6
|Night Watch《夜回り》
●ほしのかがやきがみえる。
深夜二時半。
夜警。建物の周囲を見回る警備員は、眠たそうにあくびをしながら、懐中電灯で足元や植え込みを照らしながら歩いている。
なんと平和な巡回か。今宵も全く問題なく……。
中庭の茂みから猫が飛び出してきて少し驚いたり。
珍しく通行人の若者達が居たな、という程度のことしか起きず、いつも通りの巡回を終えようとしていた。
そろそろ交代の時間だ。次の奴を起こして、仕事を引き継いで貰わなければならない。
彼はもうひとつあくびをして、建物へと戻ろうと裏口へと向かった。
√EDENは、表向きには「平和」な√だ。たとえ何かしらの超常現象、不穏な気配、怪しげな影、怪異――それらを見かけても、人々は殆ど違和感を持つことはなく。
危機的状況、そこから逃げ延びてしまえば、「あれはゆめだったのだ」とばかりに忘れて、いつも通りの日常に戻っていく。戻れてしまう。時に、「そうならなかった」者も存在するが。
他の√の者たちからすれば、彼らのその特質はやや異様。忘れる能力が強いということは、……これから『自分たち』の起こすことも察されにくいというもの。
だからこそ。彼らは影で、動く。
虎視眈々と。夜の闇から、ひとをみる。
おまえたちの手を、足を、そして胸を、顔を見て、考えるのだ。
『これは、贄として、相応しいか』
『これは、いなくなっても、良い存在か』――と。
――結局『彼』は、帰ることがなかった。
裏口に差し掛かる直前の角。誰もいなくなったその場に残るは、小さな血痕と懐中電灯。……その明かりが、風で揺れる薄暗い茂みを、暫くの間、照らし続けていた。
●こんばんは。
「よう、『こんばんは』。良い夜だな」
ボロアパートの前に大柄な男。背には巨大な翼、頭上に赤く輝くのは天輪か。セレスティアルとは異なる様相の姿。
人間災厄「歓喜の歌」。『人類を守護するため存在する』等とのたまう災厄、六宮・フェリクス(An die Freude・h00270)が、煙草の煙を吐きながら軽く手を振り雑に挨拶をする。
「仕事だぜ、ハニーども。ゾディアック・サインだ。――√EDENに、侵入者サマだ」
シンプルな言葉ではあるが、意図は伝わることだろう。他の√からの侵攻を伝える言葉。
「人さらい。一人を狙い撃ちにして攫っていく。だが……そうなりゃ、こっちも手の打ちよう様々! だよな? アッハハ!」
笑う男、だが細められた目、睫毛の向こうの眼には一切、油断無く。
煙草を咥え、スマートフォンを操作し画面上に地図を表示する。場所は√EDEN、とあるビルの周辺だ。
公園と隣接しており、賑やかな街の明かりは遠い……平和そうな場所ではあるが、だからこそ『選ばれた』のだろう。
「カンタンなお仕事だ。人類を避難させて、『来る』のを待って、そんで全力でぶん殴る! これ以上なくシンプルだろ?」
強く拳を握りしめて笑う男。人類としてはかなり高い身長と良い体格からそのような言葉が飛び出せば、身構える者も居るかもしれないが、こいつは星詠みだ。安心していただきたい。
「で、重要ポイント。奴らが動くまでに、ちょい時間がある。だから多少の暇つぶしは出来るんじゃねーかな」
そう言いながら彼が指差すのは天、星空。
「幸いというか、なんつーか。月の光がちょい弱い時期でさ。今、星がクッソ見やすい。あ、星詠みにゃ全く関係も問題もなくな、ただ星が綺麗なんだわ」
見上げればきっと、普段よりも星の光が強く美しく輝いている頃だろう。星詠み曰く、「今の時期、ちょうどしぶんぎ座流星群――北斗七星のやや下あたりに流星が見られる」とのことである。
「オレちゃんは残念な事に向かえねぇけど。夜歩きすんのは楽しいぜ? オレちゃんが『職』にしたいくらいにな。……ま、新年だ。空でも見ながらぼんやりしてさ、『待ってやる』といーんじゃないか」
スマートフォンをしまって、残念そうに言いながら天を仰ぐ男。夜が好きだと自称する彼にとっては、この日近辺の空はあまりにも魅力的なものらしい。
……さて。迅速に迎撃の準備を取るか、それとも、安らぎの時間をより多く取るか。どうするかは、君たち次第だ。
これまでのお話
マスターより
R-E
おはようございます!R-Eです。
ドのつく夜シナリオですがおはようございます!(ゴリ押し)
√EDENへ訪うもの。深夜のひとさらい。
きみたち、気をつけたまえ。
|夜警《Night Watch》をするものは、きみたちだけではないのだから。
●1章。
ひとまず、軽い哨戒をお願いします。
この時点では警備員さんは生存しておられますので、避難を促したり、気を逸らしたりして、犠牲になるのを阻止してあげてください。
あなた方の行動に彼は疑問を持つかもしれませんが、すぐに忘れてくれることでしょう。
屋内や離れた場所に避難させれば問題はないはずです。
●その後の行動は自由です。
月の見えない夜。ですが星空はとても、うつくしいので。
ピークは少し過ぎましたが、ちょうど流星も見える時期。のんびり空を見て、新しい年に思いを馳せるのも良いと思います。
多めにプレイングを頂けましたら、なるべくまとめて、出来る限りで採用させて頂く予定です。(キャパオーバーしたらすみません)
●2章以降。
今回の事件、その元凶たちとの戦闘となります。
1章で何を気にかけていたかで、2章の敵が変化します。
一人を狙い撃って襲っていたことから、そこまで強くはない相手のようですが、油断なさらず!
2章以降はサクサク進行の予定ですがプレ多めに頂いた場合、その分もがんばりますね。
それではみなさま、良い夜を!
おはようございます!R-Eです。
ドのつく夜シナリオですがおはようございます!(ゴリ押し)
√EDENへ訪うもの。深夜のひとさらい。
きみたち、気をつけたまえ。
|夜警《Night Watch》をするものは、きみたちだけではないのだから。
●1章。
ひとまず、軽い哨戒をお願いします。
この時点では警備員さんは生存しておられますので、避難を促したり、気を逸らしたりして、犠牲になるのを阻止してあげてください。
あなた方の行動に彼は疑問を持つかもしれませんが、すぐに忘れてくれることでしょう。
屋内や離れた場所に避難させれば問題はないはずです。
●その後の行動は自由です。
月の見えない夜。ですが星空はとても、うつくしいので。
ピークは少し過ぎましたが、ちょうど流星も見える時期。のんびり空を見て、新しい年に思いを馳せるのも良いと思います。
多めにプレイングを頂けましたら、なるべくまとめて、出来る限りで採用させて頂く予定です。(キャパオーバーしたらすみません)
●2章以降。
今回の事件、その元凶たちとの戦闘となります。
1章で何を気にかけていたかで、2章の敵が変化します。
一人を狙い撃って襲っていたことから、そこまで強くはない相手のようですが、油断なさらず!
2章以降はサクサク進行の予定ですがプレ多めに頂いた場合、その分もがんばりますね。
それではみなさま、良い夜を!
15
第1章 日常 『夜空の下で』
POW
賑やかに過ごす
SPD
考えて過ごす
WIZ
静かに過ごす
√EDEN 普通5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ベティ・スチュアート
【アドリブ大歓迎です!】
ここか!
愛車の『名もなきバブルカー』で目的地に到着するわ。
まずはバブルカーを走らせてそこら辺を哨戒、こっちは車両に乗ってるわけだから声を掛けられるかもしれないわね。
道交法?あっ。
保護対象を見つけられたら車両から降りて、私の姿を見せるわ。こんな耳と尻尾がついた人間が、この世界=√にいるかしら。
え、こんなちっこい女の子が真夜中に出歩いちゃダメ?
うるっさいわね!とにかく、あなたはここから離れなきゃいけないのよ!
どうしても取り合ってくれない場合は、無理やり手を引いて、建物に連れて行くわ。
あなたの今日の仕事はこれでおしまい!
べーっ!
【アドリブ大歓迎です!】
ここか!
愛車の『名もなきバブルカー』で目的地に到着するわ。
まずはバブルカーを走らせてそこら辺を哨戒、こっちは車両に乗ってるわけだから声を掛けられるかもしれないわね。
道交法?あっ。
保護対象を見つけられたら車両から降りて、私の姿を見せるわ。こんな耳と尻尾がついた人間が、この世界=√にいるかしら。
え、こんなちっこい女の子が真夜中に出歩いちゃダメ?
うるっさいわね!とにかく、あなたはここから離れなきゃいけないのよ!
どうしても取り合ってくれない場合は、無理やり手を引いて、建物に連れて行くわ。
あなたの今日の仕事はこれでおしまい!
べーっ!
東大和・斬花
神隠しか、警備員を敵の巣から引き離せばよいのだな。
警備員に近づき、大太刀で殴って気絶させる。安心しろ、峰打ちだ。
その後何処か安全な場所で√能力を使って気絶を治しつつ忘れさせる。
後は敵が来るまでに素振りで体を暖めておこう。
神隠しか、警備員を敵の巣から引き離せばよいのだな。
警備員に近づき、大太刀で殴って気絶させる。安心しろ、峰打ちだ。
その後何処か安全な場所で√能力を使って気絶を治しつつ忘れさせる。
後は敵が来るまでに素振りで体を暖めておこう。
警備員が犠牲になる、その予知よりも少し前。
愛車『名もなきバブルカー』に乗るベティ・スチュアート(ねずみのたびだち・h04783)は周囲の様子を伺いながら車を走らせていた。
可愛らしいが「おんぼろ車」などと呼ばれもするそれを操り、小道まで隅々と。今のところ簒奪者たちの気配はないようだが、これから現れるに違いない。美しい星空の下で楽しくドライブと行きたいところだが、警戒を怠らないのも努めだ。
……え? 道路交通法? あ~……どうでしょう……√EDENでは「こらっ」でしょうが、ベティの出身√的に……いやまず、彼女の操る車の特性から話をしよう。
この愛車、可愛らしい見た目に反し、彼女用にガッチガチなカスタムを行われている。生半可な弾丸ははじき、積んであるエンジンは魔導式――とんでもないじゃじゃ馬仕様!
ドライビングテクニックがとびきり高い彼女、それ以外の乗り手が操れない以上、セーフ!
「ここかーっ!」
そしてとってもタフなので、人影を見つけて急ブレーキを効かせたって、まったく問題ないのである。
……ちょっと音が大きかったこと以外は。まあ、そこはキュートな車とベティ。ゆるされる!
さて見えたのは東大和・斬花(一刀必殺・h05005)と、その少し遠くを歩く警備員の姿だ。
先ほどの音でこちらに気づいたらしい警備員が、訝しむような様子で小走りに近づいてくる。
斬花は気配を消して、植え込みから警備員が通りすがるのを待っている様子だ。何をしているのだろう? と思ったベティであったが……。
斬花がそっと警備員の背後へ。大太刀を抜き、今にも峰打ちと称し警備員を殴ろうとしている所で、斬花とベティの視線があった。
「(ままま待って! ぼうりょくはんたい!)」
アイコンタクトと両手を振る仕草で察したか、斬花が大太刀を降ろし鞘へと収める。
ほっと胸を撫で下ろすベティ。ここで殴るとたいへんなことになっちゃいますからね。ひとまずは落ち着いて話をして――最終的に殴ったほうが良いのなら、殴ればよいのだ。
そのベティの仕草を見ていたのか、警備員はさらに怪訝そうに近づいて、コンコンとフロントドアのガラスを叩いてきた。促されるまま車から降りたベティ、その耳と尻尾がぴょこんと揺れる。
「君は……? こんな時間に何を……?」
外見について深く言及しないのは、警備員の配慮なのかもしれないし、比較的人間に近い容姿であるからか、認識が阻害されているのかもしれない。
「ふふん! よーく聞きなさい! あなたはここから離れなきゃいけないのよ!」
「そ、そうか。えっと……ご両親はどこかな? それに、その車は? もう遅い時間だよ」
「……むむ……」
あくまで『人間の子供』、そして冗談だと本気で考えているらしい警備員。可愛らしく頬を膨らませているところで、背後から斬花が歩み寄ってくる。
「すまない、私の連れだ」
「ああ、保護者の方かな……?」
保護者にしては若そうだ。それに、背負っている獲物は……剣道かなにかをしているのだろうか? という疑問も彼の頭に浮かぶものの。彼はベティと並ぶ斬花を見て、「変わった姉妹」だと解釈したようだ。
「どうにもやんちゃな子でね。迎えに来たのだが……何かあったのか?」
「うーん。ここから離れろって言われてね。そう言われても、僕はこれが仕事だからなあ」
頭をぽりぽりと欠いて困った様子を見せる警備員。
――断言しよう。この男、かなりの難敵である。
平和な夜だとしても、猫の一匹も見逃さず、若者たちがたむろしていたこともしっかり目視し気に留める。欠伸はしようと時間ぴったりに戻り交代をしようとするという、それはもう面倒くさいタイプの一般人――それが警備員である(※星詠みの予知と|わたくし《地の文》の偏見含む)。
斬花も彼をその手の人間だと見なしているのか、彼の様子を注意深く窺っていた。
「もーっ! とにかく、戻って! 外に居たらあぶないのよっ!」
「わっ。わあっ、わかった、わかったよ……!」
ベティに強く手首を掴まれて、引きずられるように建物の裏口へと導かれる警備員。その背後をついて歩く斬花。子供の遊びに付き合っているような雰囲気だ。……おそらく二人の気配が消えれば、彼はすぐに出てきて、哨戒へと戻ってしまうことだろう。
「あなたの今日の仕事は、これでおしまいっ!」
開いたドアに向かい、どんっと警備員の背中を押すベティ。警備員も笑いながらそれを受け入れる。
べーっ! と舌を出してみせる彼女を見てから、警備員が、彼女たちから背を向けたその瞬間――。
……ゴッ、と鈍めの音が響いた。
崩れ落ちそうになる警備員の体を支える斬花。
「安心しろ、峰打ちだ」
すかさず『忘れようとする力』を用いて、見事気絶してしまった警備員へと治療を施す。
「けっこういい音したわよっ!?」
ちょっぴり焦るベティ。それはそうだ。いい音した。ひとまずはと、やや奥の安全が確保できる場所へと警備員を運ぶ二人。
……しかし、『忘れようとする力』は、「こういった事があった」、ということも忘れさせてしまうので……。
ほぼ十分後、慌てて外へ出てきた警備員を遠目に見て。
「……ちょっとうっかりしてたわね」
「……面目ない」
だが『時間稼ぎ』としてはもちろん十分。いち早く駆けつけ、前もっての偵察も出来た。ウォーミングアップを取る時間もたっぷりだ。
……この時間帯ならまだ、簒奪者達は動いていない。その証明。これから取れる行動は、いくらでもあるのだから。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
白皇・奏
忘れる力を悪用することのできるなんて、狡猾な敵のようだな……。
一人いなくなっても、他の人間の悪れる力により気にならなくなれば……これほど都合のいい生贄はいないだろうな。
そうさせるわけにはいかない。
襲われる前に避難させないといけないな。
お姫様に見える外見を活かして、お姫様を装って警備員に近づこう。
「警備員様。このあたりはお星さまが綺麗に見えるの。
申し訳ありませんけど、この場所を譲ってくださいな。」
これで彼を避難させよう。
疑問を持ってもすぐに忘れるだろう。
場所を譲ってもらったら、本当に星がきれいに見える場所だ。
持ってきた天体望遠鏡を使って星空をじっくりと眺めて時間を潰そう。
忘れる力を悪用することのできるなんて、狡猾な敵のようだな……。
一人いなくなっても、他の人間の悪れる力により気にならなくなれば……これほど都合のいい生贄はいないだろうな。
そうさせるわけにはいかない。
襲われる前に避難させないといけないな。
お姫様に見える外見を活かして、お姫様を装って警備員に近づこう。
「警備員様。このあたりはお星さまが綺麗に見えるの。
申し訳ありませんけど、この場所を譲ってくださいな。」
これで彼を避難させよう。
疑問を持ってもすぐに忘れるだろう。
場所を譲ってもらったら、本当に星がきれいに見える場所だ。
持ってきた天体望遠鏡を使って星空をじっくりと眺めて時間を潰そう。
忘れる力。それは√EDENの一般人、誰しもが持ち合わせる能力。それをこのような形で悪用し、狡猾に、|一人《一匹》ずつ獲物を狩る――。白皇・奏(運命は狂いゆく・h00125)は不快そうに顔をしかめ、考える。
なんと都合のよい生贄か。消えた者の縁者か、または強く思い出そうとすれば、記憶をたどる事自体は叶うだろう。しかし相手はそれも加味したうえで、獲物を選んでいる。
これ以上の犠牲を出させるわけにはいかない。
奏は強く頷いて、自らの身だしなみを確認する。
星降る夜に相応しい、夜空柄にオーガンジーのフリルをあしらったワンピースである。きらきらと目立つ装いは天の星にも負けないほどの麗しさ。冬の寒さを和らげる厚手のタイツにも星空のようなグラデーションがかかっており、本日も完璧なコーディネートだ。天体望遠鏡の入ったレザートランクも合わせれば、まさしくお出かけ中の愛らしいお姫様。
だが彼は男性だ。大切なことだ。もう一度言う。男性である。ありがとう。
「さて、しっかりと避難させないといけないな」
ともあれ彼は普段通り、役目を全うするために動く。
既に他の√能力者も動き始めているはずだ。奏の作戦は「自分が場所を占領することで、警備員の行動範囲を狭める」こと。
幸いビルの周囲は一巡するのに結構な時間がかかる。ビルの入口の近くに、休憩用として設けられているらしいベンチを見つけて、奏はそこへ座ることにした。――ちょうど、監視カメラで見える位置である。トランクを開け、天体望遠鏡を星空へ向けて、時が来るのを待つ。
さてもはや半ば獲物である警備員が通りかかる――と、いうより。奏の姿を見た途端、彼は愕然とした表情になり、ややへっぴり腰になりながら彼へと近づいてきた。
「あの……ここで何を?」
当然の質問である。だが奏は何でもないことのように微笑んで、首を傾げてみせて。「星を見ていました」と返答した。ひとまずは、話が通じそうな人間だと判断したらしい警備員。ちらりと空を見上げて、「ああ……」と納得した様子で何度か頷く。
「警備員様。このあたりはお星さまが綺麗に見えるの。……申し訳ありませんけど、この場所を譲ってくださいな」
ゆっくりと立ち上がり、スカートをつまみカーテシーをする彼を見て、警備員は困った様子で、しかしちらりと監視カメラを見て。
「……少しの間だけですよ。戻って来る頃には、移動していただけますか?」
……何かあれば、監視カメラに記録される。それに不思議な魅力を持つ彼女――いや、彼なのだが――に、深い物言いをするつもりにはなれなかったようだ。彼に抱いた違和感も、戻る前に消えていることだろう。
警備員が「では」と奏に声をかけ、巡回へと戻っていく……。
「……本当に、星がきれいな場所だ」
明かりの殆ど無い、言ってしまえば少々寂れた街だからこそ。星空のきらめきは、自然と近く感じ取れる。
天体望遠鏡を覗き込めば、きらり。
「――あ……」
ちょうど、星がひとつ、輝きながら落ちていった。
🔵🔵🔵 大成功
ジェイ・スオウ
この時間二、この辺りにヒトって居るノカ。居タワ。
茶箱持ってきて正解。
お嬢さん方。もう遅いゾ。このお茶、今回はサービス。飲みながら帰ろうナ?美味しかったら是非今度は買ってクレヨナ。
ビルの上で待機シヨ。それまでお茶いれて。星ヲ‥。
ワァ。こんなトコロでも見えるんダナ。星。
流れ星に願い事いうと叶うんダッケ。
ナニカ。無いナ?
今。結構気に入ってるんダヨナ。オレ。
‥おいしい食べ物に沢山出会えるとイイナ。
で、アパートの皆で美味しいって言えタラ、マァ‥。ウレシイカナ。
この時間二、この辺りにヒトって居るノカ。居タワ。
茶箱持ってきて正解。
お嬢さん方。もう遅いゾ。このお茶、今回はサービス。飲みながら帰ろうナ?美味しかったら是非今度は買ってクレヨナ。
ビルの上で待機シヨ。それまでお茶いれて。星ヲ‥。
ワァ。こんなトコロでも見えるんダナ。星。
流れ星に願い事いうと叶うんダッケ。
ナニカ。無いナ?
今。結構気に入ってるんダヨナ。オレ。
‥おいしい食べ物に沢山出会えるとイイナ。
で、アパートの皆で美味しいって言えタラ、マァ‥。ウレシイカナ。
「(この時間二、この辺りにヒトって居るノカ……)」
などと。当然の疑問を抱きながら、ジェイ・スオウ(半天妖・h00301)はぐるりとあたりを見回した。ビルの周囲ではなく、やや離れたあたりで。
予知にあった時間も近くなってきた。そろそろ気配のひとつくらいしたっておかしくはない時間帯。集中して、聞き耳を立てていると――。
「(居タワ)」
居るんですよね。
少し遠くから歩いてくる若者たち。酔っているような様子でもなく、ただ楽しげに談笑しながら歩く男女複数人。こちらに気がついたのか、彼らはやや警戒した様子で、小声で何かをやりとりしている。だが、それはどうにも聞き取れない。こちらも警戒を強め……それを微笑みで隠しながら。ジェイは若者たちに声をかける。
「良い夜ダナ、お嬢さん方。何かの会の帰り? 温かいお茶でもドウゾ」
茶箱を持ってきて正解だ。流れの茶商――本来、√EDENでは違和感を持たれる可能性もある様相ではあるが。それでも友好的に接すれば、相手の態度も軟化するというものである。
「あ~……そんなもんです」
「え、何その箱。お茶? 初めて見たかも」
好奇心旺盛な女性が手元を覗き込んでくるのを見て、ジェイは楽しげに笑ってみせる。
「ソ。一芸だと思って見テッテ?」
そう言って、丁寧に茶を淹れはじめるジェイ。そうなれば若者たちも離れるわけにもいかず。手際よく――味は茶具としてのカップに比べれば少々劣るだろうが――使い捨てのカップに注がれていくお茶を見て、先程はしゃいでいた女性が「わあ」と声を洩らした。
「このお茶、今回はサービス。飲みながら帰ろうナ?」
カップを受け取り、香りを嗅いで、ひとくち。ぱあっと明るい笑顔になった女性がやや後ろにいた仲間たちへと振り返って、無言で「飲んでみて!」とアピールをする。
それにつられて、各々カップを手に取りお茶を口にする。
「え、美味っ」
「でしょ? びっくりした! ねえ、お兄さんって何者?」
仲間と会話しながらも――まるで、こちらの正体を窺うような言葉を発する女性に、ジェイは「タダの茶商ダヨ」とおどけてみせた。
「美味しかったら是非、今度は買ってクレヨナ」
「はぁーい!」
元気に返事をした女性と、控えめに手を上げた男性。それを見送りながら……ジェイは扇子で、口元を隠す。
あれは「違う」。何が違うか。「ひととして、違う」。己の本能が告げている。だが……ここから離れるというのなら、深追いする必要はない。
そんな事を考えながら、こっそりとビルの屋上へと登り、空を見上げる。どうやら先客はいないようだ。今度は自分用にと茶を淹れながら――星を待つ。
すると、きらりと横切る流れ星。
「(ワァ。こんなトコロでも見えるんダナ。星)」
……流れ星に願い事をすれば、叶うという言い伝え、あるいはおまじない。じっと空を見つめて、考えてみる。
願い事。ナニカ。
無いナ?
「(今。結構気に入ってるんダヨナ。オレ)」
……充実している。己の欠落は満たされずとも、生活自体には、満足している。願い事……と、考えた末。
「(おいしい食べ物に沢山出会えるとイイナ)」
そんな、平和な日常を豊かにすることを考えて。
「(で、アパートの皆で美味しいって言えタラ、マァ……。ウレシイカナ)」
温かい茶で、手指を温めながら。流れていく星をみて、「その時」を、待つ。
🔵🔵🔵 大成功
猫宮・弥月
うん、良い夜だ。
さてまずは警備員さんの誘導を。
と言ってもどうしたらいいかな、うーん、ちょっと嘘をつこうか。
建物の中に動く明かりが見えた、と言って、誰かが忍んでいるかもしれないと不安を煽ってみようかな。
星詠みの予知より早めに中に戻ってもらおう。一緒に裏口までついていってもいい。ひとりじゃない、と怪異に示しておこう。
警備員さんの無事をちゃんと見届けてから待つことにする。
星がきれいで、見るのにも向いた星月夜。
冬の夜空もいいよね、澄んで見える。
猫もいたらしいから、猫も探したいな。
なついてくれるか、孤高の猫か。どちらも可愛いけど。
……若者も猫も簒奪者だったりしないよね?
考え過ぎかな。うん。
うん、良い夜だ。
さてまずは警備員さんの誘導を。
と言ってもどうしたらいいかな、うーん、ちょっと嘘をつこうか。
建物の中に動く明かりが見えた、と言って、誰かが忍んでいるかもしれないと不安を煽ってみようかな。
星詠みの予知より早めに中に戻ってもらおう。一緒に裏口までついていってもいい。ひとりじゃない、と怪異に示しておこう。
警備員さんの無事をちゃんと見届けてから待つことにする。
星がきれいで、見るのにも向いた星月夜。
冬の夜空もいいよね、澄んで見える。
猫もいたらしいから、猫も探したいな。
なついてくれるか、孤高の猫か。どちらも可愛いけど。
……若者も猫も簒奪者だったりしないよね?
考え過ぎかな。うん。
「うん、良い夜だ」
流れる星の量が、少し増えてきたように思える。夜空を見上げながら、猫宮・弥月(骨董品屋「猫ちぐら」店主・h01187)はそっと目を細めた。
さて、星ばかりを見ているわけにはいかない。為すべきことを為さねばならないのだ。
「――と言っても、どうしたらいいかな」
顎に手を当て、考える。少し待っていれば彼はそのうち、ここへ向かってくる事だろう。それまでの間思索を巡らせて。
――ビルの前で首を傾げたりしつつ。巡回し向かってくる警備員に、自分から声をかけた。
「君、ちょっといいかい?」
「あっ……はい、何でしょう?」
まさか話しかけられるとは思っていなかったのか。警備員は驚きつつも小さく頭を下げ、弥月へと近づいてくる。
「建物の中に、動く明かりが見えたんだ」
「明かり……ですか?」
ビルを振り返り、目を凝らす警備員。当然嘘なので、内部には誰も……正確には、彼の同僚くらいしか居ないはずだ。ゆえに、彼の反応も想像通りのものである。
「同僚かもしれませんね……」
少し訝しむように、けれど心配ではあるのだろう。警備体制か、それとも同僚の心配か――。
弥月はビルへと視線を向けて、彼にもう一言。
「だいたい、あっちの方で見えたんだ。心当たりは……?」
「……ありませんね。ありがとうございます、一度……見に戻ってみます」
不安げで険しい表情をしながら、ビルの中へと戻る警備員……彼が手に持つライトがビルの屋内を照らしているのを見て、弥月はふうと息を吐いた。
自分はひとりではない。間違いなくここに存在する怪異へ、睨みを利かせる。
ビル内の巡回を終えた彼がまた出てくるというのなら、自分や他の√能力者がいつでも対応できるのだ、と。
……警備員については、しばらく大丈夫だろう。弥月はふと、空を見上げた。
――まさしく星月夜。街灯もまばらな中で見える、星の数々。
澄んだ空気、冬の夜空。町中とは思えないようなうつくしい天体ショーだ。
「(……猫もいたらしいね。今なら見つかるかな……)」
そう思って、そっと茂みや物陰を覗き込んでみる。ゆっくりと探していると、金色の目を視線が合った。
静かに瞬きをして、猫に対して敵意がないとのご挨拶。猫はといえば、まばたき、ぱちぱち。星のきらめきのよう。
真っ暗な中からそっと現れた黒猫が、ふんふんと匂いを嗅いでくる。弥月が指を差し出せば、それに鼻先をくっつけてきた。
かなり人馴れしている猫のようだ。片耳がほんの少し三角に切られているところを見るに、いわゆる地域猫なのだろう。
黒い被毛は夜。金色の目は星。すり、と手に体を擦り付けた猫は、にゃあんと挨拶するようにひと鳴きして、ゆっくりと茂みの中へと入っていった。
「(……若者も猫も、簒奪者だったりしないよね?)」
――ああ、まったく。
察しの良い『人類』とは、どこにでもいるものである。
🔵🔵🔵 大成功
壇・壱郎
コーヒーをテイクアウトして、現地へ向かう。
「寒いが、いい夜だ。気温が低いと星がよく見えるからな」
『地取り捜査』で情報収集。ここいらで、なにか妙なモノを見なかったか?
いや、なにもないならそれでいい。あらわれるのがこれからなら、まだ犠牲者はいないってことだからな。
警備員に会ったら、
「俺はこういうもんだ(警察手帳を見せ)。ちょっと物騒な通報があって警戒してるんだ。なに、心配はいらないさ。ちょっと休憩してきたらどうだ」
とでも言って、余分に買ったコーヒーを渡そう。
ほかに能力者が来ているようなら、コーヒーはそいつにやったっていい。
情報交換と自己紹介をしておこうか。
(アレンジ・連携、歓迎)
コーヒーをテイクアウトして、現地へ向かう。
「寒いが、いい夜だ。気温が低いと星がよく見えるからな」
『地取り捜査』で情報収集。ここいらで、なにか妙なモノを見なかったか?
いや、なにもないならそれでいい。あらわれるのがこれからなら、まだ犠牲者はいないってことだからな。
警備員に会ったら、
「俺はこういうもんだ(警察手帳を見せ)。ちょっと物騒な通報があって警戒してるんだ。なに、心配はいらないさ。ちょっと休憩してきたらどうだ」
とでも言って、余分に買ったコーヒーを渡そう。
ほかに能力者が来ているようなら、コーヒーはそいつにやったっていい。
情報交換と自己紹介をしておこうか。
(アレンジ・連携、歓迎)
紗影・咲乃
んー、とりあえず避難させればいいの?
咲乃の見た目を活かして迷子のふりして泣きながらお家探してもらうように避難させたらいいかな?
まずは、泣きながら警備員さんへ近づく
迷子になっちゃったの……
にぃにたち一緒に探してくれるの?
と少し泣きながら問いかけてみる
OKならそのまま泣いて話しながら少しずつ離れた場所へと30分ぐらい歩いたらあらかじめ協力をお願いしてたお家を指差して
あ、ここなの!ありがとうなの!
パパとママ呼んでくるから待っててなのよ?
とテキトーな理由をつけて離れていく
お家に入ったところでお家の人たちに警備員さんたちの対応を任せてさっさと裏から現場へと戻っていく
んー、とりあえず避難させればいいの?
咲乃の見た目を活かして迷子のふりして泣きながらお家探してもらうように避難させたらいいかな?
まずは、泣きながら警備員さんへ近づく
迷子になっちゃったの……
にぃにたち一緒に探してくれるの?
と少し泣きながら問いかけてみる
OKならそのまま泣いて話しながら少しずつ離れた場所へと30分ぐらい歩いたらあらかじめ協力をお願いしてたお家を指差して
あ、ここなの!ありがとうなの!
パパとママ呼んでくるから待っててなのよ?
とテキトーな理由をつけて離れていく
お家に入ったところでお家の人たちに警備員さんたちの対応を任せてさっさと裏から現場へと戻っていく
こそこそ。ゆっくり。万が一にも、敵に見つからないようにと。小さな影が、明かりのついた民家のドアをこんこん叩く。それは、紗影・咲乃(氷の華・h00158)の姿だ。……√能力者達が動き始めたのは深夜だが、なんとか『協力者』を見つけることが出来た。
もふもふ、ふわふわ。索敵任務を任されたぬいぐるみ、ミニうさちゃん達が周囲を警戒。ふわふわな耳を、ぴんと立てながら。
――時間はもう少し、遡る。
「ここいらで、なにか妙なモノを見なかったか?」
壇・壱郎(ツノツキ・h01763)が警察手帳を見せた先。『地取り捜査』によって姿を変えた|情報提供者《インビジブル》の男性が、虚ろながらも知性を持った声と頷きで返答する。その足元には、先に出会った咲乃が呼び出していたうさぎのぬいぐるみが立っている。
「ああ、ああ、見たとも。あっちの曲がり角……突然だったよ。猫がにゃあとないて、一瞬さ。あいつが消えたんだ」
「ふむ、猫か……それで、あいつとは?」
猫。星詠みのゾディアック・サインにも記されていた存在だ。眉をひそめ、先を促す壱郎。
「ここを良く通ってた奴だ。公園があるだろ……そこを突っ切って、曲がり角の先に、あいつの家があって……」
ここらを漂うただのインビジブルであり、直接的な縁者ではないようだが、それの記憶によく残る相手であったらしい。指差す方向には深夜だというのに明かりが灯っている家屋が見える。いつ消えたかと聞けば、ちょうど二日前、このあたりの時間帯。
「昼間に見るんだ、奥さんか……あいつを探して……」
そう言って、インビジブルが茂みの中を指差し、そして、自分の知っている情報は教えたとばかりに姿が消える。すかさず茂みに潜り込む咲乃のぬいぐるみ。茂みの中を探すふわふわに少しだけ笑みを溢しながら近づけば、そのぬいぐるみの手の中にはきらり、何かが輝いていた。
……情報を得た壱郎が咲乃と合流し、明かりのついた民家を訪れた時。驚いた様子で出迎えた女性は、彼らから渡されたネクタイピンをぎゅう、と握り込む。
「おとり捜査まがいな事は、気が引けるのですが……」
「……大丈夫です。あの人のため、ですから」
壱郎の声に、何度も頷き。震える声で女性が返答する。ずっと、これの持ち主のために明かりをつけて、待っていたのだ。咲乃が見つけた『遺品』となってしまったそれにぽたりと涙が落ちるのを見て、きゅっと唇を結ぶ咲乃。
残るはこうして得られた協力者の元へ、警備員を導くのみ。
「――寒いが、いい夜だ。気温が低いと星がよく見える」
テイクアウトしたコーヒーを手に公園のベンチへ座り、星空を見上げ。ひとすじ流星が奔っていったのを見て、壱郎はほう、と白い息を吐く。月は殆ど見えず、土地柄もあってか目印となる星座をすぐに見つけられるほどの澄んだ空だった。
――果たして、警備員は現れた。
座る壱郎の姿を見つけた警備員は、「そこで何を」と声をかけながら近づいてくる。
「ああ……俺はこういうもんだ。ちょっと物騒な通報があってな、警戒してるんだ」
警察手帳を見せ、身分をしっかりと明らかにした壱郎に対し、警備員はすっかり安心した様子だ。だが、続く言葉を聞いて少しばかり険しい顔をする。
「なに、心配はいらないさ。仲間が今見回りをしてる。ちょっと休憩したらどうだ?」
そう言って、壱郎から渡されたコーヒーを手に取り……やや不安そうな様子を見せながらも、警備員は壱郎の隣へと座った。
「物騒っていうと。やっぱり、あの噂ですかね」
ちびりとコーヒーに口をつけ、彼が聞いてくる。
「ああ、人が消える話だよ」
「でしょうね……。こっちは、中々の厳戒態勢で。出歩かないほうが良いまであると思ってるんですが……今日はどうにも、人が多くて。助かります」
……√能力者の皆さん、全力ですからね。こうして話を聞けば、彼が気合を入れていた理由も分かるというものだ。
と、そんな二人にとてとてと小走りで近づいてくる影がある。涙目で、少しよろけながら――演技ではあるが、十分に「それらしい」様子で駆けてくる少女。咲乃の姿だ。
「あのっ。あのね、迷子になっちゃったの……っ」
息を切らしながら――うさぎのぬいぐるみを抱いた彼女が、二人を見上げる。こちらも演技ではあるものの、驚く壱郎。そして、警備員。続けて咲乃がぽろぽろ涙を溢しながら。
「にぃにたち、警察のひとでしょう? 一緒に探して……近くのはずなの……」
……『警備員も、警察だと思っている』。そのような振りをして、ぬいぐるみをぎゅうっと抱きしめた。震える彼女の前に膝をつき、壱郎が警備員へと目配せをした。
「参ったな……」
頭を掻く警備員は、頑なに持ち場を離れるわけにはいかないと思っているようだ。その服の裾を、咲乃がきゅ、と掴む。
「おねがい、いっしょにさがして……」
……子供に、ここまで言われてしまっては仕方がない。ここぞとばかりに、壱郎が声をかける。
「近くだったらすぐに見つかるはずだ、親御さんも探してるようだし、俺も一緒に行こう。……同僚も少しくらいは許してくれるさ」
肩をすくめた後、迷子の保護や持ち場を離れるといった連絡をし始めた壱郎を見て、警備員はようやく覚悟を決めたようで。
「……わかった、お兄ちゃんたちと一緒に行こう。見覚えのあるものがあったら、教えてもらえるかな?」
「……! わかったなの!」
心の底から嬉しそうに、声を弾ませる咲乃。その後予定通り、協力を呼びかけていた家へと、やや道を間違えるなどをしながらたどり着いた。
「――ああ、どこに行ってたの!」
「ごめんなさいっ、ただいま、ママ!」
……端から見れば抱きしめ合う親子。――咲乃の欠落は、これでは埋まらない。それでも、この暖かさは、本物だ。
「ご迷惑をおかけして、すみません……」
「いえ、こちらこそ。お力になれたなら幸いです――」
そんなやり取りを聞きながら、元気に家の中へ入って。そして、裏口からこっそり出ていく咲乃。壱郎もまた、「少し任せていいか?」と、持ち場を気にする様子を見せた。信頼を築けたからか、快く頷いてくれた警備員と、涙を見せる女性を残し、彼らはビルへと戻っていく。
――留まってくれている、今のうちだ。
時間が、怪異が、迫っている。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 集団戦 『シュレディンガーのねこ』
POW
無限の猫爪
敵に攻撃されてから3秒以内に【猫の爪】による反撃を命中させると、反撃ダメージを与えたうえで、敵から先程受けたダメージ等の効果を全回復する。
敵に攻撃されてから3秒以内に【猫の爪】による反撃を命中させると、反撃ダメージを与えたうえで、敵から先程受けたダメージ等の効果を全回復する。
SPD
猫は死ぬのか死なぬのか
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【生命力】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【生命力】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
WIZ
シュレディンガーの鳴き声
【長い猫の鳴き声】を放ち、半径レベルm内の指定した全対象にのみ、最大で震度7相当の震動を与え続ける(生物、非生物問わず/震度は対象ごとに変更可能)。
【長い猫の鳴き声】を放ち、半径レベルm内の指定した全対象にのみ、最大で震度7相当の震動を与え続ける(生物、非生物問わず/震度は対象ごとに変更可能)。
√汎神解剖機関 普通11 🔵🔵🔵
まったくもって台無しだ。台無しだ。台無しだ。
台無しだ。
――ひとこと発すれば連鎖する声、否、鳴き声。
それを聞き取ったか。片耳をほんのちょっぴり切られた黒猫が、その声に毛を逆立て――そして、勢い良く駆けて逃走する。
そんな猫に興味はないとばかりに、ゆったりと。
とてとて、がしゃがしゃ、カシカシ、ぽふぽふ。
様々な足音と共に、ビルの周辺へ、どこからともなく集まって。行列を、作っていく。
『ほしぞら』のような、形をとらえようとすればぼやけてしまう、『ねこ』が先頭を歩いている。
台無しだ。
猫の行く先、通り道。獣の道とは細いもの。人の道とはさらにか細く。迷い込めばお前も角で。
われわれはねこである。なまえは、もうない。
ベティ・スチュアート
【アドリブ大歓迎です!】
ねこの集会かしら。
それにしては皆、色々な仮装をしていて素敵ね。
あっ、あれが今回の敵?
そうとわかれば戦わないといけないのね、ネコチャン……。
爆破魔法で【全力魔法】を放ちつつ、『名もなきバブルカー』で走り回って敵集団を遊撃。
いい感じに運転して、いい感じに攻撃を続けるわ。
きっと、この子たちも……いいえ、考えるのはやめ。
問題は今、この子たちが私たちに攻撃してきていること、それだけよ。それだけなのよ。
【アドリブ大歓迎です!】
ねこの集会かしら。
それにしては皆、色々な仮装をしていて素敵ね。
あっ、あれが今回の敵?
そうとわかれば戦わないといけないのね、ネコチャン……。
爆破魔法で【全力魔法】を放ちつつ、『名もなきバブルカー』で走り回って敵集団を遊撃。
いい感じに運転して、いい感じに攻撃を続けるわ。
きっと、この子たちも……いいえ、考えるのはやめ。
問題は今、この子たちが私たちに攻撃してきていること、それだけよ。それだけなのよ。
現れた猫の行列はずらりずらりと歩みを進め、先頭の猫が止まれば後続する猫たちもその後ろでぴたりと止まる。ねこの集会。ねこの仮装。端から見れば、確かに素敵な光景かもしれない。
「あれが今回の敵?」
ありとあらゆる姿をしたねこたちの目はほしぞらのごとく。『名もなきバブルカー』から様子を見るベティ・スチュアート(ねずみのたびだち・h04783)を見つめている。ねこねこ。どんな姿でもかわいらしい、ねこ。
瞬きで輝く星の眼。その視線が、獲物を狩るものである事を除けば――肯定できたかもしれない。
「戦わないといけないのね……ネコチャン……」
そうなんですよね……。
と言っている間にも。猫の集団から一匹が飛び出し、それに続くようにして爪や鋸に改造された手を使い、猫たちがベティへと襲いかかってくる。
「でも攻撃してくるなら話は別ーッッ!」
アクセルを強く踏み、ドのつく最高なエンジン音を響かせながら猫たちの攻撃を素早く避け、戦いやすいようにビル前の道路へと誘導する。うーんドライビングテクニック! |せっかちベティと、おんぼろ車《プラスチック・ベイビー》によるとびきりの出力は本来歩道であるはずの道も茂みもなんのその!
「(きっと、この子たちも……)」
車道へと向かう、ほんの少しの時間で、彼女は考えた。きっとあの子たちも、一度、消えているのだろう。そしてあの「猫の行列」に加わったのだろう。だが。
「……考えるのは、やめ!」
問題は今、この一瞬!
スライドしながら急停車、そして突っ込んでくる猫たちを爆破魔法でいくらかふっ飛ばし、さらに踏み込むことで敵を薙ぎ払う!
ベティは数え切れぬほど集まった|猫の集団《シュレディンガーのねこ》から一派を引き剥がし掻き消してみせた。まさしく大立ち回り――戦いの火蓋を切るに相応しい、とびきりのエンジン音だ!
🔵🔵🔵 大成功