シナリオ

⑥星を喰む

#√マスクド・ヒーロー #秋葉原荒覇吐戦 #秋葉原荒覇吐戦⑥

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⚔️王劍戦争:秋葉原荒覇吐戦

これは1章構成の戦争シナリオです。シナリオ毎の「プレイングボーナス」を満たすと、判定が有利になります!
現在の戦況はこちらのページをチェック!
(毎日16時更新)

●空想宝石ワークショップ
 山手線の高架下、秋葉原と御徒町のあいだ。
 白く塗られたアーチの柱が並び、鉄の梁が遠くまで連なっている。
 その陰をくぐれば、昼でもどこか薄暗く、電車の響きが天井を這っていく。
 ――ここは『AKI-OKA ARTISAN』
 職人たちの工房が肩を寄せ合う、ものづくりの街だ。

 そこに、今だけ現れた期間限定のショップが一軒。
 星空を背景にした看板には、柔らかな筆致でこう書かれている。

『― 星喰い商 ムラード・ナジュム/空想宝石ワークショップ ―』

 通りがかった一般客たちは、半信半疑ながら笑顔で店内に吸い込まれてゆく。
 机の上にはガラスの破片や金粉、透明な樹脂。
 ムラードは丁寧に手を差し出し、言葉巧みに人々の“想像”を引き出していく。

「では、思い浮かべてください。あなたが“こうなればいい”と思う未来を――」

 目を閉じ、願いを込めた瞬間。
 手のひらの中で無機質なガラス片が、微かに脈打つ。
 無色透明なガラスが、鮮やかな色味を帯びてゆく。
 それはまるで、心臓のように淡く光を放つ“空想宝石”。
 誰もが“自分の未来”を楽しげに語りながら、透明なガラスに触れている。

 未来が語られるたび、ムラードはローブ越しに耀く眸を細めた。
 それが彼の能力を発動させる方法だと、誰も疑うことはないのだから。

●星喰い商
「皆、戦争で慌ただしい中悪いが、新たに向かってもらいたい場所がある」
 星詠みのひとり、白き竜人ノア・アストラは集まった√能力者たちを前に、状況の説明を始めた。

 現場は山手線の高架下。『AKI-OKA ARTISAN』と呼ばれる、ものづくりをテーマとしたアトリエショップ街だ。
 そこには以前から、怪人『マンティコラ・ルベル』が通っていた形跡があり、密かに配下の怪人たちを配置し、訪れた民間人は殺さずに、√能力者たちを殺戮する準備を整えているらしい。

 その中で、表向きは『空想宝石ワークショップ』という店を開いている怪人が居る。
 『星喰い商:ムラード・ナジュム』人のあらゆる望みを叶える行商人。
 彼が創り出す宝石は人々の未来の空想を糧にし、それを形へと変える能力がある。

「そう、この宝石には、人の“空想”を喰う異能がある」
 喰われた人間は未来の夢や希望が失われてしまう。
 それを防ぐために、そして密かに戦いの準備を進めている怪人たちの計画を阻止するため。ショップ街に潜入し、ムラードの行いや創られた宝石を破壊するのが今回の最終目的だ。

「ただ、現場には何も知らない一般人が多数居る。派手な行動は控えたほうが良い」
 それならば自分たちもワークショップに訪れた客を装い、ムラードに近付くのが穏便に事を済ませる方法だろう。
 隙を見て、ムラードを退けるなり、集めた空想宝石を破壊するなり、対処をお願いしたい。
 ノアは軽く頭を下げ、あなた達に依頼を託す。

「依頼はさておき、自身の空想を閉じ込めた宝石とやらには、少し興味を惹かれるね」
 一見すれば長閑なワークショップだ、早急さを迫られる戦場ではない。
 敵の異能とはいえ、その体験を少しばかり楽しんできてもいいだろう。

「ただ、ひとつ注意点がある。自分が創造した宝石は、必ず最後に破壊してくれ」
 そうしなければ、宝石に込めた願いや希望の空想が、喰われたままになる。
 √能力者でも、その結果は大なり小なり自身にも影響を及ぼすだろう。
 ――けれど、喰われたままでも其れを手元に置いておきたいと思うのならば。
「僕は無理に、止めはしないよ」

マスターより

朧月
 こんにちは、朧月です。
 王劍戦争『秋葉原荒覇吐戦』のシナリオのお届けです。

●👿『星喰い商『ムラード・ナジュム』』
 人のあらゆる望みを叶える行商人。
 対価として、その者が抱く空想未来世界を宝石に変えてしまいます。
 戦闘では宝石に封じ籠めた空想世界の異能を行使します。

●プレイングボーナス『敵の流儀に則り戦う』
 宝石を創造することで自動的にボーナス判定となります。

 最終的にはムラードが溜め込んだ空想宝石の破壊が目的ですが、
 プレイングでは宝石の創造やそれに絡めた心情メインで大丈夫です。
 リプレイでもシナリオラストに軽く触れる程度の描写となります。

●進行
 OP公開と同時にプレイング受付を開始、断章の追加はありません。
 リプレイ投稿による〆のタイミングはタグでお知らせしますが、
 基本的にはフォームが閉まるまで受付ております。

 遅筆のため少数採用を想定。先着順ではありません。
 ご参加人数によっては内容に問題なくともご返金する場合があります。

●グループ参加について
 ご自身含めて【2】名様まで。
 ※送信日、連撃数は揃えてご提出ください。
 ※【相手のお名前(ID)】or【グループ名】を文頭にお書き添えください。

 以上です。
 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『星喰い商『ムラード・ナジュム』』


POW 空想蒸気世界『シトリン』
自身が受けた武器や√能力を複製した【超高圧蒸気機関を搭載した機械兵器 】を創造する。これは通常の行動とは別に使用でき、1回発動すると壊れる。
SPD 空想宇宙世界『ペリドット』
【宇宙世界に憧れた少年の空想 】を語ると、自身から半径レベルm内が、語りの内容を反映した【宇宙空間】に変わる。この中では自身が物語の主人公となり、攻撃は射程が届く限り全て必中となる。
WIZ 空想南国世界『ルベウス』
「全員がシナリオで獲得した🔵」と同数の【獰猛な動物や伝説上の生物 】を召喚する。[獰猛な動物や伝説上の生物 ]は自身の半分のレベルを持つ。
イラスト 一葉
√マスクド・ヒーロー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

静寂・恭兵
アドリブ歓迎。

一般人の殺害はしていない様だが怪人が開いたワークショップでは一般客にも『空想宝石』とやらを作らせている様だな。
…自らの未来を宝石にと言われれば惹かれる人も多いだろう。それこそが敵の狙いなんだろうが…。

俺の未来…宿敵を倒し白椿を幽閉から解放する…そんな未来。
白く淡く光|宝石《いし》
美しいとすら思う。理想の|未来《ゆめ》だ

さぁ、これでいいだろう?
一般客に紛れてと言うなら…
√能力『霊震』これで宝石を怖そう

それに紛れて巻き込まれた風に自分の宝石も壊す。

未来は自分で形にするさ。

●白の光
(……此処が例のワークショップか)
 夜の静けさを纏うように現れた男、静寂・恭兵。
 漆黒の髪が頬を流れ、深い海のような青い双眸が、時折ゆるやかに瞬く。
 何処か物憂げさを漂わせながらも、眸の奥には強い意志を秘めている。
(情報通り、一般人に危害を加えている様子はなさそうだ)
 講師をしているムラードの見た目が多少変わっているものの、それも演出だと思えばそこまで不思議でもない。昼下がりの長閑なワークショップだ。客はみんな、一心不乱に硝子玉を手に空想宝石を創り出している。
 自らの未来を宝石に、なんて夢のような事を言われれば……半信半疑でも惹かれる人が多いのは判る、そして実際にそれが出来てしまうのだから。
 そうして自身の手は汚さずに、謂わば兵器だけを大量生産する、それこそが敵の狙いでもあるのだろう。

 恭兵も一般客を装い、端の席に腰掛け、無色透明な硝子玉に向き合った。
(俺の空想……願う、未来か)
 そんなこと決まっている、宿敵を倒し、彼女を……白椿をあの狭い籠から解放する事だ。
 自分の身代わりとして差し出されてしまった彼女を取り戻す。

 恭兵が意思を込めれば、手元の硝子玉が白く色付く。彼女の色だ。
 淡く灯る、幽かな光。それすらも今は美しく見えてしまう。
 ――コレが俺の、理想とする未来か。
(けれどこの硝子玉は所詮、理想と夢だけのかたまりに過ぎない)
 自分の手で掴まなければ意味がない。だから俺は……強くなる、もっと。
 未来は自分自身の手で形にする。
 机から下ろした手を握りしめれば、空気が震える。見えない衝撃が走り、空間そのものを風が切り裂くように。恭兵はムラードの傍に在る幾つかの宝石たちと共に、自身の白く淡い宝石も破壊した。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

空地・海人
※アドリブ、連携歓迎

下手に変身して戦えば、一般人に被害が出そうだ。ワークショップの客のふりをして近づこう。

流儀に則って、まずは宝石を創らないとな。
透明なガラスに触れ、「自分が写真家として成功し、多くの人の記憶に残る写真をたくさん撮っている空想」を語る。
これが俺の空想から生まれた宝石か。澄み渡った青空みたいな色だな。

人々から希望を奪わせるわけにはいかない。悪いけど、倒させてもらうぜ。
宝石からサイコメトリック・オーラソードを生成。ワークショップの客ではないと正体がばれる前に、敵の心臓を[串刺し]にする。

壊すのが惜しいくらい綺麗だ…。でも、写真家になる夢は失いたくない。
オーラソードで宝石を砕こう。

●澄む青空
 訪れたワークショップは何処にでもある日常の風景だった。
 この空間に人々に仇をなす怪人が居るとは思うまい。

 空地・海人。照明に茶色の髪が光る短髪を靡かせ、爽やかで誠実そうな顔立ちの、一見何処にでも居るような青年、けれどその眸には熱い情熱を秘めながら。コツ、とブーツを鳴らし、一般客に紛れ込みながら静かに目を伏せる。
(下手に変身して戦えば、周りの一般人にも被害が出そうだ)
 周囲の一般客たちは皆、夢中になって空想宝石を創り出している。
 不本意ながらも、此処は敵の流儀に則って自身も同じように宝石を創っておくべきだろう。

 海人は用意された無色透明のガラスに触れた。
 自分の想像する未来、そして願いを込める。
 ――それは自分が写真家として成功し、多くの人の記憶に残ること。
 無我夢中でカメラのシャッターを切る自分、笑顔をくれる人々。
 理想の夢。それは晴れやかで澄み切った、青空の色のように宝石を染め上げる。
(これが俺の空想から生まれた宝石、か)
 キレイだな、素直にそう思った。壊すのが惜しいくらいに。
 当たり前だ、飽くまでもこれは理想を詰め込んだものなのだから。
 周囲の人達も、思い思いの、美しい宝石を創り上げていた。笑顔を咲かせ、愉しそうに。アレには夢と希望が沢山籠められている。
(そんな人々から、希望を奪わせるわけにはいかない。悪いけど、邪魔させてもらうぜ)
 海人は密かにオーラソードを出現させ、自身の、そして敵の溜め込んだ空想宝石を砕いた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ゾーイ・コールドムーン
へえ、面白い能力だね。結構興味が出てきたな
とはいえ敵は敵だからね、しっかり仕事をするよ

願いは色々あるけど、一つだけ話そう
昔の大事な人が、生きていたなら。彼女が老いて亡くなるまで、傍で過ごしたかったと思う
叶わないし、可能性があっても|自然の摂理に反する《叶えてはいけない》願いだ
だから綺麗だとも思わないかい?

さて、一般客を巻き込まずに宝石を砕いていこう
使い魔を喚び、宝石だけを邪視で狙えば被害は最小限で済む筈だ
敵が邪魔してくる場合も十数体で足止めして、その間に他の使い魔で壊せば良いしね
おれの宝石は砕かない。他の願いの邪魔になる未練だから語ったんだ
ただ敵に渡す気もないから、回収して手元に置くとするよ

●叶わぬ願い
 ――人の未来や願いを形にする空想宝石、なかなかに興味深い能力だ。
 柔和な表情に金の双眸、光のように淡く揺れる金髪を靡かせ、ゆったりとした足取りで歩くその姿には、人ならざる気配が漂っている。何処か人間離れした青年、ゾーイ・コールドムーンは仕事として赴いたワークショップを前に、ふむと感心をしていた。
(……とは言え、敵は敵だからね。しっかりと仕事はするよ)

 まずは一般客を装いワークショップへ紛れ込む。
 席に腰掛け、用意された無色透明なガラス玉に手を添えた。
(おれの願いか……色々あるけど、その中のひとつだけ)
 その昔、おれには大事な人が居たんだ。もし未だ生きていたなら……彼女が老いて亡くなるまで、おれはきっと傍にずっと居て、彼女の生を見届けたかったと思う。
 けれど、彼女はもう居ない。現実には。
 だから理想と夢の中だけで語るんだ。叶わない、叶えてはいけない願いを。
 自然の摂理に反する、そう。“彼女が生きていたら?”そんな空想を。
 ゾーイはふふ、と自嘲を浮かべる。
 これはおれの未練だ。叶えるべきではない未来のかたち。
 その空想宝石は、さぞ綺麗に耀くのだろうな。

(さて、と――)
 自身の宝石は懐に仕舞い込み、ゾーイは改めて周囲を見渡した。一般客は皆、愉しそうに宝石を創り上げている。その時間を壊すのは少々忍びないけれど……。
 悟られぬよう静かに呪文を詠唱し、眼球に翼の映えた小型の使い魔たちを喚び出した。客に見られたとしても、何かの演出と思えばそう見ることも出来るだろう。使い魔たちは邪視で宝石だけを密かに破壊してゆく。
(ああ、おれのは壊さなくていいよ)
 この願いはきっとこの先、邪魔になってしまう時が来る。だから今語ったんだ。
 形として胸に仕舞い込めば、手元にはずっと残るから。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

シーネ・クガハラ
こうなれば良い未来?
そりゃあ、私が生きたまま人に戻ってルプスさんにも力が戻って、二人で一緒に戦ったりしながら皆が幸せに暮らせたらいいなって思うのよ
だから宝石を壊して。フギン、ムニン
病院のあの時と違って、こうやって私は生きてる
だから全部諦められる程、もう無欲じゃいられないんだ

予め√能力を発動しておくね
宝石を創造している傍ら、フギンとムニンには空想宝石を壊し回ってもらうのよ
バレない間はお客さんとして振舞うし、騒ぎが起こったら他のお客さんを外に逃がしたりするね。バレちゃったら変身技能を使って空想宝石を壊し回りつつ、逃げ出すのよ
人の夢や未来って、宝石よりもキラキラしてるんだ。奪っちゃダメなんだからねー

●いつかの未来を夢見て
 空想宝石、望んだ未来、叶えたかった未来。
(――こうなれば良い、未来……?)
 シーネ・クガハラ。青い双眸に茶色のツインテールが揺れ、笑顔の端から八重歯が小さく光る少女。生まれつき弱々しかったその身体は、今や吸血鬼としての不老の力を宿していた。その微笑みは可憐で、けれど何処か、夜の影を孕んでいる。

(未来かぁ。そりゃあ……私が生きたまま人に戻って、ルプスさんにも力が戻って……。ふたりで一緒に戦ったり過ごしたり、そうして皆が幸せに暮らせたらなって……)
 思い浮かぶ理想。けれどそれが現実のものとなれば、また私はあの白いベッドに横たわる事になる。
 彼女が自身の力を使い果たして尚、自分を掬ってくれた想いを無下にすることになる。
(私もルプスさんもふたり一緒に元気になんて……そんなの本当に理想だよね)
 けど私は今こうして生きている。
 もしかしたらいつか何処かで、彼女が力を取り戻せる方法が見つかるかもしれない。
 そう考えれば、全部諦められるほどに、もう無欲じゃいられない。
(だからこの理想の未来は、此処に閉じ込めておくの)
 シーネは硝子玉に願いを込めた。それは青く深い色彩に移り変わる。自分と彼女の眸のように。

(……よし、あとは宝石を破壊しなきゃね)
 シーネは事前にスケッチブックに描いた二羽のカラスを召喚し、密かに宝石を壊して回らせる。
 人々の夢や希望は小さな宝石に籠められないほど、本当はキラキラ耀いているんだ。
(だからそれを奪うなんて絶対ダメ、なんだからねー?)
🔵​🔵​🔵​ 大成功

静峰・鈴
私の、願い
それは最早、消え去った過去が今にも続くということ
私の故郷である郷が、在りし日の悲劇がなく今も続いている姿……

とても夜の美しい郷でした
春には優しげな桜が咲き誇り、夏ではふわりと蛍が舞う
秋となれば紅葉の儚げな赤、冬であれば静かな雪が降り積もる

ああ、美しい星と夜帳の姿

……それをただ大切なひとたち一緒に眺める愛おしい時間
今もまだあの美しい光景が、幽艶なる風景が、この宝石の中では愛おしい時間と共に続いている

――ああ、本当に大切な願いなのです。あの愛おしい時間を取り戻したい

でも、そのような事は叶わないと知るから
この痛みこそが、尊さの証なのですから

鼓動の疼きを宿した破魔の刃にて幻の宝石を斬ります

●夜帳の色
 射干玉の髪が肩を流れ、夜の気配を纏う少女。
 夜空のような眸は何処か遠くを見つめ、祈りにも似た沈黙を守りながら。
 静峰・鈴はそっと透明な硝子玉に白い指先で触れる。
(――私の、願い)
 それは最早、消え去った過去が今にも続く未来。
 故郷が在りし日の悲劇を逃れ、今も尚脈々と受け継がれてゆく姿。

 鈴は眸を伏せ、思い出す。脳裡に焼き付く故郷の光景を。
 人知れず存在していた隠れ郷、夜の景色、そして四季折々の移り変わりがとても美しい場所だった。
 春には柔らかな桃色の桜が咲き誇り、夏では澄んだ水辺にふわりと蛍が舞う。
 秋となれば色付く木々の紅葉が季節を告げ、冬には降り積もる白い雪が郷に静寂を齎す。
 ――そして、美しい星々と夜の帳が魅せる幽かな燦めきを。

 その美しき光景の中、大切な人達と過ごす変わらない日常。
 今もまだあの美しい光景が、幽艶なる風景が、この宝石の中で今尚耀き続けている。
 手にした硝子が、色付いてゆく。
 故郷の光景を映し出すような宵色に、星空の光を燦かせて。
 手に触れる故郷の懐かしき景色、本当に大切だった。
 戻れるのならば、あの愛おしい時間を取り戻したいほどに。

 ――けれど、此の手の中の宝石は全てが空想とまぼろし。
 胸に刻まれた痛みが教えてくれる。尊さの証を。

 鈴は自身が創造した宝石からそっと手を離した。
 その耀きを名残惜しそうに見つめながら、鼓動の如き疼きを宿した破魔の刃で空想を斬り裂いて。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

月夜見・洸惺
空想を宝石にできるって滅多にない機会だよね
でもでも、それで誰かの未来や希望が奪われちゃったら本末転倒だよっ!
えへへ、折角だからちょっとふざけちゃおうかなぁ

色んな空想が思い浮かぶけど、僕はやっぱりお菓子な世界かな?
雨の代わりに飴が降ってきて、雲は綿飴っ
星空は金平糖で、お月様はパンケーキ!
街にはお菓子の家がたくさんっ
えへへ、考えるだけでお腹が空いてきちゃう
とっても甘くて美味しい世界になりそうっ
どんな宝石になるかな?
敵さんの能力だけど、ちょっと楽しみだねっ

周りの様子を見て、大丈夫そうな時に|三頭犬《いぬ》にコッソリと皆が作った宝石の破壊をお願いするよ
もちろん、僕も宝石も壊しておかないとね

●甘い夢のかけら
 昼下がりの長閑なワークショップをちらりと覗く少年。
 灰色の肌に夜空の髪、青い眸が星のように瞬いて、背中の翼が告げるのは、人ならざる者の静かな力。
 月夜見・洸惺 は一般客に紛れ、さり気なく席に付く。
 周囲の客たちはみな、真剣な面持ちで宝石へ“未来”を詰め込んでいる。

(空想を宝石にできるなんて、滅多にない機会だよね)
 ――でもでも。
 それで誰かの未来や希望が奪われるのは本末転倒。
「えへへ、折角だからちょっとふざけちゃおうかなぁ?」
 洸惺は眼の前に用意された硝子玉に手を翳す。
 頭の中にはいろんな空想が思い浮かぶけど、ふんわりと最初に膨らんだのは。

「僕はやっぱり、お菓子な世界かな?」
 空からは雨の代わりにキャンディーが降ってきて、ふわふわ浮かぶ雲は甘いわたあめ、夜にはキラキラ耀く星の金平糖が瞬き、まあるく浮かぶお月さまはこんがりきつね色のパンケーキ! そして広がる街並みにはお菓子の家がたくさんあるんだ。
 想像するだけで思わず口許が甘く緩む。
「えへへ、考えるだけでお腹が空いてきちゃう」
 手にした硝子の中に色が宿る。
 飴色の幻想がとろりと揺れて、金平糖の光が溶け合う。
 あまく食べちゃいたくなるようなスイーツな宝石に、洸惺の頬も思わず緩んで。

(……ちょっと勿体ないけど、僕のも含めて宝石は壊しておかないとね)
 周囲の視線をちらりと確認すると、洸惺はいぬのケルベロスを密かに喚び出す。
 相変わらず三頭はやる気なさげにふわぁと大あくびをしているけれど。やる時はやってくれる仔たちだ。
「こっそり皆の宝石を破壊してきて? よろしくね」
 洸惺の指示にいぬたちは静かに足元に回り、客たちの手元に忍び寄るとさり気なく宝石を奪って迷いなく噛み砕いてゆく。硝子は粉々に砕け、そこに宿った“未来”が宙に散る。
 砂のように散った光の欠片は、もう戻らない。
 それでも誰かの未来を守るための決断は、淡く、確かに暖かかった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

シンシア・ウォーカー
アド連歓迎
敵は後で倒せばいいだけの話なので!

こうなりたい未来。私はやはり、故郷に辿り着いた場面を思い描くとしましょう。
緑豊かなセレスティアル達の楽園。家族や周囲の人々の事などは正直覚えていませんが……澄んだ空気に、遮るもののない空は夜になれば満点の星が瞬くあの風景は覚えています。もう戻れなくなって10年以上は経ちますが、今でもあの星空は見られるのでしょうか。
……綺麗な煌めきの宝石になりましたね。

で、戦闘ついでに宝石を破壊すればいい、と。
確実に自分のも壊せるよう範囲魔法の√能力でいきます!
……こういうのをもう少し躊躇する性格だったのなら、私はとっくに帰るべき場所に帰れていたのかもしれません。

●星還
 人々が手にする硝子玉の中で、淡い光が脈動する。
 それはひとりひとりの夢を喰らいながら、宝石という名の檻へと変わってゆく。

 シンシア・ウォーカーも客たちの一人に紛れ、静かに硝子玉と向き合った。
 金糸のような髪が灯りを受けて静かに揺れ、銀の眸には淡い緑の風景が映る。
「こうなりたい、未来……」
 シンシアはぽつりと小さく呟いた。
 手のひらの中で形成されていく宝石に、かつての故郷――空を覆う天上の国を思い描いて。
(もう十年以上は経ちますか)
 あの場所へ戻れなくなってから。

 緑豊かなセレスティアル達の楽園。
 名も顔も朧になった家族。それでも星の瞬きを覚えている、あの光だけは忘れなかった。
 今でも遥か高みにある天上では、同じ星空は見られるのだろうか。
 思いを糧として、シンシアの創造する宝石の中にその星々が籠められてゆく。

「……綺麗な燦めきの宝石になりましたね」
 その微笑みは、僅かに哀しみを孕んでいた。
 ――だが、知っている。
 この美しさは、他者の夢を喰らうための餌。この輝きは、未来を喪う代償。

 机の向こう、ムラードは空想宝石を創り上げる客たちを見て満足げに嗤っていた。
 シンシアはその表情を見て、眉を顰ませる。
(……で、最後に敵を倒せばよろしい、と)

 確実に自分の宝石も砕けるよう、範囲魔法の詠唱準備を密かに始める。
 コレを放てば、敵も宝石も諸共、すべて壊せるだろう。
(……こういう事をもう少し躊躇する性格だったのなら)
 最後にシンシアは、自身の手元で耀く宝石を見つめ、淡く笑った。
「私はとっくに、帰るべき場所に帰れていたのかもしれませんね」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

マリー・エルデフェイ
セレネさん(h03434)と

空想や希望、未来を宝石になんて、とても興味があります!
けれど、それを奪ってしまうのは許せないですね!
長く生きた私は未来に夢を見る事は無くなってしまったけれど、
セレネさんはどの様な想いを込めるのか、気にはなるので後で聞いてみようかな?

透明な樹脂を手に取り常々想う、叶わぬ願いを込める。
人々が傷つく事の無い世界を、誰もが幸せに笑い合い、天寿を全うできる世界を。
出来たのは中心に小さな光を宿した青色のレジン。

綺麗だけれど、最後には壊さなければいけないのは勿体ないなと思いながら壊します。
神聖竜詠唱に願う。一般人の人達の宝石を見た目は同じだけど別の物に入れ替えて欲しいと。
セレネ・デルフィ
マリーさん(h03135)と

人々の空想、希望や夢を形に…なんて
とても心惹かれてしまいます
それを奪うのはいけないこと、ですが…
私たちの想像する未来は、どんな形になるのでしょう
好奇心を抑えられず、マリーさんを窺うように見て
…まずは、やってみましょうか…?

ガラス片を手に取って、未来を思い描く
幸せで、温かくて、奪われることのない
さみしくないせかいを
生まれた宝石は淡い夜明けの空

優しくて、柔らかな
綺麗な宝石、ですね
集めたくなる気持ちも、わからなくは、ないですが…
でも…奪われるわけには、いきません
何気ない会話に詠唱を紛れ込ませ
星の蝶で他の方の宝石もひっそり砕きましょう
どうか、皆さんの希望が守られますように

●青と夜明けの手
 硝子の光が淡く揺れるワークショップの片隅。
 天井から降る温かい光に、人々の楽しげな笑顔が映る。
 誰もがただの宝石作りだと思っている、無邪気な光景だった。

「空想や希望、未来を宝石になんて、とても興味はありますね!」
 金糸の髪をさらりと靡かせて、マリー・エルデフェイは共に訪れた隣の彼女へ笑顔を向ける。
「ええ、私も……とても心惹かれてしまいます」
 淡く霞むような空色を纏い、セレネ・デルフィもこくりと小さく頷く。
 しかし彼女たちは知っている。
 未来を喰らう空想宝石――美しさの裡に秘めたその危うさを。

「……まずは、やってみましょうか……?」
 セレネは少しばかり好奇心に満ちた青い瞳を瞬かせ、マリーの顔を窺う。
「そうね、私達も作ってみましょう」
 そんな彼女の視線にマリーも柔く微笑んで。まずは真っ直ぐに空想宝石へと向き合った。

 マリーは透明な樹脂を手に取り、指先でそっと形を整えてみる。
 込める願いを思い浮かべ、藍色の眸を静かに伏せた。
 エルフとして悠久の時を生きてきた彼女には、もはや未来に夢を見る事はなくなっていた。
 けれど、誰かの想いが宿る空想宝石は、澄んだ青色へと色付き、中心に小さな光を宿す。
 人々が傷付くことのない世界、誰もが笑い合い、天寿を全う出来る世界を夢見て。

 セレネもガラス片を手に取り、未来を思い描く。
 幸せで、温かくて、奪われることのない。誰一人としてさみしくない、そんな世界を。
 ゆっくりと瞼を開けば、手元には淡い夜明け色の宝石が生まれていた。
 やさしく、やわらかく、見る者の心をそっと包むような光。

 ふたりの願いが、静かに耀く。
「綺麗な宝石、ですね」
 セレネがぽつりと言葉を零す。
「ええ、本当にね」
 壊さなければいけないのが、勿体ないと思えるほどに。

 マリーは溜息混じりに破壊の準備を整える。
 神聖竜の詠唱が喉を通り、周囲の一般人の手に在る宝石を同じ見た目の別物にすり替える。
 これならば、誰も気付かない、傷つけない、光は守られるべき世界へと変わってゆく。
 セレネもまた、優しげな微笑みを浮かべながら静かに星降る夜の幻想譚を口遊む。
 現れた星の蝶はてふてふと周囲を舞い、密かに宝石を砕いていった。
(どうか、皆さんの希望が守られますように……)

 破壊と創造が交錯する中、ふたりは互いを見やり、静かに頷いた。
 硝子の破片が光を反射し、まるで星の蝶の群れが舞うように瞬く。
 マリーとセレネの光は、誰も知らぬうちに、静かに、世界を優しく包みこんでいった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

青梅雨・ミケ
アドリブ◎

心情
ミケは師匠に比べたら全然へなちょこなんですよ
だから強くなりたいです
貴方が護ろうとしてる|世界《箱庭》を
ミケも護りたい
未来に溢れる|ここ《√EDEN》を
人々の想いを
壊させはしねーですよ

行動
未来への願望を宝石に
宝石は緋竹で破壊
新たに現れた敵へ√能力で攻撃
動き封殺+ダメージ蓄積
敵の攻撃は緋竹でいなす

台詞
一般人まで巻き込みやがりましたね
人々の夢や希望を奪うだなんて許せません!
ミケがえいやーと成敗してみせますっ!

ミケにも願望ができました(昔はそんな考えなど及ばなかった)

゛想像゛だけで終わらせてやるつもりはねーんです!
叶えてもらうのではなく
ミケ自身が創造しなくちゃ(熱い信念)
やってやりますよ

●未来に溢れる
 ワークショップの柔らかな灯火に、白雲の柔い髪が揺れた。
 燦めき溢れるワークショップの光景を眺めながら、青梅雨・ミケは密金蝶が宿る眸を微かに顰ませる。

 ……自分はまだ、師匠には遠く及ばない。
 へなちょこ――なんて自嘲した日々もあったけれど、今はひとつの覚悟がある。
 貴方が護ろうとしている箱庭を、この世界を自分も守りたい。
 未来と希望が溢れる幸せなエデンの園を、人々の想いを――。
(……壊させは、しねーですよ)

 ミケは指先で結んだ想いを、宝石に込める。
 淡く色付く、未来の欠片。
 でもこれは、すべて空想であり、まぼろし。
 誰かに叶えてもらうのでは意味がない、自身の手で未来は創造しなければ。

「“想像”だけで、終わらせてやるつもりはねーんです!」

 ミケは腰に隠しておいた緋竹を密かに抜き放つ。
 空想宝石を砕くたび、小さな破片が星屑のように砕け散り、囚われていた希望がふわりと空へ還る。
 ムラードがそれに気付き、小さな動物たちの影を召喚するが、ミケは其れ等を器用にいなしてゆく。
「一般人を巻き込みやがりましたね、人々の夢や希望を奪うだなんて、許せません!」
 叫びが熱となり、刀身を伝う。
 嘗ては想像すらしなかった願いが、今は胸の中で燃えている。
「ミケが、えいやーと成敗してみませます!」
 その声に、未来は少しだけ明るさを取り戻していった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

アニス・ルヴェリエ
自分の未来を思い浮かべて宝石を作り上げていくのは
とても興味深いし心惹かれるけれど…
訪れた人の未来の夢や希望が失われてしまうのは見過ごせないわ

とはいえ興味はあるから
ひとまず大人しくワークショップに参加してみるわね
無色の宝石がその人の未来の輝きを纏って色づくのね…
とっても不思議

わたしの願う未来は
お客様から信頼される調香師になること
常に向上心を忘れず
けれどお客様に寄り添って
新しいものを創り続けたいわ

さあ、わたしの夢は何色かしら?
エメラルドに似ているかしら…
とても綺麗でずっと眺めていたいけど…
きちんと壊さなきゃね

竜漿魔眼で隙を窺いながら
他の宝石も壊させてもらうわ
これも未来を守るためなの
許してね

●翠の光
 ワークショップの静かな光の中、アニス・ルヴェリエは無色の宝石を手に取った。
 手のひらに吸い込まれるように光が集まり、未来の欠片が淡く色付いていく。

「とっても不思議……」
 翠緑の眸が宝石の中の燦めきを追いながら、アニスは小さく呟いた。
 手のひらの中で、少女の願いが形を成す。
 それは信頼される調香師として、常に向上心を忘れず、新しい香りも探求し続ける理想の未来。
 有名な調香師であった、父のように。

(――さあ、わたしの夢は何色かしら?)
 願いを込めた無色の宝石は、鮮やかなエメラルドのような深い緑色に染まる。
 まるで自分の眸をそのまま映したような色彩を、アニスはじっと見つめた。
 美しく耀く、未来への希望と夢。
 だが、眩しい光の裏には影が潜む。
 人々の夢や希望を込めた未来が、知らぬ間に失われていく危うさ。
 それを黙って見過ごすわけにはいかない。

(きちんと、壊さなきゃね)
 アニスが決意を固めれば、右目に力が宿る。
 敵や危機の兆しを探りながら、ムラードの隙を窺って精霊銃を構える。
 放たれた弾丸は光の粒子を散らしながら、周囲の宝石を一つずつ安全な形へと変えてゆく。
 そして勿論、自分自身が創造した宝石も。
「これも、未来を守るための……許してね」

 無邪気に耀く未来の欠片は、少女の手で静かに昇華していった。
 ——未来を守るため、静かに、確実に。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

那弥陀目・ウルル
※アドリブ歓迎

僕は√EDENと、人類が大好きなんだ
この世界を護る事は、|僕ら《吸血鬼》の役目でもあるしね

だから願う未来は
√EDENの、この世界に住まう人類達の安寧と存続
さしあたっては、そうだね
早くこの戦争が終わって、簒奪者共が退散して、平和な街に戻りますように

出来上がる宝石は
秋晴れの空のような、澄んだ青色の宝石

ふふ〜、綺麗な色
僕が大好きな、この√EDENの青空のよう

壊すのはちょっともったいないけど
やっぱり青い空は、|キミ達《人類》の見上げる先に広がってこそ、だよね

それに、この願いは空想なんかで終わらせない
このワークショップが終わって、民間人が帰り次第
キミにはご退場願おうか、星喰い商
『血刈術』

●青に誓う
 ――空を想う吸血鬼の願いは、いつだって青に染まっていた。

 柔らかな亜麻色の髪を揺らし、那弥陀目・ウルルは手のひらに宿った小さな宝石を見つめる。
 それは澄んだ秋晴れの空を閉じ込めたような、透き通る青。
 此の世界――√EDENの空気が確かにそこに息づいていた。

「ふふ~、綺麗な色。この空が、僕は大好きなんだ」

 吸血鬼として長い歳月を生きてきた。
 この世界を監視し、護ることは吸血鬼の役目でもある。
 だがそれ以上に、ウルルは人類の営みを好んだ。
 朝のパン屋の香ばしい匂い、子どもたちの笑い声、夕暮れの静けさ。
 その一つ一つが、彼等にとっては“生きている証”のように思えたから。
 だが簒奪者が存在する限り、彼等の生活は脅かされることになる。

(……さしあたっては、そうだね。まずは早くこの戦争が終わってくれないことには)
 そうして簒奪者が退散して、元の平和な街が戻るように。
 そんな願いを込めた空想宝石は、澄んだ青空へと姿を変えた。
 ウルルは軽く息を衝き、宝石を指先でくるりと回す。
 青い光がちかりと広がり、まるで世界そのものを清らかに染めるようだった。
「この青は……やっぱり、キミ達人類の見上げる空であってほしいな」

 壊すことに一瞬の躊躇いはあったけれど、この願いは空想なんかで終わらせない。
 そこには優しさだけでなく、確かな覚悟の色が宿っている。
 ――さあ、ここからはお仕事の時間だ。
「キミにはご退場願おうか、星喰い商」
 その声は青空よりも澄んで、周囲の空気を貫いた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

躑躅森・花寿姫
空想宝石、ですか。敵の思惑が邪なものでなければ魅力的ではあるのですが
とりあえず機が熟す迄空想宝石作りを楽しむとしましょう

私の空想、願う未来はAnkerである幼馴染と再び肩を並べ共に戦う未来
自分のことより他人を優先して、自分のことを沢山犠牲にしながら清く正しく真っすぐに生きてきた彼……私の大切な人。√能力者になった後も変わらずそうして私と共に戦い続けてきた彼
でもある日彼は能力を喪失してしまった。同時に今まで重ねてきた無理に覆われていた苦しみや悲しみ痛みが表出して、心が折れてしまった
強い心も凛とした表情も勇気も全て失ってしまった

自分を犠牲にし続けてほしいとは思いません、そんな苦しい生き方はやめてほしい
でも……叶うならまたあの人と共に肩を並べ戦いたい
『青薔薇の王子様』と共に戦う未来を想い、宝石を創る

でも…私の望む未来は私の胸の内にあれば良いのです
この想いを貴方の糧になどさせはしません、とアザレア・ブルーム(基本フォーム、躑躅モチーフの魔法少女風衣装)に変身し一思いに空想宝石を壊します

●青薔薇へ続く余光
 柔らかな光が射し込む、ワークショップの昼下がり。
 訪れた者たちは皆、楽しげに宝石作りに興じている。
 誰もその裏で蠢く邪な企みなど知らない。

 鮮やかな桃色の髪を靡かせて、躑躅森・花寿姫は指先で無色の宝石を撫で、静かに笑みを溢す。
(……とりあえず、機が熟すまでは宝石作りを楽しむとしましょう)
 敵の思惑が交じらなければ、魅力的なものづくり体験となっていたであろう。
 人々の夢と希望を喰らう、空想宝石を。

 花寿姫も眸を閉じて、願う未来を想い描く。
(――私の空想、望んだ未来……)
 それは幼馴染の彼と、再び肩を並べ、共に戦う光景だった。
 彼は王子様だった。
 青い眸の“薔薇の王子様”
 彼は無償の勇気を振るい、あらゆる人に手を差し伸べ、困っている人が居れば直ぐに駆け付けた。
 自分のことを沢山犠牲にしながら、清く正しく真っ直ぐに生きてきた……私の、大切な人。
 きゅっと花寿姫は口を噤んだ。
 ……でもある日、彼は能力を喪ってしまった。
 同時に今まで重ねてきた強さも表情も失い、一人で背負っていた苦痛と悲しみが全て露わになって。
 彼の心は、折れてしまった。

 また、あの頃の彼と一緒に……ううん。
 同じように自分を犠牲にする“王子様”ではなくていいの。
 でも……叶うなら、またあの人と一緒に戦う未来を描きたい。
 花寿姫の願いを込めた宝石が、青く染まってゆく。
 まるで彼を、『青薔薇の王子様』象徴する色のように。
 嗚呼、キレイ。本当に、あの頃の彼のような――。

 けれど、この美しさは願う想いを糧として出来た空想の未来。
 私の望む未来は……胸の裡に秘すれば良い。この想いは決して消えないのだから。

 花寿姫は決意を固め、肩の力を抜く。
 短く詠唱を紡げば、華やかに衣の色が変わる。
 アザレア・ブルーム――躑躅を象った少女の姿。風に揺れ、眸に鋭い光を宿し。
 花寿姫に迷いはない。
 空想宝石に手を伸ばすその掌は、確実に、そして優しく。
 静かな破壊の音と共に、願いは昇華されてゆく。
 抱き締めるためではなく、先へ進むために。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ララ・キルシュネーテ
空想宝石──洒落ているわね

想像する未来で創造する宝石なんて素敵だわ
願いとは星のように煌めいて、焔のように燃え盛る……うつくしい光であるもの
光で、希望で、未来だというのは間違いないわ
……但し、それはその人自身の物であって……決してお前のものではない

こうなればいいと思う未来……
脳裏に、懐かしい桜が舞い光の鳥が飛び立つ
晴れた春の日に愛しい鈴音と共にママが咲い、パパがララを抱えあげてくれる
にぃにとねぇねもララを招いて──そこには、ララの友達もいる
過去のララと今のララの大切な存在すべて
救いたい世界と人達と…共に過ごす
優しい未来

ララは知らないふりをしている
気づかないフリをしている
……パパとママのこえが、記憶の中で朧気になっていること
此方の世界で過ごす時間に簒奪されていく過去

けれどこうして、簒奪者のお前から
ララの欠片を取り戻していく

ララの空想をたらふく食べて淡く儚く色付いた──桜と金の光がチラチラと散る宝石

勿論
これはララの宝石よ

だから……お前にはあげない
かしゃんと壊す

希望も絶望も、すべて
ララが叶えるの

●燈桜
 白虹の髪に夢宵桜を遊ばせながら、ララ・キルシュネーテは軽やかな足取りでワークショップの机に向かった。
 眼の前には無色の硝子玉がころり。
 未来を思い描けば色付くという、不思議な空想宝石だ。
(――確かに、洒落てるわね)
 未来を想うように、ララは静かに瞼を閉じる。
 その瞼の裡で、舞い散る桜が風に乗り、光の鳥が羽ばたいた。

 ある晴れた、春の日。
 愛しい鈴の音と共に、ママが花のように咲い、パパが小さなララを抱えあげてくれる。
 にぃにも、ねぇねも、あの頃と変わらない眼差しで手を伸ばす。
 そしてそこには、今のララの大切な人たちも居てくれて……。
 ララはみんなに囲まれて、嬉しそうに笑うの。
 過去と今、そのどちらもララが愛してやまない、優しい未来の光景を。

 ――けれど、ララは知ってるの。
 ううん、知らないフリをしてるだけ。
 パパとママのこえが、記憶の中で少しずつ霞み始めていることに。
 今、此の世界で過ごす時間が増えれば増えるほど、昔の思い出が簒奪され、塗りつぶされ、輪郭を失っていく。少しずつ喰われていく、ゆっくり、しかし確実に。

 瞼を開けたララの手元には、桜の花弁と金の光が淡く散る宝石が耀いていた。
 脆く儚く、けれど、どこまでも優しい色。

「これは、ララの宝石よ」

 未来を創る宝石なんて、美しくないはずがない。
 願いとは星々の残光であり、焔のように胸の奥で燃え続けるもの。
 光であり、希望であり、未来そのものだ。
 けれど、それはその人自身のものであって“他者に喰わせるための餌”ではない。
 星喰い商――勿論、お前のものでもないの。

 ララは愛おしそうに宝石を指先でそっと掬い上げ、ためらいなく壊した。
 かしゃんーー
 春の欠片が砕けるような、淡い音が響く。
 散った光は、絶望でも希望でも、自分で選び、叶えるためのもの。
 未来を奪う者が、どれほど牙を剥こうとも。
 ララは一歩も引かない。
 願いは他人に委ねるものじゃない、奪われるものでもない。
 ――希望も絶望も、すべて。

「ララが叶えるの」

 砕けた光は、彼女の路を照らしながら、静かな夜桜のように揺れていた。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

挿絵申請あり!

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挿絵イラスト