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メスガキ喫茶へようこそ

#√EDEN #√汎神解剖機関

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●星詠みの啓示:√EDENの怪異
「……あなたは√能力者? そう。来てくれて、感謝」
 √EDEN、東京。
 大通りから外れた静かな路地裏で、ボクシンググローブを嵌めた少女……三船・こぶし(とりあえず殴れば解決すると思う・h03348)は、あなたに向けてそう告げた。
「それじゃあ、見えた未来の説明、させてもらうね」
 もたれかかっていた壁から背を離し、小柄な身体でこちらを見つめる少女。彼女は抑揚の薄いマイペースな口調で、一言一言を区切るように、話し始める。

「一言で言うと、『√汎神解剖機関』から『√EDEN』への侵略。√汎神解剖機関の人間災厄が、この世界からインビジブルを奪おうとしている」
 簒奪者の楽園、√EDEN。この世界は常に、侵略の危機に晒されている。それはよくある危機であり、だが、放置してはおけない危機である。
 そして人間災厄とは√汎神解剖機関において存在する、ひとの形をした『災厄』だ。その災厄の到来は、楽園にとって決して看過出来ない。
「だからあなた達には、この災厄が生み出した『メスガキ喫茶』に潜入して、怪異の目論見を打ち砕いて欲しい」
 そこまで説明した後。こぶしは何やら不思議そうに、首を傾げる。
「……メスガキ喫茶って、何?」
 それはこっちが聞きたい――この場の√能力者の思考が、期せずして一致した。

「……ん。メスガキ喫茶というのは名前の通り、店員がメスガキとして客をもてなす、特殊な喫茶店。こういうのを、コンカフェ……コンセプトカフェと言う。と、思う」
 首を傾げ傾げ、説明を続けるこぶし。メイド喫茶でメイドが客をもてなすように、メスガキ喫茶ではメスガキ(に扮した店員)が客をもてなすらしい。
「店員は客を可愛く罵り、客はそれで満足する。そういうコンセプト。……結構繁盛してるらしい」
 さて、そんなメスガキ喫茶だが、どうやら怪異の仕業のようだ。安心したというか、怪異でなくてもそんなのがあっておかしくない√EDENの奥深さというか。
 だがこの怪異は普段は潜んでおり、普通に喫茶に乗り込んでも姿を現さない。店員も、一般人の少女が中心であり、怪異ではない。
「そこで、この喫茶店に潜入調査を行ってもらう。アルバイト」
 メスガキ喫茶はいつでもアルバイトを募集している。女性ならば、店員として採用されると良いだろう。もちろんメスガキというからには基本的に若い少女の方が好ましいはずだが、大人の美女がメスガキに扮するのもそれはそれで需要がある。らしい。√能力者は並外れた美女が多いので、多少芯からずれていても許されるのだろう。
 男性はよほど可愛くない限り接客係として採用されるのは難しいが、裏側での調理や力仕事は募集しているので、そちらを狙うのが良いだろう。
 逆に女性は、裏側の仕事を希望しても店員になるように強く勧められる。
「一応、客として潜入しても、良い。メスガキに罵られても、大丈夫な人向き。むしろそれで喜ぶ人向き」
 あまり不審がるとなぜ客として来たのかと疑われるので、本心からメスガキ喫茶を楽しめるか、演技力が完璧であるのが好ましい。

 まあバイトとしてでも客としてでも潜入に成功し、しばらく活動を行っていれば、そのうち怪異の手がかりを掴む事ができるだろう。そうなれば後は、戦闘によってこれを排除するのみだ。
「最初に現れるのは、√EDENの簒奪者集団、『人喰い蜘蛛なメイドたち』。読んで字の通り」
 糸によって拘束し、鎌状の触肢によってトドメを刺す、一見可愛らしいが凶悪なメイド達である。一対一なら√能力者が負ける可能性は低いが、相手は数が多く、こちらを囲んで倒そうとしてくるので注意が必要だ。
 ちなみに何かの影響を受けてか、言動がメスガキっぽくなっている。
「どこで戦う事になるのかは、分からないけど。一般人は、巻き込まないように注意」

 メイドたちを倒せば、今回の首謀者となる簒奪者が姿を現す。
「『人間災厄「暴虐のメスガキ」』。……人間災厄にも、いろいろある」
 暴力性とメスガキという概念が混ざり合って生まれたというその人間災厄は、身の丈程の大剣による物理攻撃と罵倒による精神攻撃を得意とする。
 なんともふざけた存在だが、強力な簒奪者である事は間違いない。その妙なノリに油断すると、心をへし折られて身体を真っ二つにされる事だろう。

「……説明は、以上。変な依頼だけど、星は確かな世界の危機を示している。放っておけば大変な事になるのは、本当」
 こぶしは自分でもいまいち納得いっていない様子でしきりに首を傾げながら、それでももう一度あなたに視線を向ける。そしてその困惑をそのまま託すように、大きく頷いた。
「……あなた達の力で、なんとかしてほしい。期待している」

●メスガキの心得
「いーい? メスガキっていうのはね、お客を蔑み、見下し、罵るわけだけど。そこには愛が必要なの。分かる?」
 バイトとして潜入した√能力者達に対し、指導役の店員がそう話す。
「といっても、お客を上に見てはいけないわ。あくまでメスガキが上、客が下。そうね、お気に入りの玩具を弄り回すように扱いなさい」
 随分とふざけたコンセプトカフェだが、働いている側は真剣なようだ。世の中には、いろんな世界がある。
「あたし達が上なんだから、下の相手を満足させて帰せないのはメスガキの名折れよ。情熱をもって、負ける事を喜ばせてやりなさい!」
 まあ、そのコンセプトをどこまで理解できるかは、人それぞれだろうが。これも世界のためである。
これまでのお話

第3章 ボス戦 『人間災厄「暴虐のメスガキ」』


「ふぅぅん。なぁに、あんた達、あたしの邪魔をしに来た訳ぇ?」
 仔蜘蛛達を排除し、捕らわれの人々を救出した√能力者達。だが地下室の奥に隠されていた扉から、そんな声と共に一人の少女が現れる。
「ざこのくせに、あたしに勝てると思ってんの? あっ、それとも、そこの蜘蛛みたいなざこを倒したからって、勘違いしちゃったぁ?」
 甘ったるい声でこちらを嘲る、いかにも生意気そうなメスガキ。その罵倒は対立者の心を挫き、屈服させる力を秘めている。そして身の丈ほどの重く鋭い大剣を、片手で振り回すほどの膂力。
「ごめんねぇ、勘違いさせちゃって。あたしが責任持ってわからせたげる……ざこは勝てないからざこなんだってぇ♡」
 『暴虐のメスガキ』……暴力性とメスガキという概念が混ざり合って生まれたという、人間災厄。
 その原因や発生の仕方はともかくとして、人間災厄と言う触れ込みには反しないと言うのも、紛れもない事実。
 このメスガキ|をわからせ《に勝利し》ない限り、今回の事件が本当に解決したとはいえない。