シナリオ

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星花のジャルダン・ディヴェール

#√ドラゴンファンタジー #√妖怪百鬼夜行 #受付期間:1/28(水)9:00~ #1/30(金)23:59までの予定 #途中参加も歓迎です

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 #√ドラゴンファンタジー
 #√妖怪百鬼夜行
 #受付期間:1/28(水)9:00~
 #1/30(金)23:59までの予定
 #途中参加も歓迎です

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●フラワージャムとブリオッシュ・ティータイム
 オーブン釜の扉を開けると、ふわりと香ばしく甘い香りが流れ出す。
 少女は厚手の手袋をはめ、そっと天板を引き出した。
 黄金色にふくらんだブリオッシュは淡い金色に耀き、表面はやわく艶めいている。
「……うん! いい感じ」
 卵とバターをたっぷり練り込んだブリオッシュは、指で触れるとすぐ戻るほどふんわりと軽い。
 さくりと割ると、ほわりと内側からほのかな湯気が立ちのぼった。
 甘い砂糖の香りに温室の花の匂いが重なって、冬の終わりを思わせる優しい空気が広がる。

 机の上に用意した小瓶には、星花のフラワージャム。
 光を含んだ淡い色合いのジャムをそっと掬うと、ゆったりとスプーンから零れ落ちる。
 星の花を煮詰めたジャムは花の香りも楽しめるよう、ほのかな甘さに調整した。
 口に含むとまず花の香りが広がり、あとから静かな甘みが追いかけてくるように。
 このブリオッシュに合わせるのは、やや渋みのあるお茶だ。
 星の花を乾燥させてブレンドしたこのお茶は、ひと口飲むと舌の上がきゅっと引き締まる。
 そのあとでジャムをのせたパンをかじると、優しい甘みがいっそう引き立つのだ。
「……、」
 温室のティータイムを楽しんでいた少女は、ふと手にしていたカップを机へ戻した。
 香りは立ち、色も悪くない。けれど、喉を通ったあとに染みるような渋みが残る。
 花のせいではない、湯の温度のせいでもない。
 きっと――、今は心が少しだけ沈んでいるのだ。
 その理由を考えないようにしながらも、ポケットから端末を取り出し、指を滑らせる。
 画面越しに映る星の花が、少女の眸に影を落とした。

●星花の庭と温室カフェ、それとねこ
「夜のような洞窟で輝くひかり……それはきっと、星のように見えるのでしょうね」
 星詠みの少女、ブランシュ・エマイユは、桃花色の眸を瞬かせ、集った面々に視線を戻した。
 ――その洞窟には、星空があるという。
 昼でも光の届かない洞窟の奥で、淡く燐光を放つ鉱石に紛れて、星のような花が咲くのだと。
 飾れば光を宿し、乾かせば夜の空気を閉じ込める。
 そして丁寧に煮詰めれば、やさしい香りと甘さを残す。

「その花を見つけて、密かに育てていた双子の姉妹さんがいらっしゃるのです」
 名を、エリアとフィアという。
 姉のエリアは温室カフェを営み、その花を使った新しいメニューを考えていた。星花のジャム、星花のお茶。寒い季節、あたたかな温室で心をほどくための味を。
 妹のフィアは温室の隣のクラフト工房で、押し花や栞、レジンを使った小さなアクセサリーなど、花を用いた小物をカフェの新メニューに合わせて作ろうとしていた。
 ふたりにとってこの星の花は、夢とともに密やかに育ててきた大切な花だ。
 ――けれど、ある日。
 フィアが試作で作った小物の写真が、思いがけずに広まった。
 星花の押し花と、その輝きに惹かれた言葉たちが、世界を巡ったのだ。
『きれい』『見たことがない』『わたしもほしい』
 画面の向こうで、星の花は“夢の象徴”になっていた。
「……いわゆる、SNSでのプチバズというやつですね」
 それ自体が悪いわけではない。
 フィアはその反応に素直に喜び、エリアもそれを否定する気はなかった。
 けれど、“決めていたはずの形”からほんの少しだけ、ずれてしまった。
 そのことが、姉のエリアに小さな引っ掛かりを残す。
 ふたりで大切に育ててきたものだからこそ――。

「その小さな気持ちの変化に引き寄せられ、紅涙が姉のエリアさんの前に現れてしまう可能性があります」
 紅涙は彼女に、こう囁くだろう。『貴女のその心のわだかまりを、晴らしてさし上げましょう』と。
 その誘いに頷いてしまえば、紅涙は彼女を苦しめる元凶となったものを襲いに掛かるだろう。
 その先に、妹の姿が重なる可能性も……否定できない。
「けれど、少しの心の変化は、少しのきっかけで変わることもできます」
 彼女の気が少しでも晴れれば、それだけで運命の流れは変わるはずだ。
「ちょうどエリアさんは洞窟へ向かうつもりのようですし……皆さんも、気になるようでしたら」
 近頃はモンスターの活動も活発だ。そう理由をつければ、洞窟を訪れたことも不自然ではない。
 一緒に花摘みを手伝ったり、何か話を聞いてあげても、ただ傍らで見守っているだけでも良い。
「ひとりで暗いところに居ると、どうしても気分が落ち込んできちゃいますからね」
 彼女の気が紛れれば、紅涙の気配も薄まるはずだ。
 そうしていつも通り温室に戻れば、いつの間にかこの事も忘れているだろう。
 手伝ってくれたお礼にと、温室カフェへそのまま招待してくれるかもしれない。
 まだ世に出ていないメニューをひと足先にいただいたり、クラフト工房で花を使った小物を作らせてもらっても楽しいだろう。

「……あ、あと、他にも予知が見えたのですけど……。なにかこう、ねこっぽいものが」
 ブランシュは小首を傾げつつ、ふるりと首を横に振る。
「詳細は視えませんでしたが……道中、ねこっぽいなにかには、気をつけてくださいね?」
これまでのお話

第2章 集団戦 『道を塞ぐ猫』



 冬空から差し込む光が、夜天洞窟の入口を明るく照らす。
 吐く息が白く滲む中、ひとりの少女が足を止めていた。
 外套のフードを外し、そっと洞窟の奥を覗き込む。
「……お姉ちゃん、ここに来てるのかな」
 少女フィアは、双子の姉のエリアを探しに来ていた。
 出かける前の浮かない顔がどうしても気になって、後を追いかけてきたのだった。

 そうしてフィアが洞窟に足を一歩踏み入れた、その時だった。
 ――ひたり、と。
 どこかで、柔らかい音がした。
 水音でも、風の音でもない。
 強いて言うなら、柔らかい何かが、石を踏んだような……そんな気配。
「……今、なにか……?」
 フィアが問いかけるより早く、通路の奥に“影”が現れた。
 胴体はぬるりと伸び、蒼い毛並みが燐光を反射している。

 ……猫だ。
 どう見ても猫なのに、サイズ感は壁のように大きく、明らかにおかしい。
 こちらを見つめるつぶらな瞳。
 きらりと光る爪。
 にょろん、と体を伸ばして通路を塞ぐようにフィアと向き合う。
「……え?」
 フィアの足が、思わず止まる。
 距離は、近い。
 逃げ場は、狭い。
 猫妖怪が少女に迫る前に、踏み込む必要がある。
 ただ間に割って入るだけでも、猫の注意はこちらへと向くだろう。
 危険な気配は、確かにある。
 けれどもそれ以上にこの猫――。
 どうにも、“構ってほしそう”だった。

 * * *

●マスターより
 姉のエリアを探しに来たフィアに、紅涙が呼び寄せた猫妖怪が迫っています。
 皆さまはそこに駆け付けるかたちとなります。
 導入文はややシリアス気味ですが、猫と戯れるだけでもOKなゆるい戦闘パートです。
 真面目に戦闘していただいても、猫と遊んでいただいても、どちらでも大丈夫です。

●猫妖怪について
 紅涙のターゲットだったエリアを苦しめる元凶に襲い掛かる想定でしたが、
 1章でエリアの感情も安定してきて紅涙の気配もほぼ消えてしまいました。
 なので呼ばれたけど、暇になってしまった猫ちゃんです。
 襲い掛かるフリをしていますが、実のところは遊んで欲しいだけかもしれません。

●他
 こちらの章は、複数の方をまとめて描写する場合があります。
 単独での描写を希望される方は、プレイング最初に「✕」印を記載してください。
 
 補足と説明は以上となります。
 それでは、よろしくお願いいたします。