坂堂古書店

【Hello Mr. Stilton!】サンプル

坂堂・一 2月4日17時

 寝る前に少量齧れば不思議な夢を見ると噂のチーズ。
 今宵、貴方が見るのはどんな夢——?



 大好きなチーズを食べてすやすや幸せに眠ったはずが、気付けば辺りはどこかの庭園で。
 坂堂・一は固まったまま声を漏らしました。
「……え? あ、あれ?」
『ぷきゃーっ!!』
「あ、ぷいぷい。良かった、きみも一緒なんだ、ね」
 首元にしがみついてくる相棒の存在に、心細さも和らいで。
 けれど、どうしてこんな所にいるんだろう?
 こてりと傾けた視界の端に、お化けカボチャのランタンが見えました。
「……あ、そうか。ぼく、Mr.スティルトンに頼まれたん、だった」
『ぷい? ……ぷきゅ』
 そうかな? そうかも。
 相槌を打つぷいぷいを撫でながら、一はランタンを手に立ち上がり。
「もうすぐ子供たちが来る頃、かな。今日はぼくたちが、案内人ジャックの役目、しっかりやり遂げなきゃ、ね」
『ぷーい♪』
 その会話と同時に、二人の衣装も変わっていきます。
 一は頭にチンチラ耳のついた、不思議の国の眠りネズミの姿に。
 ぷいぷいは青いエプロンドレスのアリス姿に!

「さあ、墓場のパーティー会場まで、皆を案内する、よ!」
『ぷいっきゅ!』
 ジャック・オー・ランタンを掲げたら、臨時案内人のお仕事開始です!


 仮装姿で集まった子供たちを連れ、一は庭園を進んでいきました。
 ぐるぐる迷いの魔法がかかった生け垣を超え、甘い香りの飴薔薇の花園も……食いしん坊アリスが釣られたせいで、ちょっとだけ寄り道したけれど。

「この川を渡ったら、パーティー会場はすぐそこ、だよ」
 一たちは川に架かる橋の真ん中に立つと、橋をランタンで照らしてあげました。
 一人、二人。
 子供たちは歓声を上げて橋を渡っていきます。
 三人、四人……続々と。
 誰かが転ぶこともなく、子供たち全員が無事辿り着けました。
 橋の向こうには沢山のお菓子といたずらパラダイスが待っています。
 なんと美味しいチーズのお菓子もあるのだとか。
「よし、ぼくらも渡っ……!?」
 まだ見ぬお菓子に思いを馳せていると……あらあら、突然橋が崩れていきます!
「ぷ、ぷいぷい! 皆を会場に!」
『ぷいー?!』
 その言葉を最後に一は川へ落ちて——。



「わあ!?」
 目を開けると、見慣れた和室の天井が見えました。
 隣では眠りながらシャカシャカ足を動かす相棒が居ます。
「……ふふ、案内頑張って、ね」

 ——今宵の不思議な夢は、これでお終い。


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こちらはハロウィンノベルの頃にプロットを作成していたので、『企画+ハロウィン2025』な内容になっております。
そのため文体も内容に合わせ、やわらかくしてあります。
皆様のご参考になれば幸いです。