シナリオ

⑰大天雷

#√妖怪百鬼夜行 #秋葉原荒覇吐戦 #秋葉原荒覇吐戦⑰

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⚔️王劍戦争:秋葉原荒覇吐戦

これは1章構成の戦争シナリオです。シナリオ毎の「プレイングボーナス」を満たすと、判定が有利になります!
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(毎日16時更新)

●らいてい
 溢れ出る、溢れ、|出《いず》る、あふれる――!!
「アァやってらんねェー! 荒覇吐の野郎、一人でメチャクチャしやがって!! こちとら一足先に退散させてもらうぜ!!」
 溢れ出るはマガツヘビ――禍津鬼荒覇吐の従獣。だが今は、少し異なる。従獣とあれど、『主人の横暴に対し反抗をしない』などありはしない。
 時に主人の手に喰らいつき、敵わぬとなれば逃亡する、それこそが忌まわしき獣としての本能だ!
 このままでは周囲の家屋を蹂躙しながら、彼ら――マガツヘビの大群は、√を超えるために全力の逃走をし、その先で事件を起こすことだろう。見え透いた未来、√能力者たちだけでは荷が重い。

 ……だが、古妖にはこのような誓いがある。
 ――『全てのあやかしよ、マガツヘビを討ち滅ぼすべし』――。

「――うおっ!?」
 √を超えようと走るその身に堕ちるは雷。
 上空は晴れ渡り、しかし姿の見えぬそれ、高らかに声『だけ』がわらう。

『ちょーっと|EDEN《√能力者》くんたちー! 一匹残らず、逃しちゃダメだよ!』
 ――天雷! 怒号のような雷がマガツヘビの身体を貫く! 皮膚を焼け焦げさせながら周囲を見まわし、声の主人を――おそらく古妖であろう『彼』を探すマガツヘビ。だがそうしている間にも、獣の脳天へと叩き込まれる雷!

「ちっ! しゃらくせぇ、姿を見せやがれ卑怯者がァ!」
「やーだね! 見せて何になるっていうんだい? こっちは命削って……落としてんだからさあ!!」
 返答する彼の呼吸は少し荒くなっている。若い古妖なのか、その力は全力をもってしても、マガツヘビの足止めに留まっているのだろう。
 だが足しにならぬわけはない――マガツヘビの周囲に集まってくるは大小様々の古妖。いつか、|EDEN《√能力者》が共に戦った姿もあるかもしれない。対立した姿もあるかもしれない。
 今はただ、誓いの元、協力する立場である。

「絶対的な誓いを破るほど軽率じゃあないからね――ほら! 足止めしてあげる! 君たちも、全力で、ぶっ叩けェーー!!」
 特大の雷が、戦場に落ちる――!!

●おとどけもの。
「厄介事の『お届け』だ! 場所――カヤックアキバスタジオ、エンタメ系の企業のオフィスかな。そこを破壊して、マガツヘビが溢れ出してきた!」
 今回はしっかり整えられた髪。オーガスト・ヘリオドール(環状蒸気機構技師・h07230)が資料を手に、ホログラムの地図を表示させながら場所を示す。

「マガツヘビは俺たち『だけ』じゃ敵わない相手だ、ってのは前にも聞いたことがあると思う。でも今回……今回も、かな。――ひとつ、特大に有利な点がある。全てのあやかしよ、マガツヘビを討ち滅ぼすべし――!」
 それは彼らにとって共通の誓い、認識である。マガツヘビの復活が年に二度も起きる異常事態だが、その誓い、守らぬ古妖はいない!

「古妖たちが各々、溢れ出したマガツヘビに対して戦いを挑んで、戦線を死守してる。この戦場は、断続的に雷がマガツヘビに降り注いで、一時的に麻痺させて足止めをしてるみたい。……もちろん、それだけじゃ足りない。俺たち√能力者の――EDENの「ひと押し」が必要だってこと!」
 古妖からの協力要請なんて。それもたぶん、知った顔のやつからなんて。ちょっと面白いけどさ。オーガストは笑って――そして真剣な面持ちになり、|√能力者《EDEN》の面々を見る。
「頼む。マガツヘビを仕留めよう。妖怪どもとのパーティー会場だ! ちょっと音圧高めだけどさ!」
 ウインクひとつ寄越して、星詠みたるオーガストは踵を返す。己も『足し』にならねばならない。

「行っておいで! 俺もやれるだけのことをやってくる。お互い、健闘を祈るよ!」

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第1章 ボス戦 『マガツヘビ』


御園・藍

 ――『全てのあやかしよ、マガツヘビを討ち滅ぼすべし』
「妖怪さんにもおきてがあるのね」
 御園・藍(|永遠《とわ》の半身・h08262)にとっては、それは少し不思議な響きに聞こえたのだろう。神話を好んで読む彼女、強大な存在が特定の契約に縛られる話はいくつか聞いたことがある。それこそアキレス腱、ヘラクレスに毒矢などは目にしたことがあるかもしれない。
 力あるもの、それらに縛られるのか。自由なる古妖たちだが、この約束はけして破ってはならぬ絶対的なもののようだった。

 |鈴鹿《薙刀》を構えた藍は、マガツヘビが上空へとがなり立てている隙をつき、『|天雷《ケラウノス》』を放つ――!
「あっぢぃ!? テメェッ、卑怯な!」
 着弾地点、マガツヘビの鼻先! 卑怯という名はお前にこそふさわしいというのに! 大穴へ逃げ込もうとしていたその鼻っ面を焼いた雷と爆発に、ぴゅうとどこからか口笛が聞こえた!
 振り向くおぞましい獣の顔が、藍の方を向く。憎らしげに目をひん剥き、怒りのままに突撃してこようとするそれへ。

『――いいね、バチバチしてきた! 追加だ!』
 声の主も強化を受けたようだ。飛びかかろうとしたマガツヘビへと落ちた雷、勢いを殺されたその突進を避けた藍。姿勢を低くしまさしく獣のように唸るマガツヘビを前にして、彼女は息を飲む。
「クソが! どいつも、こいつも、好き勝手!」
『好き勝手はそっちもだろ!』
 黒い妖の火が、マガツヘビの体を包みはじめた――ここから、六十秒。あの火が消えた瞬間こそが、藍の命運を分ける一撃になるだろう。だが逆を言えば、火を吹き出し集中している今こそが狙い時だ。最後の一撃さえ凌げばやり過ごせる!

「気弱になっちゃだめ……!」
 藍と古妖による雷が落ちる中、他の古妖たちがマガツヘビへと攻撃を叩き込み、そのまま退避を繰り返す。ダメージは凌げども、雷による麻痺は効いているようだ。的確な連携攻撃が繰り返される中、古妖が藍へと話しかけてくる。
『――ねえ君、最高だ! 雷が好き? それとも得意? 安心して――俺たちが、君を護るよ!』
 声は高らかに響き渡る。天から影――天狗の姿をした古妖と、青天から落ちる雷が、雷の熱と土煙による煙幕を展開する!

「――峨旺旺旺雄雄怨!!」
 絶叫ともとれる叫びから繰り出される、マガツヘビの尾の一撃――それによって晴れる土煙。だがその攻撃、藍には命中していない!
「クソッ……邪魔くせえェ!!」
 負債は相応だ! 尾を振り抜いた瞬間、焼け焦げるマガツヘビ。小さな妖怪たちがちょこまかと煽るようにマガツヘビへと傷をつけ撤退する中で、藍はぐっと鈴鹿を握る。
 この世界も、ほかの世界も守らなきゃならない。√を超えさせるわけにはいかない――ここで、討ち取る!

クラウス・イーザリー

「(彼がいるのなら心強いな)」
 自由奔放といえど……それこそ青天の霹靂のように、唐突に現れては楽しげに人を弄ぶ古妖であれど、彼もまた掟を護る妖の一体だ。振る舞いも厄介、攻撃も厄介、だがそれが味方につけばどうなるか。
「クソッタレ!! お望みとありゃア、てめぇら全員ブッ殺してやらぁ!!」
 黒焦げになったマガツヘビの肌がべり、と剥げた。その鱗片が小型のマガツヘビの群れとなり、彼の姿を覆っていく! 降り注ぐ雷がそれを阻害しようとするがあくまで阻害だ。麻痺させ、一部を引き剥がすも、数が足りない!

『――あー! 君、名前なんだっけ!!』
 ……ありがたいが、多少煩いかも。そういえば|前回《・・》、名乗っていなかった気がする。クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)は少しだけ――困ったように微笑んだ。
「あとでね。足止め、助かる!」
 上空へとそう声をかけ――起動されるは、『レイン』――! マガツヘビへと降り注ぐレーザーの雨、数多! 小型マガツヘビを打ち抜いていく中で、小さな古妖たちがレインの範囲から逃げていく。
 それに代わり激しくなる雷、巨大なものではなく小さなものを落とし続けることによって、クラウスのレインと共に小型マガツヘビを削り切る算段だ!
「テメェらァ! 俺を放っておいて良いと、思って、ンのかァッ!!」
 レーザーの雨と雷の共演。晴天から降り注ぐには物騒なそれらがマガツヘビを焼きながらも、獣は果敢にクラウスへと鋭く尖った禍津ノ爪にて切り裂こうと迫る!
『ちょっと、大丈夫!?』
 その禍々しい一撃を霊的防護と盾にて受ける。足元がぐらついたが、この程度ならば問題ない――数を減らしただけ、相手の攻撃の威力も弱まっているのだろう。
 派手に放たれるレーザー、それと同時に落ちる雷。帯電する地面を肉体に舌打ちをするマガツヘビは、眼の前のクラウスに集中しきっているようだ。古妖たちに対して、自分のほうが強者だと思いこんでいるらしい――実際のところそれは事実といって差し支えなく、|√能力者《EDEN》がいなければ抑え込むのが限界だった可能性もある。だが、今は。

 ――高所。ビルの屋上からちらりと見えたそれは、白色のスーツと雷の翼だ。マガツヘビ本体とクラウスのダメージを偵察するために飛び上がったようだ。
「暫くぶりだね。協力ありがとう!」
 返答。『ぴーす』。すぐに高度を下げ、『青天の霹靂』を落とすことに戻った彼は間違いなく、その名の通りの。
 普段は敵対しているが、今は頼れる味方である。
『名前! あとでしっかり教えてよ、聞きそびれたままだから!!』
 できるだけ礼は尽くしてやろう。すごく名前を呼びたそうにしているから、それひとつ教えるだけでも、彼は満足するかもしれない。

和紋・蜚廉

 雷鳴は高らかに。晴天の中に漂う焦げた匂い。建物に開けられた大穴――そして。
「ウルセェんだよボケカスぅ!! いい加減姿を見せやがれェ!!」
『べーっだ、そっちこそさっさとくたばったらどうなの!!』
 どうにも煩い古妖たちの罵りあいである。

「(……古妖の掟というのは、便利だな)」
 何よりも、守るべき掟。マガツヘビを討つために、死力を尽くし戦線を維持する彼ら。落雷を中心として様々な古妖が押し留め、傷をつけ、マガツヘビへと対抗している。
 普段ならば敵として目前に立つ相手らが、死力を尽くして戦っている。だが拮抗とはいかない、ややマガツヘビが優勢だ。束になってかかっても、そこまでの力を持つ妖、それがマガツヘビ――!

 ――ならば我も応えるだけだ。
 和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)、マガツヘビの前へと立ち、そして、構える――!
 生命力が、己が根源が、体の内から湧き立つ。どくん、どくんと心房が動くたび、骨の奥から外殻へ溢れる奔流……膨らむ熱が周囲へと伝播する!

「ぐっ……テメェ……何者だ!」
 蜚廉の肉体が目の前でめきりと音を立て変化していく。滑るような外殻が鋭く変化し、より戦闘に特化した肉体へと変異する!
『その力、確と受け取った』
 青年の凛とした声が響いた。雷鳴が轟き――古妖が立っているであろう屋上から、ばちりと雷が爆ぜた。戦場へと雷を落とし続けている『彼』がいるのは、あの屋上か――。

「そこかァクソ軟弱野郎!! 盟約なんかに従っちゃってェ、好き勝手にする楽しみを忘れたってのかテメェはァ!!」
『はいはい勝手に言ってな! 彼、めっちゃくちゃ強いからねー!!』
 見上げたビルの上を見て苛立った怒声を上げるマガツヘビ。……炎。蜚廉の体が感じ取った熱は、殺意の火であった。怒りのままに溜め込まれる怨嗟。我が肉体が告げている、『来る』と。僅かずらしたタイミング、これこそが後の『一撃』に響く!

 火炎を纏い、咆哮の後に蜚廉へ突進してくるマガツヘビ――それを、彼は疾走殻を軋ませ飛び出すようにして、真正面から受け止めた!
 ――ぶつかり合う肉体が、血肉と外殻を散らす! だがそれで互いに怯むことはない。蹴り上げられたマガツヘビ、距離が生まれた瞬間その身を撃つ雷電、古妖たちの追撃! 鎌鼬の刃が身を切り裂き、鬼神のごとき妖の腕がマガツヘビのツラを横殴りにする!

『我が全身全霊を持って。この『青天の霹靂』、恩を返そう!!』
「ぐ、オォ!!」
 雷による直接的なダメージは未だ無くとも麻痺はする。動きの止まったマガツヘビの顎下、蜚廉の腕から撃ち込まれるアッパー! 加速衝動を抑え込み、禍々しい火に包まれたそれの体を切り裂く彼の腕。
 鋭い爪と振るわれる腕が蜚廉の体を傷つけていくも、それはじわじわと回復していく。チャージ中の隙を埋める回復能力、抜かりはない!

 どくん、どくんと拍動する心臓。60秒――!

「チクショウがッ――死、に、絶えろォーー!!」
 マガツヘビが放った、渾身の一撃。通常ならば吹き飛ばされるどころか四肢すら砕かれるほどの威力だろう。だが蜚廉は。それを避けることなく、正面から受け止めた!

「……なっ!」
 衝撃を受け突き放され――しかし体勢を整えたまま持ち堪えた蜚廉。まだ、立っている。あの一撃を受けて、まだ……! マガツヘビが追撃を加えようとした瞬間、また雷が迸る!

 拳を強く握る。衝動が、さらに強く湧き上がる。震える外殻が割れ再生し、震え上がり――疾駆する。
 瞬間、殻駆の一撃が、マガツヘビの体を貫く――!

 全てのあやかしよ、マガツヘビを討ち滅ぼすべし。――ひとびとと共に果たされる盟約となったそれ。
「クッ……ソ……! テメェ……何モンだァ……!!」
 体に大穴を開けられ、苦痛に怯むはマガツヘビ。蜚廉の傷ついた肉体は今もなお再生を続けている――そして、その力を受けた古妖たちも。

「盟約の一端を担うだけの存在だ」
 その一端こそが、『彼ら』を繋ぐ強き糸である。高らかな雷鳴と共に、追撃としてマガツヘビへと派手な落雷!
『いーや。|今は《・・》最高に頼れる味方さ!』
 その軽々しい言葉の主も、今は頼りにできるものだ。

御兎丸・絶兎

 雷鳴、轟く! 晴天から落ち続ける雷、自らも落とすものとして見慣れたそれに御兎丸・絶兎(碧雷ジャックラビット・h00199)は「ひゅーう!」と声を上げた。戦場は落雷の跡で黒焦げだ。そんな中で、痺れで上手く動けないらしいマガツヘビへとヒットアンドアウェイで攻撃を打ち込んでいる古妖たちの姿が見える。

「誰かわかんないけど、雷使うヤツが味方なんだな!」
『誰かでいーよー!』
 大きめの声量だったからか、遠くから響く青年の声。直後マガツヘビに落ちる雷霆! どうやら命中するたびに微弱な麻痺を与えるらしいそれ、足止めとしては優秀なようだが、あと一手が足りないようだ。
「くっそ……黒焼きにするつもりかテメェらはぁ!!」
 もちろんそのつもりである。容赦はしない、何故ならそれこそが盟約だからだ!

「いーぞ、オレさまも雷使い仲間だ! チカラ貸してやるっ!」
『助かる! ぶっ叩いてやってー!!』
「……カヤックなんとかってとこのヤツらも、ちょっとかわいそーだしなっ!」
 絶兎の声に応答する声。ほんと土曜日休みでよかった!! ほんとによかった!! どこかの会社は土曜日の午後になってから本気を出したり早朝に働いたりしている気配が……こほんこほん。

 ――マガツヘビのチャージには欠点がある。無敵に見えて、受けたダメージを後回しにするだけだ。チャージ中にもダメージを与え続けていれば、後にそれが借金とばかりに彼の体に襲いかかってくる。それは絶対に無視ができない重みを持っているはず!
 ならば、その間! こちらは果敢に攻撃を仕掛けるのみだ!

「避けたってムダだからなッ!!」
 構えた指先、魔術によって作り上げられた碧雷の弾丸がマガツヘビに射出される! 頭部を狙ったその一撃から、波紋のように広がるエネルギー。
「ぐぬっ……! テメェらぁ……!」
 体を深く痺れさせる痛みに呻くマガツヘビ……だが頼るべき本命は、自身含む周囲の味方が纏うさいきょームテキの雷パワー! 遍く広がる強化効果は周囲の古妖たちをも強化する!

『応援センキュー! 調子合わせるよ、兎くん!』
 天から降ってくる声がはきはきと告げてくる。それに頷いて――目の前のマガツヘビが、火を纏いはじめたのを見た。それと同時、絶兎へ向けて容赦なく腕を振るう! やはりチャージ中も全力で攻撃を仕掛けてくるつもりだ!
「このっ、テメェ、避けんじゃねえぇ!!」
「ふーんだ、捕まってやるもんか!」
 腕をジャンプして避けた絶兎。見た目通りの機動力! そこへ丁度落ちる雷を合図にして――。

「――アライズ・アップ!!」
 |超雷神の手《トールズハンド》が、マガツヘビの脳天を強かに叩く!
 今はダメージがなくとも、後になれば昏倒しかねない一撃! ふらつくマガツヘビへとどんどん撃ち込まれていく雷、麻痺する体でなんとしてでも絶兎を捉えようとしたその両腕に、雷が落ちた。
 舌打ちをしてちらりとビルの上を見たマガツヘビ――味方している古妖があちらにいるらしい。だがその隙を見逃さず絶兎の拳が撃ち込まれ、その痺れによりマガツヘビはさらに身動きが取れなくなっていく!

『――君らと遊べなくなるの、俺は嫌だから!!』
 ――60秒! 古妖による特大の雷が落ちたことによる、土煙が上がる中。
「黙れ黙れ黙れ黙れェエーー!!」
 絶叫と共に放たれた、尾の振り抜き――!
 ぶおんと勢いの良い一回転。だがそれは絶兎には当たっていない、派手な空振りだ!

 先ほどまでに受けたダメージがマガツヘビを襲う中、土煙から高く、全力で飛び出していたのは――晴天、太陽を遮る影は、絶兎のもの!
 高く飛び上がった彼の雷纏いし拳が、マガツヘビの頭部をを、捉えた――!!
「っづぅッ、ぐあァ!!」
 マガツヘビが苦悶の声を上げる。焼け焦がれ剥がれる鱗、絶兎の拳による打撲。負ったダメージが反映され、マガツヘビがその体をのたうってもがき苦しむ中で、絶兎はふんすと鼻を鳴らす。

「どーだ! 雷ってのはすごいんだぞ!」
『君の拳がすごいんだよ!』
 晴天から降る声、実に上機嫌である!

那弥陀目・ウルル

「良かった、カヤックが健全な会社で……」
 ほんとにね。朝八時とかから働き始めたり、深夜に唐突に働きを見せたりする会社じゃなくて本当に良かった。どこに向けてるか? さて何の話でしょう……|地の文《わたくし》にはさっぱり……。

「そんで ま た キ ミ か」
『俺だよ!!』
「どれのことだァ!?」
 声の主へまたかと話しかける那弥陀目・ウルル(世界ウルルン血風録・h07561)。返答として楽しげな笑いと共に降る雷、わかってないので困惑するマガツヘビ! 青い空から降る雷は強かにマガツヘビの体を撃ち続けている!

「あれだけ暴れておいてよくもそこまで味方面できちゃうよね〜、おどろいたよ♡」
『仕方ないでしょ〜♡一時休戦! ウルルって言ったね! 我らが盟約に、力を貸して頂こう!』
 あやかしすべてに共通する誓いだ。彼も例外なく、若かろうと|旧《ふる》かろうと、古妖たるものそれに従い、己が全力と使命を果たさねばならない――!
「まあいいや! 雷当てないでよ、天神様!」
『フラグ?』
 言いつつ狙うは当然マガツヘビだ! 蝙蝠に変身したウルルを叩き落とそうと振るわれるマガツヘビの腕、だが麻痺したそれではウルルの速度と小回りが利く体にはついてはいけない。

「テメェもちょこまかするタイプかよ、えェ!?」
 舌打ちをするマガツヘビ! 揶揄うように飛び交う蝙蝠を落とそうと必死になっているさまを見て古妖が笑い声を上げている。
 それに腹が立ったのか、禍々しい火炎を纏いチャージを始めたマガツヘビだったが――頸あたりに差し掛かった瞬間に、再度の変身!

「この街を護るため、今回も力をお貸しください!」
 今回『も』。『げぇっ』とビルの屋上から声がした。
 現れるは平将門公――。
 ……の、首!!
『デカくなってない!?』
「デカくしました!!」
 ――の、さらにデケェやつである!! 見覚えがあるか古妖が半ば困惑した声を上げ、マガツヘビすらも狼狽えた。その頸に噛み付くは生々しい巨大な顎だ!

「グォオッ!?」
 飛び散る血液、お世辞にも美味いとは言えないそれを嚥下する生首。絵面としてはまさしく妖怪の戦いを描いた浮世絵のようだが、これは現実に起こっていることである――!

『ちょっと痺れるかも、ごめーん!!』
 マガツヘビの喉を噛み砕かんばかりの顎の力。それを引き剥がすために振るわれそうになった腕を狙い、古妖がバチリと雷を落とした! 麻痺が伝播してくるが、確と食い込ませた顎が外れることはない! 口を聞ければ「ごめんじゃないでしょ!」くらいは言えただろうか。

 ばさり。ようやくまともに姿を見せた古妖――青年の姿に雷の翼。相応の無理をしているらしい、その腕は焼け焦げかけている。だがそれでも!
『やってやれ、ウルル!!』
 声援と共に、全力の雷が落ちた――!
 マガツヘビが纏っていた火が弱まっていく。それでもなお振り抜かれるは尾の一撃!
 弾き飛ばされ変身が解けるも、ウルルは楽しげに笑っている。狙い通り、ろくなチャージはできなかったらしい。
「ぐ……ゥ……テメェらぁ……ふざけ、やがって……」
「ふざけてこんなことすると思ってるの? やだ〜」
 息も絶え絶えなマガツヘビが唸っている。

 だが、それも――束の間のこと。ぐらり揺らいだ体が地に伏せる。
 流れ出す血液……焼け焦げ無惨に黒焼きと化した体――。
 それはもう、二度と動くことはなかった。

 ウルルはぺっぺとマガツヘビの血液を口内から追い出している。あんまりおいしくなかったので。
 ……敵の手を取ったり、気遣ったりはできるようだが。同じノリで破壊や殺戮も楽しむのだから、始末が悪い。古妖とはそんなもの、自らの欲のままに動くもの……。

「√EDENと人類を守るのが僕の役目だ」
 物言わぬ黒焦げの骸となったマガツヘビ――それを前にして、ウルルは空を見上げる。愛する√EDENの空に羽ばたく白い影。
「この場は協力するけど、キミがした事は許してないよ」
『許されるとも思ってないし、これからもやり続けるよ?』
 懲りもせず笑うその顔、やはり軽薄で、どこか無邪気だ。
「これが終わったら帰りなね。じゃなきゃ次はキミの番だ」
『また会えたらいいね!』
 あんまり会いたくないな〜。手を振るそれにお世辞程度に手を振って、ウルルは歩き始める。
 ……戦いはまだ、終わっていないのだから。

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