洗脳サイレン!操られた消防隊員
●暴走エマージェンシー
√マスクド・ヒーローの世界にも朝は来る。長閑な町の消防署には真っ赤な消防車がピカピカと輝き、誇らしげに鎮座している。それはきっと、毎日敬意を持って見上げる者が居るからだろう。今日もまた……。
「ママ、しょうぼうしゃ!」
「あら、今日も見るの?」
登園するのだろう親子が片や喜色満面に、片や苦笑交じりに歩道で足を止めて、整列した隊員の朝の点呼を眺める。冬の空気に響き渡るサイレンは心なしか歪んでいたが、目を輝かせて見守る子どもには違いが分からない。
だから……サイレンがふつりと消えた後に消防隊員達がにわかに列を崩し、バラバラに暴れ出したのを呆然と見ている事しかできなかった。
ある隊員は叫びながらT字のスピンドルドライバーを振り回し、ある隊員は通りすがりの老人に消火器を浴びせる。その奥から急発進した消防車が、消防署前の通勤ラッシュの道路を遮って反対側の歩道に突っ込む。
混乱しながらも親子が逃げようとした先の進路を車体で塞がれ、転げるように降りた消防隊員達の二人に迫る。
「ママーっ!」
「お願い、カズマだけは……! 誰か助けて!」
突如として訪れた混乱が、いつも通りの穏やかな朝を悲鳴の渦に変えていく……。
●紅色の特等席
「騒がしいわね。もっと薔薇に合う音はないの?」
怪人がオペラグラスを片手に消防署の三階から喧騒を見下ろしていた。
「まあ、重ねれば少しは聞けるようになるかもしれないわ。もっと派手に赤色を魅せて頂戴?」
●ヒーローのエントリーだ!!
「予知が降りました」
峰・千早(獣妖「巨猴」のマスクド・ヒーロー・h00951)が√能力者達を呼び止めてそう告げる。
「√マスクド・ヒーローで悪の組織の怪人に洗脳された消防隊員が一般人を襲撃します。君達には、一般人の救助ののち、消防隊員を操る黒幕の打倒をお願いいたします」
峰は僅かに眉間に皺を寄せ憂いの色を浮かべた。
「公共サービスの安全性を洗脳による暴動で揺るがせる。悪の怪人はこれにより地域社会に不安を植え付け、悪への恭順なくして身の回りの安全は守られないのだと人々の意識を変える、遠回りな計画の実験を行いたいようですね」
静かなため息を挟み、情報の伝達を続ける。
「残念ながら、消防隊員は既に洗脳が完了しています。我々が今から現地に駆け付けたとて、到着する頃にはサイレンを聞いて暴れはじめるでしょう」
今回、√能力者は事件を未然に防ぐ事はできないが、それでも被害を最小限に防ぐ事ができるはずだ。
「通行人や車両が被害に会う前に消防隊員を止めましょう。直接止めるなり、洗脳を解くなり、指揮する怪人を探り消防隊員を操る余裕を与えないようにするなり……方法はお任せします。そうそう、消防隊員とはいえ、彼らは洗脳されている被害者です。体は丈夫ですが、可能であれば手心を加えて頂ければと。君達の√能力であれば、全て救うのは容易いでしょう。そして……」
峰は君の目を見て頷く。瞳の中に正義の心があると確信して。
「そう、善良な人々が信頼し、子ども達が憧れを寄せる消防隊員の名誉を棄損する卑劣な計画を、それを指揮する怪人を、必ずや倒して下さい。壊れた車両は直せますが、民の命は失われれば戻らず、曇った憧れは二度と同じ色に輝かない。今日という日の記憶を、正義が行われた朝として√に刻み付けましょう」
マスターより

よろしくお願いいたします。
洗脳された消防隊員を止め、邪悪な計画を立てた怪人を倒しましょう。
第一章は洗脳された消防隊員を止めていただきます。
第二章は戦闘員か怪人との戦闘への分岐。
第三章は怪人との戦闘になります。
それでは拳を天に掲げまして、う~~っ、洗脳だいすき!
11
第1章 冒険 『人々の洗脳を解け』

POW
洗脳された人を傷つけずに無力化する
SPD
洗脳された人々に紛れて怪人に接近する
WIZ
洗脳された人を治療する
√マスクド・ヒーロー 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ううーん、これはまた困ったことだね。どの√だとしても、公僕たる者、きちんとカタをつけないと。
というわけで【がっちゃんこ】で【洗脳を解くビデオ】を作るよ。映像系の造形にはこー見えて詳しいからね。あとは僕、【テレビ】持ってるからさ、指パッチンで【テレビ】を呼び出して、とりあえず行く先々で突発的に見せるつもり。地道だけど、消防士の人たちを傷つけるわけにはいかないしね。
他のヒトと連携は大歓迎!
こんなこと止めさせないとね、正気に戻ったあとの消防士さん自身も傷ついちゃうからさ!
「ううーん、これはまた困ったことだね」
顎に指を当てて思案するのは写・処(人間災厄「ヴィジョン・マスター」の警視庁異能捜査官・h00196)。
青年は緩く跳ねた前髪の隙間から、消防隊員の暴動を冷静に観察する。音響の発生源、効果範囲はどの程度か。行動から推測するに、洗脳された者は脳のどの部位に働きかけられているか……。
「……じゃ、作ってみようか」
場違いににまりと口角を上げ、いつの間にか手の上に現れたテレビとデバイスを接続して繰る。
幾何学模様や点滅、動物の写真、六法全書、色とりどりのフラクタル……今は意味不明な素材の寄せ集めにしか見えないものが画面上に浮かんでは消える。
まるで倍速にしたかのような速さで『映像作品』を構築するが、実際は倍速どころではない。作業効率、なんと18倍である。
「こんなもの、かな?」
自然体で立ち尽くす写に向かって、消防隊員が工具を振り上げ襲い掛かる!
しかし、一手速く金の瞳が隊員を捉え、パチリと指を鳴らす。
次の瞬間には隊員の視界はどこからともなく現れたテレビの画面に釘付けにされていた。1、2、3秒も見れば、あら不思議。
「う、ううう……ああぁ゛ー……」
消防隊員は力の抜けた手からスピンドルドライバーを落とした。頭を抱えて辺りを見回して、正気に戻ったものの混乱し、何が起きているか測りかねている様子だ。
写はすかさず彼の肩に手を置き、警察手帳を見せた。
「警視庁の者だよ。詳しい話は後にするとして、まず落ち着いて市民の避難を」
√が違っても公僕であることには変わりない。写は堂々としたものだ。
腰を抜かした老人を示し、正気に戻った消防隊員を促して共にこの場から遠ざけさせた。
「さて、これで効果は実証された」
一般人の誰も傷つけず、消防隊員達も傷つけない方法はここにある。
聴覚による洗脳に、視覚による解放を与える為、写は次々に襲い来る隊員へと形のよい指を鳴らす。
🔵🔵🔵 大成功

アドリブなど歓迎
【心情】
本来なら頼もしきヒーローと呼ばれる人たちに何をしているんだ
被害を減らして敵を炙り出す
【行動】
WIZで判定
よく見える高所に移動して歌唱と楽器演奏を駆使して√能力を使用
回避や逃げ足は一般人であっても1%はあるはず。歌を聞いて人々が被害を受けるのを減らして行こう
上手くいけば精神抵抗の力も100%になれば洗脳の力も解けないまでも弱まってくれるはず
高所で歌えば周囲もよく見える。歌に反応して近づいてくる者もいるだろう。
俺が邪魔をすれば赤を望む相手にとっては目障りになるだろうから。
聞き耳でも自分に近づく足音などに警戒し、できるなら空中移動で避難しよう
必要なら臨機応変に対処する
車庫から出ていた消防車の上へ、まるで空を渡るように細身の影が難なく駆け上がった。
西織・初(戦場に響く歌声・h00515)は滑らかな赤いステージに無造作に立つ。翼めいたマントが凛々と凍てつく冬の空気に揺れる。すらりと伸びた二本の腕の中には1本のギターがあった。
西織が六弦へ向けてすいと腕を下ろせば、暴力と恐怖とでざわつく一帯に和音が響く。携帯スピーカーは問題なく機能していると確かめ、青年は小さく頷いた。
「ぐるるう゛ぅうぅー……!」
消防車を発進させる前に、運転席の消防隊員は西織への攻撃を優先した。車体のドアを開けて焦点の合わない男たちが細い足へと手を伸ばす。
本来なら町の日常を護る頼もしいヒーローたちが洗脳によって貶められる有り様に西織はゆっくりと瞬いた。欠落したために表情で表せない心は、この音に籠めればいい。
粗雑に歪められたサイレンによって支配された場に、本物のセイレーンの歌を知らしめん。
「――!」
万人へと幸せを願う歌を捧げる。エモーショナルなギターも無垢な小鳥めいた高音も、一体となりただ純然たる美しい響きとして周りの者の耳に届く。吐く息は一瞬白く、たちまち陽の光に融けて流れる。
音は届く。怯えていた一般人は勇気を出して震える足をもたもたと動かし、消防隊員に投げつけられた工具を避けた。
歌は響く。西織の足元の運転席をはじめとした至近で歌を聞いた数名の消防隊員が苦しみ始め、自身に与えられた洗脳命令に抗おうとしてかその場に蹲った。
しかし、消防車の上に居れば効果を確かめやすいが、1対1で洗脳を解くよりも敵の耳目を引き付けしまう。
まだ暴れている消防隊員が再び消防車へと迫ったため、今度こそ青年は軽やかに宙を飛んだ。
「……」
反射するガラス越しに、3階から悠々と見下ろす怪人の微笑が確かに引き攣って見えた。
🔵🔵🔵 大成功

成程大した作戦だ。気に入らん
御破産にしてやろう
サプライズ怪人理論だ!
戦闘員を引き連れて声高らかに乱入し、堂々消防員達の前に立つ
俺と戦闘員がさり気に壁となって隊員と一般人を分断するのだ。彼らの攻撃は俺達が全て引き受ける
するとどうなるか
どれだけ隊員たちが暴れても、此方が怪人と戦闘員である以上、これは『勇気ある隊員達が死力を尽くして怪人に立ち向かっている』構図以外の何物でもあるまい
その後敢え無く怪人に敗北したとしても(勿論最大限加減するが)、『人々を逃すために身を挺して時間を稼いだ』彼らの名誉が陰る道理は無く、悪名はただ、俺だけのものだ
さあて如何する黒幕よ!
見ているだけでは最早何の成果も得られんぞ!

嘆く声があるのならば、俺は何処でも駆けつける
アヴェンジ・ジャスティス、推参
社会的不安を煽るだけに留まらず、人々の信頼をも崩さんとするのは悪辣が過ぎる
消防隊員も社会のヒーローなのだから、凶行を止める事で彼らへの信頼も護ってみせる
ライダー・ヴィークルで現場に割って入りつつ、特装圧縮銃で【クイックドロウ】
当てるつもりは無いが牽制にはなる筈だ
そして【肉体改造】によって得た膂力の活かし所だな
洗脳が解けるまでは引き千切った消防車のホースで拘束させて貰うぞ
少年、大丈夫か?
消防隊員の皆さんは悪者に操られてしまったようだが心配はいらない
俺が必ず、この事件の黒幕を止めて見せる
だから今は安全な所まで避難していてくれ
「ハハハハハ!」
牙の居並ぶ大きく裂けた口が笑う。
「ハハハハハハハハハハ!」
豪快にもう一発笑った。
「いやはや、成程大した作戦だ。うん、気に入らん」
腕組みをした怪人の後ろには彼を慕う戦闘員10人が整列して控える。
「御破算にしてやろう。サプライズ怪人理論だ!」
恐竜の咆哮を響かせて、腰を抜かした親子連れの前に怪人たちが躍り出る。
「俺は大型肉食恐竜・ティラノ怪人だ……! 消防署も消防車も俺達が支配してやる!」
怪人が高らかに悪事の実行を宣言すれば、後ろで子どもが小さく息を飲む音がする。
「ぐっ、ふんっ、こんなものか」
消防隊員は正気を失って単調に殴りかかって来る。それをティラノ怪人自身が鼻先や尾であしらう。束になってかかってくるなら、スクラムを組んだ戦闘員達が『エイエイオー』と声を合わせて押し返す。
「が、がんばれ! しょうぼうしさん、まけるな!」
事態の成り行きを飲み込めていなかった子どもは、ティラノ怪人の促しによって『怪人の襲撃を察知して戦う消防士さん』の物語を受け入れられたようだ。泣き喚きもしない勇敢な声援が怪人の背中の鱗に少々こそばゆい。
震えていた母親もやっと状況を理解して立ち上がった。それだけの時間を怪人一派は稼いだのだ。
「今の内に逃げるよ、カズマ。消防士さんの迷惑になるから、ね。おいで!」
「うん!」
子どもを抱えて去る母親は、確かに一度怪人たちに頭を下げた。押し殺された『すみません』との言葉に、ティラノ怪人は振り返らずなで肩を竦める。
「はあっ、はあ……っ」
「大丈夫か?」
子どもを抱えてその場を離れつつある母の横に、一台のバイクが停まった。学生の原チャリではない。趣味人のカスタムモデルでもない。
対怪人用の無骨なライダーヴィークルには、仮面に全てを隠した玄鉄・正義(Avenge Justice・h03441)が跨っていた。
「この先は安全だ。他にも数名逃げてきている。足元に気を付けて、落ち着いて逃げるんだ」
「あ、あの、この先で……」
「かいじんと、しょうぼうしさんがたたかっているんだ。おにいさんは……しょうぼうしさん……?」
息の切れた母親の代わりにと、赤いマフラーに目を見開いた子どもが懸命に説明する。
「俺はアヴェンジ・ジャスティス。消防士ではないが……ヒーローだ」
力強く頼もしい声と共に、仮面の奥に赤い眼差しが光った気がした。
「消防隊員の皆さんは心配いらない。俺が必ず、この事件の黒幕を止めてみせる。だから今は安全な所まで避難してくれ。お母さんと一緒に」
「うん、がんばれ! あべんじ・じゃすちす!」
アヴェンジ・ジャスティスは親子が逃げて来た方向へ、消防署へとマシンを走らせる。風に真紅のマフラーがなびいた。
「……むっ?」
そろそろ消防隊員を負かしても人目につかないか、とティラノ怪人が筋力によって隊員を押し返し始めた所に、バイクのエンジン音が響く。
ヴンと唸って真っ直ぐ突っ込んで来たマシンは、縁石とフェンスを使って跳ねてティラノ怪人の頭の上を飛び越す。着地からターンを挟んで、ティラノ怪人配下の戦闘員と消防隊員を引き離した。即座に抜いた特装圧縮銃が火を噴き、炸薬で路面にバチバチと火花が散る。牽制された消防隊員はたたらを踏んで下がった。
ティラノ配下の戦闘員が手で額の汗を拭ってふうふうと一息ついた。
「……あなたが悪の怪人か?」
ジャスティスがティラノに問う声には、若干呆れも含まれている。
「いい筋書きになっただろうが、よっ……と。俺を倒すのか? ヒーロー」
笑うティラノは頭突きで消防隊員をどついてジャスティスへと押し付ける。
「人々の信頼を崩す悪行を止め、信頼を護った。ならば志は同じだ」
ヴィークルを降りたジャスティスは改造された腕で手近な消防ホースをぶちりと千切り、狂乱する消防隊員をホースで拘束して制圧する。後は映像と音で洗脳を解くのみだ。
「俺はこいつ達の分も悪名を戴こうというだけだ」
「ならば、あの黒幕は?」
ジャスティスが指す先、消防署の3回には確かに悠然と立つ何者かの影がある。
「無論」
とティラノ。
「当然」
とジャスティス。
ここからが本当の闘いだ。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 ボス戦 『『コウモリプラグマ』』

POW
幼稚園バスジャック作戦!
あらかじめ、数日前から「【幼稚園バスをジャックする】作戦」を実行しておく。それにより、何らかの因果関係により、視界内の敵1体の行動を一度だけ必ず失敗させる。
あらかじめ、数日前から「【幼稚園バスをジャックする】作戦」を実行しておく。それにより、何らかの因果関係により、視界内の敵1体の行動を一度だけ必ず失敗させる。
SPD
コウモリブラスター
【超音波】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
【超音波】を用いた通常攻撃が、2回攻撃かつ範囲攻撃(半径レベルm内の敵全てを攻撃)になる。
WIZ
サーヴァント・バット
移動せず3秒詠唱する毎に、1回攻撃or反射or目潰しor物品修理して消える【コウモリ】をひとつ創造する。移動すると、現在召喚中の[コウモリ]は全て消える。
移動せず3秒詠唱する毎に、1回攻撃or反射or目潰しor物品修理して消える【コウモリ】をひとつ創造する。移動すると、現在召喚中の[コウモリ]は全て消える。
「ヒャ―ッヒャヒャヒャ! オレの超音波から作った洗脳サイレンはいかがだったかな? 洗脳された所で弱い人間など蹴散らしてくれば早いだろうに、頭の回らない奴ばかりだ。あの方の敵ではない……」
悪の組織『プラグマ』の怪人、コウモリプラグマが嘲笑する。
√能力者が侵入した消防署の三階へ続く通路は、片側が防火シャッターで塞がれ、もう片側はコウモリプラグマが立ちふさがっている。侵入経路を読まれていたのだろう。
仮に防火シャッターを突破しようとしてもコウモリプラグマの妨害は避けられない。
ならば、この怪人はこの場で倒し、更に指揮を執る怪人の面を拝むのみ。

西洋人形の付喪神です。身体には所々傷があります。美しいお人形を自負しているものの、愛されるか不安もあるので、褒められると喜びます。「ええ、美しいのは当然だわ。けれど、とても嬉しい言葉だわ」と微笑むことと思います。
物を大切に扱う・慈しむ人には優しく、傷つけるものには容赦なく行動する方針です。
友好的な相手にはやわらかい語調、敵対者には語気が強まります。
戦闘は選択したものの中で適切そうなものを。
おまかせ多く申し訳ありません。お目通しに感謝を。
コツリと靴音を響かせて歩み出たのは、深紅のドレスを纏ったお人形。ベルナデッタ・ドラクロワ(移ろわぬパルロン・h03161)は申し訳程度のカーテシーの後にコウモリプラグマを毅然と睨んだ。
「あなた、慈悲の無い方なのね。野心の道具にした者を一顧だになさらないの?」
「ヒヒッ、これはこれは、むさ苦しい場所にわざわざようこそ。道具が壊れればまた調達すればいいのでね」
ふと訪れる沈黙。ダンスをするには遠く離れた二人が同時に深く息を吸い、魔法の詠唱を始める!
片や、淑女の唇から紡がれる言の葉が焔の古代語の一文字一文字に変じて寄り集まって火球を成す。
片や、怪人が喉から絞り出す音波により天井の暗がりから化生の蝙蝠が零れ落ちる。
「行け! サーヴァント・バットォ~!」
「焼き潰せ! ウィザード・フレイム!」
蝙蝠と火球が正面からぶつかり合い、通路の中央で爆ぜた。一見、魔術は相殺されたかに見えたが……。
「ぐ……っ、壊れかけのポンコツ風情がァ……!」
威力の勝った火球が飛び散り、コウモリプラグマの被膜を、全身の札を焦がす。
「先にお前を壊してもいいのだぞ?」
白磁の水盤に桜を浮かべたような、透き通る硝子の瞳に怒りの焔が宿った。
🔵🔵🔴 成功

ハイパーエレガントキャビンにて強引に目の前に乗り付けて参上。ひらりと飛び出して、カーテシーポーズ着地
「わたくし、カヌレ・ド・ショコラと申しますの。どうぞ、よしなに」と深々と頭を垂れると、ハイパーエレガントキャビン内蔵兵装により、【一斉射撃】【先制攻撃】
「わたくし、悪党相手に手段を選ぶほど甘くはありませんの。大甘で許されるのは今時、お菓子ぐらいですの」
「それにしても・・・あまり美味しそうではありませんのね。仕方がありません。これもお仕事ですの。世知辛い世の中ですの」
【錬金術】でベールヌイを変形。遠距離は拳銃、近接はエペ、敵の攻撃はこうもり傘にして防ぐ。隙あらば組み付いて【吸血】。√能力でとどめ
消防署通路の窓ガラスを突き破り現れたのは巨大な銀狼が牽く可憐にして優美なハイパーエレガントキャビンである。
どこかからトランペットが吹き鳴らされ、高貴なる主がお目見えする!
躍り出た小さな影は、着地と同時に慇懃なまでの完全なカーテシーでもって怪人に布告する。
「わたくし、カヌレ・ド・ショコラと申しますの。どうぞ、よしなに」
王冠を戴く少女のお辞儀が最も深くなった。それが号令だ。
キャビンに仕込んであった迎撃装置が火を噴き、少女の頭を飛び越して怪人へ鉛玉を浴びせたのだ。
「挨拶をし返す前に卑怯ではないか!?」
脆くなった両翼を振り回し銃撃を払った怪人が抗議した。先の淑女とはまたお淑やか度合いが異なる淑女だと認識を改めたようだ。
「わたくし、悪党相手に手段を選ぶほど甘くはありませんの。大甘で許されるのは、今時、お菓子ぐらいですの」
対して、カヌレは平然としたものだ。己が貴人であるという絶対的な真理に基づいて、眼前の粗末な食事を値踏みする。小さな唇から嘆息が漏れた。
「それにしても……あまり美味しそうではありませんのね。仕方がありません。これもお仕事ですの。世知辛い世の中ですの……」
その手の中に錬成した可憐な拳銃でひたりと怪人の額を狙い、撃つ。
「ヒヒッ、何度も喰らうものか」
怪人は弾丸を異常な挙動の跳躍でかわす。少女も合わせて距離を詰め、拳銃を変形させた刃を振るう。
「ほう、届くか」
追い詰められた怪人は更に飛び、ひたりと天井に貼りついた。
「おい、やれ」
怪人がじろりと見た先には小窓のついた小さな部屋がある。その隅で震える事務員が泣きながらスイッチを押した。事務員は洗脳されていないが、怪人に人質でも取られているのだろう。この√ではよくある事だ。
「毒液スプリンクラーだ!」
怪人より下へと濁った液体が散布される。
しかし、カヌレの備えの方が一枚上手だ。剣がはらりと傘に変化した。毒の雨を凌いだ後、現れた姿は冷徹な目をしたヴァンパイアオーバーロードだった。
「……悔い、怖れ、そして死ぬがいい」
怪人の肩口から血を一口啜り、その返礼にと超高温チョコドリンクを熱線にして唇から放った。
「ヒッ」
怪人は藻掻いて逃れ、首の切断は免れたが片耳を焼き切られてシュウシュウと煙を立ち上らせた。
🔵🔵🔴 成功

どんな輩が騒動を起こしたのかと思えば…
随分とチンケな奴が出て来たな
これでは『あの方』とやらも器が知れると言うものだ!
戦場は閉所
図体のデカさ(身長2.5M)も相まって、俺にとっては逆風しかない環境だ
だがダメージ覚悟で進むしかない!
自慢の大顎で奴を掴みさえすれば…グッ!?
数日前に幼稚園バスジャック事件を解決した時の傷が…!
なぜ今になって…?
…まさか貴様!?
しかし負けるわけにはいかん!
この閉所は奴の機動力をも殺す筈!!
どれだけ攻撃を食らおうが喰らいついて叩きつけ、最後には奴を防火壁ごと砕いてやる!!!
…広い場所ならば結果は違ったろう
恨むなら、命惜しさにお前をここへ配置した『あの方』とやらを恨むんだな

アドリブなど歓迎
【心情】
お前の音波から作られたサイレンか。不快極まる音だったぞ。
本物のセイレーンの力を見せるまでもない。水の弾丸に穿たれろ。
【行動】
WIZで判定。
楽器演奏、音響弾、鎧無視攻撃の技能を使い√能力を発動。
敵を指定地点としてその周囲の範囲内にいる対象を攻撃する。
相手が能力を発動しても動けないならダメージを与え続けられるはずだ。
もしもコウモリを召喚されれば空中浮遊、空中移動、空中ダッシュの力を使って攻撃を回避し、そのまま俺の√能力の範囲内に誘導して倒す。
必要なら臨機応変に対処する。
天井から落ちて床に膝をついたコウモリプラグマ。奴は自身への被害を避けるため、片手を上げてスプリンクラーを止めさせた。
「随分とチンケな奴が出てきたな。これでは『あの方』とやらも器が知れると言うものだ!」
鼻で笑ったのはティラノ怪人。見上げるばかりの巨躯でずいと踏み出す。この閉所では攻撃を避けられまいと覚悟の上で、その顎にコウモリの薄い腹を捕らえようと地響きを立てて進み……かくりと濡れた床に膝をついた!
「グッ!? 数日前に幼稚園バスジャック事件を解決した時の傷が……!」
震える二本の指趾で脇腹を抑える。塞がったはずの傷口から滴る濁った液体の色は、今しがたスプリンクラーで散布されたものと似ていた。
「バスジャック……おお! そういえばこの毒薬の実験を兼ねていたな。今更効いたのか、図体のデカいノロマめ!」
激痛に呻くティラノを前に、コウモリは喜色満面に詠唱を始め、先ほどのように1体のサーヴァント・バットを呼んだ。
「お前の音波から作られたサイレン。不快極まる音だったぞ」
水盆に落つ一滴が波紋を広げるように、澄んだ声が戦況を変える。
西織がギターを爪弾けば、コウモリを中心とした半径18mの円の中に清浄な水滴がきらきらと艶めきながら浮かんだ。西織の発する1音ごとにそれは弾丸となってコウモリを貫く。
「サーヴァント・バット、奴の喉笛を先に噛み切れ!」
属性音:涙雨は防げない。閉所で範囲から出るのは至難で、出た所でサーヴァントを失う。そう悟った途端、コウモリは標的を西織に決めた。
サーヴァントが纏わりつけば、西織は歌翼衣をゆるりと揺らして空中に逃れる。飛行しながらの攻防を続けながらも演奏は止めない。
音も水も、他者を穢す為にしか使えない者に本物のセイレーンの力を魅せるまでもない。
そして……。
「ティラノ怪人、君もここで止まりはしないだろう」
響くギターには確かに激励のメロディが乗っている。
ティラノの巨体が軋むように起き上がる。痛みに歯を食いしばりながら、雨に撃たれるコウモリプラグマへと突進した。
「俺達の全力フルパワー、貴様に受けられるかーッ!?」
「これは……ッ」
苦々しく顔を顰め、コウモリはティラノの横へとすり抜けようとした。この移動の代償で西織を狙うサーヴァントは掻き消える。
そして、コウモリ浅知恵による回避はがぱりと開いた顎の端に捕まった。
「ヒィィィ!!」
牙をゴリゴリと食い込ませて、蝙蝠の体がぐうっと上に掲げられた。
ふわりと衣の裾をなびかせて床に両足をついた西織は、一瞬の音抜きを挟みぐっと重心を下げて更に激しくギターを鳴らす。
「俺の音からは逃れられない……降り注げ!」
「GYAOOOOOO!!!!」
咆哮と共にティラノは突進し、バリケードと隔壁で塞がれた通路の奥にコウモリを叩きつける。どこで暴れようが西織の攻撃範囲内でもある。ティラノ噛まれていない部分が涙雨の集中射撃に晒された。
「ゴフ……ッ」
血反吐を吐いたコウモリの後ろでバリケードと隔壁がひしゃげて壊れ、清涼な空気が立ち上る毒の臭気を洗い流していく。
直接この場の情勢には関係しないが、崩れた隔壁の下敷きになってコウモリ配下の戦闘員が全滅していた。その手から通信機が転げ落ちる。
『こちら人質班、こちら人質班、ヒーロー共に拠点51が察知された。定刻までに指令なくば、人質と拠点を放棄し所定の拠点に退避する。こちら人質班……』
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功

道程が見えているならば突き進むのみだ
アヴェンジ・ジャスティス、推参
頭の回らない?
それは違うな
貴様らが最も恐れるのが人の団結だろう?
その目論見が容易に崩れたのだから、貴様らの方が浅慮だったと言う事だ
【残像】で惑わしつつ間合いを詰め、『ブレイキング・ブースト』で攻撃
更に片目を破壊し、特装圧縮銃で【クイックドロウ】を見舞う
二回攻撃はお前だけの専売特許じゃない
それに追い詰められているのはお前だ
この場に立った時点で、お前には前にも後ろにも逃げ場はない
お前に残された選択肢はこの場で果てる事だけだ
…その言動が洗脳の賜物だったとしても、今の俺ではお前の洗脳を解けない
倒す事でしか解決出来ない俺を恨んでくれていい

もう、先に進めるようになっているだろうと、お昼寝してから再びやって来て、コウモリ怪人健在であることに閉口する。
「あら?あなたまだお元気でしたのね。無駄にご丈夫ですの。よろしゅうございます。わたくしも、悪鬼ではございませんの。ここを通していただけるのであれば、見逃してあげますの」
交渉決裂なら戦闘へ
「ならば!剣で語るしかありませんの。間もなく、お茶の時間ですので、早々に退場していただきますの」
【錬金術】で【ベールヌイ】を変形させながら戦闘。拳銃で【牽制射撃】、近接してエペで突き、敵の攻撃にはコウモリ傘にして【エネルギーバリア】頃合いを見て、√能力でとどめ
アドリブ、絡み歓迎

さて、正面突破となるね!
【テレビ】を指パッチンで適宜召喚しつつ盾に。一気に決めるよ――【影一文字】で仕留める。これ、【霊剣・一文字】の効果で、精神攻撃が響くはずだから、撹乱になればいいのだけれども……。ともかくサーヴァント・バットと幼稚園バスジャック作戦!が脅威に思えるから、これの対策はしたい。……となると――なるべく通常攻撃も加えていきたいね。
いざという時は【世界の歪み】で恐怖を与えることができればいいんだけれども。もちろんテレビで見せるカタチでね。……深淵を覗くものは深淵もまた――なんて、ね?
「ふぁ……。あら、まだお元気でしたの?」
√能力によって消費した糖分を補給し、小春日和の温もりで軽く午睡を嗜んだカヌレがファンファーレと共に戻ってきた。
「無駄にご丈夫ですの。よろしゅうございます。わたくしも、悪鬼ではございませんの。ここを通していただけるのであれば、見逃してあげますの」
「ヒヒ、逃げ帰っていればと後悔するぞ?」
「残念、ならば!」
コウモリプラグマを見据え、少女は手の中で剣を何度も変化させる。傘、銃、次はどれが下賤な怪人に似合うだろうか。
「剣で語るしかありませんの。間もなく、お茶の時間ですので、早々に退場していただきますの」
輝く切先を向ける。
「さて、正面突破と行こう!」
写が組んだ両の掌を上に向け、ぐーっと肩を伸ばす。何てこと無いとでも言いたげに不敵に口角を上げ、指を鳴らして大型のテレビを遮蔽代わりに己の前に浮かべた。
続けてすらりと抜いた刀を古風な型に構えれば、攻防一体の備えは完了している。既に見たコウモリプラグマの技を無策に通す気は無い。サーヴァント召喚や人質作戦による妨害の影響を減ずるには、カヌレの仕掛けに合わせての剣の連撃が有効か……。
思考を巡らし、コウモリにどんな衝撃映像を食らわせるか台本を組み立てる。
「ああ、突き進むのみだ」
アヴェンジ・ジャスティス、推参――。
抑えた名乗りが決意の重さを秘めて響く。
「お前、さっき、人々を犠牲にしないのは頭の回らない……と言ったな。それは違う」
人差し指を突き付けてから、ジャスティスは暴く。
「貴様らが最も恐れるのが人の団結だろう? その目論見が容易に崩れたのだから、貴様らの方が浅慮だったと言う事だ」
√能力者達が各々の力を繋いで、命も誇りも救った。プラグマの小細工とその本質を突きつけられ、コウモリプラグマは目を血走らせる。
「プラグマも舐めれらたものだ。させるものか……させるものかァ!」
「はは、凄んでいるつもりかな?」
写のから笑いを最後に、一気に場が動く。
コウモリ口がかっと開き、血を迸らせながら不快な超音波を発した。大気がピリピリと震え建物の窓ガラスに罅が入る。
ジャスティスは両腕を人中を守るように翳し、両足を踏みしめて耐える。カヌレは変形させた傘を広げて、その陰で指で耳を塞いだ。写が盾としたテレビにも大きく罅が入るが、まだ映像は映る。
「一度きりか……?」
ジャスティスが新たな技を測る。
「いや、また来る」
写が見定めた。
「ちょっと、小細工は飽きましてよ?」
カヌレは唇を尖らせる。ベールヌイが傘から銃に変じてコウモリへ軽く牽制の弾丸を見舞う。
「むっ!?」
鬱陶しそうにコウモリが翼で払った刹那、写は一筋の影にしか見えない素早さでコウモリを間合いに捉え、超スピードを乗せたまま刀を振り抜いた。
斬。
切断されたコウモリの片翼が滑るように落ちる。穏やかな表情はそのまま、写の目は笑っていない。
「この――」
再度超音波が発せられる前に――。
「はああああっ!」
カヌレの刺突がコウモリに深く息を吸う間を与えなかった。
怪人は中途半端な超音波を、丁度よく逃げようとした先に居たジャスティスに食らわせようとしたが、赤いマフラーが微かに揺れて男の姿が掻き消える。
「残像だ……」
「そっちか!」
更に首を捻って攻撃しようとすれば、そこにあるのは大画面の写のテレビだ。砂嵐の中にヒーローを映し出している。
「はい、フェイクでした。本物はね」
「こっちだ。……ブレイキング・ブースト!!」
くすくす笑う写に続き、既にコウモリの背後を取っていたジャスティスが、振り返るコウモリに強烈な拳の一撃を見舞う。
「がああっ」
殴り抜いたコウモリの左目が潰れ血が滴る。ジャスティスの追撃は続き、至近距離から銃弾を腹に打ち込んだ。
「この場に立った時点で、お前には前にも後ろにも逃げ場はない。お前に残された選択肢はこの場で果てる事だけだ」
仮面越しには改造人間の胸の内は伝わらないのか、コウモリは片翼をばたつかせて、足掻く。
「いい気になるな……全ては計画の内。あの方が成果を持ち帰ればいい……プラグマ……万歳」
恐怖、損得、優越、支配……そうしたものでしか繋がれない悪の組織の奴隷に、いつ誰がなってもおかしくない。ジャスティスの銃にエネルギーが再装填される。
「……その言動が洗脳の賜物だったとしても、今の俺ではお前の洗脳を解けない。倒す事でしか解決出来ない俺を恨んでくれていい」
淡々とした声に瞬き、その銃口をそっと押し下げたのはカヌレだ。
「ごめん遊ばせ。そうそう、一人で背負い込むものではありませんの」
王冠がきらりと瞬き、コウモリを光で包む。
「ブランチのお茶の時間ですわ」
アフタヌンティリウム光線だ。その力というと……。
「こ、ここは……」
暖かな春の庭園。目の前にはテーブルセット。供されるのは香ばしく焼けたカヌレと、きっちり3分蒸らした上等なダージリン。
「さあ、冷める前にどうぞ召しませ……」
微笑む淑女の顔に見覚えがある。あれは敵だ。敵……敵とは? プラグマの敵だ……。ぷらぐまはなんだったか。よけいなことはすべててれびのなかだ。すなあらしになる。ここはあたたかなはるのにわ……。
絶命し、消えゆくコウモリプラグマを背に√能力者は進む。
階上に待ち構える事件の元凶には、いかな末路が相応しいか……。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『『マンティコラ・ルベル』』

POW
デンジャラス・ローズ
【薔薇の香り】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【ルベル・アロー】」が使用可能になる。
【薔薇の香り】を纏う。自身の移動速度が3倍になり、装甲を貫通する威力2倍の近接攻撃「【ルベル・アロー】」が使用可能になる。
SPD
マンティコラ・スティンガー
【サソリの尾針がついた髪鞭】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
【サソリの尾針がついた髪鞭】が命中した部位を切断するか、レベル分間使用不能にする。また、切断された部位を食べた者は負傷が回復する。
WIZ
スコーピオン・ローズ
半径レベルm内にレベル体の【薔薇マークのついた蠍型】を放ち、【赤外線】による索敵か、【蠍の爆発】による弱い攻撃を行う。
半径レベルm内にレベル体の【薔薇マークのついた蠍型】を放ち、【赤外線】による索敵か、【蠍の爆発】による弱い攻撃を行う。
イラスト 来賀晴一
√マスクド・ヒーロー 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
√マスクド・ヒーロー 普通11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
消防署3階、署長室の扉は自ら開き、むせかえるような薔薇の臭気が辺りに広がる。
「凡人共の聞き分けがよくなるよう、折角手入れしてあげたのに、無粋なのね?」
自らの体から生える赤薔薇を、蠍の尾で慰撫する女怪人がデスクの上で足を組む。
「私はマンティコア・ルベル。プラグマの偉大なる計画の遂行者。この言葉の意味が分からないなら、体に教え込んでやりましょう」
女の姿をしていてもその本質は根っからの悪。容赦はいらないだろう。

片手には、戦いのさなかで拾った消化器を。
装いに不釣合いかしら?でも、ねえ?
貴方がいちばん悪い子ね?
赤色がお望み?ごあいにく様、みんな無力化してしまったの。
薔薇に似合う音、貴方からなら出るんじゃないかしら。ちょっと鳴らしてみない?ねえ、みんな?
「応えて、友よ」
相棒をめちゃくちゃにされた消防車。大切にメンテナンスされてきた消化器。有事の際は力強く、でもそんな日が来ないことを願っていた優しい友たち。
「お前の悪意の火をから消してやろう」
彼らが協力してくれるなる、大きな黒い矢がマンティコア・ルベル目掛けて放たれる。
■
アドリブ歓迎です

人間(√ウォーゾーン)の学徒動員兵×職業暗殺者のハコです。
なんだか大変そうな場面に出くわしてしまいましたね。
ハコは皆さんのサポートをさせていただきます。
戦闘ではいろんな機構に変形可能なモノリスを使用し援護したいと思います。
レクタングル・モノリス。
あらゆる武器にも機械にも変形します。
要所で使い分けのできる便利なモノリスです。宇宙ですね。
拠点の防衛や様々な状態、環境にも耐性がありますので防御役や盾としてもお役に立てるとハコは思います。
ハコ自身は人間なので基本的にモノリスのちからです。神秘ですね。
あとは状況におまかせして動きます。
ハコです。よろしくお願いします。

【テレビとぬいぐるみ】
人を操るだなんて、本当無法にも程があるよ。それなら僕も僕で考えがある――【イド=シャドウ】中心にしつつ、【霊剣・一文字】を使って僕自身も近接攻撃していくよ。【テレビ】を呼び出して庇ったりしてみて、ミュジーさん中心に守っていくよ。回復が必要なら【イド=シャドウ】にやらせる。……ミュジーさん、これ終わったらラーメンでも食べにいきましょうか。

【テレビとぬいぐるみ】
悪い子ね、反省しなさい!【モーニンフレンド】でイド=シャドウさんと写くんの援護をしつつ、【アートラスピーカー】と【ディーヴァズマイク】で攻撃していくわ!
……えぇ…!必ず、一緒にラーメンを食べに行きましょう!

【アドリブ歓迎】
一見ゆるふわ系の女子高生。
その実態はかつての(洗脳されていた)悪の女幹部。
同族センサーに感知!……があったわけではなく、アンカーの望月・惺奈(h04064)ちゃん「で」遊ぼうと思っていた矢先、今回のことを聞きつけて、駆け付けました。
「話を聞けば消防隊員を洗脳したそうですねぇ!」
「なんてひどいことを。せなちゃん、私たちで正義の戦いと言うものを見せて上げないとですねぇ…!」
招集していた傭兵少女分隊を整列させ。
「皆さん、室内ですので陣形を組んで攻撃してくださいねえ。わたしは援護に回りますよぉ」
がんばるその体からはこう、なんか、色々とフェロモン(精神干渉フェロモンとか戦闘用フェロモンとか)がもれもれして、傭兵とか周囲がちょっと精神的なあれこれに弱くなっちゃう。
「それじゃあ、がんばってくださいねぇ」
傭兵少女たち(と時々セナちゃん)に、声とか視線とか指先とかで魅了や催眠とか鼓舞とか集団戦術とかでメンタルから戦闘能力気持ち上げている気がします。
あと応援歌で傭兵少女の成功率底上げ(できますか?)
「私を狙うんですか?……駄目ですわ。ご自分で味わって下さいな?」
マンティコラ・ルベルに精神干渉の魅了や催眠、精神汚染で自爆を誘います。
今更ですが、戦闘スタイルは『精神支配で味方を強化&敵の自滅です」
自分は直接戦闘あんまりしません。
「いっけー。ハイパー惺奈ちゃんパンチ!」
応援もするよ!

何やら人々を洗脳する怪人が暴れているという話を聞きつけて、Ankerの月魅さん(h02867)と共に駆けつけます。月魅さんを1人で行かせるというのは何と言うか、色々な意味で心配ですから。
「貴女がこの洗脳事件の元凶と言うのでしたら、私が…いえ、私達の手でそのような計画は止めてみせましょう!」
あの口ぶりでは対話で解決は出来そうな相手ではなさそうですね…話してもわかってくれないのでしたら、私も戦う覚悟を決めて、いざ挑みます。
何故か月魅さんを見ていると変な気分になったりもしますが…
私には様々な武器がありますが、見た感じですと接近戦が得意そうな相手ですから、錬金式百花繚乱砲を用いての銃撃を主に立ち回っていきます。
「何故この武器は銃なのに砲なんて大層な名前がつけられているのか分かりますか?答えは…こういう事です!」
【勝利へ導く旗幟の錬金】で武器を変形させ、その上更にこの武器を【未来を望む希望の錬金】による即興の錬金術で更に強化して、その心を浄化の光で浄化してみせます!
戦闘中、どんどん弾切れになっていく武器を次々に持ち替えながら、最後は真正面から堂々と立ち向かい、【ハイパー惺奈ちゃんパンチ】で√能力を打ち消しながら進み、全力のパンチを叩き込みます!
「これが私の全てを懸けた最後の一撃です!」
「ちょっ、ちょっと月魅さん!?その名前で呼ばないで下さいって私何度も言いましたよね!?」
アドリブ等歓迎です!

その傲慢を打ち砕く
アヴェンジ・ジャスティス、推参
凡人か…
上位者を気取るお前達にはそう見えるのだろうな
だが!
【残像】で惑わしつつ間合いを詰め、『ブレイキング・ブースト』で攻撃
その過程で受ける敵の攻撃は敢えて左腕で防御
使用不能は元より、切断の方であっても「左腕」全てが失われるわけじゃない
その左腕を破壊する事で即座に再行動
特装圧縮銃の【クイックドロウ】で追加攻撃
…人々の繋がりを断たんとするお前達は崇高ではなく孤独なだけだ
結束を脅威と見なすのは合理的判断以外にも、本当はその輪から外れる事が怖いのだろう?
人の心を信じられないから否定し、洗脳に頼ったり支配しようとする
そんなお前達に俺達は負けるつもりはない

にこにこ顔でボスとの面会に臨む
「今どき、脳みそだけやら、あれこれ全部のせでわけのわからない怪物やらは流行りませんの。ボスは美形と相場は決まっていますの」
「昨今は、血液に成分が似通った吸血鬼用の食糧などもありますの。しかし、なんとも味気ない。やはり、血はしぼりたてが一番。幸い、簒奪者の方なら、いくら吸ってもお上から叱られませんし。美と力を併せ持つ者であれば、その味わいは極上」
取り巻きがいれば、√能力を範囲に切り替えて蹴散らす。まずは雑魚を始末してから、申し訳ないが、仲間を囮にして【吸血】を狙う。【錬金術】で近接はエペ、遠距離は拳銃、防御は傘に変形させる常套戦法
「死体の血は大変不味いので・・・」

…狭い!
我が図体のことながら、何処もかしこも狭すぎる!
故にサソリ怪人よ!
俺の我儘に付き合ってもらうぞ!
あちこちで爆ぜるサソリなんぞ構っていられるか!
狭すぎて避け様も無いしな!
なので全部喰らう勢いでサソリ怪人目掛けて突込み、そのまま署長室三階から諸共に屋外へダイヴだ!
強制的に戦場を変えてやる!
だが恐らくバスジャック作戦の古傷も相まって、この時点で俺は瀕死だろう
元より奴は格上、この状態で俺に勝てる見込みは無い
…さあ! インビジブルよ、我が身を喰らえーっ!!
そして巨大化!
はははどうするマンティコラ・ルベルよ!
貴様の攻撃は最早俺には通じんぞ!
後はひたすら(周辺環境に気を配りつつ)超ド級の猛攻あるのみ!

アドリブなど歓迎
【心情】
あの忌まわしい音で手入れをされる彼らを放っておくくらいなら無粋で結構だ。
セイレーン憑きの力を見せてやろう。
【行動】
POWで判定。
歌唱、音響弾、鎧無視攻撃、衝撃波の技能を使いつつ√能力で攻撃。最大震度の力をぶつける。
激しく揺れてしまえば移動や狙いも定まらなくなるはず。
近接攻撃を仕掛けられそうになれば空中浮遊、空中移動、空中ダッシュで回避する。
協力者と積極的に連携する。
必要なら臨機応変に対処する。
マンティコア・ルベルが待ち構える署長室の様子が扉から……見えない!
なぜならば、扉をくぐるために屈んだティラノ怪人の巨体が、すっかり√能力者達の視界を塞いでしまったからだ。
「狭い!」
真っ当な感想をティラノ自身が吐いた。
「我が図体のことながら、何処もかしこも狭すぎる! 故にサソリ怪人よ! 俺の我儘に付き合ってもらうぞ!」
「あら……乱暴なのね!」
突進してきたティラノへと、ルベルは幾度もサソリ型の爆発を見舞う。火炎、爆風、そして飛び散るティラノ自身の血を越えて一息に体当たりすれば、署長室の窓枠も壁面も道連れになる。
ルベルの体を確かに捕らえて3階から地面へと急降下するティラノ。彼の小さい耳に微かな笑い声が届く。
「ふっ……」
蠍の尾が恐竜の体に巡らされ、蟲のようにずるりと女体が這う。空中で体勢を入れ替えられた。ティラノを下敷きにしてルベルは着地を成功させる。
「フフ、アハハハ! 計算で私に勝つつもりだったの?」
不利な環境下で毒まで受けたティラノの口から血が溢れる。
「……よ」
登りつつある陽射しの中に、√能力者だけに見える何かがゆらゆらと集う。
「インビジブルよ、我が身を喰らえ……っ!!」
「何!?」
魚の群れじみたインビジブルが一斉にティラノに食らいついた。半透明のそれらが陽射しを歪め、反射し、ルベルが閃光に目を閉じた。
「オオオオオオオオオオ!!」
これぞ由緒正しき伝統芸能! 本物のティラノサウルスもかくや、巨大化したティラノ怪人が尾を振り回し口から火を吐き、ルベルを追い立てる。
「これしきのこと! くっ、おのれ!」
ルベルは先ほどまでの余裕はどこへやら、消防署前で動き回り続けなければならない。紅で飾ったルベルの上に、小さな影が差した。
「お邪魔いたしますわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
カヌレが“降”りる。3階までゴリ押しで乗り付け、壁の穴からはみでたキャビンの突端によじ登ってから“降”りる。
目指すは地上のルベル。彼女へのご挨拶に空中でカーテシーを決めながら月面宙返りに加えて錐もみ回転も加えた、淑女にしか許されない礼法殺法である。
その足先が発する雷撃は、高所からの回転を加えることによって3倍の威力を持ち、受け止めたルベルとその周辺へと電流を放射した。
「ぐわああああああ」
苦し気に呻いたのはルベル、そして他に……。
「ぎゃあっ!」
「ルベル様、撤退指示を!」
いくばくか残っていた伏兵も炙りだせたようだ。
「きゃ……! こちらの方が悪の怪人、でいいのでしょうか」
「ええ、話を聞けば消防隊員を洗脳したそうですねぇ!」
恐竜と電撃の飛び交う消防署前で手を取り合ったのは、どこかお嬢様然とした望月・惺奈 もちづき・せな(存在証明の令嬢錬金術士・h04064)と大人びた雰囲気を纏った十六夜・月魅 いざよい・つきみ(たぶんゆるふわ系・h02867)の二人だ。
「貴女がこの洗脳事件の元凶と言うのでしたら、私が……いえ、私達の手でそのような計画は止めてみせましょう!」
望月がきゅっと繋ぐ手に力を籠めれば、十六夜は笑みを深める。
「なんてひどいことを。せなちゃん、私たちで正義の戦いと言うものを見せて上げないとですねぇ……!」
重なる手の温度も名残惜しく、十六夜が繋いだ手をほどき上へ掲げると、12人の少女人形が歩み出た。
「皆さん、乱戦ですので陣形を組んで攻撃してくださいねぇ。わたしは援護に回りますよぉ」
声色、視線、何よりその肉体から発する微かで甘やかな精神干渉フェロモンが傭兵少女分隊と……望月を虜にする。
「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」
「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」「了解!」
「了解……はっ、私まで変な気分になっていません?」
望月が高揚して両頬を抑えるのを見届けて、十六夜は愛らしく小首を傾げた。
「てへ?」
ルベルが鼻で笑い少女達の隊列に爆発する蠍を仕向ける。
「他のアプローチからの洗脳……こんなつまらない使い方を?」
数名の少女人形が自身に備えられた盾を並べて構え、前に進み出る。
「防壁設置! ……くぅっ!!」
少女達は歯を食いしばって耐えたが、盾の列に僅かな乱れが生まれた。
ぶわり、とフェロモンを上書きするように薔薇の香りが強まる。
「私の矢、多少強化されただけの雑兵には止められないわ」
ルベルが疾風のように十六夜の隊列に迫り、紅の矢を守りの隙間から十六夜の心臓を貫かんと狙う。
しかし、獲物へ狙いを定めた瞬間こそが最も狙われやすいものだ。
十六夜の魅了によって緊張を鎮めた望月。するりと隊列を飛び越えた彼女のライフルの銃口がルベルをレティクルに収めた。
「何故この武器は銃なのに砲なんて大層な名前がつけられているのか分かりますか? 答えは……こういう事です!」
瞬間的な錬金術により、ライフルは浄化の光を放つ必殺兵装、星火燎原砲へと装いを変える。
「未来の、可能性を……!」
更なる錬金術で砲は10年先の未来の型式に生まれ変わる。光が、放たれる。
「未来とは、我らプラグマの為にあるのだ!!」
ルベルが向け直した矢と爆撃で光を減衰させんと試みる。白銀の輝きに幾度も紅が打ち込まれ、エネルギーが圧しあい……銀が勝つ。
「ぐああああああああっ!」
ついに吹っ飛んだルベルに望月が小さく息をついた瞬間。
「逃げろ!」
頭上からティラノの叫びが届く。
ルベルの蠍の髪尾が、鞭のようにしなって望月の足首を打ち付けた。
「きゃあああっ」
地に引き倒された望月の足首は、打ち付けられた髪尾によって痛々しく血を流している。しばらくは立てまい。
「切り取れなかったか、まあいいわ……」
吹き飛ばされ、植木に叩きつけられたルベルが身を起こし、不敵に笑う。……と、傍らで声がした。
「うん、うん、ボスは美形と相場は決まっていますの。倒れてもなお美しくてよ」
満足げなのは先ほど挨拶とキックを同時にキメたカヌレだ。
「昨今は、血液に成分が似通った吸血鬼用の食糧などもありますの。しかし、なんとも味気ない。やはり、血はしぼりたてが一番。幸い、簒奪者の方なら、いくら吸ってもお上から叱られませんし。美と力を併せ持つ者であれば、その味わいは極上……」
「いつの間に……!」
ルベルの手刀をエペでいなし、カヌレの小さな唇が白い首筋に吸い付いた。
「はぁ……っ、離れなさい餓鬼が!」
「やはり生き血に限ります。ごちそうさまですわ」
姿勢を崩したルベルは、追撃の構えを取ったが、何者かが瞬時に展開した大盾によって阻まれた。
「レプリノイドがあんなに……。ハコも皆さんのサポートをさせていただきます」
ハコ・オーステナイト(箱モノリス匣・h00336)が落ち着いた佇まいで、手元にモノリスを戻す。壁のように展開されていた黒い未知の素材は、ぱたぱたと折りたたまれるようにして正方形に収まった。
赤い瞳が一度消防車を見遣り、改めてルベルに相対した。
「ハコです。よろしくお願いします」
自身は普通の人間でも、きっとこのモノリスは役に立つから。ひとりひとりは普通の人間でも、自身にできることで世界を守っていくのだ。
そして、ハコは1人ではない。
ルベルの戦意は衰えない。
「生意気なヒーロー気取りの餓鬼が! 凡人が何人集ろうと無駄よ!」
「その傲慢を打ち砕く……」
3階から、掲揚ポールのワイヤーを片手で掴んでひらりと改造人間がモノリスの横に降り立つ。
「アヴェンジ・ジャスティス、推参。やっと同じ土俵に立てたというわけだ」
ジャスティスの声は鋼より冷たく響く。
ジャスティスとルベルは相対しながらじりじりと間合いを測りあう。
「傲慢はどちらかしら、プラグマに反するできそこないの凡百改造人間が!」
「上位者を気取るお前達にはそう見えるのだろうな。だが……!」
煽りに乗ったか、ジャスティスは真っ直ぐルベルとの距離を詰める。ルベルは細い髪尾で絡めんとするが、それはジャスティスの超高速の残像。獣のように身を低めて髪尾の檻の下をかいくぐってルベルの鳩尾に右拳を入れる。
「か、は、は、ふふ」
それさえもルベルの読みの内か、1本の髪尾がジャスティスの頑健な左腕を絡め、ミシミシと音を立てて締め上げる。内部構造がショートし、火花と煙が上がった。小さな破裂音と共に手首から先が千切り取られる。
「……っ」
「腕丸ごととはいかなかったけど、プラグマの糧となる事、光栄に思いなさい」
美女の口元がにたりと笑い、無骨なジャスティスの左手をガツガツと喰らい始める。吸血された傷も塞がり、荒げていた呼吸が整う。
「回復と思しき機構を確認しました。妨害します」
咄嗟にハコはモノリスを展開し、細い細い黒い糸を作り出してルベルの手元に差し向けた。喰らいきっていない左手を包み、引っ張っての回収を試みる。
「ふ、ふふふ」
逆にルベルがモノリスの糸をくんっと引き、軽い童女の体をふわりと浮かせて己の間合いに引き込んだ。ハコの白い額に毒針のごときルベルアローが突き立てられんとした。
「『ブレイキング・ブースト』は」
がしゃんと何かが落ちた。
「破壊により更に加速する。次の破壊のために」
ジャスティスの機能不全に陥った左腕が、肩から抜け落ちた。
「どちらの破壊でも構わないんだ。自身の一部であっても」
左腕の完全な破壊を代償にヒーローは再加速する。弓持つルベルの右腕を、その手の甲を、特装圧縮銃の一撃が穿つ。
「ひいぃっ!」
流石に呻いて矢とハコを手放したルベル。
「ハコはどうなっても耐えました。けど、そう、今が好機ですね」
目の前でハコのモノリスが変化を始めるのを眺めているしかなかった。
「機構解放……。ハコのナイフは良く切れますよ。」
吸い込まれるように黒刃がルベルの脇腹に迷いなく二度突き立てられた。
「が、は……」
ルベルも流石に咄嗟の悪態が出ず、口から血反吐を零すばかり。
「ふざけるな! 貴様ら、貴様ら……爆ぜてしまえ!」
激怒したルベルの応酬として、夥しい数の蠍が放たれた。そこかしこを這いまわり、√能力者全員を爆発に巻き込もうとする。
ハコがモノリスを手に辺りを見回す。
「盾にしてもこれだけの数は防げない。撤退の経路は……」
「いーえ、当たりませんよぉ、こんなの。皆さん攻めの姿勢ですよぉ、行きましょう! 行きましょう!」
場違いに前向きで鷹揚とさえ言える十六夜の応援歌が不思議と全員の耳に届いた。
「そう、私達は負けません。あなたなんて、怖く……ない!」
望月が立ち上がる。十六夜の少女人形の衛生兵の助けを借り、一歩進む。その足元の蠍は望月を爆殺せんとしているはずが一向に当たらない。
他の者もそうだ。十六夜の洗脳術の応用によって、か細い回避の可能性を絶対回避へとアップデートされている。全てを助け、全てを生かす。それが十六夜の洗脳である。
スクラムを組んだ少女人形たちの手の上に、頷いて望月が乗る。足が効かない望月を、傭兵少女分隊が高く跳ね上げてルベルへと送り届ける。
「馬鹿な!?」
「これが私の全てを懸けた最後の一撃です!」
飛来しながらふりかざす、握りこまれた少女の拳。対するは、風穴の開いた血塗れの右手でつがえたルベルアロー。
「いっけー。ハイパー惺奈ちゃんパンチ!」
十六夜の声と共に、望月の右拳がルベル弓を霧のようにかき消し、そのまま顎にクリーンヒットさせた。
「ちょっ、ちょっと月魅さん!? その技名で呼ばないで下さいって私何度も言いましたよね!?」
攻撃が叶いぺたんと座り込んだ望月が顔を真っ赤にして叫んだ。
「数にあかせて卑劣な仕打ちを……!」
「いや、人を音で操って数で襲うなんて、君が始めたんだからね? 本当無法にも程があるよ」
日頃の公僕の調子のまま、前髪の下で目を細めた写がぼやいた。蠍を避ける為に宙に浮かべた無数のテレビをコツコツと渡って血塗れのルベルに迫る。
彼に片手を引かれて共にテレビの上を渡るのは濃桃色の似合うミュジー・ライラ(D.E.P.A.S.デパスのゴーストトーカー・h00558)。写に寄り添って頷いた。
「あなたが悪い子ね、反省しなさい!」
「うん、僕に考えがある――合わせてくれるかい」
「もちろんよ」
二人は同時にふわりとテレビから降り、地上に着くまでのわずかな間に√能力を発動する。
「僕の影もおいで!」
「一緒に遊びましょう」
地に立つのは4人。写の傍らに黒々とした影。ミュジーの隣には耳を揺らしたモーニンラビット。
「近寄るなゲス共!」
吠えるルベルが四方八方に矢を放つ。柔和なミュジーを狙った一撃は写の呼び出したテレビに突き立てられた。だが高い攻撃力を誇る矢は貫通し、ミュジーの手元に一閃の傷をつける。
「ミュジーさん……っ。イド=シャドウ、元通りに」
写の指示を受けてそっくりな形の影がミュジーの傷に手を翳し、カットバックで傷を受ける前の状態へ復元した。
「ありがとう……。モーニンラビット、写くんを助けて!」
続く二の矢を上手く鍔で受けて払いのけた写がルベルを霊剣・一文字で袈裟斬りにする。ルベルが左腕の爪で抵抗すれば、モーニンラビットがラビットファイアーで炙る。薔薇の香気が焦げ付く匂いがした。
「私も、一緒に……!」
身に着けたマイクとスピーカーを通して、ミュジーのどこか甘い響きを秘めた童謡が魔法の力を帯びてルベルを責める。
「なんだこれは、聞きたくない、ひ、ひぃぃ……!!」
怪人は頭を抱えてもんどりうち、とうとう這うようにして逃げ出す。周囲へ掴まれるものを探して這わされた髪尾を、写が一息で断った。
がくがくと肢体を振るわせて、這いつくばったルベルがどうにか立ち上がろうとする。
「私の計画が……、これでは何の実績も……」
ルベルの目元を覆うバイザー越しに見えたのは、赤。消火器を重たげに下げたベルナデッタが人形の微笑みで立っている。
「貴方がいちばん悪い子ね? 赤色がお望み? ごあいにく様、みんな無力化してしまったの」
「何を……」
ベルナデッタが消防署内で出会った“友達”全て、有事の際は力強こうと、でもそんな日が来ないことを願っていた優しい子だった。
消火器、警報装置、そして消防車。ベルナデッタが語り掛けたそれぞれが、ルベルを倒してと願っていた。
「連れて来たの。優しい子達ばかりだったわ。薔薇に似合う音、貴方からなら出るんじゃないかしら。ちょっと鳴らしてみない? ねえ、みんな?」
うっそりと微笑むベルナデッタを、空からの声が肯定する。
「私もご一緒して構わないかしら?」
それは、西織であり西織でない。セイレーンを身に宿し、揺れる髪に羽毛を混じらせ、霊気を纏って宙を泳ぐレゾナンスディーヴァ。
「ええ、この子達も喜ぶもの」
ベルナデッタの応えを聞いて、セイレーンの中性的な小さな唇が開く。
発せられるのは遠くまで響き渡る甲高い歓喜の声。張り上げているのに透き通り、どこまでも伸びやかに、東洋音階のように柔らかく流れ、西洋音階のように調和したメロディラインが滔々と転調し変化しながら場を包む。
しかし、この歌は、懐かしささえあるこれは……。
「あら」
ミュジーが目を見開いた。セイレーンとぱちりと目が合い、意味を解するとはにかみながらよく知った童謡に加わる。
「あらあらぁ、よい子の皆も歌いましょうねぇ?」
「月魅さんが言うとちょっと怪しいけど、普通に歌おうね!?」
望月と十六夜も同じリズムで揺れる。
「ぎゃああああああ!」
皆にとっては心地よく胸を突き動かす響きが、ルベルにとっては地獄の蓋が開く地鳴りに聞こえる。
共振がルベルの外骨格を揺るがし立つ事すらままならない。やっと形成したルベルアローを天に向けるも、そもそも純然たる音の波動を受け続けて焦点すら定まらない。
ベルナデッタには、消防署に取り残されたモノ達がささやかな声でセイレーンの歌に加わるのが聞こえた。
「そう……そうね。この悪意の火から消してやろう。Mémoire d'Étreinte……」
悲しみの記憶を手繰り、束ね、ベルナデッタが創り出すのは黒の矢だ。
天の歌に風を切る音を重ねて矢を放つ。
「うお゛ぉぉぉぉぉっっ! 黙れ、黙れこの音を止めろぉぉぉぉぉぉ!!」
恥も外聞もなく身じろいで逃れようとしたルベルの胸に矢が吸い込まれる! ギリギリと意思の力が拮抗したのち、怪人は深紅を辺りに散らし、ぼろぼろと崩れるように消失した。
「無粋な響きね」
セイレーンはくすりと笑って、魔性のアリアを歌い続けた。風に乗って、避難した人々の元にも勝利の歌が届く事だろう。
「――そうして、また公僕は務めを果たす日々に戻りました、っと」
写はコートのポケットに両手を突っ込んで、署長室をぶちぬかれた消防署を見上げた。
ミュジーは静かに傍らに寄り添う。
「じゃ、行こうか。ラーメン屋」
「……ええ!」
安全な道、温かな食事、他愛無い会話、小さな約束。何の変哲もない一日が、今日も始まる。
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