シナリオ

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亡国の|夢物語《シャングリラ》

#√ドラゴンファンタジー #プレイング受付:04/24/08:31から開始 #プレイング締切:04/27/12:00予定

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 #√ドラゴンファンタジー
 #プレイング受付:04/24/08:31から開始
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●むかしばなし
 かつて『セレンディア』という、月神を信仰する小さな国がありました。
 巫女が月神に祈りを捧げると、月神はその祈りに応え、豊穣の恵みを民に与えたのです。
 民の生活は笑顔に溢れていました。
 街の水路には花で飾った船が行き交い、奏でられる音楽が街に活気を与えました。
 しかし、空の彼方で起きた戦争によって、国は危機に立たされます。
 失楽園戦争です。島へと降り注いだ天上界の遺産が、島を汚染したのです。
 遺産の力は身分に関係なく、島の人々を次々に異形の姿へと変えました。
 地に旱魃をもたらす異形の群。
 彼らは水をすべて汚染し、或いは枯らし、人々から奪い去りました。
 巫女だけが、異形とならずに生き残りました。穢れた海に浮かぶ儀式場に立ち、彼女は月に願いを捧げます。
『月神様。どうか、私の命と引き換えに、この国を救ってください。再び繁栄をもたらしてください』
 月は……既に遺産によって汚染されていた月は、彼女の願いを、|できる範囲《・・・・・》で叶えました――。

●繰り返す終わり
 |喪われた国《セレンディア》は二度と蘇らない。
「巫女の願いは歪んだ形で叶えられました。遺産の力によってセレンディアはダンジョン化し、滅亡前夜と滅亡の日を繰り返しています。しかし、それは現実ではありません。|大量のインビジブル《死んだ人々の魂》から創り出された記憶集合体。つまり『夢』のようなものです」
 過去の夢は仮初の世界で偽りの繁栄に酔いしれ、最期は滅亡を迎える。それをダンジョン内で何度も繰り返しているというのだ。|泉下・洸《せんか・ひろ》(片道切符・h01617)はEDEN達に今回の依頼について語る。
「皆様にはダンジョンを破壊し、夢の|再生《リピート》を止めていただきたいのです。今はダンジョン内だけの現象で済んでいますが、放置すれば外の世界に影響を及ぼすでしょう」
 月神として民に崇められていたのは『白月の幻主』だ。幻想的な月の幻影――討伐目標であり『夢』を創造した張本人。天上界の遺産に汚染された永久機関とも言える。
「幻主は本来願いを叶えたら消える性質を持っています。ですが、遺産の影響でしょうか。消えずに残っているようですね」
 汚染以前にも消えずに残っていた理由は、恐らく実際には民の願いを叶えていなかったのだろう。気候や土壌に恵まれていたゆえ、豊穣の祈りに応える必要がなかった。幻主と直接会えるのは巫女だけであり、些細な願いを叶える機会もなかったのだろう。
「……まぁ、これはあくまで私の憶測ですが。真実がどうあれやるべきことは決まっています」
 ダンジョンに向かい、白月の幻主を撃破する。
 そうすればダンジョンは崩壊し、脅威も取り除けるというわけだ。
 ただ、白月の幻主と出会うためには条件があるらしい。
「条件とは、定型化した幻主の夢に『揺らぎ』を与えることです」
 ではどうやって揺らぎを与えるのか。洸は説明を続ける。
「皆様は幻主が生み出した夢の世界に入ることができます。まるで現実であるかのように、セレンディアの祝祭に参加できるのです。まずはお祭りを楽しんでください。これが一つ目の揺らぎを与える方法です」
 夜を徹して行われる祝祭だ。日付が変わる午前0時頃、演劇の次章に切り替わるかのごとく滅亡の時が訪れる。
「二つ目の揺らぎは、滅亡の時に与えることができます。午前0時を過ぎた後、セレンディアの民衆たちが、次々と異形……旱の眷属に変異します。彼らをすべて倒してください」
 異形に変わる時間は個人差がある。中にはまだ異形になっておらず、逃げ惑う人々もいるかもしれない。彼らを守ることも揺らぎに繋がるが、守っている途中で異形化する恐れもある。そうなった場合は、殺さねばならない。
「祝祭と滅亡の時……二つの局面において干渉し、揺らぎを与え続ければ、異常を修正するために幻主が現れるでしょう。そこで幻主を倒せば任務完了です」
 白月の幻主には善悪の判断もなく、言葉も発せず、感情もない。遺産と同化し汚染されている現在は、歪んだ願いを叶え続ける自動機構と成り果てている。幻主を倒せば遺産は破壊され、ダンジョンも消失する。
「セレンディアの住民はインビジブル……つまり彼らの魂ですが、幻主によって記憶を抽出された時点で自由意志を喪失しています。幻主が構築したプログラムで動くAIとでも思っていただければ」
 洸は暗に、異形と化した人々を殺すことを躊躇うなと言っていた。
 彼らを斃すことは、幻主に拘束された魂の解放にも繋がるのだ。

●都市国家『セレンディア』
 ダンジョンの入口を抜けるとそこは別の世界だった。
 海に囲まれた島だ。時刻はちょうど日が沈んだ頃で、ライトアップされた石造りの建築が色鮮やかに立ち並ぶ。港町を彩るブーゲンビリアやハイビスカスも、人々の目を楽しませた。
 街を通る水路は魔法の光で彩られ、星の海のように煌めいていた。花々で飾った小舟に乗れば、水路から街を巡ることができる。
 祝祭最終日。人々は最大の盛り上がりを見せる。街の通りを彩るのは祝祭のパレードだ。民族衣装に身を包んだ人々が、竪琴やフルートの音色に誘われて踊り歩いている。
 潮が満ちた海辺に打ち寄せる波を表現したダンス。衣装には光沢のある布地が使われ、ビーズ刺繍で飾られた繊細な模様が、月と海の景色を表現していた。
 街には出店が並び、暖流と寒流がぶつかる領海で獲れた新鮮な魚料理を味わえる。とくに民衆に人気なのは、小麦粉ベースの生地に様々な海産物を閉じ込んだ丸い焼き物だ。現代の料理で言うならタコ焼きに近い。中身にタコ以外も入れたイメージだ。
 土産品もよく売られている。|海月《つきくらげ》を筆頭に、海の生物をモチーフにした雑貨がとくに有名だ。セレンディアは元々他国とも交流があった。通貨については両替できるので心配しなくていい。
 しかし、これだけは忘れないでほしい。
 この世界の出来事は、すべて『夢』だ。白月の幻主を倒せば幻のように消える。
 街は活気に満ち溢れている。巫女の姿はないが、民衆は誰一人気にしていなかった。彼女の存在は幻主によって削除されたのだろう。
 当然だ。彼女の命と引き換えに、この夢を創り上げたのだから。
 月がよく見える浅瀬に造られた無人の儀式場だけが、彼女の存在の痕跡を残す――。
これまでのお話

第3章 ボス戦 『白月の幻主』



 祝祭の時が過ぎ、滅亡の時が過ぎた。人々の幸せは去り、災厄は破壊された。
 外部からの来訪者――EDENという揺らぎが、永久機関システムに異常を発生させる。
 定型化されていない|過程《プロセス》。許可していない|結果《リザルト》。
 正さなければ、異常を修正しなければ――。
 灼熱の天空が罅割れて、その傷口から闇が急速に広がった。
 世界を覆う漆黒の闇に白光が輝いた。身を灼くような太陽の光ではない。
 闇を照らす、冷たい月光――『白月の幻主』が纏う、神秘の煌めきである。
 
 幻主は暗天から静かにEDEN達を見下ろしていた。善悪の判断もなく、言葉も発せず、感情もない。感情がないのであれば、敵意も見えない。
 天上界の遺産に汚染された自動機構――此れを破壊すれば、歪んだ夢は完全なる終焉を迎える。