シナリオ

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いらっしゃいませ、御屋形様!

#√EDEN #王劍『縊匣』 #デュミナスシャドウ #リプレイ準備中

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王劍『|縊匣《くびりばこ》』関連シナリオ

これは王劍『|縊匣《くびりばこ》』に関連するシナリオです。 これまでの関連する事件は#王劍『縊匣』をチェック!

 やけに豪奢で少女趣味、有り体に言えば趣味の悪いその部屋は、秘密結社『プラグマ』――その下部組織の女首領の居室だった。ピンク色の長髪をなびかせ、フリルたっぷりのゴスロリ服に身を包んだ彼女は、煽情的な目で『来客』を見遣る。
「なんの用だ『プリンセスクイーン』、この俺を呼び出すとは……」
 いつも通りに素っ気ない、不機嫌な声音。訪れたデュミナスシャドウの様子が、次の瞬間一変するのを、プリンセスクイーンは微笑みを浮かべて待った。
「待て、それは王劍か! どうやって手に入れた?」
 ほら、食い付いた。王劍へと伸ばされるデュミナスシャドウの手を制して、プリンセスクイーンは言う。
「フフフ、良いでしょ。これは、私の王劍なんだよ。この王劍はね、配下を強化する力があるんだ♪」
 主導権を握った状況が嬉しいのか、彼女の瞳が恍惚の色を帯びる。あえてデュナミスシャドウの問いをはぐらかし、焦らすように。
「そうそう、デュミナスシャドウ君にも、プレゼントがあるんだ」
「プレゼント? いや、必要無い。俺に必要なのは……」
 が、そんな彼女の『駆け引き』は、結局のところ不発に終わる。デュミナスシャドウは躊躇なくその手を振るうと、素手でプリンセスクイーンの胸を刺し貫いた。
「――え?」
 信じられない、とでも言うように目を見開いて、血の塊を吐き絶命する。
 王劍の齎す『絶対死領域』におけるそれは、完全な死を意味する。しかしデュミナスシャドウは一顧だにせず、王劍その亡骸からむしり取った。
「……この王劍だ。この王劍があれば、この俺は最強の存在になる事が出来る!」
 幸運にも手にした力、それはデュミナスシャドウの抱いた野望に明確な色を乗せていく。
「まずは、軍勢が必要だな」
 計算高いその目は、√EDENへと向けられていた。

●王劍を巡って
「皆さん大変です! また王劍絡みの事件ですよ!!」
 星詠みである漆乃刃・千鳥(暗黒レジ打ち・h00324)が示したのは、√EDENの一角。そこは√マスクドヒーローから来た悪の組織、『赫刺党』が根城にしているという話だが。
「今回はそこに、王劍の模造品を持った怪人が乗り込んで来るようなのです!」
 組織同士の抗争、みたいなものだろうか。襲撃側は怪人『デュミナスシャドウ』の配下を名乗り、この小組織を制圧し、デュミナスシャドウ勢力に加えようとしているらしい。潰し合いなら勝手にしてくれ、と言いたいところだが、これは王劍を持つデュミナスシャドウという怪人に迫る好機でもある。
「ということで、皆さんにはこの戦いに介入していただきます!」
 そうなれば、やはり戦闘は避けられないだろう。
「襲撃側の怪人は王劍の模造品を手にしているそうです! 気を付けて戦ってください!!」

 王劍の模造品……模造王劍は『白い木刀』のような形状で、以前にも確認された王劍『縊匣』に類似している。デュミナスシャドウが、無数の小王劍で構成されるという王劍『縊匣』の一つを新たに所有した可能性が高いだろう。
 そして王劍『縊匣』は、自身の模造品を作り出す力を持つ。
「模造王劍は『絶対死領域』を発生させることはできず、怪人の戦闘力を向上させる働きしかしていないようです! しかしながら、これが配下の怪人に次々と配られるとなると……今後が心配になりますよね!」
 つまり第一の目的は、デュミナスシャドウが勢力を広げるのを阻むこと。敵が戦力を吸収するのを阻止し、模造王劍を持つ敵怪人を討ち取る必要があるだろう。そのための第一歩が、敵対組織との接触になるわけだが。

「えーと、この組織……|『赫刺党』《かくざとう》のアジトなのですが、表向きはその……忍者喫茶として営業しています」
 忍者喫茶。聞きなれない単語が出てきたが、つまるところはからくり屋敷をイメージしたコンセプトカフェ、らしい。
 店員はみんな忍者ということになっており、注文した料理が掛け軸の裏の隠し通路から配膳されたり、天井裏からお茶が注がれたりといった独特の空気が味わえるほか、高額注文や店員への袖の下で意中の忍者を指名したり、チェキとかそういうサービスもやっている。
 そこまでならば『変わったお店』として地方紙でとりあげられて終わりになりそうなところだが。
「悪の組織らしいところとしては、『仕置き人サービス』――復讐代行みたいなものもおこなっているようです」
 安くない依頼料と共に、仕置きついでの強奪、窃盗による活動資金の調達。そして『依頼した』という共犯意識と脅迫材料で客を組織の手駒に変えていく……ふざけているのか真面目なのかわからない活動を行っている。
「これと接触するとなると、『客として訪れる』か、『店員として潜り込む』というのが有効ですかね?」
 何にせよこちらの正体がバレれば『赫刺党』とは敵対することになるだろう。そうなってしまったら仕方がないが、第一目標の達成のため、できれば穏便に済ませてほしいと彼は言う。
「味方につけるまではいかなくとも、良い印象を与えておくだけでも、その後の『襲撃時』の展開が変わるでしょう。とはいえ相手は弱小ながら悪の組織……扱いが難しいところですね」

 ちなみに肝心の模造王劍は、敵を倒すか、或いは敵から奪い取ることで消滅させることができる。逆に言うなら持ち帰ることは難しいようだ。いろいろと考えることの多い依頼ではあるが。
「皆さんの手腕に期待しています! それでは、よろしくお願いしますよー!!」

●忍者喫茶~赫刺党~
「いらっしゃいませ、御屋形様!」
 武家屋敷風の内装をした店内に、今日も番頭の声がこだまする。襖風のドアを開けて、どんでん返しの向こうの隠し廊下を歩いて客室までご案内。こんな雰囲気のため観光客に人気のこの店だが、一部には熱心なファンも居るらしい。
 こちらの二人連れ立ってきた女性客も、その類のようで。
「ほほう、袖の下……よろしい、ではすぐにあの者をお呼びいたそう」
 指名料らしきものを受け取った番頭は、愛想よく笑って拍手を打つ。
「斬兎殿、姫様方がお呼びでござる!」
 ぱん、ぱん。手を打つ音色が消える間もなく、女性客の背後に影が差す。音もなく現れた端正な男性忍者の姿に、女性客達は黄色い声を上げた。

「……また斬兎殿でござるか」
「組織に加わって間もないというのに、こうも指名を集めるとは……」
 表での接客の様子を盗み見て、裏に控えたキャスト達がひそひそと言葉を交わす。悪の組織としての顔を持つとはいえ、『表の仕事』の収入も馬鹿にならない。自然と、キャストの売り上げランキングがメンバーに力関係に影響を与えているらしい。
「今月の『番付け』が見ものでござるな」
「血鎖殿も気が気でないござろう……」
 声を潜めて振り向けば、不機嫌そうな女忍者が舌打ちをしてこちらを睨んでいた。

 血染めの鎖鎌を体に巻き付けた妖艶なるくのいち『|血鎖《チグサ》』、そして忍びらしからぬ大太刀を刷いた冷酷なる処刑人『|斬兎《キリト》』……スタッフと常連客の界隈では、この両者のトップ争いに関する話題で持ち切りのようだ。

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第1章 冒険 『デュミナスシャドウに狙われる組織との接触』


ロイ・サスケ
ゴッドバード・イーグル


 忍者喫茶、赫刺党の夜は早い。
 いや、普通に日中も営業しているので気分の問題だが、日が暮れていた方が雰囲気が出るのか、その辺りの時間から来店者が増え始めるのだ。
「いらっしゃいませ御屋形様!!」
 行燈風の照明の下、連れ立って訪れた女性客を案内するのは下忍……つまり新人キャストであるロイ・サスケ(ニンジャ・オブ・ザ・ハイウェイ・h09541)だった。
「こちら、本日のお品書きでござる」
 うまいこと組織に潜入した彼は、席に着いたお姫様達に巻物型のメニュー表を手渡す。
「あれ、指名した仙鉄さんは?」
「しばし待たれよ、仙鉄殿ならたしか――」
 合図を送るともくもくとドライアイスの煙が立ち込め、床下から指名された先輩忍者が現れる。名乗りを上げてちょっとしたパフォーマンスを披露すれば、お客の黄色い声と拍手が上がる。最初は驚くことの多かったロイだが、いくらか下働きをこなす内に合の手を入れるくらいの余裕は出てきていた。
「あ、こっちの下忍さんもよく見ると……」
「ほんと? 仮面とって見せてよー」
「これは困ったでござるな、セッシャにはまだほかに仕事が――」
 ふ、と思わせぶりに笑って女性客の声を躱す。ここのニンジャのスタイルは思いのほか馴染む、というかセッシャ普通にここで働きたいんでござるが?
 まあ|警視庁異能捜査官《カミガリ》と書いて公務員と読む彼に副業が許されるのかは定かでないが、動けて声が出る彼は新人として重宝されているようだ。

「もう頭角を現し始めたか……」
「やるでござるな、あの新人」
 その親しみやすい調子は、天井裏に控えたキャスト達からも評判は悪くない。場に溶け込むのは完全に成功したと言っていいだろう。
 そして、潜入に回った√能力者はもう一人。
「お疲れ様です、先輩方」
「ん? お前は確か……」
「はい、新人の尾白です」
 次のパフォーマンス兼注文された『煙玉ソーダ』を運んできたゴッドバード・イーグル(金翅鳥・h05283)は、それを腕組して客席を覗いていた彼等に手渡す。ロイと同様新人としての下働きに勤しんでいるようだが、彼女はロイとは違い裏方に徹していた。
 こういった地味な仕事は個人の売り上げに影響しないためか、やりたがる者は少ない。「故あって過去の身分を明かすことは出来ない」、とそんな風に面接で伝え、訝し気な目で見られていたゴッドバードだが、こうした献身的な働きのため、徐々に認められつつあるようだ。
「最近入った新人は粒ぞろいでござるなぁ」
「血鎖殿も内心焦っているでござろう」
 パフォーマンス交じりにお客に飲み物を届けに行って、戻ってきた先輩忍者達の言葉に、ゴッドバードは耳をそばだてる。
 この先輩忍者達も漏れなくプラグマ下部組織の戦闘員……のはずなのだが、一体この状況は何なのか。自然と浮かんだ疑問を思考の外に追い出しつつ、情報集めに努める。
 しばらく務めて見えてきたことではあるが、この組織においては月次の売り上げランキング……『番付け』が、彼等の力関係に重要な意味を持つらしい。実は受付をやっている『番頭』が組織の首領ではあるのだが、番付けのトップは実働部隊のリーダーとして、実質的に忍者達を仕切る立場となっている。
 今のところはベテランくのいちの血鎖がそこに当たるようだが……。
「お、セッシャの噂でござるか?」
「そんなわけないでござろう」
 接客から戻ってきたロイが軽口を交わし始めた頃、キャストの控えているそこに、『彼女』がやってきた。
「あんまり調子に乗るんじゃないわよ、新人」
「これはこれは血鎖殿」
「お疲れ様です」
 ロイとゴッドバードの二人が、かしこまった様子で返す。
「でもまあ、見所はあるわね。今度私と一緒に接客に出なさい」
 御供として使ってあげるわ。そんな血鎖の言葉を遮るように、現れたのはもう一人の重要人物、『斬兎』だった。
「この女の派閥に入ったところで先はない……やめておくでござる」
「あ? どういう意味?」
 トップとして長く居座るお局と、それを脅かす期待の新星。番付けを争う彼等の軋轢を目にして、ロイとゴッドバードは密かに顔を見合わせる。
「興行ばかりで腕の鈍っておるのではないか、先輩殿?」
「孤高気取りのガキが……『裏』の仕事の腕だけじゃあ上には行けないわよ」
 言い合いは続く。あまり深入りしたくない対立ではあるが、果たしてどう扱うべきだろうか。後々展開として予知されている襲撃、そのタイミングが来たならば、彼等は『無関係』というわけにはいかないだろう。こちらにとって敵となるか、味方になるか……その辺りも加味して、立ち回りを決める必要がある。
 一致団結させれば組織としての戦闘力は高くなり、分断を強めれば戦力は下がると予想されるが……。

「御屋形様の出陣でござる!」
「「いってらっしゃいませー!!!!」」
 とりあえず、もう少し接客は続きそうだ。またお越しくださいませ、という番頭の声が店内に響いた。