シナリオ

⑰飯を食えとあれほど言ったのに

#√妖怪百鬼夜行 #秋葉原荒覇吐戦 #秋葉原荒覇吐戦⑰

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⚔️王劍戦争:秋葉原荒覇吐戦

これは1章構成の戦争シナリオです。シナリオ毎の「プレイングボーナス」を満たすと、判定が有利になります!
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(毎日16時更新)

●おなかすいたね
「なんっ……かいめだァ……」
 |わたくし《地の文》が読むぶんには三回目となります。

「いい加減!! 一匹くらい!! 通す気はねぇのかァ!?」
 あったらこんなことにはなってないですね。

 マガツヘビ、疲労困憊。何度試みようともなんやかんやで強力な古妖に邪魔をされる。まったくもって不快なり。不快なのでバシバシ尻尾がのたうっている。だだこね。もう駄々こねるしかない。ヤダヤダ!! こんなところに居られるか!! 俺は他の√に逃げさせてもら……えない!!

「……ハラ……減ったな……」
 思えば暴れ始めてから何も食べてない。いや食ったかも、|√能力者《EDEN》の端っことか古妖とかちょっと。
 だがそれは食ったというには入らない……。

 ……やる気をなくした。でろんと仰向けになったその体の上にとすんと座った妖怪。
 その名は。

「……ほんに、ほんにね、飯を食えてね、うるさあ言うのもわかりましょうや、このように。くたばりたくのうてなあ……めしをな……少しばかり残してな……山にのぼってな……」
 ヒダル神なるその妖怪、老人の姿をしたそれは、ぐう、と腹を鳴らすマガツヘビの上で、何やらぶつぶつ言っている……。

●おとどけもの。
「厄介事の『お届け』……のはずだったんだけど」
 ぐう、おなかのなる音がした。星詠みたるオーガスト・ヘリオドール(環状蒸気機構技師・h07230)、もぐもぐとおにぎりを食べながらくたびれた顔をしている。おにぎりの具? めんたいこ。

「えー……。バテたみたいだね……」
 なんか「もうやだー」状態になっているそうだ。マガツヘビが。だがそれはただのあきらめとかそんなんではない。『全てのあやかしよ、マガツヘビを討ち滅ぼすべし』……つまり古妖の仕業!

「ヒダル神っていう古妖がマガツヘビに憑いてるみたい。山とかで唐突にお腹が空いて、動けなくなる……って現象の妖怪だよ。で、マガツヘビがお腹空かせてうまく動けないうちに……えーと……ほんとに全然動けないみたいだから、説教とかお前このやろうとか愚痴とか言ったり……あ、ご飯とか食わすとちょっとは動くんじゃない?」
 それで攻撃されても困るけど。

 ヒダル神、どうやら相当に強力な古妖であるようだ。相手を空腹状態にさせることにより、行動を強く阻害し、飯の話……腹が減る話を直接的ダメージに変換する。
 つまり、これに憑かれたままのマガツヘビに美味しいものの話をすると……ダメージが入る!!

「反撃はしようとすると思うけど、ヒダル神とマガツヘビに美味しい話しておけばぜんぜん平気だと思う」
 っぱ、戦争で問題になんのは常にメシなんすわ。

「――あ、ところでみんな最近本当にご飯食べてる? 忙しいからって抜いたりしてない? 不健康な飯でも食わないよりはマシだと俺は思うよ!」
 ……突然監視カメラへと目を向けて話しかけはじめたオーガスト。なにごとかね。
「そう、そこの。戦争! プレイング! 仕事! 睡眠! ご飯ちゃんとたべてる!?」
 何を言っているのかちょっとわかりませんね……何を……。

「T社のみなさんも気をつけてよね!!」
 …………メタだこれ!!

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第1章 ボス戦 『マガツヘビ』


クラウス・イーザリー

 なんて便利な能力だろう!
「ご飯の話だけで敵をやっつけられるなんて……」
「腹あ減ったらなんもね、できんてね……」
 ヒダル神がにこにことマガツヘビの腹の上に座っている。痩せ細った老人の姿をしている古妖、その力を存分にふるっている……!

「怒るとお腹空いちゃうよね……」
 でろん。手足を放り出しているマガツヘビの前に座ったクラウス・イーザリー(太陽を想う月・h05015)。暴れていると恐ろしいが、こうやって大人しくしてるところを見ると可愛い……か?
 よく見れば手足はたくさんあるし、たてがみはお札だったりするわけであるが。

「俺の√って美味しいものがあまり無くてさ」
「やーい√ウォーゾーン……」
「これ」
 ぺちん。ヒダル神が軽くマガツヘビを叩いただけで、「あでっ!」とかいう声が聞こえた。バフすごい。ともあれ√ウォーゾーンの人々は本当に食事が極まっているのはまあまあ事実である。

「他の√に行くと美味しいものばかりで、すごく羨ましい」
 温かいものがすぐ食べられることや、コンビニでさっと食べ物が買えること。しみじみとした様子でマガツヘビに話を聞かせるクラウス。

「特に甘い物が好き。焼きたてほかほかでさくさくのクッキーとか」
 ほっくり口の中でほぐれて、バターの香りが口の中に広がる感覚。冷ましたあとのざっくり感もたまらない。ココアにプレーン、アーモンド……味の種類も様々だ。

「あと、クレープ。苺やクリームをいっぱい包んだ甘くてふわふわのやつが好き」
 薄く焼いた生地にホイップをしっかり絞りソースをかけて。断面までうつくしいいちごを並べ、くるりと巻く。
 その上からまたホイップを絞り、いちごを乗せてソースをかけて、食べやすいようスプーンを差す……ふわふわホイップをソースと絡めて楽しみながら、ちょっぴり酸味のあるいちごがそれを引き締めて。生地にかぶりつけばほんのり甘い……。

「ぐ、ぐううぅ……!」
 腹の音ではなく唸り声である。かわいそ、マガツヘビ。

「そういえば戦争になってからちゃんとご飯を食べてないな……」
 甘いものの話ばかりしたが、しっかりご飯もとらなくては。これが終わったら、美味しいもの食べよう。しっかり食べな!

和紋・蜚廉
不忍・ちるは

「マガツヘビさんふて寝してます?」
 ふて寝。ガチのふて寝。腹の上に乗ったヒダル神がうんうんと頷いている……片や疲労困憊マガツヘビ、返答する気力もないか。
 そうっと近づいた、不忍・ちるは(ちるあうと・h01839)のひそひそ声。
「こっそり耳寄りなうまい話があるのですが……」
「もうコッソリにすんな! 言え! どうせ食えねェんだァァァ!!!」
 だだこね、もたもた、やたらいっぱいある手足をジタバタさせるは子供のようである……。

「豚汁は良い」
 そこへ寒い冬にぴったりな話題を差し込むのが和紋・蜚廉(現世の遺骸・h07277)である。豚汁。空気がその言葉だけで温まる気がする魅惑の言葉。

「冷えた体が芯から温まり、具材が多いほど味も深くなる」
 どんな具材を入れても豚汁はすべてを受け入れる……。
「ちるはも、そう思うだろう?」
「思います。具沢山いいですね、何入れましょう?」
 ちるはの想像の中で始まる豚汁作り。大根の皮を剥き、好きなように切って。豚肉のサイズだってどんな厚みでも、細かさでも良い。ことこと煮込まれる準備が整う鍋、さて何を入れよう……。

「我としては、豚肉の脂が溶けて甘味を帯びる瞬間が好きだ」
 蜚廉が深く頷く。煮込まれて浮かんでくる脂は、アクと呼ぶにはもったいない旨みが詰まっている。取るのはほどほどにしておこう。
 そんな甘い脂をたっぷり吸った大根もまた絶品。染み切った柔らかさ……箸で持とうとして、少し崩れそうになるあの感覚である。何度食べても飽きない味。

「……ぐ……ぬ……」
 マガツヘビ、効いてる効いてる。ヒダル神もほくほくの笑顔。

「里芋とかお豆腐とか……」
 ちるはも想像してみる。定番のほっくりねっとり食感と、お味噌によく合うお豆腐は出来上がったタイミングで食べてしまうのがよいだろう。長く楽しめるのも豚汁の魅力。煮込めば煮込むほど美味しいのだから。

「蒟蒻の弾力も良い。噛めばぷるりと切れ、油揚げは旨味を抱えて熱く染みる」
 そう、煮込んでいけば具材の内までじっくり染み渡る旨みは、蒟蒻に強い影響を与えるのだ……! おかずになる具沢山の素晴らしさ! 豚汁は全てを受け入れるのです。

 そのため。
「米との相性は言わずもがな」
「うどん派とご飯派の抗争もありますが……蜚廉さんご飯派です? 私もご飯がすきです」
「ほんに、ほんにねえ」
 ヒダル神も深く頷いている。塩気を帯びた具材、日本の飯泥棒。茶碗に山盛り、ほかほか白米……熱い熱いと言いながら頬張る幸福のひととき……!

「トマトとかじゃがいもも合うらしいですよ」
「ほう? 洋風か」
「バターを入れるおうちもありますからね」
 そう、味変も良いのだ――!
 柚子胡椒を入れれば、爽やかに抜ける香りと辛味が脂っこい雰囲気をさらって別物に。爽やかになれど体温が上がる、香りとは不思議なものである。

「……さつまいも入れて食いてえ……」
 マガツヘビ、さつまいも派、渾身の一言。
「ほんとお前ら何モンなんだっつってんだよ……何回言うんだコレ……つえぇし……メシの話するし……」
 ぐぎゅうとかお腹を鳴らし、その音の衝撃でちょっとヒダル神が揺れた。ほほほ、と笑っている。ぜんぜんへいきそう。

 そこにぴん、と人差し指を立てたちるは。
「そして不忍家とん汁は翌日カレーになります」
「カレーに」
 ――日本のカレーは独自進化を遂げている、とはよく聞くが。豚汁がカレーに……! あ、あの|わたくし《地の文》もその豚汁カレー気になるんですけど。即ち味噌強め和カレーってことですよねぇ!?
「とてもとってもおいしいですので信じてください」
 信じる信じる。

「美味い話でしょう? さあ、ご飯食べにいきましょうか」
 くう。お腹はならずとも美味しい話をたくさんすれば、そわそわしてしまう。
 蜚廉はまだまだ語れるが……それはそれ。空腹に勝負を挑むとこのマガツヘビのようになる。

「うむ、行こうか。ちるは」
 豚汁デートだ!

 手を振り見送るヒダル神……語るだけ語られ倒れたままのマガツヘビ……さて次はどんなご飯の話かな!?

一・唯一

「腹が減ったら戦も出来ぬ。食は昔から大事やろ」
 でぇっっっかい|瓢箪《ひょうたん》を担いだ女性の影が、マガツヘビに落ちている。

「美味しい食べ物、美味しいお酒。このふたつが揃えば怖い物なしやと思わん?」
 一・唯一(狂酔・h00345)が求めるは、しゅちにくりん。誤用ならぬ本来の意味でのそれであった。
 ちゃぽんと大瓢箪の中で音を立てているのは日本酒だ。とはいえ彼女、酒呑童子の血を継ぐ存在。その酒を飲めるのは彼女と同じか似た血筋のものだけだろう。つまり、死。マガツヘビもたぶん、死。ヒダル神はいけそうですね。

「魚も肉もどっちも好き。骨が大変やから魚は刺身のが好みやな」
 甘い醤油でも、からい醤油でもええね。魚によって変えても、酒に合わせて変えてもええし。
 赤身も白身も、しめ鯖なんてのも。ひとつ刺し身といえど様々種類があるわけで。
「テメェ……何しに来たんだ……」
「怪異肉も歯ごたえあって良いけど、ステーキは牛がええ」
 マガツヘビ、無視。――よぉ~く焼いたでぇっかいのをナイフで切り分ける楽しみ、あるやろ? まあ、そっちはナイフ使わんやろけど。軽く押すと肉汁がじゅわっと溢れる、でも火はちゃあんと通っとって、そんで噛み切るのが楽しい程度の歯ごたえがあったら嬉しい。
「しゃぶしゃぶは豚のが好き。鶏はぼんじりが一等や」
 言うて豚以外のしゃぶしゃぶ、そんなメジャーでもないような気もする……けども、たまーに海鮮なんかもくぐらせると美味いなあ。
 ぼんじりなんて言わんでもわかるやろ? プリプリの脂、肴にするには串がええね。

「――え? 酒の肴ばっかやって?」
 沈黙していたマガツヘビの心を唯一が代弁した。酒。酒だ。唯一はマガツヘビの前で酒を飲みながら、美味いつまみの話を続けていたのである……!!

「何言うとん。米と一緒が一番ええやろが」
 米。広義では日本酒も米であるが、白米と共に食したときのあの味わいは、何物にも代えがたく!
「ほれ、腹の音うっさいからはよお帰り。ボクもお腹減った」
 ぐうぐう鳴るマガツヘビのおなか、ヒダル神がその腹の音に合わせてゆーらゆら。

 ……ところで。
「蛇も鰐も美味やと思うんよ」
 マガツヘビに突き刺さる視線。えっ?
「なあちょっと掻っ捌いてみてええ?」
 えっ?
「待っちょっオイオイオイオメーらやっぱ正気じゃ」
「小型邪魔やー」
 メスがぺしぺし小型マガツヘビを払う。小型も小型、ちったいそれをぺいぺい。
 ……鋭く尖った切っ先が尻尾に迫り……。

「ほんのちょっとやから、先っちょだけ。なぁってばー……」
「――ギャアアアーー……!!」
 あとはどうなったか、推して知るべし。

梶井・アキ
ミケーレ・デ・ルカ

 ふかふかのもふもふ。まんまるのぱふぱふ。温かいを超えてちょっと熱い。うれしい。ミケーレ・デ・ルカ(|天使《死に損ない》・h09144)はまだ知らぬ『あんまん』とやらの味を想像しながら、その外見をじいっと観察していた。
 白くてツヤツヤ、形は丸いフォカッチャに似てるけど、触った感じはけっこうちがう……あつい。まだ『たべごろ』じゃないのかもしれない。ふうふう息を吹きかけながら、そしてミケは考える。

 なんでこんなところで食べるんだろう。

 ――だって、マガツヘビのド真ん前である。

 あぐらをかいた梶井・アキ(|不発弾《死に損ない》・h09151)が肉まんにかぶりついている。ほかほか通り越して熱いまである湯気が溢れているが、アキは特に熱すぎるなどは感じていない様子だった。
「√EDENのいいトコと言えば、「熱いものがどこでも食える」。これに尽きる」
 こうして適当なところで買った肉まんなどに、すーぐありつける。何せコンビニというクッソ便利な店がこの√には溢れているのだから! 余計なものまで買うのはセットだ。現にアキはミケ用のグミやらコーンスナックが入ったコンビニ袋を携えている。

「おまけに、腹空かせたデカブツを見ながら食えるなんて最高だな」
 これはちょっと特殊かもしれない。そのデカブツが「ぐぬぬ……」と唸る中で、上に座る老人、ヒダル神はにこにこと「まんじゅう、ええねえ」と微笑んでいた……。
 美味しいものの話をするとダメージが入る。我慢してもあとでお腹が空く。身動きはご覧の通りだ。せいぜい尻尾や手足をばたつかせることしかできないマガツヘビ、悔しそうである……!

「機械相手じゃ拝めない光景ってヤツだ」
 にやにやと煽るようにして肉まんを大口を開けて食べるアキに恨めしげな視線を送るマガツヘビ。肉汁たっぷり、生地に染み込むそれは大変に良い色だ。と、もう大丈夫かな? とふかふかにようやく口をつけたミケ。いただきます。

 ふわふわな生地、ほんのり甘くておいしい……! でも下のところが固くて噛み切れない。しばらくもごもごしていたミケ、それに気づいたアキが「あー」という顔をして手を差し出す。
「……ミケ、底に紙がついてる。それ食えないぞ。剥がしてやるから一回貸せ」
 あ。頬を赤くしたミケ、恥ずかしそうにそっとあんまんを差し出す……。ぺりっと剥がされた紙と噛んでしまった紙はゴミ袋代わりにとっておいたレジ袋へ。
「ほら、熱いから気をつけろ」
 もう一度渡されたあんまん、はむっと白いところを食むミケ。かわいさの権化。

「そこでそのまま飢えてれば、観光名所にでもなれるんじゃねえのか。ああ、供え物でもされたら厄介だな……」
「わたしが食べますんでねえ、ええ」
「横取りじゃねぇかァ……」
 のたのた。そんな会話をしている中で、ミケがびくっと肩を跳ね上がらせた。あつい! 中のほうがあつい! あんまんあるある、いけるか?と思ったらすっげえ中が熱かったあれである――!
「気をつけろって言ってるだろ……!」
 あわあわしつつもできることはないので、とりあえず様子を見守るアキ。はふはふ。あまいけどちょっとしょっぱい。まだ熱くてちょっと味がわかりにくいが……。
 ……|カジィ《梶井》が食べてるのは、中身が違うのだろうか。そう思ったミケ、ひとくち分、アキにちぎったあんまんを持った手を伸ばす。
「なんだよ、気に入らなかったのか?」
 じい。見つめられる視線にああ、と納得したアキ。
 こっちもおいしいよ。
「……交換したいのか。待ってろ」
 自分の肉まんをむしり。もふっとミケの口に突っ込んでから、あんまんをもらう。
 カジィもくれるの? と目をぱちぱちさせたミケ。
 アリガト。言葉はうまく話せずとも、伝わるものだろう。
 しょっぱいのもおいしいね。

「……うまそうに食うな、お前」
 ほとんど餡のついていないあんまんを食べながら、ミケが美味しそうに食べる姿を観察するアキ。
 そしてその前で「に~く~ま~ん~……」と悶えているマガツヘビ。
 平和~。

神咲・七十

「ふみゅ……お腹が空いているのですか……」
「……死ぬほど……」
 気持ち的には満身創痍なのだが。肉体そのものはほぼ無傷のまま、味わっている苦痛は『空腹』であった。
 人間は食べずとも二十とン日は生きられるというが(実際はそれ以下であろうとも)、古妖にとってはどうなのだろう。
 ともあれ食うものが違えど、空腹とはマジで耐え難いものである。理性をかっ飛ばすものである。具体的に言えば21時頃に唐突に空腹感を覚えて某有名チキンチェーン店のふたり分想定セットを頼んで「チキン一個残しちまったわ」って言っちゃうこともあるくらい、空腹感とはおそろしいものである。
 |わたくし《地の文》の話はさておき。
 神咲・七十(本日も迷子?の狂食姫・h00549)は覗き込んだマガツヘビを見て、なるほどなあと頷いた。自らも空腹感、飢餓感というものにたいへんよわい性質だ。おいしい|もの《・・》の香りがすればふらふら寄っていってしまうのだ。

「では、ライブ後に特典で偶にやっているあれをやりましょう」
 ちょうどお腹もすいたところですし。
 ――呼び出すは|フリヴァく《邪神の欠片》と隷属者。こと攻撃に限っては少々頼りないところのある|彼ら《隷属者》ではあるが――数というアドバンテージを用いて始めるは。

「さて、では作っていきましょうか♫」
 ――どこから現れた移動式キッチン!! 隷属者たちがガラガラと引いてきたそれと、食材の乗ったカート! 大量の食材がフリヴァくと隷属者、そして七十によって調理されていく……!
「何してんだオメー!?」
「ええ匂いがしてきおったねえ」
 規模としてはマジで何してんだレベルである。一口大に切られ、大鍋に放り込まれた大量の鶏肉。炒められる匂いが周囲に充満する……! いい感じになってきた頃に、先に少し小さめサイズに切られた玉ねぎがイン! 馴染んだ頃に続いてごろごろ野菜たちが投入される! じゃがいもにんじん……鉄板……! 鉄板のチキンカレー……!!
 その横ではまったく異なる品、どうやら温かい蕎麦が作られているようだ。

「んぅ、カリアさんに言われて、お手伝いと料理をライブの特典にして作る時があるので。割と作れるのですよ」
「作れるとここで作るは違うんじゃね!? ちょっおまっなんて……なんてこと……!!」
 加速していく食欲……空腹……助けてくれ……! いや助けなくていいからここで作るのはやめてくれ! そんなマガツヘビののたうちも無視して、七十は鼻歌混じりに料理を続けている。

「よし、完成ですね♫」
 味見ひとくち。今回も美味しくできました♪
「……食べたいのなら今回の穴は諦める事ですよ」
「食べさせようって気すらねェだろォ!!」
「は~い、皆さんどうぞ~」
 わーい。マガツヘビを無視して集まった隷属者と|フリヴァく《邪神の欠片》。片付けも簡単なようにと食器は紙製。白米の上からよそわれるカレーに、蕎麦に……。眼の前で始まった食事会。のたうつマガツヘビ! まったくもう!

 ほ~らごらん、美味しそうなカレーだよ……蕎麦だよ……いい匂いがするね……困ったね……。
 でも渡すと困るのでね~それはやめとこうね~。
「古妖さんはどうです?」
「気持ちだけなあ、もらっとくわなあ、今は『これ』の腹ぁ満たさんのがわしの役目でなあ……」
 マガツヘビのお腹をぺちぺちしながらヒダル神は微笑んでいる。元々ひもじい心を力にしている古妖だ、食べるわけにはいかないし、マガツヘビに食べさせるわけにもいかないのだろう。

「それにしても……」
 ぐるり。食事会となった空間を見回す七十。
「食べる方なら分かりますが、なんでお手伝いもお金を払ってまで手伝うのでしょうね?」
 それはね、きみの狂信者たちだからだよ……。
 フリヴァくちゃんはちょっと違いますけどね。今おそば食べてます。

千堂・奏眞

「……飯の話をすればいい、か」
 飯。飯である。飯を食えとあれほど略。天を仰いでいるマガツヘビ、その上にとすんと座ったヒダル神。身動きが取れないマガツヘビを前にして、千堂・奏眞(千変万化の|錬金銃士《アルケミストガンナー》・h00700)は息を吐いた。
 あの様子なら、マガツヘビ本体のことは放置していて大丈夫そうだ。

 よし。
「飯を作るか」
「お前もかァ!!」
 じたばた。さっき眼の前でカレーを作られた。しかもめっちゃ匂いと食べる様子で煽られた。そこに追撃!! なんたる……なんたる所業か、|√能力者《EDEN》!! もっとやれ!!

 匂いや調理する音があれば美味いものの話をしなくても大丈夫だろう。大正解。大正解である。ようは腹を空かせてやればいいのだ! 問題がひとつあるとすれば。
「(つーか、話をしてたらオレが空腹で倒れる)」
 奏眞自身にも相当効いてしまうことである……。燃費の悪さはお墨付き、人の何倍食えば、人の何倍腹が空くやら。
 困ったものだが、背に腹は代えられない。お腹と背中がくっつく前に一仕事だ。

「|皆《精霊達》は何が食べたい?」
 錬金術も使うから、大抵のメニューは作れるぞ。呼び出し現れる精霊たち、各々好きに食べたいものの話を始める。
『うーん、こういう時はカレーがいいんじゃない?』
『腹減るよなっ! ていうかもうカレーの匂いしてね?』
 さっきカレー作ってた人がいました。みんなだいすきカレー。
『ハンバーグも良いと思うのー!』
『お子様ランチ的なオムライスは?』
『魚の香草焼きとかでも良いんじゃないかなぁ』
 |わたくし《地の文》それ好き。お魚の上品な美味しさってあってぇ……でもジャンクに揚げた白身魚とかも最高で……。
 というか奏眞くん大丈夫ですか? 結構お腹減って来てませんか?
『どうせなら、フルコースでどう? デザートも作る』
『賛成ー! みんなで作ろっ』
『そ、それなら焼き菓子は?』
『良いね!』
「……んじゃ、そんな感じで作っていくか」
 精霊九人各々、好きなものを好きなように挙げ、そして始まる調理! てきぱき、前菜からデザート、ちょっとした変わり種なメニューも入れながら作られていくコース料理。既に漂っていた良い香りが……倍増どころではなく……!
『『『かんせーい!』』』
 そうしてさらっと完成したフルコース料理、精霊たちと奏眞が美味しく頂いていく中で。

「ぐ……うゥッ……てめぇらァ……覚えとけよ……」
 なんか唸ってるマガツヘビの腹をヒダル神がぺちぺち。香りと視界でダブルパンチ。たすけて。たすけないほうがいい。

ジェイ・スオウ

「コンニチワとコンバンワ」
 ご挨拶に応える余裕もないマガツヘビ。ジェイ・スオウ(半天妖・h00301)、返事はともかくとして、マガツヘビの顔を覗き込んだ。
「お腹すいた顔シテル。ダイジョブ?」
「に、見えるのかよォ……」
 見えませんけどね。とりあえず聞いてみるのが手っ取り早いので。扇子で口元を隠しつつもフフン、と笑う。なんて姿を晒しているんだろう、このよくわかんない古妖は。
 ともあれ美味しい話をしよう! と言われたので、それにならって美味しい話に入ろうじゃないか!

「オレ、先日焼肉したんダケド」
 焼肉。ぴくりとマガツヘビが反応する。
「色々薄く切ったもの焼いてタレつけて食べるモノって思ってたノ」
 肉だけではなく、野菜も。ピーマンたまねぎキャベツににんじん……南瓜もアッタナ。
「思ってた通りの焼肉も最高にオイシカッタ。ソレナノニ、それで終わらなカッタ」
 ――終わらなかった、だと? 普通に満足いく焼き肉ではないか。食べたい部位が足りなかったとかそういうことではないようだが……マガツヘビ、仰向けになったままジェイを見る。

「おっきいステーキ肉を鉄板で焼いてくれテサ?」
 あっ。おいしい。ステーキ肉がじっくり焼かれる間に話が弾んだであろうことが容易に想像できる。
「野菜やキノコをアヒージョ? って食べ物作っテ食ベテ」
 あっあっ。それってつまり。直火。ホットプレートを想像していたのが吹っ飛んでいった。おいしいやつ。アルミホイルで作った器ににんにくと油が注がれる光景が想像できる……!
 きっと野菜やキノコだけではない。ミニトマト、エビなどの海鮮も入っていたはず!
「最後にそのにんにく効いた油とお肉の油でガーリックライス作ってクレテ……?」
「ア……ア……」
 鉄板の上で火を入れられる白米。残った香りや僅かな具材も残さぬ有効活用。相当な健啖家と一緒に飯を食ったと思われるジェイ……あれ? なんか心当たりが。貴方のAnkerってめっちゃ飯食うタイプのAnkerでしたよね……?
「ニンニクとバターとお醤油の焦がした香りで最高ダッタノ。こんなに美味しいモノアルノカー!! って震えチャッタ」
 微笑みはとてもやわらかく、幸せそうな様子だった。食べたものの味だけではなく、過ごせた時間そのものも幸福だったのだろう。「ほんに、ええことやねえ」とヒダル神が頷く中、「デショ?」とジェイは笑顔で、自慢するように鼻を鳴らした。

「つまり、分かってくれるヨナ?」
「すまんわからん、ノロケと飯の話聞かされてるだけだと思ってたわ」
 一周回ってスンっとした様子のマガツヘビ。何事。なに? わかって……わかってほしいことって何?
 しかしヒダル神にはお見通しである。何が言いたいのか……「ええ、ええ」とコクコク頷いている……。そのたびぐう、だとがぎゅう、だとかマガツヘビの腹から聞こえてくるもので、ジェイはそれに笑い声を上げて。

「……オレ。また早く焼肉したいンダヨ」
 贅沢? 知ってル。でもその贅沢がいつ出来なくなるかナンテ……考えたこともないデショ。
 つんつん、扇子の先でマガツヘビの鼻先をつつくジェイ。まだ何のことだかわかっていないマガツヘビは困惑したままだ……!
「オマエも参加スル?」
「いいのかよ!?」
 マガツヘビ、思わず起き上がろうとした。だが謎の超重力により「へぶっ」とか言って再度天を仰ぐことになる。ヒダル神……重い……!
 しかし当然、そのお誘いが『友好的』なものなわけはない。

「ステーキになるナンテ? ド?」
 ――ジェイ・スオウ、彼|を《・》愛するAnker、そのジョブをご紹介しよう。

 怪異解剖士である。
「斬ル。ネ?」
「ぎゃー!!!!」
 確保されてしまった尻尾! かわいそうに、執刀術ではない! つまり食べても安全とか回復するとかでもない純粋なる食材確保・部位破壊攻撃である!!
 その尻尾の断面を見てしみじみ考えるジェイ……。
「ウ〜ン。ヤッパ、ステーキ肉は和牛カナ」
 あんまり肉、詰まってナカッタ……。

吾亦・紅

「ヘビさん、お腹すいてるのぉ?」
 覗き込んでくるは吾亦・紅(|警視庁異能捜査官《カミガリ》の不思議ちゃん・h06860)の顔だけではなかった。眼の前に見えるはかわいいお人形。お花がいっぱい、青いボタンのおめめ。あきちゃんと一緒に、ぶっ倒れているマガツヘビをじいっと見て首を傾げていた。
「腹減ってねェとこうならねえ……」
 くるしそうである。めちゃくちゃくるしそうである。だがそんなことはわりとどうでもいい。お腹が空いているかと聞いただけなのだし、その返答がコレでもまあ、そんなもんだということで。

「……」
 きゅるる〜。
 かわいい音が鳴った。紅が自分のお腹を見る。どうやら紅もお腹が空いたようだ。ちょうどお昼時!
 ちょこんとマガツヘビの横に座った紅、肩から下げているショルダーバッグから取り出すは……中身ランダムおにぎり! カミガリ先輩作!! 堂々! あまりにも堂々とした飯テロであった!

「……今日は何かなぁ。いくらがいいなぁ」
「いくら……」
 ぼそっと呟くマガツヘビ……想像してしまっている。おにぎりの中身を。紅はおにぎりからちょっぴり目を離して――霊能力でうっかり透視してしまうとつまらないからだ。
「あきちゃんはなんだと思う? ……肉そぼろ?」
「ツナマヨ……」
 あきちゃんに聞いてみたところ、マガツヘビも反応した。ヘビさんはツナマヨだって。そっかあ。何かな。特に気にせず、紅はおにぎりをぱくり一口。中身を見て……。
「……やったぁ、いくらだよぉ」
 予想的中! ほんのり笑顔になった紅、上機嫌におにぎりを食べている……。

「……ヘビさんもどーぞ」
 なんと! なんということだ! まさかの施しだ――!
 普段からお菓子を持ち歩いている紅。そのお菓子袋から取り出されるは、様々なお菓子……! 洋風から和風まで様々……! だが!

「(とっ……とどかねー!!)」
 お供え物になっちゃった。頑張ってもちょっと届かないところに置かれたお菓子たち。それに気づかぬまま、おにぎりを食べ続けている紅。なんという! 生殺し! まさしく蛇の生殺し!!

「おにぎりはできたてが一番美味しいんだよぉ? お味噌汁も欲しいねぇ」
「ほんに、塩気はねえ、大切よ……」
 頷いているヒダル神。塩気がないと水分、体から出ていきますからねえ……。

ジェイド・ウェル・イオナ・ブロウクン・フラワーワークス

「コンニチハ、マガツヘビ先輩」
 屈む先に見えるは腹が減ってまともに動けずのたうつばかりのマガツヘビである。その上に座るヒダル神にも「ちっす」とばかりに手を挙げてから、ジェイド・ウェル・イオナ・ブロウクン・フラワーワークス(笑おうぜ・h07990)は腰をその場に落ち着けた。

「戦闘機械群にいた結果「人間の食べ物?」って今なってるおれが来たよ」
「腹ペコちゃんどもがよぉ……」
「覇気がねーな……」
 そらそう〜。ぺっこぺこだよマガツヘビ。

「機械は人間の食い物を食う必要がねーから。おれみたいなんは自分でなんとかしなきゃならんかったんよな、食事」
 生きている限り食事は必要だ。あるいは燃料の補給。なまじジェイドに限ってはその立場と肉体が食事の内容に大きく関与する。「異物混入とかされても困るし」とは……異物って……いや考えない事にしよう。

「で、まあ、裏切り者なんで、人間たくさん殺して」
 出た!! √ウォーゾーン仕草! そして人間爆弾仕草!
「食い物に困ってたとき、死体から指とか切って食べたりしてたことを思い出したね」
「指!!」
 マガツヘビが派手に反応した。弱々しくのたうつ……!! 人間、マガツヘビにとっては『美味しい』判定のようで。
「耳とか柔らかかったです」
 おそろしい話急にしないで?? ヒダル神が「おんやまぁ」とか言っているぞ!!

「そんなことをしてたせいなのかね……怪異解剖士とかになったの……」
 やや遠い目をしているが、それで「そう」なってたらきみってけっこうしょくじんきだぞ。|わたくし《地の文》はそう思った。でもそういうところ好きよ。

「いや、あの!! 自分の名誉を守るために言うと!! 人肉は本当にたまーにだから!! よほど困窮したときだけ!! たまーのごほうびとかじゃないです」

「耳ッ! 希少部位じゃねぇかよぉ!! 肉食った後こりっこりの軟骨に火ィ入れてゴリゴリ食うんだ……うめぇんだあれが……」
 とはいえヒダル神はにこにこしたまま。おそらくこの古妖も、にんげんおいしい判定。にこにこ。
「いや一緒にすんな!! 言ったろ困窮してたって!!」
「う、うおぉ……黒焼き……人間の黒焼き……!」
 マガツヘビはモゾモゾしているが。
「大切なもんじゃからと置いといた黒焼きにもなあ、ホコリやダニがなあ、やから、美味しいものは美味しいうちに食べないかん……」
 ……ジェイドの話、たぶん一番マガツヘビのお腹に効いてるんですけど、マジで頭√ウォーゾーンなんだよな。

那弥陀目・ウルル

「ごはんのお話する流れなの?」
 イエス! そうです! でも那弥陀目・ウルル(世界ウルルン血風録・h07561)さんって。
「吸血鬼も色々だけど、僕は血液! 血液オンリー!」
「あぎゃーー!?」
 だ~よね~。遠慮なくぶっ刺された日傘!! 先から吸血できるようになっているそれ、マガツヘビの血液を容赦なく吸い上げる!! 「あんれまぁ」とヒダル神も驚きだ!!
 とどめさしにきたぞコイツ!! ようこそ!!

「ひとえに血液といえども、種族とか、体質とか体調とか、精神面とか魂的なものとか、最近食べた物とか、そういうのによってびみょ〜に変わってくるんだねぇ〜」
 たとえば同族のものはご遠慮したいとか、獣っぽいのはなあとか、あるひとにはある。ないひともいる。この世界はありとあらゆる『ヒト』が存在している。血液の流れていない種族からの吸血は難しいが、概念的な味というのはなんとな~く想像できるというものだ。

「どういう血液が美味しいかは好みがあると思うけど〜。僕はやっぱり人類!」
「イイイイッッテェエエエけどヒトがウマいのは分かる!!」
 人類大好き! いろんな意味で! ウルルはにっこり笑みを浮かべながら日傘の先をぐりぐりマガツヘビに押し付ける! 古妖、人類、好き。ヒダル神も頷いています。
「特に心身共に健康的で幸福な人類の血が一番好きかな〜!」
 心身と幸福はかなり関わりの深いものだからね! 逆に言えば不健康で不幸だったり、一方が不完全だったりすると質も落ちるというものだ。

「だから全人類に健やかで幸福であってほしいんだよね〜」
 ということで、健やかと幸福を害するこの存在、マガツヘビ。討つべし。ぐりぐり。悲鳴を上げているが知ったことではないぞ♥️わるいことしてんのは間違いなくマガツヘビなので。なので。
「あっ、もちろんそんな事情がなくても、だとも! 愛してるぞ人類♥️」
 なんて軽い!! 軽いラブ宣言!! だが――。
「でもできればニンニクは食べないでほしい」
 吸血鬼ゆえの悩みどころを口にして、一旦傘を引き抜いた。けぷっ。なんかちょっと痩せてるマガツヘビ。というかそもそも最初から痩せていた気すらしてくる。

「う〜ん、やっぱマズイわキミの血! もう一杯!」
 ざしゅん!!
「ヒギャー!?」
 ……。

「――ほんに、ほんに。飯を食えてね、うるさあ言うのもわかりましょうや……」
 ヒダル神がよっこいせ、と腰を上げた。曲がった腰とどこから取り出したやらな杖をついて歩き……そのまますうっと消えていく。
 こうして戦場(?)には、干からびたマガツヘビだけが残ったのであった……。

 おいしいはなし、ごちそうさまでした!

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挿絵イラスト