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 √マスクド・ヒーローで暗躍し、全ての悪の組織が忠誠を誓う秘密結社「プラグマ」の最終目的、それは「全ての√の完全征服」。
 しかしそんな彼らも無から何かを作り出すことは出来ない。そうでなければ大量の人々を誘拐し、様々な機械や薬品を注ぎ込む必要はないだろう。
「でもそうやって丹精込めて作った怪人達もヒーローにぶっ壊されて爆散したり裏切ったり永久に使える駒ではない。√マスクド・ヒーローを裏で牛耳っているつもりの彼らはある意味自転車操業の真っ只中なわけさ」
 嘲笑を浮かべる倉稲・石香(取り替え子のゴーストトーカー・h01387)は大きな机に両肘をつけて、組んだ手を前後に揺らしていた。
「そういうわけで『最も弱く最も豊か』な√EDENは格好の的なのだよ。マスクド・ヒーローよりも簡単に人は攫えて資材ははるかに豊富。ここを落とせば他の√にいくら攻め込んでも蓄えが十二分に出来るほどのリターンが返ってくる」
 だがどれだけ資材があろうと、同じ改造をするならより強い個体から使いたいと思うのが人のサガ。
 その振るい分けが√EDENで行われようとしているらしい。
「最近√EDENの半グレの間で安価で使い易い武器が大量に出回っている。こちらで調べたところ、出所はマスクド・ヒーローだった。十中八九プラグマとやらの仕業だろう」
 おそらくプラグマは半グレ同士の抗争で発生したインビジブルを回収しつつ、生き残った者を攫って怪人に改造する気なのだろう、と石香は背もたれに体を預ける。
「まあ、半グレも半グレで一旦絞めておくべき存在ではある。街を『キレイ』にするためと思って、まとめてのしてきてくれないかい?」
 半グレ達が能力者達に一掃されたら計画を台無しにされたプラグマの尖兵が怒って飛び出してくることは容易に考えられる。
「短気は損気というだろう? 冥土の土産に半グレの連中と怪人に教えてやってくれ」
 そう話を締めて、石香は嗤った。

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第1章 冒険 『火を煽るもの』


四二神・銃真

「厄介事の匂い……どこにでもいる只の私立探偵としては、見過ごせないな。というわけで参加させてもらうぜ……『お掃除』にね」
 そう言って街に繰り出した四二神・銃真(そいつの名前は死神ガンマ・h00545)のやる事はシンプルだ。半グレが居ついている場所の情報をまずは仕入れる。居場所が分かればそこにいる連中に問答無用で先制攻撃を加える、それだけの話だ。
「碌でもない事考えてるようだし、拳銃も使っていいだろ」
 そういう邪な連中の居所なら「いい具合のモノ」とか落ちてるだろうし、もし近接戦に持ち込まれたらその辺のを適当に見繕って喧嘩殺法でもすればいい。
 そんなことを思いながら路地裏にある、エレベーターがなく、人2人がすれ違えないほど狭いビルの階段を登って行く。
 踊り場に繋がるように設置された扉の横に立てかけられた段ボールやタンクを避けて進めば、まだ開店時間にはほど遠いというのに階段の上から賑やかな声が聞こえてくる。
 鍵のかかってない扉を開ければ燻された煙の臭いが香ってくる。そして一番入り口の近くにいた青年が怪訝な顔を浮かべながら立ち上がった。
「あ? なんだオメェは」
 両肩を揺らしながら近づいてきた青年の肩を的確に撃ち抜く。絶叫と共に崩れ落ちた同胞の姿を見て、残りの男達が泡を食ったように立ち上がった。
 そして前の方にいた者達が壁役になるかのように前に出てる間に、奥にいる連中が足元に転がしていたカバンから何かを取り出した。
 出てくるのはこの世界には本来流通してないはずの型式の銃火器。しかしそれに装填を行う前に掌から銃が弾き飛ばされる。
「時間稼ぎすら出来ねぇのか、このポンコツども!」
「まあこれも|半グレくん《キミ》をもーっと悪い奴らの企みから守るための正義の行為ってことでさ? 銃弾の一発や二発……大目に見てくれるとお兄さんとしては、嬉しいねぇ?」
 暫定ヒーローとしてはかなり悪役に近いムーブな気なするが……無惨に殺されたり自我を崩壊されて操り人形にされたりしないだけ有情だと思って欲しいと思いながらガンマは悪態をつく青年の耳のすぐ横に銃弾を撃ちつけた。

色城・ナツメ

「街を『キレイ』に、か……まぁ、利用されるのは半グレたちもムカつくだろう」
 星詠みの言い草に元不良であった色城・ナツメ(頼と用の狭間の警視庁異能捜査官・h00816)は何とも言えない気持ちになったが、それはそれこれはこれである。
 現行犯の銃刀法違反と公務執行妨害でしょっ引けば何とかなるか……と考えつつナツメは半グレ達の溜まり場に乗り込んだ。
 見慣れぬスーツ姿の男に半グレ達は分かりやすく敵意を見せ、思い思いの得物を構え出した。
「手っ取り早く無力化するには……試してみるか」
 手帳を見せる必要が無くなったな、と内心嗤いつつ、ナツメは開いていた手をぐっと握り締める。すると湧き出した【霊震】が半グレ達の武器を激しく揺らし出し、大きな獲物がかかった時の釣り竿のような振動が半グレ達の体勢を崩しながら武器を手放させた。
 強烈なバイブレーションと高いところから落とされた衝撃で破損させれたら良かったがプラグマ謹製の武器から破片が飛び散ることなく、震えながら床をどんどん滑らせていくだけ。しかしこれで少なくとも構えることはできないだろう。
「さて……頭はどいつだ?」
 痛む手を押さえて睨みつける半グレ達は誰一人として自分が頭だと名乗り出そうとしない。明かしたら面倒臭くなる相手だと野生の感で察したのか、そもそもこの場にいないのか。
 ともかく、この中に隠れているものだと仮定してナツメは説得を試みることにした。
「お前たち、質のいい武器が安く大量に出回るのはおかしいだろ」
「はぁ? そんなこと知ったことじゃねえ」
「別の奴も同じ物を使ってようと同じだろう?」
「お前たちは利用されている。ムカつかねぇか? 良いようにされてさ」
「りよぉ? はっ、使えるもんは全部使う、あっちが俺らを使う気なら俺らもあいつらをこき使う、普通のコトだよなぁ?」
 しかし自分達がプラグマの振るいにかけられていることを知らない半グレ達は鼻で笑った。
「それとも何だ? コレよりも強え武器をくれるってのか? 例えばこの武器を故障させた機械とかよぉ」
 さらに【霊震】のことを超能力ではなくナツメが何らかの機械を使ったことによる誤作動だと認識したようで、それを出してくるように要求してきた。
 どう答えたものかと熟考していると焦れた半グレが詰め寄ってきた。
「答えられねぇのか? 答えられねぇくせに喧嘩売ってくんなら、覚悟は出来てんだろうな!」
 掴み掛かろうとして伸ばされた腕を逆に掴み返し、締め上げる。
「……とりあえず武器だけでもボコボコにしとくか」
 地面に転がっていた武器が弾け飛ぶ。それを合図にするように半グレ達は一斉にナツメへ襲いかかった。

シエル・シュートハート

「悪の秘密結社も不景気なんて世も末だなぁ。ともかく半グレ君達から武器を没収しないとね」
 |真鍮機械《つくりもの》の翼をはためかせ、シエル・シュートハート(真鍮翼のアサルトエンジェル・h05256)は細く薄暗い路地を音もなく飛翔する。
 もし羽ばたく音を発していたとしてもはるか下で繰り広げられている抗争の音で掻き消されていただろう。
 対立組織の相手に鉄パイプで殴りかかろうとした男の体が細い銃口から飛び出した圧縮された空気によって吹き飛ばされる。固体が発されてないにも男の体には風穴が開き、血が噴き出すように溢れ始めた。
 一方でこの世界には物語の中にしか無いはずのレーザーガンによる光線が飛び交い、掠った服の下から肉が焦げる臭いが漂い出す。
 どちらも一歩も引く気がない血で血を洗う争いを切り裂くように、シエルは真上から急降下してきた。
「撃つと動く! という訳で君達そんな物騒な物持ち歩いちゃダメだよ? お姉さんが責任もって没収しますからね」
 両脚と左手を地面につけて着地したシエルは堂々と言い放つ。呼んだ覚えのない謎の|装甲天使《だいさんしゃ》に半グレ達は苛立ちながら武器を向けようとする。
 しかしアスファルトの下から急激に伸びてきた蔓がそれを阻んだ。
「じゃ、これは責任もって預かっておきますよ」
 叢の檻に閉じ込められた半グレ達からシエルは武器を取り上げていく。
 わずかに開いた隙間から反抗しようとしても伸びてきた茎が武器を持つ手を強引にこじ開けて地面に落とさせる。そして拾われる前に勢いよく地中から飛び出した根に弾かれてシエルの足元に滑っていった。
「てめぇ、邪魔すんじゃねぇ!!」
 あとは悪態をつくしかなくなかった半グレ達だったが、その口も蔦が猿轡のように巻き付くことで封じられた。
「あーあ、素直に従わないから。しょうがないねー」
 暴れることも禁止された半グレ達を憐れみながらシエルは異世界の凶弾に倒れて虫の息だった半グレの体を覗き込む。
 反対側の景色が見えていた銃創には細い根が生え出し、まるで縫合するように傷口を塞ごうとしていた。
「普通の糸と違って勝手に枯れてなくなるから。もうこんなことはするんじゃないよ?」
 峠は越えたがまだ意識を取り戻していない半グレに向けてシエルはそう言い残し、大量の武器が入った袋を担ぎながら飛び去った。

蓮華・壱三葉

「安易なお小遣い稼ぎでありますね!」
 蓮華・壱三葉(エビで釣られる方のちょろイド・h05167)は己の汚職警官ぶりを棚に上げ、そんな感想を抱いた。
「しかし、ひたすら掃除というのも、対応としては短気に思うであります」
 使える人間が100人いても、使う武器がなければ使用人数は0人になる。半グレを片っ端からとっ捕まえても武器の出所であるバイヤーに逃げられたら暖簾に腕押しなのだ。
 そこで壱三葉はまず武器を知ることから始めることにした。
 安価で大量に裏社会に流通しているというなら手に入れるのは難しくないだろう。ただ壱三葉に裏社会のバイヤーとのツテはない。だが他の√能力者が半グレから強奪してきた武器が壱三葉の前に山となって積まれていた。
 壱三葉は手にしたマルチツールガンを武器に突き立て、解体しては組み立て直してを繰り返して、内部構造を把握する。これでマルチクラフトボックスを使えばちょんと人差し指でつついただけで銃はバラバラになって半グレの手元からこぼれ落ちることだろう。
 安い武器は安いからではなく、安くて「信頼性」があるからこそ使われる。
 もしもこの武器が簡単に|解体《こわ》された。それも壱三葉のような少女に触られた瞬間に……なんて実例と噂が広まれば、半グレ達は武器を放り出すか、短気を起こしてバイヤーに詰め寄るだろう。壱三葉としては、そこを押さえられれば上出来だ。
「空中分解させてやるであります」
 不敵な笑みを浮かべながら作業を進める壱三葉は取り外したばかりのネジをまじまじと見やる。
「しかしこうしてみるとだいぶチャチな作り方でありますなぁ……」
 電動ドリルで無理矢理こじ開ければどうにかなることに変わりはないが、安易に壊されないようにするなら三角とか星型のネジ山とか使うべきである。
 にもかかわらずこのネジ山にはその辺の100均で買えるドライバーでも外せる十字の溝が入っていた。
 解体されてもプラグマの技術を半グレ如きが把握することは出来ないだろうとたかを括っているのか、それとも中を開けられて改造されることを最初から前提として考えているのか、それとも初めから使い捨てにするつもりの武器に金をかけたくなかったのか……プラグマの真意は察することはこれだけでは難しかった。
「まぁいいであります。次はこの、電気が流れる鞭であります。……おや、単42本で動くのでありますか? 人1人気絶させるにはずいぶん安上がりでありますな」
 壱三葉が半グレの間で流行っている武器の仕組みやバラし方を把握するまで、そう長い時間はかからなかった。

第2章 ボス戦 『バニエル・クロノジャッカー』


「社会のゴミのみなさん、こんにちは!」
 声音だけは明るい毒舌と共に抗争中の半グレ達の元へ1人の少女が落ちてくる。
 その少女は一瞬裸だと誤認するほどの最低限の布面積しかない服しか着ておらず、半グレ達は暴言を言われたことを一瞬で忘れて下世話なことを考え出した。
 だが四肢に装着された真っ白な金属製の手甲や脛当てが重い音をたてたことで、桃色の空想は一瞬で霧散させた。
「わたしの理想の未来計画のために、他人を不幸にするだけのみなさんのことは許しません!」
「何をふざけたことをごちゃごちゃ言ってんだ、一発やらせろぉ!」
 下衆な笑みを浮かべながら突っ込んだ半グレの顔が歪み、一拍遅れて吹っ飛んで壁に激突する。
 大きなクレーターの中心にめり込んだ半グレはか細い断末魔と一緒に血を全身から発し、何度か痙攣した後に地面へ落ちた。
「まずは1人、お掃除出来ました!」
 右ストレートを突き出した体勢でにこやかに言い放った少女に一部の半グレはゴミ呼ばわりされたことに対する怒りに任せて、ブラグマから渡された武器を片手に突っ込んだ。
蓮華・壱三葉

「なるほど。もっと短気でありましたか」
 路地の奥からこだまする半グレ達の断末魔から位置を把握しながら壱三葉は走る。
 例えゴミがゴミ武器を持っても√能力者に及ぶはずもない。
 壱三葉はプラグマの思惑は「半グレが抗争に出てさえくれれば何でも良かった」のだと結論づけた。
 彼らも、武器が無ければ無いで、闇に隠れて別の犯罪計画を練っていただろう。
 掃除されても困らない人間を表に引き出し、虐殺して、まとめて収穫する。うまくいけば確かに安上がりだ。
 だがあくまでこれは予想に過ぎない。正解を知るには、半グレをインビジブルにはさせず、しかし武器は取り上げつつ、少女の事情を押さえないといけない。
 少女がプラグマにとってのイレギュラーなのか、それとも試験官としての役割を果たしているのか……多分前者の方だろうが、どちらにせよ止めるのは同じだ。
「はーい、警察ですよ。止まるでありまーす。全員暴行罪と傷害罪と……あと殺人未遂の現行犯でしょっぴくでありまーす」
 警棒で威圧しながら壱三葉は半グレ達と少女に呼びかける。
「マズイ、サツだ!」
「うるせぇ、こちとら武器があるんだ! これで」
「そのちゃっちい武器が何でありますか?」
 まるで肩を叩くような気軽さで壱三葉が触れた途端、半グレ達の持っていた武器がバラバラになって道路に落ちていく。
 持ち手だけが手の内に残った武器の残骸を、半グレは目の前で一瞬で起きた出来事を認識し切れなかったのか呆然と眺めている。
 その背後を、少女が強襲しようと剛腕を振るった。
「いけまぐぇっ」
 少女の凶悪な攻撃からバックアップ分隊のうちの一体が自らの体を盾にして防ぐ。しかし細い警棒でその勢いを殺すことは出来ずに吹っ飛ばされて、コンクリートの壁に叩きつけられて破壊された。
「なんという破壊力……!」
 鍔迫り合うことすら出来ずに一瞬で吹っ飛ばされた自分自身に壱三葉は舌を巻き、残りの素体の表情も厳しさを増す。だがここでふとある事に気づいた。
「いや待てよ? 味方能力者はまだしも、半グレも守るのは、なんか短気な判断だな……終わったら逮捕しよう」
 しかしその判断に至るには少々遅かったかもしれない。
「ゴミを守ろうとする警察さんも、わたしの未来計画にはいらないかな」
 自分のことを正義だと思っている様子の少女は、正義の体現者である警官が悪の権化である半グレを守ったことに失望したらしく、冷めた目で壱三葉を睨みつけていた。

色城・ナツメ

「あぁー……。頭に血が上ると無謀になるのは覚えがあるな……」
 壁に貼り付いた半グレ|だったもの《・・・・・》を横目に、目の前で1人無惨にやられたにも関わらず少女の挑発に乗ってしまった、分かりやすい半グレの反応にナツメは苦笑する。
 この抗争の真っ只中でタバコを吸っている余裕はないが、ひとまず気持ちを落ち着かせるべく大きく息を吐く。
「これ以上、犠牲者を増やすわけにはいかないな」
 そして霊剣を構えて前に出た。
「……おら半グレ共、頭に血が上ってるままだと死ぬぞ、どけ!」
「あ゛あ゛!? なんだと!?」
 もう強い言葉には高圧的な態度で返すことが習慣となっているのだろう、生命の危機であるにも関わらず半グレは喫緊の脅威である少女からナツメへ敵意を示す。
 その背中越しに殺意に満ちた赤い眼を見た瞬間にナツメは駆け出して、半グレの脇腹を蹴り飛ばした。
 半グレの代わりに攻撃範囲に入ってきたナツメに向けて少女の拳が振り下ろされる。それをナツメは霊剣一本で受け止めた。
「敵対する相手を選べ馬鹿野郎! 武器を使うなら、冷静によく狙え!」
「こんなに腐敗してるとは思ってなかったです! ここのお掃除が終わったら今度は警察署に行かないと!」
 決意を固めた少女は狙いをナツメへ切り替え、一発で潰れないなら連続でと間髪を入れない打撃を加えてくる。
 一発一発が当たるたびに手に鈍い感触が走り、踏ん張っている脚が少しずつ押し込まれて後退する。先程壱三葉のバックアップ素体が何も出来ずに吹っ飛ばされた理由がよく分かった。
「かなり的確に攻撃を当ててくるな……なら、避けるより迎え撃つほうが良さそうか」
 ナツメは対抗策を固めるとすかして隙を作るのではなく、攻撃の合間に隙が生じてないかを見切るために少女の動きを注視し出す。
 どこぞの漫画を連想させるラッシュから霊剣を防御から攻撃に切り替えられる瞬間は中々見出せない。しかし第三者の介入によってそれは不意に訪れた。
「朋友的敌人!」
 聞き慣れない外国語がしたと同時に少女の手甲に何かが当たる。殴り続けながらその物体が飛んできた方向に少女の意識が行っておざなりになったところでナツメは刃をたてた。
『返すぜ…この痛みをよぉ!』
 少女の体から血が迸ると同時に、ナツメは体に蓄積していたダメージやストレスが昇華されていくような錯覚を感じた。

シエル・シュートハート

 取り上げた武器を然るべき組織に引き渡し、次の標的を探して滑空していたシエルの視界にとんでもない勢いで空から地上へ落ちていく物体が入る。それは隕石の類ではなく、ちゃんと人の形をしていた。
「あらら? なんか来ちゃった?」
 なんか嫌な予感がしたシエルは何となく速度を上げて、人が落ちていったと思われる場所に向かう。
 すると何が硬いものに叩きつけられる音と得意げな少女の声が聞こえてきた。
 外付けの階段の踊り場に滑り込むように着地したシエルが眺める先で殴りかかってきた半グレ達を少女は返り討ちにして壁のシミにしていく。さらに遅れて駆けつけた√能力者とも争い出した。
 半グレの命は正直どうでもよいがこの調子だと被害が更に大きくなりそうだと判断し、シエルは止めに入った。
「ヘイ、そこのバニー美少女! 残念だけどこの社会のゴミ達を掃除をするのはこのあたし。大人しく帰って貰うよ!」
 機械天使様の強化外骨格を装着しながらシエルはポーズをする。少女は血が溢れる脇腹を押さえながら首を振った。
「いいえ、わたしはヒーローですから! 出会った相手は必ず倒さないと! それとも! わたしと共闘してこの社会のゴミのみなさんを倒しますか!」
 共同戦線を提案してきた少女にシエルは思わず苦笑いする。なんで「帰れ」と言った相手が一緒に戦おうと思うのか、それとも引かない姿勢を見せ続けたら根負けして折れてくれると思ったのか。
「ダメダメ、社会の荒波に揉まれてない無垢なちびっ子は一旦家に帰って寝ときなさいなー」
 ゆっくり眺めている間に少女を包囲するようにこっそり展開していたレギオンが一斉に姿を現す。
「某艦長も納得の弾幕を喰らいなさい!」
 そして手持ちの携行武器と合わせて、少女に向けて弾幕を一気に展開する。
 四方八方から弾丸を浴びせかけられた少女は歯を食いしばるとシエルに向かって走り出しつつ弾幕からの突破を図る。
 その進路をレギオンが塞ぎにかかるが、ナノスキンスーツによる攻撃によって一撃で粉砕された。だが所詮使い捨てなのでシエルは特に動揺せず、のほほんと空に飛び立ちながら銃撃を続ける。
「大人しくなったらお仕置にそのパイパイ揉みしだいてやるかんねー」
「は、ハレンチです!」
 シエルの冗談に少女は顔を真っ赤にさせると半グレの肉と血がこびりついた壁を蹴って跳び上がると渾身の鉄拳をお見舞いしようと体を捻って溜めて、一気に力を放出する。
 その間に素早く割って入ったレギオンの爆発によって一旦近づいた2人の距離は再び遠ざかった。

四二神・銃真

「おーおー、派手にやってるねぇ」
 遠巻きに殴り合いを見るしか出来ず、かといって同時並行で敵対チームに殴りかかる気も気圧されて起きない半グレ達の間に銃真が入ってくる。
「キミらもその手の物騒な武器を置いて逃げな? こんなところに突っ立ってたら流れ弾を食らってパーン、ってなっちまうぞ?」
「あ゛? こちとら金払って買ったんだ、なんでお前なんかに指図されなきゃ」
 ヘラヘラと笑う銃真に半グレがにじり寄る。しかし殴りかかられた瞬間に足を払って転ばせてそのまま体を固める。
「悪いね。こういう時、ちゃんとしたヒーローなら笑って流してくれるんだろうけど……オレはお行儀が悪いんだ」
「だだだだだだ」
 きつめに絞められた半グレの手から武器が落ちる。銃真はそれをサッカーボールのように蹴り出して、戦っている少女の拳にぶつけてぶっ壊した。
「どれくらい払ったのかは知らねーけどさ、やっていい相手かそうじゃないかの判断はつけるようになろうぜ? それさえ捨てれば見逃してやる、ってちゃんと言わねぇと分からねぇのかその首の上についてる奴は」
 そう言いつつ力を強めれば、半グレの悲鳴が一オクトーブ高くなる。周囲の半グレは銃真を殴りつけて仲間を助けようとしたが、どこから共なく突っ込んできたヴァークルに轢かれていった。
「サンキューマッハ。……にしても、キミ達は敵にしていい相手の判断もつかないのか。ごめんごめん、言えば分かってくれると過大評価し過ぎてたみたいだ」
 ここまで痛みつけられればどれだけ鈍くとも分かったようで、起き上がった半グレ達は悔しそうな表情を浮かべながら武器を落として後退りし、追ってこないことを確認してから背を向けて逃げ出した。
 のしかかっていた半グレの方を見れば完全に伸びてしまっている。銃真は建物の陰にその体を放り投げると、少女の方を見ながら自らの右目の瞼を親指と人差し指で大きくこじ開けた。
『よし…みんな見えてるかな?』
 銃真の右の眼窩に埋め込まれたカメラから読み取られた少女の動きの簡易解析データが一斉にこの場にいる√能力者達に共有される。
「まあそもそもオレは只の私立探偵だから、猫の手位のサポートにしかならないがね……ククク」
 だがそれを有効活用出来るかは知ったことではない、と銃真は口角を上げた。

夜白・千草

「おいおい、そんなに急いでどうしたんだい?」
 脇道から焦った様子で飛び出してきた半グレを夜白・千草(無形の花・h01009)が捕まえる。
「は? お前に関係ないだろ?」
「ああ、確かに関係ないが……そんな物騒な物持ってるのに逃げてるなんて変だと思うなというのが酷じゃないかい?」
 半グレは手に握りしめた武器の存在を思い出すと顔を顰めながら千草に殴りかかる。しかしその一撃を千草は軽い身のこなしで避けるとカウンター気味に半グレの顎を打ち抜き、ノックアウトした。
 気絶した半グレから取り上げた武器を掌の中で回し、半グレが出てきた路地を見つめる。
「やれやれ、また事件か。仕方ねえ。私もお手伝いといきますか!」
 手がかりなく気の向くままに千草は路地を駆けていく。しかしいくら半グレの抗争の現場に使われるほど治安の悪い場所とはいえ、何かがぶつかる衝撃音というものは特徴的である。
 それを頼りにコンクリートジャングルを抜ければ、少女の声が聞こえてきた。
「ばにえるキーック!」
 直後に地面が抉れるような音が響く。曲がり角を抜けると、ナノスキンスーツを着た少女が抉れた地面の端で口を拭っていた。だが手についていた血によって少女の顔は赤黒く汚れていった。
 明らかに自分の血ではなく返り血で汚れている様と対峙している面々の容姿、そして周囲の壁に叩きつけられた|人だった物《・・・・・》を把握した千草は自分が相手取るべき相手を見極めた。
「『来たれ!』姿なき王!」
 大きな腕を持った武者の姿を模った護霊が少女に殴りかかる。少女は反射的に回し蹴りを喰らわしにかかったが、そのつま先は護霊の体をすり抜ける。
 そして護霊は少女の体に溶け込むように消えていった。
「あれ、なんで、動けないっ……!?」
 跳ぼうとした少女はその場に釘付けにされたかのように動けない事実に息を飲む。そして度重なった連戦のガタが来たかのように自分の意識が遠のいていることにも気づいた。
「そんな……でも、わたしは絶対にっ、諦めないんだから……!」
 涙目になりながら自分の正義を訴え続けながら少女が倒れ伏す。そしてその体は風の前の塵のように消えていった。

第3章 ボス戦 『ジョロウグモプラグマ』


「あらあら。せっかくの有望株が来たかと思ったら消えちゃったわね」
 空からクスクスと細やかな笑い声がした後にそんな言葉が綴られる。
 声がした方を見上げれば、人と蜘蛛がごちゃ混ぜになったような姿をした怪人が自らが張った糸に吊り下がってこちらを見ていた。
「ドローンがあちこちに回っていたせいで捕まえられなかったのは残念だけど……あの頭の弱い男どもに貢いでも意味がないことが分かっただけでも収穫だわ。それじゃあ、また会いましょう?」
 そう言って怪人は√能力者にちょっかいをかけようともせず、逃げることを選択した。
シエル・シュートハート
色城・ナツメ

「逃がさないよ!」
 一方的に言うだけ言って、あとは悠々自適におさらばなんて許さないとシエルは速度と高度を一気に上げる。そしてその後ろ姿を追ってナツメも少女に立ち向かった半グレへ礼の言葉をかけようとする間もなく駆け出した。
「こんだけ騒ぎを起こした張本人……逃がすかよ!!」
 しかし人の足と怪人の技と機械の出力を比べれば人の足が劣るのは当然。ナツメと2人の距離はどんどん離されていく。
 そこでナツメは暇そうに揺蕩っていた|それ《・・》へ視線を送り、手を伸ばした。
『力を借りる、頼んだぞ…。』
「待てー!!」
 その頃、全力でシエルは肺活量が許す限りの大声を上げながら怪人の後を追っていた。
 振り返った怪人は不敵な笑みを浮かべると自身の6本脚や腕や牙の絶え間ない連続動作を繰り返して糸を作り出し、シエルの行く手を遮りつつ自分が次に飛び移るための建物への導線を引いた。
 もし強引に接近でもすれば偵察用に展開していたドローンのように糸に絡め取られて墜落してしまうことだろう。
「近接攻撃が危険なら弾幕射撃で追い詰めるまで!」
 故にシエルは無理に出力を上げず、大量のヘビー・ブラスター・キャノンを大量に展開した。
 どれだけ数があろうと精度に不安のある一発を怪人に当てて撃ち落とすなんて贅沢は望まない。今はただとにかく怪人の姿を見失わないように糸を焼き切って進路を確保していく。
 そうして生まれた隙間を潜り抜けようとしたブラスターが一瞬だけ高度を少し落とした。
 それはブラスターを超える大きさの物———ナツメが踏んづけたからだった。
 次々に跳び移り先頭を行くブラスターまでも足蹴にしたナツメは今度は建物から僅かに出ている出っ張りを足がかりにしてまるで風のように……まるで夜の高速道路を駆けるバイクのように、鋭く、速く、怪人との距離を詰めていく。その体からは常に風が吹き出してナツメの髪や服を煽っていた。
「あら、このくらいじゃ時間稼ぎにならないって? ならこれならどうかしら」
 怪人は糸を張り巡らせる代わりに真っ白なタイツを何十着も形成して投げつける。
 そのうちの1つはひとりでに広がってナツメの体を包み込もうとしたが、その体から噴き出した疾・鎌風によって八つ裂きにされた。
「おっと危ないバレルロール!」
 後方を行くシエルは進行方向を変えることなく、横に1回転する最低限の動きで投じられたタイツ全てを避ける。
「ふう、あんなピッチリ全身タイツなんか着たら恥ずかしくて死ぬ所だった……」
「なんですって!?」
 シエルに自分の美的センスを否定された怪人が憤怒の声を上げる。それとほぼ同時に怪人は足に強い痛みを感じた。
「せっかくだから踊っていったらどうだ?」
 ほんの一瞬でも「逃げる」ことへの意識が薄れたことで動きが鈍った隙に手の届く距離にまで達していたナツメは力任せに地面に向かって怪人の体を投げる。
 落とされた怪人は再浮上を図ろうと糸を上に向かって放つが、その先にいるナツメが抜き払った刀で尽く切り落とされ、勢いそのままに地面へ叩きつけられた。
 内臓から空気が押し出され、呻き声を上げながら起き上がろうとする怪人はすぐ近くに着地したナツメの姿を複眼で視認すると残していたタイツと糸を同時に放つ。
 多少の負傷は覚悟しているが、受けないに越したことはない。ナツメはタイツを切り捨てた刀が粘つく糸を絡み取られると、すぐに手放してスライディングで糸の下を潜り抜けた。
 そして怪人が糸を自ら断ち切る前に霊力を込めた拳と疾・鎌風を叩きつける。
「刀がないのに、なんでっ……!?」
「目に見える物だけが武器だと思うな」
 続け様に振るわれた回し蹴りによって怪人の体は奥の行き止まりに転がされる。
「ブラスターは当てにくいけど、それなら避けきれない場所に誘導するのみ! ファイヤ!」
 そこにこの機をずっと虎視眈々と待ち構えていたシエルによる一斉掃射が炸裂した。

茶来・優志郎

「が、ああああああああ!」
 弾幕射撃の余韻で白煙が立ち込める一角から怪人が雄たけびをあげながら飛び出してくる。
「ウェーイ、プラグマのお偉いさん見ってるぅ?」
 怪人の視線の先には撮影か配信でもしているのか、煽るように笑いながら自分が持っているスマートフォンに語り掛ける茶来・優志郎(人間(√EDEN)のカード・アクセプター・h04369)の姿があった。
 プラグマ、という名前を知っているということは間違いなく自分と敵対している者だと認識した怪人は手元で捕縛用の網を編みながら優志郎へ飛び掛かった。
「これからあんたらがこっちによこした怪人をギッタンギッタンのボコボコにしちゃいまーす! ってことで……変身」
 先んじて投じられた網が、まばゆい光の中から突き出された刃がいくつも重なり合わせたような剣によって絡め取られる。
 変身によって黒のボディに差し色の金色が映えるアーマーに身を包んだ優志郎はまるでわたあめのようになってしまった剣を扱うのを早々に諦めて手離すと、続けてのしかかるように飛び込んできた怪人の突きに合わせて拳を振るって受け流していく。
 苛立った様子の怪人が前脚2本を大きく振り上げたタイミングで優志郎は室外機を囲う金属の網に足をかけてただ跳び上がるよりも高い位置を取る。そして体全体を使った回し蹴りを怪人の頭に叩きつけた。
 咄嗟に大口を開けた怪人は優志郎の脚に噛みつくとそのまま砕いてしまおうと牙を立てつつ、そのまま捕らえてしまうために網を編み出す。しかしレガースの部分から不意に湧き上がった炎に飲まれたことで悲鳴を上げながら吐き出し、後退った。
「ははっ、下手に火遊びしたら火傷しちまうよ怪人さん!」
 人差し指を立ててアドバイスをするかのように忠告する優志郎を、怪人は8つある瞳全てを潤ませながら睨みつけた。

夜白・千草

「おお、ここにいたか」
 先陣を切った者達から遅れること数分、追いついた千草の姿を見た怪人は隠し持っていた戦闘員用の服を投げつける。しかしその衣服が体を包み込んで離さなくなる前に千草が前に突き出した拳の風圧によって飛ばされ、空から降り注いだ弾丸の餌食になった。
「次から次へと……こいつらはこの√で鼻つまみにされている輩だろう、そいつらを私達が有効活用しようとして何が悪い!」
「そうだね……」
 千草は歯噛みしながら叫んだ怪人の問いかけを無視せず、ほんの少し思案してから答える。
「強いて言うなら他の人が助けようとしてたから、かな」
 あまりにふんわりとしている答えに怪人は一瞬言葉を失う。そしてそんな考えだけで邪魔されているという事実に頭を紅潮させた。
「そんなので」
「誰かを助ける理由なんて、それで十分だ。『力を貸せ!』姿なき王よ!」
 その言葉が引き金となり、怪人の体が見えない何かによって組み伏せられる。手も足も押し潰された怪人はその重さに悶えるだけで、身を縛る網も体の自由を利かなくさせる衣服も縫うことが出来なくなった。
 ゆっくりと肩を回しながら歩み寄る千草を睨みつけていると、前触れもなく体が軽くなる。上にのしかかっていた何かがなくなったのだとすぐに気づいた怪人は腹の下で伸びていた手足全てを使って起き上がる。
「覇ぁっ!!」
 しかしその結果晒す格好になった人間の腹部に千草の握り拳がめり込んだ。
 声も出せずに吹っ飛ばされた怪人は奥にあったコンクリートの壁に叩きつけられると力なくずり落ちた末に爆発四散した。

モコ・ブラウン
志藤・遙斗

「しどーくん、中々来ないモグね」
「色城さんがさっき簒奪者と接敵したばかりなんで……こちらに来るまではまだ少しかかるでしょう」
 そう呟いて志藤・遙斗(普通の警察官・h01920)は口から煙草の煙を吐き、道を挟んで反対側に陣取っていたモコ・ブラウン(化けモグラ・h00344)は体を軽く伸ばした。
「ああ、あと1人借りがある相手がいるそうなんで、なるべく捕まえましょう」
「悪い意味の方の借りモグか? それとも逆モグ?」
「良い方ですね。どうも相手さんの注意を引いてくださったそうで。……偶然かもしれませんが」
 もし偶然の産物だったとしても助かったことに対する礼は果たしたい、という彼の意思は尊重してやるべきだろう。だからと言って犯した罪に恩赦をかけるわけではない。それとこれとは話が別なのだ。
「……にしても暇モグ、別のとこ行ってもいいモグか?」
「モコさんが『ここを通りそう』って言ってたんですよ?」
 そう突っ込みつつ、遙斗はモコの心変わりに従う。実際のところ、モコのこうした気まぐれな野生の勘はなんだかんだで当たることが多いのだ。
 そんなことを考えながら後を追っていると、モコが曲がり角から飛び出してきたガラの悪い男達に接触しそうになった。
「あぶねーモグよ、ちゃんと前向いて歩くモグ!」
 プンスカ怒るモコに男達は苛立ちの混ざった視線を向ける。そのうちの1人は先日指名手配をされていた男にそっくりだった。
「すいません、同僚が。ところで、ほんの少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか」
 とりあえず謝りながら遙斗が警察手帳を見せた瞬間、男達の顔色が変わって全力で駆け出した。
 警察手帳を無視するだけでは別に公務執行妨害には当たらない。しかし頭に血が昇っていたモコはこれ幸いと手錠を取り出した。
『こらぁ!逮捕するモグ!』
「まぁ、指名手配犯かもしれませんし……抵抗したならしたでその時は」
 そう呟いた瞬間、地面が揺れ出す。あまりの揺れに男達は体勢を崩し、隠し持っていた銃が転げ落ちた。
「現行犯の銃刀法違反モグー!」
 その姿を目視したモコは嬉々として振り回していた手錠を次々に投じる。すると両の輪は吸い込まれるように男達の手首に収まった。
「ほんの少しの話で済まなくなりましたね。では、署の方に行きましょうか」
 そう通告する遙斗の通信無線がモコの物と同時に鳴り出す。モコが取れば、簒奪者が討ち取られたという報告だった。
「りょーかいモグ。ついでに応援をお願いするモグ。今3人現行犯で足元に転がしてるモグから、車を2、3台くらい……」
 連絡している隙を突いて逃げ出そうとした男の足を払って転ばせた後、その背中を踏みつける。そしてモコは勝ち誇るかのような笑みを浮かべながら携帯灰皿に吸っていた煙草の先端に溜まった灰を入れた。

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挿絵イラスト