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後夜祭
●
「此度の協力に感謝する」
空に浮かぶ白き機影は告げる。その背には、渦巻く深淵がぼうと佇んでいた。
「ፍቅርህ ይባረክ」
理解不能な音色。言語として統制されているのかすらも定かではない奇怪な波形に、金色の角を持つ頭は首肯する。
「私は敗れた。再び、だ。故に、取り戻さねばならない」
広げた鋼の翼が、天を翳らせた。
「――同胞たちを、我が高みへ」
●
「緊急事態でございます」
「緊急事態、なのです」
対なる双子、姉シャルロット、妹メルロットの二人はビデオメッセージ越しにEDENへと告げた。直後各人が持つ端末へと一斉送信された予知の内容は、目を疑うものであった。
一切の正体が未知に満ちた狂乱の深淵。インビジブルを狂わす|存在《エンティティ》である、『DEEP-DEPAS』。ソレと何らかの手段で意思疎通した機械生命体の一大勢力レリギオス・リュクルゴスの指導者であり、派閥の名にも冠されたスーパーロボットの到達者『リュクルゴス』。この二名がかの激戦の記憶新しい秋葉原へ、√EDENへと侵攻を企てているのだという。
√ウォーゾーンと言えば今年の夏、『オーラム逆侵攻』において徹底的な通信網の破壊が行われた結果、機械生命体全派閥の|完全機械《インテグラル・アニムス》へと至るべく蓄積したすべての成果が破壊された。これで人類を脅かすかの|√《せかい》の機械生命体の勢いが衰えるか――と、思われていたのだが。
「リュクルゴスは、先の大戦でも資源を確保するべく侵攻し、EDENの皆様によって早々に撃退されたのはご存じの通りだと思うのです。ですが奴は諦めず、窮状にある派閥の同胞のため、何としても破壊された分の遅れを取り戻すべく、再び大量の資源確保を目的に√EDENを狙ってい、ます」
ここで指す資源というのは決してインビジブルだけではない。
生きた人間ですら資材のひとつ。なりふり構わない、とはまさにこのことだ。
「そこで皆様方には速やかに現地へと急行し、敵性存在の排除をお願い申し上げます」
姉シャルロットは各人へと作戦のデータを送信した。
先ずは機械生命体を招く『DEEP-DEPAS』を撃破、そして同伴せんとする敵勢力を最小限にまで抑えたうえで、リュクルゴスを迎え撃つ、といった流れだ。
言うは易く行うは難し。
敵は未知数の存在と強大な王権執行者。戦いは激しいものとなるだろう。
「しかし悪鬼を討ち、秋葉原の平穏を取り戻してみせた皆様であれば。この恐るべき難敵たちを見事討ち払うことができると、ワタシは確信しております」
「どうか、どうか世界に安寧を。わたしからもお願いします、です」
双子の少女が同時に頭を下げた直後に、妹メルロットが思い出したように顔を跳ね上げ、もう一つデータを送信した。
「あの、もし作戦が終わったら、こちらのゲームセンターでご歓談などいいのではないか、と思うのです。戦争のことを振り返るのも、中にある戦略ゲームで闘技場や大規模作戦のふりかえりをするのもいいと思うのです! あとは、えっと、もうすぐクリスマスですし、何かイベントがやっているかもですし、その」
EDENたちの戦いに終わりはなくとも。
心と体の為に、穏やかな時間を過ごすのも、悪くないのではないか。
たどたどしくも、そのように告げて。
「最後に、どうかご無事でお戻りください。|ワタシ《わたし》たちからの最も大切な|依頼《ねがい》です」
こうして、悪鬼の宴を終えたEDENたちの|後夜祭《ロスタイム》が。
幕を開けようとしていた――。
これまでのお話
第1章 ボス戦 『『DEEP-DEPAS』』
●
EDENの到着を、待ち焦がれたかのように。
渦巻く暗黒の光は大きく腕を広げたように見えた。
不定の姿は渦を巻き、捉えどころなく瞬く。だが一等強い輝きは眼差しにも似て、同時に底冷えする深い『愛』と。身の毛もよだつ忌まわしい重圧を同時に放った。
「ወይ የኔ ውድ」
如何なる|√《せかい》の言語にも属さず、理解の及ばない空気の振動。親し気であり憎し気でもあり寂し気でもあり、そのどれでもないただの雑音のようですらある。
人知の及ばぬものがある。言葉では通じ合えぬものがいる。
今目の前に立つそれは、まさに|そういう《・・・・》ものであった。
「እንጫወት። እንዋጋ። ልክ ከዋክብት ስር, ፍቅራችንን እናሳያለን.」
世界と透明な怪物の悲鳴が響き渡る。
空が罅割れ、垂れ落ちる影は汚染された狂乱の死。
――抗え、衝動を抱いて。
●
漆黒は鳴動し、銀河は唄う。絶叫に音はなく、然しそれを聞き届けた周囲から漂い引き寄せられる魚群は不可視の怪物。
招き寄せ、狂気を振り撒く影に。
二つの軌跡が、流星のように瞬いた。
「――やらせるものか」
狂わせんと向けた指先が薙いだ青い軌跡に寸断される。
渦巻く漆黒をも凍り付かせる刃は青く輝き、練り上げられた魔力と残る冷気に吐く息は白く煙る。深く腰を落としながら、間髪入れずに二度目の居合が放たれた。
「ቆንጆ」
人型の、首にも見える部分が確かに断ち切られた。にも拘らず漏れる言葉は明確に己に刃を向けた相手への微笑みが向けられ。暗黒は、抱擁せんと迫った。
「おりゃーっ!」
だがその黒は空を抱くことすらなく、撃ち抜く七色の弾丸が闇を穿ち、直後駆け抜けながら放たれるは|刺突《Flèche》。溌剌とした声とは裏腹な、的確に胸を穿つ技の冴え。
前衛後衛を入れ替わる刹那、インビジブルが放つ冷気を、刃を包んだ水の精霊が吐息を一つで氷の螺旋へと変え、不定形へと楔を打つ。
――十全な連携技。しかし、それでもなお|未知《エンティティ》は嗤う。
「የበረዶ ቅንጣቶች ፣ የሚያብረቀርቁ ኮከቦች ፣ ድንቅ」
歓喜、激情、叫ぶ声は強まり、空を見上げば空に浮かぶ筋雲の白波に煽られながら、無数の透明な怪物がこちらへと殺到しようとしていた。
「やっぱり、厄介だな」
改めて腰に提げた魔力兵装に力を通しながら、クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)は溢す。幾多の戦いに身を投じてきた彼は、当然このエンティティとの戦闘をも経験していた。確か、いつかの時にはこちらを嘲侮するような意図があったようにも感じられたが――今相対するのはその時以上に、輪をかけて理解不能。
何を考え、今ここに立つのか。それがわかればあるいは。
普段の彼ならばそういったことを考えてもおかしくはない。
だが。
(――リュクルゴスと共謀するなら、敵だ)
見目の神々しさなどに惑わされない。彼はその脅威を、行った数多の死を、間近で見据え続けているがゆえに。
穏やかな顔つきは変わらずに、だが瞳の奥に宿る決意は何処までも冷たかった。
「うーん、まだ倒せないかあ」
確かに決まった連携攻撃。タフなのは織り込み済み、エアリィ・ウィンディア(精霊の娘・h00277)は手にした刺剣を振るい、片方で銃を構える。もっとも自分でも会心の出来だと思っていた攻撃にこうもケロリとされると流石に頬も膨らませたくなるというものだが。
こうして表情もころころと変わり、不平じみた言葉を溢してはいるが。
相対したときのプレッシャーを感じていないわけでは、ない。むしろ鮮明に過去戦った時のことが脳裏に過るほど、重圧は肩に圧し掛かってくる。
しかし彼女は格段に成長してきた、今年の初め頃戦ったときは比べ物にならないくらいに。
気圧されていないとは言わないが、だとしても気の持ちようは全く違う。
とにかく、痛撃は与えた。回復を阻害するためにと吸収される前に近寄ってきた|透明な怪物《インビジブル》を撃ち落とさんとするエアリィだったが、それを隣に立ったクラウスが制した。
――叫びに引き寄せられたのが邪悪なインビジブルだけとは、考えにくいからと。
一理ある、そう思いながらも回復されてはたまらない。エアリィはうーんと頭を捻って。
ふとさっきまで使っていた魔力兵装と、彼の隣で漂う冷気を帯びたクマノミのようなインビジブルを見て、ぽんと手を打つのだった。
「いい考えがあるよ!」
●
『DEEP-DEPAS』は空を見上げながら、腕を持ち上げた。
来たれ、来たれ、我が元へ。それを喰らいてまた輝くために。
そう思いながら伸ばした指先が、じんと痺れた。
視界が白く煙り、急激に下がる空間の温度。冬だから冷え込むのは当然、だがここまでの急冷は自然現象のそれとは別物。となればそれは。
「በረዶ?」
直後その身体に放たれるは高温と極冷。
周囲に散る冷気の正体は二種。クラウスが転送しながら残すインビジブルの冷気、取り込まんとすれば間近に迫った魔力が皮膚を凍てつかせる。
むしろ明確な攻撃の意図をもって撃ち込まれる弾丸はエアリィの放つ弾丸だ。精霊の加護を受けた弾丸は冷気によって加速し、より鋭利に敵を貫く。
さらに冷え切った部分を狙い撃つのが、クラウスのレイン砲台。温度差によって敵を素早く削り取ってみせた。
周囲を漂う魚群が辿る道は二つに一つ。自ら望んで力を貸さんとする悪意あるものは、氷漬け。逆に意図せず呼び寄せられたものはクラウスが即座に入れ替わり、救助。
むしろ二人の方に同化しようしたとしても、動きが鈍れば斬るも断つも突くもたやすい事だ。
となれば、じっと佇むは下策だろうと。動き出そうと身動ぎした『DEEP-DEPAS』の前に現るは。
「ばあ!」
触れるだけでも肌が裂かれる寒さの中を、冬に飛び出す子供よろしく平気な顔で突っ切る、エアリィの顔。
挨拶にでも来たか、ならば応えようとばかりに腕を伸ばし、インビジブルの召喚を行おうとしたが。
――|もう、寒くない《・・・・・・・》。
極限の環境と言ってよかった。人為的に作り出されたとはいえ、この√EDENでは到底在り得ざる状況だった。それは極めて生存に適さない空間だった。
それが突如消えた、なぜか。
「楽園の平穏のため、排除させてもらう」
――クラウス・イーザリー。手にした冷気の刃は研ぎ澄まされ、青は白に近く澄んだ微光を帯びる。充満した魔力と力を借りたインビジブルからの協力。二つによって平時であれば頭痛を齎す出力を維持しながら、極限まで充填された刀身。
ただ、この一瞬のために。
そして狙い澄ましたのは彼だけではない。
「さぁ、あたしの全力――見せるよっ!」
既に詠唱の完了したエアリィ・ウィンディア。距離を保ち続けていたのは全身全霊の一撃を叩き込むため。一点の極大攻撃ではなく、広範囲拡散を一体目掛けて殺到させる。六種六属性の力を折り重ねる技。強まった水に揃え、他の全属性を臨界ぎりぎりにまで力を溜め込んでいた。
「ቆንጆ」
最後に未知なる不定形が遺した言葉は、果たして何だったのか。
放たれるは冷たく生命を断截する一閃と、殲滅の力帯びた|分光《プリズム》。
暗黒の星雲を千々を散らす姿を確かに目撃してなお、二人はそれでもなお構えを解かなかった。
――これが『決着』ではない。
理解と直感を、同時に反芻しながら。
●
「まーたかよ」
「はは、面目ない」
最早驚いたり怒ったりと言ったリアクションを取るのすらばかばかしい。そんな態度の青年と、彼の隣で笑みを溢す眼鏡の男性。
緊急事態、そんな中でも二人の空気はいつもと変わらない。
|色城《しきじょう》・ナツメ(頼と用の狭間の|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h00816)と、ゼロ・ロストブルー(消え逝く世界の想いを抱え・h00991)。家族でもあり師弟。その他にも様々な文脈が存在するが、兎も角。
二人がともに戦場に立つ理由は同じ。
――再び戦場となろうとしているこの場所を、守り抜くため。
ナツメは自らの職責からの使命感と、|異能《ちから》を持つ者として。
ゼロは、乗り掛かった舟であり、撮った|世界《そら》を護るために。
「ቤተሰብ ቆንጆ ነው። እናንተ ሰዎች በእውነት።」
染み出るように、湧き出すように。僅かな影からそのままずるりと身を捩るようにして露わになった輝きが、やはり奇妙な音を残す。嫉妬賞賛歓喜絶望、余りにも多くの想いが混ざり合って何一つとして感じ取れない黒のキャンパス。
確かなことは、この存在を放置すれば――訪れるのは災厄只一つであるということ。
「おおォォッ!」
姿が、全体像を現す前に。裂帛の気合を以て暗黒に|早暁《・・》を叩き込む。決意、覚悟、そして、『青空をこの手に』。生き抜くために、生き残るために。彼が得てきた全てを賭して繰り出された一撃は、余裕ぶったその顔を真っ二つにするだろう。
だが。
入れ替わる様にして目の前に現れる狂乱した魚の顔が、ナツメを襲った。
「う、おっ!」
手ごたえはあったがまだ足りていなかったか。拳に乗せた霊力で下から魚の顎をカチ上げると、素早く師を庇うような位置取りで刀を構え直した。
彼の実力を認めていてなお、そのような行動に出たのは敵の脅威を認識していたがゆえというのもあるが、同時に違和感が胸の奥でざわめいたから。
こうして他世界に紛れ込んで事情に遠慮なく首を突っ込んでくるゼロがいやに大人しい。本当なら俺より先に突っ込んでいってもおかしくないのに。
「――ナツメ、すまん」
その謝罪に、電流が走ったように振り返ったナツメ。
戦慄きながら、同時に顔を覆う。そして叫んだ、インビジブルを呼ぶ『DEEP-DEPAS』よりも声高に。
「そうだよな、そういやそうだよなゼロさんよぉ!?」
天使化事変。オーラム逆侵攻。秋葉原荒覇吐戦。
数多の事変に参加しその解決に尽くす実力を持つであっても、覆せない事実。
|一般人《Anker》に、|透明な怪物《インビジブル》は視えない。
色々言いたいことはあったが、もっと早く気づいていればという自省も過って苦虫を千振茶で流しこんだような顔をするナツメ。
一方のゼロは、渇いた笑いを浮かべつつも――背中にじっとりと嫌な汗を感じていた。
当然だ。見えない、聞こえない、当然嗅いでもわからず、まして手を伸ばしたとて掴めまい。
だが確かに胃の底に深くのしかかる圧迫感だけは伝わる。職業柄空気や気配の淀みといったものを知覚する経験は多いが、大概より強い重圧の対象は明確に姿を見定められることの方が多かった。
それが、今は違う。握る武器にも、無意識に不要な力が籠るのを感じた。
なら今自分ができることは。ゼロは深く息を吐き、手にした武器の刃を象る青を見つめたのちに、顔を上げた。
「ナツメ、指示をくれ」
普段の彼ならば、到底考えられない発言にナツメは耳を疑った。
しかしこの窮状において、師より出た言葉の意図に疑問を呈するほど未熟でもない。
「任せろ」
目を凝らす。深紫の眼が開かれ、捉えるべきものを見落とさぬようにと。
「ድንቅ」
腕を拡げれば、泡立つようにして透明な怪物は狂乱に溺れ、暴力性を帯びながら二人を狙う。
ナツメは絶えず刀で切り払いながら、逐次情報をゼロに伝達した。
「三時と八時の方向! そんで奥の電信柱にも一体!」
それが届けばゼロは力を込めて握り締めた斧を振りまわす。腰を落とし、ぐんと半月状に残った刃の軌跡は彼自身の視点から見ればただ空を切ったようにしか見えぬだろうが、ナツメの視点から見れば赤黒く染まったインビジブルが噛み付くべく大開にした口から尾鰭までをばっさり断ち切られる姿が確かに捉えられていた。
(見えたらどうなってたんだよ。やっぱあれで『一般人』は無理じゃねえか?)
そんな独白を、漏らしながら。
一方でこちらは益々膨張する狂気の小宇宙と真正面から相対している。
――十全に効かせるには、相手がインビジブルを狂わせる前に刃を立てるか、移動の直後に後の先を掴むか、二つに一つ。
揺らめく相手を、睨みつける。背後の状況に気を配りながらも、一瞬でも気は抜けない。
――金色に瞬く一等爛々とした輝きが、先程から吸い付く天人石鯛を捉えているのに、気付いてしまったから。
全く損な役回りだと。今日は肩に感じない重みに、は、と息を漏らして。
「በል እንጂ」
挑発なのか、或いは攻撃の宣誓なのか。どちらでもない音色を掻き消すように。
色城ナツメは、吼える。
「頼むぜ、ゼロ――ッ!!」
身を深く、深く屈める。
直後先程までナツメの頭があったところから豪速で飛来する澄青の輪刃。強烈な前回転によって軌跡が円に見紛うほどのそれは、狂乱の銀河の胸元を貫通し、背後にあったビルの雨どいを貫いて壁に深々と突き刺さる。
宇宙の中央に空いた|大穴《ブラックホール》。渦を巻き修復を試みる影に。
地を這う地吹雪のように。舞い始めた粉雪を伴いながらぐんと加速した外套の二重線が、獣の縦に切れた瞳孔の如く、獲物を捉えた。
――左足から、強く踏み込み繰り出す逆袈裟の切り上げ。師の作り出した間隙に合わせた霊力の充填と力を籠めた一撃。宇宙の洞を裂く暁が、文字通りに闇を断つ。
再び、声なのか音なのか。間延びする耳障りな反響と共に黒い姿が掻き消えると、思い出したようにナツメの額からは汗が吹き出した。
それでも残心で刀を鞘に音鳴く収めたあたりでようやっと身体の力も抜け、膝に手を置き止めていた呼吸が再開されるだろう。
寿命縮んだ、二歳は老けた。
師と|もう一人《・・・・》を庇いつつ、未知なる脅威を排する。確かに責任感が強い彼だが負いきれる|許容量《キャパ》を超えていた。
「いい動きだったぞ、ナツメ。指示もわかりやすかった」
そんな風に。こちらの苦労もつゆ知らず満足げにそう言ってくるゼロに食って掛かろうと一瞬腰を浮かせながら。
(いや、だが。師匠に頼られるのは……少し、気分がよかったな)
普段アツアツの煮え湯を飲まされ倒しているけれど。それはそれとして、彼に素直に自分の力を認められた瞬間は、どこか満ち足りたものがある。
――繰り返すように、彼は『師』だったから。武においても、人の生きる道においても。
「ともかくまずはひとつだな」
「……ああ」
あ、結局まだ居座るんだな。ナツメは折角温かった気持ちもスンとなりながらも、ゼロの真剣な面持ちに釣れるようにして、天を見る。
――未だ、空の脅威は消えていない。
●
人気のない、路地裏。黒々とした気配が漂うその場所で。
「やぁだー! 1人でボス戦やだー!」
社会人として、加えてこの迫る危機的状況の中という二重であるまじき駄々を独り捏ねる、別種の危険性を発揮する姿があった。
焦げ茶の髪がぼさぼさに跳ねるのもいとわずに、そんな独り言を溢すのはアキ・サクラ
(のらりくらり・h09479)。とはいえ、奇妙な経歴を持つ彼が引き受けた第二の任務が『コレ』なのだ。多少同情の余地も――あるかどうかはこれを見た各々に委ねたい。
とはいえ、現実逃避を続ける彼に一つ、影が伸びる。
敵か。ぱっと目を開けた先に居たのは、見知った顔だった。
「あれ、パイセン何でココおんの?」
鳩が豆鉄砲を喰らったように、目をぱちくりさせるサクラに対して、パイセンと呼ばれた男は後頭部を掻きながら複雑な表情を見せる。
「キミかぁ……」
お目付け役でありお守りをしなくてはならないという|後輩《・・》が彼だったのかという呆れでもあり、同時に自分の|性質《タチ》と|謹慎《オフ》という二つの事情を察されている相手と同じ戦場に立つ気まずさでもあり。
ともかく、|斯波《しば》・|紫遠 《しおん》(くゆる・h03007)は乾いた笑いを浮かべつつ、地べたで腹を見せる後輩を小突いた。
「ほらアキくん、ゴネてても進まないからやるよ」
「ふぁい」
そんな、気の抜けたやりとりを、満足げに見終えたかのように。
「ቆንጆ እና ድንቅ ትስስር ነው」
響き渡る音色。耳障りにも神秘的にも思える二律背反。どちらであってもその暗黒が空間に現れればどこか弛緩した空気は消し飛び、胃の底を押し出す重圧が空間を満たし、空から降り注ぐ透明な怪物の気配と視線が一気に集まってくることだろう。
刀に手を掛けながら、紫遠は僅かに乾いた唇を小さく舐める。
――出発しようとするときに社長に半目で見られたこととか。援護を頼んだ端末のAIである『Iris』にグサグサ刺されたこととか。いつぞや、後輩のサクラに言われた『パイセン呼吸するみたいに無理すんだからたまにサボった方がいいっスよ』と平然と言われたこととか。
半ば走馬灯のようで。同時に自分の欠点を自覚する機会にもなった。
――力を、抜け。
陽炎ノ一撃を、文字通りに。烈しい炎ではない、着飾るのではなく羽織る様に。鞘の中から零れることもないよう、出力を抑え込む。
狂乱した悪しき魚群は狂気的に餌を求めて口を開閉しながら、瞬膜すら閉じず襲い来る河豚の群れ。
「『だーるまさんがー、こーろんだ!』」
叫ぶ声、直後びたと止まる魚。声の主はサクラ、うっかりまばたきしないよう、魚に負けない程に目をかっぴらいたまま紫遠に合図する。早く、ハリー、マジ保たんからと。
漏れ出た笑みが、決め手になったのか。最後の一ピースが嵌った瞬間を本能的に察し、彼は走り出す。
駆ける足に続く霧は浅紫、散らすは狂乱の魚影を切り裂く万紅。青褪めた火焔で悉くを焼き尽くすのではなく、散った霧を残す様は幽玄といってもいい。だが冬の霜より濃く視界を覆っていく紫の霧は一つ一つが煌めき、命を散らす光の粒だ。
ならば攻撃ではなく融合をさせようか、すうと声を上げんと息を呑めど。
「遅いよ」
音も無く、居合の軌跡は横一文字。
纏わせた首を「ぴ」となぞれば、裂かれた傷から伝うように恩讐が滑り込み肉を、魂を焦がすだろう。
「ትኩስ ፍቅር ነው።」
完璧じゃない、まだ足りない。
そう思った瞬間ぐわんと足元が揺れた。
上、斜め、横。どれとも、あるいはどれでもある振動。直立し続けることすら難しいその揺れは、暗黒の中で星の瞬きにも似た怪物の、叫び。内包するインビジブルから溢れ出した断末魔。深淵の叫びが、紫遠を絡め取った。
「እባካችሁ ፍቅሬን ተቀበሉ」
腕のように。黒が、白を呑み込まんとする。
自分の懐に飛び込んできたものに夢中になったのは、歓びか、怒りか。
どちらであっても変わらない、結果は同じ――取り返しのつかない、失策だ。
|ヒョウ《・・・》。浅紫の霧も、鱗を剥がれちくちくと刺されのたうつ魚群も。そしてはっと上げたその洞の星雲も。纏めて貫いた鏑矢は、一射で勝利をもぎ取る祝福の音色を響かせた。
「おっしゃあ! おれ、やればできる子!」
自画自賛を惜しまずに、然し冷や汗を一筋垂らしながら成功に歓喜するのは、サクラであった。
チョコラテ・イングレイスで動きを止めた直後、霧を散らしながら前衛を張り自分の狙撃地点への移動を助けてくれた|先輩《パイセン》の背中を見て、あれで本調子じゃないとか嘘だろとドン引きしたのも一瞬。
見晴らしのいいビルの上まで非常階段を駆け登り、観測主たる『木菟』の狙いの通りに、紫遠が斬りつけた首の怨讐の焔に更に風を送り込む様に、引き絞った弓弦を離した。
対象に定めた相手は問答無用で揺らす叫びも、離れていれば聞こえない。狙撃手であれば五感鋭く敵を見定める必要があるが……そこは今彼の腕の中で目を回すフクロウの領分。おつかれおつかれと無遠慮にモフられながら、「今はやめろ」とも言えずに苦労人はこの酔いが醒めたらしこたまその頭を突き回すことを心に誓った。
「የሕልሙ መጨረሻ በድንገት ነው. የቀረውን ለአንተ እተወዋለሁ።」
黒い身体が白く燃え上がり、大量の暗い魚影が身を寄せ合って作られた姿は融けるように消えていく。
紫遠は間近でそれを見つめながら、大きく息を吐いた。
モノにするまで付き合ってもらうつもりだったが、そうもいかなかった。そのことへの、少しばかりの名残惜しさ。
『当然無理に続けようとしたら止めていましたよ』
見透かしたように釘を刺す声は、彼のインカムに不意打ちで機械的に流れた。ハッキングされたらしい。
強張った顔でやだなぁ、なんて言い訳をしつつも同時に内心で思う。
まあいいか――どうせ、まだ終わりじゃないんだからさ、と。
説教の言葉が消えた直後に「やりましたよパイセェン、どうすかこれおれのコト見なおしたんじゃないスかぁ?」などとイキり倒す後輩に、別種の笑いを浮かべながら。
第2章 ボス戦 『スーパーロボット『リュクルゴス』』
●
「感謝する。昏き影、愛謳うものよ」
厳かに、告げる。
天上を覆った闇が引き裂かれ、光輝が舞い降りた。
白銀の翼、黄金の外殻、|藍色《シアン》の宝玉。
睥睨するは四つ眼。数多の機械が夢に見た完成されし玉体、|完全機械《インテグラル・アニムス》への到達者――スーパーロボット『リュクルゴス』。
「EDENよ、覚悟せよ」
厳かに告げる。
「私は、貴君らの死となろう。楽園を貪る獣となろう」
宣戦を、告げる。
「――抗うならば、挑め」
鋼の羽が凍空の雲を破り、陽光の下に冴々と光を跳ね返す。
眩き獣が、来る。
●
「ああ、勿論だ」
抗えと、高みから見下ろし宣言するその翼に、クラウス・イーザリーは応えた。
覗き込むは望遠のレンズ、向けるは銃口。四階建てのビルの屋上で伏せって、敵の翼を照準に捉えていた。
楽園を侵略せんとするその傲岸な敵を燃やし尽くすために。
新たに生まれた大切な場所を護るために、底に踏み入る翼を焼き溶かすために。
|火焔の射手《フレイムガンナー》となって。彼は息を吐く。
ガォンという轟音と共に打ち出された飛翔する弾丸は回転を伴いながら熱を帯び、赤く燃え上がりながら尾を引き翼を広げた獣に届く――はずだった。
「――ふむ」
獣、リュクルゴスの周囲に近付いた刹那見えざる壁に阻まれ弾丸は宙で止まり、そして宿した熱と炎をもすら黒々とした炭に冷え切らせる。
拡げた翼は威容だけでなく武器として。自らを狙う下手人を四つ眼は探り続けるだろう。
それよりも早く、再び鳴り響く銃声と共に再び飛来する射撃。角度や方向が異なっているはずなのに、自身が帯びたエネルギーの領域の境、一度強かに命中した弾痕に合わせるようにして撃ち込まれた二射目は、より深く、リュクルゴスに向けて突き刺さった。
「そこか」
同時に、二射目で四つ目はその姿を捉えるだろう。
狙撃手が同じ地点に留まれば、容易く敵に気取られる。故に彼は冷静に周囲の地形を事前に調べ上げ、狙撃に相応しいポイントへと次から次へ移動していた。
それも『完全機械』の到達者は速かった。聖者の翼を羽搏かせ、地に迫りながらも猛風によって道を遮り、鋭き羽を刃に変えて敵対者の首を撥ねんと殺到する。
「く、ッ!」
無論クラウスはそんな相手に対しての備えも忘れていない。追い付かれた場合に備え自身の周囲に展開した魔術による防護と、隠し持ったフレックスウォールの展開による物理的障壁を盾代わりにした防御策。
それを、獣は容易く断ち切った。
クラウスは身を翻し致命傷こそ避けたものの、裂けた皮膚から漏れた血のインクが激しい動きにアスファルトの地面に弧を描くだろう。
「――|同郷《・・》の戦士、か」
こちらの手を知っているかのような立ち回り。狡猾なゲリラ戦。そして、自分に向けられた眼差し。それらを総合的に判断したリュクルゴスは短くそう溢した。
「ふざ、けるな」
|機械生命体《しゅくてき》に。膝を突きながら、痛みに僅かに顔を歪めながら、それでも。
「あの世界は――『俺たち』の故郷だ。お前たちのものじゃない」
抗え。
傲慢に語った機械に。そうだ、彼は、彼らは抗い続けてきたのだ。
過酷な離別を経ながらも、それでもと。そんな|侵略者《・・・》が、同郷だと?
馬鹿を言うな。人間を、無礼るな。
火が点く。銃身に、そして心臓に。首から提げられたペンダントから伝わる熱が彼を奮い立たせ、纏った魔力が手にした武器を一層烈しく燃え上がらせる。
敵を、討て。√EDENと、√ウォーゾーン。二つの世界の尊厳の為に。
解答などなく再び翼を振るうと、リュクルゴス天高く舞い上がり、そして加速しながら大地へ向けて降下するだろう。周囲を覆うエネルギーをそのままに、逃がさずここで仕留め切ると、そう言わんばかりに。
鈍重な銃器を手にしたクラウスには、反撃はできないと。そう計算していたリュクルゴス。
事実、それは極めて難しい。しかし彼の予測は裏切られた。
「――!」
己の身を包むエネルギーを砕き、黄金の角の一つを抉り取ったのは蒼白の槍。魔力によって構成された兵装は二度の弾痕が削った脆い一点へと正確に捻じ込まれたのだ。
途中で怯み急上昇によって距離を取ろうとすれば、一度大きく減速は避けられない。
空いた防御の大穴と、落ちた速度。
まさに、格好の的だ。
「見事だ、反逆の戦士よ」
賞賛にただクラウスは表情を変えずに。
三発目の弾丸は、獣の大翼を貫いた。
●
一翼を穿たれ高度を落とした獣。
それでもなお輝きに曇りなく、戦意に一切の陰りはない。
そんな獣の眼前に。我こそはと立ち塞がるものが居た。
腰に提げるは金の飾りに漆の拵え。目深の軍帽に顔を隠しながら歩み来る姿。
人間か、いや、違う。洞察と分析によってリュクルゴスが見定めた正体は、|異能《ちから》を纏うは人型ではなく、寧ろ人型が伴った刀にこそあると。
「やはり、そうか」
正体を容易く見定めて見せた敵に、面を上げる。その顔に浮かぶのは、笑みだ。
|敷石隠《しきいしがくれ》・|船光《ふなみつ》(徒手空拳の影の太刀・h04570)。刀に宿りし付喪神である彼の願いはただ一つ、自らに相応しき主を見定めること。
王権執行者、王劍を握るもの。だが強者であることが彼の求める条件ではない。むしろ斯様な敵を討ち果たさんとする勇ある者こそ自らに相応しい。
――何より、この戦いに震えているのは自分よりもむしろ『友人』の方だ。
ゆえに。
「悪しき思惑は|打倒《きりたお》す。悪く思うな」
そして、そんなやりとりを物陰から見守る者が一人。
「やれやれ、困ったものだね」
物陰に隠れながら、|北條《ホウジョウ》・|春幸《ハルユキ》(汎神解剖機関 食用部・h01096)は汗を拭う。
戦争も終わったことだしと√EDENのクリスマスに合わせやってきてみれば、どうしたものだ。天を覆う巨大な機械が随分な台詞を吐いているではないか。
四つ目に角とくればリーヴス・マンジャック、|羗《キョン》だろうか? あの肉は美味だと聞く。その上翼もあるとなればチキン代わりに?
いやいや、とはいえ金属はどうあっても可食はできまい。
怪異食研究をライフワークとする彼にとって、食えるか食えないかというのはモチベーションのウェイトとして相当重いものだ。
とはいえ。
(――見知った顔も、ちらほらいるようだし)
困ったような笑みで眉を下げながら、ポケットに入れていた包み紙を開く。
これもめぐり合わせだ。ならば、多少の手助けにもばちは当たるまい、と。
●
「は、ははは!」
凶暴な笑みを浮かべながら、繰り出す攻撃は岩をも穿つ神速の貫手。自らに相応しき主あるまで自らを以て|本体《みずから》を抜かぬと誓った船光が、それでも渡り歩く戦場を生き抜くために練り上げし武技、『無刀徹指術』。
強大なる機械仕掛けの獣を前にして怯むことなく吶喊し、大笑し、拳を振るう。
レーザーによる迎撃も数度行われているが、それでもなお彼の攻撃は留まるところを知らなかった。
「――理解に、苦しむ」
冷徹に。リュクルゴスはそう溢すと、間近に迫った船三を四方より展開した砲門が塞いだ。
超大型光線砲リュクルゴス・レイ、集中砲火。
生存の為の抗戦でも、自分が持つような大義でもなく、私欲のために戦場に立つなどと。背を向け別の敵を探さねばとした刹那。
ぐん、と。空へ向かったはずの身体が地へ引き寄せられる。
何が。四つ目が首を擡げた先には。
「悪いね、もう少し付き合ってもらおうか」
――肩を竦めながら。一方で瞬きすらせずに向ける瞳孔を異形へと化し、細胞分裂を繰り返すかのように蠢かせる北條春幸。
口の中に含む、怪異の眼球を甘い飴で包んだ棒付きキャンディ。口で転がし中身が「でろり」と口にひろがれば、契約は果たされる。怪異と融合し、彼の視線は敵を捕らえて引き摺り倒し、ただ視界に入るだけで痛みに敵を苛む力を得る。
受けた傷口を広げ、文字通りに痛い視線に軋む身体。リュクルゴスは、即座に排除せねばとエネルギーを展開し、鋭さを増した腕の羽で以て春幸の首を撥ねんとするはずだ。
然し。
集中砲火で仕留めたと、視線を離した。
別の脅威に目を向けて、時間を置いた。
それが失策だった。
翼刃を防ぐは諸刃の切っ先。柄を握るは夜叉の御霊。
主を求める刃。技を極めんとした武者。力を求め同調した魂へ、船三はその身を預ける。
霊体である彼にひょいと四方を塞いだ砲火を避けてもらい、機を伺っていた。そしてその機こそ、今。
『賊徒死スベシ。我ガ一閃ト、我ガ友ノ一刀二散レ』
双つの魂重なり合い、再演されるは護霊乱舞太刀風語。
構え太刀の夜叉が繰り出す奥義『ミダレオロシ』によって、完全を称する鋼には、大きい傷が刻まれることだろう。
理解できぬ、そう言った。戦いに抱く想いは、決して一つではない。
「本当にささやかでも、戦う理由にはなるのさ」
春幸はすっかり食べきった飴の棒を取り出すと、目を閉じる。これで少しは他の味方を楽にできるか。特に|彼ら《・・》は無茶しないと良いが――いや無理かなぁ。
たはは、と声を漏らしながらも、ふと、視線を落とせば、敵が退避した後に残された角の破片があるではないか。
黄金の角、そして閃く新たな|考察《インスピレーション》。
料理に添えられる金粉や金箔は金属。だがその性質故安定性に優れ食用可能。更に漢方として鹿茸、鹿角などというのも存在する。まして未知なる完全機械。となれば、これは、|アリ《・・》なのでは?
――戦う理由は、ひとそれぞれ。
そんな言葉は彼にもまた、あてはまるのだった。
●
「死になられても困るんだけどなぁ。あたし、もっと楽しいことしたいしっ!」
自信満々、余裕綽々な小難しい言い回しを、彼女は真正面から蹴っ飛ばす。
エアリィ・ウィンディア。元気溌剌好奇心旺盛、まだ見ぬ世界、未だ知らぬ未来へ胸を膨らませる彼女にとって、そんなキラキラした世界を奪わんとするのならば抗うのも当然の話。
器用に両手で銃と剣、二つの武器を構えながら彼女は駆け出した。
一歩、二歩、三歩目には、宙を舞う足。
単なるジャンプではなく、それは未来への飛翔。彼女の纏う服に縫い留められた、光の翼の加護を受けながら。
「眩しい事だ」
獣が溢す短い答え。応答に起伏はなく、だが周囲を満たすエネルギーの奔流がただ純然たる脅威の排除を行う意図を表す。
そして始まる、空中戦。
傷ついた片翼、削れた胸格、一本が削がれた角。然し未だ高速と言って過言ではない速度で飛行しながら、急速な展開によって近接し鋭き翼を以て青き少女を切り落とさんとするリュクルゴス。
一方でエアリィは魔力によってビルを蹴り、三次元的な移動を行いながら手にした銃から精霊の力を帯びた弾丸を連射する。まどろっこしい|再装填《リロード》を必要としない牽制射撃で敵との距離を制限しつつ、仕掛けてきた近接戦は手にした剣で凌ぐ。細身の刀身はその構造上本来積極的に鍔競り合って衝撃を流すようなものには見えない。しかし彼女が用いる剣は銃と同じく精霊魔術の加護を受け、同時に魔術の補助機構をも備え持つ
風と水。衝撃の吸収と相殺によって武器本体と彼女自身に伝わるダメージを柔らかく抑えることに成功していた。
(――時間稼ぎだな)
土の精による泥の付着による機動阻害。一度高熱による溶断に近い損傷を受けた箇所を狙った、炎の精の力を纏った弾丸。その二つを躱しながら、獣は目敏く彼女の狙いを見切る。
牽制射撃は味方の補助。同時に、彼女自身も時間を要する仕込みを行っている。
退避か、速攻による決着か。
獣に、逃げるという選択肢はなかった。それでは、同胞は救われないのだから。
パッと視界が白に染まる。
闇の精霊が齎す内向的思考。四つの目を焼く光の精霊の閃光。
二つを用いた撹乱の中で、少女は助走をつけて高く、高く飛んでいた。
迎撃を、反射的に翼を振るい散る羽毛の如くナイフ状のビットとして鋭い金属片を放出するリュクルゴス。それらを銃撃と細剣で捌きながら肉薄し――そして、最も近づいた、瞬間に。
彼女の手から離れた武具。彼女は自ら、それらを投げ捨てていた。
代わりに空いた小さな両の腕は、白き獣の胴に身体ごとぶつかり張り付くだろう。
本来なら獣の前脚の胴に抱き着けば、モフい毛並みがお出迎えしてくれるもの。だが固い金属の表面は冬も相まって痛いくらいに冷え切っている。
それを心無いとは、思わない。むしろ何か背負いすぎていると思えるくらいだ。
けれど。
「そーゆーとこが、大変なんじゃないの?」
完全無欠。唯一無二のスーパーロボット。巨大派閥の長。であれば、それこそが寧ろ彼を狭めているのではと。
――理解に、苦しむ。
「どっちであっても全力で抗うんだけどっ! さ、限界を超えた一撃、受けてみてっ!」
詠唱は、終えてある。戦闘開始からきっかり|一分間《六十秒》。並行処理と高速詠唱をフル稼働して蓄積した精霊が宿す六つの力を収束し、通常の三倍にまで高めれば実計算威力は約十八倍。臨界点まで威力を充填した最大威力の至近射撃。
「『|六芒星精霊収束砲・零式《ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト・ゼロ》』ッ!」
雲を貫き現れた、白銀と黄金備えし獣の玉体は、六色合い交じり解き放たれた白き光柱によって吹き飛ばされ、より広く、雲を爆ぜさせながら吹き飛ばされる。散らされた雲は散り散りになった水の精の重みで天気雨を降らせ。
冬の冴えた気温に跳ね返ったその光は、虹を生むだろう。
――そして。大戦果と虹を見上げながらも。
「う゛~~~、……!」
詠唱の最中に受けた攻撃のダメージが後追いで訪れ弱音が漏れそうになるのを、どうにか、どうにか涙目で堪える。
剣で受け流したとしても届く手肩への衝撃、飛ばされたビットが掠った痛み。傷も痕も残るほど深くはない、だがそれでも。
(いたいものは、いたーいっ!)
内心で感情を爆発させながら、それでもオトナのように耐え抜く。
そうとも。このように、彼女はまだまだ|未来《さき》を歩んでゆくのだ。
●
「とんでもねえな、これは」
鼻に掛かった眼鏡を押し上げて。色城・ナツメは肩に刀の峰を置く。激戦、激闘が繰り広げられる中で、彼もまた燃えている。
抗え、などという上から目線の言葉への怒り。EDENたちの、これまで連中が虐げてきたのだろう人々からの反抗。追い詰められているのは、そちらだろうに。どうしてそんな傲慢な台詞が出てくるのか。苛立ちと同時に、理解に苦しむ。
一方で。
「やはり、見えるというのは本当にありがたいな」
既に双斧を手にした状態で、からっと笑うゼロ・ロストブルー。一般人であるという極めて大きなハンディキャップを受けてなお先の狂気に打ち勝った実績を持つ、ナツメの師である。
もう退避しないことに対してナツメはもう一々苛立ったりはしない。
師の強さに疑いがないのは、何より彼自身でもあるのだから。
――まあ、それはそれとして。
(『普通に』戦えるならまあ安心、とか思ってる俺も相当毒されてんな)
ナビをしながらインビジブルからの影響を受けないないよう庇いつつ指示を出す、というような回りくどい事をする必要がないのはともかく、一般人がこれほどの強敵と平然と渡り合える想定を『普通』だと思ってしまうあたりに、えもいえぬ感情がふつふつと湧き上がっているのも、また事実だった。
「ナツメ」
呼び掛けるのは、ゼロ。
どうしたんだ、と目線を向けるナツメに対して彼は言う。
「周りの対応は俺が引き受ける。お前はメインへ真っ直ぐ進むんだ」
彼は、弟子の目を真っ直ぐに見据えて告げる。
敵は空を飛び、高速で動く相手。であればどうしても自分では限界があると、彼は自身の能力の限界を客観的に理解していた。それゆえに、敵への痛撃を与える大役を、彼は譲ることにしたのである。
「……本気かよ」
だがその一方で。
敵の狙いが集中するということはつまり、敵の攻撃をも集中するということだ。
彼は、一般人なのだ。命はひとつ、やり直しは効かない。
それを踏まえてナツメは彼を見返す。その眼差しはいつになく鋭く、同時に眉間に刻まれるそれは普段のツッコミ交じりのものとは深さが違う。
「大丈夫だ」
彼は、言い切った。
敵が見える、それも理由の一つ。
同時に。
彼の記憶の中に在る、かの世界。燃え上がる橋の上、見上げた空。機械仕掛けの天蓋に閉ざされたあの|√《せかい》。それをあの獣が担っているのならば。その覆いに、僅かでも切れ目を入れることができるのならば。
青き空を、どの世界でも同じく見上げられるような世界に、もし自分もその一助になるのならば、と。
「――あとでやっぱり自分がやるとか言い出すなよな、ゼロさんよ」
「冗談言うな」
そんな軽口を最後に、二人は戦場へと駆け出した。
●
そして。
眼前に立つゼロ・ロストブルーに向けて。リュクルゴスはただ黙し、目を向ける。
抗えと言った、彼は確かにそうしているのだろう。だとしても、獣の四つ目だけに留まらず、備えた計器の全てが目の前に立つ男の身体よりなんの異常性も検知できない。
もし自らの身体に爆薬を埋め込んだりしたのならば。ともすれば自身の予想の外にある全く未知なる切り札を持つのならば。
或いは、その全てすら杞憂であったなら?
「――だが」
仮にそうだとして。それが抗戦を諦める理由には、ならないのだろう。
その不屈によって、同胞は全ての進化の為の道程を失ったのだから。
「見せてみるがいい、人間よ」
獣は翼を広げた。一切の容赦なく、ただ自らに牙剥くものを討ち滅ぼす、死となって。
そして、ゼロもまた対なる斧を構え、瞑目し、祈りを捧げていた。
捧げる先は空に。胸の奥に在る決意を奮い立たせながら。
「いこう」
短く、呟いた。
戦いが始まれば、設置される砲台、羽搏きと共に散らされる金属片はビットのように展開しながら対象を狙う。一見すれば余りにも一方的な展開だ。
然し。
ゼロはそれらをすべて凌ぎ続けていた。
レーザーは回避を最優先に、返す一撃で出所の砲身を叩き斬れば、自分を狙う攻撃の数も減っていく。降り注ぐ羽の刃に関しては、力を籠めた斧を回転するように薙ぎ払うことで、風圧が軌道を逸らし間近に迫ったものは金属同士が削ぎ合う音と共に地面に叩きつけられていく
無傷とはいかないが、致命傷は決して受けない。
負う手傷ですら計算しながら、彼は一瞬の気を抜けば絶命する戦場で、動きに強張りも緊張もなく死線を掻い潜り続けた。
「だが、これで終わりだ」
獣は、告げた。
ゼロは一歩一歩と踏み込んだ。それが己の意志であるかのように。
だが違う、知恵ある獣は罠を張ったのだ。自らの間近へと彼が踏み込んでくるように。
黄金の角が輝く。枝分かれした合間に奔る雷光が獲物を求めてばちりばちりと声を上げ、今にも放たれんとする。
晴れ渡る空を覆いつくさんばかりに拡げられた巨躯を前に。然し、ゼロは怯えも諦めも、しない。
一等激しい|嵐《・》の訪れを。信じていたがゆえに。
「行くぞ――蒼ッ!」
ククク、ククク。甲高く響く威嚇の声音。慣れ親しんだ重み、丸々一戦溜め込んだ追い風を受けながら、アスファルトを踏み抜き一息の間に、突風は知覚の間もなく獣の眼前へとカッ飛んでくる。
まさに、待ってたぜこの|瞬間《トキ》をよ。そんな言葉が似合いだろうか。地面を擦った切っ先が一瞬だけ赤く散った光が照らす低姿勢の顔は、深紫の眼は鋭く、猟犬さながらに獣の四つ目を睨み返した。
瞬間、相討つ二つ。
黄金の鹿角より放たれし金色の雷撃。練り上げられし鎌風が呼び寄せる蒼き嵐。
雷嵐が真っ向よりぶつかり合う。時に二つは互いを呼び寄せ交じり合う力となることもあるが、今はただ己を通すべく削り合うだろう。
明暗を分けるは、三つ。
一つは負傷。既に他の戦士によって傷付けられた獣の角では、打ち出す雷撃の出力にも限りがある。
一つはゼロの奮戦。先の手傷で欠けた火力を、砲撃が、ビットの支援が、補うこともあったかもしれない。そんなサブプランも潰されていたのは大きな理由の一つだ。
そして、最後の一つは。
信頼。
同胞の為と駆け付けたリュクルゴス。お互いに身を案じながら共に戦う二人。利他の精神に優劣はつけがたい。だが己のみが戦えば万事が解決するという責任を隠れ蓑にした驕りと。対して異能の有無に限らずに、重ねてきた経験と絆の積み重ねによって築かれた「任せられる」という篤い信頼。
ナツメの放った嵐が、雷鳴を突き抜け。獣の顔の間近で、皮肉交じりに口角を歪めた。
「ここまで来れないアイツからの伝言だ」
青空は、人の手に返してもらう。
繰り出されるは霊力を籠めた青き祓いの一撃、『疾・鎌風』。
振り下ろされた刃は獣の核に、一等深い罅を叩き込むのだった。
●
「フッ、今日はこの辺で勘弁したらぁ……と思ったが! そうは問屋が卸さんぜ! ここでオレが華麗に決めてやったるぜ!」
「オマエねえ……」
最初に敵の姿を見たときは初戦の勢いどこへやら。帰り支度をしようとじたじたしていたのも束の間。果敢に挑みかかる他の仲間たちの姿に、醸し出される『いけそう』感。となれば後輩、アキ・サクラは調子の良さを取り戻し。呆れ交じりに肩を竦めた先輩、斯波・紫遠は多様な側面を含みつつも総括すれば「かわいそうなもの」を見る目で、調子よく聞こえないくらいの声音で天を指さす後輩を見るのだった。
「とはいえ、アレやばないです?」
スンと冷静になった顔で、紫遠に振り返ったサクラは言う。
連携攻撃がキマった瞬間は見ていた。あれならいけるかもとは思った。その一方であの連携を喰らって未だ空へと羽搏き睨みを利かせる相手にどう勝てと? そんな思いも決して捨てきれない。
『戦局はこちらに傾いています。ここで日和見し機を逃すことこそ愚の骨頂かと』
紫遠は「お」とばかりに取り出すタブレット。その画面に映し出された花の紋様にサクラが顔を蒼褪めさせた。
先輩の優秀なる戦術補佐官にて公私を支える秘書。そして扱う|主人《マスター》の後輩にも一切容赦のない毒舌。アシスタントAIの『Iris』であった。
ひぃと縮こまるサクラをよそに、紫遠は彼女に頼む。
「また頼っちゃうけど、いいかな」
『――――承知しました』
下がり眉の笑顔の彼に、高性能であるにもかかわらずたっぷりの間を使ってから承服するIris。小言を呑み込んだせいか、或いは単なる呆れなのか。
どちらであったとしても。
『援護する以上は、完璧なる勝利を』
念押しするような言葉に勿論だと意気込む紫遠に対して。サクラはしょぽしょぽした顔で武器を番えるのであった。
●
「――貴君もまた、抗うか」
前線へ、駆け込んだその顔に向けられる四つの目。そして、獣は静かにその存在の正体を記憶領域から探り当てる。
秋葉原で行われた遍く|√《せかい》が楽園へと侵攻するに至った大乱。その中で活躍目覚ましいもの。先程戦った同郷の戦士と同じく、彼もまた強敵であると。リュクルゴスは傷ついた翼を拡げ、大きく羽搏いた。
「覚えて貰えてるとは光栄だね」
冗談めかして溢しながら、紫遠は駆ける。
纏うは――禁じられていたはずの狗神の炎。無茶をしました、なんて半ば張り付け刑にも近く晒し上げられていたにも関わらず、彼は躊躇わずそれを身に纏う。
だが、惜しみなく自らの命や魂を薪として叩き込むような業火ではない。此度彼が意識するのは、火力の調節だ。
安定して持続し続けられる、絶妙な塩梅。それを、探り当てるために。
地に残火を足跡のように残さぬよう、弾みをつける加速装置代わりに。空を踏みしめる時にも、ロケットの如く噴射するのではなく、沈まず跳ねる小石を参考に、ぱんと水面を蹴る様に動く。
機動力による撹乱。高速戦闘とは裏腹な、小回りを活用した器用な戦闘術。常に相手の死角、或いは視野外へと向かうような立ち回り。
加え炎の一撃を避けようとするならば、配置された砲台とドローンからレーザーを照射することで攻撃の手を緩めない。それらの制御はタブレット端末の『Iris』が担い、紫遠の思考リソースを極限まで削る。
すべては、彼の希望。自らの、『進化』のために。
「ならば、全方位を狙うまで」
枝別れたした角が雷光を纏う。直後光が瞬き、コンマ数秒の遅れと共に轟音が劈く。
電撃放射角ケリュネイアホーン。リュクルゴスが選んだのは放電による面制圧。
紫遠の纏った白き炎から伝わる探知不可能な揺らぎに最大限の警戒を向けながら、獣は再び雷鳴によってその全てに鉄槌を下さんとした――のだが。
空気を切り裂く微かな音に左方の二つの眼を向けども間に合わず。
欠けた角の対角に突き刺さる鋭利な弾丸。狙撃用の空気抵抗を減らし貫通性を高めた形状は、スーパーロボットの未知金属を貫くまでには至らないが、鹿角の中へと潜り込み放出の為溜め込んだ電力を寸断し技を不発に終わらせた。
引き絞られる瞳孔。その内部で行われる高精細の望遠。
そこで、目が合う。
「やっばバレた」
竜漿魔眼。右目に集中した竜漿の力によって敵の『隙』を探り当てることができるようになったサクラが放った致命の弾丸。広範囲攻撃で接近戦を野暮ったくする角の一撃を封じるため、遠距離狙撃で角を圧し折る算段。
そのためのサポートとして、紫遠が仕掛けたドローンによる遠距離攻撃などに紛れて射撃することで狙いを散らす――はずだったのだが。幸か不幸か、彼の狙撃がクリティカル級であったがゆえに、敵に目を付けられてしまったのである。
チカ、と。目が光を捉えた。
リュクルゴスの翼の裏側から翻すように設置された巨大なレーザー砲。間違いなく自分に向けて放たれた極大の太さを持つ殲滅光リュクルゴス・レイ。
逃げを打つ間もなく自分の目の前まで届いたそれに「あ、終わった」と思ったのも束の間。
サクラに照射された光線を防いだのは、|木菟《ずっくん》。翼を拡げサクラを庇う様にバリアを展開する。
「おぉ、ずっくんパワー……!」
これも絆の力か。手を組み祈るような恰好で目を輝かせるサクラに対して、はよいけとばかりの目線を向ける梟。猛禽の睨みにファイと短く告げると、彼は躊躇いなくビルから飛び降りた。
落下しながら、狙撃銃を弓に持ち替え、放つは彗星。魔力による照準追従によって山なりの軌道ながら命中の直前で軌道を保ち、或いは余分に落ちることで機械的な偏差予測を裏切る弾道が獣を追う。
矢を警戒すれば、次に続くのは高威力の狙撃。弾速は破壊力、更にそれが隙を見せれば漏れなく飛んでくる。狙うは撃ち込まれ未だ弾丸残る角。もし二発三発貰えば角が折れる。それを躱そうと身を翻せば更に別の場所に打ち込まれる楔。
張り付く紫遠だけでなく意識し続けなければならない実に厄介な援護射撃。
だが。サクラはほくそ笑んだ。もうすでに、勝負はついているのだから。
獣の四つ目が突如乱れる。
視界がジャックされ、明滅しながら索敵も、分析も、すべてが狂う。
(|毒《マルウェア》、そうか弾丸)
なぜ狙撃銃が貫通できないと分かりながら何度も撃っていたのか。当然連続射撃で部位の破壊を狙うのも一つだろう。だが、同時に。
撃ち込まれた弾丸を起点に物理的に巨大な機械である己をハッキングする。そのための鋲であり、注射針。
――そしてそれほどまでに巨大な隙は、間近で勝機を伺い続けた彼へのバトンパス。
「パイセンやったれー!」
遠方から声を張り上げるサクラの声を背に。
「――言われたからには、格好つけないとね!」
鞘に納めた刃を抜き放ち、断ち切る一閃。
爛々と、滅々と、焼き尽くすのではなく、差し込む日の出にも似た一瞬の輝き。
刀身に薄くくゆるは、夜明けを告げる朝霧が如し。
獣の身体は、ゆっくりとズレてゆき。
断面から粒子状に崩れ往く中で、獣はただ静かに告げるのだ。
「見事だ、EDEN――」
強敵への賛辞と。
「だが、次こそは必ず」
未だ潰えぬ強き執念を。
第3章 日常 『ゲームセンターで遊ぼう』
●
『王劍戦争』を終え、更に再び訪れた二種の脅威を退けて。
年末の秋葉原には平穏が取り戻されていた。ごった返す人波は観光客から、都民。冬休みの学生から仕事納めを終えた社会人。年齢も性別もごちゃごちゃに、しかし白い息を吐きながら口々に言い合うのは。
二度と訪れないこの年に起きた様々なことと、来る年への抱負。
未来がどのようなものかはわからずとも。それでも、来る年の瀬に、迎える年の初めに、それぞれの夢を抱きながら、人々は過ぎていく。
そして、舞台は秋葉原の一等地。まさに今は賑わうゲームセンター。一階から六階まで全階層みちみちにアミューズメントが堪能できるこの場所で。振り返りながら、人々の希望を浴びながら。
『遊び納め』をするのも、悪くない。