酔いどれ狂信者と迷い猫
●三毛猫さんいらっしゃい
「にゃにゃっ」
辺り一面怪異の瘴気が残る公園に、一匹の猫がいた。
ゴキゲンな猫はナニカを咥えて、てってと走り去っていく。
「えっ?」
結界を張った事件現場に本来居る筈のない猫の存在に、汎神解剖機関・職員の表情が固まった。
「何か咥えていったぞ! 捕まえろッ!」
「ええっ?」
全身を白い防護服で包まれた職員達が猫を捕まえようとするも、上手くいかない。人間達に追われた猫は身の危険を感じ、あっという間に姿をくらませてしまった。
「どうする?」
「とにかく上に報告だ」
●証拠品よこんにちは
「誰か、猫探しを手伝ってくれないか?」
煙道・雪次(人間(√汎神解剖機関)の|警視庁異能捜査官《カミガリ》・h01202)――濁った目をした男がぐったりとした様子で√能力者達に話しかけた。
「先日、ある公園で怪異が発生した。既に討伐は完了し汎神解剖機関が死骸を回収したんだが清掃がまだでな。公園は表向きリニューアル工事中として立ち入り禁止になっているが、そこに猫が現れた」
煙道はぐしゃぐしゃになった迷い猫のポスターを√能力者達に見せる。
可愛らしい大きな目をした三毛猫の写真がそこにはあった。
「職員の証言によると、このポスターの迷い猫で間違いないようだ。斉藤さんちのミャー子。三歳のメス猫。あろうことか清掃を始める段階になって、コイツが現場の証拠品のようなものを咥えた姿が職員によって目撃されたんだ」
煙道はそこで言葉を止めると、ゆっくりと√能力者達に頭を下げた。
「証拠品を見落としたのは俺達、|警視庁異能捜査官《カミガリ》の落ち度だ、すまない。この証拠品があれば、公園の怪異を呼び出した者達の所在を突き止めることができるかもしれないんだ」
頭を上げた男は、言葉を続ける。
「公園には結界が張ってあるから、猫が公園内にいるのは確実なんだ。猫は散々職員達に追われて人間に敏感になっていると思うが、そこをどうにか保護して、咥えた証拠品も回収して欲しい」
よろしく頼む。と煙道は√能力者達に再度頭を下げるのだった。
マスターより
中尾初めまして、もしくはお世話になっております、マスターの中尾です。
今回は証拠品を咥えた猫ちゃんの保護と、その証拠品を手掛かりに狂信者の皆さんと選択肢により何かしらするシナリオとなっております。年末の飲み会シーズンのせいか、この狂信者の皆さんはなんだか酒臭いようです。
√エデン初シナリオ、どうぞよろしくお願いします!
38
第1章 冒険 『清掃区画の猫捜し』
POW
渾身の猫の鳴き真似で誘い出す
SPD
猫にも負けない速さで追いかける
WIZ
有毒成分を無効化
√汎神解剖機関 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
猫探しとは、どこかのしがない探偵みたいな依頼ね。
猫ってこう、こっちが触ってほしくない物とかにあえて触るようなところあるから…現場にいた職員もさぞ肝を冷やしたでしょうね。
さて、そろそろヤンチャなお嬢さんを捕まえましょうか。
おいで、氷翼漣璃。先ずは上空からミャー子ちゃんを見つけて。見つけたら私達の方に上手く誘導してほしいの。
ミャー子ちゃんが近くまで来たら氷應降臨で一気に距離を詰めるわよ。その後はこれを上から被せれば大人しくなるはず…(大きな黒い布を広げる)
動物は視界を覆えば大人しくなるから、その性質を利用して捕まえられれば良いのだけど。
「猫捜しって、機関も意外と抜けてるところあるんだ」
道すがら購入した猫用オモチャをふりふりしながら、真人は薄暗い路地を行く。
彼の背中からは『たこすけ』の腕が伸び、オモチャの動きに誘われてゆらゆら。
これではタコじゃらしである。
「こんなところ入っちゃって、猫ちゃん大丈夫なのかな……」
可哀想だけど、保護する時はたこすけの腕で素早く捕まえてもらおう。
力加減は……俺に触るので慣れてるはず。
問題は、どう見つけるかだが――鳴き真似したら出てきてくれたりして。
周りに誰もいないことを確認してから、控えめに――
「んなぁ〜ぅ、ま〜、ぅむぁ〜ぅ……」
誰にも聞かれていない。わかってはいるが、真人の顔は真っ赤になっていた。
うおー!ネコチャン探し!
八曲署の先輩も行くみたいだから俺もお手伝いしますよ!
異能捜査官になったばかりでまだまだ現場経験足りない俺だけど
ここで一発頑張って出来る奴ってところを見せたいよね!
なんて脳内で颯爽とネコチャン見つけてヒーロー扱いされている自分を想像なんかしてみたり
って、妄想に浸ってる場合じゃないよね!
ネコチャンどこーー!?いい子だから返事してね~~!
ネコチャンってこういうとこ好きだよね…?ここかな…?
蜘蛛の巣かぶってベンチの下を覗いたり葉っぱかぶって茂みの中をガサガサ
1オクターブ高めの声でニャーニャーネコの鳴き真似
多分誰かに見られたら恥ずかしい
どうしても見つからない時は心霊徴収で聞き込み
猫の捜索、公園内と限定されているとはいえ、かなり大変そう、にゃ。
居そうな場所を虱潰しに探す、にゃ。
人気の無い、雨風を防げそうな場所があれば、優先して調べて見るのにゃ。
…………トイレとかかにゃ?
痕跡を見つけたら、用意しておいた猫缶の出番かにゃ?
美味しそうな匂いに、釣られてくれるかにゃぁ?
心配なのは、シロさんの気配に気付いて隠れちゃう事かにゃ?
取り敢えずは、警戒されない様、敵意を見せず、気配を可能な限り消して行動する、にゃ。
出来たら、同じ旅団の「八手・真人(当代・蛸神の依代・h00758)」と「日南・カナタ(嘘つきアクタープリテンダー・h01454)」の3人で行動出来たら幸いです。
出発前
「迷いネコですか。さすがにすぐには見つからないと思うんですけど、今回は警察の落ち度ですしね。何とかしないとですね。」
「二人とも何か猫の気を引けるようなもの持ってないですか?」
捜索中
SPDで「あまり足には自信ないんですけどね。」
必死に追いかけたり、他の人の方に行くように誘導します。
●子供の居ない公園
ここは『リニューアル工事中』の看板と共に封鎖された公園。
時刻は朝の8時。よく晴れた日と言えども12月、酷く冷えていた。
「一番乗りは私だったみたいね」
矢神・霊菜(氷華・h00124)の吐く息は白い。だが、氷の体を持つ神霊を従えている為か、凛として凍える様子を見せない。
「猫探しとは、どこかのしがない探偵みたい」
猫探しと言えば、ドラマに出てくる探偵定番のお仕事だ。猫を探している内に殺人事件に巻き込まれたりする。
だが、今回の事件は猫が証拠品を口にしているという。事件の犯人であり、被害者とも言えよう。
「猫ってこう、こっちが触ってほしくない物とかにあえて触るようなところあるから……現場にいた職員もさぞ肝を冷やしたでしょうね」
青ざめた職員を想像して、思わず同情してしまう。清掃作業も滞っており、今も胃を痛めているかもしれない。
「さて、そろそろヤンチャなお嬢さんを捕まえましょうかーーおいで、氷翼漣璃」
霊菜は気持ちを切り替えると、二羽の鷹を呼び寄せ自らの腕に止まらせる。
「まずは上空から三毛猫のミャー子ちゃんを見つけて。見つけたら私達の方に上手く誘導してほしいの」
氷の鷹はジッ……と霊菜を見つめ、命令を聞き入れる。
「さぁ、お願いね」
腕を軽く持ち上げてやれば、その勢いで大空へと飛び立つ二羽。
「ミャー子ちゃんはどこにいるかしら」
二羽に続き霊菜自身も公園へと足を踏み入れる。すると、全身を違和感が襲った。
「これは……」
具合が悪くなりそうな程に濃い怪異の残穢に眉を顰める。√ドラゴンファンタジーのダンジョンで、場を汚染するモンスターを倒した時の残り香に似ていた。
√能力者にとって何ともないが、通常の生物には何かしら害があるかもしれない。猫は敏感な生き物だ。上手い具合に汚染範囲避けていてくれればよいのだが。
「証拠品を咥える余裕があるなら、きっとまだ大丈夫」
そんな事を考えながら、霊菜はまず猫の好みそうな場所を捜索した。
垣根の中の枝葉を掻き分け覗き、家の形をした遊具の中や滑り台の影。それに水道や小池などの動物の水飲み場になりそうな場所。だが、猫の姿は見当たらない。
一時間は歩いたろうか? 普段は賑わうであろう公園も結界を張るとここまで静かになるのか。
(「でもよくよく見れば、広々としていて良い公園ね。自然も多く遊具も立派。うちの零もまだ7歳だから、そのうち家族3人で来ようかしら」)
怪異の汚染すらなければ素敵な公園なのに、残念だと誰も居ない砂場を横目に思う。
そんな事を考えていると、霊菜の元へ二羽の鷹が戻ってきた。
「ミャー子ちゃんを見つけたのね!」
氷翼漣璃は風に乗り、くるりとUターンをして霊菜を導く。
二羽を見失わないように公園を走る彼女の行く先に、複数の人影があった。
――話は一時間程前へと遡る。
●八曲署『捜査三課』の三人組
「集合場所、ここであってる、よね……」
買い物袋を片手に八手・真人(当代・蛸神の依代・h00758)は呟く。
公園は閉鎖され、リニューアル工事の作業員に扮した汎神解剖機関の職員が出入り口を見張っていた。
「あ……どうも、お疲れさまです」
なんて頭をさげて、これから来るであろう八曲署『捜査三課』の面々を待つ。
そわそわと落ち着かない素振りで辺りを見回していると、駅の方角から見覚えのある姿が駆けて来た。
「八手さん! おはようございます!」
真人の姿を確認するや否や元気に挨拶をしたのは日南・カナタ(|嘘つきアクター《プリテンダー》・h01454)だ。
「すみません! 待たせちゃいましたかね?」
「ううん、今来た所、です」
「今日はネコチャン探し、一緒に頑張りましょうね!」
寒い朝も関係なく、やる気MAXのカナタに思わず口元を緩める。
「実は昨日、今日のことでなかなか寝付けなくって!」
「そんなに猫ちゃんに会えるのが楽しみ、でしたか?」
「ええ! それはもうッ!」
真人の問いにカナタが大きく頷いた。
(「異能捜査官になったばかりでまだまだ現場経験足りない俺だけど、ここで一発頑張って出来る奴ってところを見せたいよね!」)
ここで颯爽とネコチャン見つければ、先輩達がびっくりするかもしれないし、飼い主の斉藤さんにも喜んで貰えるかもしれない! まるで憧れのヒーローのような活躍ができれば、とギュッと拳を握りしめる。
「って、妄想に浸ってる場合じゃない!!!!」
「おはようございます、今日も元気ですね」
「その声は! 志藤さん!」
カナタがくるりと振り返れば志藤・遙斗(普通の警察官・h01920)がふかしていたタバコを携帯灰皿に押し付けていた。
「お待たせしました」
「いえいえ」
挨拶もそこそこに、三人は仕事を始める。
「今回は迷いネコですか。さすがにすぐには見つからないと思うんですけど、今回は警察の落ち度ですしね。何とかしないとですね」
「警視庁と汎神解剖機関が共に見逃すって、どこの組織も意外と抜けてるところがあるんですね……」
「もしかしたら、隠れん坊が得意な忍者のような猫ちゃんなのかもしれませんよ!」
遙斗と真人の言葉に、カナタが続けた。
「忍者猫、ですか。確かに三毛猫は今の時期秋の景色に同化して遠目からは分かりづらいかもしれませんね」
「なるほど!」
「問題は、どう見つけるか、ですね。……鳴き真似したら出てきてくれたり、して?」
「鳴き真似、かぁ!」
「ところで二人とも何か猫の気を引けるようなもの持ってないですか? 俺はそのまま来ちゃって」
遙斗の問いに真人が思い出したかのように手にした買い物袋を開ける。
中には白い猫じゃらしやネズミの玩具が入っていた。真人が公園に来る道すがらドラッグストアのペットコーナーで買ってきたものだ。
「ね、猫といえば、猫じゃらしだと思いまして……」
猫の玩具をゆらゆらと振ってみれば、彼の背中から、ニュっと蛸の腕が伸びる。
知らない者が見たら驚くかもしれないが、彼は八手の家に受け継がれる怪異『蛸神のたこすけ』である。ねこじゃらしに誘われて共にゆらゆらと揺れるその姿に「これじゃタコじゃらしだな」と真人はぼんやりと思った。
猫の玩具を手に三人は公園へと足を踏み入れることにした。
「っ……」
公園へ入り感じたのは、なんともいえない不快感。
「ヤバ、鳥肌が!」
「こんなところにいて、猫ちゃん大丈夫かな……」
「これは……思ったより時間がないかもしれませんね」
猫は怪我を負うと身を隠すという。√能力者にとっては無害にほぼ近い怪異による汚染も、猫にどんな影響を与えるかもわからない。死を感じ取れば更に見えない場所へと隠れるに違いない。
「一旦、別れて捜しましょうか。何かあったら携帯に。1時間後に入り口近くのベンチに集合で」
「了解ですっ!」
「わ、わかりました」
「では俺はあちらを」
「俺は向こうを!」
「じゃ、じゃぁ、俺はあっちを」
遙斗の提案に頷き、各々三方向に駆け出した。
「ネコチャンどこーー!? いい子だから返事してね~~!」
普段は子供達の賑やかな声が響いているだろう公園も、今はカナタの声だけが響く。視界に動くものがあるとすれば、インビジブルのみである。
「ネコチャンって、こういうとこ好きだよね……?」
そう言って、ひょいとベンチの下を覗いてみるも、何も居ない。
「こんなところとか!」
生い茂る笹を掻き分け、ガサガサと音を立てながら前を進む。気が付けば頭には蜘蛛の巣を被り、肩には落ち葉がついていた。されど、猫の姿は一向に見つからない。
「ネコチャン、お願いだから出てきて~。ニャニャー!」
1オクターブ高めの声で猫の鳴き真似をしてみるも、返事はない。
理想とのギャップにガッカリするカナタであった。
一方その頃、真人もまた同じ作戦を決行していた。
キョロキョロと周りに誰もいないことを確認してから、控えめに。
「んなぁ〜ぅ、ま〜、ぅむぁ〜ぅ……」
猫が居そうな茂みに向かって、渾身の鳴き真似を披露する。
その猫そっくりな鳴き真似に、もし猫がその場にいたら顔を出していただろう。
だが、猫は別の場所にいるのか、どこからも返事はない。
「はぁ……だよね……」
猫にも人にも、誰にも聞かれていない。わかっている。わかってはいるが、真人の顔は真っ赤になっていた。
「ど、どうでした?」
「全然駄目!」
「どこにも居ませんね」
集合場所のベンチに座り、真人は頭を抱える。これは思ったより長期戦になるかもしれない。はぁ……、とため息をついた真人の前にスッと差し出されたのはコーンスープの缶であった。
「どうぞ」
遙斗の声に真人はハッとして頭を上げる。
「そこの自販機で買いました。こうも寒いと気持ちも落ち込みますからね」
「ありがとうございます……」
缶を握れば、手のひらだけではなく心まで温まるようであった。
遙斗の優しさがありがたい。冷静な彼の姿に、真人も落ち着きを取り戻す。
「ゴチになりまーす! あちち!」
カナタがコーンスープで舌を火傷をしたその時、三人の耳に人の声が聞こえた。
「猫さん待って、待ってだにゃ〜!」
ハッとして、すぐさまベンチから立ち上がる。
「今の聞こえた?」
「行きましょう!」
三人は声の聞こえた方向へと走り出すのだった。
●蛇の道は蛇、もとい猫の道は猫?
雷堂・雫(白刃の爪・h01978)が公園の入り口に着いたのは、ちょうど√能力者の男性が誰かを待っている頃だった。
「おっ、同業者かにゃ?」
背中から、蛸の腕のようなものがうっすら見えていた。神霊の依代かもしれない。
そんな事を思いながら、汎神解剖機関の職員へと挨拶をして公園へと乗り込む。
広々とした、なかなか立派な公園である。
「にゃっ……!?」
結界を通り過ぎると彼女を出迎えたのは全身の毛が逆立つような、息が詰まるような、そんな気配だった。
「普通の怪異じゃないにゃんね、これは……」
瘴気でこれなら、本体はどんなものだったのか。考えるだけでも身震いがする。
「はやく猫さんを保護しないとにゃ」
決意を新たに、雫は公園を見回した。
「猫の捜索、公園内と限定されているとはいえ、かなり大変そう、にゃ。居そうな場所を虱潰しに探す、にゃ」
猫が隠れそうな繁みの中やアスレチックの影、水を飲みに訪れそうな噴水を訪れるもインビジブルが揺蕩うばかりである。
「あっ、看板にゃ」
偶然視界に入った看板に近寄ってみる。それは、案内看板だった。
丸みを帯びた文字で公園名がデカデカと書かれ、その下の地図ではデフォルメされた子供達が、楽しそうに遊具で遊んでいた。
「雨風を防げそうな場所があればにゃ」
子供向けのアスレチック広場に、ピクニック広場、噴水、トイレに自販機、etc……。
雫はマップを眺めながらうーん、と呟く。
「アスレチックはもう探したから……トイレとかかにゃ?」
そうと決まったら! 雫はトイレへと向かうのだった。
閉鎖され、誰もいない筈の女子トイレ。耳をすませばガリガリと、扉で爪を研ぐ音が聞こえた。雫は息を殺してそっと中を覗くと、一匹の三毛猫がタイルの上で伸びをしていた。
「用意しておいたアレの出番かにゃ?」
不用意に近づいても、シロさん――雫に憑いた猫神の気配に気づかれるかもしれない、ならば。
「じゃじゃーん! 缶詰にゃ」
猫といえば猫缶! 用意していた猫缶のプルタブを引きパカッと開ければ、カツオの美味しそうな香りがする。猫のような鼻の効く生き物であれば、すぐに向こうから食いついてくれるだろう。
「昨日から何も食べてないから心配にゃ。美味しそうな匂いに釣られてくれるかにゃぁ?」
気配を消してトイレの横の木に隠れ、置かれた猫缶を眺めていれば、案の定腹ペコの猫はトイレから顔を出す。猫缶の匂いをすんすんと嗅いで、パクリ。美味しかったのだろう、ガツガツと食らいつく。
「今だにゃ!」
雫は素早く駆け寄り、猫を捕まえようとした、その時。銀と金の視線が交差する。
「あっ」
バッと飛んでいく猫に、しまった、と思う。
「びっくりさせてゴメンにゃ。猫さん待って、待ってだにゃ〜!」
猫が走る。それを追い雫も走るのだった。
●犯人の手掛かりは
「確かに、こちらから聞こえたはず」
遙斗が辺りを見回すが、近くに人の気配はない。
「俺が、心霊徴収で聞き込みします!」
カナタはすぅ、と息を吸うと空中を漂うインビジブルを前に精神を集中させる。
「――揺蕩う者インビジブルよ、在りし日の姿を現せ」
「うおっ」
「うおっ?」
そこに居たのは着物の老人であった。
「お爺さんこんにちは!」
「この姿も久しぶりだのう……なんか聞きたいことがあるのかね?」
「話が早いですね」
「俺達、猫を探しているんですが、この辺で見かけませんでしたか?」
「それなら、そこのトイレから向こう……12時の方角に走って行ったのを見たのぉ」
老人の言うトイレを見れば、入り口に開封した猫缶が置かれていた。
先ほどの声の主が置いたものかもしれない。
「ありがとうございます!」
老人に礼を言い、三人は12時の方向――南へと走る。
「にゃにゃっ、他の能力者の人達にゃ!?」
先ほどの声の主、雫に追いつけばその先に三毛猫の姿があった。
そこへ霊菜も合流する。
「おっと、皆そろっている様子ね。捕まえられそう?」
「ど、どうでしょう、逃げ回ってしまって」
「俺が他の人の方に行くように誘導しましょう。……あまり足には自信ないんですけどね」
「じゃぁ、私と貴方と貴女で挟み込みましょう!」
「わ、わかったにゃ!」
霊菜の提案に遙斗と雫が頷く。
「いくわよ、いちにのっ!」
「「「さんっ!」」」
三者が同時に猫を追い込む。氷應降臨でブーストをかけた霊菜の手をギリギリで避け、猫は真人の方向へと逃げた。
狙い通りだ。遙斗は息を吸いこむと、こう叫んだ。
「『動くな!!!!!!』」
ビリビリと空気が振動し、力を宿した視線と言霊は猫の足を鈍らせる。
(「……大丈夫、大丈夫……力加減は……俺に触るので慣れてるはず……!」)
息を飲み、真人は背中の蛸神へと命令する。
「たこすけ、お願い。その子を、捕まえて!」
ひゅるると素早く伸びたタコの触手は、見事猫を捕獲するのだった。
「は、はぁ……よかった……捕まった」
思わずその場で脱力してしまう。
そこへ、霊菜が猫の視界を覆うように黒い布を被せた。
「動物は視界を覆えば大人しくなるから、これで大丈夫なはず」
猫の扱いに長けた雫が蛸神たこすけから猫を受け取り、抱きしめる。
見る限り、怪異の瘴気による影響も見られない。
柔らかい命のぬくもりが、今回の依頼成功を実感させた。
「あれっ、そういえば証拠品ってありました?」
カナタの声に、そういえば咥えている筈の証拠品が無い事に気づく。
「トイレで見つけた時はもう、何も咥えてなかったのにゃ」
「ふふ、それならもう大丈夫。あったわよ」
全員の視線が、霊菜へと集中した。
「ウチの子――氷翼漣璃がここへ来る途中、猫の匂いがするって拾ってきたの」
彼女が手にしていたのは、一枚のぐしゃぐしゃのチラシであった。
「えっ……これは、飲み屋のチラシ……?」
こんなものが証拠品なのだろうか。真人は動揺して遙斗とカナタの反応をチラリと見やる。
「猫はガサガサ音がするものが大好きだからにゃー。でもそれだけじゃないにゃ」
「本当だ。言われてみれば微かですが、変な気配がします」
「これを調べれば、この公園の怪異を呼び出したヤツがわかるかもしれないんですね!」
「みやぁ」
ひと鳴きした猫の頭を撫でる。
こうして、猫のミャー子は無事に保護されたのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
第2章 冒険 『カルト教団調査』
POW
身元を偽り、教団に潜入する
SPD
教団が起こした過去の事件を調べる
WIZ
教団の教義から事件に関わる目的を暴く
√汎神解剖機関 普通7 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●狂信者達は美酒を味わう
「「「「カンパーイ!!!!」」」」
グラスとグラスがぶつかり合い、一気に酒を飲み干す。
ここはどこにでもある居酒屋の一室。赤提灯が飾られた座敷には十数人程の老若男女が打ち上げを祝っていた。
「ぷはぁー! いやぁ、仕事の後のビールは格別ですわ」
「この喉にゴクゴクってくる感じがね〜」
「そう? 俺、冬は熱燗がいいなぁ」
「ボクは甘いのが飲みたいな〜。カクテルメニュー見せて」
机に置かれたメニューを手に取り、男が呟く。
「あっ! これなんか昨日呼んだ怪異に似てない? 紫色な所とかさぁ」
「どれどれ? ああ、あの口から芋虫がいっぱいでてきたやつ? あれは勿体なかったよねー」
メニューを覗き込んで女が笑う。この色合いは確かに公園に呼び寄せた怪異の色にそっくりである。
「今回は倒されちゃったケド、次こそはもっともっと強い怪異を呼んで、神様に喜んで貰おう!」
「「「お〜っ!」」」
狂信者達はそう言って次の事件を企てるのだった。
●居酒屋のチラシ
√能力者達が手に入れた証拠品を元に、新たなゾディアック・サインが舞い降りたようだ。公園の怪異を呼び出したのは、邪神を崇めるカルト教団であり、仕事を終えては一般人の姿でどこかしらで打ち上げをしているようだった。
√能力者達にはこの情報を元に奴らの居場所をどうにか特定し、事件の連鎖を食い止めて貰いたい。
矢神・霊菜…このチラシ、居酒屋の場所の情報無いの?
私は同様の過去の事件を調べて教団が絡んでいそうなものをピックアップするわ。
汎神解剖機関でそういった過去の事件記録は取り扱ってるかしら?
扱ってるなら記録を見せてもらえると嬉しいのだけど。
教団の名前がわかっていれば探すのも楽なのだけどねぇ。
怪異が召喚された場所、そこからおおよその行動範囲を絞れないかしら。
範囲さえ調べられればマップアプリで居酒屋を調べられると思うわ。
その後は虱潰しになるだろうけど…。
教団と言うくらいだから、打ち上げの人数は多いだろうしある程度広さのありそうな店かしらね?
「……このチラシ、居酒屋の場所の情報とか無いの?」
矢神・霊菜(氷華・h00124)は思わずそう零した。
猫を汎神解剖機関の職員へと引き渡し、証拠を手に入れた√能力者はチラシを前にああでもない、こうでもないと意見を言い合っていた。
チラシに居酒屋の住所が書かれていなかったのである。店前や店内で配る『店の場所を知っている前提のチラシ』だから、地図を載せていなかったのだ。
「たまにあるわよね、こういう不親切なチラシ」
店名が書いてあっただろう箇所も破けており、公園内に落ちているかと思ったが見つからなかった。載っているメニューからして、繁華街にありがちな和風居酒屋のように思える。
「居酒屋探しはひとまず置いといて、私は同様の過去の事件を調べて教団が絡んでいそうなものをピックアップするわ」
そう言って霊菜が向かった先は汎神解剖機関の施設であった。表向きは一般のビルとされているが、その正体は汎神解剖機関の図書館である。
「こんにちは」
重い鉄の扉を開けると、真っ先に司書の視線が突き刺さる。
「過去の事件記録は取り扱ってるかしら? 扱ってるなら記録を見せてもらえると嬉しいのだけど」
「それなら、こちらの部屋です」
霊菜が案内されたのは、図書館の最奥。窓のない部屋であった。
室内に入るとひんやりと空気が変わるのが分かる。
室内には検索用のパソコン数台に、番号が振られたハンドル式の集密書架。それに書類が広げられそうな大きな机があった。
「案内ありがとう。ちょっと借りるわね」
司書が部屋から出ていくと、椅子へと座りパソコン画面を覗き込む。
「教団の名前がわかっていれば、探すのも楽なのだけどねぇ」
霊菜はまず試しに、検索キーワードに『酒』と入力してみた。
しかし酒は古来から儀式に使われるポピュラーなものだ。数千を超える事件のヒットに「やっぱりね」と呟く。『酒 カルト教団』で検索しても同じである。
「次は、近隣で起こった未解決の怪異召喚事件」
地域ごとに振り分けられた中から、近隣の未解決の怪異召喚事件を片っ端からチェックし、印刷していく。
「結構あるわね……」
机に並べ、事件を見比べてみる。容疑者が個人と思われるものは省き、容疑者が複数と思われるものを引き抜く。気になる箇所は蛍光ペンで引き、ジッと眺めた。どこかに、共通点がある筈だ。
「もしかして……事件は必ず都会の駅の側。怪異召喚後にすぐに電車に乗れるような場所を選んでたりする? 逃亡の為? いや、そんな大人数。人目についてしまうわ。まさか、繁華街の飲み屋へすぐに行けるように……?」
霊菜は眉を顰める。そんな馬鹿な話があるのだろうか。しかし相手は狂信者だ。常識なんて通用しない相手だ。
霊菜は自身のスマートフォンを取り出すと、マップアプリを起動させる。事件が起きた公園から電車に乗って一時間以内に行ける駅近くの和風居酒屋――。
「教団と言うくらいだから、打ち上げの人数は多いだろうし。ある程度広さのありそうな店かしらね?」
お座敷のある、チラシにあったような料理を出すお店。
小一時間程、店内の写真やメニューを比較していると、それは現れた。
「きっとここね」
霊菜は事前に連絡先をして交換していた√能力者へと電話をかける。
「みつけたわ。お店の名前は居酒屋・風来坊。例の公園から電車で30分程の距離よ」
🔵🔵🔵 大成功
【POW】
【捜査三課】
八手さんと志籐さんとで潜入作戦だー!
え!場所は居酒屋なんですね!
ななな、何言ってんスか!俺未成年ですよ!?(あたふたっ)
お、俺は未成年ってバレないようにしなくちゃですね…
自身はフードを深くかぶり未成年だとバレないようにして居酒屋に潜入
初めての居酒屋の雰囲気にわーこんな感じなんだーーと感動しつつ、
あ、俺、最近入信した新人信者です!てな感じで誤魔化す
自分はお酒飲めないんで|ソフトドリンク《オレンジジュース》お願いしまーす!とソフトドリンク頼みつつなんとか情報を聞き出せるよう会話に混ざる
「この前の怪異すごかったですよね!今度はどこでやるんですか!」
と煽てるように相手を持ちあげる
八曲署『捜査三課』の面々と参加(名字+さん呼び)
居酒屋が見える路地でタバコをふかしながら
「まさか証拠品が居酒屋のチラシだったとは、俺たちも居酒屋に行かないとですね。」
「お二人とも大丈夫ですか?」
入店後
「すいません遅れましたー。3人なんですけどどこか席空いてますか?」
「あ、お二人とも何飲みます?俺はとりあえず生中頼もうかな。」
と聞きながら席について、周りの会話に聞き耳を立てる。
「次ってどんな怪異を呼びますか?」
情報を集められるように立ち回る。
退店後
近くの路地にて一服しながら
「お二人とも大丈夫ですか?とりあえず情報は手に入ったので次に備えましょう」
八手・真人★【捜査三課】同行(対仲間:苗字+さん/敬語)
フードを深く被り、信者仲間のふりをしつつ志藤さんについていく。
憧れの『潜入調査』に内心ワクワク。
狂信者っていっても、あの変な服着てないとわかんないモンだな〜…。
あ、お酒…ダメだ、兄ちゃんが「おさけくさい」って逃げるからやめとこう。
レモネードでお願いします……。
……あ、狂信者グループにも馴染めない人っているんだ。親近感。
端っこで気まずそうにご飯食べてる若い子に話を聞きます。
ここ、いいですか……飲み会つらい、ですよね――わかります。俺も苦手で……。
(よし、これで情報を引き出し――あれ、ただの人生相談になってきちゃった)
夜の闇に紫煙が揺蕩う。ここはとある繁華街。志藤・遙斗(普通の警察官・h01920)はタバコをふかしながら、遠目に煌々と灯りのついた居酒屋を眺めていた。
「やったー! 八手さんと志籐さんとで潜入作戦だー!」
彼の横には「いえい!」と浮かれ気味の日南・カナタ(|嘘つきアクター《プリテンダー》 ・h01454)と憧れの『潜入調査』に内心ワクワクの八手・真人(当代・蛸神の依代・h00758)の姿があった。
「まさかカルト教団がこんなところに出入りしているとは……」
別の√能力者により、今日の宴会は居酒屋・風来坊で行われることが特定されている。
「俺達も一般客に扮して行きましょう。お二人とも準備は大丈夫ですか?」
遙斗がタバコの火を消し振り返ると、そこには固まったカナタがいた。
「え……! 潜入調査って、あのお店に客として入るんですか!?」
「ええ、そうです」
「ななな、何言ってんスか! 俺、未成年ですよ!?」
「歳は黙っていれば大丈夫ですよ」
あたふたとするカナタに落ち着きを持って遙斗が答える。
「ふ、フードを深く被っちゃえば、なんとかなります、よ。きっと」
己に言い聞かすように言う真人の言葉に、カナタは腹を括るのだった。
居酒屋・風来坊の引き戸をカラカラと開ければ店員から「いらっしゃいませ!」と元気な声がかかる。
「すみません、仲間が先にこちらで宴会をしている筈なんですが、ちょっと誰の名前で予約したかわからなくって」
遙斗が申し訳ない、と笑いながら言えば店員は「きっと一番奥のお座敷のお客様ね」と石畳の通路へと案内する。赤提灯が並んだ、和風の居酒屋だ。
(「わー、こんな感じなんだ~~~!」)
初めての居酒屋に、カナタはきょろきょろと落ち着きなく辺りを見回す。感動すら覚えていた所で、店員に案内され先頭を歩いていた遙斗の足が止まった。
狂信者達のいる座敷へと着いたようだ。障子越しに笑い声が聞こえる。
カナタと真人は改めて己のフードをぐいと引き寄せ、息をんだ。
「すいません遅れましたー。三人なんですけど、どこか席空いてますか?」
障子に手をかけ、ガラリと遙斗が乗り込む。
(「志藤さん大胆……! えぇい、行っちゃえ!」)
二人が後を追い座敷へと上がれば、そこには数十人の老若男女が酒を楽しんでいた。出入口に集中する視線。
(「まずい……バレちゃった……!?」)
真人は己の鼓動がやけにうるさく感じた。
「あはは、大丈夫、大丈夫まだ飲み放題の時間内だからさー!」
(「セ、セーフ……!」)
「好きなところに座りなよ!」
人の良さそうな老人がそう言ってメニュー表を渡してくる。遙斗が礼を言い、二人を連れてひとまず空いている席へと座った。
「あ、お二人とも何飲みます? 俺はとりあえず生中頼もうかな」
遙斗の問いに真人はうーん、とメニュー表を眺める。
「レモネードでお願いします……」
お酒はお兄ちゃんが「おさけくさい」と言って逃げるからやめておこう、と、メニューをカナタに回す。
「自分はお酒飲めないんで、オレンジジュースでお願いしまーす!」
「酒が飲まないなんて、ニィちゃんら損してんなー!」
ガハハと赤い顔の男がカナタと真人の肩を叩く。
(「うわっ、お酒臭い……!」)
狂信者達は酒に酔い、既に出来上がっているようだ。
飲み物とお通しが来たところで、三人は別々に動くことにした。
真人はレモネードを手に席に立つと、改めて周囲を見回してみる。どこを見ても、ごくごく普通の一般人ばかりである。
(「狂信者っていっても、あの変な服着てないとわかんないモンだな〜……」)
そんな事を考えていると、ふとある信者が目に入った。
グループに属さずに端っこで気まずそうにご飯をつついている若者だ。
(「……あ、狂信者グループにも馴染めない人っているんだ。親近感」)
この子だったら、話しかけられるかもしれないと、真人は意を決して声を掛ける。
「ここ、いいですか……」
真人の声に一瞬びくり、として若者は顔をあげる。
「え。ええ、どうぞ」
「飲み会つらい、ですよね――わかります。俺も苦手で……」
その言葉に若者は明らかにホッとした顔つきになる。
「神様が賑やかなのがお好きなのはもちろん知っているんですケド、俺、どうしてもこういう場所で人と喋るのが苦手で……」
「わ、わかります」
語り出す若者に、よし、これで情報を引き出せる……! と気持ち前のめりになる。
「昔から、俺は駄目なんです。喋っても相手を笑わせられないと言うか」
「ふ、普通に会話をするだけでいいって言っても……その普通が難しいんですよね」
真人はレモネードを両手で支えつつ、コクコクと頷く。
「そうなんです! それどころか、場をシラケさせてしまうというか、今もこうして貴方を暗い気持ちにさせてしまって……!」
「そ、そんな事ないです、よ……!」
「本当に?」
「俺は、こういう所が苦手な仲間がいてホッとしましたもの……」
「ウウッ……そう言ってくれるのは貴方が初めてだぁ!」
わんわんと泣き出した信者に「ちょ、ちょっと、興奮し過ぎです、よ……! 場酔いしちゃった?」なんて水を差し出して、泣く相手の背をさする。
(「あれ、コレただの人生相談になってきちゃった……?」)
ここから続く信者の身の上話に、真人は内心焦り出すのだった。
一方、遙斗はお通しを摘みながらビールを煽り、周囲の会話に聞き耳を立てていた。
信者の会話は最近新しくアクセサリーを買っただの、仕事で失敗しただの、ごくありふれたものばかりだった。
しかし暫くするとその中に、怪異の話をしているグループがあるのに気が付いた。先ほどの老人達だ。
「次の怪異はやっぱりパーッと、華やかにしたいよな」
その話に遙斗がビール瓶を片手に乗り込む。
「次ってどんな怪異を呼びますか?」
老人の空いたグラスにビールを注ぎ、出来た泡におおっと、場が沸く。
「そりゃぁ、神様に喜んでもらえるようにあれや、これやと考えたんだけどさぁ。やっぱり賑やかにするにはアレだよ、アレ」
「アレ、ですか……?」
「|対処不能の災厄《ネームレス・ワン》だよ」
その言葉に遙斗はどっと、冷や汗が出るのを感じた。
「あ、俺、最近入信した新人信者です! よろしくお願いします!」
そうカナタが勢いよく挨拶をすれば、周囲がドッと沸き拍手が起きる。
「おっ、新人か! 酒飲め! 酒!」
「お酒は俺、駄目なんですってばぁ!」
酔っ払いに絡まれつつ、未成年とバレないように必死に飲めない成人を取り繕う。
「それにしても、この前の怪異すごかったですよね! 今度はどこでやるんですか!」
カナタの人懐っこい笑みは狂信者相手にも通用するようで、可愛い後輩に教えてやろうと、我先にと酔っ払いがカナタを囲う。
「なんだぁ。まだ聞いてなかったのか? クリスマスのショッピングモールだよ」
「いかにも神様が好きそうな賑やかな場所だろ? 次の打ち上げ会場ももう予約してあるんだぜ!」
「次は超強い怪異呼ぶから、きっと神様も喜んでくれるさ!」
詳しく聞く前からペラペラとありがたい。だが。
「おらーっ! 新人なんだから先輩達を笑わせろよ!」
「ほらっ、腹踊りだ腹踊りっ!」
「えっ、ちょっ! まっ!」
服を脱がされそうになり焦るカナタであった。
「うわっ、お酒飲んでないのに酒くさい……お兄ちゃんに避けられちゃうかな……帰ったらすぐにお風呂入ろ……」
宴会がお開きとなり、信者達と別れた真人は辺りを見回し誰もついて来ていないことを確認すると、路地裏へと駆ける。
集合場所へと辿り着くと、そこには既にタバコを一服する遙斗の姿があった。
「お二人とも大丈夫でしたか?」
「ううう、昭和のノリ反対! 腹に油性ペンで顔書かれそうになったんですよ~~~!」
「か、顔……?」
「腹踊りしろって!」
泣きそうなカナタをなだめながら、彼らは飲み会中に集めた情報を出し合う。
「神様は賑やかなお祭り騒ぎが大好き」
「次に呼ぶ怪異は|対処不能の災厄《ネームレス・ワン》」
「場所はクリスマスのショッピングモール」
情報を羅列するだけでも、嫌な予感がヒシヒシとする。
「つまり、ショッピングモールでその怪異がお祭り騒ぎするって事!?」
「ね、ネームレス・ワンってなんですか……?」
「天災です」
遙斗は一言だけそう言うと、再びタバコに火を点けた。
「とりあえず情報は手に入ったので次に備えましょうか」
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功
無事に猫を保護できて良かったにゃ
次は事件を起こした犯人の捜索にゃ
犯人は証拠のチラシのお店に行く予定だったのかにゃ?
なら、そのお店に行けば、犯人に繋がる情報を…………
…………ムリにゃ!
流石に飲み屋さんに未成年が入るには、難易度が高過ぎるのにゃ
仕方がないのにゃ
このお店と、公園。それと犯人が起こしたと見られる、過去の怪異事件の記録を調べるのにゃ
何と無くな勘だけど、あまり遠出はしないタイプに思える、にゃ
地図と事件の場所を見比べ、拠点と思われる場所を推測してみる、にゃ
候補が幾つか絞れたら、自分の第六感を信じて、張り込みするのにゃ
話は数時間前に遡る。
雷堂・雫(白刃の爪・h01978)はグシャグシャになった居酒屋のチラシをコピーさせて貰うと、それを手に一人歩き出した。
「犯人は証拠のチラシのお店に行く予定だったのかにゃ? なら、そのお店に行けば、犯人に繋がる情報が……」
そこまで考えて、ぴたり、と歩みを止める。
「ムリにゃ! 流石に飲み屋さんに未成年が入るには、難易度が高過ぎるのにゃ!」
入った瞬間バレて店外にぺいっと出されるのがオチに決まっている。雫は頭を抱えた。
「仕方がないのにゃ。このお店と、公園。それと犯人が起こしたと見られる、過去の怪異事件の記録を調べるのにゃ」
怪異事件の記録を取り扱っていると言えば、あそこである。
雫はウンウンと頷くと、警視庁の超常現象関連特別対策室へと向かうことにした。
「そこの君、一般人は入れないよ」
警視庁へと足を踏み入れ、超常現象関連特別対策室はどこだろうかと案内を眺めていると一人の警察官が声をかけて来た。
「は、はわ……やっぱりここも駄目かにゃ」
ガックリとして、建物から出ようとしたその時、一人の男が雫を呼び止めた。
「君、そこの君。もしかして√能力者かい?」
「そ、そうにゃ! もしかして捨てる神あれば拾う神ありってヤツかにゃ?」
振り返れば、超常現象関連特別対策室の関係者なのだろう、若い男が立っていた。
「はは、僕が拾う神なのかはわからないけど、√能力者が来たって事は急用だろう?」
「そうにゃ。大急ぎで過去の怪異事件の記録を調べたいのにゃ」
雫の言葉に男は頷き、懐から「はい、どうぞ」と『関係者』と書かれたネームプレートを取り出した。
「この建物にいる時はそれをつけていれば、君は自由に出入りができる筈だ」
「ありがとにゃ」
渡されたネームプレートを付け、超常現象関連特別対策室へと案内される。
「な、なんか変な感じがするにゃ」
「他の刑事さんが間違って入ってこないように細工がしてあるんだ」
「へぇ~」
ちょっとした社会科見学のような気分で辺りを見回す。
すると、いつの間にか一つの扉が現れた。
「さ、ここが資料室だよ。ゆっくりしていって」
そこは窓もない小さな部屋であった。狭いわりには紙のファイルがギッシリと棚に詰められている。
「地震が来たら書類で埋もれそうだにゃ……」
そんな事を考えながら、一台だけ置かれたパソコンを起動する。
『ようこそ! 超常現象関連特別対策室へ!』なんて、やけにレトロで丸いポップで表示されれば、マウスを検索の項目へと移動させる。
「何と無くな勘だけど、教団はあまり遠出はしないタイプに思えるにゃ」
本屋で買って来た地図を取り出し、検索結果を元に未解決の怪異召喚事件があった場所へと赤ペンで印をつけていく。
事件現場はどこも駅が近くにある都会と呼ばれる地区である。
「教団、って言うくらいだから、飲み会の他にもどっか広い所で集会するのかにゃー?」
何度も地図と事件現場を見比べては、拠点と思われる場所を推測してみる。
マップアプリで建物の外観を眺めながら、ここが怪しいと目星をつけて。
「あとは、自分の第六感を信じて、張り込みするのみにゃ」
沢山書き込んだ地図を手に、資料室を飛び出す。
「おっ、探し物はみつかったかい?」
「多分見つかったにゃ! どうも、ありがとにゃ~」
どういたしまして、と言う男を背に雫は駆ける。
行先は、マップアプリで見つけた不自然な程立派な建物。
こんなにもピカピカで大きな建物だというのに、会社名も施設名も書いていないのである。
「明らかに怪しいにゃ」
寒く無いよう厚着をして、影から施設を見張る。お供はコンビニで買ったアンパンと牛乳である。
途中、冬の寒さに心が折れそうになるも月が眠る頃、複数の人影があった。
宴会から宅(教会)飲みへと向かう教信者達である。
「むむっ、怪しい気配! あのチラシから感じたオーラにそっくりにゃ!」
雫はコートのポケットからスマートフォンを取り出すと警視庁へと電話をかける。
「もしもし、刑事さんかにゃ?」
超常現象関連特別対策室が教団へと乗り込むのはその翌日の話となる。
🔵🔵🔵 大成功
第3章 ボス戦 『対処不能災厄『ネームレス・スワン』』
POW
災厄拡大
自身の【頭部】がA、【脊髄】がB、【翼】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
自身の【頭部】がA、【脊髄】がB、【翼】がC増加し、それぞれ捕食力、貫通力、蹂躙力が増加する。ABCの合計は自分のレベルに等しい。
SPD
ネームレス・スクリーム
【狂気と絶望に満ちた叫び】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【発狂】に対する抵抗力を10分の1にする。
【狂気と絶望に満ちた叫び】を放ち、半径レベルm内の自分含む全員の【発狂】に対する抵抗力を10分の1にする。
WIZ
スワンズ・ソング
【新たなる『ネームレス・スワン』】が顕現し、「半径レベルm内の困難を解決する為に必要で、誰も傷つける事のない願い」をひとつ叶えて去る。
【新たなる『ネームレス・スワン』】が顕現し、「半径レベルm内の困難を解決する為に必要で、誰も傷つける事のない願い」をひとつ叶えて去る。
●|警視庁異能捜査官《カミガリ》、突入。
「おらぁ! 居るのはわかってんだぞ!」
「さっさと開けろよコラ!」
√能力者の通報により判明したカルト教団本部に怒号が飛び交っていた。
信者達は扉を抑え、 |警視庁異能捜査官《カミガリ》達の侵入を拒む。
「はい、開城には応じませんね。2024年12月25日10時00分、突入します」
「こうなるとは思ってたけどね、おら、行くぞ!」
警視庁の歴戦の猛者達がカルト信者達を次々に拘束していく。
「クリスマスのショッピングモールにテロ未遂だって? やってくれるじゃねぇか」
主犯と思われる老人の胸ぐらを掴み、刑事が睨む。
「はは、未遂だって? これからだよ」
「なに……?」
老人の言葉に嫌なモノを感じ、すぐにトランシーバーで連絡を取る。
連絡先は、万が一に備えてショッピングモールに待機して貰っていた√能力者達である。
「本部は制圧したが、奴らはまだ怪異を召喚するつもりらしい。万が一に備えてくれ」
●クリスマスは賑やかに
ここはとあるショッピングモール。一階メインコートには、巨大なシンボルツリーにクリスマスの飾りがキラキラと輝いていた。
今日はクリスマス。ケーキやクッキーの出張販売店に、雪ダルマの着ぐるみが冬休みに入った子供達を熱狂させる。
「ねっ、あれみて! 怪人さんだよ!」
小学生くらいの子供が指を差す。クリスマスツリーのちょうど正面に、全身をローブで包みフードを深く被った男がぽつんと立っていた。
「あら、ヒーローショーでも始まるのかしらね」
しかし「ヒーローはどこかしら」と話す親子の笑顔は突如悲鳴にかき消される。
男が自らの手のひらを刃物で突き刺したのだ。
「嗚呼、神よ。新たな怪異を捧げます。どうか、お受け取り下さい!」
ポタポタと落ちる赤を中心として血管のように赤い光が床を這うと、それは魔法陣となって起動する。ショッピングモールの床が鼓動し、明らかな異変にわけもわからず逃げる客達。
それを、感情のない顔が見ていた。
「ひいっ……!」
顔。顔。顔。
ショッピングモールに存在する窓すべてから、マネキンのような顔が覗き込む。
対処不能災厄『ネームレス・スワン』の降臨であった。
雷堂・雫にゃ~、召喚の妨害、間に合わなかったのにゃ
こうなったら、出来るだけ被害を最小限に抑える、にゃ
デパートのお客さんが避難する時間を稼ぐ為、怪異を全力で足止めする、にゃ
と、その前に。何をしてくれたのにゃっ!
と、全力で金属球を召喚を実行した信者に叩きつけるにゃ
逃走防止なのにゃ
テロ、ダメ、絶対、にゃ!
怪異への対処は、一般人から注意を逸らす事を重視
霊爪と体術での近接戦闘主体
離れているのには、金属球を投擲
避難が進んで、余裕ができれば攻めに転じる、にゃ
針嵐を使い、金属球を分裂させ一気に叩くのにゃ
増える相手は面倒にゃ
纏めて串刺しにするのにゃ
「にゃ~、召喚の妨害、間に合わなかったのにゃ」
二階を見回っていた雷堂・雫 (白刃の爪・h01978)が吹き抜けになっているメインコートへと乗り出した。
「こうなったら、出来るだけ被害を最小限に抑える、にゃ」
エスカレーターなぞ使っている時間が惜しい。阿鼻叫喚の地獄絵図に堪らず、その場から飛び降りる。
「ショッピングモールのお客さんが避難する時間を稼ぐにゃ。……と、その前に」
トスッ、っと華麗に着地を決めるとそのまま、興奮状態の信者へと全力で金属球を叩きつける。
「何をしてくれたのにゃっ!」
「ぎゃっ!」
突然現れた金属球に成すすべもなく信者は吹っ飛ぶと、床に転がり悶絶する。
ゲボゲホッと咳き込んだ後に四つん這いになり立ち上がろうとするが、そこに追撃を食らわせた。逃亡防止である。
「テロ、ダメ、絶対、にゃ!」
鎖でぐるぐる巻きになった信者を床に転がし、雫は辺りを見回した。
全ての窓から怪異が顔を覗かせている。
現実離れした光景に一般人は発狂し逃げ惑い、あまりの濃い怪異の存在に想像力を制限する『クヴァリフ器官』など機能していないに等しかった。
(「怪異の意識を一般人から逸らさないとにゃ!」)
怪異は生物の神経だけを取り出したような体と複数の頭をゴリゴリと窓に押し付け、窓を押し割るとずるりとショッピングモールへの侵入を開始する。
「こっちにゃ!」
大きな声で叫び、怪異の注意を引こうとする。
しかし、怪異はそんな雫をよそにメインコートから羽ばたこうとしていた。
「他所には行かせないのにゃ」
怪異へと鉄球を投げつけ地面へと墜落させ、同時に迫る別の個体を鉤爪で切り裂いた。
「これ以上、一般人を傷つけさせないのにゃ!」
一般人を追う視線へと拳を食らわせると、怪異は雫へとか細い神経を伸ばし、グイと頭を寄せてくる。
「き、気色悪いにゃ!」
思わず回し蹴りが炸裂する。吹っ飛ぶ頭部に『おかわり』とばかりにニョキニョキと窓から生える頭部。それらの視線は今度こそ雫へと集中している。
鳥肌が立つ光景だ。とても普通の人間には耐えられない。――だが。
一般人が逃げた事を確認し、雫は改めて鉤爪を構えるのだった。
そんな怪異らとしばらく格闘していると、他の√能力者が一般人を避難させている姿が見えた。
「ありがたいにゃ。これで心置きなく攻めに転じることができるにゃ」
にしても。
「コイツら、全然減らないのにゃ……!」
さっきから倒しても倒しても増え続ける怪異に呟く。
対処不能災厄の名も伊達ではない。一体一体に対応していては焼け石に水である。
「そうだっ、ひらめいたにゃ。シロさんっ!」
金属を司る猫神へと協力を仰ぎ、雫は手を広げ呪文を詠唱する。
増える相手には、こちらも増やせばいいのだ。
「増殖し、型を成すは、金属球。――嵐の如き猛威を奮え!」
猫の一鳴きが聞こえた気がしたと同時に、投げられた真球が分身する。
「砕けろにゃ!」
金属球は次々にネームレス・スワンの頭部を粉砕していく。
だが、すぐさま新しいネームレス・スワンが窓から顔を出していた。
「っく、増える相手は面倒にゃ」
雫は天へと腕を翳すと、鉄針を生成した。
「お次は纏めて串刺しにするのにゃ!」
降り注ぐ|針嵐《ハリアラシ》にネームレス・スワンは天を仰ぐのだった。
🔵🔵🔵 大成功
矢神・霊菜うわ、思ったよりなんと言うか…アレな見た目ね
流石カルト教団が召喚する怪異なだけあるわ
それをこんな人の多い場所で召喚するだなんて
ちょっとあの召喚した男をひっぱたきたい気分ね
対処不能災厄…不穏な名前だけど、彼らの言う神が召喚されないためにも早々に倒させてもらうわ
…とはいえ、冒険者をやってるからか強敵にはちょっと高揚しちゃうのよね
あまり動かれると厄介かしら?
氷鷹降臨のスピードと技能【不意打ち】による強烈な一撃を喰らいなさい
怯むなりして動きが鈍ってくれれば一気に畳みかけたいところ
ヤバそうな攻撃の気配があれば出来るだけ回避を
どんな能力を持っているかわからないからね
ショッピングモール三階、別フロアの巡回を行っていた矢神・霊菜 (氷華・h00124)は、召喚魔術行使の気配に振り向き、次の瞬間にはその方向へと駆けていた。
悲鳴が響き、何が起こったかも分からぬ一般客が避難するその逆方向へと走る。
ショッピングモールの地図は今朝、頭に叩き込んだ。
「この先は確か……クリスマスツリーがある、メインコート!」
現場へと近付くにつれ魔術の気配は強くなり、やがて『ゴツン、ゴツン』『ゴツン』『ゴツンゴツン』と複数の何かがガラスにぶつかる音が聞こえ霊菜は足を止めた。
それは外の景色を見下ろすべき大きな窓ガラスに、べったりと怪異が張り付き、沢山の頭を同時に窓ガラスへと打ち付けている姿だった。
白鳥のように美しい翼に、木の根のように広がる神経の体。そこへ生える頭はマネキンのよう。
「うわ、思ったよりなんと言うか……アレな見た目ね。流石カルト教団が召喚する怪異なだけあるわ」
若干引き気味に言うも、これから奴らをその手でシバく必要がある。
「それを、こんな人の多い場所で召喚するだなんて……ちょっと召喚者をひっぱたきたい気分ね」
メインコートで怪異に遭遇し、発狂した人間は幾人ほどか。『クヴァリフ器官』の影響でチラ見程度であればなんとか誤魔化せるかもしれないが。
今ここで食い止めなければ、別フロアにいる更に多くの人間が狂乱状態に陥ることだろう。
「対処不能災厄……不穏な名前だけど、彼らの言う神が召喚されないためにも早々に倒させてもらうわ……とはいえ、冒険者をやってるからか強敵にはちょっと高揚しちゃうのよね」
怪異相手にニッと笑い、霊菜は駆けた。窓が割れるのとほぼ同時、氷雪の神霊『氷翼漣璃』の力を借り、霊菜は氷の刃によって怪異の頭を貫いた。
手に伝わる嫌な感触。刃をすぐさま頭から引き抜き、こちらへと伸びる神経を切り裂く。
「あまり動かれると厄介ね」
ショッピングモールへと羽ばたこうとする翼を切り捨て、辺りを白鳥の羽が舞い落ちていた。そこへ佇む冒険者のなんと神秘的な事か。だが、本人はそんな事など知る由もなく。
「怯むなりしてくれれば良かったのだけど、この怪異にそんな可愛げはないわよね」
そんな苦笑をすれば、霊菜を中心としてフロアの気温がぐっと下がる。
一般人の避難が進んだ今なら、これが使用可能だ。
『氷刃裂葬』の出力を更に上げて、伸びた氷の刃を改めて握る。
「怯まないなら、凍らせるわ」
霊菜はそう宣言すると、窓よりずるりと体を出した二体目へと駆ける。木の根のような体を切り裂いて、こちらを見下ろす顔達を分断させる。
バタバタと地に落ちる姿を一瞥すれば、霊菜に斬られた怪異は広範囲に凍傷を負って、白く変色していた。
「やっと動きが鈍ったわね」
そう地に落ちた怪異に呟けば、妙な違和感。
「………?」
振り向けば、そこに新たな|怪異《ネームレス・スワン》が顕現していた。
「なるほど。どんな能力を持っているかわからないから警戒していたけど、倒しても倒しても増殖するって訳ね」
強者との出会いは冒険者にとって人生のスパイスだ。
「いいわね。あなた達、全員凍らせてあげる」
そう言って、二羽の神霊を従えた氷の華は笑うのだった。
🔵🔵🔵 大成功
早乙女・伽羅たまたまモールで買い物をしていたが
異変の匂いを嗅ぎ取りこの√に踏み込む
平和であるはずのモールで地獄絵図が繰り広げられているのを見て、
現場に向かいながら逃げ惑う人たちの支援をする
パニックは更なる被害をもたらす
避難するにせよ、冷静に行動してもらわねば
転んだ子供を助け起こし、親と共に人の流れが少ない場所に誘導
「大丈夫だ、アレを追い返すべく頑張っている人たちがいるからね」
現場に駆けつけ、怪異と対峙
籠手に仕込んだ釣り針を射出して敵の上部を狙う
掛かったら糸を手繰って敵の身体へ駆け上がり、増殖する部位をサーベルで刈り取っていく
しかしいつまでも後手に回っては埒が明かない、√虚飾で応戦しよう
闇のものは闇に帰れ
ここは√妖怪百鬼夜行のとある商店街。木製の電信柱が立ち並び、舗装されていない地面を下駄を履いている人々が通り過ぎて行く。
「安いよ安いよー!」
「お兄さん! イモリの黒焼きが入ったよ!」
「呪いの小箱はいらんかねー?」
商売っ気のある妖怪の賑やかな声が響く。そんな普段通りの景色に混ざる、違和感。
商店街に買い物に来ていた早乙女・伽羅(元警察官の画廊店主・h00414)は風呂敷を手に振り返る。
「なんだ……?」
伽羅が一歩、二歩と違和感を辿って進めば、景色は歪み別世界へと変化する。
「ここは」
店並びに商店街の面影が残るが、店先にはビニールパッケージの商品が並び、動く階段が稼働している。すぐにどこの世界か合点がいくと同時に眉間にしわが寄った。
原因は異世界からの訪問者へと注がれる窓からの視線である。
その主は天使のような翼に、マネキンのような多数の頭を持ち、生き物の神経を生きたまま抜いたような、そんな体を持つ。伽羅は丸眼鏡をかけなおし、金色の目で怪異を見上げた。
本来平和である筈のショッピングモールに人々の悲鳴が響く。怪異が召喚された直後と言ったところか。伽羅は売り場に並んだ帽子をひとつ失敬すると、頭に乗せて辺りを見回した。伽羅にぶつかり走り去る人、荷物をばらまきながら走る人。一般客達は怪異の姿に錯乱状態で、避難がスムーズに行われていないことは明らかであった。
(「パニックは更なる被害をもたらす。避難するにせよ、冷静に行動してもらわねばな」)
伽羅は「こっちだ!」と叫ぶと混乱する人々を誘導し始める。
恐怖で動けなくなった男を正気に戻し、現場の写真を撮ろうとした学生を止め避難させる。そんな混乱の最中、目の前で少女が転んだ。
泣く子を助け起こし、見れば共にいた母親は乳児を抱いていた。これでは避難も大変だろう。
「安全なところまで送ろう」
頷く母親を見て、伽羅は少女の小さな手を握った。
手は未だ小刻みに震え、汗で湿っていた。
「大丈夫だ、アレを追い返すべく頑張っている人たちがいるからね」
出来る限り優しい声で話しかける。
まずは人の流れに逆らっては危ないと、ある程度周囲と同じ方向へと進んでから通路の影へと入る。
「ここまで来れば、すぐに救助の人間が来るはずだ」
これだけ大規模な怪異による騒ぎだ。すぐに汎神解剖機関にしろ警視庁の異能捜査官が来て、怪異と遭遇した人々の後処理を行うだろう。
「ありがとうございました」
まだ混乱が残るも深々と頭を下げる母親と対照的に、涙でべちょべちょになった少女が伽羅を見上げた。助けてくれた相手をよくよく見ようとしたのかもしれない。
伽羅は被っていた帽子を目深に被り直した。想像力が制限されているこの世界では猫又ではなく、和服のおじさんとして映るはずだ。
「さ、顔を拭いて」
木綿のハンカチを差し出すと、少女はおずおずとハンカチを受け取る。
「あ、ありがとう……」
親子を安全圏まで送り届けた伽羅はすぐさま来た道へと戻る。避難は進み、人の気配はない。ガランとした通路には客が落としたであろう靴やぶちまけられた商品が散らばっていた。
そんな通路を急ぎ進めば、ガラスを押し割った怪異が√能力者達と戦っていた。
「俺も加勢しよう」
√能力者の頷きを確認すると、伽羅は籠手に仕込んだ釣り針を射出した。狙うは上部。見事怪異の体へと掛かった糸を手繰ると、怪異の身体を一気に駆け上がる。
集中する視線に、伽羅は一本のサーベルを振るった。
どこかの部隊で使われていたような、年季が入るも、よく手入れのされたサーベルだ。鋭く輝くソレは伸びる触手を切り落とし、叫び声をあげる頭を分断した。
だが、怪異はすぐさまその部位を増殖させると何事もなかったかのように動き始める。
何度部位を切り落とそうが相手に疲弊する様子は見れない。むしろ力は増しているように感じられた。
「くっ、いつまでも後手に回っては埒が明かないな」
伽羅は何やら詠唱するとその腕を怪異へと伸ばす。
「闇のものは闇に帰れ」
伽羅の右手に触れた怪異は尽く増殖を止め静止する。まるで死は常に側にあり、全ては無価値であると云うように。
増殖の能力を封じされた怪異は伽羅の振るうサーベルに頭を落とされ砂と消える。
伽羅は刃を翻すとまた次の頭部へと振るうのだった。
🔵🔵🔵 大成功
八曲署『捜査三課』の面々と参加(名字+さん呼び)【アドリブ歓迎】
現場を確認してイライラしながら煙草に火を付ける。
「ッチ、本当に召喚したか・・・総員戦闘用意!ターゲットは【対処不能災厄】第一目標は敵の殲滅で!」
武器を構えながら
「皆さん油断しないでください!」
戦闘時
刀と銃を併用して距離を気にしながら攻撃
√能力【正当防衛】を使用。敵の死角から一気に切り込みます。
攻撃と回避は7:3で
「これ以上人々の楽しい時間を奪わせはしない!」
戦闘後
「目標沈黙・・・皆さん無事ですか?」
【捜査三課】
こ、こんな子供がいる中で…!
俺、まず一般人の避難にあたります!
まずは一般人を安全な場所へ誘導する
特に小さい子達には怪異を見せなように盾になる
大丈夫!絶対お兄ちゃん達がなんとかするから
安全な場所まで避難するんだよ!
一般人の避難を確認したらすぐさま現場に戻り戦闘態勢に入る
|あの場《居酒屋》ではすごかったですよね!なんて言ったけど…
やっぱ駄目だよ!人々を脅かす怪異を見過ごす事は出来ない!
|警視庁異能捜査官《カミガリ》の日南カナタだ!お前を倒す!
その技…、俺の右手で打消してやる!
敵の【災厄拡大】に対して【ルートブレイカー】を発動し打消し
その隙に仲間が攻撃しやすいようにする
八手・真人★捜査三課(志藤さん、日南さん)同行
うう…楽しい猫捜しだけのつもりだったのに。
でも、ここまであんまり役に立てなかったし……『たこすけ』は「やっと出番か」って嬉しそうにウネってるし。
……誰かの幸せな日常を守れたら、俺も『捜査三課』の協力者として、ふさわしい人間になれるかな。
「たこすけ、アイツいっぱい触っていいよ」
日南さんが避難誘導している間、墨と腕で敵にちょっかいをかけて気を引いて……仲間が戦いやすいように囮に……。
隙ができたら、そこを一気に叩く——! ……たこすけが。
「こ、こんな子供がいる中で……!」
ショッピングモールの地獄絵図に日南・カナタ (|嘘つきアクター《プリテンダー》・h01454)は絶句した。
窓という窓からこちらを覗く視線。マネキンのような多数の頭に、生物の神経を思わせる体。普段は想像力が制限されているとはいえ、ここまで濃い怪異の気配を浴びてしまっては一般人は正気ではいられないだろう。
現にショッピングモールの客達は怪異の姿に悲鳴をあげて右往左往の混乱状態だ。
「俺、まず一般人の避難にあたります!」
そう言ってカナタ は二人の返事を聞くより前に走り出す。
「は、はい。お気をつけて」
八手・真人 (当代・蛸神の依代・h00758)はカナタの背中を見送って、現実へと視線を戻す。全然可愛くない怪異に、耳を塞ぎたくなるような人々の悲鳴。
「うう……楽しい猫捜しだけのつもりだったのに。どうしてこんなことになったんだろう」
そう一人反省会を開く真人の背後では蛸神の『たこすけ』が「やっと出番か」とウネっていた。
(「でも、……誰かの幸せな日常を守れたら、俺も『捜査三課』の協力者として、ふさわしい人間になれるかな……」)
その視線は弱弱しくも、恐ろしい外見の怪異に注がれていた。
真人は息を飲むと「よ、よし。や、やるぞ」と己を奮い立たせる。
「ッチ、本当に召喚したか……」
惨事を前に志藤・遙斗 (普通の警察官・h01920)は苛立ちながら煙草に火を付けた。既に多くの人間が怪異を目撃してしまっている。怪異の討伐どころか、後始末も大変なことになるだろう。
その旨をトランシーバーでこちらに向かっている 警視庁の一団 へと伝えれば、先方も似たような感想をぼやいた。
遙斗はため息交じりに煙を吐くと、腰に携えた日本刀へと手を伸ばした。
窓を割り、ショッピングモールへと侵入する怪異に遙斗は刀を構える。
怪異の視線は逃げ惑う一般人へと向いていた。
「これ以上、人々の楽しい時間を奪わせはしない!」
遙斗は伸びる神経を切り落とし、頭部へと刀を突き刺した。
刀から伝わる感触に確かな手応えを感じる。
「たこすけ、アイツいっぱい触っていいよ」
真人は通路へと向かおうとする怪異の前に立ち塞がると、たこすけにそう言った。
(「日南さんが避難誘導をしてくれている間、せめて気を引いて、囮にならないと……」)
真人の言葉にたこすけは嬉しそうに触手をゆらすと、瞬時に長いタコの大腕を伸ばし怪異を絡め取る。神経のような細い体はたこすけの腕力に敵わずよろめいた。
怪異は束縛の届かぬ体の先端を分裂させると、たこすけの本体である真人へと襲い掛かる。
「たこすけ!」
真人の声に反応し、たこすけから真っ黒なタコ墨が放たれる。
視界を塞がれ暴れる怪異。そこへ銀の光が幾度も横断した。遙斗の霊刀術である。
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます」
遙斗は日本刀に付いた体液を地面へと振るうと同時にタバコの灰を床へと落とした。
バラバラになった怪異はうごめき、断面から肉が盛り上がったかと思えばそれは脅威的な再生を見せる。
「なるほど、これが【対処不能災厄】の力……!」
元通りどころか数が増えている。遙斗は改めて刀を構えるとタバコを噛んだのだった。
一方、その頃――。カナタは二階へ逃げる者、トイレに逃げ込む者とパニック状態の一般人を制止し正しい道へと誘導していた。
「皆さん! こちらです! こちらに逃げて下さい!」
混乱した人の流れを正してやれば、避難がスムーズになる筈だ。
「ううっ……」
様々な悲鳴が響く中、聞こえる幼い泣き声。ふと見れば、ぐずぐずと泣く子供と気が動転した母親の姿があった。
カナタは親子へと近付くと子供へ目線を合わせる。
「大丈夫! 絶対お兄ちゃん達がなんとかするから! ね?」
子供が落ち着けるように冷静を装って、出来る限りの優しい声で話しかける。
「ほんと?」
「本当だよ! だから、君も安全な場所まで避難するんだよ!」
怪異が見えないようにカナタは親子の壁となると、二人を通路へと誘導する。
別れ際、母親に抱かれた子供がぽつり、と聞いた。
「お兄ちゃんは……お兄ちゃんはヒーローなの?」
舌足らずな声が、幼い瞳がカナタに向いていた。
「お、俺がヒーロー????」
突然のヒーロー扱いにカナタは不意を突かれた。
「俺は……警視庁の、警察官だよ!」
あれほどまで求めた『ヒーロー』呼びに、どこか照れながら答える。
バイバイと手を振る子供と頭を下げる母親を見送って、カナタは足早に現場へと戻るのだった。
銃声。銃声。銃声。
遙斗の的確な射程は空飛ぶ怪異の翼を撃ち抜き、白い羽をメインコートへと降らしていた。
「これが雪だったなら、ホワイトクリスマスなんですが」
翼を無くした怪異が地面を這い、遙斗を襲う。
だが、遙斗が怪異に向かってタバコの煙をひと吹きすれば、それは殺戮気体となって怪異を苦しめた。
「斬っても斬ってもキリがない」
舌打ちをする遙斗に、真人も同感であった。
たこすけの八本の巨腕によっていくら縛り、殴り、千切っても敵はすぐに再生し増殖して襲い掛かってくる。
終わりの見えない戦いに、疲労が見え始めていた――その時だ。
「待って、通路から誰か、来る……」
多数の足音に走る緊張。混乱した一般人か? それともカルト信者か?
真人が振り返ると、そこへ現れたのは無数の人影だった。
遙斗がトランシーバーで連絡を取り合っていた警視庁の|職員《カミガリ》である。
「っ、やっと来たか……!」
遅れて来た警視庁の増援に、遙斗が指示を送る。
「総員戦闘用意! ターゲットは【対処不能災厄】第一目標は敵の殲滅で!」
「了解! 進めーッ!」
「相手は対処不能災厄! 皆さん油断しないでください!」
そこへ、一般人の誘導を行っていたカナタが合流する。
「ただいま戻りました!」
「日南さん!」
数には数。仲間の増援に、希望が見え始めていた。
「ふっ。増援なんて、いくら人間が増えても無駄に決まってるだろう!」
盛り上がる場に水を差す声。
三人が視線を移せば、そこには鎖でぐるぐる巻きにされた信者が床に転がされていた。他の√能力者が制裁を与えたのだろう。
だが、当人はボコボコにされたというのに怪異の姿を前に感動に打ち震えていた。
「嗚呼、いくら斬られようとも再生し、増殖するこの力! すばらしい! これなら我らが神もお喜びになるに違いない! 残念だったな、|警視庁異能捜査官《カミガリ》我らが神を讃えるなら今のうちだぞ? この景色を見よ! 見よ! 見よ!」
「うるさい」
一人で盛り上がる信者に、遙斗が思わず蹴りを入れる。
しかし、カナタは信者へと近づくと頭を静かに横へと振った。
「|あの場《居酒屋》では「すごかったですよね」なんて言ったけど……やっぱ駄目だよ。人々を脅かす怪異を見過ごす事は出来ない」
目を閉じれば思い出される子供の泣き顔、助けを求める人々。
苦しそうなカナタの言葉に、信者は瞳孔を広げる。
「そうか、お前はあの時の……! |警視庁異能捜査官《カミガリ》だったのか!」
「ゴメン。君達のカミサマは喜ばせない、あの怪異も……ここまでだ!」
「日南さん!?」
覚悟を決めたカナタが怪異へと駆ける。そして。
「|警視庁異能捜査官《カミガリ》の日南カナタだ! 俺が、お前を倒す! その技……、俺の右手で打消してやる!」
カナタの右手が緊張に震えながらも怪異の頭に触れると、怪異は静止する。
自身の右掌で触れた√能力を無効化する、最強の√能力――ルートブレイカーである。
「い、今だっ……! 一気に叩く、ぞ! ……たこすけが」
長い蛸足が制止した怪異をタコ殴りにする。
目にもとまらぬ速さで繰り出される八本足にぶっ飛ぶ怪異。
それが壁へと激突すれば、怪異はずるりと地に落ちて動く事はなかった。
その姿に、ワッと職員が沸く。
「これならいける……!」
遙斗は駆け、地を踏みしめると怪異の首を切り落とすのだった。
あれだけ増殖した怪異も、能力を封じてしまえば後はそれまでであった。
|怪異《ネームレス・スワン》 は無力化され地に転び、あとは怪異に破壊された窓やちらばった商品、一般人が脱ぎ捨てていった靴が残る。
これも、しばらくすればテロ集団により散布された幻覚ガスとかそういう話に落ち着くのだろう。
「目標沈黙……皆さん無事ですか?」
残党がいないことを確認すると、遙斗が二人に尋ねた。
「無事でーす!」
「い、生きてます……」
カナタは能力の酷使に思わず地面に座り込んでしまったが、心はどこか晴れやかだった。チラリ、と信者に視線を向ければ愕然として固まっていた。申し訳なさを感じつつ、死人が出なくて良かったと思う。
「っ……」
「八手さん!?」
くらりと真人の体が傾く。すぐに遙斗が体を支え、顔を覗き込んだ。顔面蒼白である。
「す、すみませんっ……たこすけの力を使ったから貧血が……」
「一旦そこのベンチで休みましょうか」
「は、はい」
メインコートのベンチに座り、ぼんやりとクリスマスツリーを見上げる。
「終わったんだ……」
ガヤガヤと警視庁の |職員《カミガリ》 達が現場の調査を始める中、呟いた。
この様子なら、汎神解剖機関の到着ももうすぐだろう。
「あっ、すみません、最後の最後で迷惑かけちゃって……」
思わず口から出た謝罪の言葉に、遙斗が首を振る。
「迷惑じゃないですよ。八手さんがご自分の血を代償として、怪異と戦った立派な証です。俺も八手さんがいて助かりました」
「志藤さん……」
思わず目を潤ませる真人。
そして、カナタはそんな二人を見て「かっけー!」と打ち震えるのだった。
「せっかくショッピングモールに来たし、時間あれば何か買い物でもして帰りますか?」
「いいですね、どこ行きます?」
遙斗の問いに、カナタがぐるっと振り向き真人へとパスする。「えっ、俺!?」という顔でう~んと悩み、出た言葉は次の通りだった。
「お兄ち……兄に、クリスマスのお菓子を買って帰りたいです」
「いいですね、俺も妹に買って帰るとします」
「えっ、志藤さん、妹さんいらっしゃるんですか!?」
そんな会話と共にショッピングモールは元の日常へと戻っていくのだった。
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵 大成功