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親愛なる|Cogito《自己意識》へ

#√ウォーゾーン #SeriesScenario《テセウスの魂》 #Episode.3 #全員分執筆中 #一度プレイングお返し発生します #プレイング締切りました

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 #√ウォーゾーン
 #SeriesScenario《テセウスの魂》
 #Episode.3
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 蒼白いホログラムが幾重にも重なり、崩壊した都市の残骸を立体的に映し出していた。
 第八区画――わずかに残された生体反応。
 ドクトル・ランページは、無感動な瞳でそれを見下ろす。

『生き残り……という表現は、あまり正確ではないな』
 その声には、観察者としての退屈すら滲んでいた。
『そう、“燃料”だ。己を燃やして獲物を照らす、実に効率の悪い篝火。彼等は一人残らず殲滅される事で、偽善者を誘い込む誘蛾の火となる。救助対象という看板さえ掲げれば、√能力者は必ず喰い付く』

 傍らの助手が顔を上げる。
「……予知の力に感づかれても、ですか?」

『構わん。むしろ歓迎すべきだ』
 ドクトルは笑みとも嘲りともつかぬ息を漏らし、尾の先でモニタの光をかき混ぜた。
『彼等は“誰か”を救うために必ず来る。己の善意を証明する為に、焼け落ちた街に足を踏み入れる。その自己満足は、我々にとって最も有用なデータだ。そして――その瞬間こそが鹵獲の好機である』
 指先が宙を滑り、画面上の人影をなぞる。その輪郭が灰色に燃え、ノイズとなって霧散した。

『否定は出来まい、星詠みよ。お前が視た所で未来は変えられない。我々の観測結果は、常にお前の先を行く』
 ドクトルはゆっくりと頭をもたげ、口を開く。

『……愛。希望。それらが裏返される悲哀。絶望。そして恐怖。魂の構造を暴くにあたって、これほど理想的な熱源は他にない』
 淡い青の光が、まるで原子炉の灯のように彼女の頬を照らした。


 ――また、来た。
 光が視界を裂く。それは白昼夢のように現実味のない衝撃で、頭の奥が焼けるように熱を帯びた。
 音も、彩も、温度もない。然しこの現実感の欠落こそが、未来が崩れ落ちていく確かな感触だった。

 気づけば、神童・裳奈花はホワイトボードの前に立っていた。
 手にはいつものマーカー。
 震える指先は、思考とは無関係に動く。使命に駆られたように線を引き、言葉の断片を書き込んでいく。
 【第八区画】【殲滅】【鍵】【生存域消失】――。
 自分でも意味が分からない。それでも、手は止まらない。

「……ボクは、皆に行ってほしいとは言えない」
 マーカーを握る手から力が抜ける。
 白いボードには、交錯した線と文字が散らばり、まるで崩壊した地図のようになっていた。

「√ウォーゾーンの一角にある崩壊した都市に、ドクトル・ランページが侵攻します。それと……皆が“誰か”を相手に、辛そうに戦う様子も少しだけ視えました」
 普段とは違い、声の調子は鉛のように重い。

「ドクトル・ランページは、|完全機械《インテグラル・アニムス》に至る“最短経路”を探してる。人の心とか、想いとか――非線形な“魂”と呼ばれるものを、数値化しようとしてるんです。機械で完璧に模倣できるように、感情の構造を解析して、コードへ分解して、無機質に再構築して――」
 自分の口から出た説明が余りにも冷たくて、星詠みの少女は思わず唇を噛んだ。

「たぶん、その為に。崩壊した都市――ノア・シエルの避難民が集まる、第八区画を……“燃やす”つもりなんです。人の感情が、どう壊れて、どう絶望するか。それを解析する為に」
 彼女の声が細く途切れる。
 いつものように冗談めかして笑って場を和ませる余裕もなく、瞳には怯えが浮かぶ。

「敵は、“誰かを助けようとする気持ち”すらも実験の一部にしようとしてる。ボクたちが動けば、それさえデータになる」
 机の上をマーカーの蓋がころりと転がる。
 裳奈花はかすかに首を振り、掠れた声で続けた。

「更に敵は、ボクが“予知する”ことを知ってる。先手を取られてる……。これ、完全な罠なんです。ドクトル・ランページ本人の脅威度も、ずば抜けて高い。大怪我では済まないかもしれない。心を壊される可能性だってある」
 少女は小さく息を吐き、言葉を切る。痛いほど長く続く沈黙。

「……でも、全部が絶望ってわけじゃ、ない」
 その声はまだ震えていたが、僅かな可能性の光を宿していた。第八区画の避難民の中に、武器や義体の製造を担っていた技師が居る。
 ホワイトボードの隅に新たな言葉が書き足される。
 【主査】【整備】【火種】――。

「ノア・シエルの防衛機構。その中核を担っていた軍事企業、ヴァルムント・インダストリの技術者さん。彼なら、きっと皆の力になってくれる。義体パーツや装備の修理、調整、新調。任せて大丈夫だと思います。機械じゃなく、“心”を扱う技術者だから」
 裳奈花はボードの前で小さく拳を握る。

「……彼等の力を借りても、勝率は低いままかもしれない。彼等はもう助からない運命だったんだって、割り切って背を向けても……ボクは、その選択を責められない」
 希望を語れない不甲斐なさに、少女は苦しそうに目を伏せた。悔しさからか、握った拳は小刻みに震えている。

「だけど――あの特異な学習を行うドクトル・ランページを放っておけば、√ウォーゾーンの人類生存圏はいずれ消失すると思う」

 沈黙。
 重く、乾いた空気の中で、彼女の声が小さく響く。

「繰り返すけど……ボクは、この罠だと分かりきった戦場に行ってほしいとは言えない。――でも、もし叶うなら」
 裳奈花は祈るように手を胸に当てた。

「その力を、貸して下さい」

 机の上に置かれた「黒曜石の星座盤」――|天輝輪《オルビス》が、宙に光の軌跡で座標を刻んでいく。
 然し座標の光は激しく揺らぎ、不規則に明滅を繰り返す。
 それは嘗てない程、濃厚な死と危険の予感を漂わせていた。
これまでのお話

第3章 ボス戦 『『ドクトル・ランページ』』


POW ドクトル・リッパー
【装甲と一体化した斬撃兵器】を用いて「自身が構造を熟知している物品」の制作or解体を行うと、必要時間が「レベル分の1」になる。
SPD マテリアル・キラー
【物質崩壊光線】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【打撃】に対する抵抗力を10分の1にする。
WIZ ドクトル・テイル
【長大な尻尾状の部位】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
イラスト 御崎ゆずるは
√ウォーゾーン 普通11


 戦闘の展開を観測していたドクトル・ランページは一つ、溜息をつくようなそぶりを見せる。
『ふむ……なるほど。ハードウェア及びソフトウェアを似せると、個体の識別ができなくなると。不便なものだな』

 物言わぬ機械片が無数に転がる中、雨霧の向こうで幾つもの青いホログラムが淡く揺らいだ。
 それは――たった今まで、キミたちと対峙していた模倣体の残響。

“君たちは、祈りそのものだ”
“置いて行かないでくれよ?”

 キミたちに執着する、不倶戴天の影。

“よく……やったな”
“いい名前……もらったじゃねぇか”
“怖かったの……ずっと”
“蝶を……頼みます”
“独りぼっちにして。ゴめんナサい、ね”
“お前は、生きろよ”
“今、高貴なる義務を果たそう”

 攻撃を止められないながらも、キミを庇い、キミを慰め、キミを気遣い続けた影。

 先の戦闘で露になったキミたちの感情波形の輪郭が、涙のように滲む。
 そのホログラムの波形に向けて、ドクトルが歩み出た。

『データ:感情模倣ログ。分類――|GARBAGE《ゴミ》』
 淡々とした声は評価でも侮蔑でもなく、“ただの処理対象”を告げるだけの音。

『偽物と断じておきながらその破壊に葛藤を示す。入力信号と行動出力の乖離。更に敵味方の識別能力に疑問を提示。存外低スペックなのだな、|生命体《ニンゲン》』
 青い波形を指先でつまみ上げるように掴み、軽く力を加えて――砕く。
 青い光は雨に砕け、散ったデータが粒子状に舞う。

『――滑稽だ。いや、不快ですらある』
 砕けた光がぱちりと弾け、地へ吸い込まれた。
 ホログラムの“声の残響”が消える。

『興味深くはあるが、実験結果としては価値がない』
 次々にホログラムが潰されていく。
 攻撃予告。防御の過剰反応。仲間を庇う動き。自己犠牲。
 すべてが、ドクトルの足元で光の埃となって消えていく。

『観測終了。データ価値:ゼロ。いずれも決定因子たり得ない……単なるノイズだ』
 最後の光が消えたその時、ドクトルの視線がキミたちに向けられた。
 模倣体には向けられなかった“研究対象としての関心”が、初めて宿る。

『外部観測では限界がある事は判明した。“紛い物”では真実に届かない。――ならば、“本物”の内部から覗くしかあるまい』
 その背後で巨大な尾が揺らめき、そこに生えている鋭利なエッジが遠雷の光を受けて不気味に煌く。

『鹵獲する。安心するといい、大脳と脊髄は無傷で取り出し生かしたまま研究する。お前たちの魂がどこに宿り、どのように壊れるのか……内側から観測してやろう』
 ゆっくりと、ドクトルは手を広げた。
 その動きがまるで「実験装置の起動」であるかのように、冷たい光が周囲へ奔る。
 光を浴びた瓦礫から鉄屑が宙に浮き上がり、まるで意思を持ったかのように寄り集まり、組み合わさり、熔け合い、ドクトルの武装へと変わっていった。
 頭上を旋回する無数の【斬撃兵器】。
 両サイドには、【マテリアル・キラー】の砲口となるレギオンの群れが展開する。
 そして【長大な尻尾状の部位】は無骨な外装殻でより大きく重量が増し、幾つもの刃が生成された。

『――精々抗え。生き延びて、苦しんで、叫んで見せよ。それがお前たちの“価値”だ、|生命体《ニンゲン》』

 敵対象:ドクトル・ランページ - |重武装形態《タイプ・フラクタル》。
 その眼は自身の導き出した勝算を疑わず、キミたちの反応を記録するように見下ろしている。

 キミたちに退路は無く。劈くように雷鳴が響く。
 斯くて、決戦の幕が静かに開いた。



    Last Movimento : 2 / 2
      - 灰燼にて帰還す -



 ||| | | - WARNING - | | |||

 [[ ENEMY : Doktor-Rampage ]]



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■マスターより
いよいよ黒幕であるドクトル・ランページとの血戦です。
矜持。絆。情。キミの考える“魂の在処”を声高に叫べ。
仮にルシーダが無くとも、その情動は必ず力となってくれる筈。

ズタボロを楽しみたい方でしたら、第三章からでも参加を歓迎します。
その分、戦闘が始まりましたら熾烈な攻撃が集中すると思って下さい。
歯を食いしばって逆境を跳ね除ける、カッコイイプレイングをお待ちしております。

【本シナリオ限定ルール:負傷継続システム適用】(再掲)
第二章で受けた負傷は、原則として第三章に持ち越されます。
・ご自身で回復手段を用意する
・同行者による回復は「名指し」で記述されている場合のみ有効
「章が変わる事」による自動治癒は基本的に適用されないものとお考えください。

|||||||| # OPERATION-UPDATE ||||||||
◆作戦目標:
⇒巨大派閥レリギオス・ランページの統率者『ドクトル・ランページ』の撃破。
 撃破と同時に『ノア・シエル第八区画』防衛も同時達成となる。

◆現場詳細:
⇒ノア・シエル第二戦線跡地。一般人に被害が及ぶ可能性は無い。
 また、周囲に多数のインビジブルを確認。
 敵性インビジブルも漂っており、激戦が予想される。
 瓦礫や廃墟の中に残置物有り。キミが有ると言えば、"ソレ" は有る。

◆プレイング受付開始
⇒11/30(日)9:30より開始