は厄介ですね。うまく懐に入れれば良いんですけど・・・
伊達にスーパーロボットは名乗っていないって事ですかね?結構隙が無いですね」

金菱さんのフォローに対して『正当防衛』を使用、移動速度を上げて敵の死角から攻撃を行う
「了解です。一気に接敵します。援護は任せました」
上手く相手の死角に潜り込んで攻撃が出来た場合
「こういうでかいのは足元が案外死角って相場は決まっているんですけど、はたしてアナタはどうですかね?」

戦闘後は新しいタバコに火を付けて
「これでここでの任務は完了ですかね?後は署に戻って報告書と経費の計算と・・・
事務系の仕事はたくさん残っていますし、もうひと頑張りしますか」
とまた元の日常に戻ります

●銃乱閃撃の威
「こりゃまた随分な大物のご登場だね……」
 バリケードを爆破した先、障害物のない視界に飛び込んできたもの。それは、遠目に見たふたりから言葉を奪うには十分だった。体高、人の何倍もある鳥のような形状の何か――話には聞いていた。あれが『スーパーロボット』への進化体に違いない。
 既に交戦は始まっている。悠長に驚き立ち尽くす時間は無いと、金菱・秀麿(骨董好きの異能刑事・h01773)と志藤・遙斗(普通の警察官・h01920)の二人は現場へと駆け出した。
 近づけば、敵はその外部塗装の一部は剥げ、翼と思わしき部位の片翼の先端からは爆破音と共に煙を上げている。
『……仲間、か』
 相手は金属。しかし、空気を震わす声音は、その痛覚を滲ませた人間と同じような反応をして響き渡った。
『良かろう……我が名は「スーパーロボット【リュクルゴス】」レリギオス・リュクルゴスの王である』
 名乗りを上げる眼前の巨躯は、今確かにこちらを捕捉した。実質、眼球部位にあるカメラパーツが向けられただけだとしても、敵の意思は確かにこちらにあるのが分かる。
 しかし、その威圧感を前に、躊躇わず身に受けながらも一切怯まず対峙して、遙斗は堂々と煙草に火を付け。敵――この世界のある種の頂点にして更なる異能『スーパーロボット・リュクルゴス』を仰ぎ見た。
「これは中々の大物が出てきましたね。さて」
 そして零れゆく紫煙を一服させて、はっきりと宣言する。
「――どこから攻めるのが良いですかね?」
 遙斗は吸っていた煙草を通路の床に落とし足で勢い良く擦り消す。
 行き場を無くして漂っていた場の空気が、仕草ひとつ。それだけで、戦場と化した瞬間だった。

 ぶつかり合った弾丸が弾け飛ぶように、ふたりがリュクルゴスを挟み込むように左右に対峙する。
 遙斗が、リュクルゴスに手に馴染んで抜き慣れた特式拳銃『八咫烏』の一撃を見舞う。霊力を込めた重たい一撃は、避けようのない巨体に小さくも確かな穴を穿つ。
 しかし、リュクルゴスは微動だにしない。だが、確かな敵意が遙斗の方へと向けられた。
「おっと! こっちを向きな!」
 遙斗の方が戦闘における手数が多い――ならばと、敵から逸れた意識を敢えてこちらへと引き寄せるように、秀麿がカミガリ式M60で己の技巧を限界まで駆使した五連撃を威圧射撃として叩き込む。しかし二発が当たった段階で、天高く飛翔したリュクルゴスに残り三発が虚空を駆けた。同時に、遙斗が引き抜いた日本刀型退魔具『小竜月詠』の一撃もその風切り羽の表層を軽く傷付けるに留まる。
「チッ! 流石はあの姿も伊達じゃないってか……と――っ、奴さん仕掛けてくるぞ!」
 瞬間、上空に迸った雷撃に秀麿が遙斗に声を飛ばして、自身も物陰へと全力で走り込む。
 ふたりが、数少ない僅かな物陰へ飛び込むのと、リュクルゴスの天頂から【雷撃放射角ケリュネイアホーン】が通路地面に叩き付けられるのはほぼ同時だった。
 降り注ぎ巡らされる放電の網――微弱ながらも指定範囲に降り注ぐ三百回にも渡る連続攻撃。
「ひゅー……っ、伊達にスパロボは名乗ってないって訳かい」
 秀麿がこの隙に手早く物陰の外を窺い、同時に手慣れた様子で、素早く先ほど弾丸を使い切った、視界にも入れていない手元のリボルバーへと装填を行っていく。
「これは――」
 嵐が止むのを待つように、リュクルゴスの前方に展開された放電の光線波が引くのを待つ。だが、戦況は良くなるどころか、物陰はその攻撃により見る間に端から削れてふたりの居場所を削っていく。
「結構隙が無いですね……やはりあの光線は厄介ですね。うまく懐に入れれば良いんですけど」
 秀麿はしばし思考を巡らせ、ひとつ浮かんだアイデアに装填を終わらせた銃を仕舞い込む。
「志藤、俺が奴の動きを止める。その隙にお前さんはあのデカブツにキツイ一撃を喰らわせてやんな」
「了解です。一気に接敵します。援護は任せました」
 遙斗はそれだけの話を得れば十分とばかりに、細められた瞳に再び付けた煙草の火を映す。
 紫煙がゆらりと遙斗の周囲を取り巻いていく――重ねて使用した√能力の一部により、その身動きを風よりも速くした遙斗が、一瞬で雷撃放電範囲の外に躍り出た。
 リュクルゴスの動きがそちらへと向く。重ねて通路を疾駆した遙斗が、リュクルゴスの体躯の死角から八咫烏の弾丸を撃ち放つ。
 そして放電がまだ続く中、ついに物陰が崩壊した――だが、それを機とばかりに秀麿は動かない。
 秀麿にダメージが無いわけではない。しかし、チャンスは敵を視界に収められるこの一瞬であればこそ。

『……少し大人しくしてもらおうか。そこを動くなよ!』
 言葉が空間に爆ぜた。
 √能力【|金縛法《カナシバリホウ》】――己の叫びを引き金に視界の全対象を麻痺させ続ける。強力だが、目を閉じた瞬間に終了し、休息しなければ再利用もかなわない。
 だが、その分効果としては明瞭な結果として表れた。
『……ッ!』
 全身に黄金のエネルギーフィールドを張り巡らせ、二人の方へと接敵していたリュクルゴスは、見事に轟音と共に地に墜ちる。
「志藤、今だ!」
「はい――!!」
 今や、ケリュネイアホーンの放電は音沙汰も無く消え去った。だが、微弱とはいえ雷撃の中で金縛法を解き放った秀麿の目も長く続くものではない。
 時間は限られている、だが遙斗の動きはそれに勝った。
 指の煙草が尽きる前までの刹那。最後のひと吸いから呼気として溢れた煙が武器である小竜月詠を取り巻き――遙斗は、ほぼ瞬間的にその姿を消し、未だもがき体勢を立て直そうと飛翔しかけたリュクルゴスの真下へ。
「こういうでかいのは足元が案外死角って相場は決まっているんですけど――はたしてアナタはどうですかね?」
 √能力【|正当防衛《セイギシッコウ》】――煙を切り裂くように見えた刀身は一瞬。直ぐにその姿を朧月夜の光を思わせるように霞ませる。
 リュクルゴスは、その声に飛翔をも躊躇わない。それこそが最善手であるのを、この機体は何よりも聡明に理解していた。
 故に、
『悪いが【悪】は斬る!』
 発動された、霊剣術・|朧《オボロ》の空間ごと切り裂く装甲を無視した居合いの一閃は、リュクルゴスの胴体下部――鳥の尾羽を含めた、下翼すべてを一斉に斬り裂いた。
 苛烈なまでに鋭い閃撃。だがこれが、リュクルゴスにおける被害の最小となったのだ。

『グアッ!』
 胴体下部損傷。リュクルゴスに一際大きな爆発が起こる。
 再び地に墜ちた敵の爆破に巻き込まれないように、遙斗は距離を取ると、秀麿の元へと引き返す。
 遙斗は、胸の奥から深く息を吐き出して、改めて自身のお気に入りの煙草に火を付けた。
「さて、これでここでの任務は完了ですかね?」
 深く燻らす煙草の味がようやく身に染みて感じられる。
「ああ、そうみたいだな」
 既に物陰から瓦礫片にまで削られた物体の傍で、ようやくまともに動けるようになった秀麿が軽く身体を伸ばす。
「後は署に戻って報告書と経費の計算……」
 今回は結構な重労働だった。そして、遙斗がようやく戻れるであろう日常に想いを馳せた――その瞬間、
『……見事だ。だが、敗北には、早い』
 声が響いた。同時に、その巨体に火花と小さな炎を見せながら、リュクルゴスが蹌踉めきながらも再飛翔した。
 そして、パーツを飛散させながらも恐らく一時的な自己修復をしているのであろう、中空で滞空する間にも爆発が静かに収まっていく。

「――……。事務系の仕事はたくさん残っていますし、もうひと頑張りしますか」
「やれやれ、残業手当はつくかねぇ……」
 いつもの日常には、もうしばらく掛かる事は必至――ならばやるべき事はただひとつ。
 そうして、秀麿は装填した拳銃を構え、遙斗は改めて己の刀の柄を強く握り締めた――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​ 成功

ヨシマサ・リヴィングストン
リュクルゴス…!?うーん、レリギオス・オーラムの戦闘群しかいないとタカを括ってましたがまさか別派閥まで出てくるとは…。
しかし撃破する敵であることに変わりはありません。少し計画が変わっただけです。リュクルゴスは予想外ではありましたがスーパーロボットの存在は『いくつかの冴えたやり方』で織り込み済みです。【ハッキング】【ジャミング】でリュクルゴスの【エネルギーフィールド】の展開を阻止してやりましょう!
ケリュネイアホーンなどの攻撃は【ビニール傘】と簡易的に作ったバリケードでここは凌ぐしかないですが…バリアはありませんし、攻撃な得意な人にバトンタッチです!トドメは任せました!やっちゃってください!
セージ・ジェードゥ
アドリブなど歓迎

【心情】
大黒ジャンクションにあんなのが来るとは思わなかったがやるしかないな。
スパイであるのがバレるとまずいから陰ながらになってしまって申し訳ないが援護させてもらう。

【行動】
まずはジャミングを使った後に正体を隠し物陰に隠れる。
そのまま召喚された超大型光線砲の一機をハッキングし制御を奪う。
奪った光線砲で敵や他にも召喚された機械を攻撃させる。
破壊されれば別の光線砲をハッキングし攻撃を繰り返す。
ただ、同じ場所でハッキングを続けるとバレかねないから一定時間が経過したら目立たないように気をつけて逃げ足やクライミングなどを使い場所を変えつつ仲間を援護する。

●奇跡と徹底防戦の効果
 爆煙による熱波がここまで伝わって来る。包まれた煙の合間に見える炎を切り裂くように、一体のスーパーロボットが上空に舞い上がった。
『流石である……戦闘、継続』
 応急的な自動修復を行っているのであろう。連鎖的に繰り返されていた爆発が収まり始める中で、そこには細長い両足パーツの片方すらも斬り裂き挫かれ地に墜ち、尾羽付近に収納されていたアポロニアウイングまでも罅入った『リュクルゴス』が中空に滞空している。
 その様子を目にしていたヨシマサ・リヴィングストン(朝焼けと珈琲と、修理工・h01057)が思わず緊張感に息を呑んだ。
「リュクルゴス……!? うーん、レリギオス・オーラムの戦闘群しかいないとタカを括ってましたがまさか別派閥まで出てくるとは……」
 その姿と声を視認すると同時に、ヨシマサの近くにいたセージ・ジェードゥ(影草・h07993)は咄嗟にステルスクロークを翻し、物陰に飛び込むように隠れ潜んだ。
 セージは、『戦闘機械群に味方している人間』言わばスパイという位置にある。誰かのAnkerであり√能力者ではないセージが戦う為には、今後もその立ち位置を遵守する必要があるのだ。その為、セージは申し訳なさを交えながら今回の戦闘でも陰ながらの援護に回る。
 ヨシマサもその事情を即時把握し、敢えてそちらに視線は向けずにリュクルゴスを凝視した。
「しかし――撃破する敵であることに変わりはありません。少し計画が変わっただけです。リュクルゴスは予想外ではありましたがスーパーロボットの存在は事前情報からも織り込み済みです。なので……ふふ~、こんなこともあろうかと思って」
 ヨシマサは胸元から、ひとつのレシーバーサイズの機器を取り出す。
「前々から使おうと作っていたこのメカが役に立ちます~っ。名付けて【スーパーロボットの攻撃法は『こうなるんじゃないかな大作戦』】!」
 それは、√能力【|いくつかの冴えたやり方《センタクシノウチノヒトツ》】のトリガーとなるものだった――作戦行動の因果律により、視界内の敵の行動を一度だけ失敗させる、と言う非常に強力なもの、なのだが。
「さあ、このレシーバーからの特製ハッキング&ジャミングの合わせ技で、スーパーロボットのお約束! そのエネルギーフィールドの展開を阻止してやりましょう!! ……おや?」
 次の瞬間、ヨシマサにとって想定外の出来事が起こった。
 エネルギーフィールドは確かにリュクルゴスも得意とする戦法のひとつである。だが、発動されたのはエネルギーフィールドではなく、胸の核とも思われる中心をベースに召喚された無数の『超大型光線砲台』だった。
 そして、
「え、エネルギーが集約していますね――!?」
 ターゲットは既にこちらへと捕捉されているのが気配で分かった。そして、あれらがスーパーロボットにそれはそれで良くある超巨大レーザー砲の類であった場合、ここから避ける為に走ったところで、このタイミングでヨシマサに逃れる術はない。
「……ッ!」
 それでも諦めるつもりはない。僅かな可能性に懸けて走る。しかし――致命的な状況に代わりはない。

 そして、敵の主砲【超大型光線砲リュクルゴス・レイ】が、発射されようとした瞬間――その一条となるはずだった、超大型光線砲の一基がエネルギーの貯蔵量を狂わせて、隣の砲台一基と諸共、その場で爆散四散した。
『何っ!?』
 リュクルゴスから動揺の声が響き渡る。
 その合間にも、召喚した砲台が次々に暴走しては、自壊或いは同士討ちに近い破壊により、リュクルゴス・レイを構成する光線砲が次々に数を減らしていく。
『そこか!』
 リュクルゴスが異変の発生源を感じ取って、先ほど爆破で落ちた自分の破損パーツのひとつを物陰へと弾き飛ばし叩き付ける。
 しかし、その時にはその原因の主――姿を消しているセージは、己のパルクスローにより別の小さな物陰へと移動し身を隠し、更にハッキングにより砲台の標的を狂わせていく。
 ヨシマサはその現象が、纏っているステルスクロークの効果により、今は姿が見えないセージが起こしているものであることを即座に見抜く。
「今の隙に~……っと!!」
 心の中でセージへ感謝しつつ、ヨシマサは急ぎ手元のレシーバーの回線をいくつか組み替える――当然、このような状況も織り込み済みであればこそ。
「胸元にエネルギービームが来るという事は、この辺りの配線をちょちょいと差し替えれば――完成です!」
 砲台数がこれ以上減る前に、リュクルゴスがエネルギー装填を切り上げる。
 そして、敵のリュクルゴス・レイがようやく撃ち放たれようとする直前、ヨシマサは手元のレシーバーのスイッチをオンにした。
 瞬間、本来『超大型光線砲による一斉射撃』であるはずのものが、爆ぜるように千々に乱れて飛散する。
 ――超大型光線砲を複数体破壊したセージ。重ねられたハッキング・ジャミング。
 そして、最後に因果律を結んだ【|いくつかの冴えたやり方《センタクシノウチノヒトツ》】――。

 そして、超大型光線砲からついに細い糸と化したレーザー線のひとつが、ヨシマサが愛用しているビームも弾く特殊仕様のビニール傘に当たって掻き消えた。
「成功です! ほぼほぼノーダメですね!」
『まさか、ここまで――』
 リュクルゴスが苦渋に満ちた声を零す。
 だが、こちらもこれが手数の限界だ。
「これ以上のバリアもなく、敵も一時修復してくるでしょう……! ここは、攻撃の得意な人にバトンタッチです!」
 二人にこれ以上の継続戦闘で大ダメージを与えられるほどの火力はない。ならば、取るべき行動はただひとつ。
「後ろに下がりましょう!」
 この空間の近くにセージがいる事は分かっている。先の様子から、ヨシマサは声の反響を考え、敢えてどこに向けられたものかも分からないよう、空に叫んで一気に下がる。
 その声を耳にしたセージも、状況的に同じ判断を下す。闇に完全に身を隠して、気配を消し後方へとリュクルゴスに察知されないように撤退する。
 だが、それは――ヨシマサと同じくして、単純な引き際という判断ではない。

「トドメは任せました! やっちゃってください!」
 自分達が成すべき事は全て果たした。故に、それは。
 この状況を継続して、残りの仲間に全てを託すという――戦況を完全に把握し切った者たちの、完璧なる英断であった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​ 成功

ジョーニアス・ブランシェ
アドリブ・連携大歓迎

ぞわりと総毛立つ。情報で知ってはいたけれど、対峙するのはまた別だ。
『…つーかこんなでかいロボット戦には同じロボットで戦うのがセオリーだろうがよ』
軽口を叩きながら、緊張で汗一筋が頬を伝う。こんなのと戦っていた住民に尊敬と賞賛を。そして作戦を思い出す。目的はジャンクションの破壊だ、ならば倒せずともあれをここから退けられればいいのだ。

深呼吸一つ、首をこきりと鳴らす。
精神を戦闘状態にして、√能力:忘れようとする力を自分に発動。それから手にある光線モードの銃を構えて敵の足元方向に走り、自分に飛んでくるいくつもの光線の弾道を見切りで察知、スライディングで避けよう。時間勝負だが、多少当たっても死ななければ治る。どのみち遮蔽物がない通路なら近くで攻撃を当てる確率を上げたほうがいい。(あわよくば敵自身の攻撃が敵の動きを抑制しないかなという欲も)
近くに寄れる少し前にMensis Rotamを発動して、レーザー攻撃を何度も向けよう。放電も後で治ると信じて激痛耐性で耐えよう。
命護・凌哉
●アドリブ連携歓迎
思ったより正々堂々とした奴じゃん……やっぱ敵もそれぞれだなあ。
お前みたいな奴は嫌いじゃねえがそれはそれ。
お望み通りぶっ倒させてもらおうじゃねえか!

さっき門を思い切りぶっ壊したから多分俺に視線が向けられてるだろう。
『穢れを喰らう黒き竜性』で仲間たちの行動を阻害される"不運"を喰らいつつ【挑発】して【おびき寄せ】るぜ。
まあそうしなくても自然と俺に攻撃が吸われていくんじゃねえかな、あらゆる貧乏くじを今は引くモードだ!
その上で【高速詠唱】、【【昇華】永久無穢の白銀結界】を発動!
敵の攻撃が一段落するまで持続させるぜ。
仲間たちも敵の攻撃が終わるまでこの結界の中にいりゃ問題なく戦闘続行できるハズ!
まあその代わり全く動けなくなるワケなんだが……体が動かせなくても口が動かせりゃ魔術は使えるからな。
そして目が問題なけりゃ動かなくても問題ねえ!
【多重詠唱】しておいた【昇華】千里を見通せし父天の断罪を【カウンター】でブチ込んで怯ませたら仲間たちの結界を解除!
後は全員でフルボッコだ!!!

●完全決着
『スーパーロボット・リュクルゴス』その体躯からは大量の黒煙が上がり、無数の小爆発が起こっている。だが、それは片足らしきパーツまでも失い、尚も中空に立つかのように浮かんでいた。
 金属の巨躯を持つ鳥――それに距離を取りつつ仰ぎ見るジョーニアス・ブランシェ(影の守護者・h03232)は、絶句に近く、僅かながらも己の心が怖気立つような感覚を抱いているのを感じていた。
 事前情報としてはスーパーロボットの存在は知っていた。しかし、こうして見上げて、息を呑まざるを得ないほどの存在感という圧を感じてしまえば。
「……つーか、こんなでかいロボット戦には同じロボットで戦うのがセオリーだろうがよ」
 表層では軽口を零すが、ジョーニアスはそこに確かにある緊張から、薄らとした汗が頬を伝わずにいられない。
 それとは対照的に、命護・凌哉(大地を守護せし白黒の残滓・h01033)は力強い眼差しにあっけらかんとした感想を乗せた。
「しっかし、思ったより正々堂々とした奴じゃん……やっぱ敵もそれぞれだなあ――まあ、お前みたいな奴は嫌いじゃねえが、それはそれ」
 その言葉に、傍らにいたジョーニアスも小さく頷いた。その心には、日常からこの世界で文字通り『機械のバケモノ』と称するに相応しいモノ達と戦い続けてきた、√ウォーゾーンの人々に尊敬と賞賛を胸に秘めて。
 そして、それらの感覚を前提とした思考を一方向に纏め上げる。
 今なら損傷を重ねてきたこの敵であるならば、倒すことすらも可能なのかもしれない。しかし狙う大本命は、この『大黒ジャンクションの破壊』――ならば『アレ』は倒せずとも、いざとなればここから退けられればいい。
「ああ」
 決めてしまえば、先程の緊張からは一転。ジョーニアスは深呼吸をひとつして首を鳴らす。
 目的さえ定まってしまえば、後はそこまで駆け抜けるのみ。
「――お望み通り、ぶっ倒させてもらおうじゃねえか!」
 意思疎通を通し、凌哉の声と合わせて、ふたりは一気にリュクルゴスに向かい駆け出した。
 敵の様子を見ても、戦闘が決して長く続く事はないであろう――最後の戦線が切って落とされた。

 ジョーニアスと凌哉が、リュクルゴスへと一気に距離を詰めるべく走り寄る。
 ジョーニアスは、瞬きひとつと共に精神を切り替え、間合いまでの敵の攻撃に備えて『死なない限り外部負傷や破壊、状態異常の異変が10分以内に完全回復する』因果すら曲げる√能力【忘れようとする力】を発動する。
 だが、リュクルゴスの視線は、先に同じく駆ける凌哉の方へと向いていた。
『――先の、爆発の主か』
 凌哉に姿は違えど、巨大通路の障壁を力ずくで砕いたエネルギーと同じものを感じたのであろう。既にノイズ混じりでありながらも、その声は重量を感じさせる言葉となって場を包む。
「よし、印象操作抜群だな! 全然嬉しくねぇけど……よっと!」
 同時に、凌哉は自身の特異能力、生命の命を脅かす不幸不運を含んだ穢れの概念を己が身に取り込む『|穢れを喰らう黒き竜性《ファウルネシヴォア・ネグロドラゴン》』を発動させた。
 本人にのみ見える、周囲の黒い塵にも似た闇より深い穢れのうねりが、全て凌哉に吸収されていく。これは不幸不運を結果として一身に引き受け担う能力――故に、
「――おっと!!」
 リュクルゴスの止まない爆発により、吹き飛び落下中のパーツの一部が容赦なく凌哉へと引き寄せられていく。
 それをギリギリで回避しながら、凌哉は更に速度を上げてリュクルゴスとの距離を縮め、
「あらゆる貧乏くじを今は引くモードだ!」
 気合いを入れた自身の声と共に、凌哉は可能な限り距離を詰めた状態で、高速で術式を展開した。瞬間、一瞬にして凌哉のいる場を基点として、中心から白光を放つ、一面が半透明の銀色で覆われた多重式による魔術結界陣が張り巡らされる。
 √能力【|【昇華】永久無穢の白銀結界《ピュリフィケイト・アブソリュートパーマフロスト》】――それは対象の規模に応じてサイズが変化する結界防御壁を展開するかなり強力な魔法結界だが、代価として凌哉は身動きが取れなくなり、その場で身体が硬直しきったように静止する。
「大丈夫か!」
 リュクルゴスの手前、ジョーニアスが自分の頭上先まで張り巡らされた結界に足を止め、凌哉が叫ぶ。
「ああ! 皆も敵の攻撃が終わるまでこの中にいりゃ、問題なく戦闘継続出来るハズ!」
「分かった! それなら――!」
 ジョーニアスは全面の信頼を置き、一度その足を止める。
 瞬間、その結界の表層に、リュクルゴスの【電撃放射角ケリュネイアホーン】が爆ぜた。
 微弱ながらも、三百回にわたる電撃放電が立て続けに結界の上を迸る。ジョーニアスが正面から真上に奔る電撃に目を奪われつつも、即座にその時間を無駄にしないため、急ぎ自分の光線銃仕様に改造したガンライフルを調整する。
 しかし、その刹那――放電が叩き付けられる結界が僅かに揺らぎ、そして罅入るように走った銀の燦めきに、ふたりは一気に息を呑んだ。
「うおぉっ!!」
 凌哉が自身の√能力に一層の魔力を流し込む――砕けるかと思われた結界は、あちこちに明らかな罅の様相を残しながらも、その形を何とか保ち続ける事に成功した。
『耐えたか……!』
 それを見て、リュクルゴスが賞賛を滲ませた声と共に、煤混じりの煙を噴出しながら大きく天空へと飛翔する。
「アブねぇ……! だけどよっ、その様子だと、どうせまだあんだろうっ!?」
 凌哉が啖呵を切って鋭く叫ぶ――その凌哉の言葉を肯定するかのように。リュクルゴスの胸部球体パーツから召喚された無数の砲台から、夜の闇の中で煌々と集約していく光を放ち始めた。
「させるかッ!! ――体が動かなくてもなぁ! 目と口が動きゃ十分なんだよッ!!『其は全知全能の瞳、仇為す者を逃さぬ一条の流星! 術式展開!』」
 そうして凌哉が、天空に向け結界維持と共に多重展開した魔法式を解放した。
 √能力【|【昇華】千里を見通せし父天の断罪《ピュリフィケイト・クレアヴォヤンスサンクション》】が発動する――それと同時に、リュクルゴスがぶつけた【超大型光線砲リュクルゴス・レイ】が、完全なる並行として銀の結界に叩き付けられた。
 リュクルゴスが最後の力を振り絞るかのように放つ、激しすぎるまでに収束された極大のレーザービームが、白銀の結界に叩き付けられる。
 猛烈苛烈なまでの巨大なレーザービームがこちらの防御陣へと打ち据えられる。同時に発動されようとしている凌哉の能力は、他√をも攻撃できる極めて変質的な能力である――しかし今回は同じ√の敵。
 それは視界に入り飛び込んでくる世界の数だけ、認識能力を持って行かれると言う事実。結果、
「やべ……ッ!!」
 集中力の消耗、魔力枯渇の兆し――次の瞬間、銀色の世界を作り出していた結界陣の全面に、一斉に罅が入った。
 その隙間に生まれた結界の一部を貫き、弾けた閃光の一筋が、認識する間もなくジョーニアスの左腕を掠め抜けた。
「悪ぃッ! 大丈夫かっ!?」
「安心しろ、こんなの大した怪我じゃない!」
 ジョーニアスが苦悶の表情を浮かべたのも一瞬、先の√能力【忘れようとする力】により、怪我は存在ごと意識から排除され、傷はみるみる回復していく。
「てっめェ!!」
 次の瞬間、凌哉の世界を巡った視界はようやくこの世界へ戻り、敵を完全に捕捉する――間断を置かずに、天上より容赦の無い裁きの光が降り注ぐ。
 そして白銀の結界が、相殺され完全に打ち砕かれるのと同時。リュクルゴスはその直撃を受け、かつてない音の爆破音を立てると、大地に打ち据えられるようにその身体を激しい金属音と共に地上に叩き響かせた。
『ぐ……っ』
 金色の鳥が、地に墜ちた――チャンスは、今しかない。
 蹌踉めいて隙だらけとなっていたリュクルゴスに向けて、ジョーニアスが疾駆した。
 無数の爆発を回避していく。連鎖爆撃が起きて巻き込まれる事もあったが、ジョーニアスはスライディングで上手く回避し、一歩も走る脚の速度を落とす事はない。
 同時に、本来であれば怪我も免れないが、未だ続く【忘れようとする力】は、その意志力を反映させ、無限を錯覚させる程にジョーニアスの傷を回復させていく。
『お、のれ……』
 リュクルゴスが地で足掻く。そして、尚も応急処置による自己再生により、尚も空へ羽ばたこうとする前に、
「もう、遅い!!『守護者たるものの覚悟に触れろ!』」
 √能力【|Mensis Rotam《メンシス・ロータム》】――それは攻撃範囲を敵の全身まで射程範囲に広げた複数回攻撃。足元に潜り込んだジョーニアスは、そのガンライフルで全身全霊を込めたレーザーを撃ち放つ。
 その一撃は、敵の巨躯に比べれば針のように細く思われた。
 だが、それは完全に敵の召喚していた砲台、推進エンジンを悉く破壊し、そして敵の胸位置に存在する|中核《コア》までもを完全に撃ち抜いた――。

 ――リュクルゴス、完全停止。
 それは相手が√能力の保持存在とは言え、一時的ながらも完全なる鉄塊と化した瞬間であった。
 同時、急ぎ敵が戻って来る前に、この場の全員が残された力を振り絞り――そして、大黒ジャンクションから連なる√EDENへの道は、巨大通路もろとも激しい轟音と共に崩れ落ちた。

 情報が飛び込んで来る。戦線は、ほぼ完全なる勝利だと。
 戦況は圧倒的に有利。しかし、その先には更なる次の闘いが待ち受けている――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

挿絵申請あり!

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