シナリオ

7
剣聖天女と百年の|葡萄酒《ワイン》

#√ドラゴンファンタジー #断章公開中 #第2章受付は【12/29(月)〜1/4(日)】 #日程厳しければご教示ください

タグの編集

作者のみ追加・削除できます(🔒️公式タグは不可)。

 #√ドラゴンファンタジー
 #断章公開中
 #第2章受付は【12/29(月)〜1/4(日)】
 #日程厳しければご教示ください

※あなたはタグを編集できません。

 その年の秋、葡萄の畑は祝福されていた。

 陽は穏やかで、夜は冷え、果皮は張り、香りは深く――醸造家たちは口々に言った。
 「百年に一度の出来だ」と。

 |大人《酔いどれ》たちは十一月を待った。
 今年のボジョレー・ヌーボーは、きっと特別になる。そう信じて疑わなかった。

 だが、奇跡の葡萄酒が発売されることは無かった。

 その時の造庫は惨憺たる状況であった。樽が満たされるはずの果汁は、畑から消えた。
 葡萄の瑞々しさは奪われ、房はしぼみ、土は粉のように乾き、井戸は底を見せた。雨は来ず、川は細り、湿気すら漂わない。
 そして人々は、ダンジョンの奥に杯を掲げる異形の群れを目撃し始める。

 ――旱の眷属たち。

 怪しげな呪杯が、降雨から流水、漂う湿気、生体内の水分に至るまで、一帯の“水”を吸い寄せて奪い去る。
 そうして干上がり、棄てられた地の底から、新たな同族が這い出すのだという。

 如月・縁は、遠い天の運行を読みながら、その災厄の輪郭を掴んでいた。
 依頼の場に選んだのは、夜の帳が落ちる少し前――薄明の酒場。香のよい湯気と、甘い酒の匂いの中で、縁はあなたがたを迎える。

 「……今年の葡萄は、本来なら“祝福”だったのです。でも祝福ほど、奪われた時の呪いは深い」

 縁は空のグラスを手にしてため息をつく。
 あそこの|葡萄酒《ワイン》とっても楽しみにしていたのに、と独言る。

 「ワイン酒造庫のダンジョンが、開いています。樽が積み上がった迷宮……匂いが染みつきすぎて、入り口に立つだけで酔う人もいるほど。あの奥に、旱の眷属たちが巣食っているようです」

 迷宮の奥へ進むほど、年代の古いワインが保存されているという。
 百年を超える瓶も眠り、葡萄酒の歴史が静かに並ぶ――本来なら、祝杯のための“宝物庫”だ。

 縁の眼差しが、ほんの少しだけ鋭くなる。

 「眷属の呪杯は、水分を奪う波動で周囲の抵抗を削るもの。さらに、太陽光を水滴で反射し集めた灼光を降らせる……乾きと熱は、ヒトを容易く殺します」

 一息。
 そして、縁は続けた。

 「でも、それだけじゃない。私が見たのは……“天女”」

 星詠みの言葉に、場の空気が変わる。
 長い黒髪。東洋の美女を思わせる切長の瞳。魅惑的なボディライン。
 その手には、虹色に輝く銃。

 「剣聖天女『シルメリア・ゴースト』――その可能性が高いかと」

 ーーー彼女が、眷属を“呼び寄せた”のか。それとも、別の何かが彼女を呼んだのか。

 「ワイン酒造庫ダンジョンへ向かってください。旱の眷属たちを退けて、葡萄と土地を取り戻し、そのうえで……“天女”の正体を確かめてください」

 窓の外、夕暮れの風が乾いている。
 喉の奥が、理由もなく渇く気がした。

 百年の祝福は、百年の渇きへ変わりつつある。

 ――迷宮の入り口は、葡萄酒の香りで満ちている。
 一歩踏み込むだけで、酔いが回るほどに。

 そしてその酔いは、甘いだけでは終わらない。
 乾きと熱が、すぐそこで笑っている。
これまでのお話

第2章 集団戦 『旱の眷属たち』


POW 水呼びの呪杯
【水分を吸い寄せて奪う波動】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【火属性攻撃】に対する抵抗力を10分の1にする。
SPD 降り注ぐ灼光
指定地点から半径レベルm内を、威力100分の1の【太陽光を水滴で反射し、集めて放つ熱光線】で300回攻撃する。
WIZ 地を這う枯茨
【熱光線】による牽制、【伸びるイバラの蔓】による捕縛、【杖の刺突】による強撃の連続攻撃を与える。
イラスト もにゃ
√ドラゴンファンタジー 普通11

 樽の迷路を進むほど、香りは濃く、空気は甘くなる――はずだった。

 だが、百年樽の区画に近づいた瞬間、鼻腔を撫でる葡萄の匂いが、不意に「乾き」へ変わる。喉が渇く。肌がつっぱる。湿り気が、どこかへ吸い寄せられていく感覚。

 影が揺れた。
 怪しげな杯を掲げる、異形の群れ――『旱の眷属たち』だ。
 彼らは雨も、流水も、漂う湿気も、そして生き物の体内の水分すら、杯へと吸い寄せ奪い去る。奪われて干上がった地の底からは、また新たな同族が這い出すという。

 そして今、彼らの体内には――百年に一度の出来栄えと謳われた葡萄酒が、丸ごと吸い込まれていた。

 眷属へ一撃を入れるたび、裂け目から最高の香りが噴き、濃密な葡萄酒が流れ出す。 

 倒す方法は二つ。
 力で叩き伏せ、体内の葡萄酒を出し切らせて消滅させるか。あるいは工夫して、杯に溜め込んだ“祝福”を一滴残らず流し出させること。
 ――百年の祝福を取り戻すため、能力者たちは杯を掲げる乾きと対峙する。



<MSからの補足>
 断章にある通り、旱の眷属たちを倒す方法は2つあります。
 どちらを選んでいただいても構いません。
 状況として、お手元にあるグラスは戦闘なんかで割れないスゴイ・カタイ・グラスです。安全を確保して思いっきり飲むのもありです。
 また、第1章の酒造庫の葡萄酒は作り手の経営のため、お持ち帰りできません。
 ただし、旱の眷属たちから得た葡萄酒は次の章や外部へ持ち帰り可能とします。