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真人化工場へのカウンター・アタック in ウォーゾーン
『オーラム逆侵攻』の影響で|完全機械《インテグラル・アニムス》のデータが完全消去されてからというものの、√ウォーゾーンの戦闘機械群の各|派閥《レリギオス》は、混乱の最中にあったことだろう。
故に、他の|派閥《レリギオス》――例えばレリギオス・トゥルースの『完全機械人』の技術に興味を示すところが出ても不思議ではない。
事実、すでに巨大レリギオス・ランページがトゥルースと協力関係を結んでいた。
「人間と機械の融合を試すため、まだまだ素材が必要だな……」
ランページの統率者、ドクトルは素材を得るため地図を見る。目についたのはある区画だ。
そこはかつてオーラムから奪おうとした区画であり、同時にEDENの能力者たちに妨害され、あまつさえ人類側に奪還されてしまった都市である。
「ここは鹵獲されたレギオンが配備されていたりと、面倒な場所だったな……。だからこそ健康な素材が育っていることだろう……。改造に耐えられる若く優秀な素材がある筈だ」
そう呟くと、ドクトルは現在滞在中の『真人化工場』から部下を出撃させた。
目的は素材となる若い人間。
それを攫って工場へ持ち帰り、重陽真君と協力して|完全機械《インテグラル・アニムス》に到達するための素材とするのだ。
●
「こんにちは! あなた、インビジブルが見える能力者ですね? こうして会ったのも何かの縁です! 人々が攫われるのを阻止するのに、協力お願いできないでしょうか?」
そう声をかけてきたのは星詠みの能力を持つ暮日咲・あかね(|夕暮れに佇む羊《K r i o sの輝き》・h00062)。どうやらあなたに依頼したいことがあるらしい。
あなたが興味を示すと、早速、あかねは説明を開始した。
「ありがとうございます、では内容を。ざっくりいうと、この|世界《√EDEN》を狙う別の|世界《√ウオーゾーン》の≪簒奪者≫がさらなる力をつけようとしている事が解りました。なので、この簒奪者達の妨害をお願いしたいのです」
こう切り出すと、あかねは視えた内容(冒頭のシーン)を説明していく……。
「――という内容です。まずは√ウオーゾーンにある、人類側が取り返したとある町から作戦開始します。そこで、町に侵入する戦闘機械群に対応して誘拐事件を阻止していただきたいのです」
これが依頼その1となる。
そして今回はそれだけに留まらない。
「そして阻止した後は、再発を防止するために誘拐先の『真人化工場』へも攻撃してもらいたいと思っています。最初の阻止をすると敵の部隊は逃げていきます。なのでその後を追って『真人化工場』の場所を突き止めそのまま中へ侵入してほしいのです」
これが依頼その2。簒奪者の力を削ぐ目的を考えればこれこそが主な目的と言えよう。
最後に三つ目の依頼の内容が伝えられた。
「最後に、工場にはこれまでに攫われてきた人が閉じ込められている『素材倉庫』もあります……。余裕があれば、より良い結果のためにも『素材倉庫』を突き止めて人々の救出もお願いしたいと思っています」
あくまで目的は√EDENの安全のため、簒奪者を弱らせること……。そのため|異世界《√ウオーゾーン》の犠牲に関しては優先度は低い。故に、最後は『余裕があれば』という条件となっている。
以上の三つが、この依頼の主な内容だ。
「今回は相手側の星詠みも絡んでいるようで予知の内容が不安定です……。たぶん、皆さんの行動によって未来が変わっていくと思われます」
特に今回は√ウオーゾーンばかりか√仙術サイバーの簒奪者も絡んでおり、√仙術サイバー側はトゥルースに協力しながら戦闘機械都市の技術を盗み取ろうとしている様である。
複数の勢力が絡んでいる故に、簡単に未来が変わってしまうのだ。
「分岐の鍵になる要素は三つです。ひとつは最初の『強襲型機甲兵器』の部隊内にいる他の|派閥《レリギオス》のスパイの存在。逃げる部隊を追うのが気付かれるかどうか。最後が、工場への潜入が気づかれるかどうか、です!」
知り得た情報を伝えると、あかねは最後に√ウォーゾーンへ向かう方法を提示した。
「もし手伝っていただけるなら、近くにある√ウォーゾーンと繋がった場所をお教えします。ここは皆さんが戻るまでは繋がったままなので、帰還に関しては大丈夫です! どうか、よろしくお願いします」
頼み事をすべて伝えると、あかねはぺこりと頭を下げるのだった。
これまでのお話
第1章 集団戦 『強襲型機甲兵器』
●潜入前の素材蒐集部隊
『通信状態は良好だ』
『電波妨害は特に無い様だ……しかし』
『ああ、地表は巡回するレギオンが多いな。この都市では|素材《人類》を収穫するのは容易ではなさそうだ』
『だが、だからこそ人間たちは良く育っていることだろう。我らの統率者はこの都市の素材をお望みなのだ』
『そうだな。……では手筈通り、各小隊のそれぞれのやり方で内部へ潜入しよう。作戦時間は45分だ。各チームの検討を祈る』
『了解』
●
かつてこの都市を奪還する際に、クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)はここを訪れていた。
あの頃の彼は『この戦いが終わってからもこの都市を守れるようなものを』と考えていたが、その願い通り鹵獲兵器たちはこの町を守ってくれていた様だ。
その証拠に町の雰囲気は穏やかで、公園では元気に遊ぶ子供たちと見守る親の姿がある。
町中を歩きながらクラウスは警備状況を確認した。
(見えているところの警備は万全だな……)
主な空間は鹵獲レギオンが巡回している。そのため戦闘機械が侵入したなら、すぐにでも物量で追い返えされることだろう。
しかしこのレギオンたちは町の全てを監視している訳ではない。故に、クラウスは警備の目が特に届かないところに注目した。
そこは、地下鉄の奥のトンネルや、レギオンが入り込めないマンホールの下などだ。
クラウスは√能力の『|機械仕掛けの瞳《オートマタ》』を使用すると、地下の奥へと小さなドローンを飛ばしてゆく。そして、ドローンのうちのひとつで鹵獲レギオンたちのネットワークをハッキングし、多数のカメラの映像も確認する。
これらのドローンはクラウスと五感を共有するため、彼の目や耳にはいくつもの情報が飛び込んできていた。それらは情報の洪水となりクラウスの脳を揺さぶって、彼に強い眩暈と気持ち悪さを与えてくる……。
しかし休んでなどいられない。
(……素材として囚われた人たちを助け、簒奪者も弱らせる。全部に手を伸ばしたいのだから、無理は承知の上だよ)
クラウスは青ざめた顔に手を当て、情報の洪水に耐えながら内容の確認に集中していった。
――音だ。
地下を流れる排水路の先から、ザブ、ザブ、と流れをかき分ける音が聞こえる。
そこは下水道の本管で、高さは4メートル以上あった。そこでクラウスはドローンが見つからないよう、透明化能力を起動させつつ高度を天井スレスレまで上げ、ゆっくりと進ませてゆく。
すると、水路の先に動く光を発見した。
(……見つけた)
町へ侵入しようとする強襲型機甲兵器のチームのひとつで間違いないだろう。クラウスは急ぎ近くのマンホールから下水道へ入っていった。
そして同時に、敵集団の近くのドローンからジャミングの電波を発信する。
「……何だ? 通信機からノイズが」
「こちらもノイズが激しい。全員停止、状況を確認するぞ」
「通信機器は機能しているか? オーバー、オーバー」
「応答なし。ジャミングか……?」
強襲型機甲兵器のチームに緊張が走る。しかし前後に照明を当て警戒するも、視界に不審なものは何も無い。
そのとき、ドンッ、と銃撃音が鳴り響いた。
そして、機甲兵の一体が、頭部チップを破損させてその場に倒れる。
続けて、二体目も上から撃ち抜かれて倒れた。
「敵襲……!! 上か!」
クラウスによる攻撃だ。
彼は水音で気付かれないようドローンに捕まって高所を移動していたのだ。機甲兵たちが上へ銃口を向けるより早く、クラウスは上から飛び降りた。
そして着地するやすぐに二丁拳銃の『無明』を操って、残る機甲兵を撃ち倒していった。
この強襲により、町への侵入がひとつ阻止された。
クラウスは破壊した機甲兵から通信機と端末を回収する……。
これで残った敵部隊が撤退するとき、通信傍受や端末のハッキングで工場の場所が分かるはずだ。
後の状況は他の能力者たちの動き次第。
戦闘機械群が、真人化工場への襲撃を予測できるかで状況は変わってくることだろう。
●
奪還前からあったその地下鉄のトンネルは、戦闘機械都市に改造される際に物資輸送目的で新たに作られたものだった。
そのトンネルは、今は奥の大空洞を崩して塞いでいるため輸送列車は走っていない……。しかし、工事やメンテナンスのための小さな入り口、そして過去に隠れ住んでいた人類が作った通路がそこかしこにあって一部はアリの巣のようになっている……。
そういった地下の迷路を古出水・|潤《うる》(夜辺・h01309)とフィオ・エイル・レイネイト(無尽廻廊・h06098)の二人がカバーしていた。
「夜目と耳が効くのは有難いね」
「こちらこそフィオさんの突破力は心強いですよ。私はどちらかと言えばサポートや後衛タイプですし、索敵にも集中できますから」
「それは良かった」
「おっと、またお客さんが来たようですね。音の反響も考えると……向こうの方でしょうか。霊紙の折り紙を先行させましょう」
潤の操る狼を模した折紙、『|Code//餓狼《コード・ガロウ》』が闇の奥へ消えてゆく……。するとやがて、置くから閃光手榴弾の激しい光とエネルギーライフルの射撃音が鳴り響いた。
地下が一瞬、激しく光ると潤は眼鏡を手で覆う。
「梟の視力は暗闇でもよく視えますが、急な光には弱いですね……」
「大丈夫だ、ここからはわたしに任せてもらおう」
そう言うやフィオは奥へと駆けてゆく。目指すは閃光と戦闘音が響く敵の場所。
「ここからは無粋な数の暴力さ」
妖刀を抜くや、フィオの瞳に燃えるような輝きが煌めいた。
暗闇に灯る瞳の妖しい光を反射して、複数の妖刀のレプリカが召喚される。それらは狼の折り紙に気を取られている『強襲型機甲兵器』 の小隊へと飛翔し、突き刺さっていった。
その混乱にまぎれてフィオ自身も接近すると、彼女は打刀の柄へ手をかける。
「討ち取らせてもらうよ」
一閃。
フィオは接敵した機甲兵をことごとく斬り伏せた。
「さて、片付いたよ」
「お見事です。……おや、また新たなお客さんみたいですね」
「地下は大人気だね。事が終わったら、どこかのタイミングで全部の通路をふさいだ方が良い気がするよ……」
「ええ、同感です」
そんな言葉を交わしあい、守り手は再び闇へ溶けてゆく。
●
一方で地上では、三日科・主也(警察庁特殊任務局、魔法少女課課長兼魔力注入担当官(階級:警視長)・h12629)が町を出入りする運び屋の動きに注意を払っていた。
本職で潜入や追跡任務をこなす彼には、外から潜入する場合の手口におおよその検討がついている。
さらには事前に地域に根付く主な運び屋などのローカル情報も収集していたため、怪しい運び屋は一目で分かるようになっていた。
主也は検問を手伝う許可を事前に得ていたこともあり、町の入り口で行われている中型ジープの検問へと参加する。
「私からも質問良いですか? この町は御覧のとおり鹵獲したレギオンという軍事力がありまして」
「な、なにが言いたいんだ」
運び屋が返す言葉を微笑みで返し、主也は言葉を続けてゆく。
「そんな町に、大きい車と大荷物で近づくなんて、人類側の反攻準備の武器運搬を疑われて戦闘機械群に攻撃を受けてもおかしくないと思うのですが。……あなたたち、よくここまで無傷で来られましたね」
この指摘に、ジープ側の人員は押し黙る。
彼らは人類側の日常の状況にまで考えが回らず、物資が多ければ簡単に中に入れるだろうと安易に考えていた様だ。
「プラン変更!」
運転手がそう叫ぶと、運び屋たちは一斉に変装を解いて『強襲型機甲兵器』の姿となった。
「ここで『素材』を確保して帰還――」
荷台にいたリーダーが指示を言い終わる前に、主也の隠し持った暗器が機甲兵の頭をひとつ潰す。
時間稼ぎはこのひと時で十分だ。
あとはこの攻撃に反応した町のレギオンたちが、四方八方から敵性体を攻撃してゆくのみ……。
変装していた機甲兵のチームは、町のレギオンたちに無数の銃弾を撃ち込まれ物言わぬ鉄塊と化した。
●
侵入が事前にわかっていれば対応の幅は広がるというものだ。
家綿・樹雷(綿狸探偵・h00148)は町の取りまとめ役を訪ねて協力を要請し、周辺の地形などから『強襲型機甲兵器』の一団が野営基地を設営しそうな場所を事前に割り出していた。
樹雷は小さな狸の姿で忍びよると、近くの草むらや瓦礫のかげを渡り歩き狸妖怪探偵の七つ道具で情報を集めてゆく。
機甲兵たちは中隊規模で来ており、細かい作戦は所属する小隊ごとに委ねられている様だった。
侵入の準備を進める機甲兵たち……その野営地の中で、樹雷は他|派閥《レリギオス》のスパイを探してゆく。
それは基地への潜入の際に、そのスパイと成り代わるためである。
変装や変身はどろんバケラーの十八番、加えて他派閥のスパイを装っておけば、EDENの能力者の関与を疑われるより警戒度を上げられにくいはずだ。
樹雷はある小隊に注目した。
(他の隊は攫った人が亡くなっても素材に使えるよう冷凍するコンテナがあるけれど……、ここは明らかに違うな)
その小隊のコンテナには奇妙なカプセルが入っている。……加えて、作戦の会話に出てくる|完全機械《インテグラル・アニムス》の内容にも違和感があった。
(間違いない、彼らがスパイだ)
それを隠ぺい出来ているのは、小隊長が周囲の信用を得ているからだろう。彼らは時間をかけて『ランページ』に潜り込んでいたようだ。
(成り代わるならここの小隊長が良さそうか?)
標的は定まった。
「地下トンネルへの入り口、確認しました」
「よし、ここから町へ侵入しよう。目的は素材の生きたままの確保。だが、難しければ頭だけで構わない。|こっちの上《・・・・・》には上手く言っておく」
「了解」
「いや、まて……! 地下から誰か出てくるぞ」
スパイの小隊が町の外から地下鉄の通路へ入ろうとしたその時、ひとりの巨大狸が地下から現れる。
「妖怪探偵、家綿・樹雷。推参」
樹雷へ一斉にエネルギーライフルの銃口が向けられた。
しかし、強襲型機甲兵器たちは樹雷と全く違う方向から銃撃を受ける。
「ぐあっ……!」
「ちっ、側面からだと……!?」
機甲兵たちはその場に伏せ、煙幕でやり過ごそうとする。
周囲は銃を持った現地の人が取り囲んでいた。彼らは樹雷が協力を要請して集めた者たちだ。
「完全機械、実に結構。人を害するものでないなら、ね。無理やり誘拐し改造するのは認めないよ」
そう言うや、樹雷は巨大な狸の姿のまま攻撃を仕掛けてゆく。
「ええい!」
「ぐあっ!」
「このままでは撃たれるか圧し潰されるかだ……。くっ……、作戦は失敗。動けるものは撤退だ!」
機甲兵の小隊長は閃光手榴弾を使い、撤退を指示する。彼らは激しい閃光のなか、生き残った者だけで撤退していった……。
樹雷はあえて彼らを逃がすと、鳥に化けて彼らの後を追跡してゆく。
やがて、二つの山を越えた先の山の合間に『真人化工場』が見えてきた……。
(このあたりが頃合かな)
そう考えるや、樹雷は手前の木々が茂る斜面でスパイ小隊の生き残りを再び襲撃する。
そして彼らを攫い、まんまと入れ替わるのだった。
第2章 冒険 『スパイとの情報交換』
●『真人化工場』の第三勢力(スパイ)と『素材倉庫』
まずは現状を整理しよう……。
現在EDEN側の能力者は、スパイだった小隊と入れ替わり、成りすまして工場に潜入している。
……あるいは、『素材』として袋に入って、偽隊員あるいは入念にハッキングした物言わぬ強襲型機甲兵器に担がれているかもしれない。
いずれにせよ、疑われずに『素材倉庫』に入る事が可能な状態である……。
帰還した部隊の振りをして工場に戻ると、スパイ小隊の上官と思われる者がやってきた。
彼女が、この工場に紛れ込むスパイ勢力の管理者なのだろう……。
「ボロボロねぇ、人類にズタボロにされちゃうなんて……ざぁこ♪ よわよわ♪ でも収穫はゼロじゃないて? ふぅん、……やるじゃない。それじゃあこれ鍵ね。素材倉庫に入れてきて。脳を回収したカプセルはある? 無い? じゃあいいわ」
そう言って、彼女は鍵を渡してきた。
「それと、あなたたち。雇用契約を延長したかったらあとで契約書にサインして持ってきなさいよ」
そう言うと、彼女は一枚の紙を追加で渡しつつあなたたちを先に通す。
どうやら隊の中身が入れ替わっている事に気付いてない様だ……。
さて、『素材倉庫』はこの通路の奥にある様だ……。
●補足
・プレイングの最期に、選択1、選択2、選択3のどれかをひとつ加えてください。三章は最も多い選択で始まります。
選択は次の三つです。
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選択1: スパイの上司の居る方から脱出を試みる。最も不意を突き易く、救出対象の人々も安全。
選択2: 違うルートからの脱出を試みる。工場運営に協力するボスに見つかるため、救出対象の人々にも被害が出る可能性がある。
選択3: いきなり工場を破壊。ドクトルか重陽真君のどちらかが対処のために出て来る。強敵を倒せるが、敵が強いため救出対象の人々の被害は避けられない。
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・素材倉庫で人々へ手当をしたり、工場を調べるなどの行動ができます
・選択が記載されていなかったら、自動的に最も安全な選択1になります。
・断章の契約書は三章でネタになる程度なので、無視(何も書かない)でも大丈夫です。
追伸。
・同数になった場合は選択2になります。
(4回サイコロ振って青が大きい出目が多かったので)
●
化術で強襲型機甲兵器に変装した家綿・樹雷(綿狸探偵・h00148)は、無事に『真人化工場』へと潜入した。
それも『素材倉庫』に出入りすることに違和感がない部隊と入れ替われたようだ。
そして、ここまでの過程で工場の内部事情もいくらか判明した。
この工場では四つの勢力が絡み合っている様だ。
母体はランページとトゥルースの共同運営だが、技術面は√仙術サイバーの簒奪者が支えている。
これはトゥルースの統率者の重陽真君が、√仙術サイバーの知識と仙術機械を『完全機械人』の生産に利用している事が大きいと考えられる。
そして素材となる人体の仕入れをランページのドクトルが担当している様だ。
最後に、ランページに潜り込んでいた別の|派閥《レリギオス》のスパイは、仕入れた『素材』の一部……特に脳を何処かへ横流ししている様子。
そのためなのか、スパイの部隊は『素材倉庫』の管理にがっつり食い込んでいた。
(そのお陰で倉庫の鍵があっさり手に入った訳だけど……)
ハッキングで意思を奪った機甲兵を引き連れて、樹雷は廊下を進んでゆく。
樹雷は紙の契約書を眺めた。
(発言に配慮が見えるし、いい上司なのかな?)
内容はごく普通の雇用契約が書かれているように思えた。
(業務時間内は指示に従う事。部隊を辞める際は二ヵ月前に申請すること。破った場合は別紙の罰則と……。内容に承諾するサイン爛もある。『絶対服従』って書かれてるのが気になるけれど、それはここが√ウォーゾーンだからなのかな。その割には随分とアナログだな……)
紙の書類で部下を管理している事は間違いない。
このアナログっぷりから、あのメスガキ上官は戦闘機械群では無いことが察せられる……。ここでさらに異なる|√《世界》の簒奪者の関与も浮上して、勢力関係が非常にややこしいことが察せられる。
救出した人々を連れて工場から脱出する際はあのメスガキ上官と対峙する可能性が高い。つまり|その際は《・・・・》、|ハッキングなどの電子戦や機械に対するセオリーは効果が薄いことに留意したい《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。
●
素材倉庫……そう呼ばれる施設は、長い廊下の左右に多数の小部屋がある構造だった。
それぞれの部屋は廊下側の壁がガラスになっていて中の様子が良く見える。そこでは、ひとつの部屋に一人の人間が入れられて最低限の健康を保てる設備が備わっている様だった。
実験動物を飼育している――そんな印象が『素材倉庫』にはある。
素材倉庫に入るや、樹雷は周囲をいちど見る。
監視カメラは無さそうだ。あのメスガキ上官が機械に疎いのか、それとも部下を信用しているのか……。いずれにせよ好都合。
樹雷は変身を解くと、ハッキング済みの強襲型機甲兵器に荷物を降ろさせた。
すると、その袋からクラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)が出てくる。
(窮屈だった……)
ずっと同じ姿勢で硬い機械に担がれていたクラウスは、軽くのびをして首と肩をぐるりとまわす。さすがに物理的な意味でしんどかったようだ。
「さて……もう彼らに用はないな」
そう言って、クラウスと樹雷は強襲型機甲兵器の機能を停止させる。
解かれた変装、捕らわれたフリをしていた人間。この様子を見た人々は助けが来たことを察した。
すぐにガラス越しに助けを乞う声が上がるが、しかし騒がれて簒奪者側に気付かれるのは困る。
樹雷とクラウスは小声で返答した。
「お静かに願います。大丈夫ですか? 助けに来ました」
「助けに来たんだ。一緒にここを出よう」
二人は素材倉庫の鍵で各部屋を開けてゆく。
囚われていた者たちの状況は様々だ。目や手足など体の一部を『素材』として摘出された者から五体満足な者までいて、多くはストレスで憔悴しきっている。
また精神的な理由で食事ができなくなっている者は、ベッドに拘束された上で胃までチューブを入れられて、無理矢理栄養を取らされていた。
「流石に医療品や食料は大丈夫そうだね」
「けれど足が無い者がそれなりに居る。視界が無い者もフォローが必要だ。それに心が壊れてしまった者も居る……」
……ここは栄養が与えられて清潔な環境だった。しかし『素材』として管理され肉体を切り取られてゆく場所でもある。
機械の部品と同じ管理。
ここは研究のための|生体素材《ハードウェア》の価値だけが重視され、|人格《ソフトウェア》が考慮されていない空間だった。
●
彼らの様子をひとりずつ確認した後、クラウスと樹雷はここを出る算段を考える。
「自力で動けない人はボクのほうで何とかできると思う。ボクの分身たちを空飛ぶ絨毯に変身させて運ぼう」
「それじゃ、脱出経路の確認は俺のドローンでやるよ。……戦闘機械群の設備ならハッキングができるし、他にも索敵に向いた機能があるからね」
このやり取りに、比較的元気な者たちも名乗り出た。
「俺達にも何か手伝わせてくれ。機械どもに一矢報いたいんだ」
「銃があったら貸してほしい。足が無くても銃座や弾除けにはなれる」
救助という希望の到来……。それにより活力を取り戻した者たちは、一様に戦う気満々だ。
この戦う意志の強さは、|この世界《√ウォーゾーン》では珍しくない……。だからこそ、彼らの姿を見たクラウスは学徒動員兵だった頃を思い出す。
(もし戦う事を許したら、おそらく彼らは命を投げ出してしまうだろう)
だから、クラウスは彼らの申し出に首を振って断った。
「……気持ちは分かるけど、まずは脱出が優先だ。奴らは俺たちの肉体を部品として使おうとしている。死体や細胞が奴らの利益になるんだ。なら、動けるうちにここを出た方がいい」
これに樹雷も頷いて、血気盛んな者たちへ役割を依頼した。
「自力で動けないような人がいたら身体を支えて補助して欲しい。あとは、精神状態が良くない人にも付き添ってくれると助かる」
戦えないことに不満を示すものが居たものの、皆この場は納得してくれた。
樹雷は早速、『化術奥義分身の術』を使い狸姿の分身を呼び出して、空飛ぶ絨毯をつくりだす。
「それじゃあ。脱出の準備を進めよう。あと少し頑張れ。都市には連絡済みだから、工場を脱出できれば救助して貰えるさ 」
この絨毯に動けない者を乗せたなら、あとは安全な場所まで運ぶだけだ。
そして『|機械仕掛けの瞳《オートマタ》』で素材倉庫の周辺を確認していたクラウスも脱出経路を確定させる。
「大勢で移動できそうな経路は二つだね……。エレベーターで二階まで登って別の出入り口へ向かうか、さっき俺たちが来た道を戻るかだ」
エレベーターを経由する経路は脱出しながら爆弾を仕掛けるなら最適な経路になるだろう。しかしこの経路は監視がしっかりしていて安全面が厳しくなる。
であれば、救助者の安全面を最優先に考えたら自ずと選択は決まってゆく。
「なら、さっきのメスガキ上司の方が隙があるのかな」
「……うん、そうだね。カメラをハッキングしてみたら、ちょうどお菓子を食べながらゲームをしているみたいだ」
脱出経路は決まった。
EDENの能力者たちは要救助者たちを運ぶ準備を整えると、可能な範囲で爆弾を仕掛けつつ来た道を戻ってゆく。
これで『真人化工場』の一部……とくに素材倉庫は使い物にならなくなるはずだ。
●
『素材倉庫』に辿り着いた樒矢・リベル(カゲロウ・h07812)は、他のEDENの能力者たちを手伝っていた。
リベルは√能力者ではない。
しかし、彼は作戦行動中の√能力者たちに偶然出くわして、話を聞いた上で助力を申し出てここにいる。
『素材倉庫』に囚われた人々は痛々しい惨状だった。
ここでは食べ物や清潔さは十分なものの、実験動物を飼育するような無機質な環境になっている。
最低限の設備がある小さな部屋に押し込めて、必要に応じて『素材』として腕を切り取り、足を切り取り、目を取り出し、骨を抜き取り、筋肉を切り取り、神経を抜き取る。
……多くの者は戦闘機械群への反発心で自我を保っていたが、中には精神が壊れてしまった者も居た。
両脚を失った幼い少女を見たとき、リベルの脳裏に良く知る少女がふと重なる。
……無事にここを出さえすれば、失った部位はサイボーグ技術で取り戻せるだろう。しかし心はどうだ。
彼女には帰った先に寄り添う者は居るのだろうか。
(……いや。まずは安全な場所まで脱出できてからだ)
要救助者たちの今後については、彼らが生き残ってからの話だ。
生き残れなければ、生き方を選ぶ事さえ出来ない。
……そう割り切ってリベルは任務をこなしてゆく。
要救助者といっても実に様々で、中にはガラの悪い者もいる。
そんな者たちにはリベルが凄みを効かせて黙らせた。
また、リベルの落ち着いた物腰は不安に沈む人々を落ち着かせて、それにより脱出の準備がスムーズに進んでゆく。
うまく動けない者も、リベルが抱えて用意された移動手段まで連れて行った。
「……あとは脱出するのみか」
とはいえまだ安心はできない状況だ。
後の簒奪者との戦闘は√能力者に任せるとしても、その戦闘に巻き込まれないように要救助者を守る者は必要だろう。
その時は守る者として、目立たずとも堅実に任務をこなす事になる。
このあとに備えるため、リベルは自身の装備を確認した。
守る――そのためにリベルは戦地に身を置くのだから。
第3章 ボス戦 『諜報部隊特務大尉『ペムプレードー』』
●とある悪魔の諜報活動
この|√《世界》は魔法が発展してないから、支配とか簡単で助かるぅ♪
みーんな魔法耐性よわよわ♪ 潜入し放題♪
とはいえ実力者にはうまく効かないから、派手に動けないのよね。
だからあたしは、いくつかの|派閥《レリギオス》と交渉してビジネスパートナーの契約を結んでいるのだけれど……。
契約はちゃーんと守って|研究資材《脳みそ》も納品してるし、ここでも契約通り門番してるし、ちょーっとくらいサボっても大丈夫でしょ。
そんな悠々自適なお仕事ライフを送っていたら、いきなりの警報っ!
門番を通さず勝手にゲートを開ける不届きものは誰?
いい度胸ね、あたしの下僕に加えてやろうじゃない!
●囚われた人々を逃がして
『素材倉庫』を出たEDENの能力者たちは、要救助者たちを連れて出入り口まで戻ってきた。
あとはこのシャッターゲートを開いて外へ出て、助け出した人々とともに撤退をしながら工場を爆破するだけだ。
しかし、やはりそう簡単にはいかない。
ゲートを開けるボタンを押したとき、潜入時にやりとりをしたスパイ部隊のメスガキ上官――『ペムプレードー』が駆け寄ってきたのだ。
「こらー! 勝手に開けるのはルール違反……げぇっ! 脱走者!?」
手にする拳銃には何かしらの魔法の技術が伺える……。警棒も何かしらの魔法が込められているのだろう。
要救助者たちは、半開きのゲートをくぐって外に脱出してゆく……。
あとはこの『ペムプレードー』をここで食い止めて、倒すだけだ。