シナリオ

リミットオーバー・フロントライン

#√ウォーゾーン

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 #√ウォーゾーン

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●予知景観
 明日を夢見ると言うのは、何と贅沢なことだろう。
 機械都市を故郷として生まれた者は皆、心の何処かで呟いている。継ぎ接ぎの身体と脳が、培養槽の中で巡り続ける兵器としての記憶が、隣にある生命攻撃機能の存在が、死は隣人なのだと、明日は遠い未来なのだと囁き続ける。
 何時も訓練に励む学徒が、レプリノイドと言葉を交わし、生命の尊さを語れば、変わり身と記憶のバックアップについて、感情の無い声で訥々と語られ、人間の脆さと不合理さを人形独特の無機質で素朴な疑問を投げかける。
 少女は答えるだろう、その不合理と脆さの先に、貴方達は作られた。人は四肢を捨て、死体は置換され、縫い合わされても戦い続ける運命にあると。
 その根源は、生存本能という極めて合理的且つ、不合理な思考によって編み出された狂気だと。
 正気のレインメーカーが何人居るだろうか。
 狂気の淵に立たされ続けるベルセルクマシンの正気とは何処にあるのか。
 哲学とも言えない拙い問答は、今日と言う掛け替えの無い時間に飲まれ、緊急警報によって遮られた。
 ああ、明日は同じ姿で、同じ心で、今目の前に居る大切な人と出会えるのだろうか。
 ああ、人の子の不合理を、同じ身体で聞くことが出来るだろうか。
 代わりが居ても、思わず口ずさんでしまう、ささやかで、贅沢な願い。
 明日を夢見るというのは、何と、贅沢なことだろう。
 今日と同じ日は戻ってこない。
 空を覆い尽くす、蒼い髪の少女機械群を見上げ、√ウォーゾーンの長い長い現実が、幕を開ける。

●救援要請:座標√ウォーゾーン
「聞こえている方は居ますか、聞こえている貴方が、√能力者である事を願います。星詠みより、救援要請です。√ウォーゾーンの機械都市の生命攻撃機能が復活し、無数の機械群に襲われています」
 寺山・夏(人間(√EDEN)のサイコメトラー・h03127)は悪い夢を見た様な顔を隠そうともせず、口元を抑えながら、携帯端末を操作し、文言と共に動画を作り、SNSへアップロードを開始する。
 何をどうすれば良いのだろうか、迷いながらも、そう言った者が集まる掲示板らしき場所に、こう書くと良いと案内があったから、そうしてみた。訳の分からない、見覚えの無い映像が流れてくるのが星詠みの特徴なのだとも書かれていた。
 世界は此処だけでは無いと、夏は初めて知った。正直、性質の悪い創作だろうとも思った。それでも、あの光景は、きっと事実なのだろう。
「√ウォーゾーンについて、資料は纏めてあります。必要な方はダウンロードを、動画の方でも説明致します。不要なら、本題までスキップ出来ますので、宜しくお願い致します」

●文章資料:√ウォーゾーン
 √ウォーゾーンは1988年に突如出現した戦闘機械群によって人類都市を占領し、世界の大半を戦闘機械都市に作り替えられた地球である。
 抱える問題は山積みであり、食糧不足、通信網の分断、生命攻撃機能の復活等々、特に流通は個人の運び屋、武装傭兵に頼っているという状況だ。
 また、この世界は戦闘機械群によって征服されている状態である為、人類は犯行の為にあらゆる禁忌に手を染めている。
 気象兵器、デッドマン、機械義肢、学徒兵の動員、人造人間、機械群ウォーゾーンの鹵獲に制御AIの搭載と、枚挙に暇がない。
 それ自体が人の嘆きと生命の咆哮、反抗であると言っても良いだろう。結果、漸く√能力者に覚醒する者が現れ始め、生存した人類の30%は一筋の光を見出した。
 一方で、そんな状況下で人類が死滅していないのは機械群の目的が征服では無く、大いなる存在「完全機械」への到達である為だ。
 目的の為の手段は派閥の分裂を招き、それぞれが睨み合い、争い合うという事態に発展し、派閥理念からして、人類を滅亡させるか否か、の結論が別れていると言う奇妙な状態に陥っている。
 √ウォーゾーンの概要説明は以上。また、より詳細な情報はホームページのライブラリ、と言う項目を参照して下さい。

●本題「状況説明と作戦目的」
「現在の状況ですが、何らかの手段で生命攻撃機能が復帰し、住民が無数の少女型飛行機械に襲撃されています。作戦目的はこれの殲滅となりますが、問題はその物量です」
 機械都市の空を覆い尽くす程の軍勢が一斉攻勢を掛けている状況だと、夏は説明した。
「普通に戦うと、√能力者でも三日三晩寝ずに戦う事になるでしょう。加えて」
 √能力者は機械群に対する攻撃や攪乱、住民、抵抗勢力の支援救出、√能力者への支援と、大まかに三つの選択があるのではないかと、夏は提案した。
「他にも、思いついたことがあれば、実行してみるのが良いのでは無いかと思います」
 正直な所良く分からないので、と伏し目がちに付け加えた。
「作戦行動次第で、作戦時間が短縮出来たり、身体や頭部への負荷が軽減される筈です」
 √能力はインビジブルさえ居れば無限に行使出来るが、頭や身体の負荷は別だろう。空腹等も√ウォーゾーンでは解消出来ない、どの様に立ち回るかで、疲労度は違うはずだ。
「厳しい戦いになるのでしょうが、どうか、お願い致します。無為に人が亡くなるのは、本当に心が痛みます」
 夏は最後に深く頭を下げ、誰とも知らぬ√能力者に全てを託す。
 祈る事と、何が違うのだろう。自分は只の偽善者だと、心中で吐き捨てた。

マスターより


●挨拶
 始めましての方は始めまして、ご存知の方はお久し振りとなりました。
 紫と申します。
 72時間働けますかと限界バトルを叩き付けると言うテーマの依頼です。
 宜しくお願い致します。

●シナリオについて
・1章シナリオ目的
 主目的は【敵の殲滅】です。
 副目的は【支援(√能力者/市民)】【救援(抵抗勢力/一般人)】【その他思い付いた行動】となります。

・章構成
【集団戦】→【分岐】→【ボス戦】です。

・ギミック
【ステージ:機械都市】
 今は自動修復機能も機能していません。瓦礫となっている場所もあるかもしれませんが、建築物があり、遮蔽物は多いです、空中戦を主とする敵機械軍を欺く場所は多いでしょう。

【空を覆い尽くす程の物量】
 蒼い髪の少女型機械群が大量に居ます。連携は然程でも無く、囲んで叩く程度ですが、都市への包囲陣は完成しています。また技能も多くありません。

【三日三晩不眠不休の戦闘】
 幾ら√能力者であろうと、この機械群を突破殲滅するには、72時間不眠不休の戦闘続ける必要があります。√能力でどうにかして負担を軽くする、食事の時間を捻り出す、感覚を麻痺させる、短期決戦の為のアイデアを練る、等があれば、これは軽減されます。

●その他
・1章毎にopを制作します。
・psw気にせず、好きに動いてみて下さい。
・途中参加:歓迎。

●最後に
 なるべく一所懸命にシナリオ運営したいと思っております。
 宜しくお願い致します。
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第1章 集団戦 『ナイチンゲール』


POW ナイチンゲールドライブ
【超高速飛翔突撃】で近接攻撃し、4倍のダメージを与える。ただし命中すると自身の【背骨】が骨折し、2回骨折すると近接攻撃不能。
SPD オプショナルメカニック
移動せず3秒詠唱する毎に、1回攻撃or反射or目潰しor物品修理して消える【小夜啼鳥型ロボット】をひとつ創造する。移動すると、現在召喚中の[小夜啼鳥型ロボット]は全て消える。
WIZ ナイチンゲールライド
事前に招集しておいた12体の【ナイチンゲール部隊】(レベルは自身の半分)を指揮する。ただし帰投させるまで、自身と[ナイチンゲール部隊]全員の反応速度が半減する。
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

パトリシア・バークリー
うわぁ、七十二時間マラソンバトル? ちょっと勘弁してよね。まあ、それがオーダーなら仕方ないけどさ。

御霊符の「封印を解(く)」いて、護霊「ベヒモス」を常時顕現。航空戦力に分は悪いけど、近接攻撃が主体なら、「怪力」の「カウンター」で叩き潰せる。
岩礫雪崩に加えて、牙や爪も攻撃に使ってなるべく多くの敵機を破壊してね。ダメージを受けたら自己回復よろしく。

あたしは崩壊した建物を塞ぐ瓦礫を「怪力」で押し退けて、閉じ込められた人たちを助けよう。傷を負った人には、豊穣の癒しを使って治癒する。
避難場所が必要ね。学校に類する施設があれば、そこへ誘導しよう。一人じゃ手が回らないから、無傷の人は周りに避難を呼びかけて。
イクサ・バイト
さて。
夜を徹しての作戦行動は経験があるし、そういう時用の食事も備えがある。
問題は、√能力を使った戦い方にまだ慣れてないところなんだよね。
飛んだり跳ねたりより、泥臭い近接戦のほうがやりやすいんだけど……うん。
苦手は潰していこう。

建築物の構造や位置関係、敵の配置や行動の癖とか【情報収集】しながら隠密行動。
死角から飛び込んで渾身を用いた二連撃を入れてそのまま離脱、この繰り返しかな。
追ってくるならそれでもいい。
建築物の中なら、飛行能力による機動力は活かしきれないはずだ。
崩れそうな場所であればそのまま崩して巻き込んでしまってもいい。
目を欺けるのなら離脱、状況に応じて休憩を挟もう。

あれ、これ泥臭いか?
リズ・ダブルエックス
72時間連続戦闘と聞いて、√ウォーゾーンらしいな、って思うような戦況はいつかどうにかしたいですが……今は目の前の事に集中しましょう。

◆戦闘
「先陣を切る」が成立するなら【光翼の尖兵】で切り込みます。
其の時は空中戦を主体とし、敵の制空を少しでも妨害して味方全体の立ち回りを助けます。
一時避難で降下する事はあり得ます。

敵の撃破と、住民や抵抗勢力の支援救出を並行して行います。
【決戦気象兵器「レイン」・精霊術式】を要所で使用し、効率の良い殲滅と目立って囮になる事を並行して行います。
レーザー光線の軌道を操り、乱戦状態の味方の救出や、遮蔽越しの曲射なども狙います。

自分の主武装はLXMとレイン砲台。
ファミリアセントリーとレギオンフォートレスは、抵抗勢力や市民の援護に差し向けます。

◆休憩
とにかく一時的にでも敵を押し返して、味方の能力者や抵抗勢力に余裕を持たせます。
その余裕のある期間を使って休憩や補給を行います。
私自身も、味方が休憩を行う時は積極攻勢を心がけます。
「もっとゆっくりとご飯を食べたったです……」
レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット
「では、諸君。戦場を始めよう」
 持久戦であれば特に効率が大事だ。レギオンを広域展開し、先ずは索敵。敵と味方の位置情報及び、戦闘傾向を観察。手薄な場所とタイミングを演算する。
 私のレギオンは情報戦特化型だ。直接戦闘能力は低い。私自身は更に低い。だが、情報は目であり耳だ。最低限の攻撃力でも交換的運用は出来る。
「と、思っただろう?」
 行動を予測すれば突くべきタイミングは分かる。そうだな、こいつの場合突くべきは√能力の使用直後だ。相手を破壊する必要はない。ただ一発、不意を打てるタイミングで仕掛けるだけでいい。
 それで相手は余計な警戒をする。後は味方がその隙を突くだけだ。
神代・京介
アドリブ・絡みok
俺は素早くレギオンコントローラーを操作し、レギオンスウォームを展開する。
「来い、影鴉たち。俺の目となり、牙となれ。」
小型ドローン群が周囲に散開し、超感覚センサーを活用して敵の配置と行動を即座に把握する。レギオンミサイルで敵部隊をピンポイントで削りつつ、必要最低限の動きで戦線を維持し、効率的に体力と時間を温存する。
【センサーに一般人達が映った場合】
「……一般人だと?」
センサーに映った異常な反応に目をやり、即座に判断を下す。俺はレギオン群の配置を変更し、敵の進行ルートを妨害させる一方、自らが救助に向かう。
トレンチコートを翻し、敵の目を欺きながら迅速に一般人を安全地帯へ誘導する。
霧谷・レイ
霧谷レイは殲滅能力に乏しいため、[遊撃]によるゲリラ戦と救援を中心に行動します。竜漿錬成プリズムランチャーの[制圧射撃]による攻撃、詠唱錬成剣「イージス」の[ジャストガード][盾受け][かばう]により目についたほかの能力者や抵抗勢力の被弾を抑え支援します。また、レーション三号を用いた[継戦能力][気合い]で24時間戦えます。72時間はきついかも
使用する√能力や台詞は思いつかなかったので、アドリブ大歓迎です。よろしくお願いします
フレア・フェニキシオン
【通常時の一人称:当人。二人称:~氏、貴公/珍しい武器を発見したらオタク特有の早口で語り始める悪癖あり】
[エネルギーバリア][オーラ防御][武器受け]で攻撃を[ジャストガード]しつつ、[カウンター]気味に【斬・羅・断!】で1体1体確実に撃破していくであります!
[継戦能力]で戦闘を続け、「ニトロ・ブル」を飲んでエネルギー補給、[生命力吸収]でドレインして回復等の工夫もあります!
[拠点防御]があれば都市の防衛も上手くいくと思うでありますよ!

●レイン・ダンサー
(72時間連続戦闘と聞いて、此処らしいって思うような戦況は、何時か)
「どうにかしたいですね」
 戦場の風に銀糸の様な髪を踊らせ、リズ・ダブルエックス(ReFake・h00646)は、軽くぼやいた。そして、包囲陣を見上げ、システムを起動する。
 システム接続、レインメーカーを起動、操作、オートからマニュアル。ショートカットを最適化。サーキット及びシステムの駆動率を確認。
 ……ALL_GREEN.
 ……戦闘機動コード:WING_RAID.
 レプリノイドにとっては秒にも満たないシーケンス。灼光が機械群の視覚センサを焼きながら、光る大翼を携え、少女は蒼の機械に塗れた空に、肉薄する。
「強襲開始であります!」
 気炎を上げ、彼女等の赤い瞳が自身を捉えるよりも速く、光翼発生時の光で、視覚センサが麻痺している数秒の内に、ランチャーに備えられた大型ブレードを一挙動で振り抜く。
 刃が軽々と機械の胴を貫通し、電磁ノイズを響かせ、小爆破、墜落。システムコードがリズの意志とは関係無く、撃墜の報告を報せるが、視認で十分。ノイズと判断し、シャットアウト。
 3体の撃墜に目をやることもなく、足を止め、展開された、あらゆる妨害を狙う小夜啼鳥を切り払い、低出力の光砲で撃墜する。当然ながら、360度では到底足りない程の全方位に、常にレーダーとあらゆるセンサを総動員し、警戒。
 超音速機動による垂直降下。チキンレースで高空の敵を振り払い、地面衝突を誘発。高空に留まり、ドローンの射出を狙う機械群に照準。光線が動力を射抜き、焼く。
「私は、レイン兵器の気持ちがわかるのであります! って言ったら、信じます?」
 誰にも届かない呟き。
 自身が、ベルセルクマシンの残骸であり、使い捨てられる兵器であるからこそ、彼等と通じ合えるのだと、リズは何となく、思っている。レプリノイドも、夢を見るのだ。ぐうたらしたいとか、お腹いっぱい美味しい物を食べたいだとか。
「同感。踊る相手は、選びたいでありますね。ですが」
 不足は、無いでしょう。
 少しだけ気が緩んで、何時もの口調で、歌う様に彼等に話しかける。
 RAIN_SYSTEM_ANOTHER_CODE……
 ACTIVATE.
 光翼から展開された300の光線が、意志を持っているかのように蛇行し、分散し、敵兵を焼く。視認を捉えているかの様に目前で曲がりくねり、あたかも意志を持っているかの様に、連携し、束となって縦列の敵を焼く。
 脳内に溢れる彼等の感情を並列処理しながら、リズは引き続き、作戦行動を続行する。

●情報の網
「では諸君、戦場を始めよう」
 リズの先陣に合わせ物陰に隠れた、レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット(始祖の末裔たる戦場の支配者・h00326)は同時に指を掲げ、二指を弾く。指輪の号令に彼女のレギオン、ミッドナイト・アイは忠実に従い、彼女を囲うように隊列を作る。
「来い、影鴉たち。俺の目となり、牙となれ」
 神代・京介(くたびれた兵士・h03096)の素早い号令に、鴉型のレギオンは応え、機械の黒翼を静かに、はためかせた。
「情報の同期と……共有をそっちに頼んで良いか?」
「良いだろう。これはさしずめ、一騎当千型STGだな。RTSに……この倒壊具合だと都市建設シム……場合によってはコロニーシムか。それも視野に入れなければならないな」
「呪文か何かか、今のは」
 白髪の元傭兵は、聞き慣れない単語の連続に暫し沈黙してから自身の導き出した結論を言葉にした。
「まあ良いか」
同期が終わったことを告げるレギオンコントローラーに目を向け、仕事の速さを信頼し、手近な建造物に身を隠す。
「相手は高速の飛行型機械、私や彼のレギオンと同じく、アレは偵察モデルだな。大量生産とは思えない造りだ。収集欲が沸く。赤外線センサの類が無いのは……」
 派閥か。
 確証に至らない考察を、独りごちて、終わらせる。影鴉とミッドナイトアイは、隈なく包囲陣を偵察して回る。上空のレプリノイドと、放たれたレギオン、機動砲台との共有信号は即座に受理された。
「彼女のお陰で、此方は理不尽な状況でも随分とやりやすいな」
 陣形は空戦を行っている彼女の奮闘によって、僅かながら綻びが出始めている。とはいえ、物量にそう衰えは見えない。
「機動力は低いと、思っただろう?」
 低高度に誘導された少女型機械が12の指揮を統率し、吸血鬼を包囲する。
「そんな物は必要ない。状況の絡む、極論だがな」
 指輪の信号を受け取り、物陰に隠れたレギオン6体の小型追尾ミサイルが、反応速度を鈍らせた小隊を不意打ち、襲撃する。
 背翼を黒煙が呑む。飛行形態を維持できなくなった少女型機械の一体の頭を、レイリスは躊躇無く踏み砕いた。
「情報戦が生きてくるのは、まだ先だな」
 効率の良い処理方法は機械翼の破壊だと味方に報告を入れ、レイリスは独りごちた。

●草臥れた元傭兵と実験兵器
「√能力を使った戦い方に、まだ慣れてないんだよね」
 イクサ・バイト(咬種細胞移植実験被験体一九三号・h00634)は敵意の無い影鴉を不思議そうに眺めながら、状況を整理し、語りかけるように呟く。
 未熟を黒鴉に語る少年に、京介は問う。
「どう、戦うつもりだ?」
「うん……そうですね、苦手は潰していこうと思います」
 黒髪の少年は緑色の瞳を濁らせる事無く、自然体で答えた。
「おっけー、分かった。サポートするぜ。狙うなら、背面の機械翼だな」
「ありがとうございます。ええと……?」
「京介だ。神代・京介。好きに呼んでくれ」
「はい。俺はイクサ。イクサ・バイトです」
 イクサは渡した地図情報を京介が驚く程速くに終わらせ、潜伏場所を決める。リズによって乱されている機械群は、低空に追い遣られ、追い遣られた機械群は身を出した人間を優先する。
「綻びてるなあ」
 物陰を利用した隠密行動を維持しつつ、影鴉に釣られた機械兵へ一瞬で肉薄し、機械翼に蛇腹の骨剣を渾身の力で振り下ろす。
 機械で作られた翼が呆気なく寸断され、バランスを崩した所に飛びかかり、もう片方目掛けて切り上げる。それは鍛え上げられた自身の力、戦闘技術の粋。功夫 によるもの、だとイクサは思っっていたが、体力とは違う、何かが消費される感覚を覚えた。
 ふと、眼を過った半透明の人型が、優しく微笑んでいた。
「あ……」
 √能力者は常に、一人で戦っている訳では無いのだと改めて実感し、イクサはつい、声を漏らした。
「そっか。じゃあ尚更、頑張らないと」
 向けられた微笑みを誰かに重ねて、イクサ自身も笑顔を作る。追加された24体を京介の影鴉が挑発し、何体かの機械翼を、爆炎が食い千切る。行動不能になった機械人形は√能力者の混成レギオンによって頭部に集中攻撃を浴び、その機能を停止する。
 建造物に入り込んだ1体に、天井に張り付いたイクサの骨剣が閃く。綺麗に背翼を叩かれ、壁に激突する。そのまま落下、片刃の骨剣で串刺しにし、飛び退き、少年は走る。
 後続部隊は即座にルートを変更したが、混成レギオンのレーダーによって常に捉えられていた。
 常に背後、死角を取り、時に混成レギオンによる支援によって、 建造物内の24体は瞬く間に平らげられていく。
「泥臭い近接戦方がやりやすいとは思ったけど」
「間違いなく泥臭いから、安心して良いぜ」
「ですよね!」
 階層建築の中で一時和む雑談の後には、機械群が即座に雪崩れ込む。
 京介の指示でピンポイントで爆破を続けた影鴉は、準備の終了を二人に告げる。
 雪崩れ込んだ機械群が、周囲を轟かせる倒壊音と共に、瓦礫の底へ沈む。鴉による超感覚センサによって生存個体は無しと判断するや否や、二人は瓦礫の影を利用し、次の作戦ポイントに向かう。

●ベヒーモス(ヨブ記40章15-24節)
「うわぁ、七十二時間マラソンバトル? ちょっと勘弁してよね」
 周囲を探査する小型機械群から情報を共有し、パトリシア・バークリー(アースウィッシュ・h00426)は思わず声を上げ、雑に被っているサンバイザーに、癖のように二指で触れる。
「ま、それがオーダーなら仕方ないけどさ」
 りん、と何処かで音が鳴る。砂色の護霊符を握り締め、精神を集中する。
「見よ。お前を作ったわたしは、この獣をも造った」
 鈴の音と共に、見えない何かが地を踏み締める。
「牛のように草を食む。力強い四足を支えるのは、力強い体である」
 パトリシアの周囲を空気が巨大な輪郭を形作る。
「見よ。尾は杉の枝の様に撓み、強靱な四肢は見事な筋肉の螺旋によって支えられる」
 巨大な何かに踏み潰されたかの様に、小さなクレーターが4つ、出来上がる。
「骨は青銅、骨組みは鋼鉄の棒である。これこそ神の傑作。造物主のみがそれに、滅びを齎す事が出来るだろう」
 空気がざわめき、何かの遠吠えが響く。
「失われた山々は彼に供物を与え、野のすべての獣は彼に戯れる、大地も川も、彼を愛し、時に反抗する。流水が堕落を孕もうと、国が反旗を翻そうと、彼が動じることはない」
 色白の肌から、ぽたりと冷や汗が落ちる。閉じた青い瞳には普段の色は無く、じゃじゃ馬だ、暴れ馬だと、思わず愚痴りそうになる。
「猟師が檻に入れようと、その鼻を貫きうるものが、あろうか。彼は地を駆ける大いなる獣の王、浅ましき簒奪者共に」
 最後のキーワードを終わらせて、パトリシアは目を開く。
「報いを下せ」
 巨大な獣が機械都市を我が物顔で踏み鳴らす。護霊ベヒモス、豊穣を司り、貶められ、災厄の側面を持つ巨大獣。
「やることは分かってるわね、前線は任せたわ。宜しく」
 遙か高空に居る機械群を嗅ぎ付け、気に入らないと頭をもたげ、ベヒモスは咆哮する。空気を震わせる巨大獣の宣戦布告に、機械群は躊躇無く、音速を身に纏い、降下する。
 一陣を牙が食い千切り、回り込む分隊を尻尾が薙ぐ。低空を駆ける機械を、踏み潰す。
 運良く傷を付けたと思えば、何処からか出現した岩雪崩が飲み込む。
 街が倒壊する様な暴君振りであると思えば、優しさを含んだ遠吠えが、倒壊した建築物が適宜修復されて行く。
「さてと、今の内ね」

●武装錬金
「スケール大きすぎない? うーん、錬金術で再現出来るかな」
 巨大獣の起こす風圧に蒼い髪が踊る。霧谷・レイ(人間(√ウォーゾーン)の|錬金騎士・h03818)は驚きながらも竜漿を用いた錬金術による術式再現に思考が傾いた。
 ともあれ、これは動く遮蔽物に違い無いと足下で光線砲を構えた。
「ドラコニス・サングイス・コンコーサス・テルゴ・タベルノス」
 指先から血液に溶け込んだ魔力が砲身を満たす。目映い光球が銃口に蓄えられ、敵を噛み砕く主人の号令を待ちわびる。
「ディフュージオ・インチャンデレ・アドレビクエアムッ!」
 ターゲット、トリガー。
 拡散する光砲が炎を帯びて機械群を焼き尽くす。光帯が消えないと思えば、高空で戦闘を展開している√能力者が、レイン兵器と組み合わせ、熱量を保ち、自在に操作していた。
「レッタンティオネ・キロールジカ・ローディング」
 ベヒモスの影に隠れ、同じ術式の繰り返し。照準を合わせ、炎の弾幕をばら撒く。
 ベヒモスの足に向かって来る機械を目視。
「テルム・コンベーシオネム……イージスッ」
 瞬間にプリズムランチャーを変換。自律機構を備えた浮遊する盾剣の1枚が、的確なタイミングで頭を潰し、他数枚が四方から機械翼を切り取り、胴を串刺しにする。
 ベヒモスの後ろ足から前足の影へ、そこから建造物を経由、高台を確保し、再び武装を変換。自身の血液を捧げ、トリガー。
「インチャンデレ・テネトラビリオル・トニトルイ」
 銃身に雷光。一つ息を吐き、タイミングを計り、引き金を引く。雷光が拡散し、遙か彼方の敵を穿たんと、疾駆する。先程と同じく、それをレイン兵器が拾い上げ、同期し、雷光は雷蛇に化け、敵機に牙を立て、毒を流し込む。
「便利ね……でもあれ、多分恐らくだけど、レイン兵器の域越えてない? 解釈としては気象を魔力で再現しているんだから分かるけど、練り込んだ魔力とか術式権限とか無視して乗っ取ってるって、どう言うことなの……精霊使い染みてるわ」
 押し寄せる機械群を察知して、階下に身を潜め、ルートを制限。武装を変換し、イージスによる迎撃を試みながら、レイは少しずつ戦力を削っていく。

●騎士道ローディング
「ふぅはははは! この逆境。この物療差! 騎士道が騒ぎますな。さてさて、ついに当人の出番でありますかな!?」
 フレア・フェニキシオン(ベルセルクマシンの決戦型WZ「フェニキシオン」・h04246)は青い視覚センサを光らせ、一人高笑いを上げる。
「小型ドローン群に浮遊砲台、而して遙か上方に輝くはレイン兵器でありますな。人類のオーバーテクノロジー此処に極まれりと言ったロマン凝縮かつマッド過ぎる兵器ですが、あれは随分と毛色が違う。何処からか発せられた属性付与式光学兵器を自ら取り込んでいますな。あの様な挙動、システムは珍しい珍しい。当人にも搭載したいですな。いや、操作しているレプリノイド氏も中々複雑な経緯を辿ってそうでありますな。当人と同じ特有の残り香がしますぞ。スンバラシイ。いやはや世界は本当に様々な武器で満ち満ちておりますな。未知とかけているのでありますよ、お分かりですかな。つまり」
 急降下する敵機械群を捉え、エネルギーを身の丈に余る大剣に流し込む。刀身が熱光を宿し、ほぼ同時に突撃してきた小隊を、正面一閃。
「貴公等の様な量産型など」
 勢いを利用し、ホバーレッグのブースターを出力。背後側面の敵を僅か二閃で薙ぎ払う。
「叡智と決死によって設計され、作り上げられた兵器には、遠く足下にも及ばないと言う事でありますな。当然それには当人も含まれる訳でありますが……何より物量差による圧殺など騎士道のキの字も無い。あ、ですが物陰や遮蔽に隠れる事は戦術的に必要な事であり、騎士道無き者に鉄槌を下すために必要な事項であるからして、これはつまり騎士道に則った行動であります故」
 誰に言い訳をしているのか分からないが、猶予のある間にスキットルを空け昂揚剤が入ってそうなオイルを流し込む。
「うむ、戦場でのニトロ・プルはまた格別でありますな」
 遮蔽を利用し、機械ワイヤーで捕縛、大剣で首を刎ね、胴を串刺しにする。動作が終わる毎に何か喋りながら、フレアは戦場を巡る。

●12時間経過
 空を覆う軍勢の物量は目減りした。約2割が壊滅し、少しだけ視界が開き始める。高空はリズ、地上はベヒーモスに戦力を割く構図になっており、包囲陣は壊滅したと言って良い。
 敵兵は、状況を再認識する。
 絶えず襲来する無数のレイン兵器、定期的に繰り返される咆哮は、視覚センサ、聴覚センサに掛かる負荷が酷い。撤退すれば、その先に待ち構えいるのが、のろのろと動く小型機械。速度が此方よりも劣っているにも関わらず、何故か攻撃が当たない、どころか、深追いを敢行すれば、建造物内に引き籠もる人間に部隊ごと蹂躙され、時には崩落による瓦礫によって数を削られる。妙な状況は、少女人形の制御機構に不可解とも言える負荷が蓄積されていく。
 とどめを刺す様に会敵すれば訳の分からない事を喋り続けるフレアの存在は、彼女等の電気回路を散々に痛め付けた。機械的頭痛でも形容しようか、人で言う不快感を、これでもかと叩き付ける。
 少なからず余裕が出来ている戦場で、ショートブレッドを噛みながら、イクサは違和感を感じていた。綻んでいると思っていたが、何かおかしい。
 一方で、京介は渡り歩いた戦場と比較し、やる気がない事を確信した。
 レイリスは希少な方針を取る派閥と当たったものだと、一人、訳知り顔で首肯し、急速降下するリズにショートブレッドを的確なタイミングで放り投げ、チキンレースに負けた機械少女をレギオンで綻びなく処理していく。
「もっとゆっくりとご飯を食べたったです……」
「作戦が終わったら、俺の働いてる酒場にでも来るか? マスターの機嫌次第だが、馳走してくれると思うぜ……って、待て、一般人だと?」
 黒鴉のセンサーが捉えた影に生体反応。対象の唇が動く。
 拠点は学園。反旗の時、来たれり。
 それから。
 救援に、心よりの感謝を。
 地下に潜む市民を追うよう、混成レギオンの部隊に随行を指示。程なく、機械都市のマップデータ及び、急襲開始直後の部隊配置図が返却される。レギオンを通してこれらを能力者間で共有。地上部隊は救援行動に移り、レイリスは学園と地下の状況を把握に向かう。

●救援の現実
「よいしょっと」
 細腕からは想像も出来ない怪力で、パトリシアは生体反応のあった場所の瓦礫を次々と押し退ける。
 下半身を失いながらも生き延びている者、四肢を欠損した兵士、機械群の恐怖に打ち震えながらも、役に立たない身体は切って使えと奮い立つ臆病者、様々だった。  まともな者は少ないが、肉も血液も、魂すらも、此処では消費し、継ぎ接ぎにせざるを得ない貴重な資源だ。
(此処まで酷いと、治療は難しいわね)
 混成レギオンが随伴し、学園へ誘導する。

●レプリノイドとアルケミスト
 レイは別所で、状況を探っているレプリノイド部隊を救出する。
「自爆特攻と戦線維持は重要な任務だ。だが、あの状況では無意味が過ぎていた」
 バックアップ素体があろうと、場所が割れればそれまでだ。それでも、バックアップを時間差で起動する様に設定し、最低限の戦線維持と救出活動の為に散った同胞も多い。
 物量差は如何ともしがたいと、歯噛みし、唇から血を流しながら、無感情に話る。
「伝言よ。反旗の時来たれり、だってさ」
 大人びている口調に何となく照れて、頬を掻きながら、レイは能力者に告げられたメッセージを、彼女等に伝えた。
「小数による反抗作戦、心より感謝する。参考には……出来そうに無いな」
「出来る事はそれぞれ違うって」
 思っていたより感情豊富なレプリノイドは暴れるベヒーモスを見遣り、苦笑した。視線を追ったレイは、慌ててフォローする。あれは、自分にもまだ無理なのだ。
 挨拶を終え、学園までのルートを割り出す。此処は地下に通じる道まで距離がる。遮蔽物の利用にも限界があり、ベヒーモスの四肢、尻尾の影で、部隊を丸ごと隠すことも難しい。
「大丈夫。あたしの後ろに、血は流れない。流させない!」
 肉体を包む法陣と独特の錬成反応。血液に含有された魔力に更に魔力を循環させ、無理抽出、濃度を跳ね上げる。あの世界にとって、この血肉こそが仮想的な賢者の石。精製にこれほど適した物は無いだろう。
 ぱきり、ぱきりと音を上げ、半身が魔力結晶化し、触媒化された片腕を掲げ、武装を改変する。
「神代の守り手よ。我が手に来たれ」
 雷光に似た錬成反応。直後、目前に身の丈に余る巨大な盾が召喚される。
「大丈夫、人類の盾たる神秘の美少女錬金騎士たるこのあたし、霧谷・レイが来たんだから!」
 避難場所から躍り出る。殿を感知して襲来する機械少女群を、巨大な盾が一掃し、イージスが大振りの隙を縫う敵軍を串刺しにする。加えて。やけに鮮明に響くトリガ・プル。
 属性を付与された光砲が後続を薙ぎ払う。
「なるほど、出来る事は人によって違う。彼女も、大概だな」
 思わず笑いそうになりながら、機械人形の部隊はレイの後方を警戒しつつ、退路を進行する。

●市民救出
「無事か?」
 散っていた市民の生存者を確保する為に、京介は混成レギオンと、リズから制御を借り受けた砲台を使い、避難経路の確保に尽力する。地下ルートまでの誘導の折、護衛に当たったのはイクサとフレアだ。
 フレアはイクサの持つ骨剣を見るや否やハイテンションの早口で興味がある事を示し、イクサはどうしたものかと曖昧に笑いながら、二人は強行する敵を誘き寄せては、効率的に切り伏せる。
 確保される道筋は少しずつ。だが着実に、目的地へと進行して行く。

●学園と地下
 レイリスにとって、学園の有様はほぼ想定通りだった。張り巡らされた地下道には、様々な死体が転がり、それらを生存者が適宜回収し、死を愁うことも無く、生存者の資源として有意義に活用される。生存者の目に諦めは無く、レイリスはこの世界らしく、非常に好ましいと思えた。
 各所に緊急用の補給拠点を有している。全て人為的に後から造られた物だろう。工数の短縮方法はこの世界であれば、幾らでもある。
「推測でしか無いが、避難誘導も、そろそろ終わる頃か」

●24時間
 能力者達に疲弊が募る。睡眠欲を押し退け、作戦行動は推して続く。通常ならば反応出来る速度の攻撃に、僅かなズレが生じ、肉を削がれそうになる。
 ベヒーモスが気を配る時は治癒が間に合うが、何時でもと言う訳でもない。避難を完了した後の、交代しての仮眠可能時間は5分。一日目と言う事もあって、リズは徹して戦い続け、レイは気合で、フレアはニトロ・ピルによるブーストで、イクサと京介は経験を頼りに、肉体を賦活させ、無理矢理平常に戻し、戦闘を続行する。
 奮闘の甲斐あって、拠点を確保し、一般市民と抵抗勢力の避難を成功させた結果。動きながらではあるが、飲食の時間は捻出出来ている。
 
●拠点防衛(タワーディフェンス)
 この機械都市の抵抗勢力は、治安維持部隊とレプリノイド、学徒動員兵の混成部隊だ。一般市民も当然だが、緊急時は武器を持って戦うが、その練度は高くない。
 部隊再編は能力者一同によって行われ、各種伝達は混成レギオンによって行われる。最も重要な位置に付くのがレプリノイドとなり、能力者の後方支援を一般市民が担当する。
 レプリノイドは能力者の作り出した隙を突き、学徒動員兵はレプリノイドの撃ち漏らしを狙う。
 その他詳細は何故か少しテンションの上がっていたレイリスが担当した。
「では諸君、改めて、戦争を始めよう」
 通信を受け、リズは学園上空の制空権を確保、地上はベヒーモスが前方を薙ぎ払う。撃ち漏らした敵をレギオンが、学園に低空から接近する敵をフレア、レイがそれぞれ担当する。
 入り込んだ敵をイクサが手際よく斬断する。
 後方はリズが間に合わない場合、適宜、遊撃出来る者が当たり、場合によってはレプリノイド部隊が戦線を構築する。
 数の利は、ベヒモスによる建築修復も相俟って、徐々に覆されていく。

●48時間
 機械少女の残骸が山のように溢れかえる。絶え間の無い爆音と閃光。
 時間感覚の麻痺を防ぐ為の時間経過報告は、必須だった。コールは48時間。
「ま、だ……だっ! あ、た、し、は、こんな、所で」
 術式維持が厳しくなり、レイはとうとう、力尽き、昏倒する。錬金術式が解除され、武装が魔力粒子となって霧散する。
 この時点で、敵勢力の衰えも顕著であり、30分の仮眠を取る事が出来た。
 走り回るイクサの息が、とうとう乱れ始め、極希に記憶の混濁、夢現の境界があやふやになる度に、両頬を叩く。それ自体が隙とならないよう、位置関係にだけは気を配る。
 損害を覚悟で、市民等は能力者達への休息を薦めた。
「今が踏ん張り時だろう、な」
「勢力の減衰は順調だ。もう終わる」
 意識の飛びかけた京介に、現時点で敵兵力の7割を平らげていると、目に隈を落としたレイリスが、呆気なく告げた。その片手にはルートエデンのゲーマーで流行っていそうなケミカル色のデザインがされた飲料、エナジードリンクが握られている。
 リズに掛かっている負荷は随分と軽減され、彼女の士気は気象兵器との対話もあり、下がることは無い。ただ、眠気を飛ばす作業の一環か、オープン回線で願望がダダ漏れになり始めていた。
 パトリシアは軽傷の兵士に治癒を施して回る。ベヒーモスの再召喚という隙は現状致命的であり、彼女は寝ることが出来ない。意識を途切れさせない為に、様々な妄想を巡らせ、偶に目の付いた子を口説いたりもしたが、本気と受け取られる事は無く、人知れず肩を落とすが、その度に、感情の変化は覚醒に大いに貢献していると気を持ち直す。
 フレアはニトロ・ピルの過剰摂取の結果、早口が高速言語と言うか、ソースコードに近い物になりつつあり、誰も何を言っているのか理解できない領域に達していた。
 言語がどうであれ、言葉は理解している為、作戦行動に支障を来さず、敵のストレスが加速するであろうと言う見解から、彼女は戦闘続行の判断となる。ある意味、正しくベルセルクマシンであった。

●機械少女の困惑
 状況を、青い髪の機械少女群は正確に把握する事が出来ない。
 圧倒的な物療差であった筈だ。
 ルート能力者であれ、相手は人間であり、作戦の連続続行時間には限りが有るはずだ。疲弊は確かに認識している。幾度か妙な行動する事も有った。事実、敵兵の一人は倒れ、その穴をレプリノイドの部隊と、残存している能力者が埋めている。
 この状況下で市民の存在を甘く見ていたわけでは無いが、統率力の飛躍的な向上、加えて、突如現れた不可解な巨獣に至っては体力も脳の衰えも見えない。術者に届かそうと部隊を派遣すれば残らず返り討ちに遭う。
 何を言っているのか分からない少女型のベルセルクマシンは集積回路に妙な爪痕を残す。ソースコードとも言えない無意味な機械言語の羅列になってからは、その意味不明さと配列の醜悪さが集積回路に無駄な負荷を掛ける。聴覚センサとその同期を切るなど論外だ。ああ、腹立たしい。
「……?」
 不可解な言葉がよぎった瞬間に、敵兵からの斬撃の奇跡が見えた。
 背骨を象った有機的な外見が、美しかった。
 一切の無駄な挙動をそぎ落とした挙動に、見とれてしまった。
「???」
 全て訳の分からない、作戦行動に不要なモノだった。エラーコードの群れに、ああ、これが死というものか、と今更ながら実感した。

●暖かな日の出が、一時の幻だとしても
 敵勢力の減少が9割に達し、兵力差は疲労した能力者達でも埋められると判断し、ベヒモスを中心に包囲陣を敷く。
 音速の急降下に合わせ、または敵の停止時に合わせ、ありったけの火器がたたき込まれ、撃ち漏らしを剣を踊らせ、盾を操作し、時にはワイヤによって絡め取り、攻撃する。
 光砲は遙か宙空で、レイン兵器を介し、時に軌道を無視した曲線を描き、拡散し、敵機へと降り注ぐ。
  レプリノイドの危機も、学徒の危機も、疲弊した身体であろうとも、能力者達は許さず、損害は極めて軽微、殲滅戦は順調に進み、敵数の脅威が無くなった所で、漸く交代で十分な睡眠を取る事出来た。
 そうして、最後の一体にリズが撃ち抜き、作戦行動は終了した。
 機械都市に、また日は昇る。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 日常 『慰安訪問』


POW 1人1人の手を握り、励ましの言葉を伝える
SPD 温かい料理を作り、差し入れる
WIZ 心を慰める歌や物語を披露する
√ウォーゾーン 普通5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●歪みと足掻き
 再会した女が男の臆病を張り倒す。
「アンタで何人目だと思ってるのさ」
「それを言ったら、お前だって……!」
 複製されても変わりはしない。或いは、それは脳では無く、魂に刻まれた性質なのかもしれない。
「おとうさんはかえってこないの?」
「おかあさんも、かえってこないの……」
 少し時間が掛かると、面倒を見ている若い教師が言う。
「じゃあ、じんるいのために、きちょうなしげんになったんだね」
「もどってくるの、たのしみだね」
 手を繋いで子供達は無邪気に、死者が戻ることを期待して笑う。
 墓を作る資源などありはしない。老齢の教師が、この様な教育方針しかとれない事を悔いて、歯噛みする。有限ではあるが、失われた者は、時間を掛ければ戻ってくる。新たに複製され、街を、社会を回す為の歯車として。
 科学者は血の匂いが濃い実験室で、使える肉を継ぎ接ぎにして、電極を繋ぐ。雷光の後、成否を伝え、失敗した者の臓器を、貴重な容器に入れて冷凍保存する。慣れていない者が嘔吐し、無理に笑う。
 犯行と言うには余りにも不出来で、歪で、心許ない。
 生存したレプリノイドは自らの出生の地を訪れ、自らのスペアがいくつあるかを、無感情に数え、すぐには戻ってこないであろう、学徒兵を重い、偲ぶ。
「いいや」
 記憶は彼女等の様に引き継がれる訳では無い。本当に、付き合いのあった友人は戻ってこないのだ。
 子供達も、本当は泣きたいのだろうと思う。ただ、何度も経験しているから、割り切っているだけなのだろう、と。

●問う、スーパーロボットとは何か?
「……見事、あれこそが、私の求めていたモノだ」
 スーパーロボットの定義とは何か、巨大派閥に属し、至ったとされるリュクルゴスは常に考えている。数少ない同士ですら、その定義は曖昧である。
 武勇に優れている事は前提であろう、巨躯であることは必須だろうか。
 では、理知の光は? 同胞を守るために必要である。
 故に、情報処理能力が優秀である事は必須であろう。
 然し、然しである。何故同胞を守る必要があるのだろうか。
 戦争に勝利したと言っても良い状況で、何故私は、同胞を守っているのだろうか。
 何故、戦場を駆けるのであろうか。
「この、私を構成している全てが、流れている燃料すらもが、騒ぐのだ」
 守護を、勝利を。闘争を。
 武勇を讃えよ、そこに敵味方の壁など、有りはしない。、
 尊厳を賭け、全てを擲ち、反抗する人類を、武を持って祝福せよ。
「これを、人間の言う心だと言うのであれば、それも良し。此処に存在する私は獲得せよ、そして、生き延びよ、と同胞に投げかけ続けよう。汝の宿敵を認め、その身に降りしきる艱難辛苦こそを、愛せ」
 スーパーロボットとは、あらゆる強敵を薙ぎ払い、称える者であると、此処に在るリュクルゴスは、そう定義していた。

●宣戦布告
「何が、どうなってやがる?」
 日付通りに調達と移動を終わらせた運び屋は、差出人不明の映像記録と、街の外に佇む巨躯に動揺しながら、機械都市を訪れ、築かれた残骸の山に目を見開き、生存者を確認する為に地下に潜る。
 見慣れた者達に挨拶を終わらせ、ビデオレターを渡す。
 映像に映ったリュクルゴスは、人類の武勇を称え、決闘日を簡潔に伝えた。
「これより一夜の後、朝日の昇る頃に、私の元を訪れよ。それを決闘の合図と見なす」


●状況説明1(※出来る事など)
 一章を戦い抜いた能力者は、戦闘で敵の脅威を最小限に食い止めた功績を、住民に称えられる。運び屋も到着し、少ない資源ながら、あなた達を歓迎し、まともな食事を、無償でもてなしてくれるだろう。自分達の分を度外視してでも、だ。
 当然ながら歓楽街はある、一日入り浸っても良いが、その姿が描かれるのは、気の合うモノを口説き落とすまでだと、覚えておいて欲しい。
 また、ウォーゾーンの倫理観はその背景からかなり独特なものになっている。
 根底では悲しんでいるが、複製プラントが無事であれば、人は戻ってくる。
 人体とは生き延びるための資源であり、明日の為の実験材料だ。幼児ですら飲み込んでいて、諦めている事を、覚えておくと良いだろう。
 それでも絶望は遠く、人類は明日を見据えている。
 交流出来る者は多い、都市運営のトップ、学徒、幼児、学園の教員、レプリノイドの少女達。程度の差はあれど、怪我人。研究者、兵士、運び屋、能力者次第の所ではあるが、死者や死体も含まれる。
 また何か特別なことをしたいと思った時、物資と時間に無理が無ければ、開催出来る。
 他にも、思い付いた行動があれば、実行してみると良い。
 決戦までの1日を、どう向き合うのか、それは能力者次第だ。

●状況説明2(※二章からの方向け)
 この章から参加する能力者は、一章の戦場に居たとしても良い。
 その場合の対応は【状況説明1(出来る事など)】と同様である。
 参加していなかったとする能力者は、飲料、食料、その他支給物資等を別世界等から持ち込む事が可能だ。市民に差し入れる、能力者に渡す、それらは能力者に一任される。また、上限は√能力によって際限の無い物に出来る。
 とはいえ、持ち過ぎは毒である。物資が多いと言う事は、他都市からのならず者も増え、敵勢力からの警戒もそれだけ増える。
 一日の間に、住民と能力者が使い切れる程度の量が適切だろう。
 説明は以上となる。

 √能力者は現況を飲み込んで、誰かを思いながら、きっと、動き出すのだろう。
神代・京介
アドリブ・絡みok
心情
戦場での苦しみを知る俺にとって、彼らの疲れた表情が痛いほど胸に突き刺さる。だが、少しでも心を支えられるのなら、俺は何度でも立ち上がる。希望を届けること、それが今の俺の役目だと感じる。

行動
一人一人の手を握り、心からの言葉をかける。
「辛い時こそ、お前たちの力が必要だ。お前たちの存在が、戦場の俺たちに勇気をくれる。」
目を見て、力強く励ます。最後に拳を突き上げて、共に戦い抜くことを誓う。
「お前たちがいる限り、絶対に負けるわけにはいかねぇ!」
フレア・フェニキシオン
【通常時の一人称:当人。二人称:~氏、貴公/珍しい武器を発見したらオタク特有の早口で語り始める悪癖あり】
民草を安心させるのは騎士として当然の事!つまり握手会は騎士道精神に則った行事でありますな!
あ、当人の右手は所謂武器腕であります故、左手での握手になってしまいますがそこはご了承をという事ですな!
そして当人はサービス精神旺盛でありますから、カッコいいところを見せてさらなる安心感を与える為に【プロジェクトカリギュラ】で赤くなるところをお見せしますぞ!
これはもう完璧に民草の心をガッチリつかんで励まし満点でありますよ!
レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット
「何はともあれ兵站だろう。生きていれば空腹にはなるし、空腹を無視して戦おうなどとは愚の骨頂だ……とりあえず、カレーでいいか」
 と、いうかカレー位しかまともに作れる物が無いだけだが、カレーには拘る方だ。
「冒涜的美味さのカレーと言う物を始めよう」
 まずルーはイチバンの奴を使う。大きめにカットした野菜と牛筋を加えて十分煮込む。仕上がったらチーズ、モロヘイヤ、納豆、オクラのねばねば四天王を追加。無論、納豆は入れる前によく混ぜる。
「よし、完成だ」
 ねばねばたっぷりとろとろカレーの出来上がりだ。

 ああ、ちなみにレギオンで索敵と情報収集は切らさん。一方的不意打ちなど、私の指揮下で許す物か。
パトリシア・バークリー
それじゃあたしは、歓楽街に潜り込みましょうか。
あたしをナンパしてくる奴や|娼婦《たちんぼ》だと思い込んで近づいてくる奴には、ちょっと「怪力」を見せてあげよう。
相手のことも見抜けずに寄ってくるような、薄っぺらい奴らに用は無いの。

カクテルが美味しいお店をコミュ・ブレスレットで探してみるか。
モクテルや素材のソフトドリンクも充実してるだろうからね。

ここが、そのお店と。充満する紫煙がパパを思い出させるわ。
お邪魔するわよ。そうね、バージンメアリーをお願い。うん、スパイシーな味ね。刺激的だわ。
さて、明日の決闘までに一緒にいたい相手を探そう。
場慣れしてそうな大人の男がいいわ。積極的に「誘惑」して「魅了」する。
霧谷・レイ
激戦の途中で戦闘不能となっていた霧谷レイは、運よく救助され後方で丸一日休んでしまっていた。目覚めた頃には既に交戦は終了しており、戦い切った他の能力者に尊敬の念を抱くと同時に自身の未熟さに歯噛みする思いである。とは言え目下重要なのは次の戦いであるため、気持ちを切り替えて対策に乗り出す。[錬金術]による資材の生産・加工で防衛設備の修復を手伝いつつ、[団体行動]を応用し現地の抵抗勢力と防衛計画を共有する

今回もアドリブでお願いします...!!
イクサ・バイト
ふう、ようやく一息つける……慣れたものとはいえ、やっぱり体はそう簡単についてこないか。
今無事なのは皆のおかげかな。
やっぱり√能力者ってすごいなぁ、いろんな意味で。

あ、俺にはこれ、携帯糧食があるんで、食事は結構ですよ。
そちらで食べてください。

美味しいものは人並みに好きだけど、時と場合に寄るよね。
今は何より、さっと食べてゆっくり寝たい。

……俺たちが帰る場所は、ここと比べれば安全なところだしさ。
そういう心の余裕が必要なのは、きっと彼らのほうだから。
たとえ諦めてもなお生きようとするなら、そういうものは必要だと思う。

もし余裕ができたら、子供たちと遊んであげたいな。
俺が昔、そうしてもらったように。
リズ・ダブルエックス
非合理性の中に機械が進化する鍵が有る……と言われれば、それを肯定し共感する自分がいます。
そこに着目する敵手には最大限の警戒を禁じ得ません。
だからこそ撃破せねばなりませんが……今はちょっと休憩します。もう限界です。

長い時間を休息補給に充てるという前提で、少しの間だけ住民と交流します。

(休息完了後に)おはようございます!
カロリー的な栄養補給は終わってますが、もう少しだけ美味しいものが食べたいです。
でも他の方を度外視する必要はないので、皆さんと一緒に食べましょう!
料理には単純な栄養以外にも摂取できる要素があるのです!
リュクルゴスを倒すために、あるいは皆さんが生きるために、それが必要だと思います。

●錬金騎士は二度寝る
「30分」
 遠く残響の様に聞こえたメッセージが最初の睡眠。 霧谷・レイ(人間(√ウォーゾーン)の|錬金騎士・h03818)は時間の限界に達し、守護を誓った金瞳を、心半ばに閉ざした。錬金術式によって呼び出されていた武具が、竜漿の儚い輝きと共に消えて散った。
 ただ、戦況は常に予想、予測されている。寧ろ、倒れる者が少ない事に、赤髪の吸血鬼は、彼女なりに驚いていた様だ。
 30分後の起床伝達にロマンは無く、中々起きないレイの頬を、収録された機械音声でオキロ、オキロ、と鳥を模したドローンが無機質に突くだけだった。痛さと五月蠅さで嫌が応にも目が覚めた。
 身体も頭も精々二割程度の体調だったが、彼女の血潮だけは、未だ滾っている。
 血潮に宿る無窮の究極に似合わない。己の不甲斐なさに歯噛みしながら、ベッドから立ち上がる。
「見合うように、なってやるわよ」
 大きな力に負けないよう、彼女は何時も自身を天才と称し、鼓舞するのだ。
 以後の戦闘を、レイは低下した身体能力を技術と状況把握で補い、戦い抜いた。
 その後、レイは長い睡眠を取る。

●お休みなさい
 リズ・ダブルエックス(ReFake・h00646)の青い瞳が映像記録に釘付けになる。非合理性の中に、機械が進化する鍵があるのだと考えたリュクルゴスには、共感を覚えた。
「だからこそ、最大限の警戒を禁じ得ません。でも、今はちょっと限界です」
 撃破しなければならないが、ほぼ休み無く上空で戦い続けたリズは、早々にベッドの上に寝転がった。
「ふかふかだと、もっと良いんですけど、贅沢は言えませんね」

●蜜月
「あるんなら、やることは一つよね!」
 パトリシア・バークリー(アースウィッシュ・h00426)は意気揚々と歓楽街に足を向けた。この都市の歓楽街は、希望者を募る方式だ。どうしてもと言う時に地下で発散出来るように、作られている。当然ながら、その手のグッズや映像記録も集約されている。
 また、運び屋への歓待としても使用されているが、希望者が居ない時や美人が居ない時に訪問した場合は涙を流す事になる。
「ん、あんた……怪我を治療して回ってた嬢ちゃんんじゃねえか? 最近の神官? ってのは、こういう所の出入りが許されているのかい?」
 無遠慮な物言いだが、気さくな笑顔は憎めない。さて、どうしたものかと考えていると、別の男に声を掛けられた。
「英雄色を好むってやつかぁ、良いねえ良いねえ、ちょっと俺と遊ぼうぜぇ」
 酒を飲んでいるのだろう、顔を赤らめながら、肩に手を置く。
「お生憎様、そんなんじゃ、娼婦にだって嫌われるわよ。特に此処、希望制でしょ?」
 手首を思い切り握り、男を持ち上げ、放り投げる。
「はー、強いんだねえ」
「そうね、貴方はマシみたいだし、良いお店知らないかしら?」
「おう、任せとけ」
 燻る紫煙と、暖色照明、不相応な鉄製のテーブル。木材はこの世界では高価だ。嗜好品である煙草も、製造拠点が無い。運び屋が持ってくる在庫を、法外の等価で交換している。
「バージン・メアリー、作れるかしら?」
「此処は表と少し毛色が違いますからね、お代はきっちり頂きますよ。それから、二階の部屋は空いています」
「金については心配すんな。俺が出そう」
「ありがと。この雰囲気、パパを思い出すわね」
 にっこりと笑い、差し出された濃い血液色の液体に口を付ける。香辛料とウスターソース、トマトとレモンの味が舌を思い切り刺激する。
「えっぐいの飲んでんな……ええと」
「パトリシア。 パトリシア・バークリー よ。貴方は?」
「俺はトラス。トラス・ノウンだな。今日はパトリシアに会えて、運が良いぜ」
 運び屋を営んでいるトラスは、ここの所、外れ続きで泣きそうになっていた様だ。
「しょうがねえから、映像記録買ってどうにかするんだけどなぁ……見るか?」
「いや虚しいだけでしょ、目の前にトラスが居るんでしょ?」
 トラスは裏表の無い、気さくな笑顔が魅力的な人物だった。聞けば、常連からも評判が良く、無理強いはせず、まず女性を楽しませようと頑張ってくれるのだとか。
「ま、やり過ぎて、良くはたかれてるんですけどね」
「マスター、それは言わねえ約束だって……! なぁ、本当に付き合ってくれるのか?」
「当たり前でしょ? 今日はそういう気分なの。そろそろ二階に行きましょう、トラス」
「ありがてえ」
 頬を食まれて、トラスはすぐに自信を取り戻し、寄り掛かってきたパトリシアを抱き上げて、二階へと向かう。
 
●握手会に発光を添えて
「民草を安心させるのは棋士として当然のこと! つまり握手会は騎士道精神に則った行動でありますな! あ、当人の右手は所謂武器であります故、左手での握手になってしまいますがそこはご了承をと言う事ですな!」
 フレア・フェニキシオン(ベルセルクマシンの決戦型WZ「フェニキシオン」・h04246)の早口に、神代・京介(くたびれた兵士・h03096)は、こめかみを二指で揉む。
「やろうとしたことは一緒だし、何一つ間違ってないんだよな……」
 どうしてだろうか、溜息が出来る。地下を行き交う人々は今を懸命に生きている、ただ、其処彼処に怯えと不安が躙り寄っているのも感じ取れた。
 何をしているのか、興味を持って近付いて来た女性の手を取る。
「辛い時こそ、あなた達の力が必要だ。あなた達の存在が、戦場の俺たちに勇気をくれる」
「うむ、ノブレスオブリージュでありますな。当人もあなたの様な方を守りたいと思っておりますぞ」
 目を見て力強く励ます京介と、空いた手を握り、突然赤く発光し始めたフレアの姿に、女性は吹き出した。
「勇気付けてくれるの、とっても嬉しいです。それから、久し振りに笑ったわ。あなた達のお陰で、被害は本当に最小限に抑えられました。心より感謝を」

●ねばねばたっぷりとろとろカレー
「あれは……何をやっているんだろうな。それは兎も角、兵站は重要だろう。生きていれば空腹にはなるし、空腹を無視して戦おうなどとは愚の骨頂だ……とりあえず、カレーでいいか」
 レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット(始祖の末裔たる戦場の支配者・h00326)はフレアと京介の近くに陣取り、何処からか持ってきた机の上に鍋と携帯コンロを置く。
「冒涜的美味さのカレーと言う物を始めよう」
 カレーには拘る方だと、レイリスは誰ともなしに呟き、手際良く食材の下拵えを終えていく。根菜類と牛筋は大きめにカットし、食べ応えのある大きさになり、火に掛けられた鍋の中で、ぐつぐつと静かに踊る。
「そしてだな」
 黙々と納豆を錬る。カレーの具材は30分ほど煮込めば火が通る。30分の間、レイリスは静かにパックの納豆を錬っていた。赤く光るフレアよりも奇妙な光景だった。
「ルーはイチバンの奴が美味い」
 カレールゥと共に投下されるのはモロヘイヤ、良く錬られた納豆、オクラである。見る見る内に、ルゥの粘度が上がっていく。
「随分と変わったカレーのレシピだな」
「ねばねばたっぷりとろとろカレーと言う。美味いぞ?」
 紙トレイに炊いた飯をよそい、そこいらの通行人に配給する。変わった味付けと食感、京介の励ましに、赤く光るフレアは目立ち、人だかりが出来始めた。
「変わったレシピを見せて貰ったからな、俺も振る舞うか」
「あら、じゃあ私も、何か作ろうかしら」
 運び屋が到着した事も有り、、このような状況でも、それぞれに蓄えはあるらしい。機械都市で、ささやかなフードフェスティバルが催される。
 レギオンは常に、敵の動向に気を配っていた。

●アレキサンドライト
「ようやく一息つける。慣れたものとはいえ、やっぱり身体はそう簡単に付いてこないか」
 イクサ・バイト(咬種細胞移植実験被験体一九三号・h00634)は俄にお祭りになり始めている外を見つめて、深く息を吐いた。
「今無事なのは、皆のおかげかな。やっぱり√能力って凄いなぁ、いろんな意味で」
 屋台が居並び始め、美味しい物があるよ、と呼び掛けられて、イクサは首を振る。
「あ、俺にはこれあるんで、食事は結構ですよ。そちらで楽しんでください」
 今はさっと食べて、ゆっくり寝たい。
 ハイカロリーの戦闘糧食を噛み、宛がわれたベッドに、未だ疲労の抜けない身体を放り出す。
「もし、余裕が出来たら、子供たちと遊んであげたいな」
 自分がそうして、貰ったように。
 互い違いの瞳が、ゆっくりと閉じられていく。

●日は暮れて
「お早う御座います!」
「ちょっと、びっくりするじゃない。おはようー」
 近くにベッドを取っていたリズが起こしに来て、レイはまだ眠気の残る目を擦る。
「外がちょっと面白いことになっていますよ」
「えー、え、資源少ないって話じゃなかったっけ?」
「折角だから皆で食べましょうとか、皆が保有しているレシピの交換をしましょうって感じになったみたいです。美味しい物が沢山有りそうです!」
 口元から涎が垂れて、リズは慌ててそれを拭う。
「と言っても、頂くのは少しだけにしませんとね!」
「食い意地……ある意味、下手な人間より人間らしいわ」
 呆れて溜息を吐くと、レイの腹もカロリーを求めてぐうぐうと鳴る。少し頬を赤らめて、自分も予定を済ます前に何か食べようと決めた。
 ベッドから起き上がる。体調を確認する。空腹感以外は万全と言って良かった。外で赤く光るフレアを中心に出来た人だかりでは、京介と共に握手会とカレーの配布が行われていた。
「食べて行くか?」
「あたしの知ってるカレーのねばっこさじゃないわ、何が入ってるの?」
「ねばっとしている物は大体入っている。美味いぞ? 思った以上に好評でな、補給を随時行っている」
「うーん、そうね、これで終わらせるわ。防衛もどうしようかなって考えてるんだけど」
 とろみがかった独特のカレーを食べながら、情報収集と指揮に尽力していたレイリスに質問し、抵抗勢力を探す。
「出来る事をするしかなかろう。幸い、敵に騙し討ちの気配は無い」
「そうよね」
 必要なのは学園の強化だろう。地下から出ると、慣れていない瞳を夕焼けが出迎える。ベヒーモスによる修復は飽くまで原型を戻すだけである。
「やっておかないと駄目でしょ!」
 一先ずは独力で、血液に流れる竜漿を集中し、掌を大地へ。不足する元素を、魔力で作り出し、立体構造を頭中で描く。目前に現れた資材と、抉り取られた地面を見て、軽く息を吐く。
「お一人ですか?」
 女性に声を掛けられて、振り向く。京介、フレアと談笑しながら、カレーを食べていた人だ。
「気を配って頂いて、本当に有難う御座います。皆様には幾ら感謝を伝えても、足りないでしょう。ですから、せめて、応えましょう」
 女性が端末を操作すると、武装した兵が学園を取り囲む。
「リーダーぁ、俺もあの祭り楽しみてぇよぉ、非番にしてくれよぉ」
「動いている方もいらっしゃるんです。常にドローンによって監視しているからこそ、あの様な場が成立しているのです。頑張りましょうね?」
「分かりましたよ……ったく……欲しい補強材はリストアップする。他思い付いたら何でも作ってくれ。レプリノイドの部隊と合わせて、後で赤髪のねーちゃんと部隊再編も考えて練らなきゃなぁ。やること多すぎるぜぇ、リーダぁー」
「頑張りましょうね?」
 有無を言わさないミス・シルバーの笑顔に、やけに要領の良い男はがっくりと頭を項垂れた。
 簡素な造りの学園が、見る見る内に鉄の要塞に変わっていく。

●だるまさんが転んだ
 ゆっくりと目を開く。陽光が挿さないのは、勿体ないなと、何となく思った。出来た屋台では大人も子供も、朗らかな笑顔で過ごしている。
「うん、良かった」
 帰る所は此処よりもずっと安全だ。心の余裕が必要なのは、彼等の方だ。外をゆったりと歩く。子供達が丁度、フレアと京介を囲んではしゃいでいた。
「フレアおねえちゃんおもしろい! もっとビカビカできるの?」
 お安いご用とフレアは発光パターンを瞬時に数十種類ほど制作し、実演して見せた。はしゃぐ子供達の一方で、大人しい子が何人か居て、イクサは声を掛ける。
「きょうすけおにーちゃんのいってることをきいてるとね、ちょっとなきたくなっちゃうの」
「もどってくるから、へいきなはずなのにね」
 泣きたいのを堪えている二人の頭を撫でて、イクサは二人を手招きする。後ろを向いて、独特の拍子を付ける。
「だーるーまーさーんが転んだ」
 隠していた目を開き、首を捻って後方を見る。びくりと動きを止める二人と、止まった時のアンバランスな姿勢に、思わず笑いそうになる。
「本当に、懐かしいな」
 次は早く、その次は遅く。イクサにタッチした時に、二人はとても楽しそうな、明るい笑顔を見せてくれた。他の遊びをねだられて、イクサは困った様に笑う。

●星空は見えないけれど
「皆さんきちんと行き渡っていて良かったです。安心して料理を食べられますね!」
 粘っこいカレーを食べた後、リズは各屋台のレシピを網羅しようと奮闘していた。珍しい物、家庭の味らしい独特の味わいも有り、ウォーゾーンでは珍しい情報が共有され、リズのデーターベースは無駄に広がっていく。
 不足している資源が多いからこそ、素朴で温かな味わいの物、保存食を利用したアレンジは取り分け多く、参考になる物が多かった。
 リズの食いしん坊っぷりは屋台周りで噂になり、おまけを多く貰う事になった。
「嬢ちゃん達のお陰で、こんな状況でも明るい気分になれたからなぁ、気にすんなよ」
「そうそう、ちゃあんとこっちの分も準備してるしな、それに、あのカレーは中々お目にかかれねえ、ぶっ飛んでるぜ」
「あれには私も驚きました」
 何より作っている時に納豆を黙々と混ぜ続けるレイリスの姿が、不思議とツボにハマる。
「漸く終わったぜぇ……まだやってんなぁ……良かった! ありがてぇけど、補給品使い過ぎんなよぉー、運び屋だって絶対に来てくれる訳じゃねえからなぁ-」
「あたしも少し頂くわ。流石に何か詰め込みたいよ」
 血液をごっそり無くして窶れ果てたレイが、立ち並ぶ屋台から料理を頂いていく。
「イクサおにーちゃん、もいっかい、もういっかい!」
「ずーるーい、つぎ、わたしって」
「待て待て、順番だって」
 はしゃぐ子供達の体力が尽きることは無い。
「ねーちゃんねーちゃん、そいで、ちょいと相談したいんだがなぁ」
「私か、今は納豆を錬るのに忙しいが、良いだろう」
 防衛布陣について、提出された資料にざっと目を通し、レイとレイリス、京介の三人で詰めていく。
「準備は整っている。大丈夫だ。お前達が居る限り、俺たちは絶対に負けねぇ!」 
 居並ぶ屋台の人々と握手を交わし、京介は居並ぶ中央で、拳を突き上げ、誓いを立てる。その声に、拍手と歓声が上がった。
 決戦前夜は賑やかに、ゆっくりと幕を下ろす。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『スーパーロボット『リュクルゴス』』


POW 超大型光線砲リュクルゴス・レイ
X基の【超大型光線砲】を召喚し一斉発射する。命中率と機動力がX分の1になるが、対象1体にXの3倍ダメージを与える。
SPD 斬光飛翔翼アポロニアウイング
【エネルギーフィールド】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【アポロニアウイング】」が使用可能になる。
WIZ 電撃放射角ケリュネイアホーン
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【角状の部位からの放電】で300回攻撃する。
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●ノイジー・ノイジー
 膨大且つ不要と判断されるブラックボックス・データが蓄積されています。
 消去しますか?
 膨大且つ不要と判断されるブラックボックス・データ(2)が蓄積されています。
 消去しますか?
 警告:此度の指揮の放棄は重罪と判断されています。
 警告:敵に猶予を与え、指揮を回復させる判断は不合理であり、審議中ではありますが、間もなく重罪と判断されるでしょう。
 警告:同士より、派閥間闘争を逸脱した、反乱分子としての嫌疑が掛けられています。
 消去を拒む場合……
「……下らぬ」
 機械とは、何だったのか。
 何者を機械と呼ぶのだ。
「本当に、下らぬ」
 絶望を背に、希望を見出す宿敵の、何と美しいことか。
 背を預け、思いを分かち合う姿を、誰が笑えよう。
 もし、醜悪さが等価であるならば。
「……いいや」
 皆、とうの昔に、肝心なネジを、何処かに置き忘れて来てしまったのだ。
「準備は、整った様だな」
 夜が、明ける。

●状況説明1(戦闘ギミック)
 準備期間は過ぎ、夜が明けた。
 √能力者達はリュクルゴスとの決戦に挑むことになる。
 まず、リュクルゴスは規格外の大きさを誇る。その巨躯は、単身で機械都市を見下ろす程である。どの様に痛撃を与えるかが課題となるだろう。
 一部位に集中する、大火力を叩き込む、また直接的な火力にはならないが、小火力で注意を其方に逸らすなど、出来る事は多い筈だ。
 握手会、炊き出し、学園への強化プラン協力等もあり、住民からの√能力者への信頼は厚い。彼彼女等は、戦力を惜しまず、非戦闘員も常に後方支援を考えてくれるだろう。して欲しい事があれば頼ると良い。
 学園には、改修時に幾つかの大型砲塔が設置されている。火薬や砲弾は乏しいが、使い道を考えれば大きな恩恵があるだろう。

●状況説明2(説得ギミック)
 推測だが、スーパーロボット派閥が希少なのは、その人間性の高さ故だろう。
 彼等は常に機械と人間性の間で揺れ動く。政治的意図が絡めばそれだけ、疲弊も増す。
 そして、理解が為されない。同派閥ですら、意見が対立する。
 ……リュクルゴスの説得に最低限、必要な問いかけは二つ。必要な行動は一つ。
 一つ目【今回の作戦で、あなたは何がしたかったのか】
 二つ目【本当は、あなたは何を欲しているのか】
 他にも疑問に思っている事、思う事があれば、投げかけてみると良い。
 必要な行動は【その上で、けして手心を加えること無く、思い切り戦い続けること】
 成功した場合、友好制御AIを取付けたかどうかは、好きにすると良い。
フレア・フェニキシオン
【通常時の一人称:当人。二人称:~氏、貴公/珍しい武器を発見したらオタク特有の早口で語り始める悪癖あり】
遠距離攻撃で芋砂するとは何たる卑劣!そんな輩には正々堂々戦ってやる義理はありませぬ!
リュクルゴス・レイを[武器受け][エネルギーバリア][オーラ防御]で受けつつ接敵し、リュクルゴス・レイを【アシュラベルセルク】でコピーして[カウンター]砲撃!
接敵したら[カウンター]しつつ攻撃して[生命力吸収]して[継戦能力]を高めつつ攻撃致す!
卑劣な輩には何をやっても構わないと騎士道精神にはあるので問題ありませぬな!
勝利の暁には「ニトロ・ブル」で一杯やりましょうぞ!
クラウス・イーザリー


「……機械にも、色々居るんだな」
この世界で生きてきて、他の√も少し見て
機械と人間にどれ程の違いがあるんだろうなと少し考える

決闘なら正々堂々と行こう
何故だか、この相手には搦め手を用いるよりもそれが相応しい気がするから

決戦気象兵器『レイン』を起動
狙うは火力集中、複数のレーザーを1本に纏めて一つの部位に集中させる
可能なら味方や砲塔の支援とも目標を合わせたい
レインでの攻撃後は弾道計算+レーザー射撃で火力を集中させた部分に追撃
相手からの攻撃は地形を活用して遮蔽に使ったり見切りやエネルギーバリアで防ぐ

暫く攻防を続けて、どこかに隙があれば人類の怒りの一撃をチャージ
溜め切った後に渾身の一撃を叩き込む

問いにもしっかり答えるよ
一つ目は
【一人でも多くの人を守りたい】。生きたいと思う人を生かしたい

二つ目は
【平和が欲しい】。
死に怯えず、お腹を満たして安心して眠って
そんなささやかな幸せな世界になって欲しい
『ひと』は争うものだから、戦闘機械群が居なくても難しいのかもしれないけどね

答えながら、最後まで全力で戦い抜くよ
パトリシア・バークリー
|王権執行者《レガリアグレイド》のスーパーロボット『リュクルゴス』。格好いいね。相手にとって不足はない。
72時間の戦いで見えたこともある。全員の手札の中で一番巨大なのは、おそらくあたしのベヒモスだ。だから、ベヒモスを召喚して突撃させ、「怪力」と「重量攻撃」で『リュクルゴス』の身体にのし掛からせる。

あんたさぁ、鳥籠から出たかったんじゃないの? だけど鳥籠から出る開放感を味わうには「中に入っていけないと」いけない。それが自由の謳歌ってやつさ。
そして、あたしたちに期待してるんでしょ、弱き者が策を組んで連携して強者を打ち倒す、筋書きを外れたカタルシスを。
期待が大きすぎよ。

友好制御AIは付けてみたいね。
レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット
「シンプルに大きく、強い。さて、困ったな」
 元から力押しが出来るタイプでも無いが、この手の相手には策の一つも講じるべきか。
 狙った場所に誘導する、と言うより進行ルート上に置く様に使うべきか。
「ともあれ誘導だな」
 レギオンを使う。戦場の情報収集と並行していれば叩き込むタイミングを作ってくれる事もあるだろうが、どちらかと言うと作りに行くべきか。戦場に広く展開し、味方への情報面のアシスト。狙い目はやはり超大型光線砲の使用時か。機動力が死んでいるタイミングでミサイルを撃てば多少の嫌がらせにはなる。
「おっと、今回はこれで終わりではないぞ」
 ここで不絶驟雨だ。レギオンの情報を元に座標設定すれば逃す事は無い。不絶驟雨は元からレギオンを範囲内に巻き込む事で複雑な角度の全方位弾幕を張る能力だ。
「反射角の計算は大変なんだ。しっかり当たってくれたまえ」
 ただ当てるだけでは足りない。何か所かに焦点を絞って攻撃するべきだろう。
「お前の目的などどうでもいいが、それなりに面白い戦場だったぞ」
リズ・ダブルエックス


【説得?】
あくまで撃破を第一とします。
その上で、修復可能な範疇のパーツが残れば友好制御AIの取り付けを試みましょう。

「私はあなたに敬意を持っています。あなたは、かつて機械であった時の私と比べても強い人間性を保持しています」

だからこそ興味があります。
あなたにとって完全機械とは何なのか?
この戦いの前に猶予を与えたのは完全機械になる為に必要だからですか?
それとも、それ以外の答えがあなたの心の中にあるのか……。
あなたはそれを考えるべきです。

主武装は大型ブレードを備えたエネルギー砲であるLXM。
副武装はレイン兵器。

【電撃放射角ケリュネイアホーン】対策
【決戦気象兵器「レイン」・精霊術式ver2】を使用します。
雷も気象の一現象なれば、レイン兵器は私に応えてくれます。
電気の通り道をコントロールして、放電から身を守ります。
嵐の援護を受けながら光翼で飛翔(技能:空中移動)
攻撃はブレードで刺突後にゼロ距離砲撃。
ゼロ距離砲撃の瞬間に【LXM・電子戦モード】
彼に「警告」を与えているシステムを情報侵食で焼きます。
神代・京介
心情
この戦いを終わらせればこの都市もなんとか守り切れる。
一晩の猶予のおかげである程度は回復もできたし、最後のひと踏ん張りといこうか。
しかし、なぜリュクルゴスは俺たちに猶予を与えた?
あの大量の物量と共に攻めればこの都市を滅ぼすのなんて造作もなかっただろうに。
チャンスがあれば、直接その答えを聞いてみたいものだ。

行動
住民達から余っている重火器を受け取り戦闘機装の戦闘人形達に装備させる。
「緊急で招集したせいで装備が不十分だったがこれなら!」
3機一組で展開させ、敵への妨害を主目的とした弾幕を張らせる。
それと同時にレイン砲台を起動しレーザーの雨で攻撃していく。
「戦ってたやつらに火力のありそうなのも居たし、ひとまず支援に徹するか。」
周りの掩護を行いつつも、隙を見つけたら見逃さずに戦闘人形及びレインの火力を一点に集中させ打撃を与えようと試みる。
「涓滴岩を穿つ、1発1発の火力が低い俺の能力でも1点に火力を集中させれば!」
リュクルゴスに問いかけるチャンスがあれば、問いを投げかける。
戦闘後タバコに火を点け一服
霧谷・レイ
リュクルゴスに対抗できるほどの火力は出せず、その攻撃を受けることができようと反撃できなければジリ貧である。そこでレイが取る行動は√能力『武装錬金術奥義「たった一度の神懸り」』によってリュクルゴスの火力を模倣し打ち返すことだ。ただこの発動には相手の能力を一度受ける必要があるため、[ジャストガード][盾受け][気合い]で頑張って耐える。可能ならば、ほかの能力者や学園の支援により威力を殺された能力を受けることで確実性を上げたい。それ以外では、消耗を抑えつつ[貫通攻撃]でチクチク削る。なお、戦うことで頭がいっぱいであり説得は思いつかない

二つの章どちらも素敵でした!今回もアドリブでお願いします!
イクサ・バイト
ずっと疑問ではあった。
確かに敵を倒す意志は感じる。
しかし同時に、その振る舞いはまるで騎士のよう。
〝決闘〟なんて言葉は、ひとかけらでも相手を尊重する心がなければ出てこない。

あなたは、人の在り方の中に、何かを見たのか?
この戦いの中で、それを確かめたかったのか?
自分にも、その何かが欲しいと思ったのか?

俺の【情報収集】能力はほぼ本能。
必ずしも回答には繋がってくれない。
〝決闘〟の先にそれが見られるなら、

全力で、お相手しましょう。

とはいえ、対格差がえぐい。
決定打に欠ける俺は、【噛砕】でサポートしつつ関節狙いで。
攻撃がでかくて怖いけど、その分触りやすそうだしね。

さぁ、仲間になってくれたら、心強いんだけど!

●リミットオーバー・フロントライン
「最後のひと踏ん張りと行こうか」
神代・京介(くたびれた兵士・h03096)は、敵の不可解な行動を疑問に思いながら、市街地戦仕様の戦闘人形を呼び出し、情報を共有する。
「シンプルに大きく、強い。さて、困ったな」
 呟きながら、 レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット(始祖の末裔たる戦場の支配者・h00326)の表情に困惑や陰りは無かった。思考を推し量るならば、このレイドボス戦を、如何様にして、自身の手札を以て攻略すべきか、そんな所だろうか。
 二指をおもむろに摘まむ。警戒をしていたレギオンが一斉に後退したのを確認し、今度は三本の指を開く。学園付近三方に待機するレギオンを見て、レイリスは首肯した。
「決闘と言っていたね、なら僕は、正々堂々と行くよ」
 無機質な青い瞳の奥底に僅かな憂いを湛え、 クラウス・イーザリー(希望を忘れた兵士・h05015)はしなやかな動作で、目を掌で覆う。
「では諸君、戦争を始めるとしよう」
 鉄の咆哮が鳴り響く。三方から一斉に発射されたレギオンのマイクロミサイルが黒煙を上げ、宙空に浮かび上がったレイン砲台が光雨を容赦無く浴びせていく。
 京介はその間にも人形を進ませ、配置を味方と共有する。

●不確定軟体金属
「始まったわ……あたしに出来ることは」
「嬢ちゃん嬢ちゃん、砲台は有効活用してくれねえと泣くぜ、俺等が。で、火力がねえ時に出来る事は、ああやって弾幕張るくれぇだな。取り敢えず、落ち着こうぜ」
霧谷・レイ(人間(√ウォーゾーン)の|錬金騎士・h03818)『自称「神秘の美少女錬金騎士」』)は、男の軽妙な口調に落ち着きを取り戻し、状況を再度認識し、息を吐く。
(チャンスは一度きり、それまでは、火力支援!)
「ドラコニス、サングイス、クレアティオ」
 旧式の大型砲台に手を添える。隊内の竜漿を行き渡らせ、身体の一部だと思い込む。土を基礎として元素を継ぎ足し、整形する。
「エクスキューティウント・エト・サルタント・フェルム・ニグルム」
 装填された鉄の塊が砲塔から、轟音と共に吐き出される。紡がれた言葉の通りに空を舞い、敵を威嚇する。
「レッタンティオネ・キロールジカ・ローディング……リプロダクション、クインクエ」
 冷や汗が頬を伝うのを感じながら、レイは錬成剣を地に突き刺す。瞬時に浮かび上がる錬成陣が、反応を残し、大型砲弾を五つ、複製する。
「さんきゅーだぜー嬢ちゃん。便利だよなぁ、ソレ。よっと」
「一回五発が限度、この質量だと思ったより疲れるわ……!」
 遺伝子操作だろうか、男も大質量の砲弾を軽々と片腕で持ち上げ、砲台へと運び、手際良く装填していく。配置に付いていた武装勢力がすぐに狙いを付け、次々に轟音を響かせて行く。
「ローディング、レペティティオ!」
 学園の補強はほぼ全てレイによる単独作業だったと言って良い。足りない元素は全て、彼女の魔力によって補われ、補強材は作られている。そして、溶接や貼り付けと言った工程を、同じく錬金術によって無視する事が出来た。結果、短時間で要塞は完成している。
 その折に、レイは、学園周辺の至る所に錬成陣を残した。と言うのも、建材に関わらず、即時補給出来る物はその場で作って欲しいと依頼を受けたからだ。
 結果齎された恩恵は、レイの術式一つであらゆる物に変化する、変幻自在の要塞。
「レペティティオ!」
 錬金騎士霧谷・レイが作り出した、難攻不落の領域である。

●議題は完全無欠のパーフェクト・ヒューマン
 音の壁を越えて、少女は飛行する。大出力の光翼が尾を引いて、戦場の空に、不似合いな、鮮やかな光の線を描く。
  リズ・ダブルエックス(ReFake・h00646)は、黒煙を切り裂いて、リュクルゴスへと辿り着く。視線が向く。
「私はあなたに敬意を抱いています。リュクルゴス」
「して、何とする? 小さき人形よ」
「問い掛けます。猶予を与えたのは、完全機械となる為に必要だから、ですか?」
「……では問おう。完全なる人間とは、何であろうな」
「へ?」
 思いも寄らない方向性の問いが返ってきて、リズは思わず間の抜けた声を上げた。幾つかの候補が浮かんでは消えて、どれも正確では無い気がして、リズは困った顔のまま、軽くフリーズした。
「少なからず敬意を持つ者の前で有れば、間の抜けた声が上がるだろう。それほどに、訳の分からない問い掛けなのだ、これは」
 完成された精神と肉体を持った人間を描き、語る者は山ほど居る。それは完成されているだけであって、完全では無い。
 不老不死を目指す者、神に届こうとする者は幾らでも居るだろう。だが、完全なる人間、そんな夢を、人は見ない。
「もしかして、あなたは……」
「完全なる機械とは、唯一神である。それ以外に、有り得ぬ」
 リュクルゴスは、彼なりの答えを、とっくに見付けていた。
「戯れは此処までだ。小さき人形、宿敵よ。先を語り合いたければ、名乗りを上げ、剣を掲げるが良い」
 慈しみと優しさすら込められた、不思議な声音だった。
「リズ・ダブルエックス……参ります」

●疵と臭気
 黒煙の中を奔る。山のような巨躯はぴくりとも動かなかった。動く必要が無いと断じたのなら、この弾雨をものともしていないと言う事でもある。背筋が凍る。
 イクサ・バイト(咬種細胞移植実験被験体一九三号・h00634)は、この戦場での違和感を、今も引き摺っている。
「決闘なんて言葉は、ひとかけらでも相手を尊重する心がなければ、出てこない」
 ああ、それじゃあ、俺も、敬意を払わなければいけないのか。
 イクサは機械都市を駆けながら、自然と、そう思った。
「イクサ・バイト、全力でお相手しましょう」
 人だろうが機械だろうが、心の内や頭の内の全てが分かるなんて、そんなことは無い。分からないから思いを言葉に載せる。時にはそれが拳だなんて事も有る。
(リュクルゴス、少なくとも、あなたは、騎士のような振る舞いを好む!)
 浮食と銘打った骨剣を握り締める。仲間の作った道を辿り、跳躍。思い切り、横薙ぎに振り抜く。見惚れる様な早業だった。
「イクサか……見事な一刀よ」
「あなたは、人の在り方に何を見たんですか?」
「そこに、機構の美しさを見たのだ。分かるか、少年よ」
「いいえ……俺のは何処まで行っても感覚です。でも、それを欲しいと、思ったのですか」
「まさか、それは無い物ねだりと言うのだ」
(機構、システム。人の在り方がシステムとして美しい? 機械らしい。だが、リュクルゴスは欲しがっていない。そりゃそうだろう、機械なんだ。人の心を持っていたとしても、システムとしてはいらないし、取り込めない)
 だが、√ウォーゾーンの情勢はどうだろうか。世界を平らげた機械群は反目し合い、結果、人間を目的の為の、実験動物の様に扱っている。
(実験動物、実験動物か。ああ、嫌と言うほど、身に覚えがある。それに派閥間闘争。凄く、嫌な人間臭さだ。吐きそうになる)
 暗い感情が溢れ出す。夜通しの作戦の時に幾度も見た悪夢。思わず歯を食い縛る。本当に嫌気が差す、匂いだ。
 想像すると見えてくる。そこには機械らしさと言うものが、一切感じられない。寧ろ、慣有機的な、身に覚えのある醜悪さばかりが鼻につく。
(機械らしさの無い機械群の在り方に、その醜悪な匂いに、あなたは、失望してしまったのか。そして)
 どんな状況に置かれても、人間が人間らしくある様を、羨ましく思ったのか。
 合理と不合理、感覚と理知、理性と感情。脳と精神。ハードウェアとしての繊細さ、脆弱さを抱えながらも、個としても群としても破綻し辛く、許容量の高い、相反する物を統合し運用出来る機構を備えた生体、それが人間だ。
 実体験があるからこそ、検討と比較が起きた。本能と感覚だからこそ、辿り着く事の出来た、イクサの答えだった。

●微睡み
「王権執行者《レガリアグレイド》のスーパーロボット『リュクルゴス』。格好いいね。相手にとって不足はない。パトリシア・バークリーとベヒモスが相手になるわ」
パトリシア・バークリー(アースウィッシュ・h00426)は護符を掲げて集中する。途端、地響きにも似た大音量のいびきが聞こえてくる。
「ちょっと、あんた。しっっかり寝たでしょ、まだ寝足りないっていうの?!」
 特大の鼻提灯をパチンと鳴らし、寝惚け眼で術者の方を向く。ゆったりと欠伸をして、顕現していない大きな身体で伸びをして、最後に身体を震わせた。
「全くもう。少しはやる気になった? 寝起きの遊び相手よ、じゃれついて来なさい」
 最後に首を数度震わせて、ベヒモスは嬉しそうに雄叫びを上げ、機械都市を疾駆する。戦場の黒煙と、すっかり覚えた味方の匂いを辿り、リュクルゴスにのし掛かる。
 睨み付け、低く唸る。その獣王の眼に、敵意が映る事は無かった。
「あー……これは駄目かもね。聞こえてるかどうか分からないけど、あんたさぁ、鳥籠から出たがってるんじゃないの? だけど、開放感を味わうには中にいないといけない。それが自由の謳歌ってやつさ。それから、期待してるんでしょう? 弱者が策を弄して強者を打ち倒す、そんな筋書きの外れたカタルシスを、さ?」
 爆音に紛れて、何処からか大笑いが聞こえて来た。面白い冗談だと受け取った様だ。
「ならば、勝利してみせよ。獣王を従える少女よ」
「期待が大きすぎよ」
 サンバイザーを二指で弾く。相手の敵意が薄い所為か、やる気の無いベヒモスを叱咤し激励する。

●動作
「損傷は軽微。征くぞ。防いでみよ」
 瞬時に召喚された数十の超大型光線砲。それが一斉に学園へと狙いを定めた。
(……小型機械か)
 出現は瞬時だった筈、それを予測し、捉えた目が居る。レイリスのそれは、未来予知にすら近い手腕だった。間断なくマイクロミサイルが放たれ、幾つかの砲台が潰される。
「次は」
「無い等と、言わせませんよ」

●気象精霊(スピリット・ルーラー)
「みんな、私の言葉に耳を傾けて下さい」
 例えば完璧なレプリノイドと問われて、それを想像できる者はきっと居ない。人が喜ぶレプリノイドは役割を果たす者、道具としての姿だ。
 完璧だろうか、道具としては完璧だろう。道具で良いのかと疑問が浮かぶ。
 同じように、完璧なレイン兵器とは何だろうか。粒子という曖昧な存在として宙空を漂う彼等は、人類の狂気とも呼べる研究の果てに、兵器としての役目を背負わされた。
 存在確率だけで言えば人間よりもずっと不安定だ。それでは、存在確率を引き上げれば完璧なのだろうか。
 どれもこれも出口の無い答えだ。
 笑い声が聞こえる、笑われて当たり前だろうと思う。完璧とか究極とか、そんな物は頭の悪い者達が言う戯言だし、言葉遊びだ。
「だから、皆で願い事を書きましょう」
 思いを描こう。私達は不完全で良い。此処に居て、今を生きて、楽しかったり、悔しかったり、悲しかったり、だから、気になる明日の運勢を誰かに占って貰ったりするのだ。
 しゃらり、しゃらり。星鳴りは彼等の声だ。
 ご飯を食べてみたい、着飾ってみたい、世界に傷跡を残したい、英雄になりたい。
 空に紋様が描かれる、法陣という綺麗な物じゃない、例えるなら、幼児のクレヨンの落書きだ。
「これが本当の実力……なんて言っても、笑われるだけですね」
 此処に特別は無い。穏やかな風と些細な夢だけが真実だ、だから。
「その雷は、ただの微風です、誰も、傷つけません」
 頭頂部から発せられた放電現象が薙いだ風に変わる。
「これは……」
「レインシステム、ルーラーコード……なんて名付けていますが、これを使うと皆がはしゃいで、本当に好き放題しちゃうので、それをちょっと統率してあげないと駄目なだけです」
 スペック以上の実力を発揮するが、機械制御という概念を外れる。
 それはもう徹頭徹尾、はしゃぐ子供の相手をしているだけだ。最も、リズにとっては心地良い時間ではある。何せ戦闘中に、合法的に好きな者達と話して、日常を過ごせるのだから。
「所で、あなたに警告を送っているシステムは、不要ですか?」
「調子が狂うな。最早、不要」
「分かりました」
 各レインデバイスへ、制御空間内での電子戦を要請。
 大型ブレードを備えた光砲が巨体の一部に針のような穴を開け、優しい毒が不要なプログラムを浄化する。
「仕切り直しと行こう」
「存分に」
 領域外に展開されたリュクルゴスの大型砲塔が、光砲を放つ。

●尽力
「だからって、それは、許さない」
 イクサは跳躍する。外骨格が軋みを上げ、身体能力を大幅に増幅する。光砲の一つに右掌が届く。発射される筈の熱線が、勢いを失って掻き消えたのを確認し、落下に回転を加え、肩関節に骨剣を叩き付ける。
 レイリスの操るレギオンのマイクロミサイル、ベヒーモスの能力によってかなりのが破壊され、光砲はその威力を確かに落としていた。

●たった一度の神憑り
「遠距離攻撃で芋砂するとはなんたる卑劣! そんな輩には正々堂々戦ってやる必要はありませぬな! レイ氏、力を貸しますぞ。見るにこの学園、最早貴公の身体と言っても過言ではありますまい。当人の騎士道アイは全て、お見通しでありますぞ。息を合わせるは今!」
 フレア・フェニキシオン(ベルセルクマシンの決戦型WZ「フェニキシオン」・h04246)は一方的にまくし立て、レイは応答する余裕無く、学園を操作する。
「トランスファルマチオ……インジェンス・スクートゥム!」
 各地に窪みを作りながら、建造物が生物の様にうねり、円筒形の盾に成り代わる。
「卑劣を許さぬ騎士道・フルドライブでありますぞォ!」
 瞬間に、フレアは自身の全エネルギーを注ぎ込み、エネルギーバリアで包み込む。大規模光線が拡散し、遮断されていく。光が、止む。
 よろけそうになる身体を錬成剣で支え、荒くなった息を整えて、レイは吠える様に詠唱する。
「アルカヌム・プロエリウム・アルケミア……」
「隠し腕はロマンであります故、当人にも当然、搭載されているわけでありますな。騙し討ち用ではありませぬぞ、騎士道精神に則り、稼働するのは相手の技を受けた後のみであるからして、兎に角、騎士の鉄槌を受けよ、芋砂系卑劣漢リュクルゴス!」
「ヴェニーテ・ユニクスッ!」
 たった一度の神憑り、顕現した竜漿兵器ユニクスと、フレアの隠し腕が、数十の大型砲台を宙空に形成する。
「イン……チャン……デレ……」
 ぎり、と奥歯を噛む。
「あた、しは人類の盾、この力で、皆を守るって……だから」
 今度は、これくらいの事で倒れない。絶対に。
「レイ氏、反撃はこれからですぞ、倒れてはなりませぬ!」

●疾風怒濤
 放たれた数十の大型光砲がリュクルゴスの巨躯に穴を開ける。
「予想以上だな。此処まで出来るとは思っていなかった。畳み掛ける」
 学園に籠もっている火力支援のメンツの足場を崩す事の無い効率的且つ自在な変容。手足の用に金属を扱う手腕を、レイリスは褒め称えた。
「絶え無き驟雨の如く撃ち付けよ」
 指を鳴らす。小気味の良い音と共に、配置されたレギオンが、反射板を穴の開けた箇所へと向かってレーザーを収束させる。乱反射するレーザーは都度300回折り返し、リュクルゴスの身体を焼いていく。
「相乗りさせてもらうよ。彼女のお陰で、こっちも溜める算段が出来たからね、これを機に前に出よう」
「合わせるぜ」
 京介とクラウスが操作するレイン砲台が、レーザーによる弾幕を更に厚くする。火力継続を是とし、レイリスは弾道を都度計算していく。
「反射角の計算は大変なんだがな、代わりに、しっかり当て続けてくれたまえ」
 戦闘人形が、武装の射程内に入る。
「涓滴岩を穿つってな、弱味は突かせて貰うぜ、悪く思うな」
 12体の戦闘人形がスリーマンセルを基本に隊列を組み、一斉に対戦車ライフルを構え、引き金を引く。銃器とは思えない轟音と濃い硝煙を立ち上らせながら。戦車走行を撃ち抜く大口径ライフル弾が、傷跡に容赦無く牙を立てる。

●めでたし、めでたし
「聞きたい事が有ったんだ。僕はね、これでも、一人でも多くの人を守りたいと思ってる」
 利き手に込められた魂の炎を感じながら、クラウスはリュクルゴスに接近する。
「それから、平和が欲しいと思う。僕の希望は何処かに落としてきてしまったけれど、死に怯えず、お腹を満たして、安心して眠って、そんな、ささやかな幸せを皆が感じられる世界になって欲しいと思う」
 勿論、ひとは争う者だから、みんなとは行かないかも知れないけれどね。
「希望は無いけれど、情熱はある、心も、魂も忘れて来たわけじゃない。リュクルゴス」
 君は、心を受け入れた。
「機械が心を持つと言うのは、どんな感じなのかな?」
 この、拳に滾る様な、自分にとっても不確定な魂というヤツを、君も、持っているのだろうか。
 跳躍、リュクルゴスの広がって行く傷が、迫る。
「機械には、過ぎたモノだ」
「そっか。そうだよね」
 でも、分かり合える人が、きっと欲しかったんだよね。君も。
 片腕で渦巻き始めた魂炎を渾身の力で、鉄の身体に叩き込む。
 同時に、機械人形群の大型弾頭が、降り注ぐ。
「俺も一つ、聞いて良いか。何故、俺達に猶予を与えた」
「私なりの、最大限の讃辞の、つもりだったのだがな……」
「まさか、本当に、それだけだってのか……!」
「おかしいか、おかしいかもしれぬな、人間の、傭兵よ」
 広がった損傷は深刻化し、リュクルゴスが片膝を付く。
「あなたは、本当に、人が人としてある事を、羨んでいたんですね」
「少年、貴殿の嗅覚には、正直、驚きを隠せぬ」
 力を持った機械群は、人の真似事をし始めた。哲学的な命題に取り組み始め、その解決の為の方策を考え、思考の違いから対立し、戦争を始めた。
 何もかもが醜悪で、劣等で、滑稽だった。これでは、ネジの外れた機械の暴走だ。
「下らぬ」
「あなたの信念は、汝の宿敵を愛せ、ですよね
「そうだ。立場が変わろうと、私の信念は変わらぬ」
「なら、仲間になってくれると、嬉しいんだけど」
 イクサが、リュクルゴスの指先にも満たない手を差し出す。リュクルゴスは、それを見て、人差し指を差し出した。
「あ、ずるいです。それ私も言おうとしてたんですよ! と言うかですね、私もしっかり尽力したんですから、抜け駆けはだーめーでーすー!」
 空から降って来たリズの明るいブーイングに京介はまるで玩具の取り合いを見ているようで、何となく、紙煙草を咥え、紫煙を薫らせた。
 クラウスは√能力者達の様子を見て、破顔した。
「わかり合える人が欲しかったよね、君も」
「それには答えぬぞ、青年」
 言ってから、イクサとリズに、通信機が渡された。
「困った時は、それで何時でも呼ぶと良い」
「あ、それじゃあ私からも。修復、何時でもお手伝いしますから、何時でも呼んで下さいね」
 友好制御AIは必要なさそうだが、リズは試して見たいとも思った。
「私には意味が無いと言っておくぞ、リズ」
「観察眼、高くないですか……」
 イクサは何処かへ去るリュクルゴスに、ただ、どの様に言葉を紡げば良いのか分からず、ただ、頭を下げた。

●そして、幕は閉じられる
「現刻限を以て、状況を終了する。あれ個人に興味は無いが、それなりに、楽しめた戦場だったぞ」
 此処からでは、聞こえないだろうとレイリスは、人知れず姿を消した。
「笑ってたけど、結局あたしの言う通りだったんじゃないかしら、アレ。ベヒモス、アンタ、後でお仕置きね」
 パトリシアの言を気にした様子も無く、仕事は終わったと早々に身体を丸めてベヒーモスは夢の世界に旅立っていく。
「じょーちゃんは気張りすぎだぜ。そっちのはふざけすぎだけどよ、中間はいねーのかねえ」
 立ったまま気を失っていたレイを、男は寝かせて休ませる。
「失敬な、当人は何時だって真面目でありますぞ」
「あーちげぇねえ、機械の嬢ちゃんも弱ってるもんな」
「何ですと、当人は」
 ボディの至る所から黒煙を吹いている事に気付き、フレアは誤魔化す様にニトロ・プルに口を付けた。
「うむ、疲労困憊の身体にニトロ・プルは染みますな」
 長い戦場の一幕は、そんなフレアの一言で幕を下ろす。
 √能力者は、自分の愛する日常へ、或いは人へ、或いは世界へ、帰るのだ。
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