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【王権決死戦】◆天使化事変◆最終章『セラフィム仕えし』
そこは、塔の頂。
空を仰げば光の環が浮かんでいて、まるで王に被せる冠のようだった。
そして、その男は玉座から立ち上がる。
「随分と大所帯だな」
筋肉質の体は褐色に染められ、地中海人種特有の彫りの深い顔立ち。独特な魔術的装具を身に着け、右腕は天使の神秘金属に覆われている。
そして、一振りの剣を握っていた。
——王劍ダモクレス。
それが解き放つ膨大なインビジブルは、√能力者たちを思わずすくみあがらせる。
全ての元凶がここにいると分かり、彼らは一斉に得物を構えた。
「彼以外は去った方がいい。俺の民になりたくなければね」
「エド一人を残して逃げれるものか!」
王は天使の少年を指差して告げる。しかしその場にいた者たちは忠告を無視して戦いを始めた。
力は5代目塔主を上回り、魔術での連携は6代目塔主より優れる。4代目塔主以上の視野の広さと粘り強さで攻撃を避けて受け止めて、尽くを蹴散らしていった。
これまで以上の脅威に、√能力者たちも簡単には決着を付けられないと覚悟して。
その時、それはたちまち広がった。
「あっ、なん、で——」
√能力者や羅紗魔術師の肉体が、神秘的な金属へと作り変えられる。天使である者もその体色を黒へと変化させていって、あっという間に王に仕える民となった。
残されたのは、エドとマルティナのみ。
「……彼らに資格はないようだな。さて次は、13代目の孫、お前だ」
「っ!」
動揺する天使の少年は、攻撃の勢いを殺しきれず大きく吹き飛ばされた。
●
『塔の頂に座すのは、13代目塔主の肉体を依り代として蘇った初代塔主のようです。しかしそれは歴代塔主の力も併せ持ち、概念的な塔の主、ウナ・ファーロとして顕現しています。このまま挑んでしまえば、その空間を覆い尽くしている領域によって、戦いの最中に天使化してしまうでしょう。ええ、エドさんの領域でも防ぎきれないようです。予知の範囲ではありますが、今の状態での活動限界は|3分《360》文字と言ったところでしょうか』
『そして、倒されていない2代目塔主の領域も、この空間には残されています。これまでの歴代塔主で討ち漏らしがあればその分、戦い難い場となっていたでしょう。しかし2代目塔主を倒してしまえば問題はありません。全ての歴代塔主が討たれたとなれば、敵の天使化領域よりもエドさんの領域が勝り、時間制限を気にしなくてもよくなりそうです』
『類まれなる肉体に天使としての性質も持ち、倒すのはとても困難でしょう。ですから急がず、状況を見て挑んでください。ここまで戦い抜いた皆さんならば決して倒せない相手ではないはずです。彼を倒し、王劍を砕いてしまえば、空に戴くあの光も消えるでしょう。それではどうか、お気を——」
星詠みが締めくくろうとしたその時、もう一人が遮った。
「待った! まだ何か起こるわ!」
√能力者たちと共に予知を聞いて足を止めていたアマランス・フューリーは、更なる脅威をその瞳に映す。
「王劍から、強力なインビジブルが……!」
星詠みの介入によって、頂での戦いが先送りされたその頃。
初代塔主の握る王劍が、新たなインビジブルをその場に呼び出していた。
それは、少し前にようやく吸収した、残された塔主。
「ああ、成功だ」
12代目塔主シャウラ・ヴァレンティーノ。√能力者たちにはダースと名乗ったその人物は、インビジブルとなって甦る。
他の歴代塔主同様、塔を守るために生み出されたそれは、賭けへの勝利を喜んだ。
そして、忠実に侵入者を排除するため、その手に握るナイフで初代塔主を突き刺す。
「お前、は——」
「すまないが、その剣は私に使わせてもらうよ」
過去の再現は、あまりに強大な存在をもあっさりと殺してしまう。万能の言語が刻まれた刃がその身を貫き、乗り移るためのパイプとなった。
もとより歴代塔主と繋がるその体は、容易く12代目を受け入れる。
そうして姿は変えないまま、邪悪な表情を顔に浮かべた。
「はははは! 凄まじい力だな! ああこれなら確かに、扉を開けそうだ!」
その肉体に宿る全能感に笑みをこぼす。握る王劍の力を確かめ、光の環を仰いだ。
これならば長年の夢をも成し遂げられると歓喜して、そこでふと思い出す。
「しかし邪魔をされては面倒だ。オルガノン・セラフィムは、私では限られるか。ならば……」
塔内部へと続く階段を見下ろし、襲撃者に備えようと扱える術を確かめた。初代塔主の膂力や領域はそのまま自身のものとしてしまえたが、民には背く者もいる。
けれどここまで使わずにとっておいたものがあった。
「……生前に施した術を起動させるには、少し時間がかかるな」
蒼い文字を浮かべ、遠く離れた羅紗へと魔力を注いでいく。
同時刻、島の地下で眠る石に張り付けられた布が、僅かに光を帯び始めていた。
数百年もの間、復活を待ち続けていたそれらの数は数万にも及ぶ。
このまま絶えず魔力が注がれれば、島を覆い尽くす怪異の軍勢が島を埋め尽くしてしまうだろう。
そんな未来を見たアマランス・フューリーは、作戦の変更を√能力者たちへと告げる。
「怖気づいている暇はないわ! 攻撃を仕掛け続けなければ手遅れになってしまう! 仕留めきれなくてもいい! 少しでも妨害するため、手の空いた者たちから向かいなさい! 頼んだわよ!」
その資格は誰にあるのか。
かつての者たちと重なる者か。劍を得た者か。
相応しき者が、王にならんことを。
マスターより

プレイング冒頭に【死を覚悟する】の記載がない場合は採用出来ませんのでお気を付けください。同行者がいる方は、【相手の名前】又は【合言葉】のご記入をお願いします。
敵の準備行動を妨害するためには1日1名のプレイングが必要となります。公開初日を除く3日間(連続でない)リプレイ投稿できるプレイングがなかった場合、準備行動が完成して島中に数万の怪異が解き放たれます。
第11章、第12章に参加されている方は、そちらのリプレイが投稿されるまでこの章でのプレイング採用をしません(事前に送って頂くのは大丈夫です)。
プレイング受付〆切は🔴🔵が達した時点になりますので突然締め切ることになると思います。ご了承下さい。
この章のリプレイでは、360文字以内に塔頂から離れていないと天使化します(天使ジョブは隷属。第12章で2代目塔主が倒されるまで)。プレイングとそうかけ離れた数字にはしないつもりですが、運悪く不意打ちとかもありますので、そちらを警戒した上でお願いします。
以前の章で天使化の際に効果を発揮した技能に関しては、値10につき時間制限を1文字増加させることが出来ます。「環境耐性」「精神抵抗」「狂気耐性」は指定が無くとも天使化に対する技能として発動しますが、それ以外は指定が無ければ発動しません。
技能を使用する際、一定の数値を超えていないと通用しない場合があります(対象によって変動します)。
前回同様、決死戦専用兵装を一つ選んで使って頂いても構いません。√能力等で上昇させた後に兵装の値を加算してプレイングに反映します(使う際は、最低限区別できる記載をお願いします。一覧については第3章最後を参照してください)。
羅紗魔術師は、第3章で【羅紗勧誘】を選択して頂いた方のみ同行(行動指示)可能です。
簡単にですが、これまでのあらすじと人物紹介を一言雑談にて記載します。質問があれば一言雑談で「★」を付けて発言してください(返答は☆を付けて行います)。
展開していく内容によっては、頂いたプレイングに沿わないリプレイになるかもしれません。また、リプレイを返す順番もこちらの都合で決めてしまいますのでお待たせしてしまうかもしれません。ご了承ください。
最終章です。どうか完結まで見届けて頂けると幸いです。よろしくお願いいたします。
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第1章 ボス戦 『塔主ウナ・ファーロ-XII』

POW
|塔の王《フリードリオン》
命中する限り「【天使の右腕 】による攻撃→技能攻撃→[天使の右腕 ]攻撃→技能攻撃」を何度でも繰り返せる。技能攻撃の成功率は技能レベルに依存し、同じ技能は一度しか使えない。
命中する限り「【天使の右腕 】による攻撃→技能攻撃→[天使の右腕 ]攻撃→技能攻撃」を何度でも繰り返せる。技能攻撃の成功率は技能レベルに依存し、同じ技能は一度しか使えない。
SPD
|近衛天使《セラフィム・ソルダート》
「全員がシナリオで獲得した🔵」と同数の【黒いオルガノン・セラフィム 】を召喚する。[黒いオルガノン・セラフィム ]は自身の半分のレベルを持つ。
「全員がシナリオで獲得した🔵」と同数の【黒いオルガノン・セラフィム 】を召喚する。[黒いオルガノン・セラフィム ]は自身の半分のレベルを持つ。
WIZ
|天の守護者《ハベラー》
移動せず3秒詠唱する毎に、1回攻撃or反射or目潰しor物品修理して消える【蒼い古代文字 】をひとつ創造する。移動すると、現在召喚中の[蒼い古代文字 ]は全て消える。
移動せず3秒詠唱する毎に、1回攻撃or反射or目潰しor物品修理して消える【蒼い古代文字 】をひとつ創造する。移動すると、現在召喚中の[蒼い古代文字 ]は全て消える。

【死を覚悟する】
ケッ死戦チェーンソー剣を尻に一番槍にひょっこり参上じゃ
「ボサッとしている時間はもうないのう」
久々の屋外、何も遮るものはない
「魔術外の現代兵器の味を今一度味わうと良い『オーライ、ベイベー』じゃ!」
仙術決戦気象兵器「サンバースト」の衛星射撃を何度も降り注がせながら
手に持つ悉鏖決戦大霊剣と尻のケッ死戦チェーンソー剣で足止めに斬り掛かろうぞ!
「今わしがやれる事は精々この程度じゃがのう!わしの後に続く者が居る事をわしは信じておるぞ!」
引き際を見誤らず己の時間感覚と時計を信じて
退却時はリボルバー銃の射撃と√能力の衛星射撃で足止めしながら慎重に引き下がるわい
やはり一番槍と飛び出したのは中村・無砂糖だった。
「ボサッとしている時間はもうないのう」
その尻に兵装『ケッ死戦チェーンソー剣』を挟んでひょっこり参上。久々の何も遮るもののない屋外に感慨深くなる暇もなく、早々に敵へと挑む。
「魔術外の現代兵器の味を今一度味わうと良い『オーライ、ベイベー』じゃ!」
√能力【|仙術決戦気象兵器「サンバースト」《サテライトビーム・サンバースト》】による衛星射撃を降り注がせて、敵の準備行動を阻もうとした。
「邪魔をするな」
無数の攻撃に気が逸れた塔主ウナ・ファーロは苛立ちを乗せたまま、2体の黒いオルガノン・セラフィムをその場に呼んで対処させる。2体だけならと、中村・無砂糖手に持つ『悉鏖決戦大霊剣』と尻の『ケッ死戦チェーンソー剣』で切り払った。
しかしすぐにタイムリミットがやってきて、撤退へと行動を切り替える。
「今わしがやれる事は精々この程度じゃがのう! わしの後に続く者が居る事をわしは信じておるぞ!」
逃走中の追撃でやられてしまわないよう、『リボルバー銃』での射撃と√能力の衛星射撃で安全を確保しながら急いで階下へと降りていくのだった。
「ふう……ギリギリやったわい」
🔵🔵🔴 成功

【死を覚悟する】
カレーのお守り使う
レナの肩の上からごきげんよう
頼れる僕らの愛の従僕、ここに……参上せず!
配下のレギオンだけ先行させるぜ
目的はダースの集中を乱すこと
レギオン達を奴の周囲に配置して…
スピーカーから爆音を垂れ流す!
戦闘中の塔主の声とか!
√能力者が攻撃する時の声とか!
R-18な喘ぎ声とか!
電波ソング歌ってみたとか!
この圧倒的存在感!無視できると思うなよ!
敵の攻撃はドローン操縦技能を活かして全力回避で!
あ、一応3分経つ前に撤退させるわ
情報受信してるだけで危険って話だし
撤退指示を出したら通信も切っとく
すまんが頑張って逃げてくれ…!
レギオン・リーダーは、3代目塔主のフロアにいた。
マルティナへと声を掛けようとしているレナ・マイヤーの肩の上。目の前の少年少女に集中している主には内緒で、彼は配下のレギオンたちを塔頂へと先行させる。
彼によって放たれたレギオンたちは塔主ウナ・ファーロの周囲へと展開していき、集中を乱すようにスピーカーから爆音を垂れ流していった。
それは、階下の2代目塔主の声であったり、√能力者たちの攻撃の威勢であったり、あるいはネットから適当に拾ってきたR-18な喘ぎ声や電波ソング歌ってみたと、手当たり次第に妨害をした。
(この圧倒的存在感! 無視できると思うなよ!)
すると、敵は準備を中断してまんまと攻撃を仕掛けてきて、それには卓越したドローン操縦技術をもって全力回避させていく。
と、勢いに乗り始めるも時間が来て撤退の命令へと切り替えた。
(すまんが頑張って逃げてくれ…!)
情報受信してるだけでも危険だろうと考慮し、レギオン・リーダーは通信も遮断する。その後、戻ってこれたレギオンはごく少数だった。
🔵🔴🔴 苦戦