シナリオ

花の下には

#√ドラゴンファンタジー #ゾンビ #ラフェンドラ・オピオイド

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 #√ドラゴンファンタジー
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 その花園は、踏み入れた者を死に誘う場所だった。
 愛らしく咲く桃色の花は幻惑の煙を生み出し、訪れたものを閉じ込める。
 そこから先へと進めても、待ち受けているのはより危険な存在。赤い花園に住む彼女らが、ヒトと相容れることは決してない。

 そんな危険な花園だからこそ、意味がある。きっとこの花園は、多くの者を糧にして咲いてきたはず。
 それなら、おねえさまだってもう一度咲き誇る。蘇ってくれる。
「待っていてくださいおねえさま。わたしは、絶対に諦めません……!」
 そう呟きながら、黒衣の女は愛おしそうに頭蓋骨を撫でる。
 彼女の立つ場所には、恐ろしいまでに鮮やかな花が咲き乱れていた。


「集まってくれてありがとうな。√ドラゴンファンタジーで事件が発生したから、その解決をお願いしたいんだ」
 そう話しつつ能力者を出迎えるのは赤神・晩夏(狐道を往く・h01231)だ。
「とあるダンジョンに『ゾンビ化モンスター』っていうのが出没してるらしい。性質がゾンビに似てるっていうだけで、そいつらがアンデッドと化してるかは分からない。ただ、非常に危険な相手だから放置はできないんだ」
 『ゾンビ化モンスター』は通常のモンスターが変異したもので、ゾンビに似た性質により爆発的に数を増やしているらしい。
「ゾンビ化モンスターは『噛んだ相手もゾンビにする』んだよ。ダンジョン内で他のモンスターに噛みつくことで、どんどん仲間を増やしている。このまま放っておけば大量のゾンビがダンジョンの外に出て、大きな被害を出すっていうわけだ。だからそれを防ぐために、皆にはゾンビ化モンスターの対処をお願いしたい」
 説明を続けつつ、晩夏はダンジョンの様子を写した写真を取り出す。
 そこには――美しい花園が広がっていた。

 ダンジョンの入り口からある程度の距離までは、淡い桃色の花が咲き乱れているようだ。晩夏は適当な花を指差し、説明を続ける。
「可愛いだろ? でも見た目に惑わされちゃいけないぜ。この花の名前は『ドリームウィード』。この花から漂うガスを吸うと、強烈な幻惑効果を食らっちまう」
 ガスを吸ってしまえば、強烈な眠気、あるいは恐怖をかき立てるような幻に襲われてしまうらしい。
「この花が咲いてる地帯を通り抜けるまでは、ガスへの対処が必要だ。眠気や幻を気合いでどうにかしたり、ガスを吸わないように工夫したり、方法はいろいろあると思う」
 ガスの性質自体は特別なものではなため、鼻や口、目といった部分を守れば対処は可能だ。
 幻惑効果に対処できるなら、そちらからアプローチするのも一つの手段だろう。

「ドリームウィード地帯を抜けたら、今度は赤い花が群生してる場所に出るぜ。ここから先は、危険な花は生えてない。けどダンジョン最奥に続く道にはゾンビ化モンスターが待ち受けてるから、必ず倒してきてくれ」
 どのようなモンスターが待ち受けているのか、可能性は二つ。
 高い知能を有したモンスターの群れが、ひときわ強力なモンスター一体か。
 どちらが出てきても、倒さなければ先へは進めないだろう。
「ダンジョン最奥には、今回の事件の首謀者、あるいはそれに関係した相手が待ち受けてるはずだ。それをどうにかすれば、とりあえずこのダンジョンのゾンビ騒動はおしまいだ」
 ゾンビ化に関しては謎も多い。一つでも多くの情報を得るためにも、最奥の相手にはしっかり対処しなければならないだろう。

「今のところ分かってるのはこれが全部かな。それじゃあ、そろそろ出発の時間だ」
 晩夏は能力者達に一礼してから、緩く手を振る。
「気をつけて、無事に帰ってきてくれよな!」

マスターより

ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだと申します。
 花の下には何がある。

●一章『ドリームウィードの群生地を越えて』
 幻惑ガスを放つ花、ドリームウィードの群生地を進みます。
 幻惑ガスを吸うと強烈な眠気や恐ろしい幻に襲われます。
 ガスそのもの、もしくは幻惑効果に対処しつつ進みましょう。

●二章『ボス戦』or『集団戦』
 ゾンビ化モンスターが進路を塞ぎます。
 これを倒し、先へと進んでください。

●三章『ボス戦』or『集団戦』
 事件の黒幕、あるいはそれと関係のある敵が現れます。
 これを倒せば事件は解決します。


 どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
 進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。
 締め切りの告知もそちらで行っているので確認していただけると幸いです。

 それでは今回もよろしくお願いします。
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よろしいですか?

第1章 冒険 『ドリームウィードの群生地を越えて』


POW 幻惑ガスを気合いで耐え切る
SPD 幻惑ガスを吸う前に駆け抜ける
WIZ 幻惑ガスを吸わない工夫をする
√ドラゴンファンタジー 普通7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​


 ダンジョンへ突入した能力者達を出迎えるのは、甘い花の香りだ。
 香りの主は、少し先の道で群生している桃色の花。彼らから漂う香りは心地のよいもので、ついつい近づきたくなってしまう。
 しかし、決してあの花々――ドリームウィードに気を許してはいけない。愛らしい桃色も甘い香りも、人々を誘うための罠なのだから。
 不用意に近づいてしまえば、たちまち幻惑ガスに包まれ、眠気や幻に襲われてしまうだろう。

 まずはこの恐ろしい花の群生地を抜け、先に進まなくては。
屍累・廻
連携・アドリブ◎

…なるほど、確かにこのガスは厄介そうですね
ならば、少しばかり状況を変えさせていただきます

《ヘルメスの羽根》を起動し、√‬能力を使用
惑わせるガスを普通の空気へ一時的に再定義させてから先に進む

ゾンビ化について気になってもいたので、この先に何が待ち構えているのか興味あったんですよね
ともあれ、噛まれるのは厄介ですからね。そこは気をつけなければ…

花は一部サンプルとして採取を
密閉出来る容器に移してから先へ進む

さて、この先にどんなゾンビが待ち構えてるでしょうね


 花畑に漂う甘い香りは、何も知らなければ魅力的なものに思えたに違いない。
 屍累・廻(全てを見通す眼・h06317)は風上の方向、少し高い位置に立ちながら桃色の花々を見下ろしていた。
 この場所から少しガスの匂いを嗅ぐだけでも眠気を感じる気がする。ガスが流れる方向に無策で向かえば、間違いなく危険だろう。
(ならば、少しばかり状況を変えさせていただきます)
 廻は『ヘルメスの羽根』を取り出して、そこに自らの能力を重ねる。すると一冊の書物はあっという間に輝く羽根ペンへと姿を変えた。
 そのまま空中にペンを走らせれば、ホログラムの文字が浮かび上がる。書き込むのは、この世界を書き換える定義だ。
 危険なガスは、ただ花の香りを纏うだけの空気に。進むべき道の安全を確保して、廻はダンジョンの奥へ進み始めた。

 進路には、やはり多くのドリームウィードが咲いている。間近で見れば、小振りな花弁の様子などもよく見える。
(ゾンビ化現象に相応しくないようで、ある意味相応しい光景ですね)
 愛らしい花々の下に、悍ましいものが眠っている。生と死、美と醜の対比はこの手の話でもよく使われるモチーフだ。
 黒幕もその辺りを考慮してこの地を選んだのだろうか。相手の研究成果を手に入れられれば、その答えも得られるかもしれない。
 しかし、そのためには自身の安全が最優先だ。ゾンビ化の調査をしに行って自らがゾンビになるなど、本末転倒もいいところだろう。
 調査といえば、ドリームウィードのことも気になる。廻は手近な花を再定義し、ガスを放出する性質を抑制する。そのまま一輪花を手折り、密閉容器の中へと閉じ込めた。ついてに花粉のサンプルも手に入れて、そちらも容器にしまい込んだ。
(こちらは帰ってからじっくり観察しましょうか)
 花そのものの性質も気になるし、ガスのことも気になる。うまく扱うことができれば、何かの材料なんかにもできるかもしれない。
 そして何より――知らなかったことを新しくすることができる。新しい知識を得られることが、廻にとっては何よりの喜びなのだ。

 揺れる花々を後にしつつ、廻はまだまだ先へと進む。
 ここから先にも、未知のものはたくさんあるのだから。
🔵​🔵​🔴​ 成功

弓槻・結希
どれほどに愛らしい姿と甘い香りの花でも、ひとを捉えて放さないのはまるで悪夢のよう
夢に幻とて、決して名の通りに甘いものではないのでしょうね

ましてやゾンビ化の研究施設を守る為に配置されている罠なら脅威はなおのこと

「美しい花には棘があるとは言いますけれど、それ以上ですね……」

誰かの為に全てを擲ち、尽くすことは愛ではありますが
その為に世界の人々を蝕むことは許せません

翼剣に風属性の属性攻撃を宿しての【彩に溢れる花風】
範囲かつ2回攻撃、それを早業で繰り出し続けて私の周囲を旋回する清らかな風の障壁と造り出して花の出すガスを防ぎましょう

この迷宮もやはり危険なもの
けれど、何時もと変わらず春風のように進みましょう


 風に煽られ、桃色の花々が揺れる。一見美しい光景を前に、弓槻・結希(天空より咲いた花風・h00240)は微かに目を伏せた。
 ドリームウィードの愛らしい姿も甘い香りも、悪夢のようにひとを捉えて離さないもの。夢の名を冠していても、そこにあるのはただ甘いものではない。
 此度の事件の黒幕は、自らの成果を守るためにこの花を利用しているのだろう。この花を利用して踏み入れたものを捕らえたりなど、悪用の方法だっていくつでもあるはずだ。
「美しい花には棘があるとは言いますけれど、それ以上ですね……」
 この花々の先、待ち受ける悪意と執念を思い、結希は呟く。
 ゾンビ化事件の首謀者は誰かのために事件を起こしているらしい。相手のためにすべてを擲つ行為は、間違いなく愛ではあるのだろう。
 けれど首謀者の愛は多くの者を傷付ける。その傷付けられる誰かのために、結希も立ち上がるのだ。
 世界の人々を守る。そのために、結希は花弁のように白く美しい翼剣を展開していく。
 『風花』という名のその剣は、名前の如く強い風を纏って、結希へと迫るガスを一気に薙ぎ払った。
「風よ、花よ。その色彩をもって、私の道をお守りください」
 清らかな詠唱の声は風に溶け合い、さらに強い守りへと姿を変える。周囲にしっかりと風の障壁が張れたことを確認すると、結希は花畑の中を進み始めた。

 結希が前へと進むたびに、風がドリームウィード達を撫でていく。
 その光景を横目に見つつ、結希はひたすらに歩き続けた。風の障壁のおかげで、幻惑ガスは香りすら届いていないようだ。
(これがただの花々なら、良かったのですが……)
 危険な花が咲いているというだけなら、皆で注意すればいい。けれどこの花は、積極的に他者を傷付ける道具にもされている。
 その現状に心が痛むが、同時に結希の意欲もかき立てていた。首謀者を放置してはいけないと、強く思う動機になるからだ。
 結希は優美に、けれど確実に前へと進み続ける。その姿は春風のように軽やかで、そして頼もしいものだった。
 危険が迫るダンジョン奥をしっかりと見据えつつ、結希の足取りは続いていく。
🔵​🔵​🔴​ 成功

和紋・蜚廉
人型を解き、蟲の姿へと転じる。
ガスは花弁より空間へ満ちる。
ならば、花弁より体高を低くして進もう。
姿勢は低く、空気の流れを読む触角を張り、地表すれすれを這う。
ガスは均一ではない。流れがある。澱みと、薄い筋。
野生の勘で、踏み込める隙を捉える。

縫うように、滑るように、群生地の隙間をダッシュで駆ける。

ガスが濃い空間は、通路を作るまで。

翅を打ち、翅音板を鳴らす。
羽ばたきが空気を裂き、振動で花の吐く靄を一瞬だけ押し退けよう。
その一瞬に身を投げ込み、跳爪鉤の跳躍も合わせて抜ける。
速度を殺さず、迷わず、ためらわず。

眠りも恐怖も不要。
我は、生き残る者なれば。
この程度の罠で、足を止める理由はない。


 桃色の花々の合間に、黒い影が走る。
 その正体は蟲の姿へと転じた和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)だ。
(次は……こちらだな)
 蜚廉はまるで地表に身体を擦るように、それでいて機敏にドリームウィードの群生地を進んでいた。彼の頭上には、幻惑ガスが漂っているのが見て取れる。どうやらこのガスは空気より軽いようで、低い位置を進めば比較的安全に対処できそうだ。
 空間に漂う甘い香りにも、惹かれるようなことは特にない。より美しく、より香しい花だって何度も見てきた。この地に咲く花には、ただ身の危険だけを感じている。
 蜚廉は油断せず、慎重に周囲の様子を観察し続ける。触角により空気の流れを感じ取りつつ、進むルートを計算しているのだ。
 風の流れに合わせてガスは絶えず動いている。なるべく空気が澱みそうな位置は避け、ガスの薄い位置を探り――野生の勘も駆使しつつ、蜚廉はダンジョン奥を目指し続けた。

 しかし、相手は自然そのものでもある。時には空気が澱み、ガスが溜まっている位置を通り抜けなければならないこともあった。
 分厚いガスの壁は、こちらを誘うように漂い続ける。蜚廉はガス溜まりの手前で立ち止まると、胸殻から翅音板を取り出す。そのまま翅音を鳴らせば、鋭い振動がガスの壁を叩き割った。
 道が開くのは一瞬だ。その瞬間を見逃さず、蜚廉は勢いよく前へと進む。進行と同時に触覚を震わせ、安全な位置を確認すればそちらの方へ。
 迷いのない動きにより、蜚廉は的確にガスを回避していく。
 時に地面を縫うように、時にするりと滑るように。ひたすら先へと急ぎつつ、蜚廉は意識を集中させる。
 ドリームウィードのガスが齎す眠りも恐怖も、蜚廉にとっては必要のないもの。この程度の罠なら、何度も乗り越えてきている。
 ひたすら前へと進み、簒奪者の計画を阻止する。目的は分かりやすく、進むべき道も見据えている。
 永い時を生きてきた蜚廉は、これからも多くの困難を乗り越えていくのだ。なぜなら彼は――生き残る者なのだから。
🔵​🔵​🔴​ 成功

角隈・礼文(サポート)
アドリブ連携歓迎

さて、サポートに赴いてみましょう。
見聞を広め、他の方との交流を深めるのは良いことですので。
「はじめまして。角隈礼文と申します。以後お見知りおきを」

友好的な方や、味方の√能力者には丁寧に接します。
「ご安心ください。私は、味方ですよ」
敵対者や、インビジブルと対峙する場合には高圧的に振舞い会話の主導権を握りましょう。
「我輩が思うに……君の計画は破綻しているのではないかね?」

√能力はPOW・SPD・WIZのどれでも、都合の良いものをご利用ください。
指定されているものが状況に合わずとも、他のものを用いれば活路は見出せるかもしれませんので。
「それでは、状況を開始しましょう」


 広い空間の中に花畑が広がる様は、一見長閑に見える。しかしその奥に潜む悪意は、花々達にも伝染しているようだ。
 危険な気配を感じ取り、角隈・礼文(『教授』・h00226)は軽く髭を撫でる。
(ふむ、ドリームウィードのガスは一般的な幻惑効果のある成分でできているようですね。しかし、花はゾンビ化の首謀者に影響されているようです)
 花は若干の呪詛のようなものを帯び、侵入者へ悪意を向けている様子。
 その分厄介さは増しているが、同時に対処する方法も増えているといえるだろう。
 礼文は令呪符を取り出すと、そのままパキリと砕く。同時に、その場に小柄な魔術師が呼び出された。
「呼んだか、|マスター《我が弟子》」
「|キャスター《我が師匠》、ご足労いただき感謝します。私に力を貸してください」
 礼文は魔術師――サイロンに笑顔を向ける。その様子を前にして、サイロンもコクリと頷いた。

 それから少し時間は経って。ドリームウィードの花畑を一台の車が駆け抜けていく。
 車は礼文のゴースト・バギーであり、運転手も当然彼だ。助手席にはサイロンが座り、アミュレットに魔力を注ぎ込み続けている。
 ガスは車に乗ることである程度遮断ができるし、同時にこの場から早く離脱することができる。
 一方、ドリームウィードが帯びた呪詛的な要素は悪意は、サイロンの魔術によって跳ね除けることが可能だ。
 二人で力を合わせることで確実にガスを回避し、速攻で奥へ進む――それが礼文の作戦だった。
「今回の黒幕は、原生生物に影響を与えるほどの相手のようですね。ゾンビ化そのものも気になりますし、研究しがいがありそうです」
 華麗にハンドルを切りつつ、ワクワクを滲ませる礼文。そんな弟子の様子を、サイロンはいつものように見守っている。
 ドリームウィードも研究すれば何かに活かせるだろうが、それは戦いが終わってからでも大丈夫だろう。
 今はただ、未知の現象の元へ。そちらに向けて、魔術師の指定は突き進むのだった。
🔵​🔵​🔴​ 成功

第2章 集団戦 『スカーレットスプライト』


POW スカーレットガーデン
【あなたのこと】を語ると、自身から半径レベルm内が、語りの内容を反映した【赤い花の庭園】に変わる。この中では自身が物語の主人公となり、攻撃は射程が届く限り全て必中となる。
SPD ピクシーダスト
【麻痺毒の鱗粉】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
WIZ 夢のまにまに
半径レベルm内の敵以外全て(無機物含む)の【忘れようとする力】を増幅する。これを受けた対象は、死なない限り、外部から受けたあらゆる負傷・破壊・状態異常が、10分以内に全快する。
イラスト 透人
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 ドリームウィードの群生地を抜けると、目に飛び込んできたのは鮮やかな赤色だった。
 次のエリアは赤い花々に覆われている。この花々に危険な性質はないようで、能力者達の道行きを阻むことはない。
 しかし、この花畑に住まう者はそうではなかった。

 クスクスと笑う声とともに響くのは、幼い少女の声。
『あなた外の人?』
 花の影から飛び出すのは、赤い翅を持つ小さな妖精。
『お話聞かせてよ』
 彼女達は興味のままに人々に近付き――目覚めぬ眠りに誘う。

 赤い花畑に住む小妖精『スカーレットスプライト』。
 彼女達はゾンビ化しているにも関わらず、高い知性を有している。
 何故そのような状態になっているかは分からないが、やるべきことは変わらない。
 危険な妖精達を倒し、先へと進まなくては。
弓槻・結希
鮮やかな赤は、まるで妖しき夢の色
その翅も、その姿も、その声も――全ては悪夢と災いへと招く為のものなのですね

例え高い知能を持っていたとしても、誰かに優しくする心があるとは限らない
ならと一息に払わせて頂きましょう

祈りによる奇跡にて呼び寄せるは、星の光たち
それを多重詠唱で幾らにも増幅させながら、属性攻撃で瑠璃色の炎を乗せていきましょう
そうして放つのは【星穹からの裁き】
ひとつひとつの威力を跳ね上げ、小さな身体を逃さないようにという多数かつ範囲攻撃

近付く前に燃やし尽くすのだと、燦めく瑠璃色の星彩の瞬きにて
夢のまにまにで回復するよりも早く、終わらせてみせましょう

「私は希望を結い、繋ぐ為に進ませて頂きます」


 真っ赤に咲き誇る花々は、見る者から現実感を奪い去る。その周囲を妖精が飛び交い、クスクスと笑い声が響いて――まるで妖しき夢のよう。
 クラリとくるような感覚を覚え、弓槻・結希は呼吸を整え気を引き締めた。
「その翅も、その姿も、その声も――全ては悪夢と災いへと招く為のものなのですね」
 ここに飛び交う妖精達は、ゾンビと化してもなお高い知能を有している。けれどその利点を他者のために使うことはないだろう。
 ならば、一息に払うのみ。
 結希は白花で飾られた長杖を構え、祈りの姿勢を取る。そんな彼女の元に、スカーレットスプライト達はひらひらと近寄ってきた。

『綺麗な杖ね!』
『怖い顔しないで』
『お話聞かせてよ』
 妖精達は思い思いに言葉を紡ぎ、結希の周囲を飛び回る。彼女達の言葉も鱗粉も、すべてヒトを誘う毒だ。
 それを振り払うように弾けたのは、結希の祈りに応じて現れた星の光だ。
 光は結希の祈りに合わせて輝きを増し、次第に形を変えていく。
 瑠璃色の煌めきは束ねられ、大きな炎の塊として空中に浮かび上がる。瑠璃色の光は花々の赤色を飲み込み、景色を一変させた。
「数多の星が、如何なる罪咎をも照らす」
 花畑を照らす巨大な瑠璃色の星は、そこから燦めく星光を発生させる。降り注ぐ光は妖精達を取り囲むように展開されていく。
 一体も逃さないよう、一つひとつの輝きを大きく、それでいて多く。
 妖精達の笑う声はかき消され、かわりに戦場に広がっていくのは忘れようとする力。妖精達が自らの傷を塞ごうと、抵抗を始めたようだ。
「星彩の瞬きを、夢にはさせません。私達が進む道は、現実として切り拓かせていただきます」
 妖精達はすべてを夢にするよりも早く、強く。悪しきものを浄化しようと、結希はさらに祈りを強めた。
 彼女の思いを反映するかのように、星はさらに輝きを増していく。それは苛烈なようでありながら、決してそれだけではないものを帯びていた。
「私は希望を結い、繋ぐ為に進ませて頂きます」
 結希の力強い言葉の通り、妖精達は退けられ――先へと進む道が広がっていくのだった。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

和紋・蜚廉
廻(h06317)と

我の話か…ああ、語ると良い。その分だけ、自身を見つめ直せる。

必中の攻撃という事は、裏を返せば必ず当たる予兆がある。
我が潜響骨で迫る音を、翳嗅盤で狙われている位置を嗅ぎ分けよう。
音と位置さえわかれば、起こりは野生の勘で感じ取る。

焔環顕。
燃える六肢にて、攻撃に対するカウンターを行おう。
捉えた隙は、廻へ合図。
位置を離されては厄介だからな。グラップルで抑え込ませて貰う。
視えたものを、むざむざ逃すつもりも無い。
語りの中であれ、夢の中であれ。
幾度も再生するというのなら、一撃にて仕留めるまで。
焼き後を刻むように、甲殻籠手を握りしめて拳を叩きつける。

我が背を守る怪異。頼もしいものだな、廻。
屍累・廻
アドリブ◎
蜚廉さん(h07277)と

妖精のゾンビとは興味惹かれますね
私の話は、長くなってしまうので割愛で

隙を探ってくれている間にパンドラの匣を手に√‬能力使用
少しでも、蜚廉さんが動きやすいよう一部怪異を囮に
加えて、それぞれへの守りも別の怪異に任せる
出してくれた合図は見逃さない、すかさず攻撃指示を出す

ふふ、ありがとうございます
蜚廉さんの合図も的確なので、視る事に集中しすぎないのは新鮮です

視通す力はあれど、今は仲間を頼りに出来る
状況を把握しながら、随時必要な怪異を召喚
可能なら、妖精の一部をサンプルとして採取を

さて、この辺りの妖精は一掃出来たでしょうか


 くすくす、くすくす。お話聞かせて。
 妖精達の声が響くたび、赤い花々が大きく揺れる。まるでおとぎ話のような、この世ならざる光景を前にしても、和紋・蜚廉はまったく動揺していなかった。
 ここまでの道中で合流していた屍累・廻の顔にも恐れはない。廻のほうは好奇心で分かりやすく目を輝かせていた。
「妖精のゾンビとは興味惹かれますね。残念ですが、私の話は、長くなってしまうので割愛で」
「ならば我の話か……ああ、語ると良い。その分だけ、自身を見つめ直せる」
 蜚廉の言葉に妖精達が反応を示す。彼女らは赤い翅を羽ばたかせ、能力者達の周囲を飛び交った。
『大きな虫さん、とっても強くて長生きな虫さん。あなたのことをもっと教えて』
『そっちのお兄さんのお話も聞きたいけれど、それは夢の世界に行ってからね』
 妖精の笑い声につられるように、花々がさらに大きく揺れた。この空間は、完全に妖精達の園と化している。
「空間そのものの書き換えでしょうか。面白いですが、危険な状況ですね」
 廻も同じようなことができるためか、妖精達の行為の危険性はよく理解していた。蜚廉も自らの不利は悟っていたが、ある意味では有利にもなったと感じていた。
「恐らく相手の攻撃は必中のものとなる。だが、必中の攻撃という事は、裏を返せば必ず当たる予兆がある。攻撃の予兆は我が見定めよう」
 蜚廉は身を低くし、自身の感覚器に意識を向ける。妖精達が発する音と、彼女らが放つ花とは違う匂い。それらを鋭く感じ取り、迫る攻撃に備えた。
「ふふ、ありがとうございます。おかげで視る事に集中しすぎずに済みますね、なんだか新鮮です」
 同時に廻もパンドラの匣を手に取り、声をかける。異世界の怪異達に、自分達を助けるように、と。
 呼びかけに応じ現れるのは、多数の怪異存在。そのうち数体は花畑の周囲を飛び交い、妖精達の注意を引き付ける。残った怪異達は護衛に回せば、さらに状況は安全になった。
 こうして互いに準備を終えて、意識を集中させて。しばらくは風が花を揺らす音だけ聞こえていたが――。
「廻、三時の方向、その花々の影だ」
「分かりました。では、そちらに」
 敵の攻撃の予兆を掴み取った蜚廉が、燃える六肢を構える。直後に響いたのは大きな音だ。数体の妖精が蜚廉の元へと飛び込んできたのだが、その突撃は六肢にて受け流された。
 弾かれた妖精達を捉えるのは怪異の仕事だ。彼らは次々に殺到し、妖精達を地面へと押さえつけていく。
 もはや彼女達はこの空間の主役ではない。ここから先は、能力者達の番だ。

「蜚廉さんが攻撃する前に、少し頂いておきましょうか」
 廻の意志に従うよう、怪異達は妖精の翅を引きちぎる。パラパラと舞った鱗粉も忘れず確保すれば、帰ってからゆっくり調べることができるだろう。
 妖精達は忘れようとする力を増して、自らの傷を癒そうとしているようだ。そこで蜚廉は六肢を伸ばし、妖精達を力強く掴む。
「視えたものを、むざむざ逃すつもりも無い。語りの中であれ、夢の中であれ、一撃にて仕留めるまで」
 甲殻籠手を強く握りしめ、振り下ろす拳はまっすぐに。
 蜚廉が拳を振るたびに妖精達は焼け、砕け、夢のように消え去っていく。
 仲間が倒されていく様を見て、こっそりと動いていた妖精達が不意討ちを狙うも――。
「おっと、そうはさせませんよ」
 廻の怪異がそれを許さない。背後の気配を感じ取り、蜚廉は攻撃を続けつつ頷く。
「頼もしいものだな、廻」
「こちらこそ。お互い様ですね」
 互いを信頼しているからこそ、いつもと違う動きができる。蜚廉は拳に意識を集中し続けていられるし、廻は視る事以外にも自由に動ける。
 死へと誘うおとぎ話は終わり、残るのは灰の跡と、信頼し生き延びる者達。
 二人は妖精達を退けて、先へ進む道を作り上げるのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

弓槻・結希
まだしっかりと残っているとは
一匹でも逃せば、ゾンビウィルスの蔓延の因ともなりかねません
必ずや全てを、この赤い悪夢の花の全てを散らしてみせましょう


【彩に溢れる花風】の発動と共に蒼穹剣に属性攻撃で宿すのは、真白き氷雪で紡いだ白薔薇たち
飛び回る妖精たちの動きを、翅の瞬きや移動の加速、減速からしっかりと見切り、無防備な瞬間を狙って早業での冷たき切断の刃を奔らせましょう
どれほど小さく、早くと動いても私の眼と切っ先から逃しはしません
「一息に、花と散り」
振るうのは刀身だけではなく、放たれる氷雪の斬風という範囲攻撃

広範囲に渡る横凪ぎの一閃でまずは凍らせて身動きを止め、燕返しで放つ2回目で確実に斬り伏せましょう


 花畑に残る邪悪な気配を感じ取り、弓槻・結希は表情を引き締める。
「……まだしっかりと残っているとは」
 結希の言葉に反応するかのように、花々の影から小さな笑い声が響く。かくれんぼで見つけられた子どものように無邪気で、けれど隠しきれない悪意を含む声。ゾンビ妖精はまだ残っていた。
 一匹でもダンジョンの外に出してしまえば、恐らく取り返しのつかないことになる。
「必ずや全てを、この赤い悪夢の花の全てを散らしてみせましょう」
 蒼穹剣『レガリア』を構え、結希は呼吸を整える。邪悪な赤い花を散らすなら、より美しく咲く花が相応しい。そんなイメージを浮かべ、展開するのは――。
「風よ、花よ。その色彩をもって、私の道をお守りください」
 赤い花々から漂う甘い香りを振り払うのは、冷気を帯びた清らかな風。風は次第に氷雪へと変わり、白薔薇の花弁の形に紡がれた。
 妖精達も美しい光景にはしゃいでいるようだが、冷気は少々堪えるらしい。白薔薇をかき消してしまおうと、忘れようとする力を展開し始めたようだ。しかし、それは同時に隙ができたともいえるだろう。

(彼女らの意識が白薔薇に向いているうちに――!)
 結希は風に乗って軽やかに飛翔し、妖精達との距離を一気に詰める。その接近に妖精達は逃げ出そうとするが、結希の動きの方が速かった。
 妖精達がどれだけ翅を羽ばたかせても、忘れようとする力を展開しても。結希は決して妖精達の行動を見逃さず、逃がすつもりはない。
「いきます……!」
 力強く蒼穹剣を振り抜けば、放たれるのは氷雪の斬風。冬の朝を思わせる冷たく清らかな風は、一瞬にして妖精達を捉えた。
 翅を凍らされ、妖精達に為すすべはない。急いで忘れようとする力で修復するが、その間に結希は剣を切り上げ、燕返しの形で二度目の斬撃を放つ。
「一息に、花と散り」
 ぶわりと、舞い踊ったのは赤い花弁と白い花弁。結希の一撃は妖精と花々を一気に切り裂き、薙ぎ払った。
 結希が剣を収める頃には、もう笑い声も邪悪な気配も消えていた。
 人々を捕らえる悪夢は終わった。結希は心地の良い風を背中に受けつつ、前へと進む。
 もうすぐダンジョンの最深部――黒幕の元にたどり着けるだろう。
🔵​🔵​🔵​ 大成功

第3章 ボス戦 『屍王『ラフェンドラ・オピオイド』』


POW ゾンビ・パラディーン
自身の【使役するゾンビ化モンスター】を、視界内の対象1体にのみダメージ2倍+状態異常【ゾンビ化】を付与する【強化ゾンビ】に変形する。
SPD ナイツ・オブ・アンデッド
半径レベルm内にレベル体の【ゾンビ化モンスター】を放ち、【血肉の匂いに特に敏感な嗅覚】による索敵か、【身体部位ひとつ】による弱い攻撃を行う。
WIZ ゾンビウイルス・インフェクション
【ゾンビ化モンスター】により、視界内の敵1体を「周辺にある最も殺傷力の高い物体」で攻撃し、ダメージと状態異常【ゾンビ化】(18日間回避率低下/効果累積)を与える。
イラスト 綿串
√ドラゴンファンタジー 普通11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 ダンジョンの最奥部は開けた空間になっていた。所々に、先程までの赤い花も咲いている。
 地面の上には薬品や医療道具、竜漿を使う器具類、そしてモンスターの残骸が転がっていた。
 そして空間の中心には、一人の魔術師が佇んでいる。彼女は手にした頭蓋骨を愛おしそうに撫でながら、能力者達に視線を向けた。
「ここで作ったゾンビは、結局失敗に終わってしまったようですね。ですが、わたしが作ったゾンビを倒してきた者なら……より素晴らしい検体になってくれるかもしれません……!」
 魔術師――もとい|屍王《ネクロマンサー》『ラフェンドラ・オピオイド』は虚ろな瞳を笑みの形に歪め、能力者達を舐め回すように視線を向け続けている。
 彼女こそがゾンビウイルスの制作者であり、何かしらの目的のために暗躍する簒奪者だ。
 ラフェンドラからすれば、すべての存在は目的を果たすための実験材料に過ぎない。このダンジョンに咲く花も、生息するモンスターも、そして事件を解決しにきた能力者も。

「待っていてくださいおねえさま。わたしは、絶対に諦めません……!」
 ラフェンドラの声に応じるように、赤い花々の下からゾンビ化した妖精達が姿を現す。
 しかし、今度の妖精は完全に理性を失っているようだ。赤い花畑で使ったような攻撃は行わず、単純な噛みつきや爪による引っ掻きで攻撃してくるだろう。
 屍王を倒せば、このダンジョンでの事件は解決する。
 ゾンビの被害を食い止めるために、この戦いに勝利しなくては。
屍累・廻
アドリブ◎
蜚廉さん(h07277)と

ゾンビ化現象に興味はありますが、私も被検体になるのは遠慮します

左手にパンドラの匣を持ち、防御と妖精退治用に怪異召喚
《ヘルメスの羽根》を起動し、√‬能力を使用
ゾンビにされた妖精を、一時的にEDENの味方として再定義

ゾンビを作り出した貴女がゾンビに狩られる気分はどうです?

全ての妖精が短い時間味方になるだけでも
蜚廉さんが動きやすくなるなら上々

えぇ、この眼には見えていますよ
一瞬の隙は作りました。蜚廉さん、あとは任せます

効果が切れる前に妖精は怪異で倒しておく
数で来るなら、同じように数で対抗
和紋・蜚廉
廻(h06317)と

諦めの悪さは感心するが、
他者の命を脅かす真似は感化出来んな。

検体になるつもりも無い。
帰るべき場所で、大切な者が待っている。

明呪倶利伽羅を開放。原初の神力に満ちた威圧を放ち、本能的な恐怖を呼び起こして牽制を仕掛けよう。思考が単純である分、絶対的な力には従順だろうからな。

怯んだ隙へ、不完全ながら再現したアシカビを放つ。
数の多さは厄介だが、抑えてしまえば脅威ではない。

舞台を整えた所で、戦況の改変を待つ。
廻、汝の見識は先程の連携で信頼している。
掴んだ好機、逃さぬ眼はしていないだろう?

屍王に生じた隙を野生の勘で捉え、ダッシュで接近。
速度と重量攻撃を載せたオオダチの一刀を振り下ろす。


 周囲に散らばる薬品に道具類。それから研究者であるラフェンドラ。それらすべてが興味深いとは思いつつ、屍累・廻は首を小さく横に振る。
「ゾンビ化現象に興味はありますが、私も被検体になるのは遠慮します」
「あら、あなたは好奇心を満たせて、わたしはおねえさまの為の検体を手に入れる……悪くない話だと思うのですが」
 廻の拒絶にも食ってかかるラフェンドラを一瞥し、和紋・蜚廉は低い声で言葉を紡いだ。
「諦めの悪さは感心するが、他者の命を脅かす真似は感化出来んな。それに、我も検体になるつもりも無い。帰るべき場所で、大切な者が待っている」
「大切な人がいるのなら……わたしも気持ちも分かるでしょう。話しても無駄なら、力付くでも検体になってもらいましょう」
 ラフェンドラは薬品を手に取ると、手近なゾンビ妖精たちへと振りかける。すると妖精の身体は肥大化し、より悍ましい姿へと変わった。
 妖精は大きく口を開き、牙を剥き出しにしながら能力者達の元へと迫る。そこで前に出たのは蜚廉だ。

「明呪開きて、禍よ繋げ」
 蜚廉は『明呪倶利伽羅』の力を開放し、原初の神力を周囲へと解き放つ。見えない力の波を戦場に広げれば、ゾンビ達は分かりやすく反応を示した。
 強化されたとはいえ、知能の低いゾンビ達の性質は変わらない。本能で動く彼女らにとって、根源的な力による威圧は非常に効果的だった。
 怯えて動きを止めた妖精達を捕らえるのは、再現されたアシカビ。不完全だが、弱った敵を捕らえるには十分だ。
「廻、次を頼めるか。汝の見識は先程の連携で信頼している。掴んだ好機、逃さぬ眼はしていないだろう?」
「えぇ、この眼には見えていますよ。面白い方法が視えました」
 蜚廉の言葉に頷きつつ、廻は左手でパンドラの匣を掲げる。そこから溢れた怪異達は、能力者を守るように陣形を組み上げた。
 そのまま右手でヘルメスの羽根を起動させると、それは羽根ペンの形へと変わった。サラサラと空中に文字を記し、発動するのは√能力だ。
「あらゆる知識と「視る」力を持って、この因果は“書き換え”られるのです」
 妖精達の性質を垣間見て、彼女らの性質を変換させる。今だけは、あの悍ましい妖精ですら√EDENの味方となるように。
 書き換えが終わったことを認識すれば、蜚廉は妖精達の拘束を解く。すると妖精達は後ろへと振り返り、ラフェンドラへと視線を向ける。
「な、何……? あなた達の敵はあの能力者達ですよ」
 異変に気づき、ラフェンドラは強張った声で語りかける。しかし元々の主人の意思は無視され、妖精達は屍王へと殺到し始めた。
 ラフェンドラは迷う。あの妖精達を放棄し、新たな個体を呼び出すか。あるいは改変された妖精達に、改めて命令を書き加えるか。
 一瞬の迷いの末、ラフェンドラは妖精の放棄を選んだようだ。新たなゾンビ妖精をこの場に呼び出し、同士討ちをさせることで攻撃を食い止めにかかる。
「魔術と科学の融合でしょうか。色々なものを瞬時に発動できるような仕組みも気になりますね……」
 屍王の一連の動作を、廻は真剣に観察していた。怪異とゾンビ、操るものに違いはあれど、学べることは多くあった。
 さすがにラフェンドラも強力な簒奪者だけあって、敵対した妖精の対処は迅速だった。しかし――これだけ時間が稼げれば、廻と蜚廉には十分だった。

「そのように対処してきましたか。では、こちらはこのように」
 廻は怪異達に命令を下し、新たに呼び出された妖精達へとけしかける。新たなに呼び出された個体には薬品が与えられておらず、先程のゾンビ達よりも脆い。
 仕切り直したことで陣形も崩れていた妖精達は、怪異によってあっさりと蹂躙された。
 こうなれば、残るはラフェンドラ一人。
「蜚廉さん、場は整えましたよ」
「ああ、有り難い。あとは我に任せてくれ」
 廻の言葉に合わせるように、蜚廉は勢いよく前へと駆ける。
 ラフェンドラはどうにかゾンビで壁を作ろうとするが、咄嗟に呼び出した雑兵では蜚廉の突撃を阻めない。ゾンビ達はあっさりと斬り伏せられ、蜚廉は一瞬で屍王へと肉薄する。
「大切な者のために努力したい、どうにか命を繋ぎたい……その気持ちそのものは悪ではない。だが、汝は多くを傷付けた」
 その報いを、今ここに。
 蜚廉が振り下ろす刃は速く、そして重い。見事な一閃を喰らい、ラフェンドラは思い切り吹き飛ばされるのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

弓槻・結希
屍を積み重ね、そうして届く奇跡
ですが
腐敗させる病は恐怖と絶望で、あらゆる絆を蝕むのでしょう
貴女が求めるおねえさま
そのひとも、果たして笑ってくれるのでしょうか

絶対死を越える
それは色んなひとが夢見る可能性なのでしょうけれど
私はこの手段がどうしても、災いばかりをもたらす気がするのです

だからこそ、私はこの白い翼を広げて幸いの風を喚びましょう

そんな決意を語り、発動するのは【幸いを招く白き翼】
必中の効果を得た上で、祈りによって翼剣を浮かばせて自動飛翔させましょう
重ねて発動するのは【彩に溢れる花風】
ゾンビモンスターからの殺傷力高い物体を、必中かつ範囲攻撃となった飛翔剣で迎撃し、撃ち落としてみせましょう

更には2回攻撃で、あらゆるゾンビを薙ぎ払っての防御に徹しましょう

……ラフェンドラ、貴女はその妄執からもう逃れられないのでしょうね

悲しいことばかり、心に浮かんで
未来にあることに希望を抱けず、憂いに沈む
可哀想ですが、そんな貴女にこれ以上は罪咎を背負わせません

そうして凌ぎながら、発動し詠唱を続けていた【蒼穹の蒼薔薇】
白天の息吹を構え、多重詠唱によって更に威力を増幅し、属性攻撃で蒼い炎を灯しましょう

蒼薔薇の花言葉
それは夢は叶う
でも、貴女の夢は皆にとっての悪夢

だから、限界まで増やした蒼薔薇によって一気に討ち果たしましょう

美しい花を、誰かと微笑み会うことも忘れてしまったのでしょうね
せめて思い出すことを祈りながら


 辺りに漂う死の気配に、追い詰められても諦める気配を見せない屍王。
 それらをしっかりと認識し、弓槻・結希はラフェンドラに凛とした視線を向ける。
「屍を積み重ね、そうして届く奇跡、ですか」
「そう、私は奇跡を起こします。そしておねえさまを……」
「ですが、腐敗させる病は恐怖と絶望で、あらゆる絆を蝕むのでしょう」
 食らいつくような屍王の言葉を、結希の声が押し留める。彼女の紡ぐ言葉には、迷いがなかった。
「貴女が求めるおねえさま。そのひとも、果たして笑ってくれるのでしょうか」
「っ、うるさいですよ! おねえさまは、きっとわたしに笑ってくれます。絶対死を乗り越え、奇跡を起こすんですもの!」
 ラフェンドラは目を見開き、今にも結希へ噛みつきそうな剣幕を見せる。しかし、その激昂すらも結希には悲しいものにしか見えなかった。
「絶対死を越える。それは色んなひとが夢見る可能性なのでしょうけれど……私はこの手段がどうしても、災いばかりをもたらす気がするのです」
 大切な人にもう一度会いたい。死の運命を乗り越えたい。それ自体はきっと多くの人が抱く想いだ。
 しかしそのために多くを傷つけることは、決して許されることではない。腐敗の病が蔓延した世界で、誰が笑えるというのだろう。
 結希は意を決し、一歩前へと歩み出る。
「だからこそ、私はこの白い翼を広げて幸いの風を喚びましょう」
 言葉通りにふわりと翼を広げれば、柔らかな光が結希を包みこんだ。光は戦場全体に広がり、周囲の景色を書き換えていく。

 死の気配は清らかな光に、死者を冒涜するウイルスは美しい花々に。悍ましい研究が行われていた空間は、あっという間に天上界の光景へと変わっていく。
 その中央に立つ結希は、まさにこの場の中心人物。彼女の祈りに呼応するよう、純白の翼剣が軽やかに宙へと舞い上がった。
 一方ラフェンドラは大きく焦っていた。今まで自分が積み上げてきたものは聖なるものへと書き換えられ、残っているのは自分自身と使役ゾンビのみ。劣勢なのは分かっていたが、それでも彼女が引き下がることができなかった。
「よりによって、天上界を再現した空間に書き換えるなんて……ですが、まだわたしのゾンビ達は健在です!」
 ラフェンドラはゾンビ妖精を呼び寄せ、結希目掛けてけしかける。それに対し、結希はすぐさま別の能力を発動した。
「風よ、花よ。その色彩をもって、私の道をお守りください」
 詠唱に合わせ翼剣は花を纏い、その力を増幅させていく。飛翔剣は自らの意思で前進すると、この場でもっとも警戒しなければならないもの――つまりゾンビ妖精そのものを攻撃し始めた。
 ラフェンドラも負けじとゾンビを呼び、数で飛翔剣の守りを乗り越えようとしてきた。しかし、飛翔剣が斬撃を振るう度に花が舞い、その清らかな力がゾンビ達を食い止める。
 結希の聖なる力とラフェンドラの邪悪な力。その二つは妥協することなくぶつかり合い、激しい音と衝撃を響かせ続けた。

 戦いが長引けば長引くほど、戦場から力を受け取る結希の方が優位に立つ。その様子を睨み、ラフェンドラは息を荒らげていた。
「わたしは、おねえさまを、絶対に……」
 ブツブツとなにかを呟きつつ、ひたすらゾンビに力を流す屍王。彼女の姿を見つめ、結希は首を小さく横に振った。
「……ラフェンドラ、貴女はその妄執からもう逃れられないのでしょうね」
「妄執なんて言わないでください、私はただ……!」
「悲しいことばかり、心に浮かんで。未来にあることに希望を抱けず、憂いに沈む。そんな風に、私には見えています」
 事実、ラフェンドラの研究成果は大きなものだ。もしこの力を正しい意味で誰かのために使えたら、どれほど良かっただろう。
 けれど簒奪者となったラフェンドラは、自らの執着のためだけに動いている。そのために多くを傷つけ、彼女自身も傷つけている。
 結希にとって目の前で起きている悲劇は、見過ごせないものだった。
 その決意は祈りに、そして言葉に変わり戦場に響き渡る。
「この祈りが、花開くことを」
 結希は『白天の息吹』を掲げ、そこから水晶の青薔薇を生み出していく。薔薇は同じ色の炎を纏い、周囲を力強く照らした。
「蒼薔薇の花言葉、それは『夢は叶う』。でも、貴女の夢は皆にとっての悪夢です」
「だとしても、わたしはそれを夢見ます。おねえさまのために、あなたを倒し、研究を続けます!!」
 自らの夢を否定された怒りが、あるいは心の底にある何かを突かれた焦りか。ラフェンドラは最後の力を振り絞り、無数のゾンビ妖精を生み出していく。
 圧倒的な数を前に、飛翔剣による斬撃だけでは対処が追いつかない。天上界を模した空間の一部が削られ、元のダンジョンの岩肌が現れた。
 けれど、未だこの空間は結希を中心だと認識している。結希の強い祈りは邪悪な妄執を抑え、悲劇を食い止めようと保たれ続けているのだ。
 結希が祈るのは、多くの人々のため。今を生きる誰かを救えるよう、常に彼女は戦っている。
 その祈りの対象には――ラフェンドラも含まれていた。
 強力な魔術の代償か、ラフェンドラは血を吐き、目を見開きながらも戦い続けている。きっと彼女の目には、戦場を舞い踊る花々は見えていない。
 彼女もかつては、美しい花が見えていたはずなのに。その優しい色合いに包まれながら、誰かと微笑み合っていたはずなのに。
「……大切なことを、忘れてしまったのでしょうね。だから、せめて……」
 その気持ちを思い出せるように。結希は祈りを乗せ、魔力を解き放つ。
 すると炎を纏う青薔薇達が一斉に戦場を飛び回り、炎と光の波がすべてを飲み込んだ。
 ゾンビ達は燃え尽き、正しい生命のサイクルへと戻っていく。
 ラフェンドラ自身も炎と薔薇に飲まれ、大きく叫びをあげた。
「こんな、こんな終わりなんて認めません! わたしは、わたしは……ぁ」
 最期の瞬間だけ、屍王の表情から苛烈さが消えた。視界に映った蒼い輝きに、思わず目が奪われたからだ。
 おねえさまと、こんな景色が見られたなら。そんなことを思いつつ、ラフェンドラも消え去った。

 結希はすべての術を終わらせ、武器を下げる。すると清らかだった光景は、元のダンジョンへと戻った。
 けれどここに、もう死の気配は漂っていない。
 結希はこの地にあったすべての生命に祈りを捧げ、入口へと向かうのだった。


 こうして黒幕は倒され、花のダンジョンの事件は終わった。
 周囲からゾンビの危険は取り除かれ、平穏が戻ってきたのだ。
 各々の成果を手に、能力者達は帰路につくのだった。
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​ 大成功

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