シナリオ

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Book of Christmas

#√EDEN #√妖怪百鬼夜行

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 #√EDEN
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●聖夜の物語
 煌びやかなイルミネーションが輝く街の中、行き交う人々は皆笑顔を浮かべていた。
 手にした包みを大事そうに抱え、家路を急ぐ人。腕時計や大通りにある電光掲示板の時計をちらちらと気にしては、待ち合わせの時間になるのを待つ人。レストランに向かう為、手を繋いではしゃぐ家族たち――ショーウィンドウに映る、そんな人々の姿をぼんやりと視界に収めながらも女性が見つめるのは一冊の絵本。
「……どうして、私の、お話……っ」
 イラストは違えど、本の内容は自分がずっと温めていた内容。絵本作家になるのだと夢見て、憧れの賞に出すべく頑張っていたというのに。
「酷い……!」
 彼女が出すよりも早く、盗作されたその話は大賞を取り、こうやって華々しく書店のウィンドウを飾っている。勿論抗議したけれど、盗作した犯人は交際していた男性ということもあって、盗作したという証拠すら突き付けられぬまま終わってしまった。
 男性とは別れたけれど、新たに創作をする気持ちにもなれず、こうやって訪れた本屋で盗作された絵本を見てしまえば――心が折れてもおかしくはなくて。
「お互いに頑張ろうって言ってたのに、ね」
 男性を想う気持ちはもうないけれど、裏切られた辛さ、作品を奪われた憎さは簡単に消えるものではない。
 ショーウィンドウの中に飾られ、誰かの手に渡るであろう絵本。それを見るたびに、彼女の心には澱みが重なっていく。そして、その澱みは『紅涙』を引き寄せて――。

●今宵誰かのサンタになって
「ブックサンタって知ってるかい?」
 柔らかな笑みを浮かべ、夜賀波・花嵐(双厄の片割れ・h00566)が√能力者へと問い掛ける。
「チャリティのひとつなんだけど、大変な境遇にあって本を読むことが出来ない子ども達へ、自分が選んだ本をプレゼントするってものなんだ」
 誰の選んだ本が誰へ届くかはわからないけれど、誰かのサンタになるのは素敵な事だね、と花嵐が笑う。
「もしよかったら参加してみて。勿論、自分の為の本を探したり、自分の大切な誰かに贈る本を選んだりするのも良いと思うんだよね」
 必ずブックサンタに参加してほしいというわけではないよ、と花嵐は頷く。何故ならこのブックサンタが行われている、とある大型書店――この周辺に古妖『紅涙』が現れるからだ。
「紅涙を呼び寄せる原因となるのは絵本作家を夢見る女性でね」
 星詠みにて得た情報を余すことなく伝え、花嵐は小さく溜息をこぼす。
「盗作による恋人の裏切り、しかもその絵本は本屋に並んでいる……なんて、彼女にとっては辛いクリスマスになってしまうだろうね」
 ふらりと引き寄せられるように本屋に入り、ぼんやりと中を巡って絵本コーナーを眺めて、再び外に出ていく女性のもとに『紅涙』は現れる。
「放っておいたら、彼女は現れた紅涙に事情を話して、紅涙は裏切った男を殺すだろうね。最終的には事情を話した彼女も」
 紅涙は既に歪んでしまった存在故に、何らかの理由をつけて女性すらその手に掛けるのだ。
「とはいえ、紅涙が現れるまでは自由に楽しんでくれて構わないよ。大きな書店なんて、いるだけで心が弾むものだろう?」
 女性が店を出ていくタイミングに合わせて、後を追える者が追ってくれれば助かるよ、と花嵐が微笑んだ。
「紅涙を倒した後は、本屋の隣に隣接されているブックカフェでゆっくりしていくといいよ」
 クリスマスツリーならぬ、ブックツリーが飾られたブックカフェは紅茶を専門に扱うカフェ。心を落ち着けるのにはうってつけで、紅涙を引き寄せた女性にも丁度いいはず。
「クリスマスにちなんだ軽食やスイーツもあって、おすすめはローストビーフのサンドイッチと、スパイスやドライピールをブレンドしたクリスマスティーだよ」
 落ち着いた空間で、買った本を読むのもいいし、ブックカフェにある本を読んでもいいだろう。
「難しいことは考えずに、素敵なクリスマスのひと時を過ごしてきてね」
 話を聞いてくれた君達に笑顔を向け、花嵐は現場に至る道を示すのだった。
これまでのお話

第2章 ボス戦 『紅涙』


POW 千切
【千切り捨てられた誓詞や嫁入り道具達の怨嗟】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【悲運招く呪詛】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
SPD 血霧
10秒瞑想して、自身の記憶世界「【鬼哭啾啾の修羅場】」から【血霧に霞む愛しき人】を1体召喚する。[血霧に霞む愛しき人]はあなたと同等の強さで得意技を使って戦い、レベル秒後に消滅する。
WIZ
【全てが満ち足りていた、幸せな頃の断片】を語ると、自身から半径レベルm内が、語りの内容を反映した【虚しき花嫁道中奇譚】に変わる。この中では自身が物語の主人公となり、攻撃は射程が届く限り全て必中となる。
イラスト ゆひゃん
√妖怪百鬼夜行 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●痛哭に呼ばれしは
 書店の中を巡り、絵本コーナーを眺め――女性は痛む心を抱えて書店を後にする。そうして、ふらりと大通りを歩いた先の広場で、何かに呼ばれたような気がして振り向いた。
「……誰?」
 広場の先が歪んで見えて、何度か目を瞬いた後に現れたのは着物に身を包んだ鬼女――『紅涙』で、周囲に目をくれることもなく女性にのみ視線を向け、唇を開いた。
『お前の痛哭が『私』を呼んだ。哀れな貴女は『私』を否定しないだろう。その復讐を『私』が請け負おう』
「ひ……っ!? 誰、復讐!?」
『そうだ、お前の痛哭の全て。『私』の痛哭として写し取ろう。裏切り者を血溜まりに変えよう。さあ、共に来るがいい』
 鬼女の姿をした古妖、紅涙が女性へと迫る。じりじりと後退しながら、女性は紅涙へと叫んだ。
「わ、私、そんなことは望んでいないわ! そりゃ、憎い気持ちはあるけど、死んでほしいなんて思ってない!」
 その声は紅涙の出現を待っていた√能力者へと届く。彼女の思いを受け止めるように、彼らは女性と紅涙の許へと向かう。
『邪魔をするなら、お前達から殺してくれよう』
 周囲の人々がどよめく声に、√能力者達は思考を巡らせる。
 一般人を退避させ、紅涙が狙う女性を守り、誰一人傷付けることなく敵を倒さなくてはならない。一般人は忘れようとする力によって、広場を離れれば騒ぐこともなく紅涙のことは忘れてしまうので、避難が済めばそれ以上気にする必要はないだろう。
 しかし、紅涙が執着している女性は広場を離れようとすれば紅涙が追い掛けてきてしまうので、この場で守りながら戦う必要がある。平穏なクリスマスの夜を取り戻す為に、√能力者達は駆ける――。
月依・夏灯

女性を背に庇う位置を常に意識
もしかして君は復讐で誰かを殺めたのかい?
憎い相手を殺したい気持ちは僕もわかるよ
でも彼女は違う
君の言葉には耳を貸したりはしない
注意を引き付けて他の人が避難しやすくしたい

√能力2回攻撃
瞑想中に当てる
うわ、もう一人増えた
紅涙とどういう関係なんだろう
って気にしてる余裕ないな
攻撃を見切り、回避不可なら炎属性付与したオーラ防御でジャストガード
跳弾含めて弾道計算し不意打ち狙って√能力で反撃
少しでも紅涙の力を削っておきたい

女性のほうには近付かせない
保険として猫神の分霊を護衛につかせた上でオーラ防御もかけておく
彼女には未来がある
復讐で血塗られた道ではなく真っ当に生きて輝く未来がね

●未来を向く為に
 古妖『紅涙』が現れ、そしてターゲットである女性に接触を図った――その瞬間に、月依・夏灯(遠き灯火・h06906)は迷わず女性と紅涙の間へと駆け出す。そして女性を背に庇うようにして、真っ直ぐに紅涙を見遣った。
「もしかして君は復讐で誰かを殺めたのかい?」
『……何者ぞ』
 現れた√能力者に紅涙がこてりと首を傾げ、着物の裾を引き摺りながらゆっくりと歩を進める。
「何者かって言われると、そうだね……君を止めに来た者、かな」
『そうか『私』の邪魔をする者か。ならば血溜まりにしても構わぬな』
 その返答に、夏灯は困ったように笑みを浮かべた。
「そうなるのかな。でも、憎い相手を殺したい気持ちは僕もわかるよ」
 実際に、自分は殺したのだからと夏灯は思う。
『――ならば、邪魔をするな』
 夏灯の瞳に嘘はないと判断したのだろう、紅涙が彼の後ろにいる女性に視線を向けた。
「そういうわけにはいかないんだ。だって、彼女は違う。君の言葉には耳を貸したりはしない」
 手にした銀の回転式拳銃『銀月』を紅涙に向け、注意を自分へと引き付ける。その間に、この場に居合わせた一般人が逃げてくれれば御の字だと、周囲の状況も気に掛けつつ引鉄を引いた。
「頼むよ、銀月」
 淡く輝く銀色の銃より放たれたのは闇の属性を纏った弾丸、紅涙の胸を狙ったそれは守り刀の鞘に阻まれたが|Luna Argentea《ルーナ・アルジェンティア》の神髄は呪詛によるダメージだ。
『呪詛ごときで『私』を止められると思わぬことだ』
 ふ、と目を閉じた紅涙が瞑想を始める、その隙とも思える十秒の間にも、夏灯は銀月の弾丸を撃ち込む。怨念をその身に宿す紅涙だからか、それとも強力な力を宿す|王権執行者《レガリアグレイド》だからなのか、|攻撃《呪詛》の通りがいまいちだと感じつつも、ならばその分手数が多ければいいだろうと、夏灯は思考を切り替える。
「……って、うわ、もう一人増えた」
 瞑想を終えた紅涙が自身の記憶世界から『血霧に霞む愛しき人』を召喚したのだ。紅涙とどういう関係のある人物なのだろうか、と気になることはあれど、そんな余裕はない。
 血霧によってその姿ははっきりとしないが、攻撃は現実のもの。女性に近寄らせないようにしつつ、攻撃が周囲に飛ばぬように受け止めた。
「にゃんこ、頼むよ!」
 念の為、保険として|猫神の分霊《分霊にゃんこ》を女性の護衛に向かわせ、夏灯は紅涙を近付けないようにと立ち回る。
『あの者の痛哭が『私』を呼んだのだ。復讐を請け負うは『私』の――」
「彼女には未来がある、復讐で血塗られた道ではなく真っ当に生きて輝く未来がね」
 その為なら君を倒すよ、と夏灯は再び銀月を構えた。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

千代見・真護
そこのひと!
そこの和服のふしんなひとぉ!(びしっと鬼の人を指さし)
初対面の見たことない人が、知ったふうなこと言いながらじわじわ近寄ってくるなんて、令和の日本じゃ不審者っていうんだよ
お姉さんから離れて、お姉さんも困ってる!
ついでにぼくも困ってる…誰、ほんと…

ぼくは、望んでないって言うお姉さんの気持ちを守りたい
お姉さん、アレはきっと何とか詐欺とか誘拐のアピールだからね
だからぼくのうしろにいて、そんなのいりませんして
やってくる攻撃は全部受けとめてかばうよ
√能力「忘れようとする力」を使って、他のみんなも守ろうとするよ
あんなの、いい結末に続かないって、お姉さんならわかるだろうから

●せいいっぱいの力で
 心に傷を負った女性の前へ現れた古妖『紅涙』、その姿を見た千代見・真護(ひなたの少年・h00477)は直感的に思う、あれは――。
「そこのひと!」
 紅涙と女性の間に位置取りつつ、真護は果敢にも紅涙に立ち向かう。
「そこの和服のふしんなひとぉ!!」
 びしっ! と紅涙を指さして、真護は精一杯の怒った顔をしてみせた。
『……不審、者?』
「そうだよ! 初対面の見たことない人が、知ったふうなこと言いながらじわじわ近寄ってくるなんて、令和の日本じゃ不審者っていうんだよ!」
「確かに……!」
 真護の言葉に、背に庇われた女性はその通りだな、と思う。それと共に、こんなに小さな男の子なのにしっかりしているな、とか、きっとご両親の教育の賜物なのだろうな、と思う。
「お姉さんから離れて、お姉さんも困ってる!」
「そう、そうね、私、そんなこと言われても困るわ!」
 大人として、毅然とした態度で不審者に向き合うべきだと、女性は思う。忘れようとする力が働いているとはいえ、やはり子どもの前だからと女性は勇気を振り絞る。
「ついでにぼくも困ってる……誰、ほんと……」
 突然現れた鬼の女性、敵なのはわかるけれど、なんだか悲しそうな顔をしているような気もすると真護は眉根を寄せた。あっちにはあっちの言い分があるのかもしれないけれど、真護は望んでないと言ったお姉さんの気持ちを守りたいと拳を握る。
「お姉さん、アレはきっと何とか詐欺とか誘拐のアピールだからね! だからぼくのうしろにいて、そんなのいりませんして」
「詐欺……! 復讐代行とか、そういう……?」
「そう、そういう!」
『……『私』はお前の痛哭に呼ばれしもの』
「聞いちゃダメだからね!」
 真護の言葉にこくりと頷く女性を見て、紅涙は先に真護を倒してしまうべきだと思ったのだろう、攻撃の手を真護へと伸ばす。
「そっちがその気なら――!」
 どんな攻撃がきたって自分が受け止める! という気概のままに、真護は忘れようとする力を増幅していく。
「ぼくは、お姉さんもみんなも守るよ!」
 紅涙の言葉に頷いたって、いい結末には続かない。真護が守ろうとする彼女は、もうそれをわかっているのだから。
「だから、ふしんなひとは帰って!」
 大きな声で、真護は紅涙を追い払うべくもう一度叫んだのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

ルノ・カステヘルミ
【ラ乳2】
復讐なら先にこっちに手を貸してくれませんかね!?
ちびっこが好きそうな本を何冊か選んでお会計してくださいねと渡したクレジットカードで、エヌテンドウスゥイッチ3買いやがって、ブックサンタは恵まれない境遇に居るお子さんに素敵な本を提供する催しであって、ふざけた赤玉に遊び道具提供する機会じゃねーんだわ!シギャアアアア!(咆哮)
一般人さんがいらっしゃるし、呪いだの必中だの厄介な能力を持つ相手の様なので、ウィザードフレイムを反射狙いで複数配置…
やっべ、この能力、動いたら消滅するんだった!!
ウゴォオオオオ逃げられる!ふざけた赤玉と人のクレジットカードで買ったエヌテンドウスゥイッチ3に逃げられる…!
キノ・木野山
【ラ乳2/2】
たかが69,980円でケツの穴のちぃせぇセレスティアルだピヨ
作品盗まれても、命までは取らないお姉さんを見習って欲しいピヨ
人のアイデア頼りの盗人は一発屋で終わるのが必然だし、心機一転、可愛さの権化たるぴよをモチーフにした新作とかいかがピヨ(女性に気さくに話しかける体を装いつつ、敵からの攻撃は庇う)
とりあえず怪異をなんとかせんことには、グッズ展開も視野に入れた相談が出来ないし、邪魔者にはさっさとご退場いただくピヨ
怨念凄そうなんで、武装化記憶とか使ったら、地獄絵図が展開出来そうピヨ
…まぁ、アッチのセレスティアルの方が、よっぽど正気を逸してる気がするけどピヨ
(ゲーム機抱えてぴよんぽよん)

●鬼女には野良×2をぶつけんだよ
 痛哭に呼ばれた――そう、古妖『紅涙』は言った。そして、その復讐を請け負おうとも。
「なるほど痛哭、痛哭ってよくわかりませんが復讐はわかります」
 紅涙と女性の間に割って入ったルノ・カステヘルミ(野良セレスティアル・h03080)は頷く。そして、その儚げな美貌を怒りに歪め――。
「復讐なら先にこっちに手を貸してくれませんかね!?」
 そう、叫んだのである。
『……『私』は花嫁の復讐を請け負うもの』
「それを言ったらこちらの女性、花嫁じゃないじゃないですか! 私の顔に免じてひとつ、なんなら女装も辞さない構えですよ、こっちは!」
 紅涙からすればそういう問題ではないのだけれど、ルノは彼女に反論する隙を与えずに捲し立てる。
「私はね、ちびっこが好きそうな本を何冊か選んでお会計してくださいねって言ったんですよ、この赤玉に!」
 赤玉、と言われ指さされたのはキノ・木野山(野良キノピヨ・h06988)で、さりげなく女性の隣に可愛いマスコットですって顔をして立っているではないか。
「なのに渡したクレジットカードでエヌテンドゥスゥイッチィ3を買いやがって……!!」
 お前クレカ持ってたんか、という視線をあらぬところから感じた気がするけれど、ルノは怒りのままに言葉を続ける。
「ブックサンタは恵まれない境遇に居るお子さんに素敵な本を提供する催しであって、ふざけた赤玉に遊び道具提供する機会じゃねーんだわ!」
「たかが69,980円でケツの穴のちぃせぇセレスティアルだピヨ」
 ハッと鼻で笑いつつ、キノはぽよんっと跳ねる。
「作品盗まれても、命までは取らないって言うこちらのお姉さんを見習って欲しいピヨ」
「どの口が言ってるんです!?」
「この口だピヨ!」
「えっ……あれ、てめーの口どれ……これか……?」
 キノは温泉街に住み着いた野良のキノピヨなので、口がどこかわからなくてもおかしくはない。そう、おかしくはないのだ。
「あるピヨ! このキュートな嘴みたいな口がピヨ!」
「見慣れ過ぎてわかんなくなってきたな……ってそうじゃない、そちらのお姉さんは復讐を望んでいないようですし、こっちの復讐にぜひ!」
「必死な男はみっともないピヨ」
「シギャアアアア!」
 咆哮をあげるルノと、どこ吹く風のキノを眺め、紅涙が下した決断は――このふたりが邪魔をするから、『私』を呼んだものが復讐に頷かないのだ、である。
「どうしてそうなるんですか!」
 どうしてもこうしてもないのだが、一般人に被害が及ぶのはルノも本意ではない。紅涙は呪いだの必中だのと厄介な能力を持つ相手、こうなったら仕方がないと反射狙いでウィザードフレイムを複数配置していく。
「あ、あの」
「大丈夫ピヨ。あんなのでもそれなりに頼りになるピヨ。それよりも! 人のアイデア頼りの盗人は一発屋で終わるのが必然だし、心機一転、可愛さの権化たるぴよをモチーフにした新作とかいかがピヨ?」
 まるっとした愛らしいフォルム、これは売れる、間違いないとキノが女性に話掛けつつ紅涙と引き離す。
「とはいえ、だピヨ。とりあえず怪異をなんとかせんことには、グッズ展開も視野に入れた相談が出来ないし、邪魔者にはさっさとご退場いただくピヨ」
 算盤は落ち着いて弾きたい、そう思いながら増えていくウィザードフレイムの間をゲーム機を抱えたままぴよんぽよんと擦り抜けて、キノが紅涙の背後にある血濡れた花嫁道具へと触れる。流れ込んでくるのは花嫁であった女性の記憶、怨念凄まじいその記憶になんとか交渉するけれど、ちょっと正気じゃないようで跳ね返された。
「惜しいピヨ、地獄絵図が展開できると思ったのにピヨ」
「外道か!? 外道だったわ!!」
 このクソキノコがよぉ! とルノが殴りに行こうとして、ハッと気が付く。
「やっべ、この能力、動いたら消滅するんだった!!」
 折角召喚したウィザードフレイムを消すなんて勿体ない、何せ完全に聞き流していたのだけれど、紅涙が語った話が反映されて周囲は虚しき花嫁道中奇譚へと変化しているのだから。
「このウィザードフレイムがいい仕事してるのがまた!」
 動くに動けない、なんというジレンマ。
「ウゴォオオオオ逃げられる! ふざけた赤玉と人のクレジットカードで買ったエヌテンドゥスゥイッチィ3に逃げられる……!」
 血の涙を流しそうな勢いで、ルノから怨念めいた何かが溢れ出している。
「……あの怪異より、アッチのセレスティアルの方が、よっぽど正気を逸してる気がするピヨ」
「ウオォォォォ!! 69,980円!!!」
 ルノの叫びは、ただただ虚しくクリスマスの夜に響き、その周囲でウィザードフレイムは一般人を守り続けたのであった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

ラデュレ・ディア
【水禽窟2】◎

はい、鳰さま
わたくしの耳にも届いております
お務めを果たしにまいりましょう
憎しみを抱えながらも、拒むお心
きっと、胆力がいることなのです
そのお心を蔑ろにはいたしません

イースター・リリーが紡ぐ糸を繋ぎましょう
届く範囲まで、とはなりますが……
こちらを鳰さまへ、あなたさまへ
そして周囲の方々へと接続いたします
素早く駆けてくださいませ
そして広場の外へとお逃げください

鳰さまの懸念とはなりませんように
こちらの方はお任せくださいませ
わたくしの力を鳰さまへとお送りいたします
その一閃が、よりまばゆいものとなりますよう

あなたは憎しみを糧になさるのですね
想いは、その方だけのもの
奪掠をなさってはいけないのです
香柄・鳰
【水禽窟2】◎

サンタの後は本来の務めを果たしましょう
ラーレさん、聞こえましたか
憎しみを認めながら害す事を拒む彼女の声
あの選択を尊重したいと思うのです
私には到底出来ない

女性へ事情を伝え協力を願う
アレは貴女にご執心のようで
倒す為に暫し此処に留まって頂けますか
代わりに必ずお守りします

ラーレさんが繋いでくれた…光の糸?美しいです
あなたが背を押されているようで頼もしいわ
…ええ!お任せください
そして周りの方々の事、頼みましたよ!

刀を鵙で変異させ
女性と敵の間へ割入り斬りかかる
金縛りと熱傷で召喚体含め足を鈍らせ
女性やラーレさんを害そうとする時は庇います

紅涙とやら
他者の痛みや怒りを勝手に侵した罰を受ける時ですよ

●憎しみも想いも全ては自分のものなれば
 しっかりとサンタの役目を果たしたならば、次にすべき事は決まっていると香柄・鳰(玉緒御前・h00313)はラデュレ・ディア(迷走Fable・h07529)と共に女性の後を追う。
「サンタさんの後は本来の務めを果たしましょう」
「ええ、お務めを果たしにまいりましょう」
 見失わぬように慎重に、と付いていった先には広場があり、女性の様子がおかしいと思った瞬間には古妖『紅涙』が現れる。何を話しているかまでは人々の楽し気な声に紛れてよく聞こえなかったけれど、女性が叫んだ言葉は確かに二人へと届く。
「ラーレさん、聞こえましたか」
 憎しみを認めながらも、自分を裏切った相手を害す事を拒む声を。
「はい、鳰さま。わたくしの耳にも届いております」
 憎しみを抱えながらも、拒む心が。
「あの選択を尊重したいと思うのです、私には到底できない」
「彼女の選択は、きっと、胆力がいることなのです。そのお心を蔑ろにはいたしません」
 復讐を願ったとて、誰が彼女を責められようか。けれどその恐ろしい誘惑を毅然と断る彼女は、どこまでも絵本を愛する人なのだろう。そんな彼女を守るため、ラデュレと鳰は紅涙の前へと立ち塞がった。
「あなた達は……?」
「あなたさまを助けにまいりました」
「アレは貴女にご執心のようで。倒す為に暫し此処に留まって頂けますか? 代わりに必ずお守りします」
 二人の言葉は凛と彼女に響く、紅涙の言葉よりも。
「……はい!」
「ありがとうございます。では、ラーレさん」
「お任せください。イースター・リリーが紡ぐ糸を繋ぎましょう」
 奇跡をひとつ、とラデュレが|白の祝祭《アズユーライクイット》の力を振るう。紡がれた光の糸はちいさな祝福を繋いだ人々へと贈る、それは鳰へ、心気高き女性へ、そして周囲の人々へ。
「ラーレさんが繋いでくれた……光の糸? 美しいです」
「届く範囲まで、とはなりますが……さあ、みなさま。素早く駆けてくださいませ、そして広場の外へとお逃げください」
 半径二十メートルともなれば、それなりの人数となる。けれどラデュレの繋ぐ糸の効果もあってか、人々は広場の外へとスムーズに逃げていく。それに伴い、範囲外にいた人々も何かあったのかと広場から避難していくのが見えた。
「さすがはラーレさん。周りの方々の事、頼みましたよ!」
「鳰さまの懸念とはなりませんように……こちらの方はお任せくださいませ」
 安心して背を預けられる感覚に、鳰は高揚したような気持ちで紅涙へと向き合う。
「紅涙とやら、貴女のお相手は私がしましょう」
『お前達も『私』の復讐を邪魔するのか』
「ええ、邪魔をしに来ました」
 手にした刀を構え、狂刀へと変形させる。それは彼女の√能力|鵙《モズ》の力――怨念と呪いに満ちた紅涙にどこまで通るかわからないけれど、女性に意識を向けぬようにと渾身の力で斬りかかった。
 鳰の振るう狂刀は紅涙にも負けることはなく、その威力を存分に発揮する。金縛りと熱傷、この状態異常が通じるのは大きい。
『……煩わしい』
 僅かに眉根を寄せた紅涙が瞑想へと入り、記憶世界より『血霧に霞む愛しき人』を召喚する。召喚された者の顔は血霧に霞んでよく見えなかったが、紅涙の意志で動くのだろう。それは迷わず鳰ではなくラデュレの方へと向かった。
「させません!」
 ラデュレを害そうとするのは、彼女が繋ぐ糸が邪魔だと判断したからだろう。事実、鳰の攻撃は光の糸の効果により命中率も反応速度も上がっている。だからこそ、ラデュレは逃げることなく――そう、鳰を信じて光の糸を繋ぐのだ。
「わたくしの力を鳰さまへとお送りいたします。その一閃が、よりまばゆいものとなりますよう」
「ありがとう、あなたに背を押されているようで頼もしいわ」
 紅涙に効くのなら、召喚体にも効くだろうと鳰が手にした狂刀を召喚体へと振り下ろす。そして動きの止まった召喚体を蹴り飛ばし、紅涙へ真っ直ぐに視線を向けるとラデュレも紅涙を見遣る。
「あなたは憎しみを糧になさるのですね。あなたの憎しみはあなたのものですが、あなた以外の想いは、その方だけのもの。略奪をなさってはいけないのです」
 それがどのような想いであっても。
「紅涙、他者の痛みや怒りを勝手に侵した罰を受ける時ですよ」
『……『私』を否定するか』
「ええ、私達の全力で」
 倒してさしあげましょう、と鳰は再び紅涙に向かって狂刀を振り抜いた。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

天ヶ瀬・勇希
のの(h03556)と

来たな、紅涙!
即座にベルトに光の属性宝石を嵌めて変身
真っ白い衣装のヒーロー姿になったら、光の宝石を剣にはめる
そのまま突っ走って、紅涙と狙われてる女性の間に割って入る
おまえの好きにはさせない!復讐なんてさせるもんか!

女性を庇って後退したら、ののの傍に

へへっ、この間手に入れた、俺の新しい力なんだ!
どうだ、のの?かっこいいだろ!

紅涙が召喚したら、剣に力を溜めながら攻撃を受け止める
ののも守ってくれる、こんな痛み大したことないぜ!
食らった分は60秒後……召喚した人が消えてれば、紅涙を直接攻撃してやる!

人はみんなそれぞれの物語を持ってる
助けた女性も、新しい物語をきっと本にできるよな!
楪葉・望々
勇希(h01364)と

絵本作家さんは、サンタさんみたいに、夢をくれるお仕事だと思う
だから、勇希と一緒に作家さんを守るよ

わ、勇希、格好良い…!
これまでと違うヒーロー姿を見れば、わくわく感激しちゃうし
勇希から引き継ぎ女性を保護して
わたしたちの後ろに下がっててね、って促しながらも
わたしも一緒に、がんばる

神聖竜を喚んで、お願いを
みんなを守る|ヒーロー《勇希》を、どうか60秒間守って
そしたらあとは、勇希がきっちり決めてくれるって、知ってるから

だって今日はクリスマスだもん
紡がれるお話は、虚しき花嫁道中奇譚なんかじゃない
みんなを守ってくれる、クリスマスのヒーローのお話
神聖竜と一緒に、わたしも勇希を応援するよ

●誰かの夢を守って
 失意のままにふらりと歩く女性を追い掛ければ、古妖『紅涙』が√を越えて現れる。
「来たな、紅涙!」
 その姿を視認した瞬間、天ヶ瀬・勇希(エレメンタルジュエル・アクセプター・h01364)は躊躇うことなく光の|属性宝石《エレメンタルジュエル》・ライトをベルトに嵌めた。
 瞬間、勇希の身体は眩い光に包まれ姿を変える。淡い光を纏いながら現れたのは、細やかな刺繍が施された白いローブを纏った勇希で、髪も白くどこか静謐さを感じさせるかのよう。
「わ、勇希、格好良い……!」
 初めて見る勇希の変身フォームに、楪葉・望々(ノット・アローン・h03556)が思わず感嘆の声を零した。
 その声に少し笑って見せて、勇希は光の宝石を嵌めたジュエルブレイドを手に駆け出す。そして、紅涙と女性の間に割って入ると、凛とした声を響かせる。
「おまえの好きにはさせない! 復讐なんてさせるもんか!」
『お前も『私』の邪魔をするのか』
「当たり前だ!」
 ジュエルブレイドの切っ先を紅涙に向けながら、勇希が女性を庇いつつ望々の傍へと後退する。邪魔をしたことにより、紅涙の意識は女性から勇希へと向いている。
「のの!」
「うん!」
 勇希が紅涙から視線を外さぬようにしつつ、女性を望々へと預ける。しっかりと彼女を自分の背に庇いながら、望々は安心させるように微笑みかけて言葉を紡ぐ。
「絵本作家さんは、サンタさんみたいに、夢をくれるお仕事だと思う。だから、勇希と一緒に作家さんを守るよ」
「ああ、俺とののに任せろ!」
「わたしたちの後ろに下がっててね」
 力強い二人の言葉に、女性がこくりと頷いて二人の邪魔にならぬよう僅かに下がる。その姿を確認し、二人は改めて並び立ち、紅涙を見遣った。
「勇希、その姿……初めて見る姿だね?」
「へへっ、この間手に入れた、俺の新しい力なんだ! どうだ、のの? かっこいいだろ!」
「うん、とっても! 新しい力を手に入れた勇希と一緒に、わたしもがんばる」
 ぐっと握り拳を作った望々が|神聖竜《ホーリー・ホワイト・ドラゴン》を顕現させ、願いを口にする。
「みんなを守る|ヒーロー《勇希》を、どうか60秒の間、守って……!」
 まるで勇希の新フォームのように淡く輝く神聖竜が翼を羽ばたかせると、望々の心からの願いを叶えて消えていった。
『邪魔を……『私』の邪魔をするな』
 怨嗟に満ちた紅涙が、近くにあった石で作られた椅子を望々に向かって投げ付ける。それをすかさず勇希が受け止め、横に薙ぎ払う。
「勇希!」
「大丈夫、これくらいじゃ負けないぜ!」
 剣に嵌めた宝石に光エネルギーを込めながら、勇希が紅涙の動きを見逃さないように――必殺の一手を放つタイミングを計る。受けたダメージが勇希に作用するのはチャージが終わるのと同タイミング。痛みが一気に襲ってくる……とはいえ、勇希の身体は望々の願いにより守られていたし、ダメージとしては軽微だ。
 まだこちらに余裕がある――そう思いながら紅涙が召喚した血霧に霞む誰かを相手取りつつ、光エネルギーをチャージしていく。
「大丈夫、神聖竜が叶えてくれた守護はまだ生きてる……勇希!」
 60秒だけの守護だけれど、それが切れたその時は、勇希がきっちり決めてくれるから。
「待たせたな! 俺のとっておきを見せてやる! いくぞ、『ライトニングジュエル』!!」
 紅涙が召喚した何者かは消え、勇希を阻む者はいない。真っ直ぐに紅涙へと駆け、勇希が光り輝くジュエルブレイドを振り下ろす!
『ぐ……っ!』
 紅涙が抱えた怨念や怨嗟を吹き飛ばすような強力な一撃に、たまらず紅涙がたたらを踏む。
「人はみんな、それぞれの物語を持ってるんだ! お前にその物語を捻じ曲げる権利はない!」
『おのれ……っ『私』の邪魔を。邪魔をするな……!』
「邪魔なんて、するに決まってるの! だって今日はクリスマスだもん」
 紡がれるべきお話は、虚しき花嫁道中奇譚なんかじゃない、と望々が毅然と言い放つ。
「みんなを守ってくれる、クリスマスヒーローのお話だよ」
「クリスマスの、ヒーロー……」
 その言葉を聞いていた女性が、瞳に光を取り戻しながら勇希を見つめる。
「がんばって、勇希!」
 望々の精一杯の声援、それは勇希の心を奮わせて。
「おおおおおおお!」
 忘れる力によって女性がこの出来事を忘れてしまっても、新しい物語を再び紡げるように、その心に勇気を灯せるように――そう願って、ジュエルブレイドと共に再び紅涙へと斬りかかるのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

汀羽・白露
【白華】◎

盗作か…
本来ならばもっと違った形で愛されていたはずの本を思うと
他人事には思えん

…かや?おやつがなんだって?
普段あまり見せない笑顔に💢貼り付け

物の例えには嘆息後に苦笑
…しょうがないな
まがりなりにも"神様"だからな
"お願い"されたなら叶えてやろう
(他の誰でもない、かやの頼みならば尚更な
そのかわり、本当に|良い子にしているんだ《無茶するんじゃない》ぞ

かやの作った家で
かやと女性を守りつつ戦闘

血霧対策に【詞弾夢幻】で間断なく先制攻撃
そう易々と瞑想できると思うな
敵をよく観察し、かやの√能力に応じて敵が契を放つ前に
咄嗟の一撃【白綴の弔弾】で思考を惑わせる
記憶が掻き乱されていては"幸せなころ"なんぞ語れまい

かやの優しさに愛おしさ募り
大丈夫に決まっているだろう?かや
君が生み出した|神《俺》が居るんだ
大船に乗ったつもりで構えていろ
…誰のせいで心配性になったと思っているんだ(じろ

かやの思考なんぞ態々考えずとも分かる
呼吸と動き合わせ連携取り
まず、かやが自らを犠牲にするような事態を起こさせはしない…!
御埜森・華夜
【白華】◎

——誰かのせいにしたくなっちゃうのは、わかる
そう。あれもこれもぜーんぶ白ちゃんが俺におやつダメとかいうから!
なーんてーのはうそうそうそでーす、てへー
物の例え!例えだから!ねっ?!ねっ?!
いーいーこーにーすーるーかーらーー!

なぁんていうか、とりあえず距離とろ√隙間

√能力の屋敷で女性を安全圏へ置きながらひたすら時間稼ぎ
白ちゃん助けてお願いたちけてぇ
例え忘れてしまうとしても怖いものに蓋をさせるのは可哀想だから……あんま見ないでいいかなーって

白露とは見なくたってタイミングくらい合わせられる
別に痛くない(※欠落:痛覚)からいいのに、白露に怒られるからと多少気にする
ただ、白露や女性が怪我をしそうなシーンでは迷わず前へ出る

……だって血がビューしても、よく分かんないし
 
物語の上書きは得意
ガンガン話してガンガン上書き

白ちゃんが大船なの俺知ってるもーん
だからだいじょーぶ!ね?
白ちゃんったら心配性なんだから!とぷりぷり
嬉しいけど、なんか気恥ずかしい
でも、今回のお願いは対価無しそうで若干のドヤ顔

●物語の終わりはハッピーエンドで
 書店を出ていく女性の後を追いながら、汀羽・白露(きみだけの御伽噺・h05354)は盗作か……と隣を歩く御埜森・華夜(雲海を歩む影・h02371)にだけ聞こえる声で呟く。
「本来ならばもっと違った形で愛されていたはずの本を思うと、他人事には思えん」
「盗作した男がわるいのにねー。あ、白ちゃん」
「ああ」
 女性の視線の先が歪み、ずるりと現れたのは古妖『紅涙』。
『お前の痛哭が『私』を呼んだ。哀れな貴女は『私』を否定しないだろう。その復讐を『私』が請け負おう』
 その言葉に怯える女性を助ける為に、ふたりが駆け出す。
「おーっと、それ以上はダメだよー」
 華夜が女性の前に立ち、白露が更にその前に立ち塞がる。
『何者だ『私』の……哀れな花嫁の復讐の邪魔をするな。全ては花嫁を蔑ろにした男の罪だ』
「――誰かのせいにしたくなっちゃうのは、わかる」
 うん、と華夜が納得したように頷く。今回に限っては完全に男が悪いんだけど、とも。
「そう! あれもこれもぜーんぶ白ちゃんが俺におやつダメとかいうから!」
 だから白露がわるい! なんておどけたように華夜が言って、女性を安心させるように微笑む。
「……かや? おやつがなんだって?」
「なーんてーのはうそうそうそでーす、てへー」
「かーやー?」
 普段あまり見せないような笑顔を浮かべ、白露がこめかみに青筋を立てる。やっば、今後一切おやつ禁止とか言われてしまってはまずい、と思った華夜は慌てて首を横に振って白露の手を取った。
「物の例え! 例えだから! ねっ?! ねっ?! いーいーこーにーすーるーかーらーー!」
 物の例え、という言葉に白露が嘆き混じりの溜息をつき、仕方のないやつだなと笑う。
「よしっ! それじゃーあー、あいつ倒しちゃおっか」
 まずは距離を取ろうと、華夜が女性を連れて少しばかり下がり、√能力|本棚之隙間《クモノマニマニ》を発動する。
「昔々のそれは昔――……|誰も知らない《・・・・・・》あるところに、」
 甘く柔らかな声を響かせ、|本《呪》の始まりを語れば、語った内容を反映した殺戮絡繰の迷家が顕現する。
「ここなら大丈夫だから、動かないでね? ぜったい助けるからさ」
「……はい!」
 頷いた女性は白露の言う通り、安全地帯に身を隠す。
「さぁて……どっちの物語が強いかなー?」
 紅涙が語る物語、白露が語る物語――それは拮抗し、互いに譲らない。時間稼ぎをするという目的は達成しているが、膠着状態のままではどうにもならない。
「あー、埒が明かない~! 白ちゃん助けてお願いたちけてぇ」
「かや……途中までは格好良かったのに」
「だってー! 白ちゃぁん!」
「しょうがないな、まがりなりにも『神様』だからな。『お願い』されたなら叶えてやろう」
 他の誰でもない、華夜の頼みであるならば、尚更。
「そのかわり、本当に|良い子にしているんだ《無茶するんじゃない》ぞ」
 きちんと釘も差しつつ、白露が華夜の作った家で二人を守るように紅涙へと攻撃を仕掛けた。
「ね、目を閉じてていいよ。おねーさん」
「え?」
「見てて気分がいいものでもないし、見ないでいいかなーって」
 たとえ忘れてしまうとしても、怖いものに蓋をさせるのは可哀そうだし、と華夜は言葉にせずに笑う。こくりと頷き、女性が目を閉じると、いい子ーと頭を撫でた。
『邪魔を、邪魔をするな。『私』は痛哭に呼ばれたのだ』
「余計なお世話、という言葉を知っているか?」
 白露の手から詩文が舞いながら浮かび上がり、ひかりの欠片となって紅涙に降り注ぐ。それは間断なく紅涙を追い詰めつつ、瞑想に入るような隙を与えない。
「そう易々と瞑想できると思うな」
『……この程度の攻撃で『私』を阻もうと思うな』
 矢継ぎ早に降り注ぐひかりの欠片の中、ずたずたになろうとも紅涙は瞑想をやめず、自身の記憶世界『鬼哭啾啾の修羅場』から『血霧に霞む愛しき人』を召喚した。
 その血霧に霞む男は紅涙の道を切り開こうとするかのように、迷わず華夜と女性がいる方へと向かう。
「させないよー」
 白露が怒るから前へと出なかったけれど、女性が狙われるかもとなれば話は別。仕掛けられた攻撃を受け止めれば、活動限界だったのか男は消える。
「かや!」
「だいじょーぶ、平気ー」
「平気じゃないだろう!」
「……だって血がビューしても、よく分かんないし」
 僅かに血が流れているけれど、華夜は気にしない。だって、別に痛みを感じないから。でも、白露が痛そうな顔をするのだけは、胸が痛い気がする。
「頼むから、下がっていてくれ」
「白ちゃんったら心配性なんだから!」
「……誰のせいで心配性になったと思っているんだ」
 ぷりぷりしながらも頷いた華夜に若干の照れを感じ取り、笑みを浮かべた白露が紅涙に向き合う。唇から幸せな頃の断片を語ろうとする紅涙に『Liosna Gunna』を向け、迷わず引き金を引いた。
「記憶が掻き乱されていては『幸せなころ』なんぞ語れまい」
『あ、ああ、こんなものなど、で』
 幸せな記憶を掻き乱されながらも、紅涙は語る。語るけれど――。
「そんなんじゃ俺の物語は止められないよ」
 物語の上書きは得意なんだ、と華夜が止まることなく紡げば迷家を反映した空間がその領域を広げる。
「よしっ! 次は白ちゃんの番だよ。白ちゃんが大船なの、俺知ってるもーん」
「かや」
 華夜の優しさとその温かさに、愛おしさが募る。
「いけるよね、白ちゃん」
「ああ、大丈夫に決まっているだろう? 君が生み出した|神《俺》がいるんだ、大船に乗ったつもりで構えていろ」
 華夜が自らを犠牲にするような事態を二度と起こさせたりはしないと、静かに誓って視線を紅涙へと向ける。
「さっすが白ちゃん、頼りになる~!」
 紅涙に向かって華夜が召喚した禁書・魔性本の本棚を呼びだすと、それと同時に白露が再び銃口を紅涙に向け、華夜の動きに合わせるようにして呪物が放たれると共に引き金を引く。
 その瞬間は、まるで息ぴったりのダンスでも踊るかのように、互いの思考を考えずとも体が動き――紅涙という物語は文字として解かれたかのように、霧散する。
「やったね、白ちゃん!」
 今回のお願いは対価無しでしょ? と若干のドヤ顔をしながら近寄れば、白露が仕方ないなという風に笑って頭をなでるのであった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功