シナリオ

⑱起源にして頂点たる災禍

#√妖怪百鬼夜行 #秋葉原荒覇吐戦 #秋葉原荒覇吐戦⑱

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⚔️王劍戦争:秋葉原荒覇吐戦

これは1章構成の戦争シナリオです。シナリオ毎の「プレイングボーナス」を満たすと、判定が有利になります!
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(毎日16時更新)

●神の常識を打ち破れ!
「クックック……いよいよ、秋葉原荒覇吐戦の根源が姿を現したようだな。我が内なる暗黒竜も、今までにないほど荒ぶっているぞ」
 相も変わらず痛々しい服装と言動を顧みることもなく、神代・騰也(|常闇の暗黒竜《ダークネス・ノワール・ドラゴン》の|契約者《パクトゥム》・h01235)は能力者達に、禍津鬼荒覇吐の出現を告げた。
 王劍『|明呪倶利伽羅《みょうじゅくりから》』の使い手にして、この星に神話が生まれる前より存在したとされる『無形なる原初が神』の一柱。そんな存在を前にしては、厨ニ病全開な騰也が興奮するのも分からないでもないのだが……こんな神を相手にする者からすれば、堪ったものではない。
「禍津鬼荒覇吐は、湯島聖堂にて我らを待ち受けているようだ。全盛期より弱体化しているとはいえ、それでも単独で『ジェミニの審判』を執り行う程の神力を有する存在。あのマガツヘビさえ遠く及ばぬ、まさしく完全存在と言えるだろう」
 現在、湯島聖堂は禍津鬼荒覇吐の力によって、混沌の如く姿を変える迷宮……『魔空湯島聖堂』へと変貌している。無限の鳥居や永遠に続く回廊、空間の法則を無視した広さを誇る拝殿に、前後の繋がりを無視した部屋の配置など、それらは人間の常識を無視して姿を変え続け、足を踏み入れた者を惑わせる。
 加えて、禍津鬼荒覇吐は戦争前にも幾度となく√EDENと交戦し、その力を完全に見切っている。故に、自らが√EDENに倒される事など微塵も想像していないのだが、それが弱点にも繋がっていると騰也は続けた。
「クックック……禍津鬼荒覇吐が見切っているのは、あくまで√EDENの常識や能力のみ。故に、常識から逸脱したような能力や攻撃手段であれば、やつの意表をつけるはず」
 それこそ、√EDENに存在する攻撃手段であれば、核兵器を用いても禍津鬼荒覇吐に決定打を与えることができない反面、他の√のみに存在し√EDENには存在しない何かであれば、禍津鬼荒覇吐に攻撃を見切られることはない。
 あるいは、常識を逸脱した無茶苦茶な方法で攻撃するというのもありだろう。こちらは少しばかり難易度は高いが、世界の常識や法則を塗り替えるような√能力を以て挑めば、禍津鬼荒覇吐の意表をつけるかもしれない。
「敵が常識の通じぬ異空間で待ち受けるのであれば、こちらは更に常識破りの攻撃を行うだけの話よ。|混沌《カオス》を|混沌《カオス》で塗り替える……ククク、なかなかに良い言葉だな」
 勝手に自己陶酔している騰也は放って置くとして、彼の言う通り√EDENの常識に縛られない攻撃方法が勝利の鍵になるのは確かである。時に、不規則に変化する迷宮の地形をも利用し、相手の意表をどれだけ突けるか。全ては、その選択に掛かっているといっても過言ではないのであった。

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第1章 ボス戦 『大妖『禍津鬼荒覇吐』』


虚峰・サリィ
機神・鴉鉄
米満・満代

●禍魂となりし原初神
 禍津鬼荒覇吐。その名が示す通り、彼は原初の神の一柱にして、王劍『明呪倶利伽羅』を駆る強敵だ。
 そもそも荒覇吐とは、記紀神話や伝統的な民話などに登場しない謎の神。弥生時代よりも更に昔、縄文時代に信仰されていた神とも言われており、そういう意味では古事記にさえ登場することのない古き神である。
 そんな神が禍津……即ち、邪心を得て歪んだ形となったものなのだろうか。どちらにせよ、従来の√能力者の常識を超える、強大な存在であることに違いはない。
 もっとも、そんな強大な神を前にしても、虚峰・サリィ(人間災厄『ウィッチ・ザ・ロマンシア』・h00411)は全く動じることもなく、いつもの調子を崩さなかった。
「ハロー、荒覇吐。なんとも暑苦しくてむさ苦しいわねぇ」
 ともすれば、神に対する冒涜とも取れる不遜な態度。だが、それで構わないのだ。元より、√EDENの世界にとって、この神は決して祀るべき対象でもなければ崇めるべき存在でもないのだから。
「大ボスのご登場ですね。この戦争を終わらせましょう」
 米満・満代(マウンテンセレブ・h00060)もまた、この戦いを終わらせるべく神の前に躍り出た。齢10歳の少女でありながら、満代もまた神を恐れてはいない。それは彼女が王族であること以上に、恐怖心を欠落している部分も大きいのかもしれない。
「えぇい、なんと不敬な! ならば、その血肉を全て王劍の糧とし、貴様らの御霊さえもインビジブルとして食らってくれるわ!」
 そんなサリィや満代に対し、禍津鬼荒覇吐は怒りを顕に剣を抜く。名前からして荒神の一種であることは予想できたが、なんとも短期な神である。
「……ターゲット確認。戦闘、開始……」
 そんな禍津鬼荒覇吐とは対象的に、機神・鴉鉄(全身義体の独立傭兵・h04477)は静かに呟くようにして口にすると、戦場で己の手足たるウォーゾーンを機動させた。
 無限に連なる襖と、果ての見えない広大な拝殿。歪められた神域にて、荒ぶる神より最後の楽園を守るための戦いが幕を開けた。

●鎮めの舞は盛大に
 王劍を引き抜いた禍津鬼荒覇吐は、もはやなんの躊躇いもなく、能力者たちへと斬り掛かってきた。それも、少しでも弱そうと判断した相手に狙いを定め、力の差を見せつけるために。
「この俺を愚弄して、生きて帰れると思うなよ! まずは貴様だ……その軟弱そうな御名子から、我が剣の糧にしてくれよう!」
 禍津鬼荒覇吐が狙ったのは満代である。確かに満代は、この中では最も幼い容姿をしている。そんな満代相手に、絶対先制攻撃による√能力で攻撃を仕掛けるなど、なかなかどうして大人げない。
「きゃぁぁぁぁっ! も、もうダメです!」
 少しばかり大げさに、満代は頭を抱えて身体を丸めた。それは一見して怯えているかのような動きだったが、しかし身体を丸めることで、禍津鬼荒覇吐の横薙ぎによる攻撃は宙を舞い。
「……っ!? な、なんと!!」
 あろうことか、勢い余って禍津鬼荒覇吐の手から王劍がスッポ抜けてしまったではないか! しかも、その剣は回転しながら拝殿の柱に激突し、そのまま跳ね返って禍津鬼荒覇吐自身の頭に突き刺さった。
「ぐはぁぁぁっ! ば、馬鹿なぁぁぁっ!?」
 いったい、何が起きたのかも分からずに、禍津鬼荒覇吐は盛大に悶絶した。完全存在の自分が、こんな場所でドジを踏むなどあり得ない。そう言わんばかりの表情であり、満代は不敵に笑っていた。
「あらあら、偶然って怖いですね……」
 口ではそう言っているものの、その偶然こそが満代の√能力。因果を歪め、偶然を利用し、最も殺傷能力の高い物体で相手を攻撃する。その能力は相手の持っている武器が強力であればある程、自滅を誘発する可能性が高まるという恐るべきものだ。
「えぇい、おのれぇ! なにか小細工を仕掛けおったな、小娘がぁ!」
 王劍を頭から引っこ抜き、禍津鬼荒覇吐は無形なる原初の神の神力から創造した、不完全な√能力にて満代を攻撃しようとした。だが、満代の攻撃もまた終わってはいない。今度は拡声器を取り出すと、それを構えて禍津鬼荒覇吐と対峙する。
「フハハハハ! そのような道具で何をするつもりだ? まさか、音の力で俺を黙らせるつもりではあるまいな?」
 √EDENの知識を持っている禍津鬼荒覇吐は、当然のことながら拡声器についても知っていた。これは武器ではない。単に声を大きく届かせるための道具だ。そう、判断してしまったのが運の尽き。
「邪悪なインビジブルをどれだけ蒐集しようとも無意味です!」
 満代の声が拡声器によって部屋に響くと同時に、邪悪なインビジブルから禍津鬼荒覇吐へ送られていた力の供給が停止した。拡声器は拡声器でも、満代のそれは竜漿拡声器。彼女の√能力によって自在に性能や形を変化させる、特殊な武器だったのである。
「√能力の万能性、なんでもありは神様の方がよくご存知だとは思いますが……」
 力の供給を遮断したところで、満代は改めて禍津鬼荒覇吐へと告げる。
「これで貴方は完全な神などではなく、ただ途方もなく長生きしていて|力量《レベル》が高いだけの√能力者に堕しました」
 それでも決して油断できる相手ではないのは確かだが、少なくとも圧倒的なパワーもなければ、ましてや完全存在でもなくなったのは、禍津鬼荒覇吐にとっても痛手であった。そして、そんな禍津鬼荒覇吐の神経を更に逆撫でするかの如く、今度はサリィが唐突にギターを取り出し演奏を始めた。ご丁寧に、周囲には自動で動くベースやドラム、キーボードまで設置されている。
「本当はアンタみたいなむくつけき男に向けた曲じゃないんだけれど……だからこそ意外性があるでしょ? 今日のナンバーは『輪舞・朝まで踊れシンデレラ』よ」
 戦いの最中、いきなり曲を奏で始める。それは、ともすれば狂人の所業であるが、サリィにとってはこれも立派な攻撃なのだ。
「荒ぶる神に曲と踊りを奉じて鎮めるなんてありがち? ノン、これはただただ騒いで熱狂フィーバーするための曲。神のためじゃなく人のための曲。そんな曲を叩き付けて一緒に踊るなんて、アンタに予想できるかしら?」
 別段、魂鎮めの効果などもない普通の曲を、サリィはドヤ顔で奏でていた。お前のような神へ、神曲の奉納など贅沢だと言わんばかり。それは禍津鬼荒覇吐を激昂させるのに十分だったが、果たして本当にサリィは歌っているだけだったのだろうか。
「えぇい……貴様、やはり俺を馬鹿にしているな!」
 超!ナイトフィーバーモードになったサリィに向けて、禍津鬼荒覇吐は不完全な√能力を繰り出そうとする。神力を削がれているとはいえ、それでも十分。一発でも命中させたが最後、動きを止めて歌も踊りも中止させられると……そう、思っていたのだが。
「……っ! 何故だ!? 何故、俺の力が発動せんのだ!?」
 自信満々に繰り出そうとした禍津鬼荒覇吐の√能力は、完全な不発に終わってしまった。満代の√能力による妨害を考慮しても、完全に能力が発動できないはずはない。それなのに、何故に力が行使できないのか。ますます混乱する禍津鬼荒覇吐へ、サリィはしてやったりとばかりに笑みを浮かべて告げる。
「さあ、踊りましょう? 王子様」
「なんだと? 戦場で踊りなど、貴様、ふざけて……!?」
 言葉とは反対に、禍津鬼荒覇吐の身体が勝手に踊り出した。抵抗しようにも、身体が勝手に踊りだして止まらない。何度か自由を取り戻せるチャンスはあったのだが、それでも再びサリィに制御を奪われ、もはや戦うどころではない。
「な、なんだこれは!? このような力を持つ歌など、俺は知らんぞ!?」
 己の常識を覆され、禍津鬼荒覇吐は慌てふためくだけしかできなかった。言葉には魂が宿ると言われているが、それを行使できるのは基本的に神か、あるいは神に極めて近しい神職のみだったはず。それなのに、目の前の少女達は神に使える者ではないにも関わらず、禍津鬼荒覇吐の予想を越えた言魂の力を行使してくるのだ。
「……目標の混乱を確認。一気呵成に仕掛けるチャンス……」
 そして、そんな隙だらけの禍津鬼荒覇吐を、鴉鉄が見逃すはずもなかった。ここぞとばかりにウォーゾーンと自らの肉体を同調させ、そして完全なる一体化を果たして行く。
「感覚器官の外部接続を確立……意識の拡張を確認……戦闘機械群ウォーゾーンとの同期率100%……」
 今や、鴉鉄の肉体は、彼女の搭乗しているウォーゾーンそのものだった。完全なる機械の巨人と化した鴉鉄は、ブースターを展開して宙を舞うと、めまぐるしく変化する拝殿の中を的確な計算による最短経路にて突破して行く。それだけでも禍津鬼荒覇吐にとっては未知の存在であったが、鴉鉄の攻撃は更に禍津鬼荒覇吐の予想の上を行った。
「敵、周辺環境の分析を完了。攻撃、開始……」
 ライフルを構えるでもなく、刃物を抜くでもなく、鴉鉄は重力操作によって禍津鬼荒覇吐の立っている場所の重力を局所的に強化したのだ。そんなことをすれば、当然のことながら禍津鬼荒覇吐に加わる負荷は凄まじいものになる。サリィによる踊りの呪縛から逃れたとしても、剣を振るうことさえままならず、それどころか立っていることさえも不可能だ。
「ぐ……ががが……。な、なんだ、この力は……。俺の……身体が……」
 神通力による金縛りの類であれば、あるいは禍津鬼荒覇吐にも突破の手段はあったかもしれない。だが、残念なことに、これは純粋な重力攻撃。そして、鴉鉄による重力操作は、なにも物体を重くするだけとは限らない。
「重力法則、ベクトル変更……」
 本来なら下に引っ張るはずだった重力が、床から壁から次々と放たれる。その度に禍津鬼荒覇吐はあちこちへ吹き飛ばされ、幾度となく身体を叩きつけられてしまい。
「き、貴様ぁぁぁぁっ! 其の所業、万死に値するぞ!!」
 悔し紛れに吠えるだけの禍津鬼荒覇吐だったが、言葉とは反対に何もできない。そんな禍津鬼荒覇吐に対し、重力操作で破壊された周囲の物体を収束させつつ、鴉鉄は禍津鬼荒覇吐自身も引き寄せたのだから堪らない。
「……ぐはぁっ!!」
 四方八方から破損した物体を叩きつけられた結果、禍津鬼荒覇吐は瓦礫の団子の中に埋まり、そのまま全身を押し潰されてしまったのであった。

和紋・蜚廉

●歪んだ因果の果てに
 戦いが始まって早々に出鼻を挫かれた禍津鬼荒覇吐だったが、それだけにもはや油断はしていなかった。
「おのれぇ……こうなれば、もう容赦はせぬぞ! 歌や言葉による攻撃……先の戦いで見切ったわ!!」
 同じ手は二度と食わないと、禍津鬼荒覇吐は王劍を片手に立ち上がった。人間であればとっくに圧死しているであろう状況から立ち上がるのは、腐っても原初の神である。
 もっとも、次に現れた能力者が和紋・蜚廉 (現世の遺骸・h07277)であったことが、禍津鬼荒覇吐にとっては最大の誤算でもあり不運でもあったのだろか。
「ほぅ……貴様、人間ではないな? この地に住まう魑魅魍魎か、あるいは別世界からの来訪者か?」
「……問答など無用。我はただ、貴様を滅する……それだけよ」
 蜚廉の姿形から彼が人ならざる者であると察した禍津鬼荒覇吐であったが、それでも完全存在の自分が真っ向勝負で負けるはずはないと、どこか驕っていたのだろう。変化する拝殿の形状に合わせ、禍津鬼荒覇吐は王劍を振るう。その攻撃を持ち前のスピードや緒感力で避けて行く蜚廉だったが、しかし反撃するための機会はなかなか見いだせない。
「フハハハハ! 逃げるばかりではないか、下郎めが!」
 足場が反転しようと、天井がねじれようと、それら全てに足を密着させて走り回れる蜚廉は、確かに人ならざる力を持っているのだろう。それでも反撃してこないのであれば余裕で勝てると踏んだのか、禍津鬼荒覇吐は更に不完全な√能力にて蜚廉の動きを封じる策に出たのだが……それこそが、蜚廉の待ち望んでいた瞬間でもあった。
(「積まれた痛みは、我の糧。巡らぬ縁を、骨の奥まで沈めてやろう……」)
 今まで回避に徹していた蜚廉の動きが明らかに変わる。彼の肉体を覆う外骨格は因果の天秤を変動させる殻となり、ここから先はあらゆる因果を、彼自身に都合の良い形で紡ぐことができるようになる。
「……っ!!」
 攻撃を回避した瞬間、その余波で蜚廉の身体が吹き飛んだ。だが、既に因果律の操作は始まっている。単に吹き飛ばされたのではなく、蜚廉が吹き飛んだ先の迷宮が偶然にも変化し、その身体を禍津鬼荒覇吐の方へと跳ね返し。
「ほぅ……こちらの攻撃を利用して仕掛けてくるつもりか? だが、正面から来るのであれば好都合!」
 今度こそ攻撃を当ててやろうと身構える禍津鬼荒覇吐だったが、そこでもまた因果律操作の力が行使された。禍津鬼荒覇吐が足を踏み出した瞬間、その床が偶然にも変異を遂げ、彼の身体のバランスが崩れたのだ。
「ぬぅっ! な、なんだと!?」
 間合いも瞬間も完全に読み間違えた結果となり、禍津鬼荒覇吐は慌てて体勢を整えようとしたが、もう遅い。因果を自由に操作できる蜚廉の前では、たった一つの過ちが更なる不運と過ちを連鎖させることになる。この時点で、禍津鬼荒覇吐の完全性は崩壊し、彼は無敵の存在でもなければ絶対の存在でもなくなったのだ。
 それでも、発動した√能力自体は健在であるが故に、蜚廉を叩き落とせたかと考える禍津鬼荒覇吐であったが、それさえも彼の予想通りには行かなかった。蜚廉の外骨格は受けたダメージをそのまま宿業として相手に返還してしまうため、先の吹き飛ばしによるダメージをそのまま跳ね返す形で√能力にぶつけ、完全に相殺したのである。
「穢れは導き、我は奔る……!」
 そこを逃さず、蜚廉は一気に加速して、自らの身体を質量弾と化し禍津鬼荒覇吐へと叩きつけた。先程から逃げ回っていたのは、全てこの時のための布石。蓄え続けた加速衝動を一気に解放することで、相手の完全性が揺らいだ一瞬に賭け、そのまま体当たりで吹っ飛ばしたのだ。
「ぐはぁぁぁぁっ! この俺が、間合いを誤るなどありえん!!」
 未だ負けを認めず迷宮の奥に吹っ飛んで行く禍津鬼荒覇吐であったが、既に勝負は見えていた。因果を操作できるようになった時点で、どう足掻いても彼に勝ち目はない。幾重にも紡いだ蜚廉の布石が全て噛み合った瞬間、彼の持つ可能性から『勝利』の二文字は消えていたのだ。

ルナ・ルーナ・オルフェア・ノクス・エル・セレナータ・ユグドラシル

●竜星の叙事詩
 完全存在を豪語しながら、しかし√EDEN以外の世界の知識に疎かった禍津鬼荒覇吐は、尽く能力者達にしてやられた。それでも、未だ完全に死んでいないのはさすが神といったところだが、攻略手段が無数に存在する時点で、彼の完全存在としての優位性はなくなっていたに等しかった。
「ふむ、秋葉原荒覇吐戦の根源をようやく追い詰められたみたいだね」
 これ以上は遊んでいる時間もないと、ルナ・ルーナ・オルフェア・ノクス・エル・セレナータ・ユグドラシル(|星樹《ホシトキ》の言葉紡ぐ|妖精姫《ハイエルフ》・h02999)は、早々に勝負を決めることにした。
「追い詰めた……だと? 人間風情が、神を倒せるとでも思っているのか!」
 それでもなお、自らの負けを認めない禍津鬼荒覇吐だったが、既に彼は冷静さを失っているのがルナにもわかった。
 その外見からも分かる通り、ルナは√EDENの世界に生きる人間ではない。少女のような見た目をしているが、彼女は悠久の時を生きるハイエルフ。少し落ち着いて観察すれば、彼女の尖った耳に気づけたのかもしれないが、そんな余裕さえ禍津鬼荒覇吐にはなかったようだ。
「貴様のような不敬な者には、相応の死を与えてくれる!」
 王劍を掲げ、禍津鬼荒覇吐が瞬時にルナの懐に跳躍してきた。絶対先制攻撃である以上、これを妨害する手段はない。咄嗟に受け身を取るルナだったが、それでも完全に攻撃を避けることはできず、その身を大きく斬り裂かれてしまった。
「フハハハハ! 他愛もない! そのまま血肉を貪り、臓腑を引きずり出してくれる!」
 ようやく自分のペースで戦えると、禍津鬼荒覇吐は歓喜していた。もっとも、周囲が見えていないのは同じだったので、彼はルナが密かに叙事詩を紡いでいるのに気づかなかった。
 いや、この場合は、そもそも叙事詩であるとさえ分からなかっただろう。なにしろ、ルナは叙事詩を竜語で紡いでいたのである。当然、竜語など禍津鬼荒覇吐にも理解はできない。仮に理解していたところで、それが攻撃であるとさえ思わなかっただろう。
「天の図書館に眠る物語、刻を越え響き渡る調べ、いざ舞台を開け放て――ステラ・ステージ!」
 全ての詩を紡ぎ終わったことで、満を持してルナは周囲の環境ごと変身を遂げた。竜をモチーフとした衣装に早変わりしたところで、彼女が繰り出すのは必殺の魔法。星々の瞬きと竜の伝説。それら全てを反映した、彼女のオリジナル呪文だ。
「さて、√EDENにも物語の中で魔法という概念はあるかもしれないけれど、本物を食らうのは初めてだろうからね」
 避けられるものなら避けてみろ。ルナが軽く指を鳴らすだけで、天井に瞬く星々が集まって光の奔流となり、それは輝く竜の姿を形作りながら禍津鬼荒覇吐へと襲いかかる。禍津鬼荒覇吐自身は隠密状態になっていたので、攻撃は当たらないと考えていたようだが……残念ながら、今回はルナの方が一枚も二枚も上手であった。
「ぐぬぅぅぅっ! 何故、こちらの居場所がぁぁぁっ!?」
 隠密など関係無しに命中する流星に、禍津鬼荒覇吐は抵抗虚しく射抜かれて行く。ルナの展開したフィールドの中では、彼女の放つ魔法は絶対必中。どれだけ避けようと、隠れようと関係ない。必中効果の前では防御も回避も隠密も無意味。完全存在であろうと、その結果は変えることはできないわけで、こうなると禍津鬼荒覇吐には、反撃の手段さえ残されてはおらず。
「馬鹿な! この俺が……たかが人間風情にぃぃぃっ!!」
 最後は光の奔流に飲み込まれ、禍津鬼荒覇吐は消えて行った。同時に、周囲の空気が一瞬で変わり、ルナもまた自身の√能力を解除した。
「悪いけど、ボクはエルフだ。キミが思っているような、非力な人間ではないんだよ」
 それさえも見抜けない程に驕り、そして焦ってしまったのが敗因だ。淡々と告げるルナの周囲は従来の湯島聖堂へと戻っており、それは同時に能力者達が禍津鬼荒覇吐を完全に退けたことを意味していた。

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