⑭知恵か拳を振るうべし
「ううむ、やはり難しいな」
階段状に緑青々と茂る福岡県施設と民間施設が同居した官民複合施設、アクロス福岡。そのビルの頂上にて戦場を見遣りながら、その女傑は呟いた。
「生殺与奪権を貰えるなら何とかしようとは言ったが……あちこちで戦いが起こっているようだ。できれば悪いヤツを倒して|資源《インビジブル》を収奪できればいいのだが……ううむ」
聖骸布が風に靡くと共に、僅かに身動ぎしたコンクリートの地面に細い罅が走る。
EU最高議長『バルバラ・アルペンローゼ』。
女傑は頭を捻りながら、高い所で唸るのであった。
●
「王劍戦争『ゾディアック継承戦』、第二戦線開幕となりました」
淡々とした様子で、路雪・ひもろは告げる。
早くも第一戦線の攻略が完了し、次なる段階へと移行した戦い。然し、次に立ちはだかる簒奪者は強敵ばかり。
そして此度の作戦で相対するのもまた、そんな強敵のうちの一人。
予知にて姿を見せた、√仙術サイバーの女傑である。
「彼女は身に纏う強大なアイテム類――通称|聖遺物《レリック》によって最高級の霊的防護を有しています。当人の並外れた筋力も脅威ですが、この霊的防御を突破できなければダメージは一切与えられないでしょう」
北風と太陽、ではないが。
彼女にしてみれば『羽織った』くらいであるという分厚い聖遺物の装甲を潜り抜ける策を練らなければ、勝利はない。
あるいは、と。
ひもろはもう一つ、敵を打破する|可能性《・・・》を口にする。
「敵はどうやら、自らを『あまり賢くない』と思っている様子。それを逆手に取り、頭脳戦で優位に立つ、或いは何かしらの方便で相手を説き伏せる――方法は様々ですが、とにかく相手に賢いと思わせることで、戦局を優位に進めることが叶うかもしれません」
どちらの手段をとるにせよ、油断はできない。
相手は強敵、然し戦争はまだまだ中盤戦、寧ろここからが本番だ。
「皆様、どうかご無事の帰還を」
言葉少なに、深い礼と共に見送られ、向かう先はEDENたちの中にも馴染み深いものもいるだろう景色。
勇敢にして賢き者が、勝利を手にする。
マスターより
いえし度お世話になっております、いえし度と申します。
皆様にご満足いただくべく、力を尽くさせていただきます。
●お知らせ
今作戦は王劍戦争『ゾディアック継承戦争』、第二戦線⑭の作戦となります。
王劍戦争の詳細に関してはホームにも御座います専用ページもご一読いただけると幸いです。また本作戦のプレイングボーナスもこちらでお伝えします。
⑭アクロス福岡 『バルバラの装備する「聖遺物」の防護を破る / かしこそうに振る舞う』
加えて本作戦は『一章完結』となります。予めご了承ください。
●シナリオについて
√仙術サイバーのEU最高議長『バルバラ・アルペンローゼ』が、ゴールデンウィークにEDENたちが集まることでも知られるアクロス福岡に現れました。
敵はインビジブルの収奪のため乗り込んできましたが、幸いなことに未だこのステップガーデン頂上にいます。ここで彼女を止める必要があるでしょう。
一章・👿『ボス戦』
EU最高議長『バルバラ・アルペンローゼ』との戦闘となります。
彼女は全身を数多の|聖遺物《レリック》で覆い、最高級の霊力防護を宿しているため無策の攻撃では如何なるダメージも通りません。
防御をすり抜ける策を用意するか、或いは『かしこさ』で優位に立つことで彼女をやり込めることもできるかもしれません。
募集はシナリオ公開直後から開始しております。
皆様のご参加をお待ちしております。
41
第1章 ボス戦 『EU最高議長『バルバラ・アルペンローゼ』』
POW
聖遺物『受難の槌』
【聖遺物『受難の槌』】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【聖域】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
【聖遺物『受難の槌』】による近接攻撃で1.5倍のダメージを与える。この攻撃が外れた場合、外れた地点から半径レベルm内は【聖域】となり、自身以外の全員の行動成功率が半減する(これは累積しない)。
SPD
聖遺物『聖ルチアの右眼』
全身の【聖なるオーラ】を【右眼】に集中すると、[右眼]が激しく燃え上がり、視界内の全員の「隙」が見えるようになる。
全身の【聖なるオーラ】を【右眼】に集中すると、[右眼]が激しく燃え上がり、視界内の全員の「隙」が見えるようになる。
WIZ
聖遺物『ヴェロニカの布』
【聖遺物『ヴェロニカの布』】と完全融合し、【輝く筋肉】による攻撃+空間引き寄せ能力を得る。また、シナリオで獲得した🔵と同回数まで、死後即座に蘇生する。
【聖遺物『ヴェロニカの布』】と完全融合し、【輝く筋肉】による攻撃+空間引き寄せ能力を得る。また、シナリオで獲得した🔵と同回数まで、死後即座に蘇生する。
屍累・廻連携・アドリブ◎
初めまして、バルバラさん
折角ですから…少し、私と話しませんか?
すぐに敵意を見せないならば、多少でも対話も出来るはず
√能力を使用、魅力を上げつつ落ち着いて声掛け
最高議長である貴女とこうして垣間見えること、とても光栄に思います
インビジブルが目的かもしれませんが、一人でここに挑むというのはそちらにとって不利になるかと
|聖遺物《レリック》があったとて、破壊されてしまえば負けが見えるはず
こっちが不利になり得る可能性もあるが、一度立て直すという意味で退散するのも手だと提案してみる
貴女とは、これからも話し合えると信じています
どうか、ここは一度退散いただければ幸いです
●
「初めまして、バルバラさん」
思い悩むその背後より、穏やかな声が響いた。
即座に振り返り、『受難の鎚』を構える女傑。しかし剥き出しの敵意を前にしても怯まず、汗すら滲まぬ表情で、二の句を告げた。
「折角ですから…少し、私と話しませんか?」
|屍累《シルイ》・|廻《メグル》 (全てを見通す眼・h06317)は、対話を望んだ。
最初こそ訝しみこそすれ――求めを聞いた|EU最高議長《・・・・・・》たるバルバラ・アルペンローゼは、応えるだろう。
「――いいだろう。聞こうじゃないか」
風が吹く。階段状に緑映えるこのアクロス福岡の頂点は、文字通り|対談《サミット》には相応しい。
互いの間に流れる空気は独特だ。絶えず警戒を抱くバルバラに対して廻は礼を欠かさなかった。
「最高議長である貴女とこうして垣間見えること、とても光栄に思います」
深々と頭を下げ言葉を紡げば、バルバラはよしてくれ、と頭を振るだろう。僅かなその身動ぎですら、建物が揺れ軋む音が僅かに耳に届く。
「私は任命されたてだ。どうしてこうなったのかも正直いまいちピンと来ていない。だから、そうかしこまらなくてもいい」
強いから偉い、という価値観に未だ慣れていないのだろう彼女は謙遜の言葉を口にするだろう。
「ご配慮に感謝いたします」
そう言いながら、廻は告げた。
「失礼ながら――インビジブルが目的かもしれませんが、一人でここに挑むというのはそちらにとって不利になるかと」
それは威圧や挑発ではなく、戦術的な優位性の観点から見た『進言』に近い。
|聖遺物《レリック》があるとはいえ、裏を返せばその|武具《どうぐ》が破壊されてしまえば状況は一点しかねない。そして各地の戦況を見てもられば分かる通り、一度脅威と見ればEDENは死力を尽くし、大群となって襲い来る。単体の戦力だけを見れば、万に一つの勝ち目しかないのは事実。
だがその『万に一つ』を引けるまで、EDENが諦めることはない。
そうなれば、ここは一度立て直すという意味でも、撤退するのが最善だ、と。
「貴女とは、これからも話し合えると信じています」
交流が築かれれば。ともすれば、平和的な解決策もありうるかもしれない。そんな期待をも匂わせて。
彼の真剣な|眼差し《・・・》は人を引き付ける魅力に満ちている。それも、今彼が操る|異能《ちから》によるもの。|Natasha Singh《コエナキモノノネットワーク》。
とはいえ情報から最も成功確率の高い言葉選びや何かを考え抜き、結果として選んだ手段は、むしろ小手先の技量をかなぐり捨てた、本心からの対話だった。
その言葉を、うんうん、と頷きながら――バルバラは聞き届けるだろう。
「やっぱり偉い人になるなら、君のような賢い人だな」
そう言いつつも、彼女は槌を降ろし。
しかし、地面に突き立てた。根を下ろすように。
「私は賢くない。だから、君の言うこともわかるようで、きっとわかっていないだろう。だが確かなことは三つある」
びしり。彼女は三本の指を立てた。
「一つ。私は国の為、私を偉い人にした人々の期待を裏切れない。だから、何も得ず逃げることはできない」
「二つ。君の言葉を嘘だとは思わない、もし嘘でも見抜けないしな。だから君の言葉を信じることにする」
「三つ。私は賢くないから、EDEN……だったかな? とにかく君たちの全員がいい人か悪者かわからない。直接相対して確かめたい」
……つまり。
「できれば私も、悪者だけを倒してインビジブルを集めたいけれど、まずは戦ってみることにするよ。頼れるか、そうでないかを確かめるためにも。ダメなら君の言うとおりに逃げる。それが一番、『賢い』やりかただろうからね」
交渉は、然し十全に呑ませるばかりで終わらなった。
だが廻の交渉を経たことで、この戦いが死と破壊、殺戮に満ちた地獄と化すことはないだろう。言葉を交わしたことで――別の解法も俄かに顔を見せ始めた。
この一歩は、単なる戦況の優位だけに留まらないものになるだろう。
🔵🔵🔵
大成功
シンシア・ウォーカー【丑嬢】
時雨さん、とりあえず飲みましょう。アルコールによる血行改善で脳の活性化が見込まれますあと消毒も。この迸る知性なくして強大な敵に立ち向かえないでしょう。乾杯!
ッハー!議長もどうです?年齢的に飲んで大丈夫な人です?
あ、私もUVカットなカーディガン脱ぎます。ええ、礼節というやつですよこれが。議長元々が厚着だし数枚は脱いだほうがいいのではないですか?なにより日本の夏は蒸し暑く。ここで防護を脱ぐことこそ聡さではないでしょうか。
グラップルからのカマしましょうルートブレイカー!
やっぱり最後は拳ですね!知性とパワーの前には敵わないということです!
一仕事終わったらまた乾杯しましょう。いぇーいハシゴ酒!
野分・時雨【丑嬢】
乾杯!
嬢の天才的発想により、まずは脳内をアルコール消毒します。キマってきました。九州の焼酎はやはり強いですね。アルコール度数の強さに比例してぼくらも強くなる──わかりますか?議長。これが頭脳戦ってわけ。
そして相手に挨拶する際は……敬意を込めて上着を脱いで名乗るとされているんですよ。礼を失することのないようにね。ぼくは脱ぎますよ!普通に羽織りをね!
あなたはどうしますか!!乾杯しますか!?それとも賢く郷に従い脱ぎますか!?
なんかセクハラかも。ごめんなさい。
高速移動で近寄り、小柄を活かして足払いで体勢崩し狙い。そのまま腕をグラップルで掴み、怪力で背負い投げ!
アルコール足りない!2軒目行こ!
●
さて。
こうしてバルバラ・アルペンローゼは戦いの中で果たしてEDENとはどのようなものかを確かめるべく、戦いを以て試すことにした。
彼らが果たしてそれほどまでのものなのか。そして、その善悪を秤るために。
「乾杯しましょう、議長もどうです? 年齢的に飲んで大丈夫な人です?」
「こちら九州の焼酎というお酒です。キマりますよ」
そんな覚悟を以てして待ち構えたバルバラの目の前で。二人掛かりの「まあまあ」の言葉と共に一旦座らされた後、さも当然とばかりに始まった酒宴。
「「乾杯!」」
二人そろった声と共に、軽く打ち合うなみなみ中身の入った器の重い音。
気品のある優雅な立ち振る舞いとは裏腹に、用意したのは焼酎を冷凍しキンキンのパーシャルショット。それをぐい飲みに注ぐと一息に煽り、「ッカー!」と声を漏らす。
シンシア・ウォーカー(放浪淑女・h01919)。|日本の酒豪《ジャパニーズ・ノンベエ》として完成されきっていた。
そしてその隣で同じく度数の高い焼酎を煽り、|野分《のわけ》・|時雨《しぐれ》(初嵐・h00536)の目はギンギンにかっぴらかれた。邪気払いには日本酒を用いるとされる。ならそれより度数が高い酒ならより清められるというのは考えるまでもない自明の理。
彼は大真面目であった。残念なことに。
さて巻き込まれたバルバラ。差し出されたぐい飲みを流れで受け取った。ブ厚い鎧越しに、壊さぬようちょこんと摘まむ彼女の手に収まると、ぐい飲みもお猪口に錯覚するだろう。
取り敢えず飲んでみる。
「うん、確かに美味しい。美味しいが」
これは果たして何なのか。自分の想像する『賢さ』とは真逆に位置するこの現状に、ただただ困惑しっぱなし。
そんな彼女に、シンシアと時雨は力説するだろう。
きっかけはシンシアの言葉だった。アルコールによる血行改善で脳の活性化が見込まれる、更に体内を消毒もできる、と。
そこに載霊禍祓士たる時雨がいればさらに邪気払いも兼任。こうなると最早内と外とで死角なし、飲まない理由が逆にない。
まさしく酒は百薬の長、これを飲めば正しく効果覿面思考は明瞭千里万里をも見通すが如き迸る知性を得られること間違いなし。
「――わかりますか? 議長。これが頭脳戦ってわけ」
びしり。時雨の決め台詞と据わった目。何より純粋な輝きで、演説は幕を閉じる。
さも整合性があるかの如き二人の理屈で、バルバラ・アルペンローゼは――。
(絶対にそんなわけない。流石に私でもわかる!)
残念ながら騙されなかった。
とはいえなんだかんだとEU最高議長を命じられて受け入れる彼女。断れないタイプだし面倒見も良かった。口にした感じ|葡萄酒《ワイン》なぞよりはるかに辛い酒を、冷たさと凍らせたことでとろりとした口当たりと喉を通る心地よさに身を預け次々吸い込んでいく酔っ払いに強く当たることなどできようはずもない。
そうこうしていると、徐に野分は羽織を脱ぐと、横に避けた。どうしたものかと思えば、彼は言うだろう。
「相手に挨拶する際は……敬意を込めて上着を脱いで名乗るとされているんですよ。礼を失することのないようにね」
「おやおや、これはしたり」
淑女たるシンシアもそれに倣い、薄手のカーディガンを脱ぐだろう。
さて、そうなると残るは誰かと言われれば。
「あなたはどうしますか!! もっと乾杯しますか!? それとも賢く郷に従い脱ぎますか!?」
「議長元々が厚着だし数枚は脱いだほうがいいのではないですか? なにより日本の夏は蒸し暑く。ここで防護を脱ぐことこそ聡さではないでしょうか」
「う、ううむ……」
もう完全に酔っ払いに絡まれる苦労人のポジションである。
とはいえ若干正気になって脱げと強要しているのはセクハラなのでは、などと自省した時雨は謝罪を挟みつつも、肩部に背負った装甲くらいはせめて……と譲歩してくるあたりがなんとも小賢しい。
彼らの作戦は明白。|聖遺物《レリック》を装備解除させることで霊力の防御を弱め、攻撃を通すこと。
酒に酔った頭で考えた孔明も舌を巻く深謀。
深いのは酔いだけだろう、と言いたいところだが。
「仕方がない。そういうことなら従おう」
策は成った。
不承不承といった様子ではあるが、肩に背負ったゴテゴテとした装甲にも似た遺物の一つを床に降ろしたバルバラ。その重みで屋上が軋んだような気がしたが……その瞬間を逃さないのがシンシアであった。
「今だ隙あり、ルートブレイカー!」
淑女の右ストレートがバルバラの腹部に炸裂した。あらゆる√能力を無効化する、奇跡を拒絶する力。可憐な細腕からは想像もつかない一撃が確かにその身体を捉えた。
「うおお!」
時雨も続く。小柄な体格を生かしシンシアが正面に立った瞬間大きな鎧姿で死角の多いバルバラの側面に滑り込み、足を払い背負い投げを図る。
パンチは命中した。それに、ルートブレイカーは発動し、その後続く時雨の投げ技も見事なまでに決まった。
着こんだ鎧は一部が外れたとはいえ未だ大きく重く見える。それが一度宙に浮き、屋上に叩きつけれられればすさまじい破壊音と共に天井に身体が半分埋まってしまうことだろう。
岩盤浴ならぬ天井浴。日本の夏の日差しを一身に浴びることになるだろう。
やり切った顔で、二人はハイタッチを交わした。
「アルコール足りない! 2軒目行こ!」
「また乾杯しましょう! いぇーいハシゴ酒!」
意気揚々と去っていく二人が去ってから、むくりとバルバラは身体を起こした。
酒を飲ませて、だまし討ちを食らわす。もしかしてEDENって悪いやつなのでは……? という思考が一瞬首を擡げるが。
「……」
それでも、彼女は余り相対した彼らを憎く思わなかった。
酒を交わすことで親交を深める。そういう文化は和洋問わず存在する。策を為すための一環とは言え、確かに交わされた飲みにケーション。これも一つの対話であろう。
だまし討ちをしながら、心証を悪化させない。
意図していたかいないのか、この計略の最も巧妙だったのは、ここなのかもしれない。
「……ぬるくなってしまったな」
残った自分に差し出されたぐい飲みの残りで、バルバラはちびりと唇を濡らすのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大成功
色城・ナツメ【師弟】
ここもGWの出張以来か。
アクロス山の高い所から見渡すかと来てみりゃ、敵と…なんでいるだよぉ!!こっち来い!耳貸せ!
あの聖遺物がヤバい性能なのは分かるが…ん?あぁ…それでいけるのか?危なくなったらゼロ抱えて離脱するが、ひとまず乗っかるぞ。
正解かどうかは問題じゃない、それっぽく賢く聞こえるよう適当に言いくるめる。
まずは周辺、特にこの建物内部に人がいないかの確認。
居た場合は応援依頼のち避難対応。
大人数の場合、単独行動者や集団パニックに警戒し対応する。
その場合は敵との交渉や誘導にて戦闘場所自体を変更。
弾丸みたいな掛け合いで頭いてぇ…加減しろゼロ…
結論として、ここで交えるのは愚策ってことだよ。
ゼロ・ロストブルー【師弟】
アドリブ連携アレンジ歓迎
(出張中にちょこちょこ√踏み越え)
写真を取っていたら、ん?また迷い込んだか。はは、ナツメも仕事か?彼女は…おっと(星詠み情報入手)なるほど、あの装備をどうにかするか…言葉で、か。
よしナツメ、ここでの戦い方を考えようか。
前提条件は、一般人に被害を出さないこと。君も一緒にどうだろうか?見た所、あまり気が進んでいないようにも見えるしな。
ナツメ、そして君…前提を満たす為にまずやることはなんだ?
人が居た場合はどうする?
避難の際に気をつけることは?
避難の猶予がない場合は?
矢継ぎ早に質問を2人に浴びせる。
(無茶な質問しまくり)ここで戦うのは互いに利がない事になるな。どうする?
●
一度外した鎧を再び取り付け。バルバラは再び立ち上がると、次なる挑戦者を待つ。対話で挑むのか、あるいは物理的な戦闘を以てして自分と腕を競うのか。
そして相対するEDENとは――果たして敵対し、真に容赦なく叩き潰すべき存在であるのか、どうか、と。
「……おや?」
意気込む彼女の前に。
階段を上り、歩いて現れたのは――見るからに、一般人。カメラを持ち、大きめの荷物を肩に掛け、暑い中でも得に苦し気な様子もなく立ち現われたその人物に、バルバラは目を細めた。
「貴君は、EDENか?」
「――いや」
眼鏡を直しながら、そう返答するのはゼロ・ロストブルー(消え逝く世界の想いを抱え・h00991)。そう、彼は欠落を持たず、√能力という異能を有さない。ただ|√《せかい》の境界を無意識に跨いでしまうという難儀な体質を持ち……その多くが、EDENたちの集う戦場の渦中であるというだけだ。
「ならば立ち去りたまえ」
威厳と圧を以て宣告するバルバラ・アルペンローゼ。その態度には正しくEU最高議長の風格が存在する。とはいえ、ただの簒奪者であれば無能力者、しかも見るにAnkerであるだろう存在を見つけたら嬉々として襲ってくるだろう。その配慮と警告自体が、彼女の性質を表していると言っても良い。
これは何かに巻き込まれたな……という直感を覚えたゼロ。となれば、|できること《・・・・・》をしなくてはならない。そう思い一歩踏み出そうとした足が……肩を掴まれ強引に後ろに引っ張られたことで空を切った。
強い体幹のお陰で倒れることはなかったが、無理やり半回転した身体が自分の肩を掴んだその人物と自然に目が合う格好になるだろう。
「はは、ナツメも仕事か?」
「なっ、ん、で! いるんだよぉ!?」
怒りなのか困惑なのかもうわからない顔色で。|色城《しきじょう》・ナツメ (頼と用の狭間の|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h00816)はゼロ……己のAnkerであり師匠に詰め寄った。
報せを受けEDENとしてやってきたナツメ。GWに出張で実際にこの会場へと足を運んだこともある彼は、少し懐かしさを覚えつつ敵の存在を探るべく見晴らしのいいこの屋上展望台へとやってきた。そこでただならぬ気配を感じ急ぎ階段を駆け上がってみれば、そこには|なぜか《・・・》やたら見覚えのある後姿が、ひどく見覚えのある調子で予知にて脅威であるとされた存在に話しかけに行く姿を目撃。
思い出に浸るムードは一瞬で消し飛び、実に身に覚えのあるストレスがチクチクと胃と堪忍袋を刺激した。
ともかくこうなってしまった以上押しても引いてもゼロは帰らない。経験上悲しいことに悟っているナツメはゼロに詳細を伝えるだろう。
強大な霊力防御。敵の迷い。そして、カギを握るかしこさについて。
一連の情報を受け取ったゼロはしばし考え込んだ後に。ある一つの|作戦《・・》を思いつくだろう。それを話されたナツメは頭を掻き、マジでやるのかという三度ほどの念押しをし、最終的には渋々頷き――実行に移された。
「バルバラ議長、よろしいかな」
「……まだいたのか。一度警告はしたはずだぞ」
冷たく言い放ち、同時に手にした鎚を握る動きを見せる。今度は脅しじゃないぞ、早く逃げろ、そいう意図が見え透いていたが、これをゼロは表情をこわばらせたり、声を震わせたりすることはなかった。
「少し我々に付き合っていただけませんか。戦い方を考えるために」
……その言葉に、バルバラは暫し沈黙した後……ん? と片眉を上げた。
「お前は、一般人ではないのか」
「ただのルポライターです。ですが一応、彼の面倒を見ているもので」
バルバラの目がナツメに向く。一瞬で直感できるだろう、彼の方は√能力を有する者である、と。であるのに、無能力の方が面倒を見ている、つまり立場が上。
(強い者が上に立つといいんじゃないのか? 違うのか?)
武侠主義なる未知の文化の習わしにそって任命された議長という肩書。しかし目の前ではそれと矛盾したことが起こっていることに困惑しながらも、とはいえ『戦い方』ということであれば興味がないではない。
「聞かせてもらうとしようか」
……迷うことなく、彼女はゼロに続いて展望台フロアの片隅、伸びた木が天然の庇を作る木陰で集まるだろう。
奇しくも全員眼鏡をかけた、非常に知性的に見える状況であった。
ゼロは語り出す。戦場をこの場所だと仮定して、ナツメにゼロは問う。
戦いを開始する前、|前提《・・》の話を。
すぐさまナツメが回答する。
まずは周辺、特にこの建物内部に人がいないかの確認。居た場合は応援依頼のち避難対応。大人数の場合、単独行動者や集団パニックに警戒し対応する。その場合は敵との交渉や誘導にて戦闘場所自体を変更。
淡々と、そしてスラスラと。既に頭に入っているかのように告げるさまをみれば、バルバラはぎょっとするだろう。
さらにゼロは畳み掛ける。敵戦力が控えていたらどうする、避難した民間人に敵が紛れ込んでいたとしたら。さらにそこにナツメが返し、さらにそれを踏まえてゼロが問う。矢継ぎ早に繰り返される応酬に、バルバラだけがついていけない。問いは一応二人に向けて投げかけられたものだが、先んじてナツメが回答をかっさらうことも含めて、より追い付けていないと感じられるだろう。
「結論として、ここで拳を交えるのは愚策だ」
「その通りだ、戦うのは互いに利がない」
時々想定の中にかなり無茶なものが混ざっていたり、或いは起こりうるトラブルとして対応の極めて難しいものを紛れ込ませたりとかなり無茶な問いを振りつつも、どうにか全てを答え切り、二人が出した結論は同じもの。
……途中の部分に関してはちょこちょこ途切れて記憶にない部分もあるが、しかし。
「王劍戦争は、インビジブルや物資の回収に丁度いいと、聞いていたんだがな……」
敵をえり好みしない、というだけならばその通りだろう。とはいえ、乗り気でない今、民間人の被害損害が大きくなる場所。しかも物資の略奪を行ったとして守るにしても難しい、と。
(……い、いけたのか? クソ、弾丸みたいな掛け合いで頭いてぇ……)
ナツメは自分の蟀谷をぐりぐりと指圧しながらバルバラを見守る。
ゼロとの問答によって敵にこの場所での戦いは避けた方がいいと思わせる。そのために、警察として覚えた避難の手引きやその場の思い付きで作戦を立てたり考えを話したりしながら、この場所がいかに旨味がないかという話を行う。それによって意欲を削ぐ、というもの。
……効果のほどは、まだわからない。だが外から見ると、気持ち落ち込んでいるような気がする。これで萎えたから即帰宅、というようなことにはならないが、少なくとも一つ心に針を落とすことには成功したと言っていい。
その場で佇むバルバラへ二言三言残し去るゼロと、彼を元の|√《せかい》に送り届けるべくついていかざるを得ないナツメ。勝った、負けた、とはっきりした勝敗のつかない結末にどことなくやきもきもし、一方で馴染みある場所が戦いの余波でボコボコに破壊されたりしなくてよかった、という気持ちもあるだろう。
同時にもう一つ思うことがあるとすれば。
’(戦わず、こういう感じで済ませられるところだけに首突っ込んでくれねえかな……)
儚い願いとわかっていてなお、願わざるを得ないのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大成功
斯波・紫遠アドリブ共闘大歓迎
A19、B19、C20に振り分け
攻撃はジャストガードとオーラ防御で受けます
正直どのジャンルで知恵比べしたらいいか見当もつかないから、ここはもう聖遺物突破へのトライアンドエラーでいこう
アリスさんにはいつも通り援護射撃と攻撃が通っているかの観測をお願い
物理攻撃からどんどん炎の割合を増やしていく
観測の兼ね合いから出来るだけ同じ所に打ち込みたいけど軌道読まれるのも辛いので攻撃箇所は3つをランダムに
くっそ、マジで硬いな
これ耐久値いくつなんだよ
アリスさんとわーわー話しながら打開策を模索する
え?何?頑張ってるって?嫌味かそれ
賢くなくても無い頭振り絞らないと駄目なときがあるんだよ
●
屋上の上に佇むバルバラは、かなり沈んで見えた。
とはいえこの場からまだ動けなかったのは、一度もちゃんと戦えていないという意図であり、同時に何かここで一つ打開策を思いつけないだろうか、という考えもあってのことだった。
とはいえそう簡単に名案が閃くはずもなく。そのたびに、やはり賢さが大切なのだろうなと落ち込み気味になる。
そんな中で。
「あのー、大丈夫です?」
声の主は、新たに参じたEDEN、|斯波《しば》・|紫遠《しおん》(くゆる・h03007)。彼はバルバラの纏う高品質の霊力防御をどう突破するかと頭を捻りながらこの屋上までたどり着いた。
だが……いざ相対せんとしてみれば戦う前からどこか気落ちした彼女の様子に思わず声をかけるだろう。
「フフ、いやなに。この鎧は軽くとも、責任というのは重いのだな。ウェイトリフティングの選手でも、なかなか持ち上がらない」
「……なんだか、大変だね」
社会人の悲哀じみた言葉に紫遠は些か同情的になるが。
とはいえ彼が選択したのは……戦うことだ。知恵比べにしても、どういった種目で競えばいいかさえ明確ではない以上、できることをやるしかないのだから、と。
「そうだな。悩んだときは、身体を動かすのがいい」
紫遠からの戦意を感じ取ると。これまで手持無沙汰に掴んだままだった戦槌を、軽々と構えるバルバラ。受難の槌は輝きを放ち、来る不心得者を確実に粉砕せしめんと輝きを放つだろう。
「少しだけ――いや、結構無茶しなきゃかもな、これは」
自身の持つ力を振り分け、強化する。|触媒変数《リライト》。力そのものの性質がややこしいのに加え、さらにそこからどう活かすかは自分次第。難題に挑むべく、紫遠はより扱いの難しい力を手に取った。
……手始めに行うのは、自身のドローンや砲台の操作を|タブレット《analysis》に搭載されたAI、『Iris』に託しての接近戦。支援砲撃までもが命中せずに中和されるが如く掻き消える姿に頬が引きつりながらも、繰り出した突きは鋭く、磨き抜かれた技巧は並の装甲ならば易々と貫く威力を生み出すだろう。
しかし、|聖遺物《レリック》の防御力は、目を剥くほどのものだった。
突き出した刀の切っ先から伝わる金属とも繊維とも皮ともつかない質感。
「ま、ッず!」
咄嗟に身体を捻り振り下ろされた槌をギリギリのところで受け流し、一旦距離を離す。今の一合だけでも冷や汗が滲む。
――受難の槌が厄介なところは命中しなかった際に生み出される『聖域』の存在。自分の行動の成功確率が半分になり、持ち主であるバルバラの方はなんの影響も受けない。これを発動されれば打開の確立はゼロに限りなく近くなる。
それだけにとどまらず、あれだけの大質量がこのアクロス福岡の屋上を叩きつければ、天井に穴が開くだけならまだいい方、最悪の場合この屋上が地面に到達する羽目になりねない。
それだけは避けるため、相手の攻撃は出来限り当たってから、受け流さなくてははならないというとんでもない高難度。
「――アリスさん、どう?」
『レーザー実弾共に効果なし。|聖遺物《レリック》の保有霊力の千分の一も消費していないものと推測されます』
「ムチャクチャだ……」
その後も、応酬は続いた。
刀での単純な物理攻撃から、徐々に白炎を纏わせた属性攻撃にシフトしつつ、狙う武威はランダムな三点。攻撃を同じ個所に重ねることで装甲の損耗を狙う動き。
また援護射撃の方もレーザーの照射方法を切り換え、一直線のものから細かい粒子の霧状レーザーなども試すが、効果は相変わらず。その間も、敵の強烈な膂力から振り下ろされる槌の殴打を絶妙な加減で受け流し、聖域の発動を阻止し続けた。
「くっそ、マジで硬いな……これ耐久値いくつなんだよ」
ヒットアンドアウェイを徹底し、何度も何度も挑みかかる。その繰り返しの中で珍しく悪態が零れる。それほどまでに、打つ手がない。
そんな紫遠の様子に、バルバラは、僅かに微笑んでいるように見えた。
「……僕の足掻きはお気に召したかい?」
「いや、すまない。そうではない。こう……ウェイトリフティングは自分の限界を他人と競うものなんだが。こうしてもっと直接競い合うのは、なんというか、悪くないと思ってね」
嘲笑にも映ったかと思えば即座に謝罪する。無茶を強いられているのにこういうところでいやに生真面目で毒が抜かれてしまうだろうが、それでも虚勢を張り、啖呵を切る。
「そうかい、ならこっちも賢くなくても無い頭振り絞らないと駄目だな」
その言葉に、バルバラが目を見張った。
――何度目かわからない、肉薄。フェイントを織り交ぜ、撹乱にレーザー、実弾を織り交ぜた援護射撃を伴い、そして刀に炎を帯びる。ここまでは先程と同じ。
今回、違ったのは。迎撃の為、バルバラが振り下ろそうとした槌の先に、自ら、飛び込んだこと。
自殺行為にも見えるそれにも、当然、狙いがあった。
「お返し――だ、ッ!」
「ぐ、ぅっ!?」
苦しめられてきたその一撃を、逆に受け流しの要領で反転させ相手に叩き込む。目には目を、歯には歯を、|聖遺物《レリック》には|聖遺物《レリック》を。これまでの打ち合いの中で同系の力が打ち消されないことを確信した紫遠は、言語化しにくい手応えの霊力防御が最も薄れた瞬間である『攻撃の寸前』を見計らい、相手の武器でそのままカウンターを決めるという作戦。
ない頭を絞る、と言った。しかしこの極めて繊細で一手でもしくじれば自分が粉砕されかねない策を成し遂げる実力と胆力、そして洞察が、間違いなくこの勝利の要因であった。
「見事だ、EDEN」
ただ一言、その賞賛には、敬意と言外の意味が含まれている。
――次に相対したときは、私が勝つ、と。
🔵🔵🔵
大成功
椎宮・紫水2tもある聖遺物を羽織っただけってどんだけ筋肉あるの
力なら絶対負けそう、私
霊的加護もある事だし、やるなら頭脳戦かな?
会話から入ってペースをこっちに引きずり込む
武器を納めつつ真正面から挨拶
はじめましてバルバラ嬢
私は椎宮・紫水。貴女と戦う敵だね
どんな反応をするか
無視されたら即戦闘だが
そうじゃなければ戦う前に言葉をかわそう
「私はこの地を守りたい。貴女は資源を得たい」
「戦いは避けられないけれど、言葉をかわすくらいはあってもいいだろう?」
調子が狂う?すまないね、意外と性格は悪いんだ
霊斬刀の風と雷を抜いて戦闘開始
油断せずに慎重に仕掛ける
受難の槌の攻撃は受ける
私の霊的加護を使ってダメージ軽減しつつね
やはり突破できないか
でもね、私も使えるんだよ神様の力
さぁ、御覧じろ!【擬・神宝顕現】!
この宝石の剣は、貴女の聖遺物の複製だ
さて?その聖遺物の霊的加護は『自身』で攻撃されたらどうなるのか?
実験に付き合ってもらおう!
宝石の剣での攻撃に続いて、今度は【神纏ノ太刀】!
もうひとつ、私の神様の力を思い知ってもらおうか!
●
「はじめましてバルバラ嬢」
戦場に響くその声を聞けば、眼鏡を直し、背筋を伸ばして。バルバラは来訪者に目を向けるだろう。
多くのEDENたちがこの場に赴いてきた。その最後に現れた青年は、洒落たハイカラの衣装を身に纏いながら、物腰穏やかな微笑を浮かべた。
「私は椎宮・紫水――貴女と戦う敵だね」
|椎宮《つちみや》・|紫水《しすい》・(シセキエイ・h12162)。自ら名乗り、自身を敵だと臆すことなく告げる男。これまで相対したEDENの誰とも違う存在。それに対して、彼女はふむ、と息を漏らした。
「知っているだろうが、自己紹介は大切だな。EU最高議長、バルバラ・アルペンローゼだ」
とはいえ礼節は欠かすまいと名乗りを貸すバルバラ。二人の間に流れる空気はなんとも穏やかなものだ。戦乱の渦中であるとは思えぬほどに。
「私はこの地を守りたい。貴女は資源を得たい――やはり、戦いは避けようがないか」
「そうだな、私もそう思う」
「とはいえ、こうして言葉を交わす機会があってよかった」
「私もそう思うよ……ううむ、うまい言い回しができないな。すまない」
気の抜ける応対だ。
簒奪者。|楽園《EDEN》へと踏み入り、その財を奪わんとするもの。地位と恐ろしき力を携え現れた脅威。
そう形容するには目の前の相手は余りにも人らしいもの。それこそ、平時の紫水ならばもう少し親交を深めているところだろうか。
しかし彼が言った通り。最早その時間は残されていないことも、互いにそれ以上の言葉を交わさずとも理解できていただろう。
――だからこそ、バルバラは自ら槌を構えた。
「さあ来たまえ、EDENよ。私を退けられるならば、やってみせるがいい」
紫水はその求めに応えるように、腰に佩いた二振りの刀を抜き放つ。纏うは風と雷の名を冠しながら、何か特別な気を帯びることもなく、ただ刀としての本分を果たすために研がれた刃を手に、彼は慎重に距離を測る。
間合いに、一歩入った瞬間だった。|聖遺物《レリック》として格とそれに見合う霊力を持つ大槌が、振るわれる。武技として研鑽された一撃では全くない。が、圧倒的な膂力がその一撃を必殺のものへと昇華させていた。
紫水は真っ向から、それを受ける。刀とは本来武器同士で防御を行うことを想定した作りをしていない。だが重厚な霊力の加護を攻撃にも転換する敵の攻撃に合わせるように、同質の霊力を薄く帯びることによって影響を抑えつつ、刀そのものを折らぬように受ける衝撃を大きく逃がすようにして身体を跳ね飛ばす。
……吹き飛ぶ刹那、その小手を狙い刃を振るうが、研ぎ澄まされた一撃であったはずが、まるで布に包まれたかのように柔らかく受け止められ、精緻な装飾にすら欠片の傷も入ることはできない。防がれた弾かれた、というよりもより厄介なその手応え。
(やはり、突破できないか)
防御の策は講じたとはいえ無傷とは言い難く。口の中にじわと広がる鉄臭さを吐き捨てず飲み下して。彼は――うっすらと、察していた。
彼女が、バルバラが、今何をしようとしているのかを。
「すまないね」
短く、小声で。悟られぬように吐いた言葉は、然しバルバラの耳に届いた。フィジカルエリート、耳もいいらしい。或いは単なる地獄耳か。
「どうしたEDEN、もう弱気か。鍛え方が足りないぞ」
分かりやすく、言い慣れていなさそうな挑発の台詞は意図せぬ形で紫水に刺さる台詞ではあったのだが、表情には出さぬように苦笑い交じりで受け止めつつ。
「いやー、なんというか。私、意外と性格は悪いんだ」
対するこちらも、自信を胸に。一方でどこか|悪そうな《・・・・》笑みを浮かべ。その手の中に握り込むのは、一握の宝石であった。
「土祀りて、神と成し、神宿りて、力を示す! 以て、神宝顕現せよ!」
念じる言葉と共に彼の手の中にあった無垢な紫水晶の宝珠の内に奔る|罅《クラック》。同時にその罅を境にして宝珠は一本の小剣へと変じた。芸術品として、実に見事な出来栄えであるが――しかし、これは彼の言葉の通り神の宝。
神の遺物に遺りし残響と、そこに宿る神秘をも内包した、文字通りの『|擬・神宝顕現《カミサマノマネゴト》』。此度宿らせし神秘は――まさしくバルバラの手にした受難の槌と全く同質。
既に証明された、聖遺物の霊力防御に聖遺物の攻撃を当てることで突破する、という無敵の盾を貫く無双の矛。女傑の眉間に、皴が寄せられる。
「だがこれでは終わらない! |私の《・・》神様の力を思い知ってもらおうか!」
宝石の剣だけではない。彼の手にしたもう二振りの刃にも、また異なる神威が宿る。氏神たる、ツチミヤヒメノカミ。自らの姓と固く結びつくほどの結びつき。さらに彼個人としての縁故と授けられた祝福。彼自身がもつ力を霊をも斬る刀へと伝わすことで、これを|神纏ノ太刀《カミマトイノタチ》と為す。
二乗の霊力。異なる神通力をぶつけるための三刀流。
一撃目で、防御を崩し霊力の鎧に穴を空け、そこにすかさず己が神の力を徹す。
これまでの仲間たちが掴んだ勝利への道筋を受け継ぎ、さらに一歩進めた攻略。
「――ふ、」
目の前に立つ、彼の姿に。
どこか満足げに笑みをこぼすと。女傑は、構えた。
「行くぞ! このEU最高議長たる私を倒して見せろ!」
啖呵に対して、全身全霊で応えるかのように。紫水は、気勢十全の叫びを以て、女傑へと駆け出す。
「はぁ、ァッ!」
紫色の霊力の奔流と、白い閃光とが交錯し、空を貫く柱となった。
音は呑まれ、交錯は一瞬。しかし確かに――勝敗は、決した。
硬質なものが割れる乾いた音と共に地面に転がる紫水晶の剣の残骸。それを踏みしめるバルバラの足元に……透明な別の破片が遅れて散るだろう。それは歪んだ景色を写す、割れた眼鏡の、片方のレンズ。
膝をついたのは、女傑であった。
「……とどめを、刺さないのか」
息を吐きながらも。刀を未だ手にした敵対者、EDENへ。簒奪者たる女傑はぶっきらぼう、を意識した声色で問うだろう。しかしそれに対して、彼は羽織を肩に掛けながら、帽子のつばを僅かに持ち上げながら微笑みを浮かべた。
「言っただろう? 私は少し性格が悪いのさ」
椎宮紫水の趣味は、芝居の観劇。
時折彼自身の口振りにもその要素が少々滲むことがあるほどの熱の入れ具合。それゆえに――察していた。彼女が、自ら|悪役《・・》を演じようとしていることは。
これまでらしくなく、好戦的に振る舞い、不慣れに挑発の言葉を投げていた。一方で受難の槌が持つ聖域を生まず、相手に当たる様に攻撃を繰り出し、その全てが施設を破壊しないように気を遣われていた。
見極めるため、相対し。
戦うべきは今ではないと、説かれ。
競うが如き応酬を通じ、認め。
何より酒すら酌み交わして、絆された。
そんな相手と戦って収奪したいとは、思えなかったのだろう。
だからこそここで自分が悪党として倒される事こそ『賢い』と、彼女はそう思ったのだと見透かしたからこそ――紫水は、とどめを刺さなかった。心意気を知ったうえで美しくも見える退場を許さなかったそれこそ、彼の言うところの性格の悪さ、ということなのだろう。
天を仰ぐ。
そしてEU最高議長『バルバラ・アルペンローゼ』は宣言した。
「参ったな……私でもわかる。これは、私の負けだ」
●
アクロス福岡より、バルバラ・アルペンローゼは撤退した。
これは王劍戦争において、また一歩EDENたちの勝利に近付いたということである。
その一方で、かの女傑とはこの先また別の場所で、再び戦うことになることは間違いない。確かに一度、言葉を交わし、拳を交え、知恵を……理性を以て語らったとしても。それぞれの立場故に、避けられない。
しかしこの一歩は確かに、明日へ繋がる明るい一歩であると、信じることができるはずだ。
君たちにとっても、或いは、かの女傑にとってすらも。
賢くないといった彼女は、此度深く学ぶはずだ。
――望む未来を掴むのならば、知恵と拳を振るべし。と。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
大成功
