シナリオ

|Night Watch《夜回り》

#√EDEN #√汎神解剖機関

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 #√EDEN
 #√汎神解剖機関

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●ほしのかがやきがみえる。
 深夜二時半。
 夜警。建物の周囲を見回る警備員は、眠たそうにあくびをしながら、懐中電灯で足元や植え込みを照らしながら歩いている。
 なんと平和な巡回か。今宵も全く問題なく……。
 中庭の茂みから猫が飛び出してきて少し驚いたり。
 珍しく通行人の若者達が居たな、という程度のことしか起きず、いつも通りの巡回を終えようとしていた。

 そろそろ交代の時間だ。次の奴を起こして、仕事を引き継いで貰わなければならない。
 彼はもうひとつあくびをして、建物へと戻ろうと裏口へと向かった。

 √EDENは、表向きには「平和」な√だ。たとえ何かしらの超常現象、不穏な気配、怪しげな影、怪異――それらを見かけても、人々は殆ど違和感を持つことはなく。
 危機的状況、そこから逃げ延びてしまえば、「あれはゆめだったのだ」とばかりに忘れて、いつも通りの日常に戻っていく。戻れてしまう。時に、「そうならなかった」者も存在するが。

 他の√の者たちからすれば、彼らのその特質はやや異様。忘れる能力が強いということは、……これから『自分たち』の起こすことも察されにくいというもの。

 だからこそ。彼らは影で、動く。
 虎視眈々と。夜の闇から、ひとをみる。
 おまえたちの手を、足を、そして胸を、顔を見て、考えるのだ。

『これは、贄として、相応しいか』
『これは、いなくなっても、良い存在か』――と。

 ――結局『彼』は、帰ることがなかった。
 裏口に差し掛かる直前の角。誰もいなくなったその場に残るは、小さな血痕と懐中電灯。……その明かりが、風で揺れる薄暗い茂みを、暫くの間、照らし続けていた。

●こんばんは。
「よう、『こんばんは』。良い夜だな」
 ボロアパートの前に大柄な男。背には巨大な翼、頭上に赤く輝くのは天輪か。セレスティアルとは異なる様相の姿。
 人間災厄「歓喜の歌」。『人類を守護するため存在する』等とのたまう災厄、六宮・フェリクス(An die Freude・h00270)が、煙草の煙を吐きながら軽く手を振り雑に挨拶をする。

「仕事だぜ、ハニーども。ゾディアック・サインだ。――√EDENに、侵入者サマだ」
 シンプルな言葉ではあるが、意図は伝わることだろう。他の√からの侵攻を伝える言葉。

「人さらい。一人を狙い撃ちにして攫っていく。だが……そうなりゃ、こっちも手の打ちよう様々! だよな? アッハハ!」
 笑う男、だが細められた目、睫毛の向こうの眼には一切、油断無く。
 煙草を咥え、スマートフォンを操作し画面上に地図を表示する。場所は√EDEN、とあるビルの周辺だ。
 公園と隣接しており、賑やかな街の明かりは遠い……平和そうな場所ではあるが、だからこそ『選ばれた』のだろう。

「カンタンなお仕事だ。人類を避難させて、『来る』のを待って、そんで全力でぶん殴る! これ以上なくシンプルだろ?」
 強く拳を握りしめて笑う男。人類としてはかなり高い身長と良い体格からそのような言葉が飛び出せば、身構える者も居るかもしれないが、こいつは星詠みだ。安心していただきたい。

「で、重要ポイント。奴らが動くまでに、ちょい時間がある。だから多少の暇つぶしは出来るんじゃねーかな」
 そう言いながら彼が指差すのは天、星空。

「幸いというか、なんつーか。月の光がちょい弱い時期でさ。今、星がクッソ見やすい。あ、星詠みにゃ全く関係も問題もなくな、ただ星が綺麗なんだわ」
 見上げればきっと、普段よりも星の光が強く美しく輝いている頃だろう。星詠み曰く、「今の時期、ちょうどしぶんぎ座流星群――北斗七星のやや下あたりに流星が見られる」とのことである。

「オレちゃんは残念な事に向かえねぇけど。夜歩きすんのは楽しいぜ? オレちゃんが『職』にしたいくらいにな。……ま、新年だ。空でも見ながらぼんやりしてさ、『待ってやる』といーんじゃないか」
 スマートフォンをしまって、残念そうに言いながら天を仰ぐ男。夜が好きだと自称する彼にとっては、この日近辺の空はあまりにも魅力的なものらしい。

 ……さて。迅速に迎撃の準備を取るか、それとも、安らぎの時間をより多く取るか。どうするかは、君たち次第だ。

マスターより

R-E
 おはようございます!R-Eです。
 ドのつく夜シナリオですがおはようございます!(ゴリ押し)

 √EDENへ訪うもの。深夜のひとさらい。
 きみたち、気をつけたまえ。
 |夜警《Night Watch》をするものは、きみたちだけではないのだから。

●1章。
 ひとまず、軽い哨戒をお願いします。
 この時点では警備員さんは生存しておられますので、避難を促したり、気を逸らしたりして、犠牲になるのを阻止してあげてください。
 あなた方の行動に彼は疑問を持つかもしれませんが、すぐに忘れてくれることでしょう。
 屋内や離れた場所に避難させれば問題はないはずです。

●その後の行動は自由です。
 月の見えない夜。ですが星空はとても、うつくしいので。
 ピークは少し過ぎましたが、ちょうど流星も見える時期。のんびり空を見て、新しい年に思いを馳せるのも良いと思います。
 多めにプレイングを頂けましたら、なるべくまとめて、出来る限りで採用させて頂く予定です。(キャパオーバーしたらすみません)

●2章以降。
 今回の事件、その元凶たちとの戦闘となります。
 1章で何を気にかけていたかで、2章の敵が変化します。
 一人を狙い撃って襲っていたことから、そこまで強くはない相手のようですが、油断なさらず!
 2章以降はサクサク進行の予定ですがプレ多めに頂いた場合、その分もがんばりますね。

 それではみなさま、良い夜を!
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第1章 日常 『夜空の下で』


POW 賑やかに過ごす
SPD 考えて過ごす
WIZ 静かに過ごす
√EDEN 普通5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベティ・スチュアート
【アドリブ大歓迎です!】

ここか!

愛車の『名もなきバブルカー』で目的地に到着するわ。

まずはバブルカーを走らせてそこら辺を哨戒、こっちは車両に乗ってるわけだから声を掛けられるかもしれないわね。
道交法?あっ。

保護対象を見つけられたら車両から降りて、私の姿を見せるわ。こんな耳と尻尾がついた人間が、この世界=√にいるかしら。

え、こんなちっこい女の子が真夜中に出歩いちゃダメ?
うるっさいわね!とにかく、あなたはここから離れなきゃいけないのよ!

どうしても取り合ってくれない場合は、無理やり手を引いて、建物に連れて行くわ。
あなたの今日の仕事はこれでおしまい!

べーっ!
東大和・斬花
神隠しか、警備員を敵の巣から引き離せばよいのだな。
警備員に近づき、大太刀で殴って気絶させる。安心しろ、峰打ちだ。
その後何処か安全な場所で√能力を使って気絶を治しつつ忘れさせる。
後は敵が来るまでに素振りで体を暖めておこう。

 警備員が犠牲になる、その予知よりも少し前。
 愛車『名もなきバブルカー』に乗るベティ・スチュアート(ねずみのたびだち・h04783)は周囲の様子を伺いながら車を走らせていた。
 可愛らしいが「おんぼろ車」などと呼ばれもするそれを操り、小道まで隅々と。今のところ簒奪者たちの気配はないようだが、これから現れるに違いない。美しい星空の下で楽しくドライブと行きたいところだが、警戒を怠らないのも努めだ。
 ……え? 道路交通法? あ~……どうでしょう……√EDENでは「こらっ」でしょうが、ベティの出身√的に……いやまず、彼女の操る車の特性から話をしよう。
 この愛車、可愛らしい見た目に反し、彼女用にガッチガチなカスタムを行われている。生半可な弾丸ははじき、積んであるエンジンは魔導式――とんでもないじゃじゃ馬仕様!
 ドライビングテクニックがとびきり高い彼女、それ以外の乗り手が操れない以上、セーフ!

「ここかーっ!」
 そしてとってもタフなので、人影を見つけて急ブレーキを効かせたって、まったく問題ないのである。
 ……ちょっと音が大きかったこと以外は。まあ、そこはキュートな車とベティ。ゆるされる!

 さて見えたのは東大和・斬花(一刀必殺・h05005)と、その少し遠くを歩く警備員の姿だ。
 先ほどの音でこちらに気づいたらしい警備員が、訝しむような様子で小走りに近づいてくる。
 斬花は気配を消して、植え込みから警備員が通りすがるのを待っている様子だ。何をしているのだろう? と思ったベティであったが……。
 斬花がそっと警備員の背後へ。大太刀を抜き、今にも峰打ちと称し警備員を殴ろうとしている所で、斬花とベティの視線があった。

「(ままま待って! ぼうりょくはんたい!)」
 アイコンタクトと両手を振る仕草で察したか、斬花が大太刀を降ろし鞘へと収める。
 ほっと胸を撫で下ろすベティ。ここで殴るとたいへんなことになっちゃいますからね。ひとまずは落ち着いて話をして――最終的に殴ったほうが良いのなら、殴ればよいのだ。
 そのベティの仕草を見ていたのか、警備員はさらに怪訝そうに近づいて、コンコンとフロントドアのガラスを叩いてきた。促されるまま車から降りたベティ、その耳と尻尾がぴょこんと揺れる。
「君は……? こんな時間に何を……?」
 外見について深く言及しないのは、警備員の配慮なのかもしれないし、比較的人間に近い容姿であるからか、認識が阻害されているのかもしれない。
「ふふん! よーく聞きなさい! あなたはここから離れなきゃいけないのよ!」
「そ、そうか。えっと……ご両親はどこかな? それに、その車は? もう遅い時間だよ」
「……むむ……」
 あくまで『人間の子供』、そして冗談だと本気で考えているらしい警備員。可愛らしく頬を膨らませているところで、背後から斬花が歩み寄ってくる。

「すまない、私の連れだ」
「ああ、保護者の方かな……?」
 保護者にしては若そうだ。それに、背負っている獲物は……剣道かなにかをしているのだろうか? という疑問も彼の頭に浮かぶものの。彼はベティと並ぶ斬花を見て、「変わった姉妹」だと解釈したようだ。
「どうにもやんちゃな子でね。迎えに来たのだが……何かあったのか?」
「うーん。ここから離れろって言われてね。そう言われても、僕はこれが仕事だからなあ」
 頭をぽりぽりと欠いて困った様子を見せる警備員。

 ――断言しよう。この男、かなりの難敵である。
 平和な夜だとしても、猫の一匹も見逃さず、若者たちがたむろしていたこともしっかり目視し気に留める。欠伸はしようと時間ぴったりに戻り交代をしようとするという、それはもう面倒くさいタイプの一般人――それが警備員である(※星詠みの予知と|わたくし《地の文》の偏見含む)。
 斬花も彼をその手の人間だと見なしているのか、彼の様子を注意深く窺っていた。

「もーっ! とにかく、戻って! 外に居たらあぶないのよっ!」
「わっ。わあっ、わかった、わかったよ……!」
 ベティに強く手首を掴まれて、引きずられるように建物の裏口へと導かれる警備員。その背後をついて歩く斬花。子供の遊びに付き合っているような雰囲気だ。……おそらく二人の気配が消えれば、彼はすぐに出てきて、哨戒へと戻ってしまうことだろう。

「あなたの今日の仕事は、これでおしまいっ!」
 開いたドアに向かい、どんっと警備員の背中を押すベティ。警備員も笑いながらそれを受け入れる。
 べーっ! と舌を出してみせる彼女を見てから、警備員が、彼女たちから背を向けたその瞬間――。

 ……ゴッ、と鈍めの音が響いた。
 崩れ落ちそうになる警備員の体を支える斬花。
「安心しろ、峰打ちだ」
 すかさず『忘れようとする力』を用いて、見事気絶してしまった警備員へと治療を施す。
「けっこういい音したわよっ!?」
 ちょっぴり焦るベティ。それはそうだ。いい音した。ひとまずはと、やや奥の安全が確保できる場所へと警備員を運ぶ二人。

 ……しかし、『忘れようとする力』は、「こういった事があった」、ということも忘れさせてしまうので……。
 ほぼ十分後、慌てて外へ出てきた警備員を遠目に見て。

「……ちょっとうっかりしてたわね」
「……面目ない」
 だが『時間稼ぎ』としてはもちろん十分。いち早く駆けつけ、前もっての偵察も出来た。ウォーミングアップを取る時間もたっぷりだ。
 ……この時間帯ならまだ、簒奪者達は動いていない。その証明。これから取れる行動は、いくらでもあるのだから。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

白皇・奏
忘れる力を悪用することのできるなんて、狡猾な敵のようだな……。
一人いなくなっても、他の人間の悪れる力により気にならなくなれば……これほど都合のいい生贄はいないだろうな。
そうさせるわけにはいかない。

襲われる前に避難させないといけないな。
お姫様に見える外見を活かして、お姫様を装って警備員に近づこう。
「警備員様。このあたりはお星さまが綺麗に見えるの。
申し訳ありませんけど、この場所を譲ってくださいな。」

これで彼を避難させよう。
疑問を持ってもすぐに忘れるだろう。

場所を譲ってもらったら、本当に星がきれいに見える場所だ。
持ってきた天体望遠鏡を使って星空をじっくりと眺めて時間を潰そう。

 忘れる力。それは√EDENの一般人、誰しもが持ち合わせる能力。それをこのような形で悪用し、狡猾に、|一人《一匹》ずつ獲物を狩る――。白皇・奏(運命は狂いゆく・h00125)は不快そうに顔をしかめ、考える。
 なんと都合のよい生贄か。消えた者の縁者か、または強く思い出そうとすれば、記憶をたどる事自体は叶うだろう。しかし相手はそれも加味したうえで、獲物を選んでいる。
 これ以上の犠牲を出させるわけにはいかない。

 奏は強く頷いて、自らの身だしなみを確認する。
 星降る夜に相応しい、夜空柄にオーガンジーのフリルをあしらったワンピースである。きらきらと目立つ装いは天の星にも負けないほどの麗しさ。冬の寒さを和らげる厚手のタイツにも星空のようなグラデーションがかかっており、本日も完璧なコーディネートだ。天体望遠鏡の入ったレザートランクも合わせれば、まさしくお出かけ中の愛らしいお姫様。
 だが彼は男性だ。大切なことだ。もう一度言う。男性である。ありがとう。
「さて、しっかりと避難させないといけないな」
 ともあれ彼は普段通り、役目を全うするために動く。
 既に他の√能力者も動き始めているはずだ。奏の作戦は「自分が場所を占領することで、警備員の行動範囲を狭める」こと。
 幸いビルの周囲は一巡するのに結構な時間がかかる。ビルの入口の近くに、休憩用として設けられているらしいベンチを見つけて、奏はそこへ座ることにした。――ちょうど、監視カメラで見える位置である。トランクを開け、天体望遠鏡を星空へ向けて、時が来るのを待つ。

 さてもはや半ば獲物である警備員が通りかかる――と、いうより。奏の姿を見た途端、彼は愕然とした表情になり、ややへっぴり腰になりながら彼へと近づいてきた。
「あの……ここで何を?」
 当然の質問である。だが奏は何でもないことのように微笑んで、首を傾げてみせて。「星を見ていました」と返答した。ひとまずは、話が通じそうな人間だと判断したらしい警備員。ちらりと空を見上げて、「ああ……」と納得した様子で何度か頷く。

「警備員様。このあたりはお星さまが綺麗に見えるの。……申し訳ありませんけど、この場所を譲ってくださいな」
 ゆっくりと立ち上がり、スカートをつまみカーテシーをする彼を見て、警備員は困った様子で、しかしちらりと監視カメラを見て。
「……少しの間だけですよ。戻って来る頃には、移動していただけますか?」
 ……何かあれば、監視カメラに記録される。それに不思議な魅力を持つ彼女――いや、彼なのだが――に、深い物言いをするつもりにはなれなかったようだ。彼に抱いた違和感も、戻る前に消えていることだろう。
 警備員が「では」と奏に声をかけ、巡回へと戻っていく……。

「……本当に、星がきれいな場所だ」
 明かりの殆ど無い、言ってしまえば少々寂れた街だからこそ。星空のきらめきは、自然と近く感じ取れる。
 天体望遠鏡を覗き込めば、きらり。
「――あ……」
 ちょうど、星がひとつ、輝きながら落ちていった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ジェイ・スオウ
この時間二、この辺りにヒトって居るノカ。居タワ。
茶箱持ってきて正解。
お嬢さん方。もう遅いゾ。このお茶、今回はサービス。飲みながら帰ろうナ?美味しかったら是非今度は買ってクレヨナ。

ビルの上で待機シヨ。それまでお茶いれて。星ヲ‥。
ワァ。こんなトコロでも見えるんダナ。星。
流れ星に願い事いうと叶うんダッケ。
ナニカ。無いナ?

今。結構気に入ってるんダヨナ。オレ。

‥おいしい食べ物に沢山出会えるとイイナ。
で、アパートの皆で美味しいって言えタラ、マァ‥。ウレシイカナ。

「(この時間二、この辺りにヒトって居るノカ……)」
 などと。当然の疑問を抱きながら、ジェイ・スオウ(半天妖・h00301)はぐるりとあたりを見回した。ビルの周囲ではなく、やや離れたあたりで。
 予知にあった時間も近くなってきた。そろそろ気配のひとつくらいしたっておかしくはない時間帯。集中して、聞き耳を立てていると――。

「(居タワ)」
 居るんですよね。
 少し遠くから歩いてくる若者たち。酔っているような様子でもなく、ただ楽しげに談笑しながら歩く男女複数人。こちらに気がついたのか、彼らはやや警戒した様子で、小声で何かをやりとりしている。だが、それはどうにも聞き取れない。こちらも警戒を強め……それを微笑みで隠しながら。ジェイは若者たちに声をかける。

「良い夜ダナ、お嬢さん方。何かの会の帰り? 温かいお茶でもドウゾ」
 茶箱を持ってきて正解だ。流れの茶商――本来、√EDENでは違和感を持たれる可能性もある様相ではあるが。それでも友好的に接すれば、相手の態度も軟化するというものである。
「あ~……そんなもんです」
「え、何その箱。お茶? 初めて見たかも」
 好奇心旺盛な女性が手元を覗き込んでくるのを見て、ジェイは楽しげに笑ってみせる。
「ソ。一芸だと思って見テッテ?」
 そう言って、丁寧に茶を淹れはじめるジェイ。そうなれば若者たちも離れるわけにもいかず。手際よく――味は茶具としてのカップに比べれば少々劣るだろうが――使い捨てのカップに注がれていくお茶を見て、先程はしゃいでいた女性が「わあ」と声を洩らした。
「このお茶、今回はサービス。飲みながら帰ろうナ?」
 カップを受け取り、香りを嗅いで、ひとくち。ぱあっと明るい笑顔になった女性がやや後ろにいた仲間たちへと振り返って、無言で「飲んでみて!」とアピールをする。
 それにつられて、各々カップを手に取りお茶を口にする。
「え、美味っ」
「でしょ? びっくりした! ねえ、お兄さんって何者?」
 仲間と会話しながらも――まるで、こちらの正体を窺うような言葉を発する女性に、ジェイは「タダの茶商ダヨ」とおどけてみせた。
「美味しかったら是非、今度は買ってクレヨナ」
「はぁーい!」
 元気に返事をした女性と、控えめに手を上げた男性。それを見送りながら……ジェイは扇子で、口元を隠す。
 あれは「違う」。何が違うか。「ひととして、違う」。己の本能が告げている。だが……ここから離れるというのなら、深追いする必要はない。

 そんな事を考えながら、こっそりとビルの屋上へと登り、空を見上げる。どうやら先客はいないようだ。今度は自分用にと茶を淹れながら――星を待つ。
 すると、きらりと横切る流れ星。
「(ワァ。こんなトコロでも見えるんダナ。星)」
 ……流れ星に願い事をすれば、叶うという言い伝え、あるいはおまじない。じっと空を見つめて、考えてみる。
 願い事。ナニカ。
 無いナ?

「(今。結構気に入ってるんダヨナ。オレ)」
 ……充実している。己の欠落は満たされずとも、生活自体には、満足している。願い事……と、考えた末。
「(おいしい食べ物に沢山出会えるとイイナ)」
 そんな、平和な日常を豊かにすることを考えて。
「(で、アパートの皆で美味しいって言えタラ、マァ……。ウレシイカナ)」
 温かい茶で、手指を温めながら。流れていく星をみて、「その時」を、待つ。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

猫宮・弥月
うん、良い夜だ。
さてまずは警備員さんの誘導を。
と言ってもどうしたらいいかな、うーん、ちょっと嘘をつこうか。
建物の中に動く明かりが見えた、と言って、誰かが忍んでいるかもしれないと不安を煽ってみようかな。
星詠みの予知より早めに中に戻ってもらおう。一緒に裏口までついていってもいい。ひとりじゃない、と怪異に示しておこう。
警備員さんの無事をちゃんと見届けてから待つことにする。

星がきれいで、見るのにも向いた星月夜。
冬の夜空もいいよね、澄んで見える。
猫もいたらしいから、猫も探したいな。
なついてくれるか、孤高の猫か。どちらも可愛いけど。
……若者も猫も簒奪者だったりしないよね?
考え過ぎかな。うん。

「うん、良い夜だ」
 流れる星の量が、少し増えてきたように思える。夜空を見上げながら、猫宮・弥月(骨董品屋「猫ちぐら」店主・h01187)はそっと目を細めた。
 さて、星ばかりを見ているわけにはいかない。為すべきことを為さねばならないのだ。

「――と言っても、どうしたらいいかな」
 顎に手を当て、考える。少し待っていれば彼はそのうち、ここへ向かってくる事だろう。それまでの間思索を巡らせて。
 ――ビルの前で首を傾げたりしつつ。巡回し向かってくる警備員に、自分から声をかけた。
「君、ちょっといいかい?」
「あっ……はい、何でしょう?」
 まさか話しかけられるとは思っていなかったのか。警備員は驚きつつも小さく頭を下げ、弥月へと近づいてくる。
「建物の中に、動く明かりが見えたんだ」
「明かり……ですか?」
 ビルを振り返り、目を凝らす警備員。当然嘘なので、内部には誰も……正確には、彼の同僚くらいしか居ないはずだ。ゆえに、彼の反応も想像通りのものである。
「同僚かもしれませんね……」
 少し訝しむように、けれど心配ではあるのだろう。警備体制か、それとも同僚の心配か――。
 弥月はビルへと視線を向けて、彼にもう一言。
「だいたい、あっちの方で見えたんだ。心当たりは……?」
「……ありませんね。ありがとうございます、一度……見に戻ってみます」
 不安げで険しい表情をしながら、ビルの中へと戻る警備員……彼が手に持つライトがビルの屋内を照らしているのを見て、弥月はふうと息を吐いた。
 自分はひとりではない。間違いなくここに存在する怪異へ、睨みを利かせる。
 ビル内の巡回を終えた彼がまた出てくるというのなら、自分や他の√能力者がいつでも対応できるのだ、と。
 ……警備員については、しばらく大丈夫だろう。弥月はふと、空を見上げた。

 ――まさしく星月夜。街灯もまばらな中で見える、星の数々。
 澄んだ空気、冬の夜空。町中とは思えないようなうつくしい天体ショーだ。

「(……猫もいたらしいね。今なら見つかるかな……)」
 そう思って、そっと茂みや物陰を覗き込んでみる。ゆっくりと探していると、金色の目を視線が合った。
 静かに瞬きをして、猫に対して敵意がないとのご挨拶。猫はといえば、まばたき、ぱちぱち。星のきらめきのよう。
 真っ暗な中からそっと現れた黒猫が、ふんふんと匂いを嗅いでくる。弥月が指を差し出せば、それに鼻先をくっつけてきた。
 かなり人馴れしている猫のようだ。片耳がほんの少し三角に切られているところを見るに、いわゆる地域猫なのだろう。
 黒い被毛は夜。金色の目は星。すり、と手に体を擦り付けた猫は、にゃあんと挨拶するようにひと鳴きして、ゆっくりと茂みの中へと入っていった。

「(……若者も猫も、簒奪者だったりしないよね?)」

 ――ああ、まったく。
 察しの良い『人類』とは、どこにでもいるものである。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

壇・壱郎
コーヒーをテイクアウトして、現地へ向かう。
「寒いが、いい夜だ。気温が低いと星がよく見えるからな」

『地取り捜査』で情報収集。ここいらで、なにか妙なモノを見なかったか?
いや、なにもないならそれでいい。あらわれるのがこれからなら、まだ犠牲者はいないってことだからな。

警備員に会ったら、
「俺はこういうもんだ(警察手帳を見せ)。ちょっと物騒な通報があって警戒してるんだ。なに、心配はいらないさ。ちょっと休憩してきたらどうだ」
とでも言って、余分に買ったコーヒーを渡そう。

ほかに能力者が来ているようなら、コーヒーはそいつにやったっていい。
情報交換と自己紹介をしておこうか。

(アレンジ・連携、歓迎)
紗影・咲乃
んー、とりあえず避難させればいいの?

咲乃の見た目を活かして迷子のふりして泣きながらお家探してもらうように避難させたらいいかな?

まずは、泣きながら警備員さんへ近づく
迷子になっちゃったの……
にぃにたち一緒に探してくれるの?
と少し泣きながら問いかけてみる
OKならそのまま泣いて話しながら少しずつ離れた場所へと30分ぐらい歩いたらあらかじめ協力をお願いしてたお家を指差して
あ、ここなの!ありがとうなの!
パパとママ呼んでくるから待っててなのよ?
とテキトーな理由をつけて離れていく
お家に入ったところでお家の人たちに警備員さんたちの対応を任せてさっさと裏から現場へと戻っていく

 こそこそ。ゆっくり。万が一にも、敵に見つからないようにと。小さな影が、明かりのついた民家のドアをこんこん叩く。それは、紗影・咲乃(氷の華・h00158)の姿だ。……√能力者達が動き始めたのは深夜だが、なんとか『協力者』を見つけることが出来た。
 もふもふ、ふわふわ。索敵任務を任されたぬいぐるみ、ミニうさちゃん達が周囲を警戒。ふわふわな耳を、ぴんと立てながら。

 ――時間はもう少し、遡る。

「ここいらで、なにか妙なモノを見なかったか?」
 壇・壱郎(ツノツキ・h01763)が警察手帳を見せた先。『地取り捜査』によって姿を変えた|情報提供者《インビジブル》の男性が、虚ろながらも知性を持った声と頷きで返答する。その足元には、先に出会った咲乃が呼び出していたうさぎのぬいぐるみが立っている。
「ああ、ああ、見たとも。あっちの曲がり角……突然だったよ。猫がにゃあとないて、一瞬さ。あいつが消えたんだ」
「ふむ、猫か……それで、あいつとは?」
 猫。星詠みのゾディアック・サインにも記されていた存在だ。眉をひそめ、先を促す壱郎。
「ここを良く通ってた奴だ。公園があるだろ……そこを突っ切って、曲がり角の先に、あいつの家があって……」
 ここらを漂うただのインビジブルであり、直接的な縁者ではないようだが、それの記憶によく残る相手であったらしい。指差す方向には深夜だというのに明かりが灯っている家屋が見える。いつ消えたかと聞けば、ちょうど二日前、このあたりの時間帯。
「昼間に見るんだ、奥さんか……あいつを探して……」
 そう言って、インビジブルが茂みの中を指差し、そして、自分の知っている情報は教えたとばかりに姿が消える。すかさず茂みに潜り込む咲乃のぬいぐるみ。茂みの中を探すふわふわに少しだけ笑みを溢しながら近づけば、そのぬいぐるみの手の中にはきらり、何かが輝いていた。

 ……情報を得た壱郎が咲乃と合流し、明かりのついた民家を訪れた時。驚いた様子で出迎えた女性は、彼らから渡されたネクタイピンをぎゅう、と握り込む。
「おとり捜査まがいな事は、気が引けるのですが……」
「……大丈夫です。あの人のため、ですから」
 壱郎の声に、何度も頷き。震える声で女性が返答する。ずっと、これの持ち主のために明かりをつけて、待っていたのだ。咲乃が見つけた『遺品』となってしまったそれにぽたりと涙が落ちるのを見て、きゅっと唇を結ぶ咲乃。
 残るはこうして得られた協力者の元へ、警備員を導くのみ。

「――寒いが、いい夜だ。気温が低いと星がよく見える」
 テイクアウトしたコーヒーを手に公園のベンチへ座り、星空を見上げ。ひとすじ流星が奔っていったのを見て、壱郎はほう、と白い息を吐く。月は殆ど見えず、土地柄もあってか目印となる星座をすぐに見つけられるほどの澄んだ空だった。
 ――果たして、警備員は現れた。
 座る壱郎の姿を見つけた警備員は、「そこで何を」と声をかけながら近づいてくる。
「ああ……俺はこういうもんだ。ちょっと物騒な通報があってな、警戒してるんだ」
 警察手帳を見せ、身分をしっかりと明らかにした壱郎に対し、警備員はすっかり安心した様子だ。だが、続く言葉を聞いて少しばかり険しい顔をする。
「なに、心配はいらないさ。仲間が今見回りをしてる。ちょっと休憩したらどうだ?」
 そう言って、壱郎から渡されたコーヒーを手に取り……やや不安そうな様子を見せながらも、警備員は壱郎の隣へと座った。
「物騒っていうと。やっぱり、あの噂ですかね」
 ちびりとコーヒーに口をつけ、彼が聞いてくる。
「ああ、人が消える話だよ」
「でしょうね……。こっちは、中々の厳戒態勢で。出歩かないほうが良いまであると思ってるんですが……今日はどうにも、人が多くて。助かります」
 ……√能力者の皆さん、全力ですからね。こうして話を聞けば、彼が気合を入れていた理由も分かるというものだ。

 と、そんな二人にとてとてと小走りで近づいてくる影がある。涙目で、少しよろけながら――演技ではあるが、十分に「それらしい」様子で駆けてくる少女。咲乃の姿だ。
「あのっ。あのね、迷子になっちゃったの……っ」
 息を切らしながら――うさぎのぬいぐるみを抱いた彼女が、二人を見上げる。こちらも演技ではあるものの、驚く壱郎。そして、警備員。続けて咲乃がぽろぽろ涙を溢しながら。
「にぃにたち、警察のひとでしょう? 一緒に探して……近くのはずなの……」
 ……『警備員も、警察だと思っている』。そのような振りをして、ぬいぐるみをぎゅうっと抱きしめた。震える彼女の前に膝をつき、壱郎が警備員へと目配せをした。
「参ったな……」
 頭を掻く警備員は、頑なに持ち場を離れるわけにはいかないと思っているようだ。その服の裾を、咲乃がきゅ、と掴む。
「おねがい、いっしょにさがして……」
 ……子供に、ここまで言われてしまっては仕方がない。ここぞとばかりに、壱郎が声をかける。
「近くだったらすぐに見つかるはずだ、親御さんも探してるようだし、俺も一緒に行こう。……同僚も少しくらいは許してくれるさ」
 肩をすくめた後、迷子の保護や持ち場を離れるといった連絡をし始めた壱郎を見て、警備員はようやく覚悟を決めたようで。

「……わかった、お兄ちゃんたちと一緒に行こう。見覚えのあるものがあったら、教えてもらえるかな?」
「……! わかったなの!」
 心の底から嬉しそうに、声を弾ませる咲乃。その後予定通り、協力を呼びかけていた家へと、やや道を間違えるなどをしながらたどり着いた。
「――ああ、どこに行ってたの!」
「ごめんなさいっ、ただいま、ママ!」
 ……端から見れば抱きしめ合う親子。――咲乃の欠落は、これでは埋まらない。それでも、この暖かさは、本物だ。
「ご迷惑をおかけして、すみません……」
「いえ、こちらこそ。お力になれたなら幸いです――」
 そんなやり取りを聞きながら、元気に家の中へ入って。そして、裏口からこっそり出ていく咲乃。壱郎もまた、「少し任せていいか?」と、持ち場を気にする様子を見せた。信頼を築けたからか、快く頷いてくれた警備員と、涙を見せる女性を残し、彼らはビルへと戻っていく。

 ――留まってくれている、今のうちだ。
 時間が、怪異が、迫っている。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『シュレディンガーのねこ』


POW 無限の猫爪
敵に攻撃されてから3秒以内に【猫の爪】による反撃を命中させると、反撃ダメージを与えたうえで、敵から先程受けたダメージ等の効果を全回復する。
SPD 猫は死ぬのか死なぬのか
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【生命力】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
WIZ シュレディンガーの鳴き声
【長い猫の鳴き声】を放ち、半径レベルm内の指定した全対象にのみ、最大で震度7相当の震動を与え続ける(生物、非生物問わず/震度は対象ごとに変更可能)。
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 まったくもって台無しだ。台無しだ。台無しだ。
 台無しだ。
 ――ひとこと発すれば連鎖する声、否、鳴き声。

 それを聞き取ったか。片耳をほんのちょっぴり切られた黒猫が、その声に毛を逆立て――そして、勢い良く駆けて逃走する。
 そんな猫に興味はないとばかりに、ゆったりと。
 とてとて、がしゃがしゃ、カシカシ、ぽふぽふ。
 様々な足音と共に、ビルの周辺へ、どこからともなく集まって。行列を、作っていく。
 『ほしぞら』のような、形をとらえようとすればぼやけてしまう、『ねこ』が先頭を歩いている。

 台無しだ。
 猫の行く先、通り道。獣の道とは細いもの。人の道とはさらにか細く。迷い込めばお前も角で。

 われわれはねこである。なまえは、もうない。
ベティ・スチュアート
【アドリブ大歓迎です!】

ねこの集会かしら。
それにしては皆、色々な仮装をしていて素敵ね。

あっ、あれが今回の敵?
そうとわかれば戦わないといけないのね、ネコチャン……。

爆破魔法で【全力魔法】を放ちつつ、『名もなきバブルカー』で走り回って敵集団を遊撃。
いい感じに運転して、いい感じに攻撃を続けるわ。

きっと、この子たちも……いいえ、考えるのはやめ。
問題は今、この子たちが私たちに攻撃してきていること、それだけよ。それだけなのよ。

 現れた猫の行列はずらりずらりと歩みを進め、先頭の猫が止まれば後続する猫たちもその後ろでぴたりと止まる。ねこの集会。ねこの仮装。端から見れば、確かに素敵な光景かもしれない。
「あれが今回の敵?」
 ありとあらゆる姿をしたねこたちの目はほしぞらのごとく。『名もなきバブルカー』から様子を見るベティ・スチュアート(ねずみのたびだち・h04783)を見つめている。ねこねこ。どんな姿でもかわいらしい、ねこ。
 瞬きで輝く星の眼。その視線が、獲物を狩るものである事を除けば――肯定できたかもしれない。

「戦わないといけないのね……ネコチャン……」
 そうなんですよね……。
 と言っている間にも。猫の集団から一匹が飛び出し、それに続くようにして爪や鋸に改造された手を使い、猫たちがベティへと襲いかかってくる。
「でも攻撃してくるなら話は別ーッッ!」
 アクセルを強く踏み、ドのつく最高なエンジン音を響かせながら猫たちの攻撃を素早く避け、戦いやすいようにビル前の道路へと誘導する。うーんドライビングテクニック! |せっかちベティと、おんぼろ車《プラスチック・ベイビー》によるとびきりの出力は本来歩道であるはずの道も茂みもなんのその!

「(きっと、この子たちも……)」
 車道へと向かう、ほんの少しの時間で、彼女は考えた。きっとあの子たちも、一度、消えているのだろう。そしてあの「猫の行列」に加わったのだろう。だが。

「……考えるのは、やめ!」
 問題は今、この一瞬!
 スライドしながら急停車、そして突っ込んでくる猫たちを爆破魔法でいくらかふっ飛ばし、さらに踏み込むことで敵を薙ぎ払う!
 ベティは数え切れぬほど集まった|猫の集団《シュレディンガーのねこ》から一派を引き剥がし掻き消してみせた。まさしく大立ち回り――戦いの火蓋を切るに相応しい、とびきりのエンジン音だ!
🔵​🔵​🔵​ 大成功

クラウス・イーザリー
「あれは、猫……なのか?」
俺が知っている猫とは随分違うけど……
とにかく、あれが人攫いに関わっているのなら放置はできないな

獣(?)は接近戦が得意だろうし、まずは遠距離から攻撃しようか
弾道計算+レーザー射撃で遠くから攻撃して、レーザーが有力なら決戦気象兵器『レイン』を起動
範囲内にレーザーを降らせてダメージを与えるよ

敵がこっちに近付いてきたらレーザ射撃で引き撃ちして、接近戦の距離に捉えられたら近接武器を抜いて暗殺や鎧砕き、零距離射撃で攻撃

長い声での自身はガントレットのワイヤーを用いて跳んで範囲外に逃れる

近くに味方がいたら攻撃を合わせたり弱った敵を狙ったりと積極的に連携するよ

アドリブ、連携歓迎です
東大和・斬花
コイツらは……たぬき? なんであれ斬る。
とはいえ複数相手は苦手、一匹ずつ確実に仕留める。
右手に蒼い火を灯す、能力殺しの常人には見えざる火を。
そして一気に近づいて太刀で串刺し、刺したたぬきは右手で掴む。
その爪で引っ掻くと身体が治るらしいな、だがもうただの爪だ。

「あれは、猫……なのか?」
 駆けつけたクラウス・イーザリー(人間(√ウォーゾーン)の学徒動員兵・h05015)は、自分が知っている猫とは随分と異なった姿のそれを見た。
 ありとあらゆる姿が混ぜ込まれ、異形から普通の猫のような姿にしか見えないものもいる。様々なねこの群れに、僅かに驚愕と嫌悪の混ざった声を上げたクラウス。その横に東大和・斬花(一刀必殺・h05005)が立ち、敵たる猫たちを睨みながら口を開く。

「コイツらは……たぬき?」
「猫だと思う」
 ギリギリ。そう『言うしかない』ような外見を持つ|怪異《ねこ》もいる。にやけ顔で宙に浮かび、こちらをぎょろぎょろとした視線で見てくるそれの尻尾はやたらと太く、たぬきにも確かに似ているわけであり――『可能性の獣』たる彼らには、常識は通用しない。

「……あれが人攫いに関わっているのなら、放置はできないな」
「ああ。なんであれ斬る」
 各々の得物を手にし、配置につく二人。
 獣の姿をした怪異であれば、近接戦闘をより得意としているのではないか。その場から素早く飛び退き、遠距離からの的確なレーザー射撃で一匹の眉間を撃ち抜くクラウス。すると猫の姿が黒く染まり、そして砂のように掻き消えていく。
 攻撃が効く。ならば、やることはひとつだ。戦場となったのは幸いにも広い公園である、ここならば――。
「下がって!」
 斬花へと声をかけ、彼女が後退するのを目視するクラウス。その瞬間、異形の猫たちが長い、長い鳴き声を上げはじめた。
 ひとを呼ぶ様に。母猫を呼ぶように。あるいは他の何かを。音は強烈な振動となり、自分たち以外の周囲のありとあらゆるものを無差別に揺さぶりはじめる。
 クラウスはその揺れの範囲外へ多機能ガントレットのワイヤーを用いて離脱し、「猫」へと照準を合わせ……。

「――降れ!」
 『レイン』が、降る。猫を中心にした揺れる地へ、無差別に降り注ぐレーザー光線の雨。『決戦気象兵器』とは、よく言ったものだ。相手が範囲で攻撃を仕掛けてくるのであれば、こちらもそうすれば良い。レインに撃ち抜かれ怯んだか、鳴くのを止めたそれらが散り散りに逃亡しようと雨の範囲外へ跳ねていく。

「逃がすかッ!」
 逃亡するその後ろ首を蒼い火の宿った手が掴んだ。逃げようと足掻く異形の体、それを太刀で串刺しにし切り捨てる斬花。突然の降雨から逃げる猫を一匹、また一匹と捉え撫で斬る刀。それでも仕留めきれなかった怪異が彼女を鋭い爪で切り裂こうとする。だがそれを右掌で受け止め――ルートブレイカーを、防御として使い。
「もう、ただの爪だ」
 掌をぐっと握り込み。地面へ叩きつけ、その体へと刃を突き立てた。
 斬花の背後へと迫る敵をクラウスが撃ち抜き、一匹、また一匹と数を減らしていく。

 残ったのは、猫の鳴き声とレインによって崩れた公園、そして二人の姿だけだ。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

白皇・奏
シュレーディンガーのねこ。
箱の中の猫が死ぬような状況を作り、中を見ない状態だと死んでいる世界線と生きている世界線と存在するという、不明な状態では中身が分からないことの例えでも使われるな。

じゃあ、お前たちはなんだ。
猫か?それとも……人に害する怪異か?

どっちでも構わないよ。
人に害するお前たちには消えてもらおう。

【月光魔召派】、なるだけ物陰に隠れて狙われない場所を陣取って。
自慢の高速詠唱と多重詠唱を用いて、詠唱し続けて光の妖精たちを呼び続けていく。

光の妖精たちには1人につき1回攻撃してもらう。
攻撃1度すると1人消えてしまうが、動かずに詠唱続ける限り呼び続け、シュレディンガーのねこを攻撃してもらう。

 箱の中の猫は生きているのか死んでいるのか。シュレディンガーのねこ。箱の中を覗かなければ、その生死は確認できない。
 白皇・奏(運命は狂いゆく・h00125)は物陰へと隠れ、様子を窺いながら冷ややかに、あちこちから鳴り始めた騒音に耳を傾けていた。
 ――『そこにいるか』すら分からなくなった、箱の中の猫。ありとあらゆる可能性を得て……そして、こうなった。この猫たちは、シュレディンガーの猫。ひとつの『結論』である。
 だが、お前たちはなんだ。猫か? それとも、人を害する怪異か。
 もちろん――後者である。

 ビルの脇を駆けてくる猫の群れ、その足音を察知し、小さく始める詠唱……たった三秒、されど三秒。三。六。九――現れるは月明かりの妖精たちだ。
 月のないはずの夜――眼前へと現れた月光に、猫たちの瞼が見開かれた。
 |月光魔召派《ウィザードルナティック》により召喚された妖精たちが猫を一匹、また一匹と各々の得物で攻撃していく。星々よりも強く輝く妖精が剣で切り裂き、弓で射抜き、攻撃が終われば流星のように瞬き消えていく。一度は回避出来たとしても奏の詠唱は続き、次に現れた妖精がその体へと一撃を加えていく。

 ――耳を立てたねこが鳴いた。周囲のものを振動させ、奏の居場所をあぶり出そうと。ふっと消える妖精、物陰から目前に現れる奏。
 彼の月夜のような青い眼が、猫をうつす。だが視線が合い、彼が立ち止まるその三秒間も唇は言葉を紡ぐ。現れた妖精が光を発し猫たちの目を潰す。怯み、目を開け。眩む視界で奏を探すももう遅い。
 再び怪異どもの視界の外へ逃れた彼の唇から、詠唱が再開される。
 月の光よ。くらやみを照らすがいい。その正体を暴くがいい。日の光よりも幾分、優しいひかりだろう。
 ……槍で貫かれ、黒い砂となり消える猫を最後に、奏の周囲から怪異の気配が消えた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ジェイ・スオウ
※アドリブ連携なんでも歓迎です。

■お相手発見
アイツダナ。
ネコ。ネコカナ。イッパイのネコ。
‥疲れたらアレ。吸いたくナルノカ?
人類、スゴイナ。

怪異ダヨナ?
1匹お持ち帰りしてお友達の解剖士サンノお土産にシテイイ??ダメ??

■戦闘
職業病みたいなモンだが気配を消し
2つのビルの外側非常用階段を交互に飛び移りながら一気に下マデ。
相棒の鉄扇を能力用に3分の2だけ広げ相手に向ウ。

コンニチハ、ネコサン。

√能力【紫龍袍厄妖天乃舞】を発動。
挨拶はシタケド返事は待たナイ。
既に被害が出ている時点で慈悲はナイ。

|ココ《√EDEN》がオマエ達の遊び場でも狩り場デモないコトをちゃぁんと教えてヤル。
オマエ達が獲物になる番ダ。遊んでヤルから喜べヨ?
体を低くし舞うように攻撃ヲ。
「ご笑覧アレ」
‥綺麗ダロ?
反撃に備え【自動処理機能】ヲ。
サイレンサー装備の銃には人外用の弾入れてキマシタ。茶箱は次の機会デネ?

挨拶中に飛びかかってくるコがいた場合は夜来香之符をペタリ。

「……アイツダナ」
 ビルの屋上へと陣取っていたジェイ・スオウ(半天妖・h00301)が、散り散りに獲物を狩ろうと走っていく『ねこ』を見る。
 ネコ。ねこ。ネコカナ。イッパイのネコ。ねこねこねこ……。
 猫の集会というには多すぎる。群れというにも多すぎる。そう、表現するなら、集団だ。
 ジェイは星空のようなねこから溢れていく|それら《集団》を見ながら、やや呑気に――否、余裕と呼ぶべきか――考える。
「疲れたらアレ。吸いたくナルノカ? 人類、スゴイナ」
 ……いわゆる猫吸いという行為のことだろう。猫の体に顔を埋めて匂いを嗅ぐ、猫にとっては「人類の謎行動」のひとつと数えられていそうなそれの事だ。疲労でそうしたくなるかどうかは……個人差がある。
「一匹お持ち帰りしてお友達の解剖士サンノお土産にシテイイ?」
 だめです。怪異解剖士たるもの、誰に渡そうとも困惑の後、『それ』を解剖する事を選ぶだろうし、万一のことがあった場合、どうなることやら。冗談だとしてもけっこうなものである。ほんとに。

 ともあれ、索敵は十分。あとは被害が広がらないよう、四方八方に散っていった怪異の相手をしてやるだけだ。
「|ココ《√EDEN》が、オマエ達の遊び場でも狩り場デモないコトを。ちゃぁんと教えてヤル」
 気配を消し、非常用階段を飛び移りながらビルの下へと降り。猫たちの前へと立ちはだかり鉄扇を向ける。
 立ち止まった猫たちは、何かを感じ取ったのか……毛のあるものは一斉に被毛を逆立て、そうでないものも臨戦態勢を取った。

「コンニチハ、ネコサン」
 どれだけ拒絶の意志を見せられていようとも、挨拶は大切だ。たとえ相手が猫やら怪異やらだとしても。
 だが当然返事は待たない。既に被害が出ている時点で、慈悲はないのだ。
 鉄扇をひらりと振り優雅に舞うと同時、扇いだ風がぐるりと渦を巻く――。

「遊んでヤルから喜べヨ?」
 ならば、その喉笛に喰らいついてやろう。そう我先に走った猫が、風で巻き上げられた。そのまま怪異は吹き飛ばされ、切り刻まれて溶けていく。強烈な風圧に巻き込まれて細切れにされていく怪異ども。
 それでも鳴き声を上げようとした猫の喉は風により切り裂かれ、どろりと傷口からその体が溶けていく。……猫の魂は九つあるという。それ由来の生命力か。数匹がなんとか攻撃を耐え、体勢を立て直すために撤退しようとする。
 それに対し、ジェイは目を細め。ニ歩目、ステップを踏み舞えば――。
「――ご笑覧アレ!」
 旋風が、再び猫たちを襲った。星空の下で舞う姿は麗しく。果敢に挑んできた最後の一匹の攻撃は空振り、ジェイの頭上を過ぎ去って彼は姿を消す。猫が見失った獲物を探すも、突然真正面から弾丸を撃ち込まれ……砂となり、風へ乗って消えていった。

 ……消え行く怪異を冷え切った目で睨み、拳銃の銃口を向けたまま。
「死体が残らないナラ、どれにしろ持ち帰れなかったナ」
 ふん、と冗談めかすように、ジェイは鼻を鳴らした。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

壇・壱郎
あらわれたか……!

まずは挨拶がわりに銃で撃ってみる。
仲間の援護射撃や、攻撃・離脱時の牽制なども引き受ける。

なるほど、回復能力を持つわけか。厄介だが……一撃で仕留めることができるなら、どうだ?

先ほどの「遺品」に触れて、こいつを調達しておいた。
この『裁きの弾丸』なら。
怪異にヒトの道理は通じないだろうが、犠牲者の想いは届けたいんでな。

仲間の攻撃のタイミングなどを見計らい、素早く弾丸を装填。
狙いすました一発を撃ち込む。
猫宮・弥月
アドリブ・連携お任せ

猫は皆かわいいけど……この子達は可愛がられたい、というかたちではないな
あとさっきの黒猫が無事に逃げてるなら何より

ごめんね、俺達は台無しにするために来たんだ
君らに人をあげること、隠すことを許すわけはないからね
作り出した猫の骨董品、猫の柄の香炉を揺らし、猫扇子を揺らして眠りの呪詛の香りを振りまこう

おやすみ、おやすみ
星空のきみ、翼持つきみ、機械のきみ、骨のきみ、笑うきみ、数多のきみ
いつかあった名前を思い出す夢を見よう
君がいることを俺は確認した
その存在を確定した
君は、そこにいる

揺れるなら好都合、香りもいっそう揺れるから
さあ、夢を見よう、幸せな夢を
この星月夜の下で

 群れは数を減らしている。ねこは警戒を強めている。走る、走る、こうなっては仕方がない。台無しだ。台無しだ……猫の道は険しく細い。駆けた先、逃げた先。まだ「彼ら」は待っていた。

「あらわれたか……!」
 挨拶がわりの弾丸ひとつ。辛うじて直撃を避けるも、その弾は確かに怪異の一匹、その腹の肉を抉っていった。

 ――苦痛と怒りを持って耳を水平に伏せ、攻撃の機会を窺う『ねこ』たちへと壇・壱郎(ツノツキ・h01763)はリボルバーの銃口を向け、睨み合う。
「猫は皆かわいいけど……この子達は可愛がられたい、というかたちではないな」
 壱郎の横に立ち、『ねこ』としての姿形すらも怪しい彼らとその態度を見て険しい顔をする猫宮・弥月(骨董品屋「猫ちぐら」店主・h01187)。

 睨み合うねこの集団と√能力者。じわりじわりと回復しようとする傷口を見て、壱郎は口を真一文字に結ぶ。ただの銃弾一発では足りない――あちらには回復手段がある。周囲には民家。……このまま逃せば、被害は甚大なものになるだろう。
 守ると、誓ったのだ。そうして『預かった』。ゆえに――目指すべきは一匹残らずの殲滅だ。

 恨み言を言うように喉を震わせるねこ――怪異に対して、ある種、慈愛を持った眼差しを向けながら、弥月は口を開く。
「ごめんね、俺達は台無しにするために来たんだ」
 君らに人をあげること、隠すことを、許すわけはないからね。
 手にするは吊り下げ式の香炉。見事な猫の透かし彫りが施されたそれは『不思議道具』のひとつ。漂う香りは眠りに誘う呪詛。のろいとまじないは紙一重――猫柄の扇子で仰がれ、香りが周囲に広がっていく。
 ねこたちの動きが鈍る。だが彼らは、その重くなるからだを休めるわけにはいかなかった。
 そうでなければ、彼ら、ねこたちは、己の|存在理由《レゾンデートル》を失ってしまうとわかっていたから。

 視界が揺れる。高く威嚇する声が地を揺らし、電柱や街頭を倒して二人を押し潰そうとするが、それをいち早く察知した壱郎が弥月を一瞥する。倒れるブロック塀や標識を回避する間も、香りは周囲に満ちたままだ。
 ゆっくりと体を伏せ、まるで眠るかのように砂粒になり消える怪異が、一匹、二匹。

 けれどまだ、『彼』は立っている。ほしぞらの身体をきらきらと、瞬きをしない目を見開いて。

 ……壱郎が握るはネクタイピン――先に消えた犠牲者の遺品。贈られた日の思い出。あまりにも幸福な記憶。平和な日常、なんてことのない会話。その日が訪れるまで、「そう」だった。
 それを踏みにじったのは、間違いなく目の前の怪異と、彼らを指揮する者の所業だ。
 ――頼んだよ。
 唐突な『消失』ゆえか。受け取った言葉は、ひとつ。
 だがその悲しみ、怒り、想いが弾丸となる。
 ――装填。銃口を再度、向ける。飛びかかってくる「それ」に対して、『|裁きの弾丸《ジャッジメント・バレット》』は確かに、『答えた』。

 おやすみ、おやすみ。
 星空のきみ、翼持つきみ。機械のきみ、骨のきみ。
 笑うきみ、数多の――可能性と、存在理由を求めた「猫」たちよ。

 裁きの弾丸と、眠りに誘う香の回答。
 |彼ら《猫たち》はそこに居た。

 弾丸に貫かれた体が、ほしぞらが、地に堕ちる。
 もう、眠りについて良い。いつかあった名前を思い出す、幸福な夢を。この星月夜の下で。

 遠くで。まるで弔いをするかのように、猫の甘い鳴き声が、住宅街にこだました。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『神隠し』


POW 攫う『かみのて』
【虚空より生える無数の『かみのて』】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
SPD 増殖する『かみのて』
自身の【かみのて】がA、【かみのうで】がB、【かみのかいな】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
WIZ 荒ぶる『かみのて』
【虚空より生える『かみのて』】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【掴む腕】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

 いなくなってしまった。
 だれも、だあれも、いなくなった。
 ねこちゃん。ひとびと。ほしいものをつかんだら、「どこか」にいってしまう。

 また、ひとりになってしまった。

 天を仰ぐ。星が降っている。掴もうと伸ばした手は届かない。『かみのて』でも届かない。
「ああ」
 小さな声も、届かない。

 それはいつのまにか、「そこにいた」。
 ひしゃげて傾いたブランコ、そこに平然と腰掛けるは、場違いな『巫女』のすがたである。

 彼女は天を見るのをやめて。
 手招きを、した。
紗影・咲乃
神かくしって子供がいなくなるってやつなの?

んー、見た感じいい事ではなさそう?
着いていったらダメそうなの

ねこちゃん?ねこちゃんならここにいるのよ?
ねこちゃんおいでなの(ねこのぬいぐるみを召喚し)
ほらねこちゃんなのよ?

でも、貴方には触らせてあげないの!
ねこちゃんあの巫女の姿をしたやつを撃っちゃってなのよ!

こんな公園に巫女なんているわけないのよ?
場違いにもほどがあるの
だからさっさと還りなさい!なの

神だか神隠しだかなんだか知らないけどあなたの思い通りには絶対にさせないのよ
白皇・奏
神隠し。
本当はそこにいたはずなのに。
いなくなってもその周辺に必ずいるはずなのに。 
いない。いくら探してもいない。
√EDENでも昔から不可解な失踪事件は度々起きて、ついぞ見つからない、神が悪戯に隠した「神隠し」なんてよく言われたものらしいけど。

正体はお前だっていうんだな……。
お前は神なんかじゃない。隠した人をどこにやったんだ? 

人々の忘れる力を利用する悪意ある怪異に裁きを。

【運命の女が魅せる災厄】
魔性の瞳で神隠しを見る。
それだけでいい。
神隠しを中心とするおれを含めたすべての存在が、狂いゆく運命に抗えなくなる。
神隠し、破滅的な運命をたどる君は、いったいどんな運命が待ち受けているんだろうな?

「神かくしって、子供がいなくなるってやつなの?」
 |是《そうだ》。本当はそこにいた。いなくなっても探せば見つかるはずだった。
 いない。いくら探しても、どこにもいない。
 |この√《√EDEN》でも不可解な失踪事件は度々起きて、ついぞ見つからない。
 神が悪戯に子を隠す。土地神や天狗、狐やら。『神隠し』なんてよく言われたが、実情そうではない。どの√にも暗い過去がある。単なる失踪、口減らしに人攫い。そして殺害され、発見されなかった。
 だが今。本物の『神隠し』、それを引き起こしている主が、そこにいる。

「正体はお前だっていうんだな……」
 白皇・奏(運命は狂いゆく・h00125)の問いに、巫女はこてんと首を傾げた。何を言われているのか理解しているのか? 無垢に笑みを浮かべて、差し出した手を揺らすばかり。
「……着いていったらダメそうなの」
 呟く紗影・咲乃(氷の華・h00158)。手招きは止まらない、こちらへおいでと招いて、招いて。愛らしい微笑みはまるで神の様相だが、彼女は、怪異だ。

「お前は神なんかじゃない。隠した人をどこにやったんだ?」
 奏への返答は、ない。ぼんやりとした様子で俯いて、ブランコを揺らしている。
「神だか神隠しだかなんだか知らないけど、あなたの思い通りには絶対にさせないのよ」
 咲乃の声にも、反応は薄い。だが――俯いた先に、「それら」を見た。見つけた。
 いなくなったと思っていたものは、物言わぬ姿になり、自らの足元に居た。

「ねこちゃん……」
 感情の薄い声と共に、虚空から『かみのて』が現れる。己がそばに置いていた、「そこにいて、どこにもいない」ねこたちの、地面に黒くこびりついた残滓。『かみのて』はそれをすくいあげようしたが……さらさらと風に流され、消えていってしまった。

「――ねこちゃん? ねこちゃんならここにいるのよ? ……おいでなの!」
 呼びかけに応えてぽむりと現れたねこのぬいぐるみを抱き、警戒を強める咲乃。巫女の気を引くための作戦だ。
 それに反応したのか、巫女は顔を上げて咲乃を見た。そうして、やや目を開いて。うれしそうに、こう呟く。
「ねこちゃん」
 巫女が手を伸ばす、当然届かない。それでも『かみのて』は届く。――巫女たる彼女の求める手よりも激しく素早く、それがどうしても必要だというかのように、無数の手が咲乃へ襲いかかる。それに対して彼女はぎゅうっとねこのぬいぐるみを抱きしめて。
「貴方には触らせてあげないの! ――ねこちゃん、撃っちゃってなの!」
 咲乃が命じると同時、ぬいぐるみの口から放たれたのは眩い光線だ。威力は微弱ながらも手はまるで静電気を浴びた指のようにびくりと手を引き、ぎゅうと拳を握る。
 その間にも浴びせられるビーム――『間違いなく、拒絶された』。巫女はそう考えたようで、眉根を寄せて悲しそうに目を伏せた。

 すると宙から唐突、腕が増えた。増える、増える、増えていく。
 ほしい、ほしい、ほしい。だって、ねこちゃん。
 願えば願うほど、まるで枝分かれをするように腕から腕が生え樹木のような異形へと化していく。

「下がって」
 咲乃へと奏が声をかけた。奏が何をしようとしているのか察した咲乃は、がおーっと口を開けてビームを放ち続けるぬいぐるみを抱え、前進する奏から距離を取る。

 奏の瞳がきらり、輝く。――魔性の瞳。運命を狂わせるそれが巫女を見た。
 瞬間。『ブランコの鎖がギチリと嫌な音を立てて千切れ』、巫女が膝を付く。それと同時増えた腕の動きが鈍り、がくりと地に伏した。巫女を守ろうと彼女の体を覆うもの、自らの重量に負けて折れるもの、それはさながら倒木だ。奏が導いた破滅的な運命、その犠牲となった腕がふっと消えていく。

「……こんな公園に、巫女なんているわけないのよ?」
 ビームを放っていたぬいぐるみが「ぱくっ」と可愛らしい音を立てて口を閉じる。咲乃と奏の強い視線を浴びながらも、巫女は土で汚れた袴を気にしながら、ゆっくりと立ち上がった。
 ……どうやら、『巫女そのもの』には、『戦闘能力はない』――。

「場違いにもほどがあるの。だからさっさと還りなさい! なの」
 咲乃が放った言葉に、巫女が答える。
「どこへ」
 上擦る声。
「どこへ、還ればいい?」
 √汎神解剖機関から訪った、故郷があるはずの『それ』が逆に訊ねてくる。
 ああ、おまえすらも、それをわすれてしまったのか?
 人々の『忘れる力』を利用したおまえが、それを?

「……教えてあげるよ」
 奏が、神隠しを強く睨む。
「狂いゆく運命に抗えず、ここで消えるんだ」
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ジェイ・スオウ
■オンナのコ?
ネコサンだけじゃないでスヨネ。
とても違和感のある出で立ちダナ。手招きしてもらったし次はお嬢さんと踊ろうカナ。

カワイーケド、手スゴナイ?

■戦闘
一対一なら、刀をと銃で応戦したいナ。デモ。
まずはやはり挨拶から。
コンニチハ。星がとても綺麗だとオモワナイ?
お相手の一挙一動への警戒は解かない。
刀をいつでも抜けるヨウニ。

ジャ、そんな素敵な星の1つになって貰おうカナ。

刀で攻撃、後方に飛び距離を取り 手 を警戒
√能力【自動処理機能】発動
相手からの攻撃は銃にまかセル。
神隠しがお得意ナンダッテ?
オレは|神?的なの《バケモノ》を隠れて殺すのが得意ナンダヨ。霧に隠れて相手に近づき刀を振り下ろす。

サヨナラ。

「(まァ。ネコサンだけじゃないでスヨネ)」
 公園に立つ巫女。それだけで、あまりにも違和感のある光景だ。やや薄汚れた様相ではあるが、彼女はまだ立っている。余裕がどうこうではなく、単純に、自らの状況を理解していないのかもしれない。
 それが……まだ、手招きをしている。おいで、おいでと。

「折角。手招きしてもらったし、次はお嬢さんと踊ろうカナ」
 そんな彼女とは異なって、こちらは余裕綽々、といった様子だ。だがいつでも刀を抜けるように、手を添えたまま。その一挙一動を見逃さぬよう。余裕はあれど油断はない。ジェイ・スオウ(半天妖・h00301)はその優雅な所作を崩すことなく、当然――挨拶から入った。

「コンニチハ。星がとても綺麗だとオモワナイ?」
 深夜だというのに「こんにちは」とは、どこかの誰かのようではないか。
 こてりと首を天へ向けた巫女。こんなにも美しい夜だ。星空は遍く広がり、星座を見つめれば祈るにふさわしい流星も、きらり。
「きれい」
 巫女が、こたえた。虚空から溢れてくる『かみのて』は天へと伸ばされる。高く高く、それでも届かない事を察したか……視線を腕を降ろし、そして、ジェイを見る。

「ジャ、そんな素敵な星の1つになって貰おうカナ」
 ――天を見ていた。その間に音もなく巫女へと距離を詰め、降ろされた腕を刀が撫で切る。血飛沫が散り、巫女へと降りかかるも彼女は動じない。
「カワイーケド、手スゴナイ?」
 冗談かそれとも真面目に言っているのか。
 荒ぶる『かみのて』がジェイを掴み上げようとする。確かに当たる、握りつぶせる距離だったはずだが、その腕はあっけなく空振った。それと同時、その腕を弾丸が撃ち抜く。
「オット、失礼!」
 |自動処理機能《オートマチックキル》。霧を纏い隠れ、既に彼は腕の届かぬ場所へと逃れていた。

 巫女が周囲を見回す。気配を掴めない。そこにいるはずなのに。
「ひとりに」
 か細い声で言葉を紡ごうとも、ジェイは容赦などしない。死角を走り、巫女へと迫る。
「しないで」
 そうして、刀を振り下ろす。

「神隠しがお得意ナンダッテ?」
 孤独から逃れることを願っても、かくしてしまう。『かみのて』のみが己の、唯一の友、あるいは信仰の対象か。
 得られない「おともだち」を探す。彼女が『神隠し』たる所以――。

「オレは|神?的なの《バケモノ》を隠れて殺すのが得意ナンダヨ」
 ならばその『かみのて』、絶ち切ってみせようではないか。

「サヨナラ」
 両断され、ずしりと地に落ちる『かみのて』を見て、巫女が目を見開いた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

東大和・斬花
私に来いと、いいだろう。
ただし覚悟しろ、我が奥義「一刀必殺」を受ける覚悟をだ。
あえて納刀し、居合の姿勢を取る。
私が鎧をまとわず制服のみなのは、この奥義の為に。
そして攫う『かみの手』による2回攻撃を一撃を受け、二撃を鞘で弾き、正面からカウンターの居合で両断する。
あえて名乗り、防御を捨て、相手の攻撃を弾き、生じた隙を正面から断つ、これが一刀必殺なり。

 少女は微笑みを崩さない。もはや危機的な状況に至っている、それを理解していない。瞼をやや伏せたうつくしい笑みで、憂いのある表情で、そこに『神隠し』は立っている。

「私に来いと、いいだろう――」
 東大和・斬花(一刀必殺・h05005)が納刀した大太刀、その柄に手をかける。その言葉を聞き、嬉しそうに笑みを浮かべる巫女。
 ……『かみのて』もまた、どこからともなく数を増やし手招きを始める。おいで、おいで。おまえの年頃ならばきっと、この娘と仲良くできるだろう――。
 だが彼女は当然、迫るその手を取るつもりなどない。

「――ただし覚悟しろ。我が奥義を受ける覚悟をだ」
 睨みつける目に灯る気迫。宣言。自らの胸元、制服のスカーフを引き、抜き去り。それに応じてか目にも留まらぬ速度で伸ばされる『かみのて』、彼女はその拳を左腕で弾き受けた。
 みしりと左肩から嫌な音が響く。鞘を回し二度目の殴打を大太刀の鞘で受ける。痛む。気になりはしない。たとえそれが端から見て、どれだけの衝撃を受けたのか理解できるほどの傷だとしてもだ。
「ッ……!!」
 真正面から受ければ当然、そのままの衝撃が身体に降りかかる。√能力の発動条件に関わっているとしても、軽減手段を持たない彼女ではやや不利と言わざるを得ない行動だ。
 だが、その程度で止まるものか。止まってなるものか。
 断たねばならぬものが、眼の前にいる。すべては、この奥義の為に――!

「――東大和・斬花。……参る!!」
 居合の姿勢を取り、そして彼女は、刃を抜いた。
 一刀必殺。
 竜すら屠る一撃が、咄嗟に巫女を守ろうと動いた『かみのて』ごと、巫女の体へと一撃を叩き込んだ。

 巫女よ、『かみのて』よ、彼女の名を覚えておくといい。
 名も知らぬものをさらってきたおまえの記憶に、この名を刻みつけるといい。
🔵​🔵​🔴​ 成功

クラウス・イーザリー
(巫女……じゃないな。普通の人間には見えない)
少し悲しそうに見えるのは気になるけど、人々を守るためなら躊躇っている暇は無い

あの手に掴まれるのは避けたいから距離を取って戦闘
決戦気象兵器『レイン』を起動して手を貫くように攻撃
実体は……あるかな
もし実体が無くて攻撃が通じないなら、彼女を狙わないといけないだろうか
……生物を攻撃するのは、まだ慣れないけど
必要ならやるしか無さそうだ

レインやレーザー射撃で手を攻撃し続けて、効果が薄いなら覚悟を決めて巫女に攻撃
物陰に隠れながらダッシュで接近し、死角に回り込んで暗殺を狙う

彼女が望んだ力なのかそうじゃないのかわからないけど
もう、止めるんだ

※アドリブ、連携歓迎です
壇・壱郎
ネクタイの結び目をぎゅっと締め直し、戦いの構えをとる。
仲間と敵の戦いを観察し、敵の動きを確認する。

「増殖する手が厄介だな。こっちの手は二本しかないわけだからな。けどーー多いってだけが能じゃねえんだ」

『熱血刑事式格闘術』の急加速で敵の懐に飛び込み、増殖する『かみのて』に自身を狙わせる。

素早くジャケットを脱いで、闘牛の要領でいなしたりしつつ、手のひとつを誘いこみ、
ジャケットで包み、抑え込んだうえで、布越しに拳を叩きこむ。

ジャケットを着直しながら、「汚れちまった。クリーニング代、払えよな!」

 巫女の誘う手は止まらない。ふらつきながら、傷を負いながら、時折『かみのて』に支えられながら。
 欲しいのだ。すべてが、すべてのひとが。憎いわけではない。まして『巫女』そのものが悪意を持っているわけではない。だからこそ、たちがわるい。
 普通の人間ではない。本来の『巫女』とも違う。躊躇っている暇は無いが、彼女は怪異としては、どうにも人間らしさが強調されて見える。クラウス・イーザリー(人間(√ウォーゾーン)の学徒動員兵・h05015)はその様相にやや狼狽えていた。対人間。正確には、それによく似た怪異だが――生物。

 どう出たものか。考えるクラウスと壇・壱郎(ツノツキ・h01763)はネクタイの結び目を締め直し、『巫女』――そして、『かみのて』と対峙する。
 たとえ拒絶されようとも、彼女たちの手は、招くことを止めない。まともに攻撃を受ければどうなるか、その証明は既に済んでいる。

「一度下がろう!」
「了解!」
 クラウスが『神隠し』へとレインを降らせ、二人はその範囲外へと退き様子を見る。雨を受け消えては増え、『かみのて』はまるで雨傘を作るかのように巫女を守り続ける。……被弾している。まさしく雨粒が跳ねるかのようにレーザーが『かみのて』の表皮を跳ねていく。すなわち効果がある、実体があるということだ。
「(生物を攻撃するのは、まだ慣れないけど)」
 ……彼女の『かみのて』こそが元凶。そしてそれの依代たる彼女を排除しなければ――この悲劇は、終わらない。戦わなければならない。そう察したクラウスは細めた視線で巫女を見る。
「あの増殖する手が厄介だな……」
 こちらの手は二本しかないわけだ。何本もの腕を持つ妖怪や災厄は除外して。
 しかし多いってだけが能ではない。相手がそれを使いこなせているかといえば否だ。『かみのて』はほぼ常に、巫女を守護するように動いているのだから。

 ――レインが、止んだ。途端、『かみのて』が次の動きを見せる。その腕が掴んだのは人でも巫女でもなく、電柱。無理矢理に引き抜き、折り、電線を引きちぎった。――ぶつん。周囲から光が消えた。
 得物を得たそれが、電柱を真上へと持ち上げ振りかぶる。

 二人は視線を合わせ、彼らに振り下ろされた電柱を各々左右へと跳躍し避ける。だが『かみのて』は地面へ強く叩きつけたそれを真横へ――壱郎と流すように振った。

「まったく、乱暴にもほどがあるな!」
 巨大な得物ゆえか、動きはやや緩慢だ。電柱へと飛び乗り、その上を走り巫女へと迫る壱郎。あまりの速度に、周囲に現れた手が彼を握りつぶそうとしては空振っていく。
 走りながらジャケットを脱いだ壱郎は、食い止めようと正面へ増えた手をジャケットで身を隠すようにして往なし、さらに巫女へと迫る。

 巫女の側に控えていた『かみのて』、それが彼を真正面から殴打しようと迫る。その拳へジャケットを半ば投げるように翻し、それを遮り――布越しに、拳を叩き込んだ。激突する拳と拳。
 押し切ったのは、壱郎の腕だった。
 文字通り殴り飛ばされる『かみのて』からジャケットを掴み、フェンスへ打ち付けられ消える手から引き剥がす。
 怪異の血液が付着したそれに袖を通し、ぴしりと整え。
「汚れちまった。クリーニング代、払えよな!」
 まるで挑発するかのように言ってのける壱郎を追おうとする『かみのて』――。

 すなわち。彼女を護るもの。それらが一時的に排除された。

 クラウスが待っていたのは、その一瞬。『かみのて』達が壱郎の相手に夢中になっている隙に、巫女の背後へと迫っていた彼が、懐から取り出したるは。
「――ァ、あ……!」
 ……背の肉を、肋骨を抜けて。黒刃のナイフが、巫女を貫く。再度虚空から現れた『かみのて』が巫女を傷つけたクラウスを掴もうとするが、彼の姿はもうそこにはない。

 十分な距離を取り、膝を付く巫女を支える手を見る二人。

 望んだ力なのだろうか。それとも、得てしまった力なのか。どちらにしろ。
「もう、止めるんだ」
 止めていいんだ。言い聞かせるように巫女へと呼びかける。だが彼女は……『かみのて』に、無理矢理に抱き起こされ。
 その腕を取られ、手招きを、『させられた』。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ベティ・スチュアート
【アドリブ大歓迎です!】

おそら、綺麗よね。
あなたも見ていたのかしら?

ああ、返事はしなくていいわよ。

『名もなきバブルカー』のエンジンを限界駆動、悲鳴のようなエンジン音を響かせながら、後輪を空転させて轢殺力を溜める。車体に硬化魔法をかけ、そうしてまた加速魔法をかける。さらに、硬化魔法を重ねがけ、さらに、加速魔法を重ねがけ。【全力魔法】の名の通り、全力で。
相手を倒すのに十分な轢殺力を溜められたら、私と『名もなきバブルカー』は超威力の砲弾として発射されるでしょう。

私はこの一発にかける、一発で仕留めてみせる。
この車両と、私の運転技術を信じるわ

「おそら、綺麗よね。……あなたも見ていたのかしら?」
 開け放ったサイドウィンドウから顔を出し、肘をついて巫女を眺めるベティ・スチュアート(ねずみのたびだち・h04783)。
 派手に倒れた電柱によって引き起こされた停電。星の輝きがより映えるようになった空が、『名もなきバブルカー』のフロントガラスに反射している。

「ああ、返事はしなくていいわよ」
 だって、私これから、あなたを仕留めるのだもの。
 言外にそんな意図を匂わせて、ベティは空を見る巫女を視線に捉えたまま、愛車の『チューンアップ』を始める。

 限界駆動。ただでさえ凶悪な性能を持つエンジンが悲鳴を上げる。後輪が空転する。地面に接した瞬間、どうなるかはもはや言うまでもない。
 その衝撃に耐えきるため車体へとかけられる硬化魔法。加速魔法。硬化――全力で重ねられていく。愛車への信頼を底上げするための魔法の数々。
 爆音にようやく気づいたか、それとも気にするようなことでもないと思っていたのか――単純に、意識が朦朧としていたのか。巫女とベティの視線が、フロントガラス越しにようやく合った。憂いを帯びたその目に怯むことも、容赦しようかと考えることも、彼女にはない。

 この一発にかける。一発で仕留めてみせる。
 ――空転していた後輪が、接地した。

 それはもはや巨大なる砲弾だ。
 轢殺と呼ぶに相応しい。
 増える腕が何だ? 守ろうとするそれが何だ? 肉であれば轢き潰せる。
 どれだけ増えて守ろうとも、その数にも、耐久にも、限界があるのだから。

 正面衝突の結果。『かみのて』と巫女は諸共吹っ飛び、遠くの地面へと、墜ちた。
 派手なブレーキ痕を残しながらスライドして停車するバブルカー。巫女と『かみのて』の様子を窺えば、遠くでうぞり、生気のない手が動くのが見えた。

 なんとか……彼女は、立った。否。もう、限界を迎えている。
 彼女の手は動かない。辛うじて呼吸している、それだけ。
 そんな虫の息と言って差し支えない巫女を『かみのて』が手を引き、支え、無理矢理に立たせているに過ぎない。

「まったく――しつこいわねっ! なんなら私が『送って』いってあげていいのよ!」
 おまえが『彼ら』にそうしたように、だ。
 とはいえ彼女の|じゃじゃ馬《愛車》では、この巫女はすっかり酔ってしまいそうで。『かみのて』も一緒となれば、それはもう、車内はぎっちぎちになるだろうけれど。
 そのくらいはしてやってもいいかと考えてしまうほど、今の|巫女《彼女》は、ただの弱々しい少女のように見えた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

猫宮・弥月
いい夜だね
こんなに星が綺麗で、手に届きそうで、降ってくる
でも届かない、少し切ない夜

寂しいのかな
ひとりきりは、うん、寂しいよね
でも一緒にはいけないな
俺もやることがあるから
君はまた、眠るといい
ゆっくりと、楽しい夢を見ながらさ
一人ではなく、きっと星も掴めて寂しくない夢を見ようね

作り出すのは先程と同じ、猫が眠る姿を透かした香炉
ゆっくり眠れるよう、|おまじない《お呪い》を贈ろう
きっと猫も一緒に眠ってくれるよ
√能力で強めた眠りの呪詛をゆっくり送り出そう
投げられた物は耐え、掴む腕は避けない
その手を握り返せたら、君が満ち足りたらいいのにね

おやすみ、名も知らぬ君
どうか良い夜を
いい夢を見れるよう、祈っているよ

「いい夜だね」
 声をかけるのは、『かみのて』に対してではない。まだ意識があるのか、顔を上げる巫女に対してだ。

「こんなに星が綺麗で、手に届きそうで、降ってくる」
 星月夜。流星が流れていくのを見ることが出来るのは、残り、ごく僅かな時間だろうけれど。
 猫宮・弥月(骨董品屋「猫ちぐら」店主・h01187)が香炉を手に、彼女の前へ立つ。
 ……『かみのて』は、まだ悪あがきを続けている。|拉《ひしゃ》げたブランコのポールを引き抜いて乱雑に弥月へと投げつけていく。
 届かない、当たらない。星に手を伸ばすことと同じように。手当たり次第に投げつけて、ようやく彼に当たったのはそこらに落ちていた大きめの石ころひとつだった。

「寂しいのかな」
 自身を支えていた腕が必死になっているからか、巫女はその身体を横たえて、じっと弥月を見ている。淡い色の瞳がゆっくりと、瞬きをする。
「ひとりきりは、うん、寂しいよね」
 喉から振り絞る言葉は細く、ひゅう、と音を鳴らすだけに留まった。それでも、肯定だということは明らかだった。

「でも一緒にはいけないな。俺も、やることがあるから」
 寂しそうに眉根を寄せる巫女に、彼はただ優しく、静かに語りかける。
 迫る『かみのて』。だがそれが、弥月の目前でぴたりと止まった。

 優しい、優しい、|おまじない《お呪い》。眠りの呪詛は確と、この空間に満ちた。『かみのて』、弥月がその指にそっと触れれば、それはぴくりと「少女」のように手を引いて……消えていく。

 おやすみ、名も知らぬ君。
「どうか良い夜を」
 どうか、どうか。いい夢を見られるよう、祈っているよ。

 巫女は。『かみのて』に支えられながら天を仰ぎ、折れた両手を伸ばし――まるで、空から落ちてきた流星を受け止めるように。
 虚空を、「ねこ」を抱きしめるように腕で包むと、そのまま地へ崩れ。
 香炉に描かれたねこのように身体を丸めて、優しい眠りへと、おちていった。

 楽しい夢をみる。ひとりではない。落ちてくる星がねこになって、そばで鳴いて、すり寄ってくれる。
 今は。だれも、いらない。かえるばしょなんて、なくていい。
 ただ、このやさしいゆめを、みていたい。
 それだけ。

 ――猫の鳴く声がする。
 視線を向ければ遠くに座る黒猫が、金色の|星《眼》を、ぱちりと瞬かせた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

挿絵申請あり!

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