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⚡️オーラム逆侵攻~その迂闊さを悔いよ
「√ウォーゾーンの統率官『ゼーロット』が√EDEN侵攻を企てていることは聞きました?」
今回はそれについての話なんですけどと前置きした戸桜・リデル(人間(√EDEN)のルートブレイカー・h00081)は話し始める。
「企ててはいるんですが、戦闘機械群に侵入した二重スパイの妨害もあってあちら側は未だ軍備を整えていないらしいんですよ」
そこでこれに乗じ、√ウォーゾーンの敵拠点『レリギオス・オーラム』をこちらが逆に急襲し、ゼーロットの軍備を先制攻撃で破壊しようという訳だ。
「そう言う訳で皆さんは√ウォーゾーンの川崎市・川崎臨海部周辺に赴いてもらうんですが、ここは完全なる『戦闘機械都市』に造り変えられていて、足を踏み入れる生命体を自動的に激しく攻撃します」
行く手を阻むどころか迎撃装置が完全に殺しに来ているがまずはこれを何とか搔い潜って進まねばならない。もちろん余裕があるなら戦闘機械都市の攻撃機能に打撃を与え破壊することで弱体化させてもいい。
「そこから先については皆さんが何を目指すかによって変わってきます。まず今回の作戦目的は次の五つ。順に書き出していきますね」
話しながらリデルはペンを走らせる。
作戦1:統率官『ゼーロット』の撃破
作戦2:オーラム派機械群の壊滅
作戦3:大黒ジャンクションの破壊
作戦4:√能力者の解放
作戦5:カテドラル・グロンバインの破壊
「と、詳細説明は省いて書きましたがこんな感じです。作戦ごとに目的も目的地も違って来るので状況も変わってきます」
例えば作戦1を採用るなら統率官『ゼーロット』の所在する場所に向かう必要が出てくる。
「ゼーロットの居場所に関しては√ウォーゾーンの羽田空港に築かれた『カテドラル・ゼーロット』であることが既に判明しているので道中に配備されている戦闘機械群を可能な限り躱しつつ羽田空港に向かうこととなりますね」
つまり敵との交戦が予想されるという訳だ。
「どの作戦をとるかによって説明することは変わってきますし、採用しない作戦迄全部説明してると採用しないのは無駄になりますし時間もかかってしまいますんで」
相談しつつどの作戦を採用するかを君たちで決めて欲しいという。
「しっかり相談して悔いない選択を」
ではよろしくお願いしますねとリデルは頭を下げた。
これまでのお話
第1章 冒険 『戦闘機械都市を駆け抜けろ!』

「はええ、知らないところで二重スパイが頑張ってたんだねー」
そう説明を聞いた時はポカンとした表情で驚いていた|雪月・らぴか《ゆきづき・らぴか》(霊術闘士らぴか・h00312)は今、√ウォーゾーンの川崎市・川崎臨海部周辺へと向かっていた。
「いきなりゼーロットの侵攻とかあったらやばかったし、こっちから攻めるチャンスもできたしでありがたいよね! それに、なんといってもこの展開はテンション上がっちゃうね!」
√を移動し、あちらに|到着《つけ》ば手荒い歓迎が待っていることを知っていて尚、らぴかの口元は嬉しそうに緩む。
「まずは戦闘機械都市を何とかしないとね! あとから来る人とかもいるかもしれないし」
自身の望む目標と後続の√能力者の望む今回の逆侵攻の目的が違えども入り口であるここを突破することは共通で、抜けなくては話にもならない。だからこそ、らぴかは動き出す迎撃の域を超えた殺意の高さを有す迎撃装置に一切怯まない。らぴかを追う装置の銃口にも足は止まらない、むしろ銃口を置き去りにするように駆け出し。
「こいこい集まれ吹雪の力っ! ズバッと一発れっつごー!」
らぴかの左拳が吹雪を纏った瞬間、らぴかが急加速したことで侵入者に狙いを定めようとした銃火器はらぴかの姿を見失う。
「はい、一発!」
見失った標的を探す様に左右に振れていた銃身部分に耳は存在しない。だかららぴかの声を把握も理解もできないままに殴打によって拉げた銃身は役立たずとなり。
「二発目いっちゃうよー」
慌てて仲間の迎撃装置が破壊された場所を向いた別の銃はいつの間にか肉薄され、続く一撃で銃身を叩き曲げられ、それでも発砲しようとして暴発、内部からはじけ飛び。
「あそこはやめとこうかな」
流石に迎撃装置の密集部はらぴかも避け迂回していたが、らぴかの侵入自体を迎撃装置は止められず、らぴかの後方には迎撃装置が打ち壊されたことで道ができ始めていた。
「戦闘機械都市だけあって、自動攻撃用の兵器には事利かないわね」
味方の作った道とは言え危険が全く残っていない訳ではない。散発的な攻撃を乗り込んだ決戦型WZ「プロメテウス」に躱させつつ、ヘカテー・ディシポネー(悪の秘密結社オリュンポスの女幹部候補生(仮)・h06417)は呟くと隙を見て視線をバイザーの中に映る空へ留める。
(素早く移動出来るならしたいけど、上空から移動するには、悪目立ちし過ぎるからそうはいかないし)
いくら生身でないとはいえ出来ることとできないことがある。ヘカテーを乗せたプロメテウスは大空に飛び立ちせず、高度は下げれどもいくらは浮き上がったままと空中を滑るように建物の合間を進み出す。その後ろを進んでいるのは|吉野・茂人《よしの・しげと》(4人で1人・h02464)が駆る量産型WZ『グレイブドール』だが、グレイブドールはくるりと後方へ向きを変えると腕を突き出させ、展開したバトルガントレットから仕込んだ大型砲の砲口を露出させる。
「コイツは足が遅いんでな、みんなは先に行ってくれ。俺も後から追いつく」
迎撃の砲撃を躱されたことに業を煮やしたのであろう。ひょっとしたら今ヘカテーたちのいる場所を砲撃できる迎撃兵器が破壊されてということも考えられるが。
「雨も降れば雷も落ちる、そんな戦場へようこそ」
いずれにしてもこのまま行かせてなるものかと言わんがばかりに現れ出でた自身で移動できるタイプの迎撃装置へグレイブドールは弾丸を放ち、雷を帯びた弾丸に穿たれた迎撃機械は火花を散らした後、爆散して破片を周囲にばら撒いた。
「テメェらの相手は俺だ!」
更に展開した武装を大型砲からマシンガンに切り替えると茂人はレイン砲台からのレーザー射撃と同時に後続の歩行する迎撃機械群へ銃弾とレーザーをお見舞いする。カサカサと進んで来た迎撃機械は穴だらけになって爆発し、その残骸を乗り越え姿を見せた迎撃機械へも銃弾の雨やレーザーがぶち当たる。
「援護します」
「必要ない、先に行け。援護ならそっちの方が必要な筈だろ」
そこで不動院・覚悟(ただそこにある星・h01540)が声をかけるも茂人のグレイブドールは振り返りもせず銃弾を吐き出し続け。
「わかりました、ご無事で」
一理あると見たのか走り去ってゆく覚悟の足音を聞いて茂人は|瓦礫と残骸を組み合わせて作られた獲物《ジャンクブレード》を振りかぶる。
「行かせるか!」
蜂の巣にされた仲間を盾代わりにグレイブドールに肉薄、横を通り抜けようとした蜘蛛のような迎撃機械は叩き潰されてスクラップと化し。だが、横を抜けようとした一機に注意が向いたことで同様に仲間を盾にしてしのいだ別の迎撃機械が飛びついてきて。
「ちぃッ」
舌打ちしながら茂人が対処しようとした瞬間。襲い掛かって来た迎撃機械は撃ち抜けれてひっくり返り爆発する。
「っ」
振り向かなくても茂人にはわかった。離れてゆくはずの足音が止まった直後だったから。
「急いで追いつかなくては」
|ブローバック・ブラスター・ライフル《終焉烈火》を下ろした覚悟は先行するヘカテーの機体を追いかけて再び走り出す。
「成程、完全に造り替えられているだけあって迎撃装置だらけね」
そうして殿と先行する者、先行する者を援護しようと走る者へと侵入者がわかれている中、|矢神・霊菜《やかみ・れいな》(氷華・h00124)は少し遅れて√ウォーゾーンの川崎市・川崎臨海部周辺へとたどり着いた。もちろん悠長に周囲を見物して居られる程に平和でもない。
「あら」
先に通った√能力者たちに破壊された残骸の中に生き残りが混じっていたのか、それとも√能力者が先に行った後に駆け付けたのか。先ほどまで霊菜が立っていた場所を銃弾が通過する。
「共命」
ただし、迎撃機械が霊菜を狙った代償は自身の破滅であったが。氷雪の神霊「氷翼漣璃」を纏い一気に接近して来た霊菜が放った氷刃裂葬は銃身だけでなく迎撃機械の本体も真っ二つに斬り裂き、二つに泣き別れた機械の身体は数秒出鱈目に動いてから沈黙する。
「こんなところね」
喫緊の危険を退けた霊菜は完全には警戒を解かず、点々と転がるスクラップが道しるべとなった前方を見やる。
「先行している仲間を追いつつ破壊できるものは破壊してしまいましょうか」
二度あることは三度あり得る。迎撃機械が破壊されていても補充に他所から機械がやってきていることもありうるのだ。
「氷翼漣璃、片方は上空からルートの確認を。もう片方は進路を先導して」
先ほど身に纏っていた|神霊《氷翼漣璃》へと指示を出すと霊菜は辿り始める、迎撃機械の残骸を。
「今のは」
そうしてどれほど進んだ後のことか。戦闘音が聞こえて足を早めれば、迎撃機械を破壊しながら足止めをしていたグレイブドールを目にすることとなる。
「なんだ、味方がまだいたのか」
光学迷彩発生装置を使いそろそろこの場を立とうとしていた茂人は動く迎撃機械がもう周囲にないことを確認してから銃撃をやめ。
「先に行け。すぐにこちらも後を追う」
同行してもいいのだろうがそれでは光学迷彩の意味がないと見てか霊菜を先に行かせると。
「今の味方が合流できるならこちらも合流は可能な筈だ」
そろそろ行くかと今度こそ光学迷彩発生装置を起動させ。
「全員無事ならいいんだが……」
そう機内で茂人が呟いていた頃。
「相談の通りなら川崎市中心部に向かえばいいんだったわよね」
「そうですね。この調子ならたどり着くのも時間の問題の筈」
人間相手には過剰な大型の火器を備えた迎撃機械を破壊するヘカテーへ同意しながら覚悟が|屠竜大剣《滅巨鋼刃》を振り下ろして半壊しながらも這いずる小型迎撃機械を両断して完全に沈黙させる。最初は先行していたヘカテーのプロメテウスも迎撃機械を潰すうちに行軍速度が落ち、覚悟と合流することとなったらしい。
「後は吉野さんたちが合流して下されば」
とも覚悟が言うのは合流すれば次の目的地へ向けて出発できるところまで侵入できたからでもあって。
「居たな、そこか」
後方からグレイブドールが現れたのはそれから暫し後のこと。こうして√能力者たちはオーラム派機械群の壊滅をするべく川崎市中心部方面へ進み始めるのだった。
第2章 集団戦 『レオボルト』

「あれは……」
四足歩行のWZが建物の間をそろりそろりと歩いていた。レオボルトと言うその機体は人型戦闘機械が搭乗するもので、偵察・奇襲を主任務とし、その隠密性や機体間の連携を強味とする。故にか√能力者たちが目にしたレオボルトも単機ではなく、数機で固まって動く機体の中に一機だけアンテナの生えた機体が見受けられた。
「情報通りなら」
サポートAIが連携戦闘特化のため、指揮官機が撃破されると一気に弱体化するという情報からすれば真っ先に狙うべきはそのアンテナ付きなのかもしれない。ともあれ、このWZらが√能力者の倒すべき相手の様だった。
「先行偵察型のWZ部隊のようね。指揮官機もいるようだし、連携能力は侮れなさそうよ」
無表情のまま姿を見せたWZを見やるヘカテー・ディシポネー(悪の秘密結社オリュンポスの女幹部候補生(仮)・h06417)の声に|千堂・奏眞《せんどう・そうま》(千変万化の|錬金銃士《アルケミストガンナー》・h00700)は視認できる機体の数を数えてから嘆息する。
「群による連携をも可能とした隠密もできるWZ機体か。厄介極まりないな」
だからと言ってみなかったことにするという選択肢は存在しない。
「うひょー! 殲滅だー! っていう方針でいくんだね!」
つい先ほど合流を果たした変わらず高いテンションの|雪月・らぴか《ゆきづき・らぴか》(霊術闘士らぴか・h00312)が口にしたことが全てだった。
「倒せばいいってのはわかりやすくていいよね! 早速敵がうろついてるし、ササッと蹴散らして勢いつけたいね!」
「あっ、ああ……」
同意を求めての言だったかは定かでなくとも今すぐにでも飛び出していきそうなテンションで言われれば、否定するのは少数派ではなかろうか。こうして√能力者たちは動き出す。
「2つの刃をクルクル回せば、私自身が猛吹雪ー! っと、指揮官機先に倒すといいってことだから、奇襲っぽい感じでやっちゃうといいかな」
自身の魔杖を|両端から生えた氷の刃がピンクに輝く魔杖両鎌《両鎌氷刃ブリザードスラッシャー》形態にしてから近くの物陰に潜り込んだらぴかは機を窺い。
(連携も隠密もできるというなら、可能な限りその強みを潰して連携の妨害をしつつ指揮官機を狙えそうなら優先して撃破していった方が良さそうだ)
奏眞は高速で始めた詠唱を多重に重ねながらアンテナの生えたレオボルトをじっと見据え。
(敵を動かすには、こちらからの大胆な行動も必要ね。バックアップは、味方を信じて任せるとして――)
ヘカテーは一度だけ振り返ってからコアと搭乗する|決戦型WZ《プロメテウス》を連結させる。
「これこそ、私の真の姿だ! |中核結合極限強化《コア・リンケージ・マキシマムブースト》!!」
プロメテウスが極限強化モードへと姿を変えたことで流石にその存在に気づいたのか、何機かのレオボルトもまた動き始めた。だが、ヘカテーからすれば敵を動かすことこそ狙い。不都合など一切なく。|高火力の試作型レーザーライフル《試作型ウルカヌス・レーザーライフル》から迸る光へ足を止めさせられたレオボルトへプロメテウスは距離を詰めて。
「この戦場に一筋の炎を灯します。絶望を払うために――『守護する炎』!」
|柄から尖形状の光刃を展開させるWZの白兵戦用武器《プラズマサーベル》を見て跳び離れようとしたレオボルトが左の前脚を撃ち抜かれてバランスを崩し。
「命中ですね、今です」
炎と共に姿を見せた不動院・覚悟(ただそこにある星・h01540)はそこまで見届けてからプロメテウスへ声をかけつつ狙撃の体勢を解いた。
「ありがとう。これで数が減らせるわ」
隙だらけになったレオボルトを両断したプロメテウスは覚悟の方を振り返らずに前へ。指揮官機と思しきレオボルトも自身が狙われることは理解していたのだろう複数機で固まった集団の中央に位置していて。これで指揮官機を狙う道は開いたように思われた、それでも。
「こちらも負けてられんな。行くぞ」
|吉野・茂人《よしの・しげと》(4人で1人・h02464)が搭乗するグレイブドールは|粒子状のレーザー発生装置《レイン砲台》を起動。
「相手が隠れているなら、隠れたままぶっ壊すまでよ!」
敢えて見えている敵機ではなく敵機の居る周囲を対象に決戦気象兵器「レイン」からレーザー光線を降らせた。
「こっちもフレンドリーファイアを起こさないよう努力はするが、流れ弾には警戒してくれ」
そんな味方に言い添えた声が届くのは、奏眞が味方間で使用できる通信網を精霊術で構築していたからだろう。
「派手にやってるわね。けど好都合。仲間が敵の炙り出しをしてくれるなら、私は片っ端から凍てつかせてあげるわ」
仲間が開始した攻撃の対応にレオボルトらが追われ、潜伏場所からレーザの雨によって追い出されるレオボルトまでが現れるのを見て、|矢神・霊菜《やかみ・れいな》(氷華・h00124)は腕輪の形をとっていた融成流転を剣へ変えると凍気を宿して一閃させる。
「舞い散れ」
放たれた飛ぶ斬撃は広がりながら複数のレオボルトに傷を刻むと返す一撃分を含んで生じた傷から機体は凍り始める。
「指示を受けても凍っていればそう容易く連携は取れないでしょ?」
実際、霊菜の指摘は事実だった。
「うひょー! 大混乱だね!」
そのまま隠れている筈が潜伏場所から飛び出してしまった上に凍り付いた部分が動かなくなる伏兵戦力。レオボルトの搭乗者らからすれば最初から姿を見せている部隊が襲われた場合、潜んでいた機体が襲撃者を襲撃する手はずだったのであろう。想定外の攻撃を受けた伏兵戦力は窮地に陥り、想定外の事態に固まる機体、指示を乞うかの如く指揮官機の方を見る機体、右往左往する機体。まさにらぴかの言う通り、敵機の操縦者たちが混乱のただなかにあるのは間違いなく。
「狩り時だー! いっくよー!」
だからこそ、ここまで様子見していたらぴかは物陰を出た。
「いつの間にか近づかれてた、とかないように周りもちゃんと見ないとね」
右左右と確認して突っ込む先に居た敵機はヘカテーのプロメテウスが斬り捨てて、高速で接近してゆくらぴかを阻む者はない。
「|装填《Laden》完了。援護するぜ」
それでも指揮官機は他のレオボルトが囲んでいたが、動き出そうとする前に強力な電磁波パルス属性の弾丸が奏眞から放たれ、時間差撃ち込まれたそれをヘカテーや茂人の機体に目があるいはらぴかへ注意の向いていた機体は防ぎ損ねた。
「いっけー!」
被弾する中、レオボルトの搭乗者らが聞いたのは、らぴかの声と指揮官機の装甲が氷の刃に削られる音。指揮官機の搭乗者だけは機体が両断される前にコクピットまで侵入してきた刃に意識ごとその身を断たれ。
「敵の連携が――」
乱れるどころではなかった。指揮官機は爆散し、残った敵機が動揺したところで奏眞はセミオート式スナイパーライフルから魔力の刃を生やして切り込むと。
「もう問題なさそうね」
ヘカテーはらぴかが突っ込んでいったことで一度止めた弾幕を奏眞が敵を斬りつけて離脱するところまで見届けてから再び張りはじめ。
「後々別の指揮官機が合流して、とかになったら困るものね。会敵必殺、しっかり破壊しておかないと」
斬られ、弾幕に巻き込まれ、数を減らしたレオボルトたちを霊菜が掃討してゆく。
「何機か貰うぞ」
そのさなか、茂人もまたレイン砲台からのレーザー射撃で何機かを撃ち抜くが、この頃には指揮官機を討ったらぴかは次の部隊を討つべく隠れてもう影も形もなく。
「今回は上手くいったが、連携できないくらい数が減った時の出方に注意だな。連中『アンテナ付き』だけでも逃がそうとするかもしれん」
茂人もまた次の戦いに意識を傾け、グレイブドールでその場を離れようとし。
「あちらにもこれと同じWZの部隊があるようです」
そこに入って来る覚悟からの連絡。味方の援護をしつつ情報収集もしていたらしい。
「丁度川崎市中心部に向けて進む途中に位置してるわね」
√ウォーゾーンの川崎市中心部でレリギオス・オーラムの戦闘機械群と積極的に戦い、敵軍勢を壊滅させることを目標に定めている以上、出会った敵を倒してゆくことに反対意見は何処からもあがらず。目標にされたレオボルトらにとって不幸だったのは、先に討たれた部隊と比べて数機機体が少なかったことだろうか。
「おおお、今度は最初から指揮官機に近づけそう!」
何機か数の上で勝っていた部隊が負けた√能力者たちに戦力的に劣る部隊が勝てる道理はなかった。むしろ指揮官機を守る機体の数が少なかったことでらぴかは機体同士の間を通ってあっさり指揮官機に肉薄。
「このまま畳みかけるわよ」
指揮官機が討たれた後に関しては先の戦いと大差ない。破壊されたWZの道を作りながら√能力者たちは先へ先へ。
「到着の様ね」
やがてたどり着いたのは川崎市中心部。もちろんここにも討つべき敵はひしめいていた。
第3章 集団戦 『ヤラレイター陸戦型』

「……多いわね」
球体の胴体に手足の生えた機体があちこちに点在している。近接戦から中、長距離戦まで対応可能な各種武装を揃えた量産型戦闘機械群つまりこのヤラレイター陸戦型たちこそがこれから破壊すべき相手だった。
「決して高性能ではないものの荒野や市街地など戦場を選ばぬ汎用性を持ち、装甲と攻撃力は高水準だそうです」
これを労せず倒せるようになれば一人前とも言われるが何というか本当に数が多い。おそらく全面させるのは不可能に近い。よって√能力者たちがすべきは、ここにひしめく戦闘機械群を可能な限り多数撃破して撤退することであった。