❖ひとひらの導き❖
この店では、時々思いがけないものと出会うことがある。探していたものとは違う一冊が目についたり、
ふとした言葉が記憶の奥底を呼び起こしたり。
何を探しているのか、まだはっきりしないなら、
賽を振ってみるのもひとつの手。
きっとあなたに相応しい物語が示される。
それが過去の記憶か、これから訪れる出来事かは、まだ分からない。
もし、何かを思い出したなら――ただ、それを語ってみればいい。
物語は、語られることで形を成すものだから。
【遊び方】
ダイスが示す出目が、その日のお客様に“ひとつの物語”を求めます。
それは、過去の記憶かもしれないし、未来に待つ出来事かもしれない。
あるいは、まだ形のない幻かもしれません――。
1.1d100を振る
2.出た数字に応じた「物語の種」が示される
3.それをもとに、客人はひとつの物語を思い出し、語る
●語られた物語は、店の中に眠る何かを引き寄せる
・それは、棚の奥に隠れていた一冊かもしれない。
・ずっと持ち主を待っていた小さな品かもしれない。
・あるいは、何も起こらないかもしれない。
引き寄せたものは、あなたのものです。
――試してみるかどうかは、お客様次第。
※どなたでもお気軽に。3月24日までの間。
【物語の種】
1~10|目にしたことがある光景
「あなたが記憶の中で強く焼き付いている景色は?」
風景、街並み、誰かの背中――ふとしたときに思い出すものはありますか?
▶ 特典:どこかの風景が描かれた古いポストカード。
11~20|選ばなかったもの
「過去に、選ぶことなく流れたものは?」
やらなかったこと、言わなかったこと、通らなかった道。
それを振り返ることは、未来の選択を考えることになるかもしれません。
▶ 特典:どこかの地図の一部。
21~30|大切にしているもの
「あなたが今、手放せないものは?」
物でも、言葉でも、考え方でも。
それが何かを教えてくれませんか?
▶ 特典:古びた鍵。
31~40|昔聞いた話
「誰かがあなたに語った話で、今も覚えているものは?」
昔の人の言葉、友人の冗談、通りすがりの誰かの一言――
記憶に残っているということは、きっと何か意味があるのでしょう。
▶ 特典:少し欠けた指輪。
41~50|ある日常のひとこま
「最近あった、何でもないけれど心に残った出来事は?」
ただの朝の風景、すれ違った誰かの言葉、ふと気づいたこと。
大きな出来事でなくても、それはひとつの物語です。
▶ 特典:青いインクの小瓶。
51~60|手に入れたもの
「最近、あなたが新しく得たものは?」
知識、感情、習慣――それはいつ、どんな風にあなたの手に入ったのでしょう?
▶ 特典:綴じ紐で閉じられた、小さな包み。
61~70|忘れかけていたこと
「最近、ふと思い出したことは?」
人間は、意識して思い出そうとしなくても、ある日突然記憶を掘り起こすことがあります。
それは何かを教えようとしているのかもしれません。
▶ 特典:表紙が剥がれかけた小さな手帳。
71~80|ちょっとした後悔
「ほんの少し、やっておけばよかったと思うことは?」
過去に戻ることはできませんが、未来に向かってやり直すことはできるかもしれません。
▶ 特典:鍵のかかった小さな箱。
81~90|印象に残る出会い
「今までで、一番印象に残っている人は?」
親しい人でも、一度きりの出会いでも、関係の深さは問いません。
心に残ったということは、それだけ意味があったのかもしれませんね。
▶ 特典:誰かの名前が刻まれた古いコイン。
91~100|夢の話
「あなたが最近見た夢、または印象に残っている夢は?」
それがどんな夢だったのか、あなたは覚えていますか?
▶ 特典:何かの紋様が描かれたガラス玉。

遠い、遠い昔に。お客様が話していた物語の続きを、聞き損ねてしまいました。
『この先は、また今度にしましょう』って手帳を閉じられて、それっきりです。
今度、なんて言っていたのに、もうどれくらい経ったでしょうか。
続きを聞く機会はあったはずなんですけど。
あの時、引き留めていたら、話してくれたんでしょうか。
でも、まあ……仕方ないですね。続きを聞けることもあれば、聞けないこともありますから。
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(気が付けば、鍵のかかった小さな箱が手元にあって)わたしは対価、要らないんですけどね……。(ぽつりと呟いて、指先で箱の表面をなぞる。手触りはひんやりとしていて、けれど、どこか柔らかさを感じさせる。不思議な感覚だった。カチリ、と蓋を押してみるが、開く気配はない。)開けろってことではないんでしょうね。(そういうものは、時が来れば勝手に開くものだ。箱をそっとカウンターの端に置いた)
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(――カラン、と入口が音を立てて。1人の少年が入ってくる)……あ、こんにちは。素敵な雰囲気に惹かれて来てしまいました。えっと……(本以外の、たくさんの並んだアンティークに視線を投げてて)本屋さん、ですか?(違ったら謝ろうと、首を傾げる)
折角なので、僕も。不思議な出会い、ドキドキしますね。
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僕が大切にしているもの……(思考に過ぎったのは友人たち、手元や部屋の宝物、他にもたくさん。けど)……場所、でしょうか。大鍋堂って言う、僕が代理店長をしている店なんですが。最初は僕自身が、「こんな場所は馴染めないな」って思ってたんです。けど、今は……一番居心地のいい場所です。賑やかで温かく、楽しい(自分でそう言い切ると、うんうんと満足げに頷く)
……えっ、あれ!?(ふと手に握りしめていた、古びた鍵に目を見開く)これはまた、年季を感じる鍵ですね。不思議です、何の鍵でしょうか。……あれ?(ふと千世さんの手元の箱見て、「そちらの箱の鍵なのでは?」と鍵を差し出してみる)
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いらっしゃいませ。……古いものや、不思議なもの、誰かが手放したもの、誰かを待っているもの―― いろいろ、ですね。わたしも、実は何屋さんか分かりません。
(挨拶を交わした後、紡がれる話に静かに耳を傾けてから)貴重な物語を、ありがとうございます。人も場所も、出会った瞬間にすべてが決まるわけじゃないですから。時間をかけて馴染んでいくこともあるんでしょうね。……人はその気になればどこにでも行けるけれど、ずっといられる場所って、そう多くはないですから。大切にしてください。
(差し出された鍵を受け取りながら、一瞬考える素振りを見せて。カウンターの端に置いたままだった箱へと視線を移し、交互に見比べる。この箱は、時が来れば勝手に開くものと思っていたが、どうやら時とは、自分ではなく、誰かが運んでくるものらしい。指先で鍵を転がし、ひとつ小さく笑む)
……じゃあ、せっかくですし、開けてみましょうか。
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(箱の鍵穴にそっと鍵を差し込む。カチリと滑らかな音が響き、静かに蓋を押し上げると、中には、二客の真白いティーカップとソーサーが収められていた。ティーカップは、静かな白磁。縁に沿って、ごく細い銀の線が揺らぎ、見る角度によって彩度がやや異なる淡い青みを帯びた光を返していた。ソーサーは、外縁に微かな草花の浮き彫りの模様が施されている。舞い散る花弁のような、風に揺れる葉のような――名を定めるには儚いが、指先でなぞれば、確かにそこにあるとわかる)
……これは。これは、お客様のものです。開くかもしれないと、鍵穴まで鍵を運んできたのは、お客様ですからね。……あと、本日最初のお客様でもあるので。あっ、他のお客様にはどうか内密に。(静かに鍵と、茶器が収められた箱を、そのまま差し出した)
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古いもの、不思議なもの…(彼女の言葉に、パチリと目を瞬かせ。改めて周囲へと視線を向ける)僕そういうの大好きです。なるほど、だから惹かれて来たのかもしれませんね。…それから、優しい言葉をありがとうございます。どこへでも行けるけど、ずっといられる場所、ですか。すごく素敵な表現です。僕にとってそうであるように、誰かにとっても、そうである場所になれば良いな。…僕がそういう場所に、して行きたいですね。
(彼女がカウンターの箱へ視線を向ける。それを見て、そそそ、と静かに近づいていく。邪魔にならないように、でも気になって。その目線はただジッと、箱の鍵穴へと注がれている)(鍵が回り、蓋が開く。少年は感動の声を押し殺し、小さく指先で拍手を送った)
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すごい…開きましたね!上品で華奢な、素敵なティーカップです。本当になんでもあるんですね。…えっ、?(差し出された箱を見て、彼女の顔を見る)(同じ行程を二度三度と繰り返し)えっ…えっ!?そんな、こんな素敵な物を…?(断るべきか、でも失礼か。困惑しつつも、その手はそっと箱を受け取る)わ、分かりました。折角のご厚意です。遠慮せず頂戴いたしますね。…ふふ、お茶を飲む時間が、一段と特別になりそうです(微笑み…はしないが、それでもゆるりと瞼を下げて。手の平の幸福を確かめるように、箱を握る手に力を込めた)
お姉さん、今日は素敵な出会いをありがとうございます。あの、また来ても――(「良いですか」と聞こうとして。ふと、自分で違うなと気が付いた)…また来ます!その時は是非、お姉さんのお話も聞かせて下さいね。(そう言って親しげに手を振ると、ドアの向こうへと姿を消した)
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話だけでも、大切にしているのは伝わってきましたから。きっと、これからもっと素敵な場所にしていけると思いますよ。(何度もこちらを伺うような仕草に、微笑みが浮かんで)
わたしが持っていても、きっと持て余してしまうので。せっかく、いい主に巡り合えたみたいですし。どうぞ、大事にしてあげてください。よいお茶の時間になりますように。
(扉の外へと向かう少年を見送りながら、どこか穏やかに言葉を続ける)
はい。またぜひ、いらしてください。その時は、また探し物でも、居場所の話でも、そのティーカップに淹れたお茶の感想でも――何でも構いません。
夢架堂は、いつでもお客様をお待ちしています。……わたしの話でよければ、喜んで。
(手を振り返せば、静かに扉が閉じる)
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