⚡ユーカリが丘迷宮事変
●√ドラゴンファンタジー・ユーカリが丘迷宮最深部『魔王城』
「大魔王のパワーで、世界を支配してやるデシュ~!!」
迷宮の最深部で『ヘッドスライム』が吼える。彼は今、分かりやすく高揚していた。
『ヘッドスライム』は直接戦闘に関してはそれ程の戦闘力を持たないいわゆる雑魚モンスターだ。だが、頭部を捕食した対象の全能力を奪うという恐るべき特性を持つ。
もっとも、強者相手には不意を突いたとしてもなかなか成功するものではない。
しかし、彼は今、それこそ世界征服も視野に入る様な身体を手に入れていた。
それは何かといえば超古代の『大魔王』の遺体だ。
大魔王の遺体は死んでいるにも関わらず絶大な力を秘めていた。
とは言え遺体なので勿論動かず、『ヘッドスライム』が頭部を捕食する事に成功したのだ。
結果が降って湧いた力に呑まれた『ヘッドスライム・大魔王態』である。
大魔王の疑似的な復活。
これに呼応して大魔王軍が幾星霜の眠りから覚め、ダンジョン内に咆哮が響き渡る。
●『魔王城』セーフティーエリア
「ど、どうしよう?」
「ここはセーフティーエリアだ。ここにいればとりあえずは安全なはず」
覚醒した大魔王軍の猛りにより震えるダンジョン。
その最深部で迷宮配信中であった迷宮配信者『スライムハンター子』と彼女のフォローを行っていたスラ友(彼女のファンである冒険者)達はセーフティエリアに避難していた。
ダンジョン内で襲い掛かって来るモンスターが急激に凶暴化した為に自力での脱出を困難と判断したためだ。
「|スラ友《視聴者》のみんな~ ごめんだけど状況を知らせて応援を頼んでもらえるかな?」
迷宮配信中だったのは希望と言えるだろう。
スライムハンター子は自分の視聴者たちに状況を説明して応援を頼んでいる。
モニターからは「任せておけ!」「もうした!」「気をつけて!」と概ね好意的な返答が流れている。
「絶対、みんなで帰ろうね☆」
「うん!」
「そうだね!」
スライムハンター子と彼女の|スラ友《協力者》は助けを待つ。
●星詠みから
「まあ、そういう状況だ」
古の大魔王の身体を乗っ取った『スライムヘッド』。
彼に呼応して蘇った大魔王軍。
迷宮最深部に取り残された冒険者達。
また大魔王と共に確認された王劍を求める|者達《簒奪者》。
少年に見える星詠みは状況を説明する。
「まずはダンジョンから飛び出そうとしている大魔王軍。それを粉砕するべきだろうね」
蘇った大魔王軍の内、入口に近かったものはすぐにでも地上へと出ようとしている。
大魔王が真の大魔王ならば統制もとれるだろうが『スライムヘッド』にその器量はない。
大魔王軍は見掛けこそ現代のモンスターに似ているがその凶暴性は段違いである。
地上で暴れれば被害は甚大となるだろう。まずはそれを防ぐ。
「その後は君達の好きにすればいい」
好きにすればいいと言いつつ選択肢を示す星詠み。
ダンジョン内で言えば大魔王討伐、大魔王軍の撃滅、迷宮配信者の救助。
ダンジョン外で言えば大魔王と共に確認された『王劍』を手に入れる為にダンジョンを目指す簒奪者の阻止。
最後はこの後に起こる戦いを見据えての超武器「誰かスレイヤー」の作成だ。
作戦1:『ヘッドスライム』の撃破。
作戦2:ユーカリが丘線の防衛。(対簒奪者)
作戦3:ダンジョンに溢れる古代のモンスターの駆逐。
作戦4:|迷宮配信者《ダンジョンストリーマー》の救出。
作戦5:『誰かスレイヤー』の創造。
この5つの作戦から参加したEDENによって選ばれる。
「ああ、王劍だがスライムヘッドを主と認めていない。だから現時点では王権決死戦、絶対死を考慮する必要はないよ」
星詠みの説明を聞き終えたEDEN達はユーカリが丘迷宮へと急ぐ。
第1章 集団戦 『ブルーワイバーン』
●青い翼竜の群れ
仮初の復活を果たした大魔王。それを感じ取って太古より蘇ったモンスター軍団。
『ブルーワイバーン』に似た翼竜の群れが復活した位置は迷宮の入り口近くだった。
内からの溢れ出す破壊衝動。
大魔王の指示があればそれに従うが、現状それはない。
ならば破壊衝動に身を任せても問題はない。
そう青い翼竜たちは判断する。
地上に近いことはなんとなく感じ取れる。
それでは地上に出てこの内なる衝動のままに破壊の限りを尽くそう。
青い翼竜たちは翼を広げて地上へと進撃を開始する。
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OPの画像設定をミスってとても悲しい……
ともあれ第一章は入口を目指す青い翼竜の群れをその途上で迎え撃ち撃滅するのが目的となります。データ的には『ブルーワイバーン』ですが、そこは大魔王軍。現代のモンスターより強い感じです。
『ブルーワイバーン』(大魔王軍)の群れ 戦力値800
※戦力値に関しては描写の参考にするだけですから気にしなくて大丈夫です。
興味がある場合はマスターページをご覧ください。
とりあえずこの翼竜たちを倒してから、次の目的に向けて動いて頂ければと思います。
破壊衝動に突き動かされて迷宮を進む『|ブルーワイバーン《青い翼竜》』の群れ。
地上までの道には広い場所もあれば狭い場所もある。
狭い場所でも巨体といえる翼竜が進めない程ではない。
しかし、並んで飛ぶのは無理と言う場所は何ヵ所か存在した。
その内の一つでメイド服に見える装いに白鞘の長刀を構えた女性が翼竜の前に立ち塞がった。
エピフィラ・ルニフローラ(A.N.C.-L-XVI《LUNIFLORA》記憶無き花・h13547)である。
「皆様の帰り道を、荒らさせはいたしません」
静かな声で告げるエピフィラ。
その表情は静謐であり翼竜に対する恐れは感じられない。
翼竜が彼女の言葉の意味を理解したかは分からない。
確かな事は翼竜がエピフィラを敵と認めた事だ。
翼竜が戦闘態勢へと移行して青鱗が輝き始めた、その瞬間。
「月華影心流――宵待、執行いたします」
エピフィラが跳躍して瞬時に翼竜の至近距離へと詰める。
そして一閃。
白鞘から『|月下美人《黒銀の刀身を持つ長刀》』が抜き放たれる。
その一撃は彼女の狙い通り翼竜の翼、その付け根を切り裂く。
バランスを失って落下する翼竜。
落下した翼竜は相応のダメージを受け、致命傷ではないが飛行は出来ない状態だ。
怒りに燃えた目で青鱗を蒼穹の色彩に輝かせながらエピフィラを探す。
しかし見つける事が出来たのは自身から遠ざかる白き花弁のみだった。
エピフィラが翼竜に放った技【|月華影心流・宵待《ゲッカエイシンリュウ・ヨイマチ》】は先の先を実現する技であり、その一撃の後は白い花弁を自身に纏わせて隠密状態にする。隠密状態と言っても攻撃すれば認識されるのだが、エピフィラの目的は一体を確実にしとめることではない。
翼竜の|群れ《・・》を地上に出さない事だ。
彼女は飛行能力を失い移動力を激減させた個体に構わずに後退して次の一体を待ち受ける。
果たして翼を傷つけられ地上でエピフィラを探す個体に構わず、その頭上を飛行して追い抜いた新たな翼竜。その翼竜の前にエピフィラは姿を見せる。
そして再びの【宵待】の一閃。
「地上へのご案内は、致しかねます」
エピフィラにより青い翼竜の進撃は大きく停滞する事となる。
●白いWZ
ユーカリが丘迷宮内は『|青い翼竜《ブルーワイバーン》』が飛行している事からも分かる様に天井は高い場所が多い。
その中でも異様と言える程に広い区間。
その中空で輝く白い|WZ《ウォーゾーン》と青い翼竜がぶつかり合っていた。
『リベリオン』と名付けられたWZを操るのはシリウス・アッシュフォード(眠れる天狼・h09102)という青年だ。
シリウスの√能力【プラネットハート】により星の命の煌めきを纏った『リベリオン』は破格の機動力と絶大な威力を誇る光の剣『スターライト・ブリンガー』を得ており、既に数体の翼竜を屠っている。
星光の聖剣を振るいながらシリウスは今回の事件の事を考える。
スライムヘッドにより復活した大魔王、暴れる大魔王軍、『王劍』を求める簒奪者。
そして最深部で救助を待つ冒険者。
どれも重要であり手を尽くす必要がるが、何をするにもまずは地上を目指す翼竜を殲滅してからだ、と。
「やるね」
光剣の一撃を躱して見せた翼竜をシリウスが褒める。その称賛は余裕の表れであった。
光剣を躱した事で体勢を崩した翼竜をリベリオンの『|ビット兵装群《オービット》』から放たれたビームが捉える。
この攻撃により動きが鈍ったところに間髪を入れずに接近して斬撃。
また一体、翼竜が地に墜ちていく。
大魔王軍である翼竜の基礎能力は高い。それに加えて【スカイ・フラグメント】により臨機応変に腕力や速度、時に隠密まで倍化して戦うので厄介な存在だ。
しかし、シリウスはその多様に倍化する能力全てに対応して見せていた。
今で言えば翼竜が速度を倍増させて初撃を躱すのを見切り、その移動先に予め射撃の準備をしていたのだ。
地に墜ち行く翼竜に目もくれず他の翼竜に向かうシリウス。まだまだ数は多い。
●黒いWZ
白いWZが上空で暴れ回る中、地上では黒いWZ『|W.E.G.A《ウェーガ》』が活躍していた。
『W.E.G.A』を身に纏って戦っているのは機神・鴉鉄(|全身義体の独立傭兵《ロストレイヴン》・h04477)である。
地上と言っても『立体起動推進機関』により短時間の飛行は可能であるし、それに『重力完成制御装置』を併用すれば縦横無尽といえる機動が可能で飛行する翼竜に対しても全く問題なく戦闘を行っていた。
翼竜が苛立たしげに【ブルーティッシュ・テイル】によって硬質化させた尾を振るう。これは尾に鋼鉄を超える硬度と鞭の様な柔軟性を持たせる√能力で単純ながら破壊力は抜群な攻撃だ。その攻撃範囲は広くかつ高速。回避困難な一撃である。
しかし、鴉鉄はそれを難なく回避して見せ、そのままアサルトライフルの火を噴かせて翼竜を穿つ。如何に『W.E.G.A』の機動力が優れていると言っても難しいこの行動を可能としたのは彼女の√能力である。
【|大地を砕く衝撃《グラビティ・インパクト》】。
超重力場を纏った拳による一撃を鴉鉄はこの戦闘が始まると同時に大地に打ち込んでいた。直撃すれば翼竜にも大ダメージを与えられる一撃を大地に放ったのは勿論目的がある。
『重力異常地帯』。
【大地を砕く衝撃】にはそれが打ち込まれた地点から一定の広さを重力異常にする権能があるのだ。これにより行動は著しく阻害されるのだが、鴉鉄の能力であるから当然の様に彼女自身は影響を受けない。
鴉鉄はこの半径六十メートルほどの重力異常空間を主戦場とする事で翼竜との戦いの主導権を握り続けていた。
●怪人と付喪神
白と黒のWZによる獅子奮迅の働きで翼竜が次々と撃破されていく。
しかし、翼竜の数は多く、黒白を無視して地上を目指す翼竜もいたのだが、それは果たされていない。
針屋敷・連音(針と鋏とを携えて・h02459)と一筆・双羽(群青世界・h10157)の二人が最後の関門として立ち塞がっているからだ。
翼竜の群れが飛び回れるほどに広い迷宮であるが、流石に地上への出入口付近はある程度狭くなる。此処ならば逃がすことはない。そう連音は考える。
【|刻印魔術:祭壇の山羊《エングレイブド・スケープゴート》】により耐久力と脚力を超強化させた連音は果敢に攻める。
とは言え敢えて一撃目は外す。
これは【刻印魔術】の超強化とは別の権能を発現させる為だ。
別の権能とは『祭壇領域』、敵意を自身に集中させる空間の創出である。
『祭壇領域』の効果により周囲の敵意を一身に受けても連音は怯まない。
超強化された脚力を以て駆け回って攻撃を躱し、そして蹴りを放つ。
今の脚力から放たれる蹴りの威力は翼竜の巨体を吹き飛ばす程のものだ。
とは言え周囲を囲まれている以上は敵の攻撃をある程度受けるのは覚悟の上。
強化された耐久力を以て耐えるつもりであったが幸いここまでほぼ攻撃を受けていない。
それは何故かと言えばこの場に居るもう一人のEDEN、双羽の力である。
双羽はこの戦場においての主攻を連音に任せようと考えた。
それは自分と連音が個々に戦うよりも連音の援護に徹した方が効率が良いと考えたからだ。
双羽は迷宮深部で助けを待つ冒険者達を一刻も早く助けたいと思っている。
ならば効率を重視するべきだろう。
【|結末指定《エンディング・コード》】と名付けた√能力で創造されたブルーブラックのインク瓶。そのインク瓶から魔法の様に飛沫が飛ぶ。
この飛沫は命中した対象を行動不能・防御力10倍・毎秒負傷回復状態とするものだ。
防御力10倍、毎秒負傷回復状態は敵に利するとも言えるが、行動不能による味方への利はそれを上回る。
連音が対応しきれない翼竜を見極めてインクにより、行動不能にしていく双羽。
これにより連音は一体、多くても二体との戦いに集中できる。
その程度の数であれば連音にとっては問題ない。
落ち着いて蹴撃により倒した後は【結末指定】により身動きの取れない翼竜にとどめを刺す。
如何に防御力が増大化して毎秒回復すると言っても、動かないのであれば元来の防御力が低い急所を狙うのは容易い。そして、必殺の蹴りでそこを貫けば毎秒回復程度では回復は間に合わないのだ。
シリウス、鴉鉄、連音、双羽。この四人の無言の内に成立した連携により、地上を目指した『ブルーワイバーン』は殲滅される事となった。
第2章 冒険 『暗闇ダンジョン』
●EDEN達
話し合いの結果、助けを待つ冒険者の救助を優先する事に決めたEDEN達。
大魔王軍を退けながらダンジョン最深部まで辿り着いた彼等の前には今、漆黒の空間が口を広げていた。
ダンジョン内というのは不思議な光により視界が確保されている事が多い。
現に此処までの道程で視界が通らないという事はなかった。
しかし、冒険者達が取り残されているというセーフティエリアに辿り着く為の道。
この道は不自然な程の漆黒の闇に覆われていた。
EDEN達は星詠みからの情報でこの道の先にセーフティエリアがある事を知っている。
内部は迷路となっているのだが時間経過で構造が変わるので地図はない。
この迷路、幾つもの分岐があり、間違ったルートに進むと強制的に入口に戻されるという厄介な性質がある。
この性質は双方向性で仮にセーフティエリアから入口に戻ろうとした場合に道を間違えればセーフティエリアに戻される仕様だ。
はっきりいって鬱陶しい仕様である。
さて、闇の中を進む事になるのだが対策はある。
壁面に明かりを灯せる台座が一定間隔で設置されており、これに暗黒迷路入口に設置された台座の火を灯す事で光源が確保できるのだ。
ただし、間違ったルートの台座に火を灯した瞬間、入口に戻される。
なお、火を灯さずに進む事も可能だ。
その場合でも間違ったルートに入ると強制転移されることに変わりはないが。
面倒な仕様ではあるが時間をかければ問題はない。
そういう状況の筈であったが突如、モンスターが転移して来た事で認識が変わる。
モンスター自体はEDEN達によって即座に倒されたがこれはセーフティエリアへの道をモンスターが進んでいることを意味した。
耳を澄ませば微かにモンスターの鳴き声が聞こえる。
これまでこの道をモンスターが進むという事はなかったが大魔王軍は別という事かもしれない。
大魔王軍がセーフティエリアに辿り着く前に後を追い、追いつかなければならない。
EDEN達は暗闇の迷宮に挑む。
●スライムハンター子達
「スラ子ちゃん、鳴き声が聞こえない?」
「まさか……モンスター!?」
モンスターの鳴き声はセーフティエリアに居る『スライムハンター子』達にも聞こえる。
彼女達の間に緊張が走る。
セーフティエリアはこれまで安全と言われていた。
それ故のセーフティエリアなのだが別に特殊な結界が張られているとかではない。
たんにこれまでモンスターが来ることがなかったというだけだ。
しかし、彼女達は常軌を逸して暴れる大魔王軍を見ている。
明らかにこれまでのモンスターとは違った者達。
あの|モンスター達《大魔王軍》相手には此処も安全とは言えないのかもしれない。
「戦うよ。助けは来てくれるはず。それまでは諦めない!」
「うん」
「分かった」
彼女達とて最深部まで辿り着く事が出来る冒険者だ。戦闘が出来ない訳ではない。
しかし、大魔王軍と比べれば分が悪い。
セーフティエリアに辿り着くのは大魔王軍かEDEN達か。彼女達の明暗が判明するのは少し後の事だ。
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第一章の参加ありがとうございました。
一言雑談を確認させて貰った結果、第二章は『作戦4「迷宮配信者の救出」』とさせて頂きます。
暗闇ダンジョンを今、大魔王軍、強化されたゴブリンみたいな集団が進んでいます。
皆さんにはこれに排除しつつ暗闇の中を進んでセーフティエリアを目指して貰います。
入口にある火を取って壁の台座に火を灯すメリットは帰り道が楽になるというのがあります。
帰りはスライムハンター子と彼女の仲間2人、合わせて3人を連れて行かなければならないので暗闇のままでは事故(はぐれるとか)が起こりかねない感じですね。
勿論、皆さんの判断次第ですので必須ではありません。
また迷路内にいる大魔王軍ですが、皆さんの実力なら問題なく倒せます。
なので「こんな風に倒す」と書いていてくれればそれで倒せます。
最後にどんな風に迷路を攻略するかをプレイングで教えて頂ければと思います。
これがない場合、迷うかもしれません……素の成功率を見て判断します。
具体的な方法が書いていた場合は成功率に関係なく迷いません。
それでは救助を待つ冒険者達をよろしければ助けてあげてください。
なお、途中参加は問題ありません。
●
取り残された冒険者達が居るセーフティエリア。
其処へと続く道は漆黒の闇に包まれた暗闇迷宮であった。
|モンスター《大魔王軍》が進んでいる事を把握したEDEN達は協力する事にする。
●
機神・鴉鉄が松明を片手に暗黒の空間を進んでいた。
松明の火は暗黒迷宮入口の台座の炎からとったもので魔法的な力を秘めているのか不思議と熱くないが辺りを淡く照らしている。
この炎を壁面に取り付けられている台座に灯しながらの移動である。
「抜本的な解決策がない以上、試行錯誤しながらセーフティエリアへの正しいルートを探すしかなさそうですね」
オーソドックスと言える攻略法。これが鴉鉄の出した結論であった。
灯りを点けていけば、例え道を間違って入口に戻されたとしてもその間違えた地点までは問題なく進む事が出来る。
これを繰り返せばゴールであるセーフティエリアにいつかは辿り着くのは間違いない。
とは言え鴉鉄には自身が入口に戻される気はまるでなかった。
「さぁ、行ってください」
目の前にある四つの分岐を見て【|天馬を駆る九姉妹《ワルキュリア》】の権能で使役する『|自律移動型偵察支援端末《ワルキュリア》』を左から順番に進ませる。
最初の一体は少し進んだ後、入口に転移させられた。
五感を共有する鴉鉄はそれを確認して次の通路へと新たな『自律移動型偵察支援端末』を進ませる。
これもまた入口へと転移。
次の一体が無事に進み続けているのでこれを正解ルートと認定して鴉鉄自身も進む。
鴉鉄が使役する自律移動型偵察支援端末は全部で九体。
まだ余裕があるし、入口に転移させられた端末も大急ぎで鴉鉄に合流するべく進んでいる。
また、この場に居るのは鴉鉄だけではない。他のEDEN達もいるのだ。
●
エピフィラ・ルニフローラもまた持参の携行灯に入口の魔法の火を灯している。
この魔法の火を鴉鉄と手分けして壁面の台座に継ぎながら進んでいた。
これは自分達だけの為ではない。
「帰る方々の足元まで、闇に預けはいたしません」
この事であった。セーフティエリアに居る『スライムハンター子』達3人。
彼女達は不安の中、助けを待っている事だろう。
その彼女達を帰路において暗闇の中を手探りに進ませるつもりはエピフィラにはなかったのだ。
また念には念を入れて分岐の形・台座の特徴・通過時刻・選んだ枝を記録しながら進んでいる。
通常、迷宮内に誰かがいる場合は時間経過による構造変化はない。
だが大魔王が復活している今、絶対という事は誰にも言いきれないだろう。
エピフィラは冒険者達を全員無事に地上に送り届ける為に万全を期するつもりであった。
●
シリウス・アッシュフォードは『リベリオン』に搭乗したままだが今は『|オービット《ビット兵装群》』を機体の周囲に展開させている。
オービットは攻撃兵器としての側面が強いが索敵の機能も有しているからだ。
シリウスは最初これを先行させる事を考えたが、すぐに断念していた。
彼は優れた第六感の持ち主であり、分岐も直感で成功を引き当てる可能性は高い。
しかし、間違う可能性も皆無ではない。
そして間違った道にオービットを先行させた場合、オービットだけが入口に転移させられるだろう。
オービットは思念操作で動かしているのだが流石に迷路の中から操って自身の元に戻すのは至難だ。
それでもオービットは数があるので帰りに拾えば良いと割り切って進む事も可能ではあったが、ここには目的を同じくする|EDEN《仲間》がいる。無理をする必要はないだろう。
ではなぜ展開させているかと言えば本領である索敵の為である。
索敵機能は暗闇に潜む大魔王軍を鋭く察知して奇襲を許さないという効果を発揮していた。
「オメガフレアの火で無理か。特殊なギミック的なもののようだね」
入口の台座の炎以外で通路の台座に火が灯るかを試してみるが点かない。
ゲームの造詣も深いシリウスはそういうものかと納得する反面、まあまあクソゲーよりだなと思ったりもしている。
●
「それは針なのかな?」
「……ああ、ヘンゼルとグレーテルではないがな」
「なるほど!」
迷宮の壁面に自らが生み出した針を刺していた針屋敷・連音。
その様子に興味を持った一筆・双羽が訊ねた際の会話だ。
鋼針怪人の連音にとって針を生み出すのは基本的な能力であり造作もない。
他のEDENが通路の明かりを灯しながら進んでいる為に必要はないかもしれないが何事にも万が一はある。
連音が突き刺した針はまあまあの大きさで仮に火が何らかの理由で消えたとしてもこれを目印にすれば迷うことはないだろう。
そんな連音の行動に双羽は素直に感心している様子である。
そういう双羽も仲間が通路の台座に火を灯し、正解だと確信できたら周囲を撮影する事で万が一に備えている。
翼竜の群れとの戦いではからずも共闘した二人であったが慎重さでも似た部分があるようであった。
「この道が正解だ、多分な」
嫌がらせの様に五つに分岐した道。
【|刻印魔術・潜み行く兎《エングレイブド・ハイディングラビット》】を発動させた連音が言う。
契約した兎の精霊、その魔力により感覚――聴覚を強化した連音は耳を澄ませることにより、一つの道の奥深くから何かが歩くような音を聴きとったのだ。今、この時にEDEN達以外に迷宮を歩く者はモンスターだけであろう。
「うん、ボクもそう思うよ」
それに双羽が賛同する。双羽はその風使いの能力により五つの道から流れる風を感じ取っていた。
ほとんど動いておらず判断が難しいが連音が指示した道はごく僅かであるが流れを感じ取った気がしていたのだ。
その感覚を連音の言葉によって補強されたための賛同である。
果たして進んで見れば連音と双羽が示した道は正解であった。
●
EDEN達に先んじて進んでいた大魔王軍。
彼等の進行速度はEDEN達に比べれば大きく劣り、程なく追いつかれる事となる。
「見え見えだよ」
EDENが近付いて来た事に気付き暗闇に紛れて奇襲を掛けて来たモンスター。
それを星光剣の一閃で斬り伏せてシリウスが言う。
そう言葉の通り見え見えであった。
続いて襲い掛かろうとしたモンスター達もオービットから放たれたビームで焼き尽くされる。
「そうだね、無駄、だよ」
シリウスが容赦なく殲滅している少し離れた場所では双羽が無数の紅葉によりモンスターを切り刻んでいる。
彼女の周囲に不自然に舞っている紅葉は勿論、双羽の√能力によるもので攻撃の他に索敵の権能も持つ。
これにより今の双羽に奇襲を成功させるのは至難の業であった。
「やるな」
そんな双羽の戦いぶりを奇襲を仕掛けようとしていたモンスターを逆に奇襲で仕留めながら連音が褒める。
「此処で倒させていただきます」
冒険者達の元へは行かせないと月華影心流の技を以てモンスターを斬って捨てるエピフィラ。
「……」
語る価値もないとばかりに無言でモンスターを屠る鴉鉄。
EDEN達の活躍により大魔王軍はセーフティエリアに辿り着くこと無く殲滅される事となった。
●
「お迎えに上がりました。地上まで、ご案内いたします」
セーフティエリアに辿り着いたEDEN達。
安堵と警戒が入り混じった表情を見せる冒険者達にエピフィラは安心させる様に微笑を作って見せて告げる。
その言葉を聞いて顔を見合わせて喜びを爆発させる冒険者達。
「ありがと~☆」
「よかった!」
「助かった!」
「間違いはないと思いますがお三方のお名前をお聞かせいただけますか?
また、負傷がある方は仰ってください。手当を致します」
三人の様子に安堵の思いを抱きつつも言葉を重ねるエピフィラ。
一先ず最悪は防げた。しかし、全員を無事に地上に連れだすまでが彼女の目的だ。
もっとも共に此処まで来たEDEN達と一緒であれば問題なく達成できるだろう。
程なくして地上でEDEN達にお礼をいうスライムハンター子達の姿が見られるのであった。