⑦割れた卵の行き先は?
塀に座った?落っこちた?
いいえ。卵はあなたで、あなたは卵。卵は落とさず上手に割って、美味しく素敵にお料理しましょう。
そうして──元には戻らない。
「こんにちは、卵さん! あなたはどんな卵料理になりたいですか?」
卵型の家庭用ロボットは、道行く『卵』たちへ軽快に言葉を告げている。まるでそれが当たり前であるかのような問いかけには、違和感を感じて、つい足を止めてしまうこともあるだろう。だが何かが間違っていようとも──それを正すことなど、できはしない。
だって彼らの狂った真っ赤なモノアイに、『卵』は『卵』であるとしか、映らないのだから。
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「こんにちは!ねえねえ、皆は卵料理は好き?
でもそんなの、どっちでもいーよね!好きでも嫌いでも、卵料理にされたい人はいないもんね?」
√能力者へ問いかけた言葉をすぐさま翻し混ぜっ返して、悪戯っ子のような笑顔を浮かべるのはバロニール・アポカリッツァだ。
「さあさあ、ゾディアック継承戦争がはじまってるよ。
戦争をはじめたのはゾーク12神『星神ドロッサス・タウラス』って人だとか…それも、今はいっか!
今回皆が戦わなきゃいけないのは、新たに王権執行者に選ばれた、全自動卵調理機『ハンプティ』の群れだからね」
か細い体を揺らしながら、バロニールはどこか楽しげに言葉を広げる。
「皆に向かってもらう場所は、櫛田神社だよ。『サマータイム・モルガーナ』によって、ハンプティの群れはもう櫛田神社に導かれてて、もー大変!
ハンプティはあらゆる生命体を『卵』だと思い込んでる暴走した殺戮マシンだから、片っ端から『卵』をお料理しようとしてくるんだって。
今の時期は博多祇園山笠のお祭りで賑わっているから、『卵』のストックがいーっぱいに見えてるのかもね?」
暴走した家庭用ロボットが、道行く卵と鉢合わせる事になれば──碌でもない殺戮は、朝食が食卓に並ぶように行われるだろう。バロニールはぬいぐるみを抱きしめ、わざとらしく身震いしてから、口元を隠して笑顔を浮かべる。
「暴走してるキッチン用品なんていらないし、卵を使わない卵料理なんてのもいらないよ。
ハンプティたちが卵をたくさんお料理する前に、ぜーんぶ壊して捨てちゃってほしいな。
でも気を付けてね。武器は調理器具でも攻撃手段はいっぱいあるみたいだし、王権執行者に選ばれているんだから」
ホットプレート、電熱鍋、給水タンク、簡易冷蔵庫など、卵の見た目に隠されている調理器具と手段は多彩なものであり、それらがそのまま攻撃手段となってくる。だがあくまでもそれらは調理器具。壊す手段は多岐にわたるだろう。どう殲滅するのかは自由だ。
「それじゃー、伝えたいことはそんなところかな。
ゆで卵は茹でる前には戻れないだろうし、気をつけて頑張ってね〜!」
バロニールは最後に笑顔を浮かべ応援を口にすると、戦場へ向かう姿をぬいぐるみの手を振り見送った。
第1章 集団戦 『全自動卵調理機『ハンプティ』』
卵型の家庭用ロボットは快活な挨拶を口にして問いかける。『それ』が卵か否かに関わらず──いいえ!
コロコロ並ぶ『それ』は、とっても素敵で美味しそうで、好きな卵でしかないのです。
「卵であるあなた達には様々な選択肢が存在します!」
語る『ハンプティ』たちは殻を割るように手足を開き、揃って調理器具であったはずの凶器を掲げた。そのまま、それは呆気にとられる人々へ振り下ろされる──その刹那、群れの中へ直撃したのはどろん煙幕だ。
広がる煙はハンプティの群れを一瞬で飲み込み、卵を吟味するモノアイを瞬く間に影らせる。
「グッドぉ!」
そして次の瞬間、煙幕の外側から力強い言葉が響いたかと思えば、調理に浮足立つハンプティたちの足を止めるのは、黄・夜巡が霊銃『雷精九鼠』から放つ牽制射撃の雷鳴のような炸裂音だ。
「ここは危ないから向こうへ逃げて!」
間髪入れずに羽柴・カレナが夜巡へ続く。周囲へ警告の声を張り上げ敵の居ない方向を指差すと、躊躇なく煙幕の中へと飛び込み、人々とハンプティの間に割り込み拳を振った。気合を込めた『ドキドキなアーム』の一撃から爬虫類の幻影が飛び出し、外殻にヒビを入れるとハンプティの群れを吹き飛ばし後退させる。
「みんな、こっちだ!オレらの後ろへ逃げろ!」
重ねられる警告に人々は我先にと駆け出した。──それはハンプティにとっては、転がり逃げ出す卵の姿だろう。揺れ動く煙を察知して、ハンプティはモノアイを更に真っ赤に染め上げると、アームが掲げるのは灼熱のホットプレートと鋭利な鋼製ターナーだ。
「とても新鮮な卵ですね。卵かけご飯や、半熟の卵料理がおすすめです」
「人は卵じゃないし、料理をするものじゃないんだよ!いっけぇー!ふくすけ!」
曇りのない言葉は逃げる人々の背中へ追いすがるも、カレナの護霊『ふくすけ』の青く輝く尻尾がすぐさま調理器具を叩き落としてゆく。牽制射撃に足を取られ、調理器具を叩かれ攻撃が次々に不発で終わってゆけば、周囲の『卵』はカレナと夜巡の二つのみとなった。人々が逃げおおせた今からが、二人が攻勢をかける時だ。
「ガ…ガガ…邪魔をしないでください。わたし達には、好きな卵を好きなだけ調理する権限があります」
「はっ!お前らがその気なら、オレは全自動卵調理機調理機になってやる!行くぞカレナ!ふくすけ!」
「うん、任せて!私も負けずに頑張るよ!夜巡さん!」
変わらず胡乱な言葉を吐き出すハンプティたちから、二人はあえて距離を取るように動く。レードルの殴打が寄ればカレナの拳が幻影を放ち殻を割り怯ませて、複数体が組み付こうとしようものなら夜巡の射撃が捕縛を牽制する。
手段を制限し誘えば、ハンプティたちはその場に足を止め、殻の隙間から湯気を吹くと二人へノズルを向けた。
「ガガ…ピーッ!わたし達は権限を、権利を行使します。新鮮な二つの卵を調理します!」
「卵は卵であって、人間は、俺たちはタマゴじゃねーっ!」
熱湯の一斉放水のその直前、夜巡はそのノズルへ向かって雷属性の弾丸を射出する。王権執行者といえどその身は機械──9体の『雷素トビネズミ』を霊弾に変えたその銃弾は一体のノズルへ命中すると、轟く雷鳴となって周囲半径55mを巻き込み爆発し、ハンプティたちを見事に感電させる。
そして更に、殻を割られていた個体は次々にその場で熱湯を飛び散らせ、感電はさらに連鎖する。
「お料理するのは私達だよ、料理されるのはキミ達の方かな。…悪い卵は叩き割っちゃうんだから!」
感電し身動きの取れない『卵』となったハンプティたちを、カレナの拳とふくすけの尾が叩き割れば、パーツと殻をあちこちに飛び散らせて、見るも無残なハンプティたちの姿はまるでスクランブルエッグ。
──まさしく全自動卵調理機『調理機』となった二人は、次々にハンプティを殲滅していった。
目の前に在るのは卵である。問いかけに惑うも、調理器具に怯え逃げるも、『それ』らはすべて卵なのだ。
「ふんわりとしたオムレツ、半熟の目玉焼き、だしの豊かな卵焼き、卵かけご飯。あなたはどれがお好きですか?」
だから『ハンプティ』たちは『卵』に選択の機会を提示する。卵料理は種類が豊富。好きな卵で好きなだけ、素敵な卵料理を作りましょう!
転がる卵を追いかけて、調理に凶器を振り上げて──上空から|降ってきた卵《・・・・・・》の爆発に吹き飛ばされると、ハンプティたちはそのまま殻を割って砕けた。
割れて砕けたハンプティダンプティ!
誰も元には戻せない!
零れて潰れたハンプティダンプティ!
後の末路はスクラップ!
四肢を赤熱色に輝かせた卵は、スクラップたちに向かって口元を歪ませ歌い哄笑する──かと思えば、その表情はすぐさま北極のように冷めきった。
「くだらねェ。さっさと片づけるぞ」
凍雲・灰那は吐き捨てる。民間人を狙う狂った卵になんの躊躇も興味もない。卵は所詮、狂った殺戮機械でしかないのだから。
襲炎形態の足が地を駆ければ、灰那の体は炎の爆発に加速する。それは卵を付け狙うハンプティたちを素早く追いかけ吹き飛ばす事にも、まだ戦場に気付かぬ卵たちへ危険を知らせる警告にもなるもの。
そして灰那は、自ら爆発する興味深い卵でもあった。
「バター多めでフチはカリカリ、オーバーハードがお好みですか?」
「ああ、いいぜ。さっさと料理しちまわねェとなァ!!」
灰那の元へ集まるハンプティの群れが見せるのは、朝食のメニューのような問いかけと、灼熱のホットプレートと鋭利な鋼製ターナーだ。調理に振り上げられた凶器に向かって灰那は拳を振り抜き、着弾地点の爆発によって攻撃を相殺する。
爆風にたたらを踏む卵へ更に踏み込み殻を更に割り砕き、巻き起こる爆発と爆風を加速の薪に、止まらぬ襲炎はハンプティの群れを駆け巡る。
「ガ、ガガ…たっぷりの油で揚げる、スコッチエッグはいかがですか?」
「生憎様、熱いのも痛いのも慣れてるんでね!」
いくら煮えた油を用意しようとも、灰那は既に燃えて焼けている。熱も痛みも灰那を止めることは無く──災厄の炎はハンプティたちを爆発に飲み込んでいった。
卵を求めハンプティたちは闊歩する。好きな卵で好きなだけ、卵料理が作れたら──王様の馬と家来の全てをかけても、もう元には戻らない。
「美味しい卵料理を作りましょう!」
軽快な機械音声が『卵』へ調理器具を振り下ろす、その寸前。つんざく悲鳴の中を、幾つもの銀糸が張り廻った。
「させませんよ!いくら食に貧しても人肉だけはご勘弁!」
銀糸は一瞬でハンプティたちを絡め取り拘束すると、ヴェル・メル・ミルクレープは鋭い言葉と共に、勢いをつけて銀糸を操作する。ハンプティの群れはまるで投網にかかった魚のように跳ねまわり、そこに訪れるのは漏電したジャンクパーツだ。
「こっちこっち〜。ちょーっと、ビリビリするかもっすよ~」
「ガガガッ!」
ヨシマサ・リヴィングストンの放ったジャンクパーツに耐性を下げられ火花を散らしショートすると、ハンプティたちは殻の隙間から煙をあげその動きを著しく鈍らせる。だがひと息つくにはまだ早い。ヴェルのウサ耳型レーダーが偵察ドローンのラピから受け取るのは、逸れた個体と逃げ損ねた人々の位置情報だ。
「人命第一!逃げ遅れた皆さんが逃げる時間を稼ぎますので、少しお任せします!」
「は〜い。機械の扱いは得意中の得意ですのでお任せ下さいな〜」
アクセルシューズで加速するヴェルの背中を、ヨシマサは間延びした返事で見送るが、のんびりとした様子とは裏腹に手際よくマルチツールガンのアタッチメントを切り替える。
「いや〜、童話イメージなんて洒落た機械ですね〜。どこの機械かな〜?」
「ガ…ガガ…目玉焼きは、サ、ニー…サイド、アップ…それも、オー、バー、ハード?」
灼熱のホットプレートと鋭利な鋼製ターナーがどれほど迫れど──アームから外してしまえば、それらは品の良い調理器具だ。噛み合わない会話を並べて、ヨシマサは素早くアームを解体する。
「ふふ〜。せっかくの調理器具、破壊するのは勿体無いですからね〜」
音を立てて外れたターナーを拾い上げて、凄腕のメカニックは笑みを浮かべる。動きが鈍っていう内に、着実に少しずつ。調子の外れた調理機に攻撃の機会すら与える事なく、ヨシマサは瞬く間に幾つものアームを解体し武器を切除していった──。
「バリア展開!」
ハンプティはただ卵を求めるもの。迫る凶器に間一髪で間に合えば、ルミナスヴェールは光彩色に火花を散らした。
「今のうちです!高齢の方はスカイラビットにお乗りください!」
「おぉ…お洒落なスクーターだねぇ…」
そうして蜘蛛の子を散らすように逃げて行く人々を見送る間にも、バリアの耐久値は徐々に限界へ近付く。
「マカロンはお好きですか?スイスメレンゲを作りましょう!」
更に鳴り響くアラートが伝えるのは高温の警告。足を収納し殻を真っ赤に染め上げて、過負荷状態になったハンプティは水蒸気噴流を纏い、超速回転するハンドミキサーがバリアを貫通する。
「むっ、背後からも殺気?!」
挟撃狙いの攻撃だが、どんなに恐ろしい攻撃も感知できていれば、全力の回避が間に合うもの。ヴェルは第六感で察知すると雲綾を足場に蹴り上がりピンチを切り抜ける。三倍の速度にも翻弄されることなく縦横無尽に回避すると、残りのハンプティを誘導しながらヨシマサの元へ合流する。
「お待たせしました。民間人の避難完了です!」
「良かった〜。本体、どうしようかと思ってたっすよ〜」
「お任せください!レイン砲台、照射します!」
戦場に残るは凶器を失った卵の群れと幾つかの真っ赤な卵。空中へ高く蹴り上がったヴェルの手元のコントローラーはハンプティへレインを降り注ぐ。粒子状レーザー光の雨は卵の殻を砕き割り、電流を散らし煙を上げるハンプティたちは、黄身のように橙のコアを露出した。
半壊状態のハンプティの群れを前に、ヨシマサは頬をかく。最後のトドメもヴェル任せるのは…この数では流石に気が引けるだろう。破壊の炎を纏ったヴェルの鉄拳が次々にコアを破壊する隣で、ヨシマサもまた小型ドローン兵器レギオンでコアを破壊してゆく。
「うーん、卵料理、食べたくなってきました…」
戦場に散らばる残骸の目玉焼きを連想させるコントラストに、ヴェルはなんとなく食欲を唆られながら、二人の√能力者はハンプティの群れを殲滅していった。
卵はコロコロ、あっちへこっちへ逃げ惑う。物陰に隠れて息を潜めて、手当たり次第に物を投げて、調理を拒む姿はまるで|卵ではない《・・・・・》かのよう。──いいえ、『卵』は『卵』です。
「こんにちは、卵さん!美味しい卵料理になりましょう!」
卵たちが逃げてもハンプティたちは止まらない。だって道行く卵が逃げるなら、追いかけて『調理』をする権利があるのだから!
ハンプティが調理器具を振り上げたその瞬間、飛び込んできたのは一つの卵。卵の片手はハンプティの凶器へ迷いなく向かい──レイピアの鋭い一閃が金属音を響かせた。
「わ、私は卵じゃないです料理されるのも嫌です人違いです……と理屈が通じる相手ではなさそうですね!?」
「料理の支援機械……では、なさそうですね」
ハンプティの攻撃を弾いたシンシア・ウォーカーはレイピアを構えながら驚愕へ染め、後ろから駆け寄る神隠祇・境華もまた眉を寄せて苦虫を噛み潰した。
卵型の家庭用ロボットの常軌を逸した言動は、どうみても対話の見込めない暴走機械だろう。
「調理の邪魔をしないでください、卵さんたち!わたし達には好きなだけ調理する権限があります!」
真っ赤に染まったモノアイは、まるでブーイングのように数々の調理器具を掲げる。日常生活で見慣れている筈のそれらは、それでいて酷く見慣れない凶悪さ。シンシアは思わず空いていた片手で口元を覆い喉を引き攣らせた。
「なんですかあのやばそうな調理器具の数々!境華さん、気をつけてくださいね!」
「はい、シンシアさん。私も卵ではありませんし、卵料理になる予定もありません」
それら凶器による調理工程は、想像するまでもないだろう。碌でもない『卵料理』など、ひとつたりとも作らせるわけにはいかない。
「わたし達は権利を行使します。どんな卵料理になりたいですか!」
噛み合わない言葉を並べ、ハンプティたちは殻を割るようにアームを開くとレードルを取り出し迫り寄る。だがそんな暴走機械の群れに、シンシアは臆することなく再び飛び込み、境華は小型の拳銃の銃口を殻のひとつへ向ける。
「物語を我が手に、雲海を統べし嵐神よ、その雷霆の一撃を、いま我が手に宿したまえ」
羅紗銃『綴り』が撃ち出すのは嵐の弾丸。暴風の渦巻く弾が殻へ命中すれば、それは瞬く間に雷雲を呼び寄せ、周囲を巻き込み吹き荒ぶ。
暴風の中で、シンシアの体は疾走する風を受け止め加速する。群れの中へと踏み込む足は重みを忘れ、レードルの殴打を軽やかに回避し舞い上がる。ハンプティたちは組み付く為に手足を広げ捕縛を狙うも、すぐさま境華の援護射撃による弾幕がその足並みを崩し、シンシアの踏み込む道を開きゆく。
「腕力もまた淑女の嗜み!深く、貫きます!」
可憐なスカートの裾を踊るように翻し、シンシアが群れへと繰り出すのは強化した腕力による深く鋭いレイピアの刺突。アームに、胴体に、モノアイに…骨すら貫くその刺突の一撃は小さくとも、与える傷はひとつで充分。まるで料理の下拵えのように次々に手早く貫いてゆけば、ハンプティたちは命中箇所にエラーを吐いて、その動きを留まらせる。
「ガ、ガ…ピーッ!ポーチドエッグを作りましょう!」
しかしハンプティたちの攻撃はまだ終わってはいない。エラー音が響く中でも動ける個体は脚部を開き、殻の隙間から熱い湯気を噴き出した。熱湯の一斉放水が二人を狙うその直前──境華の指先が振り下ろされる。時に──家電製品というものは、亀裂ひとつで漏電や発火の恐れがあるものだ。
刹那、視界を染めるのは雷光と轟く雷鳴。大きな音に境華は少しだけ肩を揺らして眉をしかめた。
「ここは食卓ではありません。貴方たちの調理場にも、させません」
二人の視界が開けた時、そこに並ぶのは殻の隙間からあちこちに火花を散らし、ショートして動けなくなったハンプティたちの無残な姿。
「ガ、ガガ…あ、なたは…どんな卵料理が、お好きですか?」
ひとつの卵が崩れかけた殻を揺らす。真っ赤なモノアイを点滅させて脚部をグラつかせて、不安定に立ち上がる。それはすぐさま、レイピアの一撃で崩れ落ちた。
√能力者によってハンプティの殲滅は果たされ、無事にこの地は守られた。暴走した家庭用ロボットの食卓に、卵料理が並ぶ事はないだろう。
──割れた卵は、そうして元には戻らなかった。
