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星花のジャルダン・ディヴェール

#√ドラゴンファンタジー #√妖怪百鬼夜行

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●フラワージャムとブリオッシュ・ティータイム
 オーブン釜の扉を開けると、ふわりと香ばしく甘い香りが流れ出す。
 少女は厚手の手袋をはめ、そっと天板を引き出した。
 黄金色にふくらんだブリオッシュは淡い金色に耀き、表面はやわく艶めいている。
「……うん! いい感じ」
 卵とバターをたっぷり練り込んだブリオッシュは、指で触れるとすぐ戻るほどふんわりと軽い。
 さくりと割ると、ほわりと内側からほのかな湯気が立ちのぼった。
 甘い砂糖の香りに温室の花の匂いが重なって、冬の終わりを思わせる優しい空気が広がる。

 机の上に用意した小瓶には、星花のフラワージャム。
 光を含んだ淡い色合いのジャムをそっと掬うと、ゆったりとスプーンから零れ落ちる。
 星の花を煮詰めたジャムは花の香りも楽しめるよう、ほのかな甘さに調整した。
 口に含むとまず花の香りが広がり、あとから静かな甘みが追いかけてくるように。
 このブリオッシュに合わせるのは、やや渋みのあるお茶だ。
 星の花を乾燥させてブレンドしたこのお茶は、ひと口飲むと舌の上がきゅっと引き締まる。
 そのあとでジャムをのせたパンをかじると、優しい甘みがいっそう引き立つのだ。
「……、」
 温室のティータイムを楽しんでいた少女は、ふと手にしていたカップを机へ戻した。
 香りは立ち、色も悪くない。けれど、喉を通ったあとに染みるような渋みが残る。
 花のせいではない、湯の温度のせいでもない。
 きっと――、今は心が少しだけ沈んでいるのだ。
 その理由を考えないようにしながらも、ポケットから端末を取り出し、指を滑らせる。
 画面越しに映る星の花が、少女の眸に影を落とした。

●星花の庭と温室カフェ、それとねこ
「夜のような洞窟で輝くひかり……それはきっと、星のように見えるのでしょうね」
 星詠みの少女、ブランシュ・エマイユは、桃花色の眸を瞬かせ、集った面々に視線を戻した。
 ――その洞窟には、星空があるという。
 昼でも光の届かない洞窟の奥で、淡く燐光を放つ鉱石に紛れて、星のような花が咲くのだと。
 飾れば光を宿し、乾かせば夜の空気を閉じ込める。
 そして丁寧に煮詰めれば、やさしい香りと甘さを残す。

「その花を見つけて、密かに育てていた双子の姉妹さんがいらっしゃるのです」
 名を、エリアとフィアという。
 姉のエリアは温室カフェを営み、その花を使った新しいメニューを考えていた。星花のジャム、星花のお茶。寒い季節、あたたかな温室で心をほどくための味を。
 妹のフィアは温室の隣のクラフト工房で、押し花や栞、レジンを使った小さなアクセサリーなど、花を用いた小物をカフェの新メニューに合わせて作ろうとしていた。
 ふたりにとってこの星の花は、夢とともに密やかに育ててきた大切な花だ。
 ――けれど、ある日。
 フィアが試作で作った小物の写真が、思いがけずに広まった。
 星花の押し花と、その輝きに惹かれた言葉たちが、世界を巡ったのだ。
『きれい』『見たことがない』『わたしもほしい』
 画面の向こうで、星の花は“夢の象徴”になっていた。
「……いわゆる、SNSでのプチバズというやつですね」
 それ自体が悪いわけではない。
 フィアはその反応に素直に喜び、エリアもそれを否定する気はなかった。
 けれど、“決めていたはずの形”からほんの少しだけ、ずれてしまった。
 そのことが、姉のエリアに小さな引っ掛かりを残す。
 ふたりで大切に育ててきたものだからこそ――。

「その小さな気持ちの変化に引き寄せられ、紅涙が姉のエリアさんの前に現れてしまう可能性があります」
 紅涙は彼女に、こう囁くだろう。『貴女のその心のわだかまりを、晴らしてさし上げましょう』と。
 その誘いに頷いてしまえば、紅涙は彼女を苦しめる元凶となったものを襲いに掛かるだろう。
 その先に、妹の姿が重なる可能性も……否定できない。
「けれど、少しの心の変化は、少しのきっかけで変わることもできます」
 彼女の気が少しでも晴れれば、それだけで運命の流れは変わるはずだ。
「ちょうどエリアさんは洞窟へ向かうつもりのようですし……皆さんも、気になるようでしたら」
 近頃はモンスターの活動も活発だ。そう理由をつければ、洞窟を訪れたことも不自然ではない。
 一緒に花摘みを手伝ったり、何か話を聞いてあげても、ただ傍らで見守っているだけでも良い。
「ひとりで暗いところに居ると、どうしても気分が落ち込んできちゃいますからね」
 彼女の気が紛れれば、紅涙の気配も薄まるはずだ。
 そうしていつも通り温室に戻れば、いつの間にかこの事も忘れているだろう。
 手伝ってくれたお礼にと、温室カフェへそのまま招待してくれるかもしれない。
 まだ世に出ていないメニューをひと足先にいただいたり、クラフト工房で花を使った小物を作らせてもらっても楽しいだろう。

「……あ、あと、他にも予知が見えたのですけど……。なにかこう、ねこっぽいものが」
 ブランシュは小首を傾げつつ、ふるりと首を横に振る。
「詳細は視えませんでしたが……道中、ねこっぽいなにかには、気をつけてくださいね?」
これまでのお話

第2章 集団戦 『道を塞ぐ猫』


POW 何処にも行っちゃ駄目ニャ!
【突然地面から土煙上げて生える猫壁】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【道を塞ぐ猫の縄張り】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
SPD 置いて行かにゃぃでニャ! 一緒に居ようニャ!
【蒼く光る爪と肉球としてふわふわの触り心地】を備え、【気が緩くなるような甘えた猫撫で声】を無尽蔵に放出する【ふさふさでもふもふの触り心地が良い巨大猫】に変異する。[気が緩くなるような甘えた猫撫で声]が命中した対象は思考操作され、10%の確率で命令に従うようになる(最大60%まで累積)。[ふさふさでもふもふの触り心地が良い巨大猫]は死ぬまで解除できない。
WIZ やっぱり、触っちゃ厭ニャ! にょろ〜ん!
視界内のインビジブル(どこにでもいる)と自分の位置を入れ替える。入れ替わったインビジブルは10秒間【妙に胴が長い蒼い猫】状態となり、触れた対象にダメージを与える。
イラスト key-chang
√妖怪百鬼夜行 普通11