【1:1】邂逅、悪戯妖精の場合【RP】
昼下がり、頼まれた荷物を届け終えた後。水路にかかる水道橋。
石造りのアーチの下を通ろうと、船を進め舳先に影が差した時。
おうい、と声をかけられ、櫂を操り船を緩々と止める。
河岸側へ目をやるもそれらしき人は見当たらない。
まさか橋か、と思い見上げるが、こちらを見てる人物はいなかった。
自分を呼んだわけではなかったのか、或いはまた悪戯好きな妖の仕業か。
後者ならばどうしてくれよう、と考えながら様子を見ていると。
おうい、とまた声がかかる。それは一回目よりもはっきりと。
その方向、橋脚の根本。水流を分けて在る小さな石の島に男はいた。
いつからいたのか、影の落ちた橋の下にいたから見逃してたのか。
ひょろりと背の高いその男が自分のことを呼ぶ。
目が合えば、にぃ、と。あやしく笑うのだった。
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●ダゴール・トムテとの入団時RP。
・きりの良いところまで。
・切り上げたい場合は放置でもOK。
・ひと月程度動きがなかったら〆。

(手招きをする彼のもとへ渡し舟をつける)
えっと。私を呼んでたのはあんたかい、お兄さん。
何処か行きたいところがあるなら乗せていくよ。
ふむ……この辺りじゃ見かけない人だ。あんたが良けりゃ、名前を聞いても?
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やあやあ。然り。
濡れるのが嫌なもんで、どうしたもんかと困ってたんだ。よっと、失礼するぜ。
(返事も待たず、足を伸ばして乗り込んでくる。大きなひと跨ぎは、両の足を浮かせることなく一歩で舟へ収まった)
オレはトムテのダゴール。灰生まれの幸運の妖精さ。
ここらへはちょいと、物見遊山にね。なかなかどうして、落ち着いたいいとこなもんだからすっかり気に入っちまったよ。(どかっと腰を下ろすと波紋がたって、すぐに押し流されていった)
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どうぞ。(すでに乗り込んだあとの返事にも特に気にしてる様子はない。元より礼儀に関して人のことを言える性格でもないのだが)
ダゴール、だな。……幸運の妖精? そりゃ良い、あんたと出会った私は今日ついてるってことわけだ。
私は夜白千草、御覧の通り渡し守さ。よろしくな、お客人。
なるほど、観光か。気に入ってくれたのなら住人として嬉しいよ。
この街は景色が話題にあがりがちだけど、温泉や銭湯も多くてな。私としてはそっちもお勧めだね。
(ちゃんと腰を下ろしたことを確認して、櫂を操り離れようとして)
おっと、まだ行き先を聞いてなかったな。今日の宿か、それとも続けて観光か?
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ああ、あれだろう?(節榑の指で近くの空を指す。牧歌的な煙突が、もくもくと煙を吐き出していた) 暖炉にしてはやけにでかいなと思ってたんだ。公衆浴場とは恐れ入る。そのうち行ってみるつもりさ。
行き先?……行き先か。ふむ。(呼びつけておいて、舟の客は難しそうに悩み始める。とん、とん、とん。脳天を指先で三拍叩くだけの間があって、やおら口を開いた) この水路を下っていくと、街の端には何がある?
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ここを下った先?(珍しい聞き方と今考えてるという仕草に、小さく笑みをこぼす)
はは、今決めようとしてるのか? あんたも変わった客だな。ここの水路を進んで街の端っていうと……確か旧市街だな。
主要な港や施設が増えてきて、少し人の出入りは少なくなったが。その分、昔から続く味の確かな食堂や酒屋がある。
(ゆっくりとした口調で思い出すように説明を終えると、付け加えるように、ああそうだ、と)
旧市街っつっても治安が悪いとかはないからその点は大丈夫だ。まあ何となく、荒事に関しての心配は必要なさそうに見えるが。
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おいおい、どこを見てそう思うんだ?たしかにタッパはあるかもしれんが、こちとらか弱い儚い妖精さんだぜ。(ひらひらと振る手はなるほど枯れ枝のよう。しかしその向こうで貴方を観察する切れ長の三白眼は、有刺植物のような危うさを醸している)
腕っぷしでいうと、お嬢ちゃんは強そうだな。用心棒でも頼もうか。ああいや、治安は悪いくないんだっけ。であれば、とりあえずその辺りまでお願いするよ。
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(言動とは裏腹な、こちらに向けられた鋭い視線を受け止めると)
なに言ってる、か弱い儚い妖精さんがそんな眼で人を見るかってんだ。
頼まれりゃあ用心棒の仕事もするが、何かあってもあんたは飄々と切り抜けてそうだがね。
あいよ、承った。(水路へ方向を舳先を向け、櫂を操り水音を立てて進み始める)
物見遊山と聞いたが、ダゴールはしばらくこの街にいるのか?
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ちぇえ。どうしてオレの言葉は誰にも信用されないのかね。買いかぶられる分にはいいけどさ。(脚の上に頬杖をつき、文字通り斜に構えて見上げる妖精。舟が再び川に漕ぎ出せば、波の立つ水面に流し目を落とす)
オレはどこにでもいるようなもんなんだ。呼べばいつでも現れるが、当分はその辺りで夜露を凌ぎながらぶらぶらしているよ。そうだなあ……久々に釣り糸でも垂らしながら、行き交うやつらを眺めていれば時間も過ぎるだろう。
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(頬杖をついて不満そうにこちらを見上げる姿に苦笑い)
悪い悪い、別にダゴールの言葉を信じてないわけじゃなかったんだが。
どこにでもいて……妖精ってのはそういうもんなのか。あんたの方がボディガードに向いてそうじゃないか? つーか野宿でもするつもりか。風邪ひかなきゃいいが。
(案じているような声。視線は正面、櫂を動かすたびに水の跳ねる音がする)
釣りか、良いじゃないか。のんびりできるし魚も食べられる。
アタリが来なくても水面と向き合う時間は良いもんだけど、ダゴールの場合は行き交う奴らってことか。
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オレは屋根の下で生まれたが、大概の妖精ってのは森や沼に住むもんだ。だから水の流れが多い場所は心地がいい。ここは海に近いくせに、水が綺麗だな。(流れの中に指を一本差し入れた。小さな波が、舟の起こす波に紛れていく)
お嬢ちゃんはここの生まれか?何を気に入って、今この街で暮らすんだい。
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確かに妖精っていうとそういうイメージかも。なるほど、それなら宿より居心地が良いかもしれん。
(街を褒めてくれた言葉に、嬉しそうに笑う)ははっ、透き通ってるよな。ここら一帯の海も不思議と綺麗なもんだが水路は特にそうなんだ。人間と妖怪の技術を使った先人たちの知恵のおかげ、らしい。
生憎、生まれのことはさっぱり覚えてなくて少なくとも出身ではないみたいだ。(気にしてなさそうな、さっぱりとした口調)
幸いと言って良いのか分からねえが、水都じゃ立場のある家に引き取られてな。最初この街を訪れたのも家の都合だった。それが過ごしてる内にこの街と、街の人々や妖たちを気に入っちまってな。そういう理由で今この街で暮らしてる。
それに観光客や、こうしてふらっと立ち寄ってくれる人たちとの出会いも今となっては楽しみの一つだよ。
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成程。そりゃ大した仕掛けだ。どんなもんか、そのうち上流の方にも出向いてみるかね。(水面で水を掬って遊んでいたが、貴方の境遇を聞くと顔を上げる)
ほう?養子とはいえ、本物のお嬢様だったか。こいつは失礼した。しかしだったらそんなふうに必死に櫂を動かさなくても、おうちの金で不自由なくやっていけるんじゃないのかい。(船べりに肘をつきながら、妖精はニヤニヤ笑っていた。意地悪な言い方だと承知しているのだろう)
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勘弁してくれ、お嬢様なんて柄じゃないにも程がある。
(にやにや笑う意地悪妖精の言葉にフン、と大げさに鼻を鳴らす)
金は自由に使えたとしても、それじゃ生き方が不自由になっちまう。家の付き合いだの何だのと、お堅い連中と毎日顔を合わせるなんて私は御免だね。ただでさえ人を色眼鏡で見ようとする奴らがお偉方には多いってのに。それなら必死に櫂を動かして、自分で日銭を稼いだ方がずっと良いさ。
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kec-kec-kec!!(突然、妖精の喉から板を叩くような奇妙な音が発せられる。笑ったらしい) いやあ、まさしく。違いない。不自由ない暮らしより、自由な暮らしが一番。|知足者富《タルヲシルモノハトム》とは、よく言ったもんだ。(愉快そうに膝を叩く。しかし、と続く言葉に前置きをして) すまん。この√の通貨の通貨を持ってなかったことを、たった今思い出した。舟賃が払えねえ。(ポケットをひっくり返してみても、糸くずが落ちるばかり)
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え?(一瞬、聞き間違いでもしたのかと目を丸くしたまま表情を硬直させる)……はあー!? む、無賃乗船!? つーか冷静すぎるだろもう少し慌てるとかしろよ堂々と言うな!(驚きから叫ぶような声、そして捲し立てるような文句の羅列)
こういう場合すぐ近場で降りてもらうんだけど……もうそろそろ目的地なんだよなあ。ったく、幸運の妖精なんじゃないのかよ。(溜息を一つ溢すといつも通りの笑みを浮かべる)ただ働きはしないぜ。ツケだからな、これは。
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へへ、悪い悪い。うっかりしてたんだ。(不満文句もへらへらと躱すばかり。むしろ楽しそうにさえ見える。振り向けばなるほど、行く先に古そうな町並みが近づいてきた) 身ぐるみ剥いでも回収しとかなくていいのかい?オレみたいな怪しいやつ、ツケなんて覚えておくかどうかわかったもんじゃないぜ。
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やれやれ、調子の良い……(妖精の言葉に少し考えを巡らせたが、すぐに視線を戻す)……んなことする必要ねえよ。目的地に着くまで黙ってりゃ良いものを、あんたはそうしなかった。それに、怪しい奴は自分からそんなふうに言い出さない。
(そこまで言い終えた辺りで波止場が見えた。元々緩やかな速さの渡し舟を横に着けるため更に緩める)(或いは、次の言葉まで言い切りたかったからか)その素直さを信じることにしよう。そうだな、こいつは信じさせてほしいっていう、ささやかなお願いさ。
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kec-kec-kec…気風の良いお嬢ちゃんだな。(舟が桟橋の横に泊まると、すっと立ち上がり長い脚を伸ばして降りた。舟が軽く揺れる)(桟橋の上から見下ろす妖精は、ローブの下から何かを弾いて貴方へ寄越した。それはどこの国のものとも知れない、古くも輝かしい金貨だ) 幸運の妖精の評判を落としたくないもんでね。それは舟賃の代わり……いや、カタってことにしとこうか。その方が、次に繋がる。
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っと。(弾かれたソレを咄嗟に掴む。掌を開いて見ると年代を感じさせながらも輝きを失っていない金貨)おい良いのかよ。こんな……(国は分からないが、どこか懐かしさを思わせるアンティークさに貴重な物のような気がして。咄嗟に返そうとするも)……はは、なるほど。そいつは良い。そういうことなら確かに預かっておく。次に繋がるその日までな。(金貨をしっかりと仕舞うと桟橋を足で押す。反動でゆっくりと船が離れ始めた)(進む方向を確かめると再びダゴールの方を見やる)また会おうぜ、妖精さん。あんたにも幸運がありますように。
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(舟が波止場から離れていくと、長く見送ることもせず妖精は背中を向けた。呼びかける声に対し、ひらひらと手を振って歩いていく)(もし貴方が振り返るのなら、その姿はもうどこにも見当たらないだろう) .
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(手を振って歩いていく背を見て、次に振り返った時もう姿は見えないだろうと思った。その予想は当たっていたけれど、風変りな妖精との不思議な出会いに感謝をこめて彼が去った方を見つめる。少しの間そうしたら、笑みを浮かべ、櫂を動かし始めるのだった)
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