シナリオ

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|Night Watch《夜回り》

#√EDEN #√汎神解剖機関

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●ほしのかがやきがみえる。
 深夜二時半。
 夜警。建物の周囲を見回る警備員は、眠たそうにあくびをしながら、懐中電灯で足元や植え込みを照らしながら歩いている。
 なんと平和な巡回か。今宵も全く問題なく……。
 中庭の茂みから猫が飛び出してきて少し驚いたり。
 珍しく通行人の若者達が居たな、という程度のことしか起きず、いつも通りの巡回を終えようとしていた。

 そろそろ交代の時間だ。次の奴を起こして、仕事を引き継いで貰わなければならない。
 彼はもうひとつあくびをして、建物へと戻ろうと裏口へと向かった。

 √EDENは、表向きには「平和」な√だ。たとえ何かしらの超常現象、不穏な気配、怪しげな影、怪異――それらを見かけても、人々は殆ど違和感を持つことはなく。
 危機的状況、そこから逃げ延びてしまえば、「あれはゆめだったのだ」とばかりに忘れて、いつも通りの日常に戻っていく。戻れてしまう。時に、「そうならなかった」者も存在するが。

 他の√の者たちからすれば、彼らのその特質はやや異様。忘れる能力が強いということは、……これから『自分たち』の起こすことも察されにくいというもの。

 だからこそ。彼らは影で、動く。
 虎視眈々と。夜の闇から、ひとをみる。
 おまえたちの手を、足を、そして胸を、顔を見て、考えるのだ。

『これは、贄として、相応しいか』
『これは、いなくなっても、良い存在か』――と。

 ――結局『彼』は、帰ることがなかった。
 裏口に差し掛かる直前の角。誰もいなくなったその場に残るは、小さな血痕と懐中電灯。……その明かりが、風で揺れる薄暗い茂みを、暫くの間、照らし続けていた。

●こんばんは。
「よう、『こんばんは』。良い夜だな」
 ボロアパートの前に大柄な男。背には巨大な翼、頭上に赤く輝くのは天輪か。セレスティアルとは異なる様相の姿。
 人間災厄「歓喜の歌」。『人類を守護するため存在する』等とのたまう災厄、六宮・フェリクス(An die Freude・h00270)が、煙草の煙を吐きながら軽く手を振り雑に挨拶をする。

「仕事だぜ、ハニーども。ゾディアック・サインだ。――√EDENに、侵入者サマだ」
 シンプルな言葉ではあるが、意図は伝わることだろう。他の√からの侵攻を伝える言葉。

「人さらい。一人を狙い撃ちにして攫っていく。だが……そうなりゃ、こっちも手の打ちよう様々! だよな? アッハハ!」
 笑う男、だが細められた目、睫毛の向こうの眼には一切、油断無く。
 煙草を咥え、スマートフォンを操作し画面上に地図を表示する。場所は√EDEN、とあるビルの周辺だ。
 公園と隣接しており、賑やかな街の明かりは遠い……平和そうな場所ではあるが、だからこそ『選ばれた』のだろう。

「カンタンなお仕事だ。人類を避難させて、『来る』のを待って、そんで全力でぶん殴る! これ以上なくシンプルだろ?」
 強く拳を握りしめて笑う男。人類としてはかなり高い身長と良い体格からそのような言葉が飛び出せば、身構える者も居るかもしれないが、こいつは星詠みだ。安心していただきたい。

「で、重要ポイント。奴らが動くまでに、ちょい時間がある。だから多少の暇つぶしは出来るんじゃねーかな」
 そう言いながら彼が指差すのは天、星空。

「幸いというか、なんつーか。月の光がちょい弱い時期でさ。今、星がクッソ見やすい。あ、星詠みにゃ全く関係も問題もなくな、ただ星が綺麗なんだわ」
 見上げればきっと、普段よりも星の光が強く美しく輝いている頃だろう。星詠み曰く、「今の時期、ちょうどしぶんぎ座流星群――北斗七星のやや下あたりに流星が見られる」とのことである。

「オレちゃんは残念な事に向かえねぇけど。夜歩きすんのは楽しいぜ? オレちゃんが『職』にしたいくらいにな。……ま、新年だ。空でも見ながらぼんやりしてさ、『待ってやる』といーんじゃないか」
 スマートフォンをしまって、残念そうに言いながら天を仰ぐ男。夜が好きだと自称する彼にとっては、この日近辺の空はあまりにも魅力的なものらしい。

 ……さて。迅速に迎撃の準備を取るか、それとも、安らぎの時間をより多く取るか。どうするかは、君たち次第だ。
これまでのお話

第2章 集団戦 『シュレディンガーのねこ』


POW 無限の猫爪
敵に攻撃されてから3秒以内に【猫の爪】による反撃を命中させると、反撃ダメージを与えたうえで、敵から先程受けたダメージ等の効果を全回復する。
SPD 猫は死ぬのか死なぬのか
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【生命力】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
WIZ シュレディンガーの鳴き声
【長い猫の鳴き声】を放ち、半径レベルm内の指定した全対象にのみ、最大で震度7相当の震動を与え続ける(生物、非生物問わず/震度は対象ごとに変更可能)。
√汎神解剖機関 普通11 🔵​🔵​🔵​

 まったくもって台無しだ。台無しだ。台無しだ。
 台無しだ。
 ――ひとこと発すれば連鎖する声、否、鳴き声。

 それを聞き取ったか。片耳をほんのちょっぴり切られた黒猫が、その声に毛を逆立て――そして、勢い良く駆けて逃走する。
 そんな猫に興味はないとばかりに、ゆったりと。
 とてとて、がしゃがしゃ、カシカシ、ぽふぽふ。
 様々な足音と共に、ビルの周辺へ、どこからともなく集まって。行列を、作っていく。
 『ほしぞら』のような、形をとらえようとすればぼやけてしまう、『ねこ』が先頭を歩いている。

 台無しだ。
 猫の行く先、通り道。獣の道とは細いもの。人の道とはさらにか細く。迷い込めばお前も角で。

 われわれはねこである。なまえは、もうない。
ベティ・スチュアート
【アドリブ大歓迎です!】

ねこの集会かしら。
それにしては皆、色々な仮装をしていて素敵ね。

あっ、あれが今回の敵?
そうとわかれば戦わないといけないのね、ネコチャン……。

爆破魔法で【全力魔法】を放ちつつ、『名もなきバブルカー』で走り回って敵集団を遊撃。
いい感じに運転して、いい感じに攻撃を続けるわ。

きっと、この子たちも……いいえ、考えるのはやめ。
問題は今、この子たちが私たちに攻撃してきていること、それだけよ。それだけなのよ。

 現れた猫の行列はずらりずらりと歩みを進め、先頭の猫が止まれば後続する猫たちもその後ろでぴたりと止まる。ねこの集会。ねこの仮装。端から見れば、確かに素敵な光景かもしれない。
「あれが今回の敵?」
 ありとあらゆる姿をしたねこたちの目はほしぞらのごとく。『名もなきバブルカー』から様子を見るベティ・スチュアート(ねずみのたびだち・h04783)を見つめている。ねこねこ。どんな姿でもかわいらしい、ねこ。
 瞬きで輝く星の眼。その視線が、獲物を狩るものである事を除けば――肯定できたかもしれない。

「戦わないといけないのね……ネコチャン……」
 そうなんですよね……。
 と言っている間にも。猫の集団から一匹が飛び出し、それに続くようにして爪や鋸に改造された手を使い、猫たちがベティへと襲いかかってくる。
「でも攻撃してくるなら話は別ーッッ!」
 アクセルを強く踏み、ドのつく最高なエンジン音を響かせながら猫たちの攻撃を素早く避け、戦いやすいようにビル前の道路へと誘導する。うーんドライビングテクニック! |せっかちベティと、おんぼろ車《プラスチック・ベイビー》によるとびきりの出力は本来歩道であるはずの道も茂みもなんのその!

「(きっと、この子たちも……)」
 車道へと向かう、ほんの少しの時間で、彼女は考えた。きっとあの子たちも、一度、消えているのだろう。そしてあの「猫の行列」に加わったのだろう。だが。

「……考えるのは、やめ!」
 問題は今、この一瞬!
 スライドしながら急停車、そして突っ込んでくる猫たちを爆破魔法でいくらかふっ飛ばし、さらに踏み込むことで敵を薙ぎ払う!
 ベティは数え切れぬほど集まった|猫の集団《シュレディンガーのねこ》から一派を引き剥がし掻き消してみせた。まさしく大立ち回り――戦いの火蓋を切るに相応しい、とびきりのエンジン音だ!
🔵​🔵​🔵​ 大成功