⑰喰らえマガツヘビ・再~あげてみるのも一興でしょう!
●腹が減ってはなんとやら
「からあげもいいとは思いませんか」
ブリーフィングの開始早々一言目がそれはどうかと思うし、恐らくなにも伝わらないが、この少女がキラキラと目を輝かせているのであれば、十割十分確定ガチャも真っ青な確率で| ろくなことではない《悪食トンチキ》のは最早、決定事項なのである。
黙っていれば西洋人形、口を開けばド正論パンチ、食に関われば要らん方向で|輝く《暴走特急》好奇心、サンドイッチ狂ルナ・ミリアッド(無限の月・h01267)再び。SEはててーんとかでてーんとかどどーんとかそんなコミカルでよろしく。
「好奇心が逸りました、マガツヘビ再びです」
自覚あったらしいルナではあるが、自制心など欠片もなかった。
以下、読まなくていいです。
マガツヘビサンドイッチ――嗚呼、ヘビ肉は鶏肉のようで大変、美味しかったです。あの食感であればから揚げもいけると思いますが、如何でしょうか。とりあえず、捕獲してから揚げにしませんか。ルナたちはレモンをかけるかけない論争には参戦しませんが、他人のお皿に勝手にレモンをかける行為は暴挙であると断言します。
んん、と咳払い。
「出現場所は秋葉原のカヤックアキバスタジオです。幸いにも人的被害は出ておりませんが、オフィスそのものは既に爆発四散しています。爆心地の大穴よりマガツヘビが再び現出しようとしていますので、みなさんはそれを止めてください。また、今回のマガツヘビは襲撃よりも生存に重きを置いています。とにかく逃げることを優先しますので厄介ですが――」
ルナ、その無表情に僅かな勝ちを確信しているような自信に満ちた笑み。
「今回だけ暴妖「赤鬼熊」が共闘してくれます。個体名は|ベア《・・》さんです。ええ、|ベア《・・》さんに聞き覚えのある方もいるでしょう。彼です」
ルナちゃん、ダブルピース。
「もはや勝ちは確定したと言っても過言ではないでしょう。古妖と共闘しつつ、今回も食べてしまおうじゃないですか。ずばり、作戦名サ喰らえマガツヘビ・再~あげてみるのも一興でしょう!~開始です!」
今回もタイトルは冒頭で回収です。それでは、ひとかりいこうぜ!
第1章 ボス戦 『マガツヘビ』
●ようこそ、からあげパーティーへ!
ある日~|奇妙建築《店》のなか~くまさんは~ふっとんだー
たのしく料理中~くまさんふっとんだー
はい、●のくまさんのメロディーでよろしくお願いします。
いきなりどうしたかと言いますと、ベアさん登場の経緯でございます。前回のあらすじを兼ねて、詳細説明いたしましょう!
~前回のあらすじと登場の経緯~
討伐したマガツヘビでサンドイッチパーティを楽しんだ能力者たちとベアさん。
ベアさんは命を賭してマガツヘビ封印の礎になろうとしていたところ、とある能力者の一言が切欠で生きたい!という意思が芽生えました。能力者たちと協力し、二度と奇妙建築から出られないけれど、しかし生きたまま封印の礎になることに成功。たまに遊びに来てくれる|能力者《友達》たちと楽しい時間を過ごしつつ、今日も今日とて封印の中で穏やかに暮らしていたベアさん。お昼ご飯に大好きなサンドイッチを作っていたところ、マガツヘビの魂の欠片を封印した【無限封印!災厄バリヤーバキバキBOX!】が突如、爆発してベアさんは奇妙建築ごと吹っ飛ばされたのだそうです。
| 奇妙建築ごと吹っ飛ばされたのだそうです《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。
はい、カヤックアキバスタジオが爆発したことによる連鎖爆発ですね!
魂であれどマガツヘビの欠片を封じ込めた【無限封印!災厄バリヤーバキバキBOX!】も概念的な連鎖爆発したってところでしょう! 確かに封印の構築中に【爆発】とか【吹っ飛ばす】って概念的武装してなかったわ! でも、爆発するとか吹っ飛ぶって思わないじゃん!?
とにかく、今のベアさんは、大変、ご立腹であった。バチギレであった。何故ならば、お昼を食べ損ねたからだ!
自慢の赤毛は焦げ焦げで(ででーん!
お気に入りのフリルエプロンは散り散りで(どどーん!
大きなお手手にはお昼のサンドイッチの残骸が!(ばーーーん!
『てっめええええ、マガツヘビいいいい! 今度はから揚げにしてくってやらぁあああああ!』
お腹へったクマさんは、凶暴なんだぜ? 高らかな咆哮はコンクリートの建築物すらふるわせる。
さて、マガツヘビはというと――捕食された経験がすっかりトラウマになっていたようで。
『き、き、貴様はっ!』
禍々しい漆黒の鱗も真っ青だ★ ぷるぷるぷるぷる、震えるマガツヘビたん。
その様子に気を良くしたベアさんは、じゅるりとはしたなく垂れてしまいそうになった涎を逞しい腕で拭いつつ。
『またお前を喰らうときがきたことは、まさに僥倖。ジューシーあつあつうっまうまに調理してやっからな!』
よぉーく研がれた爪がじゃきーん! 飢えに飢え食欲ギラギラのお目目がマガツヘビをとらえる!
『ひ、ひぎゃああああああああああああああああ!!』
逃げる兎と蛇ならば果たしてどちらがはやいのか、脱兎の如く逃げに走るマガツヘビの前に立ちふさがったのは――!!
●うぇるかむ とう からあげぱーてぃー!
「此処は通しません、から揚げ!」
「ちるは」
「はっ! マ、マガツヘビ!」
纏う雰囲気はちるあうと! ふわんふわんな空気感がすんごく癒される不忍・ちるは(ちるあうと・h01839)ちゃんと。
「さて、マガツヘビよ。何も止まれとは言わぬ。欲しいのは、その|肉《命》だ」
うっかり食後のご馳走のことが脳内を支配してる様子のちるはちゃんを諫めつつ、隙も油断も覗かせぬ険しい眼差しでマガツヘビを見据える和紋・蜚廉 (現世の遺骸・h07277)さんだーーっ!
初めまして! ようこそおいでませ、お二人さん! 最高にマッドなから揚げパーティーしようぜ!!
ちるはちゃん、ほっぺぺちぺち脳内でポップに踊るこんがりジューシーあつあつから揚げを追い払うと、改めていつになく真剣な表情を作ってきりりっと蜚廉さんと立ち並んだ。
『だぁああれがから揚げだこの|女《アマっ》ぁあああ!! あと、命やったら止まるだろがあああああ!!』
このシナリオにおいて、マガツヘビたんは貴重な食材でツッコミ役です。
から揚げ呼びに逆上つつ、うっかりツッコミしちゃったもんだから逃げ足が止まるマガツヘビ。その背後からどすんどすんと追いかけてきたのはベアさんだ。
『令和の時代に女呼びたぁ古っちいなぁ、おめえはよ! から揚げたぁ、おめえのことに決まってんだろ、マガツヘビ』
よう、お嬢ちゃんとおにいさん! と片手をあげて軽快にご挨拶するベアさん。
ベアさんのお爪はぎらぎら、お目目はきらきら、焦げ焦げエプロンはそれでも尚、ふりふりだ。
『お嬢ちゃんたちもヘビのから揚げ喰ってくかー?』
「はい、勿論! いいかんじに切って揚げた完成形を想像すると、確かにおいしそうな気がしてきてまして!」
マガツヘビの肉付きはとってもバランスいいもんなぁ……巨大でありながらそれを支えるパワー、そしてヘビという名に相応しいしなやかな動きを可能にする筋肉は、それはそれは良質なものだろう。良質な筋肉は、とても、とても、やわらか~い。
それを食べやすい大きさに切って、衣でおめかしさせて、カラっと仕上げて。黄金色に色づいたあつあつから揚げに、がぶっと齧りついたらッ――ごくり、ちるはちゃんとベアさん、見事、食を通じて心を通わせ合った。同じタイミングで喉を鳴らす。
「飢えた匂いがしているな、赤熊」
ちるはちゃんからもなんかそんな感じの気配を感じたけれども、一旦スルーした蜚廉さんである。
『昼飯食いそびれたからなぁ……』
『(よぉし……い・ま・の・う・ち)』
前門の|虎《能力者》後門の| 狼《ベア》さん、追いつかれて挟み撃ちに焦っていたマガツヘビ。
常だったら空気扱いに怒り狂って襲い掛かっていたマガツヘビだが、今回のマガツヘビは違った! とにかく、生存だ。今はとにかく、生存だ。そもそも二度と喰われてたまるかと、会話の最中にそろーっとそろーっと抜き足差し足忍び足していた。腕と尻尾だけど。
しかし、そうはイタズラな猫ちゃんたちがゆるさないのだ!
にゃんにゃかにゃ~んっといっぱいの猫ちゃんたちがオフィスビルの無事なフロアの窓辺に現れて、 えいえいえいっとぷにぷにの肉球で窓ガラスを押している。
ああ、誰も気づかない。ちるはちゃん以外、猫ちゃんたちに気づかない! ぐらぐらする窓ガラス。ゆらゆらする窓ガラス。そして、強固な窓ガラスがフレームのままマガツヘビに次から次へと降り注ぐ!
『あだだだだだだ!? なんだなんだ、あった、いってええ!!』
逃走判定、|大失敗《ファンブル》!――タネをあかすと、なんと猫ちゃんたちのイタズラによって窓の建付けが悪くなっていたのだ。そんなところにマガツヘビの爆発がトドメになって建付けはもうオダブツだったのだ、猫ちゃんの手で壊れてしまうくらいにね! 皮肉な因果の結果だね★
さて、窓フレームの雨あられを喰らってマガツヘビうっかり声をあげてしまった! 全員の視線が集まるのもやむなし。
『――あ、くっそ、えええい、こうなったら|窮鼠猫を噛む《キューソネコカミ》だ、喰らえぇええッ!!』
こうなれば抵抗する他ないと自棄になったマガツヘビのマガツカイナが振るわれる!
とはいえ、みすみす吹き荒れる|暴力《嵐》を前に無防備に身を晒すわけもなし! 迫る腕を見上げ、ちるはちゃんは、ふふっとそぐわぬちるな笑み。だって当たらないのはわかっているもの。
すかさず、横からマガツカイナをとらえたのは蜚廉 さんの|組み技《グラップル》! ぎりっと|腕《カイナ》を絡める捕る蜚廉 さんの六肢は|焔環顕《エンカンケン》で轟々燃え上がる!
「ちるは、避難阻止、見事。ふたりとも、火を通すならい……」
蜚廉さんが今だって言う前にちるはちゃん&ベアさん、から揚げっ! って声を揃えながら|やる気満々《食欲みちみち》に、マガツヘビに飛び掛かってぶん殴っていた。心のお箸は前のめり、お腹のお皿は空っぽです! 脳内ではもう愉快にポップにご機嫌にから揚げが踊っているんだもの、嗚呼、はやく食べてしまいたい!
「ふむ、これ以上、待たせぬうちに倒してしまおうか……」
女の子のお腹が鳴ってしまう前に。更に火力増して燃え上がる六肢、配慮も振る舞いも紳士な蜚廉さんである。
しかし、強火で炙られたお肉からは何だかとっても香ばしくって、いい匂いがしてきて――。
『うぉおおお、次はかば焼きで食ってやるぅうううう!』
ベアさん、マガツヘビにかぶっとかみつきながら雄たけび。から揚げだけでは足りないようです。ベアさんのお腹がぐぅぐぅ|多重演奏《オーケストラ》を奏でまして。
「かば焼きには香ばしいタレと白米でうな重風が美味しそうですね!」
『俺様は食材じゃねえええええ!!』
ちるはちゃんのリクエストに|マガツヘビの全力のツッコミが戦場に木霊したのでした!《フロアがわきあがったのだった!》
●まだまだ にがしません!
『ああ、くっそ、ひでえめにあった……』
ちるはちゃん&蜚廉さん&ベアさんを息も絶え絶えになんとか振り切って、逃走再開するマガツヘビ。
背後から迫る|追跡係《ベアさん》の気配に恐怖を覚えながらも、路地をのっしのっしするんするんと逃げまくる。とにもかくにも逃げまくる。
いくらベアさんがはやくともマガツヘビとのリーチ差は大きく、蛇と熊の逃走&追跡劇はまさにギリギリカーレース! 順調にいけばワンチャン逃げ切れるぐらいには持ち直したようかに見えた。
だが、しかぁああし! そうは|能力者たち《ハラペコたち》が許さねえ!
「カ、カヤーーーック!! くっ、一体誰がこんな酷いことを……ッ!」
さらっと登場したのはルメル・グリザイユ(寂滅を抱く影・h01485)くんだー!
え、誰がってそりゃあまあ、はい。|お上《マガツヘビ》ですよ!|お上《マガツヘビ》!
地上7階地下1階|SRC《鉄骨鉄筋コンクリート》構造、災害大国日本が誇る建築基準法をもとに建築されたとっても頑丈なとあるビルは、すっかり爆発四散して大きな穴が開いていた。風穴ぽっかり風通しばっちり! 中の固定資産がどうなってるのかとか、ちょっと考えたくないですね。主にちょっとお高いパソコンとかのことですがっ! まさか社内にサーバー室とかないよね、大丈夫だよね?
ルメルくん、関連職のお人方が見れば悲鳴も必須、見るも無残な有り様のオフィスビルを少しばかり大袈裟に見上げて、演技感たっぷりに叫んでみたり。さりげなーくマガツヘビの逃走経路上にあらわれるあたり、君ってばちゃっかり確信犯ですね。誤用の方の意味で。
見覚えのある姿にぴえって震えあがるマガツヘビたんですが、一度止まってしまえばもう遅いッ! 後方からは、時速60km以上で迫る足音、あっという間に追いついてくるもはや食欲の権現なベアさんだーッ! 方向転換もままならないなか狼狽えるマガツヘビに、追撃とばかりにざっざっと勇ましい足音と共に姿を見せたのは――!
「よーォ!ベアさん!! 無事で良かったぜ!」
大きな闇色蜥蜴のウィズ・ザー(闇蜥蜴・h01379)さんだー!
小脇に抱えたでっかい壺に上質な蜂蜜を入れての登場です! うん、から揚げパーティー楽しむ気全開だね★
「あ、ウィズくん偶然だね~!ベアくんも元気してた~? たまあに顔は見せていたけれども、直接お話するのは随分と久しぶりだねえ。今日は再会のご馳走にねえ、あちらの食材を使って唐揚げを作っていこうと思うよお」
なんて、すっかりマガツヘビなぞ|眼中なし《食材扱い》のルメルくん。
いくらぷるぷるマガツヘビたんモードだとしても、その風貌から放つ威圧的な存在感すらもうさらっとなんか大きい食材いるね~くらいに無視して、知人たちに声をかける。
「いいねェ! あの味は鶏にも似てンだ、唐揚げも最高に良いンじゃねェか??」
『よぅ、ルメルにウィズ、久しぶりだなー! なあなあ、サンチュで挟んでヘルシーに、しゃきしゃきとぷりぷりを味わうとかもどうよ?』
ベアさんはもとより、ウィズさんもやっぱりしっかりノリノリです。
『だぁあああ、お前たちまで俺様を無視すんな!』
『お前は逃げる気なら今のうちに逃げりゃあいいじゃねぇかよ』
『うぐ、さ、さっきはそれで失敗したんだよッ!!』
二度目の空気扱いは耐えられなかったようです。あまりの怒りにぎゃーすと吠えるマガツヘビ。
しかし、ベアさんが鋭いツッコミを入れた。反論もできないド正論に、マガツヘビのMPにクリティカルダメージ! 固い窓フレームの雨あられがしっかり利いているようですね!
嗚呼、再びすっかりちゃっかり前門の|虎《能力者》後門の|狼《ベアさん》のマガツヘビたん! さっきからから揚げから揚げと、もう我慢できません!
『黙って逃げてりゃあ俺様のことを、揃いも揃って食材扱いしやがってぇええええ!!』
『蛇は食えるだろ』
『熊も食えるだろうがあぁあああああッ!!』
怒りに震えながらも、間髪いれず律儀にツッコミいれるんだからマガツヘビたん、かわいいね!
さて、蛇の災禍は怒りをみせた。咆哮、重く響く木霊して。ざわざわと、わらわらと建物の影より、闇より湧いてくるのは小さき災禍の蛇の群れ。それらがぞろりぞろりと寄せて、集いて、蛇の災禍の身体を飲み込むように覆っていく。
焼けた傷すら覆い隠して、いざ、火ぶたを切らん|禍戦《マガツイクサ》――って格好よくキめることができればよかったんだけどねっ!
腹ペコたちを前に|前回のメイン食材《小型マガツヘビ》など召喚しちゃったのが間違いだった!
「ベアさん!」
少年と青年の狭間に在るような声が。静かで落ち着いていて、しかし再会の喜びを隠せない声が、オフィスビルの屋上よりベアさんの名を呼んだ。
『この声は――』
ベアさんは再会の連続に、再びご馳走にありつけること以上に心が踊った。ベアさんのお顔に、喜色に満ちた笑顔が咲く。ああ、もうこれではただの喫茶店のクマさんではないか。けど、それでも構うもんか! 冬の穏やかな陽射しを背に、軽やか飛び降りてきて登場してきたのは、クラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)くんだーーッ!
そんでもってベアさんは思わずと、クラウスくんをハグッとキャッチっ! ベアさんの自慢の赤毛は爆発の余韻で|巻き毛猫ちゃん《レッグカール》もびっくりな焦げ焦げくるくるだけどね!
クラウスくん、ちょっとちりちりになったベアさんの冬毛からぶはっと顔をあげつつ。
「ご馳走の時間だね!」
『ああ、ご馳走の時間だぁああああッ!――いくぜええええッ!』
懐かしい顔ぶれが揃って、テンションアゲアゲ爆上がりのベアさん。マガツヘビの咆哮に負けじと吠え返して、赤く猛鬼熊の殺気を纏い、マガツヘビに飛び掛かっていく。
「わ~お、ベアさんやる気満々だねえ。じゃあ、|戦闘《クッキング》開始!」
「ルメル、美味しく作れよォ?」
「ふふ。みんな、援護するよ!」
ベアさんに続いていく、ルメルくんとウィズさん。そこにクラウスくんの|光輝の翼《ルミナスウィング》による援護がかかる――ああ、光の翼で鷹よりはやく空翔ける三人をどうしてさばききれようか!
まず、懐飛び込んで先駆けたのはルメルくん!
「さて、まずはお馴染みの下処理から」
きらり鈍く閃くナイフがマガツヘビの皮を、肉を、纏う小型マガツヘビを削いでいく! お肉は食べやすい大きさに切らなきゃね!
『ぐ、くっそッ。叩き落してやらぁ、蠅がああああッ!』
勢いだけは確かに禍津ノ爪を振り回すマガツヘビ。されど、ルメルくんはそれを的確に見切り、ナイフで受け流していく。
「はは、切りやすいように刃を研いでくれてるの? ありがとう! 相変わらず活きがよくって嬉しいよお。さ、美味しく作ってって言われたからねえ。今回は助手も呼ぼっか」
鍔迫る爪を押し返して、一度後方に跳ぶ。お靴の爪先をトントン、ふっふっふっと楽し気に笑うルメルくん。かも~んと指を鳴らして|Arma Sapiens《アルマ・サピエ》、助手さんたちを呼び出した!
呼び出された助手さんたちはお料理するのに相応しいキッチンメイドの格好だ! 淡いグレーのロングスカートは広がりは控えめに。されど、ベアさんとお揃いのフリルエプロンはふわっと豪華に。三つ編みおさげの尻尾を飾るヘアゴムには、かわいいかわいい黒猫ちゃんモチーフがついている。さり気ないお洒落もばっちりだ!
そして、エプロンの大きなポケットには各種調味料がごそっと入ってる。ごそっと。ごそっと!
「じゃ、君たちは待っててねえ。次にお肉を柔らか~く、しよう――ねッ!」
ナイフのグリップを握り込み、威力をバフる仕込みはOK! ホップ・ステップ・振るわれる爪を掻い潜り、肉付きのいい箇所を狙って叩く! 叩く!! 叩く!!!
「あっはは、お料理って楽しいねえ。そおれ、臭み消し!」
ルメルくん、吠えるマガツヘビの口内に高純度のエタノールをぶち込んだッ!
『ガッ!? アァアッ! てっめェエ!』
『余所見している暇ネェぞ?』
焼け付く喉にむせるマガツヘビ。その隙に破心魔爪で飛び掛かるのはベアさんだ! 暴れ狂う大蛇に爪をぶっさして、しがみつくさまはまるでクライミング。大熊を引っ付けたままではとても逃走などできやしないと、マガツヘビは黒き妖の火をじわりじわりと溜めだした! 我が身を揚げて喰らうつもりならば、熊こそ焼いて喰ってしまおうか!
させるかよ、と更に畳みかけるベアさんだが、妖の火を溜めている最中はマガツヘビにはノーダメージ! ベアさんの頭にかぶりつこうとしたマガツヘビ。しかしッ!
「させないよ」
飛翔してきたクラウスくんが、思念操作した兵器で援護射撃だッ! 横っ面を撃ち抜かれてマガツヘビは大層、ご立腹。クラウスくんを標的に定めるが、今度はそれをベアさんがぶん殴って阻止する。息の合った見事な連携に、翻弄されっぱなしのマガツヘビ。
されど、蛇は蛇。その名に禍を頂く大蛇は――
『諸共、焼け死ねぇええええッ!』
その身ごと大熊諸共、黒き焔でお焚き上げ! 禍津ノ尾をぶぉんと振り回すッ!
『ガァアアアッ!』
クラウスくんは間一髪で回避したものの、引っ付き熊さんしていたベアさんは焔で焼かれ、尾に吹っ飛ばされる。|SRC《鉄骨鉄筋コンクリート》構造にぴしりヒビ入るほどの、衝撃。されど、ベアさんだって古妖だ。まだまだとベアさんは立ち上がった。
ただ、古妖の連撃を喰らい続けていたマガツヘビも無事ではない。血でぬらり光る様は禍々しさに拍車をかける。ぜえぜえと息も絶え絶え、ニタリ凶悪に笑い。猛々しく吼え。その身に再び小蛇を纏った。
そして――
『あばよォ』
爪振るうことなく、マガツヘビは踵を返した。逃げるのだ。今はとにかく逃げるのだ。大穴潜り、他の√へ。新たな地で有象無象を思うがままに蹂躙し、殺戮を、破壊を、暴虐を、再び心ゆくまで愉しむためにッ!
しかし大蛇は忘れていたのだ、闇色の大蜥蜴の存在を。地を這うただの蜥蜴の如くにその身をかえて、翔けるはやさで身を隠し、獲物喰らう隙を今か今かと虎視眈々、狙い定めていた大蜥蜴の存在を!
「逃がさねェよ」
ぞわり、それはマガツヘビの足元より聞こえた。影より聞こえた。以前、己が身を喰らいつくした最も悍ましい声が。噛み刻まれた恐怖はいくら大蛇とて忘れる訳もなく、引き吊った悲鳴をあげながら大蛇はぞろり地を這い、逃げる。鷹よりはやく、時刻む秒針よりはやく! ――それが、大蜥蜴の思うつぼだとは知らずに。
大蜥蜴が繰り出すは|山然《サンゼン》、黒縄で大蛇の腕をぐるり捕えてしまえ。さあ、幾百の刻爪刃と融牙舌で再び喰らわれる恐怖を与えようッ!
『ギャァアアアアアアアアアアアッ!!』
それは、断末魔に思えた。だが、だが、此度は生きるに重きを置いたマガツヘビの執念が上回る。纏う小蛇を鎧がわりにその全てを犠牲にして、マガツヘビは――ずるり、這う這う逃げ出したのだ!
「逃げ足だけははやいじゃねェか」
『だなぁ。ま、追うのは俺に任せなァ』
ベアさん、屈伸。ぐぐーっと身体を伸ばし、腕をぐーるぐーる回して追いかけるための準備体操。
「ベアさん、大丈夫?」
「思いっきりやられていたもんねえ」
『おう、問題ねえよ。それよりあれだ、買い物頼んでいいか?』
ベアさんを気遣って駆け寄ってきたクラウスくんとルメルくんが、買い物? と首を傾げる。
『おう! 俺、現金ねえしな! あと、やっぱから揚げにはご飯ほしいだろ? 味噌汁とか飲み物も欲しくねえ? ビールとか』
「ほしいねえ!」
ルメルくん真っ先に食い付いた。クラウスくんはなるほど、頷く。
『つー訳で頼んだ! こっちは問題ないさ、きっと親友がきてくれっからな!』
ベアさんはからり快活な笑みを向ける。それは確信だ。だって、彼はあれから毎週来てくれていたのだから。
「OK~、じゃあ行ってくるねえ」
「気を付けて」
『おうよ!――ところでよ、ウィズ』
そうして二人を見送ってから。ベアさん、ウィズさんの手をぐわしっと手を引っ掴む。なんだか有無を言わせぬ圧力ある笑顔が怖い。
「な、な、なんだよ、ベアさん」
『ちと胃薬ひと箱、買ってきてくれや……お前もさ、食べるだろ?』
「え、な、なにを」
『ルメルんのわくわくキッチン』
「あー……(察した)――ァ、俺も?」
『も』
何やら覚悟をキめた劇画調のお顔のベアさんが、ぐっとサムズアップ。ウィズさんはまだから揚げを食べていないというのに、ぎりぎりと胃が痛みだした気がしたのだった――。
因みにちるはちゃん&蜚廉さんも、ベアさんから買い出しの任務をお願いされております。紙皿と箸たのむーだそうです。心のお箸だけでは食べにくいもんね!
●つーかまーえた!
逃げるマガツヘビあらば、追うベアさんあり。
マガツヘビは大穴潜って逃走するのを目標に、ベアさんはマガツヘビを美味しくからっと揚げて食べてしまうのを目標に、爆発四散したオフィスビルの周りを大周回! 果たして蛇と熊はバターになりえるか、それともただのサーキット周回か。とにかく廻って巡って愉快で必死な逃走劇。
とは言え、マガツヘビは満身創痍! 走って逃げ続けるのももう限界だ。ならば、隠れて撒いてしまおうかと閃いた。ズタボロのマガツヘビは大穴こさえたオフィスビルのお向かい、第一なんちゃらビルの外階段をずるずるっと登り、ぎゅぎゅっと身を縮めてかくれんぼ。でっかいけれど蛇なので圧縮はお手の物なのだ! ちょっと手すりからはみ出てるけど、上の方までは探すまいって目論見。
『あっれェ? アイツ、どこ行った?』
『(コイツ、本当にしつこいなァアア!!)』
熊は執念の生き物だからね! 執着心すごいぞ! マジですごいぞ! 一度味をしめたら暫くはそれしか食べないとかなんとか?
とにかく、目論見通りベアさんは周囲を見渡している。あんな巨体が忽然と消える訳もあるまい、ましてや隠れられる訳もあるまい、って先入観から上を見ることもなく、喫茶店の前の通りとかを右往左往うろちょろり。ベアさん鼻をすんすんして、首を傾げる。
『おっかしいな。ここら辺にいるのは間違いねェんだが……』
『(油断大敵ってやつだナァ、いっただっきまー……)』
マガツヘビ上から壁を伝い、そぉーっとベアさんの頭を食いちぎろうとがばり、口をあけて――。
「やっほー、ベアさーーんっ!」
危ないところをばびゅーんっとかっ飛んできてベアさんを横からぶっ飛ばしたのは。
『|親友《シャル》ーーーー! やっぱ来てくれたかーーーーッ!』
シャル・ウェスター・ペタ・スカイ(|不正義《アンジャスティス》・h00192)! シャルくんだーーーッ!
ベアさん、ビルの壁と頭をごっつんこしたような気もしたけれど、なんでもなさそうでした。
喜色にお目目きらっきらさせながら、シャルくんをはぐってするベアさん。これが本当のベアはっぐ。
「当然! だって、今回はから揚げにしようぜって言われたからね! それってもうボクご指名みたいなもんだと思わない!?」
『思うっ! から揚げと言えば|親友《シャル》だな!』
「だよね! から揚げが好きだから日頃からから揚げを作りまくっているボク。そのテクニックを大公開しちゃうぞ!」
『おぉぉ! これはもう約束された勝利のから揚げッ!』
交わす会話は和気あいあい。命をかけた蛇狩り中でも、うっかり気が緩んでしまうくらい。
だって、仕方ない! ベアさんにとってこの再会はとっても特別なんだもの! ベアさんにとって生きる切っ掛けをくれたシャルくんは、そして最低でも週に一回は会いに来てくれていたシャルくんは|能力者《友達》たちの中でも特別だった。なので毎週会っていても、それでもやっぱり嬉しくて仕方ないのだ。
『てめぇらいい加減にしろよォ……尽く俺様を無視しやがってぇえええ! コケにすんのもいい加減にしやがれェエエ!』
再会の事情など露とも知らぬマガツヘビ、再三の空気扱いにぶっちギレ。びたんっと地面を震わせて着地すると、その凶悪な腕をぶぉんっと振り回す!――が、届かない!
「これはからあげ、からあげ、からあげ、からあげ―― 俺はニンニクとショウガがきいてるやつが好きっ!」
橘・明留(青天を乞う・h01198)くんが、二人の前に立ちはだかってマガツカイナを受けとめていた! すべての能力をぶち壊すユメノオワリが霊的汚染地帯を打ち消していく。
「痛くない、怖くない、痛くない、怖くないッ!」
久しぶりの依頼、久しぶりに浴びる殺気。がくりと膝を付きそうになるのを堪えて、明留くんは重たい一撃を受けとめ続ける。このまま圧し潰してやろうか、と圧をかけるマガツヘビだったが――。
BAN! 一発の銃声がそれを阻止した! 凶弾に撃ち抜かれたマガツヘビのボロボロの腕が、吹っ飛ぶ。
「全く再会に水を差すものではないし、君は無茶をしないでくれ――って、おや、なんだか懐かしい顔ぶれが並んでいるねえ」
リリアに銃弾を補充しながら、涼しい顔であらわれたのはヴォルン・フェアウェル(終わりの詩・h00582)さん!
『明留! ヴォルン!』
「ベアさん、やっほ! 怖、いや、怖くないけど! でも、それ以上に、俺、また一緒に戦えるのすごい嬉しい!」
『俺もだ、明留! ヴォルン!』
「これはますます気合い入れて美味しいから揚げ作らなくっちゃね! よーし、まずは食材を確保しなくちゃ!」
体勢立て直し、いくぜーっ! と改めて気合いを入れ直すベアさん。残る腕を振るおうとするマガツヘビに、突進をかまして牽制だ!
『っぐぐぐ、おらあああ!!』
大蛇と大熊が相撲のように押し合ったのは一瞬、マガツヘビは尻尾でベアさんをぶっ飛ばした! そのままマガツヘビは 街路樹を引っこ抜いて振るい、とにかく接触を狙うシャルくんと明留くんを牽制する。無造作に振るわれる街路樹の枝葉が、腕を、二人の皮膚を薄く切り裂く。幹が二人を薙ぎ払う。振り払う。何度も何度も、何度も何度も!
「っく、これじゃあ埒があかない」
『まかせろおおおお! おらああああああ!――もうこの手は通じねえぞ。俺が全部、奪い取ってやっからな!』
ベアさんの再度の突進! 振るわれる街路樹をその身で受けとめて奪いとる!!
禍々しい舌打ちをしたマガツヘビは、黒き妖の炎をその身に溜めだした。一気に薙ぎ払うつもりだ。
「流石、ベアさん! それはさせないよーっ! |ボクは全能を否定する《アンチアンニピテット》――キミはもう、ただの蛇だよ!」
対空手段を奪われた大蛇が、空翔ける竜を払える筈もなし! シャルくんがその背後にくるり回り込む! 右手でその背に触れると、たちまちに黒き妖の炎が掻き消えた。なけなしの抵抗で振るわれる腕は、明留くんが受け止める。
「ベアさん、今のうちに思い切りやっちゃえ!」
ベアさん、うぉおおおお! と限界時速で思いっきり走り込む。そしてそのまま三度目の突進! 勢いからマガツヘビに圧し掛かり、そして、残った腕にくいついて――ぶちぃい嚙みちぎったっ!!
『ぎゃああああああああッ!!』
「ベアさん、そのまま捕えてくれるかい?」
びたんびたんと跳ねる大蛇。圧し掛かり続けるベアさん。そこに、ヴォルンさんの静かな声がかかる。姦しい戦場でも耳に届く澄んだ声は、かつんかつんと近付く足音と共に近付いてくる。
「溜め技というのは単独戦には向かないよ、囮なり身を守る手段がないならね。前回散々痛い目を見ただろう? 失敗から学ばないから、こうして抉られる羽目になる」
程よい距離で静止する足音、かわりにリリアを構える音。夏空の青のようでいて、冬のように冷たい眼差しは、かつての脳天の風穴を狙う。
「はてさて、君はどうやら揚げ物になる運命のようだよ。死してなお他者を幸福にできるなんて、ずいぶんと幸福な終わり方だよね?――さ、もう一度、風通しをよくしてあげようか」
告げられた死の宣告はまるで歌うように軽やかで。容赦なく放たれた凶弾は、正確無比に1mmの狂いなく前回と同じ位置で脳天を抉り抜き。
『ァ――』
「冬の風は少し冷たすぎるかな?」
風通しばっちりの風穴を作って、マガツヘビの命を摘み取ったのだった――。
●パーティーの準備は念入りに!
マガツヘビは再び倒された――これで他の√へ現出することはない。
能力者たちは束の間の出会いを、再会を喜び、そして各自、戦線へと赴く――んですけど、このシナリオではより重要なのはそこじゃあない! 全然、ない! そんなことたあ目的に付随する結果の一部でしかねえのです!
より重要なことがある筈だ! 作戦名の再Callは必要かい? 否、 だってみんなそれを目的に来てる歴戦のハラペコたちの筈。ずばり、このシナリオで最も重要なのはから揚げだ。いちもにもなくから揚げだ。さんしもなくてから揚げだ。から揚げ、から揚げ、から揚げだ! みんなで狩った食材を、美味しくたらふく頂くのです! 腹が減っては戦はできぬ、 狩った命は余さず頂く、健全自然な弱肉強食! さあ、みんなそろっていただきますを致しましょう!
ということで、まずはパーティーの準備です★
さて、お肉は的確に切りまして。硬い鱗は剥ぎまして。血抜きは余念なくしっかりと!
調理に必要な道具や材料をシャルくんと明留くんが買い出している最中、ベアさんとヴォルンさんが解体作業! そんな中。
「ところで、から揚げパーティーはどこでやるんだい?」
『あ』
そんなヴォルンさんの的確な一言から、会場は急遽カヤックアキバスタジオが入るオフィスビルの無事なフロアをお借りすることになりました!
調理場は? 問題ありません! ルメルくんの錬金術でちょちょいのちょい! 給湯室をガスコンロ式の調理台に改造しちゃえばいいのです★ 便利ーッ! ガスコンロの接続チェックは頼れるクラウスくんにお任せです!
さ、忘れ物はありませんか? ハラペコたちでダブルチェックをしちゃいましょう!
お皿&お箸の準備はOKで?
「OKでーす!」
「ぬかりない。ウェットティッシュなども買っておいた」
ちるはちゃんの元気なお返事! 蜚廉さんの気遣い紳士っぷりは半端ねえ……!
ご飯の準備はぬかりなく? お酒は?お茶やジュースは? お薬は?
「勿論、たくさん買ってきたよ」
「ビールもジュースもいっぱいだよお」
「一箱じゃ足りねえ気がしたから、何箱か買ってきたぞ」
たくさんのパックご飯を詰めた袋を抱えてクラウスくんが控えめに微笑み。ルメルくんのお人形さんたちが飲み物を高くかかげる。不安げに薬局の紙袋を抱えているのはウィズさんです。
最後にこれが最も重要です! これがなければ話にならない。調理道具と材料はしっかりばっちりぬかりなく?
「勿論! 衣と油が必要だしねー!」
「調理道具も買ってきた!」
「ケータリングも手配したよ」
美味しいから揚げのためだからね! と重たい荷物も軽々と元気みちみちシャルくんと。調理道具をいっぱい抱えて小さくピースする明留くん。そして、ヴォルンさんの〆の一言に全員の視線がヴォルンさんに集まった。無理もない。ヴォルンさんは変わらない涼しいお顔で告げました。
「サラダやフルーツも必要だろう? あとは箸休め程度のつまみとかね。折角だから少しばかり早い忘年会も兼ねるのは如何かな?」
どうして反対する必要がありましょうか!? つまりはパーティーが殊更、豪華になるということ! 勿論、当然、即答でハラペコたちは言いました。
「賛成ーーーっ!」
●わくわくキッチン~天国と地獄編
さあ、ケータリングが届くまでの時間でお料理を済ませてしまいましょう!
本日開催されるお料理教室はシャルくんの「マル秘のプロテク大公開!~美味しく揚げるためのコツ」とルメルくんの「|好奇心は猫をも殺す《ネココロ》(他称)★わくわくキッチン」です!
それぞれがどんなご様子かちょっと覗いてみましょうか! まずはシャルくんのお料理教室から。BGMはお馴染み3分クッキングのあれでよろしくです! Let's Go!
「から揚げのコツはね、下味が重要なんだよー!」
「ふむふむ」
「なるほど、マヨネーズは盲点だったなー」
シャル先生の元に集った参加者は明留くんとちるはちゃん、そしてクラウスくん! 3人はメモまでしっかりとってる様子です。
お肉を綺麗にカットしたら味がぼやけないよう塩、胡椒をまぶします。更にしょうゆにお酒、しょうが、ニンニクを豪快に、そして隠し味のマヨネーズをちょみっと入れまして。さあ、よぉく揉み込んでしまいましょう! マヨネーズを入れるとベチャってならないんだそうですよ!
下味の漬けこみは最低15分から! できれば一晩寝かせるのがベストですが今回は目安20分。その間に油の準備です!170度~180度くらいに熱したら、衣をつけていよいよ揚げる準備です!
「片栗粉だとカリッと仕上がって、薄力粉だとジュワっと仕上がるんだよ。半々で揚げると、衣カリっと中はジューシーどっちも楽しめる欲張りから揚げの出来上がり! ただ、片栗粉は時間がたつと衣がしなるからお弁当には不向きかな。気を付けるのはそれだけで、あとはもうお好みだねー!」
「へえ、衣の種類だけでそんなに違ってくるんだね」
「はい、先生! それなら私、食べ比べしたいです!」
はっとちるはちゃんを見るシャルくんと明留くん。そうです、今日はから揚げパーティー! いろんなから揚げがあっていいのです! 贅沢だよね、食べ比べ!
「そうしよーっ!」
満場一致で大盛り上がりのお教室! それぞれお好みの衣をくっつけたら、いよいよあつあつ油に投入です! ああもう、じゅわわーって衣が揚がる音ってさ、とってもお腹が空いてくるよね!
一方その頃――こちらは|屋上で開催《青空教室》、|好奇心は猫をも殺す《ネココロ》(他称)★わくわくキッチンです。BGMは作ったり遊んだりしてわくわくするあれでよろしくお願いします。うん、お料理だよ、お料理なんだけどもね!? とりあえず、まずは調理過程をご覧ください。
こちらの参加者はウィズさん&ベアさんです。ええ、見学者。阻止はしないよ、だってとっても楽しそうなんだもの! さあ、どうぞ、作ってわっくわく~★
「さて、いよいよみんなの出番だよお。でもさ、なんで僕、急遽かば焼き担当なのお?」
「そりゃあ、あれだ、ち」
『調理台も狭いし、料理道具も限られてっし! 俺がかば焼き食いたくなっちまったからだな!』
調理工程がすくねえから失敗しないだろォ? って言いそうになったウィズさんのお口をベアさんががっと塞ぎます。わったわったとベアさんが説明したことも全く微塵も嘘ではありません。ぶっちゃけそれも事実です。かば焼き食べたい。
「OK、それなら任せてよお! こんがり美味しいかば焼き、作っちゃうからねえ~」
ルンルンルメルくん、レッツ★わくわくクッキング! 両手を軽やかにハンドクラップ! 魔法人形さんたちが一斉に小型マガツヘビを網に乗せまして、着火ファイヤー団扇パタパタ手際よく焼いていきます。うん、ひとまず此処までは順調。
ベアさんとウィズさん、これならいけるのでは? って安心したんだけど、それはただの油断であった。
「よおし、それじゃあいよいよタレの出番です! 隠し味にヨーグルトにコーラ、ピーナッツバター……ん? 一部、中身が違うような……? まあ良いよねえ。なんでも試してみることが大事、大事~」
ちょ、ま!? あ、そこで!? とベアさんとウィズさんが止めようとするけれど、手際がいい! すごく手際がいい! 止める隙ない! そしてなんか止めようとしていることに罪悪感込み上げちゃうくらいに、すごく楽しそうでいい笑顔!
「山椒に~ちょっと辛みに鷹の爪足そうかあ。風味にゴマ油も必要だよねえ。あ、焼く油切れちゃった? 大丈夫、要はこんがり仕上がればいいんだよねえ? せーの、Fireーーー!」
天まで届け炎の柱! 此処が屋上でよかったな!? アァアアアア!? って掻き消えそうな悲鳴をあげながら、ベアさんとウィズさんは真っ青に震えながら抱き合って、食わねばならぬ運命にがくぶるしていたのでした――。
「見て見て~美味しそうにできたよお」
「なんでだよ!?」
いい焼き具合の蛇のかば焼きは(見た目も香りも)とってもとってもとーっても美味しそうでした★
●いただきまーーっす!!
食卓の支度は蜚廉さんとヴォルンさんです。近くの会議室をお借りして、見事な会場を整えてくれました!
綺麗に整列した長机にはこんがりあつあつ美味しそうなから揚げと、香ばしく香り立つかば焼きと、ほかほかつやつやの白米と、そしてヴォルンさんが手配したケータリングの数々が綺麗に並んでおります!
ああ、もう、今すぐ食べてしまいたい!
さあ、ハラペコの皆さま方! 心のお箸はOKかい? お腹のお皿は空っぽかい? 片手に乾杯の祝杯は? OKそれじゃあ、始めましょう!
「かんぱーい!」
かちん★って音は鳴らないけれど、心で鳴らせばいいのです!
「ふふ、先生のおかげでウルトラ上手に揚げましたよー♪ いただきます!」
各々の飲み物で喉を潤したなら、早速、メインのから揚げを。ちるはちゃん、まずはシンプルなから揚げをもぐり。あつあつさくさくじゅわ~と広がる旨味に、ん~♪ っとご機嫌です。
「さて、頂きますの時間だ――ほう、確かに美味い」
蜚廉さんも同じから揚げを頂きまして。その味わいに深く頷く。鶏より脂身少なく、しかし食感は柔らかい。下味もしっかりしていて、シンプルだからこそ肉の旨味がダイレクトに広がる。噛めば噛むほど、じゅわっと旨い。
「ちるは」
「はい」
「そ、それはっ!」
ばばーん! ちょっとこじゃれたこの小瓶が目に入らぬかあああ!
蜚廉さん、そっと懐から取り出したのはレモスコです! ちょっとドヤァと得意げ。
「持ってきた。少し辛いが、食べやすくて美味しいぞ」
「蜚廉さん、実は私も――」
「ふむ――そ、それはっ!!」
どどーーん! このド定番でお馴染みの背徳チューブを御覧じろッ!
ちるはちゃんがそっと懐から取り出したるは、ああ、背徳のマヨネーズ! しかも濃厚卵増し。ちるはちゃんもドヤっ得意げです。
「私も持ってきちゃいました!」
「っく、良き選択をするではないか」
「えへへ、いろんな味のから揚げ作ったので、他のも味変試してみちゃいましょう!」
そうだな、と。もぐもぐから揚げを楽しむちるはちゃんを、あたたかな目で見つめて頷く蜚廉さんなのでした。
そう、作ったお味はシンプルなから揚げだけではありません! さっぱりネギ塩、濃厚タルタル、ぴりっとスパイシーな黒コショウ! そして真っ赤な唐辛子、更にはウィズさんが持ち込んだ蜂蜜をたっぷり使ったハニーマスタードまで!
ケータリングだって、シーザーサラダに、カットフルーツ、 クラッカークリームチーズに、ポテトにナッツなどなど 主役のから揚げを邪魔しない、箸休めに丁度いいものばかり! ヴォルンさんのセンスが光ります。
ウィズさんは早速、ハニーマスタードのから揚げを楽しみます。
「やっぱ最高だよなァ……最高級の蜂蜜、持ってきて良かったぜェ。やっぱり合うなァ、うめえ……」
いいんだ、まだから揚げを楽しみたいんだ。まだ早い。まだかば焼きには早い。そっとそちらから目線を逸らしながらウィズさんです。
クラウスくんはどれを食べようか、と考え中。
『ん? どうした、クラウス。決まらねェのか?』
「あ、ウィズさん。うん。どれも美味しそうで」
『おうし、じゃあ、ちょっと待ってなァ』
ウィズさん、クラウスくんのお皿を借りて、色々なお料理をバランスよく盛ってきました。お皿の脇にはレモン一切れ、かけるかけないはご自由に! って感じです。
『迷ったときは全部食べちまえ。んで、気に入ったもんをいっぱい食うといいんじゃねェか? 味変定番はレモンだ、さっぱりしたくなったら試してみなァ』
「うん、ありがとう――! 美味しい!けど、困ったな」
そういえば、とクラウスくん。シンプルなから揚げにお野菜まきまき、しゃきしゃきとぷりぷりをもぐっと楽しんでみました! もぐもぐとその食感を暫く味わいますが、ふと、クラウスくんの表情が少しだけ曇ります。
『ああン? どうした。 脂っこ過ぎたかァ?』
「ああ、違う。そうじゃなくって――次からマガツヘビを見たら、もう食材にしか見えないかもしれない」
ぶっと噴き出したウィズさんは、クラウスくんの肩をぽん。安心しろ、と言いたげた。
『クラウス、蛇はもとから食材だぜェ』
――違うからね!? いや、違くはないけど少なくとも日常的に食されてる食材ではないからね!?
「ふふん、みんなで作ったから揚げ。すっごく美味しいなー」
『シャルが教えながら作ったんだ、そりゃあ間違いねぇだろ』
「そうかな? そうだととっても嬉しいな! テクニック大公開して大成功だね!」
同じ卓を囲うのはシャルくん、ベアさん、明留くんです。それぞれ大好物のおかずやご飯をもぐもぐしながら、会話に花を咲かせます――あ、このポテトかりっとさくっととても美味しい。
「でもさ、ベアさん。これも今回だけ、なんだろ……? また、あそこに帰っちゃうのか?」
明留くん、しっかりともぐもぐしながらもちょっとしょんぼり。シャルくんもそれが気になっていたのか、返答を待つようにじっとベアさんを不安げに見上げます。
『ああ、それなァ。戻るには戻るけどよォ、奇妙建築吹っ飛んでるし、』
「吹っ飛んでるの!?」
驚く明留くん。思わず噴き出しそうになったシャルくんは傍らでがっほがほとむせている。
『おう、吹っ飛んでる。マガツヘビもなんだかんだ蘇っただろ? 封印も意味ねぇし。あんまり前線いってると血の気が滾って我を忘れちまいそうだなぁとも思うしよ――』
俺も古妖の端くれだからなぁ、と苦笑いするベアさん。そう、本来ベアさんは能力者たちと敵対する存在なのだ。共闘の掟はマガツヘビが出現したときだけに限る。けど、だけどよぉ、とベアさんは続けた。あくまで明るく。
『前線は一旦退いて。あの場所で、普通の喫茶店やろうと思ってんだ』
「えっと、それはつまり……」
ベアさん、シャルくんと明留くんの頭をぽんぽんっと撫でて、ニカっと太陽のように笑います。
『今度はいつでも会えて、飯食えて、お喋りできるってこったな! シャルも、明留も、来てくれんだろ?』
「勿論っ!」
「お、俺も!」
次からはベアさんと|能力者《友達》たちを隔てる|壁《もの》は、なにもない。いつでも、いつだって、あの喫茶店への扉は自由に開かれているのだ!
●ところで、かば焼きはどうなっているかと言うと――
「作ったものの責任は、あると思うんだ。わかるかい?」
たっぷり盛られたかば焼きの前に佇むのは、ルメルくんとヴォルンさんという意外な組み合わせ。
ルメルくんの背後にヴォルンさんが佇み、ルメルくんの肩に両手を当てて、なんか、こう――お、脅してる、みたいな?
「そ、そ、そうだねえ……」
温度感のない声にルメルくん、珍しく狼狽えている。表情もないんだから、余計、こう、怖い。殺気でもあればどうにでもなるんだけど、ヴォルンさんには加害する気配が一切ないのだから、殊更に怖い……怖い。
「えっと、僕はなにされちゃうのかなあ?」
「何もしないさ。ただ、君がこれを食べきるのを俺が見守るだけだよ」
ヴォルンさん、かば焼きのお皿の前にことりと胃薬の箱とお水を置きまして。
「ま、真後ろに立たれたら、流石にちょっと、食べにくいかなあ~」
味がしなさそう、とか、喉を通らなさそう、とか、主にそういう意味で。ヴォルンさんは、そうかい? とすんなり離れてくれたけれども、視線はぴしぴし感じます。これは、食べないと、いけない。
ルメルくんは、ごくり、生唾を飲み込んで。かば焼きをひときれお皿に乗せました。
(大丈夫、大丈夫、とっても美味しく作れた筈だからねえ)
割り箸で食べやすいサイズによぉく焼けた肉を割って、さあさぱくりと一口――その瞬間っ!!
BON!!――ルメルくんのお顔が真っ赤になって、青くなって、白くなって、ぶわわって髪の毛が逆立って、そしてお口の中で小爆発!! なんでや!?
ひええええええっと震えあがるベアさんとウィズさん。
「おそら、きれい」
どっかで聞いたような台詞をのこして、ふらふらばたんと倒れたルメルくん。冬のお空を仰ぎ見ながら、やっぱりしっかり今回も、力尽きたプロレスラーのように真っ白に燃え尽きていたのだった――。
●これはだれもしらないものがたり
オフィスビルから聞こえる賑やかな笑い声。
偶然の遭遇を、再会を、新たなる出会いを喜ぶ声たちは、心より楽しそうに弾んでいる。
皆で仕留めた大きな獲物を、命を、美味しく楽しく頂いて。
だから、誰も気づかなかった。だって、しっかりと仕留めていた筈――だったから。
冬の短い陽射しが傾いて、ほんのり空が暗がる頃に、それは静かに息吹いた。
『……は、今回ばかりは| 俺様《・・》の勝ちだ……』
爆発に生じたガレキの隙間より| 一匹《・・》の小さな蛇がにょろりと這い出る。
黒曜の鱗は禍々しく、蛇に在りえぬ両腕で上体を支え、言葉を紡ぐ|それ《・・》は、紛れもいないマガツヘビ。その小型と称されるものの一匹だ。
『生きるためにはなりふり構っていられねェからなァ。ヒヒっ』
そう、これはかつても使った手段であった。小型マガツヘビの一匹に魂の欠片を宿し、生き残る。同じ手だ、同じ手段だ。かつてはこれをあれらの前でやってしまったのがいけなかった。
失敗より学ばなかった? 否、学んでいたのだ、この蛇は。生き残るために。敢えて|本体を捨てて《・・・・・・》、身体が喰われてしまうまで。ただひっそりとひっそりと潜んでいたのだ、ひたすらに。ひたすらに。
やがて災厄となる小蛇は、ずるり、穴へ向かう。あの穴を潜ってしまえば、生き残る。他の√へ、逃げられる。
逃げてしまえばこちらのものだ。あらゆる命を蹂躙し、喰って再び還り咲くのだ。災厄の、大蛇へと!
ずるり、ずるり、ずるり――カッ。鳴らぬ筈の固い靴音が響く。
「負けが混んできたからとんずら。少なめな脳みそで妥当な判断出したのは偉いよ」
冬の風に靡く黒髪は、小蛇の黒曜より艶やかに輝く。
凛と声を紡いだのはウォーゾーンを纏ったミネタニ・ケイ(逸般通過超重量級おっぱいさん・h00931)だ。
生き残ることに重きを置いている、という星詠みの予言を懸念して、彼女もまた潜んでいたのだ。ひそやかに。
何もなければそれでいい。もし何かあったなら、そっと片してしまえばいい。
これくらいなら自分ひとりで処理できる。これは確信だ、決して無謀ではない。
「妥当なだけに対策されるところまで考えてたら100点だったよ」
『っぐ、くっそ見つかったか。しっかし、てめえひとりで勝てると思ってんなら俺様も随分、舐められたもんだなァ?』
小型であれど|禍蛇《マガツヘビ》、その身はいずれ大いなる災厄となる筈のもの。一匹一匹、大物相当の実力を秘めているものだ。ゆらり、小蛇はケイに対峙する。
しかしケイこそ、はっと鼻で笑った。
「こっちこそ随分と舐められてるようだね。|ボクが勝つに決まってる《・・・・・・・・・・・》。ああ、でも君は愚かだからわざわざ言っておいてあげようか。どうか、静かに狩られなよ? 宴に水を差すのは野暮だろう?」
『は、てめえの断末魔が静かだといいなァア!?』
一人と一匹の戦いは、誰も知らないところで繰り広げられていた。
――やがて、べちゃり、拉げ潰えたのは小蛇の方。
ケイはほっと息を吐きだして、煌々明かりが灯るオフィスビルを見上げる。ああ、よかった。湧き出た感情はひとつの安堵。能力者たちの安寧だって、こうして守られるべきものだ。ケイは誰にも告げず、そっとその場を立ち去った。
最後までその行方を見守っていたのは、天頂に上った星月夜と夜空の回遊を楽しんでいた|ベアさんのペット 《キングサーモン》のインビジブルだけだった――。
