シナリオ

星追い、アポロン・ビブリオテーケー

#√ウォーゾーン #戦闘機械都市『クリーサ8』

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 #√ウォーゾーン
 #戦闘機械都市『クリーサ8』

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●戦闘機械都市『クリーサ8』
 √ウォーゾーンにおいて、大地は戦闘機械都市に改造されている。
 大半がそうなのだ。
 空を覆い重力すら制御して見せる|『天蓋大聖堂』《カテドラル》に包まれた地域もあるが、その全てに生命攻撃機能を有し、大規模破壊を受けてもある程度は自動修復さえするのだ。
 こうした戦闘機械都市を人類は漸くの思いで奪還し、生命攻撃機能を無効化し得ることができた。
 そのうちの一つ、戦闘機械都市『クリーサ8』は中心部に清浄なる水源たる泉を湛えていた。生命が生きるためには水が必要だ。
 無論、水質は安全性が保証されたものであり、それがどれだけ人類にとって稀有なものであるのかは言うまでもない。
 だが、食料は常に不足しているのは√ウォーゾーンの例に漏れない。
 流通がままならぬのは常。
 個人の運び屋や武装傭兵に依存している現状は未だ覆すことができない。
 通信網も分断され、他の機械都市の様子も判然としない。

「けれど、それでも生きている」
 人類は、この奪い返した戦闘機械都市で生きている。
 辛くとも、細々とでも、生きているのだ。
 ここから。そう、ここから人類は簒奪者『戦闘機械群ウォーゾーン』に反抗するのだ。
 だが、簒奪者はそうした些細な反抗の種火すら押しつぶすようにして戦闘機械都市『クリーサ8』に迫る。
「な、なんだ……?『クリーサ8』が鳴動している……?」
 人々は震えるようにして戦闘機械都市が揺れるのを自覚しただろう。
 一体何が起こっているのかわからない。
 だが、人々はとっさに屈み、頭を、己が子や親しい者たちを庇うようにして機械都市の一角にて身を潜めた。

 鳴動はまだ続いている。
「一体何が」
「わからない。けれど、都市自体が震えて、崩壊し始めている。外からの攻撃か?」
「そうだとしても、この震動は」
 人々は次の瞬間理解した。
 都市のあちこちに配され、沈黙していた生命攻撃機能が首をもたげるようにして起動し始めているのだと。
 耳障りな機械の駆動音が聞こえる。
 まさか、という思いであった。
「ハッキングされているのか! 戦闘機械都市そのものが!?」
「な、ならこの音は!」
 人々は目を見開く。

 轟音と爆音とが重なり、反響するようにして弾丸がばらまかれた。
 未だ生命攻撃機能はハッキングによって復活を遂げようとしている途中であったが、しかし、それでも都市のビルのあちこちに隠れ潜むようにして暮らしていた人類を脅かすには十分過ぎた。
 照準がまだ合わないのか、センサーを調整しているのか……いずれにせよ、ガトリング砲を持つ砲塔が己が役目を思い出したかのように弾丸を撒き散らし続けているのだ。
 加えて、戦闘機械都市自体が鳴動を続けている。
 このままでは崩落して、人々が巻き込まれてしまうだろう。
 その命運は最早決定づけられているようでもあった――。

●スーパーロボット『リュクルゴス』
 それは奇妙な形をしていた。
 まるでレリーフ。
 象形たる姿が示すのは、いかなり意味を持つものであっただろうか。
 しかし、その名『リュクルゴス』が示す通りであるのかはわからないが、奇妙な形をした簒奪者、スーパーロボット『リュクルゴス』は多くの量産型戦闘機械軍を率いて、人類に奪還された戦闘機械都市を目前としていた。
「進め」
 その言葉は簡潔であった。
 そして、同時に眼前の戦闘機械都市『クリーサ8』を見つめて敬意を持つに至っていた。
 なぜなら、それは人類が戦って奪還したものであるからだ。
 その武勇は彼にとって称賛に値するものであったからだ。
 故に、敬意を示す。

 その最大の方法が己が率いる戦闘機械軍による侵攻である。
「強者に遠慮は要らぬ。そして、強者は汝らを高めるための玉」
 スーパーロボット『リュクルゴス』は己が率いる戦闘機械軍の一騎、一騎を見つめて告げる。
 そう、これは彼らを進化に導く為の戦いなのだ。
 玉石混交。
 それは画一なる性能を持ち得る戦闘機械の中においても同様だと彼は考えているようだった。
 彼とて配下を護ることには異論はない。
 むしろ、積極的に行う所であった。

 スーパーロボットに至る稀有なる存在であったとしても、まだ足りない。
 すべての戦闘機械群の到達目標である|『完全機械』《インテグラル・アニムス》に至っていない。
 如何にしてその到達点へと至ることができるのか。
 方法論はない。
 だが、玉石混交。
 今一度言う。
 それは戦闘機械群においても例外ではない。

 スーパーロボット『リュクルゴス』は言うまでもなく玉である。
 だが、玉を磨くのは玉である。
 であるのならば。
「汝らの中から人類の強者との戦いで進化を果たす者もいるだろう。ならば、私はそれを望む。私という存在をさらなる高みに磨く珠玉を――」

●星詠み
 それは星写す黒い瞳だった。
 亜麻色の髪が揺れて、 星詠みであるレビ・サラプ・ウラエウス(人間災厄「レッド・アンド・ブルー」の不思議おかし屋店主・h00913)は微笑んで集まっている√能力者たちに呼びかける。
「集まってくれてありがとう。君たちはスーパーロボットって知ってるかな?」
 √能力者たちの中には頷く者もいたかもしれないし、頭を振る者もいたかもしれない。
 そんな√能力者たちを見やり、レビはまた一つ頷いた。

「簒奪者『戦闘機械群ウォーゾーン』の中でも極めて稀な存在さ。巨大派閥レギリオス・リュクルゴスの王……スーパーロボット『リュクルゴス』が、人類の奪還した戦闘機械都市の一つ『クリーサ8』に襲来しているのさ」
 その言葉に√能力者たちは体に緊張が疾走るのを感じただろう。
 今まさに戦闘機械都市『クリーサ8』には多くの人類が生活している。防衛しなければならないのは勿論のことだが、最悪は重なるようだ。
「無効化していた生命攻撃機能がハッキングを受けて復活しようとしているようなんだ。すでに人類に対して攻撃が行われている可能性も大きいよ。さらに戦闘機械都市自体が鳴動し、崩壊し続けているんだ」
 急がなければならない。
 喫緊の事態であるというのに星詠みであるレビの口調はあまり変わらなかった。

「君たちはまず、『クリーサ8』に向かい、生命攻撃機能と崩壊にさらされている人類たちを助けなければならない。これは大変なことだよ。攻め入るよりも護るほうが難しいからね。その後は……うん、ごめんね。僕……俺に降りてきたゾディアックサインでは、その後のことはわからない。けれど」
 レビは、集まった√能力者たちにポケットから取り出した小さな菓子を手渡す。
「君たちならやれると信じるよ。どんな不測の事態を前にしてもね。これ? ああ、これは『トロッコヨーグル』さ。トロッコ型の容器の甘い駄菓子。ちょっとした小腹を満たしておくれよ」
 手渡された容器。
 中には植物性油脂のショートニングが入っている。
「あまり食べすぎると胃もたれするから、このサイズなのさ。気に入ったら、買っておくれよ。さあ、いってらっしゃい」
 レビはそう言って、危険な戦いに挑む√能力者たちを見送るのだった――。

マスターより

海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回の事件は√ウォーゾーンの戦闘機械都市の一つです。
 人類が奪還した戦闘機階都市『クリーサ8』に巨大派閥レリギオス・リュクルゴの王その人であるスーパーロボット『リュクルゴス』が戦闘機械群を率いて迫っています。
 すでに都市の無効化されていたはずの生命攻撃機能であるセントリーガンが起動し、人々を襲っています。
 さらに鳴動する都市は崩壊の危機を迎えていますので、逃げ惑う人々を救出、また保護しなければならないでしょう。

●第一章
 冒険です。
 前述の通り、生命攻撃機能がハッキングされて復活しつつあります。
 未だセンサーの調整が完全ではないのか、照準システムが不完全です。この隙をかいくぐり、崩落の鳴動を続ける都市を駆け抜け、人類を保護したり、非難させたりしなければなりません。
 また敵の進撃位置を目指さなければならないでしょう。

●第二章
 第一章の結果から、展開が分岐します。
 皆さんが第一章にてうまく敵の進撃位置を知ることができたのなら、集団戦となるでしょう。
 仮に位置を知ることができなかった場合は、迫るスーパーロボット『リュクルゴス』に対する対抗策を講じることしかできないでしょう。

●第三章
 ボス戦です。
 状況などは断章をご確認ください。

 それでは人類が奪還した戦闘機械都市『クリーサ8』に迫る戦闘機械群、人類を救わんとする皆さんの物語、その√になれますように、たくさんがんばります!
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第1章 冒険 『崩壊する都市の一角』


POW パワーで障害を除去したり、もしくは崩壊そのものを止める。
SPD 技量で悪路を突破したり、もしくは崩壊そのものを止める。
WIZ 知識で無事な道を探知したり、もしくは崩壊そのものを止める。
√ウォーゾーン 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 都市が震えている。
 ビルディングは揺れを逃がす化のようにたわみ、大きく左右に揺らている。
「いったいいつになったらこの揺れは収まるていうんだよ!」
 人類は生命攻撃機能のセントリーガンが、出鱈目に放ち続ける弾丸から身を隠すようにして揺れるビルディングの中に身を潜めていた。
 だが、戦闘機械都市事態が揺れ続けているのだ。
 逃げなければならない。
 戦わなければならない。
 どちらをするにしても、この震動の中ではうまくいかないだろうし、復活しつつある生命攻撃機能を躱すことはできないだろう。

 手詰まり。
 その言葉が人々の中に湧き上がる。
 抗い続けなければならない運命の中にあって、人々は絶望しか胸中になかっただろうか。
 だが、希望さえ棄てなければ、その瞳に燈火は宿るのだと示すように√能力者達は駆けなければならない――。
クラウス・イーザリー
「急がないといけないな……」
今はまず人々を助けないと

ハッキングで近くのカメラや都市の管理機能にアクセス
比較的揺れが少ない場所や避難できそうな場所を探す
揺れの原因もハッキングで探せるなら探したい
自動修復機能辺りに介入されているのかな

「大丈夫だ、落ち着いて」
安全な場所がわかれば逃げ惑う人々に声を掛けて誘導
セントリーガンの射線から人々を庇いつつ、撃たれたらエネルギーバリアで防ぐ

敢えて安全な場所があるなら誘導されている可能性も考慮
(これだけで済むとは思えない)
都市機能を停止させて重要箇所に侵攻してくるか、敢えて安全な場所に人を誘導してそこを強襲するとか
そういう可能性も考えながら行動

アドリブ、連携歓迎

 都市が鳴動している。
 大地に踏み出した足から震動が伝播し、己の心まで震わせるのではないかとクラウス・イーザリー(人間(√ウォーゾーン)の学徒動員兵・h05015)は思う。
 だが、踏み出した一歩は誰かを助けるためだ。
 それが彼の震える心に生まれた最初の思いだった。
「急がないといけないな……」
 逡巡は容易く人の生命を奪っていく。
 取り返しのつかないことというのは、いつだって僅かな躊躇いの間に生命を奪い去っていくものであるからだ。

 簒奪者、戦闘機械群ウォーゾーンとの戦いとは常にそういうものだった。
 家族を失い、学友を失い、それでも戦い続けることを宿命づけられたのが己だ。
 戦うしかないというのならば、誰かを救うために戦うことこそが、己の本質であった。
「生命攻撃機能が復活仕掛けているのか……厄介だな」
 クラウスはハッキングで都市の管理機能にアクセスし、内部がウォーゾーンからのハッキング攻撃を受けていることを知る。
 監視カメラの映像を切り替えつつ、情報を得るのが精一杯だった。
 もっと欲を言えば、ハッキングで生命攻撃機能の権限を取り戻すことができたのならばよかったのだが、それは恐らく無理だ。

「それにこの揺れの原因はなんだ? 攻撃ではない、とするのなら……自動修復機能あたりに介入されていると見るのが自然か。けれど、今は」
 クラウスは駆け出す。
 生命攻撃機能が一斉に己を認識し、セントリーガンの弾丸が凄まじい勢いでばらまかれる。
 弾丸を躱しながらビルディングの中に飛び込めばクラウスは決戦気象兵器「レイン」 にて生命攻撃機能のセントリーガンの砲塔をレーザー光線で破壊する。
「あ、あんたは……! 援軍か!?」
 人々の声にクラウスは振り返る。
「ああ、そうだ。大丈夫だ。落ち着いて行動して欲しい」
「わ、わかった。だが、こっちには負傷者もいるし、子供もいる。どうにかこのビルから脱出したいんだ……!」
「了解した。こちらが生命攻撃機能を惹きつける。その隙に避難所やここよりも頑強な場所に移動してくれ」
「ああ、頼んだぞ!」
 人々の声を背にクラウスは外に飛び出す。

 放たれる弾丸をエネルギーバリアで弾きながら、生命攻撃機能の攻撃を一身に受け止めるのだ。
 √能力者だからこそできたことであろう。
 仮にここで己が死しても、死後蘇生によって√能力者は死ねない。
 ならばこそ、これが最適解だとクラウスは己が身を盾として人々を逃すのだ。
「……とは言え、誘導されている、という可能性もある。これだけで済むとは思えない。なら、この鳴動は……」
 やはり、都市機能を停止させてからの一点突破。
 それが敵である戦闘機械群のやり方であるように蔵臼には思えたのだ。
「だとするのならば、どこだ。どこから奴らは都市に侵入してくる?」
 可能性はいくつもある。
 クラウスは多くを考え、しかし今は避難所……すなわち、機械都市のシェルターへと向かう人々の救命行動を第一に考え、生命攻撃機能たるセントリーガンを己が決戦気象兵器より放つレーザーで焼き切るのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

薄羽・ヒバリ
まーた戦闘機械群のヤツらが暴れてるワケ?
待ってて
レビにもらったお菓子の分はちゃーんと働くから!

Key:AIRを使ってステルスプログラムであるHide-and-Seekを起動したら、Ride:HIGHERに乗って素早く移動
道中はCODE:Chaseで呼び出したレギオン達を先行させて敵とのエンカウントを回避
交戦を避けられないのであれば、近距離の敵は取り囲んでレーザー砲で、遠距離の敵は追尾ミサイルで殲滅

このビルはまだ避難が済んでないっぽいね
いくよ、みんな!
目的地であるビルに到着したらレギオン達を各階へと向かわせ避難誘導を
マイクから私の声を流しちゃお
もうだいじょーぶ!
落ち着いてレギオンの後に続いてっ

 日常とはそうそう崩れるものではないから、日常というのだ。
 √ウォーゾーンにおいて、戦闘機械群との戦いというのが日常であるが故に、人生において通算何度目かもわからぬ戦いの場に薄羽・ヒバリ(alauda・h00458)は白茶の揺れる髪をかき上げるようにして伸びる風切羽の耳に届く声を聞きながら飛び込む。
 戦闘機械都市『クリーサ8』。
 人類が奪還した大地。
 改造された大地であれど、そこは紛れもなく人類生存圏であった。
「まーた戦闘機械群のヤツらが暴れてるワケ?」
 届くのは悲鳴。
 人々が鳴動する都市と、無効化されていた生命攻撃機能の牙とが人々を襲っているのだ。
 ちゃんと届いているよ、とヒバリは呟く。
 だから。

「待ってて」
 ワンピースの内に収められたトロッコ型容器の駄菓子が跳ねるのをヒバリは感じただろう。
 それを右手で抑え、左手で彼女は展開したバーチャルキーボードに指を弾かせる。
 起動した光学迷彩ホログラムをまとったエアバイクが空へと飛び立つ。
「今日もご機嫌よね。オーケー、いってらっしゃい」
 同時に彼女の瞳にインビジブルの影が映し出される。
 エネルギーを引き出して明滅する彼女の瞳によって発露する√能力。
 |CODE:Chase《コードチェイス》。
 彼女のエアバイクの周囲には、小型無人兵器『レギオン』が放たれ、駆体に有した高感度センサーを発露し、彼女へと情報を伝達する。

「んっ、やっぱり生命攻撃機能は完全じゃないにしろハッキングで掌握されてるってワケ? もらったお菓子分はちゃーんと働かないとね!」
 光学迷彩によって姿を隠していても、生命攻撃機能のセントリーガンはこちらを認識したのか、弾丸をばら撒いてくる。
「おっと、ちょっ!」
 ヤバ、とヒバリは呟いたが乾いた唇を舌で湿らせながらエアバイクを疾駆させ、レギオンより放たれるレーザー砲でセントリーガンを沈黙させる。
 あちこちで√能力者たちが救援に来ているのだろう。
 弾丸がばらまかれる音が響いている。

 するとビルディングの一角に明滅する光を見た。
「光信号……ってことは、ここだね!」
 ヒバリはレギオンをビル内部に突入させ、カメラから情報を得る。
 やはりまだシェルターに非難が遅れた人々が残されている。怯えた表情を浮かべる人々にマイクをオンにしてヒバリは明るい声を上げる。
「もうだいじょーぶ!」
「れ、レギオンから人の声……ってことは、援軍か?」
「そういうこと! シェルターに避難誘導するから、この子たちに付いてきて! 安全は私が保証する的な? 安心しちゃってよ、必ず皆を無事に届けてあげるからさ!」
 ヒバリはレギオンから明るい声を流しながら、人々を誘導していく。
 未だに生命攻撃機能の攻撃は続いているが、しかしヒバリは己の操るレギオンによって、生命攻撃機能を尽く破壊している。

「他にもまだ非難が完了していないビルはある?」
「わからない。けど、多分……!」
「なら、行って確認するっきゃないよね、一つずつ!」
 ヒバリは己の義体化された左耳に意識を集中する。
 銃撃の音に紛れて声が聞こえる。鼓動だって聞こえる。
 まだ、生きている。
 なら、と彼女は飛ぶだろう。
 軽やかに、けれど颯爽と。
 救いを求める声を、その風切羽は聞き逃さないのだから――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ジルベール・アンジュー
メインシステムまで掌握されている。カウンターハックは無理ですか。
仕方が無い。『航空巡洋艦隊プレデター』を召喚します。
艦隊を二手に分け、一方は上空からセントリーガンを攻撃して破壊する。
もう一方は広さのある大通りに降下して、周囲に牽制を入れつつ市民を内部に避難させます。そのまま、安全な区域まで移動できるなら、シャトルで市民をシェルターへ移送。安全にシャトルが飛ばせなければ、航空艦の内部で保護。

ぼく自身は、WZで市内を「ダッシュ」しながら、逃げ遅れた人を探します。発見した市民は、機体で「かばう」ようにして、シェルターまで移送。

急いでください、皆さん。敵はもうそこまで来ています。必ず守り抜きますから。

 戦闘機械都市『クリーサ8』が鳴動している。
 生命攻撃機能は無効化されていたはずだが、セントリーガンは銃口を人々に向け、弾丸をばらまき続けている。
 悲鳴と轟音ばかりが響いている。
 そんな都市の中にあって、ジルベール・アンジュー(『神童』の兄・h01027)は、|『航空巡洋艦隊プレデター』召喚《 コウクウジュンヨウカンタイプレデターショウカン》によって空を覆う。
「メインシステムまで掌握されている現状では、カウンターハックは恐らく無理ですか。艦隊を分けます」
 ジルベールは召喚した『航空巡洋艦隊プレデター』でもって、生命攻撃機能であるセントリーガンを破壊する。

 破片が飛び散る中に彼は二手に分けた『航空巡洋艦隊プレデター』と共に降下していく。
 兎にも角にも市民の非難を急がなければならない。
「多くの人はビルディングの中に退避できているのか? それとも……」
 ジルベールは己のウォーゾーンに乗り込みながら市内を疾駆する。
 逃げ遅れた市民がいれば保護するためであった。
 生きている人がいて欲しい。
 一人でも生き残っていて欲しい。
 そう願うようにジルベールは市内を疾駆する。
 そのたびに生命攻撃機能のセントリーガンが弾丸をばらまく。ウォーゾーンの装甲に激突する弾丸がひしゃげ、駆体の装甲を凹ませていく。

「弾くことはできる……けれど、集中されては!」
 如何にパワードスーツであるウォーゾーンとて弾丸の集中砲火を受けては装甲が保たないだろう。
「……生体反応!」
 ウォーゾーン内部のモニターに反応があった。
 それを見つけてジルベールは反応があったビルディングの中へと飛び込む。
 そこには逃げ惑うままに駆け込んだ人々がいた。
 恐らくシェルターに向かう前に進むも引くもできなくなって、ビルディングの中に飛び込んだ人々なのだろう。

「安心してください。皆さんを安全な区域まで移動させます」
「シェルターが一番安全なんだ。都市の中央にある……!」
「なるほど。では、こちらの『航空巡洋艦隊プレデター』に!」
 ジルベールが呼び寄せた『航空巡洋艦隊プレデター』に人々を収容し、シェルターへと運ぶ。
 急がなければという焦りが生まれる。
 敵はもうすぐ傍まで来ている。
 都市の鳴動が、それを示しているようだった。
「急いでください、皆さん。敵はもうそこまで来ています。必ず守り抜きますから」
 そう告げるのが精一杯だった。
 敵の位置は未だ判然としない。
 けれど、人命が優先であるとジルベールは逃げ遅れた人々を収容し、襲来するであろう戦闘機械群との戦いに備えるのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

水垣・シズク
助けたいですが、銃弾の雨に突入できるような装甲も機動性も無いんですよね。
そうですね……できることを、しなくては。

最も近い√の境界へ移動。
サイコドローンを展開し、中のCu-Uchilの眷属達を経由して|Cu-Uchilの視線《異界からの観測》の呪文を使います。

私がすべきことは何か、あえて優先順位をつけるなら
1に、進軍地点の特定
2に、振動の原因特定/停止
最後に……住民の救助

各情報を把握する度に√ウォーゾーンへ移動し他√能力者へ伝達します。
経路にある砲塔の給弾機構くらいなら灼けるでしょうか、すぐにできそうならそれも。

住民の救助は……。すみません、他の方……お願いします。

脳、焼けないと良いんですけど。

 鳴動している。
 ビルディングの多くは左右に揺れている。
 震動を受けて揺らぎ続けている光景は、事態が逼迫していることを示していた。
 そして、戦闘機械都市の生命攻撃機能が復活し、なおかつ掌握されつつあることが市中から響き渡る銃声からも理解できるだろう。
  水垣・シズク(機々怪々を解く・h00589)は、己が右目で√ウォーゾーンを見つめていた。
 彼女自身は別の√に存在している。
 √に移動することなく彼女の瞳は戦闘機械都市『クリーサ8』の惨状を認識していた。
「助けたいですが、銃弾の雨に突入できるような装甲も機動性もないんですよ」
 言い訳じゃあない。
 これは純然たる事実だ。
 もし、自分があの√に足を踏み込めば、どうなるかなんて言うまでもない。
 足手まといが一人増えるだけだ。
 そうなれば、きっと他の√能力者達は自分も助けようとするだろう。
 たとえ、死後蘇生するとわかっていても、だ。

 だからこそ、シズクは己が死なないことを前提条件にしていた。
「でも……できることを、しなくては」
 その前提条件の上で彼女は自らにできることを探し出す。
「私がすべきことはなにか」
 その瞳にインビジブルの影が揺らめく。
 透き通るような姿。
 瞳に輝くのは√能力の発露。引き出したエネルギーによって彼女はサイコドローンを展開し、別√から√ウォーゾーンを認識する。
「Cuuchil shy'agl nnn-n'fhtagn」
 |Cu-Uchilの視線《ミツメルモノノシセン》が疾走るようにして、熱を解き放つ。
 その一撃は生命攻撃機能のセントリーガン、その砲塔の給弾装置を焼き切り、爆発を巻き起こす。

「生命攻撃機能はハッキングされている……なら、これを行っている存在がいるはず。でも、都市の外から、そんなことが可能なのでしょうか?」
 わからない。
 だが、彼女は必ずハッキングをするにしても起点があるのだと理解している。
 この都市の鳴動が侵攻の前触れであるというのならば、必ず戦闘機械群が突入する一点があるはずなのだ。

 シズクはそれを特定すべく、他√から戦闘機械都市『クリーサ8』を見つめる。
 中央に泉を有する都市。
 外縁から攻めるというのは当然のこと。なら、必ずこの鳴動が起こったのは外縁ということになる。
 そして、震動。
「……震動を解析すれば、機械都市に最も強く影響を及ぼしている点が、わかる……?」
 シズクは他√から境界を踏み越えて『クリーサ8』に足を踏み出す。
 わかる。 
 敵が進撃してくる地点は、最も鳴動している外縁の一部。
「最も強い震動が起こっているのは、ここ……!」
 シズクは震動の最たる箇所を示し、他の√能力者達に告げる。
 恐らく、ここから敵はなだれ込んでくるはずだ。なぜなら、その最も強い震動が起こっている箇所こそが、戦闘機械群を率いている存在が機械都市を掌握するための力を発している場所だからだ――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

タマミ・ハチクロ
トロッコヨーグル、美味しかったでありますよ。
……さて、それでは一仕事と行くでありますか。
水とは祝福の象徴にして、人々の生活に不可欠な恵み。それを齎すこの都市が傷つくことを、主が望まれるはずはありませぬゆえ。

『創造と破壊』、小生こう見えて工兵人形でもありまして。
√ウォーゾーンの機械の構造ならば、「マルチツールプログラム」に刻み込まれているであります。
複合工具の「マルチツールロザリオ」でセントリーガンをバラすであります、再起動でもされると面倒でありますからな。
生存者を発見したら【ダッシュ】で接近、身を挺してでも庇うであります。
人形の命は安いもの、それで守れるものがあるなら躊躇はしませぬとも。

 トロッコ型の容器に木べらを突っ込んで口に運んだタマミ・ハチクロ(TMAM896・h00625)は、もったりとした甘さが口内に広がるのを感じた。
 星詠みからもらった駄菓子。
 それは彼女にとって気にいる味わいであったのだろう。
「『トロッコヨーグル』というのですね。美味しかったであります……さて、それでは人仕事と行くでありますか」
 タマミはぺろりと唇を湿らすようにして動かしながら、√ウォーゾーンの戦闘機械都市『クリーサ8』に飛び込む。
 中央に泉を有する機械都市。

 言うまでもなく水とは祝福の象徴にして、人々の生活に不可欠な恵みである。
「それをもたらすこの都市が傷つくことを、主が望まれるはずがありませぬゆえ」
 彼女はマルチツールプログラムを起動し、十字架型の複合工具を展開する。
 一瞬で無数の工具が十字架から飛び出し、彼女の両手に握られる。
 その瞳にインビジブルの影が揺らめくのを映しながら、タマミは一気に未だ銃声を響かせる生命攻撃機能であるセントリーガンへと踏み出す。
 弾丸が頬をかすめる。
 照準システムがまだ掌握されていないことは、幸いであった。
 完全な掌握がなされてしまえば、あのセントリーガンは正しく生命に取っては脅威でしかないからだ。

 故に彼女は速攻だと己に銃弾をばらまくセントリーガンへと飛びかかり、その機構を瞬時に読み取る。
「やり方は培養脳に刻まれておりますゆえ」
 |創造と破壊 《クラフト・アンド・デストロイ》というのならば、正しくその通りであった。
 すでに彼女は√ウォーゾーンにおけるセントリーガンの構造の多くを理解していた。
 理解しているのならば、如何にして組み立てられたのかを理解できる。
 そして、組み立てることができるのならば、当然分解することもできるのだ。故に彼女は瞬時に手にした工具で持ってセントリーガンを武な気する。

「再起動などされると面倒でありますからな」
 少女人形である彼女にとって、それは死を意味するのではない。
 ただの停滞でしかない。
 組み上げれば、元に戻る。
 破壊するのではなく、分解。
 一時的に機能を失わせればいい。ただそれだけだ。
 だが、人の生命は違う。
 一度でもバラせば元に戻ることはない。生命からただの物体に成り下がる。
「人形の生命はやすいもの、それで守れるものがあるなら躊躇はしませぬとも」
 彼女は迫る銃弾の雨の中を駆け抜け、生命攻撃機能に追われる人々を庇う。
 シスター服が破れ、その駆体を傷つける。

「ああっ! ダメだ、そんなんじゃあ!」
 人の悲鳴が聞こえる。
 けれど、構わない。その悲鳴が上がるということはまだ生命があるということだ。
「大丈夫であります」
 そう言ってタマミは人々を背にかばいながら、十字架型工具を展開する。
 取り出した工具でセントリーガンの機能を停止させ、ぼろぼろのシスター服を翻して人々をシェルターへと誘導する。
「ここは小生が引き受けるであります。お早く」
 そう、躊躇いはない。
 この駆体が破壊されても、代わりはいるのだ。
 かけがえのないものを守れるのなら、それも悪くはないのだ――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

レイ・イクス・ドッペルノイン
『レイ、そいつらは機械仕掛けの神とやら目指してるワケ?』

わからないけど、近いとは思う
今彼らがしている事は害虫駆除、向こうの方が押しかけてきたらしいのにどの面下げて…

『何時もよりマジじゃん?いいねそういうの』
『【ハッキング】で制御系統に干渉、都市の兵器類を無効化しな』
『遭遇した敵はペネトレイターで【爆破】、飛んでいるやつはグラビティ・スノウの【追尾弾】で狙撃』
『あんたの身体の機械細胞、仕様変更できるらしいから【肉体改造】で硬度上げて避難誘導の時に盾になりな』

玲子、制御系統に|無《ヴォイド・オーパーツ》仕組んでいい?
再度アクセスしようとしたら無を掴ませ逆侵
バグらせて連中の進軍経路やらを覗き見する

 オペレーターの声が聞こえる。
 どうやら、この戦闘機械都市……人類が奪還した拠点とも言うべき『クリーサ8』に戦闘機械群が迫っているらしい。
 簒奪者、戦闘機械群ウォーゾーンは、『完全機械』を目指しているのだという。
 機械仕掛けの神を目指していると受け取られても仕方ないことだろう。
 そもそも『完全機械』というものが如何なるものなのかを誰も知り得ない。
 確実言えることは、簒奪者である戦闘機械群ウォーゾーンたちもまた、未だそれに到達していない、ということであろう。
「『完全機械』が神様みたいな万能機械だっていうんなら、近いと思う」
 レイ・イクス・ドッペルノイン(人生という名のクソゲー・h02896)は、そう答えた。
 それも正しいのかもわからない。
 少なくともレイはそう感じたのだ。
 なら、間違っていようが正しいのだろうが、やるべきことは変わらない。

 今まさに『クリーサ8』に迫っている戦闘機械群がやっていることは、彼らにとっての害虫駆除のようなものなのだろう。
 もとより、それはレイにとってはどの口が、というものであっただろう。
 ウォーゾーンたちは、人類を押しのけて世界を征服したと言ってもいい。
「どの面下げて……」
 己の感情の揺らぎめいたものをオペレーターは感じたのだろう。
 どこか軽い口調で、いいね、と笑っているようにも思えた。
 顔が見えないのが残念なことだ。

「生命攻撃機能が人類を狙うというのなら、ハッキングで制御系統に干渉、攻撃機能を無効化する」
 未だ戦闘機械都市内部に簒奪者たちの姿はない。
 あるのは生命攻撃機能のセントリーガンが砲塔を回転させ、逃げ惑う人々を銃撃で持って襲っている光景ばかりだ。
 他の√能力者たちも数多くが人々を救うために動いている。
「直接戦闘にはならない、か……けど……!」
 レイは己の駆体を構成するナノマシンと有機細胞による合成細胞を変容させ、硬度を上げてセントリーガンの放つ弾丸の前に飛び出す。

「今のうちに避難しなよ! シェルターがあるってんなら!」
「あんたはどうするんだ!? いつまでも耐えられるもんじゃ……!」
「心配はあとにしてほしいね。さあ、助けると思って逃げて!」
 盾となったレイに促されるようにして人々は建物の中に駆け込んでいく。
 その背中を見送ってレイはセントリーガンの制御系統にハッキングを仕掛ける。敵が都市事態にハッキングを仕掛けているというのならば、逆探知もできるのではないかと思ったのだ。

「こっちのハッキングに気がついた……この演算速度……!」
 直ぐ様に相手は生命攻撃機能にハッキングを仕掛けた此方を補足している。
 ダメだ、とレイは即座に理解する。
 演算処理が桁違いすぎる。
 √能力もなしにできることは、限られていた。
「グリッチバグを囮に!」
 ヴォイド・オーパーツによって、こちらにカウンターハックを仕掛けてくる敵にレイは呻くようにしてハッキングを諦める。
 咄嗟に囮を仕掛けることができたのは、間一髪であったと言えるだろう。
「敵はやるヤツみたいだ……進軍経路を覗き見ようとしてやったのに、逆にこっちが探られた、けど」
 確実に一体のウォーゾーンだけが別格なのだ。
 なら、とレイは確信する。
 この一体さえ退けられたのなら、この戦闘機械都市を救うことができると――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

七々手・七々口
「おー、めっちゃ揺れてる。足場悪りーなぁ。」
魔手の誰か、オレ運んでくれる?

セントリーガンを√能力で伸ばした魔手で叩っ切りながら行くかねー。避難の邪魔になりそうだしねー。
あ、オレここ来るの初めてだし、避難が必要そうな人らを強欲な魔手でオレの近くに引き寄せて助けるついでに、話聞きながら先目指すのも面白い…じゃなくて効率よく行けそう。

「で、敵はどっから来るんかねー?」
なんかイライラして来たし、憤怒な魔手で火が点けられるか試してみとこうかな?
燃えたら場所もわかりやすそーだし。

「おー、めっちゃ揺れてる」
 足場が悪いな、と七々手・七々口(堕落魔猫と7本の魔手・h00560)はしなやかな猫の体躯でもって、鳴動続ける戦闘機械都市『クリーサ8』の市街地を往く。
 彼の言う通り、足場が悪い。
 常に都市全体が鳴動しているのだ。
 この震動がどうにも気に食わない。ゆらゆら揺れているし、ビルディングのような構造物は、こうした震動を逃すための耐震構造を取っているのだろう。大げさに揺れ続けているのだ。
 たわむようなビルディングは、見る者にとっては恐怖を憶えさせるものであったのが皮肉でしかない。
 とは言え、黒猫の体躯で疾走るのも面倒になっていた。
 尾より這えた七本の魔手が七々手を掴み上げて、宙を飛ぶ。

 それを生命攻撃機能であるセントリーガンが感知して弾丸を撒き散らす。
「おっとぉ? なんだ豆鉄砲下手糞め」
 七々手は七本の魔手に庇われるようにしながら、未だセントリーガンが照準システムの調整がなされていないことを知る。
 都市全体のハッキングに敵がかまけているからかもしれない。
 なら、この都市の鳴動事態がハッキングの手段なのかもしれないと思ったが、七々手が優先すべきと思ったのは、市民の避難であった。
 そのためには、セントリーガンは邪魔だったのだ。
「ばっらばらーの方が食いやすいよなー、いや、鉄は流石に食いたいとは思わねぇけども」
 七々手の瞳にインビジブルが揺らめく姿が映し出される。
 その瞳に映したインビジブルから引き出すエネルギーを得て、七本の魔手がセントリーガンを一気に両断する。

 それは僅かに一瞬のことであったし、もしもセントリーガンが生きているのならば、正しく|斬殺《ザンサツ》と言って構わぬ程の見事な切れ味でもって七本の魔手は、その鋼鉄の砲塔を七分割してみせたのだ。
「ま、邪魔くせーからねー」
 とは言え、と七々手は魔手の内にて首を傾げる。
 この都市に来たのは初めてなのだ。土地勘があるとは言えない状況である。多くの√能力者たちが市民たちの避難に駆けつけている。
 誰か話を聞きながらのほうがおもしろ……じゃなくて効率がいいとは思っていたが、大半が建造物の中に逃げ込んでいるか、もしくは保護されているのあろう。

 なら、やはり探るべきは敵の位置だろう。
「で、敵はどっから来るんかねー?」
 わからない。
 だから、イライラしてきた。とは言え、己の魔手で燃やせぬものはないだろう。
 となれば、ここはどっしり構えておくべきだろうかと、七々手は思う。
「うん、そうしとこう。適当に燃やしとけば、敵も場所もわかりやすそーだし」
 後は来た敵を打ち倒せばいいのだ。
 なら、敵が来るまで魔手の中で、のんびりしておけばいい。
 一つ欠伸をするようにして七々手は、尾より伸びる七本の魔手に囲われて猫らしく鳴くのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

星宮・立希
死にたくなければ強くなるしかないから頑張るしかないとはいえ
いきなりヤバい所に突っ込んじゃったわね!?
ま、他人とは言え襲われてるのをただ見てるのは目覚めが悪いし、やってやるわ!

まずはターゲットを増やす事で少しでも私に攻撃が来ない様にするわ
『魔獣操・群獣召』で地上を走る獣や空を飛ぶ鳥の形をした護霊っぽい物を囮として召喚
さらに鳥型の一、二体を空からの索敵に回し、逃げ遅れた人達や出てくる敵の|情報を集める《"情報収集"》
その分私の視界が大変な事になるけどね
私は護霊を盾に裏道中心に|見回り《遊撃》よ、広いトコにはもう他の能力者が居るでしょ

こんな所で躓いてられるかっての!いくわよ|模造魔獣《モンスター》!

 星宮・立希(外れた√を歩む者・h01004)は、『死にたくない』と思っている。
 欠落抱えるのが√能力者であるし、また死しても死後蘇生することで最も死より遠くなったのが彼女でもあった。
 だが、それでも純然たる死への恐怖というものが彼女の中にはあるのだろう。
 如何に死後蘇生できるのだとしても、√能力者はAnkerが存在する。
 それが何なのか、今の立希にはわかっていなかった。
 だからこそ、死にたくないと強く思ったのだ。
「強くなるしかないって思っていたのに、いきなりヤバい所に突っ込んじゃったわね!?」
 彼女は目を見開く。

 √ウォーゾーン。
 それは簒奪者、戦闘機械群ウォーゾーンによってほぼ制圧された√だ。
 そして、その脅威は今まさに彼女が足を踏み入れいた戦闘機械都市『クリーサ8』に迫っていた。
 市中に存在する無効化されたはずの生命攻撃機能たるセントリーガンが弾丸を雨のようにばらまき続けている。
 人類を際限なく攻撃するためだけの存在である。
 ヤバイ、というのならば確かにその通りだったのだろう。
「本当にヤバイヤバイ! いきなり弾丸ぶっ放されるなんて! でも……!」
 悲鳴と轟音が響く中を彼女は疾走る。

 それは他人事だった。
 けれど、それでもただ見ているだけなんて目覚めが悪い。
「やってやるわよ!」
 彼女の瞳が√能力に発露する。
 その光が放つ影に大気に揺蕩うインビジブルが映し出され、エネルギーを引き出す。
「ちょっと手伝いなさい! |魔獣操・群獣召 《マネージ・サーバントコール》!」
 護霊の一部たる下位獣護霊を召喚し、立希はセントリーガンの標的が分散させる。
 だが、ばらまかれる弾丸の量が凄まじい。
 まるで際限がないかのようにセントリーガンは気が狂ったように弾丸を放ち続けているのだ。

 囮にした獣や鳥の下位獣護霊たちが次々と打ち抜かれていく。
「やっぱ、これだけだ無理よね!」
 だが、空を飛ぶ護霊たちから、周囲の情報を集められる。
 敵……すなわち、簒奪者たちの軍勢は未だ都市の中に入り込んでいない。
 恐らく外縁の一点を突破してくるつもりなのだろう。
「うう、視界が気持ち悪い」
 護霊と視界を共有しているのだ。目の前の弾丸の雨と上空からの視界、その二つを同時に処理しなければならないのだから当然と言えば当然だ。

「でも……見つけた!」
 機械都市の外縁に迫る戦闘機械群。
 それを彼女は空を飛ぶ鳥の護霊の視界から見つけることができた。
「こういうのは役割分担よね! 後は、時間との勝負ってわけね」
 そう、もうすぐにでも戦闘機械群は都市の外縁から内側へとなだれ込んでくるだろう。
 だが、他の√能力者たちも行動している。
「なら、避難も恙無く進んでることでしょ。なら、私は!」
 いち早く、あの外縁から迫る敵への対処に当たらねばならない。
 だが、間に合うか?
 ギリギリかもしれない。
「こんな所で躓いてられるかっての! 行くわよ|模造魔獣《モンスター》――!」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ギギ・ココ
なるほど、事態は一刻の猶予も無いわけか
了解した──まずは人命の確保を優先しよう

セントリーガンが起動した以上、壊してしまう方が良い。
『双つの報復』で機動力を確保して、まずはセントリーを撃ち抜く
自動照準なら、恐らく近いターゲットを狙いやすいはずだ
要救助者たちよりもセントリーに近づいて、機動力で避けながら破壊して回る

いいか?聞こえてるなら速やかに行動するんだ
危険は俺達が引き受けるから、急いで避難を!行き先は仲間の指示に従ってくれ

呼びかけはこれでいい…奴らがどこに向かうか
強者として進撃するなら、最も防御が厚いところを力でねじ伏せるのではないか
要の場所…中央…そこら辺に当たりを付けてみようか

 戦闘機械都市『クリーサ8』の状況を理解する。
 迫る戦闘機械群。
 そして都市内部ではハッキングによって無効化されていた生命攻撃機能である砲台、セントリーガンが起動し弾丸をばら撒いている。
 シェルターにいち早く避難することができた人々ばかりではない。
 今もビルディングに駆け込み、状況が好転するのを待つしかない者もいるのだ。
 そして、都市の外縁部からは恐らくであるが、戦闘機械群を率いる簒奪者によって、都市そのものがハッキングを受け、鳴動し続けているのだ。
「なるほど、事態は一刻の猶予もないわけか」
 ギギ・ココ(分かたれた二つ・h01394)は一つ頷いた。
「了解した――まずは人命の確保を優先しよう」

 ギギは鳴動続ける機械都市を疾走る。
 ビルディングはたわむようにして揺れ続けており、奇妙な光景を見せていた。
 まるで木々が風に揺れるようであったし、それが巨大であればあるほどに不気味で人の恐怖というものを煽るものであった。
 そして、最もこの場において脅威なのは生命攻撃機能であるセントリーガンである。
「起動した以上、壊してしまう方が良い」
 ギギの瞳にインビジブルが揺らめく姿が映し出される。
 引き出されたエネルギーを持って、√能力が発露する。
「|双つの報復《ダブルアクションアンドスイッチ》」
 上下二連式の銃から弾丸が放たれ、一瞬でセントリーガンの砲塔を撃ち抜く。
 装甲を貫通した弾丸は遅れて放たれた弾丸と衝突し、さらに弾頭を砲塔の奥へと押し込み、その内部をズタズタに破壊していくのだ。

 爆発する砲塔を背にギギはさらに疾走る。
「要救助者はいるか」
 爆煙を背にしながらギギは周囲を見回す。
 ビルディングから声が聞こえる。見上げれば、恐らく生命攻撃機能に追われてビルディングに駆け込むしかなかった市民たちの姿が見えた。
「そこか。セントリーガンは無力化した。いいか? 聞こえているなら速やかに行動するんだ」
「――!」
 爆煙の向こう側から声が聞こえる。
 恐らくわかった、とかそのたぐいだろうと判断してギギはさらに疾走る。
 危険は己たちが引き受ければ良い。
 その代わりに人々が安全なシェルターまで向かう時間を稼ぐ。
 己にできることは多くはない。だが、それでも人々に向かう銃弾を己に集めることはできる。
「急いで避難を! 行先はわかっているんだろう。わからないのなら……仲間の支持に従ってくれ!」
 他の仲間たちが来ていることをギギは確認している。
 呼びかけもそこそこにギギは考える。

 外縁部から迫っている戦闘機械群。
 もしも、戦闘機械群が強者として進撃するのならば、どこから来るだろうか。
 そして、狙うのならばどこだ?
 戦闘機械群の考えることは合理的であるし、無駄はない。
「なら、最も防御が厚い場所を力でねじ伏せる、か……?」
 地形を考える。
 都市の中央に泉があるのが、この『クリーサ8』だ。
 強者との戦いを望むのならば……。
「最も遠い場所から、最も困難なルートを選ぶ」
 ギギは他の√能力者たちが見出した情報と照らし合わせて、その場所へと駆け出す。
 杞憂であれば、それでいい。
 だが、無駄足だけは踏まない。
 人間災厄『ダブルアクション』は、一度に二つに手を伸ばすのだ――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

クラウディア・アルティ
なんとーぅ!
いきなり超大変じゃないですか!
これは気合を入れていかねば(トロッコヨーグルもきゅもきゅ)

ここは【ディバイン・プロテクション】でいきます!
頼みます、ドラゴン・ミラージュ!
まずはドラゴンミストで怪我をしている人の回復を
ドラゴン・ミラージュを目立つように行動させて
わたしはてててっと視界の下の方を目立たないようにこっそり移動しつつ
皆さんを避難させましょう
邪魔になるものは全部破壊だー!
ドラゴン・ミラージュ! ドラゴンブレスお願いします!!

どこかにあるであろうセーフティエリアは事前に情報収集しておかないといけませんね
それに従って移動しましょう
頼りにしてますよ、ドラゴン・ミラージュ!

 鳴動する機械都市。
 揺れるビルディングは、まさに嵐に揺れる木々のようでもあった。
 そして、市中では弾丸の雨が降り注ぐ。
 ハッキングによって奪われた生命攻撃機能。元の機能を取り戻したセントリーガンは、照準システムこそ本調子ではないにせよ、弾丸をばらまき続けているのだ。
 この弾雨の中を駆け抜け、鳴動す戦闘機械都市にて身を潜めるしかない人々を救わねばならないのだ。
「なんとーぅ! いきなり超大変じゃないですか!」
  クラウディア・アルティ(にゃんこエルフ『先生』・h03070)は木べらでトロッコ型容器の中身を掬って口に運びながらも、戦闘機械都市『クリーサ8』へと飛び出していた。 
 結構美味しいな、『トロッコヨーグル』、と彼女は思ったかも知れない。
「兎にも角にも気合を入れていかねばですね! ディバイン・プロテクション! 頼みますよ、『ドラゴン・ミラージュ』!」
 √能力の発露によってクラウディアは護霊『ドラゴン・ミラージュ』を召喚する。

 ビルディングの影にて息も絶え絶えの負傷者を見つければ、ドラゴンミストでもって傷を塞ぐのだ。
「だいじょうぶですか? もう安心してください。きっと助けますから」
「う……だけど、あの砲塔が……」
 負傷者の言葉にクラウディアは都市のあちこちに配されている生命攻撃機能を見やる。
 無効化指定他のにも関わらず、敵はこれをハッキングし掌握しつつあるようだった。
 未だに弾丸の雨が止まないのが、その証明だった。
「わかりました。なら、あなたはここに。もし、まだ動けない人がいたら」
「わかった。担いででも」
 その言葉にクラウディアは頷く。

「それでは、頼みましたよ『ドラゴン・ミラージュ』! さあ、ドラゴンブレスです!」
 クラウディアの言葉に『ドラゴン・ミラージュ』が飛び立ち、セントリーガンの意識を惹きつける。
 弾丸が飛び、その体躯へと叩き込まれる。
 だが、構わなかった。
「邪魔になるものは全部破壊だー!」
 クラウディアの言葉と共に放たれるブレス。その一撃がセントリーガンの砲塔を打ちのめし、吹き飛ばす。
「今です! シェルターはあっちですよね! 走って!」
 その言葉に人々は一気に走る。
 未だに弾雨は続いている。 
 だが、それでも彼らを護る頼もしき『ドラゴン・ミラージュ』がついているのだ。
 吹き荒れるブレスは敵を打ち倒すため。
 満ちるミストは、傷ついた体躯を癒やすため。
 √能力の発露煌めく瞳を持つクラウディアが、人々の背を護るようにしながら駆け抜けていく。

「もう誰も死なせはしませんから!『ドラゴン・ミラージュ』!」
 その言葉に従うように咆哮する『ドラゴン・ミラージュ』。それは弾丸の音すらもかき消すように力強く、戦闘機械都市に響き渡るのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ケヴィン・ランツ・アブレイズ
都市の崩壊の音が、遠くから鳴り響いてきやがる……混乱に巻き込まれた人々の叫びが胸に突き刺さるようだ。
こんな時こそ、騎士としての俺の力を役立てる時だ。俺が守らなけりゃ、誰がやるんだよ……!

愛馬「銘無き黒騎士の名馬」を呼び出して素早く移動。道を瓦礫や障害物が塞ぐなら、「暴竜殺しの黒鉄斧」を振るって〈破壊工作〉の如く砕き散らしながら進む。落下物は〈盾受け〉〈ジャストガード〉で塞ぎ止める。
遭遇戦になりそうなら、機動力を活かして一気に間合いを詰め、〈重量攻撃〉で叩き割る。
「邪魔だッ!」

逃げ遅れた人々を見つけたら、助けに来たことを伝えて、安全な場所まで案内するぜ。
「安心しろ。誰も……傷つけさせねえ!」

 その光景に胸が痛む。
 言いようのない痛みだった。この痛みを知ることがなければ、穏やかなる日々に埋没していくだけでよかっただろう。
 だが、この痛みを知ったからには、もう捨て置くことなどできようはずもなかった。
 戦闘機械都市『クリーサ8』が鳴動している。
 崩壊の音だ。
 そして、遠く鳴り響く音にまぎれて人々の悲痛なる叫びが耳に届く。
 機械都市そのものを鳴動させるほどの簒奪者がいる。
 その事実は恐怖を呼び起こすものであったかもしれないが、ケヴィン・ランツ・アブレイズ(“総て碧”の・h00283)は、己の心を奮い立たせた。
「こんな時こそ、騎士としての俺の力を役立てる時だ。俺が守らなきゃ、誰がやるんだよ……!」

 ケヴィンは疾駆する。
 愛馬と共に機械都市を疾駆し、弾雨降り注ぐ中を駆け抜けるのだ。
 瓦礫など名馬たる己の愛馬には無意味だった。
 蹴るようにして瓦礫の合間を縫い、弾雨すらも物ともせずに速度をおたさずに走る。
「邪魔だ!」
 己たちの道行きを阻む瓦礫があれば、戦斧でもって薙ぎ払う。
 破砕された瓦礫の破片の中に、己が瞳が燃えるよに煌めくのを彼は知らないだろう。
 映るのは、大気を漂うインビジブルの孤影。
 引き出されたエネルギーによって√能力を発露させ、己が体躯に満ちる竜漿が滾るようにして右目に集約されて行くようだった。

 一瞬。
 その僅かにおいて、ケヴィンは己に迫る弾丸を認めていた。
 盾を掲げた瞬間、弾丸が弾かれる。
 衝撃が腕に伝わる。
 けれど、構わない。己を止めるには足らない。身の内側に流れる竜漿が燃え続ける限り、彼を捉える物は何一つない。
「鬱陶しいぜ、その弾幕!!」
 振るい上げた戦斧の一撃が生命攻撃機能のセントリーガンの砲塔を叩き割り、粉砕する。爆砕された砲塔を背にケヴィンは愛馬と共に駆け抜け、人々のもとに駆けつけるのだ。

「安心しろ。誰も……傷つけさせねえ!!」
 人々の安堵の表情を認め、ケヴィンは息を吐き出す。
 よかった、と思った。彼らの生命がまだ失われていなくて。だが、己の背後でまだ轟音が響いている。
 機械都市の鳴動もまた止まぬ。
 戦いはここからなのだ。
「あんた達は避難しろ。安心して良い。必ず、この騒ぎを引き起こした戦闘機械群は俺達が必ずどうにかしてくるからよ」
 そう言ってケヴィンは愛馬の嘶きと共に戦場となった都市を疾駆する。
 駆けつける。
 悲鳴の元へと駆けつけ、これを助くる。
 これが己の騎士としての本分であると知らしめるようにケヴィンは弾雨を物ともせずに走るのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

トラスト・レッドライダー
一人でも多く、ううん、一人だって死なせない!よし!!
いくよ、レッドライダー!!!

眼球型デバイスで周囲を素早く見渡し戦況を情報収集
√能力とエアバイクWZ操縦で空中ダッシュ!セントリーガンに襲われている人々の元へ急行!
都市を高速で駆けつつ自分の腕を異形化、腕機関砲を展開してWZのレーザー機関砲と一緒に制圧射撃!セントリーガンを破壊する!

大丈夫!?生きてる!!?ヨシ!!動けない人はバイクの後ろに載せて!!
あ、大丈夫よ!!お姉さん味方だから!!!

私をパッと見てベルセルクマシンとは思わないだろうけど一応ね!
シェルターへの経路をかっとび、道中のセントリーガンはレーザー弾幕で破壊し皆の避難通路を切り開くわ!

「一人でも多く、ううん、一人だって死なせない!」
 その声は弾雨と鳴動する機械都市に力強く響き渡るものであった。
「よし!!」
 同時に己の体躯に気合を入れるものであった。
 気合、なんていうものは抽象的であったし、また同時にどうしようもないほどにあやふやな概念でしかなかった。
 己の駆体は、己が性能の範囲でしか力を発揮しない。
 だが、それでもトラスト・レッドライダー(赤い機兵・h01835)は、己のココロに従う。
 仮初出会っても、偽物であっても、植え付けられたものであっても。
 どれにしたって彼女は彼女でしかない。
 今の己は。
「いくよ、レッドライダー!!!」
 そう、名付けられた名を持つベルセルクマシン。それだけでいい。
 緑の瞳……眼球型デバイスが周囲の状況をいち早く認識し、情報を収集する。
 弾雨は生命攻撃機能のセントリーガンが無差別に弾丸をばら撒いているからだ。この鳴動は、恐らく簒奪者のハッキングの影響によるものだろう。
 なら、どれを優先するかなどトラストにとっては考えるまでもないことだった。
 思考ルーチンは、すでに振り切っている。

 彼女の眼球デバイスに映るインビジブルからエネルギーを引き出し、輝くのと同時に√能力が発露する。
 バイク型ウォーゾーンのエンジンが唸る。
 炎を噴出させるようにして彼女の駆体ごと真紅に染まる。
 空気が熱せられ、一瞬で彼女とエアバイクが空を切り裂くようにして飛ぶ。衝撃が生まれ、セントリーガンの砲身が傾ぐ。
 弾雨すら吹き飛ばすような轟音。
「助けるよ!!!」
 その言葉と共にトラストの腕部が変形し、機関砲の銃身を生み出す。
 セントリーガンの弾丸に襲われている人々の元に急行するのと同時にバイクが着地し、回転すれば腕部が変じた銃身から弾丸がばらまかれ砲塔を次々と撃ち抜いていくのだ。
 次の瞬間、爆炎が立ち上る。
 砲塔を破壊した轟音に負けじとトラストは、己が助けた人々をメディカルスキャンする。
「大丈夫!? 生きてる?!! ヨシ!!」
「え、あ、お、お姉さん、だれ……?」
「あ、大丈夫よ!! お姉さん味方だから!!」
 安心させるようにトラストは笑む。
 確かに見た目だけならばお姉さんだろう。だが、その体躯が人のそれではない。こんな大きな人を見たことないとばかりにセントリーガンの弾丸から逃げ惑っていた人々は彼女を見上げていた。
 確かに、とトラストは笑う。
 今の自分がベルセルクマシンだと、彼らは思わないだろう。
 けれど、やはり、と思うのだ。

 彼らを安心させることが、己のやるべきことだ。
「シェルターへの経路はわかっているよね? わからない?」
 なら、とトラストは彼らを己のバイクへと載せて一気に加速する
「う、わああっ!?!」
 悲鳴が聞こえる。
 けれど、その悲鳴も僅かな時間だ。己のエアバイクは、かっ飛ぶようにしてシェルターへと彼らを送り届ける。
 そう、悲鳴はあまりの速度で気を失うことでかき消されていた。

「おっと……大丈夫? よね? バイタルチェック、ヨシ!」
 トラストは笑って彼らをシェルターに収容し再び駆け出す。
 何往復だって構わない。
 己にやれることをやる。それが今のトラスト・レッドライダーなのだから――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第2章 集団戦 『バトラクス』


POW バトラクスキャノン
【爆破】属性の弾丸を射出する。着弾地点から半径レベルm内の敵には【砲弾】による通常の2倍ダメージを与え、味方には【戦闘情報の共有】による戦闘力強化を与える。
SPD 人間狂化爆弾
爆破地点から半径レベルm内の全員に「疑心暗鬼・凶暴化・虚言癖・正直病」からひとつ状態異常を与える【特殊化学兵器】を、同時にレベル個まで具現化できる。
WIZ スウィープマシーン
【機銃掃射】による牽制、【粘着弾】による捕縛、【突撃体当たり】による強撃の連続攻撃を与える。
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

 √能力者達は、簒奪者である戦闘機械群が如何にして、この『クリーサ8』に侵攻しようとしているのかを知る。
 敵は、あくまで真正面から、この戦闘機械都市に踏み入ろうとしている。
「進め。同胞よ」
 短く伝わる号令。
 それに従うようにして無数の球体めいた戦闘機械群が都市の外縁が打ち破られたのを契機になだれ込んでくる。
 これまで都市が鳴動していたのは、外縁部を突き崩すためにあったのだ。
 それを成したのが、戦闘機械群を率いていた簒奪者である。
 まるでレリーフのような体躯。
 しかし、その駆体より発せられる力の強大さは、√能力者に一瞥しただけで認識させるものであった。
 今の己たちでどうにかできるのか。

 嫌な感触が拭えない。
 だが、それでも大挙としてなだれ込んでくる無数の戦闘機械群を捨て置くことはできない。
 多くの人々をシェルターに送り届けたとは言え、そのシェルターに迫られては外縁部と同じように打ち破られてしまうだろう。
 幸いに、外縁部を突破した時点で√能力者たちは戦闘機械群の前に立ち塞がることができた。
 いまなら、まだ間に合う――!
タマミ・ハチクロ
楽な迎撃戦ではありませぬが、退く訳には行きませぬゆえ。
シェルターは文字通り、死守させて頂くでありますよ。

「TMAM896」に「徹甲弾」を装填、装甲持ちにはこれに限るであります。
さらに『多重奏』を使う、これで半径21mは小生の距離。
ダブルタップはお手の物であります、【貫通攻撃】の二連射で制御中枢をぶち抜いて一機ずつダウンでありますよ。

射程の問題もありますゆえ、常に【ダッシュ】で移動し続けてバトラクスに接近であります。
多少機銃に当たるくらいなら、動けるならば気にしませぬが……粘着弾はキツいでありますな。
牽制射撃で動きを阻害されてそのまま……とならないよう、思い切って走り続けるでありますよ。

 崩落した外縁部から戦闘機械群『バトラクス』が球体の体躯を転げさせるようにしてなだれ込む。
 それは正しく雪崩そのものであったことだろう。
 球体に備わった脚部が跳ねるようにして瓦礫となった戦闘機械都市の中を進む。
 数は言うに及ばず。
 装備された機銃が動くもの全てを牽制するように狙いを定めんと左右に揺れている。

 その様を認め、タマミ・ハチクロ(TMAM896・h00625)は、しかし臆することなく前進した。
 これが楽な迎撃戦ではないことは承知の上である。
 己の駆体もまた生命攻撃機能から人々を守るために傷ついている。だが、だからといって退く理由にはなっていない。
 己の背にはシェルターがある。
 戦闘機械群の目的がなんであれ、あのシェルターだけは死守しなければならない。そう、文字通り己は死んでも護る気概があるのだ。
 手にした自動拳銃に徹甲弾を装填する。
 敵のあの球体のような駆体は、簡素さを求めた結果ではない。
 弾丸を弾く球体の装甲なのだ。ならばこそ、通常の弾頭では弾かれて効果的ではない。

「これに限るであります」
 彼女の金色の瞳が√能力の発露を示すように煌めく。
 大気を揺らめくインビジブルよりエネルギーを引っ張り出し、タマミは一気に駆け出す。
 敵の数は多い。
 だからこそ、その奥へと彼女は飛び込まねばならない。
 少女人形ならではの捨鉢さではない。
 目算ありきの突進だったのだ。
「……敵機確認。牽制射撃」
『バトラクス』の機銃より放たれる弾丸がタマミへと迫る。
「牽制射撃など、小生を止めるに値せずであります!」
 多少の命中など意に介さず、タマミは『バトラクス』の群れの中心に飛び込む。
 彼女の√能力の効果範囲は半径21m。
 これを効果的に活用するには、どうしても敵の中心に向かう必要があったのだ。それは容易ではない。
 敵だって容易く突破はさせてくれないだろう。
 己の駆体を穿つ弾丸が一つや二つではなかった。

 だが、タマミは気にもとめていなかった。
 彼女が気に留めていたのは『バトラクス』の放つ粘着弾だけだ。あれで動きを止められるのが、もっとも彼女にとって不都合な状況だったからだ。
「小生を止めれず、群れの中心に踏み込ませたのが間違いだったでありますな」
 √能力の発露を示す金色の瞳が残光を描いた瞬間、その残光を標にするように彼女の手にした自動拳銃が奏でるのは、|多銃奏《マルチプルタップ》であった。
 そこと、そこと、そこ、そして、そこ、と彼女の視線が滑るたびに弾丸が『バトラクス』の駆体を貫く。
 一瞬にして複数の『バトラクス』が奇怪な音を立てて、その駆動を停止する。
 止まらない。
 立ち止まれない。
 タマミは、視線を走らせ、弾丸を打ち込みながら、なだれ込む『バトラクス』の群れを押し留めるために己の駆体を推して戦う。
 それは銃撃の乱舞。

 銃弾の雨の中己が見を護ることもなく舞う少女人形。
 それはきっとタマミにしかできない舞いであったことだろう。
 己のみを厭わぬ、人類に貢献すること。
 それこそが己に求められたものであり、己がなさねばならないこと。
 銃撃の音は鳴り止まない。
「小生のステージはここであります、にゃ――」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ジルベール・アンジュー
外壁が破られた? 攻め込まれますね。
『航空巡洋艦隊プレデター』からの「情報収集」。それを元に市内に第二の防衛線をしきます。
主力は、『プレデター』からの砲雷撃。これで戦闘機械群を薙ぎ払っていきましょう。ぼくも【エリュシオン】で前に出ます。
市内施設を「鉄壁」の「拠点防御」にして、連装機関銃で敵機を撃破。ここで踏みとどまらなければ、この都市は陥落する。これ以上の侵攻は防いでみせます。

敵の攻撃は防御施設で受け止め、上空からの攻撃で敵の陣形が乱れたところに浮遊砲台群と共に「一斉射撃」。
人類の手に取り戻したこの都市を、戦闘機械に取りもどさせるわけにはいかないんですよ。出来る限りを尽くしましょう。

 戦闘機械群『バトラクス』たちの球体の体躯が跳ねるようにして戦闘機械都市の外縁からなだれ込む。
 それは濁流のようであったし、止めようのないものであったかもしれない。
 『航空巡洋艦隊プレデター』から伝わる情報を知って、ジルベール・アンジュー(『神童』の兄・h01027)は呻いた。
「外壁が破られた?」
 それは遅いか速いかだけの問題でしかなかったのかもしれない。
 敵が戦闘機械都市に取り付いた時点で、こうなることは予見できたことだった。だが、幸いにして他の√能力者たちが戦闘機械群がなだれ込んでくる地点を見極める事ができたことは大きかったのだ。
 如何に外縁部が破られたとて、すぐさま対処できるのならば敵の初動を抑えることができる。

「『航空巡洋艦隊プレデター』をもって第二の防衛戦とします! 砲雷撃の用意を!」
 ジルベールは己のウォーゾーンと共に戦場に飛び出す。
 だが、数が多い。
 如何に『航空巡洋艦隊プレデター』の砲雷撃であっても、迫る戦闘機械群『バトラクス』の数の脅威は損なわれることがなかったのだ。
 召喚した『航空巡洋艦隊プレデター』が次々と墜とされていく。
『バトラクス』は機銃を乱射しながら、機械都市の瓦礫を駆け上がり、更には己たちの同胞たる駆体の残骸さえも蹴って空を飛ぶ『航空巡洋艦隊プレデター』へと体当たりを敢行しているのだ。
 自身の身を厭わぬ突撃を前にジルベールは己の召喚した『航空巡洋艦隊プレデター』が数の暴威によってすり潰されていく姿を見ただろう。

「やはり数が多い……いえ、多すぎる!」
 ジルベールはウォーゾーンと共に疾駆し、『バトラクス』の球体の体躯を打ち据える。だが、球体の体躯故に銃撃の衝撃が弾かれ、装甲をへこませる程度しかできないのだ。
 だが、それでもジルエールは連装機関銃でもって『バトラクス』の侵攻を押し留める。
「ここで踏みとどまらなければ、この都市は陥落する。これ以上は!」
 させない、とジルベールは浮遊砲台群『アポロニア』 と共に『バトラクス』と激しい銃撃戦を繰り広げる。
 ビルディングの瓦解した瓦礫を盾にしながら、『バトラクス』を一体一体確実に仕留めていくのだ。

 それは消耗戦に違いないものであったことだろう。
 相性の悪さ、というものもあったのかもしれない。
「くっ……ですが、人類の手に取り戻したこの都市を、戦闘機械に再び奪われるわけにはいかないんですよ」
 そう、できる限りを尽くさねばならない。
 人類は己の持ちうるリソースの全てを費やして、なんとか踏みとどまっている。
 それが戦闘機械群ウォーゾーンの気まぐれに過ぎないのだとしても、まだ生きているのだ。
 ならばこそ、抗う。
 その意志をジルベールは胸に抱き、力を尽くすように盾としていた瓦礫を飛び越えてきた『バトラクス』に組付、浮遊砲台の銃撃を集約して破壊する。
「まだ、できることはあります!」
 どんな劣勢に立たされようとも、抗う意志さえあるのならば、人類はまだ負けない。
 死ぬかも知れないが、それでも負けるようにはできていないのだと示すようにジルベールはウォーゾーンを駆り、劣勢たる迎撃戦を戦うのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

クラウス・イーザリー
「多勢に無勢でも、退く理由にはならないな」
俺の後ろには沢山の人の生命があるからね

敵群を射程に捉え次第、決戦気象兵器『レイン』を起動
大量のレーザーで敵群にダメージを与える

以降は敵が接近してくるまで決戦気象兵器とレイン砲台での弾道計算+レーザー射撃で遠距離攻撃
敵からの攻撃は見切りで躱しながら遠距離戦を続けるよ

敵との距離が詰まってきたら接近戦
後ろに通すわけには行かないからね

自分の射撃に隠れるようにダッシュで接近して斧での鎧砕きで粉砕
敵に袋叩きにされそうになったら電磁ブレードで機能停止を狙って時間を稼ぐよ

傷付いても恐れず、怯まない
人を助けるためならこの程度大したことじゃない

※アドリブ、連携歓迎です

 √能力者たちの√能力が発露している。
 インビジブルから引き出されるエネルギーの明滅を見れば、それがどれだけ苛烈な戦いであることかを知ることができるだろう。
 いつだってそうだ。
 戦いというものは人類にとって、劣勢を強いるものであった。
 今回の戦いもそうだった、というだけのことでしかない。
 だからこそ、クラウス・イーザリー(人間(√ウォーゾーン)の学徒動員兵・h05015)の心は凪いでいた。
 驚きも、恐怖も、嘆きも。
 全て失っては居ない。
 けれど、目の前の状況に対して、取り乱すことだけはしなかった。そうすることが己を助けることにはならないし、また助けるべきものたちを救うことにはならないからだ。

「多勢に無勢でも、退く理由にはならないな」
 希望的な観測などない。
 そもそも己には希望というものが欠落している。
 希望がなければ絶望もない。
 何も望まないからこそ、失うものなどない。
 けれど、理由だけが己の体を突き動かすのだ。
 迫るは戦闘機械群『バトラクス』。
 球体の体躯を持って跳ねるようにして機銃を乱射しながら、此方に向かっている。
 慢心ではない。
 彼らにとって、それは当然の帰結だった。
 圧倒的な数による飽和攻撃。機械都市の外縁部が破られたのだって、当然の結果に過ぎないのだ。

 だからこそ、クラウスは落ち着き払って決戦気象兵器「レイン」 を起動する。
 敵の群れを捉えた瞬間、大量のレーザーが『バトラクス』の装甲へと激突して火花を散らす。
 威力は低い。
 だが、光の洪水のようにレーザー攻撃が『バトラクス』たちに降り注いでいるのだ。
「押し留められるか……?」
 火花をちらしながら『バトラクス』が進み来る。
 最前列の『バトラクス』が例え、レーザーで焼き切られようとも後続の『バトラクス』が破壊された駆体を踏み越えてやってくるのだ。
「くっ……!」
 放たれる機銃。
 さらには体当たりを敢行するように球体の駆体がクラウスに迫る。
 距離を詰められたのだ。
 歯噛みしながら、レーザー光線の眩さに紛れるようにして体当たりを躱し、手にしたバトルアックスでもって強引に『バトラクス』の駆体を叩き割る。
 ひしゃげた駆体から備品が飛び散り、クラウスの頬をかすめる。
 痛みを憶えている暇なんてない。

 傷つくことを恐れていては、前に進めない。
 痛みに怯んでいては、先に進めない。
 それに、とクラウスは迫りくる『バトラクス』の群れを前に立ち塞がる。
 そうだ。
 そうなのだ。
「俺の後ろへと活かせるわけにはいかないからね」
 レーザー光線を放ちながらバトルアックスを振るい続ける。
 己にできることを。例え、敵に囲まれるのだとしても、電磁ブレードより放たれた電磁パルスでもって『バトラクス』の動きを一時的に止める。
 溢れるレーザーの奔流と共にクラウスは戦場を駆け続ける。
 これが僅かな時間稼ぎに過ぎないのだとしても。
「人を助けるためなら、この程度大したことじゃない」
 それでも、これが当たり前なのだ。
 これが己なのだ。
 そう示すようにクラウスは熾烈なる戦いを戦闘機械群の残骸の中で続けるのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

薄羽・ヒバリ
避難誘導はバッチリ完了ー!
んで、今もこうして戦闘機械群を食い止めることができてる
大丈夫、風は私達についてるよっ

Key:AIRを操作しCODE:Chaseを起動
20体のレギオンを放ち、前線のバトラクス達へと一斉にレーザー砲の範囲攻撃を浴びせちゃえ
後方に続くバトラクス達へも追尾ミサイルを放って、ここを突破されないように

集団戦なんて、演習でも実戦でも何度も経験してるっての
ここから先は絶対に通さないし!

その代わり暇しないよーに、私のドローン操縦のテクニックを特等席で見せてあげる
ね、すごいっしょ?

顔にもネイルにも傷は付けたくなーいっ
Def:CLEARのエネルギーバリアも展開して守りもしっかり固めておこ!

「それじゃあ、いってくんね!」
 薄羽・ヒバリ(alauda・h00458)はシェルターに人々を避難させて身を翻した。
 時間は多くはない。
 すでに戦闘機械都市『クリーサ8』の外縁部は突破され、簒奪者たちの群れ、戦闘機械群『バトラクス』たちがなだれ込んできている。
 球体に移動用の脚部がついた奇妙な姿。
 しかし、その脅威は言うまでもない。
 不安そうな視線を背に受けてヒバリは振り返って笑む。
「大丈夫、風は私達についてるよっ」
 シェルターから此方を見送る人々の不安げな視線を拭うようにヒバリは颯爽と戦場に駆け出す。
 走る彼女の眼前にキーボードが現れ、それを軽やかにタップする。

「|CODE:Chase《コードチェイス》、起動っと!」
 彼女の瞳に大気に揺蕩うインビジブルが映し出される。
 揺らめくインビジブルからエネルギーを引き出し、キーボードを叩く音が奏でる音がヒバリの心を高揚させる。
 引き出されたエネルギーと共に小型無人兵器『レギオン』が二十を数えるほどに出現する。
「オーケー、いってらっしゃい!」
 飛ぶ『レギオン』から放たれたレーザー砲の範囲攻撃が『バトラクス』たちを襲う。
 熱線の一撃を球体の装甲で受けながら機銃が乱射され、飛翔する『レギオン』を撃ち落とさんと粘着弾を放つ。
 さらに球体を活かした砲弾のような体当たりで『レギオン』を撃ち落としていくのだ。
 けれど、それはヒバリにとっては想定内であった。

「集団戦なんて、演習でも実践でも何度も経験してるっての。ならさ!」
 キーボードを叩く。
 気分を上げていかなければならない。
 戦いにおいて戦意高揚というのは馬鹿にならない。例え、相手が戦闘機械群であったとしても、人類に戦闘機械群よりまさるのは意志のみだ。
 故に彼女は叩くキーボードのサウンドをオンにしてリズムに乗る。
 敵の数は多い。
 ならばこそ、音の濁流だと捉えれば良い。
 整理して、整然といなしていく。
 彼女が操る『レギオン』は確かに『バトラクス』の攻撃によって撃ち落とされもするだろう。だが、直ぐ様にカバーに入り、配置を網目のように変えていくのだ。

「ここから先は絶対通さないし!」
 走る指先。
 叩くキーボードが軽快に跳ね上がる音をたて『レギオン』が火線と共に飛ぶ。
 それはプロジェクションマッピングのように戦場を彩っていく。
「これが私のドローン操縦テクニック! 特等席だよっ。ね、すごいっしょ?」
 叩く指先のネイルは一欠もさせない。
 展開したエネルギーバリアの中でヒバリは、風切羽の切っ先から滴る汗を散らしながら、無数の『レギオン』による絶対防衛線を守り抜くのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

エアリィ・ウィンディア
うまく逃げてもらえているなら…。あとは、ここを守り切るだけだよね。
…それじゃ、全力で行かせてもらうよっ!!

敵影を発見したら、高速詠唱で隙を減らし、多重詠唱で魔力溜めと魔法の同時詠唱。

敵をまとめた位置に誘導するために、左手の精霊銃で乱れ撃ちしていくよ。
狙いは撃破じゃなくて、敵を纏めるための動き…。

敵がある一定数まとまったら…
さぁ、いくよ、殲滅精霊拡散砲!
一撃ずつは威力が低くても、この手数は防ぎきれないでしょっ!!

撃ち終わっても警戒は怠らずに。
接近する敵影がいるなら、精霊銃で牽制を仕掛けながら、右手の精霊剣で一閃して切断っ!
ふふーん、遠距離型ってわけじゃないんだよ、あたし。
だから、油断大敵ってね。

 エアリィ・ウィンディア(精霊の娘・h00277)は、√ウォーゾーンに踏み出す。
 小柄な体躯を走らせ、戦闘機械都市『クリーサ8』の惨状を見つめる。
 外縁部からは球体のような体躯をした戦闘機械群『バトラクス』が跳ねるようにしてなだれ込んできている。
 装備した機銃から弾丸をばらまき、破壊を拡大させていく。
 その進撃は苛烈。
「市民の人たちは……うまく逃げえもらえているなら……あとは、ここを守り切るだけだよね」
 彼女は青い髪を揺らして駆け出す。
 呟くように、歌うように詠唱を紡ぐ。
 拘束詠唱によって、それは言葉ならざる音としてしか他者には認識できないだろう。けれど、エアリィにはそれが己が√能力を発露するための準備だったのだ。

「それじゃ、全力でいかせてもらうよっ!!」
 手にした精霊銃から乱れ放たれる弾丸に『バトラクス』たちは気がつき、エアリィへと機銃の掃射を行う。
 弾丸がばらまかれ、頬を掠めた。
 けれど、エアリィは戦場を駆け出し、瓦礫を蹴って飛ぶ。
 それは敵の注意を引き付けるものであった。
 それ故に膨大な数の『バトラクス』に狙われることになったのだが、彼女は構わなかった。
 走る、走る、走る。
 走って、己の背中を追う『バトラクス』の群れを認めエアリィは、続けていた詠唱を仕上げるようにして叫ぶ。
「六界の使者たる精霊達よ、集いて力となり、我が前の障害を撃ち砕けっ!」

 彼女の背を追う『バトラクス』達は見ただろう。
 エアリィが紡いだ詠唱によって展開した6つの属性がきらめく魔法陣を。
「|殲滅精霊拡散砲 《ジェノサイド・エレメンタル・ブラスト》!」
 魔法陣より放たれるのは三百を超える魔法弾。
 飽和攻撃というのならば、きっとそうなのだろう。
 彼女は己を追い迫る『バトラクス』たちをひとまとめにするために戦場を駆け抜け、敵の注意を引き付け続けていたのだ。

 如何に一撃一撃の威力が退くのだとしても、三百を超える魔法弾を『バトラクス』たちが躱せる道理もない。
「一撃ずつは威力が低くても、この手数は防ぎきれないでしょっ!!」
 放ち終えたエアリィは肩で息を吐き出す。
 だが、まだ戦いは終わっていない。
 粘着弾が飛び、彼女の足元を固着させる。そこへ、『バトラクス』が魔法弾の爆煙のなからから飛び出してくるのだ。
 破れかぶれの突撃。
 だが、エアリィは精霊銃の銃口を向け、球体の駆体を打ち据える。
 さらにもう片方の手で握りしめた精霊剣の一撃で『バトラクス』を弾き飛ばすのだ。
「ふふーん、遠距離型ってわけじゃないんだよ、あたし」
 戦闘機械群であるのならば、それをスペックと呼ぶのだろう。
 けれど、エアリィは己がそうではないことを示すように手にした精霊剣を携えて笑む。
「だから、油断大敵ってね――」
🔵​🔵​🔵​ 大成功

星宮・立希
ギリギリ間に合っ……ってないじゃないのよ!?
でもここで食い止めれば何とかなる……筈!やってやるわよ!
……これが今後も関わる戦いの恐怖……それでも……!

雑に範囲攻撃!なんて能力があれば良かったんだけど私はないのよね
だから一体一体確実に接近して落としていくわ、幸い|走り回る《"ダッシュ"》のは慣れてるから
肩から生やす「射弾翼」による|羽のばら撒き《"牽制射撃"》で隙を作って「護霊」による実体化した拳で沈める
あとできる限り多くの敵を常に視界内に納めとく
そうすれば要所要所で発動する『魔獣装・蛇眼睨』で多くの敵が止められる
基本的には数秒程度、ヤバそうなら長めに使うわよ
絶対にこの危機を超えてやるんだから!

「ギリギリ間に合っ……てないじゃないのよ!?」
 星宮・立希(外れた√を歩む者・h01004)は戦闘機械都市『クリーサ8』の外縁部に到着して、目を見開いた。
 そこにあったのは、外縁部の外壁をこじ開けてなだれ込む無数の戦闘機械群『バトラクス』の姿であった。
 球体の駆体。
 機銃と脚部がついた奇妙な姿。
 それらが群れをなして『クリーサ8』の内部へと侵入してきているのだ。
 いや、進撃というのが正しいのだろう。

 都市の鳴動は、この防壁を破るためのものだったのだ。
 なだれ込んでくる数は、正しく暴威。
 これだけの数を前にして人類は無力だ。
「でも、ここで食い止めればなんとかなる……筈! やってやるわよ!」
 どうしようもないほどの数だ。
 はっきり言って、恐怖を覚えるほどの数。けれど、それでも立希は頭を振る。
 弱気な思考を追い出すようだった。

「……これが今後も関わる戦いの恐怖……それでも……!」
 走り出す。
 駆け出す。 
 それは同じことだったかもしれないが、それでも前に駆け出した立希の瞳は√能力に輝いていた。
 大気を揺らめくインビジブルの孤影が彼女の瞳を通り過ぎていった。
 瞬間、彼女は叫ぶ。

「怯えなさい!」
 その言葉は戦闘機械群にとっては理解できない言葉であった。
 だが、それ自体がルート能力。
 彼女の瞳が捉えた『バトラクス』が弛緩するように動きを止めたのだ。
 そう、それこそが|魔獣装・蛇眼睨《アームズ・スネークアイ》。彼女の叫びを聞き、彼女の瞳に捉えられた存在は麻痺したように動きを止めるのだ。
 立希は雑に範囲攻撃を行う手段を持ち得ていなかった。
 だからといって戦わない理由はなかった。
 できることをやるだけなのだ。それしかない。
 故に彼女は弛緩した『バトラクス』の駆体の前に飛び出し、護霊によって実体化した拳の一撃を叩き込んで沈める。

 だが、彼女を取り囲む『バトラクス』の数は多い。
 如何に彼女の視界内の『バトラクス』をルート能力によって動きを弛緩させることができたとしても、それ以上に数が多いのだ。
 放たれた特殊化学兵器が噴出する煙が彼女を包みこんでいく。
「なにこれ!?」
 吸い込んでしまった。
 何が、と思った瞬間に立希の中に生まれるのは己に対する疑心暗鬼。猜疑の心だった。
 果たして、己が戦えるのかという不安。
 どうにもならないのではないかという恐怖。
 それらが『バトラクス』の特殊化学兵器より噴出した煙によって引き出されたのだ。

 瞳を伏せそうになる。
 不安に、恐怖に心が押しつぶされそうになる。
 汗が額より流れ落ちる。冷や汗なのか脂汗なのかもわからない。けれど、それでも立希は恐怖を踏み越える。
 それでも、と彼女は駆け出したのだ。
 なら、前進するしかない。
「絶対にこの危機を超えてやるんだから!」
 叫ぶ。
 迷いも恐怖も不安も振り切るように彼女は肩から生えた羽をばら撒いて、迫りくる『バトラクス』を吹き飛ばし、己の胸中に渦巻く不安と恐怖と戦うのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ギギ・ココ
壁をぶち破って正面突破 やはりな
分かりやすく、そして最も脅威になる戦術だ
骨が折れるが…….ここで迎撃しなければ

前に出る 攻撃は最大の防御だ
あのボディに散弾は効果が薄い スラッグを装填して対処する
『死は二度ずつ微笑む』──機械に死があるかは知らないがな

二倍、そして二倍 実質の行動速度は四倍に至る
【ダッシュ】してバトラクスの群れに接近して、【二回攻撃】の【乱れ打ち】だ
スラッグの威力で装甲を砕いて、壊して壊して、壊し回ろう

機銃掃射も粘着弾も、体当たりも…この速度で振り切ればいい
装填数二発の弱点も、このリロード速度で補って余りある
ウォーゾーンじゃこの手の銃はクラシックだろうが…問題にもならないな

「やはりな」
 ギギ・ココ(分かたれた二つ・h01394)は、戦闘機械都市『クリーサ8』の現状を理解する。
 この機械都市に攻め込んだ戦闘機械群は正面からの突破を望んでいる。
 都市の鳴動は、外縁部の防壁をこじ開けるものであったのだろう。
「わかりやすく、そして最も脅威になる戦術だ」
 単純明快。
 だが、それだけの力押しができる存在なのだ、簒奪者というものは。

 故にギギは息を吐き出すようにして整えた。
「骨が折れるが……ここで迎撃しなければ」
 敵が前進のみをもって防壁をこじ開けたようにギギもまた前に踏み出す。
 絶対にこれ以上敵を前に進ませてはならないというのならば、防衛線を押し上げるためにギギは踏み出す。
 すなわち、攻撃は最大の防御である。
 球体めいた体躯をした『バトラクス』が機銃を乱射しながら、脚部をたわませて跳ねるようにして都市の内部をひた走る。

 あの球体のボディには散弾のような面の攻撃は弾かれてしまう。
 かと言って、経の小さい弾丸は効果が薄いだろう。
 スラッグ弾を装填し、ギギは己のアサルトウェポンの銃口を向け、その瞳をルート能力に輝かせる。
 インビジブルより引き出したエネルギー。 
 それによって√能力者は、その√能力を発露させる。

「|死は二度ずつ微笑む《ダブルアクセルキリング》――機械に死があるかは知らないがな」
 引き金に掛けた指。
 その指が引かれた瞬間、放たれる弾丸は二重の銃声を伴って『バトラクス』の球体の体躯へと激突する。
 火花が散る。
 重たい弾頭が装甲を打ち抜き、その内部を破壊する。さらに続けて放たれた弾丸が破壊した内部を、さらにかき回すように吹き飛ばす。
 さながら、それは内部から破裂したように『バトラクス』の駆体を破壊し粉砕するのだ。

「……数が多いな」
 己を取り囲む『バトラクス』の数の暴威。
 だが、ギギは構わなかった。
 例え、数で迫るのだとしても己は構わない。
 √能力の発露を示すように彼の瞳は輝きを放ち、迫る機銃の掃射を瓦礫を盾にして駆け抜けて躱し、弾丸を撃ち放つ。
 粘着弾が己と瓦礫とを繋ぎ止めるのだとしても関係ない。
 己の速度は既に2倍速。
 例え、敵に捉えられるのだとしても、振り切ってしまえば良い。

「ウォーゾーンじゃ、この手の銃はクラシックだろうが……問題にもならない」
 迫りくる『バトラクス』の群れを前にしてもギギは流れるような動作でもって弾丸をポーチから取り出し装填する。
 そう、問題にならない。
 数も、装備の質も。
「壊して壊して、壊し回ろう」
 来い、とギギはつぶやき迫りくる『バトラクス』の残骸を山のように積み上げながら、数という暴威の波に立ち向かうのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

水垣・シズク
とりあえず、最も戦いにくい戦場は切り抜けましたね。
真正面から来る相手とすら戦えないのであれば、そもそもここに来る理由は無いというもの。
あのやたらどこにでもいる量産機体の研究は進めてきました。もちろんそれに効く呪詛も。

基本はカーゴドローンに搭載した認識阻害バリアで身を隠しつつ、関節と装備狙いで劣化の呪詛をばら撒いて行きます。
脚がなければ体当たりも機銃掃射もできませんし。粘着弾でカーゴを狙われることだけ気を付ければ落とされることは無いはずです。
劣化したキャノンあたりを打ちそこなって自爆でもしてくれれば万々歳ということで。

生憎と守る戦いは得意ではありませんが。
サポートの手数だけは揃えてきましたから。

 他の√から√ウォーゾーンを認識しながら、水垣・シズク(機々怪々を解く・h00589)は、戦闘機械都市『クリーサ8』の現状を認める。
 外縁部の防壁をこじ開けて侵入してきた戦闘機械群『バトラクス』。
 球体に脚部を備え、武装と一体化した戦闘機械群は数という暴威でもって蹂躙しようとしている。
 とは言え、彼女にとて最も戦いにくい戦場であったのは、生命攻撃機能から人々を守り、避難させることだった。
「真正面から来る相手とすら戦えないのならば、そもそも此処に来る理由はないというもの」
 シズクは別√から足を踏み出す。
 境界を超え、彼女が√ウォーゾーンに踏み出したのは勝算があったからだ。
 彼女の頭上を飛ぶカーゴドローンから放たれる認識阻害バリアは、シズクの姿を覆い隠す。
 これで敵に認識される恐れはないだろう。
「それに、あのやたらとどこにでもいる量産機体の研究は進めてきました」
 もちろん、と『バトラクス』を見やるシズクの瞳が輝く。
 そう、『バトラクス』は戦闘機械群ウォーゾーンの中においても最も数の多い駆体である。
 人類が破壊したウォーゾーンの中でも同様だ。
 であるのならば、彼女は常日頃から食料と交換しているスクラップの中でも見る頻度は高い。
 そして日々、そうした戦闘機械のスクラップを解析している彼女にとって『バトラクス』とは戦わずともよく見知った存在でしかないのだ。
「勿論、それに効く呪詛というものも、ね」
 あの『バトラクス』は人類に武装を鹵獲されぬように機銃などと体躯が一体化しているものが多い。
 故に一度破損してしまえば、修復は難しい。
 仮に復旧したとしても、十分な働きはできないだろう。
 故に彼女が狙ったのは、その脚部。
 跳ねるようにしてこじ開けた防壁からなだれ込む『バトラクス』の機動力を支えているのは、あの脚部なのだ。

「だから、その脚部を狙います。劣化の呪詛。跳ねる、ということはそれだけ脚部に負荷がかかるということ。劣化すれば、当然」
 跳ねようとした駆体が、ガクリと体勢を崩してそのまま地面に激突する。
 脚部に不備があれば、体当たりの突撃も敢行できない。機銃をもって掃射しようとしても、狙いをつけることも叶わない。
「後は、粘着弾だけに気をつけていれば、後はイージーというわけです」
 彼女の瞳は冷静に『バトラクス』たちの行動を見つめていた。
 周囲を飛ぶ、下級怪異を寄生させた小型無人兵器たちは、『バトラクス』を探知して劣化の呪詛を施した小型ミサイルを放ち続けている。

「通達、脚部を狙い続けなさい。それ以外は無視で」
 |行動要請:優先順位の変更《オーダー・プライオリティアップデート》によって、小型無人兵器たちは次々と劣化の呪詛を宿した小型ミサイルをばらまき続けている。
 シズクにとって、『バトラクス』はもう見飽きた戦闘機械群でしかないだろう。
 彼女が狙うのは、戦闘機械群の中でも最も稀有なる存在。
 そう、この機械群を率いるスーパーロボット『リュクルゴス』なのだから――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

七々手・七々口
「こりゃまたすげーのがいるなぁ。パーツの一部でも奪えりゃ金になりそうだ。」
まあ、先ずはコイツらからか。

囲まれるとめんどーだし、常に動き続けながら立ち回るとしよう。めんどーだけど。
牽制攻撃は魔手達の防御で防ぎ、粘着弾はそこらの瓦礫を魔手達に投げて迎撃してもらうか、強欲な魔手で手元に引き寄せて逆に相手に投げ返すとかかね。
体当たりは動きを見切って回避ってな感じで。

√能力は敵が多くいる所目掛けてぶち込む。なるべく多くを巻き込めれば良し。
殴って出来た敵の残骸も魔手達に頼んで、敵に向けて投げといてもらっとくかな。

 球体のような駆体。
 それに足が付いている。
 跳ねるような姿は、ともすれば虫のようであったし、群れなし行動する様は忌避感すら憶えさせただろう。
 同じものが沢山。
 それは生命的な本能として恐怖めいた感情を想起させるものであった。
 だが、七々手・七々口(堕落魔猫と7本の魔手・h00560)は、金色の瞳を見開いて、むしろ驚愕していた。
「こりゃまたすげーのがいるなぁ」
 それもたくさん。
 ぴょんぴょん跳ねるようにして、こじ開けられた防壁、機械都市の外縁部からなだれ込んできている。

 あれが『バトラクス』というのだと七々手は知らなかったが、ああした鉄の塊というか、動き回るものは金になるのだということだけは知っていた。
「パーツの一部でも奪えりゃ、金になりそうだ」
 金があれば、好物の酒と煙草も買える。
 魚の刺し身だっていい。
 そういう算段を頭の中で建てようとして、七々手は、それよりも、と己を囲う魔手から顔をのぞかせる。
 すると『バトラクス』たちは己を敵と認識したようである。
 球体の丸っこい体躯に備わった機銃の乱射でもって弾丸をばらまきながら、此方に迫ってくるのだ。
「なんとも面倒だなぁ」
 魔手で銃弾を弾きながら、一つ欠伸を噛み殺す。
 面倒だ。
 囲まれでもしたら、さらに面倒が倍増になってしまう。

 なら、と己を抱える魔手と共に七々手は戦場を駆け抜け、瓦礫積み重なる道なき道を走る。
 その背を追うようにして『バトラクス』たちは、その奇妙な脚部でもって跳ねながら、粘着弾を放ってくるのだ。
「やっぱり面倒だな。くだたばれ」
 瓦礫の頂点を蹴って七々手は、しつこい『バトラクス』たちを睥睨する瞳にインビジブルの影を映し出す。
 引き出すエネルギーを受け止めた魔手の一つが|憤怒の巨拳《フンヌノキョケン》として炎を噴出させながら『バトラクス』の頭上に巨大化するのだ。
 炎という光を放ちながら、その巨大な拳は『バトラクス』の体躯を一瞬で打ち据える。
 まるで鉄槌のような一撃。
 しかし、それはただの一撃では終わらない。
「一撃で砕けぬのならば、砕けるまでぶっ叩くのみよ」

 そのまるで地団駄を踏むような巨拳の衝撃は、周囲にあった『バトラクス』たちを巻き込みながら、その群れを破壊の渦へと引きずり込んでいく。
「ま、ざっとこんなものよ」
 魔手の手のひらの中で、七々手はまた一つあくびを噛み殺し、巨拳に粉砕された残骸を見て、壊しすぎた……と思うのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ケヴィン・ランツ・アブレイズ
ちっ……嫌でも思い出しちまうな。俺の故郷が滅ぼされ、皆死んだあの日のことを。
ここでも故郷と同じ悲劇が……いいや、繰り返させるもんか!
何としても、この場で全部ぶっ倒してやる!

「古臭い戦い方だからって、俺が負けると思うなよッ!」
〈闘争心〉を奮い立たせ、愛馬を駆って敵陣に斬り込む。
〈騎乗〉の腕を活かしつつ〈ジャンプ〉〈盾受け〉〈念動力〉〈ジャストガード〉で弾幕をかいくぐりつつ、〈重量攻撃〉〈属性攻撃〉を合わせた〈鎧砕き〉を仕掛けて装甲をブチ破る。
防ぎきれない砲撃は〈オーラ防御〉〈激痛耐性〉で凌ぐぞ。
キャノン砲を撃ってきたら、いったん盾を収め、右掌の《ルートブレイカー》で相殺。
「視えてんだよッ!」

 あんな光景は二度と見たくないと思った。
 その思いは何処にも行かなかった。どれだけ時間が過ぎ去ったとしても、己の心から消えることもなければ、薄えることもなかった。
「ちっ……」
 舌打ちする。
 どうしようもない感情が己の中で渦巻いていることをケヴィン・ランツ・アブレイズ(“総て碧”の・h00283)は自覚しただろう。
 嫌でも思い出してしまう。
 この戦闘機械都市『クリーサ8』を覆う状況は、己の故郷が滅ぼされ、周囲にあった親しい人々が尽く死に絶えたあの日のことと重なるものだった。
 ここでも故郷と同じ悲劇が起こっている。
 それは間もなく現実のものとなるだろう。
 己が幻視したものと、現実が同じになってしまう。

「……いいや、繰り返させるもんか! 何としても、この場で全部ぶっ倒してやる!」
 だが、現実的な問題として防壁をこじ開けて侵入してきた戦闘機械群『バトラクス』の数は暴威そのものだ。
 数をどうにかしようとしても、立ち行かなくなるのは目に見えている。
 だからといってケヴィンは己が此処でひいてはならぬことを知っているのだ。
 闘争心を奮い立たせる。
 駆る愛馬は、己の心を映し出す。よく理解してくれている。だからこそ、恐怖を噛み殺し、共に戦場を駆け抜けてくれるのだ。

『バトラクス』たちは、即座にケヴィンを認識し、爆破するような砲撃を叩き込んでくる。
 爆発する瓦礫を愛馬は俊敏に蹴り上げ交わしていく。
「俺を止められると思うなよ! 俺が負けると思うなよッ!!」
 負けん気だけではどうにもならない。
 そんなことわかっている。だからこそ、ケヴィンは迫る『バトラクス』の砲撃をかいくぐりながら、戦斧の一撃を叩き込む。
 球体のような駆体。
 その装甲は面の衝撃をうまく逃がすだろうが、圧倒的な重量たる一撃を前には破砕するしかないだろう。

「やれる……!」
「――、敵機脅威判定」
 その瞬間、『バトラクス』のキャノンが火を吹く。
 それをケヴィンは見逃さなかった。盾を宙に投げ捨て、己が右掌を突き出す。
 彼の瞳にはインビジブルの孤影が揺らめいていた。
 引き出されたエネルギー。
 それによって彼の√能力……ルートブレイカーが発露する。
 如何なる√能力であろうとも、その右掌は全てをかき消す。それが爆風であろうとなんであろうと、√能力であるのならばかき消してみせるのがルートブレイカーと呼ばれる√能力であった。
「視えてんだよッ!」
 爆風を切り裂きながら宙を舞い、落ちてきた盾が右掌に掴まれる。
 瞬間、『バトラクス』の駆体をひしゃげさせるようにして粉砕し、ケヴィンは戦場を駆け抜ける。
 もう二度と戻らぬを知り、それ故に栗化して張らぬ悲劇を知るが故に、彼は己が全力でもって駆け抜けるのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

クラウディア・アルティ
とりあえずの危機は脱しましたか
でも全然油断できなくて、毛がしゃーっと逆立ちしそうなそんな気配!
いきましょう、今ならまだ間に合います!

数が多いですね
被弾も覚悟しつつ、でも敵を確実に減らしていくことが大事
そうです、こんな所で挫けている暇はないのです
『生徒』達も待っていますし、まだまだ『卒業』には程遠い可愛い子達ですし
それに『いつか』わたしは『あなた』と会うのです
それが例え、刹那ほどの可能性しか無くとも
【希望の物語】は此処に在るのです!

さー、先生頑張っちゃいますよー!
此処なら魔法も使いたい放題
魔導書も全開でいけますから
『|シェルム・ツァールト・グリモワール《悪戯好きの優しい魔導書よ》』
起きて、そして力を貸してください!
【ウィザード・アイシクル】でいきます!
3つくらいにしておきましょう、わたしも動けなくなっちゃいますから
その代わり、攻撃はどかーんといっちゃいますからね!!
はっしゃーーーー!!!

 人々の避難誘導を終えることができたのは、幸いであった。
 機械都市『クリーサ8』を襲った戦闘機械群。
 都市を鳴動させていたのは、その外縁部たる防壁をこじ開けるためであった。そして、今まさにこじ開けられた亀裂から『バトラクス』たちが、その奇妙な球体の体躯と共になだれ込んできている。
 数の暴威と呼ぶのならば、その通りなのだろう。
 機銃を乱射し、凄まじい勢いで持ってなだれ込む『バトラクス』は一気にシェルターまで攻め入るだろう。
 そうはさせぬと、多くの√能力者たちが防衛線をしき、これを食い止めている。

「とりあえずの危機は脱しましたか」
 でも、とクラウディア・アルティ(にゃんこエルフ『先生』・h03070)は己の全身の毛が未だに総毛立つような気配を感じていた。
 まだ油断はできない。
 数の暴威もそうであるが、それ以上に後に控えているであろう存在の圧倒的な力を感じていたのかも知れなかった。
「行きましょう、今ならまだ間に合います!」
 防壁をこじ開けてきた『バトラクス』たちを押し出し、その奥にあるであろう存在を打ち倒す。
 そうすることができれば、この戦闘機械都市を襲った敵も後退していくだろう。
 後は都市の自動修復機能でもって防壁は塞がれ、人類は奪った機械都市の中で再び、安寧を得ることができるはずなのだ。

「敵機確認」
「おっと、どっからでも目をつけられますね!」
 機銃の乱射と共に『バトラクス』の群れが迫っている。
 傷を追うことを恐れてはならない。
 くじけている暇もない。
 そう、クラウディアの心には『生徒』たちがいる。彼女たちがまっているのだ。
 まだまだ子供な彼女たち。
『卒業』にはまだ程遠く、可愛い子たち。
 あの子達を悲しませる事はできない。
 それに。
「『いつか』わたしは『あなた』と会うのです。それが例え、刹那ほどの可能性しかなくとも。|希望の物語《キボウノモノガタリ》は此処にあるのです!」
 未来への希望や夢は、己の力。
 √能力の発露によって彼女の首位に広がるのは、魔力満ちる光り輝く舞台。

 此処にあってクラウディアは物語の主人公その人。
 ならば、己が認める視界の全てが頁。
 古代の叡智と呪文が記された魔法の書物がクラウディアの眼前に浮かび、力を引き出す。
「さー、先生頑張っちゃいますよー!」
 全開にした魔導書。
|『シェルム・ツァールト・グリモワール』《悪戯好きの優しい魔導書よ》――そう呼ばれた魔導書は、頁を羽ばたかせるようにしてクラウディアにインビジブルから引き出した力を注ぎ込む。
「起きて、そして力を貸してください! ウィザード・アイシクル! 撃ち穿て、滅びの白!!」
 彼女の頭上に飛ぶは、羽根つきの氷宝玉。
 それは一斉に『バトラクス』を認めた瞬間、一撃で駆体をぶち抜くのだ。
 粉砕された駆体から飛び散る破片。
 浮かぶ駆体は内側から膨れ上がるようにして爆発し、爆煙という名の幕を戦場に下ろすだろう。

「これが先生の全開ですよ! さあ、次々どかーんといっちゃいますからね! はっしゃー!!」
 クラウディアは氷の宝玉を次々と放つ。
 舞台から一歩も動けないが、しかし敵が何かをする前に強力な一撃で内貫いていく。
 今の彼女の全ての攻撃は必中。
 逃れるすべもなく、ただ只管になみいいる『バトラクス』を爆砕し、その爆煙たる幕を広げ続けていく。
 戦いという幕はいっときでも早く卸さなければならない。
 クラウディアは、己という物語の舞台に立つ主役として、そして何よりも『生徒』たちの先生としての役割を全うするために広げられた頁羽ばたく魔導書より流れ込む圧倒的なエネルギーで敵を打ち倒すのだった――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

レイ・イクス・ドッペルノイン
『圧倒的物量でゴリ押しってワケ?単純だね』

制御系統乗っ取ろうとした所で即対策打たれるから、クラウドコントロールは無理だよ玲子

『デバフなんてかけている暇あるか、言った通りに動いて『無の取得』をしな』

砲撃回避行動、右に5歩、前に20メートル直進、左に3歩、後ろに10歩、その場で機械細胞の【肉体改造】で霧散、敵の至近距離で機械細胞を再統合し出現、相手の砲撃発射と同時にグラビティ・スノウのエネルギーを込めたペネトレイターの砲撃で相殺【爆破】すれば――

『爆風の代わりに無が出る』
『そいつを連中目掛けてブン投げて融合させろ、それ自体がちょっとしたブラックホールになる、複数体巻き添えに出来る筈だから』

 敵の物量は圧倒的であった。
 戦闘機械都市の外縁部をこじ開けて侵入してきた戦闘機械群『バトラクス』。
 その球体の駆体は、跳ねるようにして次々となだれ込んでくる。
 √能力者たちによる防衛線を押し込もうというのだろう。
 オペレーターの言う所のゴリ押し、という言葉にレイ・イクス・ドッペルノイン(人生という名のクソゲー・h02896)は、確かに、と頷いた。
 単純だね、という言葉にも頷く。
 一つ一つの言葉が納得できるところであった。

「制御系統を乗っ取ろうとした所で即対策打たれるだろうね。いや、鹵獲されることも織り込み済みで再利用できないようにしているのが、あの戦闘機械群だ。こっちが考えることは、あっちも考えてある、と前提条件にしたほうが良さそうだよ」
 クラウドコントロールで『バトラクス』を如何にか、と考えるのは恐らく無理だ、とオペレーターに告げ、レイは駆け出す。
 迫る『バトラクス』は強硬手段に出ている。
 他の√能力者たちにがそうであったように、敵を打ち倒すことが最優先だ。
 オペレーターの指示通りにレイは動く。
 放たれる砲撃。
 爆風が荒ぶ。
 これを完璧に躱すことは難しい。けれど、オペレーターの指示はレイにとっては絶対だった。
 回避行動。

 右に5歩。前に20メートル。直進して左に3歩。後ろに5歩。
 いずれも指示は細かい。
 けれど、これで駆体の損傷は最小限に抑えられている。
 かすめるような爆風を受けながらレイは、己が機械細部を霧散させる。
「|メソッド・無の取得《 ヴォイドゲッター》……これ使っていいんだよね?」
 いいに決まってる、という返答しかない。
 妙なことにならないだろうな、とレイは思いながらも、逡巡する暇もなく√能力を発露する。
 霧散した機械細胞が『バトラクス』の眼前で再統合し、出現する。
 
 キャノンの砲撃と同時にレイン砲台のエネルギーを込めたファミリアセントリーの砲撃が激突し相殺される。
 無と呼ばれるグリッチバグ。
 それが何であるのかはわからないが、存在自体がイレギュラーであるのならば、それに触れたのならば大概碌でもないことになるのは予想ができることであった。
「これを投げるのか?」
 そこにはなにもない。
 だが、√能力者だけが見える全てを消し去る炎の幻は、『バトラクス』たちを巻き込んで、その存在を焼却させるのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

トラスト・レッドライダー
厳しい状況が続くね。でも!私諦めないから!!

眼球型デバイスで【情報収集】しバトラクスの砲弾を【弾道計算】
引き続きエアバイクWZ【操縦】、『√能力』と【空中ダッシュ】併用で砲弾を躱し爆破範囲から逃れつつ、戦場をカッとびながらレーザー機関砲の【制圧射撃】とミサイルの【爆破】で連続攻撃して破壊して回る!

皆もたくさん壊してるのよね!もう数多い!!こんのッッ!!!

片腕【早業異形化】超振動超音波砲展開!
超音波砲撃でバトラクスを破砕しつつ自機【吹き飛ばし】
これで無理矢理機動変更!砲弾を躱し、勢いよく空中ダッシュでバトラクス達へ急接近!
【怪力】で決戦刀を振るい【なぎ払い】、バトラクス達を纏めて【切断】する!!

 状況は厳しいものだった。
 絶対に守らなければならない防衛線。
 戦闘機械都市の外縁部の防壁はこじ開けられ、次から次へと戦闘機械群『バトラクス』たちが、その奇妙な球体の体躯を跳ねさせながら侵入していきている。
 さらに防壁を爆破し、こじ開けているのだ。
 はっきり言って旗色が悪い。
 状況がよくならない。
 さらに、この後に控えているのは、恐らく戦闘機械群を率いている存在だろう。
『バトラクス』の数の暴威以上の脅威であると言わざるを得ないだろう。
「でも! 私諦めないから!!」
 トラスト・レッドライダー(赤い機兵・h01835)は、その緑の瞳……眼球型デバイスで周囲の状況をつぶさに分析していた。

 敵の砲撃は苛烈そのものだ。
 けれど、躱せないわけではない。砲撃が生み出す爆発の範囲は広いけれど、結局は中心となる点が生まれる。
 その弾道を予測し、計算し、そして爆風の範囲を知るのならば、己のエアバイク型ウォーゾーンでも十分に回避できると思えたのだ。
 だが、それでも足りない。
 爆風が身を撃ち、煽られる。
「プロジェクトカリギュラ !」
 エアバイクが真紅に輝き、空を飛翔する。
 爆破の範囲を逃れながら、一直線にトラストは戦場を駆け抜ける。
 レーザー機関砲の制圧射撃とミサイルの爆破。
『バトラクス』たちを吹き飛ばしながら、トラストは辟易する。

 他の√能力者たちが撃破したというのに、後から後から湧き出してくるのだ。
「皆もたくさん壊しているのよね!? もう数多い!! こんのッッ!!!」
 トラストは焦れたように片腕を変形させ、超振動超音波砲を展開する。
 放たれた超音波が『バトラクス』の駆体を吹き飛ばし、さらには己の駆体すらも機動を無理矢理に吹き飛ばすようにしてキャノンの一撃を躱すのだ。
「くっ! っと、おおっ!!」
 呻くような衝撃。
 駆体にかかる負荷は言うまでもない。
 けれど、それでもトラストは軋む駆体のままに手にした決戦刀の一撃を『バトラクス』へと叩き込み、切り裂く。
 粉砕された部品の破片が飛び散る中、トラストは見ただろう。

 破片の向こう側に煌めくようなアイセンサーの輝きを。
 その重圧を。
 その圧倒的な力を。
 怖気が走る、なんてことがベルセルクマシンである己にもあるのかと思った。
 あれは、他の戦闘機械群と違う。
 他者を圧倒する存在。
 稀有である、ということはすなわち、頂点に近いということである。天頂から見下ろすような重圧を受けながら、トラストは理解した。

「あれが、そう、だ」
 そう、防壁の奥、『バトラクス』の群れを打倒し疲弊する√能力者たちの前に姿を表したのは――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『スーパーロボット『リュクルゴス』』


POW 超大型光線砲リュクルゴス・レイ
X基の【超大型光線砲】を召喚し一斉発射する。命中率と機動力がX分の1になるが、対象1体にXの3倍ダメージを与える。
SPD 斬光飛翔翼アポロニアウイング
【エネルギーフィールド】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【アポロニアウイング】」が使用可能になる。
WIZ 電撃放射角ケリュネイアホーン
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【角状の部位からの放電】で300回攻撃する。
√ウォーゾーン 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

 数の暴威たる戦闘機械群『バトラクス』。
 絶対防衛線を守りきった√能力者たちは疲弊していたことだろう。
 だが、これでなんとか戦闘機械群の侵入は防げたはずだ。
「見事。我が同胞を打倒した力、まさしく敬意に値する」
 その声と共に防壁の亀裂の奥にてアイセンサーの煌きが走る。
 瞬間、√能力者たちは理解しただろう。

 その双眸の輝きの主こそが、戦闘機械群を率いる存在であると。
 圧倒的な存在感。
 強者、と己たちを讃えながらも、しかして、それが圧倒的な力量差故に発せられる言葉であることを知るだろう。
「同胞たちは及ばなかったか。だが、彼らをこれ以上いたずらに傷つけさせるわけにはいかぬ」
 あくまで守護者。
 そう立場を表明するように象形の如き体躯を持つスーパーロボット『リュクルゴス』が姿を現す。
 見やるだけで理解するだろう。
 彼我との間に横たわる力の差を。
 個としての違いを。

「諸君らを武人として扱おう。故に、来るがいい。我が崇高なる目的『完全機械』へと至る道程の一部として、諸君らをメモリーに加えて見せろ」
 高みからの言葉。
 自尊心ではない。
 厳然たる事実として、圧倒的な力の発露が邪悪なるインビジブルより引き出したエネルギーの奔流となって、√能力者達に襲いかかるのだった――。
エアリィ・ウィンディア
すっごい強いのはわかる。
プレッシャーがすごいんだもん。

ここで退くほどあたし聞き分けいい子じゃないから。
それじゃ、抗わせてもらうからねっ!!

生半可な攻撃でダメなら、一撃で痛打を…。
となるとこれか。
高速詠唱で隙を減らして、多重詠唱で魔力溜めも同時並行で処理。
使うのは六芒星精霊収束砲・零式。
60秒のチャージは長いけどこれならっ!
その間は精霊銃で牽制だけど…。当てるつもりじゃないとだめだよね。
接近されたら、右手の精霊剣で受けるけど威力がすごいっ。
それならっ!
武器を手放して、両手で相手にしっかりしがみついてから…。
六芒星精霊収束砲・零式を放つよっ!

撃った後は痛みに耐えるけど…。
痛いものは痛いよーーっ!!

 スーパーロボット『リュクルゴス』の駆体を覆うのはエネルギーフィールドだった。
 その光だけではない。
 駆体より放たれる重圧は、それ自体が己が身へと重くのしかかる物理的なものに思えてならなかった。エアリィ・ウィンディア(精霊の娘・h00277)は、正しくそう感じていた。
 きっと強いのだろう。
 言うまでもないことなのかも知れない。
 身を苛むプレッシャーは、それだけで己の心臓を締め上げるようでもあったからだ。
「私を前にしてなお、退かぬか」
「ここで退くほど、あたし聞き分けいい子じゃないから」
「武人として、それは誇るべき所なのだろう。敵わぬと知りながら、それでも立ち向かう勇気。それは賞賛に値する。故に」
『リュクルゴス』が飛翔する。
 その速度は尋常ではなかった。
 エネルギーフィールドをまとった飛翔。それだけではない。
 ほとばしるエネルギー。
 それが『アポロニア・ウィング』であるとエアリィは知る由もないだろう。

 それはまさに刃そのもの。
 あらゆる装甲を切り裂き、防護を無意味とするかのような『リュクルゴス』の加速と突進による一撃。
 牽制の銃撃など意味をなさなかった。
 豆鉄砲と呼ばれてもしかたないほどの力の差。
 魔力の弾丸が弾かれながら己に迫った翼の斬撃をエアリィは見た。手にした精霊剣で受け止めるのがやっとであったし、ほとばしるエネルギーの奔流が彼女の肌を焼く。
 痛みが走って顔をしかめる。
 だが、彼女は、歯を食いしばることをしなかった。

 痛みを受け流すのではなく、受け止め、なおも彼女は詠唱を続けていたのだ。
 高速詠唱をもってしても、彼女の√能力は60秒をチャージに要する。
 痛い。痛い。痛い。
 痛みが走り抜け、涙が滲む。だが、それでも彼女は武器を手放して『リュクルゴス』の体をつかみしがみつく。
「何をする。それは無意味な行動だ」
「そう! でもね!」
 そう、無駄でも無意味でもない。今の彼女はこの一撃に全てを懸けている。
 打倒できるとは思えないけれど、それでもこの一撃が狼煙になればいい。決して打倒できぬ、無敵のスーパーロボットではないことをエアリィ自身が示さねばならないと思ったのだ。

「不可解だ。何故、己が身を痛めつける」
「痛いものは痛いよ……でも! これがあたしの奥の手っ!六界の使者よ、我が手に集いてすべてを撃ち抜きし力を…!!」
 漲る魔力。
 チャージされた力が6つの属性を受けて捻れる。
 さらにエアリィが受けた『リュクルゴス』の√能力に寄るダメージすらも上乗せして解き放たれるは、|六芒星精霊収束砲・零式《ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト・ゼロ》。
 その一撃は苛烈なる魔力砲撃の奔流。
 エネルギーフィールドを消滅させながら放たれた一撃は、スーパーロボット『リュクルゴス』の装甲を焼き、吹き飛ばす。
 エアリィは、その衝撃に吹き飛ばされながらも地面に降り立ち肩を息でするしかなかった。
 痛みが走る。
 けれど、できた。
 無敵にも思えた敵の装甲を焼き焦がす一撃を叩き込めたのだと、その意思輝く瞳で見上げるのだった――。
 
🔵​🔵​🔴​ 成功

タマミ・ハチクロ
その行いを許すつもりはありませぬが……敬意には敬意を返さねばありますまい。良いでしょう、受けて立つでありますよ。

「徹甲弾」と「フェザーレイン」を準備、【貫通攻撃】と【レーザー射撃】で【制圧射撃】を仕掛けて釘付けに。そのまま【ダッシュ】で接近、【特攻】であります。
その放電、一発単位で制御するのはスーパーロボットの演算力でも難しいでありましょう?
小生ごと被弾したければどうぞ、でありますよ。

で、ありますが……此方はやれる。
フェザーレインを上空に展開、『最後の雨』を。

貴殿ならば、放電と同系統の能力であることは察せられましょうが……小生の命は、貴殿の機体より遥かに安い。
ゆえに、躊躇はなしであります。

 無敵ではない。
 それは√能力者の一撃を見て、悟ることのできた事実である。
 簒奪者、戦闘機械群ウォーゾーンの中においても稀有なる存在。スーパーロボット『リュクルゴス』。
 その力は対峙してよくわかった。
 あれは圧倒的過ぎる。
 個としての能力が違い過ぎるのだ。
 加えて、邪悪なインビジブルからエネルギーを引き出すこともできる。能力、出力、いずれをとっても己たちと比べるべくもない。
 だからこそ、感じる重圧。
 けれど、タマミ・ハチクロ(TMAM896・h00625)の中にあったのは、恐怖でも躊躇いでもなかった。

 あったのは献身の心のみ。
「我が身を賭しての一撃、か。なるほど。個を保全しようとしないのであれば、これが乾坤一擲というものか。益々もって、諸君らに敬意を払おう。そうまでして、という覚悟。正しく、尊敬に値する」
「その行いを許すつもりはありませぬが……敬意には敬意を返さねばありますまい。良いでしょう、受けて立つでありますよ」
「ならば、受けよ。ケリュネイアホーンを」
 象形のごとき駆体、その頭部より天を衝く二本のブレードアンテナより放たれる雷撃。
 それはタマミを襲い、三百を超える放電の一撃を叩き込み続けていた。

 見込みが甘かった。
 あの放電は、一発単位で制御するにはスーパーロボットである『リュクルゴス』であっても難しいと思っていた。
 だが、論ずるまでもない。
 スーパーロボットたる所以は、こちらの想像を超える所にある。
 演算能力を含めて、常識のそれを超えているのだ。
 故にタマミは己の……それこそ、これまでの戦いで限界へと近づいていた駆体が雷撃によってズタズタにサれていくのを感じた。

 だが、恐怖はない。
 タマミは、恐怖を感じない。欠落しているからだ。
 今の己の駆体が失われることに、意味はない。いや、あると言えばあるのだ。
 例えば。
「……その身が惜しくはないのか?」
「はい。小生は、そのようなことを思いませんから。個を保全しようとする。それがあなたの見解なのかもしれませぬが、小生はそれを度外視できる」
 タマミの背より天使の翼のような『フェザーレイン』が展開する。
 雷撃を受けてなお、直進するように『リュクルゴス』へと迫る。
 弾丸とレーザー射撃で『リュクルゴス』を釘付けにするのだ。やることは決まっている。特攻だ。
 それだけだ。
 己が身で今、この場に献身できるのだとすれば、それしかない。

 食らいつくようにボロボロの駆体で『リュクルゴス』にタマミは組み付く。
「貴殿ならば、放電と同系統の能力であることは察せられましょうが……」
 タマミは笑む。
 駆体を失うことになる危険性を持ちながら、しかして彼女は笑む。
 これが己にできる最大の一撃。
 天使の羽根のような『フェザーレイン』が頭上に展開する。

「……小生の命は、貴殿の機体より遥かに安い」
「ためらわぬというのか」
「ええ。主の御心によりて、救いの雨を降らせ給う――」
 |最後の雨《ラストレイン》が降り注ぐ。
 己を起点といて指定した地点へと天に環を描いた『フェザーレイン』が、まるで日暈のように光を解き放つ。
 激しく降り注ぐレーザーの雨。
 それはタマミの駆体ごと『リュクルゴス』を打ち据え、凄まじい爆発を巻き起こしながら、超越者たる駆体を傾がせるのだった――。
🔵​🔵​🔴​ 成功

星宮・立希
あれが強敵………
ううん、ここでビビって逃げるなら、最初から来ていないっての……!
胸はって生き残ってやったって言うために、戦い抜いてやるわ!
やるわよ|模造魔獣《モンスター》!私達の力をぶつけてやる!

さっきの奴らにも効いたなら、コイツにも効くわよね!?
いくら速くなるって言っても接近しなければ視界から消えるってこともないでしょ!
肩から生やす「射弾翼」による羽のばら撒きで"牽制射撃"
接近される前に『魔獣装・蛇眼睨』で動きを止めて|「護霊」による一撃《"連携攻撃"》を食らわせるわ!

もし接近されたなら護霊でガード、これで装甲貫通は関係ないでしょ
どうにかして次へと繋げてやるんだから……!

 星宮・立希(外れた√を歩む者・h01004)の体は震えていた。
 √能力の反動で休息を得なければならないのは承知の上であったし、また他の√能力者たちの攻勢を前にして僅かに天秤が揺れた程度の状況でしかないことを彼女は認識したのだ。
「あれが……」
 あれが強敵。
 戦闘機械群ウォーゾーンの中においても稀有であるとされるスーパーロボット『リュクルゴス』。
 その駆体が傾ぐのは、√能力者による捨て身の攻撃在りきであった。
 それほどの一撃をもって僅かに傾ぎ、装甲を削るのみ。
 勝てるのか?
 勝てないのか?
 そんな思考を彼女は即座にかなぐり捨ていた。
 ここでビビって逃げるのなら、最初から来ていない。

「私は、胸張って生き残ってやったって言うために、戦い抜いてやるわ! やるわよ|模造魔獣《モンスター》! 私達の力をぶつけてやる!」
 啖呵を切る。
 恐怖は消えないが、拭うことができる。
 立ち上がり、立希は前に踏み出す。
「恐れながらも踏み出す。その勇気。やはり諸君らは強者と断定するに相応しい。だからこそ、私をさらなる高みへと誘ってくれる。故に」
 エネルギーフィールドを纏う『リュクルゴス』。
 その体躯より発せられるエネルギーの奔流と光に立希は目が眩みそうになる。だが、彼女は瞳を開いていた。

 どんなに眩しくても、瞳を閉じない。
 なぜなら。
「さっきの奴らにも効いたなら、アンタにも効くわよね!? 怯えなさい!」
 |魔獣装・蛇眼睨《アームズ・スネークアイ》。
 彼女の√能力は、その瞳に敵を映し出すことによって、その動きを麻痺させる。
 体力を消耗するが故に、連続で使用はできない。
 再使用までに使用した全開の時間以上の休息を必要とするデメリットがある。つまり、これが彼女にとって最初で最後のチャンスだったのだ。
 故に彼女は瞳を閉じない。
 この後、己が動けなくなっても構わない。

 己が『リュクルゴス』の動きを封じることができたのならば、続く√能力者たちが活路を開いてくれると信じているからだ。
「駆体の信号伝達系に作用する√能力か。面白い。だが、どれほど保たせることができる。諸君の一撃は私を砕くには到達し得ていない」
「だから何よ! 舐めて最速で初動を抑えられて……!」
 立希は己の肩から射出した翼による一撃を『リュクルゴス』に叩き込む。
 だが、かすり傷程度しか『リュクルゴス』の装甲には傷が刻まれない。けれど、立希は諦めない。
 己の護霊をまとわせた一撃。
 その一撃を叩き込み、瞳を開き続ける。

 限界が近づいている。
 けれど、それでも構わない。次の瞬間に『リュクルゴス』の翼による斬撃のような一撃が飛んできたとしても。
 それでも。
「ぐっ、うううっ! でも!」
「でも、なんだ?」
「ハッ、次に繋げてやったわよ!」
 立希は、『リュクルゴス』の一撃に反応できなかった。
 だが、それでも彼女は抗って笑って見せた。
 それは大いなる一歩であったし、また次なる√能力者の一撃が必ずや『リュクルゴス』を打ち据えるのだと確信させるものであったからだ――。
🔵​🔵​🔴​ 成功

アルル・リリム
……度し難い。敬意を持ちながら破壊を選ぶなどとは。一体どれ程の可能性や叡智が摘み取られたのでしょう。──もう貴方には幸運の星は巡らない。

他の√から全力魔法と高速詠唱を使い√能力で攻撃し続けます。
もし相手の攻撃がこちらにも届く様なら、空中浮遊、空中移動、空中ダッシュをつかい、つまり飛びながら可能な限り避けます。多重詠唱で連続で攻撃出来ればします。

アドリブ、連携歓迎

 スーパーロボット『リュクルゴス』は、相対する強者に対して敬意を評する。
 それは傲慢極まりない思考である。
 故に、他√からアルル・リリム(ドラゴンプロトコルの古代語魔術師・h00987)は、それを観察し、所見を述べる所がえられるのならば、きっとこう言っただろう。
「……度し難い」
 そう、度し難いことだ。
 敬意を持ちながら破壊を選ぶ。
 尊ぶことはしないのならば、敬意など無意味なことだ。
 それは戦闘機械群ウォーゾーンとの見解の相違でしかないにしても、アルルにとっては傍若無人なる古い魔でしかなかった。
 他者とは即ち、一個の智である。
 思考し、編み出し、描く。

 そうした模様は個によって異なるが故に何物も代えがたい勝ちあるものなのだ。
 なのに、簒奪者はそれを破壊する。
 奪い、失わせる。
 それがどんなにか彼女の心をかき乱すものであるのかを簒奪者は理解しようとしない。
 欠落たる記憶。
 故に彼女は他者という智を求め続ける。
「敬意を持ちながら破壊を選ぶなどとは。一体どれほどの可能性や叡智が摘み取られたのでしょう」
 彼女の瞳にインビジブルが揺らめく。

 見つめる先にあるのは、スーパーロボット『リュクルゴス』の象形の如き体躯。
「厄災の矢よ、汝の怨敵を呪うがいい。ここに運命は終焉を迎える」
 呟かれる詠唱。
 それは密やかに。されど確実なるを決定づける運命の針。
 黒曜石の如き質感を持ち得た弓と矢。
 番えた矢を引き絞るとアルルの瞳が煌めく。
 √能力の発露。
 他の√から√ウォーゾーンたる戦闘機械都市『クリーサ8』に座す『リュクルゴス』を睨めつける。
「――|厄災の射手《カラミティ・サジタリウス》」
 放たれた矢は√の境界の裂け目を縫うようにして放たれ、『リュクルゴス』の装甲の隙間へと狙い違わず打ち込まれる。
 瞬間、『リュクルゴス』の双角よりほとばしる雷撃が放たれる。
 が、それがアルルに届くことはなかった。
 別√よりの攻撃に対して『リュクルゴス』が対応することはできなかった。
 そもそも、できたとしてアルルの矢は……。

「――もう貴方には幸運の星は巡らない」
 汎ゆる行動に関して、アルルに危害を及ぼすことは結実することはないのだ。
 彼女の放った√能力。
 それは全ての行動に失敗させる因果を打ち込むこと。
 アルルが『リュクルゴス』を認識する限り、彼女へと雷撃は届かない。
 ただ遠雷のように響き渡り続ける雷撃をアルルはその赤い瞳から見つめ続けるのだった――。
🔵​🔵​🔴​ 成功

クラウス・イーザリー
「……単身で敵う相手じゃないね」
希望は元より欠落した身
だけど絶望もしない
他の√能力者が道を開いてくれたから
俺も同じように、身を以て次に繋げるんだ

決戦気象兵器『レイン』を起動
複数のレーザーを纏めて威力を上げて、弾道計算も用いて他の√能力者が付けた傷を狙う

勿論それだけで倒せる訳が無い
レーザー射撃で追撃しながらダッシュや遊撃で位置を変えて射線を乱して
敵の攻撃を見切りやエネルギーバリアで防ぐ

体力が辛くなってきたらもう一度レインを撃って、レーザーに隠れるように接近
斧の鎧砕きで装甲を砕き、電磁ブレードを捩じ込んで機能阻害を狙うよ

接近戦を挑むのは捨て身じゃないし自棄でもない
自分に欠けた希望を、次に繋ぐためだ

 その重圧は誇張でもなんでもなかった。
 身に降りかかる重さは、それだけ彼我の戦闘力の差であった。
「……単身で敵う相手じゃないね」
 クラウス・イーザリー(人間(√ウォーゾーン)の学徒動員兵・h05015)は、単純に、しかして明快に理解していた。
 己が身に希望はない。
 どれだけ彼我の間に埋めがたき力の差があったとしても、希望を抱かぬのならば絶望する謂れもない。
 だからこそ、彼は生み出す。
 希望なくして絶望なし。
 故に踏み出すことができる。

 これまで他の√能力者たちが見せてくれたのだ。
 たとえ、個としての力が及ばずとも、道を拓くことができると。なら、己がそれに倣わなくてなんとする。
 故に彼は走り出す。
 決戦気象兵器「レイン」を起動する。
 √能力の発露。
 それを受けて、スーパーロボット『リュクルゴス』の双角が煌めくようにして明滅する。

 双角の間に発生した雷が雷撃となってクラウスに降り注ぐ。
 凄まじい衝撃。
 一撃一撃が此方の比ではない。これでも『リュクルゴス』にとっては威力が100分の1程度の出力でしかないのだ。
「わかっているのだろう、勇者よ。諸君の扱う兵器は、我らのそれとは遠く及ばぬということを」
「わかっているさ。だからって、やらない理由はない」
 そう、己もまた他の√能力者と同じように身を以て次につなげるのだ。
 ならば、この痛みなど問題にもならない。
 走って、走って、走り抜ける。
 レーザー光線を放ちながら、クラウスは放電の最中を駆け抜ける。
 皮膚を焼く雷撃。
 動くたびに痛みが走る。
 エネルギーバリアなど役にも立たない。

 だが、それでも走り続ける。
 如何にスーパーロボットとは言え、これだけの放電を行っているのだ。
 僅かな隙が必ず生まれるはず。
 故にクラウスは己を狙った一撃がバリアを砕いた瞬間、己がレインの光線を束ねて放つ。それは目くらましにしかならぬ一撃だっただろう。
「一つ覚えを」
「いいや、違うさ」
 踏み出す。レーザーを束ねた一撃に紛れるようにしてクラウスは『リュクルゴス』へと飛び込む。
 手にしたバトルアックスに力を込める。
 振り下ろした一撃は、これまで√能力者たちが付けた傷を狙っていた。強靭な装甲だろう。
 だが、構わない。
 砕けずとも、そこが目印だと他の√能力者に知らせることができればいいのだ。

「無駄だ。自棄を起こしたか?」
 打ち込んだバトルアックスの刀身が砕ける。それでも諦めずに生まれた傷に電磁ブレードを叩き込み、電磁パルスを解き放つのだ。
「捨て身は自棄ではない。そして」
 クラウスは己が手にしたブレードを押し込む。
「自分に欠けた希望を、次に繋ぐためだ」
 そう、それこそが己にできること。
 クラウスは、己が突き立てたブレードが折れるのを見ただろう。だが、そのブレードの刀身は深く『リュクルゴス』の装甲に突き立てられ、他の√能力者たちに、底に傷があると亀裂があると知らしめるものになるのだった――。
🔵​🔵​🔴​ 成功

ジルベール・アンジュー
今まで相対した時とは迫力が違う。これが本気の、|王権執行者《レガリアグレイド》たるスーパーロボット『リュクルゴス』……。
だからといって、ここを退くつもりはありません。あなたのもたらす厄災を終わらせる。

『航空巡洋艦隊プレデター』の全戦力を持って、『リュクルゴス』に「一斉発射」で集中砲撃を。
『リュクルゴス』が砲撃に気を取られている間に、WZの「ダッシュ」で間合いに踏み込み、拳のナックルダスターを叩き込みます。装甲の隙間から、内部を破壊するように鋭く。
距離を取る時は、連装機関銃と浮遊砲台群で「弾幕」を張って。
防御はWZを「鉄壁」のごとくして受けます。

まったく、皆が手こずってる理由がよく分かりますよ。

 空を駆ける光。
 それはスーパーロボット『リュクルゴス』の身にまとったエネルギーフィールドが瞬く様であった。
 何より、その速度を示すものだった。
 圧倒的な速度。
 戦闘機械都市『クリーサ8』に流星が瞬く。
「これがスーパーロボット『リュクルゴス』……」
 明滅する光。
 広げた翼、『アポロニアウィング』が剣のように『航空巡洋艦隊プレデター』を切り裂き爆散させていく様をジルベール・アンジュー(『神童』の兄・h01027)は見ただろう。

 √能力者と簒奪者との最大の違いはなにか。
 地力か、それとも成長限界か。
 恐らく最大の要因は邪悪なインビジブルからエネルギーを引き出す事ができる点にある。
 大気を揺蕩うインビジブル。
 √能力の発露には例外なくインビジブルからのエネルギーが必要なのだ。
 邪悪なインビジブルは、得られるエネルギーが通常のそれとは異なり、膨大である。それ故に『リュクルゴス』の√能力の発露は圧倒的だった。
「絶対的な力の差を見てなお、私に立ち向かうか。敬意に値する。だからこそ、我がメモリーに刻む価値がある。お前たちには絶望を刻むことになろうが」
「だからといって、ここを退くつもりはありません。あなたのもたらす厄災を終わらせる」
「力なき者の言葉は戯言以下である。到底実行できぬ絵空事を描くことは愚者でもできる」
 ジルベールは自身が召喚した『航空巡洋艦隊プレデター』の砲雷撃でもって『リュクルゴス』へと攻撃を叩き込み続ける。
 砲撃をものともしない『アポロニアウィング』の光。
 それに加えてエネルギーフィールドである。
 あのエネルギーフィールドを突破しなければ、こちらの攻撃は届かない。
「まったく、皆が手こずってる理由がよくわかりますよ」
 戦闘機械群の中においても稀有なるスーパーロボット。

 その力は自分達の個としての力と一線を画するものだった。
 圧倒される。
 数を用意しても、次々と空中で『航空巡洋艦隊プレデター』が爆散していくのだ。
 だが、退けない。
 ここで退いたのならば、多くの√能力者たちが身を挺して戦った意味がなくなる。
 その一点がジルベールの背中を押すようにしてウォーゾーンを走らせる。
「この間合いならば!」
「砲撃からの一点突破。それを看破できぬとでも思うか」
 振るわれる明滅する翼の斬撃。
 その一撃がウォーゾーンの装甲を切り裂く。
 交差させた腕部ごと吹き飛ばされる。

「ですが」
 そう、他の√能力者が打ち込んだブレード。
 そのブレードの破片をナックルダスターの一撃が押し込んでいた。僅かに、だが。それでも、一撃入れたのだ。
 吹き飛ばされながら、ビルディングの壁面に叩きつけられるウォーゾーンの中でジルベールは、漸くにして『リュクルゴス』の装甲を破り、その内部へと仲間たちの打ち込んだ楔を押し込んだのだった――。
🔵​🔵​🔴​ 成功

七々手・七々口
「(煙草すぱぁ)休憩終了っと。おら来い、お前のメモリーに猫フォルダー作ったるわー。」

敵の攻撃に合わせて√能力を発動。
魔手達の射程に入ったら、憤怒は目?の部分に火をつけて目眩し、強欲はなんか高そうなパーツに狙いをつけて盗み攻撃。
怠惰は精神汚染。崇高なる目的とやらに対する意思を堕落せて、無気力にしてみるかのう。ロボットに効くかどうか分からんけども。まあ、面白そうだしねー。
他4体は脆くなってそうな所を殴っといてもらうかね。

攻撃終了後は、敵の死角を意識しながら離れた場所に転移からの隠密モード。
見つかったら魔手達にオレを投げて貰っての緊急回避って事で。

「あ、しまった。トロッコヨーグル食い忘れてた。」

 重たい感覚が肺にある。
 タールの含有量が多いからだ、ということは理解しているが、これくらい重たくなければ吸った気分にならぬのだ。
 手慰みではないが、ちょっとした休憩気分だった。
 戦闘機械都市『クリーサ8』の崩壊したビルディングの瓦礫の傍で、プカリと息を吐き出しているのは、七々手・七々口(堕落魔猫と7本の魔手・h00560)だった。
 尻尾の魔手を器用に使って煙草を吸っている。
 吐き出した紫煙がくゆる。
 ぱたぱたと魔手が払うが七々手は気にした素振りもなかった。

「休憩終了っと」
 空を見上げれば流星のように瞬くスーパーロボット『リュクルゴス』の姿があった。
 打ち込まれたブレードがついに装甲を貫いていたのだろう。
 だが、それだけだ。
 未だ己たちの間に横たわるのは厳然たる実力差。
 大気が鳴動するかのように己の肉体に重圧を感じさせる。
「おら来い、お前のメモリーに猫フォルダー作ったるわー」
 それを感じさせぬ七々手は、飛ぶ。
 いや、己の尾である魔手が掴み上げたのだ。

 瞬間、彼がいた箇所を切り裂くのは凄まじい光の奔流だった。
『アポロニアウィング』。
 それは膨大な出力によって放たれる斬撃そのものであった。
「私の一撃を躱すか。私の攻撃精度もまだまだということか」
「勝手に反省してんなよ」
 七々手は一瞬で『リュクルゴス』の眼前に跳躍していた。
 それが彼の√能力である。
 |怠惰な一撃《タイダナイチゲキ》というのならば、その通りなのだろう。
 七々手自身は何もしていない。
 彼の尾である魔手が全てやってくれる。
 振るい上げた一撃が叩き込まれるのと同時に炎が噴出して『リュクルゴス』の視界を塗りつぶし、更に別の魔手がパーツをもぎ取ろうとして弾かれる。

「数を用意すれば凌げぬとでも?」
「だろーな。精神汚染も効きやしねー」
 まあ、ダメでもともと、と七々手は笑う。
 さらに拳の形になった魔手が『リュクルゴス』へと叩き込まれる。
 エネルギーフィールドを纏う装甲は、その尽くを弾くだろう。だが、それでも動きが悪くなっている。
 己があの光纏う翼の斬撃を躱すことができているのが証明だ。
 他の√能力者たちが身を挺して攻撃したことで消耗しているのだ。勝てないわけではない。それを確信して七々手は周囲の瓦礫に紛れるようにして走る。
 が、即座に己の背に光の翼が振り下ろされる。

「隙もねーのかよ」
「見逃す道理もなし」
 振り下ろされた光の翼の一撃をなんとか躱しながら吹き飛ばされる小さな体躯。魔手が間一髪で己が身を投げてくれたおかげだった。
 散る破片の中、七々手は、あ、と思い出す。
「『トロッコヨーグル』食い忘れてた」
 力でないのは、それかーと七々手は迫りくる光の斬撃から逃れながら思うのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

水垣・シズク
力の差があるのはもとより。
ですが、ここで一矢も報いずに終わるのは後ろで恐怖と戦っている方々に顔向けが出来ないというもの。
航空母艦用レールガンを使います。
カーゴやドローンを運用しているインビジブルをそちらに回して、対装甲弾を打ち込めば多少なりとダメージはあるはずです。
反撃を耐えられる装甲はないですから、打てるのは一撃が良い所でしょうが……

イォド、気合をいれてください。
機械の装甲を貫く為だけに研究し続けた一撃、見せてあげましょう!

アドリブ、連携歓迎

 スーパーロボット『リュクルゴス』。
 その力は言うまでもない。力量差、性能差、如何なる言葉で表現しようとも純然たる力の差は埋まらない。
 ならば、その力の差を嘆くよりも己にはやらねばならぬことがあると水垣・シズク(機々怪々を解く・h00589)は思う。
 確かに彼我の戦闘力を考えれば後退することが正しいのだろう。
 己の胸に渦巻く、この戦闘機械都市『クリーサ8』を巡る戦いに貢献したという実感も後退しても構わないのではないかと囁いている用に思えた。
 だが、彼女は後退を是としなかった。
 まだだ。
 まだ己は何も貢献できていない。
 どうしようもなく、己が誰かのためにと言う奉仕精神にも似た感情が虚のように実感を飲み込んでいくのだ。

「それに何より、ここで一矢報いずに終わるのは、後ろで恐怖と戦っている方々に顔向けができないというもの」
 シズクは『リュクルゴス』を見つめる。
 他の√能力者たちが示したのは、身を挺しての攻撃だった。
 それによって漸く、あの強靭な装甲へと傷を負わせる事ができたのだ。だが、まだ浅い。
 あの『リュクルゴス』があの程度の攻撃で後退することなどあり得ない。であればこそ、シズクは意を決する。
「航空母艦用レールガンを使います」
 シズクの瞳にインビジブルの孤影が揺らめく。
 光を灯して引き出されるエネルギーは、本来カーゴドローンを運用するためのものだ。だが、彼女はそれすらもレールガンに回し、√能力を発露する。

「イォド、出番です」
 邪神 Cu-Uchil の落とし子。
 無数の分霊の集合として顕現する契約悪魔。シズクのAnkerが出現し、√能力の発露と共に決戦型ウォーゾーンと合体する。
「|既定要請:機神一体《 プリセットオーダー・エクス・マキナ》! イォド、気合を入れてください」
 出現するのは機神|『建御雷』《タケミカヅチ》。
 航空母艦用の装備を扱うためのウォーゾーン。それと合体を果たしたAnkerが辟易したような言葉を発したが、シズクは構わなかった。

 漸く得られた好機なのだ。
 あの『リュクルゴス』は他の√能力者との戦いにかまけて此方に注意を払っていない。
 ならば、今こそ一撃を叩き込む時なのだ。
「あの反撃に耐えられる装甲はありませんから、打てるのは一撃が良い所でしょうが……この一撃で、形勢を変えます!」
 充填されるインビジブルより得られたエネルギー。
 シズクを護るカーゴドローンにまわしていたエネルギーさえ投入しての一撃。
「機械の装甲を撃ち抜くためだけに研究し続けた一撃、見せて上げましょう!」
 放たれるレールガンの一撃。
 電磁加速された砲弾は、大気をぶち抜き音速を超えて衝撃波を生み出しながら『リュクルゴス』の……他の√能力者たちが穿った装甲の一点に向かって走り、激突する。
 砲身が一撃の熱量でただれる。
 だが、それでもシズクは見ただろう。
 己が放った一撃。
 それが『リュクルゴス』の装甲を穿ったのを――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

レイ・イクス・ドッペルノイン
『こいつ何度もリスポーンするんだっけ?いいじゃん経験値狩りに』

そういうのは手頃な敵相手にするんじゃないかな玲子...
これゲームじゃないよ、リアル死にゲーだから

『あぁ、さっき倒した敵の残骸、使えそうだね...《グリッチメイルシュトローム》起動』

え...何、それ

『直に解る。ほら、死にゲーの攻撃はガチ回避だ、機械細胞の【肉体改造】で霧散するなり、液状化して受け流すなりしな』

敵の残骸が勝手に動いて爆散してるけど...!挙動も変!何これ!
よく見れば私が近寄ると動いてる!何もしてないのに

『グリッチの片鱗だよ、頭下げな!特大級バグの降臨だ!』
『未知のバグまみれの残骸魂だ!とっときな!』

 簒奪者もまた√能力者である。
 即ち、それはこの戦いが問題を先送りにしていることを示していた。
 √能力者は欠落を抱えている。
 故に死することができない。『死後蘇生』によって、例え打倒されても時が経てば蘇るのだ。
 例外はAnkerである。
 Ankerこそが√能力者を唯一殺すことのできる例外。
 それは、レイ・イクス・ドッペルノイン(人生という名のクソゲー・h02896)にとってぇも持ち得るものであった。
 己のナビゲーターがそうだった。
 目の前のスーパーロボット『リュクルゴス』をして経験値狩りにちょうど良いと言ってのける豪胆さは、レイにはないものだった。
「そういうのはさ、手頃な相手にするんじゃないかな……これゲームじゃないよ、リアル死にゲーだから」
 レイの言葉にナビゲーターは、答えなかった。
 むしろ、周囲の残骸……戦闘機械群『バトラクス』の残骸を認め、使えそうだと√能力の発動を要請してくるのだ。

「えっ、なにそれ」
 知らない。 
 むしろ、どういうつもりなのだろうか?
 起動される√能力にインビジブルから引き出したエネルギーが使用されていることは理解できる。
 が、その効果が如何なるものなのかをレイは理解できていなかった。
「ねえ、どういうことこれ?」
 その言葉にナビゲーターは、すぐに分かる、とそれだけ言ってのけた。
 とは言っても、だ。

『リュクルゴス』の駆体は、漸く他の√能力者たちの攻撃を持って一打穿つことができた程度なのだ。
 まだまだ敵の勢いは収まらない。
「やはり強者との戦いは素晴らしい。私のメモリーが活性化しているのを感じる。強者よ、もっとだ。もっとお前たちの力を示してくれ」
 双角の間に生まれる電撃。
 それが集約された瞬間、凄まじい勢いで雷撃が解き放たれる。
 霧散させた金属細胞の粒子そのものを放電が打ち据えている。はっきりいって出力が違いすぎる。
『リュクルゴス』の√能力は、こちらの√能力以上のエネルギー総量。
 故に圧倒的な雷撃がレイの体を打ち据える。

「な、なにこれ! 敵の残骸が勝手に動いて……」
『バトラクス』の残骸が『リュクルゴス』に集約されるように渦を巻いて飛び込んでいくのだ。しかも、それが爆散している。
 時分は何もしていない。
 ただ未知のバグだけが己たちに引き寄せられているのだ。
 何もしていない。
 本当に何もしていないのに、バグとなった残骸が『リュクルゴス』へと迫り爆散していくのだ。
 だが、それらすらも『リュクルゴス』は戦場を満たす放電でもって寄せ付けない。
 その戦場は最早、物理法則すら通用しなかった。
 爆破がうずまき、さらに『リュクルゴス』を取り囲んでいく。
 爆発が収束していくのだ。
 どんなに雷撃で退けようとも、集まった爆発は『リュクルゴス』の身を覆うエネルギーフィールドを吹き飛ばす。
「こ、これが、|メソッド・グリッチメイルシュトローム《レイジ・オブ・グラビテ》ってこと――!?」
🔵​🔵​🔴​ 成功

クラウディア・アルティ
ふー、どうにか一波は防ぎましたが
にゃー!?毛が逆立つこの感覚!
うーやだやだ、純粋なパワーとか本当に苦手な相手です
ですが、わたしとて成長していないわけではないので!
『|シェルム・ツァールト・グリモワール《悪戯好きの優しい魔導書よ》!』
もう一度力を貸してください!
いきますよ! 【トランス・ミラージュ】!
変身する姿は、でっかいドラゴンです!
どんなに早くても放ってくるのが近接攻撃なら!
『その瞬間』に爪を振るえば確実にそこにいるでしょう!
単純が故に強力ですが、単純が故にカウンターなら容易いこと!
第六感を頼りに、えいやーっ!って爪で攻撃です!
まぁわたし自身が吹っ飛ばされそうな速度ですけども
負けませんから!

 戦闘機械群『バトラクス』による第一波を防ぐことができたことは僥倖だった。
 もしも、『バトラクス』たちが侵入してくる地点を探り出すことができなかったのならば、√能力者たちはスーパーロボット『リュクルゴス』と無数の『バトラクス』を同時に相手取らねばならなかったことだろう。
 それを防げた、という点においては、正しく僥倖というほかなかった。
 しかし、問題は何一つ解決していない。 
 状況など容易く一手で覆せる事のできる存在がいる。

 それがスーパーロボット『リュクルゴス』であった。
 爆発の中にあってなお、その体躯は穿たれたただ一つの傷口のみ。
 その傷すらも多くの√能力者たちが身を挺して叩き込んだ攻撃の蓄積、その結果だったのだ。
「にゃー!?」
 毛が逆立つような感覚。
 身の毛がよだつ、というのはこのことなのだと、 クラウディア・アルティ(にゃんこエルフ『先生』・h03070)は理解しただろう。
 いやだいやだ、とクラウディアは内心呟く。
 目の前の『リュクルゴス』は純粋な力の結晶のように思えた。
 彼女にとっては本当に苦手な相手だ。搦手すら力でゴリ押しされる体。
 だが、ここで退くことはできない。

「ああ、素晴らしい。やはり強者との戦いは、私を成長させる。これこそが『完全機械』に至るための道筋なのだ。この感覚、この記録、全てを余すことなくメモリーに刻まねば」
「そうですか。ですが、わたしとて成長していないわけではないので!」
 クラウディアは魔導書の頁を羽ばたかせるように開く。
 そう、物語が頁を開くことで進むのならば、己は自らの成長を持って頁を読み進めることのできる存在なのだ。
「いきますよ! トランス・ミラージュ! 魔力を纏て、来たれ! 新たな|姿《ミラージュ》!」
 瞬間、クラウディアの姿が巨大なドラゴンの姿へと変貌する。
 だが、それに合わせるように『リュクルゴス』は光の翼……『アポロニアウィング』の羽撃きでもってドラゴンへと変じたクラウディアへと突進するのだ。
 強烈なエネルギーの一撃。

 これを受け止めてなお、クライディアは力の差がまるで埋まっていないことを知る。
 どんな装甲だろうと切り裂く一撃。
 龍鱗を持ってしても防ぐことはできない。
 炎熱の痛みがクラウディアを襲う。
「つっ、あっ! あっつ!」
 弾かれるようにしてドラゴンの体躯が傾ぎ、『リュクルゴス』が空を舞う。
「どれだけ巨大な威容を誇ろうとも、我が翼が切り裂けぬ道理などない」
 再び迫る一撃。
 だが、クラウディアは目を見開く。
 今の一撃は単純な一撃だ。
 他の√能力者たちの攻撃で、確かに消耗しているのだ。だからこそ、動きが単調になり、決着を『リュクルゴス』は急いでいる。

「そこです! えいやーっ!」
 単純な突進。
 単調な攻撃。であるのならば、カウンターを狙うこともできる。凄まじい速度の突進故に至難であったことだろう。
 けれど、一度受けている。その攻撃の軌跡にドラゴンの爪を合わせるだけなのだ。
 爪がひしゃげ、龍鱗が剥がれ飛ぶ。
 だが、それでもクラウディアの体を最後に押し留めていたのは、ただ一つの一念。
「負けませんから!」
 その心一つでクラウディアは己が変じたドラゴンの爪を『リュクルゴス』の穿たれた傷へとねじ込みながら吹き飛ばされるのであった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

薄羽・ヒバリ
オッケー
でも私が全力を尽くすのは、あなたを成長させるためじゃない
あなたを倒して、このクリーサ8のみんなに、本当の意味でもう大丈夫だよって伝えるため

ねえ
測れるなら測ってみて?
私とレギオン達の最高にイケてるコンビネーションをっ

Key:AIRを操作して打ち込む指示はCODE:Smash
レギオン達の援護射撃によって、リュクルゴスが空へと逃れることを阻止
続いてレギオン達の放つリンケージワイヤーで縛り付け、肉薄
ブーツの隠し刃を用いた回し蹴りを浴びせちゃう

ん、手応えアリ!
帰りにペディキュアのリペア必須でも、まー許容範囲内
超大型光線砲はDef:CLEARを展開し中和
これでもっと蹴りやすくなったもんねっ

 穿たれた傷跡が開く。
 それは装甲をこじ開けるような裂傷であったが、しかしスーパーロボット『リュクルゴス』は歓喜していた。
「素晴らしい。強者たちの乾坤一擲。これこそが私の装甲を穿つか。まさに雨垂れの一滴であったが、それでも」
 ここまで、と√能力者たちを称賛する。
 それは傲慢そのものであっただろう。
 高みあるが故であった。

「もっとだ。もっと私と共に研鑽しようではないか。私の『完全機械』へと至るための成長の礎になってくれ」
「オッケー。でも私が全力を尽くすのは、あなたを成長させるためじゃない」
 薄羽・ヒバリ(alauda・h00458)は、己の風切羽の左耳の切っ先まで震わせるような重圧の中にありながら、『リュクルゴス』に相対する。
 周囲は瓦礫の山だ。
 ビルディングの瓦礫もあれば、『バトラクス』の残骸もある。
 戦いの激しさを示すには十分過ぎる光景であったことだろう。
 だからこそ、彼女は瞳を見開き、そこにインビジブルより引き出したエネルギーの発露を光として放つ。

「あなたを倒して、この『クリーサ8』のみんなに、本当の意味でもう大丈夫だよってつたえるためなんだから」
「ならば受けてもらおう。せめて塵芥とならぬように祈るがいい」
 瞬間、『リュクルゴス』の周囲に浮かぶのは二基の超大型光線砲であった。
 その砲身に讃えられた光は、光条となってヒバリを襲う。
 目の前に展開したキーボードを叩き、彼女のレギオンが宙を走る。迫る光条の一撃をプロテクトバリアが防ぐ。
 だが、防げたものではない。
 ガラスめいたバリアに亀裂が走る。
 いや、違う。溶解するように溶けている。凄まじい熱量だ。その熱量に圧されながらもヒバリは叩くキーボードにネイルがひび割れることさえもいとわず、踏みとどまる。足の爪にほどしたペディキュアが剥がれても構わない。
 きっと戦いの後にみてしょんぼりするかも知れないが、それでも今は目の前のことに集中しなければならない。

「|CODE:Smash《 コードスマッシュ》! 目標補足。決めるからね!」
 レギオンが光条を縫うようにして飛び、『リュクルゴス』の駆体を射撃で押し留める。そこにリンケージワイヤーが走り捕縛するのだ。
 直ぐ様にワイヤーは引きちぎられるかもしれない。
 だが、ヒバリは構わなかった。
 光条の中をバリアごと突っ切るように走る。
 最速にして最短を選ぶのならば、これしか方法はなかったのだ。
「エスコート、ありがとうね!」
 砕けたバリア。
 打ち込まれる光条の熱量。
 肌が焼ける。痛い。けれど、ヒバリの瞳は『リュクルゴス』を見ていた。
 多くの√能力者たちが、打ち込んできた一撃の軌跡。
 穿たれた傷口を見据え、彼女は身を捩るようにして回し蹴りを放つ。
 ただの一撃じゃあない。
 ブーツが展開し、隠し刃が空を斬りながら『リュクルゴス』の傷をさらに押し広げるようにして叩き込まれたのだ。

「ん、手応えアリ!」
 今ので完全にペディキュアが剥げた。
 けれど、許容範囲内だ。
 トドメ、とまではいかなかった。けれど、ヒバリは笑う。
 だって、あとに続く√能力者たちの瞳に燈火のように煌めく光をみたのだから――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ギギ・ココ
俺は敵に敬意を払ったりはしない──脅かしたのならば
贖ってもらうぞ

味方が命懸けで築いたお前のウィークポイントを利用する
必用なのは二発だけだ──『二重の災禍』
フェーズ1、機動力を著しく下げた ご自慢の光線砲も鈍いだろう
【ダッシュ】で光線を掻い潜りながら、装備してるワイヤーアンカーを砲塔に
【ロープワーク】で引っ張って近づいて、同時にフェーズ2

自重と受ける重力を二倍にして、その場に釘付け
そのまま【零距離射撃】まで近づいて、最終フェーズ
つけられたその亀裂に向かって、最大威力の【二回攻撃】だ

俺にとって生も死も、大して変わらない
自分の身など、危険など惜しくもない
ただ俺は──この生命に、意味を求めて在るだけだ

 今しかない。
 ギギ・ココ(分かたれた二つ・h01394)は思っただろう。
 目の前の戦い。
 スーパーロボット『リュクルゴス』の力、性能は圧倒的だった。だが、これまで多くの√能力者たちが己が身を挺して叩き込んだ一撃一撃が、連綿と連なり強靭な装甲を穿ってきたのだ。
 その結実が今目の前にある。
 ここで己が征かねば、紡がれた糸が断ち切られてしまう。
「素晴らしい。やはり強者との戦いは素晴らしいな」
『リュクルゴス』は穿たれた傷跡が更に広げられたのを認め、称賛するように言葉を紡ぐ。
 余裕からではない。
 事実を認めているのだろう。
 だが、少しも嬉しいとは思わなかった。
「俺は敵に敬意を払ったりしない――脅かしたのならば、贖ってもらうぞ」
「強者が何故弱者に阿る。無意味だ」
 展開する二基の超大型光線砲。
 その光条の一撃がギギの身を焼く。
 肉が焼ける。痛みが走る。あまりの眩さに瞼を閉じ――ることはなかった。
 熱量に痛みを覚えてなお、その瞳は前を見据えていた。

 共に戦場にあった√能力者たちが命懸けで刻んだ装甲の裂傷。
 それこそがウィークポイントだ。
 故に。
「必要なのは二発だけだ――|二重の災禍《 ダブルアクションアンドスイッチコンビネーション》」
 痛みに喘ぐ暇すら必要ない。
 √能力に煌めく瞳。
 インビジブルから引き出したエネルギーが、己の瞳を今、燈火のような煌きでもって輝かせている。
 フェーズ1、と呟く。
 光条放つ超大型光線砲の動きが鈍る。直撃を受けてなお、ギギは走り続けていた。
 避けられないのならば、最速にして最短を。
 それは先往く√能力者が示した道筋だった。
 ワイヤーアンカーを砲塔に叩き込み、フェーズ2、と呟く。
 アンカーに繋がれたワイヤーを手繰り寄せるようにして己が身を光条の範囲から飛び出させ、超大型光線砲の自重を二倍にし、その砲身を大地に叩きつけて縫い留める。

「面白い。如何なる√能力か知らぬが」
「牽制など意味がないと思っているだろうが、違う」
 ギギは踏み込む。
 フェーズ3。
 他の√能力者たちが導いた軌跡がある。
 傷をつけ、広げ、穿ち、また広げた裂傷。
 それこそが己が目指す場所。手にした『双葬』の銃口を叩きつけるように突きつける。

「俺にとって生と死も、大して変わらない。自分の身など惜しくもないし、危険など恐ろしくもない」
「なら、なんとする」
「決まっている」
 ためらうことなく引き金を引いた。
 瞬時に放たれる二連撃。
 否、四連撃。
 弾丸が『リュクルゴス』の内部で炸裂し、装甲の内側を破壊する。
「ただ俺は――この生命に、意味を求めて在るだけだ」
 そう、紡ぎ繋げること。
 他者が楔ならば、己は鎹。
 次に繋げ、燈火を継ぐ。そのためにギギはゼロ距離にて放たれた銃撃の反動に吹き飛ばされながらも『リュクルゴス』の傷を広げ、後に繋ぐのだった――。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

トラスト・レッドライダー
ふ……あっはっはっはっは!!!

あ、自棄になって笑ってる訳じゃないよ。きつい時ほど、笑うのよ。
その方が、ココロって奴は上向くらしいからね!よっし元気出た!!行くよ!!!
ココロ奮わせ、先ほど感じた重圧と怖気を振り払い、
超大型光線砲の【弾道計算】エアバイク型WZ【早業操縦】
『プロジェクトカリギュラ』WZ融合【異形化】決戦人型WZに変形!!
ブースターを展開して自機【吹き飛ばし】加速!射線を【見切り】躱したりアームの【エネルギーバリア】で【受け流し】腕を犠牲に直撃を避け、猛スピードで【空中ダッシュ】リュクルゴスに迫りつつ、『アシュラベルセルク』で機械腕を生やしリュクルゴス・レイを複製砲撃!彼とその周囲の超大型光線砲基を【爆破】破壊!!

あれも!これも!!喰らってけぇええええッッ!!!!

【限界突破】爆炎の中突っ切って距離を詰め、彼の装甲に走る亀裂へ加速の勢いを載せた決戦刀をベルセルクマシンWZの【怪力】で突き刺し込む!!
そして!プラズマブレード変形!!超火力で内部を【焼却切断なぎ払い】溶断する!!!

 鋼鉄の駆体を襲う重圧。 
 圧倒的性能差。
 いずれの数値も己を軽く凌駕するのがスーパーロボット『リュクルゴス』であった。
「ふ……あっはっはっはっは!!!」
 その数値に トラスト・レッドライダー(赤い機兵・h01835)は笑っていた。
 自棄になったわけでもないし、己のプログラムが誤作動を起こしたのでもなかった。
 状況はきつい。
 正直に行って勝算というものは限りなくゼロに近い。
 けれど、己の演算は徐々に勝率というものを底上げしていく。
 何故か。
 わかっている。
 他の√能力者たちがいるからだ。
 彼らが戦うたびに、身を挺するたびにパーセンテージが上昇していく。パラメーターを見ても、そうはならない。
 不可思議な演算が働いているとしか思えない。

 それでも、まだ状況はきつい。タフな戦場だ。
 だから、笑ったのだ。
「何故、そのような感情表現をする。ベルセルクマシン」
『リュクルゴス』の言葉にトラストは笑いながら言う。
「あのね、きつい時ほど笑うのよ。その方が、ココロってやつは上向くらしいからね!」
「不可解なことだ。それは意味不明だ」
「でしょうね! でもね、現にわたし、元気出たのよ! 到底敵いっこないスペック差でもね、みんなあなたに立ち向かっていった。笑うだけじゃダメだったかも知れない。けれど、その背中を見てたらさぁ! 出るじゃない、元気!」
 いくよ、とトラストは、その名が示す通りに身に注ぐ重圧を振り払いながらエアバイク型ウォーゾーンを走らせる。

 超大型光線砲の光条が戦場を抉るようにして溶解させ、己に迫る。
「プロジェクトカリギュラ!」
 瞬間、トラストの体躯とウォーゾーンが融合し、決戦人型ウォーゾーンへと変形する。
 背部のブースターが噴射し、真紅の装甲をまとった機体が飛ぶ。
 加速し、制動ままらぬままに光条の熱量を受けた装甲が赤熱するままに脱落しても構わずに飛び込む。
「良い速度だ。だが」
 光線砲が眼前にある。
 打ち込まれた一撃を躱す余裕などない。
 凄まじい熱量をエネルギーバリアで受け流そうとしても、圧倒的な一撃を前に駆体が吹き飛ぶ。
 距離を取られた、と思った瞬間、頭上にさらにもう一基の超大型光線砲が砲口を己へと向けていた。

 放たれた光条が大地を貫き、爆砕する。
 その反動の中を更にトラストは加速して走り抜ける。
 空中をブースターによる勢いで無理矢理飛翔させているのだ。
 ウォーゾーンの内部シリンダーが破砕する。人工筋肉繊維が引きちぎれる。だが、それでも迫る光条の一撃を異形の多腕でもって受け止め防ぐ。
「それはもう見たってば!」
 ひしゃげた腕が見様見真似の複製でもって生み出した光線砲へと代わり、光条を放つ。
 だが、それはエネルギーフィールドに阻まれる。
 やはり、出力が足りない。
 それも圧倒的に、だ。

「強者と言えど限りがある。通常のインビジブルから引き出せるだけのエネルギーだけでは、再現できぬよ」
「あっそ! でも、光線砲を壊すことはできるでしょ!」
 トラストの一撃が超大型光線砲の砲身を穿ち、爆発を巻き起こす。
 その最中をトラストは走り抜け、さらに√能力の燈火を瞳に宿す。
 これまで紡がれてきた√能力者たちが示したのは、穿たれた装甲。広げられ、裂傷のように『リュクルゴス』の駆体に広がっているのだ。

 爆炎の中を突っ切るようにトラストは距離を詰める。
 己が手にした決戦刀。
 これをねじ込むように叩き入れ、アシュラベルセルクの名を恣にする多腕による膂力で持って押し込むのだ。
「素晴らしい一撃だ。だが、その腕は」
「使い捨て! だけどさ! これで終わりじゃないよ!」
 そう、己が生み出した腕は使い捨て。
 一度使えば、すぐに破損してしまう。だが、それでいいのだ。己が役目は、これだけなのだ。

「プラズマブレード変形!! 喰らってけぇえええええッッ!!!!」
 トラストは己に付けられた名を思う。
『信頼する』
 それは己に対してか、それとも他者に対してか。
 どっちだってい。
 今は、それで十分なのだ。
 己を信じた仲間たちがいて、己が信じる仲間がいる。
 トラストの背後から、最後の√能力者が燈火の残光を描いて、己がこじ開けた傷めがけて走る――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ケヴィン・ランツ・アブレイズ
最後の敵は手強いって相場が決まってる。当たり前の話だ。
……誰の目にも実力の差は歴然。それなのに、何故抗うのか。
答えは単純。他に道が無かった。それだけだ。事実を認め、諦めるには人間(竜)として未熟過ぎた。
そして未だ鳴動するこの都市には、怯えて震えている市民(かれら)がいる。
……だったら! やれるだけやるだけじゃねえかッ!

愛馬を駆り、間合いを詰めにかかる。迎撃が来るだろうけど、〈盾受け〉〈ジャストガード〉〈オーラ防御〉を組み合わせて防ぎ止める。止められなくたって、多少のダメージなら〈激痛耐性〉で耐える。
大技の気配を察知したら、盾を引っ込めてタイミングを合わせ《ルートブレイカー》起動。超大型光線砲の一閃を、右掌で相殺する。
「――視えた……ッ!」

奴さんがデカい一撃を放った直後なら、必ず隙ができるはずだ。これだけの大技を凌がれて、動揺しないはずも無えだろ。
隙を見切ったら、咄嗟の反応・迎撃が間に合わないくらいまで一気に間合いを詰めて、《斬撃・剛破竜刃》を放つ。
「この一撃に、俺の、すべてを―――ッ!」

 足が震える。
 手が震える。
 肩が震える。
 わかっていたことだ。最後に見える敵が強敵であることぐらい。
 当たり前の話だ。そういうものだ。
 いつだってそうだ。
 誰に目から見ても実力の差は歴然。
「理解しているようだな。その駆体そのものの震えを見ればわかる」
 スーパーロボット『リュクルゴス』の声が聞こえる。
 何故抗うのか。
 わかっている。ケヴィン・ランツ・アブレイズ(“総て碧”の・h00283)は、ひた走る。
 鳴動する都市を、走る。

 答えは単純だった。
 他に道がないからだ。それだけだ。事実を認め、諦めるには|人間《竜》として未熟に過ぎた。今もそうだ。
 だが、己の心が震えていた。
 この絶望的な戦いの中にあって、他の√能力者達は身を挺した。
 己ができることを成す。
 ただその一点に置いて彼らは立ち向かっていった。
 心が震える。
 その軌跡が今己の目の前にある。
 これが人だ。人の弱さを強さに変えるただ一つのことだと理解したのだ。

 そして何よりも。
 己の背には未だ怯えて震える|市民《かれら》がいる。
「……だったら!やれるだけやるだけじゃねぇかッ!」
 愛馬の疾駆似合わせるように『リュクルゴス』の超大型光線砲の光条が走る。
 構えた盾が瞬時に融解する。
 到底防げるものではない。オーラを組み合わせてなお、あの一撃は重たすぎる。
 熱量の凄まじさだけで己が鎧を通して肉を焼くようであった。
 痛みが走る。
 だが、それがなんだというのだ。己の痛みなど、些細なことだ。痛い、ただそれだけだ。恐怖など振り払えばいい。
 己が愛馬が嘶く。

 そのとおりだ、と言っているようだった。
「お前もそう思うかよッ……! だよな、そうだよなッ!!」
 なら、とケヴィンは盾を投げ捨て、己が右掌を突き出す。
「捨て鉢か。否か。見せてもらおう、強者」
 放たれる光条の一撃。
 その眼前に己が右掌を突き出す。
 それは汎ゆる√能力をかき消す右掌。
 ルートブレイカー。
 汎ゆる可能性を、万難排して打ち消す力。光線の一撃が掌に触れる端から消失していく。

「――視えた……ッ!」
 そう、それは軌跡だった。
 共に戦場にあった√能力者たちの紡いできた軌跡。
 到底及ばぬ絶対的強者を前にして一歩も退かず、果敢にも立ち向かった彼らの戦いの軌跡が視えたのだ。
「私の一撃を……かき消す、だと?」
「俺は、お前をぶっ潰してやる!」
 身にまとった鎧が弾け飛ぶ。身一つだ。突き出した右掌が熱い。
 それは多くの√能力者たちの思いを載せているからだ。
 体が震える。
 足が震える。
 手が震える。
 肩が震える。
 そして何よりも、己の魂が震える。

「この一撃に、俺の、全てを――ッ!!」
 咆哮するは竜。
 手にした暴竜殺しの黒鉄斧が、その咆哮を受けて鳴動するようだった。
 振り下ろされた一閃は、紡がれた軌跡の集約点である『リュクルゴス』の装甲へと狙い違わず叩き込まれる。
 己の全て。
 |斬撃・剛破竜刃《グランディア・フェイザーザップ》。
 戦斧の一撃はスーパーロボット『リュクルゴス』の亀裂走る装甲を押し広げ、内部のフレームすらも寸断しながら袈裟懸けに駆体を引き裂いた。

「……素晴らしい。やはり強者。感情などという揺らぎを得ながら、その不確定さをも飲み込む器。成長する、ということは斯くも美しく素晴らしいことなのだ」
『リュクルゴス』のアイセンサーが明滅する。
 例え、個で圧倒したとしても、その魂の根底にあるものを同じくする者たちが集うのならばこそ、紡がれ結実するものがあることを知る。
 引き裂かれた体躯が崩れ落ち、今此処に『リュクルゴス』の駆体は凄まじい爆炎と共に破砕する。
 その爆炎が空を衝くのと同時に、戦闘機械都市『クリーサ8』の鳴動は漸くにして鳴り止むのだった――。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

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