⑰一石三鳥の共闘
●
人の行き交う西鉄福岡駅で、『サイコブレイド』と、白衣を羽織り眼鏡をかけた謎の男が向き合っていた。
剣を手にするサイコブレイドの前で、謎の男は柔らかな口調で話し続けている。
「猫はいいと思わないかい。自由気ままで、愛らしい」
「それは否定しない。可愛らしいと思うこともある」
「犬も可愛いと思わないか。忠実な子もやんちゃな子も、色々可愛い」
「そうかもしれないな。……いや、俺には関係のないことだ」
「魚もいい。熱帯魚から小魚も、大きな深海魚も魅力に溢れる」
「悠々と泳ぐ姿に魅力を感じる者も多いだろう」
「貴方は何が好みだろうか? クラゲや鳥もいいと思う」
「俺は――っ、邪魔をしないでくれないか、ギルベルト・キルシュバウム」
剣を手に動こうとするサイコブレイドに、向かい合った謎の男――ギルベルト・キルシュバウムは、首を横に振る。
「やめない。貴方は誰も殺したくないと思っている。こちらは誰も殺させたくはない。――甘いものは好きだろうか?」
「どうだろうか、あまり考えたことは……だから、邪魔をしないでくれないか」
サイコブレイドは、行動しようとするたび記憶を奪われる違和感に頭を振る。『周囲の人々を惨殺する』、そう決めたはずなのに、気づけばその事実を忘れ、何事もなかったようにギルベルトと会話を続けてしまっていたのだから。
「俺が求めてやまなかった存在を見つけ、『Anker』という名をつけてくれたお前には感謝している。だが、俺は赦されざる悪だ。この街の人間を皆殺しにする存在だ……!」
「やめなさい、このままでは貴方が壊れてしまう――ロボは好きかい?」
●
「『サイコブレイド』、彼にもやむにやまれぬ事情があるようだねぇ。今回は、そんな彼も助けられるんじゃないかな?」
火の入らない煙管を揺らしながら、猫宮・伊月は詠んだ星を語り始める。
サイコブレイドが何者かの命令を受け、西鉄福岡駅に行き交う人々を全て惨殺しようとしている。それをギルベルト・キルシュバウムが、『短期記憶を奪う能力』で妨害しているのだ。駅にいる人々が武器を手にするサイコブレイドを気に留めないのも、彼の能力によるものであった。
「サイコブレイドを止めようとするなら、ギルベルトさんはこっちに味方してくれる。彼はそれなりに強いし、なんなら『味方や敵の短期記憶を奪う能力』をこちらの指示通りに使ってくれる」
うまく共闘できれば有利にことを運べるだろう。彼と協力して、サイコブレイドの虐殺を止めてほしい、と伊月はEDEN達に頼む。
「その手段だけどね、短期記憶を奪われて直前の目的を見失ったサイコブレイドの気持ちをそらし続けるのがいいかもね」
何をしようとしたかという記憶を奪われて生まれる一瞬の間隙、意識の隙間に入り込み、気を逸らせばいい。
熱く語ったり、哲学的な問いを投げかけたり、食事や物で気を引いてもいいかもしれない。一緒に歌ったり踊ったりゲームしたり、と何かをするのもいいだろう。サイコブレイドは、意外と話に乗ってくれそうだ。
「もしくは近づこうとする人の記憶を奪ってもらって、一瞬どうしたんだっけ、と考える意識の隙間を利用して遠ざけてもいいだろう。人間、意外とそういうときに誘導されやすいしね」
直接相対するのはちょっとたいへんそう、と思うなら周囲の人を遠ざけてもいいだろう。人を殺させない、という目的に即した行動だ。気づいて追おうとするサイコブレイドは、ギルベルトに抑えてもらえる。
「うまいこと事を運んで、人も殺させず、サイコブレイドの心も救い、ギルベルトさんに俺らEDENの存在を知ってもらう。一石三鳥、目指してみないかい?」
無事勝利できれば、ギルベルトは「EDENが実在した事」を喜んだ後、雑踏に消えていく。
「惨殺を阻止できたなら、サイコブレイドの追跡データを獲得できそうだ。それと、新しいAnkerの捜索やギルベルトさんの行方を追うこともできるんじゃないかな? ぜひ、手を貸してくれないかい」
もちろん惨殺を防ぐためにも、力を貸してほしいと伊月は頭を下げるのだった。
●
「――だから、花火は科学の傑作と言ってもいいと思う。火薬の美しい側面を活かし、炎色反応を計算して広大な夜空に美しい花を咲かせる」
「確かに粋な存在だろう」
「そうだろう? 職人の経験則もそこには乗る。円だけではなく、流れるような星や噴水のような打ち上げ花火も素晴らしいし、手持ち花火の可愛らしさに手軽さもいい」
現場に赴けば、話し続けるギルベルトと、相槌を打つサイコブレイドを見つける。
彼らに近づき、サイコブレイドの気をそらして虐殺を諦めさせるか、人々の避難を優先するか。
EDEN達は各々動き出すだろう。
マスターより
霧野白衣と眼鏡も良いものです。霧野です、よろしくお願いします。
●シナリオについて
これはゾディアック継承戦争の1章構成の戦争シナリオです。
西鉄福岡駅にて人々の虐殺を目的とする『サイコブレイド』を、『ギルベルト・キルシュバウム』と協力して止めてください。
このシナリオには、以下のプレイングボーナスと制圧効果があります。
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プレイングボーナス:サイコブレイドに誰も殺させない/ギルベルト・キルシュバウムと共闘する。
制圧効果:サイコブレイドの追跡データを獲得し、終戦後「Anker&ギルベルト・キルシュバウム捜索所」を開催します。
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63
第1章 ボス戦 『外星体『サイコブレイド』』
POW
ハンターズ・ロウ
【暗殺】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。
【暗殺】の体勢を取る。移動力と戦闘力を3分の1にする事で、肉眼以外のあらゆる探知を無効にする。嗅覚・聴覚・カメラ・魔術等、あらゆる探知が通用しない。
SPD
サイコストライク
【装備中の「サイコブレイド」】による高命中率の近接攻撃を行う。攻撃後に「片目・片腕・片脚・腹部・背中・皮膚」のうち一部位を破壊すれば、即座に再行動できる。
【装備中の「サイコブレイド」】による高命中率の近接攻撃を行う。攻撃後に「片目・片腕・片脚・腹部・背中・皮膚」のうち一部位を破壊すれば、即座に再行動できる。
WIZ
ギャラクティックバースト
60秒間【サイコブレイドに宇宙エネルギー】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【外宇宙の閃光】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
60秒間【サイコブレイドに宇宙エネルギー】をチャージした直後にのみ、近接範囲の敵に威力18倍の【外宇宙の閃光】を放つ。自身がチャージ中に受けたダメージは全てチャージ後に適用される。
コルヴス・ペネグリーヌ予知を疑うつもりはないが、本当にこの状況とは。
……仕事が片付くならそれで良い。
サイコブレイドに植物の良さを語る。
お前は植物は好きか?
草花は目を楽しませてくれる。
花言葉に想いを託すのも良い。
それに薬効がある植物もある。
この時期なら、ハイビスカスやラベンダーか。
ハイビスカス・ティーの酸味は疲労を吹き飛ばす。夏の水分補給に良いだろう。
ラベンダーの香りにはリラックス効果があり、入眠前に最適だ。今なら収穫間近の品も手に入る。
美しさと実用性。浪漫と合理の両立。
それが植物の魅力だろう。
必要なら√能力を使用(お任せ)。
負傷は覚悟の上だが、仲間に迷惑をかける行為は「非効率的だから」しない。
【アレンジ、連携歓迎】
●
コルヴス・ペネグリーヌ(放蕩鴉・h09224)は、西鉄福岡駅の光景に、いつも通りの冷静な表情で周囲を確認する。
(予知を疑うつもりはないが、本当にこの状況とは)
目前では険しい顔をしたサイコブレイドが動こうとする度に、ギルベルトが話を振る。するとふっと表情が変わったサイコブレイドがそれに付き合う。また険しい表情になったサイコブレイドが動こうとすれば、ギルベルトが再び話しかけ――というやりとりが繰り返されていた。
そして、周囲の誰もむき出しの剣を持つ男の姿に、延々と話をしている二人に奇異の目を向けることもない。なんとも不思議な状況である。
軽く瞬きを一つして戸惑いを振り払い、コルヴスは意識を切り替えた。
(……仕事が片付くならそれで良い)
この依頼の目的――サイコブレイドの惨殺を防ぐべく、最大限の努力を払うだけだ。
ちょうどサイコブレイドが動こうとしたところをギルベルトが抑え、その隙に、コルヴスはサイコブレイドの傍らに立つ。ギルベルトは眼鏡の奥の目を細めて、一歩引いてバックアップに移る。
短期記憶を奪われ、これからどうするかを一旦見失ったサイコブレイドに、コルヴスは冷静に語りかけた。
「お前は植物は好きか?」
「植物? どうだろう、考えたことがなかった」
「そうか。少し植物の良さを伝えさせてもらおう。草花は目を楽しませてくれる」
柔らかな緑に様々な花や葉、手の中に収まるサイズから人より大きくなるものまで。どの植物もそれぞれに良さがある。四季折々の表情を見せ、見る者の目を楽しませてくれるのだ。
語るコルヴスは少し柔らかな表情を見せていた。きっと植物が好きなのだろう、という雰囲気だ。
「それから、花言葉に想いを託すのも良い」
「花の言葉……」
「花の姿や植物の性質、逸話から人が預けた言葉達だ」
ハイビスカスの「常に新しい美」、ひまわりの「情熱」「憧れ」、ミントの「美徳」「効能」など様々な言葉がある。愛の言葉、柔らかな思い、苦しみや悲しみなど負の方向の気持ちも表すことだってできる。花の数や色でも意味が変わるのだ。
「なるほど、人は様々な気持ちを植物に見出すのか」
「薬効がある植物もある。この時期なら、ハイビスカスやラベンダーか」
鮮やかな紅色のハイビスカス・ティー、穏やかな色味のラベンダー・ティー。どちらも夏にも楽しめるハーブティーだ。
「ハイビスカス・ティーの酸味は疲労を吹き飛ばす。夏の水分補給に良いだろう。ラベンダーの香りにはリラックス効果があり、入眠前に最適だ。今なら収穫間近の品も手に入る。苦手でなければ、少しはちみつを入れてもいい」
「成分や、香りすら利用するのか」
「美しさと実用性。浪漫と合理の両立。それが植物の魅力だろう」
淡々と、けれど優しげな声音で語られる植物の素晴らしさに、サイコブレイドは頷き、耳を傾けている。少なくとも今この瞬間、その手が誰かへ向くことはなかった。
🔵🔵🔵 大成功
七豹・斗碧なるほど、一般人に被害を出させないように気をそらし続けることができれば、サングラスのおじさんも誰も傷つけないですむんだね
それならとっておきのものがあるよ!
じゃあはい、サングラスのおじさん。これどうぞ
なにって…尻尾だよ、私の。今日ここに来る前にしっかりブラッシングしたし尻尾用の流さないトリートメントも塗ってきたの
さらさらでもふもふでしょ、自慢の尻尾だよ。やなことがあっても「でも私のしっぽはもふもふだから」って思えば元気出るもん
眼鏡のおじさんも触っていいよ。存分にこの尻尾について語って一緒に気を逸らそう!
犬派の可能性にも備えておかないとね
じゃあロア(いぬのすがた)も手伝って、足元でぐるぐるしてよう
●
「なるほど、一般人に被害を出させないように気をそらし続けることができれば、サングラスのおじさんも誰も傷つけないですむんだね」
七豹・斗碧(白翔テイルアンシア・h00481)は星詠みの話を聞き、きりっとした表情で拳を握る。
「任せて、それならとっておきのものがあるよ!」
準備万端、やる気満々で、人の多く行き交う西鉄福岡駅に向かった斗碧は、サイコブレイドとギルベルトが相対している場所へと向かう。
そして、ちょうど短期記憶を奪われて一瞬戸惑うサイコブレイドへと「とっておき」を差し出した。
「はい、サングラスのおじさん。これどうぞ」
「これは……何だ?」
白地に淡い黒の豹柄、さらさらでもふもふな柔らかい毛並み。おずおずとサイコブレイドがそれを撫でると、優しい温かさが伝わってくるようだ。
斗碧は少しだけ胸を張り、自信たっぷりに「それ」の正体を告げる。
「なにって……尻尾だよ、私の。今日ここに来る前にしっかりブラッシングしたし尻尾用の流さないトリートメントも塗ってきたの。足元の子もしっかりばっちり手入れしてきたから、その子もなでていいよ」
いつも手入れは欠かさない、素敵な尻尾だ。さらに今回はいっそう見た目も手触りも良くなるよう丁寧にブラッシングし、とっておきのトリートメントで艶も手触りも極上になるように仕上げてきた。
ロア(いぬのすがた)も、お手入れ万端の毛並みを靡かせて、二人の足元をくるくる元気に回っている。
「さらさらでもふもふでしょ、自慢の尻尾だよ」
「ああ。表面と奥で毛並みの感触も違うんだな」
「役割が違うからね。奥の方はあったかくするのに向いてるし、表面は空気の層を作ってくれるよ。素敵でしょ」
「機能美にも優れた尻尾なんだな」
「ふふ、冬はとってもふわふわになるし、夏はさらさらな感触が気持ちいいよ」
「ああ、ずっと撫でていたくなる」
どやっと尻尾を自慢する斗碧は、にこっと表情を緩めた。
「でしょ。やなことがあっても『でも私のしっぽはもふもふだから』って思えば元気出るもん」
「そうか……」
斗碧だって辛いこと、悲しいことに向き合うこともある。ぎゅっと胸が潰れそうになることもある。
もちろん支えてくれる人達はたくさんいるけれど、斗碧一人で苦しさに耐えないといけないこともあるのだ。
そんなときに、自慢の尻尾の存在は斗碧を励ましてくれる。こんなにもふもふで、さらさらで、素敵な尻尾が自分にはあるのだ、と。
「眼鏡のおじさんも触っていいよ。存分にこの尻尾について語って、辛いことから一緒に気を逸らそう! 元気になってから辛いことには向かえばいいんだよ! あ、犬の毛並みが好きなら、この子も撫でていいよ! わしゃわしゃしても大丈夫!」
「ああ、そうだな――犬も悪くない」
サイコブレイドはふわふわの尻尾を撫でながら、足元で元気に歩き回るロアにも視線を向ける。剣を握る手は止まり、指先はただ柔らかな毛並みを追っていた。
あたたかな優しさに、少しだけ、サングラスの奥の目を柔らかく緩めるのだった。
🔵🔵🔵 大成功
エアリィ・ウィンディアちるはさん(h01839)と語る。
サイコブレイドさんをおしゃべりに巻き込めばいいんだね。
…ふぇ?
好きな人の好きなところを言い合うの?
えとえと…。
やさしくてー、笑顔が素敵でー、きりっとしててー。
その笑顔で、あたし、ほにゃってして温かい気持ちになるのー。
優しいだけじゃないの。
負傷した時にあたしを抱えてくれて、すっごく頼りになって。
それにおちゃめでかわいくて。
告白?
ええと、まだその恋とかわからないけど、一緒に花開くまで歩こうって言ってくれて。それが嬉しくってっ♪
ちるはさんの好きな人の好きなポイントはー?
あたし気になるー♪
ということは、ちるはさんから告白なの?
わぁ、いいな~。あこがれちゃうなぁ~。
不忍・ちるはエアリィさん(h00277)と語る
確かにお話し中は別の行動に集中できませんからね
つまりは恋バナです
適宜話を振って思い悩ませつつ、話題を遮ろうとするなら
ギルベルトさんに協力を仰いで会話を継続します
『傍に居てほしいひと』
サイコブレイドさんは…次聞きますので考えておいてくださいね
エアリィさんは最近…?告白を…?
私も…優しくて意外とおちゃめさんなところが好き、ですね…
以前から抱くたくさんの愛情はありましたけど
“私が”幸せにしたいと思ったときに特別を自覚したかんじです
あ、いえ、告白はあちらが…てれてれ
恋とか愛って難しいですけど2人の道が大事ですから
エアリィさんのかわいい反応にお相手を思い浮かべて頷きます
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「サイコブレイドさんをおしゃべりに巻き込めばいいんだね」
「確かにお話し中は別の行動に集中できませんからね」
エアリィ・ウィンディア(精霊の娘・h00277)と不忍・ちるは(ちるあうと・h01839)は西鉄福岡駅にて、短期記憶を奪われて生じた間に話しかけられ、行動を阻害されるサイコブレイドへと近づきながら作戦を立てる。
生じた隙を逃さず会話へ巻き込み、彼の目的、周囲の人々の惨殺からそらし続ける。そのための話題は何にしようか。
ちるはは柔らかな笑みで、一本指を立てる。
「なら、好きな人のことを語り合いましょう」
「……ふぇ? 恋バナ?」
「はい。つまりは恋バナです」
きょとんとしたエアリィき、ちるははこくりと頷いてみせた。
「好きな人の好きなところを言い合うの?」
「ええ。サイコブレイドさんが遮ろうとしたら、ギルベルトさんに協力してもらいましょう」
そして、二人はサイコブレイドの背後から近づいて、ギルベルトにアイコンタクトを取る。ギルベルトはメガネの奥の目を細め、自然な頷きを返してみせた。
「俺は、任務に――」
「やめなさい」
その瞬間に、ギルベルトが手を振ってみせた。一瞬動きを止めたサイコブレイドに、ちるはが話しかける。
「ところで『傍に居てほしいひと』はいらっしゃいますか? サイコブレイドさんは……次聞きますので考えておいてくださいね」
「え、あ……傍に……?」
「エアリィさんは最近……? 告白を……?」
「えとえと……」
自然にサイコブレイドの隣に並んだエアリィとちるはは、早速恋バナを始めた。
少しだけ頬を染め、エアリィは好ましい存在のことを語り始める。
「ええと、まだその恋とかわからないけど、一緒に花開くまで歩こうって言ってくれて。それが嬉しくってっ♪ 告白、になるのかなっ」
「なりますよ、ですよねサイコブレイドさん」
「あ、ああ。好ましいという意味に取れる、と俺は思う」
「そっかなー♪」
ふにゃっと幸せそうな笑みを浮かべるエアリィに、ちるはは少し前のめりになってみせた。サイコブレイドはサングラスの奥の目をぱちくりさせている。
「ちなみに、どんな方なんですか?」
「やさしくてー、笑顔が素敵でー、きりっとしててー。その笑顔で、あたし、ほにゃってして温かい気持ちになるのー」
最初は優しいお兄さん、という印象だった彼の事を思い浮かべ、エアリィの頬はますます穏やかな色に染まっていく。
「でもでも、優しいだけじゃないの」負傷した時にあたしを抱えてくれて、すっごく頼りになって。それにおちゃめでかわいくて」
桜吹雪の中、庇って引き寄せてくれたあの時の頼もしさは、今でも胸に残っている。いつもの少し芝居がかった仕草もおちゃめで好ましかった。
「一緒に大好きを増やしていきたいなーって……」
「恋ですねぇ。恋とか愛って難しいですけど2人の道が大事ですから」
「そうだよね〜♪」
「……そういうものなのか」
ちるははエアリィの可愛らしい反応に、彼女の思い人を思い浮かべながら頷いた。
きゃっきゃっと話を弾ませる二人に、戸惑ったサイコブレイドは助けてほしいと言わんばかりにギルベルトに視線を向けるが、彼は微笑ましそうにエアリィとちるはを見ているだけだ。
ならば、そっと離脱しようとしたサイコブレイドだが、エアリィとちるはは彼を逃さない。
「サイコブレイドさんはどう? 傍にいてほしい人、どんな人?」
「いや、俺は――」
エアリィの言葉を遮ろうとしたサイコブレイドは、再び記憶を奪われた。そこにちるはが改めて話しかける。
「傍にいてほしい人のこと、聞かせてくださいな」
「あ、あ? そうだな、その……傍にいてほしいかはわからないが、求める存在ならいる」
「わぁ、素敵〜♪ 大切な存在って大事だもん! ちるはさんの好きな人の好きなポイントはー?」
「え、私ですか?」
「うんうん、あたし気になるー♪」
先程のエアリィと同じように、ちるはの頬も穏やかな色に染まっていく。ちるはが思い描くのはもちろん一番、ちかいひと。
「ええと、私も……優しくて意外とおちゃめさんなところが好き、ですね……。以前から抱くたくさんの愛情はありましたけど、“私が”幸せにしたいと思ったときに特別を自覚したかんじです」
彼は強く、退かず、進み続けた存在だ。けれどその優しさに、垣間見せるおちゃめなところに、共に過ごす時間を重ねるたびに、ちるはは惹かれていったのだ。
幸せにしたい、という思いを聞いたエアリィは、いっそう目を輝かせてちるはへと問いかけた。
「ということは、ちるはさんから告白なの?」
「あ、いえ、告白はあちらが……」
好きだと、自分のことを「Anker」だと告げてくれた、その時のことを思い起こし、ちるははてれてれと頬を染め上げた。
エアリィも釣られて頬を染める。
「わぁ、いいな~。あこがれちゃうなぁ~。ね、素敵ですよね、サイコブレイドさんもそう思いません?」
「ああ、よい関係なのだろう、と感じている」
「そうでしょうか……。エアリィさんは、お相手さんにしてあげたいこと、ありますか? サイコブレイドさんも、ぜひ」
「えっとね〜……」
乙女の恋心は尽きることなく、恋バナも尽きることなく。戸惑いながらも応じるサイコブレイドを巻き込んで、話がどんどん続いていく。少なくとも今この場で、その剣が振るわれることはなかった。
ギルベルトは時折アシストしながら、その光景を穏やかに見守っていた。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
水上・雪華自らを許されざる悪と名乗るのですか
立場は真逆ですが……在り方としては似ているように思います
言い聞かせているところも含めて、同類相憐れむというところでしょうか
白衣の人、Ankerの名付け親
少しばかりですがお手伝いをさせてください
彼と語らう猶予を作っていただきたいのです
悪と名乗る人、旅の終わりを求める方
貴方が見てきた、歩んできた世界は美しいでしょうか?
美しいと思えることは素晴らしいことです
心に残る景色はありましたか?
いつまでも心に残り続ける景色を教えていただけませんか?
私にはあります、水底から見上げた朝焼け
私が私として役割を受け入れた日、防人として己を定義した朝のことです
少しでもお話できてよかった
●
(自らを許されざる悪と名乗るのですか)
心を壊しながらも人を殺すと告げたサイコブレイドは、水上・雪華とは正反対の道を歩んでいる。
彼女は世界を護る存在である。たとえ己の身を損なおうとも、世界を壊す簒奪者に向かっていく存在だ。
(けれど……在り方としては似ているように思います。己に言い聞かせているところも含めて、同類相憐れむというところでしょうか)
自分ならばできる、行わなくてはならないのだと言い聞かせ、心が壊れていく苦痛を見ないようにするサイコブレイドは、確かに雪華に似ているのかもしれない。
雪華の体の痛みは欠落している。脆い体が痛みを感じることはない。けれど心は――と、そこまで考えたところで、雪華はゆっくりと首を横に振った。。
今は、サイコブレイドを止めなくては。
ギルベルトが記憶を奪い、サイコブレイドの注意が逸れたタイミングで、雪華は声をかける。
「白衣の人、Ankerの名付け親。少しばかりですがお手伝いをさせてください」
「うん?」
「彼を止めたく思います。なので彼と語らう猶予を作っていただきたいのです」
「いいとも」
ギルベルトは雪華の呼びかけに応じ、一歩後ろに下がる。
雪華は戸惑いから立ち直ろうとするサイコブレイドへと声をかけた。
「悪と名乗る人、旅の終わりを求める方。貴方が見てきた、歩んできた世界は美しいでしょうか?」
「……ああ。美しいものも、あったと思う。それを壊すこともあるが」
「美しいと思えることは素晴らしいことです」
そっと、雪華は問いかけを続ける。握った剣を振るおうとするサイコブレイドの動きは、ギルベルトが押さえてくれた。
あとは、彼の心が壊れないように、話を続けるだけだ。
「心に残る景色はありましたか? いつまでも心に残り続ける景色を教えていただけませんか?」
「……どうだろう。すぐには思い出せない」
「なら、話を聞きながらでも構いませんので、ゆっくり思い出してみてくださいな」
悩む素振りのサイコブレイドに、雪華は金の瞳を少し細め、自らの心に焼き付いた光景を思い出す。
「私は、水底から見上げた朝焼けがずっと残り続けています」
あの日、ひんやりとした水の気配を通し、美しく染まった空の色を雪華は見上げていた。
「私が私として役割を受け入れた日、防人として己を定義した朝のことです」
あの日から、雪華はこの世界を護るために戦っている。
「心に残る景色があるというのは、いいことだと思う」
「ありがとうございます」
「俺には――どうだろうか、いや、言っても仕方がないな」
沈黙には、今までも壊してきた、という言葉が隠れていたのかもしれない。それを雪華は指摘しない。
「少しでもお話できてよかった」
「そうか」
今、この時だけは、サイコブレイドの剣が人々に向かうことはなかった。
🔵🔵🔵 大成功
タミアス・シビリカス・リネアトゥス・フワフワシッポ・モチモチホッペ・リースケ連携アドリブおまかせ
騎士長官に搭乗して群衆との間に入り視線を一般人に向けさせない。
事前に駅周辺の小動物へ話しかけ監視の協力を依頼。
ギルベルト殿にはサイコブレイドが虐殺を思い出す度に記憶を奪うよう頼む。
記憶を奪われる度に色々な|堅果《ナッツ》の良さを語ろう。歯触り、味、保存性や栄養価。
離脱しようとするなら引き留める
待たれよ。|Festina lente.《急がばまわれ》である。
カシューナッツがどう実るかも知らずに立ち去るなど、あまりに性急ではないか?
迷いが出たなら説得する。
殺したくない心こそ貴殿自身の心であろう。
赦されぬと思うならなおさら新たな罪を重ねてはならぬ。命令に貴殿の未来まで奪わせるな。
●
タミアス・シビリカス・リネアトゥス・フワフワシッポ・モチモチホッペ・リースケ(|大堅果騎士《グランドナッツナイト》・h06466)は、駅周辺の小動物に話を通し、人々を自然に駅から遠ざけるよう誘導と監視を頼む。
それから朗々とサイコブレイドへと声をかけた。
「待たれよ。|Festina lente.《急がばまわれ》である」
「あ、ああ?」
「カシューナッツがどう実るかも知らずに立ち去るなど、あまりに性急ではないか?」
「カシューナッツ?」
サイコブレイドはちょうど短期記憶を奪われたタイミングだった。そこに視界に入った|巨大な黄金甲冑《騎士長官》に面食らい、中に搭乗したリースケの言葉を復唱している。
「うむ。カシューナッツはAnacardium occidentale、カシューアップルと呼ばれる果実の先端にできるカシューシードの中にある。他の種とは違い、果実の外にでているのだ。食べる際には炒って無毒化することをおすすめする」
「そ、そうか」
「食感は割と柔らかく、味もソフトな甘みを感じられる。脂肪分にタンパク質、炭水化物やミネラルも多い」
「ああ、栄養豊富だな……いや、それどころでは」
「ギルベルト殿」
「うん」
リースケから視線を外し、剣を握る手に力を入れたサイコブレイドを前に、リースケはギルベルトへと声をかける。
声掛けに応じたギルベルトは、サイコブレイドの短期記憶を奪ってみせた。
「ふむ、ではクルミについてはいかがであろうか。食用のナッツとしてのクルミはJuglans、ユピテルの硬果と呼ばれる木の果実の仁を指す。古代の神の名を由来とする名の通り、古くから食用に用いられてきた」
「なるほど……」
「保存性に優れ、人々の生活に身近なため、そのまま味わうばかりでなく、種を割る道具が芸術作品に登場するほどだ」
「ほう、興味深い……いや、俺は」
「ギルベルト殿、お頼み申し上げる」
「はいはい」
サイコブレイドが剣を強く握るたび、リースケはギルベルトに短期記憶を奪ってもらう。生まれた隙に、ナッツの良さを語っては気を逸らす。
そうやって繰り返し語っていれば、いつしかサイコブレイドは、剣を握る手から力を抜いていた。
「ナッツが好きなのはよくわかった」
「うむ。同じくらい人々も愛しているとも」
惨殺を止めるため、リースケはここに来たのだから。その言葉に苦い笑みを浮かべたサイコブレイドに、リースケは言葉を重ねる。
「殺したくない心こそ貴殿自身の心であろう。今とて、我が言葉など振り切り殺戮へと向かうこともできたはずだ」
それをためらったのはサイコブレイド自身だ、と。
「赦されぬと思うならなおさら新たな罪を重ねてはならぬ。命令に貴殿の未来まで奪わせるな」
「……それができたなら」
どんなにいいか、と小さな声がサイコブレイドからこぼれ落ちる。
けれど、その手は力なく下に降ろされたままで、今は人々へ剣を向けることはなかった。
🔵🔵🔵 大成功
